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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】表面検査装置および表面検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/958 20060101AFI20240910BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N21/958
G01N21/88 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021016142
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022003325
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2020108019
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】籾山 拓三
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092476(JP,A)
【文献】特開2004-309481(JP,A)
【文献】特開2009-186447(JP,A)
【文献】特開2007-127486(JP,A)
【文献】特表2008-501105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0204236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00- 7/90
G01M 11/00-11/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインセンサを有し、第1の方向に延在するライン状の領域を撮像して、画像データを取得する少なくとも1つのカメラと、
前記カメラと対向して配置され、前記第1の方向と平行に延在するライン照明と、
前記カメラと前記ライン照明との間に被検査体を保持する治具と、
前記画像データに基づいて前記被検査体の表面の欠陥を検出する検査部と、を備え
前記第1の方向に直交する第2の方向の断面において、前記ライン照明が前記カメラの光軸からオフセットされた第1の配置、または前記ライン照明が前記カメラの光軸に対して前記第1の配置の反対側になるようにオフセットされた第2の配置、を維持しながら、前記カメラおよび前記ライン照明を、前記第2の方向に前記被検査体に対して相対移動させることにより、前記カメラで前記被検査体を走査して、前記第1のおよび前記第2の配置における、前記ライン照明の点灯状態での、前記被検査体の前記画像データをそれぞれ取得するように構成され、
前記検査部は、前記第1のおよび前記第2の配置における前記画像データから光スジに対応する部分を除去して、統合した画像に基づいて、前記被検査体の表面の欠陥を検出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記第2の配置では、前記ライン照明が前記カメラの光軸に対して前記第1の配置から線対称となるようにオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸と平行になるように配置され、
前記ライン照明は、前記被検査体を透過する照明光が前記カメラに入射する範囲で、
前記カメラの光軸からオフセットされていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記カメラが前記ライン照明に対して第2の方向に平行移動することにより、前記第1の配置と、前記第2の配置とを遷移しうるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記カメラおよび前記ライン照明が、前記被検査体との相対位置を反転させることにより前記第1の配置と、前記第2の配置を遷移しうるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記ライン照明は、前記第1の配置に配置された第1のライン照明装置、および前記第2の配置に配置された第2のライン照明装置を備えることを特徴とする請求項1、2、3および5のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記治具は、
前記被検査体の平面視形状と略相似し、かつ等倍以上の寸法を有する開口を有する平板状の基部と、
前記開口の周縁部の少なくとも一部に設けられ、前記開口の前記周縁部から前記少なくとも1つのカメラの方向へと立設されて前記被検査体の周縁部を少なくとも3点で支持する支持部とを備え、
前記第1の方向の断面において、
前記少なくとも1つのカメラのうち第1のカメラが、前記開口の内方に配置され、
前記支持部のうち前記第1のカメラの視野に入る部分は、前記第1のカメラのレンズの中心と、被検査領域の外縁とを通る直線よりも外方に配置されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記治具は、
前記被検査体の平面視形状と略相似し、かつ等倍以上の寸法を有する開口を有する平板状の基部と、
前記開口の周縁部の少なくとも一部に設けられ、前記開口の前記周縁部から前記少なくとも1つのカメラの方向へと立設されて前記被検査体の周縁部を少なくとも3点で支持する支持部とを備え、
前記第1の方向の断面において、
前記少なくとも1つのカメラのうち第1のカメラが前記開口の外方に配置されている場合、
前記支持部うち前記第1のカメラから遠い方の部分であり、かつ前記第1のカメラの視野に含まれる部分は、前記第1のカメラのレンズの中心と、前記被検査体の検査領域の外縁とを通る直線よりも外方に配置されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記支持部は、少なくとも一部が、前記基部に向かうに従って、前記治具の外方に向かうように傾斜することにより、前記第1のカメラのレンズの中心と、前記被検査体における前記被検査領域の外縁とを通る前記直線よりも外方に配置されることを特徴とする請求項8または9に記載の表面検査装置。
【請求項11】
前記支持部は、少なくとも一部が、ワークとの係合部から基部と平行に、前記治具の外方に向かって延在し、屈曲して前記開口の前記周縁部まで延在することを特徴とする請求項8または9に記載の表面検査装置。
【請求項12】
前記支持部は、前記開口の前記周縁部に、連続せずに設けられていることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項13】
請求項3または4に記載の表面検査装置、および請求項5または6に記載の表面検査装置を備える表面検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用前照灯カバーなどの透光性部材の表面の疵や汚れ等の欠陥を検査するための検査装置および検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形品やロール成形品などの被検査体の表面欠陥の検査装置として、光電変換素子を一次元に配列して構成されるラインセンサを用いたCCDカメラ等のカメラを使用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、自動車用前照灯カバー等の透光性樹脂部材の表面欠陥の検査装置として、光電変換素子を二次元に配列して構成されるエリアセンサを用いたカメラを用い、被検査体の反対側から照明装置で照射して、欠陥を検出可能としたものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4250076号明細書
【文献】特開2020-91143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、ラインセンサを用い、被検査体の反対側からライン状に発光するライン照明の照明光を投影する検査装置を検討した。その結果、自動車用前照灯カバーのような湾曲した形状を有する透光性樹脂部材では、曲率の大きい部分では光が屈折してしまい、光スジが発生し、光スジに重なる部分の欠陥が検出できないという問題があることが分かった。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、表面の湾曲によっておこる光の屈折の影響に関わらず、湾曲した透光性部材の表面欠陥を検出可能な表面検査装置および検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る透光性樹脂部材の表面検査装置は、ラインセンサを有し、第1の方向に延在するライン状の領域を撮像して、画像データを取得するカメラと、前記カメラと対向して配置され、前記第1の方向と平行に延在するライン照明と、前記カメラと前記ライン照明との間に被検査体を保持する治具と、前記画像データに基づいて前記被検査体の表面の欠陥を検出する検査部と、を備え、前記第1の方向に直交する第2の方向の断面において、前記ライン照明が前記カメラの光軸からオフセットされた第1の配置、または前記ライン照明が前記カメラの光軸の反対側になるようにオフセットされた第2の配置、を維持しながら、前記カメラおよび前記ライン照明を、前記第2の方向に前記被検査体に対して相対移動させることにより、前記カメラで前記被検査体を走査して、前記第1のおよび前記第2の配置における、前記ライン照明の点灯状態での、前記被検査体の前記画像データをそれぞれ取得するように構成され、前記検査部は、前記第1のおよび前記第2の配置における前記画像データから光スジに対応する部分を除去して、統合した画像に基づいて、前記被検査体の表面の欠陥を検出する。
【0008】
上記構成では、ライン照明とカメラとの位置関係が一定であれば、湾曲した被検査体に生じる光スジの位置は一定であるが、ライン照明とカメラとの位置関係が変わると、湾曲した被検査体に生じる光スジの位置が変位するという特性を利用して、2つの異なる配置から照明した被検査体の画像データから、その被検査体についてのそれぞれの配置における光スジの位置情報に基づいて、光スジに対応する部分を削除し、削除して得られる画像データを統合して、光スジの影響を除去した画像を生成する。その画像を用いて、欠陥を検出することにより、湾曲した被検査体に生じる、光スジの影響を受けることなく、欠陥を検出することができる。
【0009】
なお、上記構成において、第2の方向の断面において、ライン照明がカメラと対向して配置されるとは、ライン照明の照射面がカメラのレンズ(光学系)に向けられている状態であり、第2の方向の断面において、ライン照明の光軸がカメラの光軸と平行になるように配置される場合と、ライン照明の光軸がカメラの光軸に対して傾斜している場合を含む。
【0010】
上記態様において、前記第2の配置では、前記ライン照明が前記カメラの光軸に対して前記第1の配置の線対称となるようにオフセットされていることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸と平行になるように配置され、前記ライン照明は、前記被検査体を透過する照明光が前記カメラに入射する範囲で、前記カメラの光軸からオフセットされていることも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、前記カメラが前記ライン照明に対して第2の方向に平行移動することにより、前記第1の配置と、前記第2の配置とを遷移しうるようになっていることも好ましい。
【0013】
また、上記態様において、前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸に対して傾斜するように配置されていることも好ましい。
【0014】
また、上記態様において、前記カメラおよび前記ライン照明が、前記被検査体との相対位置を反転させることにより前記第1の配置と、前記第2の配置を遷移しうるようになっていることも好ましい。
【0015】
上記態様において、前記ライン照明は、前記第1の配置に配置された第1のライン照明装置、および前記第2の配置に配置された第2のライン照明装置を備えることも好ましい。
【0016】
また、上記態様において、前記治具は、前記被検査体の平面視形状と略相似し、かつ等倍以上の寸法を有する開口を有する平板状の基部と、前記開口の周縁部の少なくとも一部に設けられ、前記開口の前記周縁部から前記少なくとも1つのカメラの方向へと立設されて前記被検査体の周縁部を少なくとも3点で支持する支持部とを備え、前記第1の方向の断面において、前記少なくとも1つのカメラのうち第1のカメラが、前記開口の内方に配置され、前記支持部のうち前記第1のカメラの視野に入る部分は、前記第1のカメラのレンズの中心と、前記被検査体の検査領域の外縁を通る直線よりも外方に配置されていることも好ましい。
【0017】
また、上記態様において、前記治具は、前記被検査体の平面視形状と略相似し、かつ等倍以上の寸法を有する開口を有する平板状の基部と、前記開口の周縁部の少なくとも一部に設けられ、前記開口の前記周縁部から前記少なくとも1つのカメラの方向へと立設されて前記被検査体の周縁部を少なくとも3点で支持する支持部とを備え、前記第1の方向の断面において、前記少なくとも1つのカメラのうち第1のカメラが前記開口の外方に配置されている場合、前記支持部うち前記第1のカメラから遠い方の部分であり、かつ前記第1のカメラの視野に含まれる部分は、前記第1のカメラのレンズの中心と、前記被検査体の検査領域の外縁とを通る直線よりも外方に配置されていることも好ましい。
【0018】
また、上記態様において、前記支持部は、少なくとも一部が、前記基部に向かうに従って、前記延長線よりも前記治具の外方に向かうように傾斜することも好ましい。
【0019】
また、上記態様において、前記支持部は、少なくとも一部が、前記ワークとの係合部から基部と平行に、前記治具の外方に向かって延在し、屈曲して前記開口の前記周縁部まで延在することも好ましい。
【0020】
また、上記態様において、前記支持部は、前記開口の前記周縁部に、連続せずに設けられていることを特徴とすることも好ましい。
【0021】
また、本発明の別の態様に係る表面検査システムは、上記態様において前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸と平行になるように配置され、前記ライン照明は、前記被検査体を透過する照明光が前記カメラに入射する範囲で、前記カメラの光軸からオフセットされている表面検査装置と、上記態様において、前記ライン照明は、その光軸が前記カメラの光軸に対して傾斜するように配置されている表面検査装置とを備える。
【0022】
なお、本明細書において、「カメラがライン照明に対向するように配置される」とは、ライン照明の出射面である正面が、カメラの入射面である正面に向かうように配置されていることを意味し、位置が多少ずれる状態や、ライン照明の正面が、カメラの正面に対して傾斜している状態も含んでいる。
【発明の効果】
【0023】
上記態様によれば、光スジの影響を受けずに、湾曲した透光性部材の表面欠陥を検出可能な表面検査装置および検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態に係る表面検査装置の全体構成を示す図であり、ワークを設置している状態を示す。
図2】同表面検査装置の、ワークを設置しない状態を示す斜視図である。
図3】同表面検査装置における、横断面におけるライン照明とカメラとの位置関係を説明する図であり、(A)は、ライン照明とカメラとの第1の配置を示し、(B)は第2の配置を示す。
図4】同表面検査装置における、欠陥検出の原理を説明する図である。
図5】同表面検査装置における、欠陥検出の原理を説明する図である。
図6】同表面検査装置における、欠陥検出の原理を説明する図である。
図7】同表面検査装置の表面検査実行の動作のフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に係る表面検査装置の全体構成を示す図であり、ワークを設置している状態を示す。
図9】同表面検査装置における、ライン照明とカメラとの位置関係を説明する図である。
図10】同表面検査装置による欠陥検出の原理を説明する図である。
図11】同表面検査装置による欠陥検出の原理を説明する図である。
図12】上記実施の形態の変形例に係る表面検査装置の斜視図である。
図13】同変形例に係る表面検査装置の動作を説明する図である。
図14】上記実施の形態の別の変形例に係る表面検査装置の斜視図である。
図15】第3の実施の形態に係る表面検査システムの斜視図である。
図16】同表面検査システムの平面図である。
図17】比較例1に係る表面検査装置を説明する図である。
図18】比較例2に係る表面検査装置を説明する図である。
図19】第4の実施の形態にかかる表面検査装置を説明する図である。
図20】上記実施の形態の変形例にかかる表面検査装置を説明する図である。
図21】第5の実施の形態にかかる表面検査装置を説明する図である。
図22】第6の実施の形態にかかる表面検査装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の説明において、同じもの、同等のものについては同じ符号を付し、対応するものについては、同じ名称を付して重複する説明は適宜省略する。なお、各図において、構成要素は、発明の主題を変更しない範囲で簡略化して図示されている。また、説明の便宜のため、部材間の寸法比は必ずしも正確ではない。
【0026】
(第1の実施の形態)
(表面検査装置100の構成)
第1の実施の形態に係る表面検査装置100の構成を図1~3を参照して説明する。
【0027】
表面検査装置100は、本発明を、車両用前照灯の前面カバーを被検査体(ワーク90)として、ワーク90の表面の欠陥を検査する装置として適用したものである。欠陥としては、例えば、表面についた疵や気泡、または糸くず等が挙げられる。ワーク90は、箱状のランプボディ(図示せず)の開口を覆う蓋状の形状を有し、ポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル等の透光性樹脂で構成された、透光性樹脂部材である。
【0028】
説明の便宜上、表面検査装置100の正面視左右方向をx方向とする。また、x方向と直交する、表面検査装置100の正面視奥行方向をy方向とする。また、xy平面と直交する、表面検査装置100の上下方向をz方向とする。
【0029】
表面検査装置100は、概略として、ライン照明10、カメラ20、治具40、および検査部50を備える。
【0030】
ライン照明10は、図1の中央下部に拡大して示すように、光源12と、ボディ14と、カバー16とを備える照明装置である。光源12は、例えばLED(Light・Emitting・Diode)であり、y方向に延在するライン状光源である。ボディ14は、金属または樹脂で構成され、y方向に長尺で、z方向上側が開口する直方体形状を有する。
【0031】
カバー16は、平板状の透光性樹脂またはガラス部材であり、ボディ14の上面開口を閉塞して灯室を画成する。この結果、ライン照明10は、y方向に長尺の照明光により、ワーク90を下から照明するようになっている。また、ライン照明10は、後述する制御演算部51により点消灯が制御される。
【0032】
カメラ20は、y方向に延びる帯状の(ライン状)の領域を撮像するデジタルカメラである。カメラ20は、少なくともレンズ21と、y方向に延在するラインセンサ22を備える。ラインセンサ22は、フォトダイオードを直線状に配列した、CCD(Charge・Coupled・Device)や、CMOS(Complementar・Metal・Oxide・Semiconductor)等の固体撮像素子で構成されている。カメラ20は、ライン照明10により、z方向の下方から照明されたワーク90の表面91の、y方向に長尺な照明領域を上方から撮像する。また、カメラ20は、湾曲するワーク90の表面が、カメラの焦点の範囲に入るように設けられている。
【0033】
治具40は、z方向における、カメラ20と、ライン照明10との間に、ワーク90を検査対象である表面91が上方(カメラ20)を向くように保持する。図2に示すように、治具40は、平面視で、概略として矩形平板のフレーム形状の基部40aと、基部40aの中央に形成された開口41とを備える。開口41は、ワーク90の平面視形状と略相似する形状を有する。また、治具40は、開口41の周縁部の前後、および左右の4か所に、開口41から外側にオフセットされ、開口41に沿って延在する凸部42が、ワーク90を位置決め・保持するための支持部として立設されている。この結果、ワーク90の外周壁下端部を、開口41の周縁部に載置可能になっている。なお、本例では、治具40は4個の凸部42を備えるが、ワーク90を位置決め・保持するためには少なくとも3個備えていればよい。
【0034】
凸部42は、ワーク90を、その表面91が開口41と合致するように治具40上に設置したときに、ワーク90の外周壁92に当接して、ワーク90を開口41の周縁部に位置決め保持する。凸部42は、この形状に限らず、例えば、開口41の周縁部を囲む矩形の突条(凸部)であってもよく、開口41の周縁部に互いに対向して立設された一組のコの字状の突条(凸部)であってもよい。
【0035】
なお、図示の例ではワーク90の形状を平面視矩形とし、開口41をワーク90の平面視の外形に沿う(略相似形状の)矩形としている。しかし、開口41は、必ずしもワークWの外形に沿う形状である必要はなく、ワーク90の検査領域全体が開口41に対向するようになっていれば任意の形状とすることができる。
【0036】
本実施の形態において、治具40は、例えば、図示しないステージに固定されている。ライン照明10およびカメラ20は、y方向の断面がコの字状の支持部材30に取り付けられている。
【0037】
支持部材30は、z方向に延在する柱部31と、柱部31の上端でy方向に前方に向かって延在する同幅の上梁部32と、柱部31の下端でy方向に前方に向かって延在する拡幅された下梁部33を備える。
【0038】
カメラ20は、上梁部32の底面にスライドレール25を介して、z方向下向きに取り付けられている。ライン照明10は、下梁部33のx方向中央に、z方向上向きに、カメラ20と対向するように取りつけられている。
【0039】
カメラ20とスライドレール25との間には、例えば、ボールねじおよびサーボモータからなるカメラ移動機構(図示せず)が介装されている。これにより、カメラ20は、スライドレール25に対して、図3に矢印βで示すように、x方向に移動可能になっている。
【0040】
支持部材30は、例えば、ボールねじ・リニアガイド・サーボモータからなる支持部材移動機構(図示せず)に接続されており、図3に矢印αで示すように、治具40に対して、x方向に移動可能に構成されている。これにより、ライン照明10とカメラ20は、x方向に、一体的に移動可能となっている。この結果、ライン照明10とカメラ20とが一定の位置関係を保持して、カメラ20は、ライン照明10に照明されるワーク90をx方向に走査することができる。
【0041】
検査部50は、制御演算部51と、記憶部52と、表示部53と、操作部54とを備える。
【0042】
制御演算部51は、例えば、CPU(Central・Processing・Unit)等のプロセッサと、RAM(Ramdom・Access・Memory)とを集積回路に実装したマイクロコンピュータである。制御演算部51は、RAMや記憶部52に記憶されたプログラムおよびデータを読み出してRAMにロードするとともに、RAMから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて表面検査のための各種処理を実行する。制御演算部51は、ライン照明10の点消灯を制御し、支持部材30およびカメラ20の移動を制御し、また、カメラ20で取得した画像データに基づいてワーク90の欠陥を検出する。
【0043】
記憶部52は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の1以上の不揮発性記憶装置を含んで構成される。記憶部52は、制御演算部51が処理を実行するための各種プログラムおよびデータを記憶する。また、記憶部52には、光スジの位置情報を記憶されている。
【0044】
表示部53は、例えば、液晶ディスプレイ、EL(Electroluminescence)ディスプレイであり、画像データ、検査結果、操作画面等を表示する。
【0045】
操作部54は、例えば、キーボード等であり、ユーザからの操作を受け付ける。
【0046】
(ライン照明10とカメラ20との配置)
次に、ライン照明10とカメラ20との配置(位置関係)について、図3を参照しながら説明する。ライン照明10とカメラ20は、カメラ20が、スライドレール25を矢印βで示す、x方向に平行移動することにより、図3(A)に示す第1の配置と、図3(B)に示す第2の配置とを遷移しうるように構成されている。
【0047】
図3(A)に示す第1の配置では、カメラ20はスライドレール25の左側に位置する。ライン照明10はx方向縦断面におけるカメラ20の光軸に対して、ライン照明10の照明光の光軸が、平行となるように、かつ所定距離d1だけオフセットして配置されている。
【0048】
一方、図3(B)に示す第2の配置では、カメラ20は、スライドレール25の右側に位置する。ライン照明10は、表面検査装置のx方向縦断面におけるカメラ20の光軸Cに対して、ライン照明10の照明光の光軸Lが、第1の配置とは反対側(右側)に、平行となるように、かつ所定距離d2だけオフセットしてされている。
【0049】
すなわち、第1の配置と、第2の配置において、ライン照明10は、カメラ20の光軸Cに対して反対側になるようになっている。本形態において、距離d1と距離d2は等しくなっている。したがって、第1の配置と第2の配置における、カメラ20とライン照明10との関係は、カメラ20の光軸Cに対して線対称となる。
【0050】
距離d1と距離d2は、必ずしも等しくなくてもよく、ライン照明10から照射され、ワーク90を透過する照明光がカメラ20に入射する範囲で適宜設定することができる。しかし、距離d1と距離d2が等しくなるようにすることで装置の設計が容易となる。また、距離d1と距離d2の和が大きいと、光スジの位置の変位は大きくなるが、装置が大きくすることにもなる。距離d1と距離d2を等しくすることで、装置を最もコンパクトにすることができる。
【0051】
(表面欠陥の検出原理)
次に表面検査装置100による表面欠陥の検出原理について説明する。カメラによる画像データの取得は、カメラ20とライン照明10を、位置関係を保持しながらワーク90の表面をx方向に走査することにより行う。
【0052】
図4は、カメラ20とライン照明10を第1の配置に固定した状態で、ワーク90をx方向に走査した場合の、表面検査装置100の欠陥検出の原理を説明する図である。1段目は、ワーク90の表面91の曲率が小さい位置P1での動作を模式的に示し、2段目は、ワーク90の表面91の曲率が大きい位置P2での動作を模式的に示す。3段目および4段目は、それぞれワーク90全体をx方向に走査して得られる画像データおよび輝度プロファイルであり、位置P1および位置P2付近を破線の矩形で囲んで示す。また、左欄は、ワーク90に欠陥がなく正常な場合を示し、右欄は、同じワーク90に欠陥95,96がある場合を示す。
【0053】
正常なワーク90を検査する場合、位置P1のようにワーク90の曲率が小さい部分では、ライン照明10から照射される照明光はz方向に進行し、ワーク90に入射して、わずかに屈折するか、ほとんど屈折することなく進行し、カメラ20に入射する(左1段目)。ライン照明10の光軸と、カメラ20の光軸はオフセットされているため、カメラ20は、ライン照明10の光軸の中心からやや外れた周辺光に照明される部分を撮像する。したがって、位置P1付近では、全体が比較的輝度の高い明るい像が取得される。
【0054】
位置P2のようにワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、ライン照明10から照射される照明光は、z方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で大きく屈折して集光される場合がある(左2段目)。この場合、カメラ20で取得される画像データには、極端に明るい部分、いわゆる光スジ61が生じる。
【0055】
一方、表面に欠陥がある不良のワーク90を検査する場合、位置P1では、ライン照明10から照射される照明光は、z方向に進行し、ワークWの裏面から入射するが、欠陥95で光が歪む(右1段目)。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥に対応する箇所62は、比較的明るい全体に対して、輝度の低い暗い部分として表れる。輝度プロファイルにおいて、全体の平均値に対して、所定の値だけ輝度が小さくなる閾値Th1を設定し、閾値Th1より輝度が低い部分を欠陥として検出することができる。
【0056】
位置P2のように、ワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、ライン照明10からの照明光はz方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で大きく屈折するので、集光される部分ができ、光スジ61が生じる(左2段目)。このとき、同じ位置に欠陥があると、欠陥部分で光が多少歪んだとしても、集光された部分の輝度が高いため、その影響は相殺される。このため、欠陥部分が検出されない場合がある。すなわち、第1の配置のみで画像データを取得した場合、ワーク90の曲率の大きい位置では光スジの影響により欠陥が検出されない場合がある。
【0057】
図5は、カメラ20とライン照明10を第2の配置に固定した状態で、ワーク90をx方向に走査した場合の、表面検査装置100の欠陥検出の原理を説明する図である。1~4段目の各図は、第1の配置にかかる図4の1~4段目の各図に対応する。
【0058】
正常なワーク90を検査する場合、位置P1のようにワーク90の曲率が小さい部分では、第1の配置と同様に、ライン照明10から照射される照明光は、z方向に進行し、ワーク90に入射して、わずかに屈折するか、ほとんど屈折することなく進行し、カメラ20に入射する(左1段目)。ライン照明10の光軸と、カメラ20の光軸はオフセットされているため、カメラ20は、ライン照明10の光軸の中心からやや外れた周辺光に照明される部分を撮影する。したがって、位置P1付近では、第1の配置の場合と同様に、全体が比較的輝度の高い明るい像が取得される。
【0059】
位置P2のようにワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、ライン照明10から照射される照明光は、z方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で屈折する(左2段目)。この結果、第1の配置の場合と同様に、カメラ20で取得される画像データには、光スジ64が生じる。しかし、第1の配置と第2の配置とで、カメラ20が同じ位置を撮像するときのライン照明10の位置が異なるため、照明光の屈折方向が異なる。この結果、第2の配置で撮像した場合の光スジ64は、第1の配置で撮像した場合の光スジ61とは位置が異なる。
【0060】
一方、表面に欠陥がある不良のワーク90を検査する場合、位置P1では、第1の配置と同様に、ライン照明10から照射される照明光は、z方向に進行し、ワークWの裏面から入射するが、欠陥95で光が歪む(右1段目)。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥95に対応する箇所62は、比較的明るい全体に対して、輝度の低い暗い部分として表れる。したがって、第2の配置でも、第1の配置と同様に、曲率が小さい部分の欠陥95を検出することができる。
【0061】
位置P2のように、ワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、ライン照明10からの照明光は、z方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で屈折するので、集光される部分ができ、光スジ64が生じる(右2段目)。しかし、光スジ64の位置は、光スジ61の位置とは異なるため、欠陥96とは重ならず、欠陥96の位置では、光が歪み、カメラには入射しない。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥96に対応する箇所65は、比較的明るい全体に対して、輝度の低い暗い部分として表れる。このように、第1の配置では検出できなかった曲率が大きい部分の欠陥96も、第2配置では検出することができる。
【0062】
なお、図4および図5からもわかるように、同一形状のワーク90については、ライン照明10とカメラ20との位置関係(配置)が同じであれば、光スジの生じる位置は同じである。そこで、検査の際に、予めワーク90について、第1の配置および第2の配置において、ワーク90を走査して撮像を行い、図6(1)上段に示す、それぞれの配置での光スジ61,64の位置情報を記憶部52に記憶させておく。なお、光スジの位置情報は、図6(1)下段に示す、それぞれの撮像データの輝度プロファイルにおいて、輝度が、所定の閾値Th2を超える部分を光スジと判断して、光スジの位置情報を取得して、記憶部52に記憶しておく。
【0063】
そして、上記説明の通り、第1の配置および第2の配置でワーク90を撮像し、図6(2)に示す画像データをそれぞれ取得する。そして、図6(3)に示すように、第1の配置で取得した画像データから、第1の配置における光スジに対応する部分を、第2の配置における光スジに対応する部分をそれぞれ削除する。そして、制御演算部51は、図6(4)に示すように、図6(3)の画像データを統合する。この統合画像データに基づいて、閾値Th1を用いた欠陥の判定を行い、欠陥を検出する。この結果、光スジの影響を除去して、透光性部材の表面欠陥を検出することができる。
【0064】
(表面検査方法)
図7は、表面検査実行時の表面検査装置100の動作のフローチャートである。
【0065】
ワーク90は治具40に設置しておく。検査を開始すると、ステップS01で、制御演算部51は、カメラ移動機構を制御して、カメラ20を第1の配置に設定する。また、同時に、支持部材移動機構を制御して、支持部材30を、第1の端部(左端)に設定する。この配置は、初期設定となっていてもよい。
【0066】
次に、ステップS02で、制御演算部51は、ライン照明10を点灯し、第1の配置での点灯状態で、支持部材移動機構を制御して支持部材30を、第1の端部から第2の端部(右端)に向けてx方向に移動させ、カメラ20でワーク90を走査して、第1の配置における撮像を行う。第2の端部までの走査が完了すると、取得された画像データは記憶部52に保存される。
【0067】
ステップS03で、制御演算部51は、カメラ移動機構を制御して、カメラ20を第2の配置に遷移させる。
【0068】
次に、ステップS04で、制御演算部51は、第2の配置での点灯状態で、支持部材移動機構を制御して、支持部材30を、第2の端部から第1の端部に向けて移動させ、カメラ20でワーク90を走査して、第2の配置における撮像を行う。第2の端部までの走査が完了すると、取得された画像データは記憶部52に保存される。また、制御演算部51はライン照明10を消灯する。
【0069】
次に、ステップS05で、制御演算部51は、予め記憶部52に記憶された光スジの位置情報に基づいて、第1の配置で撮像された画像データ、および第2の配置で撮像された画像データから、それぞれの配置での光スジに対応する部分を削除する。
【0070】
次に、ステップS06で、制御演算部51は、それぞれの光スジを削除した第1の配置および第2の配置における画像データを統合する。
【0071】
次にステップS07で、制御演算部51は、統合された画像データの輝度プロファイルにおいて、所定の閾値Th1よりも輝度の小さくなる部分を欠陥として検出し、処理を終了する。
【0072】
このように、実施の形態に係る表面検査装置100では、ライン照明10と、カメラ20との位置関係が一定の場合、湾曲した被検査体に生じる光スジの位置は一定であるが、ライン照明10とカメラ20との位置関係が変わると、湾曲した被検査体に生じる光スジの位置が変位するという特性を利用して、2つの異なる配置から照明した被検査体の画像データから、予め記憶しておいた光スジの位置情報に基づいて、光スジに対応する部分を削除し、削除して得られる画像データを統合して、光スジの影響を除去した画像を生成する。その画像を用いて、欠陥を検出することにより、湾曲した被検査体に生じる、光スジの影響を受けることなく、欠陥を検出することができる。
【0073】
なお、本実施の形態に係る表面検査装置100は、カメラ20がライン照明10に照射された明るい被検査体表面の画像を正常な表面として検出するので、裏面から入射した光を歪めることによって、画像データにおける輝度を低下させる原因となる、気泡や傷といった点状の欠陥を検出するのに有利である。
【0074】
また、本実施の形態に係る表面検査装置100によれば、カメラ20が移動して、第1の配置と第2の配置を遷移するように構成されている。上記構成によれば、カメラ20とライン照明10をそれぞれ1つ用いるだけで2つの配置を達成することができるので、構成要素を少なくすることが可能となる。
【0075】
(第2の実施の形態)
(表面検査装置200の構成)
次に、第2の実施の形態に係る表面検査装置200の構成を図8,9を参照しながら説明する。
【0076】
表面検査装置200は、表面検査装置100と、同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。
【0077】
カメラ20は、支持部材30にスライドレール25を介して取り付けられておらず、上梁部32に直接固定されている。
【0078】
また、ライン照明10に代えて、ライン照明210を備え、ライン照明210は、第1のライン照明装置210aと、第2のライン照明装置210bとを備える。第1のおよび第2のライン照明装置210a,210bは、それぞれライン照明10と同一の構成を備える(図8の中央下部には、第1のライン照明装置210aの拡大図を代表して示す)。
【0079】
しかし、図9に示すように、第1のおよび第2のライン照明装置210aおよび210bは、x方向断面において、支持部材30のx方向中央にあるカメラ20の光軸に対して、互いに反対側に配置されている。また、第1のおよび第2のライン照明装置210aおよび210bは、x方向断面において、支持部材30のx方向中央にあるカメラ20の光軸に対して、それぞれ所定距離d3、d4だけオフセットされているとともに、それぞれの光軸La,Lが、カメラ20の光軸Cに対して所定角度θ1,θ2だけ傾斜するように配置されている。具体的には、ライン照明装置210a,210bの光軸の角度θ1,θ2は、ワーク90を透過したライン照明210の照明光の中心光束が、カメラ20に直接入射しない範囲で設定される。
【0080】
したがって、表面検査装置200では、第1のライン照明装置210aを点灯し、第2のライン照明装置210bを消灯したときに、カメラ20とライン照明210が第1の配置をとるようになっている。また、第2のライン照明装置210bを点灯し第1のライン照明装置210aを消灯したときに、カメラ20とライン照明210とが第2の配置をとるようになっている。
【0081】
なお、本実施の形態において距離d3と距離d4、角度θ1と角度θ2はそれぞれ等しくなっており、したがって、第1の配置と、第2の配置は、カメラ20の光軸に対して、線対称となっている。
【0082】
距離d3と距離d4、角度θ1と角度θ2は、必ずしもそれぞれ等しくなくてもよい。しかし、距離d3と距離d4、角度θ1と角度θ2がそれぞれ等しくなるようにすることで装置の設計が容易となる。また、距離d3と距離d4の和、角度θ1と角度θ2の和が大きいと、光スジの位置の変位は大きくなるが、装置を大きくすることにもなるが、距離d3と距離d4、角度θ1と角度θ2がそれぞれ等しくなるようにすることで装置を最もコンパクトにすることができる。
【0083】
このように、表面検査装置200では、ライン照明210が、第1のライン照明装置210aと、第2のライン照明装置210bとを備える。そして、上記のように2つのライン照明装置210a,210bの点消灯を制御することで、第1の配置と、第2の配置とを遷移しうるように構成されている。
【0084】
(表面欠陥の検出原理)
次に表面検査装置200による表面欠陥の検出原理について説明する。カメラによる画像データの取得は、表面検査装置100と同様に、カメラ20とライン照明210を、位置関係を保持しながらワーク90の表面をx方向に走査することにより行う。
【0085】
図10は、カメラ20とライン照明210を、第1のライン照明装置210aを点灯し、第2のライン照明装置210bを消灯した、第1の配置に固定した状態で、ワーク90をx方向に走査した場合の、表面検査装置200の欠陥検出の原理を説明する図である。1段目は、ワーク90の表面91の曲率が小さい位置P1での動作を模式的に示し、2段目は、ワーク90の表面91の曲率が大きい位置P2での動作を模式的に示す。3段目および4段目は、それぞれワーク90全体をx方向に走査して得られる画像データおよび輝度プロファイルであり、位置P1および位置P2付近を破線の矩形で囲んで示す。また、左欄は、ワーク90に欠陥がなく正常な場合を示し、右欄は、同じワーク90に欠陥97,98がある場合を示す。なお、ここで、欠陥97,98は、例えば、ワーク90の表面に付着した糸くずである。
【0086】
正常なワーク90を検査する場合、位置P1のようにワーク90の曲率が小さい部分では、第1のライン照明装置210aから照射される照明光は、z方向から傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90に入射して、わずかに屈折するか、ほとんど屈折することなく進行し、大部分がカメラ20に入射しない(左1段目)。したがって、位置P1付近では、全体が比較的輝度の低い暗い像が画像データ60として取得される。
【0087】
位置P2のようにワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、第1のライン照明装置210aから照射される照明光は、z方向から傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で大きく屈折して集光される場合がある(左2段目)。この場合、カメラ20で取得される画像データ60には、極端に明るい部分(いわゆる光スジ)66が生じる。
【0088】
一方、表面に欠陥がある不良のワーク90を検査する場合、位置P1では、第1のライン照明装置210aから照射される照明光は、z方向から傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90の裏面から入射するが、欠陥97の表面で光が反射しその一部がカメラ20に入射する(右1段目)。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥に対応する箇所67は、比較的暗い全体に対して、輝度の高い明るい部分として表れる。輝度プロファイルにおいて、全体の平均値に対して、所定の値だけ輝度が大きくなる閾値Th3を設定し、閾値Th3より輝度が大きい部分を欠陥として検出することができる。
【0089】
位置P2のように、ワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、左2段目と同様に、第1のライン照明装置210aからの照明光は、ワーク90に入射した曲率の高い部分で大きく屈折するので、集光される部分ができ、光スジ66が生じる(右2段目)。このとき、同じ位置に欠陥があり、欠陥98部分で光が多少歪んだとしても、集光された部分の輝度が高いため、その影響は相殺される。このため、欠陥98が検出されない場合がある。すなわち、第1の配置のみで画像データを取得した場合、ワーク90の曲率の大きい位置では光スジの影響により欠陥が検出されない場合がある。
【0090】
図11は、カメラ20とライン照明210を、第2のライン照明装置210bを点灯し、第1のライン照明装置210aを消灯した、第2の配置に固定した状態で、ワーク90をx方向に走査した場合の、表面検査装置200の欠陥検出の原理を説明する図である。1~4段目の各図は、第1の配置にかかる図10の1~4段目の各図に対応する。
【0091】
正常なワーク90を検査する場合、位置P1のようにワーク90の曲率が小さい部分では、第1の配置と同様に、第2のライン照明装置210bから照射される照明光は、z方向に対して傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90に入射して、わずかに屈折するか、ほとんど屈折することなく進行する。第2のライン照明装置210bの光軸は、カメラ20の光軸に対して傾斜しているため、照明光の大部分はカメラ20に入射しない(左1段目)。したがって、位置P1付近では、全体が比較的輝度の低い暗い像が、画像データとして得られる。
【0092】
位置P2のようにワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、第2のライン照明装置210bから照射される照明光は、z方向から傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90の裏面から入射して表面91で大きく屈折する(左2段目)。この結果、第1の配置の場合と同様に、カメラ20で取得される画像データには、光スジ68が生じる。しかし、第1の配置と第2の配置とで、カメラ20が同じ位置を撮像するときのライン照明210の位置が異なるため、照明光の屈折方向が異なる。この結果、第2の配置で撮像した場合の光スジ68は、第1の配置で撮像した場合の光スジ66とは位置が異なる。
【0093】
一方、表面に欠陥がある不良のワーク90を検査する場合、位置P1では、第1の配置と同様に、第2のライン照明装置210bから照射される照明光は、z方向から傾斜した光軸方向に進行し、ワーク90の裏面から入射するが、欠陥97で光が反射する(右1段目)。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥97に対応する箇所67は、比較的暗い全体に対して、輝度が高く明るい部分として表れる。したがって、第2の配置でも、第1の配置と同様に、曲率が小さい部分の欠陥97を検出することができる。
【0094】
位置P2のように、ワーク90の曲率が大きく、湾曲した部分では、第2のライン照明装置210bからの照明光は大きく屈折するので、集光される部分ができ、左2段目と同様に光スジ68が生じる(右2段目)。しかし、光スジ68の位置は、光スジ66の位置とは異なるため、欠陥98とは重ならず、欠陥98の位置では、光が反射して、一部がカメラ20に入射する。このため、カメラ20で取得される画像データにおいて、欠陥98に対応する箇所69は、比較的暗い全体に対して、輝度が高く明るい部分として表れる。このように、第1の配置では検出できなかった曲率が大きい部分の欠陥98も、第2配置では検出することができる。
【0095】
なお、第1の実施の形態に係る表面検査装置100の場合と同様に、同一形状のワーク90については、ライン照明210とカメラ20との位置関係(配置)が同じであれば、光スジの生じる位置は同じである。したがって、表面検査装置200においても、表面検査装置100と同様に、あらかじめ各配置における光スジの位置情報を取得して、記憶部52に記憶しておき、検査の際に各配置でそれぞれ取得した画像データから、それぞれの配置における光スジに対応する部分を削除して統合画像データを生成し、その統合画像データに基づいて欠陥を検出する。この結果、表面検査装置100と同様に、光スジの影響を除去して、透光性部材の表面欠陥を検出することが可能となる。
【0096】
特に、本実施の形態に係る表面検査装置200は、カメラの光軸に対して、ライン照明の光軸が傾斜された傾斜配置となっている。上記構成によれば、照明光の大部分はカメラには入射せず、やや暗い被検査体表面の画像を正常な表面として検出するので、裏面から入射した光を反射することによって、画像データにおける輝度を増大させる原因となる、塗装表面に付着した糸くずのような線状の欠陥を検出するのに有利である。
【0097】
(変形例1)
図12は、本実施の形態の1つの変形例にかかる、表面検査装置200Aの斜視図である。図13(A)~(D)は、表面検査装置200Aの検査実行時の動作を説明する図であり、表面検査装置200Aを上から見ている。また、ワーク90は省略されている。表面検査装置200Aは、概略として、表面検査装置200と同様の構成を有するが、以下の点で異なる。図中、方向を認識する便宜のため、治具40Aの4つの凸部42のうち、前方に配置される凸部42を破線で示す。
【0098】
治具40と同様の構成を有する治具40Aが、治具回転機構43に接続されており、治具回転機構43により、矢印γで示すように、x方向に反転(180°回転)可能に構成されている。治具回転機構43は制御演算部51により駆動を制御される。
【0099】
ライン照明210Aは、第2のライン照明装置210bを備えず、第1のライン照明装置210aのみを備える。
【0100】
そして、図12で示す配置を第1の配置とすると、まず図13(A)で示すように、カメラ20およびライン照明210を、第1の配置を維持して、第1の端部(左端)から第2の端部(右端)に向けてx方向に走査して撮像する。
【0101】
次に、治具回転機構43を制御して、図13(B)に矢印で示すようにワーク90を、x方向に反転(180°回転)させる。これにより、ワーク90に対するカメラ20およびライン照明210Aの位置関係は、反転し、表面検査装置200における第2の配置と同じ配置となる。したがって、表面検査装置200Aでは、治具40Aをx方向に反転させることにより、カメラ20とライン照明210Aを第1の配置から第2の配置へと遷移する。
【0102】
そして、図13(C),(D)に示すように、第2の配置を維持して、第2の端部(右端)から第1の端部(左端)に向けてx方向に走査して撮像する。
【0103】
このように、第1の配置と、第2の配置との遷移を、治具40Aをx方向に反転させることによっても、表面検査装置200と同様に、光スジの影響を除去して、透光性部材の表面欠陥を検出することが可能となる。同様の変形は、第1の実施の形態に係る表面検査装置100にも適用することができる。
【0104】
(変形例2)
図14は、本実施の形態の1つの変形例にかかる、表面検査装置200Bの斜視図である。表面検査装置200Bは、概略として、表面検査装置200と同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
【0105】
支持部材30Bが、支持部材移動機構を備えず、治具40Bに治具移動機構44を備え、治具40Bを矢印δで示すx方向に移動させることにより、ワーク90をカメラ20で走査する。すなわち、カメラ20およびライン照明210を支持する支持部材30Bは固定されており、治具40Bが、矢印δで示すように、x方向に移動可能に構成されることによって、カメラ20およびライン照明210が、位置関係を保持したまま、ワーク90に対して相対移動するようになっていてもよい。治具移動機構44は、例えば、ボールねじ、リニアガイド、サーボモータで構成される、直線移動装置である。
【0106】
このように、カメラ20およびライン照明210と、ワーク90を設置する治具40Bとは、相対的に平行移動するようになっていれば、表面検査装置200と同様の効果を奏することができる。このような変形は、表面検査装置100にも適用することができる。
【0107】
なお、上記説明において、便宜上、カメラは1つとして説明したが、これに限らず、カメラの数は、y方向の視野角に応じて任意に設定することができる。
【0108】
(第3の実施の形態)
図15は、第3の実施の形態に係る表面検査システム1の斜視図、図16は同平面図である。図15は一部を透過させている。表面検査システム1は、円形ステージ2と、表面検査装置100と、表面検査装置200とを備える。
【0109】
円形ステージ2には、周方向4か所に等間隔に治具取付位置が設けられて、治具40が取り付けられている。
【0110】
円形ステージ2の外周には、表面検査装置100と表面検査装置200とが周方向に隣りあって配置されている。円形ステージ2に取り付けられた4つの治具が、それぞれ、ワーク搬入位置4、表面検査装置100、表面検査装置200、ワーク搬出位置6に対応している。
【0111】
円形ステージ2は、中央部にモータを備える回転機構3を備え、ワーク搬入位置4から表面検査装置100、表面検査装置200、ワーク搬出位置6に向けて、図16の矢印で示す方向に、1/4周ずつ間歇回転するようになっている。
【0112】
表面検査装置100の検査部50と、表面検査装置200の検査部50とは、共通のコンピュータとして構成されている。また、制御演算部51は、回転ステージの回転を制御する。
【0113】
そして、
(1) ワーク搬入位置4に第1のワーク90を設置する。
(2) 円形ステージ2を1/4回転させる。
(3) 表面検査装置100による第1のワーク90の検査を行うと同時に、ワーク搬入位置4に第2のワーク90を設置する。
(4) 円形ステージ2を1/4回転させる。表面検査装置200による第1のワーク90の検査を行うと同時に、表面検査装置100による第1のワーク90の検査を行い、ワーク搬入位置4に第2のワーク90を設置する。
(5) 円形ステージ2を1/4回転させる。
(6) ワーク搬出位置6で、第1のワーク90を搬出する。表面検査装置200による第2のワーク90の検査を行うと同時に、表面検査装置100による第3のワーク90の検査を行い、ワーク搬入位置4に第4のワーク90を設置する。
(7) 円形ステージ2を1/4回転させる。
という動作を繰り返すことにより、表面検査装置100による表面検査と、表面検査装置200による表面検査とを並行して行うことができるようになっている。
【0114】
上記の通り、表面検査装置100は、気泡や点疵のように点状の欠陥を検出するのに有利であり、表面検査装置200は、付着した糸くず等の線状の欠陥を検出するのに有利である。本システムでは、検出原理の異なる2つの検査装置を備える構成としたので、気泡や点疵、または糸くず等のように異なる種類の欠陥に対応することができ、検査精度を向上することが可能となる。
【0115】
表面検査装置100による表面検査と、表面検査装置200による表面検査とを並行して連続に行うことができるので、複数個のワーク90の検査を行う際の、作業時間を短縮することができる。
【0116】
特に、表面検査装置100と、表面検査装置200とは、第1の配置での撮像、第1の配置から第2の配置への遷移、第2の配置での撮像という、同等の工程により表面検査を実行する。このため、表面検査装置100と表面検査装置200とで、検査所要時間が等しい。したがって、各検査における所要時間の差に起因する円形ステージ2の回転による搬送の待ち時間が発生しない。この結果、検査全体のサイクルタイムを短縮することができる。
【0117】
なお、表面検査装置100、表面検査装置200の配置および、円形ステージ2は単なる例示である。ベルトコンベアのように一方向に進行するステージを用いて、表面検査装置100と表面検査装置200とを直列に設置するような構成とすることもできる。
【0118】
(比較例1)
ところで、上記第1~第3の実施の形態においては、治具40として矩形のフレーム状の基部40aと、基部40aに設けられた、ワーク90の外観形状に沿う形状の開口41、および開口41の周縁部に形成された凸部42を備えるものを用いた。また、ワーク90は一例として図1に示す外観形状を有するもの、図5に示すx-x方向の断面形状を有するものとして模式的に説明した。
【0119】
しかし、ワークである車両用前照灯の前面カバーは、車種や型式によって形状が様々である。また、上記実施の形態の表面検査装置100,200,200A,200Bは、単一のワーク90に専用のものではなく、ワークに応じて構成した専用の治具を用いることで、様々なワークに共通に使用可能となる。この時、ワークの表面が、カメラ20の焦点位置に合致するように、ワークを配置する必要がある。また、ワークは、全体にわたりカメラ20から表面までの距離の変化ができるだけ小さくなるような姿勢で配置されることが好ましい。このため、ワークの形状によっては、治具の基部からカメラ方向の上方でワーク90を支持すること好ましい場合がある。
【0120】
図17は、ワーク90Aを治具940の基部940aの上方で支持するように構成した比較例1に係る表面検査装置900Aを示す。図17(A)は、比較例1に係る表面検査装置900の平面図である。図17(B1),図17(B2)は、それぞれ、表面検査装置900における治具940の、図17(A)のBI-BI線,BII-BII線に沿う端面であり、カメラ20がそれぞれBI-BI線,BII-BII線を通過するときの端面を示す。図17(C)は、カメラ20をx-x方向に走査して得られる画像データのイメージを示す。
【0121】
表面検査装置900は、概略として、第1の実施の形態に係る表面検査装置100と同じ構成を有する。ただし、治具40に代えて、治具940を備える点で異なる。治具940は、略三角形の平面視形状を有するワーク90Aに対応して構成されている。治具940は、矩形のフレーム状の基部940aを備え、基部940aの中央に、ワーク90Aの外形に沿う形状の開口941を有する。開口941の周縁部には、開口941の周縁部からカメラ20に向けて(上方に向けて)鉛直に延在する支持部943が、立壁状に立設されている。支持部943の上端部には、ワーク90Aの外縁部と係合する係合溝944が設けられており、ワーク90Aを位置決め保持している。
【0122】
図17(B1)に示すように、カメラ20が、y-y方向の断面における対向する支持部943の間、すなわち、開口941の内方に位置する場合、被検査領域の外縁Dよりも内方であってもワーク90Aを介して立壁状の支持部943が、カメラ20の視野に入り、支持部943の映り込む領域が生じる。この結果、図17(C)に示すように、取得される画像データ960に、表面検査が不可能な検査不可能領域971が生じる。
【0123】
また、図17(B2)に示すように、カメラ20が、y-y方向の断面における対向する支持部943の外方、すなわち、開口941の外方に位置する場合、カメラに近い方の支持部943では、支持部943にワーク90Aを介してカメラの視野に入る部分がないため、支持部943の映り込む領域は生じない。一方、カメラ20から遠い方の支持部943では、被検査領域の外縁Dよりも内方であっても、ワーク90Aを介して支持部943がカメラ20の視野に入り、着色して示す、支持部94が映り込む領域が生じる。この結果、取得される画像データ960に検査不可能領域971が生じることになる。したがって、カメラ20により取得される画像データ960は図17(C)に示すようになる。
【0124】
(比較例2)
図18は、ワーク90Aを治具940の基部940aの上方で支持するように構成した比較例2に係る表面検査装置900Aを示す。図18(A)は、比較例2に係る表面検査装置900Aの平面図である。図18(B1),図18(B2)は、それぞれ、治具940の、図18(A)のBI-BI線,BII-BII線に沿う端面図であり、カメラがそれぞれBI-BI線,BII-BII線を通過するときの端面を示す。図18(C)は、カメラ20a,20bをx-x方向に走査して得られる画像データのイメージを示す。
【0125】
表面検査装置900Aは、比較例1に係る表面検査装置900と基本的に同一の構成を有する。しかし、1台のカメラ20に代えて、カメラ20a,20bが、y-y方向に直列に2つ設けられている点で異なる。カメラ20a,20bは、基本的にカメラ20と同一の構成を有する。また、カメラ20a,20bは、スライドレール25Aに沿ってx-x方向に一体に移動可能に構成されている。図18(A)において、Ca,Cbはそれぞれカメラ20a,20bのレンズの中心をとおる光軸を示し、領域A1は、カメラ20aのみの視野の範囲、領域A2は、カメラ20bのみの視野の範囲、領域A3は、両方のカメラ20a,20bの視野の範囲を示す。
【0126】
図18(B1)に示すように、カメラ20a,20bが、y-y方向の端面における対向する1対の支持部943a,943bの外方、すなわち開口941の外方にあって、1対の支持部943a,943bが、概ね両方のカメラ20a,20bの視野の範囲である領域A3にあるとする。
【0127】
この時、第1のカメラ20aに着目すると、第1のカメラ20aに近い方の支持部943aは、被検査領域内、すなわち外縁Dよりも内方に、ワーク90Aを介して第1のカメラ20aの視野に入る領域がない。一方、カメラ20aから遠い方の支持部943bでは、被検査領域の外縁Dよりも内方に、ワーク90Aを介して第1のカメラ20aの視野に入る領域(図において着色した領域)が生じる。この結果、取得される画像データに支持部943bが映り込む検査不可能領域971が生じることになる。カメラ20bに着目した場合にも同じことが言える。
【0128】
一方、図18(B2)に示すように、カメラ20a,20bが、y-y方向の断面における対向する1対の支持部943a,943bの外方、すなわち、開口941の外方にあって、第1のカメラ20aに近い方の支持部943aが、第1のカメラ20aの視野の範囲であるが、第2のカメラ20bの視野外である領域A1にあり、遠い方の支持部943bが第1のカメラ20aの視野外であり、第2のカメラの20bの視野の範囲にある領域A2にあるとする。
【0129】
この時、第1のカメラ20aに着目すると、第1のカメラ20aに近い方の支持部943aは、被検査領域の外縁Dよりも内方に、ワーク90Aを介して第1のカメラ20aの視野に入る部分がない。一方、第1のカメラ20aから遠い方の支持部943bは、第1のカメラ20aの視野に入らない。したがって、第1のカメラ20aには、ワーク90Aを介して支持部943a,943bが映り込まず、第1のカメラ20aで取得される画像データには、検査不可能領域971は生じない。第2のカメラ20bに着目した場合にも同じことが言える。したがって、第1のカメラ20aと第2のカメラ20bから得られる画像データは、図18(C)の通りとなる。なお、この場合において、第1のカメラ20aと第2のカメラ20bのいずれかに映り込みがあった場合は、その部分は検査不可能領域971とする。
【0130】
なお、図示の例では該当はないが、カメラが2つある場合であっても、カメラが、y-y方向の断面における対向する支持部943の間、すなわち、開口941の内方に位置する場合には、図17(B1)の場合と同様に支持部943が視野に入る限り、そのカメラに関して検査不可能領域971が生じることになる。
【0131】
(第4の実施の形態)
図19(A)は、第4の実施の形態に係る表面検査装置400の平面図である。図19(B1),図19(B2)は、それぞれ表面検査装置400の図19(A)のBI-BI線、BII-BII線に沿う断面図である。表面検査装置400は、治具440を除き、第1の実施の形態に係る表面検査装置100と同様の構成を備える。
【0132】
治具440は、比較例1,2で説明したものと同じワーク90Aのために構成された治具である。治具440は、矩形のフレーム形状の基部440aを有し、中央にワーク90Aの平面視形状と略相似する形状の開口441を備える。開口441の周縁部には、前記周縁部からカメラ20の方向、すなわち上方へと向けて延在する支持部443,446が立設されている。支持部443,446には、ワーク90Aの外縁部を位置決め保持するための係合溝444が形成されている。
【0133】
図19(B1)では、カメラ20は、y-y方向の断面において、カメラ20は開口441の内方に位置する。この位置において、支持部446は、基部440aに向かうに従って、外方に向かうように傾斜することにより、カメラ20の光軸Cが通る、レンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置されている。このようにすることで、比較例1とは対照的に、ワーク90Aを介してカメラ20の視野に、支持部446が映り込むのを防止することができる。
【0134】
一方、図19(B2)に示すように、カメラ20が、y-y方向の断面において、平面視で開口441の外方に位置する位置では、対向する支持部446,443のうちカメラから遠い方の部分であり、かつカメラの視野に含まれる支持部446の部分は、基部440aに向かうに従って、外方に向かうように傾斜することにより、カメラ20の光軸Cが通るレンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置される。このように構成することにより、比較例1とは対照的に、被検査領域内で、ワーク90Aを介してカメラ20の視野に支持部446が映り込み、検査不可能領域671が生じるのを防止することができる。なお、上記構成のために、開口441は、ワーク90Aの平面視形状に沿う略相似形状を有し、かつ等倍以上の寸法を有するようになっている。本明細書において、「略相似」という場合には、完全な相似であることを必要とせず、部分的に拡大縮小されていてもよい。また、相似という場合には、略相似であるという意味も含む。
【0135】
なお、しかし、図17(B2)からわかるように、カメラの近い方の支持部443の映り込みは生じない。このため、支持部443は、開口441の周縁部から上方に向けて鉛直に立設されていても、支持部443の映り込みは生じない。このように、映り込みの問題が生じない限り、カメラ20の光軸Cが通るレンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置される支持部446は、開口441の周縁部の全周にわたって設けられている必要はなく、少なくとも、映り込みの心配のない領域を除いて設けられていればよい。ただし、このことは、開口441の周縁部を全て傾斜した支持部446で構成することを妨げるものではない。
【0136】
(変形例3)
図20(A)は、本実施の形態の1つの変形例に係る表面検査装置400Aの平面図である。図20(B1),図20(B2)は、それぞれ表面検査装置400Aの図20(A)のBI-BI線,BII--BII線に沿う断面図である。表面検査装置400Aは、比較例1,2の関係と同様に、第4の実施の形態に係る表面検査装置400の、1台のカメラ20に代えて、カメラ20a,20bをy-y方向に直列に2つ設けたものである。また、治具440に代えて、治具440Aを備える。
【0137】
治具440Aは、治具440と同様にワーク90Aのために構成された治具である。治具440Aは、矩形のフレーム形状の基部440aを有し、中央にワーク90Aの平面視形状と略相似する形状の開口441を備える。開口441の周縁部には、前記周縁部から上方へと向けて延在する支持部446A,立設されている。支持部443A,446Aには、ワーク90Aの外縁部を位置決め保持するための係合溝444Aが形成されている。
【0138】
図20(B1)に示すように、カメラ20a,20bが、開口941の外方にあって、1対の支持部943a,943bが、概ね両方のカメラ20a,20bの視野の範囲である領域A3にある。
【0139】
第1のカメラ20aから遠い方の支持部446Abは、基部440Aaに向かうに従って、外方に向かうように傾斜することにより、第1のカメラ20bの光軸Cbが通るレンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置される。
【0140】
第2のカメラ20bから遠い方の支持部446Aaは、基部440Aaに向かうに従って、外方に向かうように傾斜することにより、第2のカメラ20bの光軸Caが通るレンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置される。
【0141】
一方、図20(B2)に示すように、カメラ20a,20bが、y-y方向の断面における対向する1対の支持部443a,443bの外方、すなわち、開口941の外方にあって、第1のカメラ20aに近い方の支持部443Aaが、第1のカメラ20aの視野の範囲であるが、第2のカメラ20bの視野外である領域A1にあり、遠い方の支持部443Abが第1のカメラ20aの視野外であり、第2のカメラの20bの視野の範囲にある領域A2にあるとする。
【0142】
この場合には、図18からも理解されるように、支持部443Aa,443Abのいずれも映り込みが生じないため、支持部443Aa,443Abは、開口441の外縁部から上方に向かって鉛直に立設されている。
【0143】
(第5の実施の形態)
図21(A)は、第5の実施の形態に係る表面検査装置500の平面図である。図21(B1),図21(B2)は、それぞれ表面検査装置500の図21(A)のBI-BI線、BII-BII線に沿う断面図である。表面検査装置500は、治具540を除き、第4の実施の形態に係る表面検査装置400と同様の構成を備える。治具540では、支持部446に代えて支持部546が備えられている。
【0144】
支持部546は基部540aから、ワーク90Aを支持する係合溝544の高さまで鉛直に上方に向かって立設され、直角に屈曲して、係合溝544まで平行に延在するようになっている。この結果、支持部543が、カメラ20の中心Cを通る、レンズ21の中心と、被検査領域の外縁Dとを結ぶ直線Eよりも外方に配置されるようになっている。このようにすることで、ワーク90Aを介するカメラ20の視野に支持部543が映り込むのを防止することができる。
【0145】
(第6の実施の形態)
第4~5の実施の形態に係る支持部は、図22に示すように組み合わせて用いてもよい。図22(A)は、第6の実施の形態に係る表面検査装置600の平面図である。図22(B1),図22(B2)は、それぞれ表面検査装置600の図22(A)のBI-BI線、BII-BII線に沿う断面図である。
【0146】
図22(B1)に示すように、y-y断面において、対向する支持部の一方の支持部646aは、基部640aから、ワーク90Aを支持する係合溝644の高さまで鉛直に上方に向かって立設され、直角に屈曲して、係合溝644まで平行に延在するようになっていることにより、第1のカメラ20aの中心Caを通る、レンズ21の中心と、被検査領域の外縁Dとを結ぶ直線Eよりも外方に配置されるようになっている。また、他方の支持部646bは、基部640aに向かうに従って、外方に向かうように傾斜することにより、第2のカメラ20bの光軸Cbが通る、レンズ21の中心と、ワーク90Aにおける被検査領域の外縁Dとを通る直線Eよりも外方に配置されている。このようにすることで、ワーク90Aを介するカメラ20の視野に支持部543が映り込むのを防止することができる。
【0147】
また、映り込みの生じない部分については、図22(B2)に示すように、開口441の周縁部から上方に向かって鉛直に延在する支持部643bを用いてもよい。
【0148】
あるいは、図22(B2)の第1のカメラ20a側に示すように、ワーク90Aの保持に影響のない場合は、映り込みが起こる支持部を取り除いてもよい。物体は、一般に少なくとも3点を支持することにより安定して支持することができるからである。このように構成することで、治具640の軽量化を図ることが可能となる。
【0149】
また、その他の変形として、例えば、図22(B1)の支持部646a,646bを、図示したような、壁状に構成するのではなく、橋脚構造等で実現することも可能である。
【0150】
なお、第4~6に係る実施の形態における、治具についての変形は、第1の実施の形態のみならず、第2の実施の形態およびそれらの変形例に係る表面検査装置に適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0151】
1 :表面検査システム
10 :ライン照明
20 :カメラ
22 :ラインセンサ
40,40A,40B,440,440A,540,640 :治具
440a,440Aa,540a,640a :(治具の)基部
441 :開口
443,443a,443b,443A,443Aa,443Ab,446,446A,446Aa,446Ab,543,643b,646a,646b :支持部
50 :検査部
90 :ワーク(被検査体)
91 :表面
100,200,200A,200B,400,400A,500,600 :表面検査装置
210,210A :ライン照明
210a :第1のライン照明装置
210b :第2のライン照明装置
C :カメラの光軸
L :ライン照明の光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22