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特許7553381医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240910BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240910BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61B6/46 536M
A61B6/03 560G
A61B6/03 560J
A61B6/03 560D
G06T1/00 290B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021026627
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128218
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】茅野 秀介
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 祐一郎
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120827(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076074(WO,A1)
【文献】特開2003-339644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0242776(US,A1)
【文献】特開2013-154037(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030015(WO,A1)
【文献】特開2014-217549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/46
A61B 6/03
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器の可視化を行う医用画像処理装置であって、
処理部を備え、
前記処理部は、
臓器を含むボリュームデータを取得し、
前記臓器に含まれる管状組織を抽出し、
前記臓器において切除対象の領域である切除領域を指定し、
前記切除領域に含まれる管状組織を切除するか否かを決定し、
前記臓器における前記切除領域を除いた範囲である残置領域の表示時に、前記切除領域内の切除対象の管状組織を非表示とし、前記切除領域内の切除対象外の管状組織を表示部に表示する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記管状組織は、動脈、門脈及び静脈のうち少なくとも1種類を含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記管状組織は、動脈、門脈及び静脈のうち少なくとも2種類を含み、
前記処理部は、前記管状組織のうちの前記少なくとも2種類を区別して抽出する
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記少なくとも2種類の前記管状組織のうち、1つの種類の管状組織を切除すると決定し、他の1つの種類の管状組織を切除しないと決定する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記切除領域に含まれる腫瘍の領域を表示する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記切除対象の管状組織の切除箇所を強調して表示する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記臓器、前記管状組織のうち少なくとも一つに対してサーフィスレンダリング又はボリュームレンダリングを行ってレンダリング画像を生成し、
前記レンダリング画像を表示する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
臓器の可視化を行う医用画像処理方法であって、
臓器を含むボリュームデータを取得するステップと、
前記臓器に含まれる管状組織を抽出するステップと、
前記臓器において切除対象の領域である切除領域を指定するステップと、
前記切除領域に含まれる管状組織を切除するか否かを決定するステップと、
前記臓器における前記切除領域を除いた範囲である残置領域の表示時に、前記切除領域内の切除対象の管状組織を非表示とし、前記切除領域内の切除対象外の管状組織を表示部に表示するするステップと、
を有する医用画像処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臓器の切除時には、血管を含む管状組織を結紮切離することが知られている。従来、結紮切離箇所を強調表示する医用画像処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-120827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、血管の切断面を可視化することができる。しかし、血管を含む臓器の部分切除については考慮されていない。したがって、臓器の部分切除時の状態を血管等の管状組織の状態を含めて可視化することは困難である。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてされたものであって、臓器の部分切除時の状態を臓器の切除領域内の管状組織の状態を含めて好適に可視化できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、臓器の可視化を行う医用画像処理装置であって、処理部を備え、前記処理部は、臓器を含むボリュームデータを取得し、前記臓器に含まれる管状組織を抽出し、前記臓器において切除対象の領域である切除領域を指定し、前記切除領域に含まれる管状組織を切除するか否かを決定し、前記臓器における前記切除領域を除いた範囲である残置領域の表示時に、前記切除領域内の切除対象の管状組織を非表示とし、前記切除領域内の切除対象外の管状組織を表示する、医用画像処理装置、である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、臓器の部分切除時の状態を臓器の切除領域内の管状組織の状態を含めて好適に可視化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態における医用画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
図2】医用画像処理装置の機能構成例を示すブロック図
図3】肝臓における支配領域の一例を示す図
図4】肝臓における切除領域と残置領域と切除対象又は切除対象外の各血管との一例を示す図
図5】切除領域内の血管を切除するか否かの決定方法を説明するための図
図6】3次元画像を生成するための視線方向αの一例を示す図
図7A】被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像を簡略化した第1表示例を示す模式図
図7B】切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第1表示例を示す図
図8A】被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像の第2表示例を示す模式図
図8B】切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第2表示例を示す図
図9A】被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像の第3表示例を示す模式図
図9B】切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第3表示例を示す図
図10】切除領域の境界を血管が走行する場合を説明するための図
図11】医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0011】
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PCとPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
【0012】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。被検体は、生体、人体、動物、等を含んでよい。CT装置200は、被検体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT画像の撮像には、CT撮像に関する撮像条件や造影剤の投与に関する造影条件が考慮されてよい。なお、造影は、臓器の動脈や静脈に対して行われてよい。造影は、臓器の特性に応じて異なるタイミングで複数回実施されてよい。
【0013】
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポートや外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポートを含み、CT画像から得られたボリュームデータを取得する。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。また、ボリュームデータは中間データ、圧縮データやシノグラムの形で取得されてもよい。また、ボリュームデータは医用画像処理装置100に取り付けられたセンサーデバイスからの情報から取得されてもよい。ポート110は、ボリュームデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
【0014】
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、学生、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでよい。
【0015】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、腫瘍組織、等を含んでよい。
【0016】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、又はレイキャスト画像を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、MPR画像、等を含んでよい。
【0017】
メモリ150は、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0018】
プロセッサ140は、CPU、DSP、又はGPUを含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0019】
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
【0020】
処理部160は、領域処理部161、画像生成部162、切除対象決定部163、強調情報生成部164、及び表示制御部165を備える。処理部160は、医用画像処理装置100の各部を統括する。処理部160は、組織の可視化に関する処理を行う。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0021】
領域処理部161は、例えばポート110を介して、被検体のボリュームデータを取得する。領域処理部161は、ボリュームデータに含まれる任意の領域を抽出する。領域処理部161は、例えばボリュームデータのボクセル値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。関心領域は、肝臓、肺、気管支、肺動脈、肺静脈、門脈、肝静脈、等の領域を含んでよい。関心領域は、被検体から切除する臓器の少なくとも一部であってよい。また、関心領域は、管状組織(例えば、血管(例えば門脈、動脈、静脈)、気管支、胆管)の少なくとも一部であってよい。
【0022】
領域処理部161は、被検体の臓器を区域によって分割してよい。区域は、解剖学的な区域と少なくとも大まかに一致してよい。臓器は、肝臓、腎臓、肺、その他の臓器を含んでよい。区域は、複数の区域の組み合わせの少なくとも一部の領域であってもよい。区域は、区域よりも細かな範囲の単位でもよい。区域の分割では、ボロノイ分割が行われてもよい。
【0023】
領域処理部161は、管状組織(例えば門脈や動脈)の走行状態に基づいて、その管状組織の支配領域を決定してよい。例えば、支配領域は、腫瘍を栄養する(栄養を運搬する)門脈又は動脈が栄養している領域を指す。腫瘍を栄養する門脈又は動脈等を、責任血管とも称する。領域処理部161は、例えば、門脈又は動脈をシードとして、ボロノイ分割することによって支配領域を算出してよい。
【0024】
領域処理部161は、ボロノイ分割により臓器を複数の区域を分割したり、支配領域を算出したりしてよい。ボロノイ分割では、基準となる線又はこの線上の点との距離を基に、複数の区域に分割したり、支配領域を算出したりしてよい。基準となる線は、血管、気管支、等の管状組織の走行を表す線であってよい。
【0025】
例えば、領域処理部161は、抽出された、臓器の区域の中心部を走行し易い木構造T1(例えば門脈、動脈、又は気管支)に基づいて、区域を分割したり、支配領域を決定したりしてよい。領域処理部161は、この区域分割の結果である区域や支配領域を、区域や支配領域の端部、又は境界を走行し易い木構造T2(例えば、静脈又はリンパ管)等、に基づいて補正してよい。また、領域処理部161は、抽出された木構造T1及び木構造T2に基づいて、臓器を区域で分割してよいし、支配領域を決定してよい。なお、区域分割の例については、参考特許文献1に開示されている。
(参考特許文献1:特開2020-120828号公報)
【0026】
領域処理部161は、臓器における切除対象の領域である切除領域を算出してよい。切除領域は、例えば、臓器から腫瘍部分を切除するための腫瘍を含む領域である。切除領域は、決定された支配領域と同じであってもよいし、異なっていてもよい。切除領域は、腫瘍を含む分割された区域と同じであってもよいし、異なっていてもよい。領域処理部161は、UI120を介して手動で切除領域を指定してもよいし、所定のアルゴリズムに従って自動で切除領域を指定してもよい。
【0027】
画像生成部162は、各種画像を生成する。画像生成部162は、取得されたボリュームデータの少なくとも一部(例えば抽出された領域、区域のボリュームデータ)に基づいて、3次元画像や2次元画像を生成する。画像生成部162は、切除領域に含まれる臓器の一部が除外された画像を生成してよい。この場合、臓器内の切除領域が除外されるが、切除領域内の管状組織の少なくとも一部が残存した画像を生成してもよいし、切除領域内の管状組織の少なくとも一部も除外された画像を生成してもよい。また、画像生成部162は、臓器内の切除領域のみの画像を生成してもよい。
【0028】
画像生成部162は、各種レンダリング(例えばボリュームレンダリング又はサーフィスレンダリング)を行って、画像を生成してよい。画像生成部162は、マスクを利用して画像を生成してよい。マスクを利用すると、マスク領域のボクセルに限定して画像内に描画され、非マスク領域のボクセルは、画像内に描画されない。また、マスクは領域毎に複数利用できる。マスクを利用した画像生成については、例えば参考特許文献2に開示されている。
(参考特許文献2:特許第4188900号公報)
【0029】
切除対象決定部163は、臓器の切除領域に含まれる各管状組織について、切除対象とするか切除対象外とするかを決定する。つまり、臓器の切除領域に含まれる各管状組織は、切除領域内にある臓器の一部とともに、切除されることもあるし、切除されないこともある。臓器の切除領域に含まれる各管状組織についての切除対象とするか切除対象外とするかの具体的な決定方法については後述する。例えば、切除領域内の切除対象外の管状組織が画像生成部162による画像生成の対象とされ、切除領域内の切除対象の管状組織が画像生成部162による画像生成の対象外とされてよい。
【0030】
強調情報生成部164は、切除対象の管状組織(例えば血管、気管支)の切除箇所(例えば切除面上の管状組織の輪郭や管状組織の切除面自体(輪郭の内側))を強調するための強調情報を生成する。強調情報は、切除面上の管状組織の輪郭を強調した輪郭強調情報を少なくとも含んでいる。
【0031】
輪郭強調情報は、切除面上の管状組織の輪郭に概ね沿って形成されるリング、等であってよい。例えば、輪郭強調情報は、切除面上の管状組織の輪郭のボクセルのボクセル値を、取得した実際の値より大きくした情報を含んでよい。輪郭強調情報は、切除面上の管状組織の輪郭線を太くした情報を含んでよい。輪郭強調情報は、輪郭線のボクセルをこの輪郭線に隣接する他ボクセルとは異なる色とした情報を含んでよい。
【0032】
強調情報は、切除面の輪郭より内部を強調した面強調情報を含んでよい。面強調情報は、切除面上の輪郭を示すリングの内部における模様、パターン、色、塗りつぶし、等であってよい。例えば、面強調情報は、切除面の面上のボクセルのボクセル値を、取得した実際の値より大きくした情報含んでよい。面強調情報は、切除面のボクセルの色を切除面に隣接する他ボクセルとは異なる色とした情報を含んでよい。
【0033】
切除面を有する管状組織は、結紮切離される管状組織でよい。結紮切離は、臓器の腫瘍摘出、臓器の区域切除、臓器の楔形切除、等に伴って実施されてよい。また、管状組織は、臓器(例えば肝臓)、肺に含まれる組織でよい。強調情報は、管状組織の方向が可視化される情報でよい。強調情報は、管状組織のパスを基に生成されてよい。強調情報は、切除面からオフセットされて表示されてよい。輪郭強調情報の表示方法については、例えば特許文献1に開示されている。
【0034】
表示制御部165は、各種データ、情報、又は画像をディスプレイ130に表示させる。画像は、画像生成部162で生成された画像を含む。また、表示制御部165は、レンダリング画像に強調情報を重畳して表示させる。
【0035】
図3は、肝臓10における支配領域16の一例を示す図である。図3では、肝臓10の表面11の内部に、門脈12と静脈14とが存在する。門脈12の一部は、責任血管12aとなっており、腫瘍20に対して栄養している。領域処理部161は、この責任血管12aを含む門脈12に基づいて、ボロノイ分割等により、責任血管12aが栄養する領域である支配領域16を決定する。領域処理部161は、責任血管12aを含む門脈12と静脈14とに基づいて、ボロノイ分割等により、支配領域16を決定してもよい。図3では、静脈14の位置も加味されている。そのため、図3では、相互に近くに位置する複数の門脈からの距離をおよそ等距離として、支配領域16の外周部が形成されている。また、静脈14の走行に沿って、支配領域16の外周部が形成されている。
【0036】
なお、図3では、説明のため、門脈12が実線で示され、静脈14が点線(破線)で示されている。以降の図でも同様である。
【0037】
図4は、肝臓10における切除領域17と残置領域18と切除対象又は切除対象外の各血管との一例を示す図である。切除領域17は、肝臓10のうちの部分切除手術等により切除対象となる領域である。残置領域18は、肝臓10から切除領域17が除かれた領域であり、部分切除手術等により肝臓10の一部として残される領域である。例えば、領域処理部161は、支配領域16に基づいて切除領域17を算出してもよいし、UI120を介して支配領域16を任意に指定してもよい。また、部分切除手術等を行う医師がUI120を操作し、領域処理部161が、UI120への操作に基づいて、支配領域16の一部を修正して切除領域17を生成してもよい。また、医師によりUI120を介した支配領域16の修正が全く行われず、支配領域16と切除領域17とが同じ領域であってもよい。
【0038】
肝臓10等の臓器の部分切除手術では、臓器に付随する血管も切除対象となり得る。例えば、切除対象決定部163は、切除領域17内の血管(例えば門脈12又は静脈14)の全てを、切除対象の血管として決定してよい。切除対象決定部163は、切除領域17内の血管(例えば門脈12又は静脈14)の一部を、切除対象外の血管として決定してもよい。例えば、切除領域17内の血管のうち、切除領域17の辺縁部(周端部)に沿っている血管を、切除対象外の血管として決定してよい。図4では、切除対象の門脈12cと切除対象の静脈14cとが示されており、切除対象外の静脈14dも示されている。
【0039】
静脈は、切除領域17の周端部に位置し易い。この静脈を切除すると、切除領域17の外側(つまり残置領域18)において血液が滞留し、残置領域18の一部の組織が機能しなくなることがあり得る。これに対し、医用画像処理装置100は、切除領域17の辺縁部(周端部)に沿っている血管を切除対象外の血管として決定することで、切除されなかった残置領域18の機能低下を低減できる。
【0040】
なお、図4では、説明のため、切除対象の血管(例えば門脈又は静脈)が2点鎖線で示されている。以降の図でも同様である。
【0041】
図5は、切除領域17内の血管を切除するか否かの決定方法を説明するための図である。切除対象決定部163は、切除領域17を所定の距離でモルフォロジー変換によって収縮(Erode)した収縮領域17sを生成する。この場合、切除領域17の周端部と収縮領域17sの周端部とは、距離d1(例えば3mm)程度、離間される。
【0042】
切除対象決定部163は、収縮領域17sに進入しない血管を、切除対象外の血管(例えば静脈14d)として決定する(領域R11参照)。また、切除対象決定部163は、蛇行して走行し、収縮領域17sに一部進入する区間が存在しても(例えば血管パス上で所定長さd2未満)、速やかに収縮領域17sから退出する血管を、切除対象外の血管(例えば静脈14d)として決定する(領域R12参照)。長さd2は、例えば10mmでよい。また、切除対象決定部163は、収縮領域17sに進入して退出しない血管を、切除対象の血管(例えば静脈14c)として決定してよい(例えば領域R13参照)。
【0043】
なお、切除対象か否かが判定される血管の種別(例えば門脈又は静脈)に応じて、切除対象か否かの判定に用いる収縮領域17sが異なってよい。つまり、門脈12が切除対象か否かを決定するための収縮領域17s1(不図示)と、静脈14が切除対象か否かを決定するための収縮領域17s2(不図示)とが異なっていてよい。この場合、切除対象決定部163は、切除領域17を異なる倍率で収縮して、収縮領域17s1,17s2を生成してよい。
【0044】
なお、図5における符号19は、切除領域の切除時に切り込みが入れられる肝臓表面上の線を示す。
【0045】
図6では、3次元画像を生成するための視線方向αの一例を示す図である。画像生成部162は、視線方向αの情報を取得し、被検体の外部から視線方向αを見た場合の被検体の(例えば臓器周辺の)3次元画像を生成する。視線方向αは、例えばUI120を介して指示されてもよいし、他の方法で指示されてもよい。したがって、切除領域17を含む肝臓10の全体を可視化した3次元画像を生成したり、肝臓10から切除領域17を除外した部分を可視化した3次元画像を生成したりしてよい。また、画像生成部162は、切除領域17内の血管の少なくとも一部を可視化した3次元画像を生成したり、この少なくとも一部を可視化しない3次元画像を生成したりしてよい。
【0046】
このように、画像生成部162は、部分切除手術のシミュレーション(切除シミュレーションとも称する)によって部分切除する対象について、様々な領域や組織を、3次元画像の生成対象としたり、3次元画像の生成対象としなかったりしてよい。表示制御部165は、このように切除シミュレーション用に生成された3次元画像をディスプレイ130に表示させる。この場合、3次元画像の生成対象の部位は表示対象となり、3次元画像の生成対象外の部位は表示対象外となる。表示制御部165は、どの部位を3次元画像の生成対象又は表示対象とするかを、例えば切除シミュレーションを行う医師によりUI20を介して指定してよい。
【0047】
図7Aは、被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像を簡略化した第1表示例を示す模式図である。図7Aの画像は、例えば、腫瘍20と各血管の走行の関係を確認するために用いられる。図7Aの場合、表示制御部165は、切除領域17を表示対象外に指定し、切除領域17内の腫瘍20を表示対象に指定し、切除領域17内の切除対象の門脈12cを表示対象に指定する。また、表示制御部165は、切除領域17内の切除対象の静脈14cを表示対象に指定し、切除領域17内の切除対象外の静脈14dを表示対象に指定し、残置領域18を表示対象に指定する。この結果、図7Aの画像では、表示対象に指定された各部位が表示され、表示対象外に指定された部位が非表示となる。
【0048】
図7Bは、切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第1表示例を示す図である。図7Bでは、図7Aにおける表示対象の部位と同じ部位が表示対象となっており、図7Aにおける表示対象外の部位と同じ部位が表示対象外となっている。また、残置領域18の表面が半透明であり、残置領域18の血管も一部描画されている。
【0049】
図8Aは、被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像の第2表示例を示す模式図である。図8Aの画像は、例えば、各血管の走行の関係を確認するために用いられる。図8Aの場合、表示制御部165は、切除領域17を表示対象外に指定し、切除領域17内の腫瘍20を表示対象外に指定し、切除領域17内の切除対象の門脈12cを表示対象に指定する。また、表示制御部165は、切除領域17内の切除対象の静脈14cを表示対象に指定し、切除領域17内の切除対象外の静脈14dを表示対象に指定し、残置領域18を表示対象に指定する。この結果、図8Aの画像では、表示対象に指定された部位が表示され、表示対象外に指定された部位が非表示となる。
【0050】
図8Bは、切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第2表示例を示す図である。図8Bでは、図8Aにおける表示対象の部位と同じ部位が表示対象となっており、図8Aにおける表示対象外の部位と同じ部位が表示対象外となっている。また、残置領域18の表面が半透明であり、残置領域18の血管も一部描画されている。
【0051】
図9Aは、被検体の外部から視線方向αを見た場合の切除シミュレーション用の3次元画像の第3表示例を示す模式図である。図9Aの画像は、例えば、手術後の光景のシミュレーションのために用いられる。図9Aの場合、表示制御部165は、切除領域17を表示対象外に指定し、切除領域17内の腫瘍20を表示対象外に指定し、切除領域17内の切除対象の門脈12cを表示対象外に指定する。また、表示制御部165は、切除領域17内の切除対象の静脈14cを表示対象外に指定し、切除領域17内の切除対象外の静脈14dを表示対象に指定し、残置領域18を表示対象に指定する。この結果、図9Aの画像では、表示対象に指定された部位が表示され、表示対象外に指定された部位が非表示となる。
【0052】
また、図9Aの画像では、強調情報22が表示されている。例えば、門脈12が切除される切除箇所(例えば結紮切離箇所)に対してリング状の強調情報22aが表示される。例えば、静脈14が切除される切除箇所(例えば結紮切離箇所)に対してリング状の強調情報22bが表示される。また、残置領域18の表面が半透明であり、残置領域18の血管も一部描画されている。
【0053】
図9Bは、切除シミュレーションの実際のシミュレーション画像の第3表示例を示す図である。図9Bでは、図9Aにおける表示対象の部位と同じ部位が表示対象となっており、図9Aにおける表示対象外の部位と同じ部位が表示対象外となっている。
【0054】
図10は、切除領域の境界を血管が走行する場合を説明するための図である。
【0055】
血管は、切除領域17の境界付近を走行する場合がある。例えば、責任血管の支配領域16が修正された切除領域17では、静脈14が切除領域17の境界を走行し易い。この場合、部分切除手術時に静脈14から分岐した静脈14c及び静脈14dのうち残置領域18に影響のある静脈14dを温存することで切除領域17の外側の組織の血液循環が良好となり、好ましい。そのため切除対象決定部163は、切除領域17内に向かって走行する静脈14cを切除対象に決定する。一方で、切除領域17の境界を走行する静脈14dを温存する。この場合、画像生成部162及び表示制御部165は、切除領域17の境界を走行する静脈14dを画像生成対象として描画し、表示対象とする。
【0056】
さらに、表示制御部165は、切除対象の静脈14cの切除箇所を強調する強調情報22を、静脈14の切除箇所に表示する。この場合、強調情報生成部164は、例えば静脈14の切除箇所に対応する静脈14の血管パス14pの走行状態に基づいて、強調情報22を生成してよい。
【0057】
したがって、切除対象決定部163は、切除領域17の境界面を境界として、切除領域17の境界の外側にある残置領域18に含まれる静脈14を切除対象外に決定し、切除領域17の境界を走行する静脈14dを切除対象外に決定し、切除領域17の境界よりも切除領域17の内部を走行する静脈14cを切除対象に決定してよい。この場合、表示制御部165は、残置領域18に含まれる静脈14を表示対象としてよい。これを視線方向βから可視化すると図9A又は図9B等のような画像が得られる。表示制御部165は、切除領域17の境界を走行する静脈14dを表示対象としてよい。表示制御部165は、切除領域17の境界よりも切除領域17の内部を走行する静脈14cを表示対象としてよい。そして、表示制御部165は、切除領域17の外部と内部とを走行する静脈14において、切除箇所に強調情報22を付して表示させてよい。これを視線方向βから可視化すると図8又は図8B等のような画像が得られる。
【0058】
次に、医用画像処理装置100の動作例について説明する。
図11は、医用画像処理装置100の動作例を示すフローチャートである。図11の処理は、例えば処理部160内の各部によって行われる。
【0059】
まず、ポート110は、被検体の肝臓10を含むボリュームデータを取得する(S11)。領域処理部161は、ボリュームデータから肝臓10を抽出して肝臓領域RLとし、腫瘍20を抽出して腫瘍領域RTとする(S12)。領域処理部161は、ボリュームデータから門脈12を抽出して門脈領域RPとし、門脈12の木構造としての門脈ツリーTP(パスツリー)を生成する(S13)。領域処理部161は、ボリュームデータから静脈14を抽出して静脈領域RVとし、静脈14の木構造としての静脈ツリーTV(パスツリー)を生成する(S13)。領域処理部161は、肝臓領域RL、腫瘍領域RT、門脈ツリーTP、及び静脈ツリーTVに基づいて、腫瘍20を栄養している門脈12の支配領域RF(支配領域16に相当)を生成する(S14)。UI120は、ユーザから支配領域RFを元に操作を受け付け、操作情報を領域処理部161に送る。領域処理部161は、UI120からの操作情報を基に、切除領域RF2(切除領域RF17に相当)を生成する(S15)。領域処理部161は、肝臓領域RLから切除領域RF2を削除して残置領域RR(残置領域18に相当)を生成する。
【0060】
切除対象決定部163は、門脈ツリーTP、静脈ツリーTVのうち切除領域RF2に進入する部分について、切除領域RF2内の血管(例えば門脈又は静脈が)を切除するか否かを決定する(S16)。領域処理部161は、門脈ツリーTPから切除対象とされた門脈を削除した門脈ツリーTP2を生成する(S16)。また、静脈ツリーTVから切除対象とされた静脈を削除した静脈ツリーTV2を生成する(S16)。また、門脈領域PRから切除対象とされた門脈を削除した門脈領域RP2を生成する(S16)。また、静脈領域PVから切除対象とされた静脈を削除した静脈領域RV2を生成する(S16)。また、切除箇所のリストCL(強調情報22により結紮切離箇所を表示する場所の一覧)を生成する(S16)。例えば、切除対象とされた門脈12を削除した門脈ツリーTP2の削除された端点のリストと、切除対象とされた静脈14を削除した静脈ツリーTPVの削除された端点のリストと、を特許文献1の[0043]~[0045]の方法でオフセットさせて、切除箇所のリストCLを生成する。
【0061】
画像生成部162は、残置領域RRと、切除対象とされた門脈を削除した門脈領域RP2と、及び切除対象とされた静脈を削除した静脈領域RV2と、及びリストCLに含まれる結紮切離箇所を表示する強調情報22と、をレンダリングしてレンダリング画像を生成する(S17)。表示制御部165は、レンダリング画像をディスプレイ130に表示させる(S17)。なお、画像生成部162が、残置領域RRと、切除対象とされた門脈を削除した門脈領域RP2と、及び切除対象とされた静脈を削除した静脈領域RV2と、をレンダリングしてレンダリング画像を生成し、表示制御部165が、レンダリング画像に、リストCLに含まれる結紮切離箇所を表示する強調情報22を重畳して表示させてもよい。
【0062】
また、処理部160は、複数の領域(例えば残置領域RR、門脈領域RP、及び静脈領域RV2)の可視化(表示)には、参考特許文献3に記載された技術を適用可能である。つまり、2次元の表示面に示される画像において複数の領域が重複する場合でも、各領域が色付けされることによって、ユーザは、複数の領域を区別可能に認識できる。
(参考特許文献3:特開2016-202319号公報)
【0063】
臓器の部分切除手術の際には、腫瘍20の摘出や臓器の区域切除のために臓器を切除するが、臓器の切除面上の管状組織として、切除し結紮切離する管状組織と、切除せずに残存させる管状組織とが存在する。これに対し、医用画像処理装置100は、切除シミュレーションにおいて、臓器の切除領域17内における切除対象の管状組織と切除対象外とを区別し、切除対象外の管状組織を表示させることができる。よって、ユーザは、手術シミュレーションによって、手術計画時に、臓器の外側から実際には視認できない臓器内部の血管が確認可能となる。また、医用画像処理装置100は、臓器の部分切除に伴って血管を切除する際の結紮切離予定箇所も強調表示できる。これにより、ユーザは、手術計画時に、結紮切離する予定の血管を把握し易くなる。
【0064】
次に、本実施形態のバリエーションについて説明する。
【0065】
例えば、画像生成部162により実施されるレンダリングでは、腫瘍20(の領域)、残置領域18、及び血管(の領域)は、それぞれボリュームレンダリングされてもよいし、サーフィスレンダリングされてもよいし、両者の組み合わせてであってもよい。例えば、腫瘍20は、ボリュームレンダリングされてよい。残置領域18は、サーフィスレンダリングされてよい。血管(例えば門脈12又は静脈14)は、ボリュームレンダリングとサーフィスレンダリングとが組み合わされた(混合された)レンダリングが実施されてよい。画像生成部162は、ボリュームデータからマスクを生成することによって各種領域の画像を生成してもよいし、ソリッド又はサーフィス等によって各種領域の画像が生成してもよい。また、画像生成部162は、サーフィルレンダリングとボリュームレンダリングとを混然一体としてレンダリング画像を生成してよい(参考特許文献4参照)。また、画像生成部162は、切除領域17の境界を半透明として、境界を介して切除領域17の内部又は残置領域18の内部の血管走行が確認できるようにしてもよい。また、画像生成部162は、切除領域17の境界の陰影のみを描画して、切除領域17の内部又は残置領域18の内部の血管走行が確認できるようにしてもよい(参考特許文献5参照)。
(参考特許文献4:特開2018-121857号公報)
(参考特許文献5:特開2017-189460号公報)
【0066】
また、表示制御部165は、例えばUI120を介して臓器における各領域の表示と非表示とを切り替え可能であってよい。この場合、表示制御部165は、例えばUI120を介して臓器における各領域の表示と非表示とを切り替える切替情報を取得し、切替情報に基づいて臓器における各領域の表示と非表示とを切り替えよい。
【0067】
また、表示制御部165は、臓器を切除領域17を介して観察する視線方向での例を示したが、視線方向は、例えばUI120を介してユーザの任意のいかなる方向に指定されてもよい。
【0068】
また、腫瘍20を含む臓器の部分切除手術を主に例示したが、切除領域17は、腫瘍20以外の病変を含む領域であってもよい。また、切除領域17は、生体臓器移植のドナーとして用いる健康な領域であってよい。また、UI120が、臓器の切除領域に含まれる各管状組織について、切除対象とするか切除対象外とするかを決定するための決定パラメータを調整するUI(調整UI)を含んでよい。例えば、この調整UIは、切除領域17から収縮領域17sを生成するためのモルフォロジー変換によって収縮させる距離を指定してよい。
【0069】
また、領域処理部161は、管状組織を動脈、門脈12及び静脈14と区別してそれぞれ独立した領域として抽出してよい。また、動脈、門脈12及び静脈14について、それぞれ異なる切除対象とするか切除対象外とするかを決定するための決定パラメータを適用してもよい。また、UI120が、切除対象とするか切除対象外とするかを決定するための決定パラメータを調整するUI(調整UI)は、動脈、門脈12及び静脈14について異なる決定パラメータが設定できてよい。また、切除対象決定部163は、領域処理部161により門脈12及び静脈14と区別してそれぞれ独立した領域として抽出すること自体を切除対象とするか切除対象外とする決定としてよく、単に、動脈及び門脈12を全て切除対象とし、静脈14を切除対象外とすることができる。また、切除対象決定部163は、門脈12は全て切除対象と決定し、静脈14については決定パラメータに基づいて切除対象とするか切除対象外とするかを決定できる。
【0070】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
また、医用画像処理装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えてよい。ポート110、UI120、及びディスプレイ130は、医用画像処理装置100に対して外付けであってもよい。
【0072】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0073】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0074】
また、CT装置200により画像を撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
また、医用画像処理装置100における動作が規定された医用画像処理方法として表現可能である。また、コンピュータに医用画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラムとして表現可能である。
【0076】
(上記実施形態の概要)
上記実施形態の一態様は、組織を可視化する医用画像処理装置100であって、臓器(例えば肝臓10)の可視化を行う医用画像処理装置であって、処理部160を備える。処理部160は、臓器を含むボリュームデータを取得し、臓器に含まれる管状組織を抽出し、臓器において切除対象の領域である切除領域17を指定し、切除領域17に含まれる管状組織を切除するか否かを決定し、臓器における切除領域17を除いた範囲である残置領域18の表示時に、切除領域17内の切除対象の管状組織を非表示とし、切除領域17内の切除対象外の管状組織を表示部(例えばディスプレイ130)に表示する。
【0077】
これにより、医用画像処理装置100は、臓器の部分切除を行う際に、切除対象の管状組織と、切除対象外の(残す)管状組織と、を区別し、表示するか非表示とするかを決定できる。よって、医用画像処理装置100は、例えば臓器の部分切除手術時に有用な情報となる切除対象外の管状組織を可視化でき、正確な手術シミュレーションを行うことができ、ひいては手術時に温存させたい管状組織を誤って切除することを防止できる。よって、医用画像処理装置100は、臓器の部分切除時の状態を臓器の切除領域17内の管状組織の状態を含めて好適に可視化できる。
【0078】
また、管状組織は、動脈、門脈12及び静脈14のうち少なくとも1種類を含んでよい。これにより、例えば肝臓10の部分切除手術を行う際に、医用画像処理装置100は、どの血管(例えば動脈、門脈12又は静脈14)を切除対象とするかを好適に決定できる。よって、ユーザは、切除対象外の門脈12及び静脈14を視認でき、正確な手術シミュレーションを行い易くできる。
【0079】
また、管状組織は、動脈、門脈12及び静脈14のうち少なくとも2種類を含んでよい。そして、処理部は160、管状組織のうちの少なくとも2種類を区別して抽出してよい。これにより、種類に応じて手術時の対応が異なる切除領域17内の管状組織について、手術シミュレーションができる。
【0080】
また、処理部160は、少なくとも2種類の管状組織のうち、1つの種類の管状組織を切除するとし、他の1つの種類の管状組織を切除しないと決定してよい。これにより、管状組織の種類に応じて簡単に切除領域17内の管状組織の表示と非表示とを決定できる。
【0081】
また、処理部160は、切除領域17に含まれる腫瘍20の領域を表示してよい。これにより、医用画像処理装置100は、臓器の外部から視認困難な腫瘍20の様子を確認できる。また、ユーザは、切除領域17内の切除対象外の管状組織について、腫瘍20との位置関係等を容易に把握できる。
【0082】
また、処理部160は、切除対象の管状組織の切除箇所を強調して表示してよい。例えば、処理部160は、切除対象の管状組織の切除箇所を強調情報22により強調して表示できる。よって、ユーザは、強調表示を確認することで、例えば、臓器の切除領域17の周端部と切除箇所との位置関係を容易に把握でき、また、必要に応じて行われる切除箇所での結紮切離の処置を好適に補助できる。
【0083】
また、処理部160は、臓器、管状組織のうち少なくとも一つに対してサーフィスレンダリング又はボリュームレンダリングを行ってレンダリング画像を生成し、レンダリング画像を表示してよい。例えば、腫瘍20は、ボリュームレンダリングされてよい。残置領域18は、サーフィスレンダリングされてよい。血管(例えば門脈12又は静脈14)は、ボリュームレンダリングとサーフィスレンダリングとが組み合わされた(混合された)レンダリングが実施されてよい。これにより、医用画像処理装置100は、表示対象の各部位の観察に適した表示を実施でき、例えば、腫瘍の内部を詳細に把握し易くでき、残置領域18の表面を確認し易くなり、血管の内部と外周の双方をバランス良く確認し易くできる。
【0084】
上記実施形態の一態様は、臓器の可視化を行う医用画像処理方法であって、臓器を含むボリュームデータを取得するステップと、臓器に含まれる管状組織を抽出するステップと、臓器において切除対象の領域である切除領域17を指定するステップと、切除領域17に含まれる管状組織を切除するか否かを決定するステップと、臓器における切除領域17を除いた範囲である残置領域の表示時に、切除領域17内の切除対象の管状組織を非表示とし、切除領域内の切除対象外の管状組織を表示部に表示するするステップと、を有する医用画像処理方法でよい。
【0085】
本実施形態の一態様は、上記の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムでよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、臓器の部分切除時の状態を臓器の切除領域内の管状組織の状態を含めて好適に可視化できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0087】
10 肝臓
11 表面
12 門脈
12a 責任血管
12c 切除対象の門脈
14 静脈
14c 切除対象の静脈
14d 切除対象外の静脈
16 支配領域
17 切除領域
17s 収縮領域
18 残置領域
19 切除時に切り込みが入れられる肝臓表面上の線
20 腫瘍
22,22a、22b 強調情報
100 医用画像処理装置
110 ポート
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 画像生成部
164 強調情報生成部
165 表示制御部
200 CT装置
α,β 視線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11