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特許7553383異常検出装置、水門システムおよび異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】異常検出装置、水門システムおよび異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
E02B7/20 Z
E02B7/20 104
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021031818
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133020
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】林 健人
(72)【発明者】
【氏名】山下 遼
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-044650(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0079091(KR,A)
【文献】特開平10-082035(JP,A)
【文献】特開2018-028246(JP,A)
【文献】特開昭61-258176(JP,A)
【文献】特開平11-131455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0225277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
8/02-8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水門設備の異常を検出する異常検出装置であって、
水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する荷重測定部と、
前記電動機の電流を測定する電流測定部と、
前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する判定部と、
を備え
前記判定部が、
前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する第1異常判定部と、
前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する第2異常判定部と、
を備え、
前記第2異常判定部が、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲を取得し、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
水門設備の異常を検出する異常検出装置であって、
水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する荷重測定部と、
前記電動機の電流を測定する電流測定部と、
前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体が設けられており、
前記荷重測定部が、前記左岸側の前記連結媒体、および、前記右岸側の前記連結媒体に対して個別に前記荷重を測定し、
前記判定部が、前記左岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値と、前記右岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値とを用いて、前記扉体の異常状態の種類を特定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項3】
請求項に記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、
前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する第1異常判定部と、
前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する第2異常判定部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項4】
請求項に記載の異常検出装置であって、
前記第2異常判定部が、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲を取得し、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無を判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記開閉装置における複数の部品の振動をそれぞれ測定する複数の振動計をさらに備え、
前記判定部が、前記複数の振動計の測定値を用いて、前記開閉装置の異常部品を特定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、
前記判定部が、前記電流または前記荷重について、推定値からの測定値の乖離度に基づいて、突発異常と劣化異常とを区別して判定することを特徴とする異常検出装置。
【請求項7】
水門システムであって、
電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結される水門設備と、
前記水門設備の異常を検出する、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の異常検出装置と、
を備えることを特徴とする水門システム。
【請求項8】
水門設備の異常を検出する異常検出方法であって、
a)水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する工程と、
b)前記a)工程に並行して前記電動機の電流を測定する工程と、
c)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する工程と、
を備え
前記c)工程が、
c1)前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する工程と、
c2)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する工程と、
を備え、
前記c2)工程において、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲が取得され、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無が判定されることを特徴とする異常検出方法。
【請求項9】
水門設備の異常を検出する異常検出方法であって、
a)水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する工程と、
b)前記a)工程に並行して前記電動機の電流を測定する工程と、
c)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する工程と、
を備え、
前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体が設けられており、
前記a)工程において、前記左岸側の前記連結媒体、および、前記右岸側の前記連結媒体に対して個別に前記荷重が測定され、
前記c)工程において、前記左岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値と、前記右岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値とを用いて、前記扉体の異常状態の種類が特定されることを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置、水門システムおよび異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水門設備では、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結される。例えば、ワイヤロープウィンチ式の開閉装置では、電動機の回転をドラムに伝達させ、ワイヤロープを巻き上げ、または、巻き下げることにより、扉体の開閉が行われる。特許文献1では、水門設備の運転時において、扉体を開閉する電動機の電流値と、水路の水位の変化と、扉体の開度変化とを連続的に記録する装置が開示されている。当該装置では、電流値、水位および開度を記録しておくことにより、開閉機構の経年劣化、故障の原因等を調べる場合の情報として活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-131455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、常に稼動できることが求められる水門設備では、開閉装置の異常の発生を精度よく検出することが重要である。したがって、開閉装置の異常の有無を精度よく判定する技術が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、開閉装置の異常の有無を精度よく判定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、水門設備の異常を検出する異常検出装置であって、水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する荷重測定部と、前記電動機の電流を測定する電流測定部と、前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する判定部とを備え、前記判定部が、前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する第1異常判定部と、前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する第2異常判定部とを備え、前記第2異常判定部が、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲を取得し、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無を判定する。
請求項2に記載の発明は、水門設備の異常を検出する異常検出装置であって、水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する荷重測定部と、前記電動機の電流を測定する電流測定部と、前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する判定部とを備え、前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体が設けられており、前記荷重測定部が、前記左岸側の前記連結媒体、および、前記右岸側の前記連結媒体に対して個別に前記荷重を測定し、前記判定部が、前記左岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値と、前記右岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値とを用いて、前記扉体の異常状態の種類を特定する。
【0007】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する第1異常判定部と、前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する第2異常判定部とを備える。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の異常検出装置であって、前記第2異常判定部が、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲を取得し、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無を判定する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記開閉装置における複数の部品の振動をそれぞれ測定する複数の振動計をさらに備え、前記判定部が、前記複数の振動計の測定値を用いて、前記開閉装置の異常部品を特定する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の異常検出装置であって、前記判定部が、前記電流または前記荷重について、推定値からの測定値の乖離度に基づいて、突発異常と劣化異常とを区別して判定する。
【0012】
請求項7に記載の発明は、水門システムであって、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結される水門設備と、前記水門設備の異常を検出する、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の異常検出装置とを備える。
【0013】
請求項8に記載の発明は、水門設備の異常を検出する異常検出方法であって、a)水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する工程と、b)前記a)工程に並行して前記電動機の電流を測定する工程と、c)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する工程とを備え、前記c)工程が、c1)前記荷重の推定正常範囲と前記荷重の測定値とを比較することにより、前記扉体の異常の有無を判定する工程と、c2)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、前記開閉装置の異常の有無を判定する工程とを備え、前記c2)工程において、前記荷重の測定値を用いて前記電流の推定正常範囲が取得され、前記電流の推定正常範囲と前記電流の測定値とを比較することにより、前記開閉装置の異常の有無が判定される。
請求項9に記載の発明は、水門設備の異常を検出する異常検出方法であって、a)水門設備において、電動機を有する開閉装置が連結媒体を介して扉体に連結されており、前記連結媒体にかかる荷重を測定する工程と、b)前記a)工程に並行して前記電動機の電流を測定する工程と、c)前記荷重の測定値と前記電流の測定値とに基づいて、少なくとも前記開閉装置の異常の有無を判定する工程とを備え、前記扉体において左岸側および右岸側のそれぞれに連結媒体が設けられており、前記a)工程において、前記左岸側の前記連結媒体、および、前記右岸側の前記連結媒体に対して個別に前記荷重が測定され、前記c)工程において、前記左岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値と、前記右岸側の前記連結媒体の前記荷重の測定値とを用いて、前記扉体の異常状態の種類が特定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開閉装置の異常の有無を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】水門システムの構成を示す図である。
図2】異常検出装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】水門設備の異常を検出する処理の流れを示す図である。
図4】荷重および電流の推定正常範囲を示す図である。
図5】荷重の判定結果および電流の判定結果と、異常の要因との関係を示す図である。
図6】荷重および電流の推定正常範囲を示す図である。
図7】荷重の判定結果および電流の判定結果と、開閉装置の異常の有無との関係を示す図である。
図8】荷重の判定結果および電流の判定結果と、開閉装置の異常の有無との関係を示す図である。
図9】測定値/正常値比と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る水門システム1の構成を示す図である。水門システム1は、水門設備10と、コンピュータ4とを備える。本実施の形態では、コンピュータ4は、水門設備10の近傍に設けられる。コンピュータ4は、水門設備10とは異なる場所に設けられてもよく、この場合、水門設備10の各種測定器(後述の開度計12、水位計13、荷重測定部46、電流測定部47、振動計48等)は、通信装置等に接続され、インターネット等のネットワークを介して当該コンピュータ4に接続される。当該コンピュータ4は、クラウドサービスにより提供されるコンピュータであってもよい。
【0017】
水門設備10は、扉体2と、開閉装置3と、2本の金属製のワイヤロープ11とを備える。扉体2は、水路を横断するように設けられる略板状であり、例えば金属により形成される。扉体2は、水路における水の流通を調整するためのものである。扉体2において、図1中の左右方向を向く両端面には、複数のローラ22が設けられる。複数のローラ22は、水路の両側に設けられるガイドレール23に係合する。これにより、扉体2が図1中の上下方向に移動可能に支持される。扉体2の上面には、滑車(シーブ)21が設けられる。滑車21は、扉体2と共に昇降する動滑車である。図1の例では、複数の滑車21が扉体2に取り付けられる。扉体2の構造は任意に変更されてよく、例えば、扉体2が上段扉および下段扉を有し、両者が連動して、または、個別に昇降するものであってもよい。
【0018】
開閉装置3は、例えば、ワイヤロープウィンチ式であり、扉体2を昇降させて扉体2の開閉(水路の開閉)を行う。開閉装置3は、駆動部31を備える。駆動部31は、電動機311と、ブレーキ装置312と、減速機313と、シャフト314と、2つのピニオン315と、2つのドラム316とを備える。電動機311は、ブレーキ装置312および減速機313を介してシャフト314を回転させる。電動機311では、シャフト314の回転方向を正転および逆転で切り替えることが可能である。2つのピニオン315は、シャフト314に設けられる。2つのドラム316には、ドラムギア317が設けられ、2つのピニオン315とそれぞれ歯合する。シャフト314が回転することにより、2つのドラム316が正転または逆転する。
【0019】
各ドラム316には、連結媒体であるワイヤロープ11の一端が固定されるとともに、ワイヤロープ11の一部が巻かれている。各ワイヤロープ11においてドラム316に巻かれていない部分は、扉体2に設けられた2つの滑車21に掛けられるとともに、当該2つの滑車21の間にて滑車24に掛けられる。ワイヤロープ11の他端は、後述の荷重検出部461により保持される。滑車24および荷重検出部461は堤体に対して固定される。図1の例では、扉体2は、吊り下げられた状態でワイヤロープ11により支持される。なお、各ワイヤロープ11に対する滑車21の個数は、1個または3個以上であってもよい。
【0020】
開閉装置3では、ドラム316が正転することにより、ワイヤロープ11がドラム316に巻き取られ、扉体2が上昇する。ドラム316が逆転することにより、ワイヤロープ11がドラム316から送り出され、扉体2が下降する。このようにして、水路において扉体2が開閉される。扉体2の開閉荷重は、ワイヤロープ11により支持される。なお、ドラム316の正転および逆転は、便宜的なものであり、ワイヤロープ11の巻き取りがドラム316の逆転と捉えられ、ワイヤロープ11の送り出しがドラム316の正転と捉えられてもよい。
【0021】
本実施の形態では、水路の幅方向における扉体2の両側、すなわち、左岸側および右岸側のそれぞれに、ワイヤロープ11が設けられ、2本のワイヤロープ11により扉体2が支持される。水門設備10の設計によっては、ワイヤロープ11の個数は、1本または3本以上であってもよい。また、ワイヤロープ11以外のロープや、チェーン等の他の索状部材が、連結媒体として用いられてもよい。
【0022】
水門設備10は、開度計12と、水位計13とをさらに備える。開度計12は、例えばシャフト314の回転量を検出することにより、扉体2の開度を測定する。図1の例では、扉体2の開度は、所定位置を基準とする扉体2の高さ(上下方向の位置)である。本実施の形態では、開度の基準位置(所定位置)は、水底であり、開度は、水底から扉体2の下端までの高さである。開度の基準位置は、水底以外であってもよい。開度計12は、扉体2に別途取り付けられたワイヤを利用して扉体2の開度を検出するものや、磁気センサ、リードスイッチまたは圧力センサ等を利用して扉体2の開度を検出するものであってもよい。
【0023】
水位計13は、例えばフロート式水位計であり、水面に浮かべられたフロートの位置を検出することにより、水位を測定する。図1の例では、水位は、所定位置を基準とする水面の高さである。本実施の形態では、水位の基準位置(所定位置)は、水底であり、水位は、水底から水面までの高さである。水位計13は、フロートを用いることなく水位を測定する、音波式、超音波式または圧力式水位計等であってもよい。
【0024】
図2は、異常検出装置40の機能構成を示すブロック図である。異常検出装置40は、水門設備10において異常を検出するものであり、判定部41と、荷重測定部46と、電流測定部47と、複数の振動計48とを備える。判定部41は、第1異常判定部411と、第2異常判定部412とを備える。第1異常判定部411は、扉体2の異常の有無を判定する。第2異常判定部412は、開閉装置3の異常の有無を判定する。判定部41の機能は、コンピュータ4のCPU等が、所定のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)実現される。判定部41の機能は専用の電気回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気回路が用いられてもよい。
【0025】
荷重測定部46は、各ワイヤロープ11に接続される既述の荷重検出部461を有する。図1の例では、荷重検出部461の個数は2個であるが、ワイヤロープ11の個数に合わせて変更されてよい。各荷重検出部461は、例えばロードセル等を有し、ワイヤロープ11にかかる荷重(ここでは、張力)を測定する。荷重検出部461は、ロードセル以外のセンサを利用して荷重を測定するものであってもよい。電流測定部47は、電動機311に流れる電流を測定する。電流測定部47は、市販の電流計であってよい。複数の振動計48は、水門設備10における複数の構成部品に取り付けられる。図1の例では、複数の振動計48は、開閉装置3における電動機311、ブレーキ装置312、減速機313、および、2つのドラム316、並びに、扉体2にそれぞれ取り付けられる。扉体2では、例えば、水が流れる方向の下流側を向く面に設けられた桁に、振動計48が取り付けられる。図2では、2個の振動計48のみをブロックにて示している。
【0026】
荷重測定部46、電流測定部47および複数の振動計48は、判定部41に電気的に接続され、測定値が判定部41に入力される。図2では、開度計12および水位計13、並びに、水門設備10に設けられた温度計14もブロックにて示す。開度計12、水位計13および温度計14も、判定部41に電気的に接続され、測定値が判定部41に入力される。既述のように、これらの構成は、ネットワーク等を介して判定部41に接続されてもよい。
【0027】
図3は、異常検出装置40が水門設備10の異常を検出する処理の流れを示す図である。図1に示す水門システム1では、例えば、扉体2の移動時、すなわち、扉体2の上昇または下降を行う際に、各荷重検出部461によりワイヤロープ11にかかる荷重の測定値が取得される(ステップS11)。後述するように、扉体2の上昇または下降の開始から終了までの期間(例えば、数分)において、ワイヤロープ11の荷重は繰り返し測定される。2つの荷重検出部461による荷重の測定値は、判定部41に入力される。また、開度計12により扉体2の開度が取得され、水位計13により水位が取得される。扉体2の開度および水位は、判定部41に入力される。さらに、判定部41には、水門設備10の周囲の気温が、温度計14から入力される。当該気温は、外部の気象データ提供機関等から得られる値であってもよい。
【0028】
第1異常判定部411では、例えば、開度、水位および気温の集合が、特徴量群(特徴ベクトル)として扱われる。特徴量群には、他の特徴量が含められてもよい。例えば、扉体2の上昇または下降の開始から終了までの時間である連続運転時間、扉体2に取り付けられた振動計48の測定値、扉体2の上昇および下降を区別する値等が、特徴量群に含められてもよい。扉体2が内部に水が浸入する構造である場合、連続運転時間が、内部の水を含む扉体2の重量に影響することがある。また、特徴量群から一部の特徴量(例えば、気温)が除外されてもよい。
【0029】
異常検出装置40では、学習済みモデルである推定器が、後述の機械学習により予め生成されて、第1異常判定部411に導入されている。当該推定器では、特徴量群を入力することにより、ワイヤロープ11にかかる荷重の正常値が出力される。すなわち、特徴量群に基づいて、ワイヤロープ11の荷重の正常値が推定される(ステップS12)。荷重の正常値は、扉体2(滑車21,24、ローラ22およびガイドレール23を含む。以下同様である。)において異常がないと仮定した場合に、開度、水位および気温等の現在の条件に対して推定されるワイヤロープ11の荷重の値である。推定器は、各ワイヤロープ11(荷重検出部461)に対して個別に設けられることが好ましい。
【0030】
ここで、推定器の生成について説明する。推定器(回帰器)は、決定木やニューラルネットワーク等を利用するものである。推定器の生成とは、推定器が含むパラメータに値を付与したり、推定器の構造を決定すること等により、推定器を生成することを意味する。推定器の生成は、水門システム1のコンピュータ4により行われてよく、外部の他のコンピュータにより行われてもよい。
【0031】
水門システム1では、過去の運転において、各荷重検出部461により取得された荷重の測定値が、日付および時刻に対応付けてコンピュータ4に記憶されている。また、開度計12により測定される扉体2の開度、水位計13により測定される水位、並びに、水門設備10の周囲の気温も同様である。さらに、水門設備10において異常が発生していた期間についても記録されている。
【0032】
推定器の生成では、異常が発生していない時点、すなわち、正常時である複数の時点における複数の教師データが準備される。各教師データは、正常時である一の時点における荷重検出部461による荷重の測定値と、当該時点における特徴量群との組合せである。特徴量群は、上記ステップS12において利用する特徴量群と同様であり、当該時点における開度、水位および気温を含む。
【0033】
複数の教師データが準備されると、複数の教師データにおける特徴量群の入力に対する推定器の出力と、複数の教師データが示す荷重の測定値とがほぼ同じになるように学習が行われ、学習済みモデルである推定器が生成される。推定器の生成は、周知の手法により行われてよく、各教師データの特徴量群の入力に対して、当該教師データが示す荷重の測定値に近似した値が出力されるように、推定器が含むパラメータの値や、推定器の構造が決定される。推定器(実際には、パラメータの値や、推定器の構造を示す情報)は、第1異常判定部411に転送されて導入される。既述のように、第1異常判定部411では、推定器を用いて荷重の正常値が推定される。
【0034】
好ましい処理例では、荷重の正常値の推定において、開度、水位および気温が用いられるが、荷重の正常値を精度よく推定するという観点では、少なくとも開度および水位を用いて、荷重の正常値を推定することが好ましい。異常検出装置40の設計によっては、正常時における上記特徴量群を説明変数とし、荷重の測定値(正常値)を目的変数とする統計的な回帰分析が行われ、得られた回帰式を用いて、特徴量群から荷重の正常値が推定されてもよい。荷重の正常値は、様々な統計的手法または機械学習的手法を用いて推定されてよい。これらは、後述の他の種類の正常値の推定において同様である。
【0035】
第1異常判定部411では、ステップS11において各荷重検出部461により取得された荷重の測定値と、ステップS12において当該荷重検出部461に対して推定された荷重の正常値とが比較される。例えば、荷重の正常値に対して所定値を足した値を上限とし、所定値を引いた値を下限として、推定正常範囲が設定される。そして、荷重の測定値が推定正常範囲に対して過大である、または、過小である場合には(ステップS13)、扉体2に異常が発生していると判定される(ステップS14)。この場合、例えば、コンピュータ4のディスプレイ等に、扉体2に異常が発生している旨を示す表示が行われる。異常の発生を示す報知は、ライトの点灯や、ブザーの鳴動、電子メール等を用いた情報通信端末への通知等により行われてもよい。上記所定値の設定方法は、例えば、正常時における荷重検出部461による荷重の測定値の標準偏差に基づいて定めるようにしてもよい。標準偏差をσとしたときに、2σや3σを所定値とすることが好ましい。後述の他の種類の異常の判定において同様である。第1異常判定部411における異常の判定は、任意の統計的手法が用いられてよい。
【0036】
一方、荷重の測定値が推定正常範囲内である場合には(ステップS13)、扉体2に異常が発生していないと判定される。この場合、扉体2の異常の発生を示す報知は行われない。このようにして、第1異常判定部411では、左岸側および右岸側のそれぞれのワイヤロープ11における荷重に対して、過小、正常または過大を示す判定結果が取得される。換言すると、左岸側および右岸側のそれぞれのワイヤロープ11における荷重の測定値に基づいて、扉体2における異常の有無が判定される。後述するように、好ましい第1異常判定部411では、扉体2の異常状態の種類も特定される。
【0037】
電流測定部47では、ステップS11における荷重の測定に並行して、電動機311に流れる電流の測定値が取得される(ステップS15)。荷重の測定値と同様に、扉体2の上昇または下降の開始から終了までの期間において、電動機311の電流は繰り返し測定される。電流の測定値は、判定部41に入力される。
【0038】
第2異常判定部412では、開度、水位および気温に加えて、荷重の測定値が、特徴量群(特徴ベクトル)に含められる。第2異常判定部412における特徴量群は、第1異常判定部411における特徴量群に、荷重の測定値を追加したものである。特徴量群に含められる荷重の測定値は、左岸側および右岸側の両方の荷重の測定値、両方の荷重の測定値の平均値、または、任意の一方の荷重の測定値等のいずれであってもよい。第2異常判定部412における特徴量群には、第1異常判定部411における荷重の判定結果(過小、正常または過大)が含められてもよい。第1異常判定部411における特徴量群と同様に、第2異常判定部412における特徴量群には、他の特徴量が含められてもよい。
【0039】
また、第2異常判定部412では、電動機311の電流の正常値を推定する推定器が、機械学習により予め生成されて導入されている。当該推定器に、第2異常判定部412における特徴量群を入力することにより、電動機311を流れる電流の正常値が出力される。すなわち、特徴量群に基づいて、電動機311の電流の正常値が推定される(ステップS16)。電流の正常値は、少なくとも開閉装置3において異常がないと仮定した場合に、開度、水位、気温および荷重等の現在の条件に対して推定される電動機311の電流の値である。第2異常判定部412にて利用される推定器の生成では、正常時である一の時点における電流測定部47による電流の測定値と、当該時点における特徴量群(開度、水位、気温および荷重)との組合せが、教師データとして用いられる。その他は、第1異常判定部411にて利用される推定器の生成と同様である。
【0040】
第2異常判定部412では、ステップS14において電流測定部47により取得された電流の測定値と、ステップS15において推定された電流の正常値とが比較される。例えば、電流の正常値に対して所定値を足した値を上限とし、所定値を引いた値を下限として、推定正常範囲が設定され、電流の測定値が推定正常範囲と比較される。そして、電流の測定値が推定正常範囲に対して過大である、または、過小である場合には(ステップS17)、開閉装置3に異常が発生していると判定される(ステップS18)。この場合、扉体2に異常が発生している場合と同様に、異常の発生を示す報知が行われる。一方、電流の測定値が推定正常範囲内である場合には(ステップS17)、開閉装置3に異常が発生していないと判定される。この場合、開閉装置3の異常の発生を示す報知は行われない。
【0041】
ここで、荷重の測定値と、電流の推定正常範囲(電流の正常値)との関係について説明する。図4は、荷重および電流の推定正常範囲を示す図である。図4では、各グラフの縦軸が、荷重または電流の大きさを示す(後述の図6において同様)。図4中の矢印A1の左側では、扉体2および開閉装置3が正常である場合における荷重の測定値および推定正常範囲(図中に「正常」と示す範囲)と、電流の測定値および推定正常範囲(図中に「正常」と示す範囲)とを示す。図4中の矢印A1の右側では、扉体2においてのみ異常が発生している場合における荷重の測定値および推定正常範囲と、電流の測定値および推定正常範囲とを示す。
【0042】
電動機311の電流は、ワイヤロープ11の荷重に追従して変化するため、図4中の矢印A1の右側のように、扉体2において異常が発生して荷重の測定値が過大になると、開閉装置3が正常であっても電流の測定値が大きくなる。しかしながら、電流の測定値の増大は、扉体2の異常による荷重の増大に起因しており、開閉装置3に異常がある訳ではない。したがって、第2異常判定部412では、図4中の矢印A1の右側のように、荷重の測定値が過大になる場合に、電流の推定正常範囲が、扉体2および開閉装置3が正常である場合(図4中の矢印A1の左側)における推定正常範囲よりも高くなる(上側にシフトする)。同様に、扉体2において異常が発生して荷重の測定値が過小になる場合には、電流の推定正常範囲が、扉体2および開閉装置3が正常である場合における推定正常範囲よりも低くなる(下側にシフトする)。
【0043】
このように、第2異常判定部412では、電流の推定正常範囲が荷重の測定値に連動しており、電流の測定値が推定正常範囲よりも大きい場合には、電流の測定値が過大であり、開閉装置3に異常が発生していると判定される。また、電流の測定値が推定正常範囲よりも小さい場合には、電流の測定値が過小であり、開閉装置3に異常が発生していると判定される。電流の測定値が推定正常範囲内である場合には、開閉装置3に異常が発生していないと判定される。以上のように、第2異常判定部412では、荷重の測定値を用いて電流の推定正常範囲が取得され、電流の推定正常範囲と電流の測定値とを比較することにより、開閉装置3における異常の有無が判定される。
【0044】
図5は、第1異常判定部411における荷重の判定結果(過小、正常または過大)、および、第2異常判定部412における電流の判定結果(過小、正常または過大)と、異常の要因との関係を示す図である。図5の例では、荷重の判定結果に関わらず、電流の判定結果が過小である場合には、開閉装置3の異常の要因として、電動機311のトルクを伝達する機構の機械効率の向上が考えられる。当該機械効率は、歯車の噛み合いにおけるグリースの塗り具合等の影響を受ける。例えば、気温の変動や、グリースの塗り直し等のメンテナンスにより機械効率が向上することが考えられる。この異常は、開閉装置3においては好ましい状態であるが、分類上は、異常とされる。電流の判定結果が正常である場合には、開閉装置3に異常が発生していない。電流の判定結果が過大である場合には、開閉装置3の異常の要因として、減速機313のギヤのかみ合い異常や、開閉装置3の各構成部品において用いられる油脂の劣化等が考えられる。異常の要因は、オペレータ等に報知されてもよい(以下同様)。扉体2側の異常の要因については、図7と同じであり、後述する。
【0045】
好ましい第2異常判定部412では、電流の判定結果が過大である場合に、開閉装置3に設けられた複数の振動計48により振動の測定値が取得される。振動の測定値は、加速度、速度、振幅等のいずれであってもよい。図1の例では、開閉装置3における電動機311、ブレーキ装置312、減速機313、および、ドラム316のそれぞれに、振動計48が取り付けられている。第2異常判定部412では、各振動計48に対して、推定正常範囲が設定されており、当該振動計48の測定値が推定正常範囲と比較される。当該推定正常範囲は、例えば、荷重および電流の推定正常範囲と同様に、推定器を用いて取得されてよい。
【0046】
当該振動計48の測定値が推定正常範囲よりも大きい場合には、当該振動計48が取り付けられた構成部品に異常が発生していると判定される。当該振動計48の測定値が推定正常範囲よりも小さい、または、推定正常範囲内である場合には、当該振動計48が取り付けられた構成部品に異常が発生していないと判定される。異常が発生していると判定された構成部品は、異常部品としてオペレータ等に報知される。なお、開閉装置3に取り付けられた全ての振動計48の測定値が、推定正常範囲よりも大きい場合等には、開閉装置3の全体に異常が発生していると判定される。振動計48の測定値が推定正常範囲よりも小さい場合に、異常と判定されてもよい。以上のように、第2異常判定部412では、複数の振動計48の測定値を用いて、開閉装置3の異常部品が特定される(ステップS19)。
【0047】
判定部41では、荷重および電流以外の測定値を用いて水門設備10における異常の有無が判定されてもよい(ステップS20)。例えば、電流の判定結果が過大ではない場合に、ステップS19と同様にして、複数の振動計48の測定値が推定正常範囲と比較される。当該複数の振動計48には、扉体2に取り付けられた振動計48も含まれる。この場合も、振動計48の測定値が推定正常範囲よりも大きい場合には、当該振動計48が取り付けられた構成部品に異常が発生していると判定される。異常検出装置40では、扉体2の上昇または下降の開始から終了までの間、上記ステップS11~S20の処理が繰り返し行われる(ステップS21)。なお、上記ステップS11~S20の工程は、運転中連続して行われなくともよく、各運転に1度のみ(運転完了時など)行われてもよい。この場合には、運転中の測定値の平均値、最大値、最小値などの代表値を用いて処理を行ってもよい。
【0048】
次に、第2異常判定部412の他の処理例について説明する。当該他の処理例では、荷重の測定値ではなく、荷重の正常値を用いて、電流の推定正常範囲が取得される。具体的には、開度、水位および気温に加えて、ステップS12において推定された荷重の正常値が、特徴量群(特徴ベクトル)に含められる。特徴量群に含められる荷重の正常値は、左岸側および右岸側の両方の荷重の正常値、両方の荷重の正常値の平均値、任意の一方の荷重の正常値等のいずれであってもよい。第2異常判定部412では、当該特徴量群を推定器に入力することにより、電動機311を流れる電流の正常値が出力される(ステップS16)。電流の推定正常範囲の設定は、上述の例と同様である。
【0049】
図6は、荷重および電流の推定正常範囲を示す図である。図6中の矢印A2の左側では、扉体2および開閉装置3が正常である場合における荷重の測定値および推定正常範囲(図中に「正常」と示す範囲)と、電流の測定値および推定正常範囲(図中に「正常」と示す範囲)とを示す。図6中の矢印A2の右側では、扉体2においてのみ異常が発生している場合における荷重の測定値および推定正常範囲と、電流の測定値および推定正常範囲とを示す。
【0050】
既述のように、本処理例では、荷重の測定値ではなく、ステップS12において推定された荷重の正常値に基づいて、電流の正常値が推定される。したがって、電流の推定正常範囲は、扉体2および開閉装置3の双方において異常がないと仮定した場合に、開度、水位および気温等の条件に対して推定される電動機311の電流の範囲となる。一方、既述のように、電動機311の電流は、ワイヤロープ11の荷重に追従して変化する。したがって、図6中の矢印A2の右側のように、扉体2において異常が発生して荷重の測定値が過大になると、開閉装置3が正常であっても電流の測定値が推定正常範囲よりも大きくなる。同様に、扉体2において異常が発生して荷重の測定値が過小になる場合には、開閉装置3が正常であっても電流の測定値が推定正常範囲よりも小さくなる。よって、第2異常判定部412では、第1異常判定部411における荷重の判定結果と、第2異常判定部412における電流の判定結果とを用いて、開閉装置3における異常の有無が判定される(ステップS17,S18)。
【0051】
図7は、荷重の判定結果および電流の判定結果と、開閉装置3の異常の有無(および、異常の要因)との関係を示す図である。
【0052】
(荷重が過小かつ電流が過小の場合)
図7の例では、荷重の判定結果が過小である場合に、電流の判定結果が過小であるときには、開閉装置3に異常が発生していないと判定される。詳細には、荷重が過小であるということは、扉体2が軽くなっており、鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している。これは、流木等への乗上げやローラ22の下部への流木等の噛込みが要因として考えられる。鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が小さくなるため、電動機311の電流値は小さくなる。扉体2側に要因があるだけで、荷重および電流共に過小となるため、開閉装置3は異常なしであると考えられる。
【0053】
(荷重が正常かつ電流が過小の場合)
荷重の判定結果が正常である場合に、電流の判定結果が過小であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が正常であるということは、扉体2が異常なしであると考えられる。荷重が正常(負荷が正常)であるにも関わらず電流が過小であるということは、電動機311のトルクを伝達する機構の機械効率向上が、その要因として考えられる。既述のように、この場合も、分類上は、開閉装置3の異常とされる。
【0054】
(荷重が過大かつ電流が過小の場合)
荷重の判定結果が過大である場合に、電流の判定結果が過小であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が過大であるということは、扉体2が重くなっており、鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している。これは、扉体2の重量増加やローラ22の上部への流木等の噛込み、ローラ22の回転不良による抵抗増加が要因として考えられる。そして、鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が大きくなるため、通常、電動機311の電流値は大きくなるはずである。それにも関わらず電流が過小であるということは、荷重過大による電流の増加量以上の電流減少要因があるということであり、電動機311のトルクを伝達する機構の機械効率が大きく向上しているか、センサ(荷重検出部461、電流測定部47等)の異常が、その要因として考えられる。
【0055】
(荷重が過小かつ電流が正常の場合)
荷重の判定結果が過小である場合に、電流の判定結果が正常であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が過小であるということは、扉体2が軽くなっており、鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している。これは、流木等への乗上げやローラ22の下部への流木等の噛込みが要因として考えられる。鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が小さくなるため、電動機311の電流値は小さくなるはずである。それにも関わらず電流が正常であるということは、電動機311のトルクを伝達する減速機ギヤのかみ合い異常や油脂劣化が、その要因として考えられる。
【0056】
(荷重が正常かつ電流が正常の場合)
荷重の判定結果が正常である場合に、電流の判定結果が正常であるときには、開閉装置3に異常が発生していないと判定される。詳細には、荷重が正常であるということは、扉体2は異常なしであると考えられる。荷重が正常(すなわち、負荷も正常)であり、電流が正常であるということは開閉装置3も異常なしであると考えられる。
【0057】
(荷重が過大かつ電流が正常の場合)
荷重の判定結果が過大である場合に、電流の判定結果が正常であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が過大であるということは、扉体2が重くなっており、鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している。これは、扉体2の重量増加やローラ22の上部への流木等の噛込み、ローラ22の回転不良による抵抗増加が要因として考えられる。そして、鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が大きくなるため、電動機311の電流値は大きくなるはずである。それにも関わらず電流が正常であるということは、電動機311のトルクを伝達する機構の機械効率向上が、その要因として考えられる。
【0058】
(荷重が過小かつ電流が過大の場合)
荷重の判定結果が過小である場合に、電流の判定結果が過大であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が過小であるということは、扉体2が軽くなっており、鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している。これは、流木等への乗上げやローラ22の下部への流木等の噛込みが要因として考えられる。鉛直上向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が小さくなるため、電動機311の電流値は小さくなるはずである。それにも関わらず電流が過大であるということは、荷重過小による電流減少量以上の電流増加要因があるということであり、電動機311のトルクを伝達する減速機ギヤのかみ合い異常や油脂劣化、センサ異常が、その要因として考えられる。
【0059】
(荷重が正常かつ電流が過大の場合)
荷重の判定結果が正常である場合に、電流の判定結果が過大であるときには、開閉装置3に異常が発生していると判定される。詳細には、荷重が正常であるということは、扉体2は異常なしであると考えられる。荷重が正常(すなわち、負荷も正常)であるにも関わらず電流が過大であるということは、電動機311のトルクを伝達する減速機ギヤのかみ合い異常や油脂劣化が、その要因として考えられる。
【0060】
(荷重が過大かつ電流が過大の場合)
荷重の判定結果が過大である場合に、電流の判定結果が過大であるときには、開閉装置3に異常が発生していないと判定される。詳細には、荷重が過大であるということは、扉体2が重くなっており、鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している。これは、扉体2の重量増加やローラ22の上部への流木等の噛込み、ローラ22の回転不良による抵抗増加が要因として考えられる。鉛直下向きの荷重が扉体2に作用している場合、負荷が大きくなるため、電動機311の電流値は大きくなる。扉体2側に要因があるだけで、荷重および電流共に過大となるため、開閉装置3は異常なしであると考えられる。
【0061】
第2異常判定部412では、荷重および電流の判定結果において、過小および過大のそれぞれに対して程度に応じた複数の区分が設定されてもよい。図8の例では、過小が、推定正常範囲近傍の範囲、および、推定正常範囲から離れた範囲に区分され、それぞれ「75%」と「50%」と記している。同様に、過大が、推定正常範囲近傍の範囲、および、推定正常範囲から離れた範囲に区分され、それぞれ「125%」と「150%」と記している。図8中の「50%」、「75%」、「125%」および「150%」は、説明の便宜上の表記に過ぎず、各区分の具体的な範囲は適宜決定されてよい。
【0062】
図8を利用する場合においても、第2異常判定部412では、第1異常判定部411における荷重の判定結果と、第2異常判定部412における電流の判定結果とを用いて、開閉装置3における異常の有無が判定される。なお、過小および過大のそれぞれに対して、3以上の区分が設定されてもよい。荷重の判定結果と電流の判定結果とを用いて開閉装置3における異常の有無を判定する場合に、電流の判定結果が、荷重の判定結果よりも先に取得されてよく、両者が同時に取得されてもよい。
【0063】
以上に説明したように、図1の水門設備10では、電動機311を有する開閉装置3がワイヤロープ11を介して扉体2に連結される。異常検出装置40では、ワイヤロープ11にかかる荷重が荷重測定部46により測定され、電動機311の電流が電流測定部47により測定される。そして、判定部41により、荷重の測定値と電流の測定値とに基づいて、開閉装置3の異常の有無が判定される。これにより、開閉装置3の異常の有無を精度よく判定することができる。また、水門設備10および異常検出装置40を有する水門システム1では、開閉装置3の異常の発生を精度よく検出して、安定した稼働を実現することができる。
【0064】
好ましくは、判定部41が、荷重の推定正常範囲と荷重の測定値とを比較することにより、扉体2の異常の有無を判定する第1異常判定部411と、荷重の測定値と電流の測定値とに基づいて、開閉装置3の異常の有無を判定する第2異常判定部412とを備える。これにより、開閉装置3のみならず、扉体2の異常の有無も精度よく判定することができ、水門システム1において、より安定した稼働を実現することができる。
【0065】
好ましくは、第2異常判定部412が、荷重の測定値を用いて電流の推定正常範囲を取得し、電流の推定正常範囲と電流の測定値とを比較することにより、開閉装置3の異常の有無を判定する。第2異常判定部412では、電流の推定正常範囲を精度よく取得することができ、開閉装置3の異常の有無をより精度よく判定することができる。
【0066】
好ましい異常検出装置40では、開閉装置3における複数の部品の振動をそれぞれ測定する複数の振動計48が設けられる。そして、判定部41が、複数の振動計48の測定値を用いて、開閉装置3の異常部品を特定する。これにより、開閉装置3の異常部品を精度よく特定することができ、開閉装置3の異常に迅速に対処することができる。なお、異常検出装置40の設計によっては、振動計48が省略されてもよい。
【0067】
ところで、水門設備10における異常は、突発的に発生する異常(以下、「突発異常」という。)と、劣化が進行して発生する異常(以下、「劣化異常」という。)とに区別することが可能である。したがって、判定部41では、突発異常と劣化異常とが区別して判定されてもよい。具体的には、図3のステップS11,S12にて荷重の測定値および正常値(以下、それぞれ「現在の測定値」および「現在の正常値」という。)を取得した後、ステップS13,S14にて現在の測定値および現在の正常値に基づいて扉体2に異常が発生していると判定される。この場合に、現在の測定値の取得時の直前から所定時間前までの各測定時刻における測定値および正常値に対して、測定値を正常値で割った値(以下、「測定値/正常値比」という。)が求められる。続いて、これらの測定時刻の測定値/正常値比と、時間との関係を示す近似曲線が生成される。図9の上段および下段では、線形の近似曲線L1,L2を示している。もちろん、近似曲線L1,L2は線形である必要はない。
【0068】
近似曲線L1,L2が生成されると、現在の測定値の取得時において推定される測定値/正常値比(以下、単に「推定値」という。)が、近似曲線L1,L2から求められる。また、現在の測定値を現在の正常値で割った値(すなわち、現在の測定値/正常値比)が求められる。そして、推定値と、現在の測定値/正常値比との差の絶対値、すなわち、現在の測定値/正常値比の推定値からの乖離度が求められる。当該乖離度が所定値以上である場合には、扉体2に発生している異常が突発異常であると判定される(図9の上段の最も右側のプロット参照)。また、当該乖離度が所定値未満である場合には、扉体2に発生している異常が劣化異常であると判定される(図9の下段の最も右側のプロット参照)。例えば、荷重の測定値が推定正常範囲に対して過大である場合に、突発異常と判定されるときには、ローラ22の上部への流木等の噛込みが異常の要因であると考えられる。また、劣化異常と判定されるときには、扉体2の重量増加(例えば、内部への土砂の堆積など)が異常の要因であると考えられる。
【0069】
なお、突発異常と劣化異常との区別では、必ずしも測定値/正常値比が利用される必要はなく、例えば、測定値がそのまま利用されてもよい。また、推定器により取得される正常値を推定値として、当該推定値からの測定値の乖離度に基づいて、突発異常と劣化異常とが区別して判定されてもよい。測定値/正常値比の乖離度を求める処理では、開度、水位、温度等の変化の、乖離度に対する影響を低減することが可能であるが、当該処理は、実質的に推定値からの測定値の乖離度を求める処理であるといえる。
【0070】
以上のように、判定部41(の第1異常判定部411)では、荷重について、推定値からの測定値の乖離度に基づいて、突発異常と劣化異常とが区別して判定される。これにより、突発異常と劣化異常とを精度よく特定することができ、異常の要因を精度よく推定することが可能となる。判定部41(の第2異常判定部412)では、電流についても同様に、推定値からの測定値の乖離度に基づいて、突発異常と劣化異常とが区別して判定されてよい。
【0071】
次に、第1異常判定部411が、突発異常と劣化異常とを区別して判定するとともに、扉体2の異常状態の種類を特定する処理例について説明する。この場合、図4のステップS13,S14では、第1異常判定部411により、左岸側および右岸側のそれぞれのワイヤロープ11における荷重に対して判定結果(過小、正常または過大)が取得されるとともに、突発異常と劣化異常とを区別する判定も行われる。本処理例における扉体2の異常状態の種類には、左岸側および右岸側の両方の荷重の判定結果が過大である状態、両方の荷重の判定結果が過小である状態、一方側の荷重の判定結果が過大であり、かつ、他方側の荷重の判定結果が過小である状態、片側の荷重の判定結果が過大である状態、並びに、片側の荷重の判定結果が過小である状態が含まれる。扉体2の異常状態の種類は、本処理例におけるものには限定されない。
【0072】
(両側が過大の場合)
左岸側および右岸側の両方の荷重の判定結果が過大であり、かつ、突発異常として判定される場合、例えば、扉体2の重量増加(外部)または両側噛込みが異常の要因として考えられる。異常の要因は、オペレータ等に報知される(以下同様)。扉体2の重量増加(外部)は、扉体2の上部に何らかの物体が乗っている状態である。両側噛込みは、扉体2の上昇時に両側ともにローラ22と戸当たりとの間に噛込みが生じ、両側の負荷が増大している状態である。また、左岸側および右岸側の両方の荷重の判定結果が過大であり、かつ、劣化異常として判定される場合、例えば、扉体2の重量増加(内部)または両側のローラ22の抵抗増大が異常の要因として考えられる。扉体2の重量増加(内部)は、扉体2の内部の堆積物が増加している状態である。両側のローラ22の抵抗増大は、両側のローラ22ともに転がり摩擦からすべり摩擦になる等、両側のローラ22の抵抗が増大している状態である。
【0073】
(両側が過小の場合)
左岸側および右岸側の両方の荷重の判定結果が過小であり、かつ、突発異常として判定される場合、例えば、両側噛込みまたは乗上げが異常の要因として考えられる。両側噛込みは、扉体2の下降時に両側ともにローラ22と戸当たりとの間に噛込みが生じ、両側の負荷が減少している状態である。乗上げは、川底の物体に乗上げることで、両側の荷重が減少している状態である。また、左岸側および右岸側の両方の荷重の判定結果が過小であり、かつ、劣化異常として判定される場合、例えば、両側のローラ22の抵抗減少が異常の要因として考えられる。両側のローラ22の抵抗減少は、両側のローラ22ともにすべり摩擦から転がり摩擦になる等、両側のローラ22の抵抗が減少している状態である。
【0074】
(一方側が過大かつ他方側が過小の場合)
左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過大であり、他方側の荷重の判定結果が過小であり、かつ、突発異常として判定される場合、例えば、乗上げが異常の要因として考えられる。乗上げは、扉体2が川底の物体に乗上げることで、一方側の荷重が増大し、他方側の荷重が減少している状態である。また、左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過大であり、他方側の荷重の判定結果が過小である場合には、突発異常および劣化異常のいずれであるときにも、片吊りが異常の要因である可能性がある。片吊りにより、一方側の荷重が過大となり、他方側の荷重が過小となる。
【0075】
(片側が過大の場合)
左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過大であり、他方側の荷重の判定結果が正常であり、かつ、当該一方側の異常が突発異常として判定される場合、例えば、片側噛込みまたは乗上げが異常の要因として考えられる。片側噛込みは、扉体2の上昇時に片側のローラ22と戸当たりとの間に噛込みが生じ、片側の負荷が増大している状態である。乗上げは、扉体2が川底の物体に乗上げることで、片側の荷重が増大している状態である。左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過大であり、他方側の荷重の判定結果が正常であり、かつ、当該一方側の異常が劣化異常として判定される場合、例えば、片側のローラ22の抵抗増大が異常の要因として考えられる。片側のローラ22の抵抗増大は、片側のローラ22が転がり摩擦からすべり摩擦になる等、片側のローラ22の抵抗が増大している状態である。また、左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過大であり、他方側の荷重の判定結果が正常である場合には、当該一方側の異常が突発異常および劣化異常のいずれであるときにも、片吊りが異常の要因である可能性がある。片吊りにより、一方側の荷重が過大となる。
【0076】
(片側が過小の場合)
左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過小であり、他方側の荷重の判定結果が正常であり、かつ、当該一方側の異常が突発異常として判定される場合、例えば、片側噛込みまたは乗上げが異常の要因として考えられる。片側噛込みは、扉体2の下降時に片側のローラ22と戸当たりとの間に噛込みが生じ、片側の負荷が減少している状態である。乗上げは、扉体2が川底の物体に乗上げることで、片側の荷重が減少している状態である。左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過小であり、他方側の荷重の判定結果が正常であり、かつ、当該一方側の異常が劣化異常として判定される場合、例えば、片側のローラ22の抵抗減少が異常の要因として考えられる。片側のローラ22の抵抗減少は、片側のローラ22がすべり摩擦から転がり摩擦になる等、片側のローラ22の抵抗が減少している状態である。また、左岸側および右岸側の一方側の荷重の判定結果が過小であり、他方側の荷重の判定結果が正常である場合には、当該一方側の異常が突発異常および劣化異常のいずれであるときにも、片吊りが異常の要因である可能性がある。片吊りにより、一方側の荷重が過小となる。
【0077】
以上のように、好ましい異常検出装置40では、扉体2において左岸側および右岸側のそれぞれにワイヤロープ11が設けられ、荷重測定部46により、左岸側のワイヤロープ11、および、右岸側のワイヤロープ11に対して個別に荷重が測定される。そして、判定部41により、左岸側のワイヤロープ11の荷重の測定値と、右岸側のワイヤロープ11の荷重の測定値とを用いて、扉体2の異常状態の種類が特定される。このように、扉体2の異常状態の種類を特定することにより、扉体2における異常の要因をある程度特定することが可能となる。扉体2の異常状態の種類の特定に加えて、突発異常と劣化異常とを区別して判定することにより、扉体2における異常の要因を詳細に特定することが可能となる。扉体2の異常状態の種類を特定する上記手法は、荷重および電流の測定値に基づいて開閉装置3の異常の有無を判定する手法から独立して用いられてもよい(突発異常と劣化異常とを区別して判定する手法において同様)。
【0078】
上記異常検出装置40、異常検出方法および水門システム1では様々な変形が可能である。
【0079】
図4および図5を参照して説明した第2異常判定部412を採用する場合に、荷重の測定値と正常値とを比較して荷重の判定結果を取得することなく、すなわち、扉体2の異常の有無を判定することなく、開閉装置3の異常の有無が判定されてもよい。既述のように、当該第2異常判定部412では、荷重の測定値が利用され、荷重の判定結果は利用されなくてもよい。以上のように、判定部41は、荷重の測定値と電流の測定値とに基づいて、少なくとも開閉装置3の異常の有無を判定すればよい。
【0080】
図1の例では、開閉装置3と扉体2とを連結する連結媒体として、ワイヤロープ11が利用されるが、水門設備10では、連結媒体としてラックを用いるラック式の機構や、連結媒体としてスピンドルを用いるスピンドル式の機構が採用されてもよい。この場合、扉体2の開閉荷重を支持するラックまたはスピンドルにかかる荷重が、荷重測定部46により測定される。また、連結媒体にかかる荷重の測定は、間接的な測定であってよく、例えば、図1の水門設備10においてシャフト314に作用するトルク等が、当該荷重として測定されてもよい。さらに、開閉装置3では、油圧シリンダ等が利用されてもよい。この場合、例えば、油圧シリンダ内の圧力が、荷重測定部46により荷重として測定され、作動油の圧送に利用される電動機の電流が、電流測定部47により測定される。なお、油圧シリンダが利用される場合、当該油圧シリンダが連結媒体となる。
【0081】
扉体2は、略板状の形状には限定されず、略円弧状や、略円筒状等の種々の形状であってもよい。また、扉体2の端面には必ずしもローラが設けられる必要はない。水門システム1における水門設備10は、扉体2を昇降する形式には限定されず、例えば、横引きゲートのように扉体を水平方向に移動する形式、マイターゲートのように上下方向に延びる軸を中心として扉体を回動させる形式、または、ラジアルゲートや転倒堰のように水平方向に延びる軸を中心として扉体を回動させる形式等であってもよい。
【0082】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0083】
1 水門システム
2 扉体
3 開閉装置
10 水門設備
11 ワイヤロープ
40 異常検出装置
41 判定部
46 荷重測定部
47 電流測定部
48 振動計
311 電動機
411 第1異常判定部
412 第2異常判定部
S11~S21 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9