(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】エンジンの吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20240910BHJP
F02M 26/19 20160101ALI20240910BHJP
F02M 26/44 20160101ALI20240910BHJP
F02M 26/50 20160101ALI20240910BHJP
F02M 35/104 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F02M35/10 311E
F02M26/19 331
F02M26/44
F02M26/50 321
F02M35/104 A
(21)【出願番号】P 2021043359
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】足立 悠紀子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰啓
(72)【発明者】
【氏名】金海 考祐
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-048137(JP,A)
【文献】特開2013-011185(JP,A)
【文献】特開2015-163774(JP,A)
【文献】特開2019-044644(JP,A)
【文献】特開2019-085936(JP,A)
【文献】特開2020-051361(JP,A)
【文献】特開2020-063703(JP,A)
【文献】特開2021-025413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0217915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/13
F02M 26/50
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシェル状部材を重ねて接合することによって中空構造に形成されて、サージタンクとこれから分岐してカム軸線方向に並んだ複数の吸気枝通路と、前記各吸気枝通路ごとにEGRガスを還流させるEGR分配通路とを有し、
前記各吸気枝通路は、吸気が下から上に向けて流れる上向き部と、吸気が方向変換する頂点部と、吸気が前記頂点部から斜め下向きに流れてシリンダヘッドに向かう下向き傾斜部とを有し、前記下向き傾斜部は、下流側に位置して隔壁で2つに仕切られたツイン通路部と、前記ツイン通路部よりも上流側に位置したシングル通路部とで構成されている一方、
前記EGR分配通路は前記各枝通路の頂点部よりも高い位置に配置されて、カム軸線方向に長く延びる主分配路と、前記主分配路から分岐した枝分配路とを有しており、前記主分配路の終端と枝分配路の終端とがEGRガス出口になって、1つのEGRガス出口が1つの吸気枝通路に上方から開口している構成であって、
前記EGR分配通路のEGRガス出口は、前記下向き傾斜部におけるシングル通路部のうち前記隔壁よりも頂点部に寄った部位に位置し、かつ、前記隔壁と対向して開口している、
エンジンの吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、EGR分配通路を備えた吸気マニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用等のエンジンでは、燃費の向上や排気ガスの浄化性能向上等のために、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させている。EGRガスの還流態様の単純なものは、吸気マニホールドのサージタンクに噴出させるものであるが、この態様では、各気筒への均一分散性に劣る問題や、サージタンクの内部に凝縮水が溜まりやすい問題、或いは、サージタンクから分岐した吸気枝通路の内面がカーボン等で汚損しやすいといった問題がある。
【0003】
そこで、EGRガスの分散性向上や凝縮水対策などを課題として様々な提案が成されている。その一例として特許文献1には、EGRガス還流通路をシリンダヘッドに形成し、シリンダヘッドに形成された吸気ポートにEGRガスを噴出させることが開示されている。
【0004】
特許文献1は、EGRガス還流通路をシリンダヘッドに内蔵するものであるため、各吸気ポートにEGRガスを均等に分配できる利点や、EGRパイプを無くすか又は短くできてエンジンのコンパクト化に貢献できる利点、凝縮水の発生を防止又は大幅に抑制できる利点、吸気マニホールドがEGRガスで汚れることを防止できる利点などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は上記の利点を有するが、改良すべき課題も見受けられる。例えば、シリンダヘッドに多数の通路を形成せねばならないため、シリンダヘッドの加工に手間がかかるおそれがある問題が挙げられる。シリンダヘッドには吸気ポートの他に冷却水ジャケットや燃料噴射用インジェクタなどが配置されており、EGRガス通路はこれらと干渉しないように空けねばならないため、構造が複雑化することは否めない。
【0007】
特に、1つの気筒に対応して2つの吸気ポートを独立して形成し、各吸気ポートの箇所ごとにインジェクタを設けている場合、それぞれの吸気ポートにEGRガス通路を連通させる必要があるため、構造の複雑化が倍加するおそれがある。
【0008】
本願発明はこのような現状を契機に成されたものであり、凝縮水の処理機能などに優れたEGR分配通路付き吸気マニホールドを提供せんとするもである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の吸気マニホールドは、
「複数のシェル状部材を重ねて接合することによって中空構造に形成されて、サージタンクとこれから分岐してカム軸線方向に並んだ複数の吸気枝通路と、前記各吸気枝通路ごとにEGRガスを還流させるEGR分配通路とを有し、
前記各吸気枝通路は、吸気が下から上に向けて流れる上向き部と、吸気が方向変換する頂点部と、吸気が前記頂点部から斜め下向きに流れてシリンダヘッドに向かう下向き傾斜部とを有し、前記下向き傾斜部は、下流側に位置して隔壁で2つに仕切られたツイン通路部と、前記ツイン通路部よりも上流側に位置したシングル通路部とで構成されている一方、
前記EGR分配通路は前記各枝通路の頂点部よりも高い位置に配置されて、カム軸線方向に長く延びる主分配路と、前記主分配路から分岐した枝分配路とを有しており、前記主分配路の終端と枝分配路の終端とがEGRガス出口になって、1つのEGRガス出口が1つの吸気枝通路に上方から開口している」
という基本構成である。
【0010】
そして、上記基本構成において、
「前記EGR分配通路のEGRガス出口は、前記下向き傾斜部におけるシングル通路部のうち前記隔壁よりも頂点部に寄った部位に位置し、かつ、前記隔壁と対向して開口している」
という特徴を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本願発明では、EGR分配通路は吸気マニホールドに一体に形成されているため、製造上の問題はなくて現実性に優れている。そして、EGR主通路とEGR枝通路の形状や長さなどを適宜設定することにより、各吸気枝通路への分配量を均等化してエンジンの運転の安定化に貢献できる。
【0012】
そして、EGRガス出口は吸気枝通路の下向き傾斜部に向けて開口しているため、凝縮水が発生してもサージタンクに溜まることはなくて、始動時に水分が気筒に大量に流入してトラブルを起こすような問題は皆無になる。同様に、EGRガスがサージタンクに入ることはないため、EGRガスに含まれていた固形成分が水分と一体になってサージタンク内でデポジット化し、これが振動等で分離して気筒に流入してトラブルを引き起こすといった問題も皆無になる。
【0013】
なお、EGRガスに凝縮水が混入していても、凝縮水は、吸気枝通路の下向き傾斜部と吸気ポートを介して気筒に向かう途次、吸気の流れで霧化し、排気ガスと一緒に排出される。従って、エンジンの運転には支障はない。
【0014】
また、EGRガス出口から噴出したEGRガスは、吸気に乗って隔壁によって分流してツイン通路部に向かうため、シリンダヘッドに形成された一対の吸気ポートにそれぞれインジェクタを配置している2ポート・2インジェクタタイプのエンジンについても、EGRガス出口の個数を増大させることなく対応できる。
【0015】
そして、EGRガス出口が隔壁よりも頂点部の側に偏っている(オフセットされている)ことは、EGRガス出口が吸気ポートからできるだけ離れていることを意味するが、これにより、排気弁と吸気弁とが開いているオーバーラップ時に排気ガスの噴き戻しがあっても、噴き戻しの影響を抑制してEGRガスの還流を確実化できると共に、EGRガスに含まれていた固形成分が噴き戻した排気ガスの熱によってデポジット化したり、下向き傾斜部の内面に付着して汚損したりすることを、防止又は大幅に抑制できる。すなわち、下向き傾斜部(及び吸気ポート)のクリーン状態を維持しつつ、EGRガスの分配性を向上できる。
【0016】
また、EGRガス出口は隔壁からできるだけ離れているため、隔壁の手前の段階でEGRガスを吸気にできるだけ分散させることができ、これによっても、2つの吸気ポートに対するEGRガスの均等分散効果が助長される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の吸気マニホールドが装着されたエンジンを略側方から見た図である。
【
図2】吸気マニホールドを略側方から見た図である。
【
図3】第1シェル状部材を略側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用3気筒エンジンの吸気マニホールドに適用している。エンジンは、クランク軸を車幅方向に向けた横置きの姿勢でエンジンルームに搭載されている。また、エンジンは、排気側面を自動車の前進方向に向けている。従って、エンジンは、横向き・前排気タイプである。そして、シリンダボア軸線を、自動車の前進方向に向けて若干の角度だけ前傾させている。
【0019】
以下では方向を特定するため前後、左右、上下の文言を使用するが、前後方向はカム軸線方向(クランク軸線方向)で、左右方向はカム軸線方向と直交した略水平方向、上下方向は鉛直方向としている。前と後ろについては、エンジンにおいてタイミングチェーンが配置されている側を前、変速機が配置されている側を後ろとしている。必要に応じて各図に方向を明示している。
【0020】
図1ではエンジンを吸気側面の方から見ており、エンジンは、シリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを備えている。シリンダヘッド2の上面にはヘッドカバー3が固定されている。シリンダブロック1とシリンダヘッド2とヘッドカバー3の前面には、チェーンカバー(フロントカバー)4が固定されている。
【0021】
シリンダヘッド2の吸気側面2aには吸気マニホールド5が固定されている。吸気マニホールド5の後端にはスロットルバルブ(スロットルボデー)6が固定されて、スロットルバルブ6に吸気ダクト7が接続されている。
図1,4において符号8で示すのは、インジェクタ9(
図4参照)に燃料を供給する燃料デリバリ管である。
【0022】
(1).吸気マニホールドの基本構造
図4に一部だけを示しているが、吸気マニホールド5は、略左右方向に重なった(正確には、上下方向にも重なっている)第1シェル状部材10と第2シェル状部材11と第3シェル状部材12との3つのシェル状部材を備えており、重なり合ったシェル状部材10~12を振動溶着等で接合することにより、中空構造の吸気マニホールド5が形成されている。従って、各シェル状部材10~12は合成樹脂の射出成形品である。
【0023】
図2では吸気マニホールド5を側面方向から見た全体を表示し、
図3では第1シェル状部材10を側面方向から見た全体を表示している。
図2において、左下がりのハッチングを表示した部分は第1シェル状部材10の一部であり、従って、
図1,2の大半は第3シェル状部材12で占められている。第3シェル状部材12と第2シェル状部材11とは、殆ど同じ外形である。
【0024】
図2,3において示す符号10aは、シリンダヘッド2に固定するため第1シェル状部材10に設けたフランジ状締結部であり、これは第3シェル状部材12から露出している。
図2において符号13で示すのは、ブレーキブースター用の負圧取り出しポートであり、この負圧取り出しポートは第2シェル状部材11に形成されている。
【0025】
図3において第1シェル状部材10を表示しているが、
図3において平行斜線(ハッチング)を施した部分は第2シェル状部材11と重なる重合面であり、重合面において振動溶着等によって第2シェル状部材11と接合されている。従って、第2シェル状部材11にも、第1シェル状部材10と同じ形状の重合面が形成されている。なお、
図3では重合面を単なる平坦面に表示しているが、実際には、重合面には環状溝が形成されている。
【0026】
図3から理解できるように、第1シェル状部材10には、サージタンク14を構成する凹所がシリンダヘッド2と反対側に向けて開口している。第1シェル状部材10の後ろ壁15には、スロットルバルブ6が固定される受け座16を突設している。従って、受け座16に吸気入口17が開口しており、吸気は、吸気入口17からサージタンク14に向けて前向きに噴出する。
【0027】
第1シェル状部材10のサージタンク14は下方に広がっており、第1シェル状部材10の下部には、3本の吸気枝通路18の入口部を形成するための3本の下外溝19が形されている。他方、第1シェル状部材10のうち凹所を挟んで下外溝19と反対側に位置した上部には、シリンダヘッドの吸気側面2aに重なる前後長手のフランジ20が形成されており、フランジ20に、3つの吸気出口穴21がカム軸線方向に並んで開口している。
【0028】
図1,4のとおり、第3シェル状部材12には、吸気枝通路18を形成するための3本の外向き樋状部22が、サージタンク14と反対側に膨れた状態でカム軸線方向に並んで形成されている。また、
図4に一部だけを示すように、第2シェル状部材11には、外向き樋状部22と重なって吸気枝通路18を構成する3本の内向き樋状部23が、カム軸線方向に並んで形成されている。
【0029】
図1に点線で示して
図2に一点鎖線で示すように、第2シェル状部材11の下部には、第1シェル状部材10の下外溝19及び第3シェル状部材12における外向き樋状部22の下部に重なる3つの下部連通穴18aが形成されている。
【0030】
以上の説明から理解できるように、3本の吸気枝通路18は、その入口部は第1シェル状部材10と第2シェル状部材11と第3シェル状部材12との三者で形成されて、出口部は主として第1シェル状部材10によって形成されて、入口部と出口部との間の部位は第2シェル状部材11と第3シェル状部材12とで形成されている。従って、サージタンク14に流入した吸気は、主として後ろから前に向けて流れて前壁の部位で下方に方向変換し、次いで、各吸気枝通路18の下部連通穴18aに流入して、
図3に点線の矢印で示すように上向きに方向変換して吸気出口穴21に至り、
図4のとおり、シリンダヘッド2に向けて斜め下方に流れる。
【0031】
従って、各吸気枝通路18は、吸気が下から上に向けて流れる上向き部24と、吸気が方向変換する頂点部25と、吸気が斜め下方に流れる下向き傾斜部26とで構成されており、下向き傾斜部26は、下流側に位置して隔壁27で前後2つに仕切られたツイン通路部26aと、ツイン通路部26aよりも上流側に位置したシングル通路部26bとで構成されている。
【0032】
図4に示すように、シリンダヘッド2には、各気筒に対応して前後一対ずつの吸気ポート28が形成されており、一対の吸気ポート28に対応してそれぞれインジェクタ9が配置されている。一対の吸気ポート28は隔壁29で区画されており、シリンダヘッド2の隔壁29と吸気マニホールド5の隔壁27とは、一直線状に並んでいる。
図4において符号30で示すのはガスケットである。
【0033】
吸気マニホールド5の隔壁27のうちシングル通路部26bに向いた始端部は、平断面視でV形の形態になっている。従って、吸気は抵抗なく(渦流を発生させることなく)2つのツイン通路部26aに分流する。既述の吸気出口穴21は、吸気枝通路18の下向き傾斜部26と殆ど重なっている。
【0034】
なお、
図3に示す符号31は、ブローバイガスを還流させるためのPCV還流通路31である。PCV通路31の出口31aは、概ねサージタンク14の前後中間部に向けて下向き開口している。他方、PCV還流通路31の入口31bは、第1シェル状部材10におけるフランジ20のうち、前端の下向き傾斜部26と中間の下向き傾斜部26との間の部位に開口している。従って、PCV還流通路31には、シリンダヘッド2に形成されたPCV中間通路からブローバイガスが供給される。
【0035】
(2).EGRガス分配構造
図1,2に示すように(
図4も参照)、第2シェル状部材11と第3シェル状部材12との上部が重なった部位に、EGR分配通路32が形成されている。この場合、EGR分配通路32は、第3シェル状部材12に溝を膨出形成することによって形成しているが、第2シェル状部材11に溝を形成してもよいし、第2シェル状部材11 と第3シェル状部材12との両方に溝を形成してもよい。
【0036】
EGR分配通路32は、後ろから前に向けて延びるEGR主通路32aと、EGR主通路32aから下方に分岐した2本のEGR枝通路32b,32cとで構成されている。EGR主通路32aは後ろ向きに開口しており、これにEGRバルブ又はEGRパイプ(いずれも図示せず)が接続されている。
【0037】
EGR主通路32aの終端とEGR枝通路32b,32cの終端とはEGRガス出口33になっており、前端のEGRガス出口33は前端の下向き傾斜部26に開口し、後端のEGRガス出口33は後端の下向き傾斜部26に開口し、前後中間部のEGRガス出口33は中間部の下向き傾斜部26に開口している。
【0038】
EGRガス出口33と吸気枝通路18(下向き傾斜部26)との関係は、
図4に明示している。すなわち、EGRガス出口33は、吸気枝通路18の頂点部25よりも下流側において下向き傾斜部26に上方から開口しているが、まず、EGRガス出口33は、隔壁27よりも頂点部25の側に大きくずれた状態に配置されている。また、
図3に模式的に示すように、EGRガス出口33は隔壁27と対向して配置されている。
【0039】
なお、
図4はシリンダボアを鉛直姿勢にした状態で表示しており、この場合、頂点部25を通る鉛直線は符号34の点線のとおりになるが、既述のとおり、本実施形態を適用しているエンジンは排気側面を少し前傾させたスラント型になっているので、頂点部25を通る鉛直線は、実際には符号35で示す一点鎖線の状態になる。
【0040】
また、EGRガス出口33から凝縮水が滴下することがあり、この場合、シリンダボアを鉛直姿勢にした状態では、凝縮水は点線の矢印36で示すように落ちるが、実際のスラント型エンジンでは、凝縮水は一点鎖線の矢印37で示すように落ちる(もっとも、運転中には、凝縮水は吸気の流れに乗って下流側に飛ばされる。)。
【0041】
いずれにしても、EGRガス出口33は吸気枝通路18の頂点部25よりも下流側に位置しているため、運転中と運転停止後とを問わず、凝縮水がサージタンク14に溜まることはない。従って、サージタンク14に溜まった凝縮水がエンジンの始動と同時に大量に気筒に流れ込む現象は発生しない。従って、寒冷環境下での凝縮水に起因した始動時のトラブルを防止できる。
【0042】
そして、EGRガス出口33は下向き傾斜部26のシングル通路部26bに位置しているが、シングル通路部26bのうち隔壁27よりも頂点部25の側に寄っているため、吸気弁と排気弁とが開いているオーバーラップ時に、高温の排気ガスが吸気ポートに噴き戻す現象が発生しても、排気ガスがEGRガス出口33に到来することはなく、従って、EGRガスに含まれた固形部分が高熱によって下向き傾斜部26の内面に付着してデポジット化するといった不具合を防止できる。
【0043】
また、EGRガスは吸気の流れに乗って吸気ポート28に向かうが、EGRガス出口33から隔壁27までの距離を大きく取れるため、吸気へのEGRガスの分散性を高めて、2つの吸気ポート28へのEGRガスの均等分配性を向上できる。これにより、混合気の濃度を前後の吸気ポート28で均一化し、燃焼の安定性を向上できる。
【0044】
なお、EGR分配通路32はその全体が吸気枝通路18よりも上に配置されているため、EGR分配通路32に凝縮水が溜まることはなくて、凝縮水は速やかに下向き傾斜部26に落ちる。従って、運転停止後にEGR分配通路32に凝縮水が大量に溜まって、これが始動時に気筒に一気に流入するといった現象は生じない。運転中に凝縮水が発生しても、その凝縮水は吸気に乗って霧化するため、運転に悪影響を及ぼすことはない。つまり、凝縮水は、僅かずつなら運転によって問題なく処理できる。
【0045】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、吸気マニホールドは2つのシェル状部材を接合した態様でもよい。また、EGR分配通路は、専用の部材を接合して形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、エンジンの吸気マニホールドに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0047】
2 シリンダヘッド
5 吸気マニホールド
6 スロットルバルブ
10 第1シェル状部材
11 第2シェル状部材
12 第3シェル状部材
14 サージタンク
18 吸気枝通路
20 フランジ
21 吸気出口穴
24 上向き部
25 頂点部
26 下向き傾斜部
26a ツイン通路部
26b シングル通路部
27 隔壁
28 吸気ポート
32 EGR分配通路
32a EGR主通路
32b,32c EGR枝通路
33 EGRガス出口