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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/10 20060101AFI20240910BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20240910BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240910BHJP
【FI】
C09J133/10
C09J133/08
C09J7/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021044090
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143535
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 美南海
(72)【発明者】
【氏名】今岡 剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-31658(JP,A)
【文献】特開2020-164844(JP,A)
【文献】特開2020-45418(JP,A)
【文献】特開2019-73641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~70質量%、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%~50質量%、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体と、
架橋剤と、
を含む粘着剤組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が、エポキシ系架橋剤である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、10万~30万である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、40℃~70℃である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、ステアリルメタクリレートである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の製造工程では、各種部材を仮固定するために粘着剤が用いられている。仮固定に用いられる粘着剤については、種々の報告がなされている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196544号公報
【文献】特開2008-179744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の製造工程では、被着体に仮固定された部材が高温環境下に曝されることがあり、工程によっては、雰囲気温度が150℃付近になることもある。このため、仮固定に用いられる粘着剤には、例えば、150℃の高温環境下に曝された場合であっても、部材が被着体から剥がれたり、部材が仮固定した当初の位置からずれたりしないような高い粘着力を示す粘着剤層を形成できることが求められる。また、被着体に仮固定された部材は、固定が不要となった時点で、被着体から取り除かれる。しかし、高温環境下に曝された粘着剤層は、経時で粘着力が上昇し、冷却後に被着体からの剥離が困難となる場合がある。また、高温環境下に曝された粘着剤層は、冷却後に被着体から剥離する際に、被着体の表面に転着し、被着体を汚染させる場合がある。このため、仮固定に用いられる粘着剤には、例えば、150℃の高温環境下に曝された場合であっても、その後、25℃といった常温環境下において剥離する際には、被着体から容易に剥離させることができ、かつ、被着体の表面に糊残りを生じさせ難いこと(所謂、再剥離性)に優れる粘着剤層を形成できることが求められる。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、高温(例えば、150℃;以下、同じ。)環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温(例えば、25℃;以下、同じ。)環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を備える粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~70質量%、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%~50質量%、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体と、
架橋剤と、
を含む粘着剤組成物。
<2> 上記架橋剤が、エポキシ系架橋剤である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、10万~30万である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が、40℃~70℃である<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<5> 上記炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が、ステアリルメタクリレートである<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を備える粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の粘着剤組成物及び粘着シートについて、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本開示において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
【0012】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0013】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0014】
本開示において、「粘着剤」と「粘着剤組成物」とは、同義である。
【0015】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物は、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~70質量%、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%~50質量%、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。〕と、架橋剤と、を含む粘着剤組成物である。
本開示の粘着剤組成物によれば、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0016】
本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位をそれぞれ特定量含む特定(メタ)アクリル系共重合体と、架橋剤と、を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を比較的多く含むため、形成される粘着剤層の凝集力が高くなる。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下においても高い粘着力を示すと考えられる。
ところで、高温環境下に曝された粘着剤層は、経時で粘着力が上昇し、冷却後に被着体からの剥離が困難となる場合がある。特定(メタ)アクリル系共重合体の構成単位である炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、所謂、結晶性モノマーと称される単量体である。結晶性モノマーは、融点未満の温度になると結晶化する。本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体が結晶性モノマーである炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を特定割合以上含むため、形成される粘着剤層は、高温環境下に曝された後に常温に冷却されると、結晶性モノマーの結晶化により、粘着力が低下すると推測される。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、容易に剥離できると考えられる。
また、高温環境下に曝された粘着剤層は、冷却後に被着体から剥離する際に、被着体の表面に転着し、被着体を汚染させる場合がある。本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体が分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を特定範囲の割合で含むため、形成される粘着剤層は、分子鎖同士の強い絡み合いが生じることにより、凝集力が高まると考えられる。さらに、本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体が結晶性モノマーである炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を特定割合以下含むため、形成された粘着剤層が、高温環境下に曝された際に、被着体に対して過度に濡れないと考えられる。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りを生じさせ難くなると考えられる。
以上より、本開示の粘着剤組成物は、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を形成できると推測される。
【0017】
本開示の粘着剤組成物に対し、特許文献1(特開2016-196544号公報;以下、同じ。)に記載の粘着剤及び特許文献2(特開2008-179744号公報;以下、同じ。)に記載の粘着剤は、いずれも高温環境下に曝された後の常温環境下において粘着剤層を被着体から剥離する際に生じ得る糊残りに関し、何ら着目していない。また、特許文献1に記載の粘着剤及び特許文献2に記載の粘着剤は、ポリマーが炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むものの、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含んでいないため、形成される粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りを生じさせやすいと考えられる。
【0018】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体〕
本開示の粘着剤組成物は、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~70質量%、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%~50質量%、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体〕を含む。
【0019】
<分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~70質量%含む。
【0020】
本開示において、「分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
本開示における「分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、後述のカルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
【0021】
分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換であることが好ましい。
分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、特に限定されない。
分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、例えば、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。
また、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、例えば、製造適性の観点から、26以下であることが好ましい。
【0022】
分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、i-ペンチル(メタ)アクリレート〔別名:イソアミル(メタ)アクリレート〕、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、i-オクタデシル(メタ)アクリレート、及び2-デシルテトラデカニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、i-ペンチル(メタ)アクリレート〔即ち、イソアミル(メタ)アクリレート〕、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びi-デシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、i-ペンチルアクリレート(即ち、イソアミルアクリレート)、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びi-デシルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、2-エチルヘキシルメタクリレートが更に好ましい。
【0023】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して30質量%~70質量%である。
特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して30質量%以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りを生じさせ難くなる傾向を示す。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上であり、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して70質量%以下であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示す傾向がある。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、70質量%以下であり、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
特定(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率よりも高いことが好ましい。このような態様によれば、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りをより生じさせ難くなる傾向を示す。
【0026】
<炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%~50質量%含む。
【0027】
本開示において、「炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
本開示における「炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、後述のカルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
【0028】
炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換であることが好ましい。
直鎖状のアルキル基の炭素数は、16以上であり、18以上であることが好ましい。
直鎖状のアルキル基の炭素数の上限は、特に限定されないが、例えば、製造適性の観点から、22以下であることが好ましい。
【0029】
炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート〔別名:ステアリル(メタ)アクリレート〕、エイコシル(メタ)アクリレート、及びドコシル(メタ)アクリレート〔別名:ベヘニル(メタ)アクリレート〕が挙げられる。
炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、オクタデシル(メタ)アクリレート〔即ち、ステアリル(メタ)アクリレート〕及びドコシル(メタ)アクリレート〔即ち、ベヘニル(メタ)アクリレート〕からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、オクタデシルメタクリレート(即ち、ステアリルメタクリレート)がより好ましい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して10質量%~50質量%である。
特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して10質量%以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、容易に剥離できる傾向を示す。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以下であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りを生じさせ難くなる傾向を示す。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以下であり、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましい。
【0032】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して10質量%以上含む。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、後述の架橋剤との架橋に寄与し得る。
【0033】
本開示において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0034】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0035】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びネオデカン酸ビニルが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸が好ましい。
【0036】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して10質量%以上である。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して10質量%以上であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示す傾向がある。このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率の上限は、特に限定されないが、例えば、ポットライフの観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して40質量%以下であることが好ましい。
【0038】
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、及び、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〔所謂、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〕に由来する構成単位を含んでいてもよい。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与し得る。
【0039】
本開示において、「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
本開示における「その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、既述のカルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
【0040】
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルアクリレートが好ましい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、適宜設定できる。
【0043】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、既述の構成単位、即ち、必須の構成単位である、分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、並びに、任意の構成単位であるその他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0044】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0045】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、適宜設定できる。
【0047】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、25℃~100℃であることが好ましく、30℃~90℃であることがより好ましく、35℃~80℃であることが更に好ましく、40℃~70℃であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が25℃以上であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において、より高い粘着力を示す傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が100℃以下であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りをより生じさせ難くなる傾向を示す。
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0049】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。
式1中、m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0050】
本開示において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)製〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0051】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸(MAA)が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、n-オクチルアクリレート(n-OA)が-65℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、i-デシルアクリレートが-62℃、i-デシルメタクリレート(IDMA)が-41℃、i-アミルアクリレート(IAA)が-45℃、ステアリルアクリレート(STA)が30℃、ステアリルメタクリレート(STMA)が38℃、ベヘニルメタクリレート(VMA)が47℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0052】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0053】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、3万~100万であることが好ましく、5万~50万であることがより好ましく、10万~40万であることが更に好ましく、10万~30万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が3万以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りをより生じさせ難くなる傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が100万以下であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において、より高い粘着力を示す傾向がある。
【0054】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を測定する。
【0055】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0056】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0057】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、75質量%~99.99質量%であることが好ましく、80質量%~99.95質量%であることがより好ましく、85質量%~99.9質量%であることが更に好ましく、90質量%~99.9質量%であることが特に好ましい。
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0058】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0059】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0060】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0061】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0062】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0063】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0064】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0065】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0066】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0067】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0068】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0069】
〔架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含む。
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤が好ましく、エポキシ系架橋剤がより好ましい。
【0070】
本開示において、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。また、「アジリジン系架橋剤」とは、1分子中に2以上のアジリジン基を有する化合物(所謂、2官能以上のアジリジン化合物)を指す。
【0071】
エポキシ系架橋剤の種類は、特に限定されない。
エポキシ系架橋剤の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)が挙げられる。
【0072】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕が挙げられる。
【0073】
イソシアネート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族ポリイソシアネート化合物又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0074】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0075】
金属キレート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、及びコバルトキレート化合物が挙げられる。
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0076】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレート A〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)製〕、アルミキレート D〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕、及びALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕が挙げられる。
【0077】
アジリジン系架橋剤の種類は、特に限定されない。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、及びN,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)が挙げられる。
【0078】
アジリジン系架橋剤としては、市販品を使用できる。
アジリジン系架橋剤の市販品の例としては、「ケミタイト(登録商標) PZ-33」〔(株)日本触媒製〕が挙げられる。
【0079】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0080】
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~5質量部であることが好ましく、0.03質量部~3質量部であることがより好ましく、0.05質量部~2質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~1質量部であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において、より高い粘着力を示す傾向がある。また、本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に曝された後、常温環境下で被着体から剥離する際に、被着体の表面に糊残りをより生じさせ難くなる傾向を示す。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以下であると、形成される粘着剤層は、高温環境下において、より高い粘着力を示す傾向がある。
【0081】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0082】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0084】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0085】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0086】
<用途>
本開示の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す粘着剤層を形成できるため、例えば、電子機器の製造工程において、高温環境下に曝される場面で使用される仮固定用の粘着剤組成物として好適である。
【0087】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示す。このため、本開示の粘着シートは、高温環境下においても、被着体から剥がれたり、被着体に貼り付けた当初の位置からずれたりせず、冷却後の常温環境下で被着体から剥離する際には、容易に剥離させることができ、かつ、被着体の表面に糊残りを生じさせ難い。
【0088】
本開示の粘着シートが備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、一般には1μm~100μmであり、3μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましい。
【0089】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により測定される値である。
粘着剤層の厚み方向において、無作為に選択した10箇所で測定される粘着剤層の厚さの算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。粘着剤層の厚さは、膜厚計を用いて測定される。
【0090】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートが、基材を有しない無基材タイプの粘着シートである場合、又は、基材の片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートである場合、本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
【0091】
剥離フィルムは、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されない。剥離フィルムとしては、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0092】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0093】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0094】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0095】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には10μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。
【0096】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0097】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に限定されない。
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、無基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0098】
有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0099】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0100】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0101】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0102】
養生は、例えば、雰囲気温度20℃~35℃、相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下で、4日間~7日間行う。
【実施例
【0103】
以下、本開示の粘着剤組成物等を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機及び温度計を備えた反応容器内に、酢酸エチル(重合用有機溶剤)130質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート〔2EHMA;分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〕50質量部、ステアリルメタクリレート〔STMA;炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体〕30質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕20質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.125質量部を入れて混合し、混合物を得た。次いで、反応容器内の混合物の温度を還流温度まで昇温させた後、温度を保持した状態で混合物を撹拌し、6時間重合反応させ、重合反応物を得た。得られた重合反応物を、固形分濃度が40質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0105】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-22の各溶液についても同様である。
【0106】
〔製造例A-2~A-12及びA-16~A-22〕
製造例A-2~A-12及びA-16~A-22では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が40質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-12及びA-16~A-22の各溶液を得た。
【0107】
〔製造例A-13~A-15〕
製造例A-13~A-15では、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整して(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が40質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-13~A-15の各溶液を得た。
【0108】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22のガラス転移温度(Tg)〔単位:℃〕、及び(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22の重量平均分子量(Mw)〔単位:万(表中では、「×10」と表記)〕を表1に示す。
【0109】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0110】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-22のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-15は、本開示における特定(メタ)アクリル系共重合体に相当する。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「2EHMA」;2-エチルヘキシルメタクリレート〔アルキル基の炭素数:8〕
「IDMA」;イソデシルメタクリレート〔アルキル基の炭素数:10〕
「IAA」;イソアミルアクリレート〔アルキル基の炭素数:5〕
【0113】
<炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「STMA」;ステアリルメタクリレート〔アルキル基の炭素数:18〕
「VMA」;ベヘニルメタクリレート〔アルキル基の炭素数:22〕
「STA」;ステアリルアクリレート〔アルキル基の炭素数:18〕
【0114】
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」;アクリル酸
<その他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「MA」;メチルアクリレート
【0115】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0116】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液100質量部(固形分換算値)と、架橋剤〔商品名:TETRAD(登録商標)-X、固形分濃度:100質量%、エポキシ系架橋剤、三菱ガス化学(株)製〕0.1質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0117】
〔実施例2~20〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~20の各粘着剤組成物を得た。
【0118】
〔比較例1~7〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~7の各粘着剤組成物を得た。
【0119】
[評価用粘着シートの作製]
上記にて調製した粘着剤組成物を、基材としてのポリイミドフィルム〔商品名:カプトン(登録商標) 100H、東レ・デュポン(株)製〕の一方の面に、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、ポリイミドフィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜が露出した面を、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度25℃、50%RHの環境下で168時間養生を行い、架橋反応を進行させて、評価用粘着シートを作製した。作製した評価用粘着シートは、基材(ポリイミドフィルム)/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する。
【0120】
[測定及び評価]
1.高温環境下での粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。また、被着体として、ガラス板〔商品名:ソーダライム硝子(並硝子)、厚さ:1.8mm、(株)河村久蔵商店製〕を準備した。
評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板の一方の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片を作製した。作製した試験片は、被着体(ガラス板)/評価用粘着シート片〔粘着剤層/基材(ポリイミドフィルム)〕の積層構造を有する。次いで、作製した試験片を、雰囲気温度150℃の環境下に30分間静置した。この静置後の試験片について、雰囲気温度150℃の環境中で、ガラス板から評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/ポリイミドフィルム)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のテンシロン万能材料試験機(型番:RTF-1350)を用い、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0121】
-評価基準-
A:粘着力が8.0N/25mm以上である。
B:粘着力が5.0N/25mm以上8.0N/25mm未満である。
C:粘着力が2.0N/25mm以上5.0N/25mm未満である。
D:粘着力が2.0N/25mm未満である。
【0122】
2.高温環境下に曝された後の常温環境下での再剥離性
(1)粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。また、被着体として、ガラス板〔商品名:ソーダライム硝子(並硝子)、厚さ:1.8mm、(株)河村久蔵商店製〕を準備した。
評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板の一方の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片を作製した。作製した試験片は、被着体(ガラス板)/評価用粘着シート片〔粘着剤層/基材(ポリイミドフィルム)〕の積層構造を有する。次いで、作製した試験片を、雰囲気温度150℃の環境下に30分間静置した後、雰囲気温度25℃、50%RHの環境下に30分間静置した。この静置後の試験片について、ガラス板から評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/ポリイミドフィルム)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のテンシロン万能材料試験機(型番:RTF-1350)を用い、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0123】
-評価基準-
A:粘着力が1.0N/25mm未満である。
B:粘着力が1.0N/25mm以上3.0N/25mm未満である。
C:粘着力が3.0N/25mm以上5.0N/25mm未満である。
D:粘着力が5.0N/25mm以上である。
【0124】
(2)糊残り
上記「(1)粘着力」の評価試験において、評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/ポリイミドフィルム)を剥離した後のガラス板の表面を目視にて観察した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0125】
-評価基準-
A:糊残りが全く確認されない。
B:糊残りが僅かに確認される。
C:糊残りが確認されるが、実用上問題ないレベルである。
D:糊残りが顕著に確認される。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表2及び/又は表3に記載の架橋剤の詳細は、以下に示すとおりである。
<エポキシ系架橋剤>
「TETRAD-X」〔商品名、固形分濃度:100質量%、三菱ガス化学(株)製〕
<イソシアネート系架橋剤>
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体)、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕
<金属キレート系架橋剤>
「アルミキレート A」〔商品名、化学名:アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)製〕
<アジリジン系架橋剤>
「ケミタイト PZ-33」〔商品名、(株)日本触媒製〕
上記「TETRAD」、「コロネート」、及び「ケミタイト」は、いずれも登録商標である。
【0129】
表2に示すように、実施例1~20の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示し、かつ、高温環境下に曝された後の常温環境下において優れた再剥離性を示すことが確認された。
【0130】
一方、表3に示すように、(メタ)アクリル系共重合体が分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含まない比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下において被着体から剥離すると、被着体の表面に糊残りを生じさせやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して10質量%未満である比較例2及び比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示さないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体が炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含まない比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下において被着体から剥離すると、容易に剥離できないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して10質量%未満である比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下において被着体から剥離すると、容易に剥離できないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体における炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して50質量%を超える比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に曝された後、常温環境下において被着体から剥離すると、被着体の表面に糊残りを生じさせやすいことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体における分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して70質量%を超える比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下において高い粘着力を示さないことが確認された。