(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】自動繊維束配置装置における繊維束の切断方法及び自動繊維束配置装置
(51)【国際特許分類】
B26D 5/26 20060101AFI20240910BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20240910BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20240910BHJP
B29C 70/38 20060101ALI20240910BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20240910BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
B26D5/26 A
B26D1/06 Z
B29C70/06
B29C70/38
B29C70/54
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2021048603
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代構造部材創製・加工技術開発/研究開発項目(2)-2航空機用複合材料の複雑形状積層技術開発(第二期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安宅 威
(72)【発明者】
【氏名】上中 廉
(72)【発明者】
【氏名】藤永 貴久
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/73730(US,A1)
【文献】特開平8-112791(JP,A)
【文献】特表2016-531020(JP,A)
【文献】特開2020-131623(JP,A)
【文献】特開2015-16691(JP,A)
【文献】特許第7431690(JP,B2)
【文献】特許第7437250(JP,B2)
【文献】特許第7408480(JP,B2)
【文献】特開2021-137923(JP,A)
【文献】特許第747173(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/26
B26D 1/06
B29C 70/06
B29C 70/38
B29C 70/54
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給装置から供給された複数の繊維束を押圧部によって配置型上に押圧することで前記配置型上への前記繊維束の配置を行う配置ヘッドであって前記押圧部へ向けて前記繊維束を送り出すために前記繊維束の経路毎に設けられた一対のローラ及び一対の前記ローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動モータを備えた送出機構を含む配置ヘッドと、前記配置のために前記配置ヘッドを予め設定された基本速度で移動させる多関節ロボットと、前記繊維束の送り速度が前記基本速度に応じた実送り速度となるように前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置とを備え、前記配置ヘッドは、前記繊維束の送り方向における前記押圧部と前記送出機構との間に設けられると共に可動刃を駆動して前記繊維束の切断を行う切断装置を備え、前記切断装置は、前記可動刃を駆動する駆動期間中の前記可動刃と前記繊維束とが接触する接触期間に前記切断が行われると共に、前記接触期間における前記可動刃の前記送り方向への変位量が前記繊維束の送り量より小さくなるような態様で前記可動刃の駆動が行われるように構成されている、自動繊維束配置装置における繊維束の切断方法において、
前記駆動期間の開始時点から前記接触期間の終了時点までの前記可動刃の動作時間と前記基本速度とから前記動作時間における前記繊維束の配置長さを求め、
前記開始時点に対して予め定められた先行期間だけ前に定められた時点を第一の時点として設定すると共に、少なくとも前記配置長さを前記先行期間で余分に送り出す追加速度を求め、
前記第一の時点で前記送り速度を前記実送り速度から前記実送り速度に前記追加速度を加えた補正送り速度に変更し、
前記開始時点で前記駆動モータによる前記ローラの回転駆動を停止させる
ことを特徴とする自動繊維束配置装置における繊維束の切断方法。
【請求項2】
前記基本速度をパラメータとした前記追加速度を求めるための演算式が予め設定されており、前記基本速度の変更に伴い、変更後の前記基本速度に応じた前記追加速度が前記演算式を用いて求められ、その求められた前記追加速度に基づいて前記補正送り速度が変更される
ことを特徴する請求項1に記載の自動繊維束配置装置における繊維束の切断方法。
【請求項3】
供給装置から供給された複数の繊維束を押圧部によって配置型上に押圧することで前記配置型上への前記繊維束の配置を行う配置ヘッドであって前記押圧部へ向けて前記繊維束を送り出すために前記繊維束の経路毎に設けられた一対のローラ及び一対の前記ローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動モータを備えた送出機構を含む配置ヘッドと、前記配置のために前記配置ヘッドを予め設定された基本速度で移動させる多関節ロボットと、前記繊維束の送り速度が前記基本速度に応じた実送り速度となるように前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置とを備え、前記配置ヘッドは、前記繊維束の送り方向における前記押圧部と前記送出機構との間に設けられると共に可動刃を駆動して前記繊維束の切断を行う切断装置を備え、前記切断装置は、前記可動刃を駆動する駆動期間中の前記可動刃と前記繊維束とが接触する接触期間に前記切断が行われると共に、前記接触期間における前記可動刃の前記送り方向への変位量が前記繊維束の送り量より小さくなるような態様で前記可動刃の駆動が行われるように構成されている、自動繊維束配置装置において、
前記駆動期間の開始時点に対して予め定められた先行期間だけ前に定められた第一の時点、及び前記開始時点から前記接触期間の終了時点までの前記可動刃の動作時間と前記基本速度とから求められた前記動作時間における前記繊維束の配置長さ以上の前記繊維束を前記先行期間に送り出す追加速度が記憶された記憶器を備え、
前記駆動制御装置は、前記第一の時点で前記送り速度を前記実送り速度から前記実送り速度に前記追加速度を加えた補正送り速度に変更すると共に前記開始時点で前記駆動モータによる前記ローラの回転駆動を停止させるように構成されている
ことを特徴とする自動繊維束配置装置。
【請求項4】
前記記憶器には、前記基本速度をパラメータとした前記追加速度を求めるための演算式が予め設定されており、
前記演算式を用いて前記基本速度に応じた前記追加速度を求めると共にその求められた前記追加速度に基づいて前記補正送り速度を求める演算器を備える
ことを特徴する請求項3に記載の自動繊維束配置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給装置から供給された複数の繊維束を押圧部によって配置型上に押圧することで配置型上への繊維束の配置を行う配置ヘッドであって押圧部へ向けて繊維束を送り出すために繊維束の経路毎に設けられた一対のローラ及び一対のローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動モータを備えた送出機構を含む配置ヘッドと、配置のために配置ヘッドを予め設定された基本速度で移動させる多関節ロボットと、繊維束の送り速度が基本速度に応じた実送り速度となるように駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置とを備えた自動繊維束配置装置、特に、配置ヘッドが繊維束の送り方向における押圧部と送出機構との間に設けられると共に可動刃を駆動して繊維束の切断を行う切断装置を備え、切断装置が可動刃を駆動する駆動期間中の可動刃と繊維束とが接触する接触期間に切断が行われると共に接触期間における可動刃の送り方向への変位量が繊維束の送り量より小さくなるような態様で可動刃の駆動が行われるように構成されている自動繊維束配置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動繊維束配置装置として、細幅の繊維束を配置型上に配置するAFP(Automated Fiber Placement)装置が知られている。なお、本出願において、「繊維束」とは、複数本の強化繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)の束にマトリックス樹脂を含浸させてテープ状に形成された所謂トウプリプレグのような材料を指す。また、そのAFP装置としては、多関節ロボットを用いて繊維束の配置型上への配置を行うように構成された装置がある。
【0003】
特許文献1には、そのようなAFP装置として、供給装置としての巻出機構と、その巻出機構から供給された繊維束をローラ等の押圧部(押圧部材)によって押圧することで前記配置を行うための配置ヘッドとしての貼付ヘッドと、前記配置のために貼付ヘッドを移動させる多関節ロボットとを備える装置が開示されている。また、特許文献1におけるAFP装置においては、貼付ヘッドは、押圧部材へ向けて繊維束を送り出す送出機構としてのフィーダーを有している。そして、その送出機構(フィーダー)は、対応する繊維束の経路上に設けられる2組のローラ対と、そのローラ対を回転駆動することによって駆動される一対の搬送ベルトを含むように構成され、繊維束をその一対の搬送ベルトでニップした状態とするように設けられている。
【0004】
なお、その送出機構は、前記のように押圧部材へ向けて繊維束を送り出す機構であり、積極的に繊維束を送り出すものである。したがって、特許文献1には開示されていないが、その送出機構は、駆動モータ等の駆動源を備えている。そして、送出機構による繊維束の送り出しは、通常は、貼付ヘッドの移動速度に応じた速度で繊維束が送り出されるように行われる。言い換えれば、送出機構における駆動モータは、前記配置中において、繊維束の送り速度が貼付ヘッドの移動速度に応じた速度となるように、その駆動が制御される。また、特許文献1には、具体的な構成は説明されていないが、所定長さの繊維束が配置型上に配置されるように、貼付ヘッド内に繊維束を切断するための繊維束切断手段を有するのが通例である、と開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、AFP装置として、多関節ロボットとしてのNC機(ロボットアーム)及び配置ヘッドとしての供給ヘッドを用いて基材(配置型)上に複数のトウ(繊維束)を配置するように構成された装置が開示されている。そして、特許文献2には、前記のように繊維束を切断するための切断装置として機能する供給ヘッドの部分(切断装置)が開示されている。
【0006】
その切断装置について、より詳しくは、切断装置は、繊維束毎に設けられると共に押圧部としての圧縮ローラよりも繊維束の送り方向における上流側に設けられるカッターロッカーアームであってカッターロッカー軸に支持されてその軸周りに回動(揺動)可能に設けられるカッターロッカーアームと、各カッターロッカーアームに取り付けられた可動刃としてのカッターブレードとを含んでいる。また、供給ヘッドには、カッターロッカーアーム毎に設けられたピストンが備えられている。そして、切断装置は、そのピストンの進退動作によってカッターロッカーアームが回動され、それに伴ってカッターブレードが繊維束の厚さ方向に進退駆動されることで、繊維束をその送り方向と直交する向きに切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-130914号
【文献】特開2015-016691号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のような特許文献2に開示された切断装置においては、ピストンによって可動刃が駆動され、その駆動期間中における可動刃と繊維束とが実際に接触する接触期間において繊維束の切断が行われる。また、その可動刃の駆動は、繊維束の送り方向に関し、略同じ位置で可動刃が繊維束に対し進退するようなかたちで行われている。すなわち、その可動刃の駆動は、前記接触期間における前記可動刃の前記送り方向への変位量が前記繊維束の送り量より小さくなるような態様で行われている。
【0009】
なお、前記のような態様で可動刃を駆動するように構成された切断装置を採用したAFP装置において、前記配置中の送出機構による繊維束の送り出しを継続しつつ切断装置による切断を行おうとすると、送られる繊維束が可動刃によって堰き止められるかたちとなり、所謂繊維束の詰まりが発生してしまう。したがって、そのAFP装置においては、繊維束の切断時(前記駆動期間)において繊維束の送り出し(変位)を停止させる必要があり、それに伴い、多関節ロボットによる配置ヘッドの移動も停止させる必要がある。
【0010】
しかし、そのように配置ヘッドの移動を停止させて繊維束の切断を行うとなると、前記配置毎に、その前記配置中に前記移動を停止させると共に、前記駆動期間に亘って前記配置が中断されることになる。そのため、1回の前記配置が前記のような停止を伴うことなく連続的に行われる場合と比べて時間を要するものとなり、前記配置の効率の低下を招き、生産性の低下を招くといった問題が生ずる。
【0011】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記配置中に繊維束を切断する切断装置を備える自動繊維束配置装置において、前述のような問題の発生を防止すべく、配置ヘッドの移動を停止すること無く繊維束の切断を行うことができる自動繊維束配置装置における繊維束の切断方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、供給装置から供給された複数の繊維束を押圧部によって配置型上に押圧することで配置型上への繊維束の配置を行う配置ヘッドであって押圧部へ向けて繊維束を送り出すために繊維束の経路毎に設けられた一対のローラ及び一対のローラの少なくとも一方を回転駆動する駆動モータを備えた送出機構を含む配置ヘッドと、配置のために配置ヘッドを予め設定された基本速度で移動させる多関節ロボットと、繊維束の送り速度が基本速度に応じた実送り速度となるように駆動モータの駆動を制御する駆動制御装置とを備えた自動繊維束配置装置、特に、配置ヘッドが繊維束の送り方向における押圧部と送出機構との間に設けられると共に可動刃を駆動して繊維束の切断を行う切断装置を備え、切断装置が可動刃を駆動する駆動期間中の可動刃と繊維束とが接触する接触期間に切断が行われると共に接触期間における可動刃の送り方向への変位量が繊維束の送り量より小さくなるような態様で可動刃の駆動が行われるように構成されている自動繊維束配置装置を前提とする。
【0013】
その上で、本発明による繊維束の切断方法は、前記のような前提とする自動繊維束配置装置において、駆動期間の開始時点から接触期間の終了時点までの可動刃の動作時間と基本速度とから動作時間における繊維束の配置長さを求め、開始時点に対して予め定められた先行期間だけ前に定められた時点を第一の時点として設定すると共に、少なくとも配置長さを先行期間で余分に送り出す追加速度を求める。そして、その切断方法は、第一の時点で送り速度を実送り速度から実送り速度に追加速度を加えた補正送り速度に変更し、開始時点で駆動モータによるローラの回転駆動を停止させる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による自動繊維束配置装置は、駆動期間の開始時点に対して予め定められた先行期間だけ前に定められた第一の時点、及び開始時点から接触期間の終了時点までの可動刃の動作時間と基本速度とから求められた動作時間における繊維束の配置長さ以上の繊維束を先行期間に送り出す追加速度が記憶された記憶器を備える。その上で、その自動繊維束配置装置は、駆動制御装置が、第一の時点で送り速度を実送り速度から実送り速度に追加速度を加えた補正送り速度に変更すると共に開始時点で駆動モータによるローラの回転駆動を停止させるように構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による前記切断方法は、基本速度をパラメータとした追加速度を求めるための演算式が予め設定されており、基本速度の変更に伴い、変更後の基本速度に応じた追加速度が演算式を用いて求められ、その求められた追加速度に基づいて補正送り速度が変更されるようにしても良い。さらに、本発明による自動繊維束配置装置は、その演算式が記憶器に予め設定されており、その演算式を用いて基本速度に応じた追加速度を求めると共にその求められた追加速度に基づいて補正送り速度を求める演算式を備えるものとしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動繊維束配置装置による繊維束の前記配置の過程において、可動刃の駆動が開始される開始時点に対して前記先行期間だけ前に設定された第一の時点に達した時点で、送出機構による繊維束の送り速度が、基本速度に応じた実送り速度から補正送り速度に変更される。但し、その補正送り速度は、可動刃の前記動作時間(前記開始時点から前記接触期間の終了時点までの時間)に配置される配置長さ分だけの繊維束を前記先行期間で余分に送り出すような、実送り速度に追加速度を加えた速度とされている。それにより、その前記先行期間(第一の時点~前記開始時点)に送り出される繊維束の長さは、前記先行期間において実送り速度で送り出される長さに対し、前記動作時間に配置される繊維束の配置長さと同じ長さ(余分長さ)を加えたものとなる。
【0017】
その上で、前記開始時点に達した時点で、送出機構による繊維束の送り出しが停止される。すなわち、切断装置による繊維束の切断動作が、繊維束の送り出しを停止した状態で行われる。それにより、前記接触期間における可動刃の送り方向への変位量が繊維束の送り量より小さくなるような態様で可動刃の駆動が行われるように切断装置が構成されていても、繊維束の詰まりが発生すること無く、繊維束を切断することができる。
【0018】
一方、第一の時点から前記開始時点(送出機構が停止される時点)までの期間での繊維束の送り出しが前記のように補正送り速度で行われるのに対し、その期間に配置される繊維束の長さ(配置によって消費される長さ)は、その同じ期間において実送り速度で送り出される長さと同じ長さとなっている。したがって、送出機構が停止される前記開始時点では、送出機構よりも下流側の繊維束には、前記余分長さ分の弛みが残っている。それにより、送出機構による繊維束の送り出しが停止されていても、その弛み分だけ押圧部へ向けた繊維束の供給が継続されることとなるため、前記配置(配置ヘッドの移動)を停止しなくても、その弛みを徐々に解消しつつ前記配置が行われることとなる。
【0019】
しかも、補正送り速度における追加速度は、前記のように、前記開始時点(送り出しが停止される時点)から前記接触期間の終了時点までの前記動作時間に配置される繊維束の長さに基づいて求められている。それにより、繊維束は、前記接触期間の終了時点で前記弛みがほぼ解消された状態となり、予め定められた長さで配置されることとなる。
【0020】
このように、本発明によれば、前述のような態様で可動刃の駆動が行われるように構成された切断装置を採用した自動繊維束配置装置において、その切断装置による切断動作が行われるにあたって繊維束の送り出しが停止されるため、その切断装置の構成による切断に伴う繊維束の詰まりが発生することが無い。しかも、本発明によれば、そのように前記配置の途中で繊維束の送り出しが停止されても、その送り出しが停止される時点(前記開始時点)で送出機構よりも下流側に前記のような弛みが残るように繊維束の送り出しが行われる結果として、その弛み分による押圧部へ向けた繊維束の供給が継続されるため、前記配置を停止させること無く継続することができる。それにより、前述のような前記配置の効率の低下を招くことなく、前記配置を行うことができる。
【0021】
また、本発明による自動繊維束配置装置において、基本速度をパラメータとした追加速度を求めるための演算式が予め設定されており、基本速度の変更に伴い、補正送り速度を求めるために用いられる追加速度がその演算式を用いて求められるようにすることにより、作業者による設定作業を容易化することができる。
【0022】
詳しくは、配置ヘッドの基本速度は、常に一定と限らず、配置型の形状等の配置条件によっては、異なる速度で前記配置が行われるように設定される。また、補正送り速度を求めるための追加速度は、前述のように可動刃の動作時間に配置される配置長さを前記先行期間で余分に送り出すように設定される速度であることから、基本速度毎に異なる速度となる。したがって、例えば1つの配置型に対する前記配置がその配置箇所等に応じて基本速度を異ならせて行われるような場合には、その前記配置毎に、異なる追加速度を用いて補正送り速度を求めることとなる。その場合において、作業者が、予め把握されている各基本速度等に基づいて追加速度を求め、その各追加速度を基本速度に対応付けるかたちで設定するといった手法も考えられるが、その場合には、その設定に伴う作業が煩雑なものとなる。
【0023】
それに対し、前記のように設定された演算式を用いて補正送り速度を求めるための追加速度が求められるようにすることにより、追加速度がその演算式を用いて自動的に求められるため、前述のような追加速度の設定に伴う作業を省略することができる。それにより、前記配置に必要となる設定作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明が適用された自動繊維束配置装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】自動繊維束配置装置の配置ヘッドを示す説明図である。
【
図3】自動繊維束配置装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】自動繊維束配置装置の制御態様の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、
図1~
図4に基づき、本発明による自動繊維束配置装置の一実施例について説明する。
【0026】
図1に示すように、自動繊維束配置装置1は、繊維束2が巻き付けられたボビン3が仕掛けられた供給装置4と、その供給装置4から供給された繊維束2の配置型5上への配置を行うための配置ヘッド6と、前記配置のために配置ヘッド6を移動させる多関節ロボット7とを備えている。なお、本実施例においては、自動繊維束配置装置1は、16本の繊維束2の前記配置が同時に行えるように構成されている。したがって、供給装置4には、
図1では手前側の4個のみが示されているが、16個のボビン3が仕掛けられている。
【0027】
また、供給装置4は、各ボビン3から引き出された繊維束2を多関節ロボット7側へ向けて案内するガイド部9を備えている。そのガイド部9は、各繊維束2を個別に案内するために繊維束2毎に設けられたガイド部材(図示略)を備え、そのガイド部材により各繊維束2を多関節ロボット7よりも高い位置で案内するように構成されている。さらに、その供給装置4において、各ボビン3とガイド部9との間の繊維束2の経路中には、各繊維束2の張力を調整するための構成として、各繊維束2に共通のダンサロール8が備えられている。その構成により、各繊維束2は、ボビン3とガイド部9との間で適当な張力に調整され、適当な張力状態で多関節ロボット7側へ引き出される。
【0028】
また、多関節ロボット7には、前記のようにガイド部9で案内された各繊維束2を案内するためのガイド機構10が取り付けられている。そのガイド機構10は、多関節ロボット7における先端側のアーム7aに取り付けられている。また、ガイド機構10は、各繊維束2を個別に案内するために繊維束2毎に設けられたトウガイド(図示略)を備えており、各トウガイドが支持部材10aにより支持される構成となっている。そして、そのガイド機構10は、支持部材10aがアーム7aの上方において上方へ向けて延びると共に、支持部材10aの先端側で各繊維束2を案内するように設けられている。
【0029】
したがって、その自動繊維束配置装置1において、各ボビン3から引き出された繊維束2は、上下方向に関し多関節ロボット7よりも高い位置で供給装置4(ガイド部9)から引き出された後、多関節ロボット7の上方を通過するかたちでガイド機構10に至っている。そして、各繊維束2は、ガイド機構10に案内されるかたちで転向され、多関節ロボット7におけるアーム7aの先端に取り付けられた配置ヘッド6に導かれている。
【0030】
その配置ヘッド6は、
図2に示すように、繊維束2を配置型5上に押圧する押圧装置13と、その押圧装置13へ向けて繊維束2を送る送出機構20と、押圧装置13と送出機構20との間で繊維束2を切断する切断装置30とを備えている。なお、その配置ヘッド6において、送出機構20の上方には、送出機構20へ向けて繊維束2を案内するガイドローラ11が設けられている。また、送出機構20と切断装置30との間には、繊維束2のその厚さ方向への変位を規制する規制ガイド12が設けられている。
【0031】
それらの各構成要素について、押圧装置13は、繊維束2を配置型5上に押圧する押圧部13aと、押圧部13aに対し配置型5へ向けた押圧力を発生させる押圧機構(図示略)とを備えている。なお、その押圧部13aは、各繊維束2に共通の部材であって、本実施例では回転可能に設けられたローラ状の部材である所謂コンパクションローラである。
【0032】
また、ガイドローラ11は、その軸線方向を押圧部(コンパクションローラ)13aの軸線方向と一致させるかたちで設けられている。その上で、本実施例では、前述のように配置ヘッド6に導かれた16本の繊維束2を2つのグループに振り分けるべく、そのガイドローラ11は、配置ヘッド6の前後方向(前記配置に伴って繊維束2が配置型5上に配置される方向と一致する方向)に位置を異ならせて2本設けられている。そして、各繊維束2がいずれかのガイドローラ11に振り分けられて案内されることで、配置ヘッド6内においては、16本の繊維束2は、2つのグループに振り分けられ、グループ毎に前記前後方向における異なる位置でガイドローラ11に案内され、押圧部13aに至ることとなる。
【0033】
なお、その繊維束2の各グループは、16本の繊維束2を均等に分ける結果として、8本ずつの繊維束2で形成されている。したがって、16本の繊維束2による経路は、前記前後方向に異なる2位置における8本ずつの経路となっている。そして、その配置ヘッド6内における各繊維束2の経路は、その繊維束2が対応するガイドローラ11を経由し、各繊維束2に共通の押圧部13aに至っている。
【0034】
その上で、送出機構20は、その繊維束2の経路毎に設けられた送り機構21と、送り機構21毎に設けられて送り機構21を回転駆動する駆動モータ22とを有している。その各送り機構21は、本実施例では、繊維束2をニップするように設けられた一対のローラ21a、21bで構成されている。そして、各送り機構21は、一対のローラ21a、21bのうちの一方(図示の例ではローラ21a)が駆動モータ22によって回転駆動されることで、他方が従動回転し、それによって繊維束2を押圧装置13における押圧部13aへ向けて送るものとなっている。
【0035】
また、規制ガイド12は、前記のように、各送出機構20と各切断装置30との間において、繊維束2の厚さ方向において繊維束2の変位を規制するように設けられるものである。そこで、その規制ガイド12は、前記厚さ方向において繊維束2を挟むように対向して設けられた一対の規制部材12a、12aで構成されている。なお、本実施例では、繊維束2は前記のように8本ずつの2つのグループに分けられて導かれているが、各規制部材12aは、繊維束2の幅方向に関し、8本の繊維束2の存在範囲を包含するような大きさの部材として形成されている。したがって、各規制部材12aは、前記グループにおいて8本の繊維束2に共通の単一のものとして設けられており、規制ガイド12は、前記グループ毎に1つずつ設けられている。
【0036】
なお、その規制ガイド12は、前記のように前記厚さ方向における繊維束2の変位を規制するものであるから、その一対の規制部材12a、12aの間隔は、繊維束2の厚さ寸法よりも若干大きくなるような間隔に設定されている。また、各規制部材12aは、前記のように配置された状態での繊維束2の送り方向における寸法が、送出機構20から切断装置30に至る繊維束2の大部分を包含する大きさの寸法であるように形成されている。
【0037】
また、切断装置30は、繊維束2の経路毎に設けられた可動刃32、及びその可動刃32とでその経路を挟むように設けられた受け部材33を含んでいる。また、切断装置30は、可動刃32毎に設けられると共に、可動刃32に繊維束2を切断するための切断動作を行わせる可動刃駆動機構31を含んでいる。
【0038】
なお、各可動刃32は、その刃線(刃先)の延在方向が前記幅方向と平行を成すと共に前記送り方向と略直交するようなかたちで設けられている。また、受け部材33は、前記のように可動刃32との間で繊維束2を挟むように設けられると共に、前記厚さ方向に関し繊維束2に略当接するような配置で、繊維束2毎に設けられている。因みに、その各受け部材33は、本実施例では、平板状の部材であり、前記のように配置された状態での前記幅方向における寸法が繊維束2の幅寸法より若干大きい部材となっている。
【0039】
また、可動刃駆動機構31は、本実施例では、前記のように設けられた可動刃32を前記厚さ方向に直線的に変位させるように構成されたものとする。そして、その可動刃駆動機構31は、可動刃32が繊維束2から最も離間して後退された待機位置と、可動刃32が受け部材33に当接して繊維束2の切断が為される切断位置との間で、可動刃32を前記のように直線的に往復変位させるものとなっている。なお、その可動刃駆動機構31について、構成自体は周知のものであることから詳細な説明や図示は省略するが、例えば、ソレノイドを駆動源として用い、そのソレノイドの励磁、非励磁を切り替えることで可動刃32を前記のように構成されたものである。
【0040】
そして、そのように構成された切断装置30においては、各可動刃32について、可動刃駆動機構31によって前記待機位置にある可動刃32が繊維束2へ向けて往動され、刃先が受け部材33に当接する前記切断位置まで可動刃32が変位することで、可動刃32と受け部材33との協働で繊維束2が切断される。そして、その切断後、可動刃駆動機構31によって前記切断位置にある可動刃32が受け部材33から離れるように復動され、可動刃32が前記待機位置まで変位することで、切断装置30による切断動作が完了となる。
【0041】
また、自動繊維束配置装置1は、前記配置を実行するための多関節ロボット7の動作及び配置ヘッド6における各部の動作を制御するための構成要素として、
図3に示すような主制御装置40を備えている。その主制御装置40について、より詳しくは、多関節ロボット7の動作及び配置ヘッド6における各部の動作の制御は、予め設定された動作プログラムに従って実行される。そこで、主制御装置40は、その動作プログラム等の各制御のための制御情報を記憶する記憶器45を含んでいる。さらに、自動繊維束配置装置1は、その各制御のために必要な設定値を作業者が入力設定するための入力設定装置47を備えている。そして、その入力設定装置47が、記憶器45に接続されている。
【0042】
また、主制御装置40は、配置ヘッド6を移動させる多関節ロボット7を制御する配置制御器41を備えている。その配置制御器41は、前記した記憶器45に接続されると共に、記憶器45に記憶された動作プログラムに従った動作を多関節ロボット7に実行させるように、多関節ロボット7における各駆動部分(図示略)に接続されている。なお、その動作プログラムには、前記配置を実行する際の配置ヘッド6の移動速度に関する基本速度であって、配置型5の形状等の配置条件に合せて設定される基本速度が含まれている。その上で、配置制御器41は、前記配置の実行時において、その記憶器45に記憶された動作プログラムに従い、多関節ロボット7の駆動を制御するように構成されている。そして、多関節ロボット7の駆動がそのように制御されることで、そのときの前記配置に応じた基本速度で配置ヘッド6の移動が行われる。
【0043】
また、前記したように、主制御装置40は、前記配置を実行するための配置ヘッド6における各部の動作、具体的には、押圧装置13へ向けて繊維束2を送り出す送出機構20の動作、及び繊維束2を切断する切断装置30の動作を制御するように構成されている。そこで、主制御装置40は、その送出機構20における各送り機構21に対応させて設けられた各駆動モータ22の駆動を制御するための構成要素として、駆動制御装置42を備えている。また、主制御装置40は、切断装置30における各可動刃32に対応させて設けられた各可動刃駆動機構31の駆動を制御するための構成要素として、切断制御器46を備えている。
【0044】
それらの構成要素のうち、駆動制御装置42は、各送り機構21による繊維束2の送り速度に応じた駆動指令信号を出力する演算器44と、演算器44から出力された駆動指令信号に基づいて各駆動モータ22の駆動を制御するモータ制御器43とを備えている。そして、その駆動制御装置42においては、演算器44は、その入力端において配置制御器41及び記憶器45に接続されている。また、モータ制御器43は、その入力端において演算器44に接続されると共に、駆動モータ22に接続されている。
【0045】
また、その演算器44について、演算器44は、前記した配置ヘッド6の基本速度に応じた送り速度である実送り速度で各送り機構21による繊維束2の送り出しが行われるように、その送り機構21を回転駆動する各駆動モータ22の駆動速度を求めるように構成されている。なお、その実送り速度は、基本的には、配置ヘッド6の移動速度である基本速度と同じ速度である。
【0046】
より詳しくは、前述のように配置制御器41は、各前記配置に応じた基本速度を含む動作プログラムに従って配置ヘッド6の移動を伴う多関節ロボット7の駆動を制御するが、その前記配置毎に、その動作プログラムに含まれる基本速度を示す信号(基本速度信号)を演算器44に対し出力するように構成されている。そして、演算器44は、その基本速度信号の入力に伴い、その基本速度信号が示す速度である基本速度に基づき、各送り機構21による繊維束2の送り速度が、その基本速度と等しい速度となるような駆動モータ22の駆動速度を求めるように構成されている。そして、その場合には、その基本速度と等しい送り速度が、本発明で言う実送り速度となる。
【0047】
また、本実施例では、繊維束2の張力に基づいて駆動モータ22の駆動速度を補正する張力制御が実行されるように駆動制御装置42が構成されている。そこで、配置ヘッド6には、繊維束2毎にその張力を検出する張力検出器(図示略)が備えられており、その張力検出器から出力される張力検出信号が、駆動制御装置42における演算器44に入力されるように構成されている。また、記憶器45には、繊維束2の目標張力値が記憶されているものとする。その上で、演算器44は、前記配置中に、例えば所定の周期において、張力検出信号による検出張力値と記憶器45に記憶された目標張力値とを比較し、両者に偏差が生じている場合に、前記のようにして基本速度に基づいて求められた前記駆動速度を、その偏差を解消する方向に補正するようにも構成されている。そして、そのように前記偏差が生じて駆動速度が補正された場合には、その補正された駆動速度で駆動モータ22が駆動された際の送り機構21による送り速度が実送り速度となる。
【0048】
そして、演算器44は、そのように駆動モータ22の駆動速度を求める(補正する)のに伴い、その駆動速度に応じた駆動指令信号をモータ制御器43に対し出力するように構成されている。その上で、モータ制御器43は、そのような駆動指令信号が入力されることで、その駆動指令信号が示す駆動速度で駆動モータ22が駆動されるように、その駆動を制御するように構成されている。
【0049】
また、前記した各可動刃駆動機構31の駆動を制御するための構成である切断制御器46について、その切断制御器46は、その出力端において各可動刃駆動機構31に接続されていると共に、その入力端において配置制御器41に接続されている。そして、その切断制御器46は、配置制御器41から出力される切断装置30による切断動作を開始するための信号(切断動作開始信号)、及びその切断動作を終了させるための信号(切断動作終了信号)に基づき、切断装置30における可動刃32が往復変位されるように、各可動刃駆動機構31の駆動を制御するように構成されている。
【0050】
より詳しくは、前記した多関節ロボット7の動作及び配置ヘッド6における各部の動作を制御するための動作プログラムには、前記した基本速度に加え、1回の前記配置で配置される分の繊維束2の配置長さが含まれている。なお、繊維束2の経路上での、切断装置30(可動刃32)による切断位置から押圧装置13の押圧部13aまでの繊維束2の経路長(部分経路長)は、切断装置30の配置及び構成、並びに切断装置30と押圧装置13(押圧部13a)との位置関係等から予め求められるものとなっている。そして、その部分経路長は、繊維束2が切断された時点での、前記した1回の前記配置分の前記配置長さにおける未配置分の長さに相当する。言い換えれば、前記配置の過程で残りの配置長さがその部分経路長に一致する長さとなった時点が、切断装置30による繊維束2を切断する時点(切断動作を開始する時点)となる。そこで、その部分経路長も、予め求められた上で、記憶器45において予め記憶されている。
【0051】
また、配置制御器41は、前記配置が開始される時点(配置開始時点)から作動を開始して、その前記配置が実行されている時間(配置時間)を計測するタイマー回路(図示略)を含んでいる。なお、その配置制御器41は、1回の前記配置が終了した時点でタイマー回路による計時を停止すると共に、タイマー回路をリセットするように構成されている。
【0052】
その上で、配置制御器41は、前記配置開始時点において、切断装置30によって切断動作を開始する時点(切断動作開始時点)を、前記配置毎に、そのときの1回の前記配置分の前記配置長さ及び基本速度と前記した部分経路長とから、前記配置開始時点からの時間で求めるように構成されている。さらに、配置制御器41は、前記タイマー回路で計時された配置時間がその求めた切断動作開始時点に達した時点で、切断制御器46に対し切断動作開始信号を出力するように構成されている。
【0053】
切断制御器46は、その切断動作開始信号が入力されると、切断装置30における各可動刃32を前記待機位置から前記切断位置まで往動変位させるように、各可動刃駆動機構31の駆動を制御するように構成されている。そして、そのように切断制御器46により各可動刃駆動機構31の駆動が制御され、各可動刃32が往動されて前記待機位置から前記切断位置に達することで、各繊維束2の切断が行われる。
【0054】
また、各繊維束2の切断後において、各可動刃32が前記切断位置から前記待機位置へ復動されることで、切断装置30による切断動作が終了される。そこで、配置制御器41は、前記した切断動作開始信号の出力後、そのような各可動刃32の復動が実行されるように切断制御器46が各可動刃駆動機構31の駆動を制御するための切断動作終了信号を、切断制御器46に対し出力するように構成されている。
【0055】
なお、その切断動作終了信号の出力時点は、切断動作開始信号の出力時点を起点とした経過時間で設定されているものとする。但し、その切断動作終了信号の出力時点は、前記のように可動刃32の復動が開始される時点である。したがって、前記経過時間は、切断動作開始信号の出力時点に対する復動が開始される時点までの時間(復動設定時間)である。そして、その復動設定時間は、各可動刃駆動機構31による往動駆動時において、各可動刃32が前記待機位置から前記切断位置へ達するのに要する時間(往動時間)を踏まえて定められる。具体的には、その復動設定時間は、各繊維束2の切断が確実に行われた後に復動が開始されるように、前記往動時間に適当な余裕時間を加えた時間として定められる。その上で、そのように定められた復動設定時間も、記憶器45において予め記憶されている。
【0056】
そして、配置制御器41は、前記した切断動作開始信号の出力時点(切断動作開始時点)から、前記タイマー回路による計時に基づき、前記した復動設定時間だけ時間が経過した時点で切断動作終了信号を切断制御器46に対し出力するように構成されている。
【0057】
切断制御器46は、その切断動作終了信号が入力されると、切断装置30における各可動刃32を前記切断位置から前記待機位置へ向けて復動変位させるように、各可動刃駆動機構31の駆動を制御するように構成されている。そして、そのように切断制御器46により各可動刃駆動機構31の駆動が制御され、各可動刃32が復動されて前記切断位置から前記待機位置に達することで、切断装置30による切断動作が終了される。
【0058】
なお、そのような切断装置30による切断動作について、その切断動作は、可動刃32が前記待機位置と前記切断位置との間で往復変位されることで為される。但し、可動刃32の前記待機位置が繊維束2の経路から離間した位置に設定されていることから、可動刃32による繊維束2の切断が為されるのは、厳密には、可動刃32が往復変位駆動される期間である駆動期間のうちの一部の期間である。具体的には、前記のように切断動作開始信号が配置制御器46から出力されて可動刃32の往動が開始された後、可動刃32の刃先が繊維束2の表面に達した時点(繊維束2に接触を開始した時点)から、繊維束2の実際の切断が開始される。そして、可動刃32(刃先)が前記切断位置に達した時点で、その切断が完了する。すなわち、実際の切断期間は、可動刃32が前記厚さ方向における繊維束2の存在範囲に達した時点から前記切断位置に至るまでの期間である。
【0059】
また、その切断完了後の切断動作終了信号の出力に伴って可動刃32が復動することで切断動作が終了されるが、その前記切断位置からの復動の過程において、可動刃32が前記待機位置に達する前の繊維束2から離れるまでの期間は、可動刃32が、前記存在範囲内に在る期間であって、繊維束2に接触し得る状態にある期間である。このように、往動時における前記した実際の切断が開始される時点から復動時における可動刃32が繊維束2から離れる時点までの期間は、可動刃32が前記存在範囲内に在る期間であり、その期間が本発明で言う接触期間に相当する。
【0060】
その上で、その切断動作による可動刃32の往復変位駆動について、本実施例の切断装置30では、その可動刃32の駆動は、前記厚さ方向に関し、可動刃32が直線的に往復変位するように行われている。すなわち、その可動刃32の駆動は、前記送り方向に関し略同じ位置で(変位が無い状態で)行われている。したがって、その可動刃32が往復変位駆動される駆動期間に含まれる接触期間においても、可動刃32の前記送り方向への変位量は零となっている。
【0061】
なお、その接触期間における可動刃32の前記送り方向における変位量について、その変位量は、前記のように零であることから、当然ながら、送出機構20から繊維束2が送り出されている間のいかなる期間(例えば、前記した接触期間と同程度の期間)における繊維束2の送り量よりも小さい。このように、本実施例の切断装置30は、前記接触期間における各可動刃32の前記送り方向への変位量がその前記接触期間相当の期間での繊維束2の送り量より小さくなるような態様で可動刃32を駆動するように構成されてものとなっている。
【0062】
以上のように構成された自動繊維束配置装置1においては、先ず、配置型5における前記配置が開始される位置に応じた位置に配置ヘッド6が移動された上で、配置ヘッド6における押圧部13aにより繊維束2を配置型5上に押圧した状態で配置ヘッド6の移動が開始されることにより、前記配置が開始される。また、その前記配置開始時点において、配置ヘッド6を移動させる多関節ロボット7の駆動を制御する配置制御器41は、配置ヘッド6の移動速度である基本速度を示す基本速度信号を、駆動制御装置42における演算器44に対し出力する。
【0063】
演算器44は、その基本速度信号が入力されると、繊維束2の送り速度がその基本速度と等しい速度で駆動モータ22を駆動させる駆動速度を求め、その駆動速度を示す駆動指令信号をモータ制御器43に対し出力する。そして、モータ制御器43は、その駆動指令信号が入力されるのに伴い、送り機構21(ローラ21a)を回転駆動する駆動モータ22の駆動の制御を開始する。それにより、前記のように配置ヘッド6の移動が開始されるのに伴い、前記した張力制御が実行されつつ、前述したような基本速度に応じた実送り速度で送り機構21による繊維束2の送り出しが開始される。
【0064】
また、配置制御器41においては、前記配置開始時点から、タイマー回路による配置時間の計時が開始される。そして、配置制御器41は、その配置時間が、前記した切断動作開始時点に達した時点で、切断制御器46に対し切断動作開始信号を出力する。それにより、切断制御器46による各可動刃駆動機構31の駆動の制御が開始され、切断装置30における各可動刃32の前記切断位置に向けた往動が開始される。そして、各可動刃32が前記切断位置に達した時点で、各繊維束2の切断が為される。
【0065】
さらに、配置制御器41は、前記した切断動作開始信号の出力時点から前記した復動設定時間だけ時間が経過した時点で、切断制御器46に対し切断動作終了信号を出力する。それに伴い、切断制御器46が各可動刃駆動機構31の駆動を制御することによる各可動刃32の前記待機位置に向けた復動が開始される。そして、各可動刃32が前記待機位置に達した時点で、切断動作が終了される。その後、切断された繊維束2の端(切断端)が、配置ヘッド6の移動に伴ってその押圧部13aに向けて移動され、その切断端がその押圧部13aにより配置型5上に押圧されることで、1回の前記配置は終了とされる。
【0066】
以上のような自動繊維束配置装置1において、本発明におけるその切断装置30による繊維束2の切断方法では、可動刃32が駆動される前記駆動期間の開始時点(前記切断動作開始時点)に対して予め定められた先行期間だけ前に定められた時点が第一の時点として設定される。そして、前記切断動作開始時点から前記接触期間の終了時点までの可動刃32の動作時間と前記した配置ヘッド6の基本速度とからその動作時間において配置される繊維束2の配置長さが求められた上で、少なくともその配置長さを前記先行期間で余分に送り出す追加速度が求められる。その上で、その切断方法においては、繊維束2の送り速度が前記第一の時点で前記の実送り速度からその実送り速度に追加速度を加えた補正送り速度に変更されると共に、前記切断動作開始時点で駆動モータ22によるローラ21aの回転駆動が停止される。
【0067】
すなわち、本発明による自動繊維束配置装置1は、切断装置30による繊維束2の切断が、前記のような切断方法で行われるように構成されている。そのような自動繊維束配置装置1の一実施例(本実施例)について、
図3~4に基づいて以下に詳述する。
【0068】
なお、前記のような第一の時点で繊維束2の送り速度を変更すると共に前記切断動作開始時点でローラ21aの回転を停止させるための駆動モータ22の制御は、前記した駆動制御装置42によって実行される。また、本実施例では、前記第一の時点及び追加速度は、前記した記憶器45に記憶されているものとする。すなわち、記憶器45が、本発明で言う記憶器として機能するものである。但し、その記憶器45には基本速度をパラメータとした追加速度を求めるための演算式が予め設定されており、記憶される追加速度はその演算式を用い、基本速度に応じた速度として求められるものとする。また、本実施例では、その演算式を用いた追加速度の算出は、前記した演算器44によって行われるものとする。さらに、その求められた追加速度から補正送り速度を求める演算も、その演算器44によって行われるものとする。したがって、その演算器44が、本発明で言う演算器として機能するものである。
【0069】
自動繊維束配置装置1において、主制御装置40における記憶器45には、前記のように前記第一の時点及び追加速度が記憶される。但し、その追加速度は、前記のように、基本速度をパラメータとした演算式を用いて算出される。また、前記第一の時点は、本実施例では、前記切断動作開始時点と予め定められた先行期間とを用いて算出される。そこで、記憶器45には、前記演算式及び前記先行期間が予め記憶されている。
【0070】
その前記第一の時点について、前記第一の時点は、前記のように前記切断動作開始時点に対し予め定められた先行期間だけ前に遡った時点である。そして、その前記切断動作開始時点は、前述したように本実施例では、前記配置毎に、その前記配置における基本速度に基づき、算出によって求められる。そこで、前記第一の時点も、その前記切断動作開始時点が算出されるのに伴い、算出によって求められる。
【0071】
なお、その前記第一の時点の算出は、配置制御器41によって行われる。そこで、配置制御器41は、前記切断動作開始時点の算出が行われる各前記配置開始時点で、その前記切断動作開始時点の算出に次いで、前記第一の時点の算出を行うように構成されている。さらに、配置制御器41は、その算出に伴い、その算出された前記第一の時点を記憶器45に対し出力するように構成されている。それにより、その前記第一の時点は、前記のように記憶器45において記憶される。
【0072】
また、その配置制御器41による前記第一の時点の算出は、先に算出された前記切断動作開始時点と、記憶器45に記憶されている前記先行期間とを用いて行われる。なお、その前記先行期間について、その前記先行期間は、次のような考え方に基づいて定められる。
【0073】
先ず、本実施例における前記配置では、前述のように、繊維束2を送り出すための駆動モータ22の駆動の制御が、繊維束2の張力に基づく張力制御を伴うかたちで行われている。一方、本発明においては、繊維束2の送り速度は、前記第一の時点で、前記のように配置ヘッド6の基本速度に応じた実送り速度から、その実送り速度に追加速度を加えた補正送り速度(実送り速度よりも速い速度)に変更される。但し、配置ヘッド6の移動は、前記第一の時点以降も基本速度で行われる。そのため、前記した張力制御は、前記第一の時点に達した時点で終了させる必要がある。
【0074】
したがって、前記先行期間を長い期間としてしまうと、その分だけその1回の前記配置における張力制御が実行されない期間も長くなってしまう。そして、そのように張力制御が実行されない期間が長くなると、前記配置に問題が生じる虞がある。一方、前記先行期間を短い期間としてしまうと、その分だけ前記した補正送り速度を速くしなければならなくなる。そして、補正送り速度を速めると、その速度によっては、繊維束2がダメージを受けたり、駆動モータ22に掛かる負荷が大きくなってしまうといった問題が生じる虞がある。そこで、前記先行期間は、そのような問題が生じない程度の長さとなるように定められる。
【0075】
また、前記したように、記憶器45には、追加速度を求めるための演算式が予め記憶されている。そして、その記憶器45に記憶された演算式を用いた追加速度の算出は、演算器44によって行われる。そこで、演算器44は、前記のように配置制御器41から基本速度を示す基本速度信号が入力される前記配置開始時点で、その基本速度信号が示す基本速度に基づき、記憶器45に記憶された演算式を用いて追加速度を算出するように構成されている。そして、演算器44は、その追加速度を算出するのに伴い、その追加速度を記憶器45に対し出力するように構成されている。それにより、その追加速度は、記憶器45に記憶される。
【0076】
また、追加速度を算出するための演算式について、その演算式は、前記のように基本速度をパラメータとする演算式である。より詳しくは、その演算式は、基本速度に加え、前記切断動作開始時点から前記接触期間の終了時点までの可動刃32の動作時間を用い、その基本速度と前記動作時間とから前記動作時間において配置される繊維束2の配置長さが求められるように設定されている。すなわち、演算式は、前記動作時間と基本速度との乗算を含むように設定されている。
【0077】
なお、前記動作時間について、その前記動作時間は、前記した復動設定時間(可動刃32の往動が開始される時点から復動が開始される時点までの時間)と、その復動が開始される時点からの可動刃32が繊維束2から離れる時点までの時間とを合計した時間である。そして、その復動設定時間は、前記のように記憶器45に予め記憶される時間であり、予め把握されている(求められている)時間である。また、後者の可動刃32が繊維束2から離れるまでの時間も、可動刃32の駆動態様(速度)や繊維束2の厚さ等から予め求めることができる時間である。
【0078】
さらに、演算式は、前記動作時間及び基本速度から求められる前記配置長さと前記先行期間とから、前記先行期間において前記配置長さ分の繊維束2を送り出す速度(本発明で言う追加速度)が求められるように設定されている。すなわち、演算式は、前記動作時間と基本速度との乗算に加え、その乗算結果を前記先行期間で除算するように設定されている。
【0079】
但し、前記先行期間も、前記のように予め記憶器45に記憶される期間(時間)であり、予め把握されている(求められている)時間である。したがって、その演算式における変数(パラメータ)は、前記のように前記配置毎に配置制御器41から出力される基本速度信号で示される基本速度のみである。
【0080】
また、前記のように、前記第一の時点において、繊維束2の送り速度が、実送り速度から実送り速度に追加速度を加えた補正送り速度に変更される。但し、その前記第一の時点で変更される補正送り速度は、その前記第一の時点での実送り速度と記憶器45に記憶された追加速度とを用いて算出される。したがって、その補正送り速度の算出は、前記第一の時点において行われる。そこで、演算器44は、その前記第一の時点において、その前記第一の時点での実送り速度と追加速度とを用いて補正送り速度を求めるように構成されている。
【0081】
なお、前述のように配置制御器41は、前記配置開始時点から配置時間を計時するタイマー回路を含むように構成されている。その上で、配置制御器41は、前記配置時間が記憶器45に記憶された前記第一の時点に達した時点で、補正送り速度の算出を実行させるための補正信号を、演算器44に対し出力するように構成されている。
【0082】
そして、演算器44は、その補正信号の入力に伴い、前記第一の時点での実送り速度に記憶器45に記憶された追加速度を加えた速度、すなわち、本発明で言う補正送り速度を求めるように構成されている。また、演算器44は、その補正送り速度を求めるのに伴い、求めた補正送り速度から、各送り機構21による繊維束2の送り速度が補正送り速度となるような駆動モータ22の駆動速度(補正駆動速度)を求めるように構成されている。さらに、演算器44は、そのように前記補正駆動速度を求めた時点で、モータ制御器43に対し出力する駆動指令信号を前記補正駆動速度に応じたものに変更するように構成されている。そして、演算器44から出力される駆動指令信号がそのように前記補正駆動速度に応じたものに変更されることで、各送り機構21における繊維束2の送り速度が実送り速度から補正送り速度に変更される。
【0083】
なお、前述のように、前記第一の時点までの前記配置は、繊維束2の張力に基づいて前記駆動速度を補正する張力制御を伴って行われるが、前記第一の時点以降では、すなわち、繊維束2の送り速度が補正送り速度に変更された時点以降では、その前記張力制御を終了させる必要がある。また、その前記張力制御は、駆動制御装置42によって実行されている。そこで、本実施例では、駆動制御装置42は、前記第一の時点で前記張力制御を終了させるように構成されている。
【0084】
具体的には、駆動制御装置42による前記張力制御は、前述のように、張力検出器で検出された繊維束2の検出張力値と記憶器45に記憶された目標張力値とが演算器44において比較されてその両者の偏差が求められた上で、演算器44がその偏差を解消する方向に、前述のように基本速度に基づいて求められた前記駆動速度を補正する、といったかたちで行われている。そこで、演算器44は、前記第一の時点となって前記補正信号が入力されることに伴い、前記偏差の有無に関わらず、前記駆動速度の補正を行わないように構成されているものとする。それにより、前記第一の時点以降では、検出張力値が目標張力値と異なっていても前記駆動速度の補正が行われない状態、すなわち、前記張力制御が終了された状態となる。
【0085】
また、前述のように本発明においては、前記切断動作開始時点で、駆動モータ22によるローラ21aの回転駆動が停止される。すなわち、駆動モータ22の駆動を制御する駆動制御装置42は、前記切断動作開始時点でローラ21aの回転駆動を停止させるような駆動モータ22の駆動を実行するように構成されている。なお、前記のように配置制御器41は、タイマー回路で計時された配置時間が前記切断動作開始時点に達した時点で、切断動作を開始するための切断動作開始信号を切断制御器46に対し出力するものとなっている。その上で、配置制御器41は、その切断動作開始信号を駆動制御装置42におけるモータ制御器43に対しても出力するように構成されている。そして、モータ制御器43は、その切断動作開始信号が入力されるのに伴い、前記のような駆動モータ22の駆動を制御するように構成されている。それにより、前記切断動作開始時点以降では、駆動モータ22によるローラ21aの回転駆動が停止された状態となる。
【0086】
なお、前記した配置制御器41で求められる前記切断動作開始時点について、前記配置開始時点からそのローラ21aの回転駆動が停止される(繊維束2の送り出しが停止される)前記切断動作開始時点までの間における、前記第一の時点からその前記切断動作開始時点までの期間(先行期間)では、前述のように補正送り速度で繊維束2の送り出しが行われる。また、その補正送り速度において、実送り速度に加えられる追加速度は、可動刃32の前記動作時間において基本速度で配置される配置長さ分だけの繊維束2を前記先行期間で余分に送り出すような速度である。
【0087】
それにより、前記切断動作開始時点では、その追加速度で送り出される分の長さの繊維束2が余分に送り出された状態となっており、前記切断動作開始時で前記のように送り出しが停止されるのに伴い、可動刃32の前記動作時間の終了時点(前記接触期間の終了時点)で、前記切断位置から押圧部13aに亘る繊維束2の長さが前記部分経路長と一致した状態となる。
【0088】
したがって、1回の前記配置分の前記配置長さから前記部分経路長を減算した長さの繊維束2を配置し終わった時点は、前記接触期間の終了時点と一致する。そこで、1回の前記配置分の前記配置長さ及び前記部分経路長と基本速度とから、前記配置開始時点から前記接触期間の終了時点までの時間を求めることができる。その上で、前記切断動作開始時点は、その前記接触期間の終了時点に対し可動刃32の前記動作時間だけ遡った時点であることから、その求められた前記接触期間の終了時点までの時間から前記動作時間を減算することで、時間として求められる。
【0089】
以上のような自動繊維束配置装置1によれば、前述のように実行される1回の前記配置において、先ずはその前記配置開始時点で、配置制御器41は、その前記配置における基本速度に基づき、前記切断動作開始時点を算出によって求めると共に、その求めた前記切断動作開始時点と記憶器45に記憶された前記先行期間とを用いて前記第一の時点を求める。そして、配置制御器41がその求めた前記第一の時点を記憶器45に出力することで、その前記第一の時点が記憶器45において記憶された状態となる。
【0090】
また、その前記配置開始時点において、前述のように演算器44には、配置制御器41から基本速度を示す基本速度信号が入力される。そして、演算器44は、その基本速度信号が入力されるのに伴い、記憶器45に記憶された演算式を用い、基本速度と可動刃32の動作時間とから前記動作時間において配置される繊維束2の配置長さを求めると共に、その求めた前記配置長さと前記先行期間とから前記先行期間において前記配置長さ分の繊維束2を送り出すための追加速度を求める。さらに、演算器44がその求めた追加速度を記憶器45に対し出力することで、その追加速度が記憶器45において記憶された状態となる。
【0091】
その上で、前記配置が開始されるが、配置制御器41は、前述のようにその前記配置開始時点でタイマー回路による前記配置時間の計時を開始する。そして、その前記配置の過程において、前記配置時間が記憶器45に記憶された前記第一の時点に達すると、配置制御器41がその時点で演算器44に対し補正信号を出力する。演算器44は、その補正信号が入力されるのに伴い、その時点(前記第一の時点)での実送り速度に対し記憶器45に記憶された追加速度を加えた補正送り速度を求めると共に、繊維束2の送り速度がその求めた補正送り速度となるような駆動モータ22の駆動速度である前記補正駆動速度を求める。
【0092】
そして、演算器44がモータ制御器43に対し出力する前記駆動指令信号をその求めた前記補正駆動速度に応じたものに変更することで、送り機構21による繊維束2の送り速度が前記第一の時点において実送り速度から補正送り速度に変更され、それ以降は補正送り速度で繊維束2が送り出される状態となる。なお、前述のように、前記第一の時点以降においては、駆動制御装置42による前記張力制御は停止された状態となる。
【0093】
そして、前記第一の時点以降においては、送り機構21による繊維束2の送り出しが補正送り速度で行われるのに対し、配置ヘッド6の移動による前記配置は、基本速度で行われる。それにより、前記配置の進行に伴い、送り機構21よりも下流側の繊維束2において、繊維束2の弛みが徐々に発生する。なお、その送り機構21よりも下流側の送り機構21と切断装置30との間には、前記した規制ガイド12が設けられている。したがって、前記のように発生する繊維束2の弛みは、前記規制ガイド12よりも下流側、特に、切断装置30と配置ヘッド6における押圧部13aとの間において発生する。
【0094】
次いで、前記配置時間が記憶器45に記憶された前記切断動作開始時点に達すると、配置制御器41は、切断装置30(可動刃駆動機構31)の駆動を制御する切断制御器46に対し前記切断動作開始信号を出力すると共に、その前記切断動作開始信号を、送り機構21におけるローラ21aを回転駆動する駆動モータ22の駆動を制御するモータ制御器43に対しても出力する。それにより、切断装置30による切断動作が開始されると共に、送り機構21におけるローラ21aの回転駆動が停止される。その結果、その前記切断動作開始時点で、送り機構21による繊維束2の送り出しが停止され、その状態で切断装置30による繊維束2の切断が行われる。
【0095】
なお、前記のように繊維束2の送り速度が前記第一の時点で前記のような補正送り速度に変更されることから、その繊維束2の送り出しが停止される時点までの前記先行期間において送り出される繊維束2の長さは、その前記先行期間において実送り速度で送り出される長さに対し、前記先行期間において追加速度で送り出される長さ(余分長さ)を加えたものとなる。したがって、送り機構21による繊維束2の送り出しが停止される前記切断動作開始時点においては、その送り機構21よりも下流側の切断装置30と配置ヘッド6における押圧部13aとの間の繊維束2、すなわち、その押圧部13aの上流側の繊維束2に前記余分長さ分の弛みが生じた状態となっている。そして、その前記余分長さは、その繊維束2の送り出しが停止される時点から前記接触期間の終了時点(繊維束2が完全に切断されて可動刃32が繊維束2から離間する時点)までの期間において配置される繊維束2の配置長さと同じ長さである。
【0096】
そして、そのように繊維束2の送り出しが停止された前記切断動作開始時点以降も前記配置は継続されるが、前記のように押圧部13aの上流側で繊維束2の弛みが生じているため、その前記配置は、その弛みを徐々に解消しつつ行われることとなる。したがって、送り機構21による繊維束2の送り出しが停止されていても、その弛み分によって押圧部13aに向けた繊維束2の供給が継続されるため、前記配置を停止すること無く継続することができる。
【0097】
しかも、前記のように繊維束2の送り出しが停止される結果として、切断装置30による切断動作において、可動刃32が繊維束2に達する時点では、繊維束2の前記した弛み部分よりも上流側の部分は停止した状態となっている。したがって、本実施例では前記のように切断装置30が前述のような態様で可動刃32の駆動が行われるように構成されているが、それでも、その切断装置30による切断動作を、繊維束2の詰まりを発生させること無く行うことができる。
【0098】
そして、前記のように前記配置が継続される結果として繊維束2の弛みが徐々に解消されていき、前記接触期間の終了時点でその弛みが完全に解消された状態となる。但し、その時点は、可動刃32の復動が開始された時点よりも後の時点である。すなわち、配置される繊維束2の部分が、停止している送り機構21に連なる繊維束2から完全に切り離された状態となっている時点である。したがって、その後の前記配置も、送り機構21の停止に影響を受けることなく、継続させることができる。そして、その繊維束2の切断端が押圧部13aの位置まで進行して押圧部13aにより配置型5に配置されることで、1回の前記配置が終了した状態となる。
【0099】
以上では、本発明が適用された自動繊維束配置装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0100】
(1)基本速度に基づいて算出される各設定情報について、前記実施例では、その設定情報として追加速度、前記切断動作開始時点、及び前記第一の時点が基本速度に基づいて演算により求められている。しかし、本発明において、それらの各設定情報は、前記実施例のように前記配置毎に求められるのには限られず、前記配置のための自動繊維束配置装置1の動作プログラムに従った動作が開始される前の準備段階において予め求められ、その予め求められたものが記憶器に記憶されるようにしても良い。
【0101】
より詳しくは、前記した各設定情報(追加速度、前記切断動作開始時点、前記第一の時点)は前記のように基本速度を用いて求められるが、その基本速度は、動作プログラムに含まれており、前記準備段階において既に把握されているものである。したがって、各前記設定情報は、その前記準備段階で求めることが可能である。そこで、その前記準備段階において、作業者が前記のように把握されている基本速度を用いて各前記設定情報を予め求めた上で、その求めた各前記設定情報が動作プログラムに含まれるかたちで記憶器に記憶されるようにしても良い。その場合は、動作プログラムに従って実行される各前記配置において、その動作プログラムに含まれる各前記設定情報が用いられることとなる。
【0102】
あるいは、前記のようにして予め求めた各前記設定情報を、入力設定装置によって基本速度に対応付けるかたちで入力設定して記憶器に記憶させ、各前記配置時に、動作プログラムに含まれる基本速度を参照して各前記設定情報が記憶器から読み出されるようにしても良い。
【0103】
また、追加速度について、追加速度は、補正送り速度を求めるためのものであり、前記実施例では、自動繊維束配置装置1の前記動作が開始された後(動作中)における各前記配置開始時点において求められている。しかし、そのように自動繊維束配置装置1の前記動作中に追加速度が求められる場合であっても、その求める時点は、前記実施例のような前記配置開始時点に限られず、補正送り速度が求められる以前であれば良い。したがって、補正送り速度が前記実施例のように第一の時点で求められる場合には、その第一の時点以前に追加速度が求められるようにすれば良い。
【0104】
また、補正送り速度について、前記実施例では、補正送り速度も、自動繊維束配置装置1の前記動作中(各前記配置における前記第一の時点)において求められている。しかし、本発明において、補正送り速度は、前記実施例のように求められるのには限らない。
【0105】
より詳しくは、補正送り速度は、前記第一の時点での実送り速度を用いて求められるが、前記実施例では、前記配置中において前記張力制御が実行されており、前記配置中において実送り速度が変更される場合があるため、その算出は、前記第一の時点において行われている。しかし、本発明においては、前記配置中に前記張力制御が実行されることは必須では無く前記張力制御を伴わずに前記配置が行われる場合があり、その場合には、前記配置中の繊維束2の送り速度(実送り速度)は、基本速度と一致した速度となる。
【0106】
そこで、そのような場合であって、前述のように追加速度が前記準備段階において予め求められる場合には、補正送り速度も前記準備段階で求め、追加速度等と同様に予め記憶器に記憶させておくようにしても良い。また、補正送り速度は、自動繊維束配置装置1の前記動作中に求める場合であっても、前記第一の時点よりも前の、追加速度が求められる時点以降(例えば、追加速度が求められるのと同時)に求められ、記憶器に記憶させておくようにしても良い。
【0107】
(2)各制御装置(駆動制御装置42、切断制御器46)に対し各制御を実行させる時点(実行時点)の把握について、前記実施例では、各前記実行時点が前記配置開始時点からの時間で設定されている。その上で、前記配置時間が各前記実行時点に対し設定された時間に達したことの把握を、配置制御器41に備えられたタイマー回路による計時に基づいて行っている。しかし、本発明において、各前記実行時点の把握は、前記実施例のようなかたちで行われるのには限られない。
【0108】
具体的には、各前記実行時点が前記のように時間で設定されていて前記配置時間との比較で前記把握を行う場合において、その前記配置時間を、タイマー回路を用いて求めるのに代えて、演算によって求められるようにしても良い。なお、その演算による前記配置時間の求め方としては、例えば、押圧部の回転量を検出し、その回転量から実際の前記配置長さを求め、その前記配置長さと基本速度とから前記配置時間を求めることが可能である。
【0109】
また、各前記実行時点を、時間で設定するのに代えて、繊維束2の前記配置長さで設定するようにしても良い。具体的には、前記切断動作開始時点については、1回の前記配置分の前記配置長さと前記部分経路長とから、前記接触期間の終了時点での前記配置長さが求められる。また、可動刃32の前記動作時間と基本速度とから、その前記動作時間(前記切断動作開始時点~前記接触期間の終了時点)で配置される繊維束2の前記配置長さを求めることができる。そして、前記接触期間の終了時点から前記動作時間だけ遡った時点が前記切断動作開始時点であることから、前記接触期間の終了時点での前記配置長さから前記動作時間に配置される前記配置長さを減算することで、前記切断動作開始時点での前記配置長さが求まる。そこで、そのようにして前記配置長さを求め、その求めた前記配置長さを前記切断動作開始時点として設定すれば良い。
【0110】
また、前記第一の時点に相当する前記配置長さは、前記切断動作開始時点として設定された前記配置長さから、前記先行期間に配置される前記配置長さを減算することで求められる。さらに、前記切断動作終了時点に相当する前記配置長さは、前記切断動作開始時点として設定された前記配置長さに、前記復動設定時間に配置される前記配置長さを加算することで求められる。なお、前記配置中における実際の前記配置長さは、例えば、前記のように押圧部の回転量から求めれば良い。
【0111】
(3)切断装置について、前記実施例では、切断装置30は、可動刃32を繊維束2の厚さ方向に直線的に往復変位させるように構成されたものとなっている。しかし、本発明において、切断装置は、前記接触期間における可動刃の前記送り方向への変位量が繊維束2の送り量より小さくなるような態様で可動刃の駆動が行われるように構成されたものであれば、前記実施例の構成には限られない。
【0112】
より詳しくは、配置ヘッド(自動繊維束配置装置)に備えられる切断装置としては、例えばロータリカッタ等のように、可動刃が前記厚さ方向に加えて前記送り方向にも変位させるように構成されたものが採用される場合がある。そのように、可動刃が前記送り方向に変位するように構成された切断装置が採用されている場合であっても、前記接触期間におけるその変位量が繊維束2の送り量よりも小さくなるような態様で可動刃が駆動されるように切断装置が構成されている場合には、従来の装置と同様の問題が生じる。
【0113】
また、切断装置としては、スコアカッタ等を用いた装置のように、円盤状の可動刃が繊維束2の幅方向に変位させて切断を行うように構成されたものが採用される場合がある。そのような切断装置の場合、前記幅方向に対し下流側へ向けて角度を成すように可動刃を変位させることで、可動刃が前記送り方向に変位しつつ切断動作が行われることとなる。しかし、前記角度が小さいと、前記送り方向における可動刃と繊維束2との相対的な位置が変化するため、その場合も従来の装置と同様の問題が生じる。
【0114】
そこで、それらのように構成された切断装置が採用されている場合にも、本発明を適用することで、その問題の発生を有効に防止することができる。すなわち、本発明が適用される自動繊維束配置装置は、配置ヘッドにそのような切断装置が採用されたものであっても良い。
【0115】
また、切断装置について、前記実施例では、切断装置30が繊維束2の経路毎に設けられると共に、その各切断装置30が可動刃32とでその経路を挟むように設けられた受け部材33を含んでいる。すなわち、受け部材33は、切断装置30毎にその専用の部材として設けられている。しかし、本発明における切断装置の受け部材については、そのように切断装置毎に専用に設けられた部材がその受け部材として機能するものには限られず、複数の切断装置に亘るように設けられた部材の一部が各切断装置の受け部材として機能する(受け部材として機能する部材が複数の切断装置に兼用される)ようなものであっても良い。
【0116】
例えば、複数本の繊維束2が前記幅方向に整列されている場合において、その複数本の繊維束2の存在範囲に亘って延在するような部材を、各切断装置における可動刃との間で繊維束2を挟むように設けるようにしても良い。その場合、その部材における各可動刃と対向する部分が、各切断装置における受け部材に相当することとなる。
【0117】
(4)配置ヘッドにおける繊維束2の経路について、前記実施例では、配置ヘッド6は、16本の繊維束2の経路を前記前後方向において異なる2つの位置に振り分けるように構成されている。すなわち、前記実施例の配置ヘッド6は、数の多い繊維束2を配置する上で、その繊維束2の数等の関係で、その配置ヘッド6内における繊維束2の経路を前記前後方向に複数に振り分けるように構成されている。しかし、本発明が前提とする自動繊維束配置装置において、配置ヘッドは、そのように構成されるものに限らず、前記前後方向において同じ1つの位置に全ての繊維束2の経路を備えるように構成されていても良い。
【0118】
なお、前記のように自動繊維束配置装置が多くの数の繊維束2を配置するように構成されている場合、その繊維束2の数との関係で配置ヘッドが大型化するのを避けるべく、前記経路を前記前後方向において複数に振り分けるように配置ヘッドを構成するのが望ましい。しかし、配置ヘッド内に含まれる装置の構成などとの関係で配置ヘッドの大きさが装置として許容できるものであれば、前記実施例と同様に配置する繊維束2の数が多い場合であっても、前記経路が前記前後方向において同じ位置となるように、配置ヘッドを構成しても良い。
【0119】
また、本発明が前提とする自動繊維束配置装置では、配置する繊維束2の数は特に限定されないため、その繊維束2の数によっては(数が少ない場合には)、前記経路を前記同じ位置としても、その配置ヘッドは、前記実施例のそれと比べて大型化されないものとなる。但し、配置する繊維束2の数が少ない場合であっても、前記経路を前記前後方向における複数の位置に振り分けるように配置ヘッドを構成しても良い。このように、配置ヘッドにおける前記経路のための構成は、繊維束2の数や配置ヘッドの大きさ等を考慮し、適宜なものとすれば良い。
【0120】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 自動繊維束配置装置
2 繊維束
3 ボビン
4 供給装置
5 配置型
6 配置ヘッド
7 多関節ロボット
7a アーム
8 ダンサロール
9 ガイド部
10 ガイド機構
10a 支持部材
11 ガイドローラ
12 規制ガイド
12a 規制部材
13 押圧装置
13a 押圧部
20 送出機構
21 送り機構
21a ローラ
21b ローラ
22 駆動モータ
30 切断装置
31 可動刃駆動機構
32 可動刃
33 受け部材
40 主制御装置
41 配置制御器
42 駆動制御装置
43 モータ制御器
44 演算器
45 記憶器
46 切断制御器
47 入力設定装置