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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液輸送管の製造方法及び穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 23/00 20060101AFI20240910BHJP
   B26F 1/24 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B29D23/00
B26F1/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021056866
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154034
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大谷 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】見片 康彦
(72)【発明者】
【氏名】中矢 孝
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133742(JP,A)
【文献】特開2005-143458(JP,A)
【文献】特開2001-062913(JP,A)
【文献】特開平02-134484(JP,A)
【文献】特開昭53-134883(JP,A)
【文献】特公昭42-011519(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 23/00
B26F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂から液輸送管を成形する液輸送管の製造方法であって、
前記溶融樹脂を帯状に押し出す押出工程と、
前記帯状の前記溶融樹脂に対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する穿孔工程と、
前記貫通孔が前記液輸送管の内部と外部とを連通するように、かつ、前記溶融樹脂に対して前記溶融樹脂の延在方向に沿った巻付方向の張力が作用するように、前記貫通孔が形成された前記帯状の前記溶融樹脂を芯材の外周面に対して螺旋状に巻き付ける巻付工程と、を含み、
前記穿孔工程では、前記延在方向における前記貫通孔の寸法が、前記延在方向と直交する前記溶融樹脂の幅方向における前記貫通孔の寸法よりも小さくなるように前記貫通孔を形成する
液輸送管の製造方法。
【請求項2】
前記穿孔工程において、前記溶融樹脂が受け台に支持されながら前記溶融樹脂が穿孔ピンによって前記厚さ方向に打ち抜かれることで前記貫通孔が前記溶融樹脂に形成される
請求項1に記載の液輸送管の製造方法。
【請求項3】
前記穿孔工程において、
前記穿孔ピン及び前記受け台は、前記芯材に向けて搬送される前記溶融樹脂の移動に追従して移動し、
前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂に追従して移動しながら前記溶融樹脂を打ち抜く
請求項に記載の液輸送管の製造方法。
【請求項4】
前記穿孔工程において、
前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂における前記芯材の前記外周面と対向する第1面から、前記第1面と反対の面である第2面に向けて前記溶融樹脂を打ち抜くことで前記貫通孔を形成する
請求項またはに記載の液輸送管の製造方法。
【請求項5】
前記受け台は、前記穿孔ピンが前記溶融樹脂を打ち抜く際に前記穿孔ピンが挿入される逃がし部を備え、
前記逃がし部の内径は、前記穿孔ピンの外径より大きく、
前記逃がし部と前記穿孔ピンとのクリアランスは、0.01mm以上0.3mm以下である
請求項ないしのうち何れか一項に記載の液輸送管の製造方法。
【請求項6】
前記液輸送管の呼び径は、300mm以上3000mm以下である
請求項1ないしのうち何れか一項に記載の液輸送管の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうち少なくとも一つから選択される
請求項1ないしのうち何れか一項に記載の液輸送管の製造方法。
【請求項8】
溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂から液輸送管を成形する液輸送管の製造方法であって、
前記溶融樹脂を帯状に押し出す押出工程と、
前記帯状の前記溶融樹脂に対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する穿孔工程と、
前記貫通孔が前記液輸送管の内部と外部とを連通するように、前記貫通孔が形成された前記帯状の前記溶融樹脂を芯材の外周面に対して螺旋状に巻き付ける巻付工程と、を含み、
前記穿孔工程において、
前記溶融樹脂が受け台に支持されながら前記溶融樹脂が穿孔ピンによって前記厚さ方向に打ち抜かれることで前記貫通孔が前記溶融樹脂に形成され、
前記穿孔ピン及び前記受け台は、前記芯材に向けて搬送される前記溶融樹脂の移動に追従して移動し、
前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂に追従して移動しながら前記溶融樹脂を打ち抜く
液輸送管の製造方法。
【請求項9】
溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂であって、帯状に押し出された前記溶融樹脂が芯材に巻き付けられる前に、前記溶融樹脂に対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する穿孔装置であって、
前記溶融樹脂を打ち抜くことで前記貫通孔を形成する穿孔ピンと、
前記穿孔ピンが前記溶融樹脂に前記貫通孔を形成する際に前記溶融樹脂を支持する受け台と、
前記芯材に向けて移動する前記溶融樹脂に追従するように前記穿孔ピンと前記受け台とを移動させる可動部と、を備え、
前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂に追従して移動しながら前記溶融樹脂を打ち抜く
穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液輸送管の製造方法及び穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂で構成された液輸送管の製造方法として、溶融状態の熱可塑性樹脂を押し出した後、当該樹脂を芯材の外周に対して螺旋状に巻き付けた状態で固化させることで、熱可塑性樹脂を管状に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、液輸送管の一例として、液輸送管の周面に貫通孔が設けられた有孔管が知られている。有孔管は、例えば、廃棄物処分場の埋立地に埋設される集排水管などに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-133742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有孔管における貫通孔は、工場などにおいて、作業者がドリルなどの工具を用いて成形後の液輸送管の周面を穿孔することで形成される。有孔管の製造方法においても、さらなる生産効率の向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための液輸送管の製造方法は、溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂から液輸送管を成形する液輸送管の製造方法であって、前記溶融樹脂を帯状に押し出す押出工程と、前記帯状の前記溶融樹脂に対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する穿孔工程と、前記貫通孔が前記液輸送管の内部と外部とを連通するように、前記貫通孔が形成された前記帯状の前記溶融樹脂を芯材の外周面に対して螺旋状に巻き付ける巻付工程と、を含む。
【0007】
上記製造方法によれば、溶融樹脂を押し出す工程と溶融樹脂を芯材に巻き付ける工程との間の制限された期間に穿孔工程を行うことで、成形後に行われていた穿孔作業を削減できるため、周面に貫通孔を備える液輸送管の生産効率を向上できる。
【0008】
上記液輸送管の製造方法において、前記穿孔工程における前記貫通孔は、前記溶融樹脂の延在方向における寸法が、前記延在方向と直交する前記溶融樹脂の幅方向における寸法よりも小さいことが好ましい。上記製造方法によれば、巻付工程において、溶融樹脂が巻き付けられる方向であって、溶融樹脂の延在方向に沿った方向である巻付方向の張力が溶融樹脂に作用することで、溶融樹脂に設けられた貫通孔が巻付方向に引き延ばされる。そのため、穿孔工程で形成される貫通孔において、溶融樹脂の延在方向における寸法が溶融樹脂の幅方向における寸法よりも小さいことで、巻付工程において溶融樹脂に対して作用する巻付方向の張力によって、液輸送管における貫通孔の開口の形状を真円に近づけることができる。
【0009】
上記液輸送管の製造方法では、前記穿孔工程において、前記溶融樹脂が受け台に支持されながら前記溶融樹脂が穿孔ピンによって前記厚さ方向に打ち抜かれることで前記貫通孔が前記溶融樹脂に形成されることが好ましい。上記製造方法によれば、穿孔ピンが溶融樹脂に貫通孔を形成する際に受け台が溶融樹脂を支持する。これにより、変形しやすい状態である溶融樹脂に対して、穿孔ピンよる打ち抜き荷重を好適に作用させることができる。
【0010】
上記液輸送管の製造方法では、前記穿孔工程において、前記穿孔ピン及び前記受け台は、前記芯材に向けて搬送される前記溶融樹脂の移動に追従して移動し、前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂に追従して移動しながら前記溶融樹脂を打ち抜くことが好ましい。上記製造方法によれば、穿孔ピンが搬送される溶融樹脂に追従して移動しながら溶融樹脂を打ち抜くことで、上流から搬送される溶融樹脂が穿孔ピンによってせき止められることが防止される。そのため、単に穿孔ピンが溶融樹脂に対して垂直に駆動される場合よりも、貫通孔の形状を制御し易くなる。
【0011】
上記液輸送管の製造方法では、前記穿孔工程において、前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂における前記芯材の前記外周面と対向する第1面から、前記第1面と反対の面である第2面に向けて前記溶融樹脂を打ち抜くことで前記貫通孔を形成することが好ましい。上記製造方法によれば、芯材と対向する第1面が液輸送管における内面となり、第1面と反対の面である第2面が液輸送管における外面となる。第1面から第2面に向けて貫通孔を形成することで、第1面には貫通孔を形成する際のバリなどが生じにくくなる。これにより、液輸送管の内面を平滑にできるため、液輸送管の内部を通過する流体への抵抗を低減できる。
【0012】
上記液輸送管の製造方法では、前記受け台は、前記穿孔ピンが前記溶融樹脂を打ち抜く際に前記穿孔ピンが挿入される逃がし部を備え、前記逃がし部の内径は、前記穿孔ピンの外径より大きく、前記逃がし部と前記穿孔ピンとのクリアランスは、0.01mm以上0.3mm以下であることが好ましい。上記製造方法によれば、逃がし部と穿孔ピンとのクリアランスを0.01mm以上0.3mm以下とすることで、穿孔ピンが溶融樹脂を打ち抜く際に、穿孔ピンと逃がし部との干渉を防ぎつつ、逃がし部と穿孔ピンとの隙間に溶融樹脂が巻き込まれることを防止できる。その結果、受け台と対向する面において、バリの発生を抑制できる。これにより、液輸送管の外観が悪化することを抑制できる。
【0013】
上記液輸送管の製造方法において、前記液輸送管の呼び径は、300mm以上3000mm以下であることが好ましい。上記製造方法によれば、液輸送管の呼び径が300mm以上3000mm以下であることで、液輸送管をガス抜き管や集排水管として好適に用いることができる。
【0014】
上記液輸送管の製造方法において、前記熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうち少なくとも一つから選択されることが好ましい。上記製造方法によれば、熱可塑性樹脂が高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうち少なくとも一つから選択される樹脂であることで、液輸送管として必要とされる耐圧性などの機械的特性や耐薬品性、耐食性などの化学的特性を達成できる。
【0015】
上記課題を解決するための穿孔装置は、溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂であって、帯状に押し出された前記溶融樹脂が芯材に巻き付けられる前に、前記溶融樹脂に対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する穿孔装置であって、前記溶融樹脂を打ち抜くことで前記貫通孔を形成する穿孔ピンと、前記穿孔ピンが前記溶融樹脂に前記貫通孔を形成する際に前記溶融樹脂を支持する受け台と、前記芯材に向けて移動する前記溶融樹脂に追従するように前記穿孔ピンと前記受け台とを移動させる可動部と、を備え、前記穿孔ピンは、前記溶融樹脂に追従して移動しながら前記溶融樹脂を打ち抜く。
【0016】
上記構成によれば、帯状に押し出された溶融樹脂に対して貫通孔を形成できる。そして、貫通孔が形成された状態の溶融樹脂を芯材に巻き付けることで、成形後にドリルなどで貫通孔を形成する工程が不要になる。したがって、周面に貫通孔を備える液輸送管の生産効率を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周面に貫通孔を備える液輸送管の生産効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】液輸送管製造システムの模式図。
図2】液輸送管の側面図。
図3】穿孔装置の模式図。
図4】巻き付け前の溶融樹脂における貫通孔の正面図。
図5】巻き付け直後の溶融樹脂における貫通孔の断面図。
図6】冷却後の溶融樹脂における貫通孔の断面図。
図7】冷却後の溶融樹脂における貫通孔の断面図。
図8】冷却後の溶融樹脂における貫通孔を第2面から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1ないし図8を参照して説明する。
[液輸送管製造システム]
図1に示すように、液輸送管製造システム10は、液輸送管の一例である有孔管を製造するためのシステムである。液輸送管製造システム10は、押出装置11、穿孔装置12、冷却装置13、巻付装置14、及び、制御装置15を備える。
【0020】
押出装置11は、液輸送管製造システム10において、最も上流に位置する装置である。押出装置11は、原材料として投入された熱可塑性樹脂を溶融した後に、溶融状態の熱可塑性樹脂である溶融樹脂20を帯状に押し出す押出成形機である。押出装置11から押し出された溶融樹脂20は、穿孔装置12、及び、冷却装置13を通じて、巻付装置14に巻き取られることで下流に搬送される。
【0021】
穿孔装置12は、液輸送管製造システム10において、押出装置11よりも下流に位置する装置である。穿孔装置12は、穿孔ピン12aと受け台12bとを備える。穿孔ピン12aは、溶融樹脂20の一部を打ち抜くことで、溶融樹脂20の厚さ方向に貫通する貫通孔20aを形成する。本実施形態では、穿孔ピン12aは、溶融樹脂20の延在方向において、溶融樹脂20に対して一定のピッチで貫通孔20aを形成する。受け台12bは、押出装置11から押し出された溶融樹脂20支持する。
【0022】
冷却装置13は、液輸送管製造システム10において、押出装置11及び穿孔装置12よりも下流に位置する装置である。冷却装置13は、搬送台13aと、圧着部13bと、支持部13cとを備える。
【0023】
搬送台13aは、押出装置11から押し出された溶融樹脂20を支持する。搬送台13aは、溶融樹脂20の冷却効率を高めるために、鉄やアルミなどの金属で構成される。搬送台13aの上流側には、穿孔装置12が配置される。搬送台13aの上面は、受け台12bの上面と同一平面上に位置する。また、搬送台13aの下流側には、巻付装置14が配置される。押出装置11から押し出された溶融樹脂20は、受け台12bの上部を通じて、搬送台13aによって支持された状態で巻付装置14に巻き取られる。
【0024】
圧着部13bは、搬送台13a上を通過する溶融樹脂20を巻付装置14が備える芯材14aに向けて押圧する。支持部13cは、圧着部13bを支持する部分であって、圧着部13bが溶融樹脂20を押圧する際に支点となる部分である。
【0025】
巻付装置14は、搬送台13aの下流側に設けられる。巻付装置14は、芯材14aを備える。芯材14aは、マンドレルとよばれる円筒形状の金型である。本実施形態では、芯材14aは、円筒形状の中心軸を回転軸として回転する。なお、芯材14aの回転軸は、円筒形状の中心軸に限定されず、例えば、円筒形状の中心軸に平行な軸であって、円筒形状の中心軸と重ならない軸を芯材14aの回転軸としてもよい。
【0026】
芯材14aの外周面には、搬送台13aによって支持される溶融樹脂20が圧着部13bによって押し付けられる。圧着部13bによって溶融樹脂20が芯材14aに押し付けられた状態で芯材14aが回転することで、溶融樹脂20が芯材14aに巻き付けられる。このとき、芯材14aの回転軸に沿う方向に溶融樹脂20を所定のピッチを有した螺旋状に巻き付けることで、芯材14aの外周面上に管状の溶融樹脂20が形成される。その後、溶融樹脂20を冷却固化させることで液輸送管21(図2参照)が製造される。
【0027】
制御装置15は、液輸送管製造システム10が備える各装置を制御するコンピュータである。すなわち、制御装置15は、押出装置11、穿孔装置12、冷却装置13、及び、巻付装置14を制御する。
【0028】
制御装置15は、制御部と、記憶部と、タッチパネルとを備える。制御部は、一例として、CPUである。制御部は、記憶部に格納された制御プログラムに従って液輸送管製造システム10が備える各装置を制御する処理を実行する。記憶部は、一例として、SSD、HDDなどの記憶媒体である。記憶部は、制御部が各装置を制御するための制御プログラムがインストールされている。また、記憶部には、例えば、芯材14aの回転速度や、溶融樹脂20の延在方向において貫通孔20aが設けられるピッチ、螺旋状に巻き付けられる溶融樹脂20の回転軸に沿う方向のピッチなどの各種製造条件が保存されている。タッチパネルは、作業者の操作に基づいて制御部に対して操作信号を入力する操作部であるとともに、各装置のステータスや設定された製造条件などを表示する表示部である。また、制御装置15は、例えば、リレー回路によって、液輸送管製造システム10が備える各装置を制御する構成であってもよい。
【0029】
[液輸送管]
図2に示すように、液輸送管21は、液輸送管製造システム10において、溶融樹脂20が冷却固化されて製造される有孔管である。液輸送管21は、例えば、廃棄物処分場の埋立地に埋設される埋設管である集排水管や、ガス抜き管などに使用される。
【0030】
液輸送管21は、管本体22と、受口23と、差口24とを備える。管本体22は、液輸送管21における中央の領域である。受口23は、管本体22の一端に構成される。差口24は、管本体22の他端に構成される。液輸送管21は、受口23に対して他の液輸送管21における差口24が差し込まれることで、複数の液輸送管21が連結されて管路を構成する。
【0031】
管本体22は、貫通孔20aと、リブ22aとを備える。貫通孔20aは、溶融樹脂20の状態で穿孔装置12によって形成される。貫通孔20aは、液輸送管21の内部と外部とを連通する。貫通孔20aは、液輸送管21における耐圧性などの機械的特性を考慮したうえで、管本体22における任意の位置に設けられる。
【0032】
リブ22aは、管本体22の外周面において螺旋状に構成される突条である。管本体22にリブ22aを設けることで、液輸送管21に作用する外圧への耐性を高めることができる。なお、リブ22aは、貫通孔20aと重ならず、貫通孔20aを塞がない任意の位置に設けられる。本実施形態では、隣り合うリブ22a同士の間の凹部に、管本体22の周方向に沿って貫通孔20aが一定のピッチで設けられている。
【0033】
受口23は、外径および内径が管本体22よりも大きくなるように構成されている。受口23の内面は、差口24の外面と対向する面である。差口24は、その内径が管本体22の内径と一致し、外径が管本体22におけるリブ22aが設けられていない領域の外径よりも大きくなるように構成されている。差口24の内面は、管本体22の内面と面一である。差口24の外面は、受口23の内面と対向する面である。
【0034】
差口24の外面における先端側の領域には、円周方向に延在する凹溝24aが設けられている。そして、凹溝24aには、止水材の一例である止水ゴム24bが設けられる。止水ゴム24bは、例えば、スチレン・ブタジエンゴムやエチレン・プロピレン・ジエンゴム等である。止水ゴム24bは、受口23の内面と差口24の外面との間において、ゴム弾性及びシール性により止水する。これにより、受口23に差口24を差し込むだけの簡単な作業で液輸送管21同士を接続することができる。
【0035】
差口24の外面において、凹溝24a及び止水ゴム24bよりも管本体22側の領域には、標線24cが設けられている。標線24cは、差口24を受口23に対してどこまで挿入するのかを示す指標である。ここでは、差口24は、他の液輸送管21が備える受口23によって、標線24cが覆われる位置まで差し込まれる。
【0036】
また、液輸送管21の呼び径は、300mm以上3000mm以下であることが好ましい。液輸送管21の呼び径が300mm以上3000mm以下であることで、液輸送管21をガス抜き管や集排水管として好適に用いることができる。
【0037】
液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、ポリプロピレンのうち少なくとも一つから選択されることが好ましい。上述の材料であれば、液輸送管21に必要とされる耐圧性などの機械的特性や耐薬品性、耐食性などの化学的特性を達成できる。
【0038】
[穿孔装置]
以下、図3を参照して、穿孔装置12について詳述する。
図3に示すように、穿孔装置12は、上述した穿孔ピン12a及び受け台12bに加え、第1可動部12cと、第2可動部12dとを備える。穿孔ピン12aは、断面視楕円状の円筒形状を有する。穿孔ピン12aは、受け台12b上を搬送される溶融樹脂20の上方において、受け台12bに対して垂直に配置される。また、穿孔ピン12aの一端であって、受け台12bに向かう端部は、先端が尖った円錐形状を有する。
【0039】
穿孔ピン12aは、溶融樹脂20において、芯材14aの外周面と対向する第1面20bから、第1面20bと反対の面である第2面20cに向けて溶融樹脂20を打ち抜くことで貫通孔20aを形成する。なお、第1面20bは、液輸送管21の内面となる面である。また、第2面20cは、液輸送管21の外面となる面であって、受け台12b及び搬送台13aと対向する面である。
【0040】
第1面20bから第2面20cに向けて貫通孔20aを構成することで、貫通孔20aを形成する際に、液輸送管21の内面となる第1面20bにはバリなどが生じにくくなる。これにより、液輸送管21の内面を平滑にできるため、液輸送管21の内部を通過する流体への抵抗を低減できる。
【0041】
穿孔ピン12aは、溶融樹脂20の延在方向が短手であって、溶融樹脂20の延在方向と直交する幅方向が長手となる断面視楕円形状を有することが好ましい。溶融樹脂20には、穿孔ピン12aの形状と対応する形状の貫通孔20aが形成される。そのため、溶融樹脂20には、溶融樹脂20の延在方向が短手であって、溶融樹脂20の幅方向が長手となる楕円形状の貫通孔20aが形成される。また、溶融樹脂20を芯材14aに巻き付ける巻付工程では、溶融樹脂20が芯材14aに対して巻き付けられる方向であって、溶融樹脂20の延在方向に沿った方向である巻付方向の張力が溶融樹脂20に作用する。そのため、巻付工程では、溶融樹脂20に作用する巻付方向の張力によって貫通孔20aが巻付方向に引き延ばされて真円に近づくように開口する。これにより、液輸送管21において、より真円に近い貫通孔20aを形成できるため、液輸送管21の外観を良好なものとすることができる。なお、巻付工程において、溶融樹脂20の幅方向における貫通孔20aの寸法の変化が小さいため、穿孔ピン12aにおける長手方向の寸法は、貫通孔20aの狙い寸法とすればよい。
【0042】
受け台12bは、一例として矩形状のプレートである。受け台12bの上部には、押出装置11から押し出された溶融樹脂20が配置される。したがって、押出装置11から押し出された溶融樹脂20は、受け台12bの上部を通じて、搬送台13a上を通過する。
【0043】
受け台12bは、穿孔ピン12aが溶融樹脂20に貫通孔20aを形成する際に溶融樹脂20を支持する。これにより、変形しやすい状態である溶融樹脂20に対して、穿孔ピン12aよる打ち抜き荷重を好適に作用させることができる。
【0044】
受け台12bは、逃がし部12eを備える。逃がし部12eは、受け台12bの厚さ方向に貫通する貫通孔である。逃がし部12eは、穿孔ピン12aと同軸上に設けられる。穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際には、穿孔ピン12aの先端が逃がし部12eの内部まで挿入される。穿孔ピン12aによって打ち抜かれた溶融樹脂20は、逃がし部12eを通じて排出される。なお、排出された溶融樹脂20は、再び原材料として使用することができる。
【0045】
従来では、熱可塑性樹脂を管状に成形した後、作業者がドリルなどを用いて管体の周面に貫通孔を形成していた。この場合、貫通孔を形成するために切削された熱可塑性樹脂は、液輸送管21の内部に落下した後、回収されて廃棄されていた。切削された熱可塑性樹脂は、回収に際して異物が混入し易いなどの理由から、再利用することが困難であった。この点、本実施形態のように、一連の製造装置列である液輸送管製造システム10によって貫通孔20aを備えた液輸送管21を製造することで、穿孔ピン12aによって打ち抜かれた溶融樹脂20を再び原材料として使用することができる。
【0046】
逃がし部12eの内径は、穿孔ピン12aとの干渉を防ぐため、穿孔ピン12aの外径よりも大きく構成される。また、逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスが過剰に大きい場合には、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に、逃がし部12eと穿孔ピン12aとの隙間に溶融樹脂20が巻き込まれ易くなってしまう。そして、巻き込まれた溶融樹脂20が第2面20cよりも突出するように引き延ばされることで、第2面20cにおいてバリが生じてしまう。第2面20cにおいてバリが生じた場合、圧着部13bが第2面20cを芯材14aに向けて押圧する際の抵抗が高まってしまう。また、第2面20cは、液輸送管21の外面となる面であるため、液輸送管21の外観が悪化してしまうおそれもある。そのため、逃がし部12eの内径は、穿孔ピン12aと干渉しない程度の大きさであって、かつ、逃がし部12eと穿孔ピン12aとの隙間に溶融樹脂20が巻き込まれない程度の大きさであることが好ましい。
【0047】
具体的に、逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスは、0.01mm以上0.3mm以下であることが好ましく、0.01mm以上0.05mm以下であればより好ましい。逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスを上記の範囲内とすることで、穿孔ピン12aと逃がし部12eとの干渉を防ぎつつ、逃がし部12eと穿孔ピン12aとの隙間に溶融樹脂20が巻き込まれることを防止できる。その結果、第2面20cにおけるバリの発生を抑制できるため、圧着部13bによって第2面20cを芯材14aに向けて好適に押圧できる。また、液輸送管21の外観が悪化することを抑制できる。
【0048】
第1可動部12cは、一例として、矩形状のプレートである。第1可動部12cには、穿孔ピン12aが固定される。また、第2可動部12dは、一例として、受け台12bに対して垂直に延在する角柱形状を有する部材である。第2可動部12dの上部には、第1可動部12cが、第2可動部12dの延在方向、すなわち、受け台12bに対して垂直方向に移動可能となるように取り付けられる。第2可動部12dの下部には、受け台12bが固定される。第2可動部12dは、溶融樹脂20の搬送方向に対して平行移動可能に構成される。
【0049】
第1可動部12cが第2可動部12dに対して第2可動部12dの延在方向に駆動することで、穿孔ピン12aが受け台12bに対して垂直方向に駆動する。また、第2可動部12dが溶融樹脂20の搬送方向に対して平行に移動されることで、穿孔ピン12a及び受け台12bが溶融樹脂20の搬送方向に対して平行に移動される。なお、第1可動部12c及び第2可動部12dは、制御装置15によってその駆動が制御される。
【0050】
[液輸送管の製造方法]
以下、液輸送管製造システム10における液輸送管21の製造方法について説明する。液輸送管21の製造工程は、押出工程、穿孔工程、巻付工程、及び、冷却工程に大別される。
【0051】
まず、図1を参照して、熱可塑性樹脂を溶融樹脂20として押し出す押出工程について説明する。初めに、押出装置11に原材料としての熱可塑性樹脂を投入する。押出装置11は、投入された熱可塑性樹脂を溶融した後、帯状の溶融樹脂20として押し出す。なお、押し出された溶融樹脂20は、受け台12bの上部を通じて搬送台13aに配置された状態で、回転する芯材14aに巻き取られることで下流に搬送される。
【0052】
次に、図3を参照して、溶融樹脂20に対して貫通孔20aを形成する穿孔工程について説明する。穿孔工程において、制御装置15は、第1可動部12cと、第2可動部12dとを駆動することによって、溶融樹脂20に対して貫通孔20aを形成する。
【0053】
具体的に、制御装置15は、穿孔ピン12aの先端が逃がし部12eの内部に挿入される位置まで、第1可動部12cを受け台12bに対して垂直に下降させるように駆動する。これにより、溶融樹脂20が受け台12bに支持された状態で穿孔ピン12aによって溶融樹脂20の一部が厚さ方向に打ち抜かれることで、溶融樹脂20に貫通孔20aが形成される。その後、制御装置15は、第1可動部12cを受け台12bに対して垂直に上昇させるように駆動する。
【0054】
また、制御装置15は、上述した第1可動部12cを下降及び上昇させる処理とともに、第2可動部12dを溶融樹脂20の搬送速度と同じ速度で溶融樹脂20の移動に追従させるように駆動する処理を実行する。これにより、穿孔ピン12a及び受け台12bが、下流に向けて搬送される溶融樹脂20に追従するように移動する。したがって、穿孔ピン12aは、下流に向けて搬送される溶融樹脂20に追従して移動しながら、溶融樹脂20を打ち抜いて貫通孔20aを形成する。なお、溶融樹脂20の搬送速度は、巻付装置14における芯材14aの巻取速度、すなわち、芯材14aの回転速度に依存する。
【0055】
仮に、第2可動部12dが駆動されず、単に第1可動部12cが搬送台13aに対して垂直方向に駆動される場合では、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に、上流から搬送される溶融樹脂20を少なからずせき止めてしまう。この場合、穿孔ピン12aの周辺、特に上流側に位置する溶融樹脂20が変形してしまうため、貫通孔20aの形状が制御し難くなってしまう。貫通孔20aを区画する溶融樹脂20が変形した場合には、例えば、貫通孔20aが必要以上に大きくなってしまい、液輸送管21を地中に埋め込んだ際に砕石などが侵入し易くなってしまったり、貫通孔20aの周辺に亀裂が発生したりするおそれがある。また、穿孔ピン12aに対して、上流から搬送される溶融樹脂20による負荷が加わってしまうため、穿孔ピン12aが破損し易くなる。
【0056】
また、例えば、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に芯材14aの回転が停止されて溶融樹脂20の搬送が停止される場合では、慣性によって芯材14aが余分に回転するおそれがある。この場合、溶融樹脂20が意図せず引き延ばされてしまうことで、溶融樹脂20の幅が部分的に狭くなってしまったり、溶融樹脂20が破断したりするおそれがある。また、慣性によって押出装置11から溶融樹脂20が押し出されてしまい、溶融樹脂20の幅が部分的に狭くなるおそれもある。このため、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に溶融樹脂20の搬送が停止される場合では、液輸送管21の安定した生産が困難である。
【0057】
その点、本実施形態のように、穿孔ピン12aが搬送される溶融樹脂20に追従して移動しながら溶融樹脂20を打ち抜くことで、単に穿孔ピン12aが溶融樹脂20に対して垂直方向に駆動される場合よりも、貫通孔20aの形状を制御し易くなる。そして、穿孔ピン12aに対して上流から搬送される溶融樹脂20によって加わる負荷を低減できる。また、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に芯材14aの回転が停止されて溶融樹脂20の搬送が停止される場合よりも、安定生産が可能になるとともに生産効率を向上できる。
【0058】
ここで、図4を参照して、穿孔工程において溶融樹脂20に形成される貫通孔20aの形状について説明する。上述したように、穿孔工程において形成される貫通孔20aは、溶融樹脂20の延在方向が短手であって、溶融樹脂20の幅方向が長手となる楕円形状を有する。より具体的に、穿孔工程において形成される貫通孔20aは、溶融樹脂20の延在方向における寸法D1が溶融樹脂20の幅方向における寸法D2に対して20%以上80%以下であることが好ましい。穿孔工程において、このような寸法D1,D2を有する貫通孔20aを形成することで、巻付工程において溶融樹脂20に作用する巻付方向の張力によって、貫通孔20aが巻付方向に引き延ばされて真円に近づくように開口させることができる。
【0059】
次に、再び図3を参照して、芯材14aに対して溶融樹脂20を巻き付ける巻付工程について説明する。巻付工程において、制御装置15は、圧着部13bを駆動して溶融樹脂20を芯材14aに押し付けるとともに、芯材14aを駆動して回転させる。溶融樹脂20は、芯材14aの外周面に対して、回転軸に沿う方向に所定のピッチを有した螺旋状に巻き付けられ、これにより管状に形成される。また、巻付工程において、貫通孔20aは、溶融樹脂20に作用する巻付方向の張力によって、巻付方向に引き延ばされて真円に近づくように開口する。
【0060】
なお、ここでの所定のピッチとは、圧着部13bによって溶融樹脂20が芯材14aに押し付けられた状態で、隣り合う溶融樹脂20同士が隙間なく螺旋状に巻き付けられるピッチである。また、ここでの所定のピッチは、溶融樹脂20に設けられた貫通孔20aが隣り合う溶融樹脂20によって塞がれず、貫通孔20aが外面に臨む、すなわち貫通孔20aが液輸送管21の外面に開口するピッチである。また、本実施形態では、芯材14aに対して一層の溶融樹脂20が巻き付けられる。
【0061】
また、巻付工程において、管状に形成された溶融樹脂20には、液輸送管21の管本体22に相当する領域において、螺旋状のリブ22aが形成される。リブ22aは、例えば、溶融状態の熱可塑性樹脂を纏った中空のコアチューブ(非図示)を、管状に形成された溶融樹脂20に対して螺旋状に巻き付けることで形成される。なお、リブ22aは、貫通孔20aと重ならず、貫通孔20aを塞がない位置に任意のピッチで設けられる。
【0062】
最後に、溶融樹脂20を冷却する冷却工程において、管状に形成された溶融樹脂20を冷却する。そして、冷却固化された溶融樹脂20を芯材14aから取り外すことで、液輸送管21が製造される。
【0063】
上述したように、従来では、熱可塑性樹脂を管状に成形する工程に加え、作業者がドリルなどを用いて貫通孔を形成する穿孔作業が必要であった。この場合、強度計算などに基づいて、管体に対して貫通孔を設ける位置をマーキングするなどの事前準備も必要となる。この点、押出工程と巻付工程との間の制限された期間に穿孔工程を行うことで、成形後の穿孔作業、及び、その事前準備の工程が不要になる。したがって、周面に貫通孔20aを備える液輸送管21の生産効率を向上できる。また、作業者がドリルなどを用いて貫通孔を形成する場合と比較して、貫通孔20aが設けられる位置のばらつきが小さくなる。
【0064】
[溶融樹脂の冷却に伴う貫通孔の形状変化]
次に、図5ないし図8を参照して、冷却工程における貫通孔20aの形状変化について説明する。
【0065】
図5に示すように、芯材14aに対して巻き付けられた直後の溶融樹脂20であって、冷却前の溶融樹脂20は、液輸送管21の内面となる第1面20bが芯材14aに対して張り付いた状態となる。この状態では、第1面20b側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20が芯材14aに対して張り付くことで、貫通孔20aにおける第1面20b側の径が第2面20c側の径よりもわずかに大きくなる。なお、冷却前の溶融樹脂20における貫通孔20aは、第1面20b側及び第2面20c側の何れもが真円に近い形状を有する。
【0066】
図6に示すように、溶融樹脂20は、芯材14aに対して巻き付けられた後、第1面20b側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20が芯材14aに対して張り付いた状態で冷却固化される。そのため、第1面20b側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20の形状は、冷却の前後でほとんど変化しない。
【0067】
これに対して、第2面20c側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20は、巻付工程において溶融樹脂20に作用した張力の残留応力などの影響によって、冷却に伴って図6中に矢印で示す溶融樹脂20の延在方向に収縮する。また、第2面20c側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20は、冷却に伴う収縮により、溶融樹脂20の延在方向において隆起部20dを形成する。隆起部20dは、溶融樹脂20が第2面20cよりも突出した領域である。
【0068】
図7に示すように、第2面20c側において貫通孔20aを区画する溶融樹脂20は、冷却に伴う収縮により、貫通孔20aの内周面において、貫通孔20aを縮径させる傾斜部20eを形成する。傾斜部20eは、溶融樹脂20が第2面20cよりも第1面20b側に向けて沈下し、かつ、貫通孔20aの内側に張り出した領域である。傾斜部20eは、例えば、真っすぐな傾斜面や上方に膨らんだ湾曲面や下方に窪んだ湾曲面やこれらの組み合わせで構成される。傾斜部20eは、貫通孔20aを区画する縁部において、貫通孔20aを幅方向に最も縮径させる。傾斜部20eにおける貫通孔20aを区画する縁部の位置は、冷却速度等の製造条件や溶融樹脂20の厚み等によって、貫通孔20aの深さ方向において若干上下する。
【0069】
図8に示すように、冷却された溶融樹脂20における貫通孔20aの形状は、第2面20c側では、冷却に伴う収縮によって溶融樹脂20の延在方向に拡径し、かつ、溶融樹脂20の幅方向に縮径している。しかし、第1面20b側では、上述したように、貫通孔20aの形状が冷却の前後でほとんど変化せず、真円に近い状態が維持されている。したがって、冷却後の貫通孔20aは、溶融樹脂20の幅方向において、第2面20c側が第1面20b側よりも小さい寸法を有し、かつ、溶融樹脂20の延在方向において、第1面20b側が第2面20c側よりも小さい寸法を有する。これにより、貫通孔20aとして必要な面積を確保しつつ、貫通孔20aから砕石などが侵入し難くすることができる。
【0070】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)穿孔工程において、溶融樹脂20に対して貫通孔20aを形成することで、熱可塑性樹脂を管状に成形した後の穿孔作業が不要になる。したがって、周面に貫通孔20aを備える液輸送管21の生産効率を向上できる。また、作業者がドリルなどを用いて貫通孔を形成する場合と比較して、貫通孔20aが設けられる位置のばらつきが小さくなる。
【0071】
(2)冷却後の貫通孔20aは、溶融樹脂20の幅方向において、第2面20c側が第1面20b側よりも小さい寸法を有し、かつ、溶融樹脂20の延在方向において、第1面20b側が第2面20c側よりも小さい寸法を有する。したがって、穿孔工程において溶融樹脂20に貫通孔20aを形成し、巻付工程において溶融樹脂20を芯材14aに巻き付けることで、貫通孔20aとして必要な面積を確保しつつ、貫通孔20aから砕石などが侵入し難くすることができる。
【0072】
(3)穿孔工程で形成される貫通孔20aは、溶融樹脂20の延在方向における寸法D1が溶融樹脂20の幅方向における寸法D2よりも小さくなるように構成される。これにより、巻付工程において、溶融樹脂20に対して作用する巻付方向の張力によって貫通孔20aが巻付方向に引き延ばされることで、貫通孔20aの形状を真円に近づけることができる。
【0073】
(4)穿孔ピン12aが溶融樹脂20に貫通孔20aを形成する際に、受け台12bによって溶融樹脂20を支持することで、変形しやすい状態である溶融樹脂20に対して、穿孔ピン12aよる打ち抜き荷重を好適に作用させることができる。
【0074】
(5)穿孔ピン12aが搬送される溶融樹脂20に追従して移動しながら溶融樹脂20を打ち抜くことで、上流から搬送される溶融樹脂20が穿孔ピン12aによってせき止められることが防止される。そのため、単に穿孔ピン12aが溶融樹脂20に対して垂直方向に駆動される場合よりも、貫通孔20aの形状を制御し易くなる。そして、穿孔ピン12aに対して上流から搬送される溶融樹脂20によって加わる負荷を低減できる。また、溶融樹脂20を搬送しながら貫通孔20aを形成できるので、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に芯材14aの回転が停止されて溶融樹脂20の搬送が停止される製造方法よりも安定生産が可能になるとともに生産効率を向上できる。
【0075】
(6)芯材14aと対向する第1面20bから、第1面20bと反対の面である第2面20cに向けて貫通孔20aを形成することで、液輸送管21において内面となる第1面20bには貫通孔20aを形成する際のバリなどが生じにくくなる。これにより、液輸送管21の内面を平滑にできるため、液輸送管21の内部を通過する流体への抵抗を低減できる。
【0076】
(7)逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスは、0.01mm以上0.3mm以下、より好ましくは、0.01mm以上0.05mm以下となるように構成される。これにより、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を打ち抜く際に、穿孔ピン12aと逃がし部12eとの干渉を防ぎつつ、逃がし部12eと穿孔ピン12aとの隙間に溶融樹脂20が巻き込まれることを防止できる。その結果、第2面20cにバリが生じることを抑制できるため、圧着部13bが第2面20cを芯材14aに向けて押圧する際の抵抗が増加することが防止される。したがって、圧着部13bによって第2面20cを芯材14aに向けて好適に押圧できる。また、液輸送管21の外観が悪化することを抑制できる。
【0077】
(8)液輸送管21の呼び径が300mm以上3000mm以下であることで、液輸送管21をガス抜き管や集排水管として好適に用いることができる。
(9)液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、ポリプロピレンのうち少なくとも一つから選択される。液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂が上記の材料であることで、液輸送管21に必要とされる耐圧性などの機械的特性や耐薬品性、耐食性などの化学的特性を達成できる。
【0078】
なお、以上のような液輸送管製造システム10は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラス繊維強化ポリエチレン、ポリプロピレンを例示した。しかし、これに限定されず、液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)などを用いてもよい。また、液輸送管21を構成する熱可塑性樹脂には、顔料、酸化防止剤、安定剤などの添加剤やカップリング材が含まれてもよい。
【0079】
・液輸送管21の呼び径が300mm以上3000mm以下である構成を例示した。しかし、これに限定されず、液輸送管21に必要とされる機械的特性が達成できるのであれば、例えば、液輸送管21の呼び径が300mm未満であってもよく、3000mm超であってもよい。
【0080】
・逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスを0.01mm以上0.3mm以下、もしくは、0.01mm以上0.05mm以下とする構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、穿孔ピン12aと逃がし部12eとが干渉しないのであれば、逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスを0.01mm未満としてもよい。また、例えば、逃がし部12eと穿孔ピン12aとの隙間に溶融樹脂20が巻き込まれないのであれば、逃がし部12eと穿孔ピン12aとのクリアランスを0.3mm超としてもよい。
【0081】
・穿孔ピン12aが第1面20bから第2面20cに向けて貫通孔20aを形成する構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、穿孔ピン12aが貫通孔20aを形成した際に生じるバリが、液輸送管21を通過する流体の抵抗にならない程度の大きさであれば、穿孔ピン12aが第2面20cから第1面20bに向けて貫通孔20aを形成してもよい。
【0082】
・穿孔ピン12aが搬送される溶融樹脂20に追従して移動しながら溶融樹脂20を打ち抜く構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、芯材14aの回転速度が低速の場合などにおいて、貫通孔20aの形状を制御できるのであれば、第2可動部12dが駆動されず、単に第1可動部12cが搬送台13aに対して垂直方向に駆動される構成であってもよい。また、例えば、液輸送管21の安定生産が可能であれば、芯材14aの回転が停止されて溶融樹脂20の搬送が停止された状態で、穿孔ピン12aが溶融樹脂20を形成する構成であってもよい。
【0083】
・穿孔工程で形成される貫通孔20aにおいて、溶融樹脂20の延在方向における寸法D1が溶融樹脂20の幅方向における寸法D2よりも小さくなる構成を例示した。しかし、これに限定されず、穿孔工程で形成される貫通孔20aの寸法D1及びD2は、熱可塑性樹脂の種類や、巻付工程において溶融樹脂20に作用する巻付方向の張力に応じて適宜決定されればよく、例えば、寸法D1が寸法D2と同じであってもよい。また、寸法D1が寸法D2よりも大きくてもよい。
【0084】
・穿孔工程において、貫通孔20aが一定のピッチで形成される構成を例示した。しかし、これに限定されず、耐圧性などの機械的特性を考慮したうえで、溶融樹脂20の延在方向における任意の位置に貫通孔20aを設けてよい。
【0085】
・巻付工程において、芯材14aに対して一層の溶融樹脂20が巻き付けられる構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、芯材14aに対して溶融樹脂20を複数層巻き付けてもよい。この場合、2層目以降の溶融樹脂20は、1層目の溶融樹脂20に形成された貫通孔20aを塞がないようなピッチで巻き付けられる。これにより、液輸送管21において、部分的に厚みを増やすことで強度を高めることができる。
【0086】
・液輸送管21に止水ゴム24bを設け、液輸送管21が備える差口24を、他の液輸送管21が備える受口23に差し込むことで、液輸送管21同士を連結する構成を例示した。しかし、これに限定されず、止水ゴム24bは、水膨張ゴムであってもよい。また、液輸送管21同士を連結する方法としては、例えば、電気融着やバット融着であってもよい。この場合、液輸送管21に止水ゴム24bを設けなくてもよい。また、液輸送管21同士を連結するために、フランジ継手などの液輸送管21同士を連結するための継手となる部材を用いてもよい。
【0087】
・標線24cは、2本以上であってもよい。また、受口23及び差口24の長さなどで挿入深さが決まるのであれば、標線24cを設けなくてもよい。
・液輸送管21にリブ22aを設ける構成を例示したが、液輸送管21に要求される機械的特性を達成できるのであれば、リブ22aを設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…液輸送管製造システム
11…押出装置
12…穿孔装置
12a…穿孔ピン
12b…受け台
12c…第1可動部
12d…第2可動部
12e…逃がし部
13…冷却装置
13a…搬送台
13b…圧着部
13c…支持部
14…巻付装置
14a…芯材
15…制御装置
20…溶融樹脂
20a…貫通孔
20b…第1面
20c…第2面
21…液輸送管
22…液輸送管製造システム
22a…リブ
23…受口
24…差口
24a…凹溝
24b…止水ゴム
24c…標線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8