(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】減音装置及び減音システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
F24F13/02 H
(21)【出願番号】P 2021062822
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2020118226
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506396582
【氏名又は名称】株式会社みやちゅう
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨▲高▼ 隆
(72)【発明者】
【氏名】洞田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】市原 真希
(72)【発明者】
【氏名】吉川 優
(72)【発明者】
【氏名】教誓 勉
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 悟
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】畠山 正樹
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-159724(JP,U)
【文献】実開昭57-037194(JP,U)
【文献】特開2017-020167(JP,A)
【文献】特開2008-111307(JP,A)
【文献】特開平11-287016(JP,A)
【文献】特開平09-318114(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015257(JP,U)
【文献】特開2016-205735(JP,A)
【文献】特開昭53-021847(JP,A)
【文献】国際公開第2008/064680(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0000254(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00、7/04
F24F 13/00-13/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の室内側と室外側を連通させる通気管の中に設置されて、当該通気管を通過する音を減音する減音装置であって、
前記通気管を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部と、下流側に設けられる下流側壁部と、前記上流側壁部と前記下流側壁部とを接続し、前記通気管の内面に対向して設けられる側壁部と、を備え、
前記上流側壁部、前記下流側壁部、及び前記側壁部により囲繞される部分には
中空構造の内部空間が形成され、
前記上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次前記上流側に突出するように形成され、
前記上流側壁部
には
、前記上流側壁部を貫通し、前記内部空間と連通する開口部が設けられ、
前記側壁部には、当該側壁部と前記通気管の前記内面との間に隙間を形成する隙間形成機構が設けられている、減音装置。
【請求項2】
前記上流側壁部は、円錐状、または半球状に形成されている、請求項1に記載の減音装置。
【請求項3】
前記側壁部には、開口部が設けられ、前記内部空間には、消臭剤と調湿材のいずれか一方または双方が設けられている、請求項1または2に記載の減音装置。
【請求項4】
前記内部空間には、多孔質の部材が格納されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項5】
前記多孔質の部材は、不織布により形成された袋に収容されている、請求項4に記載の減音装置。
【請求項6】
前記内部空間には、不織布が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項7】
前記通気管は、横方向に延在するように設けられ、
前記通気管の下側の前記内面に対応する形状に形成されて、下側の前記隙間を閉塞するように設けられた、止水部を備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項8】
前記止水部は、前記上流側の表面が、鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、外周側から中央に向かうにつれて、漸次、前記上流側に向けて突出するように形成されている、請求項7に記載の減音装置。
【請求項9】
前記隙間形成機構は、前記側壁部から前記通気管の前記内面に向けて突出するように設けられた複数の突出部であり、
前記複数の突出部の各々は、板状に形成されるとともに、前記通気管の軸線方向と平行となるように、前記側壁部から立ち上がって設けられ、
前記突出部の、前記通気管側の端辺は、前記側壁部からの立上り高さが前記上流側と前記下流側とで異なるように、テーパー状に、または段部が設けられて、形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項10】
前記下流側壁部には、中央が前記上流側に凹むように凹部が形成され、
当該凹部には、筒体が、当該筒体の軸線方向が前記通気管の軸線方向と一致するように設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載の減音装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項の減音装置を複数備え、
当該複数の減音装置の各々が、前記通気管内に、当該通気管の軸線方向に互いに離間するように設けられている、減音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減音装置及び減音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物には、室内外の換気を目的とした通気管が設けられている。
通気管としては、例えば、建築構造物の壁に形成された貫通孔に設置される、通気スリーブが挙げられる。通気スリーブの両端に、ベントキャップや給気レジスター、排気レジスターを設置することで、給気経路や排気経路が形成される。
あるいは、通気管として、例えば天井裏に設置されたファンを間に挟むように、室内側と室外側を連通させるように設けられた配管も挙げられ得る。
これらのような通気管を設けると、室内側と室外側との間で、通気管を通して音が伝わることがある。このような、通気管を通過する音を低減することが望まれている。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1には、通気スリーブの端部に挿入して配置する消音装置を備えた構成が開示されている。この構成において、消音装置は、挿入部と消音器とを有している。挿入部は、通気スリーブの端部に挿入される。挿入部は、両端が開放された筒状の部材で、一方の端面に消音器が接続されている。消音器は、内部に軸方向に延在する略直方体形状の空洞部を有する。消音器の通気スリーブ側には、空洞部と外部とを連通する開口部を有する。
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、消音器が壁の表面から突出するように設けられる。このため、建築構造物の意匠性が損なわれ、見た目が悪い。
【0004】
これに対し、特許文献2には、通気スリーブ(貫通孔)内に貫通設置した外管と、外管内に挿入設置した、外周面に吸音層を巻回した内管と、を備える構成が開示されている。このような構成によれば、吸音層が通気スリーブから突出せず、建築構造物の意匠性が損なわれることが抑えられる。
しかしながら、特許文献2に記載の構成では、外周面に吸音層が設けられた内管の内側は、室内室外を結ぶ方向に貫通する構造となっているため、減音効果は限定的なものとなる。このような構成で、減音効果をより高めるためには、吸音層の径方向の厚みを増大させればよいが、吸音層を厚くすると、通気スリーブ内の空気の流れが悪くなり、換気性能が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-52833号公報
【文献】特開2003-28346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置及び減音システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明の減音装置は、建築構造物の室内側と室外側を連通させる通気管の中に設置されて、当該通気管を通過する音を減音する減音装置であって、前記通気管を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部と、下流側に設けられる下流側壁部と、前記上流側壁部と前記下流側壁部とを接続し、前記通気管の内面に対向して設けられる側壁部と、を備え、前記上流側壁部、前記下流側壁部、及び前記側壁部により囲繞される部分には内部空間が形成され、前記上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次前記上流側に突出するように形成され、前記上流側壁部と前記下流側壁部のいずれか一方には開口部が設けられ、前記側壁部には、当該側壁部と前記通気管の前記内面との間に隙間を形成する隙間形成機構が設けられている。
このような構成によれば、側壁部は、通気管の内面との間に隙間を形成するように設けられている。このため、減音装置は、通気管の軸線方向から見て、隙間の部分を除いて、通気管の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管内を貫通することが抑制される。また、通気管内を通過する空気の流路は、通気管の軸方向に直交する断面における断面積が、減音装置を挟んだ前後の部分に対し、減音装置が設けられた部分で小さくなっている。つまり、通気管内を通過する空気の流れ方向において、空気の流路は、大面積から小面積となった後、再び大面積となるように、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管を通過する音が減音される。
また、上流側壁部と下流側壁部のうちの一方には開口が設けられている。この開口から内部空間に入り込んだ音が、内部空間内で干渉することによって、通気管を通過する音が減音される。
これらの効果が相乗し、通気管を通過する音が、効果的に減音される。
また、上流側壁部は、外周側から中央に向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。このため、通気管内を上流側壁部に向けて流れる空気は、上流側壁部の中央から外周側に向けて流れ、通気管の内面と側壁部の間に形成された隙間へ滑らかに誘導される。このため、上記のように通気管を大きく塞ぐ構造となっているにもかかわらず、圧力損失、すなわち空気が通気管を通過する際に失うエネルギー量が抑えられている。したがって、上記のような減音装置を設けたとしても、換気性能は、大きくは損なわれない。
その結果、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置を提供できる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記上流側壁部が、円錐状、または半球状に形成されている。
このような構成によれば、通気管内を上流側壁部に向けて流れる空気は、上流側壁部の中央から外周側に向けて、更には側壁部と通気管の内面との間の隙間へと、円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記側壁部には、開口部が設けられ、前記内部空間には、消臭剤と調湿材のいずれか一方または双方が設けられている。
このような構成によれば、上流側壁部に開口が設けられた場合には、上流側壁部の開口を通過して内部空間に流入した空気が、側壁部の開口部から流出される。下流側壁部に開口が設けられた場合には、側壁部の開口を通過して内部空間に流入した空気が、下流側壁部の開口部から流出される。
いずれの場合にも、通気管内を通過する空気が、内部空間内を流れやすくなるため、内部空間に設けられた消臭剤や調湿材により、十分な消臭、調湿効果が期待できる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記内部空間には、多孔質の部材が格納されている。
このような構成によれば、減音性能を、更に効果的に、高めることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記多孔質の部材は、不織布により形成された袋に収容されている。
このような構成によれば、多孔質の部材を収容する袋は不織布であり、通気管内を通過する音を減音装置が減音するに際し、周波数に依存して減音性能にばらつきが生じ得る特性を、不織布が緩和するように作用する。すなわち、不織布が設けられない場合に減音されにくく通気管内を通過しやすい周波数の音が、不織布を設けることにより減音されやすくなる。これにより、減音性能を更に高めることができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記内部空間には、不織布が設けられている。
このような構成によれば、通気管内を通過する音を減音装置が減音するに際し、周波数に依存して減音性能にばらつきが生じ得る特性を、不織布が緩和するように作用する。すなわち、不織布が設けられない場合に減音されにくく通気管内を通過しやすい周波数の音が、不織布を設けることにより減音されやすくなる。これにより、減音性能を更に高めることができる。
【0013】
本発明の一態様においては、前記通気管は、横方向に延在するように設けられ、前記通気管の下側の前記内面に対応する形状に形成されて、下側の前記隙間を閉塞するように設けられた、止水部を備えている。
通気管が横方向に延在するように設けられると、通気管に水が浸入した場合に、水は、減音装置の側壁部と通気管の内面との間に形成された隙間を通って、減音装置の反対側へと流れてしまう。減音装置の反対側が室内であると、通気管から室内へと水が漏れだすことになる。
これに対し、通気管の下側の内面に対応する形状に形成されて、下側の隙間を閉塞するように設けられた、止水部を備えることにより、通気管に侵入した水の通過を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様においては、前記止水部は、前記上流側の表面が、鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、外周側から中央に向かうにつれて、漸次、前記上流側に向けて突出するように形成されている。
このような構成によれば、止水板を、上流側の表面が、鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、外周側から中央に向かうにつれて、漸次、上流側に向けて突出するように形成することで、通気管内を上流側から流れ、止水板に突き当たった空気は、止水板の中央から外周側に向けて誘導され、止水板によって閉塞されていない、止水板より上側に位置する隙間へと流れる。したがって、止水部を設けて下側の隙間を閉塞した場合であっても、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0015】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記隙間形成機構は、前記側壁部から前記通気管の前記内面に向けて突出するように設けられた複数の突出部であり、前記複数の突出部の各々は、板状に形成されるとともに、前記通気管の軸線方向と平行となるように、前記側壁部から立ち上がって設けられ、前記突出部の、前記通気管側の端辺は、前記側壁部からの立上り高さが前記上流側と前記下流側とで異なるように、テーパー状に、または段部が設けられて、形成されている。
このような構成によれば、減音装置を通気管の端部の外側から通気管内に向けて挿入させて設置するに際し、側壁部からの立上り高さが低い側を挿入方向前方に向けることで、突出部の挿入方向前方の端部が、通気管に接触するのを抑えることができる。これにより、通気管内に、減音装置を容易に設置可能である。
また、例えば通気管が、建築構造物の壁の貫通孔内に設けられた通気スリーブであると、給気レジスターやベントキャップ等の他の部材の一部が、通気管内に挿入されて通気管の内面に接触して設けられることがある。このような場合において、突出部の立上り高さが低い側の端部と、通気管の内面の間に、他の部材の一部を配置することができる。これにより、通気管内の他の部材と減音装置とを、通気管内の軸線方向でオーバーラップさせて配置することができる。したがって、通気管内の空間を有効に活用して、減音装置を設置することが可能となる。
【0016】
本発明の一態様においては、本発明の減音装置は、前記下流側壁部には、中央が前記上流側に凹むように凹部が形成され、当該凹部には、筒体が、当該筒体の軸線方向が前記通気管の軸線方向と一致するように設けられている。
このような構成によれば、減音装置を通気管内に設置するに際し、上流側壁部を通気管側に向けて、減音装置を通気管の端部の外側から通気管内に挿入させるようにすれば、下流側壁部は通気管とは反対側の、設置作業者側を向く。ここで、設置作業者は、下流側壁部に設けられた筒体を把持することで、減音装置の設置作業を行うことでできる。したがって、減音装置を容易に設置できる。
【0017】
本発明の減音システムは、上記したような減音装置を複数備え、当該複数の減音装置の各々が、前記通気管内に、当該通気管の軸線方向に互いに離間するように設けられている。
このような構成によれば、既に説明したような、減音装置による減音効果を、相乗的に、奏することができる。
特に、通気管内を通過する空気の流路の断面積が変化する回数が多くなるため、更に効率的に、減音性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置及び減音システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムを備えた通気管が設けられた建築構造物の壁を示す断面図である。
【
図2】
図1の減音装置、減音システムを示す断面図である。
【
図3】
図1の減音装置の上流側壁部を軸線方向から見た図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第1変形例の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第2変形例の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第3変形例の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第4変形例の構成を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第5変形例の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第6変形例の構成を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムの第7変形例の構成を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る減音システムの第8変形例の構成を示す断面図である。
【
図12】上記第8変形例に係る減音システムの減音装置を軸線方向から見た図である。
【
図13】上記第8変形例に係る減音装置の、止水部の断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムにおいて、上流側壁部を円錐形状とした場合と、平面形状とした場合の比較検討結果を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムと、市販の減音装置との比較検討結果を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムにおいて、吸音材の有無についての比較検討結果を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムにおいて、側壁部の開口部の有無についての比較検討結果を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムにおいて、開口の数についての比較検討結果を示す図である。
【
図19】本発明の第8変形例に係る減音装置、減音システムと、市販の止水板との比較検討結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による減音装置、減音システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る減音装置、減音システムを備えた通気管が設けられた建築構造物の壁を示す断面図を
図1に示す。
図2は、
図1の減音装置、減音システムを示す断面図である。
図3は、
図1の減音装置の上流側壁部を軸線方向から見た図である。
図1、
図2に示されるように、建築構造物の壁1に、換気用の通気管4が設けられている。本実施形態においては、通気管4は、通気スリーブであり、壁1を貫通して室内側S1と室外側S2とを連通する貫通孔2内に設けられている。通気管4は、例えば円筒状で、室内側S1と室外側S2とを結ぶ軸線方向Daに沿って延び、横方向に延在するように設けられている。通気管4は、室内側S1と室外側S2とを連通させ、これらの間で空気の換気を行う。本実施形態では、通気管4は、例えば、室外側S2から室内側S1に給気を行う給気ダクトとして用いられる。
【0021】
このような通気管4内には、減音システム10が設けられている。減音システム10は、複数の減音装置11を備えている。本実施形態では、減音システム10は、例えば二つの減音装置11を備えている。これらの減音装置11は、通気管4内に、通気管4の軸線方向Daに間隔を空けて、互いに離間するように配置されている。各減音装置11は、主に、通気管4を通過する音を減音する。各減音装置11は、減音装置本体20と、吸収剤30と、を備えている。
【0022】
図2に示すように、減音装置本体20は、上流側壁部21と、下流側壁部22と、側壁部23と、隙間形成機構24と、を一体に備えている。
上流側壁部21は、通気管4を通過する空気の流れ方向Fの上流側に設けられる。上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、その外形が漸次縮小している。上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。本実施形態では、上流側壁部21は、円錐状に形成されている。
【0023】
下流側壁部22は、通気管4を通過する空気の流れ方向Fの下流側に設けられている。下流側壁部22の外周部22aは、通気管4の軸線方向Daに直交する面に沿って形成されている。下流側壁部22の内周部には、凹部26が形成されている。凹部26は、その中央部が上流側に凹むように形成されている。
下流側壁部22には、筒体27が設けられている。筒体27は、凹部26の中央部26cから、流れ方向Fの下流側に突出するように延びている。筒体27は、円筒状で、その軸線方向が通気管4の軸線方向Daと一致するように設けられている。
【0024】
側壁部23は、減音装置本体20の外周部に設けられている。側壁部23は、通気管4の軸線方向Daに延びる円筒状で、上流側壁部21の外周部と下流側壁部22の外周部とを接続している。側壁部23の外径は、通気管4の内径よりも小さく形成されている。側壁部23は、通気管4の内面4fに対し、通気管4の径方向に間隔をあけて対向して設けられる。これにより、側壁部23と通気管4の内面4fとの間には、軸線方向Daから見て環状の隙間100が形成されている。
【0025】
上流側壁部21の外周部と、側壁部23の流れ方向Fの上流側の端部とは、所定の曲率で湾曲した上流側湾曲面23vを介して接続されている。側壁部23の流れ方向Fの下流側の端部と下流側壁部22の外周部とは、所定の曲率で湾曲した下流側湾曲面23wを介して接続されている。このような上流側湾曲面23v、下流側湾曲面23wによって、減音装置本体20に対して流れ方向Fの上流側から隙間100に流れ込む空気の流れ、隙間100から流れ方向Fの下流側に流出する空気の流れに剥離等が生じにくくなり、隙間100の周辺における流れを円滑なものとすることができる。
【0026】
減音装置本体20は、中空構造とされ、上流側壁部21、下流側壁部22、及び側壁部23により囲繞される部分には内部空間25が形成されている。
内部空間25には、吸収剤30が格納されている。吸収剤30は、多孔質の部材31と、袋32と、を備えている。多孔質の部材31は、例えば、ゼオライト、パーライト等からなる。本実施形態において、多孔質の部材31は、粒状に形成された多数のゼオライトからなる。多孔質の部材31は、袋32に収容されている。袋32は、多孔質の部材31を収容するとともに、通気性を有する素材により形成されている。本実施形態において、袋32は、例えば不織布によって形成されている。多孔質の部材31として、ゼオライト、パーライト等を用いることで、吸音以外にも、消臭、調湿といった効果が得られる。
【0027】
上流側壁部21と下流側壁部22のいずれか一方には開口28が設けられている。
図2、
図3に示すように、本実施形態では、上流側壁部21に、開口28が設けられている。開口28は、例えば、通気管4の軸線方向Daから見て円形で、上流側壁部21の中央21cの径方向外側に、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。本実施形態では、開口28は、周方向に等間隔をあけて、計6個が形成されている。各開口28は、上流側壁部21を軸線方向Daに貫通して形成されている。
【0028】
側壁部23には、隙間形成機構24が設けられている。本実施形態においては、隙間形成機構24は、複数の突出部24Aである。複数の突出部24Aは、側壁部23の周方向に間隔をあけた3箇所以上に形成されている。本実施形態では、突出部24Aは、側壁部23の周方向に等間隔をあけて、計4箇所に形成されている。各突出部24Aは、板状に形成されるとともに、通気管4の軸線方向Daと平行となるように、側壁部23から径方向の外側に立ち上がって設けられている。
図2に示すように、各突出部24Aは、側壁部23から通気管4の内面4fに向けて突出している。突出部24Aの径方向外側(通気管4側)の端辺24sは、少なくともその一部が通気管4の内面4fに突き当たっている。これら複数の突出部24Aは、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する。
通気管4の流路断面積に対する、隙間100の流路断面積の割合、すなわち流路開口率は、16~22%となるのが好ましく、19%とするのが最も好ましい。
【0029】
突出部24Aの端辺24sは、側壁部23からの立上り高さが、流れ方向Fの上流側と下流側とで異なるように形成されている。本実施形態において、突出部24Aは、流れ方向Fの下流側から上流側に向かって、端辺24sの側壁部23からの立ち上がり高さが漸次小さくなるよう、テーパー状に形成されている。これにより、突出部24Aの端辺24sは、流れ方向Fの上流側で、通気管4の内面4fとの間に間隔を隔てている。
【0030】
通気管4の室内側S1の端部には、レジスター5が装着されている。レジスター5は、レジスター本体51と、レジスター開閉部52と、を備えている。
レジスター本体51は、通気管4の室内側S1の端部の内周面に沿うように挿入された筒部51aを有している。レジスター本体51は、筒部51aの径方向内側に、シャフト支持材53を一体に有している。シャフト支持材53は、その中央部に、後述するレジスター本体51のシャフト56が挿通されるシャフト挿通孔53hを有している。シャフト支持材53は、周方向に間隔をあけて複数本が設けられたステー53sを有している。これら複数本のステー53sは、径方向外側に延びて筒部51aに接合されている。シャフト支持材53は、通気管4内において、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの下流側壁部22に突き当てて配置されている。また、レジスター本体51は、壁1の室内側S1に、枠部54を一体に有している。枠部54は、軸線方向Daから見て環状で、貫通孔2の径方向外側で、壁1に沿うように設けられている。
【0031】
レジスター開閉部52は、シャッター55と、シャフト56と、を一体に備えている。シャッター55は、軸線方向Daに直交する面に沿って配置された板状で、枠部54の内側に配置されている。シャフト56は、シャッター55の中央部から軸線方向Daに沿って、流れ方向Fの上流側に突出するように設けられている。シャフト56は、シャフト挿通孔53hに挿入され、軸線方向Daに沿って移動可能に設けられている。これにより、シャッター55は、枠部54の内側で、シャフト56とともに軸線方向Daに移動可能とされている。シャッター55は、枠部54の内側に配置された状態から、枠部54よりも室内側S1に出没可能とされている。これにより、シャッター55の外周縁と、枠部54の内周縁との間隔が増減し、通気管4を通して室外側S2から室内側S1に導入する空気の量(給気量)を調整可能となっている。シャッター55が枠部54の内側に位置した状態で、シャフト56の流れ方向Fの上流側の端部は、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの下流側壁部22に設けられた筒体27に挿入される。
【0032】
通気管4の室外側S2の端部には、ベントキャップ6が装着されている。ベントキャップ6は、キャップ本体61と、管挿入部62と、を一体に備えている。
キャップ本体61は、複数のルーバー61aを有している。管挿入部62は、キャップ本体61と一体に設けられている。管挿入部62は、筒状で、通気管4の室外側S2の端部の内周面に沿うように挿入されている。管挿入部62は、通気管4内で流れ方向Fの上流側に配置された減音装置11Aの突出部24Aの端辺24sの流れ方向Fの上流側の端部と、通気管4の内面4fとの間に挿入されている。
【0033】
上記のような減音装置11及び減音システム10に対し、室外側S2から通気管4内に空気が通過しようとすると、空気は、通気管4内で流れ方向Fの上流側に配置された減音装置11Aの、上流側壁部21に突き当たる。
上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように、円錐状に形成されているので、空気は上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて流れ、通気管4の内面4fと側壁部23の間に形成された隙間100へ滑らかに誘導される。
ここで、上流側壁部21の外周部と、側壁部23の流れ方向Fの上流側の端部とは、所定の曲率で湾曲した上流側湾曲面23vを介して接続されている。したがって、空気が隙間100に流れ込む際に、空気の乱れが生じにくい。
空気は、隙間100を通った後、減音装置11Aの後方へと流れ込む。
ここで、側壁部23の流れ方向Fの下流側の端部と下流側壁部22の外周部とは、所定の曲率で湾曲した下流側湾曲面23wを介して接続されている。したがって、空気が隙間100から流れ出る際に、空気の乱れが生じにくい。
【0034】
減音装置11Aの後方へと流れ込んだ空気は、次に、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Bの、上流側壁部21に突き当たる。
減音装置11Bは、減音装置11Aと同等の構成となっているため、上記の減音装置11Aに関する説明と同様に、空気は減音装置11Bの後方へと流れる。
減音装置11Bの後方へと流れた空気は、室内側S1へと給気される。
【0035】
ここで、室外側S2から室内側S1へと通気管4内を音が通過する場合を考える。
減音装置11は、通気管4の軸線方向Daから見て、隙間100の部分を除いて、通気管4の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管4内を貫通することが抑制される。
また、減音装置11の内側には、内部空間25が形成されており、この内部空間25を形成する壁部のひとつである上流側壁部21には、開口28が設けられている。これにより、減音装置11は共鳴器として作用する。特に本実施形態においては、上流側壁部21には複数の開口28が設けられているため、複数の共鳴器が併設されたような構成となっている。これら複数の共鳴器によって、通気管4内を通過しようとする音は、吸音され、減音される。
また、内部空間25には、粒状に形成された多孔質の部材31が格納されているため、音は更に減音される。
また、一般に、何らかの減音装置を通気管4内に設けた場合には、周波数に応じて、減音性能に差が生じる。例えば、ある特定の周波数においては高い減音性能ができるが、他の特定の周波数においては減音性能が低くなるような状況が生じ得る。ここで、多孔質の部材31は、不織布により形成された袋32に収容されている。この不織布は、このような、周波数に応じた減音性能のばらつきを抑制するように作用する。これにより、不織布が設けられない場合に減音されにくく通気管4内を通過しやすい周波数の音が、減音されやすくなる。
更には、通気管4内には、2個の減音装置11A、11Bが設けられている。これにより、通気管4内を通過する空気の流れ方向、すなわち通気管4の軸線方向Daにおいて、空気の流路の断面積は、大面積から、減音装置11Aが設けられている部分において小面積となった後、再び大面積となり、更にその後、減音装置11Bが設けられている部分において小面積となった後に大面積となるように、複数回にわたり、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管4を通過する音が減音される。
【0036】
上述したような減音装置11によれば、減音装置11は、建築構造物の室内側S1と室外側S2を連通させる通気管4の中に設置されて、通気管4を通過する音を減音する減音装置11であって、通気管4を通過する空気の上流側に設けられる上流側壁部21と、下流側に設けられる下流側壁部22と、上流側壁部21と下流側壁部22とを接続し、通気管4の内面4fに対向して設けられる側壁部23と、を備え、上流側壁部21、下流側壁部22、及び側壁部23により囲繞される部分には内部空間25が形成され、上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成され、上流側壁部21には開口28が設けられ、側壁部23には、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する隙間形成機構24が設けられている。
このような構成によれば、側壁部23は、通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成するように設けられている。このため、減音装置11は、通気管4の軸線方向Daから見て、隙間100の部分を除いて、通気管4の大部分を遮る構造となっている。これにより、音が通気管4内を貫通することが抑制される。また、通気管4内を通過する空気の流路は、通気管4の軸方向に直交する断面における断面積が、減音装置11を挟んだ前後の部分(通気管4の内側に減音装置11が設けられていない部分)に対し、減音装置11が設けられた部分(隙間100の部分)で小さくなっている。つまり、通気管4内を通過する空気の流れ方向において、空気の流路は、大面積から小面積となった後、再び大面積となるように、大きく変化する。この断面積の変化によって音の干渉が生じ、通気管4を通過する音が減音される。
また、上流側壁部21には開口28が設けられている。この開口28から減音装置11の内部空間25に入り込んだ音が、内部空間25内で干渉することによって、通気管4を通過する音が減音される。
これらの効果が相乗し、通気管4を通過する音が、効果的に減音される。
また、上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように形成されている。このため、通気管4内を上流側壁部21に向けて流れる空気は、上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて流れ、通気管4の内面4fと側壁部23の間に形成された隙間100へ滑らかに誘導される。このため、上記のように通気管4を大きく塞ぐ構造となっているにもかかわらず、圧力損失、すなわち空気が通気管4を通過する際に失うエネルギー量が抑えられている。したがって、上記のような減音装置11を設けたとしても、換気性能は、大きくは損なわれない。
その結果、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置11を提供できる。
【0037】
上記のように、減音装置11は、通気管4の大部分を遮る構造となっているため、室外側S2から例えば雨などに起因して水が侵入してきた場合であっても、水の室内側S1への通過を抑制することができる。
【0038】
また、上流側壁部21が、円錐状に形成されている。
このような構成によれば、通気管4内を上流側壁部21に向けて流れる空気は、上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて、更には側壁部23と通気管4の内面4fとの間の隙間100へと、円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0039】
また、内部空間25には、多孔質の部材31が格納されている。
このような構成によれば、減音性能を、更に効果的に高めることができる。
【0040】
また、多孔質の部材31は、不織布により形成された袋32に収容されている。
このような構成によれば、多孔質の部材31を収容する袋32は不織布であり、通気管4内を通過する音を減音装置11が減音するに際し、周波数に依存して減音性能にばらつきが生じ得る特性を、不織布が緩和するように作用する。すなわち、不織布が設けられない場合に減音されにくく通気管4内を通過しやすい周波数の音が、不織布を設けることにより減音されやすくなる。これにより、減音性能を更に高めることができる。
【0041】
特に、本実施形態においては、多孔質の部材31は、粒状に形成されている。
このような構成によれば、多孔質の部材31は粒状に形成されているため、多孔質の部材31の単位体積あたりの孔の個数が大きい。したがって、多孔質の部材31による減音性能を更に高めることができる。
【0042】
また、隙間形成機構24は、側壁部23から通気管4の内面4fに向けて突出するように設けられた複数の突出部24Aであり、複数の突出部24Aの各々は、板状に形成されるとともに、通気管4の軸線方向Daと平行となるように、側壁部23から立ち上がって設けられ、突出部24Aの、通気管4側の端辺は、側壁部23からの立上り高さが上流側と下流側とで異なるように、テーパー状に形成されている。
このような構成によれば、減音装置11を通気管4の端部の外側、例えば本実施形態においては壁1の手前側から、通気管4内に向けて挿入させて設置するに際し、側壁部23からの立上り高さが低い側を挿入方向前方に向けることで、突出部24Aの挿入方向前方の端部が、通気管4に接触するのを抑えることができる。これにより、通気管4内に、減音装置11を容易に設置可能である。
また、レジスター5やベントキャップ6等の他の部材の一部が、通気管4内に挿入されて通気管4の内面4fに接触して設けられる場合、突出部24Aの立上り高さが低い側の端部と、通気管4の内面4fの間に、他の部材の一部を配置することができる。これにより、通気管4内の他の部材と減音装置11とを、通気管4内の軸線方向Daでオーバーラップさせて配置することができる。したがって、通気管4内の空間を有効に活用して、減音装置11を設置することが可能となる。
【0043】
また、下流側壁部22には、中央26cが上流側に凹むように凹部26が形成され、凹部26には、筒体27が、筒体27の軸線方向が通気管4の軸線方向Daと一致するように設けられている。
このような構成によれば、減音装置11を通気管4内に設置するに際し、上流側壁部21を通気管4側に向けて、減音装置11を通気管4の端部の外側、例えば本実施形態においては壁1の手前側から通気管4内に挿入させるようにすれば、下流側壁部22は通気管4とは反対側の、設置作業者側を向く。ここで、設置作業者は、下流側壁部22に設けられた筒体27を把持することで、減音装置11の設置作業を行うことでできる。したがって、減音装置11を容易に設置できる。
また、減音装置11を、下流側壁部22をレジスター5に向けて配する場合において、筒体27内にレジスター5のシャフト56を収容し固定することで、レジスター5と減音装置11とを、通気管4内の軸線方向Daにおいて、オーバーラップして位置づけることができる。したがって、通気管4内の空間を有効に活用して、減音装置11を設置することが可能となる。
【0044】
上述したような減音システム10によれば、上記したような減音装置11を複数備え、複数の減音装置11の各々が、通気管4内に、通気管4の軸線方向Daに互いに離間するように設けられている。
このような構成によれば、減音装置11による減音効果を、相乗的に、奏することができる。
特に、通気管4内を通過する空気の流路の断面積が変化する回数が多くなるため、更に効率的に、減音性能を高めることができる。したがって、減音性能を高めつつも、換気性能が低下することを抑制可能な、減音装置11を提供することが可能となる。
【0045】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の減音装置、減音システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、上流側壁部21に開口28を有する構成としたが、これに限らない。
図4に示すように、各減音装置11の上流側壁部21には開口28を形成せず、下流側壁部22に開口28Bを形成するようにしてもよい。
このような構成によっても、下流側壁部22に形成された開口28Bによって通気管4を通過する音が減音される。また、開口28Bから減音装置11の内部空間25に入り込んだ音が、内部空間25内で干渉することによっても、通気管4を通過する音が減音される。
【0046】
(実施形態の第2変形例)
また、上記実施形態では、外周側から中央21cに向かうにつれて漸次上流側に突出する上流側壁部21を、円錐状に形成するようにしたが、これに限らない。
例えば、
図5に示すように、上流側壁部21Bは、外周側から中央21cに向かうにつれて漸次上流側に突出するよう、半球状に形成するようにしてもよい。
このような構成によっても、通気管4内を上流側壁部21Bに向けて流れる空気は、上流側壁部21Bの中央21cから外周側に向けて円滑に流れ、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0047】
(実施形態の第3変形例)
また、上記実施形態では、側壁部23には、開口部を形成しないようにしたが、これに限らない。
例えば、
図6に示すように、側壁部23に、開口部29を設けるようにしてもよい。開口部29は、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。各開口部29は、軸線方向Daに延びるスリット状に形成されている。
このような構成によれば、上流側壁部21の開口28を通過して内部空間25に流入した空気が、側壁部23の開口部29から流出される。これにより、通気管4内を通過する空気が、内部空間25内を流れやすくなるため、特に、内部空間25に、吸収剤30として、消臭剤と調湿材のいずれか一方または双方が設けられた場合には、大きな消臭、調湿効果が期待できる。
【0048】
(実施形態の第4変形例)
また、
図7に示すように、下流側壁部22に開口28Bを形成するとともに、側壁部23に開口部29を形成するようにしてもよい。
このような構成によれば、側壁部23の開口部29を通過して内部空間25に流入した空気が、下流側壁部22の開口28Bから流出される。これにより、通気管4内を通過する空気が、内部空間25内を流れやすくなるため、特に、内部空間25に、吸収剤30として、消臭剤と調湿材のいずれか一方または双方が設けられた場合には、大きな消臭、調湿効果が期待できる。
【0049】
(実施形態の第5変形例)
また、上記実施形態では、上流側壁部21、下流側壁部22に形成する開口28、28Bを、通気管4の軸線方向Daから見て円形で、周方向に等間隔をあけて複数形成するようにしたが、その数、配置等は適宜変更可能である。
また、
図8に示すように、上流側壁部21、下流側壁部22に形成する開口28Cを、スリット状としてもよい。
図8の例では、スリット状の開口28Cは、周方向に延びる円弧状とされている。このような開口28Cが、周方向、および径方向に間隔をあけて複数形成されている。
これ以外にも、径方向(放射方向)に延びるスリット状の開口(図示無し)を、周方向に間隔をあけて複数設けてもよい。
【0050】
(実施形態の第6変形例)
また、上記実施形態では、突出部24Aをテーパー状とし、その端辺24sの側壁部23からの立上り高さが、流れ方向Fの上流側と下流側とで異なるようにしたが、これに限らない。
例えば、
図9に示すように、突出部24Bの端辺24tを、側壁部23からの立上り高さが、流れ方向Fの上流側と下流側とで異なるように、立ち上がり高さが大きい大径端24uと、立ち上がり高さが大径端24uよりも小さい小径端24vと、を有する段違い形状としてもよい。
このような構成においても、小径端24vと通気管4の内面4fとの間に、ベントキャップ6の管挿入部62等を挿入することができる。
これにより、通気管4内の他の部材(ベントキャップ6の管挿入部62)と減音装置11とを、通気管4内の軸線方向Daでオーバーラップさせて配置することができる。したがって、通気管4内の空間を有効に活用して、減音装置11を設置することが可能となる。
また、突出部24Aの配置、設置数は、適宜変更可能である。
【0051】
(実施形態の第7変形例)
また、上記実施形態では、通気管4を、室外側S2から室内側S1に給気を行う給気ダクトとして用いられるようにしたが、これに限らない。通気管4は、室内側S1から室外側S2に排気を行う排気ダクトとして用いることも可能である。この場合、
図10に示すように、通気管4内の減音装置11の向きを、上流側壁部21が流れ方向Fの上流側(室内側S1)を向くように配置すればよい。
【0052】
(実施形態の第8変形例)
また、上記実施形態及び各変形例に対し、室外側S2から室内側S1への、雨等による通気管4内の水の通過を抑制する、止水部を設けるようにしてもよい。
図11は、本第8変形例における減音システムの断面図である。
図11においては、減音装置本体は、断面視されず、側面視された状態が描かれている。
図12は、本第8変形例における減音装置を軸線方向から見た図である。
止水部40は、止水板41と、側板42を備えている。
止水板41は、上流側壁部21の下側から、下方向に延在するように設けられている。止水板41は、横方向に延在するように設けられた通気管4の、下側の内面4fに対応する形状に形成されている。本変形例においては、通気管4は円筒状である。このため、止水板41は、下側の端辺41eが、
図12のように軸線方向Daから視たときに円弧状になるように形成されており、下側の端辺41eが通気管4の下側の内面4fに当接するように設けられている。これにより、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に形成された、下側の隙間100は、室外側S2が閉塞されている。
図13は、
図11のI-I部分の断面図であり、通気管4と止水板41のみを図示したものである。止水板41は、
図13に示されるように鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、上流側の表面41fが、通気管4の内面4fに当接する外周側41bから中央41cに向かうにつれて、漸次、上流側に、すなわち室外側S2に向けて突出するように形成されている。このように、本変形例においては、止水板41は全体として、2枚の板を、角度をつけて設け、その接合部を上流側に向けたような形状、配置となっている。
止水板41は、下側41gが、上側41hよりも、わずかに上流側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜をつけて設けられている。
【0053】
側板42は、通気管4の軸線方向Daと平行となるように、側壁部23から径方向の外側に立ち上がって設けられている。側板42は、側壁部23から通気管4の内面4fに向けて突出している。側板42の径方向外側の端辺42sは、通気管4の内面4fに突き当たっている。
側板42は、軸線方向Daを中心とした周方向Dcにおける、止水板41の端部41jの位置に設けられている。側板42は、上流側の端辺が、止水板41の端部41jに接合されている。
【0054】
上記のように止水板41を設けることにより、隙間100が部分的に閉塞されている。したがって、減音装置本体20を、側壁部23と通気管4の内面4fとの間の隙間100の大きさが上記実施形態と同等となるように設計すると、流路開口率が低下し、圧力損失が上記実施形態よりも高まる可能性がある。このため、本変形例のように止水板41を設ける場合においては、流路開口率を、16~22%、あるいは19%と適切な値にするために、上記実施形態として減音装置本体20を設計する場合よりも、減音装置本体20の径を僅かに小さくし、隙間100を大きくするのが望ましい。
【0055】
本変形例においては、側壁部23と通気管4の内面4fとの間に隙間100を形成する隙間形成機構24は、減音装置11Cの減音装置本体20とは異なる、ゴム等の可撓性を有する材料で形成された介装材24Cである。介装材24Cは、減音装置本体20の上端と下端に1つずつが設けられている。介装材24Cは、予め減音装置本体20に接着剤などで接合されていてもよいし、減音装置本体20を通気管4内に位置づけた状態で、減音装置本体20と通気管4の内面4fの間に挿入するように設けてもよい。
介装材24Cは、隙間100よりも僅かに大きい厚さとなるように形成されている。介装材24Cが、減音装置本体20と通気管4の内面4fの間に設けられた際には、介装材24Cが弾性変形して収縮し、その原形に復元しようとする力により、減音装置本体20が通気管4内に固定される。
【0056】
上記のような減音装置11C及び減音システム10に対し、室外側S2から通気管4内に空気が通過しようとすると、空気は、通気管4内で流れ方向Fの上流側に配置された減音装置11Cの、上流側壁部21、または止水板41に突き当たる。
上流側壁部21は、外周側から中央21cに向かうにつれて、漸次上流側に突出するように、円錐状に形成されているので、上流側壁部21に突き当たった空気は上流側壁部21の中央21cから外周側に向けて流れ、通気管4の内面4fと側壁部23の間に形成された隙間100へ滑らかに誘導される。
【0057】
止水板41は、上記のように、上流側の表面41fが、外周側41bから中央41cに向かうにつれて、漸次、上流側に向けて突出するように形成され、全体として、2枚の板を、角度をつけて設け、その接合部を上流側に向けたような形状、配置となっている。また、止水板41は、下側41gが、上側41hよりも、わずかに上流側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜をつけて設けられている。
このため、止水板41に突き当たった空気は、
図11、
図13に矢印AFとして示すように、軸線方向Daに水平面内で直交する幅方向Dwに、通気管4の内面4fに向けて誘導される。通気管4の内面4fに到達した空気は、通気管4の内面4fと下側の端辺41eとの当接した部分を、止水板41の表面41fと通気管4の内面4fに沿って、周方向Dcに、かつ上方に向けて誘導される。通気管4の内面4fに沿って上方に向けて誘導された空気は、周方向Dcにおける止水板41の端部41jから、当該端部41j及びこれに接続された側板42の上方の隙間100に誘導される。
【0058】
空気は、隙間100を通った後、減音装置11Cの後方へと流れ込む。
減音装置11Cの後方へと流れ込んだ空気は、次に、流れ方向Fの下流側に配置された減音装置11Cの、上流側壁部21に突き当たり、上流側の減音装置11Cと同様に、減音装置11Cの後方へと流れ、室内側S1へと給気される。
【0059】
室外側S2から室内側S1へと通気管4内通過する音は、上記実施形態と同様に減音される。
【0060】
室外側S2から水が侵入しようとしても、減音装置11Cは、通気管4の大部分を遮る構造となっているため、水の室内側S1への通過が抑制される。
水が通気管4の下側に溜まり、室内側S1へと流入しようとしても、これは止水板41により抑制される。
仮に、水が、室外側S2に位置する減音装置11Cと通気管4の内面4fの間の隙間100から、室内側S1に、すなわち2つの減音装置11Cの間の空間に侵入したとしても、その総量は僅かであり、室内側S1に位置する減音装置11Cにより、室内側S1への更なる侵入は抑制される。また、通気管4内には常時空気が通過するため、この空間に侵入した水は、自然に蒸発する。上記実施形態において説明したように、減音装置11Cの内部空間に吸収剤30(
図2参照)として調湿が可能となる材質を格納することで、より効果的に調湿される。
【0061】
本変形例においては、通気管4は、横方向に延在するように設けられ、通気管4の下側の内面4fに対応する形状に形成されて、下側の隙間100を閉塞するように設けられた、止水部40を備えている。
このような構成によれば、止水部40により下側の隙間100が閉塞されるため、通気管4内の水の通過を抑制できる。
また、上記実施形態と同様に、減音装置11Cは、通気管4の大部分を遮る構造となっているため、室外側S2から例えば雨などに起因して水が侵入してきた場合であっても、水の室内側S1への通過を抑制することができる。
これらの効果が相乗し、水の通過を効率的に抑制可能である。
【0062】
また、上記実施形態として説明した
図2の構成に対し、仮に、通気管4の下側を塞ぐ止水板を別途設置しようとすると、設置物が多くなるために通気管4内の構成が複雑となり、かつ、止水板を別途設置する手間が必要である。これに対し、本変形例においては、減音装置11Cが止水部40を兼ねた構成となっているため、止水板を別途設置する必要がない。このため、通気管4内の構成を簡潔なものとし、かつ止水板を別途設置する手間を削減可能である。
【0063】
また、止水部40は、上流側の表面41fが、鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、外周側41bから中央41cに向かうにつれて、漸次、上流側に向けて突出するように形成されている。
このような構成によれば、通気管内4を上流側から流れ、止水板41に突き当たった空気は、止水板41の中央41cから外周側41bに向けて誘導され、止水板41によって閉塞されていない、止水板41より上側に位置する隙間100へと流れる。したがって、止水部40を設けて下側の隙間100を閉塞した場合であっても、圧力損失が大きくなるのを効果的に抑制可能である。
【0064】
また、隙間形成機構24は、側壁部23と通気管4の間に介装された、可撓性を有する介装材24Cである。
このような構成によれば、効率的に隙間100を形成し、かつ減音装置11Cを通気管4内に固定することができる。
【0065】
例えば、
図11に示されるように、通気管4内に、通気管4の下側を塞ぐ止水板50が既に設置されているような状況下で、室内側S1から通気管4に挿入するように、止水板50よりも室外側S2に、減音装置11Cを設ける場合を考える。このような場合には、
例えば上流側壁部21が上側を向くように減音装置11Cを姿勢づけた状態で、減音装置11Cを通気管4に挿入して止水板50の上方を通過させて設置位置に到達させ、設置位置において上流側壁部21が室外側S2を向くように減音装置11Cを回転させるように、減音装置11Cを設置することが想定される。
ここで、上記実施形態のように、隙間形成機構24として減音装置本体20が突出部24Aを一体に備えていると、突出部24Aにより減音装置本体20の全体形状、特に突出部24Aを含んだ横幅が大きくなるため、上記の設置操作を行うのが容易ではない。
これに対し、本変形例においては、介装材24Cは減音装置本体20の上端と下端に1つずつが設けられているのみで、横方向には設けられていないため、上記のような設置操作が比較的容易である。なおかつ、既に説明したように介装材24Cの弾性変形からの復元力を利用して減音装置本体20を通気管4内に固定するため、介装材24Cが例えば側壁部23の2か所にしか設けられていない場合であっても、減音装置本体20を通気管4内に安定して固定可能である。
【0066】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、通気管4内に減音装置11を2つ設けるようにしたが、これに限らない。減音装置11を1つのみ、または3つ以上設けるようにしてもよい。
また、減音装置11の内部空間25に格納される吸収剤30として、粒状の、ゼオライト、パーライト等の多孔質の部材31を、不織布からなる袋32に収容したものを用いたが、これに限らない。ゼオライト、パーライト等の多孔質の部材31を、一定以上の、内部空間25に収容できる程度の大きさの、ブロック状に成形したものを、多孔質体を吸収剤30として内部空間25に収容してもよい。
また、主に減音を目的とする場合、吸収剤30として、例えばグラスウールや、ハニカム構造のもの等を用いることもできる。例えばグラスウールを用いる場合には、内部空間25に収容できるような大きさや形状にグラスウールを成形して、内部空間25に設置してもよいし、より細かい形状に成形したグラスウールを不織布からなる袋に収容し、これを内部空間25に設置してもよい。また、減音効果を得つつ、消臭、調湿を得るのであれば、上記で示した以外の材料を適宜、吸収剤30として採用してもよい。
あるいは、吸収剤30として、不織布を設けてもよい。この場合において、内部空間25には、多孔質の部材31を設けずに、不織布のみを設けるようにしてもよい。このような構成によれば、上記実施形態においても説明したように、通気管内を通過する音を減音装置が減音するに際し、周波数に依存して減音性能にばらつきが生じ得る特性を、不織布が緩和するように作用する。すなわち、不織布が設けられない場合に減音されにくく通気管内を通過しやすい周波数の音が、不織布を設けることにより減音されやすくなる。これにより、減音性能を更に高めることができる。
また、減音に加えて消臭、調湿をも目的とする場合に関し、上記第3及び第4変形例のような構成として、内部空間25に、吸収剤30として、消臭剤と調湿材のいずれか一方または双方を設けることを説明したが、これに限られない。ゼオライト、パーライト等の多孔質の部材31が十分な消臭、調湿効果を有するようであれば、上記実施形態として説明したように、例えばこの多孔質の部材31を不織布からなる袋32に収容したもののみを、吸収剤30として用いてもよい。より消臭、調湿効果を得たいのであれば、例えば、多孔質の部材31と、消臭剤、調湿材を適切に組み合わせたものを、不織布からなる袋32に収容し、これを吸収剤30として用いてもよい。このように、吸収剤30としては、上記のように列挙し説明した、多孔質の部材31や不織布、消臭剤、調湿材等を適宜、組み合わせて使用してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、隙間形成機構24を突出部24Aとして実現し、この突出部24Aの立上り高さが低い側の端部と、通気管4の内面4fの間に、ベントキャップ6の管挿入部62が配置された場合を説明したが、これに限られない。ベントキャップ6以外の他の部材、例えばレジスター5が、ベントキャップ6と同様に、筒状で、通気管4の端部の内周面に沿うような管挿入部を備えている場合に、このレジスター5の管挿入部が、突出部24Aの立上り高さが低い側の端部と、通気管4の内面4fの間に設けられるようにしてもよい。
また、通気管4内には、空気を強制的に流通させる、ファン等の機械設備が設けられていてもよい。例えば、通気管4としては、天井裏に設置されたファンを間に挟むように、室内側と室外側を連通させるように設けられた配管等、建築構造物の室内側S1と室外側S2を連通させるように設けられたものであれば、どのような態様であっても構わない。例えば、上記実施形態においては、通気管4は横方向に延在するように設けられていたが、斜め方向、縦方向等、他の方向に延在するように設けられていてもよい。
更には、内部空間25に吸収剤30を設けなくとも十分な減音効果が得られるような場合においては、内部空間25に吸収剤30を格納しない構成とすることも可能である。
【0068】
また、上記第8変形例においては、止水部40は、圧力損失が大きくなるのを抑制するために、上流側の表面41fが、鉛直方向に直交する平面で断面視した際に、外周側41bから中央41cに向かうにつれて、漸次、上流側に向けて突出するように形成されていた。しかし、圧力損失が適切に抑制される範囲において、止水部40の、上流側の表面41fは、どのような形状であってもかまわない。例えば、上流側の表面41fは、平坦な表面となっていてもよい。
また、上記第8変形例として説明した構成に加え、止水板41よりも室内側S1に、止水板41、側板42、及び通気管4の内面4fにより形成される空間を埋めるように、ゴム等により形成された補充部材を設けてもよい。このようにした場合においては、止水板41の下側の端辺41eと通気管4の内面4fの間を浸透しようとする水の、室内側S1への通過を抑制することができる。また、このような補充部材を設けることで、減音装置11Cの下側に設けた介装材24Cを兼ねて、補充部材により減音装置11Cの下側を支持、固定することができる。
また、上記第8変形例として説明した構成に加え、止水板41の下側の端辺41eに沿って、ゴム等により形成されたシール材を設けてもよい。この場合には、止水板41の下側の端辺41eと通気管4の内面4fの間を浸透しようとする水の、室内側S1への通過を抑制することができる。
【0069】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、上記実施形態として
図2を用いて説明した減音装置11において、隙間形成機構24として、突出部24Aではなく、第8変形例として説明したような介装材24Cを設けるようにしてもよい。あるいは、第8変形例として説明した減音装置11Cにおいて、隙間形成機構24として、介装材24Cではなく、突出部24Aを設けるようにしてもよい。
また、上記第7変形例においては、通気管4を、室内側S1から室外側S2に排気を行う排気ダクトとして用いる場合に、上流側壁部21が流れ方向Fの上流側(室内側S1)を向くように配置した。このような場合においては、水が侵入してくる室外側S2は、空気の流れにおける下流側に相当する。したがって、第7変形例の構成に対して第8変形例のように止水板を設ける場合においては、止水板は、室外側に位置して減音装置と通気管の内面の間の隙間への水の侵入を抑制するように、下流側壁部に設けるようにしてもよい。このように、止水板を下流側壁部に設ける場合においては、上流側から流れてくる空気は止水板に突き当たらないため、上流側の表面が上流に向けて突出せず、平坦な表面となるようにしてもよい。
また、上記第8変形例においては、開口28は上流側壁部21に形成されていたが、これに代えて、上記第1変形例のように、下流側壁部22に設けるようにしてもよい。この場合においては、減音装置本体20内への水の侵入を効率的に抑制することができる。
【0070】
(検討例)
次に、上記実施形態で示した構成について、以下のような検討を行ったので、その結果を示す。
まず、上記実施形態で示したような構成のように、上流側壁部を円錐状とした場合(実施例1)と、上記第8変形例として示したような構成のように、止水部40を設けた場合(実施例2)と、及び比較のため、上流側壁部を円錐状とせず、軸線方向に直交する平面状とした場合(比較例1)とで、比較を行った。通気管としては、通気スリーブを使用した。通気スリーブの内径は100mmとした。通気スリーブの流路断面積に対する、隙間100の流路断面積の割合、すなわち流路開口率は、実施例1、実施例2、及び比較例1の全てにおいて、19%とした。通気スリーブ内には、実施例1、実施例2、及び、比較例1の全てにおいて、軸線方向に間隔をあけて2つの減音装置を配置した。
実施例1、実施例2、及び比較例1のそれぞれについて、風量を10~50m
3/hに変化させて、通気スリーブにおける圧力損失を測定した。
その結果、
図14に示すように、上流側壁部を円錐状とした実施例1(
図14における実線)は、上流側壁部を平面状とした比較例1(
図14における破線)に対し、同一風量における圧力損失が大幅に低減されていることが確認できた。
【0071】
また、止水板を設けた実施例2(
図14における一点鎖線)は、実施例1よりも更に、同一風量における圧力損失が大幅に低減されていることが確認できた。これは、第8変形例においても説明したように、止水板を設けつつ流路開口率を19%とするために、実施例2においては、実施例1よりも、減音装置本体の本体を僅かに小さくしていることに起因する。これにより、側壁部と通気管の内面の間の隙間が、例えば5mmから8mmへと拡大し、狭い隙間を空気が流れるという状況が緩和されて、空気の流路を形成する壁面と空気との摩擦抵抗成分が減少したためである。このように隙間を広げた場合であっても、減音性能は基本的に流路開口率に依存するため、減音性能に関しては、実施例1と実施例2との間で大きな差がないと考えられる。
換言すれば、実施例2は実施例1に比べると、同じ流路開口率であるにもかかわらず圧力損失性能が優れているとも言える。このため、実施例2において、流路開口率を19%よりも更に小さくして、圧力損失が実施例1と同等となるようにすることで、換気性能を維持しつつも減音性能を更に高めることができる可能性がある。
【0072】
また、上記実施形態で示した構成の減音システム(実施例)と、従来の技術を適用した市販製品(比較例)との比較を行った。
実施例では、上記と同様、通気スリーブの内径が100mm、流路開口率を19%とした。通気スリーブの軸線方向の長さは200mmとし、通気スリーブ内における2つの減音装置の離間間隔は100mmとした。
比較のための市販製品としては、上記特許文献2に開示されたような、自然換気用サイレンサー(比較例2)と、通気スリーブの端部に、壁から突出して設ける、防音型ベントキャップ(比較例3)を用いた。
実施例、比較例2、3のそれぞれについて、音響透過損失試験(遮音性能試験)を行った。その結果を
図15に示す。
図15に示すように、実施例は、JIS規格で規定されたサッシの遮音性能(防音性能)のT-2等級を満足していた。これに対し、比較例2は、T-1等級、比較例3はT-2等級であった。このように、実施例は、比較例2よりも高い遮音性能を発揮し、比較例3とも同等性能であることが確認された。
特に、比較例2においては、500Hzにおける遮音性能が低くなり、T-1等級の基準を下回っている。このように、通気スリーブ内に設けられるサイレンサーにおいては、一般に、500Hzにおける遮音性能が高くない。これに対し、実施例においては、500Hzにおける遮音性能が改善され、全体として安定した減音性能となっている。これにより、実施例においては、通気スリーブ内に設けることにより壁から外部への突出をなくして意匠性を損なうことなく、壁から突出して設ける防音型ベントキャップと同等の高い遮音性能が実現されている。
【0073】
次に、
図1に示した構成において、不織布からなる袋に多孔質の部材として粒状のゼオライトを収納した吸収剤を、減音装置の内部空間に格納した場合と、吸収剤を内部空間に格納しなかった場合、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合の3通りについて比較を行った。それぞれのケースについて、音響透過損失試験(遮音性能試験)を行った。
その結果を
図16に示す。
図16において、吸収剤を減音装置の内部空間に格納した場合が「吸収剤あり」に、吸収剤を内部空間に格納しなかった場合が「吸収剤なし」に、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合が「通気スリーブのみ」に、それぞれ相当する。
図16に示すように、減音装置を設けることで、減音性能が向上していることが確認された。更に、ゼオライトを用いた吸収剤を備えない場合、周波数帯によって、減音性能が上下しており、減音性能にバラつきが生じている。これに対し、ゼオライトを用いた吸収剤を備えることで、吸収剤がない場合に特に400Hzの周波数においてみられるディップ(低下)が解消されて、全体として安定した減音性能が発揮されることが確認された。
【0074】
次に、側壁部に形成する開口部の有無について検討を行った。側壁部に開口部を形成した場合、側壁部に開口部を形成しない場合、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合の3通りについて比較を行った。それぞれのケースについて、音響透過損失試験(遮音性能試験)を行った。
その結果を
図17に示す。
図17において、側壁部に開口部を形成した場合が「側壁部の開口部あり」に、側壁部に開口部を形成しない場合が「側壁部の開口部なし」に、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合が「通気スリーブのみ」に、それぞれ相当する。
図17に示すように、側壁部に開口部を形成しない場合に、500~2kHz帯では、遮音性能が向上し、側壁部に開口部を形成した場合に、4kHz帯では、遮音性能が向上していることが確認された。
【0075】
次に、上流側壁部に形成する開口の数について検討を行った。上流側壁部に直径7mmの開口を、周方向に等間隔に6個形成した場合、上流側壁部に直径7mmの開口を、周方向に等間隔に28個形成した場合、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合の3通りについて比較を行った。それぞれのケースについて、音響透過損失試験(遮音性能試験)を行った。
その結果を
図18に示す。
図18において、開口を周方向に等間隔に6個形成した場合が「開口部:6個」に、周方向に等間隔に28個形成した場合が「開口部:28個」に、及び通気スリーブ内に減音装置を設けず、通気スリーブのみとした場合が「通気スリーブのみ」に、それぞれ相当する。
図18に示すように、開口の個数が少ない方が、500Hz帯における遮音性能が向上し、1kHz帯では遮音性能が低下していた。また、開口の個数が多い場合に生じる400Hz帯の遮音性能の低下が、開口の個数を減らすことで解消された。このように、開口の個数を調整することで、遮音性能を調整できることが確認された。
【0076】
また、上記第8変形例で示した構成の減音システム(実施例)と、通気管内に止水機能を何も設けない場合(比較例1)、及び、市販の、通気管の下側を塞ぐ止水板のみを設けた場合(比較例2)とを用いて、止水性能を検証した。
検証は、一般財団法人ベターリビングの、「優良住宅部品性能試験方法書 換気ユニット(換気口部品)」内の、「3.耐雨試験」に準拠し、通気管の外側上方から5L/分の分量で下方に水を流しつつ、送風機により通気管に向けて15m/秒の速度で風を当てた状態を30分間継続し、内径100mmの通気管内への水の侵入量を計測した。
通気管の外側には、通気管を下方まで覆うような、
図2に示されるような覆いが設けられておらず、通気管内に水が比較的侵入しやすい形状のベントキャップを使用した。
上記検証の結果を
図19に示す。実施例においては、比較例1、比較例2に比べ、止水性能が高いことが確認された。
比較例2は、止水板を設けたにもかかわらず、止水機能を何も設けていない比較例1よりも多くの水の侵入を許している。これは、比較例2においては、通気管の下側が止水板で塞がれているため、通気管内の空気が上向きに上昇するように流れ、かつ止水板により通気管の断面積が狭まっているため風速が上昇し、水が止水板を乗り越えるという現象が起きているためであると考えられる。
これに対し、実施例においては、減音装置が通気管の上側を含めた多くの部分を塞いでいるため、水の侵入が抑制されている。
【符号の説明】
【0077】
1 壁 26 凹部
2 貫通孔 27 筒体
4 通気スリーブ(通気管) 28、28B、28C 開口
4f 内面 29 開口部
10 減音システム 31 多孔質の部材
11、11A、11B 減音装置 32 袋
21、21B 上流側壁部 40 止水部
21c 中央 41b 外周側
22 下流側壁部 41c 中央
23 側壁部 41f 上流側の表面
24 隙間形成機構 100 隙間
24A、24B 突出部 Da 軸線方向
24s、24t 端辺 S1 室内側
24C 介装材 S2 室外側
25 内部空間