(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】多層発泡粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
(21)【出願番号】P 2021072878
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【復代理人】
【識別番号】100126413
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】千葉 琢也
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173021(JP,A)
【文献】特開2004-115785(JP,A)
【文献】特開平10-077359(JP,A)
【文献】特開2019-163426(JP,A)
【文献】国際公開第2013/022049(WO,A1)
【文献】特開2012-184303(JP,A)
【文献】特開2009-256409(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113471(WO,A1)
【文献】特開2005-325179(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106674721(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106674720(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C08F 301/00
B32B 1/00-43/00
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂発泡芯層と、該発泡芯層を覆うポリオレフィン系樹脂融着層とを有する多層発泡粒子において、
該発泡芯層がエチレン成分含有率1.5質量%以上3.5質量%以下のエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)であるポリプロピレン系樹脂から形成されており、
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分子量(Mn)が30000以上50000以下であると共に、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が200000以上500000以下であり、該数平均分子量(Mn)に対する該重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)が7以上15以下であることを特徴とする多層発泡粒子。
【請求項2】
前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の結晶化温度Tc
A[℃]と前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点Tm
A[℃]とが、下記(1)式を満足する、請求項1に記載の多層発泡粒子。
40≦Tm
A-Tc
A≦50 ・・・(1)
【請求項3】
前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する、前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のZ平均分子量(Mz)の比(Mz/Mn)が30以上60以下である、請求項1又は2に記載の多層発泡粒子。
【請求項4】
前記融着層がポリオレフィン系樹脂(II)から形成されており、該ポリオレフィン系樹脂(II)の融点Tm
II[℃]と、前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点Tm
A[℃]とが下記(4)式を満足する、請求項1~3のいずれかに記載の多層発泡粒子。
0<Tm
A-Tm
II≦20 ・・・(4)
【請求項5】
前記多層発泡粒子の嵩密度が10kg/m
3以上300kg/m
3以下である、請求項1~4のいずれかに記載の多層発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層発泡粒子に関し、詳しくは、型内成形が可能な多層発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形により得られる発泡粒子成形体は、形状の賦形の容易性、軽量性、断熱性、剛性などに優れていることから、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に用いられている。
【0003】
しかし、該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形は、低い蒸気圧での型内成形ができることが望ましく、それを可能にするために、特許文献1に記載の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂から形成されている芯層とポリプロピレン系樹脂から形成されている外層とからなる多層構造の発泡粒子であって、外層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点が、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点より、1.5~30.0℃低いポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されている。このような多層構造を採用することにより、特許文献1に記載の発泡粒子は、低い成形温度での型内成形が可能になった。
【0006】
一方、特許文献1に記載されているような多層構造の発泡粒子であっても、型内成形時の冷却を行う水冷工程にかかる時間(以下、水冷時間ということがある)が長くなることがあり、生産性向上の観点から、成形時間を更に短くすることが求められている。しかし、成形時間を短縮するには、以下のような課題があった。例えば、成形圧力を低い状態にして、水冷にかかる時間を短くすれば、成形時間の短縮は可能である。しかし、低い蒸気圧で成形を行うと発泡粒子成形体の融着が不十分となる場合があった。また、水冷工程が十分に完了しない状態で型内の成形体を離型した場合には、得られる発泡粒子成形体の表面に凹凸ができて表面平滑性が損なわれたり、金型から離型した成形体が変形してしまうおそれがあった。このように、水冷時間を短くして良好な発泡粒子成形体を得ることは容易ではなかった。
【0007】
本発明は、従来の多層発泡粒子に比べて、低い蒸気圧での型内成形が可能であり、さらに型内成形時の水冷時間を短くすることができる多層発泡粒子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す多層発泡粒子が提供される。
[1]ポリプロピレン系樹脂発泡芯層と、該発泡芯層を覆うポリオレフィン系樹脂融着層を有する多層発泡粒子において、
該発泡芯層がエチレン成分含有率1.5質量%以上3.5質量%以下のエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)であるポリプロピレン系樹脂から形成されており、
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分子量(Mn)が30000以上50000以下であると共に、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が200000以上500000以下であり、該数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)が7以上15以下であることを特徴とする多層発泡粒子。
[2]前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の結晶化温度TcA[℃]と該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点TmA[℃]とが、下記(1)式を満足する、前記1又は2に記載の多層発泡粒子。
40≦TmA-TcA≦50 ・・・(1)
[3]前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分子量(Mn)に対する、前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のZ平均分子量(Mz)の比(Mz/Mn)が30以上60以下である、前記1又は2に記載の多層発泡粒子。
[4]前記融着層がポリオレフィン系樹脂(II)から形成されており、該ポリオレフィン系樹脂(II)の融点TmII[℃]と、前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点TmA[℃]とが下記(4)式を満足する、前記1~3のいずれかに記載の多層発泡粒子。
0<TmA-TmII≦20 ・・・(4)
[5]前記多層発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上300kg/m3以下である、前記1~4のいずれかに記載の多層発泡粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂発泡芯層とポリオレフィン系樹脂融着層とを有する多層発泡粒子であって、低い蒸気圧での型内成形が可能であり、更に型内成形時の水冷時間が短い多層発泡粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、熱流束示差走査熱量測定による第1回加熱のDSC曲線の一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の多層発泡粒子について詳細に説明する。
本発明の多層発泡粒子(以下、単に多層発泡粒子、または発泡粒子ともいう。)は、発泡芯層と、該発泡芯層を覆う融着層とを有するものである。さらに、該発泡芯層は、ポリプロピレン系樹脂から形成され、該融着層は、ポリオレフィン系樹脂から形成されている(以下、発泡芯層を形成するポリプロピレン系樹脂をポリプロピレン系樹脂(I)ともいい、融着層を形成するポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂(II)ともいう。)
【0012】
該発泡芯層は、発泡状態にある。該発泡状態とは、ポリプロピレン系樹脂(I)が気泡膜を形成し、該気泡膜により気泡が形成されている状態をいう。
さらに、該発泡芯層は、融着層に覆われており、該融着層は該ポリオレフィン系樹脂(II)により形成されている。該融着層は、発泡粒子の融着性の改善に寄与する層であり、発泡状態であっても、非発泡状態であってもよいが、非発泡状態であることが好ましい。なお、非発泡状態とは、気泡が全く存在しないもの(後述するように、樹脂粒子を発泡させる際に一旦形成された気泡が溶融破壊されて気泡が消滅したものも包含する。)のみならず、得られる成形体の機械的強度に影響しない範囲で、極微小な気泡が僅かに存在するものも包含される。
【0013】
該発泡芯層が該融着層に覆われる態様としては、該発泡芯層が該融着層で完全に覆われていても、一部の発泡芯層が露出していても構わない。該発泡芯層が露出した構造とは、例えば、円柱状の発泡芯層の周面のみが該融着層で覆われており、円柱の上面や底面に発泡芯層が露出している構造などが挙げられる。
【0014】
本発明の多層発泡粒子は、該融着層により発泡粒子の融着性が改善されており、該発泡芯層のみからなる単層発泡粒子の成形温度よりも低い成形温度で型内成形可能なものであることが好ましい。かかる型内成形を可能にするためには、例えば、該融着層を構成するポリオレフィン系樹脂(II)として、その融点が、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(I)の融点よりも低いものを選択すればよい。このように構成されている多層発泡粒子は、該発泡芯層を二次発泡可能な温度範囲で型内成形すれば、該融着層は該発泡芯層より早く軟化しているので、多層発泡粒子間の熱融着性に優れた成形体を得ることが出来る。また、型内成形時の加熱により発泡芯層の気泡セル構造がダメージを受けにくくなるので、成形後の収縮が小さい発泡粒子成形体を得ることができる。
【0015】
なお、「低い成形温度で成形可能である」とは、ポリプロピレン系樹脂(I)からなる単層構造の発泡粒子の型内成形温度を基準として、該単層構造の発泡粒子から形成される成形体と同様の特性(たとえば、表面の外観、融着性、回復性)を有する成形体を、該基準の型内成形温度より低い成形温度で成形可能なことをいう。
【0016】
次に、前記発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(I)について説明する。
該発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(I)は、エチレン成分含有率1.5質量%以上3.5質量%以下のエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)である。該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)を用いて、該発泡芯層を形成することにより、2次発泡性に優れ、型内成形性に優れる発泡粒子を得ることができる。
【0017】
該発泡芯層を形成するエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のエチレン成分含有率は、1.5質量%以上3.5質量%以下である。エチレン成分含有率がこの範囲内のエチレン‐プロピレンランダム共重合体を用いて発泡芯層を形成することにより、型内成形において、水冷工程にかかる時間を短くして、成形サイクルを短縮することができる。かかる理由により、該エチレン成分含有率は、1.8質量%以上3%質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上2.5質量%以下である。
【0018】
本明細書において、エチレン-プロピレンランダム共重合体のエチレン成分含有率は、次のように測定することができる。
共重合組成が既知であるエチレン-プロピレン共重合体を180℃環境下でホットプレスし、厚み約100μmのフィルムを作製する。作製したフィルムのIRスペクトル測定を行い、プロピレン由来の810cm-1における吸光度(I810)、エチレン由来の733cm-1における吸光度(I733)を読み取る。そして、吸光度比(I733/I810)を横軸に、エチレン成分含有率を縦軸にとることで、エチレン成分含有率の検量線を作成する。次いで、検量線作製時のサンプル調製方法と同様にして、測定対象のエチレン-プロピレンランダム共重合体樹脂をホットプレスして厚み約100μmのフィルムを作製し、IRスペクトル測定により、I810、I733を読み取り、先に作成した検量線に従い、エチレン成分含有率を算出する。
【0019】
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)においては、その数平均分子量(Mn)、及び該平均分量(Mn)に対する、重量平均分子量(Mw)の比((Mw/Mn)が特定範囲内である。
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)においては、数平均分子量(Mn)は30000以上50000以下であると共に、重量平均分子量(Mw)は200000以上500000以下であり、数平均分子量(Mn)に対する、重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は7以上15以下である。
該比(Mw/Mn)が小さすぎると、水冷時間を短くしたときに変形を防止できないおそれがある。一方、比(Mw/Mn)が大きすぎると、低圧成形性が低下するため水冷時間を短縮できないおそれがある。かかる観点から、比(Mw/Mn)が7.5以上13以下であることが好ましく、より好ましくは8以上10以下であり、さらに好ましくは8.5以上9.5以下である。
【0020】
該発泡芯層を構成するエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の分子量分布が成形時の水冷時間と関連する要因については、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を構成する低分子量成分量と高分子量成分量のそれぞれが特定の範囲内であれば、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)の結晶化挙動が変化し、その結晶部分によってエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の熱伝導性や剛性が向上し、このことが、成形時の冷却工程における樹脂の冷却効率や離型後の成形体の収縮のし易さに関連するため、冷却時間の短縮に寄与していると考えられる。
上記観点から、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は32000以上43000以下であることが好ましく、34000以上42000以下であることが好ましい。
また、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は320000以上450000以下であることが好ましく、330000以上430000以下であることが好ましい。
【0021】
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の数平均分量(Mn)に対する、Z平均分子量(Mz)の比(Mz/Mn)は30以上60以下であることが好ましい。
該比(Mz/Mn)が上記範囲内であれば、水冷時間を短くしたときに変形を防止され、低圧成形性が低下することなく冷却時間を短縮が可能となる。かかる観点から、比(Mz/Mn)が35以上57以下であることが好ましく、より好ましくは40以上55以下である。
【0022】
本明細書において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)は、次のように測定される。
(測定方法、及び測定条件)
試料の前処理:試料30mgをo-ジクロロベンゼン20mLに145℃で振とう、溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで熱濾過したものを分析試料とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定することができる。
【0023】
本発明で用いられるエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)においては、結晶化温度(TcA)と融点(TmA)とが、下記(1)式を満足することが好ましい。
40≦TmA-TcA≦50・・・(1)
【0024】
該結晶化温度(TcA)と該融点(TmA)とが、上記(1)式を満たすエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)を用いて発泡芯層が形成されていると、低圧の蒸気を用いて型内成形を行っても、良好な発泡粒子成形体が得られる。これは、型内成形時の冷却工程において、(1)式を満足するエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)が、早期に結晶化が起こる傾向があり、成形時の水冷時間を短縮することができるためと考えられる。
【0025】
上記の理由により、結晶化温度(TcA)と融点(TmA)とが、下記(2)式を満足することが好ましく、下記(3)式を満足することがより好ましい。
41≦TmA-TcA≦48 ・・・(2)
42≦TmA-TcA≦45 ・・・(3)
【0026】
本明細書において、前記融点は、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる融解ピーク温度を意味する。試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、このときの冷却速度として毎分10℃を採用する。融解温度を測定する際の加熱速度として毎分10℃を採用する。なお、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
なお、発泡粒子や多層発泡粒子についても、上記と同様の方法で融点(Tmf)を測定することもできる。
【0027】
本明細書において、前記結晶化温度は、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる結晶化ピーク温度を意味する。試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、冷却速度として毎分10℃を採用する。なお、結晶化発熱ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とする。
なお、発泡粒子や多層発泡粒子についても、上記と同様の方法で結晶化温度(Tcf)を測定することもできる。
【0028】
前記熱流束示差走査熱量測定において、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融解ピークの融解熱量(△Hr)は、50J/g以上100J/g以下であることが好ましく、より好ましくは60J/g以上90J/g以下である。なお、 本明細書において、前記融解熱量は、JIS K7122-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる融解熱量を意味する。具体的には、試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解熱量を測定する場合」を採用し、このときの冷却速度として毎分10℃を採用する。融解熱量を測定する際の加熱速度として毎分10℃を採用する。なお、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解熱量の値とする。
【0029】
該発泡芯層を構成する樹脂には、所期の目的を阻害しない範囲において、エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。
【0030】
該発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内でカーボンブラック等の着色剤、滑剤、触媒中和剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。前記添加剤の添加量はその種類にもよるが発泡芯層を形成するプロピレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは1重量部以下である。
【0031】
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の曲げ弾性率は、800MPa以上1100MPa以下であることが好ましく、より好ましくは850MPa以上1000MPa以下である。該曲げ弾性率が上記範囲内であれば、型内成形時に変形が抑えられ、良好な物性を有する発泡粒子成形体が得られる。
【0032】
本明細書において、前記曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に準拠して求める。試験片は、試料を230℃でヒートプレスして4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用する。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとする。
【0033】
該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のメルトフローレイト(MFR)は1g/10分以上20g/10分以下が好ましく、より好ましくは2g/10分以上15g/10分以下であり、さらに好ましくは3g/10分以上10g/10分以下である。該MFRが上記範囲内であれば、多層構造を有する発泡粒子を形成することが容易となる。
なお、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のMFRはJIS K7210:1999の試験条件M(230℃/2.16kg荷重)で測定される値である。
【0034】
次に、前記融着層を構成するポリオレフィン系樹脂(II)について説明する。
該ポリオレフィン系樹脂(II)としては、オレフィン成分を主成分とするものであれば、その組成、合成法に特に制限はないが、好ましくはオレフィン成分が50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有するものである。該ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が例示され、さらにこれらの混合物などが挙げられる。
【0035】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1-ブテンなどの炭素数4以上のα-オレフィンが例示される。該共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体などが例示され、さらにこれらの2種以上の混合樹脂などが例示される。
【0036】
また、該ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、さらにこれらの2種以上の混合樹脂などが例示される。
【0037】
これらのポリオレフィン系樹脂(II)の中では、前記発泡芯層との相溶性に優れ、該発泡芯層と該融着層の積着性が向上する観点から、エチレン‐プロピレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体であることが好ましい。また、上記のなかでも、エチレン‐プロピレンランダム共重合体であることがより好ましい。(以下、融着層のポリオレフィン系樹脂(II)として用いられるエチレン‐プロピレンランダム共重合体をランダム共重合体(B)ということがある。)
【0038】
さらに、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のエチレン含有率(EtA)に対する、該ランダム共重合体(B)のエチレン含有率(EtB)の比(EtB/EtA)が1を超えることが好ましい。該比が上記範囲内であれば、型内成形時に融着層が発泡芯層から剥離しにくくなり、より良好な表面平滑性を有する発泡粒子成形体が得られる。かかる理由により、比(EtB/EtA)は1.2以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1.4以上である。その上限は、概ね3であり、好ましくは2.5、更に好ましくは2である。
【0039】
本発明における融着層には、所期の目的を阻害しない範囲において、ポリオレフィン系樹脂(II)以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。
【0040】
更に、該融着層には、帯電防止剤、触媒中和剤、滑剤、カーボンブラック等の着色剤等の添加剤を添加することができる。上記添加剤の添加量は、添加物の種類や使用目的にもよるが、融着層を形成するポリオレフィン系樹脂(II)100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下であり、特に好ましくは3重量部以下である。
【0041】
本発明の多層発泡粒子は、前記したように、該融着層がポリオレフィン系樹脂(II)から形成されている。さらに、該ポリオレフィン系樹脂(II)の融点TmB[℃]と、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点TmA[℃]とが下式(4)を満足することが好ましい。
0<TmA-TmII≦20 ・・・(4)
上記範囲が満たされていると、多層発泡粒子を形成する融着層は、融着改善層として機能し得る。
【0042】
かかる観点から、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の融点TmA[℃]とは、下記(5)式を満足することが好ましく、下記(6)式を満足することがより好ましい。
5<TmA-TmII≦18 ・・・(5)
8<TmA-TmII≦15 ・・・(6)
【0043】
該ポリオレフィン系樹脂(II)においては、融解ピークの融解熱量(△Hr)は、50J/g以上90J/g以下であることが好ましく、より好ましくは55J/g以上80J/g以下である。
該ポリオレフィン系樹脂(II)の融解熱量(△Hr)は、前述の発泡芯層を形成する樹脂の融解熱量の測定方法と同様に測定される。
【0044】
該ポリオレフィン系樹脂(II)の曲げ弾性率は、500MPa以上100MPa以下であることが好ましく、より好ましくは550MPa以上800MPa以下である。
【0045】
また、該ポリオレフィン系樹脂(II)のメルトフローレイト(MFR)は1g/10分以上20g/10分以下が好ましく、より好ましくは2g/10分以上15g/10分以下であり、さらに好ましくは3g/10分以上10g/10分以下である。該MFRが、上記範囲であれば、特に、接着性に優れる多層構造の発泡粒子となる。
【0046】
該ポリオレフィン系樹脂(II)のメルトフローレイト(MFR)は、エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)のメルトフローレイトよりも小さいことが好ましい。それにより、接着性に優れる多層構造の発泡粒子となる。
【0047】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210-1:2014に基づいて測定するものとする(温度230℃、荷重2.16kg)。
なお、ポリエチレン系樹脂については、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定される。
【0048】
該発泡芯層と該融着層との重量比は、99.5:0.5~65:35が好ましく、より好ましくは99:1~80:20であり、さらに好ましくは97:3~805:20、特に好ましくは97:3~85:15である。
該重量比が、上記範囲内であれば、良好な成形性を有する発泡粒子が得られる。
該発泡芯層と該融着層との重量比の調整は、例えば、後述する多層樹脂粒子の製造において、樹脂粒子芯層形成用原料の吐出量と樹脂粒子融着層形成用原料の吐出量の比を調整することにより行なうことができる。
【0049】
次に、本発明の多層発泡粒子の物性について説明する。
該多層発泡粒子の嵩密度は10kg/m3以上300kg/m3以下であることが好ましい。
該嵩密度が上記範囲である場合には、型内成形後の寸法変化が大きくなり易いことから水冷時間が長くなる傾向にあるので、本発明により特定される水冷時間の短縮効果がより顕著なものとなる。また、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通い箱など様々な用途に使用可能な発泡粒子成形体を得ることができる。かかる観点から、発泡粒子の嵩密度は、20kg/m3以上250kg/m3以下であることがより好ましく、更に好ましくは25kg/m3以上200kg/m3以下である。
【0050】
発泡粒子の嵩密度の測定方法は以下のとおりである。まず、容積1Lのメスシリンダーを準備する。発泡粒子の静電気を除去しながら、自然堆積状態となるようにメスシリンダーの1Lの標線まで発泡粒子を充填する。このメスシリンダー内の発泡粒子の質量、つまり、体積1L当たりの発泡粒子の質量を体積1m3当たりの質量(kg/m3)に換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m3)を算出することができる。
【0051】
該発泡芯層の平均気泡径は、20~400μmが好ましく、40~250μmがより好ましく、100~230μmが更に好ましく、150~200μmが特に好ましい。該平均気泡径が前記範囲内であると、型内成形性に優れると共に、得られた発泡粒子成形体は成形後の寸法回復性に優れたものとなる。
【0052】
該発泡芯層の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡芯層を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。まず、発泡芯層の切断面拡大写真において発泡芯層の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで、前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡芯層1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡芯層について行い、各発泡芯層の平均気泡径を相加平均した値を発泡芯層の平均気泡径とする。
【0053】
本発明の多層発泡粒子においては、独立気泡率は、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上、特に好ましくは85%以上である。独立気泡率が上記範囲内であれば、二次発泡性に優れる多層発泡粒子となるとともに、得られる発泡芯層成形体の機械的物性が良好になる。
【0054】
該多層発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
多層発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、嵩体積約20cm3の養生後の多層発泡粒子を測定用サンプルとし下記の通り水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(7)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を多層発泡粒子の独立気泡率とする。
【0055】
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(7)
ただし、
Vx:上記方法で測定される多層発泡粒子の真の体積、即ち、多層発泡粒子を構成する樹脂の容積と、多層発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm3)
Va:多層発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される多層発泡粒子の見かけの体積(cm3)
W:多層発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:多層発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3)
【0056】
本発明においては、多層発泡粒子が、次に説明するDSC曲線により測定される結晶構造を有することが好ましい。
即ち、熱流束示差走査熱量測定法の昇温測定により得られる第一回加熱のDSC曲線において、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱ピーク(以下、単に「固有ピーク」ともいう)と、発泡時の温度処理により形成された二次結晶に起因する高温ピークとが現れることが好ましい。
【0057】
具体的には、該多層発泡粒子2~10mgを熱流束示差走査熱量測定法により、10℃/分の昇温速度で23℃から220℃まで加熱したときに得られるDSC曲線(第1回加熱のDSC曲線)が、
図1に示すように、ポリプロピレン系樹脂に固有の吸熱ピークa(以下、単に「固有ピーク」ともいう)と、該固有ピークの高温側に、発泡時の温度処理により形成された二次結晶に由来する1つ以上の吸熱ピークb(以下、単に「高温ピーク」ともいう)とを有することが好ましい。
【0058】
図1は、第1回加熱のDSC曲線の一例である。
図1において、aは固有ピークを、bは高温ピークを、αはDSC曲線上の80℃に相当する点を、T
Eは融解終了温度であって、吸熱ピークbの高温側の据がベースラインの位置に戻ったときの温度を、βは高温ピークの融解終了温度TEに相当するDSC曲線上の点を、γは固有ピークaと高温ピークbとの間の谷の底の点を、δは点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、直線(α-β)と交わる点をそれぞれ示す。
【0059】
該固有ピークの頂点温度(固有ピーク温度)は、135℃以上145℃以下であることが好ましく、より好ましくは138℃以上142℃以下である。該固有ピーク温度が上記範囲内であれば、成形後の冷却により剛性の向上に寄与する結晶性の高い結晶が形成され易い。
該固有ピークの融解終了温度(γ)は、固有ピークaと高温ピークbとの間の谷の底に対応する温度であって、150℃以上160℃以下であることが好ましく、より好ましくは152℃以上155℃以下である。
【0060】
該固有ピークの融解熱量は、50J/g以上70J/g以下であることが好ましく、より好ましくは55J/g以上65℃J/gである。該固有ピークの融解熱量が上記範囲内であることにより、成形後の寸法安定性が向上する。
【0061】
固有ピークの融解熱量は、前記
図1において、点δと点γを結ぶ直線(δ-γ)と、直線(α-β)と、高温ピークaの曲線とで囲まれる部分の面積として求められる。
【0062】
該高温ピークの頂点温度は、155℃以上165℃以下であることが好ましく、より好ましくは157℃以上162℃以下である。
該高温ピーク頂点温度と融解終了温度(TE)間の温度幅は、5℃以上10℃以下であることが好ましい。
該融解終了温度(TE)は、165℃以上170℃以下であることが好ましく、より好ましくは166℃以上169℃以下である。
該融解終了温度(TE)が上記範囲内であることにより、得られる発泡粒子成形体が機械的強度に優れるものとなる。
【0063】
該高温ピークの融解熱量△H2(以下、単に高温ピーク熱量ともいう。)は、10J/g以上15J/g以下であることが好ましい。
該高温ピーク熱量が上記範囲内であることにより、成形後の寸法変化が生じ難く、機械的強度に優れた発泡粒子成形体を得ることができる。
尚、発泡芯層の高温ピークは周知の方法で調節可能であり、具体的には、その調節方法は、例えば特開2001-151928号等に開示されている。
【0064】
尚、高温ピークbは、上記のようにして測定した第1回加熱時のDSC曲線には認められるが、第2回目に昇温して得られたDSC曲線には認められない。第2回加熱時のDSC曲線には、発泡芯層を構成するプロピレン系樹脂に固有の吸熱ピークのみが認められる。
【0065】
高温ピークの融解熱量△H2は、前記
図1において、直線(δ-γ)と、直線(α-β)と、高温ピークbの曲線とで囲まれる部分の面積として求められる。
【0066】
次に、前記多層発泡粒子を型内成形することにより得られる多層発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体、または成形体ともいう。)について説明する。
該発泡粒子成形体の成形体密度は10kg/m3以上300kg/m3以下であることが好ましく、より好ましくは20kg/m3以上200kg/m3以下、更に好ましくは30kg/m3以上100kg/m3以下である。特に、発泡粒子成形体の成形体密度が低い場合には、成形時間が長くなる傾向があるので、本発明の発泡粒子を用いることが有用である。
【0067】
該発泡粒子成形体の50%ひずみ時圧縮応力は、200kPa以上700kPa以下であることが好ましく、より好ましくは250kPa以上600kPa以下、さらに好ましくは300kPa以上500kPa以下である。
【0068】
次に、本発明の多層発泡粒子の製造方法について説明する。
該多層発泡粒子は、前記エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)からなる樹脂粒子芯層に、前記ポリオレフィン系樹脂(II)からなる樹脂粒子融着層が被覆された多層樹脂粒子を発泡することにより得ることができる。
【0069】
該多層樹脂粒子は、例えば、次のようにすれば製造することができる。
樹脂粒子芯層用押出機と樹脂粒子融着層用押出機の2台の押出機が共押出ダイに連結された装置を用い、該樹脂粒子芯層用押出機に所要のエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)と、必要に応じた気泡調節剤等の添加剤を供給して溶融混練して樹脂粒子芯層形成用の樹脂溶融物とする。一方、該樹脂粒子融着層用押出機に所要のポリオレフィン系樹脂(II)と必要に応じた添加剤とを供給し、溶融混練して樹脂粒子融着層形成用の樹脂溶融物とする。次に、該樹脂粒子芯層形成用の樹脂溶融物を共押出ダイ内に導入して線状の流れとし、同時に該樹脂粒子融着層形成用の樹脂溶融物を共押出ダイ内に導入して、樹脂粒子融着層形成用の樹脂溶融物が、樹脂粒子芯層形成用の樹脂溶融物の線状の流れを取り巻くように積層して多層構造の樹脂溶融物を形成させる。この多層構造の樹脂溶融物を、押出機出口に付設されたダイの小孔から一本以上のストランド状に押出し、該ストランドを水中を通して冷却してから適宜長さに切断したり、ダイから水中に押出すのと同時に切断・冷却する等の手段により、多層樹脂粒子を製造することができる。本明細書において、このようにして形成される多層構造を「鞘芯」構造ということがある。
【0070】
前記共押出ダイを用いて多層樹脂粒子を製造する方法については、例えば特公昭41-16125号公報、特公昭43-23858号公報、特公昭44-29522号公報、特開昭60-185816号公報等に詳細に記載されている。
【0071】
該樹脂粒子芯層には、発泡芯層の気泡径を調節するために、気泡調節剤を添加することが好ましい。該気泡調節剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバン等の無機物が挙げられる。その添加量は、該樹脂粒子芯層を形成する樹脂(I)100重量部あたり、0.001~10重量部が好ましく、0.01~5重量部がより好ましい。
尚、樹脂(I)に気泡調節剤を添加する場合、気泡調節剤をそのまま配合することもできるが、通常は分散性等を考慮して気泡調節剤のマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0072】
本発明における多層樹脂粒子の重量は、型内への発泡粒子の均一な充填性を確保できることから、0.02~20mgが好ましく、0.1~6mgがより好ましい。
【0073】
本発明における多層発泡粒子は、前記多層樹脂粒子を用いて、例えば、所謂分散媒放出発泡方法等によって製造することができる。
該分散媒放出発泡法においては、前記多層樹脂粒子を物理発泡剤等と共にオートクレーブ等の密閉容器内で水等の分散媒に分散させ、分散媒を樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し、樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、次に、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤を含有する発泡性多層樹脂粒子を水等の分散媒と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡させることによって、多層発泡粒子を得ることができる。また、物理発泡剤を含む発泡性多層樹脂粒子を密閉容器から取り出し、蒸気等の加熱媒体で加熱して発泡させても良い。
さらに、前記押出装置で多層樹脂粒子を作製する際に、樹脂粒子芯層用押出機中に発泡剤を圧入して発泡性溶融樹脂組成物とし、該発泡性溶融樹脂組成物を前記樹脂粒子融着層形成用の溶融樹脂で積層した鞘芯構造の溶融樹脂組成物とし、該鞘芯構造の溶融樹脂組成物をダイから押出して発泡させ、さらに粒子状に切断する方法によっても、発泡粒子を得ることができる。
【0074】
該分散媒放出発泡法においては、発泡が生じない高圧下から発泡の生じる低圧下へ放出する際の高圧下と低圧下の差圧は400kPa以上、好ましくは500~15000kPaとすることが好ましい。
【0075】
分散媒放出発泡法で用いられる発泡剤としては、通常、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、ハイドロフルオロオレフィン等の有機物理発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機物理発泡剤が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく且つ安価な無機物理発泡剤が好ましく、特に窒素、空気、二酸化炭素が好ましい。また、これらの発泡剤を二種以上併用することもできる。
【0076】
発泡剤の使用量は、得ようとする多層発泡粒子の嵩密度と発泡温度との関係に応じて適宜に選択される。具体的には、窒素、空気を除く上記発泡剤の場合、発泡剤の使用量は通常樹脂粒子100重量部当り2~50重量部である。また窒素、空気の場合は、密閉容器内の圧力が1~5MPa(G)の圧力範囲内となる量が使用される。
【0077】
密閉容器内において、樹脂粒子を分散させるための分散媒としては水が好ましいが、樹脂粒子を溶解しないものであれば使用することができ、このような分散媒としては例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0078】
平均気泡径の大きさは、発泡剤の種類と量、発泡温度と気泡調節剤の添加量で調節される。また、嵩密度(発泡倍率)は、発泡剤の添加量と発泡温度と、発泡時の上記差圧により調節される。適正な範囲内においては、一般的に、発泡剤の添加量が多いほど、発泡温度が高いほど、上記差圧が大きいほど、得られる発泡粒子の嵩密度は小さくなる。
【0079】
密閉容器内において、基材樹脂粒子を分散媒に分散せしめて発泡温度に加熱するに際し、多層樹脂粒子相互の融着を防止するために融着防止剤を用いることができる。融着防止剤としては水等に溶解せず、加熱によっても溶融しないものであれば、無機系、有機系を問わずいずれも使用可能であるが、一般的には無機系のものが好ましい。
【0080】
無機系の融着防止剤としては、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が好適である。該融着防止剤としては平均粒径0.001~100μm、特に0.001~30μmのものが好ましい。また融着防止剤の添加量は樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.01~10重量部が好ましい。
【0081】
また分散助剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や硫酸アルミニウムが好適に使用される。該分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、通常0.001~5重量部添加することが好ましい。
【0082】
嵩密度の小さい多層発泡粒子を製造する場合、前記分散媒放出発泡方法等により多層発泡粒子を製造し、得られた多層発泡粒子をさらに発泡させる、所謂二段発泡を行うことが好ましい。二段発泡においては、多層発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの気体により加圧処理して多層発泡粒子の内圧を0.01~0.6MPa(G)に高める操作を行った後、該多層発泡粒子を該容器内から取り出し、蒸気等の加熱媒体を用いて加熱することにより、嵩密度の小さい多層発泡粒子を容易に得ることができる。
【0083】
発泡粒子成形体は、従来公知の方法により、前記多層発泡粒子を成形型内に充填し、蒸気等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより得ることができる。具体的には、該多層発泡粒子を成形型内に充填した後、該成形型内に蒸気を導入することにより、多層発泡粒子を加熱し発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。
また、低い成形体密度の発泡粒子成形体を得る方法として、必要に応じて上述した二段発泡における操作と同様の多層発泡粒子内の圧力を高める加圧処理操作を行なって多層発泡粒子内の内圧を0.01~0.2MPa(G)に調整してから、型内成形する方法がある。
【0084】
本発明の多層発泡粒子を用いて、型内成形を行う場合、成形蒸気圧は、0.05~0.46MPa(G)とすることが好ましく、より好ましくは0.07~0.30MPa(G)であり、さらに好ましくは0.09~0.28MPa(G)である。
【0085】
本発明においては、多層発泡粒子を、成形型内に圧縮率が4~25体積%となるように、好ましくは5~20体積%となるように充填した後、蒸気により型内成形する方法を採用することによっても目的とする成形体を得ることができる。
【0086】
圧縮率の調整は、発泡粒子を成形型内(キャビティー)に充填する際に、キャビティー体積を超える多層発泡粒子の量をクラッキング充填することにより行なわれる。クラッキング充填は、多層発泡粒子を成形型に充填する際に成形型内の空気を金型内から排気したり、多層発泡粒子の成形型内への充填を効率良く行うために、多層発泡粒子の充填時に成形型を完全に閉鎖させないで行なわれる充填方法である。なお、クラッキングとは成形型の開き部分をいい、クラッキングは成形型内に多層発泡粒子を充填後、蒸気を導入する際には最終的に閉じられ、その結果充填された多層発泡粒子は圧縮される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0088】
実施例、比較例で原料として用いた、ポリプロピレン系樹脂(I)としてのエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の種類、物性を表1に、ポリオレフィン系樹脂(II)としてのエチレン‐プロピレンランダム共重合体(B)の種類、物性を表2に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表1、表2中、融点(TmA)、(TmII)、結晶化温度(TcA)、(TcII)、MFR、分子量Mn、分子量Mw、分子量Mzは前記方法により測定した。
【0092】
樹脂の融解熱量(ΔHr)は、前記方法により測定した。
【0093】
樹脂の曲げ弾性率は、前記方法により測定した。
【0094】
カーボンブラック(CB)は、着色用のカーボンブラックを用いた。
【0095】
気泡調整剤は、Borax社製のホウ酸亜鉛「Fire Break ZB」を用いた。
【0096】
物理発泡剤として、二酸化炭素を用いた。
【0097】
実施例1~4、比較例1~7
【0098】
[多層樹脂粒子の製造]
内径50mmの樹脂粒子芯層用押出機および内径30mmの樹脂粒子融着層用押出機の出口側に多層ストランド形成用ダイを付設した装置を用いた。表3に示す種類、量のポリプロピレン系樹脂(I)としてのエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)とカーボンマスターバッチ、気泡調整剤マスターバッチを内径50mmの樹脂粒子芯層用押出機に供給し、同時に表3に示す種類、量のポリオレフィン系樹脂(II)としてのエチレン‐プロピレンランダム共重合体(B)、カーボンマスターバッチを内径30mmの樹脂粒子融着層用押出機に供給し、それぞれを設定温度200~220℃に加熱、溶融、混練した後、前記ダイに供給し、ダイ内で鞘芯状(芯層と融着層との質量比95:5)に合流させ、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の側面に融着層が被覆された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水中を通して水冷し、ペレタイザーで(1.2mg、L/D=2.9)になるように切断して2層(鞘芯構造)に形成された円柱状の多層樹脂粒子を得た。
なお、多層樹脂粒子の重量、L/Dは、多層樹脂粒子群から無作為に抽出した100個の多層樹脂粒子から求めた算術平均値である。
【0099】
【0100】
表3中、共重合体(A)、共重合体(B)のエチレン成分含有率(wt%)は、前記方法により測定した。また、融点(TmA)、融点(TmII)の値は、表1、表2に示された原料の分析値からの計算値である。
【0101】
[多層発泡粒子の製造]
上記多層脂粒子20kgを、分散媒体の水60Lと共に100Lのオートクレーブ内に仕込み、分散媒中に、分散剤としてカオリン15g、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム12g、及び硫酸アルミニウム(3gをそれぞれ添加し、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を表4に記載の容器内圧力になるように圧入し、撹拌下に表4に示す発泡温度まで加熱昇温して同温度に15分間保持して、高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気圧下に水と共に放出して多層発泡粒子を得た。
【0102】
このようにして得られる多層発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂発泡芯層と、該発泡芯層を覆うポリオレフィン系樹脂融着層とを有し、該発泡芯層がエチレン成分含有率1.5質量%以上3.5質量%以下のエチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)を原料として形成されており、該エチレン‐プロピレンランダム共重合体(A)の分子量及び分子量分布が前記特定範囲である。
【0103】
【0104】
表4中、多層発泡粒子の嵩密度、融点(Tmf)、結晶化温度(Tcf)、平均気泡径は前記方法により測定した。
【0105】
表4中、固有ピーク頂点温度、固有ピークの融解終了温度(γ)、固有ピーク融解熱量、高温ピークの頂点温度、高温ピークの融解終了温度(TE)、高温ピーク融解熱量(△H2)は前記方法により測定した。
【0106】
[多層発泡粒子の加圧処理]
実施例1、3、4、比較例1~6においては、多層発泡粒子を加圧可能な加圧タンクに入れ、加圧タンク内を空気で加圧し、多層発泡粒子の気泡の内圧を高めた。加圧タンクから取り出した多層発泡粒子の気泡の内圧は0.1MPa(絶対圧)であった。該内圧が高められた多層発泡粒子を用いて、次に記載する型内成形を行った。
実施例2、比較例7においては、加圧処理を行うことなく、次に記載する型内成形を行った。
【0107】
[発泡粒子成形体の製造]
成形型として、縦方向寸法300mm×横方向寸法250mm×厚み方向寸法50mmの内寸法を持つ直方体状の成形キャビティを有する金型を用いた。
金型を完全に閉じた状態から5mm開いた状態(このときの成形キャビティの厚み方向寸法55mm)で、成形キャビティ内に発泡粒子を充填した。充填完了後、金型を完全に閉じた(クラッキング量5mm、10%)。その後、蒸気を成形キャビティ内に供給して発泡粒子を加熱して、発泡粒子を二次発泡させると共に融着させることで発泡粒子成形体とした。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、表5に記載の成形蒸気圧より0.08MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに表5に記載の成形蒸気圧より0.04MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表5に示す成形蒸気圧で両面加熱(本加熱)を行い、加熱終了後、放圧し、金型内の発泡粒子成形体の面圧が0.04MPa(G)となるまで金型を水冷した後、金型を開いて、金型から発泡粒子成形体を取り出した。得られた発泡粒子成形体を大気圧、温度80℃の雰囲気下で12時間養生した。なお、水冷時間は、本加熱終了後、金型内の発泡粒子成形体の面圧が0.04MPa(G)となるまでの水冷を行った時間とした。得られた発泡粒子成形体の物性を表5に示した。
【0108】
【0109】
実施例2は、多層発泡粒子の加圧処理をしなかった以外は、実施例1と同じ例である。
実施例3は、発泡芯層は実施例1と同じだが、融着層が異なる例である。
実施例4は、発泡芯層を形成する樹脂(I)の分子量分布が異なる以外、実施例1と同じ例である。
比較例1は、発泡芯層が異なる以外、実施例1と同じ例である。良好な発泡粒子成形体を得ようとした場合、水冷時間が長くなった。
比較例2は、比較例1と同じ多層発泡粒子を用いて、水冷時間のみを短くした例である。得られた発泡粒子成形体は、膨張し、変形した。
比較例3は、発泡芯層が異なる以外、実施例1と同じ例である。良好な発泡粒子成形体を得ようとした場合、水冷時間が長くなった。
比較例4は、発泡芯層が異なる以外、実施例1と同じ例である。良好な発泡粒子成形体を得ようとした場合、水冷時間が長くなった。
比較例5は、融着層を設けないこと以外、実施例1と同じ例である。水冷時間が長くなった。
比較例6は、比較例1と同じ樹脂を用いた発泡芯層のみからなる単層発泡粒子を用いた例である。
比較例1と比較例6、実施例1と比較例5とを対比すると、本発明による発泡粒子の方が、単層から多層構造としたときの、水冷時間の短縮効果が大きいことが分かる。
比較例7は、発泡芯層を構成する樹脂、及び融着層を構成する樹脂が比較例1と同じで、さらに加圧処理をしなかった例である。実施例2と対比すると水冷時間の短縮効果が得られなかった。
【0110】
表5中、発泡粒子成形体の成形体密度、収縮率、融着率、曲げ強度は次のように測定した。
【0111】
[発泡粒子成形体の成形体密度]
発泡粒子成形体の重量を発泡粒子成形体の外形寸法から求めた体積により除した値を求め、[kg/m3]に単位換算した。
【0112】
[収縮率]
発泡粒子成形体の収縮率[%]は、(300[mm]-成形体の長辺長さ[mm])/300[mm]×100で求めた。なお、「300[mm]」とは成形用金型の長辺寸法(縦方向寸法)であり、「成形体の長辺長さ[mm]」とは、実施例及び比較例で得られた発泡粒子成形体を80℃の雰囲気下で12時間養生した後、徐冷し、さらに23℃の雰囲気下で6時間養生した後の発泡粒子成形体の長辺の長さを計測した値である(n=10)。
【0113】
[融着率]
融着率は下記の方法により測定した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を10回行いそれぞれの材料破壊率を求め、それらの算術平均値を融着率とした。
【0114】
[50%ひずみ時圧縮応力]
縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片をスキンを除いて切り出し、JIS K6767-1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い発泡粒子成形体の50%圧縮応力を求めた。試験は10個の試験片について行い、得られた値の平均値を50%ひずみ時の圧縮応力とした。
【0115】
[分子量測定方法、及び測定条件]
試料の前処理:試料30mgをo-ジクロロベンゼン20mLに145℃で振とう、溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで熱濾過したものを分析試料とし、以下の条件で測定を行った。
測定装置 :HLC-8321GPC/HT型 高温ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製)
解析装置 :データ処理ソフトEmpower3(日本ウォーターズ株式会社製)
カラム :TSKgel GMH6-HT 2本、TSKgel GMH6-HTL2本(それぞれ、内径7.5mm×長さ300mm、東ソー株式会社製)
移動相 :o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
カラム温度:140℃
検出器 :示差屈折率計(RI)
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :0.15%(W/V)-o-ジクロロベンゼン
注入量 :400μL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製)
分子量換算:ポリプロピレン(PP)換算/汎用較正法
【0116】
[樹脂(I)、樹脂(II)原料の融点、融解熱量、結晶化温度の測定]
樹脂(I)又は(II)の融点、結晶化温度は、JIS K7121:1987に準拠して求めた。具体的には、融点は、ペレット状の樹脂2mgを試験片としてJIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる吸熱ピークの頂点温度を融点とした。また、上記DSC曲線により得られる吸熱ピークの熱量を融解熱量とした。
また、結晶化温度は、JIS K7121(1987)に準拠して測定される値であり、加熱速度10℃/minにて30℃から200℃まで加熱して溶融させたサンプルを冷却速度10℃/minにて30℃まで温度を降下させる際に得られるDSC曲線の結晶化熱量ピークの頂点温度を結晶化温度(℃)とした。
なお、測定装置は、熱流束示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC .Q1000)を用いた。
【0117】
[発泡粒子の融点、融解熱量の測定]
発泡粒子約3mgを採取し、示差熱走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC .Q1000)によって23℃から200℃まで10℃/分で昇温測定を行い、1つ以上の融解ピークを有するDSC曲線を得、各測定値を算出した。
【符号の説明】
【0118】
a 固有ピーク
b 高温ピーク
α DSC線上の80℃に相当する点
TE 融解終了温度
β 融解終了温度TEに相当するDSC曲線上の点
γ 固有ピークaと高温ピークbとの間の谷の底の点
δ 点γからグラフの縦軸と平行な直線と、直線(α-β)とが交わる点