IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 象印マホービン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】調理器の蓋開閉装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A47J27/00 103P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021085792
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022178765
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】貫名 明
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-18417(JP,A)
【文献】特開2020-192075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0038804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体及び前記本体に開閉可能に取り付けられた蓋体のうちの一方の部材に、第1方向へ直動可能に取り付けられる操作ボタンと、
前記操作ボタンに対して前記第1方向上に位置するように前記一方の部材内に配置された操作受部を有し、前記操作ボタンによる前記操作受部の押圧によって、前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸まわりに係止位置から係止解除位置へ回動するフック部材と
を備え、
前記操作受部は、
前記第2方向、及び前記第1方向と前記第2方向の双方に対して交差する第3方向に沿って延びる板状の第1受部と、
前記第1受部に対して前記第2方向の両側に隣接して設けられ、前記第3方向に延びる第1基準線に対する傾斜角度が、前記第1基準線に対する前記第1受部の傾斜角度と異なる一対の第2受部と
を備え、
前記操作ボタンは、
前記第1受部を押圧可能な第1傾斜部を有し、前記第1方向及び前記第3方向に沿って延びる板状の第1押圧部と、
前記第2受部を押圧可能な第2傾斜部を有し、前記第1押圧部に対して前記第2方向の両側に間隔をあけて設けられた板状で一対の第2押圧部と
を備える、
調理器の蓋開閉装置。
【請求項2】
前記第1受部と前記第1傾斜部の間の最小部分の隙間は、前記第2受部と前記第2傾斜部の間の最小部分の隙間以下である、請求項1に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項3】
前記第1受部は、前記第3方向の一方側から他方側に向けて、前記操作ボタンに次第に近づくように傾斜するとともに、前記第2受部は、前記第3方向の前記一方側から前記他方側に向けて、前記操作ボタンから次第に離れるように傾斜しており、
前記第1傾斜部は、前記第1受部に沿って傾斜するとともに、前記第2傾斜部は、前記第2受部に沿って傾斜している、
請求項1又は2に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項4】
前記フック部材が前記係止位置にあるとき、前記第1基準線に対する前記第1受部の傾斜角度は、前記第1基準線に対する前記第1傾斜部の傾斜角度よりも小さく、前記第1基準線に対する前記第2受部の傾斜角度は、前記第1基準線に対する前記第2傾斜部の傾斜角度よりも小さい、請求項3に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項5】
前記操作受部は、前記第1受部及び前記第2受部に対して前記第3方向の一方側に連なる基部を備え、
前記フック部材が前記係止解除位置にあるとき、前記第1押圧部は前記操作受部の前記基部を押圧可能な第1主部を有し、前記第2押圧部は前記操作受部の前記基部を押圧可能な第2主部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項6】
前記操作受部は、前記基部の前記第1受部とは反対側に設けられ、前記操作ボタンに向けて突出する第3受部を備え、
前記操作ボタンは、前記操作受部に向けて突出し、前記第3受部を押圧可能な第3押圧部を備え、
前記第3受部と前記第3押圧部はそれぞれ、前記第3方向の一方側から他方側に向けて前記基部から次第に離れるように傾斜した傾斜部を含む、
請求項5に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項7】
前記操作ボタンは、前記一対の第2押圧部の前記第1押圧部とは反対側にそれぞれ、第1方向及び前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に延びる第2基準線に対して前記第2方向へ前記操作ボタンが傾いたときに、前記基部を押圧可能な板状で一対の第4押圧部を有し、
前記フック部材が前記係止位置にあるとき、前記第4押圧部と前記基部の間の隙間は、前記第1主部と前記基部の間の隙間、及び前記第2主部と前記基部の間の隙間のいずれよりも大きい、
請求項5又は6に記載の調理器の蓋開閉装置。
【請求項8】
前記操作ボタンは、前記第1方向から見て円形状であり、厚みが0.5mm以上4.0mm以下の樹脂成形品である、請求項1から7のいずれか1項に記載の調理器の蓋開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器の蓋開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炊飯器に用いられる蓋開閉装置が開示されている。蓋開閉装置は、直動可能に配置される操作ボタンと、操作ボタンの操作力を受けて回動するフック部材とを備える。操作ボタンが備えるボタン本体は間隔をあけて設けられた3つの突起部を備え、中央の突起部の突出量は両側の突起部の突出量よりも大きい。これにより、操作ボタンの中央をユーザが操作した場合、中央の突起部でフック部材の操作受部を押圧する。一方、操作ボタンの側部をユーザが操作した場合、両側の突起部のうちの一方と中央の突起部でフック部材の操作受部を押圧する。このように、操作ボタンの中央以外をユーザが操作しても、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性向上を図り、蓋体の開放性向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-192075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の操作ボタンは、ボタン本体の他に支持体、ボタンカバー、及び複数のコイルバネを備え、コイルバネによって支持体とボタンカバーの間にボタン本体がフローティング状態で配置されている。このように構成が複雑な操作ボタンは、機器への組付作業性が悪い。よって、特許文献1の蓋開閉装置には、フック部材に対する操作力の伝達性を向上しつつ、構成を簡素化することについて、改良の余地がある。
【0005】
本発明は、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上しつつ、構成を簡素化できる調理器の蓋開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、本体及び前記本体に開閉可能に取り付けられた蓋体のうちの一方の部材に、第1方向へ直動可能に取り付けられる操作ボタンと、前記操作ボタンに対して前記第1方向上に位置するように前記一方の部材内に配置された操作受部を有し、前記操作ボタンによる前記操作受部の押圧によって、前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸まわりに係止位置から係止解除位置へ回動するフック部材とを備え、前記操作受部は、前記第2方向、及び前記第1方向と前記第2方向の双方に対して交差する第3方向に沿って延びる板状の第1受部と、前記第1受部に対して前記第2方向の両側に隣接して設けられ、前記第3方向に延びる第1基準線に対する傾斜角度が、前記第1基準線に対する前記第1受部の傾斜角度と異なる一対の第2受部とを備え、前記操作ボタンは、前記第1受部を押圧可能な第1傾斜部を有し、前記第1方向及び前記第3方向に沿って延びる板状の第1押圧部と、前記第2受部を押圧可能な第2傾斜部を有し、前記第1押圧部に対して前記第2方向の両側に間隔をあけて設けられた板状で一対の第2押圧部とを備える、調理器の蓋開閉装置を提供する。
【0007】
フック部材は、傾斜角度が異なる2種の受部を備え、操作ボタンは、2種の受部をそれぞれ押圧可能な2種の傾斜部を備える。よって、操作ボタンの中央をユーザが操作した場合、及び第3方向における操作ボタンの傾斜部側(例えば後側)をユーザが操作した場合、第1傾斜部及び第2傾斜部のうちの少なくとも一方が、対応する第1受部及び第2受部を押圧する。また、操作ボタンの中央よりも第2方向の外寄りをユーザが操作した場合、少なくとも一対の第2傾斜部のうちの一方が対応する第2受部を押圧する。
【0008】
このように、操作ボタンの中央以外の片寄った位置をユーザが操作しても、フック部材の操作受部を押圧できる。よって、フック部材の操作受部に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上できるため、係止位置のフック部材を係止解除位置に回動させて蓋体を確実に開放できる。しかも、蓋開閉装置は、1個の操作ボタンと1個のフック部材とで構成されるため、構成を簡素化でき、調理器への組付作業性を向上できる。
【0009】
前記第1受部と前記第1傾斜部の間の最小部分の隙間は、前記第2受部と前記第2傾斜部の間の最小部分の隙間以下である。
【0010】
第1受部と第1傾斜部の間の最小部分の隙間が第2受部と第2傾斜部の間の最小部分の隙間以下であるため、操作ボタンの中央をユーザが操作した場合、少なくとも第1傾斜部が第1受部を押圧する。よって、フック部材の操作受部に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上できるため、係止位置のフック部材を係止解除位置に回動させて蓋体を確実に開放できる。
【0011】
具体的には、前記第1受部は、前記第3方向の一方側から他方側に向けて、前記操作ボタンに次第に近づくように傾斜するとともに、前記第2受部は、前記第3方向の前記一方側から前記他方側に向けて、前記操作ボタンから次第に離れるように傾斜しており、前記第1傾斜部は、前記第1受部に沿って傾斜するとともに、前記第2傾斜部は、前記第2受部に沿って傾斜している。また、前記フック部材が前記係止位置にあるとき、前記第1基準線に対する前記第1受部の傾斜角度は、前記第1基準線に対する前記第1傾斜部の傾斜角度よりも小さく、前記第1基準線に対する前記第2受部の傾斜角度は、前記第1基準線に対する前記第2傾斜部の傾斜角度よりも小さい。
【0012】
第1受部の傾斜角度が第1傾斜部の傾斜角度よりも小さく、第2受部の傾斜角度が第2傾斜部の傾斜角度よりも小さい。よって、操作ボタンの第3方向の傾斜部側(例えば後側)をユーザが操作した場合、一対の第2傾斜部によって第2受部を押圧できるため、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上できる。
【0013】
前記操作受部は、前記第1受部及び前記第2受部に対して前記第3方向の一方側に連なる基部を備え、前記フック部材が前記係止解除位置にあるとき、前記第1押圧部は前記操作受部の前記基部を押圧可能な第1主部を有し、前記第2押圧部は前記操作受部の前記基部を押圧可能な第2主部を有する。
【0014】
第1押圧部と第2押圧部は、フック部材が係止解除位置にあるときに基部を押圧可能な主部をそれぞれ有する。よって、操作ボタンの操作によって、第1傾斜部による第1受部の押圧又は第2傾斜部による第2受部の押圧に引き続いて、それぞれの主部によって基部を押圧し、フック部材を係止解除位置に確実に回動できる。
【0015】
前記操作受部は、前記基部の前記第1受部とは反対側に設けられ、前記操作ボタンに向けて突出する第3受部を備え、前記操作ボタンは、前記操作受部に向けて突出し、前記第3受部を押圧可能な第3押圧部を備え、前記第3受部と前記第3押圧部はそれぞれ、前記第3方向の一方側から他方側に向けて前記基部から次第に離れるように傾斜した傾斜部を含む。
【0016】
フック部材は基部の第1受部とは反対側に第3受部を有するとともに、操作ボタンは第3受部を押圧可能な第3押圧部を有し、第3受部と第3押圧部はそれぞれ傾斜部を含む。そのため、操作ボタンの第3方向の一方側(例えば前側)をユーザが操作した場合、第3押圧部の傾斜部によって第3受部の傾斜部を押圧できるため、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上できる。
【0017】
前記操作ボタンは、前記一対の第2押圧部の前記第1押圧部とは反対側にそれぞれ、第1方向及び前記第2方向に沿って延び、前記第1方向に延びる第2基準線に対して前記第2方向へ前記操作ボタンが傾いたときに、前記基部を押圧可能な板状で一対の第4押圧部を有し、前記フック部材が前記係止位置にあるとき、前記第4押圧部と前記基部の間の隙間は、前記第1主部と前記基部の間の隙間、及び前記第2主部と前記基部の間の隙間のいずれよりも大きい。
【0018】
操作ボタンは、一対の第2押圧部の第1押圧部とは反対側にそれぞれ一対の第4押圧部を有する。前述のように操作ボタンの中央よりも第2方向の外寄りをユーザが操作した場合、まずは一方の第2傾斜部が第2受部を押圧するが、第2傾斜部は第3方向に延びる構成であるため、操作力の伝達効率は良好でないことがある。しかし、本態様では、第2方向に延びる第4押圧部によって基部を押圧できるため、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上できる。
【0019】
前記操作ボタンは、前記第1方向から見て円形状であり、厚みが0.5mm以上4.0mm以下の樹脂成形品である。
【0020】
厚いブロック状の操作ボタンの場合、中央以外をユーザが操作してもフック部材の操作受部を確実に押圧できるため、複数種の押圧部を設ける必要はない。しかし、樹脂製の操作ボタンは、熱収縮によるヒケの発生等の問題によりブロック状に成形できないため、厚みは上記範囲で成形される。この場合、プッシュ操作時に操作ボタンが傾くと、押圧部の設計によってはフック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性が悪くなることがある。しかも、円形状の操作ボタンは、中央以外の部分がプッシュ操作されることが多い。よって、このような円形状で樹脂製の操作ボタンを用いた蓋開閉装置を、前述した態様することで、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上しつつ、構成を簡素化できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の調理器の蓋開閉装置では、フック部材に対する操作ボタンの操作力の伝達性を向上しつつ、構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る蓋開閉装置を用いた調理器の一例であるマルチクッカーの斜視図。
図2】マルチクッカーを図1のII-II線に沿って一部を切断した断面図。
図3】蓋体を開放したマルチクッカーの斜視図。
図4】蓋体の分解斜視図。
図5A図2のV部分の拡大断面図。
図5B】操作ボタンを操作した状態での図5Aと同様の拡大断面図。
図6】蓋開閉装置の操作ボタンとフック部材の分解斜視図。
図7】操作ボタンとフック部材の関係を示す底面図。
図8図7のVIII-VIII線で切断した操作ボタンの断面図。
図9図7のIX-IX線で切断した操作ボタンの断面図。
図10図7のX-X線で切断した操作ボタンとフック部材の一部断面図。
図11A】係止位置のフック部材に操作ボタンが当接した状態での図9と同様の断面図。
図11B】係止位置のフック部材に操作ボタンが当接した状態での図10と同様の断面図。
図12A】操作ボタンの後側を操作した状態での図9と同様の断面図。
図12B】操作ボタンの後側を操作した状態での図10と同様の断面図。
図13】操作ボタンの中央よりも幅方向外寄りを操作した状態での図8と同様の断面図。
図14】操作ボタンの前側を操作した状態での図9と同様の断面図。
図15】操作ボタンの幅方向外端を操作した状態での図7のXV-XV線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1から図3は、本発明の実施形態に係る蓋開閉装置40を用いた調理器の一例であるマルチクッカー10を示す。マルチクッカー10は、鍋15を収容する本体20と、本体20に開閉可能に取り付けられた蓋体30とを備える。蓋開閉装置40は、操作ボタン50とフック部材60を備え、本体20に対して蓋体30を閉状態に保持する一方、操作ボタン50の操作により本体20に対して蓋体30を開放可能とする。
【0025】
まず、マルチクッカー10の概要を説明する。
【0026】
以下の説明で参照する個々の図面に記載したX方向はマルチクッカー10の幅方向であり、Y方向はマルチクッカー10の前後方向であり、Z方向はマルチクッカー10の高さ方向である。そのうち、Y方向の矢印が示す向きが後側であり、矢印とは逆向きが前側である。本実施形態では、Z方向が本発明における第1方向であり、X方向が本発明における第2方向であり、Y方向が本発明における第3方向である。
【0027】
図2及び図3を参照すると、鍋15は、金属製で、上端を開口した有底筒状である。鍋15の軸線方向から見た鍋15の形状は、本実施形態では円形状であるが、多角形状であってもよい。
【0028】
図1から図3を参照すると、本体20は、有底筒状の胴体21と、胴体21の底を更に覆う底体22と、胴体21の上端開口に取り付けられた肩体23とからなる外装体を備える。肩体23の概ね中央には開口部23aが設けられ、この開口部23aに鍋15を着脱可能に収容する収容部24が取り付けられている。
【0029】
収容部24の底には、鍋15を加熱する加熱部25と、鍋15の温度を検出するための温度センサ26とが配置されている。本実施形態の加熱部25は、ヒータを内蔵した加熱板であり、鍋15を直接加熱する。但し、加熱部25は、高周波電流の通電により鍋15を誘導加熱するコイルであってもよい。
【0030】
図1及び図3を参照すると、蓋体30は、肩体23(本体20)の背部に形成されたヒンジ受部23bに回動可能に取り付けられている。図4を参照すると、蓋体30は、蓋本体31と、蓋本体31を覆う蓋カバー32とを備え、蓋本体31の前後方向Yの後側に、ヒンジ受部23bに軸支されるヒンジ軸33が配置されている。
【0031】
図2及び図3を参照すると、蓋体30は、鍋15の上端開口を開放可能に密閉する内蓋34を備える。内蓋34には複数の蒸気孔34aが設けられており、鍋15内で発生した蒸気は、蒸気孔34a、図4に示す蓋体30内のダクト部材35及び蒸気口部材36を介して、マルチクッカー1の外部に流出可能である。図1及び図4を参照すると、蒸気口部材36は、蓋カバー32の前後方向Yの後側に設けた露出孔32aから外部に露出する。
【0032】
図1を参照すると、本実施形態の蓋体30には、液晶パネルからなる表示部37と、複数のスイッチからなる入力部38が設けられている。また、本体20には回路基板(図示せず)が取り付けられ、この回路基板に制御部(図示せず)が実装されている。制御部には、図2に示す加熱部25、図2に示す温度センサ26、図1に示す表示部37、及び図1に示す入力部38が電気的に接続されている。
【0033】
入力部38を構成する複数のスイッチの操作によって加熱時間及び加熱温度等の調理条件が入力(設定)されると、制御部は、その入力状態を表示部37に表示させる。また、調理スイッチが操作されると、制御部は、加熱部25への通電を開始し、設定された調理条件に従い、温度センサ26の検出温度に基づいて加熱部25への通電率を制御し、調理を行う。
【0034】
次に、蓋開閉装置40について具体的に説明する。
【0035】
図4を参照すると、蓋開閉装置40は操作ボタン50及びフック部材60を備え、本実施形態では、操作ボタン50が蓋カバー32に配置され、フック部材60が蓋本体31に配置されている。
【0036】
蓋本体31には、ヒンジ軸33とは反対側である前後方向Yの前側に、フック部材60を回転可能に配置するための一対の軸受部42が設けられている。一対の軸受部42は、ヒンジ軸33が延びる幅方向Xに間隔をあけて設けられている。また、蓋本体31の前後方向Yの前側には、フック部材60の係止爪部62bを外側から内側へ貫通させる貫通孔43が設けられている。
【0037】
蓋カバー32には、操作ボタン50を配置するための取付孔45が、軸受部42と対応するように前後方向Yの前側に設けられている。取付孔45は、高さ方向Zに延びる軸線Aを有し、高さ方向Zから見て円形状である。取付孔45の孔壁には、内方へ突出する突片45aが周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3個)設けられている。個々の突片45aには、高さ方向Zに貫通した孔に有する円筒状のガイド筒45bが上向きに突設されている。
【0038】
引き続いて図4を参照すると、操作ボタン50は、円筒状の筒部50aと、筒部50aの上端(一端)を塞ぐ端壁部50bとを備え、蓋体30の取付孔45に対して高さ方向Z(第1方向)へ直動可能に取り付けられる。具体的には、操作ボタン50は、図5Aに示す非操作位置と、図5Bに示す操作位置との間を直動可能であり、取付孔45内のガイド筒45bに配置されたコイルスプリング56(図4参照)によって、非操作位置に付勢されている。
【0039】
筒部50aの外径は取付孔45の内径よりも小さい。筒部50a(操作ボタン50)の軸線Bは、操作ボタン50の直動方向と一致するとともに、操作ボタン50の非操作状態では取付孔45の軸線Aと一致している。筒部50aの下端には径方向外向きに突出したフランジ部50cが設けられ、このフランジ部50cに蓋カバー32からの脱落を防ぐためのストッパ部50dが設けられている。
【0040】
図6では操作ボタン50をX軸まわりに90度回転させた状態を示している。この図6を参照すると、端壁部50bには、ガイド筒45bに挿通されるガイド凸部50eが設けられている。ガイド凸部50eは、本実施形態では前後方向Yの前側と後側にそれぞれ2個(合計で4個)設けられている。ガイド凸部50eとガイド筒45bの間には、製造上不可避な隙間(組付公差)が形成される。
【0041】
図4及び図6を参照すると、フック部材60は、フックベース61、係止片62、及び操作受部63を備え、蓋本体31の軸受部42に、幅方向Xに延びる回転軸Raまわりに回動可能に取り付けられている。具体的には、フック部材60は、図5Aに示す係止位置と図5Bに示す係止解除位置との間を回動可能であり、蓋本体31に配置された付勢バネ69(図4参照)によって、係止位置に付勢されている。フック部材60と付勢バネ69は、一対のカバー部材70によって蓋本体31の軸受部42に対して離脱不可能に取り付けられている。
【0042】
図5A及び図6を参照すると、フックベース61は、係止位置にあるときにXY平面に沿って延びる板状である。フックベース61の幅方向Xの両端には、蓋本体31の軸受部42に回動に取り付けられる円筒状で一対の軸部61aが設けられている。直線上に延びる一対の軸部61aの軸線が、フック部材60の回転軸Raである。
【0043】
係止片62は、フックベース61の幅方向Xの両端に設けられ、前後方向Yの前側に突出した後、高さ方向Zの下側へ突出している。係止片62は、蓋本体31の前側に配置される腕部62aと、蓋本体31の貫通孔43に対応する係止爪部62bを備える。係止爪部62bは、腕部62aの下端から前後方向Yの後側へ突出しており、図5Aに示す係止位置では、貫通孔43を貫通して本体20の係止穴46(図3参照)に係止し、図5Bに示す係止解除位置では、係止穴46に対する係止が解除される。
【0044】
操作受部63は、フックベース61の前後方向Yの後側に設けられ、操作ボタン50に対して、高さ方向Zの下側かつ操作ボタン50の直動ストローク間に配置されている。操作受部63は、操作ボタン50の操作力を受けることで、図5Aに示す係止位置のフック部材60を図5Bに示す係止解除位置に回動させる。操作ボタン50の操作が止められると、付勢バネ69の付勢力によって、係止解除位置のフック部材60が係止位置に回動する。
【0045】
以下、操作ボタン50の操作力をフック部材60に伝達するための具体的構成を説明する。
【0046】
蓋カバー32の取付孔45と操作ボタン50の筒部50aとの間には、製造上不可避な隙間が形成される。この隙間は、取付孔45の軸線Aに対する操作ボタン50の軸線Bの傾きを許容するスペースになる。隙間を過度に大きくすると、取付孔45の軸線Aに対して操作ボタン50の軸線Bが傾斜可能な角度範囲が広くなるため、フック部材60に対する操作力の伝達性が損なわれる。一方、隙間を過度に小さくすると、取付孔45の軸線Aに対して操作ボタン50の軸線Bが少しでも傾くと、筒部50aが取付孔45の孔壁に干渉するため、操作ボタン50のプッシュ操作性が悪くなる。
【0047】
そこで、本実施形態では、取付孔45に対する操作ボタン50の傾きをある程度許容する一方、フック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を改善することで、操作ボタン50の操作性を向上する。具体的には、操作ボタン50には4種の押圧部51~54が設けられ、フック部材60の操作受部63にも4種の受部64~67が設けられている。
【0048】
まず、図6及び図7を参照して操作受部63の構成について説明する。
【0049】
操作受部63は、フックベース61の前後方向Yの後端から後向きに突出し、XY平面に沿って延びる板状の基部(受部)64を備える。ここで、XY平面に沿って延びるとは、XY平面に平行に延びる構成に限られず、XY平面に対して鋭角に交差する構成が含まれる。本実施形態の基部64は、図5Aに示す係止状態で、前後方向Yの前側から後側に向けて操作ボタン50に次第に近づくように、XY平面(後述する第1基準線BL)に対して14度の傾斜角で延びている。基部64の幅方向Xの寸法(全幅)は、操作ボタン50の筒部50aの外径と概ね同一寸法である。この基部64に、3種の受部65~67が一体に設けられている。
【0050】
第1の受部(第1受部)65は、基部64の前後方向Yの後側(他方側)の端に設けられ、後向きに板状に突出している。受部65は、基部64の幅方向Xの中央に設けられ、基部64の全幅の概ね1/3の領域を占める幅で形成されている。受部65は、XY平面に沿って延び、前後方向Yの前側(一方側)から後側に向けて操作ボタン50に次第に近づくように傾斜している。本実施形態の受部65の傾斜角度は、基部64の傾斜角度と同一である。つまり、受部65は、基部64に対して面一に突出している。図5A及び図5Bを参照すると、蓋体30への組付状態では、受部65の前後方向Yの後端は、操作ボタン50の筒部50aよりも前側に位置している。
【0051】
図6及び図7を参照すると、第2の受部(第2受部)66は、受部65に対して幅方向Xの両側に隣接するように、基部64の前後方向Yの後端にそれぞれ設けられ、後向きに板状に突出している。個々の受部66は、基部64の幅方向Xの端に設けられ、基部64の全幅の概ね1/3の領域を占める幅で形成されている。受部66は、XY平面に沿って延び、前後方向Yの前側から後側に向けて操作ボタン50から次第に離れるように傾斜している。つまり、前後方向Yに延びる第1基準線BL(図10参照)に対する第2の受部66の傾斜方向は、第1の受部65の傾斜方向と異なっている。図5A及び図5Bを参照すると、蓋体30への組付状態では、受部66の前後方向Yの後端は、操作ボタン50の筒部50aよりも前側に位置している。
【0052】
図6及び図7を参照すると、第3の受部(第3受部)67は、基部64のうち第1の受部65とは反対側(前後方向Yの前側)に設けられている。受部67は、基部64の幅方向Xの中央に設けられ、基部64の全幅の概ね1/3の領域を占める幅で形成されている。受部67は、断面三角形状であり、操作ボタン50に向けて突出している。より具体的には、受部67は、前後方向Yの前側から後側に向けて基部64から次第に離れるように傾斜した傾斜部67aを備える。
【0053】
図6及び図7を参照すると、操作ボタン50は、高さ方向Zから見て円形状であり、全ての部分の厚みが0.5mm以上4.0mm以下の樹脂成形品である。操作ボタン50の筒部50a内には、4種の押圧部51~54が設けられている。押圧部51~54はいずれも、端壁部50bから筒部50aの下端を越えて下向きに突出している。
【0054】
第1の押圧部(第1押圧部)51は、端壁部50bの幅方向Xの中央に設けられ、YZ平面に沿って延びる板状である。押圧部51は、端壁部50bの前後方向Yの中央領域に設けられ、端壁部50bの直径の概ね1/2を占める長さで形成されている。押圧部51の下端縁のうち、図5Aに示す組付状態で操作受部63の基部64上に位置する部分は第1の主部(第1主部)51aであり、操作受部63の受部65上に位置する部分は第1の傾斜部(第1傾斜部)51bである。
【0055】
図6図8及び図9を参照すると、第1の主部51aは、前後方向Yに沿って延びている。主部51aは、フック部材60が係止解除位置にあるとき、操作受部63の基部64を押圧可能である(図5B参照)。
【0056】
第1の傾斜部51bは、前後方向Yに沿って延び、受部65の傾斜に沿って傾斜している。具体的には、傾斜部51bは、前後方向Yの前側から後側に向けて操作受部63から次第に離れるように傾斜している。傾斜部51bは、フック部材60が係止位置にあるとき、操作ボタン50の操作によって操作受部63の受部65を押圧可能である(図11A参照)。
【0057】
図6及び図7を参照すると、一対の第2の押圧部(第2押圧部)52は、押圧部51の幅方向Xの両側に間隔をあけて設けられ、それぞれYZ平面に沿って延びる板状である。より具体的には、押圧部52は、操作受部63の受部66の幅方向Xの中央を前後方向Yに横切るように、端壁部50bの前後方向Yの中央領域に設けられている。第2の押圧部52の前後方向Yの長さは第1の押圧部51の前後方向Yの長さよりも長い。前後方向Yにおいて、押圧部52の後端は押圧部51の後端よりも後側に位置し、押圧部52の前端は押圧部51の前端よりも前側に位置している。押圧部52の下端縁のうち、図5Aに示す組付状態で操作受部63の基部64上に位置する部分は第2の主部(第2主部)52aであり、操作受部63の受部66上に位置する部分は第2の傾斜部(第2傾斜部)52bである。
【0058】
図6図8及び図9を参照すると、第2の主部52aは、第1の主部51aと同形状であり、前後方向Yに沿って延びている。主部52aは、フック部材60が係止解除位置にあるとき、操作受部63の基部64を押圧可能である(図5B参照)。
【0059】
第2の傾斜部52bは、前後方向Yに沿って延び、受部66の傾斜に沿って傾斜している。具体的には、傾斜部52bは、前後方向Yの前側から後側に向けて操作受部63に次第に近づくように傾斜している。傾斜部52bは、フック部材60が係止位置にあるとき、操作ボタン50の操作によって操作受部63の受部66を押圧可能である(図11B参照)。
【0060】
図6及び図7を参照すると、第3の押圧部(第3押圧部)53は、押圧部51の前後方向Yの前側に設けられており、操作受部63に向けて突出している。図8及び図9を参照すると、押圧部53は、YZ平面に沿って延びる板状で1枚の端板部53aと、XZ平面に沿って延びる板状で一対の側板部53bとを備える。一対の側板部53bは、1枚の端板部53aの両端にそれぞれ連なり、互いに幅方向Xに間隔をあけて位置している。一対の側板部53bにはそれぞれ、操作受部63の受部67上に位置する第3の傾斜部(第3傾斜部)53cが設けられている。
【0061】
第3の傾斜部53cは、受部67の傾斜部67aの傾斜に沿って傾斜している。つまり、傾斜部53cは、前後方向Yの前側から後側に向けて、操作受部63(基部64)から次第に離れるように傾斜している。図5Aを参照すると、組付状態で傾斜部53cは、受部67の傾斜部67aの高さ方向Zの上側かつ前後方向Yの前側に位置している。これにより傾斜部53cは、フック部材60が係止位置にあるとき、操作ボタン50の操作によって受部67を押圧可能である(図14参照)。
【0062】
図6及び図7を参照すると、一対の第4の押圧部(第4押圧部)54は、一対の第2の押圧部52の第1の押圧部51とは反対側に設けられ、それぞれXZ平面に沿って延びる板状である。より具体的には、押圧部54は、操作受部63の基部64の前後方向Yの後側に位置するように設けられている。個々の押圧部54の幅方向X外側の端は、基部64の幅方向Xの外端の近傍に位置している。押圧部54の下端縁は幅方向Xに沿って延びている。これにより押圧部54は、高さ方向Zに延びる第2基準線(取付孔45の軸線A)に対して操作ボタン50の軸線Bが幅方向Xに傾いたときに、基部64を押圧可能である(図15参照)。
【0063】
図7を参照すると、操作受部63のうち、基部64と第1の受部65の境界位置、及び基部64と第2の受部66の境界位置は、前後方向Yの同一位置にある。図10を参照すると、第1の押圧部51の主部51a及び傾斜部51bの境界位置と、第2の押圧部52の主部52a及び傾斜部52bの境界位置とは、前後方向Yの同一位置にある。
【0064】
引き続いて図10を参照すると、フック部材60が係止位置にあるとき、第1の押圧部51の境界位置と第2の押圧部52の境界位置とは、操作受部63の境界位置よりも前後方向の後側に位置している。また、第1の受部65と傾斜部51bの間の最小部分(傾斜部51bの下端)の隙間S1は、第2の受部66と傾斜部52bの間の最小部分(受部66の下端)の隙間S2以下に設定されている。
【0065】
第3の受部67の傾斜部67aと押圧部53の傾斜部53cとの間の最小部分の隙間は、第1の受部65と傾斜部51bの間の最小部分の隙間S1、及び第2の受部66と傾斜部52bの間の最小部分の隙間S2のいずれよりも大きい。
【0066】
第4の押圧部54と基部64の間の隙間S3は、押圧部51,52それぞれの主部51a,52aと基部64の間の隙間よりも大きく、第1の受部65と傾斜部51bの間の最小部分の隙間S1、及び第2の受部66と傾斜部52bの間の最小部分の隙間S2のいずれよりも大きい。
【0067】
引き続いて図10を参照すると、フック部材60が係止位置にあるとき、前後方向Yに延びる第1基準線(水平線)BLに対する第1の受部65の傾斜角度α1は、第1基準線BLに対する第1の押圧部51の傾斜部51bの傾斜角度β1よりも小さい。また、第1基準線BLに対する第2の受部66の傾斜角度α2は、第1基準線BLに対する第2の押圧部52の傾斜部52bの傾斜角度β2よりも小さい。本実施形態では、傾斜角度α1は14.2度であり、傾斜角度β1は17.7度であり、傾斜角度α2は4.3度であり、傾斜角度β2は10.0度である。
【0068】
また、フック部材60が係止位置にあるとき、第1の受部65の傾斜角度α1と第1の押圧部51の傾斜部51bの傾斜角度β1との角度差Δ1は、第2の受部66の傾斜角度α2と第2の押圧部52の傾斜部52bの傾斜角度β2との角度差Δ2よりも小さい。本実施形態では、角度差Δ1は3.5度であり、角度差Δ2は5.7度である。
【0069】
以上のように構成した蓋開閉装置40では、以下の表に示すように、円形状の操作ボタン50のどの部分をユーザが操作しても、操作ボタン50の操作力を操作受部63に伝達し、係止位置のフック部材60を係止解除位置に回動できる。なお、以下の表において、「○」は操作部材63に当接すること意味し、「△」は操作部材63に当接する場合と当接しない場合があること意味し、「×」は操作部材63に当接しないこと意味する。
【0070】
【表1】
【0071】
具体的には、図11A及び図11Bは、操作ボタン50の中央を操作した場合を示す。この場合、操作ボタン50が姿勢を維持したまま、取付孔45の軸線A(第2基準線)に沿ってZ方向に移動する。つまり、操作ボタン50の軸線Bが取付孔45の軸線A(第2基準線)に一致した状態で、操作ボタン50が移動する。この場合、第1の押圧部51の傾斜部51bが操作受部63の受部65に当接するとともに、第2の押圧部52の傾斜部52bが操作受部63の受部66に当接し、第3の押圧部53と第4の押圧部54は操作受部63の受部67と基部64には当接しない。
【0072】
引き続いて操作ボタン50が操作されると、第1の傾斜部51bが受部65を押圧するとともに、第2の傾斜部52bが受部66を押圧することで、係止位置のフック部材60が軸部61aまわりで回動する。その後、第1の押圧部51及び第2の押圧部52それぞれの主部51a,52aが操作受部63の基部64に押圧し、図5Bに示す係止解除位置までフック部材60が回動する。
【0073】
図12A及び図12Bは、操作ボタン50の中央よりも前後方向Yの後側を操作した場合を示す。この場合、操作ボタン50の前後方向Yの後端が前端よりも下側に位置する姿勢でZ方向に移動する。つまり、操作ボタン50の軸線Bが取付孔45の軸線A(第2基準線)に対して、傾斜角θで前後方向Yに傾斜した状態で移動する。この場合、第2の押圧部52の傾斜部52bが操作受部63の受部66に当接し、第1の押圧部51、第3の押圧部53、及び第4の押圧部54は、操作受部63の受部65、67、及び基部64には当接しない。
【0074】
引き続いて操作ボタン50が操作されると、第2の傾斜部52bが受部66を押圧することで、係止位置のフック部材60が軸部61aまわりで回動する。その後、第1の押圧部51及び第2の押圧部52それぞれの主部51a,52aが操作受部63の基部64に押圧し、図5Bに示す係止解除位置までフック部材60が回動する。
【0075】
図13は、操作ボタン50の中央よりも幅方向Xの外寄りを操作した場合を示す。ここで、外寄りとは、操作ボタン50の中央と外端の間の中間部分を意味する。この場合、操作ボタン50の幅方向Xの操作側(一端側)が反対側(他端側)よりも下側に位置する姿勢でZ方向に移動する。つまり、操作ボタン50の軸線Bが取付孔45の軸線A(第2基準線)に対して、傾斜角θで幅方向Xに傾斜した状態で移動する。この場合、一対の第2の押圧部52の傾斜部52bのうちの一方が、操作受部63の対応する受部66に当接し、第1の傾斜部51b、他方の第2の傾斜部52b、第3の押圧部53、及び第4の押圧部54は、操作受部63の受部65~67、及び基部64には当接しない。
【0076】
引き続いて操作ボタン50が操作されると、一方の第2の傾斜部52bが受部66を押圧することで、係止位置のフック部材60が軸部61aまわりで回動する。その後、一方の第2の押圧部52の主部52aが操作受部63の基部64に押圧し、図5Bに示す係止解除位置までフック部材60が回動する。
【0077】
図14は、操作ボタン50の中央よりも前後方向Yの前側を操作した場合を示す。この場合、操作ボタン50の前後方向Yの前端が後端よりも下側に位置する姿勢でZ方向に移動する。つまり、操作ボタン50の軸線Bが取付孔45の軸線A(第2基準線)に対して、傾斜角θで前後方向Yに傾斜した状態で移動する。この場合、第3の押圧部53の傾斜部67aが操作受部63の受部67に当接し、第1の傾斜部51b、一対の第2の傾斜部52b、及び第4の押圧部54は、操作受部63の受部65、66、及び基部64には当接しない。
【0078】
引き続いて操作ボタン50が操作されると、第3の傾斜部53cが受部67を押圧することで、係止位置のフック部材60が軸部61aまわりで回動する。その後、第1の押圧部51及び第2の押圧部52それぞれの主部51a,52aが操作受部63の基部64に押圧し、図5Bに示す係止解除位置までフック部材60が回動する。
【0079】
図15は、操作ボタン50の幅方向Xの外端を操作した場合を示す。この場合、操作ボタン50の幅方向Xの操作側(一端側)が反対側(他端側)よりも下側に位置する姿勢でZ方向に移動する。つまり、操作ボタン50の軸線Bが取付孔45の軸線A(第2基準線)に対して、図13に示すように幅方向Xの外寄りを操作した場合よりも大きい傾斜角θで幅方向Xに傾斜した状態で移動する。この場合、一対の第2の押圧部52の傾斜部52bのうちの一方が操作受部63の対応する受部66に当接するとともに、第4の押圧部54が操作受部63の基部64に当接し、第1の傾斜部51b、他方の第2の傾斜部52b、及び第3の押圧部53は、操作受部63の受部65~67には当接しない。
【0080】
引き続いて操作ボタン50が操作されると、一方の第2の傾斜部52bが受部66を押圧し、第4の押圧部54が基部64を押圧することで、係止位置のフック部材60が軸部61aまわりで回動する。その後、一方の第2の押圧部52の主部52aが操作受部63の基部64に押圧し、図5Bに示す係止解除位置までフック部材60が回動する。
【0081】
なお、操作ボタン50のうち、以上で説明した部分以外をユーザが操作した場合でも、4種の押圧部51~54が協働して対応する受部64~67を押圧することで、図5Aに示す係止位置のフック部材60を図5Bに示す係止解除位置に回動できる。
【0082】
以上のように構成した蓋開閉装置40は、以下の特徴を有する。
【0083】
フック部材60は、傾斜角度α1,α2が異なる2種の受部65,66を備え、操作ボタン50は、2種の受部65,66をそれぞれ押圧可能な2種の傾斜部51b,52bを備える。よって、操作ボタン50の中央をユーザが操作した場合、及び前後方向Yにおける操作ボタン50の傾斜部51b,52b側(後側)をユーザが操作した場合、第1の傾斜部51b及び第2の傾斜部52bのうちの少なくとも一方が、対応する受部65,66を押圧する。また、操作ボタン50の中央よりも幅方向Xの外寄りをユーザが操作した場合、少なくとも一対の第2の傾斜部52bのうちの一方が対応する受部66を押圧する。
【0084】
このように、操作ボタン50の中央以外の片寄った位置をユーザが操作しても、フック部材60の操作受部63を押圧できる。よって、フック部材60の操作受部63に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上できるため、係止位置のフック部材60を係止解除位置に回動させて蓋体30を確実に開放できる。しかも、蓋開閉装置40は、1個の操作ボタン50と1個のフック部材60とで構成されるため、構成を簡素化でき、マルチクッカー10への組付作業性を向上できる。
【0085】
第1の受部65と傾斜部51bの間の最小部分の隙間S1が、第2の受部66と傾斜部52bの間の最小部分の隙間S2以下である。そのため、操作ボタン50の中央をユーザが操作した場合、少なくとも第1の傾斜部51bが受部65を押圧する。よって、フック部材60の操作受部63に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上できるため、係止位置のフック部材60を係止解除位置に回動させて蓋体30を確実に開放できる。
【0086】
第1の受部65の傾斜角度α1は傾斜部51bの傾斜角度β1よりも小さく、第2の受部66の傾斜角度α2は傾斜部52bの傾斜角度β2よりも小さい。よって、操作ボタン50の前後方向Yの傾斜部51b,52b側(後側)をユーザが操作した場合、一対の第2の傾斜部52bによって受部66を押圧できるため、フック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上できる。
【0087】
第1の押圧部51と第2の押圧部52は、フック部材60が係止解除位置にあるときに基部64を押圧可能な主部51a,52aをそれぞれ有する。よって、操作ボタン50の操作によって、傾斜部51b,52bによる受部65,66の押圧に引き続いて、それぞれの主部51a,52aによって基部64を押圧し、フック部材60を係止解除位置に確実に回動できる。
【0088】
フック部材60は基部64の第1の受部65とは反対側に第3の受部67を有するとともに、操作ボタン50は第3の受部67を押圧可能な第3の押圧部53を有し、受部67と押圧部53はそれぞれ傾斜部67a,53cを含む。そのため、操作ボタン50の前後方向Yの一方側(前側)をユーザが操作した場合、押圧部53の傾斜部53cによって受部67の傾斜部67aを押圧できるため、フック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上できる。
【0089】
操作ボタン50は、一対の第2の押圧部52の第1の押圧部51とは反対側にそれぞれ、一対の第4の押圧部54を有する。前述のように操作ボタン50の中央よりも幅方向Xの外寄りをユーザが操作した場合、まずは一方の第2の傾斜部52bが受部66を押圧するが、傾斜部52bは前後方向Yに延びる構成であるため、操作力の伝達効率は良好でないことがある。しかし、本実施形態では、幅方向Xに延びる第4の押圧部54によって基部64を押圧できるため、フック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上できる。
【0090】
厚いブロック状の操作ボタンの場合、中央以外をユーザが操作してもフック部材60の操作受部63を確実に押圧できるため、複数種の押圧部を設ける必要はない。しかし、本実施形態のような樹脂製の操作ボタン50は、熱収縮によるヒケの発生等の問題によりブロック状に成形できないため、厚みは0.5mm以上4.0mm以下に成形される。この場合、プッシュ操作時に操作ボタン50が傾くと、押圧部の設計によってはフック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性が悪くなることがある。しかも、円形状の操作ボタン50は、中央以外の部分がプッシュ操作されることが多い。よって、このような円形状で樹脂製の操作ボタン50を用いた蓋開閉装置40を、本実施形態のように構成することで、フック部材60に対する操作ボタン50の操作力の伝達性を向上しつつ、構成を簡素化できる。
【0091】
なお、本発明の調理器の蓋開閉装置40は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0092】
例えば、フック部材60に第1の受部65と第2の受部66を設け、操作ボタン50に第1の押圧部51と第2の押圧部52を設ければ、第3の受部67と押圧部53、及び第4の押圧部54は設けなくてもよい。また、受部67と押圧部53、及び押圧部54のうちの一方だけを設けてもよい。
【0093】
操作ボタン50は、高さ方向Zの下側にプッシュ操作する構成に限られず、水平方向(例えば前後方向Y)にプッシュ操作する構成であってもよい。この場合、Y方向が本発明における第1方向になり、X方向が本発明における第2方向になり、Z方向が本発明における第3方向になる。また、蓋開閉装置40は、蓋体30に取り付けられる構成に限られず、本体20に取り付けられてもよい。
【0094】
蓋開閉装置40を用いる調理器は、マルチクッカー10に限られず、米飯を炊飯する炊飯器であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 マルチクッカー
15 鍋
20 本体
21 胴体
22 底体
23 肩体
23a 開口部
23b ヒンジ受部
24 収容部
25 加熱部
26 温度センサ
30 蓋体
31 蓋本体
32 蓋カバー
32a 露出孔
33 ヒンジ軸
34 内蓋
34a 蒸気孔
35 ダクト部材
36 蒸気口部材
37 表示部
38 入力部
40 蓋開閉装置
42 軸受部
43 貫通孔
45 取付孔
45a 突片
45b ガイド筒
46 係止穴
50 操作ボタン
50a 筒部
50b 端壁部
50c フランジ部
50d ストッパ部
50e ガイド凸部
51 押圧部(第1押圧部)
51a 主部(第1主部)
51b 傾斜部(第1傾斜部)
52 押圧部(第2押圧部)
52a 主部(第2主部)
52b 傾斜部(第2傾斜部)
53 押圧部(第3押圧部)
53a 端板部
53b 側板部
53c 傾斜部(第3傾斜部)
54 押圧部(第4押圧部)
56 コイルスプリング
60 フック部材
61 フックベース
61a 軸部
62 係止片
62a 腕部
62b 係止爪部
63 操作受部
64 基部
65 受部(第1受部)
66 受部(第2受部)
67 受部(第3受部)
67a 傾斜部
69 付勢バネ
70 カバー部材
Ra 回転軸
BL 第1基準線
A 取付孔の軸線(第2基準線)
B 操作ボタンの軸線
S1 第1の受部と傾斜部の間の最小部分の隙間
S2 第2の受部と傾斜部の間の最小部分の隙間
S3 第4の押圧部と基部の間の隙間
X 幅方向(第2方向)
Y 前後方向(第3方向)
Z 高さ方向(第1方向)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15