(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】織機における製織方法
(51)【国際特許分類】
D03C 13/00 20060101AFI20240910BHJP
D03D 51/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
D03C13/00 A
D03C13/00 S
D03D51/00 Z
(21)【出願番号】P 2021109836
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松山 豊
(72)【発明者】
【氏名】金谷 陽一
(72)【発明者】
【氏名】越村 勇太
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219541(JP,A)
【文献】特開平10-168710(JP,A)
【文献】特開2007-9355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 1/00-19/00
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータで対応する綜絖枠を駆動することにより経糸に開口運動を与える開口装置であって、予め定められたクロスポイントで前記経糸が交差するように各前記綜絖枠に対し設定された動作パターンに基づいて各前記駆動モータの制御が行われる開口装置を備えた織機における製織方法において、
少なくとも一部の前記綜絖枠を対象綜絖枠として定めると共に、前記対象綜絖枠に対し設定される前記動作パターンを、前記経糸のクロスタイミングを含む高さ位置情報であって前記クロスポイントに関する情報である高さ位置情報を各製織サイクルに割り当てるかたちで設定される織柄1リピート分の動作パターンである別様動作パターンとして設定し、
前記別様動作パターンは、予め定められた3以上の数の製織サイクルである第1の設定製織サイクルから成る第1のパターンと、前記第1のパターンの後に設定されると共に1以上の製織サイクルである第2の設定製織サイクルから成る第2のパターンとを含み、
前記第1のパターンは、下記(A)又は下記(B)となるように設定され、
前記第2のパターンは、前記クロスポイントを前記第1の設定製織サイクルの最初のクロスポイントへ向けて変化させるように設定される
ことを特徴とする織機における製織方法。
(A)前記第1の設定製織サイクルにおける各製織サイクルの前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し上下方向における一方の側となる。
(B)前記第1の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し上下方向における一方の側となり、残りの製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントと同じとなる。
【請求項2】
前記クロスタイミングが、筬による筬打ち時点とは異なる時点に設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の製織方法。
【請求項3】
前記第2の設定製織サイクルは、3以上の数の製織サイクルから成り、
前記第2のパターンは、下記(C)又は下記(D)のように設定されることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の製織方法。
(C)前記第2の設定製織サイクルにおける各製織サイクルの前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し前記一方の側とは反対側となる。
(D)前記第2の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し前記一方の側とは反対側となり、残りの製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントと同じとなる。
以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綜絖枠毎に設けられた専用の駆動モータで対応する綜絖枠を駆動することにより経糸に開口運動を与える開口装置であって、予め定められたクロスポイントで経糸が交差するように各綜絖枠に対し設定された動作パターンに基づいて各駆動モータの制御が行われる開口装置を備えた織機における製織方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような開口装置を備えた織機として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された開口装置は、複数の綜絖枠のそれぞれに対応させて設けられた駆動モータを備えている。そして、その開口装置は、各綜絖枠が対応する駆動モータによって駆動されると共に、予め定められたクロスポイントで経糸が交差するように設定された動作パターンに基づいてその駆動が制御されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような開口装置を備えた織機において、特殊な風合いを有する織物を製織するための製織方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の織機における製織方法は、少なくとも一部の綜絖枠を対象綜絖枠として定めると共に、対象綜絖枠に対し設定される動作パターンが、経糸のクロスタイミングを含む高さ位置情報であってクロスポイントに関する情報である高さ位置情報を各製織サイクルに割り当てるかたちで設定される織柄1リピート分の動作パターンである別様動作パターンとして設定されるものとする。そして、その別様動作パターンは、予め定められた3以上の数の製織サイクルである第1の設定製織サイクルから成る第1のパターンと、第1のパターンの後に設定されると共に1以上の製織サイクルである第2の設定製織サイクルから成る第2のパターンとを含み、各パターンが次のように設定されることを特徴とする。
【0006】
第1のパターンは、(A)第1の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対し上下方向における一方の側となる、又は、(B)第1の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対し上下方向における一方の側となり、残りの製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントと同じとなるように設定される。また、第2のパターンは、クロスポイントを第1の設定製織サイクルの最初のクロスポイントへ向けて変化させるように設定される。
【0007】
また、前記のような本発明による製織方法において、前記したクロスタイミングが、筬による筬打ち時点とは異なる時点に設定されるようにしても良い。
【0008】
さらに、前記した第2の設定製織サイクルを、3以上の数の製織サイクルから成るものとした上で、前記した第2のパターンを、(C)前記第2の設定製織サイクルにおける各製織サイクルの前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し前記一方の側とは反対側となる、又は、(D)前記第2の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントに対し前記一方の側とは反対側となり、残りの製織サイクルにおける前記クロスポイントが先行する製織サイクルの前記クロスポイントと同じとなるように設定しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の織機における製織方法によれば、対象綜絖枠が第1のパターンに従って駆動されることで、第1の設定製織サイクルでは、上下方向におけるクロスポイントがその第1の設定製織サイクルの最初の製織サイクルにおけるクロスポイントから一方の側へ向けて変化するかたちで製織が行われることとなる。
【0010】
なお、クロスポイントが変化すると、揺動駆動される筬によって緯入れされた緯糸が織前に打ち込まれる筬打ち時において、筬に対し緯糸が当たる位置も変化する。そして、その結果として、筬による緯糸の打ち込み量も変化する。但し、その打ち込み量の変化について、筬における上方の位置で打ち込まれるほど打ち込み量が大きくなり、下方の位置で打ち込まれるほど打ち込み量が小さくなる。
【0011】
したがって、第1の設定製織サイクルにおいて、前記のようにクロスポイントが変化するように製織が行われることで、第1の設定製織サイクルにおける製織が、打ち込み量の変化を伴って行われることとなる。しかも、第1のパターンがそのような打ち込み量の変化を複数回発生させるように設定されていることから、その第1のパターンに従って製織された部分(第1の設定製織サイクルで製織された部分)には、その複数回の打ち込み量の変化に伴う風合いの変化が現れることとなる。
【0012】
なお、駆動モータの駆動を制御するための動作パターンは、織柄1リピート分設定されており、その動作パターンが繰り返されることで織物が製織される。そして、対象綜絖枠に設定される別様動作パターンは、そのような第1のパターンの後に、クロスポイントを第1の設定製織サイクルの最初の製織サイクルにおけるクロスポイントへ戻すための第2のパターンを含むように設定されている。それにより、各別様動作パターンの第1の設定製織サイクルにおいて、同じ状態でのクロスポイントの変化が繰り返されることとなる。そして、そのようにして製織された織物においては、少なくとも第1の設定製織サイクルで製織された部分において、その表面での緯糸の見え方に濃淡が付いたような風合いの変化が現れる。したがって、本発明による製織方法によれば、通常の製織方法で製織された織物と比べ、特殊な風合いを有する織物を得ることができる。
【0013】
また、その本発明による製織方法において、クロスタイミングを筬打ち時点とは異なる時点としてその製織を行うことで、前記した特殊な風合い(緯糸の見え方の濃淡)がより際立った織物を得ることができる。
【0014】
詳しくは、クロスタイミングが筬打ち時点とは異なる時点である場合、経糸が開口した状態で筬打ちが行われることとなる。したがって、その場合には、開口を形成する上経糸及び下経糸の筬打ち時点での張力は、経糸が閉口した状態で筬打ちが行われる場合と比べて高くなっている。そして、その両経糸の張力は、上下方向における綜絖枠の最上昇位置と最下降位置との中間の位置(基準位置)を基準として、その基準位置からの経糸の変位量に応じたものとなる。
【0015】
その上で、クロスポイントが前記基準位置に対し上下方向における一方の側に設定されている場合には、筬打ち時点での上経糸及び下経糸の張力は、その上経糸及び下経糸のうちの前記一方の側の経糸の方が、他方の側の経糸よりも高くなる。すなわち、その場合では、筬打ち時点において両経糸が張力差を持った状態となる。しかも、その張力差は、クロスポイントの前記基準位置からの距離が大きいほど大きくなる。したがって、前記のようにクロスポイントを一方の側に変化させて製織を行う場合において、クロスタイミングを筬打ち時点とは異なる時点に定めることで、そのクロスポイントの変化毎に、筬打ち時点での上経糸と下経糸との張力差が変化するかたちで製織が行われることとなる。
【0016】
そして、そのように製織を行うことで、その一方の側に開口する経糸が徐々に強く引っ張られた状態で筬打ちされることとなるため、前記した打ち込み量の変化と相まって、前記した風合いの変化がより際立った織物が得られる。
【0017】
さらに、前記した第2のパターンについて、第2の設定製織サイクルを3以上の数の製織サイクルから成るものとした上で、その第2のパターンを(C)又は(D)のように設定するものとすれば、クロスポイントを第1の設定製織サイクルにおける最初の製織サイクルのクロスポイントへ戻すための第2の設定製織サイクルでのクロスポイントの変化が複数回に分けて行われることとなる。それにより、その第2の設定製織サイクルにおいてクロスポイントを変化させるための駆動モータの駆動を、各駆動モータに対し過度の負荷を掛けること無く行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による織機の開口装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】駆動情報が設定された設定画面の一例である。
【
図4】実施例における第1のパターンの開口曲線である。
【
図5】実施例における第2のパターンの開口曲線である。
【
図6】実施例とは別の駆動情報が設定された設定画面の一例である。
【
図7】第1のパターン及び第2のパターンの開口曲線の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、
図1~
図5に基づき、本発明による織機における製織方法の一実施形態(実施例)について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る織機の開口装置1の一例を示している。その開口装置1は、複数枚の綜絖枠2と、綜絖枠2毎に設けられた専用の駆動モータ21と、綜絖枠2と駆動モータ21とを連結する運動変換機構22とを備えている。そして、開口装置1は、各駆動モータ21の出力軸の回転が運動変換機構22によって変換され、対応する綜絖枠2を上下方向に往復駆動して経糸に開口運動を与えるように構成されている。すなわち、その開口装置1は、各綜絖枠2をその専用の駆動モータ21で独立して駆動するように構成されている。因みに、本実施例は、12枠の綜絖枠2を用いて製織が行われる例とする。
【0021】
なお、運動変換機構22は、例えばクランク機構を含むように構成されており、開口装置1は、駆動モータ21の一回転中における運動変換機構22の上死点又は下死点において、綜絖枠2が最上昇位置又は最下降位置に位置するように構成されている。その上で、そのような開口装置1において、前記上死点に対する回転位相と前記下死点に対する回転位相との間で、その角度範囲(180°)よりも小さい回転角度で反転駆動することで、綜絖枠2の上開口位置(経糸開口における上経糸の位置に応じた位置)及び下開口位置(経糸開口における下経糸の位置に応じた位置)を、運動変換機構22の機械的な構成に制限されること無く、任意の位置とすることができる。そして、本発明の開口装置1においても、駆動モータ21は、経糸に開口運動を与えるにあたりそのように反転駆動される。
【0022】
また、開口装置1は、各駆動モータ21の駆動を制御する開口制御装置3を備えている。その開口制御装置3は、記憶器31と、記憶器31に対し接続された駆動制御器32とを有している。そして、記憶器31には、製織される織物の織組織に応じた開口パターンと、予め定められたクロスポイントで経糸が交差するように各綜絖枠に対し設定される動作パターンとを含む駆動情報が綜絖枠2毎に対応させるかたちで記憶されている。その駆動情報における開口パターンについては、製織サイクル毎の綜絖枠2の位置(上口位置、下口位置)を設定したものであり、綜絖枠2毎に設定されている。そして、本実施例では、
図2に示すように平組織の開口パターンが設定されている。
【0023】
また、織機は、製織条件等を入力設定する入力設定器5を備えており、その入力設定器5は、開口制御装置3の記憶器31にも接続されている。そして、前記した開口パターン等を含む駆動情報が、その入力設定器5により入力設定されて記憶器31に記憶(設定)される。因みに、入力設定器5としては、例えば、表示器を備え、その表示器上の設定画面を操作することにより前記した開口パターン等の入力が可能なタッチパネル式のものが用いられる。
【0024】
その上で、駆動制御器32は、記憶器31に設定された駆動情報に基づいて、各駆動モータ21の駆動を制御するように構成されている。また、駆動制御器32には、織機の主軸4に設けられると共にクランク角度を検出するための主軸側エンコーダ41が接続されている。そして、駆動制御器32は、検出したクランク角度に応じたクランク角度信号が主軸側エンコーダ41から入力されることで、そのクランク角度信号に基づいて駆動モータ21の駆動を制御するように構成されている。
【0025】
さらに、駆動制御器32には、駆動モータ21毎に設けられると共に対応する駆動モータ21の出力軸の回転角度を検出する開口側エンコーダ23が接続されている。そして、駆動制御器32は、開口側エンコーダ23からの各駆動モータ21の回転角度に応じた回転角度信号が入力されることで、その回転角度信号に基づいてフィードバック制御を行うようにも構成されている。
【0026】
以上のように、開口装置1は、前記した駆動情報(開口パターン、動作パターン)に基づいて開口制御装置3が各駆動モータ21の駆動を制御することで、各綜絖枠2を往復駆動させるようになっている。そして、本発明では、少なくとも一部の綜絖枠を対象綜絖枠として定めると共に、その対象綜絖枠に対し設定される動作パターンを、経糸のクロスタイミングを含む高さ位置情報であってクロスポイントに関する情報である高さ位置情報を各製織サイクルに割り当てるかたちで設定される織柄1リピート分の動作パターンである別様動作パターンとして設定することを特徴としている。また、その別様動作パターンは、第1の設定製織サイクルから成る第1のパターンと、第1のパターンの後に設定されると共に第2の設定製織サイクルから成る第2のパターンとを含むように設定される。
【0027】
その上で、本実施例では、製織に用いられる全ての綜絖枠2(12枠)を対象綜絖枠としており、前記した別様動作パターンが12枠全てに対し設定されている。また、第1の設定製織サイクル及び第2の設定製織サイクルの製織サイクル数は、それぞれ10製織サイクルに定められているものとする。さらに、第1のパターンは、第1の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して上方に位置する(前述の(A))ようなパターンとして設定される。また、第2のパターンは、第2の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して下方に位置すると共に、クロスポイントを第1の設定製織サイクルの最初の製織サイクルにおけるクロスポイントへ向けて変化させる(前述の(C))ようなパターンとして設定される。
【0028】
図3に示すのは、入力設定器5上に表示される表示画面であって、前記した高さ位置情報に関する複数の設定項目毎の設定値を表示する設定表示画面60である。そして、図示の例の設定表示画面60では、複数の高さ位置情報の設定項目毎に設定値の表示欄が設けられている。このように、本実施例では、複数の設定項目によって高さ位置情報が構成されている。そして、その設定項目は、クロスタイミング、開口位置(上開口位置、下開口位置)、及びドエル(上ドエル、下ドエル)となっている。なお、その設定項目について、詳しくは、以下の通りである。
【0029】
クロスタイミングは、その高さ位置情報に基づいて綜絖枠2(駆動モータ21)が駆動された際の経糸が交差するタイミングである。そして、設定表示画面60の「クロスタイミング」の表示欄には、クランク角度で設定されたクロスタイミングの設定値が表示される。
【0030】
開口位置(上開口位置、下開口位置)は、その高さ位置情報に基づいて綜絖枠2(駆動モータ21)が駆動された際の経糸の最大開口時における経糸の位置に応じた綜絖枠2の位置である。より詳しくは、各綜絖枠2について、その綜絖枠2の経糸が経糸開口の上経糸となる場合における綜絖枠2の位置(上開口位置)、及び下経糸となる場合における綜絖枠2の位置(下開口位置)が、それぞれ開口位置として設定される。
【0031】
なお、その設定について、本実施例では、前記最上昇位置及び前記最下降位置からの距離(mm)で設定される。すなわち、上開口位置については前記最上昇位置からの距離として、下開口位置については前記最下降位置からの距離として、その設定値が設定される。例えば、その設定値が5mmの場合、その設定値は、上開口位置(下開口位置)が前記最上昇位置(前記最下降位置)から5mm低い(高い)位置に設定されていることを示す。そして、設定表示画面60における「上開口位置」、「下開口位置」の表示欄には、そのような設定値が表示される。
【0032】
ドエル(上ドエル、下ドエル)は、綜絖枠2を最大開口位置(上開口位置、下開口位置)で停留させる期間である。但し、本実施例では、そのドエルの設定値は、その停留する期間がクランク角度範囲で設定される。例えば、上ドエル(下ドエル)について、その設定値がn°の場合には、綜絖枠2が上開口位置(下開口位置)に達してから下降(上昇)を開始するまでの期間(クランク角度範囲)がn°であることを示している。そして、設定表示画面60における「上ドエル」、「下ドエル」の表示欄には、そのような設定値が表示される。
【0033】
なお、その設定値に基づく綜絖枠2の駆動は、前記したクロスタイミングに対しクランク角度180°前の時点を基準として行われる。具体的には、クロスタイミングの設定値が310°でドエルの設定値が80°である場合には、綜絖枠2の駆動は、クロスタイミングの180°前の130°を基準として、基準から40°前の90°で綜絖枠2を上開口位置(下開口位置)に到達させると共に、基準から40°後の170°で綜絖枠2を下降(上昇)させ始めるようなかたちで行われる。
【0034】
また、本実施例では、各高さ位置情報を色で区別できるようになっており、設定表示画面60における設定No.を示す表示(数字)の横に、その高さ位置情報に割り当てられた色を示す表示部分が設けられている。そして、図示の例では、その色は、高さ位置情報の設定に応じて濃淡の度合いを異ならせたものとなっている。
【0035】
また、
図2に示すのは、入力設定器5上に表示される設定画面であって、綜絖枠2を駆動するための駆動情報を設定するパターン設定画面50である。なお、その駆動情報は、前記した開口パターンと、各製織サイクルに高さ位置情報を割り当てるかたちで設定される織柄1リピート分の動作パターン(別様動作パターン)とを含むものである。また、そのパターン設定画面50は、その画面左側に示されているような、駆動情報を表示する設定表示欄51を含んでいる。そして、その設定表示欄51は、周知の開口パターンの設定画面と同じく、マス枠52が行列状に配置されると共に、そのマス枠52の行が製織ステップ(製織サイクル)に対応し、列が綜絖枠2に対応する表示欄となっている。したがって、その設定表示欄51におけるマス枠52の左側には「ステップNo.」を示す数字が表示され、上段には綜絖枠2の「枠No.」を示す数字が表示されている。
【0036】
なお、図示の例では、設定表示欄51は、ステップNo.1~20のマス枠52が表示されている。但し、それは、図示の例における設定表示欄51の表示範囲が20製織ステップ分であるためであり、マス枠52の行数は、20製織ステップ分よりも多く設けられている。そして、ステップNo.21以降のマス枠52は、設定表示欄51内においてその表示をスクロールさせることで表示される。
【0037】
また、開口パターンの設定画面では、一般的には、各マス枠52の表示色により、各製織ステップにおいて枠位置が上口位置に設定されるか下口位置に設定されるかが示されるようになっている。但し、図示の例では、前記のように高さ位置情報が表示色で区別されるようにされることから、枠位置の表示については、マス枠52内の表示で区別するようになっている。具体的には、上口位置に設定されるマス枠52は、通常の単枠で示され、下口位置に設定されるマス枠52は、二重の枠で示される。そして、図示の例では、枠No.1~12にその開口パターンが設定されており、12枠の綜絖枠2を用いて製織が行われることを示している。その上で、本実施例では、前記のように平組織の開口パターンが設定されることから、その設定状態は図示のようなものとなっている。
【0038】
また、入力設定器5は、パターン設定画面50における設定表示欄51上で、タッチ操作等により、複数のマス枠52を含む任意の範囲を指定できるように構成されている。さらに、パターン設定画面50は、前記のような設定表示欄51とは別に、画面右側に配置された設定釦53を含んでいる。なお、その設定釦53は、指定されたマス枠52の範囲の各製織ステップに対して割り当てる高さ位置情報を作成するための別ウィンドウ(図示略)を画面上に表示させるための釦である。そして、入力設定器5は、その別ウィンドウで入力された情報に基づいて、割り当てる高さ位置情報を自動で作成するように構成されている。
【0039】
その高さ位置情報の作成及び割り当てについて、詳しくは以下の通りである。なお、本実施例では、12枠全ての綜絖枠2を対象綜絖枠とするものとし、前記した別様動作パターンが12枠全てに対し設定されるものとする。また、その動作パターンに含まれる第1のパターン及び第2のパターンについて、前述のように両パターンの設定製織サイクルが10製織サイクル(10製織ステップ)であり、最初の10製織ステップ(ステップNo.1~10)に対し第1のパターンが設定されると共に、続く10製織ステップ(ステップNo.11~20)に対し第2のパターンが設定されるものとする。すなわち、本実施例における動作パターンは、第1のパターン及び第2のパターンのみで構成され、全体で(織柄1リピートが)20製織ステップから成っている。そして、その動作パターンの設定にあたっては、先ずは第1のパターンの設定が行われ、次いで、第2のパターンの設定が行われる。
【0040】
その第1のパターンの設定においては、先ずは、設定表示欄51上でのタッチ操作等により、設定対象の綜絖枠2に対応する枠No.1~12について、10製織ステップに対応するステップNo.1~10の範囲のマス枠52を指定した状態とする。そして、その状態で設定釦53をタッチ操作すると、パターン設定画面50上に前記のような別ウィンドウが表示される。
【0041】
なお、その別ウィンドウでは、例えば、指定された範囲の最初の製織ステップ及び最後の製織ステップについて、その開口量とクロスポイントとを設定するようになっているものとする。また、その場合において、開口量については、例えば、各綜絖枠2が前記最上昇位置又は前記最下降位置に位置するときの開口量である最大開口量を基準(100%)として、その最大開口量に対する割合(%)で設定される。さらに、クロスポイントについては、例えば、上下方向における前記最上昇位置と前記最下降位置との中間の位置(基準位置)を基準として、その基準位置からの距離が±Nmm(プラスが基準位置よりも上側、マイナスが基準位置よりも下側を示す)で設定される。
【0042】
それらの情報(開口量、クロスポイント)が前記別ウィンドウで設定されると、その1ステップ目及び10ステップ目に対する開口量及びクロスポイントの設定値、並びに第1のパターンの製織ステップ数(第1の設定製織サイクル数)に基づき、10製織ステップ分(設定No.1~10)の高さ位置情報が、入力設定器5において自動的に作成される。
【0043】
なお、本実施例は、製織ステップ毎の上開口位置及び下開口位置を変化させることでクロスポイントの変化を実現する例とする。そこで、入力設定器5では、前記のように設定された情報に基づき、各製織ステップにおける上開口位置及び下開口位置の設定値が求められる。また、前述した高さ位置情報の設定項目であるクロスタイミング及びドエルについては、入力設定器5における別の設定画面でその設定値が入力されるようになっており、その設定値が用いられる。因みに、この例では、クロスタイミングの設定値が310°とされ、ドエルの設定値が80°とされている。
【0044】
そして、前記のように求められた上開口位置及び下開口位置の設定値と、予め設定されたクロスタイミング及びドエルの設定値とから、第1のパターンの10製織ステップ分についての高さ位置情報が作成される。そして、そのように作成された高さ位置情報は、入力設定器5において、
図3に示すような設定表示画面60で表示されるようになっている。なお、図示の例においては、各高さ位置情報が設定No.1~10として表示されているが、この設定No.1~10が、その順に製織ステップ(ステップNo.)1~10に対応している。その上で、そのように作成された設定No.1~10の高さ位置情報が、その作成に伴い、入力設定器5において各製織ステップに対し自動的に割り当てられる。
【0045】
因みに、本実施例の第1のパターンは、前述のように第1の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して上方に位置するようなパターンである。したがって、高さ位置情報における各製織ステップの「上開口位置」及び「下開口位置」の設定値については、設定表示画面60に表示されているように、上開口位置については同じ値ずつ徐々に小さくなり、下開口位置については同じ値ずつ徐々に大きくなるような設定値となっている。
【0046】
この例における「上開口位置」及び「下開口位置」の設定値の算出について、詳しくは、指定された範囲の最初の製織ステップ及び最後の製織ステップにおける開口量とクロスポイントの設定値に基づいて、先ず、最初の製織ステップ及び最後の製織ステップにおける上開口位置及び下開口位置の設定値が算出される。次いで、最初の製織ステップと最後の製織ステップとの間の製織ステップ(ステップNo.)2~9での設定値が、その製織ステップ数に応じて、最初の製織ステップの設定値から最後の製織ステップの設定値まで均等に変化した値となるように算出される。そして、図示の例では、上開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ小さくなっており、下開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ大きくなっている。
【0047】
このように、第1のパターンがその高さ位置情報の作成及び割り当てによって設定されると、それに次いで、第2のパターンの設定が行われる。但し、その設定は、基本的には第1のパターンの設定と同じであり、図示については省略する。
【0048】
その第2のパターンの設定においては、第1のパターンの設定と同様に、先ずは、設定表示欄51上でのタッチ操作等により、枠No.1~12について、第1の設定製織サイクル(10製織ステップ)に続く第2の設定製織サイクル(10製織ステップ)に対応するステップNo.11~20の範囲のマス枠52を指定した状態とする。そして、設定釦53をタッチ操作して別ウィンドウを表示させ、第2の設定製織サイクルにおける1ステップ目(ステップNo.11)及び10ステップ目(ステップNo.20)に対する開口量及びクロスポイントを設定する。
【0049】
なお、第2のパターンは、前述のように、クロスポイントを第1の設定製織サイクルの最初の製織サイクルにおけるクロスポイントへ向けて変化させるように設定されるパターンである。したがって、前記の別ウィンドウにおいて設定されるクロスポイントの設定値は、第2の設定製織サイクルの1ステップ目に対するクロスポイントについては第1の設定製織サイクルの10ステップ目に対するクロスポイントと同じとされ、第2の設定製織サイクルの10ステップ目に対するクロスポイントについては第1の設定製織サイクルの1ステップ目に対するクロスポイントと同じとされる。また、開口量については、第1のパターンの開口量と同じとされる。
【0050】
その上で、本実施例における第2のパターンは、第2の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して下方に位置するように設定されるパターンである。そこで、入力設定器5においては、その条件と、前記の別ウィンドウでの設定値及び第2の設定製織サイクル数に基づき、第2のパターンの10製織ステップ分の高さ位置情報が自動的に作成される。そして、そのように求められた高さ位置情報は、この例では、第1のパターンの10製織ステップ分の高さ位置情報を反転させた(設定No.1~10を逆順とした)ものとなる。すなわち、第2のパターンの高さ位置情報は、上開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ大きいものとなり、下開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ小さいものとなる。その上で、そのように作成された高さ位置情報が、その作成に伴い、入力設定器5において各製織ステップ(ステップNo.11~20)に対し自動的に割り当てられる。
【0051】
このように第1のパターン及び第2のパターンが設定されることで、その第1のパターン及び第2のパターンから成る20製織ステップの動作パターン(別様動作パターン)が設定された状態となり、その20製織ステップから成る動作パターンが織柄1リピート分の動作パターンとなる。さらに、そのように織柄1リピート分の動作パターンが設定される結果として、パターン設定画面50における設定表示欄51は、前述のように各高さ位置情報に割り当てられる表示色が異なっている(濃淡の度合いが異なっている)ことから、ステップNo.1~20の範囲において、
図2のように表示されるかたちとなる。それにより、その動作パターンの設定状態を作業者が容易に把握できるものとなっている。
【0052】
そして、そのように設定された動作パターンに基づいて各駆動モータ21の駆動が制御されることで、対応する綜絖枠2がそれぞれ駆動されることとなる。なお、本実施例では、綜絖枠2が反対側の開口位置へ向けて変位し始める加速期間とその開口位置へ到達する前の減速期間とを除く期間の変位速度は、一定の速度であるものとする。また、本実施例では、綜絖枠2を上開口位置へ向けて変位させる際の変位速度(上昇速度)は、各製織ステップにおいて同じ速度であるものとする。同様に、綜絖枠2を下開口位置へ向けて変位させる際の変位速度(下降速度)も、各製織ステップにおいて同じ速度であるものとする。但し、前述のように上ドエル、下ドエルの設定値が同じであって各製織サイクルにおいて綜絖枠2が上開口位置、下開口位置に達するタイミングが同じであること、及び連続する製織サイクルに亘る上開口位置から下開口位置への変位量と下開口位置から上開口位置への変位量とが異なることから、前記上昇速度と前記下降速度とは異なる(第1のパターンでは前記上昇速度が大きく、第2のパターンでは前記下降速度が大きい)ものとなる。
【0053】
それにより、各綜絖枠2は、
図4、5の開口曲線に示すようなかたちで動作するように駆動されることとなる。なお、
図4は、第1のパターンに基づいて各駆動モータ21が駆動された時の綜絖枠2の開口曲線を示しており、
図5は、第2のパターンに基づいて各駆動モータ21が駆動された時の綜絖枠2の開口曲線を示している。その綜絖枠2の動作について、より詳しくは以下の通りである。
【0054】
先ず、動作パターンの1ステップ目では、第1のパターンのステップNo.1に設定された高さ位置情報における上開口位置が13mm、下開口位置が3mmであることから、開口パターンにおいて1ステップ目の綜絖枠2の位置が上開口位置と設定された綜絖枠2が、クランク角度90°で、前記最上昇位置に対して13mm低い位置に達するように駆動される。同様に、1ステップ目の綜絖枠2の位置が下開口位置と設定された綜絖枠2は、クランク角度90°で、前記最下降位置に対して3mm高い位置に達するように駆動される。
【0055】
そして、各綜絖枠2は、前記した上開口位置又は下開口位置に達してから、ドエルとして設定されたクランク角度範囲80°分だけその開口位置に停留した後、そのドエルの終了時点であるクランク角度170°で、反対側の開口位置(開口パターン及び高さ位置情報に基づく開口位置)へ向けて変位するように駆動される。
【0056】
なお、1ステップ目で上開口位置に位置する綜絖枠2は、2ステップ目に設定された下開口位置へ向けて変位し、前記のクランク角度170°と次の製織ステップのクランク角度90°との中間のクランク角度であるクロスタイミング310°で、その1ステップ目の上開口位置と2ステップ目の下開口位置との中間の位置を通過する。同様に、1ステップ目で下開口位置に位置する綜絖枠2は、クロスタイミング310°で、その1ステップ目の下開口位置と2ステップ目の上開口位置との中間の位置を通過する。そして、その中間の位置で、上経糸と下経糸とが交差する(全ての経糸が揃う)。また、1ステップ目及び2ステップ目のいずれも、前記基準位置からその開口位置までの距離が、下開口位置の方が上開口位置よりも大きいため、その経糸が交差する位置(クロスポイント)は、前記基準位置よりも下方となる。
【0057】
そして、2ステップ目以降についても、1ステップ目と同様に、各製織ステップに設定された開口パターン及び高さ位置情報に基づいて各綜絖枠2が駆動される。なお、第1のパターンでは、前述のように、ステップNo.1~10に設定された高さ位置情報における上開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ小さくなり、下開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ大きくなっている。それにより、第1の設定製織サイクルにおけるクロスポイントは、製織サイクル毎に1mmずつ上方へ変位することとなる。因みに、この例では、6ステップ目の高さ位置情報における上開口位置と下開口位置との設定値が同じであり、上下方向におけるクロスポイントが、6ステップ目において前記基準位置に略一致した位置となる。したがって、クロスポイントは、5ステップ目までは前記基準位置よりも下方で変位し、7ステップ目~10ステップ目では前記基準位置よりも上方で変位する。
【0058】
また、第2のパターンが設定される第2の設定製織サイクルにおいても、各製織ステップにおいて綜絖枠2が前記と同様に駆動される。但し、第2のパターンが設定されたステップNo.11~20の上開口位置及び下開口位置の設定値は、前述のように、上開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ大きくなり、下開口位置の設定値が製織ステップ毎に1mmずつ小さくなっている。それにより、第2の設定製織サイクルにおけるクロスポイントは、製織サイクル毎に1mmずつ下方へ変位することとなる。
【0059】
そして、織柄1リピート分の動作パターンの最後の製織ステップである20ステップ目に設定された高さ位置情報における上開口位置及び下開口位置の設定値が最初の製織ステップである1ステップ目の上開口位置及び下開口位置の設定値と同じであることから、20ステップ目のクロスポイントは、1ステップ目のクロスポイントと同じ位置となる。すなわち、第1の設定製織サイクル(第1のパターン)の最初の1ステップ目の位置から上方へ変位したクロスポイントが、第2の設定製織サイクル(第2のパターン)の最後の20ステップ目において最初の位置に戻されることとなる。因みに、第2の設定製織サイクルでは、クロスポイントは、14ステップ目までは前記基準位置よりも上方で変位し、15ステップ目~20ステップ目では前記基準位置よりも下方で変位する。
【0060】
そして、製織においては、そのような第1のパターン及び第2のパターンから成る織柄1リピート分の動作パターン(別様動作パターン)に従った各綜絖枠2の駆動が、第1の設定製織サイクル及び第2の設定製織サイクルから成る20製織ステップ毎に繰り返される。
【0061】
以上で説明したような製織方法によれば、前記のように設定された第1のパターン及び第2のパターンから成る別様動作パターンに従って各駆動モータ21の駆動が制御されて製織が行われる結果として、その製織においては、特殊な風合いを有する織物が得られることとなる。より詳しくは、クロスポイントが変化すると、筬打ち時において筬に対し緯糸が当たる位置も変化する。さらに、その位置が変化すると、筬による緯糸の打ち込み量も変化する。但し、その打ち込み量については、筬打ち時において緯糸が当たる位置が筬における上方であるほど大きくなり、下方であるほど小さくなる。
【0062】
その上で、前述のような本実施例の製織方法によれば、第1のパターンで製織される1ステップ目~10ステップ目においては、製織ステップ毎にクロスポイントが徐々に上方へ変化するように製織が行われることから、その緯糸の打ち込み量も製織ステップ毎に徐々に大きくなる。それにより、第1のパターンに従って製織された部分では、その打ち込み量の変化に伴って、製織された織物の表面での緯糸の見え方が段々濃くなるような風合いの変化が現れる。
【0063】
また、第2のパターンは、第1のパターンで変化したクロスポイントを最初の製織ステップの位置へ戻すためのパターンであるが、本実施例では、その第2のパターンを成す第2の設定製織サイクル数が10製織ステップであり、且つ、その10製織ステップに亘って製織ステップ毎にクロスポイントを最初の製織ステップの位置へ向けて変化させるものとなっている。したがって、第2のパターンで製織される11ステップ目~20ステップ目の部分においても、その10製織ステップに亘って製織ステップ毎に緯糸の打ち込み量が変化するように製織が行われる。そして、それは打ち込み量が徐々に小さくなるように変化するものであることから、第2のパターンに従って製織された部分の織物表面では、緯糸の見え方が段々淡くなるような風合いの変化が現れる。
【0064】
したがって、そのような第1のパターン及び第2のパターンから成る別様動作パターンに基づく製織方法によれば、通常の製織方法で製織された織物と比べて、その表面に特殊な風合いを有する織物を得ることができる。しかも、クロスポイントを最初の製織ステップの位置へ戻す第2のパターンが前記のように10製織ステップに亘って徐々にクロスポイントを変化させるように設定されていることから、その第2のパターンにおいてクロスポイントを変化させるための駆動モータ21の駆動を、各駆動モータ21に対し過度の負荷を掛けること無く行わせることができる。
【0065】
なお、本発明の製織方法については、以上で説明した一実施形態(前記実施例)に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)でも実施が可能である。
【0066】
(1)別様動作パターンについて、前記実施例の別様動作パターンは、クロスポイントを上方へ変化させるための第1のパターンと、クロスポイントを下方へ変化させて最初の製織ステップの位置へ戻すための第2のパターンとから成っている。すなわち、前記実施例の別様動作パターンは、クロスポイントを上方へ変化させた後で元の位置へと戻すようなパターンとして設定されている。しかし、本発明における別様動作パターンは、その第1のパターンがクロスポイントを下方へ変位させるようなパターンとして設定され、第2のパターンがクロスポイントを上方へ変位させて最初の製織ステップの位置へ戻すようなパターンとして設定されたものであっても良い。言い換えれば、別様動作パターンは、クロスポイントを下方へ変化させた後で元の位置へと戻すようなパターンとして設定されても良い。
【0067】
(2)第1のパターンについて、前記実施例の第1のパターンは、第1の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して一方の側に位置する(前述の(A))ようなパターンとして設定されている。すなわち、前記実施例の第1のパターンは、製織サイクル(製織ステップ)毎に(連続的に)クロスポイントを変化させるようなパターンとなっている。しかし、本発明において、第1のパターンは、前述の(A)のようなパターンには限られず、前述の(B)のようなパターンとして設定されても良い。
【0068】
詳しくは、第1のパターンは、第1の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対し上下方向における一方の側となり、残りの製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントと同じとなる(前述の(B))ようなパターンとして設定されても良い。すなわち、第1のパターンは、第1の設定製織サイクルのうちの一部(2以上)の製織ステップでのみクロスポイントを変化させ、それ以外の製織ステップではクロスポイントを変化させないようなパターンとして設定されても良い。
【0069】
さらに、前記実施例の第1のパターンは、10製織サイクルから成るものとしたが、本発明における第1のパターンは、3以上の製織サイクルから成るものであれば良い。詳しくは、本発明における第1のパターンは、第1の設定製織サイクルにおいて、クロスポイントを上下方向における一方の側へ向けて複数回変化させる(前述の(A)又は(B))ようなパターンである。したがって、その第1のパターンは、その複数回のクロスポイントの変化を実現するために、少なくとも3製織サイクルから成るものとされる。
【0070】
(3)クロスポイントを最初の製織ステップの位置へ戻すための第2のパターンについて、前記実施例の第2のパターンは、複数回に亘ってクロスポイントを変化させるようなパターンとなっている。その上で、その第2のパターンは、第2の設定製織サイクルにおける各製織サイクルのクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対して下方に位置すると共に、クロスポイントを第1の設定製織サイクルの最初の製織サイクルにおけるクロスポイントへ向けて変化させる(前述の(C))ようなパターンとなっている。すなわち、その第2のパターンも、前記実施例の第1のパターンと同様に、製織ステップ毎にクロスポイントを変化させるようなパターンとなっている。しかし、本発明において、第2のパターンは、前述の(C)のようなパターンには限られず、前述の(D)のようなパターンとして設定されても良い。
【0071】
詳しくは、第2のパターンは、第2の設定製織サイクルにおける全数よりも少ない数の複数の製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントに対し一方の側とは反対側となり、残りの製織サイクルにおけるクロスポイントが先行する製織サイクルのクロスポイントと同じとなる(前述の(D))のようなパターンとして設定されても良い。すなわち、第2のパターンは、第2の設定製織サイクルのうちの一部(2以上)の製織ステップでのみクロスポイントを変化させ、それ以外の製織ステップではクロスポイントを変化させないようなパターンとして設定されても良い。
【0072】
また、前記実施例の第2のパターンは、第1のパターンの第1の設定製織サイクル数と同じ10製織サイクルから成るものとしたが、それには限られず、第1の設定製織サイクル数とは異なる数の製織サイクルから成るものとしても良い。但し、第2のパターンは、その第2の設定製織サイクルにおいて各駆動モータ21に掛かる負荷を考慮すると、前記実施例のように複数の製織ステップに亘ってクロスポイントを変化させるように設定されているのが好ましい。しかし、その各駆動モータ21に掛かる負荷が許容できるようなかたちで開口装置が構成されている場合(例えば、容量が大きい駆動モータが採用されているような場合)には、第2のパターンは、クロスポイントを1製織ステップで最初のクロスポイントまで戻すようなパターンとして設定されても良い。
【0073】
(4)対象綜絖枠に設定される別様動作パターンについて、前記実施例では、製織に用いられる全ての綜絖枠2を対象綜絖枠とした上で、その全ての対象綜絖枠に対し1つ(1種類)の別様動作パターンが共通のパターンとして設定されている。しかし、本発明においては、それには限られず、第1のパターン及び/又は第2のパターンの設定が異なるような複数種類の別様動作パターンが、対象綜絖枠のいずれかに設定されるようにしても良い。例えば、
図6に示すように、枠No.1~8にはクロスポイントを上方へ変化させた後で元の位置へと戻すような別様動作パターンが設定され、枠No.9~16にはクロスポイントを下方へ変化させた後で元の位置へと戻すような別様動作パターンが設定されるようにしても良い。
【0074】
また、本発明において、別様動作パターンが設定される対象綜絖枠は、前記実施例のように製織に用いられる綜絖枠2の全てであるのには限られない。すなわち、一部の綜絖枠のみを対象綜絖枠とし、その他の綜絖枠を通常の動作パターン(クロスポイントを変化させないパターン)で駆動される綜絖枠としても良い。
【0075】
(5)別様動作パターンでのクロスポイントの変化について、前記実施例では、対象綜絖枠の前記上昇速度及び前記下降速度を、各製織ステップにおいて同じ速度として定めている。その上で、前記した別ウィンドウに設定される最初の製織ステップのクロスポイントから最後の製織ステップのクロスポイントへの変化を実現させるために、上開口位置及び下開口位置が製織ステップ毎に変化されるものとなっている。しかし、本発明において、そのクロスポイントの変化を実現する上では、そのように上開口位置及び下開口位置を変化させるのには限られず、各製織ステップの上開口位置及び下開口位置は同じとし、各製織ステップにおける綜絖枠の変位速度を変化させるようにしても良い。
【0076】
詳しくは、各製織ステップでの上開口位置及び下開口位置が同じであって、前記実施例と同じく、ドエル及びクロスタイミングが各製織ステップで同じであることを前提とする場合では、綜絖枠の変位を開始させるクランク角度(ドエルの終了時点)からクロスタイミングまでの変位速度について、例えば、下開口位置からの綜絖枠の変位速度を製織ステップ毎に徐々に速くすると共に上開口位置からの綜絖枠の変位速度を製織ステップ毎に徐々に遅くすると、クロスポイントが製織ステップ毎に徐々に上昇することとなる。なお、上開口位置及び下開口位置が同じであって、同じクロスタイミングでのクロスポイントが徐々に上昇すると、そのクロスタイミングから綜絖枠が上開口位置に達する時点までの前記変位速度は当然ながら遅くなり、下開口位置に達する時点までの前記変位速度は当然ながら速くなる。
【0077】
そこで、前記の前提の場合においては、各製織ステップに割り当てられる高さ位置情報には、その変化されるクロスポイントの設定値(例えば、前記基準位置からの距離が±Nmmで設定される)が含まれるものとなる。その上で、開口制御装置3が、高さ位置情報に設定された各製織ステップでのクロスポイントに応じて、前記のようなかたちで綜絖枠を変位させる際のクロスタイミングまでの変位速度及びクロスタイミングからの変位速度を求め、その変位速度に基づいて駆動モータ21の制御を行うようにすれば良い。そして、その場合には、綜絖枠は、
図7に例示するようなかたちで変位することとなり、それによってクロスポイントが図示のように変化することとなる。
【0078】
(6)クロスタイミングについて、前記実施例のクロスタイミングは、筬打ち時点とは異なる時点(クランク角度310°)に設定されている。しかし、本発明の製織方法においては、クロスタイミングは、従来から行われている製織におけるクロスタイミングと同様に、製織に対し適切であればどのようなタイミングであっても良く、例えば、筬打ち時点と同じ時点(クランク角度360°)に設定されても良い。そして、そのクロスタイミングがどのようなタイミングであっても、前記のようなかたちでクロスポイントを変化させて打ち込み量を変化させることで、織物表面に風合いの変化が現れる。
【0079】
但し、本発明においては、前記実施例がそうであるように、クロスタイミングを筬打ち時点と異なる時点に設定することで、本発明による特殊な風合いを有する織物が製織されるようにするという効果を、より顕著なものとすることができる。より詳しくは、クロスタイミングを筬打ち時点とは異なる時点とした場合、経糸が開口した状態で筬打ちが行われるため、その開口を形成する上経糸及び下経糸の筬打ち時点での張力は、経糸が閉口した状態で筬打ちが行われる場合と比べて高くなる。また、その張力は、前記基準位置からの経糸の変位量に応じたものとなる。しかも、クロスポイントが、例えば前記基準位置よりも上方である場合は、筬打ち時点での上経糸の張力が下経糸の張力よりも高い状態となる。そして、そのクロスポイントを徐々に上方へ変化させるようにして製織が行われる場合は、上経糸と下経糸との張力差も徐々に大きなものとなる。
【0080】
したがって、そのようにクロスタイミングを筬打ち時点とは異なる時点とした場合は、上経糸が徐々に強く引っ張られた状態で筬打ちされることとなるため、前記した緯糸の打ち込み量の変化と相まって前記した風合いの変化がより際立った織物が得られる。すなわち、本発明の製織方法においては、特殊な風合いを有する織物が製織されるようにするというその目的を達成する上で、クロスタイミングを筬打ち時点とは異なる時点とするのがより好ましい。
【0081】
(7)高さ位置情報について、前記実施例の高さ位置情報は、クロスタイミング、開口位置(上開口位置、下開口位置)、及びドエル(上ドエル、下ドエル)で構成されている。その上で、その開口位置の設定値については、上開口位置の設定値が前記最上昇位置からの距離(mm)として設定され、下開口位置の設定値が前記最下降位置からの距離(mm)として設定されている。しかし、本発明において、その開口位置の設定値は、そのように設定されるのには限られず、前記基準位置を基準としてその前記基準位置からの距離(mm)として設定されても良い。さらに、本発明においては、前記したような基準からの距離の長さ自体を設定値とするのにも限られず、例えば、前記基準位置から前記最上昇位置(前記最下降位置)までの距離を基準(100%)としてその基準に対する割合(%)を設定値とするものでも良い。
【0082】
また、高さ位置情報は、クロスタイミング、開口位置、及びドエルで構成されるのには限られず、前記したようなクロスポイントを含んでいても良い。また、そのクロスポイントの設定値は、前記のように前記基準位置からの距離±Nmmとして設定されるのにも限られず、前記最上昇位置(又は前記最下降位置)や設定された開口位置からの距離Nmmとして設定されても良い。さらに、クロスポイントの設定値は、そのように距離の長さ自体とするのにも限られず、例えば、設定された開口位置から前記基準位置までの距離を基準(100%)としてその基準に対する割合(%)として設定されても良い。因みに、前記実施例のように別ウィンドウでクロスポイントを設定する場合においても、そのクロスポイントの設定値は、前記したような割合(%)として設定されても良い。
【0083】
また、前記実施例では、設定表示欄51上で選択した製織ステップ分の高さ位置情報が、別ウィンドウでの開口量及びクロスポイントの設定によって、入力設定器5において自動的に作成されるものとなっている。しかし、本発明において、高さ位置情報は、そのように自動的に作成されるのではなく、製織ステップ毎の高さ位置情報(開口位置、クロスポイント等)を別で求め、それが作業者によって入力設定されるようにしても良い。
【0084】
(8)製織ステップ毎の開口量について、前記においては、開口量は、全ての製織ステップで同じ量となっているが、製織に対し適切であれば全ての製織ステップで同じでなくても良い。また、前記実施例のように別ウィンドウで開口量が設定される場合において、その開口量の設定値は、最大開口量を基準(100%)としてその最大開口量に対する割合(%)として設定されるのには限られず、前記基準位置を中心とした上下方向の大きさ(Nmm)で設定されても良い。
【0085】
(9)開口パターンについて、前記実施例では、
図2に示すような平組織の開口パターンが設定されている。しかし、本発明の製織方法において、開口パターンは、それには限られず、別の織組織(綾組織や朱子組織等)の開口パターンであっても良い。
【0086】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 開口装置
2 綜絖枠
21 駆動モータ
22 運動変換機構
23 開口側エンコーダ
3 開口制御装置
31 記憶器
32 駆動制御器
4 主軸
41 主軸側エンコーダ
50 パターン設定画面
51 設定表示欄
52 マス枠
53 設定釦
60 設定表示画面