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特許7553417情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240910BHJP
【FI】
G06Q50/40
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021161115
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050816
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】太田 有人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 雄樹
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071575(JP,A)
【文献】特開2015-123778(JP,A)
【文献】特開2017-105274(JP,A)
【文献】特開2018-172053(JP,A)
【文献】特開2014-210530(JP,A)
【文献】特許第6797436(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画されていた移動体の第1の運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、当該第1の運行スケジュールに対応する更新後の第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する設定手段と、
停留場に移動体が到着する第3の運行スケジュールと、前記停留場を移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうちの、当該第3の運行スケジュールにおいて移動体が前記停留場に到着するタイミングよりも後に当該停留場を移動体が出発する候補と、に対して共通の移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる割当手段と、
前記運行予定の一連の移動体それぞれについての前記第2の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を所定の出力先に出力させる出力制御手段と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記第1の運行スケジュールのうち遅延の発生が予測される区間及び期間により規定される規制エリアに含まれない部分的な運行スケジュールを基準として、当該第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第3の運行スケジュールは、前記停留場に移動体が到着する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうちのいずれかの候補であり、
前記割当手段は、前記停留場から移動体が到着する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうちのいずれかの第1の候補と、前記停留場から移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうちの、当該第1の候補において移動体が前記停留場に到着するタイミングよりも後に当該停留場を移動体が出発する第2の候補と、に対して共通の移動体を割り当てる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第3の運行スケジュールは、前記第1の運行スケジュールのうちの、前記規制エリアに含まれない前記部分的な運行スケジュールであり、
前記割当手段は、前記部分的な運行スケジュールと、前記停留場を移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち、当該部分的な運行スケジュールにおいて移動体が前記停留場に到着するタイミングよりも後に、当該停留場を移動体が出発する候補と、に対して共通の移動体を割り当てる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記設定手段は、少なくとも一部の前記第1の運行スケジュールに対して、前記規制エリアよりも前に位置する停留場において移動体の折り返し運行が行われるように、当該第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記複数の候補のうち、一部の候補を最大遅延時間の推定結果に基づき設定し、他の候補を当該最大遅延時間よりも短い遅延時間に基づき設定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記割当手段は、前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち、移動体の運行が制限された運行制限期間に少なくとも一部の期間が含まれる候補を、移動体の割り当ての対象から除外する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記割当手段は、移動体への割り当ての対象から除外した候補に替えて、前記運行制限期間後に設定された他の候補を移動体に割り当てる、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記設定手段は、
更新前の運行スケジュールに対して第1の粒度で設定された互いに異なる複数の遅延時間を適用することで更新後の運行スケジュールの複数の候補を設定し、
設定された運行スケジュールの複数の候補のうちの一部の候補を対象として、前記第1の粒度よりも細かい第2の粒度で設定された互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、新たに更新後の運行スケジュールの複数の候補を設定する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記割当手段は、前記第1の運行スケジュールごとに設定された前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち多くとも1つの候補に対して移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる、
請求項1~9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記割当手段は、運行予定の一連の移動体それぞれの運行が停止している期間に応じたコストの総和がより小さくなるように、当該一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記割当手段は、
i番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのj番目の候補を運行するか否かをx(i,j)∈{0,1}で表し、
折り返しが行われる停留場に到着するfi番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのfj番目の候補と、当該停留場から出発するti番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのtj番目の候補と、に対して共通の移動体を割り当てるか否かをy(fi,fj,ti,tj)∈{0,1}で表し、
前記fj番目の候補と前記tj番目の候補とに対して共通の移動体を割り当てる場合における当該移動体の運行が停止している期間に応じたコストをCost(fi,fj,ti,tj)で表した場合に、
以下に示す条件式を満たすように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる、
請求項8に記載の情報処理装置。
【数1】
【請求項13】
前記割当手段は、
運行予定の一連の移動体それぞれの運行が停止している期間に基づき推定される第1のコストと、
少なくとも一部の前記第1の運行スケジュールについて運行を休止した場合における想定輸送旅客数に基づき推定される第2のコストと、
一連の移動体それぞれの運行が終了した後における、各移動体が運行される経路の各端部に位置する複数の停留場それぞれについて、滞泊が予定していた移動体の数と、実際に滞泊する移動体の数と、の差に基づき推定される第3のコストと、
の和がより小さくなるように、一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記割当手段は、
i番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのj番目の候補を運行するか否かをx(i,j)∈{0,1}で表し、
折り返しが行われる停留場に到着するfi番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのfj番目の候補と、当該停留場から出発するti番目の前記第1の運行スケジュールに対応する前記第2の運行スケジュールのtj番目の候補と、に対して共通の移動体を割り当てるか否かをy(fi,fj,ti,tj)∈{0,1}で表し、
前記fj番目の候補と前記tj番目の候補とに対して共通の移動体を割り当てる場合における当該移動体の運行が停止している期間に応じたコストをCost(fi,fj,ti,tj)で表し、
i番目の前記第1の運行スケジュールについて移動体の運行を休止した場合における想定輸送旅客数に基づき推定されるコストをCT(i)で表し、
一連の運行が終了した後に停留場sに終着する運行スケジュールの数をStay(s)で表し、
停留場sにおける、滞泊が予定していた移動体の数と、実際に滞泊する移動体の数と、の差に基づき推定されるコストをCS(s)で表した場合に、
以下に示す条件式を満たすように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる、
請求項13に記載の情報処理装置。
【数2】
【請求項15】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
計画されていた移動体の第1の運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、当該第1の運行スケジュールに対応する更新後の第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する設定ステップと、
停留場から移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち少なくともいずれかの第1の候補と、前記停留場に移動体が到着する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち、当該第1の候補において移動体が前記停留場を出発するタイミングよりも前に、当該停留場に移動体が到着する第2の候補と、に対して共通の移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる割当ステップと、
前記運行予定の一連の移動体それぞれについての前記第2の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を所定の出力先に出力させる出力制御ステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータに、
計画されていた移動体の第1の運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、当該第1の運行スケジュールに対応する更新後の第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する設定ステップと、
停留場から移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち少なくともいずれかの第1の候補と、前記停留場に移動体が到着する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうち、当該第1の候補において移動体が前記停留場を出発するタイミングよりも前に、当該停留場に移動体が到着する第2の候補と、に対して共通の移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる割当ステップと、
前記運行予定の一連の移動体それぞれについての前記第2の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を所定の出力先に出力させる出力制御ステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バス、列車、及び航空機等(所謂移動体)の運送機材を運行する輸送機関では、運行ダイヤに代表される計画された一連の運行スケジュールに沿って当該運送機材の運行が行われている。一方で、旅客の乗降に伴う混雑、災害、及び事故等の要因により、計画されたダイヤの通りに運行することが困難となり、少なくとも一部の運行スケジュールに遅延等が発生する場合がある。このような状況下では、例えば、通常のダイヤに戻すための運行整理が行われる場合がある。
【0003】
旅客の状況に伴う混雑等による局所的かつ小規模な遅延であれば、他の運送機材の運行への影響も小さく、不慮のイベントに対応するためにあらかじめ余分に設定された余裕時分等を利用してダイヤの復旧を容易に行える場合もある。しかしながら、災害や事故により遅延等が発生した場合には、その影響(例えば、運行が停止する範囲や期間等)が大きく、元の運行ダイヤとは大きく異なるダイヤで運行をせざるを得ない状況となる場合もある。
【0004】
運行整理については、例えば、リアルタイムで各運送機材(例えば、列車)や当該運送機材の停留場(例えば、駅)に関する情報の収集が行われ、収集された情報に基づき担当者により手作業で行われる場合がある。しかしながら、このような手法については、担当者の経験に頼るところが大きく、負荷も高い業務となっている。このような背景から、運行整理に際して、コンピュータを利用して復旧ダイヤを作成することで、運行整理の業務を支援する仕組みも各種検討されている。例えば、特許文献1には、ダイヤの乱れが生じた場合に、当該ダイヤの乱れを回復するための運行整理案を、過去に実施された運行整理の履歴データから検索して提示することで、運行整理の業務を支援する技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-111058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、過去に実施された運行整理の履歴データを利用して運行整理案を提示する手法では、必ずしも適切な運行整理案を提案できるとは限らない場合もある。例えば、現在発生している状況と同様の状況が過去に発生していない場合には、当該状況に対応するための履歴データが存在せず、運行整理案を提示することが困難となる場合がある。また、過去に実施された運行整理が必ずしも適当な方法によるものであったとは限らない。
【0007】
本発明は上記の問題を鑑み、運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案をより好適な態様で出力可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る情報処理装置は、計画されていた移動体の第1の運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、当該第1の運行スケジュールに対応する更新後の第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する設定手段と、停留場に移動体が到着する第3の運行スケジュールと、前記停留場を移動体が出発する前記第2の運行スケジュールの複数の候補のうちの、当該第3の運行スケジュールにおいて移動体が前記停留場に到着するタイミングよりも後に当該停留場を移動体が出発する候補と、に対して共通の移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを前記第2の運行スケジュールに割り当てる割当手段と、前記運行予定の一連の移動体それぞれについての前記第2の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を所定の出力先に出力させる出力制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案をより好適な態様で出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図2】当初の計画通りに運行される場合の列車ダイヤの一例を示した図である。
図3】速度規制が行われる場合の運行整理の一例について示した図である。
図4】運行スケジュールの変更結果の一例を示した図である。
図5】折り返し運転が行われる場合の運行整理の一例について示した図である。
図6】車両の発着時刻を遅延させた場合の運行整理の一例を示した図である。
図7】情報処理装置の機能構成の一例を示したブロック図である。
図8】更新後の運行スケジュールの候補群の設定結果の一例を示した図である。
図9】更新後の運行スケジュールへの車両の割り当て方法の一例を示した図である。
図10】情報処理装置の処理の一例を示したフローチャートである。
図11】運行整理案の作成結果の一例を示した図である。
図12】運行整理案の作成に係る方法の一例を示した図である。
図13】運行整理案の作成に係る方法の一例を示した図である。
図14】更新後の運行スケジュールの候補群の設定結果の一例を示した図である。
図15】更新後の運行スケジュールの候補群の設定結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<ハードウェア構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例について示した図である。図1に示すように、本実施形態に係る情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)120と、RAM(Random Access Memory)130とを含む。また、情報処理装置100は、補助記憶装置140と、出力装置150と、入力装置160と、ネットワークI/F170とを含む。CPU110と、ROM120と、RAM130と、補助記憶装置140と、出力装置150と、入力装置160と、ネットワークI/F170とは、バス180を介して相互に接続されている。
【0013】
CPU110は、情報処理装置100の各種動作を制御する中央演算装置である。例えば、CPU110は、情報処理装置100全体の動作を制御してもよい。ROM120は、CPU110で実行可能な制御プログラムやブートプログラムなどを記憶する。RAM130は、CPU110の主記憶メモリであり、ワークエリア又は各種プログラムを展開するための一時記憶領域として用いられる。
【0014】
補助記憶装置140は、各種データや各種プログラムを記憶する。補助記憶装置140は、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)に代表される不揮発性メモリ等のような、各種データを一時的または持続的に記憶可能な記憶デバイスにより実現される。
【0015】
出力装置150は、各種情報を出力する装置であり、ユーザに対する各種情報の提示に利用される。本実施形態では、出力装置150は、ディスプレイ等の表示デバイスにより実現される。出力装置150は、各種表示情報を表示させることで、ユーザに対して情報を提示する。ただし、他の例として、出力装置150は、音声や電子音等の音を出力する音響出力デバイスにより実現されてもよい。この場合には、出力装置150は、音声や電信等の音を出力することで、ユーザに対して情報を提示する。また、出力装置150として適用されるデバイスは、ユーザに対して情報を提示するために利用する媒体に応じて適宜変更されてもよい。なお、出力装置150が、各種情報の提示に利用される「出力部」の一例に相当する。
【0016】
入力装置160は、ユーザからの各種指示の受け付けに利用される。本実施形態では、入力装置160は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスを含む。ただし、他の例として、入力装置160は、マイクロフォン等の集音デバイスを含み、ユーザが発話した音声を集音してもよい。この場合には、集音された音声に対して音響解析や自然言語処理等の各種解析処理が施されることで、この音声が示す内容がユーザからの指示として認識される。また、入力装置160として適用されるデバイスは、ユーザからの指示を認識する方法に応じて適宜変更されてもよい。また、入力装置160として複数種類のデバイスが適用されてもよい。
【0017】
ネットワークI/F170は、外部の装置とのネットワークを介した通信に利用される。なお、ネットワークI/F170として適用されるデバイスは、通信経路の種別や適用される通信方式に応じて適宜変更されてもよい。
【0018】
CPU110は、ROM120又は補助記憶装置140に記憶されたプログラムをRAM130に展開し、このプログラムを実行することで、図7に示す情報処理装置100の機能や、図10に示すフローチャートで示された処理が実現される。
【0019】
<運行整理の概要>
本実施形態に係る情報処理装置100の特徴をよりわかりやすくするために、図2図6を参照して、事故等の障害により列車等の移動体の運行スケジュールに乱れが生じた場合に、この運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理の手法の一例について概要を説明する。なお、本実施形態では、運行スケジュールの管理対象となる移動体として主に列車の場合を想定し、当該列車の運行スケジュールが所謂ダイヤにより管理されている場合に着目して説明するが、必ずしも本実施形態に係る情報処理装置100の機能や適用対象を限定するものではない。すなわち、列車のみに限らず、バス、飛行機、及び船舶等の他の移動体の運行スケジュールが処理の対象となってもよいものとする。
また、本開示では、列車等の移動体が運行される経路上にあらかじめ設置された、当該移動体が停止する地点を便宜上「停留場」とも称する。例えば、運行される移動体が列車の場合には、当該列車が停車する駅が、上記停留場の一例に相当する。また、運行される移動体がバスの場合には、当該バスが停車する停留所が、上記停留場の一例に相当する。また、運行される移動体が航空機の場合には、当該航空機が発着する飛行場が、上記停留場の一例に相当する。また、運行される移動体が船舶の場合には、当該船舶が停泊する港が、上記停留場の一例に相当する。
【0020】
例えば、図2は、当初の計画通りに運行される場合の列車ダイヤの一例を示している。図2において、図面の横方向が時間を示しており、図面の縦方向が運用される移動体(例えば、列車の車両)の運行経路上の位置を模式的に示している。これは、図3図6と、後述する説明で別途参照する図8図9図11図15においても同様である。
また、図2は、駅Aと駅Dとの間で列車を運行する場合の列車ダイヤの一例を示しており、駅Aと駅Dとの間の運行経路上には中間駅として駅B及び駅Cが設けられている。なお、以降の説明では、駅Aや駅Dのように、列車等の移動体の運行経路の端部に位置し、到着した移動体の折り返しが行われる停留場を、便宜上「折り返し停留場」とも称する。また、移動体が列車の場合には、折り返し停留場に相当する駅(例えば、駅A及び駅D)を、便宜上「折り返し駅」とも称する。
【0021】
図2において、直線の矢印は、時間ごとに設定された、運行経路の各端部に位置する駅A及び駅Dのうち一方の駅を出発して他方の駅に到着するまでの個々の運行スケジュールを示している。なお、以降では、単に「運行スケジュール」と記載した場合には、図2に示す例において個々の直線の矢印により示された運行スケジュールのように、移動体の運行経路の各端部に位置する停留場間において時間ごとに個別に設定された運行スケジュールを示すものとする。
【0022】
また、図2に示す例では、時間ごとに設定された各運行スケジュール(駅A及び駅Dのうち一方の駅を出発して他方の駅に到着する各運行スケジュール)に対して、車両C1~C6のそれぞれが割り当てられる。なお、車両C1~C6のそれぞれは、運行の単位(換言すると、運行スケジュールへの割り当ての単位)となる1編成分の列車の車両を示すものとする。
図2において、円弧状の矢印は、「繋ぎ」とも称され、折り返し駅に到着した車両を、以降の時間において当該折り返し駅を出発する運行スケジュールに割り当てることを意味している。すなわち、「繋ぎ」とは、先行する運行スケジュールと、後続の運行スケジュールとのそれぞれに対して共通の車両を割り当てることで、これらの運行スケジュール間を繋ぐことを意味している。
例えば、図2に示す例では、車両C1は、駅Aを運用が開始される始端駅として、まず当該駅Aを出発して駅Dに向かう運行スケジュールR101に割り当てられる。また、車両C1は、駅Dに到着した後に、駅Dに到着した時間よりも後の時間に当該駅Dを出発して駅Aに向かう運行スケジュールR103に割り当てられる。そして、車両C1は、駅Aに到着すると、当該駅Aを運用が終了される終端駅として、その日の運行を終了することとなる。同様に、車両C3及びC5については、駅Aを始端駅としてその日の運行を開始し、駅Aを終端駅としてその日の運行が終了するように、1日分の一連の運行スケジュールが計画されている。また、車両C2,C4、及びC6は、駅Dを始端駅としてその日の運行を開始し、駅Dを終端駅としてその日の運行が終了するように、1日分の一連の運行スケジュールが計画されている。
【0023】
図3は、事故等の障害の発生に伴い、速度規制が行われる区間及び時間帯が発生した場合の運行整理の一例について説明するための図である。図3において、「規制エリア」として示された領域は、車両(移動体)の運行が制限される区間及び期間を模式的に示している。
図3に示す例では、速度規制に伴い、当初計画された運行スケジュールの通りに列車を運行することが困難となっており、規制エリアに一部が含まれる運行スケジュールを所定時間(例えば、30分)だけ遅らせた運行スケジュールに変更している。なお、図3に示す例では、状況をよりわかりやすくするために、予定されていた運行スケジュールについてはいずれも運行を休止する(以下、「運休」とも称する)ことなく、車両C1~C6それぞれの運用が保持されるものとする。また、当初計画されていたダイヤでは、折り返し駅において車両の折り返しを行うための時間(以下、「折り返し時分」とも称する)については、最小限の時間で折り返しが行われるように計画されていたものとする。
図3に示す例のように、一部が規制エリアに含まれる運行スケジュールについて単に所定時間だけ遅延させて運行が行われると、速度規制が解除された後の運行スケジュールについても同様に所定時間だけ遅延することとなる。
例えば、図4は、図3を参照して説明したように運行整理が行われた場合における、一連の運行スケジュールの変更結果の一例を示している。
【0024】
また、図5は、事故等の発生に伴い、運行経路の一部の区間に支障が生じ、同区間における車両の運行が制限され、中間駅において折り返し運転が行われる場合の運行整理の一例について説明するための図である。図5に示す例では、駅Bと駅Cとの間の区間において車両の運行が制限されているため、駅B及び駅Cにおいて車両の折り返しが行われるように運行スケジュールが変更されている。この際に、駅Bや駅Cで折り返しが行われた車両を、駅B及び駅A間や駅C及び駅D間において設定された当初の運行スケジュールにあわせて運行させることが可能であれば、事故等の影響に伴う運行スケジュールの乱れを最小限に抑える効果が期待できる。
【0025】
しかしながら、駅Bや駅Cで折り返しが行われた車両を、当初計画された運行スケジュールにあわせて運行させようとした場合に、十分な折り返し時分を確保することが困難となる場合がある。このような場合には、駅Bや駅Cで折り返しが行われた車両を、当初計画された運行スケジュールにあわせて運行させることが実質的に困難となる場合がある。
これに対して、当初計画された運行スケジュールにあわせて運行させた場合に十分な折り返し時分を確保することが困難であったとしても、折り返しが行われる際の車両の発着時刻を遅延させることで、車両の運行が可能となる場合もある。
例えば、図6は、図5に示す例のように中間駅において折り返し運転が行われる状況下において、折り返しが行われる際の車両の発着時刻を遅延させた場合の運行整理の一例について説明するための図である。図6に示すように折り返しが行われる際の車両の発着時刻を所定時間(例えば、10分)だけ遅延させることで、十分な折り返し時分を確保しながら車両を運行することが可能となる。
【0026】
以上説明したように、事故等の障害の発生に伴う運行整理に際して、少なくとも一部の運行スケジュールについて移動体の発着時刻を遅延させることを許容することで、発生したダイヤの乱れがより解消されるように全体のダイヤを最適化することが可能な場合がある。本開示では、このような特性を利用して、運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案をより好適な態様で提示可能とする仕組みを提案する。
【0027】
<第1の実施形態>
本開示の第1の実施形態に係る情報処理装置について以下に説明する。本実施形態では、障害の発生から復旧する時刻が確定した場合(すなわち、最大の遅延時間が与えられている場合)における、運行整理案の提示に係る仕組みの一例について提案する。なお、本実施形態では、説明をよりわかりやすくするために、運行計画の対象となる移動体が列車であり、当該列車の運行ダイヤの乱れを解消するための運行整理案の提示を行う場合を想定して各説明を行うものとする。
【0028】
(機能構成)
まず、図7を参照して、本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例について説明する。図7に示すように、本実施形態に係る情報処理装置100は、入力解析部111と、演算部112と、記憶部115と、出力制御部116とを含む。また、演算部112は、候補設定部113と、割当処理部114とを含む。
【0029】
入力解析部111は、所定の入力装置が受け付けた操作の内容を解析することでユーザからの指示を認識し、当該指示の認識結果を後述する演算部112に通知する。これにより、演算部112は、ユーザからの指示を認識することが可能となる。
【0030】
出力制御部116は、所定の出力装置に各種情報を出力させることで当該情報をユーザに通知する。例えば、出力制御部116は、後述する演算部112により生成された運行整理案に関する情報(例えば、更新後の運行スケジュールに関する情報等)を出力装置に出力させることで、当該情報をユーザに提示してもよい。
【0031】
記憶部115は、各種データやプログラムを記憶する記憶領域である。例えば、記憶部115は、後述する演算部112が、運行整理案を生成するために使用するデータ等を記憶してもよい。また、記憶部115は、演算部112が各種演算に使用する情報等を一時的に保持するための記憶領域として利用されてもよい。
【0032】
演算部112は、事故等の障害の発生に伴い計画されたダイヤ(一連の運行スケジュール)に乱れが生じた場合に、車両や駅に関する情報等のような運行状況に関する情報を収集し、取得した情報に基づき、乱れたダイヤを復旧するための運行整理案の作成に係る処理を実行する。
なお、運行整理案の作成に使用する情報の収集方法については特に限定はされない。例えば、演算部112は、所定のサーバ等に蓄積された情報(例えば、各車両の運行状況の検知結果等)を取得して、当該情報を運行整理案の作成に利用してもよい。また、演算部112は、運行整理案の作成に使用する情報を、入力解析部111を介したユーザからの入力に基づき取得してもよい。また、演算部112は、記憶部115に記憶された情報を、運行整理案の作成に利用してもよい。
【0033】
ここで、演算部112の構成及び処理について、より詳しく説明する。
障害の発生から復旧する時刻が確定すると、障害の発生時間を、障害発生時刻から復旧時刻までの期間として算出することが可能となる。そのため、この場合には、例えば、単にこの障害の発生時間分だけ全体の運行スケジュールを遅延させることで、終電の時間が障害の発生時間分だけ遅延するものの、運行が計画されていた一連の運行スケジュールそれぞれについて車両を運行させることが可能となる。すなわち、この場合には、障害の発生時間が、これ以上遅らせる必要がない時間となるため、最大遅延時間となる。このような前提のもとで、本実施形態では、演算部112は、最大遅延時間よりも早く運行ダイヤの乱れを解消して車両の運行を復旧するための運行整理案の作成を試みる。
【0034】
具体的には、候補設定部113は、遅延が発生しない場合から最大遅延時間の間で、遅延の度合いごとに更新後の運行スケジュールの候補を設定する。例えば、最大遅延時間が60分であったとすると、更新後の運行スケジュールの候補は以下の通りに設定される。なお、Nは、車両同士が運行可能な時間間隔を示すものとする。
・計画当初の運行ダイヤ:遅れ0分
・最大遅延時間だけ遅延させたダイヤ:遅れ60分
・N分遅延させたダイヤ:遅れN分
・2N分遅延させたダイヤ:遅れ2N分
・3N分遅延させたダイヤ:遅れ3N分

このようにして、候補設定部113は、計画された一連の運行スケジュールのうち、遅延の発生が予測される運行スケジュールそれぞれに対して、上記のように設定した互いに異なる遅延時間を適用することで、更新後の運行スケジュールの複数の候補(すなわち、候補群)を設定する。この際に、候補設定部113は、対象となる運行スケジュールのうちの規制エリアに含まれない部分的な運行スケジュールを基準として、当該対象となる運行スケジュールに対応する更新後の運行スケジュールの候補群を設定してもよい。
【0035】
例えば、図8は、遅延の発生が予測される運行スケジュールそれぞれに対する、遅延予測に伴う、更新後の運行スケジュールの候補群の設定結果の一例を示している。図8に示す例では、当初計画されていた運行スケジュールに対して、互いに異なる遅延時間が適用された更新後の運行スケジュールの候補群が設定されている。
なお、当初計画されていた運行スケジュールが「第1の運行スケジュール」の一例に相当し、更新後の運行スケジュールが「第2の運行スケジュール」の一例に相当する。
【0036】
次いで、割当処理部114は、当初計画されていた運行スケジュールそれぞれに対して設定された更新後の運行スケジュールの候補に対して、運行予定の一連の車両のうちいずれかの車両を割り当てる。なお、本実施形態では、計画された一連の運行スケジュールそれぞれについて車両の運行の休止(運休)が行われないものとする。この場合には、当初計画されていた運行スケジュールそれぞれに対して設定された更新後の運行スケジュールの候補群のうち、いずれかの候補が運行の対象として、運行予定の一連の車両のうちいずれかの車両が割り当てられることとなる。また、この際に、障害時間(最大遅延時間)よりも遅れ時分を小さく予測した運行スケジュールに車両を割り当てることができれば、障害の発生に伴う影響をより小さく抑えてダイヤを復旧可能となる効果が見込まれる。
【0037】
例えば、図9は、更新後の運行スケジュールの候補への車両の割り当て方法の一例について示した図である。なお、図9では、説明をわかりやすくするために、駅Aを始端駅として運行が開始される運行スケジュールR201を対象として、運行整理を行う場合の一例について模式的に示している。
【0038】
割当処理部114は、当初計画していた運行スケジュールR201のうち計画通りに運行予定の部分に対して、中間駅BまたはCにおいて接続可能な後続する更新後の運行スケジュールの候補群のうちのいずれかの候補を繋ぐ。
例えば、割当処理部114は、中間駅(駅B、C)に到着した車両を、当該車両が当該中間駅に到着したタイミング以降に当該中間駅を出発する運行スケジュールに割り当てることで、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋いでもよい。また、この際に、割当処理部114は、中間駅に到着した車両を、中間駅で折り返しを行う運行スケジュールに割り当ててもよい。なお、この際に、割当処理部114は、更新後の運行スケジュールの候補群のうち、多くともいずれか1つの候補を対象として車両を割り当てる。すなわち、設定された候補群のうちいずれか1つの候補を対象として車両が割り当てられた場合には、他の候補には車両が割り当てられないこととなる。
また、割当処理部114は、折り返し駅(駅A、D)についても、中間駅の場合と同様に運行スケジュールに対して車両を割り当てることで、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐ。なお、この際に、割当処理部114は、折り返しに際して要する間合い時分を加味して、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋いでもよい。この場合には、割当処理部114は、折り返し駅に車両が到着したタイミングからあらかじめ設定された間合い時分が経過した後に、当該車両が当該折り返し駅を出発するように、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐこととなる。
なお、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐ場合における、当該先行する運行スケジュールが、「第3の運行スケジュール」の一例に相当する。この第3の運行スケジュールについては、当初計画されていた運行スケジュールが該当する場合と、更新後の運行スケジュールの候補群のうちのいずれかの候補が該当する場合との双方が想定され得る。
【0039】
以上のようにして、割当処理部114は、運行予定の一連の車両それぞれを、当初計画されていた各運行スケジュールに対応する更新後の運行スケジュールに割り当てる。なお、この際に、割当処理部114は、制約条件や達成目的を設定したうえで、更新後の運行スケジュールに対する車両の割り当てを行ってもよい。
具体的な一例として、割当処理部114は、一連の運行スケジュールにおける車両の運行が停止している期間(例えば、間合い時分)に応じたコストの総和がより小さくなるように、更新後の運行スケジュールへの車両の割り当てを行ってもよい。なお、同処理については、適用例として詳細を別途後述する。
【0040】
そして、割当処理部114は、運行予定の一連の車両それぞれについての更新後の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を、運行整理案として所定の出力先に出力する。
具体的な一例として、割当処理部114は、出力制御部116を介して所定の出力装置(例えば、出力装置150)に生成した上記運行整理案を出力させることで、ユーザ(例えば、運行整理の担当者)に当該運行整理案を提示してもよい。また、他の一例として、割当処理部114は、生成した上記運行整理案をサーバ等の他の装置にネットワークを介して送信してもよい。これにより、例えば、当該他の装置が、生成された上記運行整理案を利用して各種処理を実行することも可能となる。また、割当処理部114は、生成した上記運行整理案を所定の記憶領域(例えば、記憶部115)に出力することで、当該運行整理案を当該記憶領域に記憶させてもよい。
【0041】
以上、図7を参照して、本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例について説明した。
なお、上記はあくまで一例であり、必ずしも本実施形態に係る情報処理装置の機能構成を限定するものではない。
例えば、図7に示す一連の構成要素のうち少なくとも一部の構成要素が、複数の装置が協働することで実現されてもよい。具体的な一例として、図7に示す一連の構成要素のうち、一部の構成要素が、情報処理装置100とは異なる他の装置に設けられていてもよい。また、他の一例として、図7に示す一連の構成要素のうち少なくとも一部の構成要素の処理に係る負荷が複数の装置に分散されてもよい。
また、情報処理装置100が備える機能に応じて、他の構成要素が適宜追加されてもよい。具体的な一例として、情報処理装置100がサーバ等の他の装置とネットワークを介して通信を行う場合には、当該通信を実現するための構成要素(例えば、通信部等)が追加で設けられていてもよい。
【0042】
(処理)
続いて、図10を参照して、本実施形態に係る情報処理装置100の処理の一例について説明する。
【0043】
S101において、情報処理装置100(候補設定部113)は、当初計画されていた運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、更新後の運行スケジュールの複数の候補を設定する。具体的な一例として、情報処理装置100は、遅延が発生しない場合から最大遅延時間の間で、遅延の度合いごとに更新後の運行スケジュールの候補を設定してもよい。以上のようにして、情報処理装置100は、当初計画されていた運行スケジュールごとに、更新後の運行スケジュールの候補群を設定する。
【0044】
S103において、情報処理装置100(割当処理部114)は、運行予定の一連の車両それぞれを、更新後の運行スケジュールに割り当てる。この際に、情報処理装置100は、駅に車両が到着する運行スケジュールと、当該駅を車両が出発する更新後の運行スケジュールの候補群のうちの当該車両が当該駅に到着するタイミングよりも後に当該駅を出発する候補とに共通の車両を割り当てる。この際に、情報処理装置100は、あらかじめ設定された間合い時分を加味して更新後の運行スケジュールの候補に対する車両の割り当てを行ってもよい。また、情報処理装置100は、更新後の運行スケジュールの候補群のうち多くともいずれか1つの候補を対象として車両が割り当てられるように、更新後の運行スケジュールに対する車両の割り当てを行う。
なお、更新後の運行スケジュールの候補群のうちいずれの候補にも車両が割り当てられない場合には、対応する当初計画していた運行スケジュールについては運休として扱われることとなる。運休を考慮した運行整理案の作成方法の一例については、実施例3として詳細を別途後述する。
【0045】
S105において、情報処理装置100は、運行予定の一連の車両それぞれについての更新後の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を、運行整理案として所定の出力先に出力する。具体的な一例として、情報処理装置100(出力制御部116)は、所定の出力装置に上記運行整理案を出力させることで、当該運行整理案をユーザに提示してもよい。
【0046】
以上、図10を参照して、本実施形態に係る情報処理装置100の処理の一例について説明した。
【0047】
(適用例)
続いて、本実施形態に係る技術の適用例として、運行整理案の作成方法の一例について、特に、更新後の運行スケジュールへの車両の割り当て方法に着目して説明する。具体的には、本適用例では、車両が駅で停止している期間(間合い時分)をコストとみなし、一連の運行スケジュールについて車両を運行する際の当該コストがより小さくなる(ひいては、最小となる)ように、更新後の運行スケジュールに車両を割り当てる方法の一例について説明する。
【0048】
まず、当初計画されていた運行スケジュールについて設定された更新後の運行スケジュールの候補において車両を運行するか否か(換言すると、当該候補に車両を割り当てるか否か)については、以下に(式1)として示す変数xにより表される。具体的には、(式1)に示す変数xは、当初計画されていた運行スケジュールiについて設定された更新後の運行スケジュールの候補群のうちj番目の候補において車両を運行するか否かを示している。変数xについては、「0」の場合には車両を運行しないことを示しており、「1」の場合には車両を運行することを示している。
また、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐか否かについては、以下に(式2)として示す変数yにより表される。(式2)において、fi及びfjは、先行する運行スケジュール側に対応しており、当初計画されていた運行スケジュールfiについて設定された更新後の運行スケジュールの候補群のうちfj番目の候補を示している。また、ti及びtjは、後続の運行スケジュール側に対応しており、当初計画されていた運行スケジュールtiについて設定された更新後の運行スケジュールの候補群のうちtj番目の候補を示している。すなわち、変数yは、先行する運行スケジュールfiの更新後の運行スケジュールの候補fjと、後続の運行スケジュールtiの更新後の運行スケジュールの候補tjとを繋ぐか否かを示している。なお、変数yについては、「0」の場合には対象となる運行スケジュール間を繋がないことを示しており、「1」の場合には対象となる運行スケジュール間を繋ぐことを示している。
また、以下に(式3)として示す変数Costは、先行する運行スケジュールfiの更新後の運行スケジュールの候補fjと、後続の運行スケジュールtiの更新後の運行スケジュールの候補tjとを繋いだ場合の間合い時分に基づくコストを示している。
【0049】
【数1】
【0050】
変数yとして示した、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐか否かについては、決定に際して各種の条件が設定され得る。具体的な一例として、車両が駅に到着してから当該車両が当該駅を出発する前に、運転士の交代等をするための間合い時間を要する場合がある。この場合には、到着時刻から運転士の交代等をするために設定された間合い時分が経過した後の時刻以降に出発時刻が設定される必要が生じる。また、特急列車等のような特別な型の車両を要する場合には、先行する運行スケジュールに割り当てる車両の型と、後続の運行スケジュールに割り当てる車両の型とを一致させることが要求される場合がある。
【0051】
なお、対象となる駅が始端駅の場合には、当該始端駅をsとした場合に、変数yは以下に示す(式4)のように表される。また、対象となる駅が終端駅の場合には、当該終端駅をsとした場合に、変数yは以下に示す(式5)のように表される。
【0052】
【数2】
【0053】
そのうえで、割当処理部114は、以下に(式7)~(式9)として示す制約条件のもとで、以下に(式6)として示す目的関数を満足するように、更新後の運行スケジュールの候補に対して運行予定の一連の車両を割り当てる。
【0054】
【数3】
【0055】
なお、(式7)は、当初計画されていた運行スケジュールごとに設定された更新後の運行スケジュールの候補群のうち、車両が運行されるのはいずれか1つの候補であるとの制約を示している。
また、(式8)は、一連の先行する運行スケジュールそれぞれに対して繋がれ得る後続の運行スケジュールはいずれか1つの運行スケジュールであるとの制約を示している。すなわち、先行する運行スケジュールfiに対応する更新後の運行スケジュールに対して接続され得る、後続の運行スケジュールに対応する更新後の運行スケジュールの候補は、設定された候補群のうちのいずれか1つの候補に制限される。
また、(式9)は、一連の後続の運行スケジュールそれぞれに対して繋がれ得る先行する運行スケジュールはいずれか1つの運行スケジュールであるとの制約を示している。すなわち、後続の運行スケジュールtiに対応する更新後の運行スケジュールに対して接続され得る、先行の運行スケジュールに対応する更新後の運行スケジュールの候補は、設定された候補群のうちのいずれか1つの候補に制限される。
以上のような制約条件のもとで、(式6)として示す目的関数は、間合い時分が可能な限り短くなるように、更新後の運行スケジュールに対して運行予定の一連の車両を割り当てることを意味している。
【0056】
なお、上記はあくまで一例であり、運行整理の目的に応じて、制約条件や目的関数を設定することで、当該目的に応じた運行整理案を出力させることが可能となる。
また、上記説明からもわかる通り、本実施形態に係る情報処理装置に依れば、過去に実施された運行整理の履歴等が存在しない状況下においても、目的に応じてより好適な態様で運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案を出力することが可能となる。
【0057】
<第2の実施形態>
続いて、本開示の第2の実施形態について以下に説明する。列車等の運送機材を運行する輸送機関では、利用者の少ない夜間(深夜)の時間帯を利用して、当該運送機材(例えば、車両)の運行を制限(例えば、停止)して各種の保守作業を行う場合がある。一方で、障害の発生に伴い運行整理が行われた場合には、例えば、終電の時間が遅延し、夜間の時間帯に設定された、車両(運送機材)の運行が制限される期間(以下、「運行制限期間」とも称する)にまでずれ込むような事態の発生が想定され得る。そこで、本実施形態では、更新後の運行スケジュールの候補の少なくとも一部の期間が運行制限期間に含まれるような状況が発生する場合における、運行整理案の作成方法の一例について説明する。なお、本実施形態では、前述した第1の実施形態と異なる部分に着目して説明を行うものとし、当該第1の実施形態と実質的に同様の部分については詳細な説明は省略する。
【0058】
例えば、図11は、運行整理案の作成結果の一例を示している。図11において、夜間運行不可能エリアとして示された領域は、保守作業を行うために夜間の時間帯に設定された運行制限期間の一例を示している。すなわち、図11に示す例では、運行制限期間においてA駅からD駅までの一連の運行経路において車両の運行が制限されている。
一方で、図11に示す例では、運行整理により終電時間が遅延し、終電に対応する更新後の運行スケジュールの候補の一部が夜間運行不可能エリアに含まれている。すなわち、終電に対応する更新後の運行スケジュールにおいて、車両の運行が予定されている一部の期間が運行制限期間に含まれており、このままでは終電の運行が困難となる。
このような場合には、例えば、車両の運行が可能な更新後の運行スケジュールの候補が選択されるように制御することで問題解決を図ることも可能である。しかしながら、このような場合には、例えば、一部の運行スケジュールが成立せずに、車両の運行が終了した後の各駅における車両の滞泊本数が、当初計画していた滞泊本数からずれる場合がある。このように、滞泊本数に当初の計画からずれが生じると、当該滞泊本数のずれが翌日の運行スケジュールに影響を及ぼす場合がある。具体的な一例として、滞泊本数に当初の計画からずれが生じることで、翌日の運行において一部の運行スケジュールに対して割り当て予定だった車両が駅に存在せず、当該運行スケジュールに対する車両の割り当てが困難となるような事態の発生が想定され得る。
【0059】
このような状況を鑑み、本実施形態に係る情報処理装置100は、更新後の運行スケジュールの候補の少なくとも一部の期間が運行制限期間に含まれる場合に、当該候補を車両の割り当て対象から除外する。そのうえで、情報処理装置100は、車両の割り当ての対象から除外した更新後の運行スケジュールの候補に替えて、運行制限期間後に設定した更新後の運行スケジュールの他の候補を車両の割り当ての対象に加える。
【0060】
例えば、図12及び図13は、本実施形態に係る情報処理装置100による運行整理案の作成に係る方法の一例について説明するための説明図である。
図12に示す例では、図11に示す例と同様に、終電に対応する更新後の運行スケジュールの候補の一部が夜間運行不可能エリアに含まれている。そのため、情報処理装置100は、一部が夜間運行不可能エリアに含まれる更新後の運行スケジュールの候補を、車両の割り当ての対象から除外し、当該候補に替えて、夜間運行不可能エリアよりも後に設定した更新後の運行スケジュールの候補を車両の割り当ての対象に加えている。
また、図13は、図12を参照して説明した処理を実現するための仕組みの一例について示している。具体的には、情報処理装置100(候補設定部113)は、更新後の運行スケジュールの候補群のうち一部の候補の少なくとも期間が運行制限期間に含まれる場合に、当該一部の候補に替えて、運行制限期間後に設定した他の候補を当該候補群に含める。
【0061】
なお、以降の動作については、前述した第1の実施形態と同様である。すなわち、情報処理装置100(割当処理部114)は、運行予定の一連の車両それぞれを、更新後の運行スケジュールに割り当てる。そのうえで、情報処理装置100は、運行予定の一連の車両それぞれについての更新後の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を、運行整理案として所定の出力先に出力する。
また、本実施形態に係る情報処理装置100においても、前述した第1の実施形態において適用例として(式1)~(式9)を参照して説明した運行整理案の作成方法を適用することが可能である。この場合には、運行制限期間をまたいで先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールの繋ぎが行われるケースを加味してCost値を設定すればよい。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置に依れば、運行制限期間が設けられるような状況下においても、前述した第1の実施形態と同様に、目的に応じてより好適な態様で運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案を出力することが可能となる。
【0063】
<第3の実施形態>
続いて、本開示の第3の実施形態について以下に説明する。前述した第1の実施形態では、障害の発生から復旧する時刻(換言すると、最大遅延時間)が確定している場合における運行整理案の作成方法の一例について説明した。一方で、事故等のような障害の発生に伴い車両の運行の規制が開始された直後等のように復旧のメドが立っていない状況下で、運行整理案の作成が行われる場合がある。そこで、本実施形態では、障害の発生からの復旧のメドが立っていない状況、すなわち、最大遅延時間が確定していない状況における、運行整理案の作成方法の一例について説明する。
【0064】
障害の発生からの復旧のメドが立っていない状況下においても、安全が確認された一部区間において運行を再開するような状況が想定され得る。このような状況下では、例えば、規制区間においては、車両の運行が制限される(例えば、車両の運行が不可となる)ことが想定され得る。
また、規制区間に含まれる駅においては、車両が定刻通り(当初計画していた運行スケジュールの通り)に当該駅を出発することが困難となり、早くとも何分かの時間が経過するまでは駅からの車両の出発が制限されるような状況が想定され得る。このような場合には、例えば、当該何分かの時間が経過した後に車両が駅を出発するように、更新後の運行スケジュールを設定することとなる。
これに対して、規制区間に含まれない駅においては、定刻通りに当該駅から車両を出発させることが可能な場合がある。このような場合には、例えば、定刻以降に車両が駅を出発するように、更新後の運行スケジュールを設定することとなる。
例えば、図14は、規制エリアにおいて車両の運行が制限されている状況下において設定された、更新後の運行スケジュールの候補群の一例を示している。図14に示す例では、規制エリアに含まれない範囲において車両の運行が可能となるように、更新後の運行スケジュールの候補群が設定されている。
【0065】
以上のように、障害の発生から復旧し規制が解除されるまでのメドが立っていない場合には、どの程度まで遅延を予測すればいいのかがわからない場合がある。このような状況下で、例えば、十分に長い遅延(例えば、5時間)を想定して、運行整理案の作成を行うと、更新後の運行スケジュールの候補群の求解に時間を要することとなり得る。なお、一般的には、想定する遅延時間がより長くなるほど、更新後の運行スケジュールの候補の数がより増え、更新後の運行スケジュールの候補群の求解に係る時間もより長くなる傾向にある。具体的には、遅延時間を1時間と想定して求解を行う場合よりも、遅延時間を2時間と想定して求解を行う場合の方が、求解に係る時間がより長くなる。これに対して、運行可能な車両についてはより早く運行を再開させたいような状況も想定され、このような状況下では運行整理案の作成により長い時間が費やされるのは好ましくない。
【0066】
以上のような状況を鑑み、本実施形態に係る情報処理装置100は、いくつかの遅延時間のパターンについて並行して更新後の運行スケジュールの候補の求解を行う。
具体的な一例として、情報処理装置100は、以下に示す複数の遅延時間のパターンについて更新後の運行スケジュールの候補の求解を並行して行ってもよい。
・1時間で障害の発生から復旧し規制が解除される
・2時間で障害の発生から復旧し規制が解除される
・3時間で障害の発生から復旧し規制が解除される
【0067】
例えば、図15は、本実施形態に係る情報処理装置100による、更新後の運行スケジュールの候補群の設定結果の一例を示している。図15に示す例では、情報処理装置100は、遅延時間がゼロの場合の運行スケジュール(換言すると、定刻通りの運行スケジュール)を基準として、互いに異なる3種類の遅延時間を適用することで、更新後の運行スケジュールの候補群を設定している。具体的な一例として、上記した運行スケジュールの候補の求解の例に適用すると、情報処理装置100は、1時間、2時間、及び3時間で復旧することを想定した遅延時間それぞれを適用することで、更新後の運行スケジュールの候補群を設定することとなる。
【0068】
以上のような構成により、例えば、障害が発生した直後の当面の間については、1時間で障害から復旧するものと仮定して車両を運行し、2時間及び3時間で障害から復旧する場合のダイヤを確認しながら一部の運行スケジュールの運休を検討するといった運用も可能となる。
【0069】
なお、遅延時間に応じた更新後の運行スケジュールの候補の数が増えると、更新後の運行スケジュールの組合せの数がより増大して、更新後の運行スケジュールの候補群の求解に係る時間がより長くなるため、実質的な運用が困難となる場合がある。
このような場合には、例えば、まずより広い範囲においてより粗い粒度で複数の遅延時間を設定して更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行ってもよい。そのうえで、得られた一連の候補のうち少なくとも一部の候補が含まれる期間(例えば、より短い期間)を対象として、より細かい粒度で設定された複数の遅延時間を設定して更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行ってもよい。
【0070】
具体的な一例として、まず30分間隔で設定された複数の遅延時間を適用することで更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行われたものとする。この場合には、例えば、更新前の運行スケジュールごとに更新後の運行スケジュールの候補として3つの候補が設定される場合には、遅延時間として0分、30分、及び60分それぞれが適用された更新後の運行スケジュールの候補群が設定されることとなる。そのうえで、求解された一連の候補のうち一部の候補を対象として、±10分の単位で遅延時間を適用することで、新たに更新後の運行スケジュールの複数の候補が設定されてもよい。
例えば、遅延時間が0分の場合を基準として+10分ごとに改めて遅延時間を適用することで新たに3つの候補を求解する場合には、遅延時間として0分、10分、及び20分それぞれが適用された更新後の運行スケジュールの候補群が局所的に改めて設定されることとなる。また、他の一例として、遅延時間が30分の場合を基準として-10分ごとに改めて遅延時間を適用することで新たに3つの候補を求解する場合には、遅延時間として30分、20分、及び10分それぞれが適用された更新後の運行スケジュールの候補群が局所的に改めて設定されることとなる。
なお、上記に示す例の場合に、より広い範囲において更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行う際の遅延時間の間隔(例えば、30分間隔)の粒度が「第1の粒度」の一例に相当する。また、一部の候補を対象として改めて遅延時間を適用して新たに更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行う際の遅延時間の間隔(例えば、30分間隔)の粒度が「第2の粒度」の一例に相当する。
【0071】
このような制御が適用されることで、細かい粒度で遅延時間を設定して更新後の運行スケジュールの候補群の求解を行う範囲を局所化することが可能となる、そのため、全体的には演算量の増加を抑制し、更新後の運行スケジュールの候補群の設定に係る時間をより短く抑えることが可能となる。
【0072】
なお、以降の動作については、前述した第1の実施形態と同様である。すなわち、情報処理装置100(割当処理部114)は、運行予定の一連の車両それぞれを、更新後の運行スケジュールに割り当てる。そのうえで、情報処理装置100は、運行予定の一連の車両それぞれについての更新後の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を、運行整理案として所定の出力先に出力する。
また、本実施形態に係る情報処理装置100においても、前述した第1の実施形態において適用例として(式1)~(式9)を参照して説明した運行整理案の作成方法を適用することが可能である。この場合には、折り返し運転が行われる更新後の運行スケジュールの候補群を設定したうえで、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールの繋ぎが行われるケースを加味してCost値を設定すればよい。また、前述した第2の実施形態との組み合わせを適用することも可能である。この場合には、運行制限期間をまたいで先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールの繋ぎが行われるケースを加味してCost値を設定すればよい。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置に依れば、障害の発生からの復旧のメドが立っていない状況下においても、目的に応じてより好適な態様で運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案を出力することが可能となる。
【0074】
<実施例>
続いて、本開示の一実施形態に係る情報処理装置100の実施例について、具体的な例を挙げて説明する。
運行整理については、例えば、正常ダイヤに回復するまでの時間がより早い方が望ましい場合や、運行スケジュールの総遅延時間がより短い方が望ましい場合等があり、その時々で要求される条件が異なることで評価が難しい場合がある。より具体的な一例として、ラッシュの時間帯においては、遅延の影響がより長引いたとして輸送力が維持されることが望ましい場合がある。また、昼間の時間帯においては、一部を運休したとしても影響が少なく、夕方のラッシュの時間帯までにダイヤを復旧させた方が望ましい場合がある。また、夜間の時間帯においては、終電との接続性や翌日への影響を加味した運行整理が望まれる場合がある。
このような状況下においても、本実施形態に係る情報処理装置に依れば、更新後の運行スケジュールの候補群の設定や、更新後の運行スケジュールへの車両の割り当ての制御により、要求される条件に応じた運行整理案を提示することが可能である。そこで、以下に実施例1~実施例3として、要求される条件に応じた運行整理案の作成方法の一例について説明する。
【0075】
(実施例1)
まず、実施例1として、当初計画されていた運行スケジュールを全てにおいて車両を運行させ、可能な限り早くダイヤを回復させることを条件とする場合の運行整理案の作成方法の一例について説明する。この場合には、第1の実施形態として説明した例を適用すればよい。すなわち、当初計画されていた運行スケジュールを全てにおいて車両を運行させる条件下において、間合い時分の合計が最小化されるように、更新後の運行スケジュールに対する車両の割り当てが行われればよい。
【0076】
(実施例2)
次いで、実施例2として、終電への接続性を考慮する場合の運行整理案の作成方法の一例について説明する。
【0077】
終電への接続性を考慮する場合には、自社の運行スケジュールのみに限らず、他社の運行スケジュールを加味する必要が生じる場合がある。他社の運行スケジュールと接続される自社の運行スケジュールについてはあらかじめ決められている。そのため、該当する自社の運行スケジュールが遅延すると、他社の車両の発車を待たせる(すなわち、他社の運行スケジュールも遅延させる)こととなるが、その時間にも限度があり、多く場合にはあらかじめ当該時間の取り決めがある。
【0078】
このような場合には、例えば、以下に示す各条件について運行整理案を作成可能か否かの判定を行うことで、当該判定の結果に応じて終電への接続性を確保するか、それとも終戦への接続を断念するかを判断することが可能である。
・条件1:終電への接続性を確保する
→取り決めの範囲内で更新後の運行スケジュールの候補群を設定する
・条件2:終電への接続を断念する
→取り決めの範囲を超えて更新後の運行スケジュールの候補群を設定する
すなわち、条件1に基づき運行整理案の作成が可能であれば終電への接続性を維持し、条件2によってのみ運行整理案の作成が可能な場合には終電への接続を断念するといった運用が可能である。
【0079】
(実施例3)
次いで、実施例3として、一部の運行スケジュールの運休を想定した運行整理案の作成方法の一例について説明する。
【0080】
事故や故障といった障害の発生によっては、車両の運行が実質的に困難となるため運休をせざるを得ない運行スケジュールが生じる場合がある。このような状況下では、例えば、ユーザ(例えば、運行整理の担当者)は、該当する運行スケジュールを運休として車両の割り当て対象から除外したうえで、他の車両の運行が可能な運行スケジュールを利用してダイヤの回復を試みる。なお、運休の対象となる運行スケジュールが存在する場合には、当初計画されていた他の一連の運行スケジュールにおいて車両を運行させたとしても、各折り返し駅における終着本数に当初の計画から差が生じ、翌日の運行計画に影響を及ぼす場合がある。このような状況を鑑みて、本実施例では、一部の運行スケジュールが運休となった場合においても、より好適な態様で運行整理案の作成を可能とする方法の一例について説明する。
【0081】
具体的には、当初計画されていた運行スケジュール全てを運休とした場合には、運行スケジュール間の繋ぎに係るコストはゼロとなるが、運休に伴い輸送能力が低下する弊害と、滞泊本数の変化に伴う翌日の運行計画への影響を考慮する必要がある。そこで、本実施例では、これらのバランスをとることで、より好適な運行整理案を作成する方法の一例について、具体的な条件式とあわせて説明する。
【0082】
まず、当初計画されていた運行スケジュールについて設定された更新後の運行スケジュールの候補において車両を運行するか否かについては、以下に(式11)として示す変数xにより表される。
また、先行する運行スケジュールと後続の運行スケジュールとを繋ぐか否かについては、以下に(式12)として示す変数yにより表される。
また、以下に(式13)として示す変数Costは、先行する運行スケジュールfiの更新後の運行スケジュールの候補fjと、後続の運行スケジュールtiの更新後の運行スケジュールの候補tjとを繋いだ場合の間合い時分に基づくコストを示している。
なお、(式11)~(式13)については、第1の実施形態において適用例として前述した(式1)~(式3)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
また、以下に(式14)として示す変数CTは、当初計画されていた運行スケジュールiを運休とする場合における、運行スケジュールごとに想定される輸送客数から設定されるペナルティを示している。
また、以下に(式15)として示す変数Stayは、駅sに終着する運行スケジュールの数を示している。
また、以下に(式16)として示す変数CSは、駅sにおいて終着する運行スケジュールの本数が当初の計画から異なる場合のペナルティを示している。
【0083】
【数4】
【0084】
そのうえで、本実施例に係る情報処理装置100は、以下に(式7)~(式9)として示す制約条件のもとで、以下に(式6)として示す目的関数を満足するように、更新後の運行スケジュールの候補に対して運行予定の一連の車両を割り当てる。
【0085】
【数5】
【0086】
(式18)として示した条件式により規定される変数ArchPenaltyは、運行スケジュール間の繋ぎによるペナルティ(換言すると、コスト)を示しており、同ペナルティが最小化されることで早期のダイヤの回復が見込まれることとなる。
具体的には、運行スケジュールfからの繋ぎのペナルティをΣCost(f,t)*y(f,t)とすると、同ペナルティは、Cost(f,t1)*y(f,t1)+Cost(f,t2)*y(f,t2)+Cost(f,t3)*y(f,t3)+…となる。そのため、変数ArchPenaltyで表される、実際に運行スケジュール間を繋ぐ場合(y(f,t)が1となる場合)のコストを計算することが可能となる。
なお、変数ArchPenaltyにより示されるペナルティが、「第1のコスト」の一例に相当する。
【0087】
(式19)として示した条件式により規定される変数SusPenaltyは、運休に伴うペナルティ(換言すると、コスト)を示しており、同ペナルティをより少なくすることで運休させる運行スケジュールをより少なく抑えることが可能となる。
具体的には、運行スケジュールiにおいて車両を運行する場合には、更新後の運行スケジュールの候補群のうちいずれかの候補が運行の対象となるため、Σx(i,j)==1の条件が成り立つことなる。これに対して、運行スケジュールiにおいて車両を運休する場合には、Σx(i,j)==0の条件が成り立つことなる。すなわち、1-Σx(i,j)に対して該当する運行スケジュールを運休した場合のペナルティCTを乗算することで、変数SusPenaltyで表される、運休に伴うペナルティを計算することが可能となる。
【0088】
(式20)として示した条件式により規定される変数TermPenaltyは、折り返し駅における終着本数に当初の計画から差が生じた場合のペナルティ(換言すると、コスト)を示しており、同ペナルティを少なくすることで可能な限り当初の計画に沿った本数分を終着させることが可能となる。
具体的には、駅sに終着する運行スケジュールの数はy(fi,fj,s,0)==1で表されるため、Σy(fi,fj,s,0)を計算することが可能である。この数と、当初計画されていた終着する運行スケジュールの数との差を求めることで、当初の計画からの滞泊本数のずれに伴う影響を推測することが可能となる。具体的には、求められた上記差に対して、終着する運行スケジュールの本数が当初の計画から異なる場合のペナルティCSを乗算することで、変数TermPenaltyで表される、折り返し駅における終着本数に当初の計画から差が生じた場合のペナルティを計算することが可能となる。
【0089】
(式21)として示す制約条件は、以下に列挙する制約条件を示している。
・車両が運行される運行スケジュールから後続の運行スケジュールへの繋ぎは1本である
・運休となる運行スケジュールからの後続の運行スケジュールへの繋ぎは0本である
・運休となる運行スケジュールへの繋ぎは0本である
すなわち、(式21)においては、左辺の値と右辺の値とは一致することとなる。具体的には、運行スケジュールfiにおいて車両が運行される場合には、(式21)の左辺及び右辺はいずれも1となる。一方で、運行スケジュールfiにおいて運休となる場合には、(式21)の左辺及び右辺はいずれも0となる。
【0090】
以上のような制約条件のもとで、(式17)として示す目的関数は、(式18)、(式19)、及び(式20)として示された各ペナルティの和がより小さくなるように、更新後の運行スケジュールに対して運行予定の一連の車両を割り当てることを意味している。すなわち、本実施例に係る情報処理装置に依れば、一部の運行スケジュールが運休となった場合においても、より好適な態様で運行整理案を作成することが可能となる。
なお、一部の運行スケジュールについては、例えば、旅客の搬送を行わない所謂回送として扱ってもよい。これは、本実施例に限らず前述した他の実施例や各実施形態についても同様である。一方で、一部の運行スケジュールが回送として扱われる場合には、車両を運行した場合においても輸送客数が制限される(例えば、0となる)ため、この点を加味してコスト(例えば、変数CTに基づくコスト)の算出が行われてもよい。
【0091】
<むすび>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、設定手段と、割当手段と、出力制御手段とを備える。設定手段は、計画されていた移動体の第1の運行スケジュールに対して互いに異なる複数の遅延時間を適用することで、当該第1の運行スケジュールに対応する更新後の第2の運行スケジュールの複数の候補を設定する。割当手段は、停留場に移動体が到着する第3の運行スケジュールと、停留場を移動体が出発する第2の運行スケジュールの複数の候補のうちの、当該第3の運行スケジュールにおいて移動体が停留場に到着するタイミングよりも後に当該停留場を移動体が出発する候補と、に対して共通の移動体が割り当てられるように、運行予定の一連の移動体それぞれを第2の運行スケジュールに割り当てる。また、出力制御手段は、運行予定の一連の移動体それぞれについての第2の運行スケジュールへの割り当て結果に応じた情報を所定の出力先に出力させる。
以上のような構成により、運行スケジュールの乱れを復旧するための運行整理案をより好適な態様で出力することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
100 情報処理装置
111 入力解析部
112 演算部
113 候補設定部
114 割当処理部
115 記憶部
116 出力制御部
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