(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子並びに発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20240910BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240910BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20240910BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240910BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240910BHJP
C08F 212/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08J9/18 CET
C08J9/18 CEY
B29C44/00 G
B29C44/44
C08L25/12
C08K5/00
C08F212/10
(21)【出願番号】P 2021505597
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004539
(87)【国際公開番号】W WO2020184007
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019045208
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-021449(JP,A)
【文献】特開昭61-040335(JP,A)
【文献】特開昭60-219032(JP,A)
【文献】特開平04-292610(JP,A)
【文献】米国特許第05464915(US,A)
【文献】特開2014-062191(JP,A)
【文献】特開2018-104550(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096327(WO,A1)
【文献】特開2011-195627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 44/44
C08F 212/10
C08J 9/00-9/42
C08K 5/00
C08L 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、
前記発泡性樹脂粒子を発泡させた発泡粒子表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm
-1及び波長1600cm
-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上であることを特徴とする発泡性樹脂粒子。
【請求項2】
前記発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量は20ppm未満であり、かつ、エチルベンゼンの含有量は130ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項3】
重量平均分子量が15万以上22万以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項4】
前記基材樹脂において、(a)前記スチレン単位の含有量は55重量部以上80重量部以下であり、前記アクリロニトリル単位の含有量は20重量部以上45重量部以下であり、かつ
(b)前記スチレン単位およびアクリロニトリル単位の合計含有量は100重量部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項5】
TH/TQ比は、1.20未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体。
【請求項8】
表層の平均気泡径が50μm以上100μm未満であることを特徴とする請求項7に記載の発泡成形体。
【請求項9】
スチレンの放散量が2ppm以下であり、かつエチルベンゼンの放散量が15ppm未満であることを特徴とする請求項7又は8に記載の発泡成形体。
【請求項10】
発泡性樹脂粒子の製造方法であって、
スチレン単量体およびアクリロニトリル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、
得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、
前記共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1重合工程及び第2重合工程を含み、
前記第1重合工程では、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を含む重合開始剤を使用し、
前記重合開始剤(X)は、過酸化ベンゾイルを含み、
前記発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、1.20未満であ
り、
前記第2重合工程では、10時間半減期温度が90℃以上100℃以下である重合開始剤(Y)を含む重合開始剤を使用することを特徴とする、発泡性樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の含有量が少なく、概揮発性有機化合物の放散量を抑制できる発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子並びに発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂粒子として発泡性ポリスチレン樹脂粒子が良く知られている。発泡性ポリスチレン樹脂粒子は型内発泡成形により容易に成形体を得ることができ、安価であることから一般的に広く利用されている。
【0003】
発泡性ポリスチレン樹脂粒子は軽量性及び断熱性能に優れる反面、含有する揮発性有機化合物(以下、英語表記のVolatile Organic Compoundsの頭文字をとって「VOC」と記載することもある)の単位時間当たりの放散量が多いことが問題であった。特に発泡性ポリスチレン樹脂粒子では、VOC成分であるスチレン及びエチルベンゼンがいずれも自動車分野及び建材分野の厳しい放散量の規格をクリアすることが難しく、発泡成形体を数日乾燥させるなどの処置が必要で、コストアップの一因となっている。
【0004】
上記課題を解決すべく、特許文献1及び2では、開始剤の添加部数増量及び/又は難燃剤の後添加など、製造方法の工夫により樹脂粒子中の残存スチレン量が少ない発泡性ポリスチレン樹脂粒子を提供できることが開示されている。
【0005】
また、特許文献3は特許文献1で記載の開始剤または当該開始剤の類似開始剤を用いて製造された、スチレン/アクリロニトリル/アルファメチルスチレン系の耐熱性スチレン系樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-052894
【文献】特開2010-195936
【文献】特開2016-164213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような従来技術は、VOCの放散量低減という観点において、従来技術の開発当時の技術水準における一般的な発泡性樹脂粒子からすれば、改善されたものであった。しかしながら、市場におけるVOCの放散量低減に関する関心は高く、上述のような従来技術は、VOC(特にスチレン及びエチルベンゼン)の放散量という観点において、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明の一実施形態は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、VOC含有量及びその放散量が少ない、新規の発泡性樹脂粒子並びに、VOC放散量及びその放散量が少ない、新規の発泡成形体、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記発泡性樹脂粒子を発泡させた発泡粒子表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上である。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、発泡性樹脂粒子の製造方法であって、スチレン単量体およびアクリロニトリル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1重合工程及び第2重合工程を含み、前記第1重合工程では、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を含む重合開始剤を使用し、前記重合開始剤(X)は、過酸化ベンゾイルを含み、前記発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、1.20未満である。
【発明の効果】
【0011】
本発明一実施形態は、揮発性有機化合物(VOC)の含有量が少なく、概揮発性有機化合物(VOC)の放散量を抑制できる発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子(発泡粒子)並びに発泡成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】発泡性樹脂粒子のGPC測定チャートの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0014】
さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0015】
<発泡性樹脂粒子>
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記発泡性樹脂粒子を発泡させた発泡粒子表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上であることを特徴とする。本発明の一実施形態における赤外吸収スペクトルは、ATR-FTIR分析で得ることができる。
【0016】
本明細書において「発泡粒子表面の赤外吸収スペクトル」とは、「発泡粒子の表面に対する全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析で得られた赤外吸収スペクトル」を意図する。本明細書において、「全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析」を「ATR-FTIR分析」と称する場合もある。
【0017】
本発明の一実施形態において、赤外吸収スペクトルの測定に用いる発泡粒子は、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子を以下(1)~(3)の順で処理して得るものとする:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機に投入する;(2)次に、吹き込み蒸気圧0.09MPa~0.10MPaにて発泡機内に蒸気を吹き込み、かつ発泡機内の圧力を0.01MPa~0.02MPaの範囲で調製することにより、発泡機内の温度を100℃~104℃とし、これにより、発泡粒子を倍率40倍へ発泡させる;(3)次に、得られた発泡粒子を25℃で12時間~24時間養生し、赤外吸収スペクトルの測定に用いる発泡粒子を得る。
【0018】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、上記構成を有することでVOC放散量が少ない発泡成形体を提供できるという利点を有する。これにより、自動車分野および建材分野などで要求されるVOC放散量の規格をクリアできる。すなわち、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、生産性の高い発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0019】
ここで、本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、当該発泡性樹脂粒子を用いて公知の方法により発泡粒子を製造し、かかる発泡粒子を用いて公知の方法により発泡成形を行うことにより発泡成形体を提供できる。
【0020】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子」を、単に「本発泡性樹脂粒子」と称する場合もある。すなわち、用語「本発泡性樹脂粒子」は、本発明における発泡性樹脂粒子の一実施形態を意図する。
【0021】
VOCは、広義には、例えば日本国の大気汚染防止法にて定義されるように、「排出口から大気中に排出され、また飛散したときに気体である有機化合物」を意味する。各技術分野において、VOCとして規制されるべき化合物が指定されている。例えば、日本国の厚生労働省は、下記の物質について室内濃度指針値を定めている:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、ノナナール、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、p-ジクロロベンゼン、クロロピリホス、ダイアジノン、およびフェノブカルブ。また、自動車工業会は、下記物質について自動車室内の濃度規制を行っている:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、およびフタル酸ジ-2-エチルヘキシル。
【0022】
本明細書においてVOCとは、「発泡性樹脂粒子または発泡成形体が含み得る化合物のうち、(a)大気中に排出され、また飛散したときに気体であり、かつ(b)日本国厚生労働省が室内濃度指針値を定めている有機化合物」を意図する。具体的には、本明細書においてVOCとは、スチレンおよびエチルベンゼンを意図する。
【0023】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位としてスチレン単位およびアクリロニトリル単位を含む。本明細書において、「スチレン単位」とは、スチレン単量体に由来する構成単位であり、「アクリロニトリル単位」とは「アクリロニトリル単量体」に由来する構成単位である。
【0024】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂において、(a)スチレン単位の含有量は55重量部以上80重量部以下であり、アクリロニトリル単位の含有量は20重量部以上45重量部以下であり、かつ(b)スチレン単位及びアクリロニトリル単位の合計含有量は100重量部であることが好ましい。
【0025】
スチレン単位の含有量は、好ましくは55重量部以上80重量部以下であり、より好ましくは60重量部以上80重量部以下であり、より好ましくは65重量部以上75重量部以下である。スチレン単位の含有量が、(a)55重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子は成形性に優れるものとなり、(b)80重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子は耐熱性に優れる発泡成形体を提供できる。
【0026】
アクリロニトリル単位の含有量は、好ましくは20重量部以上45重量部以下であり、より好ましくは20重量部以上40重量部以下であり、より好ましくは25重量部以上35重量部以下である。アクリロニトリル単位の含有量が20重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子は、(a)ガスバリア性に優れるためVOCとしてのスチレンの放出量が少なく、かつ(b)耐熱性に優れる、発泡成形体を提供できる。アクリロニトリル単位の含有量が45重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子は成形性に優れ、かつ発泡性樹脂粒子の製造時に重合安定性が増す。
【0027】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子は、本発泡性樹脂粒子を発泡し得られた発泡粒子表面のATR-FTIR分析で得られた赤外吸収スペクトルのうち、2230cm-1での吸光度D2230と1600cm-1での吸光度D1600とを求め、D2230/D1600の吸光度比が0.8以上であることを特徴とする。尚、D2230/D1600の吸光度比の好ましい範囲は1.2以上2.5以下である。D2230/D1600の吸光度比が0.8以上であることで、発泡成形体から放散されるVOC成分を大幅に抑制できる。
【0028】
本明細書において「ATR-FTIR分析」とは、「全反射測定法によるフーリエ変換赤外分光分析」を意図する。
【0029】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位として、さらにアルファメチルスチレン単位を含んでも良い。アルファメチルスチレンを追加すれば、基材樹脂のガラス転移温度が上昇するため、発泡性樹脂粒子は、十分な耐熱性を有する発泡成形体を提供できる。
【0030】
本明細書において、「アルファメチルスチレン単位」とは、アルファメチルスチレン単量体に由来する構成単位である。
【0031】
アルファメチルスチレン単位の含有量は、基材樹脂におけるスチレン単位、アクリロニトリル単位及びアルファメチルスチレン単位の合計含有量が100重量部である場合に、3重量部以上15重量部以下が好ましく、より好ましくは4重量部以上10重量部以下であり、更に好ましくは4重量部以上7重量部以下である。アルファメチルスチレンはアルファ位にメチル基があり、立体障害が大きく、それ故に、反応性が乏しいという特徴がある。また、アルファメチルスチレンが基材樹脂に含まれる場合、基材樹脂中のアルファメチルスチレン部位は分解しやすいという特徴がある。それ故に、アルファメチルスチレン単位の含有量が3重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子の製造時に、重合速度が速くなりすぎないため重合を制御しやすいものとなる。また、アルファメチルスチレン単位の含有量が15重量部以下である場合、(a)得られる基材樹脂が分解しにくいため、発泡性樹脂粒子は難燃性に優れる発泡成形体を提供でき、(b)重合反応時の反応性が悪化しないため得られる基材樹脂の重量平均分子量は低くなりすぎず、かつ(c)発泡性樹脂粒子はVOCとしてスチレン含有量が少ないものとなる。
【0032】
本発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂において、(a)(a-1)スチレン単位の含有量は55重量部以上80重量部以下であり、アクリロニトリル単位の含有量は20重量部以上45重量部以下であり、アルファメチルスチレン単位の含有量は0重量部以上15重量部以下であり、かつ(a-2)スチレン単位、アクリロニトリル単位およびアルファメチルスチレン単位の合計含有量は100重量部であることが好ましく、(b)(b-1)スチレン単位の含有量は60重量部以上80重量部以下であり、アクリロニトリル単位の含有量は20重量部以上40重量部以下であり、アルファメチルスチレン単位の含有量は0重量部以上15重量部以下であり、かつ(b-2)スチレン単位、アクリロニトリル単位およびアルファメチルスチレン単位の合計含有量は100重量部であることが好ましく、(c)(c-1)スチレン単位の含有量は60重量部以上75重量部以下であり、アクリロニトリル単位の含有量は21重量部以上27重量部以下であり、アルファメチルスチレン単位の含有量は3重量部以上15重量部以下であり、かつ(c-2)スチレン単位、アクリロニトリル単位およびアルファメチルスチレン単位の合計含有量は100重量部であることがより好ましい。
【0033】
本発泡性樹脂粒子が含む発泡剤としては、(a)プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、およびネオペンタンシクロへキサンなどの炭化水素などの脂肪族炭化水素類、および(b)ジフルオロエタン、およびテトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類、などの揮発性発泡剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述した発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発泡性樹脂粒子における発泡剤の含有量は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上7重量部以下であることが好ましく、3重量部以上6重量部以下であることがより好ましく、4重量部以上5重量部以下であることがさらに好ましい。上記構成によれば、(a)発泡性樹脂粒子を用いて発泡倍率40倍以上の発泡粒子を製造することが可能となり、(b)発泡性樹脂粒子は耐熱性および難燃性に優れる発泡成形体を提供できる。
【0035】
本発泡性樹脂粒子は、基材樹脂および発泡剤に加えて、任意でその他の添加剤を含んでいてもよい。上記その他の添加剤としては、可塑剤、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、熱線輻射抑制剤、顔料、染料および帯電防止剤などが挙げられる。
【0036】
可塑剤としては、沸点が200℃以上の高沸点可塑剤が挙げられる。そのような可塑剤としては、例えば、(a)ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどの脂肪酸グリセライド、(b)ヤシ油、パーム油、パーム核油などの植物油、(c)ジオクチルアジペート、ジブチルセバケートなどの脂肪族エステル、および(d)流動パラフィン、シクロヘキサンなどの有機炭化水素、などが挙げられる。発泡性樹脂粒子がこれら可塑剤として挙げた物質を多量に含む場合、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体の耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、本発泡性樹脂粒子における可塑剤の含有量は、当該発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体が所望の耐熱性を有するように、適宜設定され得る。
【0037】
本発泡性樹脂粒子は、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体における気泡径を調整するために、気泡調整剤を含んでいてもよい。上記気泡調整剤としては、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどの脂肪族ビスアマイド、および(b)ポリエチレンワックスなどが挙げられる。本発泡性樹脂粒子における気泡調整剤の含有量は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して0.1重量部未満であることが好ましい。上記構成によれば、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体において、気泡の微細化に起因する、耐熱性の悪化およびVOC放散量の増加などが生じない。
【0038】
本発泡性樹脂粒子は、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体が難燃性を得るために、難燃剤を含んでいてもよい。上記難燃剤としては臭素系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤としては、2,2-ビス[4’-(2’’,3’’-ジブロモ-2’’-メチルプロピルオキシ)-,3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパン、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、臭素化ポリスチレン、および臭素化ブタジエン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体が難燃性を得やすいことから、本発泡性樹脂粒子は、難燃剤として、2,2-ビス[4’-(2’’,3’’-ジブロモ-2’’-メチルプロピルオキシ)-,3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンを含むことが好ましい。なお、2,2-ビス[4’-(2’’,3’’-ジブロモ-2’’-メチルプロピルオキシ)-,3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンは、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテルとも称する。
【0039】
本発泡性樹脂粒子における難燃剤の含有量は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して1.5重量部以上3.0重量部以下であることが好ましく、1.8重量部以上2.5重量部以下であることがより好ましい。発泡性樹脂粒子における難燃剤の含有量が発泡性樹脂粒子100重量部に対して、(a)1.5重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は十分な難燃性能を得ることができ、(b)3.0重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子はVOC含有量が少なく、かつ成形性に優れるものとなる。
【0040】
本発泡性樹脂粒子が難燃剤を含む場合、発泡性樹脂粒子は、さらに難燃助剤を含むことが好ましい。上記難燃助剤としては、過酸化物などのラジカル発生剤が用いられ得る。そのようなラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、および3,4-ジアルキル-3,4-ジフェニルヘキサンなどが挙げられる。重合反応への影響が小さく、かつ良好な難燃性能を有する発泡成形体を提供できることから、本発泡性樹脂粒子は、難燃助剤として、10時間半減期温度が130℃以上150℃以下である過酸化物を含むことがより好ましく、ジクミルパーオキサイドを含むことが特に好ましい。
【0041】
本発泡性樹脂粒子における難燃助剤の含有量は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して0.3重量部以上1.5重量部以下であることが好ましい。発泡性樹脂粒子における難燃剤の含有量が発泡性樹脂粒子100重量部に対して、(a)0.3重量部以上である場合、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は十分な難燃性能を有し、(b)1.5重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は十分な耐熱性を有する。
【0042】
本発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量は20ppm未満であり、かつ、エチルベンゼンの含有量は130ppm以下であることが好ましい。本発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量は、より好ましくは10ppm以下であり、更に好ましくは5ppm以下である。特に好ましくは0ppm以下である。0ppmとはガスクロマトグラフィーにおける検出限界以下を示す。本発泡性樹脂粒子中のエチルベンゼンの含有量は、より好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは70ppm以下である。上記構成によれば、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は、環境中に放出されるVOC放散量を低減でき、その結果、人体への悪影響を抑えることが可能となる。ここで、発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量とは、発泡性樹脂粒子中のスチレン単量体の含有量を意図しており、発泡性樹脂粒子中のエチルベンゼンの含有量とは、発泡性樹脂粒子中のエチルベンゼン単量体の含有量を意図している。発泡性樹脂粒子中のスチレンおよびエチルベンゼンの含有量(すなわちVOC含有量)の測定方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィーを用いた測定方法が挙げられる。具体的な方法は、後述の実施例にて説明する。
【0043】
本発泡性樹脂粒子は、基材樹脂の重量平均分子量が15万以上22万以下であることが好ましく、より好ましくは17万以上20万以下である。基材樹脂の重量平均分子量が、(a)15万以上である場合、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は、十分な強度、難燃性、および耐熱性を有するものとなり、(b)22万以下である場合、十分な発泡力を有し、発泡性樹脂粒子の成形性が良好となる。基材樹脂の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定方法が挙げられる。
【0044】
本発泡性樹脂粒子は、重量平均分子量が15万以上22万以下であることが好ましく、より好ましくは17万以上20万以下である。発泡性樹脂粒子の重量平均分子量が、(a)15万以上である場合、得られる発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体は、十分な強度、難燃性、および耐熱性を有するものとなり、(b)22万以下である場合、十分な発泡力を有し、発泡性樹脂粒子の成形性が良好となる。発泡性樹脂粒子の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定方法が挙げられる。
【0045】
(発泡性樹脂粒子のTH/TQ比)
本発泡性樹脂粒子のTH/TQ比について説明する。発泡性樹脂粒子について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてGPC測定を行い、GPC測定チャートを得る。ここで、GPC測定チャートは、分子量と微分分布値との関係チャートであり、横軸が分子量、縦軸が微分分布値であるグラフとして得られる。なお、ここで、横軸は対数(Log)で表すものとする。発泡性樹脂粒子のGPC測定チャートの一例を、
図1に示す。
【0046】
図1は、発泡性樹脂粒子のGPC測定チャートの一例を示す図である。GPC測定チャートのGPC曲線上における積分分布値が最も高くなる点をピークトップとし、
図1に示すように点Pとする。次に、点P(ピークトップ)を通り、グラフの横軸に対して垂直な線L
1を引く。線L
1とGPC曲線との交点が点Pとなり、線L
1とグラフの横軸との交点を点Sとする。線分PSについて、点Pから線分PSの2/3の長さにあたる点を点Tとする。すなわち、線分STの長さは、線分PTの長さの2倍の長さとなる。次に、点Tを通り、グラフの横軸に平行な線L
2を引く。線L
2とGPC曲線との2つの交点のうち、線L
1よりも左側(低分子量側)の交点を点Qとし、線L
1よりも右側(高分子量側)の交点を点Hとする。線分THの長さに対する線分TQの長さの比を、TH/TQ比とする。TH/TQ比が大きいほど、発泡性樹脂粒子は高分子量の成分が多いことを表す。発泡性樹脂粒子の製造において、基材樹脂の組成は変化せず、かつ発泡剤はTH/TQ比に影響を与えないため、発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、基材樹脂のTH/TQ比ともいえる。すなわち、発泡性樹脂粒子の原料である基材樹脂を解析して得られたTH/TQ比は、当該発泡性樹脂粒子のTH/TQ比とみなすことができる。なお、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いる発泡性樹脂粒子のGPC測定の条件等については、下記実施例にて詳述する。
【0047】
発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、1.20未満であってもよく、1.19以下であってもよく、1.18以下であってもよく、1.17以下であってもよく、1.16以下であってもよく、1.15以下であってもよく、1.14以下であってもよく、1.13以下であってもよく、1.12以下であってもよく、1.11以下であってもよく、1.10以下であってもよく、1.10未満であってもよい。発泡性樹脂粒子のTH/TQ比が低くなるのは、発泡性樹脂粒子の製造における共重合工程(基材樹脂の調製工程)において、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を使用したときに現れる特徴である。換言すれば、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を含む重合開始剤を使用して製造された発泡性樹脂粒子は、上述した範囲内のTH/TQ比を有し得る。すなわち、後述する<発泡性樹脂粒子の製造方法>の項に記載の製造方法によって製造された発泡性樹脂粒子は、上述した範囲内のTH/TQ比を有し得る。また、後述する重合開始剤(X)の中でも、重合開始剤(X)として過酸化ベンゾイル(別名;ジベンゾイルパーオキサイド)、ジトルイルパーオキサイド及びトルイルベンゾイルパーオキサイドなどを使用する場合、重合開始剤(X)としてジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートを使用する場合と比較して、より低いTH/TQ比を有する発泡性樹脂粒子が得られ得る。構成単位としてアクリロニトリル単位を含む基材樹脂を含み、かつTH/TQ比が1.20未満である発泡性樹脂粒子は、VOC含有量が少ない傾向がある、ともいえる。また、構成単位としてアクリロニトリル単位を含む基材樹脂を含み、かつTH/TQ比が1.20未満である発泡性樹脂粒子は、VOC放散量が少ない成形体を提供できる傾向がある、ともいえる。また、TH/TQ比が1.20未満である発泡性樹脂粒子は、高倍化しやすく、すなわち発泡させやすいという利点も有する。
【0048】
発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、0.90以上が好ましく、1.00以上がより好ましい。TH/TQ比が0.90以上である発泡性樹脂粒子は、耐熱性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0049】
発泡性樹脂粒子の製造において、基材樹脂の組成は変化しない。また、発泡性樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子において、当該発泡性樹脂粒子の構造は変化するが、発泡性樹脂粒子の組成は変化しない。また、発泡性樹脂粒子を用いて製造された発泡粒子、を用いて製造された発泡成形体において、当該発泡粒子の構造は変化するが、発泡粒子の組成は変化しない。したがって、発泡性樹脂粒子、発泡粒子、または発泡成形体を解析して得られた、構成単位の種類および各構成単位の含有量、並びに重量平均分子量は、それぞれ、それらの原料である基材樹脂に含まれる構成単位の種類および各構成単位の含有量、並びに基材樹脂の重量平均分子量であるとみなすことができる。また、発泡粒子、または発泡成形体を解析して得られたTH/TQ比は、それらの原料である発泡性樹脂粒子のTH/TQ比であるとみなすことができる。
【0050】
発泡性樹脂粒子、発泡粒子、または発泡成形体の重量平均分子量は、発泡性樹脂粒子、発泡粒子、または発泡成形体について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することにより、得ることができる。基材樹脂、発泡粒子、または発泡成形体のTH/TQ比は、基材樹脂、発泡粒子、または発泡成形体について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてGPC測定を行い、GPC測定チャートを得る以外、発泡性樹脂粒子のTH/TQ比と同様の方法により、算出することができる。
【0051】
<発泡性樹脂粒子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法は、スチレン単量体及びアクリロニトリル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1重合工程及び第2重合工程を含む。
【0052】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子の製造方法」を、単に「本製造方法」と称する場合もある。すなわち、用語「本製造方法」は、本発明における発泡性樹脂粒子の製造方法の一実施形態を意図する。なお、本製造方法における「共重合体」は、<発泡性樹脂粒子>の項で説明した発泡性樹脂粒子が含む「基材樹脂」に相当する。
【0053】
以下、本製造方法に関する各工程について説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、<発泡性樹脂粒子>の項の記載を援用する。また、本発泡性樹脂粒子、すなわち<発泡性樹脂粒子>の項で説明した発泡性樹脂粒子は、本製造方法によって製造されることが好ましいが、本製造方法以外の方法によって製造されてもよい。すなわち、本発泡性樹脂粒子の製造方法は以下に説明するような本製造方法の態様に限定されるものではない。
【0054】
スチレン単量体は、その製造過程で使用されたエチルベンゼン単量体を少量含み得る。本製造方法で使用するスチレン単量体は、スチレン単量体中のエチルベンゼン単量体の含有量が少ないほど好ましく、例えば、130ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、85ppm以下であることがさらに好ましく、70ppm以下であることが特に好ましい。エチルベンゼン単量体含有量の少ないスチレン単量体を用いることで、本製造方法により得られた発泡性樹脂粒子は、エチルベンゼンの放散量が更に少ない発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0055】
本製造方法が有する共重合工程では、スチレン単量体およびアクリロニトリル単量体を含む単量体を共重合する方法は特に限定されず、従来公知の重合方法を使用できる。共重合工程は、水性懸濁液中で重合を行う懸濁重合法が好ましい。
【0056】
本明細書において、「水性懸濁液」とは、攪拌機などを用いて、樹脂粒子、発泡性樹脂粒子および/または単量体液滴を、水または水溶液中に分散させた状態の液体(水溶液)を指す。水性懸濁液中には、界面活性剤および単量体が溶解していても良く、または、水に不溶の分散剤、重合開始剤、架橋剤、可塑剤、気泡調整剤、難燃剤、および難燃助剤などが単量体と共に分散していても良い。なお、共重合工程で使用した重合開始剤、架橋剤、連鎖移動剤および重合調整剤は、得られる共重合体の一部を構成する。
【0057】
共重合工程において、水性懸濁液における樹脂と水との重量比は、得られる共重合体の重量/水の重量の比として、1.0/0.6~1.0/3.0であることが好ましい。
【0058】
共重合工程において使用できる分散剤としては、例えば、(a)第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩、および(b)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子などが挙げられる。分散剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、分散安定性が増すため、α-オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を難水溶性無機塩と併用することが好ましい。これらの分散剤は必要に応じて共重合工程の任意の時点で、水性懸濁液にさらに追加しても良い。
【0059】
分散剤の使用量は、分散剤の種類に依存する。分散剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、分散剤の使用量は、水100重量部に対して0.1重量部以上1.5重量部以下であることが好ましい。分散剤として水溶性高分子を使用する場合には、分散剤は水性懸濁液中30ppm以上100ppm以下となるように使用することが好ましい。また、難水溶性無機塩と共にアニオン系界面活性剤を併用する場合には、アニオン系界面活性剤は水性懸濁液中30ppm以上100ppm以下となるように使用することが好ましい。
【0060】
本製造方法における共重合工程では、さらに、連鎖移動剤および重合調整剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系の化合物が挙げられる。重合調整剤としては、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。α-メチルスチレンダイマーは、共重合体の重量平均分子量の調整にも寄与しているため、連鎖移動剤ともいえる。連鎖移動剤は、主に、共重合体の重量平均分子量を調整するために機能する。重合調整剤は、主に、重合速度を調整するために機能する。
【0061】
共重合工程では、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマーを使用することが好ましい。上記構成によれば、(a)重合速度、および共重合体の重量平均分子量を調整しやすく、かつ(b)発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体から臭気が発生しにくくなる。
【0062】
連鎖移動剤および重合調整剤の使用量としては、(a)重合速度、および(b)共重合体の重量平均分子量を調整しやすい点から、単量体100重量部に対して0.6重量部以上であることが好ましく、1.4重量部以上であることがより好ましい。
【0063】
重合開始剤として、第1重合工程では重合開始剤(X)の重合開始剤を主に使用し、第2重合工程では重合開始剤(Y)を主に使用することが望ましい。
【0064】
第1重合工程は、第2重合工程と重合温度が異なる限り、重合温度および重合時間などの構成は特に限定されない。第1重合工程の重合温度は例えば85℃~95℃であり、第1重合工程の重合時間は例えば4時間~7時間である。
【0065】
第1重合工程の重合温度は87℃~93℃が好ましく、88℃~92℃がより好ましく、89℃~91℃が特に好ましい。当該構成によると、(a)D2230/D1600が0.80以上である発泡性樹脂粒子、すなわちVOC含有量(放散量)が少ない発泡性樹脂粒子を容易に得ることができるという利点を有する。また、当該構成によると、重合開始剤(例えば重合開始剤(X))の分解量を最適な範囲で調整することができる。これにより、(a)重合速度(反応速度)の調整が容易となることから重合安定性が向上し、かつ(b)適正な分子量範囲の発泡性樹脂粒子を容易に得ることができる。
【0066】
第1重合工程の重合時間は4.5時間~6.5時間が好ましく、5時間~6時間が特に好ましい。当該構成によると、生産性と重合安定性とを両立できるという利点を有する。
【0067】
第1重合工程では、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である、重合開始剤(X)の重合開始剤を使用することが好ましい。
【0068】
第1重合工程では、(a)10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を使用し、かつ(b)85℃以上95℃以下の重合温度にて重合反応を行うことが好ましい。上記構成によれば、重合反応を適切に制御できる。
【0069】
第1重合工程における重合開始剤(X)としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレートなどの有機過酸化物、および(b)アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤(X)としては、これら重合開始剤の中で、ガスバリア性を付与できるアクリロニトリルが反応しやすくなる点で過酸化ベンゾイルを使用することが特に好ましい。
【0070】
上述した重合開始剤(X)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
重合開始剤(X)としては、10時間半減期温度が74℃以上90℃未満である重合開始剤のみを使用することがより好ましい。すなわち、第1重合工程では、(a)重合開始剤(X)として、10時間半減期温度が74℃以上90℃未満である重合開始剤のみを使用することがより好ましく、(b)(b-1)重合開始剤(X)として、10時間半減期温度が74℃以上90℃未満である重合開始剤のみを使用し、かつ(b-2)85℃以上95℃以下の重合温度にて重合反応を行うことがさらに好ましい。上記構成によれば、第1重合工程で使用する重合開始剤(X)が、主に、第1重合工程で分解するため、重合反応をより適切に制御できる。
【0072】
第1重合工程では、重合開始剤(X)の重合開始剤を使用し、かつ、重合開始剤(X)の重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.25重量部以下であることが好ましく、0.15重量部0.20重量部以下であることがより好ましい。第1重合工程において、重合開始剤(X)の使用量が単量体100重量部に対して、(a)0.08重量部以上である場合、重合が十分に進行するという利点を有し、(b)0.25重量部以下である場合、重合反応が急速に進むことがなく、重合の制御が容易となる。尚、重量開始剤(X)の使用量が0.15重量部0.20重量部以下であれば、得られる発泡性樹脂粒子の重量平均分子量が17万以上20万未満となり良好な品質の発泡性樹脂粒子が得られる。
【0073】
本製造方法では、重合開始剤、連鎖移動剤および第1重合工程の重合条件を様々に組み合わせることによって、共重合体の重量平均分子量を調整できる。
【0074】
第2重合工程は、単量体の重合転化率が85%に到達した後の任意の時点において、第1重合に連続して行われる。
【0075】
ここで、単量体の重合転化率は、以下のように算出される:
単量体の重合転化率(%)=(水性懸濁液に供給した単量体の量-水性懸濁液中に残存している単量体の量)/水性懸濁液に供給した単量体の量×100
上記「水性懸濁液に供給した単量体の量-水性懸濁液中に残存している単量体の量」は、換言すれば、共重合体中に構成単位として含まれた単量体の量ともいえる。また、「水性懸濁液中に残存している単量体の量」は、例えば、水性懸濁液を濾紙などにより濾過し、濾紙上に得られた残渣(単量体を含み得る)をガスクロマトグラフィーに供することによって、測定することができる。
【0076】
第2重合工程の重合温度は第1重合工程の重合温度と異なり、第2重合工程の重合温度は110~120℃が好ましい。第2重合工程の重合温度が、(a)110℃未満の場合、得られる発泡性樹脂粒子中のVOC含有量(特にスチレン含有量)を低減できず、(b)120℃を超える場合、共重合工程で使用する重合機の内圧が高くなるため、高耐圧性が要求される結果、重装備の重合機が必要となる。第2重合工程の重合温度は、第1重合工程よりも重合温度が高いことが好ましい。上記構成によれば、得られる発泡性樹脂粒子中のVOC含有量を低減できる。
【0077】
第2重合工程の重合時間は3~13時間が好ましく、4~11時間がより好ましく、5~9時間がさらに好ましく、6~8時間が特に好ましい。第2重合工程の重合時間が、(a)3時間未満である場合、得られる発泡性樹脂粒子中のVOC含有量(特にスチレン含有量)を低減できず、(b)8時間を超える場合、難燃助剤(例えばジクミルパーオキサイド)の分解量が多くなるため、発泡成形体の燃焼時に難燃助剤の効果が十分に発現されず、その結果、難燃性が悪化する傾向がある。
【0078】
第2重合工程の重合温度は111℃~119℃が好ましく、112℃~118℃がより好ましく、113℃~117℃がさらに好ましく、114℃~116℃が特に好ましい。当該構成によると、使用する重合機の重合機内部圧力の上限以下で、効率的にVOCを低減できるという利点を有する。
【0079】
第2重合工程の重合時間は4時間~11時間が好ましく、5時間~9時間がより好ましく、6時間~8時間が特に好ましい。当該構成によると、難燃性などの品質を維持しつつVOCを低減できるという利点を有する。
【0080】
第2重合工程では、10時間半減期温度が90℃以上100℃以下である重合開始剤(Y)を使用することが好ましく、10時間半減期温度が90℃以上100℃以下である重合開始剤(Y)を主に使用することがより好ましい。
【0081】
重合開始剤(Y)としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートおよび1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどが挙げられる。これら重合開始剤(Y)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。重合開始剤(Y)は、第2重合工程において好適に使用できる。
【0082】
なお、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンは、2段階で開裂が起こる。開裂前の1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンが1段階目の開裂を生じるときの10時間半減期温度は90℃である。1段階目の開裂後で生じた中間生成物が、2段階目の開裂を生じるときの10時間半減期温度は、1段階目の10時間半減期温度よりも5℃程度上がり、95℃以上となる。1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとしては、2段階目の開裂後に生じた最終生成物が主に第2重合工程で作用する。そのため、本明細書において、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンは、重合開始剤(X)とはみなさず、重合開始剤(Y)とみなす。
【0083】
重合開始剤(Y)として、特に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート及びt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートは、発泡性樹脂粒子中又は水性懸濁液中に残存しているスチレンとアクリロニトリルとの反応が促進される点で好ましい。
【0084】
第2重合工程における重合開始剤(Y)の使用量は、単量体100重量部に対して0.25重量部以上0.90重量部以下であることが好ましく、0.28重量部以上0.60重量部以下であることがより好ましい。この範囲であれば、発泡性樹脂粒子中又は水性懸濁液中に残存するスチレンとアクリロニトリルが反応しやすくなり、発泡性樹脂粒子の表層におけるスチレンーアクリロニトリル共重合体の割合が増加する傾向にある。
【0085】
第2重合工程は、発泡剤含浸工程と兼ねて行われてもよく、すなわち、発泡剤の存在下で行われてもよい。
【0086】
発泡剤含浸工程は、発泡剤を水性懸濁液中に添加することで開始され、具体的な処理温度(含浸温度とも称する。)および処理時間(含浸時間とも称する。)は特に限定されない。
【0087】
発泡性樹脂粒子が含む基材樹脂における高分子鎖間の結合力の強さと、発泡性樹脂粒子の製造における共重合体への発泡剤の含浸効率とは反比例の関係性がある。本製造方法は、高分子鎖間の結合力が強い基材樹脂を含む発泡性樹脂粒子を提供できる。そのため、共重合体に発泡剤を十分に含浸させる観点から、本製造方法における発泡剤含浸工程では、含浸温度は110℃~120℃であることが好ましく、111℃~119℃がより好ましく、112℃~118℃がさらに好ましく、114℃~116℃が特に好ましい。共重合体に発泡剤を十分に含浸させる観点から、本製造方法における発泡剤含浸工程では、含浸時間は3時間~13時間であることが好ましく、4時間~11時間がより好ましく、5時間~9時間がさらに好ましく、6時間~8時間が特に好ましい。なお、第2重合工程が発泡剤含浸工程を兼ねて行われる場合、すなわち第2重合工程及び発泡剤含浸工程が一緒に行われる場合、第2重合工程の重合温度は発泡剤含浸工程の含浸温度といえ、第2重合工程の重合時間は発泡剤含浸工程の含浸時間といえる。
【0088】
本製造方法は、発泡性樹脂粒子を乾燥処理する乾燥工程をさらに含むことが好ましい。発泡性樹脂粒子は水性懸濁液中に分散した状態で得られる。そのため、本製造方法が乾燥工程を含む場合には、得られた発泡性樹脂粒子を発泡粒子の製造などに好適に利用できる。
【0089】
乾燥工程において、発泡性樹脂粒子を乾燥処理する方法は特に限定されず、例えば、溝型または円筒型撹拌乾燥器、箱型またはバンド型の通気乾燥器、流動層乾燥器などを用いることができる。
【0090】
乾燥工程における乾燥処理は、発泡性樹脂粒子の発泡温度以下の温度で実施されることが好ましく、生産性の観点から、30℃~55℃にて実施されることがより好ましい。乾燥処理が実施される温度(処理温度、とも称する。)を調整することによって、得られる発泡性樹脂粒子の含水量を調整できる。乾燥工程における乾燥処理温度が、(a)30℃以上である場合、含水量が多くなりすぎないため、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡粒子において気泡の微細化を抑制し、VOC放散量を少なくでき、(b)55℃以下である場合、含水量が少なくなりすぎないため、発泡性樹脂粒子が提供し得る発泡成形体において難燃性が悪化する虞がない。
【0091】
重合開始剤(X)は少なくとも過酸化ベンゾイルを含むことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る製造方法のさらに好ましい態様は、発泡性樹脂粒子の製造方法であって、スチレン単量体およびアクリロニトリル単量体を含む単量体(単量体混合物)を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1重合工程及び第2重合工程を含み、前記第1重合工程では、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を含む重合開始剤を使用し、前記重合開始剤(X)は、過酸化ベンゾイルを含み、前記発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、1.20未満であることを特徴とする、発泡性樹脂粒子の製造方法である。当該構成によると、VOC放散量が少ない発泡成形体、換言すれば生産性の高い発泡成形体を提供し得る発泡性樹脂粒子を提供できる。
【0092】
第1重合工程における過酸化ベンゾイルの使用量は、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.25重量部以下であることが好ましく、0.15重量部0.20重量部以下であることがより好ましい。当該構成によると、VOC放散量がより少ない発泡成形体、換言すれば生産性のより高い発泡成形体を提供し得る発泡性樹脂粒子を提供できる。
【0093】
<発泡成形体及びその製造方法>
発泡性樹脂粒子は、一般的な発泡方法によって、発泡粒子とすることができる。具体的な発泡方法としては、下記(1)~(3)を順次行う方法が挙げられる:(1)攪拌機を具備した容器内に発泡性樹脂粒子を入れ、(2)水蒸気などの熱源により発泡性樹脂粒子を加熱することにより、(3)所望の発泡倍率に到達するまで発泡を行い、発泡粒子を得る。なお、発泡粒子を予備発泡粒子と称する場合もあり、それ故に、予備発泡粒子を得るための発泡方法を予備発泡方法と称する場合もある。
【0094】
本発明の一実施形態に係る発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子もまた、本発明の一実施形態である。本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、VOC放散量が少ない発泡成形体、換言すれば生産性の高い発泡成形体を提供できる。
【0095】
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の別の一実施形態に係る発泡粒子は、発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子であり、前記発泡性樹脂粒子は、(a)構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、(b)発泡剤とを含み、前記発泡粒子の表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上である。
【0096】
本発明の一実施形態に係る発泡粒子は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の別の一実施形態に係る発泡粒子は、(a)構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含み、(b)当該発泡粒子の表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上である。
【0097】
発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形することにより、発泡成形体とすることができる。具体的な型内成形方法としては、閉鎖し得るが密閉し得ない金型内に発泡粒子を充填し、水蒸気により発泡粒子を加熱および融着することで発泡成形体とする方法が挙げられる。
【0098】
本発明の一実施形態に係る発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体もまた、本発明の一実施形態である。本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、VOC放散量が少ないという利点を有する。
【0099】
本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、スチレンの放出量が2ppm以下であり、かつ、エチルベンゼンの放出量が15ppm未満であることが好ましい。ここで、スチレンの放出量およびエチルベンゼンの放出量は、0.025gの発泡成形体を、容積20mlの容器内に60℃の条件下で2時間放置するとき、当該容器内に放出される放出量である。スチレン及びエチルベンゼンの放出量は、0.025gの発泡成形体を入れた容積20mlの容器内の気体中の濃度(ppm)として示す。本発明の一実施形態に係る発泡成形体におけるスチレンの放出量は、好ましくは1.5ppm以下であり、より好ましくは1.0ppm以下であり、さらに好ましくは0.6ppm以下であり、特に好ましくは0.5ppm以下である。本発明の一実施形態に係る発泡成形体におけるエチルベンゼンの放出量は、好ましくは13ppm未満であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは7ppm以下であり、特に好ましくは5ppm以下である。
【0100】
本明細書において、用語「放出量」および「放散量」は同義であり、相互置換可能である。
【0101】
本発明の一実施形態に係る発泡成形体におけるスチレンの放出量、エチルベンゼンの放出量が上述した範囲内であれば、発泡成形体を自動車内装材または建材用断熱材として使用するとき、シックハウス症候群など身体へ悪影響を与える虞がないという利点を有する。
【0102】
本明細書中では、「本発明の一実施形態に係る発泡成形体」を、単に「本発泡成形体」と称する場合もある。すなわち、用語「本発泡成形体」は、本発明における発泡成形体の一実施形態を意図する。
【0103】
本発泡成形体の酸素指数は、26%以上であることが好ましく、27%以上であることがより好ましく、28%以上であることがさらに好ましく、29%以上であることが特に好ましい。上記構成によれば、発泡成形体を自動車内装材または建材用断熱材として使用するとき、発泡成形体が十分な難燃性能を発揮することができるという利点を有する。
【0104】
本発泡成形体は、耐熱性に優れることが好ましい。例えば、本発泡成形体を保温材、または自動車部材として日光に当たる部分の材料として使用する場合には、本発泡成形体は、90℃以上で使用したときの変形が小さいことが好ましい。具体的には、発泡倍率40倍の発泡成形体を90℃の条件下で168時間放置する場合、放置前後の発泡成形体の寸法変化率が0.4%以下であることが好ましく、0.35%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましく、0.25%以下であることが特に好ましい。
【0105】
本発泡成形体は、表層の平均気泡径が50μm以上100μm未満であることが好ましく、60~90μmであることがさらに好ましい。平均気泡径が50μm以上である場合、(a)セル膜が十分な厚さを有するため温度に対する発泡成形体の寸法変化が小さくなり、(b)VOCおよび総VOCの放出量を低減でき、かつ(c)セル膜が十分な厚さを有するため、型内成形時の加圧蒸気によってセル膜が溶融することがなく、それ故に発泡成形体の表面性が良好となる。セル膜が薄い場合には、90℃以上の環境下にて、発泡成形体が膨らみ、発泡成形体の寸法安定性が悪くなる場合がある。高温環境下にて発泡成形体が膨らむことを、3次発泡と称する場合もある。平均気泡径が100μm未満である場合、発泡成形体の表面性が良好となる。
【0106】
なお、本明細書において、「表層の平均気泡径」とは、発泡成形体の表層の切断面の一直線上に存在する発泡粒子の平均弦長とする。当該平均弦長は、発泡成形体の切断面を投影した写真を用いて、ASTM-D-2842-97に準じて測定し、得られた値である。当該平均弦長は、発泡成形体の切断面を投影した写真において、発泡成形体の表層の切断面の一直線上に存在する発泡粒子10個を任意に選択し、かかる発泡粒子各々の弦長を測定し、その平均値とする。
【0107】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0108】
(X1)構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記発泡性樹脂粒子を発泡させた発泡粒子表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.80以上であることを特徴とする発泡性樹脂粒子。
【0109】
(X2)前記発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量は20ppm未満であり、かつ、エチルベンゼンの含有量は130ppm以下であることを特徴とする(X1)に記載の発泡性樹脂粒子。
【0110】
(X3)重量平均分子量が15万以上22万以下であることを特徴とする(X1)又は(X2)に記載の発泡性樹脂粒子。
【0111】
(X4)前記基材樹脂において、(a)前記スチレン単位の含有量は55重量部以上80重量部以下であり、前記アクリロニトリル単位の含有量は20重量部以上45重量部以下であり、かつ(b)前記スチレン単位およびアクリロニトリル単位の合計含有量は100重量部であることを特徴とする(X1)~(X3)のいずれか1つに記載の発泡性樹脂粒子。
【0112】
(X5)TH/TQ比は、1.20未満であることを特徴とする(X1)~(X4)のいずれか1つに記載の発泡性樹脂粒子。
【0113】
(X6)(X1)~(X5)のいずれか1つに記載の発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子。
【0114】
(X7)(X6)に記載の発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体。
【0115】
(X8)表層の平均気泡径が50μm以上100μm未満であることを特徴とする(X7)に記載の発泡成形体。
【0116】
(X9)スチレンの放散量が2ppm以下であり、かつエチルベンゼンの放散量が15ppm未満であることを特徴とする(X7)又は(X8)に記載の発泡成形体。
【0117】
(X10)発泡性樹脂粒子の製造方法であって、スチレン単量体およびアクリロニトリル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程は、重合温度が異なる連続した第1重合工程及び第2重合工程を含み、前記第1重合工程では、10時間半減期温度が74℃以上94℃以下である重合開始剤(X)を含む重合開始剤を使用し、前記重合開始剤(X)は、過酸化ベンゾイルを含み、前記発泡性樹脂粒子のTH/TQ比は、1.20未満であることを特徴とする、発泡性樹脂粒子の製造方法。
【0118】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0119】
(Y1)構成単位としてスチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子であって、前記発泡性樹脂粒子を発泡させた発泡粒子表面の赤外吸収スペクトルにおける波長2230cm-1及び波長1600cm-1での吸光度比D2230/D1600が0.8以上であることを特徴とする発泡性樹脂粒子。
【0120】
(Y2)前記発泡性樹脂粒子中のスチレンの含有量は20ppm未満であり、かつ、エチルベンゼンの含有量は130ppm以下であることを特徴とする(Y1)に記載の発泡性樹脂粒子。
【0121】
(Y3)重量平均分子量が15万以上22万以下であることを特徴とする(Y1)又は(Y2)に記載の発泡性樹脂粒子。
【0122】
(Y4)(Y1)~(Y3)のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子。
【0123】
(Y5)(Y4)に記載の発泡粒子を型内成形してなる発泡成形体。
【0124】
(Y6)表層の平均気泡径が50μm以上100μm未満であることを特徴とする(Y5)に記載の発泡成形体。
【0125】
(Y7)スチレンの放散量が2ppm以下であり、かつエチルベンゼンの放散量が15ppm未満であることを特徴とする(Y5)又は(Y6)に記載の発泡成形体。
【実施例】
【0126】
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0127】
実施例及び比較例で使用した重合開始剤、難燃剤、難燃助剤及び連鎖移動剤は、以下通りである。
重合開始剤(X):
過酸化ベンゾイル(ナイパーBW(日油社製))(10時間半減期温度74℃);および
ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート(カヤエステルHTP-65W(化藥アクゾ(株)製))(10時間半減期温度83℃);
重合開始剤(Y):
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE(日本油脂(株)製))(10時間半減期温度99℃);および
1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC(日本油脂(株)製))(10時間半減期温度90℃)
難燃剤:
テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル(ピロガードSR-130(第一工業製薬(株)製))。
難燃助剤:
ジクミルパーオキサイド(パークミルD(日本油脂(株)製))。
連鎖移動剤:
α-メチルスチレンダイマー(MSD(日本油脂(株)製))。
なお、実施例、及び比較例中の発泡性樹脂粒子の分子量、及び発泡性樹脂粒子中のスチレン及びエチルベンゼンの含有量、発泡性樹脂粒子の発泡性の評価については以下の方法で測定した。なお、「部」及び「%」はそれぞれ特に断りのない限り重量基準であり、「重量部」及び「%」をそれぞれ意図する。
【0128】
(重量平均分子量測定法)
発泡性樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン20ccに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製HLC-8020、カラム:TSKgel Super HZM-H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1min.)にて重量平均分子量Mwを測定した。重量平均分子量は標準ポリスチレンの換算値として求めた。得られた結果を表1および2に、「Mw(重量平均分子量)」として示した。
【0129】
(発泡性樹脂粒子のTH/TQ比の算出方法)
得られた発泡性樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、試料を得た。その後、得られた試料について、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、以下の条件にてGPC測定を行い、GPC測定チャートを得た。
測定装置:東ソー社製、高速GPC装置 HLC-8220
使用カラム:東ソー社製、SuperHZM-Hを2本、およびSuperH-RCを2本、合計4本
カラム温度:40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.35ml/分
注入量:10μl
検出器:RI。
【0130】
得られたGPC測定チャートのGPC曲線について、上述した方法によりTH/TQ比を求めた。得られた結果を表1および2に、「TH/TQ比」として示した。
【0131】
(発泡樹脂粒子中のスチレン及びエチルベンゼンの含有量の測定法)
発泡性樹脂粒子0.25gを塩化メチレン20cc(内部標準シクロペンタノールとともに)に溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC-2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1、カラム温度条件:50℃から80℃まで昇温(昇温速度3℃/min)後、80℃から180℃まで昇温(昇温速度10℃/min)、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、発泡性樹脂粒子中に含まれるスチレン及びエチルベンゼンを測定した。測定したスチレン及びエチルベンゼンの検量線を用いて、得られた結果から、発泡性樹脂粒子中のスチレン及びエチルベンゼンの含有量を定量した。得られた結果を表1および2に、「残存スチレンモノマー」及び「エチルベンゼン」として示した。
【0132】
(発泡性樹脂粒子の発泡性の評価)
発泡性樹脂粒子を100℃の蒸し器に入れ、5分間加熱することにより、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子10gを、1000cm3のメスシリンダーに入れ、発泡粒子の体積(cm3)を測定した。以下の式で、嵩倍率(cm3/g)を計算した。
【0133】
嵩倍率(cm3/g)=発泡粒子の体積(cm3)/10g
なお、この評価にて40倍未満となる場合は、加圧式予備発泡機にて予備発泡しても嵩倍率が40倍以上にならないので、この評価結果は発泡性の指標となる。得られた結果を表1および2に、「発泡性(40倍)」として示した。
〇(良好):50倍以上
△(合格):40倍以上
×(不良):40倍未満。
【0134】
発泡粒子の製造方法は以下の通りである。
【0135】
(発泡粒子の製造)
発泡性樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性樹脂粒子を分取した。
【0136】
分取した発泡性樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.09~0.10MPaの条件でかさ倍率40倍への予備発泡し、その後、予備発泡された粒子を常温下で1日放置して嵩倍率40倍の発泡粒子を得た。
【0137】
得られた発泡粒子について、以下の方法でブロッキング量を測定した。
【0138】
(予備発泡時のブロッキング量の測定法)
ブロッキングとは予備発泡操作時に発泡粒子同士が結合した塊である。ブロッキング量が多い場合は成形工程で充填不良が起こるため、ブロッキング量は少ない方が良い。尚、ブロッキング量の測定方法は以下の通りである。
【0139】
発泡操作により得られた発泡粒子全量を編み目間隔が1cmの金網に通す。金網に残った塊の重量を測定し、以下の式でブロッキング量を計算した。
ブロッキング量(%)=塊の重さ/発泡粒子全量の重さ×100
得られたブロッキング量からブロッキング性を以下の基準で判断した。得られた結果を表1および2に、「ブロッキング量」として示した。
〇(良好):0.05%未満
△(合格):0.01%未満0.05%以上
×(不良):0.1%以上。
【0140】
<吸光度比の測定>
得られた発泡性樹脂粒子の吸光度比は、予備発泡粒子(発泡粒子)を任意に10個採取し、それぞれ予備発泡粒子(発泡倍率40倍)の表面に対して、以下の条件にて、ATR法赤外分光分析(ATR-FTIR分析)を行って、赤外吸収スペクトルを得た。
装置 :FTIR[(株)島津製作所製、FTIR-8400S]に、1回反射型全反射(ATR)測定装置[PIKE社製、MIRacle]を接続
ATRプリズム(高屈折率結晶種):セレン化亜鉛(ZnSe)
入射角 :45°
測定領域 :4000cm-1~600cm-1
検出器 :DLATGS
もぐり込み深さ:1.66
反射回数 :1回
分解能 :4cm-1
積算回数 :20回
その他 :試料と接触させずに測定した赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとして、測定スペクトルに関与しない処理を実施した。
なお、ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合いによって測定で得られる赤外線吸収スペクトルの強度が変化するため、1600cm-1の吸光度が0.05~0.10となるように、試料と高屈折率結晶の密着度合いを調節して測定する。
【0141】
ここで、予備発泡粒子の表面を測定する場合は、粒子表面をそのままATRプリズムに密着させて測定した。
【0142】
以上のようにして得られた赤外線吸収スペクトルから、1600cm-1の吸光度と2230cm-1の吸光度との吸光度比を求めた(D2230/D1600)。本発明の一実施形態では、任意の10個の予備発泡粒子の表面において、ATR-FTIR測定を行い、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外する。そして、残余8個の吸光度比の相加平均を、吸光度比とした。
【0143】
吸光度比の測定に用いた予備発泡粒子(発泡粒子)は、後述する実施例および比較例にて得られた発泡性樹脂粒子を以下(1)~(3)の順で処理して得たものである:(1)発泡性樹脂粒子を加圧式の発泡機に投入した;(2)次に、吹き込み蒸気圧0.09MPa~0.10MPaにて発泡機に蒸気を吹き込み、かつ発泡機内の圧力を0.01MPa~0.02MPaの範囲で調製することにより、発泡機内の温度を100℃~104℃とし、これにより、発泡粒子を倍率40倍へ発泡させた;(3)次に、得られた発泡粒子を25℃で12時間~24時間養生し、赤外吸収スペクトルの測定に用いる発泡粒子を得た。
【0144】
発泡成形体の製造方法は以下の通りである。
【0145】
(発泡成形体の製造)
常温下で1日放置した嵩倍率40倍の予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、KR-57」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPa、加熱時間22秒で型内成形を行うことで、厚み20mmで長さ400mm×幅350mmの平板状の発泡成形体を得た。
【0146】
得られた発泡成形体について、以下の方法で、スチレン及びエチルベンゼンの放散量、表層の平均気泡径、及び耐熱性などを評価した。
【0147】
(発泡成形体からのスチレン及びエチルベンゼンの放散量の測定法)
発泡成形体から、0.025gとなるようにサンプル片を切り出した。サンプル片を、容積20mlの耐圧ガラス容器に入れ、島津製作所HS-10(GC-2014に連結されている)に設置した。HS-10の保管条件を60℃×2時間として、そのときに放出されるスチレン及びエチルベンゼンを採取した。発泡性樹脂粒子中のスチレン含有量の測定方法と同様の方法によって、島津製作所ガスクロマトグラフィーGC-2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1、カラム温度条件:50℃から70℃まで昇温(昇温速度3℃/min)後、70℃から180℃まで昇温(昇温速度10℃/min)、キャリアガス:ヘリウム)を用いて採集した各物質を測定した。測定したスチレン及びエチルベンゼンの検量線を用いて、得られた結果から、発泡成形体からのスチレン及びエチルベンゼンの放散量を定量した。スチレン及びエチルベンゼンの放散量は、サンプル片を入れた耐圧ガラス容器内の気体中の濃度(ppm)として示した。
【0148】
(表層の平均気泡径の測定)
発泡成形体の発泡粒子ごとの平均弦長を、ASTM-D-2842-97に準じて、発泡成形体の切断面を投影した写真を用いて測定した。具体的には、発泡成形体の切断面を投影した写真において、発泡成形体の表層の切断面の一直線上に存在する発泡粒子から平均弦長を測定した。なお、発泡成形体表層に存在する発泡粒子10個を任意に選択し、かかる発泡粒子各々の弦長の平均を最終的な数値(平均弦長)とした。本明細書では、このように得られた平均弦長を、発泡成形体の表層の平均気泡径とした。
【0149】
(耐熱性評価)
以下のように、(a)90℃における発泡成形体の寸法変化率を算出し、かつ(b)発泡成形体の表面の膨らみを観察することにより、発泡成形体の耐熱性を評価した。
【0150】
成形体倍率40倍の発泡成形体を60℃で、24時間乾燥させた。その後、発泡成形体から、長さ150、幅150、厚み20(t)mmのサンプル片を切り出した。サンプル片について、長さ方向と幅方向との寸法をそれぞれ3箇所ずつ測定することで初期の寸法(D)を求めた。その後、発泡成形体を90℃の乾燥機内で168時間放置し、放置した後に同様の測定を行い、90℃乾燥後の寸法(E)を求めた。以下の式により寸法変化率を求め、寸法変化率の絶対値が0.4以下、すなわち寸法変化率-0.4%~0.4%を合格とした。
【0151】
尚、寸法変化率が正の値である場合、初期(乾燥前)の寸法(D)が乾燥後の寸法(E)より大きいことを示し、すなわち発泡成形体が縮んだことを示す。また、寸法変化率が負の値である場合、乾燥後の寸法(E)が初期の寸法(D)より大きいことを示し、すなわち発泡成形体が膨らんだことを示す。
【0152】
寸法変化率(%)=((D)―(E))/(D)×100
寸法変化率の絶対値が0.4以下:〇(良好)
寸法変化率の絶対値が0.4超0.5以下:△(合格)
寸法変化率の絶対値が0.5超:×(不良)
(実施例1~10、比較例1~5)
撹拌機付き6Lオートクレーブに水110重量部、第3リン酸カルシウム0.105重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.0075重量部、並びに、表1に記載の量の重合開始剤、連鎖移動剤、難燃剤及び難燃助剤を仕込み、真空ポンプでゲージ圧-0.06MPaまで脱酸した。
【0153】
その後、攪拌機による原料の攪拌を開始し、表1に記載の量のスチレン単量体、アルファメチルスチレン単量体及びアクリロニトリル単量体をオートクレーブに仕込んで、さらに30分間これらの原料の攪拌を行った。その後、表1に記載の温度(第1の重合温度)及び時間(第1の重合時間)で第一の重合(第1重合工程)を実施した。その後、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン重量部/イソブタン重量部=70/30)を5重量部オートクレーブに仕込んだ。次いで、表1に示す温度(第2の重合温度)及び時間(第2の重合温度)で第二の重合(第2重合工程)をおこなった。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、脱水し、さらに乾燥することで発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性樹脂粒子について、上述した各種測定及び評価を行い、結果を表1及び2に記載した。
【0154】
得られた発泡性樹脂粒子を、上述した方法で予備発泡することで発泡粒子を得たのち、更に上述した方法で型内成形することで40倍の発泡成形体を得た。
【0155】
得られた発泡粒子及び発泡成形体について、上述した各種測定及び評価を行った。結果は表1及び2に記載した。
【表1】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の一実施形態によれば、VOCの含有量が少なく、VOCの放散量を抑制できる発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子(発泡粒子)並びに発泡成形体を提供できる。そのため、本発明の一実施形態は、自動車分野および建材分野において、好適に利用できる。