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特許7553433抗ヒト心筋トロポニンIの抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】抗ヒト心筋トロポニンIの抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240910BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240910BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
G01N33/53 D
G01N33/531 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021513274
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2019108683
(87)【国際公開番号】W WO2020073833
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】201811183025.4
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521204910
【氏名又は名称】ファポン バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FAPON BIOTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】メン,ユアン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】長井 啓子
【審判官】名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518418(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101942416(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107557345(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107561289(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103694355(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 1/00 - 19/00
C12Q 1/00 - 3/00
CAPLUS/REGISTRY/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメインを含む分離される結合タンパク質であって、
前記抗原結合ドメインは、以下のアミノ酸配列の6つの相補性決定領域を含み、
相補性決定領域CDR-VH1はA-S-X1-Y-T-F-X2-X3-Y-W-M-Yであり、ここで、X1がGであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-X1-N-P-S-X2-G-H-T-X3-Y-N-Q-X4-F-K-Dであり、ここで、X3がDであり、
相補性決定領域CDR-VH3はA-R-X1-Y-X2-G-P-F-X3-M-Dであり、ここで、X3がGであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-A-S-X1-X2-V-S-Y-X3-Hであり、ここで、X3がVであり、
相補性決定領域CDR-VL2はW-X1-Y-D-X2-S-K-X3-A-Sであり、ここで、X2がTであり、
相補性決定領域CDR-VL3はQ-X1-W-S-X2-X3-P-Y-Tであり、ここで、X1がQであり、
6つの前記相補性決定領域の突然変異部位は、以下の突然変異組合せから選ばれるいずれかの1種であ
配列が順に配列番号l乃至配列番号4で示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び、配列が順に配列番号5乃至配列番号8で示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む
ことを特徴とする結合タンパク質
【請求項2】
F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFvおよび二重特異性抗体のうちの1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
抗体定常領域の配列をさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記定常領域の配列は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれかの定常領域の配列である、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記定常領域は、牛、馬、乳牛、豚、綿羊、山羊、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、鹿、ミンク、鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥、闘鶏又はヒトに由来する、ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域の配列は配列番号9で示される、
重鎖定常領域の配列は配列番号10で示される、
ことを特徴とする請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質をコードする、
ことを特徴とする分離される核酸。
【請求項8】
請求項に記載の核酸を含む、
ことを特徴とするベクター。
【請求項9】
請求項に記載の核酸又は請求項に記載のベクターを含む、
ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項10】
培地において請求項に記載の宿主細胞を培養し、生じた結合タンパク質を培地又は培養された宿主細胞から回収するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の生産方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定なアンギナ、心筋障害を診断するための診断剤又はキットの製造における使用。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合タンパク質、請求項に記載の分離される核酸又は請求項に記載のベクターのうちの1種又は複数種を含む、ことを特徴とするキット。
【請求項13】
前記結合タンパク質を標識するためのマーカーをさらに含む、
ことを特徴とする請求項12に記載のキット
【請求項14】
テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法であって、
a)十分に抗体/抗原結合反応が発生できる条件において、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を請求項1に記載の結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップと
b)前記テストサンプル中の前記トロポニンI抗原の存在を指示する前記免疫複合体の存在を検出するステップとを含む、検出方法。
【請求項15】
前記免疫複合体は、前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)では、前記免疫複合体は、前記トロポニンI抗原に結合される第2の抗体をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記トロポニンI抗原が心筋トロポニンI抗原である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年10月10日に中国特許局に提出した、中国特許出願第201811183025.4号で、名称が「抗ヒト心筋トロポニンIの抗体及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張する。この中国特許出願の全文を本願に引用している。
【0002】
本開示は、バイオ技術及び医学技術分野に関し、特に抗ヒト心筋トロポニンIの抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
20世紀80年代以前に、世界保健機関(WHO)は、心筋ザイモグラムの活性を急性心筋梗塞(AMI)の診断基準の1つとしていた。20世紀80年代末に、研究者らは、トロポニン(troponin、Tn)の感度及び特異性がクレアチンフォスフォキナーゼ(CK)、クレアチンキナーゼアイソザイム(CK-MB)、乳酸脱水素酵素及びアスパラギン酸アミノ基転移酵素などのバイオマーカーより高いことを発見した。心筋トロポニンI(cTnI)は心筋にのみ存在し、心筋細胞のマーカーであり、その異常な変化は、心臓の拡張機能と収縮機能に影響を与える可能性があり、心筋壊死の診断、心筋障害(傷害)の判断などに使用することができ、心筋細胞損害の感度及び特異性が最も強いマーカーの1つとなっており、AMI及び急性冠症候群(acute coronary syndromes、ACS)を迅速に診断し、ACSリスクの層別化を支援し及びその予後を反映するための認められている主要な生化学的マーカーである。
【0004】
正常なヒトの血液中のcTnIの含有量は一般に0.3μg/Lより低い。虚血や酸素不足などにより、心筋細胞膜の完全性が損なわれると、遊離cTnIが細胞膜にすばやく浸透して血流に入る可能性がある。従って、発病の初期でのヒトの血液中のcTnI及びその変化傾向の迅速、高感度かつ正確な測定は、急性心筋梗死の診断、急性冠症候群のリスク層別化、様々な要因によって引き起こされる心筋障害のモニタリングなどにとって重要な臨床的意味を持っている。cTnIレベルを検出するための臨床的方法には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、化学発光、コロイド状金などがあり、様々な方法にはそれぞれの長所と短所があるため、cTnIの特異性モノクローナル抗体を必要としている。
【0005】
従来のcTnI抗体は、活性が低く、親和性が低く、cTnIタンパク質の検出にうまく適用できないため、本分野では、cTnIに効果的かつ特異的に結合して検出する抗体が当技術分野で強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、心筋トロポニンI(cTnI)の抗原結合ドメインを含む分離される結合タンパク質に関し、該結合タンパク質の製造、使用などについて研究する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記抗原結合ドメインは、以下のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は、以下のアミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し、かつcTnIとはKD≦7.51×10-8mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1はA-S-X1-Y-T-F-X2-X3-Y-W-M-Yであり、ここで、
X1がG又はDであり、X2がS又はTであり、X3がT又はSであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-X1-N-P-S-X2-G-H-T-X3-Y-N-Q-X4-F-K-Dであり、ここで、
X1がI又はLであり、X2がS又はTであり、X3がD又はEであり、X4がR又はKであり、
相補性決定領域CDR-VH3はA-R-X1-Y-X2-G-P-F-X3-M-Dであり、ここで、
X1がK又はRであり、X2がF、Y又はWであり、X3がG又はAであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-A-S-X1-X2-V-S-Y-X3-Hであり、ここで、
X1がS又はTであり、X2がT又はSであり、X3がA又はVであり、
相補性決定領域CDR-VL2はW-X1-Y-D-X2-S-K-X3-A-Sであり、ここで、
X1がI又はLであり、X2がT又はSであり、X3がL又はIであり、
相補性決定領域CDR-VL3はQ-X1-W-S-X2-X3-P-Y-Tであり、ここで、
X1がQ又はNであり、X2がT又はSであり、X3がQ又はNである。
1つの重要な利点は、前記結合タンパク質の活性が高く、ヒトのcTnIと非常に高い親和性を有することである。
【0008】
1つ又は複数の実施形態においては、
前記相補性決定領域CDR-VH1では、X1がGであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2では、X3がDであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3では、X3がGであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1では、X3がVであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2では、X2がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3では、X1がQである。
【0009】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がSであり、X3がTである。
【0010】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がSであり、X3がSである。
【0011】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がTであり、X3がTである。
【0012】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がTであり、X3がSである。
【0013】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がSであり、X4がRである。
【0014】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がTであり、X4がRである。
【0015】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がSであり、X4がKである。
【0016】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がTであり、X4がKである。
【0017】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がSであり、X4がRである。
【0018】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がTであり、X4がRである。
【0019】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がSであり、X4がKである。
【0020】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がTであり、X4がKである。
【0021】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がFである。
【0022】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がYである。
【0023】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がWである。
【0024】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がFである。
【0025】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がYである。
【0026】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がWである。
【0027】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がSであり、X2がTである。
【0028】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がSであり、X2がSである。
【0029】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、X2がTである。
【0030】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、X2がSである。
【0031】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がIであり、X3がLである。
【0032】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がIであり、X3がIである。
【0033】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がLであり、X3がLである。
【0034】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がLであり、X3がIである。
【0035】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がTであり、X3がQである。
【0036】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がTであり、X3がNである。
【0037】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がSであり、X3がQである。
【0038】
1つ又は複数の実施形態においては、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がSであり、X3がNである。
【0039】
1つ又は複数の実施形態においては、各相補性決定領域の突然変異部位は、以下の突然変異組合せから選ばれるいずれかの1種である。
【0040】
【0041】
1つ又は複数の実施形態においては、前記結合タンパク質は、少なくとも3つのCDRsを含むか、又は、前記結合タンパク質は、少なくとも6つのCDRsを含む。
【0042】
1つ又は複数の実施形態においては、前記結合タンパク質は、可変領域及び定常領域を含む完全な抗体である。
【0043】
1つ又は複数の実施形態においては、前記結合タンパク質は、ナノ抗体、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体最小識別単位のうちの1つである。
【0044】
1つ又は複数の実施形態においては、前記結合タンパク質は、配列が順に配列番号1乃至配列番号4で示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順に配列番号5乃至配列番号8で示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
【0045】
1つ又は複数の実施形態においては、前記結合タンパク質は、抗体定常領域の配列をさらに含む。
【0046】
1つ又は複数の実施形態においては、前記定常領域の配列は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれかの定常領域の配列である。
【0047】
1つ又は複数の実施形態においては、前記定常領域は、牛、馬、乳牛、豚、綿羊、山羊、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、鹿、ミンク、鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥、闘鶏又はヒトの物種に由来する。
【0048】
1つ又は複数の実施形態においては、前記定常領域はマウスに由来し、
軽鎖定常領域の配列は配列番号9で示され、
重鎖定常領域の配列は配列番号10で示される。
本開示は、上記結合タンパク質をコードする分離される核酸をさらに提供する。
本開示は、上記核酸を含むベクターをさらに提供する。
本開示は、上記核酸又はベクターを含む宿主細胞をさらに提供する
【0049】
本開示は、
培地において上記宿主細胞を培養し、生じた結合タンパク質を培地又は培養された宿主細胞から回収するステップを含む、上記結合タンパク質の生産方法をさらに提供する。
【0050】
本開示は、上記結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定なアンギナ、心筋障害を診断する診断剤又はキットの製造における使用をさらに提供する。
【0051】
本開示の一態様によれば、本開示は、
テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法であって、
a)十分に抗体/抗原結合反応が発生できる条件において、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を上記の結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップと、
b)前記テストサンプル中の前記トロポニンI抗原の存在を指示する前記免疫複合体の存在を検出するステップとを含む、検出方法にさらに関する。
【0052】
1つ又は複数の実施形態においては、前記トロポニンI抗原が心筋トロポニンI抗原である。
【0053】
1つ又は複数の実施形態においては、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含む。
【0054】
1つ又は複数の実施形態においては、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記トロポニンI抗原に結合される第2の抗体をさらに含む。
【0055】
一部のさらなる実施形態においては、本開示は、上記結合タンパク質、上記分離される核酸又は上記ベクターのうちの1種又は複数種を含むキットをさらに提供する。
【0056】
1つ又は複数の実施形態においては、前記キットは、前記結合タンパク質を標識するためのマーカーをさらに含む。
【0057】
本開示は、本明細書に記載の結合タンパク質の、心筋トロポニンIに関連する疾病の診断における使用にさらに関する。
【0058】
本開示は、
A)十分に結合反応が発生できる条件において、被験者からのサンプルを本開示に記載の結合タンパク質と接触させて結合反応させるステップと、
B)結合反応の生じた免疫複合体を検出するステップと、を含み、
前記免疫複合体の存在は、心筋トロポニンIに関連する疾病の存在を指示する、心筋トロポニンIに関連する疾病の診断方法にさらに関する。
【0059】
1つ又は複数の実施形態においては、前記方法は、蛍光免疫技術、化学発光技術、金コロイド免疫技術、放射免疫分析及び/又は酵素結合免疫技術に基づくものである。
【0060】
1つ又は複数の実施形態においては、前記サンプルは、全血、末梢血、血清、血漿又は心筋組織から選ばれる少なくとも1種である。
【0061】
1つ又は複数の実施形態においては、前記被験者は、哺乳動物であり、例えば霊長類動物であり、例えばヒトである。
【0062】
1つ又は複数の実施形態においては、心筋トロポニンIに関連する前記疾病は心血管疾患である。
【0063】
1つ又は複数の実施形態においては、心筋トロポニンIに関連する前記疾病は、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定なアンギナ、心筋障害又はこれらの組合せで構成される群から選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、本開示の一部の実施案についての以下の説明及び含まれる実施例の詳細な内容を通して、容易に了解することができる。
【0065】
さらに本開示を記述する前に、本開示は、前記特定の実施案に限定されるものではなく、これらの実施案が必然的に様々であるためであることが理解されたい。また、本明細書に使用される用語は、特定の実施案を説明するためのものに過ぎず、制限するためのものではなく、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲に限定されるためであることが理解されたい。
【0066】
本明細書に特に定義されない限り、本開示で使用される科学及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有すべきである。用語の意味及び範囲を明瞭にすべきであるが、任意の潜在的なあいまいさがある場合には、本明細書で提供される定義が任意の辞典又は外来の定義より優先である。本願では特に明記しない限り、「又は」の使用は、「及び/又は」を意味する。また、用語「含む」及びその他の形式の使用が非限定的なものである。
【0067】
一般的には、本明細書で説明される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関して使用される命名法及び技術は、本分野で周知された、一般に使用されているものである。本開示の方法及び技術は、特に説明しない限り、当分野で周知された、本明細書の全体にわたって引用及び考察されている種々の一般的な及びより専門的な参考文献に記載されている通常の方法により実施される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、当分野で一般に達成されるように、又は本明細書に記載されているように実施される。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、並びに医学及び医薬化学に関して使用される命名法、実験手順、及び技術は、当分野で周知され、一般に使用されているものである。
本開示をより容易に理解するために、選択される用語を以下に定義する。
【0068】
用語「アミノ酸」は、天然に存在する又は非天然に存在するカルボキシルα-アミノ酸を意味する。用語「アミノ酸」は、本願で天然に存在するアミノ酸及び非天然に存在するアミノ酸を含んでもよい。天然に存在するアミノ酸は、アラニン(3文字のコード:Ala、1文字のコード:A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、c)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Val、V)を含む。非天然に存在するアミノ酸は、α-アミノアジピン酸、アミノ酪酸、シトルリン、ホモシトルリン、ホモロイシン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ノルロイシン、ピリジニルアラニン、サルコシンなどを含むがこれらに限られない。
【0069】
用語「分離される結合タンパク質」とは、その派生起源又は派生由来であるため、その天然状態でそれに付随する天然結合成分には結合しなかったタンパク質、あまり同一種からのその他タンパク質を含まないタンパク質、異なる種からの細胞で発現されるタンパク質、又は自然界に存在しないタンパク質である。従って、化学合成される又はその天然起源とは異なる細胞系で合成されるタンパク質は、その天然結合成分と「分離される」ものである。分離によって、例えば、本分野で周知しているタンパク質精製技術を用いることによって、タンパク質があまり天然結合成分を含まないようにしてもよい。
【0070】
用語「抗原結合ドメインを含む分離される結合タンパク質」は、広く、CDR領域を含む全てのタンパク質/タンパク質断片を指す。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びこれらの抗体の抗原化合物の結合断片を含み、Fab、F(ab’)2、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、抗体の最小識別単位、及びこれらの抗体と断片の一本鎖誘導体を含む。抗体のタイプは、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選択することができる。また、「抗体」という用語は、天然に存在する抗体及び非天然に存在する抗体を含み、例えばキメラ(chimeric)、二元機能型(bifunctional)及びヒト由来型(humanized)の抗体、及び関連する合成アイソフォーム(isoforms)を含む。「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」と互換的に使用できる。
【0071】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のN末端のドメインである。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれてもよい。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれてもよい。これらのドメインは、通常、抗体の可変性が最も高い部分であり、抗原結合部位を含む。軽鎖又は重鎖の可変領域は、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる高度可変領域及びそれらを分離させるフレームワーク領域(framework region)で構成される。抗体のフレームワーク領域、即ち構成要件の軽鎖と重鎖との組合せられた枠組み領域は、CDRを位置付けて揃える作用を果たし、前記CDRは、抗原の結合に主に用いられる。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「フレームワーク領域」、「枠組み領域」又は「FR」は、CDRとして定義された領域を排除する抗体可変ドメインの領域を意味する。各抗体の可変ドメインフレームワーク領域は、さらに、CDRに隔てられた隣接領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に細分化されてもよい。
【0073】
通常の場合、重鎖及び軽鎖の可変領域VL/VHは、以下の番号のCDRとFRを以下の組合せ配列で連結して得ることができる。
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
【0074】
本明細書で使用されるとき、ポリペプチド又は核酸に関連する用語「精製される」又は「分離される」とは、ポリペプチド又は核酸がその天然媒体に存在しない又は天然形態ではないことを意味する。従って、用語「分離される」は、原始的な環境、例えば天然に存在する場合に、天然環境から抽出されるポリペプチド又は核酸である。例えば、分離されるポリペプチドは、通常、それに結合されるもの、又は、通常、それに混合されるもの、又は、溶液における少なくともあるタンパク質又はその他の細胞成分を一般的に含まない。分離されるポリペプチドは、細胞溶解物に含まれた天然に生産される前記ポリペプチド、精製される又は部分的に精製される前記ポリペプチド、組換えポリペプチド、細胞で発現又は分泌される前記ポリペプチド、及び異種宿主細胞又は培養物における前記ポリペプチドを含む。核酸に関連して、用語「分離される」又は「精製される」は、例えば前記核酸が天然のゲノム背景に位置しない(例えば、ベクターでは、発現カセットとして、プロモータに連結され、又は異種宿主細胞に手動で導入される)ことを意味する。
【0075】
本明細書で使用されるとおり、用語「二重特異性抗体」又は「二重機能性抗体」は、異なる2ペアの重/軽鎖及び2つの異なる結合部位の人工ハイブリッド結合タンパク質を意味する。二重特異性結合タンパク質は、ハイブリドーマの融和又はFab’断片の連結を含む複数種の方法で生成することができる。
【0076】
本明細書で使用されるとおり、用語「配列同一性」は、少なくとも2種の異なる配列間の類似性を意味する。このパーセント同一性は、ベーシック・ローカルアライメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool、BLAST)、Needlemanなど、又はMeyersなどの基準アルゴリズムで決定することができる。1つ又は複数の実施形態では、1組のパラメータは、Blosum62スコアリングマトリックス並びにギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、2種のアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、さらに、Meyers及びMiller((1989)CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムで決定されてもよく、該アルゴリズムがALIGNプログラム(2.0バージョン)に組み込まれており、PAM120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティ12、及びギャップペナルティ4を用いる。パーセント同一性は、通常、類似した長さの配列を比較することで計算される。
【0077】
本明細書で使用されるとおり、用語「親和性」とは、結合タンパク質又は抗体の抗原結合ドメインと抗原又は抗原エピトープとの結合強度である。親和性は、KD値で評価することができ、KD値が小さければ、親和性が大きいことが示される。
【0078】
本開示に係る抗原結合ドメインを含む分離される結合タンパク質であって、前記抗原結合ドメインは、以下のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つの相補性決定領域を含むか、又は、以下のアミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも80%の配列同一性を有し、cTnIとはKD≦7.51×10-8mol/Lの親和性を有し、
相補性決定領域CDR-VH1はA-S-X1-Y-T-F-X2-X3-Y-W-M-Yであり、ここで、
X1がG又はDであり、X2がS又はTであり、X3がT又はSであり、
相補性決定領域CDR-VH2はY-X1-N-P-S-X2-G-H-T-X3-Y-N-Q-X4-F-K-Dであり、ここで、
X1がI又はLであり、X2がS又はTであり、X3がD又はEであり、X4がR又はKであり、
相補性決定領域CDR-VH3はA-R-X1-Y-X2-G-P-F-X3-M-Dであり、ここで、
X1がK又はRであり、X2がFであり、Y又はWであり、X3がG又はAであり、
相補性決定領域CDR-VL1はS-A-S-X1-X2-V-S-Y-X3-Hであり、ここで、
X1がS又はTであり、X2がT又はSであり、X3がA又はVであり、
相補性決定領域CDR-VL2はW-X1-Y-D-X2-S-K-X3-A-Sであり、ここで、
X1がI又はLであり、X2がT又はSであり、X3がL又はIであり、
相補性決定領域CDR-VL3はQ-X1-W-S-X2-X3-P-Y-Tであり、ここで、
X1がQ又はNであり、X2がT又はSであり、X3がQ又はNである。
【0079】
本分野で周知のように、抗体の結合特異性及び親和性は、主にCDR配列により決定されており、成熟した周知の従来の各技術に基づいて、非CDR領域のアミノ酸配列を容易に変更して、類似した生物活性を有する変異体を取得することができる。従って、本開示は、該結合タンパク質の「機能性誘導体」を含む。「機能性誘導体」とは、アミノ酸置換の変異体であり、機能性誘導体は、検出可能な結合タンパク質活性、好ましくはcTnIに結合可能な抗体の活性を有する。「機能性誘導体」は、「変異体」及び「断片」を含むことができるため、本開示に記載の結合タンパク質と完全に同一のCDR配列を有し、従って、類似する生物活性を有する。
【0080】
1つ又は複数の実施形態では、前記抗原結合ドメインは、以下のアミノ酸配列の相補性決定領域と少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、心筋トロポニンIとのKDは、≦7.51×10-8mol/Lであり、例えば4.86×10-8mol/L、5.15×10-8mol/L、3.18×10-8mol/L、1.01×10-9mol/L、3.70×10-9mol/L、5.49×10-9mol/L、7.96×10-9mol/L、9.53×10-9mol/L、2.21×10-10mol/L、5.34×10-10mol/L、8.13×10-10mol/L、9.60×10-10mol/Lであり、又は2.21×10-10mol/L≦KD≦7.51×10-8mol/Lであり、又は2.21×10-10mol/L≦KD≦9.53×10-9mol/Lであり、あるいは、KDは、4.86×10-8mol/L、5.15×10-8mol/L、3.18×10-8mol/L、1.01×10-9mol/L、3.70×10-9mol/L、5.49×10-9mol/L、7.96×10-9mol/L、9.53×10-9mol/L、2.21×10-10mol/L、5.34×10-10mol/L、8.13×10-10mol/L又は9.60×10-10mol/L以下である。
【0081】
親和性を本開示の明細書の方法で測定する。
【0082】
1つ又は複数の実施形態では、
前記相補性決定領域CDR-VH1では、X1がGであり、
前記相補性決定領域CDR-VH2では、X3がDであり、
前記相補性決定領域CDR-VH3では、X3がGであり、
前記相補性決定領域CDR-VL1では、X3がVであり、
前記相補性決定領域CDR-VL2では、X2がTであり、
前記相補性決定領域CDR-VL3では、X1がQである。
【0083】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がSであり、X3がTである。
【0084】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がSであり、X3がSである。
【0085】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がTであり、X3がTである。
【0086】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH1では、X2がTであり、X3がSである。
【0087】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がSであり、X4がRである。
【0088】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がTであり、X4がRである。
【0089】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がSであり、X4がKである。
【0090】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がIであり、X2がTであり、X4がKである。
【0091】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がSであり、X4がRである。
【0092】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がTであり、X4がRである。
【0093】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がSであり、X4がKである。
【0094】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH2では、X1がLであり、X2がTであり、X4がKである。
【0095】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がFである。
【0096】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がYである。
【0097】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がKであり、X2がWである。
【0098】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がFである。
【0099】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がYである。
【0100】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VH3では、X1がRであり、X2がWである。
【0101】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がSであり、X2がTである。
【0102】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がSであり、X2がSである。
【0103】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、X2がTである。
【0104】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL1では、X1がTであり、X2がSである。
【0105】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がIであり、X3がLである。
【0106】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がIであり、X3がIである。
【0107】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がLであり、X3がLである。
【0108】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL2では、X1がLであり、X3がIである。
【0109】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がTであり、X3がQである。
【0110】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がTであり、X3がNである。
【0111】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がSであり、X3がQである。
【0112】
1つ又は複数の実施形態では、前記相補性決定領域CDR-VL3では、X2がSであり、X3がNである。
【0113】
1つ又は複数の実施形態では、各相補性決定領域の突然変異部位は、以下の突然変異組合せから選ばれるいずれかである。
【0114】
【0115】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域に出現するX1は、それぞれ独立して、本開示で限定されるアミノ酸を表し、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域に出現するX2は、それぞれ独立して、本開示で限定されるアミノ酸を表し、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域に出現するX3は、それぞれ独立して、本開示で限定されるアミノ酸を表し、本開示に記載の結合タンパク質の6つのCDR領域に出現するX4は、それぞれ独立して、本開示で限定されるアミノ酸を表す。
【0116】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は、少なくとも3つのCDRsを含むか、又は、前記結合タンパク質は、少なくとも6つのCDRsを含む。
【0117】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は、可変領域及び定常領域を含む完全な抗体である。
【0118】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は、ナノ抗体、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体及び抗体最小識別単位のうちの1種である。
【0119】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は、配列が順に配列番号1乃至配列番号4で示される軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4、及び/又は、配列が順に配列番号5乃至配列番号8で示される重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含む。
【0120】
1つ又は複数の実施形態では、前記結合タンパク質は、抗体定常領域の配列をさらに含む。
【0121】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域の配列は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDから選ばれるいずれかの定常領域の配列である。
【0122】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域は、牛、馬、乳牛、豚、綿羊、山羊、ラット、マウス、犬、猫、ウサギ、ラクダ、ロバ、鹿、ミンク、鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥、闘鶏又はヒトの物種に由来する。
【0123】
1つ又は複数の実施形態では、前記定常領域は、ラットに由来し、
軽鎖定常領域の配列は、配列番号9で示され、
重鎖定常領域の配列は、配列番号10で示される。
【0124】
本開示は、上記結合タンパク質をコードする分離される核酸をさらに提供する。
【0125】
本明細書では、核酸は、保守的な置換の変異体(例えば縮重コドンの置換)及び相補配列を含む。用語「核酸」と「ポリヌクレオチド」は、同じ意味であり、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子及びそれらの断片、例えばオリゴヌクレオチドを含む。
【0126】
本開示は、上記核酸を含むベクターをさらに提供する。
【0127】
核酸配列が少なくとも1種の調節配列に操作可能に連結される。「操作可能に連結される」とは、コード配列がコード配列の発現を許可するように、調節配列に連結されることである。調節配列は、適切な宿主細胞において目的タンパク質の発現を指導するため選択され、プロモータ、エンハンサー及びその他の発現制御エレメントなどを含む。
【0128】
本明細書では、ベクターは、本開示の核酸又はその断片を含んだ、遺伝情報を保有可能で、かつ遺伝情報を細胞内に送達できる分子又は試薬を意味することができる。典型的なベクターは、プラスミド、ウィルス、ファージ、コスミド及びミニ染色体を含む。ベクターは、クローンベクター(即ち、遺伝情報を細胞内に移すためのベクターである。前記細胞を増殖させられ、かつ前記遺伝情報の存在する細胞又は前記遺伝情報の存在しない細胞を選択することができる。)又は発現ベクター(即ち、前記ベクターの遺伝情報の細胞内での発現を可能にすることに必要な遺伝子エレメントを含むベクター)であってもよい。従って、クローンベクターは、選択マーカー、及び前記クローンベクターで指定された細胞タイプにマッチングする複製起点を含んでもよいが、発現ベクターは、指定された標的細胞での発現への影響に必要な調節エレメントを含む。
【0129】
本開示の核酸又は断片を適切なベクターに挿入して、本開示の核酸断片を保有するクローンベクター又は発現ベクターを形成することができる。この新しいベクターは、本開示の一部である。前記ベクターは、プラスミド、ファージ、コスミド、ミニ染色体又はウィルスを含んでもよく、特定の細胞のみで一時的に発現される裸のDNAを含んでもよい。本開示のクローンベクター及び発現ベクターが自発的に複製することができるため、この後のクローンの高レベルの発現又は高レベルの複製の目的のために、高いコピー数を提供することができる。発現ベクターは、本開示の核酸断片の発現を駆動するためのプロモータ、前記ペプチド発現産物の膜外への分泌又は膜への組み込みを可能にする信号ペプチドをコードする非強制的な核酸配列、本開示の核酸断片、及びターミネーターをコードする非強制的な核酸配列を含んでもよい。生産菌株又は細胞系において発現ベクターを操作するとき、ベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞のゲノムに組み込んでもよく、宿主細胞ゲノムに組み込まなくてもよい。ベクターは、通常、複製部位、及び形質転換細胞において表現型選択を提供することができるタグ配列を保有する。
【0130】
本開示の発現ベクターは、宿主細胞の形質転換に用いられる。この形質転換細胞は、本開示の一部であり、本開示の核酸断片及びベクターを増殖するための培養細胞又は細胞系であってもよく、又は、本開示のポリペプチドを組換え的に製造するための培養細胞又は細胞系であってもよい。本開示の形質転換細胞は、例えば細菌(例えば大腸菌、バチルスなど)の様な微生物を含む。宿主細胞は、真菌、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞などの多細胞生物からの細胞、好ましくは、哺乳動物からの細胞、例えばCHO細胞を含む。前記形質転換細胞は、本開示の核酸断片を複製することができる。本開示のペプチド組合せを組換え的に製造するとき、前記発現産物は、培地に排出されるか、又は、前記形質転換細胞の表面に保有される。
【0131】
本開示は、
培地において上記宿主細胞を培養し、生じた結合タンパク質を培地又は培養された宿主細胞から回収するステップを含む、上記結合タンパク質の生産方法をさらに提供する。
【0132】
前記方法は、例えば、少なくとも一部の結合タンパク質をコードする核酸ベクターで宿主細胞を形質転換し、適切な条件において該宿主細胞を培養することで、該結合タンパク質を発現させる。宿主細胞は、1つ以上の発現ベクターで形質転換されてもよく、該発現ベクターは、少なくとも一部の結合タンパク質をコードするDNAを単独で又は結合して含んでもよい。通常のタンパク質及びペプチドの精製技術を利用することで、培地又は細胞溶解物から結合タンパク質を分離することができ、前記技術は、硫酸アンモニウム沈殿、分層析出(イオン交換、ゲルフィルター、親和クロマトグラフィーなど)及び/又は電気泳動を含む。
【0133】
目的コーディング配列及び調節配列を含む適切なベクターの構築は、本分野における周知の基準連結及び制限技術で行われてもよい。分離されるプラスミド、DNA配列又は合成されるオリゴヌクレオチドを必要な形態で切断、テーリング及び再連結する。任意の方法でコーディング配列に突然変異を導入することで、本開示の変異体を生成することができ、これらの突然変異は、欠失、挿入や置換などを含んでもよい。
【0134】
本開示は、cTnIのエピトープと反応できる、モノクローナル及びポリクローナルの抗体を含む抗体を提供する。該抗体は、完全な結合タンパク質、又はその断片又は誘導体を含んでもよい。好ましくは、抗体は、全部又は一部の結合タンパク質を含む。
【0135】
本開示は、上記結合タンパク質の、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定なアンギナ、心筋障害を診断するための診断剤又はキットの製造における使用をさらに提供する。
【0136】
本開示の一態様によれば、本開示は、
テストサンプル中のトロポニンI抗原の検出方法であって、
a)十分に抗体/抗原結合反応が発生できる条件において、前記テストサンプル中のトロポニンI抗原を上記の結合タンパク質と接触させて免疫複合体を形成するステップと
b)前記テストサンプル中の前記トロポニンI抗原の存在を指示する前記免疫複合体の存在を検出するステップとを含む、検出方法にさらに関し、
この実施形態では、信号強度を示す指示薬で前記結合タンパク質を標識することができ、前記複合体を容易に検出するようにする。
【0137】
1つ又は複数の実施形態では、前記トロポニンI抗原は、心筋トロポニンI抗原である。
【0138】
1つ又は複数の実施形態では、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記結合タンパク質に結合される第2の抗体をさらに含み、
この実施形態では、前記結合タンパク質は、第1の抗体の形態で前記第2の抗体とペア抗体を形成し、cTnIの異なる抗原エピトープに結合するために用いられ、
信号強度を示す指示薬で前記第2の抗体を標識することができ、前記複合体を容易に検出するようにする。
【0139】
1つ又は複数の実施形態では、ステップa)では、前記免疫複合体は、前記トロポニンIの抗原に結合される第2の抗体をさらに含み、
この実施形態では、前記結合タンパク質が前記第2の抗体の抗原とされており、信号強度を示す指示薬で前記の第2の抗体を標識することができ、前記複合体を容易に検出するようにする。
【0140】
1つ又は複数の実施形態では、前記信号強度を示す指示薬は、蛍光物質、量子ドット、ジゴキシゲニン標識プローブ、ビオチン、放射性同位体、放射性造影剤、常磁性イオン蛍光マイクロスフェア、高電子密度物質、化学発光マーカー、超音波造影剤、光増感剤、金コロイド又は酵素のうちのいずれかを含む。
【0141】
1つ又は複数の実施形態では、前記蛍光物質は、Alexa350、Alexa405、Alexa430、Alexa488、Alexa555、Alexa647、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、5-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシル基-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルローダミン、CascadeBlue、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、6-FAM、ダンシルクロリド、フルオレセイン、HEX、6-JOE、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレジルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメチン、アントシアン、キサンチン、サクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプタート、ユウロピウムトリスビピリジルジアミン、ユウロピウムクリプタート又はユウロピウムキレート、ジアミン、ジシアニン、LaJolla青色色素、アロフィコシアニン、allococyanin B、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリトロシアニン、フィコエリトリンR、REG、Rhodamine Green、ローダミンイソチオシアネート、Rhodamine Red、ROX、TAMRA、TET、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン及びテキサスレッドのうちのいずれかを含む。
【0142】
1つ又は複数の実施形態では、前記放射性同位体は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb及び83Srのうちのいずれかを含む。
【0143】
1つ又は複数の実施形態では、前記酵素は、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ及びグルコースオキシダーゼのうちのいずれかを含む。
【0144】
1つ又は複数の実施形態では、前記蛍光マイクロスフェアは、内部に希土類蛍光イオンユウロピウムが包まれるポリスチレン蛍光マイクロスフェアである。
【0145】
一部のさらなる実施形態では、本開示は、上記結合タンパク質、上記分離される核酸又は上記ベクターのうちの1種又は複数種を含むキットをさらに提供する。
【0146】
好ましくは、前記キットは、前記結合タンパク質を標識するためのマーカーを含む。
【0147】
実施案では、本開示は、例えば心筋細胞感染の被験者中のトロポニンIの存在を決定するためのキットを提供し、前記キットは、本開示に係る少なくとも1種の結合タンパク質、関連する緩衝剤、液体サンプルと前記結合タンパク質の反応に必要な試薬、及びトロポニンIと結合タンパク質に陽性又は陰性結合反応が存在することを決定するための試薬を含む。トロポニンIの存在を決定するために、前記キットは、例えば、標識付きの結合タンパク質を抗体として利用し、前記標識は、金コロイド標識などの任意の適切な標識であってもよい。
【0148】
本開示は、本明細書に記載の結合タンパク質の、心筋トロポニンIに関連する疾病の診断における使用にさらに関する。
【0149】
本明細書で使用されるとおり、用語「心筋トロポニンIに関連する疾病」とは、心筋トロポニンIをマーカー(そのタンパク質又はコード核酸を含む)とする疾病である。特に、本開示の1つ又は複数の実施形態では、心筋トロポニンIに関連する疾病は、血液中の心筋トロポニンIレベルが高くなることを特徴とする疾病であってもよい。本開示の1つ又は複数の実施形態では、心筋トロポニンIに関連する疾病は、心筋組織又は心筋細胞中の心筋トロポニンIレベルが低くなることを特徴とする疾病であってもよい。
【0150】
本開示は、
A)十分に結合反応が発生できる条件において、被験者からのサンプルを本開示に記載の結合タンパク質と接触させて結合反応させるステップと、
B)結合反応の生じた免疫複合体を検出するステップと、を含み、
前記免疫複合体の存在は、心筋トロポニンIに関連する疾病の存在を指示する、心筋トロポニンIに関連する疾病の診断方法にさらに関する。
【0151】
1つ又は複数の実施形態では、前記方法は、蛍光免疫技術、化学発光技術、金コロイド免疫技術、放射免疫分析及び/又は酵素結合免疫技術に基づくものである。
【0152】
1つ又は複数の実施形態では、前記サンプルは、全血、末梢血、血清、血漿又は心筋組織から選ばれる少なくとも1種である。
【0153】
1つ又は複数の実施形態では、前記被験者は、哺乳動物であり、例えば霊長類動物であり、例えばヒトである。
【0154】
1つ又は複数の実施形態では、心筋トロポニンIに関連する前記疾病は、心血管疾患である。
【0155】
1つ又は複数の実施形態では、心筋トロポニンIに関連する前記疾病は、急性心筋梗塞、急性冠症候群、肺梗塞、不安定なアンギナ、心筋障害又はこれらの組合せで構成される群から選ばれる。
【0156】
以下、本開示を例示的に説明するための一部の例を提供するが、本開示の範囲を制限するものではない。
【0157】
実施例1
本実施例では、制限エンドヌクレアーゼ、Prime Star DNAポリメラーゼは、Takara社から購入された。MagExtractor-RNA抽出キットは、TOYOBO社から購入された。SMARTERTM RACE cDNA Amplification Kitキットは、Takara社から購入された。pMD-18Tベクターは、Takara社から購入された。プラスミド抽出キットは、天根公司から購入された。プライマー合成及び遺伝子の配列測定は、Invitrogen社で完了された。Anti-cTnI 7B9モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株は、本出願者が有するハイブリドーマ細胞株であり、復活された。
【0158】
1、プライマー
重鎖及び軽鎖5’RACEプライマーの増幅:
SMARTER II Aオリゴヌクレオチド:
5’-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACXXXXX-3’、
5’-RACE CDSプライマー(5’-CDS):5’-(T)25VN-3’(N=A、C、G、又はT、V=A、G、又はC)、
ユニバーサルプライマーA混合物(UPM):5’-CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3’、
ネステッドユニバーサルプライマーA(NUP):5’-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3’、
mIg-KR:5’-CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAAT-3’、
mIg-HR:5’-TCATTTACCAGGAGAGTGGGAGAGGC-3’。
【0159】
2、抗体の可変領域遺伝子クローン及び序列測定
Anti-cTnI 7B9モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株からRNAを抽出し、SMARTERTM RACE cDNA Amplification Kitキット及びキットにおけるSMARTER II Aオリゴヌクレオチド及び5’-CDSプライマーで第一鎖cDNAの合成を行い、取得された第一鎖cDNA産物をPCR増幅テンプレートとした。軽鎖遺伝子をユニバーサルプライマーA混合物(UPM)、ネステッドユニバーサルプライマーA(NUP)及びmIg-KRプライマーで増幅させ、重鎖遺伝子をユニバーサルプライマーA混合物(UPM)、ネステッドユニバーサルプライマーA(NUP)及びmIg-HRプライマーで増幅させた。軽鎖のプライマーペアにより0.7KBほどの目的バンドを増幅し出し、重鎖のプライマーペアにより1.4KBほどの目的バンドを増幅し出した。アガロースゲル電気泳動で精製回収し、産物をrTaq DNAポリメラーゼでA付加反応(Aを付加する反応)を行ってpMD-18Tベクターに挿入し、DH5αコンピテント細胞に形質転換し、コロニが成長した後、それぞれ重鎖及び軽鎖遺伝子クローンの4つのクローンをInvitrogen社に送って序列測定を行った。
【0160】
3、Anti-cTnI 7B9抗体の可変領域遺伝子の配列分析
上記序列測定して得られた遺伝子配列をIMGT抗体データベースに入れて分析し、VNTI11.5ソフトウェアを利用して分析して、重鎖及び軽鎖プライマーペアの増幅した遺伝子が全て正確であると決定し、ここで、軽鎖の増幅した遺伝子断片では、VL遺伝子配列は321bpであり、VkII遺伝子ファミリに属し、その前に57bpのリーダーペプチド配列があり、重鎖プライマーペアの増幅した遺伝子断片では、VH遺伝子配列は357bpであり、VH1遺伝子ファミリに属し、その前に57bpのリーダーペプチド配列があった。
【0161】
4、組換え抗体発現プラスミドの構築
pcDNATM 3.4 TOPO(登録商標)ベクターは、構築された組換え抗体の真核発現ベクターであり、該発現ベクターは、HindIII、BamHI、EcoRIなどのポリクローナル酵素切断部位が導入されており、pcDNA 3.4A発現ベクターとして命名され、以下、3.4A発現ベクターと略称される。上記pMD-18Tにおける抗体遺伝子の配列決定結果に基づき、Anti-cTnI 7B9抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子特異性プライマーを設計し、プライマーの両端にそれぞれHindIII、EcoRI酵素切断部位及び保護塩基を持ち、プライマーは、以下のとおりであった。
【0162】
cTnI-7B9-HF:5’-CCCAAGCTTATGGAATGCAGCTGTGTCATGCTCTTCTTC-3’、
cTnI-7B9-HR:5’-CCCGAATTCTCATTTACCAGGAGAGTGGGAGAGGC-3’、
cTnI-7B9-LF:5’-CCCAAGCTTATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGG-3’、
cTnI-7B9-LR:5’-CCCGAATTCCTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAA-3’。
【0163】
PCR増幅方法により0.72KBの軽鎖遺伝子断片及び1.4KBの重鎖遺伝子断片を増幅させた。重鎖及び軽鎖遺伝子断片をそれぞれHindIII/EcoRIで二重酵素切断し、3.4AベクターをHindIII/EcoRIで二重酵素切断し、また、断片及びベクターを精製回収した後に、重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子をそれぞれ3.4A発現ベクターに連結し、それぞれ重鎖及び軽鎖の組換え発現プラスミドを得た。
【0164】
5、安定細胞株のスクリーニング
5.1 プラスミドを超純水で400ng/mlに希釈し、遠心チューブにおいてCHO細胞を1.43×107cells/mlに調整し、100μlのプラスミドを700μlの細胞と混合し、電気的形質転換用カップに移し、電気的形質転換を行い、3日目、5日目、7日目にサンプリングして計数し、7日目にサンプリングして検出した。
【0165】
対応する抗原を、コーティング液で指定された濃度に希釈し、100μL/ウェルで、4℃で一夜コーティングし、次の日に、洗浄液で2回洗浄し、たたいて乾かし、ブロッキング液(20%のBSA+80%のPBS)を120μL/ウェルで加え、37℃で1hブロッキングし、たたいて乾かし、希釈された細胞上清を100μL/ウェルで加え、37℃で30min放置し(一部の上清1h)、洗浄液で5回洗浄し、たたいて乾かし、ヤギ抗マウスIgG-HRPを100μL/ウェルで加え、37℃で30min放置し、洗浄液で5回洗浄し、たたいて乾かし、発色液A液(50μL/ウェル)を加え、発色液B液(50μL/ウェル)を加え、10min発色し、ストップバッファーを50μL/ウェルで加え、マイクロプレートリーダーの450nm(参照として630nm)でOD値を読み取った。基準品濃度及びOD値で基準曲線を作成し、細胞上清中の抗体含有量を計算した。
【0166】
5.2 組換え抗体発現プラスミドの線形化
Buffer 50μl、DNA 100μg/チューブ、Puv I酵素 10μlという試薬を用意し、無菌水で500μlに補充し、37℃で一晩水浴しながら酵素切断し、まず等体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(下層)25:24:1で抽出し、次にクロロホルム(水相)で抽出し、0.1倍の体積(水相)の3M酢酸ナトリウム及び2倍の体積のエタノールで氷において沈殿させ、70%のエタノールで沈殿を洗浄し、有機溶剤を除去し、エタノールが完全に揮発した後に、適量の滅菌水で再び溶かし、最後に濃度を測定した。
【0167】
組換え抗体発現プラスミドを安定して導入させること、及び安定した細胞株を加圧してスクリーニングすること。
【0168】
プラスミドを超純水で400ng/mlに希釈し、遠心チューブにおいてCHO細胞を1.43×107cells/mlに調整し、100μlのプラスミドを700μlの細胞と混合し、電気的形質転換用カップに移し、電気的形質転換を行い、次の日に計数し、25μmol/Lのメチオニンスルホキシミンを96ウェルに入れて約25日加圧培養した。
【0169】
細胞が成長したクローンウェルを顕微鏡で観察して標識し、合流度を記録し、培養された上清をサンプリングして検出し、抗体の濃度、相対濃度が高い細胞株を選択して24ウェルに移し、3日ほど後に、6ウェルに移し、3日後に保存してバッチ培養し、細胞密度を0.5×106cells/mlに調整し、2.2mlバッチ培養を行い、細胞密度0.3×106cells/mlで2ml保存し、また、7日間、6ウェルのバッチ培養された上清をサンプリングして検出し、抗体濃度及び細胞直径が小さい細胞株を選択してTPPに移して保存して継代培養を行った。
【0170】
6、組換え抗体の生産
6.1 細胞の拡大培養
細胞を復活させた後に、まず125ml仕様の振とうフラスコにおいて培養し、接種体積が30mlであり、培地が100%のDynamis培地であり、回転数が120r/minで、温度が37℃で、二酸化炭素が8%である揺とう器に置いた。72h培養し、50万cells/mlの接種密度で接種して拡大培養を行い、拡大培養体積を生産需要に応じて計算し、培地が100%のDynamis培地であった。次に72hおきに1回拡大培養した。細胞量が生産ニーズを満たすとき、接種密度を50万cells/mlほどに厳密に制御して生産した。
【0171】
6.2 振とうフラスコ生産及び精製
振とうフラスコパラメータは、回転数120r/min、温度37℃、二酸化炭素8%であった。材料の流加供給:振とうフラスコにおいて72h培養してから、毎日に供給し、HyCloneTM Cell BoostTM Feed 7aは、毎日に初期培養体積の3%を流加し、Feed 7bの毎日の流加量は、初期培養体積の千分の一であり、12日目まで補充した(12日目に供給した)。グルコース3g/Lを6日目に供給した。13日目にサンプリングした。proteinA親和クロマトグラフィーカラムで親和精製を行った。精製後に500mgの組換え抗体を獲得し、4μgの精製された抗体に対して還元性SDS-PAGEを行った。還元性SDS-PAGE後に2本のバンドが示され、一方が25KDほどの軽鎖(配列は、配列番号11で示される)であり、他方が50KDほどの重鎖(配列は、配列番号12で示される)である。
【0172】
実施例2
実施例1で得られたサンプル1の抗体(配列が配列番号11及び12で示される軽鎖及び重鎖を有する)は、cTnIタンパク質に結合する能力を有するが、親和性及び抗体活性がいずれも十分に理想的ではないため、出願者は、該抗体の軽鎖CDR及び重鎖CDRに対して突然変異を行った。
【0173】
分析によれば、重鎖の相補性決定領域(WT):
CDR-VH1はA-S-D(X1)-Y-T-F-S(X2)-T(X3)-Y-W-M-Yであり、
CDR-VH2はY-L(X1)-N-P-S-S(X2)-G-H-T-E(X3)-Y-N-Q-R(X4)-F-K-Dであり、
CDR-VH3はA-R-K(X1)-Y-F(X2)-G-P-F-A(X3)-M-Dであり、
軽鎖の相補性決定領域:
CDR-VL1はS-A-S-T(X1)-T(X2)-V-S-Y-A(X3)-Hであり、
CDR-VL2はW-L(X1)-Y-D-S(X2)-S-K-I(X3)-A-Sであり、
CDR-VL3はQ-N(X1)-W-S-T(X2)-Q(X3)-P-Y-Tであり、
ここで、X1、X2、X3、X4がいずれも突然変異部位であった。
【0174】
【0175】
突然変異後に抗体活性を検出し、コーティング液でヤギ抗マウスIgGを1μg/mlに希釈して、100μL/ウェルで4℃下、マイクロプレートに一晩コーティングし、次の日に、洗浄液で2回洗浄し、たたいて乾かし、ブロッキング液(20%のBSA+80%のPBS)を120μL/ウェルで加え、37℃で1hブロッキングし、たたいて乾かし、希釈されたcTnIモノクローナル抗体を100μL/ウェルで加え、37℃で60min放置し、ウェル内の液体を振り切り、たたいて乾かし、20%のマウス陰性血を120μL/ウェルで加えて、37℃で1hブロッキングし、ウェル内の液体を振り切り、たたいて乾かし、希釈されたcTnI抗原(0.15μg/ml)を100μL/ウェルで加え、37℃で40min放置し、洗浄液で5回洗浄し、たたいて乾かし、HRP標識の他のcTnIモノクローナル抗体(1:5K)を100μL/ウェルで加え、37℃で30min放置し、発色液A液(50μL/ウェル)を加え、発色液B液(50μL/ウェル)を加え、10min発色し、ストップバッファーを50μL/ウェルで加え、マイクロプレートリーダーから450nm(参照として630nm)でOD値を読み取った。
【0176】
一部の結果は、以下のとおりであった。
【0177】
【0178】
親和性分析
AMCセンサを利用して、精製された抗体をPBSTにて10μg/mlに希釈し、また、cTnIコントロール遺伝子組換えタンパク質(会社調製の組換え抗原)を、PBSTにて、769.2nmol/ml、384.6nmol/ml、192.3nmol/ml、96.2nmol/ml、48.1nmol/ml、24nmol/ml、12nmol/ml、0nmol/mlという風に段階希釈した。
【0179】
実行プロセス:緩衝液1(PBST)において60s平衡させ、抗体溶液において抗体を300s固化し、そして、緩衝液2(PBST)において180sインキュベートし、抗原溶液において420s結合し、緩衝液2において1200s解離し、pHが1.69の10mMのGLY溶液及び緩衝液3でセンサ再生を行い、データを出力した。
【0180】
KDは、平衡解離定数即ち親和性を表し、Konは、結合レートを表し、Kdisは、解離レートを表した。
【0181】
【0182】
表2及び表3から分かるように、突然変異1の活性効果及び親和性が最適であるため、突然変異1をフレームワーク配列として力価が高い突然変異部位をスクリーニングし(スクリーニングして得られた抗体活性が突然変異1に類似し、抗体活性が±10%であることを確保する)、一部の結果は以下のとおりであった。
【0183】
【0184】
親和性分析の方法は以上と同じであり、結果は表5に示された。
【0185】
【0186】
表5から分かるように、表4にリストされた突然変異部位は、抗体の親和性への影響が大きくなかった。
【0187】
上記結果を検証するために、WTをフレームワーク配列として上記実験を繰り返し、突然変異部位の親和性検証を行い、一部の結果は以下のとおりであった。
【0188】
【0189】
【0190】
表6及び表7から分析することで、WTに基づく突然変異抗体も、一定の親和性を有した。
【0191】
なお、以上の各実施例は、本開示の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、制限するものではなく、前述した各実施例を参照しながら本開示について詳細に説明するが、当業者であれば、前述した各実施例に記載の技術的解決手段を修正することができ、又は、その一部の又は全部の技術特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正や置換により、対応する技術的解決手段の実質が本開示の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱することないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本開示に係る心筋トロポニンIに結合される抗原結合ドメインを含む分離される結合タンパク質は、特定の重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む。該結合タンパク質は、心筋トロポニンIタンパク質を特異的に識別して結合することができ、高い感度及び特異性を有し、特に、該結合タンパク質は、ヒトのcTnIタンパク質と非常に高い親和性を有する。それにより、心筋トロポニンIに関連する疾病の検出及び診断を実現する。
【配列表】
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