(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】正の抵抗温度係数(PTCR)を有する加熱要素を含む気化器
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20240910BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20240910BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20240910BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/42
A24F40/50
(21)【出願番号】P 2021513844
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2019050832
(87)【国際公開番号】W WO2020056150
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523071097
【氏名又は名称】ジュール・ラブズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JUUL Labs, Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 F Street NW, Washington DC, 20004, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ダブリュー. アルストン
(72)【発明者】
【氏名】アダム ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア エイ. カーズマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムス モンシース
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0020737(US,A1)
【文献】国際公開第2017/176113(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/019485(WO,A1)
【文献】特表2017-515493(JP,A)
【文献】特開平07-183104(JP,A)
【文献】特開平06-310261(JP,A)
【文献】特開2002-124366(JP,A)
【文献】国際公開第2018/010916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/42
A24F 40/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、
気化性材料を包含するように構成されたリザーバと、
前記リザーバに結合されて前記気化性材料を受容する噴霧器であって、前記噴霧器が、前記電源に電気的に結合されて前記電源から電流の流れを受け取り、前記気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素を含み、前記PTCR加熱要素は、動作温度の上昇が防止されるよう、抵抗率が前記電流の流れを低減させる動作温度まで加熱されるように構成されている、噴霧器と、
を含み、
前記PTCR加熱要素が、高さ、幅および長さを有するプレート形状、多角形形状および/または円形形状を含み、
前記PTCR加熱要素が、第1の導電層と第2の導電層との間の、正の抵抗温度係数を有する材料層を含み、前記第1の導電層が、第1の導電性リードに結合され、前記第2の導電層が、第2の導電性リードに結合されおり、
前記PTCR加熱要素が、前記第1の導電性リードおよび前記第2の導電性リードを介して、前記電源から電流の流れを受け取り、
前記PTCR加熱要素
、前記第1の導電層および前記第2の導電層が、気化のために構成された穴を含む、
装置。
【請求項2】
前記装置が、ハウジングをさらに含み、前記電源が、前記ハウジング内に包含されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記リザーバが、前記ハウジングに結合されるように構成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記噴霧器が、入口および出口を含み、前記PTCR加熱要素が、前記入口と前記出口との間に配置されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、前記リザーバおよび前記噴霧器を含むカートリッジをさらに含む、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、
前記リザーバおよび前記PTCR加熱要素を含むカートリッジであって、前記気化性材料が、前記リザーバ内の流体である、カートリッジと、
気化位置に前記流体を輸送するように構成された芯と、
前記PTCR加熱要素に電気的に結合され、前記電源から前記PTCR加熱要素に前記電流の流れを供給するように構成された電気コンタクトであって、前記PTCR加熱要素が、前記気化位置で前記流体を加熱するように構成されている、電気コンタクトと、
をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記気化性材料が、液体である、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記気化性材料が、タバコ製品である、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、ユーザ入力に応じて前記電源を前記PTCR加熱要素に電気的に接続するように構成された入力部をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記入力部が、押しボタンを含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、コントローラおよび/または圧力センサを含まない、請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、
圧力センサと、
前記圧力センサに結合され、吸入を検出し、これに応じて前記電源を前記PTCR加熱要素に電気的に接続するように構成されたコントローラと、
をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記動作温度が、240℃~280℃である、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記PTCR加熱要素が前記動作温度に加熱されたときに、前記PTCR加熱要素の前記抵抗率が前記電流の流れを低減させ、該抵抗率が500Ωcmを超える、請求項1記載の装置。
【請求項15】
所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、
気化性材料を包含するように構成されたリザーバと、
前記リザーバに結合されて前記気化性材料を受容する噴霧器であって、前記噴霧器が、前記電源に電気的に結合されて前記電源から電流の流れを受け取り、前記気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素を含み、前記PTCR加熱要素は、動作温度の上昇が防止されるよう、抵抗率が前記電流の流れを低減させる動作温度まで加熱されるように構成されている、噴霧器と、
を含み、
前記PTCR加熱要素が、第1の導電層と第2の導電層との間の、正の抵抗温度係数を有する材料層を含み、前記第1の導電層が、第1の導電性リードに結合され、前記第2の導電層が、第2の導電性リードに結合されおり、
前記PTCR加熱要素が、前記第1の導電性リードおよび前記第2の導電性リードを介して、前記電源から電流の流れを受け取り、
前記PTCR加熱要素が、高さ、幅および長さを有するプレート形状、多角形形状および/または円形形状を含み、
前記PTCR加熱要素
、前記第1の導電層および前記第2の導電層が、気化のために構成された穴を含む、
装置。
【請求項16】
所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、
気化性材料を包含するように構成されたリザーバと、
前記リザーバに結合されて前記気化性材料を受容する噴霧器であって、前記噴霧器が、前記電源に電気的に結合されて前記電源から電流の流れを受け取り、前記気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素を含み、前記PTCR加熱要素は、動作温度の上昇が防止されるよう、抵抗率が前記電流の流れを低減させる動作温度まで加熱されるように構成されている、噴霧器と、
を含み、
前記PTCR加熱要素が組成物を含み、該組成物は、
セラミック;
混合金属酸化物;
2つ以上の混合金属酸化物;
1つ以上の混合金属酸化物と、1つ以上の元素金属、MO
x型相を有する1つ以上の二元金属酸化物、MN
x型相を有する1つ以上の二元金属窒化物、MC
x型相を有する1つ以上の二元金属炭化物、MB
x型相を有する1つ以上の二元金属ホウ化物、および/またはMSi
x型相を有する1つ以上の二元金属ケイ化物との複合混合物;
2つ以上の二元金属酸化物の複合混合物;
2つ以上の二元金属酸化物と、1つ以上の元素金属、1つ以上の二元金属窒化物、1つ以上の二元金属炭化物、1つ以上の二元金属ホウ化物、および/または1つ以上の二元金属ケイ化物との複合混合物;および/または
1つ以上の元素金属と、1つ以上の二元金属酸化物、1つ以上の二元金属窒化物、1つ以上の二元金属炭化物、1つ以上の二元金属ホウ化物、および/または1つ以上の二元金属ケイ化物との架橋ポリマー複合材料;
および/またはこれらの任意の組み合わせ、
を含み、
前記PTCR加熱要素が、高さ、幅および長さを有するプレート形状、多角形形状および/または円形形状を含み、
前記PTCR加熱要素が、第1の導電層と第2の導電層との間の、正の抵抗温度係数を有する材料層を含み、前記第1の導電層が、第1の導電性リードに結合され、前記第2の導電層が、第2の導電性リードに結合されおり、
前記PTCR加熱要素が、前記第1の導電性リードおよび前記第2の導電性リードを介して、前記電源から電流の流れを受け取り、
前記PTCR加熱要素
、前記第1の導電層および前記第2の導電層が、気化のために構成された穴を含む、
装置。
【請求項17】
前記組成物が、
ABO
3型化合物であって、Aの元素がLi、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Pb、Biもしくはこれらの混合物を含み、Bの元素がMg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Hf、Taもしくはこれらの混合物を含む、ABO
3型化合物;
チタン酸バリウム(BaTiO
3);
チタン酸鉛(PbTiO
3);
ジルコン酸鉛(PbZrO
3);
アルミン酸ビスマス(BiAlO
3);
ニオブ酸アルカリ(ANbO
3、A=Li、Na、K、Rb)、タンタル酸アルカリ(ATaO
3、A=Li、Na、K、Rb)、もしくはこれらの固溶体;
主族アルカリジルコン酸塩(Bi
0.5A
0.5ZrO
3、A=Li、Na、K)を含む固溶体;
主族チタン酸塩-ジルコン酸塩(PbTi
1-xZr
xO
3)、希土類置換変異体、および/またはBa
1-xRE
xTiO
3(RE=La、Ce)を含む、固溶体;
アルカリ土類ニオブ酸塩(Sr
1-xBa
xNb
2O
6)、一般式[Bi
2O
2][A
n-1BnO
3n+1]のオーリビリウス型相、Bi
4Ti
3O
12、およびこれらの置換相、固溶体相、不定比相および連晶相;
C、Al、Si、Ti、Fe、Zn、Agおよび/またはBiを含む元素金属;
MgO、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、Ti
2O
3、Cr
2O
3、MnO、FeO、CoO、NiO、CuO、ZnOおよび/またはSnO
2を含む二元金属酸化物;
TiN、Mn
3N
2、Co
2N、Ni
3Nおよび/またはZn
3N
2を含む二元金属窒化物;
TiCを含む二元金属炭化物;
ZrB
2および/またはNbB
2を含む二元金属ホウ化物;
NbSi
2、WSi
2および/またはMoSi
2を含む二元金属ケイ化物;
ポリエチレン;
ポリアミド;
カイナー;および
ポリテトラフルオロエチレン;
のうちのいずれか、
またはこれらの任意の組み合わせ、
を含む、
請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、前記PTCR加熱要素に隣接する芯であって、前記気化性材料を気化位置に輸送するように構成された芯をさらに含み、
前記PTCR加熱要素が、前記気化位置で前記気化性材料を加熱するように構成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項19】
前記気化性材料が、ニコチン製剤を含む、請求項1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月12日に出願された“Vaporizer Including Positive Temperature Coefficient of Resistivity Heater”と題された米国仮特許出願第62/730257号の優先権と、2019年9月6日に出願された“Vaporizer Including (PTCR) Positive Temperature Coefficient of Resistivity Heating Element”と題された米国仮特許出願第62/897229号の優先権とを主張する、2019年9月10日に出願された“Vaporizer Including Positive Temperature Coefficient of Resistivity (PTCR) Heating Element”と題された米国特許出願第16/566842号の優先権を主張するものであり、これら全ての内容は、許可される範囲において、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書に記載している主題は、気化器デバイスに関し、例えば、1つ以上の気化性材料から吸入可能エアロゾルを生成するための携帯型個人用気化器デバイスであって、非線形の正の抵抗温度係数を有する半導体材料を利用するPTCR加熱要素を含む、携帯型個人用気化器デバイスに関する。
【0003】
発明の背景
気化器、電子気化器デバイスまたはe-気化器デバイスとも称されうる気化器デバイスは、気化デバイスのユーザによるエアロゾルの吸入による1つ以上の有効成分を含有するエアロゾル(例えば、静止または移動する空気または他のガス担体の塊に懸濁された気相および/または凝縮相の材料)の送達に使用することができる。例えば、電子ニコチン送達システム(ENDS)には、電池駆動式であって、タバコまたは他の物質を燃焼させることなく喫煙体験をシミュレートするために使用されうる、ある種の気化器デバイスが含まれる。気化器は、医薬品の送達における医療処方用途と、タバコ、ニコチンおよびその他の植物性材料の消費との両方で人気が高まっている。気化器デバイスは、携帯型で自給式であり、かつ/または便利に使用することができる。
【0004】
気化器デバイスの使用において、ユーザは、通称「蒸気」と称されるエアロゾルを吸入し、これは、気化性材料を気化させる(例えば、液体または固体を少なくとも部分的に気相へ遷移させる)PTCR加熱要素によって生成することができる。気化性材料は、特定の気化器デバイスの使用に適合しうる液体、溶液、固体、ペースト、ワックス、および/またはその他の任意の形態であってよい。気化器で使用される気化性材料は、ユーザによるエアロゾルの吸入のための入口および出口(例えばマウスピース)を含むカートリッジ(例えば、気化性材料を包含する気化器デバイスの分離可能部分)内に提供されうる。
【0005】
気化器デバイスによって生成された吸入可能エアロゾルを受容するために、ユーザは、特定の例では、PTCR加熱要素をオンにする圧力センサによって、かつ/または単純なユーザ操作の押しボタンスイッチなどの他の何らかのアプローチによって検出されるふかしを得ることにより、気化器デバイスを作動させることができる。本明細書で使用されるふかしとは、気化した気化性材料と所定の量の空気との組み合わせによって吸入可能エアロゾルが生成されるように所定の量の空気を気化器デバイスに引き込ませる、ユーザによる吸入を指しうる。
【0006】
気化器デバイスが気化性材料から吸入可能エアロゾルを生成するアプローチには、気化チャンバ(例えばヒータチャンバ)内で気化性材料を加熱して気化性材料を気相(または蒸気)に変換させることが含まれる。気化チャンバとは、気化器デバイス内の領域または容積を指しうるものであり、当該気化チャンバ内で、熱源(例えば、伝導性熱源、対流性熱源、および/または放射性熱源)が気化性材料の加熱を引き起こして、空気と気化した気化性材料との混合物が生成され、気化器デバイスのユーザが気化性材料を吸入するための蒸気が形成される。
【0007】
気相気化性材料の特定の成分は、冷却および/または圧力の変化によって気化後に凝縮し、これにより、ふかしによって気化器デバイスに吸引される空気の少なくとも一部に懸濁された凝縮相(例えば、液体および/または固体)の粒子を含むエアロゾルが形成されうる。気化性材料が半揮発性化合物(例えば、吸入温度および圧力の下で比較的低い蒸気圧を有するニコチンなどの化合物)を含む場合、吸入可能エアロゾルには、気相と凝縮相との間の局所的な平衡状態にある半揮発性化合物が含まれうる。
【0008】
典型的には、気化性材料は、リザーバから、ウィッキング要素(例えば、芯)を介して気化チャンバに吸引されうる。気化チャンバへの気化性材料の吸引は、芯が気化チャンバの方向に芯に沿って気化性材料を吸い出す際に、芯によって提供される毛細管作用に少なくとも部分的に起因しうる。しかし、気化性材料がリザーバから吸引されると、リザーバ内の圧力が低下し、これによって真空が発生し、毛細管作用に逆らって作用する。これにより、気化性材料を気化チャンバに吸引する芯の効力が低下しうるため、所望の量の気化性材料を気化させるための気化デバイスの効力が低下する。さらに、リザーバ内に生じた真空により、最終的に、気化性材料の全てを気化チャンバ内に吸引することができず、そのため、気化性材料を浪費することになる。このように、これらの問題点を改善または克服するために、気化器デバイスおよび/または気化器カートリッジを改良することが望まれている。
【0009】
気化器デバイスは、気化器上の1つ以上のコントローラ、電子回路(例えば、センサ、加熱要素)などによって制御することができる。気化器デバイスはまた、外部コントローラ(例えば、スマートフォンなどのコンピューティングデバイス)と無線で通信することができる。
【0010】
発明の概要
本主題の特定の態様では、気化器用の加熱デバイスに関連する課題は、当業者によって理解されるように、本明細書に記載された1つ以上の特徴またはこれと同等もしくは等価のアプローチを含むことによって対処することができる。本主題の態様は、気化器デバイス内の温度に基づいて変化する電気抵抗率を特徴とする、PTCRヒータとも称されるPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素を利用するための方法およびシステムに関連する。
【0011】
幾つかの実現形態では、装置は、所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、気化性材料を包含するように構成されたリザーバと、電源に電気的に結合されて当該電源から電流の流れを受け取り、気化性材料を加熱してエアロゾルを形成するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素と、を含む。PTCR加熱要素は、温度に基づいて変化する電気抵抗率を有するPTCR材料を含む。電気抵抗率は、当該電気抵抗率が所定の温度範囲にわたって増大する電気抵抗率遷移領域を含み、これにより、PTCR加熱要素が遷移領域内の第1の温度を超えて加熱されると、電源からの電流の流れが、PTCR加熱要素のさらなる温度上昇を制限するレベルまで低減される。
【0012】
幾つかの実現形態では、装置は、所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、気化性材料を包含するように構成されたリザーバと、リザーバに結合されて気化性材料を受容する噴霧器と、を含む。噴霧器は、電源に電気的に結合されて当該電源から電流の流れを受け取り、気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素を含む。PTCR加熱要素は、動作温度の上昇が防止されるよう、抵抗率が電流の流れを低減させる動作温度まで加熱されるように構成される。
【0013】
幾つかの実現形態では、装置は、所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、気化性材料を受容するように構成されたレセプタクルと、電源に電気的に結合されて当該電源から電流の流れを受け取り、気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素と、を含む。PTCR加熱要素は、動作温度の上昇が防止されるよう、抵抗率が電流の流れを低減させる動作温度まで加熱されるように構成される。
【0014】
幾つかの実現形態では、装置は、所定の電圧で電流の流れを供給するように構成された電源と、気化性材料を受容するように構成されたレセプタクルと、電源に電気的に結合されて当該電源から電流の流れを受け取り、気化性材料を気化するように構成されたPTCR(正の抵抗温度係数)加熱要素と、を含む。PTCR加熱要素は、100℃での10Ωcm~100Ωcmの第1の抵抗率、および260℃での50000Ωcm~150000Ωcmの第2の抵抗率を有する。
【0015】
幾つかの変形例では、以下の特徴のうちの1つ以上が、任意の実行可能な組み合わせで任意に含まれてもよい。一態様では、装置は、電源を含むハウジングと、入口、出口を含み、流体を包含し、ハウジングに結合されるように構成された流体リザーバと、電源に電気的に結合され、流体を加熱してエアロゾルを形成するように構成されたPTCR加熱要素と、を含む。PTCR加熱要素には、温度に基づいて変化する電気抵抗率が含まれている。電気抵抗率には、温度範囲にわたる電気抵抗率の増大を含む電気抵抗率遷移領域が含まれ、これにより、PTCR加熱要素が遷移領域内の第1の温度に加熱されると、電源からの電流の流れが、電流の流れによるPTCR加熱要素のさらなる温度上昇を制限するレベルまで低減される。
【0016】
次の特徴の1つ以上を、実行可能な任意の組み合わせに含めることができる。例えば、PTCR加熱要素は、入口と出口との間に配置することができる。装置は、流体リザーバと、流体リザーバ内の流体と、PTCR加熱要素と、流体を気化位置に輸送するように構成された芯と、PTCR加熱要素に電気的に結合され、電源からPTCR加熱要素に電流を供給するように構成された電気コンタクトと、を含むカートリッジを含むことができる。PTCR加熱要素は、当該気化位置で流体を加熱するように構成することができる。
【0017】
装置は、ユーザ入力に応じて電源をPTCR加熱要素に電気的に接続するように構成された入力部を含むことができる。入力部には、押しボタンが含まれうる。装置のPTCR加熱要素は、作動時に所定の温度を維持するために自己調整している。装置は、電源をPTCR加熱要素に電気的に接続し、その温度を調整するための圧力センサおよび/または圧力センサに結合されたコントローラを必要としない。
【0018】
電気抵抗率遷移領域は、150℃~350℃の第1の温度で開始しうる。電気抵抗率遷移領域は、220℃~300℃の第1の温度で開始しうる。電気抵抗率遷移領域は、240℃~280℃の第1の温度で開始しうる。
【0019】
電気抵抗率遷移領域の温度範囲にわたる電気抵抗率の増大には、少なくとも10の増大係数(increase factor)が含まれうるものであり、増大係数は、電気抵抗率遷移領域の開始に関連する第1の温度での電気抵抗率と、電気抵抗率遷移領域の終了に関連する第2の温度での電気抵抗率との間の電気抵抗率の相対的変化を特徴付ける。電気抵抗率遷移領域の温度範囲にわたる電気抵抗率の増大には、少なくとも100の増大係数が含まれうるものであり、増大係数は、電気抵抗率遷移領域の開始に関連する第1の温度での電気抵抗率と、電気抵抗率遷移領域の終了に関連する第2の温度での電気抵抗率との間の電気抵抗率の相対的変化を特徴付ける。電気抵抗率遷移領域の温度範囲にわたる電気抵抗率の増大には、少なくとも1000の増大係数が含まれうるものであり、増大係数は、電気抵抗率遷移領域の開始に関連する第1の温度での電気抵抗率と、電気抵抗率遷移領域の終了に関連する第2の温度での電気抵抗率との間の電気抵抗率の相対的変化を特徴付ける。
【0020】
電気抵抗率遷移領域は、第1の温度で開始することができ、第2の温度で終了することができる。第1の温度と第2の温度との間の差は、500℃以下でありうる。第1の温度と第2の温度との間の差は、200℃以下でありうる。第1の温度と第2の温度との間の差は、100℃以下でありうる。第1の温度と第2の温度との間の差は、50℃以下でありうる。
【0021】
電気抵抗率遷移領域は、第1の温度で開始することができ、第1の温度より低い温度でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は、20Ωcm~200Ωcmであってよい。ΩcmおよびΩmは、PTCR材料の電気抵抗率の単位であり、その抵抗および断面積に正比例し、長さに反比例する。第1の温度より低い温度でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は、2.0Ωcm~20Ωcmであってよい。第1の温度より低い温度でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は、0.2Ωcm~2.0Ωcmであってよい。
【0022】
電気抵抗率遷移領域の温度範囲にわたる電気抵抗率の増大には、少なくとも100の増大係数が含まれ、増大係数は、電気抵抗率遷移領域の開始に関連する第1の温度での電気抵抗率と、電気抵抗率遷移領域の終了に関連する第2の温度での電気抵抗率との間の電気抵抗率の相対的変化を特徴付ける。第1の温度は200℃~350℃であってよく、第1の温度と第2の温度との間の差は200℃以下であってよく、第1の温度より低い温度でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は20Ωcm~200Ωcmであってよい。
【0023】
PTCR加熱要素は、高さ、幅および長さを含むプレート形状、多角形形状および/または円形状を含むことができる。PTCR加熱要素にプレート形状が含まれている場合、高さは0.5mm、長さは5.0mm、幅は5.0mmでありうる。プレート形状は、導電性リードが取り付けられた2つの平行な側面を含みうる。
【0024】
PTCR加熱要素は、第1の導電層と第2の導電層との間の、正の抵抗温度係数を有する材料層を含むことができ、第1の導電層は第1の導電性リードに結合されており、第2の導電層は第2の導電性リードに結合されている。PTCR加熱要素は、PTCR加熱要素を通って延在する穴特徴部を含みうる。PTCR加熱要素は、1~50のアスペクト比を含みうる。
【0025】
PTCR加熱要素は、PTCR加熱要素が組成物を含み、当該組成物は、セラミック;混合金属酸化物;2つ以上の混合金属酸化物;1つ以上の混合金属酸化物と、1つ以上の元素金属、MOx型相を有する1つ以上の二元金属酸化物、MNx型相を有する1つ以上の二元金属窒化物、MCx型相を有する1つ以上の二元金属炭化物、MBx型相を有する1つ以上の二元金属ホウ化物、および/またはMSix型相を有する1つ以上の二元金属ケイ化物との複合混合物;2つ以上の二元金属酸化物の複合混合物;2つ以上の二元金属酸化物と、1つ以上の元素金属、1つ以上の二元金属窒化物、1つ以上の二元金属炭化物、1つ以上の二元金属ホウ化物、および/または1つ以上の二元金属ケイ化物との複合混合物;および/または1つ以上の元素金属と、1つ以上の二元金属酸化物、1つ以上の二元金属窒化物、1つ以上の二元金属炭化物、1つ以上の二元金属ホウ化物、および/または1つ以上の二元金属ケイ化物との架橋ポリマー複合材料;および/またはこれらの任意の組み合わせ、を含みうる。
【0026】
PTCR加熱要素は組成物を含むことができ、当該組成物は、ABO3型化合物であって、Aの元素がLi、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Pb、Biもしくはこれらの混合物を含み、Bの元素がMg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Hf、Taもしくはこれらの混合物を含む、ABO3型化合物;チタン酸バリウム(BaTiO3);チタン酸鉛(PbTiO3);ジルコン酸鉛(PbZrO3);アルミン酸ビスマス(BiAlO3);ニオブ酸アルカリ(ANbO3、A=Li、Na、K、Rb)、タンタル酸アルカリ(ATaO3、A=Li、Na、K、Rb)、もしくはこれらの固溶体;主族アルカリジルコン酸塩(Bi0.5A0.5ZrO3、A=Li、Na、K)を含む固溶体;主族チタン酸塩-ジルコン酸塩(PbTi1-xZrxO3)、希土類置換変異体、および/またはBa1-xRExTiO3(RE=La、Ce)を含む、固溶体;アルカリ土類ニオブ酸塩(Sr1-xBaxNb2O6)、一般式[Bi2O2][An-1BnO3n+1]のオーリビリウス型相、Bi4Ti3O12、およびこれらの置換相、固溶体相、不定比相および連晶相;C、Al、Si、Ti、Fe、Zn、Agおよび/またはBiを含む元素金属;MgO、Al2O3、SiO2、TiO2、Ti2O3、Cr2O3、MnO、FeO、CoO、NiO、CuO、ZnOおよび/またはSnO2を含む二元金属酸化物;TiN、Mn3N2、Co2N、Ni3Nおよび/またはZn3N2を含む二元金属窒化物;TiCを含む二元金属炭化物;ZrB2および/またはNbB2を含む二元金属ホウ化物;NbSi2、WSi2および/またはMoSi2を含む二元金属ケイ化物;ポリエチレン;ポリアミド;カイナー(kynar);ポリテトラフルオロエチレン;および/またはこれらの任意の組み合わせ、を含みうる。
【0027】
PTCR加熱要素は、組成物を含みうるものであり、当該組成物は、ABO3型化合物であって、Aの元素がLi、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Pb、Biもしくはこれらの混合物を含み、Bの元素がMg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Hf、Taもしくはこれらの混合物を含む、ABO3型化合物を含みうる。当該組成物の例には、チタン酸バリウム(BaTiO3);チタン酸鉛(PbTiO3);ジルコン酸鉛(PbZrO3);アルミン酸ビスマス(BiAlO3);ニオブ酸アルカリ(ANbO3、A=Li、Na、K、Rb)、タンタル酸アルカリ(ATaO3、A=Li、Na、K、Rb)、もしくはこれらの固溶体;主族アルカリジルコン酸塩(Bi0.5A0.5ZrO3、A=Li、Na、K)を含む固溶体;主族チタン酸塩-ジルコン酸塩(PbTi1-xZrxO3)、希土類置換変異体、および/またはBa1-xRExTiO3(RE=La、Ce)を含む、固溶体が含まれうる。付加的にもしくは代替的に、組成物、例えば、アルカリ土類ニオブ酸塩(Sr1-xBaxNb2O6)、一般式[Bi2O2][An-1BnO3n+1]のオーリビリウス型相、もしくはBi4Ti3O12が含まれまたは使用されてもよい。化合物は、不定比相または連晶相であってよく、公称の化学量論に制約されるものではない。組成物は、C、Al、Si、Ti、Fe、Zn、Agおよび/またはBiを含む元素金属;MgO、Al2O3、SiO2、TiO2、Ti2O3、Cr2O3、MnO、FeO、CoO、NiO、CuO、ZnOおよび/またはSnO2を含む二元金属酸化物;TiN、Mn3N2、Co2N、Ni3Nおよび/またはZn3N2を含む二元金属窒化物;TiCを含む二元金属炭化物;ZrB2および/またはNbB2を含む二元金属ホウ化物;NbSi2、WSi2および/またはMoSi2を含む二元金属ケイ化物;
ポリエチレン;ポリアミド;カイナー(kynar);ポリテトラフルオロエチレン;および/またはこれらの任意の組み合わせ、を含みうる。
【0028】
装置は、PTCR加熱要素に隣接する芯を含むことができ、芯は、流体を気化位置に輸送するように構成されている。PTCR加熱要素は、気化位置で流体を加熱するように構成することができる。装置は、第2の加熱要素を含むことができ、第2の加熱要素は、芯の第2の側に隣接し、第1の加熱要素は、芯の第1の側に隣接する。芯には、開放織目構成を含めることができる。開放織目構成は、第1の加熱要素、第2の加熱要素、および/または芯の円筒形の端部に隣接しうる。
【0029】
電源は、3V~6Vの電圧を提供するように構成することができる。幾つかの実現形態では、電源は、充電式電池などの電池でありうる。幾つかの実現形態では、電源は、特に、3~10V、3~50V、または3~100Vの電圧を提供することができる。電源は、直流(DC)または交流(AC)のいずれかを供給することができる。
【0030】
方法は、気化器装置によって、ユーザ入力を受信することと、気化器装置のPTCR加熱要素を使用して、気化性流体を加熱することと、を含み、PTCR加熱要素は、電源に電気的に結合され、気化性流体を加熱してエアロゾルを形成するように構成されている。PTCR加熱要素は、温度に基づいて変化する電気抵抗率を含み、電気抵抗率には、温度範囲にわたる電気抵抗率の増大を含む電気抵抗率遷移領域が含まれ、これにより、PTCR加熱要素が遷移領域内の第1の温度に加熱されると、電源からの電流の流れが、電流の流れによるPTCR加熱要素のさらなる温度上昇を制限するレベルまで低減される。方法は、気化性流体の加熱により蒸気を生成することをさらに含みうる。
【0031】
幾つかの実現形態では、装置は、電源を含むハウジングと、入口、出口を含み、流体を包含し、ハウジングに結合されるように構成された流体リザーバと、電源に電気的に結合され、流体を加熱してエアロゾルを形成するように構成されたPTCR加熱要素と、を含む。PTCR加熱要素には、温度に基づいて変化する電気抵抗率が含まれている。電気抵抗率には、温度範囲にわたる電気抵抗率の増大を含む電気抵抗率遷移領域が含まれ、これにより、PTCR加熱要素が遷移領域内の温度に達すると、当該要素の抵抗率が電池からの電流の流れを制限するレベルまで上昇し、PTCR加熱要素のさらなる温度上昇を制限する。
【0032】
本明細書に記載された主題の1つ以上の変形例の詳細は、添付の図面および以下の説明に示されている。本明細書に記載された主題の他の特徴および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。本開示に続く特許請求の範囲は、保護される主題の範囲を定義することを意図している。
【0033】
本特許または出願ファイルには、カラーで描かれた図面が少なくとも1つ包含されている。この特許または特許出願公開のカラー図面のコピーは、請求して必要な手数料を支払えば、特許庁から提供される。
【0034】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本明細書に開示された主題の特定の態様を示し、説明とともに、開示される実現形態に関連する基本方式の一部を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】等方性のPTCR材料内の熱出力生成の挙動を示す図である。
【
図1B】本主題の実現形態と一致する、非線形の正の抵抗温度係数を有する半導体材料の例示的な抵抗率対温度曲線を示すプロットを示す図である。
【
図1C】本主題の実現形態と一致する、
図1Bに示される非線形PTCR半導体材料の抵抗率対温度曲線データの表を提示する図である。
【
図2A】本主題の実現形態と一致する、気化器加熱の改善を可能にしうる例示的な加熱要素の図を示す図である。
【
図2B】本主題の実現形態と一致する、
図2Aに示される例示的な加熱要素の断面を示す図である。
【
図3A】本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図3B】本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図3C】本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図3D】本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図3E】本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図3F】本主題の実現形態と一致する、例示的な非線形PTCRの抵抗率対温度曲線を示す図である。
【
図3G】本主題の実現形態と一致する、別の例示的なPTCR抵抗率対温度曲線を示す図である。
【
図4】本主題の実現形態と一致する、導電層の間に挟まれた正の抵抗温度係数を有する材料を含む、例示的な正の温度係数の抵抗率ヒータを示す図である。
【
図5】本主題の実現形態と一致する、
図4の例示的なヒータの温度を示す図である。
【
図6】本主題の実現形態と一致する、繊維状の芯を含み、例示的なヒータが繊維状の芯の一方の平坦な側面に搭載された、例示的な気化アセンブリを示す図である。
【
図7】本主題の実現形態と一致する、開放織目ウィッキング材料によって囲まれたヒータを備えた気化アセンブリの別の例示的な実現形態を示す図である。
【
図8】本主題の実現形態と一致する、例示的な気化器を示すブロック図である。
【
図9】本主題の実現形態と一致する、正の抵抗温度係数を有する加熱要素を利用する例示的な気化器デバイスを操作する例示的なプロセスのプロセスフローチャートを示す図である。
【
図10A】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図10B】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図10C】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図10D】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図10E】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図10F】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータのモデル化された温度を示す図である。
【
図11A】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータの時間の関数としてのモデル化された表面温度を示す図である。
【
図11B】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータの時間の関数としてのモデル化および測定された最高表面温度を示す図である。
【
図11C】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータの時間の関数としてのモデル化および測定された平均表面温度を示す図である。
【
図12】本主題の実現形態と一致する、例示的なPTCRヒータの時間の関数としての過渡電流応答を示す図である。
【0036】
実用的な場合、類似の参照番号は、類似の構造、特徴、または要素を示す。
【0037】
詳細な説明
本主題の実現形態には、PTCRヒータとも称される非線形の正の抵抗温度係数(PTCR)を有する加熱要素を利用する気化器ヒータに関連する方法、装置、製造品、およびシステムが含まれる。「非線形」とは、その動作範囲にわたるPTCR加熱要素を指すことに留意する必要がある。一部の動作範囲では、線形の抵抗率係数を示しうるが、抵抗率係数の変化率が大きくなる遷移温度では、抵抗率係数が大幅に変化する。このように、PTCR加熱要素は温度を自己制限することができ、既知の範囲の印加電圧が与えられると、PTCR加熱要素が特定の動作温度を超えて加熱されないように、抵抗の急激な増大により電流の流れが制限される。本主題の幾つかの態様は、PTCR加熱要素を利用することにより、所望の動作温度またはその近傍でPTCR加熱要素の固有の温度制御を行う気化器デバイスを可能にしうる。温度センサ、電子回路、コントローラ、マイクロプロセッサ、および/またはPTCR加熱要素に電力制御を提供するアルゴリズムを必要とせずに、印加電圧の範囲で温度を制御することができる。固有の温度制御を備えたPTCR加熱要素を利用することにより、気化性材料(例えば、気化性流体または他の材料)の過熱(例えば、燃焼)を防ぐことができ、これによって、望ましくない、潜在的に危険な化学物質の副産物の形成を回避することができる。
【0038】
加熱要素の一種として、抵抗加熱要素が含まれうる。抵抗加熱要素は、電流がPTCR加熱要素の1つ以上の抵抗セグメントを通過するときに熱の形態で電力を散逸させるように構成された材料(例えば、金属もしくはニッケル-クロム合金などの合金、または非金属抵抗器)で構築されているか、または少なくとも当該材料を含みうる。
【0039】
気化器デバイスは、典型的には、2つのクラスに分類できる。一方のクラスの気化器デバイスは、過熱を防ぐため、かつ望ましくない、潜在的に危険な化学物質の副産物の形成を防ぐために、比較的厳密な温度制御を利用している点で、より高度でありうる。かかる温度制御には、1つ以上の温度センサおよび電子回路など、温度を測定するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアが必要になる場合があり、一般的に高価である。電子回路には、気化点で電力を制御する能力をPTCR加熱要素に提供しうるマイクロプロセッサが含まれうる。
【0040】
別のクラスの気化器デバイスは、温度制御が提供されないという点でより単純であってよく、その結果、より安価に気化器デバイスを構築することができる。しかし、これは、気化器デバイスの気化性材料および/または種々の構成要素の過熱の危険を有することがあり、そのため、気化器デバイスに恒久的な損傷を与え、かつ/または望ましくない化学物質の副産物を生成する可能性がある。
【0041】
幾つかの実現形態では、本主題は、PTCR加熱要素を備え、より単純な電子機器、より低いコスト、および固有かつ正確な温度制御を含む気化器デバイスを可能にしうる。
【0042】
材料の抵抗率係数は、PTCR加熱要素の温度変化に応じた抵抗率の変化を特徴付けるものである。本主題の幾つかの実現形態には、非線形の正の抵抗温度係数(PTCR)を有するPTCR加熱要素が含まれており、これには、温度の上昇とともに非線形に変化する電気抵抗率(抵抗率とも称される)を有する材料(例えば半導体)が含まれうる。例えば、PTCR加熱要素は、温度特性のある抵抗率を有する材料を含むことができ、当該抵抗率は、比較的短期間の温度変化にわたって抵抗率が比較的大きく増大する領域(例えば遷移領域)を含むため、非線形PTCR材料と称されうる。非線形PTCR材料を備えたかかるPTCR加熱要素は、単にPTCR加熱要素と称されうる。
【0043】
かかるPTCR加熱要素では、温度が温度遷移領域未満に留まっている間、PTCR材料の抵抗率は、比較的低くなりうる。温度遷移領域を超えると、PTCR材料の抵抗率は、温度遷移領域より低い温度での同じPTCR材料の抵抗率よりも大幅に高くなりうる。例えば、抵抗率の変化は、摂氏50度以下の温度遷移領域では桁違いに大きくなる可能性がある。
【0044】
PTCR加熱要素は、非線形PTCR材料を利用して、固有の温度制御を可能にするものである。例えば、周囲温度のPTCR加熱要素を電源に接続することで、電圧勾配と、その結果として生じる電流の流れとを供給することができる。PTCR加熱要素の抵抗率は、周囲温度(例えば、周囲温度は遷移領域より低い)において比較的低いため、電流はPTCR加熱要素を流れる。非線形PTCR材料に電流が流れると、抵抗によって(電力の消費などによって)熱が発生する。発生した熱によりPTCR加熱要素の温度が上昇し、PTCR加熱要素の抵抗率が変化する。PTCR加熱要素の温度が遷移領域(つまり、遷移温度)に達すると、抵抗率は狭い温度範囲で大幅に増大する。抵抗率の変化は、材料の物理的特性の変化によって引き起こされうる。例えば、材料内で、相転移が発生している可能性がある。かかる(抵抗の全体的な増大をもたらす)抵抗率の増大により、電流の流れが低減され、発熱量が低下する。遷移領域には、変曲点が存在する温度が含まれ、PTCR加熱要素の温度をさらに上昇させるには発熱が不足する。これにより、PTCR加熱要素の温度が制限される。電源が接続され、電流が供給されている限り、PTCR加熱要素は、最小限の温度変化で均一な温度を維持する。この場合、PTCR加熱要素に印加される電力は、式PI=Volts2/Resistanceで表すことができる。PTCR加熱要素の熱損失は、PLで表すことができ、伝導熱、対流熱、放射熱、および潜熱の任意の組み合わせが含まれる。定常状態の動作中はPI=PLである。PLが増大すると、PTCR加熱要素の温度が低下し、これにより抵抗が低下して、PTCR加熱要素を流れる電流が増大する。PLが低下すると、PTCR加熱要素の温度が上昇し、これにより抵抗が増大して、PTCR加熱要素を流れる電流が低減される。PLが0に近づくと、PTCR加熱要素の抵抗は対数的に増大する。PTCR加熱要素が制限される動作温度は、要素の材料、要素の形状、温度特性の関数としての要素の抵抗率、電源、回路特性(例えば電圧勾配、電流、時間変動特性)などの影響を受ける可能性がある。
【0045】
本開示と一致するPTCR加熱要素の材料構造は、多くの個別の微結晶から構成されうる。これらの個別の微結晶の縁部には、潜在的な障壁が形成される粒界があり、自由電子が隣接する領域に拡散することを防止する。これは、粒界が高い抵抗をもたらすことを意味する。しかし、低温ではその影響はない。特定の理論に拘束されるものではないが、高い誘電率および粒界での急激な分極が、低温での電位障壁の形成を防ぎ、自由電子の流れ(すなわち電流の流れ)を可能にすると考えられる。より高い温度は、キュリー温度として知られており、これを超えると、誘電率および分極は、電位障壁が大きく成長して電気抵抗が上昇するポイントまで低下する。キュリー温度を超える特定の温度範囲では、PTCR加熱要素の抵抗が指数関数的に増大する。
【0046】
図1Aに示されているように、等方性のPTCR材料内の熱出力生成は、電圧勾配∇Vの影響を受ける等方性のPTCR材料内の全ての制御体積∂x、∂y、∂zに対して、制御体積∂x、∂y、∂zがPTCR遷移領域内の温度へと加熱され、∇Vの広い範囲内でその温度を保持するように特徴付けることができる。熱出力生成は、
【数1】
として表すことができる。式中、Pは熱出力生成、volは制御体積(例えば∂x,∂y,∂z)、ρは抵抗率である。
【0047】
図1Bは、非線形PTCR材料の例示的な抵抗率対温度曲線を示すプロットである。縦軸は対数である。非線形PTCR材料で構築された(例えば、形成された)PTCR加熱要素(PTCRヒータと称される)には、有利な特性が含まれうる。例えば、十分な電圧勾配(例えば∇V)を印加すると、PTCRヒータは発熱し、遷移領域に到達するまで温度が上昇する。
図1Bに示されている曲線では、温度T
1からT
2まで遷移領域が広がっている。
図1Bに示されている曲線では、抵抗率対温度曲線は、T
1とT
2との間で非線形に見えるが、他の実施形態では、抵抗率対温度曲線は、略線形もしくは線形または他の形状であってもよい。T
1を超える温度では、非線形PTCR材料の抵抗率は、さらなる温度上昇が停止するポイントまで増大する。これは、全体の抵抗が、電流の流れが制限されるポイントまで増大するためである。言い換えれば、PTCRヒータの実現形態では、温度が自己制限的であると見なすことができ、既知の範囲の印加電圧が与えられる場合、温度遷移領域の低い点T
1をわずかに上回る温度を超えて加熱されることはない。
図1Bに示されている曲線では、温度がT
1に上昇するにつれて抵抗率は低下しているが、他の実施形態では、抵抗率は、温度がT
1に上昇するにつれてより水平になるかまたは増大してもよい。
【0048】
図1Cは、
図1Bに示した非線形PTCR半導体材料の抵抗率対温度曲線データの表を提示している。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、100℃で10Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、100℃で20Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、265℃で100000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、100℃で100Ωcm未満の抵抗率と、260℃で100000Ωcmを超える抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、100℃で100Ωcm未満の抵抗率と、275℃で250000Ωcmを超える抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、100℃で100Ωcm未満の抵抗率と、295℃で300000Ωcmを超える抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。
幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で100000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で20Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で150000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~50Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~325000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~100Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~350000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~375000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~400000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~250Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~450000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、25℃で90Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、150℃で30Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、280℃で200000Ωcm~500000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で10Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、260℃で50000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で50Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、260℃で75000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~110Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~125000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~150Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~150000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~200Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~175000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~300Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~200000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~400Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~250000Ωcmの抵抗率とを有する。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、50℃で75Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、100℃で90Ωcm~500Ωcmの抵抗率と、260℃で100000Ωcm~300000Ωcmの抵抗率とを有する。
【0049】
PTCRヒータの性能は、
図1BのようにPTCRの挙動およびヒータの形状に依存する可能性がある。相対的に長くて幅狭の形状を有し、PTCRヒータの長い寸法の両端に差動電圧を印加するための電気コンタクトを備えたPTCRヒータでは、概して、非線形PTCR材料の抵抗率がT
1未満の温度において高すぎるため、効果がない場合がある。T
1とT
2との間の温度差が10℃未満である急勾配の遷移領域を有する非線形PTCR材料では、全ての電圧降下が前述の細長い形状の長さのごく一部に入ってしまう可能性があり、どのような材料であっても必然的に空間的な不均一性が生じる。したがって、PTCRヒータの幾つかの実現形態には、非線形PTCR材料が並列回路内に提供されるようなPTCRヒータ用電極構造が含まれる。これにより、幾つかの実現形態では、加熱の均一性を改善することができる。PTCRヒータの形状として、導電体間または導電性コーティング間に挟まれた非線形PTCR材料の薄片が含まれていてよく、この導電体間または導電性コーティング間には、差動電圧を印加することができる。
【0050】
図2Aは、気化器の加熱を改善しうる例示的なPTCR加熱要素50を示す図である。非線形PTCR材料10(例えばPTCRセラミック材料)の薄片が
図2に示されており、ここで、非線形PTCR材料10は、導電層20の間に挟まれており、さらに、導電性リード30から差動電圧が印加されうるように導電性リード30に取り付けられている。幾つかの実現形態では、単一の導電性リード30が、PTCR加熱要素50の各導電層20に取り付けられている。幾つかの実現形態では、2つ以上の導電性リード30が、PTCR加熱要素50の各導電層20に取り付けられている。
図2Bは、
図2Aに示されている例示的なPTCR加熱要素50の断面図である。
【0051】
気化性材料を使用する気化器デバイスにおいて効果的でありうる幾つかの実現形態では、例えば、流体は、プロピレングリコールおよびグリセロールを含む組み合わせとすることができる。幾つかの実現形態では、流体は、ニコチン製剤を含む気化性材料である。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素50は、
図2Aに示される形状を含み、他の寸法では、0.5mmの厚さ(高さ)ならびに5.0mmの(長さおよび幅)の非線形PTCR材料を有する。幾つかの例示的な実施形態では、PTCR材料の厚さは、約0.2mm~約0.5mmであってよい。非線形PTCR材料の電気的特性には、以下の値が含まれる。すなわち、T
1値は、150℃~300℃、例えば220℃~280℃であり、T
1未満の温度での抵抗率は、0.1Ωm~100Ωm、例えば1Ωm~10Ωmであり、T
1とT
2との間の抵抗率の変化は、100を超える増大係数、例えば1000を超える増大係数であり、T
1とT
2と間の温度差は、200℃未満、例えば50℃未満である。
【0052】
図3A~
図3Eは、PTCR加熱要素50の一例のモデル化された温度を示している。図示の例では、非線形PTCR材料10は、5mm×5mm×0.5mmの寸法のプレート形状を含む。導電層20は、5mm×5mm×0.025mmの寸法の銀(Ag)で形成された。導電性リード30は、12mm×2mm×0.2mmの寸法の銅(Cu)で形成された。プレート形状には、導電性リードが取り付けられた2つの平行な側面が含まれうる。非線形PTCR材料10では、
図3Fに示されているように、約240℃~約300℃の非線形遷移領域を有するPTCR抵抗率対温度曲線が含まれていた。例示的なPTCR加熱要素50の導電性リード30の両端に3V~6Vの電圧が印加された。他の構成では、例えば、3V~10V、3V~50Vなどの、異なる電圧範囲を印加してもよい。これらの条件の下で、自由対流気流を伴う屋外での例示的なPTCR加熱要素50では、
図3A~
図3Eのモデル化されたシーケンスに示されるように、温度が上昇する。
図3A~
図3Eは、差動電圧を印加して、それぞれ0.0秒後、0.2秒後、0.5秒後、1.0秒後、および2.0秒後を示している。図示のように、1.0秒を超えると、温度は比較的均一となり、導電層20の表面のピーク温度は270℃未満である。
【0053】
図3Gは、別の例示的なPTCR抵抗率対温度曲線を示している。この例では、PTCR材料の密度は5700kg/m
3、熱容量は520J/kgK、熱伝導率は2.1W/mKである。抵抗率は、約440Kを超える温度で最初に増大し始め、その後503K~518Kで急激に増大する。298Kでは、PTCR加熱要素を形成するPTCR材料の抵抗率は0.168Ωmであり、373Kでは、PTCR加熱要素を形成するPTCR材料の抵抗率は0.105Ωmであり、518Kでは、PTCR加熱要素を形成するPTCR材料の抵抗率は3.669Ωmである。幾つかの例示的な実現形態では、PTCR材料の密度は5000kg/m
3~7000kg/m
3、熱容量は450J/kgK~600J/kgK、熱伝導率は1.5W/mK~3.0W/mKである。
【0054】
均一な温度は、PTCRヒータの望ましい性能属性であり、温度センサ、マイクロプロセッサを備えた電子回路、温度制御専用の高度なアルゴリズムによって電力入力が制御される直列ヒータなどの直列コイルヒータに比べて、明確な利点がある。既存の直列ヒータは、あるポイントでの温度測定に応じて、または一般的な直列加熱要素のTCR(抵抗率温度係数)と組み合わせた全体的な電気抵抗率によって推定される平均温度によって、全体的な電力を調節できる。ただし、一部の直列ヒータでは、全体の電力が調節されて、例えば局所的な抵抗率の変動により局所的な温度が変動する可能性があるため、直列ヒータ内の温度が40℃以上変動する可能性がある。
【0055】
幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素50は、
図1Bに示されるものと同じまたは類似の非線形PTCR抵抗率対温度曲線を有する材料を用いて、
図2Aおよび
図2Bに示されるような平行な形状で、かつ導電性リード30に印加される適切な(例えば3V~6V)差動電圧を用いて構築することができる。かかるPTCRヒータ内の所与の制御体積のそれぞれは、狭範囲内の温度、典型的には10℃未満の範囲内の温度を有する。これは、差動熱負荷を用いても実現できる。10℃未満の範囲は、PTCR加熱要素の材料および幾何学的構成を制御することにより、気化に合わせて調整できる。
【0056】
PTCRヒータは、任意の複数の幾何学形状で形成することができる。例えば、
図4は、導電層420の間に挟まれたPTCR材料410を含む例示的なPTCRヒータ460を示している。PTCR材料410は、長方形の穴440を含む。導電層420は、差動電圧が導電性リード430に印加されうるように、導電性リード430に取り付けられている。長方形の穴440により、PTCRヒータ460が気化される液体で予め飽和した材料と接触している一例において、蒸気が逸出するための経路が提供される。
【0057】
PTCRヒータ460の穴の形状およびサイズは、任意のサイズ、間隔および形状であってよく、前述の形状には、気化のために構成されうる任意の多角形形状または円形状が含まれていてよい。
【0058】
図5は、印加電圧でモデル化された例示的なPTCRヒータ460の温度を示しており、2.0秒後の温度は、
図5に示されているように、265±1.0℃の温度を示す。
【0059】
図6は、例示的な気化アセンブリ100を示しており、繊維状の芯90を含み、例示的なPTCRヒータ460が繊維状の芯90の一方の平坦な側面(例えば、芯90の広い表面)に搭載されている。幾つかの実現形態では、PTCRヒータ460は、繊維状の芯90の両側の平坦面に搭載することができる。幾つかの実現形態では、気化アセンブリ100は、矢印で示されているように、(通常、気化器デバイスのユーザによって生成される)空気の流入が気化アセンブリ100の広い面に平行に配向されるよう、気化デバイス内に配置されうる。かかる気化アセンブリの構造は、方向付けられた気流を伴い、蒸気が主にPTCRヒータ460によって加熱された領域で生成されることが確実となりうる。平行気流により、一次蒸気の発生領域において適切な(例えば、最大の)表面剪断応力が生成され、これにより、気化器デバイスの動作が改善されうる。
【0060】
図7は、導電性リード30を有するPTCR加熱要素50を備えた気化アセンブリ200の別の例示的な実現形態を示しており、導電性リード30が、開放織目ウィッキング材料220によって囲まれており、開放織目ウィッキング材料220の端部が円筒形210に巻かれて、気化性材料(図示せず)を受容する。
図7の例示的な構成は、芯の端部をPTCR加熱要素よりも小さくすることができる一方で、PTCR加熱要素の大きな表面積をさらに利用して、加熱を改善している。他の気化アセンブリの構成も可能である。
【0061】
PTCR加熱要素は、気化器デバイスに実装することができる。
図8のブロック図を参照すると、例示的な気化器810は、所定の電圧で電流の流れを供給するための電源822(充電式電池であってよい電池など)と、任意手段としての、気化性材料を凝縮形態(例えば固体、液体、溶液、懸濁液、少なくとも部分的に未処理の植物材料の一部など)から気相に変換させるために噴霧器826への熱の送達を制御するためのコントローラ824(例えばロジックを実行することが可能なプロセッサ、回路など)とを包含するハウジング812を含む。任意手段としてのコントローラ824は、本主題の特定の実現形態と一致する1つ以上のプリント回路基板(PCB)の一部であってもよい。噴霧器826は、ウィッキング要素(本明細書ではウィッキング要素(
図8には図示せず)とも称される)、およびPTCR加熱要素828を含む。ウィッキング要素は、空気がリザーバに入って、除去される液体の体積に置き換わることを可能にする。言い換えれば、毛細管作用によって、PTCR加熱要素による気化により、液体気化性材料がウィッキング要素内に吸い出される(後述する)。空気は、本主題の幾つかの実現形態では、ウィッキング要素を介してリザーバに戻り、リザーバ内の圧力を少なくとも部分的に均一化することができる。圧力を均一化するために空気をリザーバに戻すことを可能にする他のアプローチも、本主題の範囲内である。
【0062】
PTCR加熱要素828は、PTCR材料を含む。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、伝導性ヒータ、放射性ヒータ、および対流性ヒータのうちの1つ以上であるか、またはこれらを含むことができる。本主題の幾つかの実現形態では、噴霧器は、ウィッキング要素に巻き付け可能であり、またはウィッキング要素内に配置可能であり、またはウィッキング要素にバルク形状に統合可能であり、またはウィッキング要素と熱接触するように押圧可能であり、または別様にウィッキング要素に熱を送達するように配置されたPTCR加熱要素を包含可能であり、これにより、リザーバからウィッキング要素に吸引された液体気化性材料が、その後のユーザによる気相および/または凝縮(例えば、エアロゾル粒子もしくは液滴)相での吸入のために気化される。本明細書で説明しているように、他のウィッキング要素、加熱要素、および/または噴霧器アセンブリの構成も可能である。
【0063】
付加的にもしくは代替的に、特定の気化器は、例えば固相気化性材料(例えばワックスなど)または気化性材料を含有する植物材料(例えばタバコの葉および/もしくはその一部)のような非液体気化性材料の加熱を介して、吸入可能摂取量の気相および/またはエアロゾル相の気化性材料を生成するように構成することができる。かかる気化器において、PTCR加熱要素は、非液体気化性材料が配置されるオーブンまたは他の加熱チャンバの壁の一部であるか、またはこの壁に別様に組み込まれているか、またはこの壁に熱的に接触していてよい。代替的に、1つ以上のPTCR加熱要素を使用して、非液体気化性材料を通過または経過した空気を加熱し、非液体気化性材料の対流加熱を生じさせることもできる。さらに他の例では、PTCR加熱要素または要素は、(例えばオーブンの壁から内側に伝導するだけではなく)植物材料の直接の伝導加熱が所定の質量の植物材料内から生じるように、植物材料と緊密に接触して配設されていてもよい。
【0064】
PTCR加熱要素は、気化器のマウスピース830上でのユーザのふかし(例えば、吸引、吸入など)に関連付けて(例えば、以下で説明するように、気化器本体の一部でありうるコントローラによって、かつ以下で説明するように気化器カートリッジの一部でありうるPTCR加熱要素を含む回路を介して電源から電流を流しうるコントローラによって)作動させることができ、空気を、空気入口から、噴霧器826(例えば、ウィッキング要素およびPTCR加熱要素828)を通過する気流経路に沿って、幾つかの実現形態では1つ以上の凝縮エリアまたはチャンバを通して、マウスピースの空気出口に流すことができる。気流経路に沿って入ってきた空気は、噴霧器の上を通過するか、噴霧器を通って通過するなどして、気相の気化性材料を空気中に巻き込む。上述したように、巻き付けられた気相気化性材料は、気流経路の残りの部分を通過する際に凝縮し、その結果、エアロゾル形態の気化性材料の吸入可能摂取量が空気出口から(例えば、ユーザによる吸入のためのマウスピース830内に)送達されうる。
【0065】
PTCR加熱要素828の作動は、入力デバイス833を使用して、電源とPTCR加熱要素との間の回路を閉成することによって引き起こされる。幾つかの実現形態では、入力デバイス833はスイッチであり、電源とPTCR加熱要素との間の回路を電気的に完成させるために使用されうる。幾つかの実現形態では、入力デバイス833には、リレー、ソレノイド、および/またはソリッドステートデバイスが含まれ、電源とPTCR加熱要素との間の回路を電気的に完成させるために使用されうる。
【0066】
PTCR加熱要素828の作動は、任意手段としての、例えば周囲圧力に対する相対的な気流経路に沿った圧力を検出するように(または任意で絶対圧力の変化を測定するために)配設された1つ以上の圧力センサ、気化器810の1つ以上のモーションセンサ、気化器810の1つ以上のフローセンサ、気化器810の容量性リップセンサなどの、1つ以上のセンサ832によって生成された信号のうちの1つ以上に基づくふかしの自動検出によって任意に引き起こされてもよく、1つ以上の入力デバイス833(例えば、気化器810のボタンまたは他の触覚制御デバイス)とのユーザの対話の検出に応答して、気化器810と通信しているコンピューティングデバイスからの信号の受信によって引き起こされてもよく、かつ/またはふかしが発生しているか、または差し迫っていることを判別するための他のアプローチを介して引き起こされてもよい。
【0067】
前の段落で言及したように、本主題の実現形態と一致する気化器は、任意手段として、気化器810と通信する1つのコンピューティングデバイス(または任意手段としての2つ以上のデバイス)に(例えば無線接続または有線接続を介して)接続するように構成することができる。この目的のために、任意のコントローラ824は、通信ハードウェア834を含むことができる。また、任意のコントローラ824は、メモリ836を含むことができる。コンピューティングデバイスは、気化器810を含む気化器システムの構成要素とすることもでき、気化器810の通信ハードウェア834との間で無線通信チャネルを確立しうる独自の通信ハードウェアを含むことができる。例えば、気化器システムの一部として使用されるコンピューティングデバイスは、デバイスのユーザが気化器と対話することを可能にするためのユーザインタフェースを生成するためのソフトウェアを実行する汎用コンピューティングデバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、スマートウォッチなどの一部の他の携帯型デバイス)を含んでもよい。本主題の他の実現形態では、かかる気化器システムの一部として使用されるデバイスは、1つ以上の物理的なまたはソフトウェアを利用する(例えば、スクリーンまたは他の表示デバイス上に構成可能であって、タッチセンシティブスクリーンまたはマウス、ポインタ、トラックボール、カーソルボタンなどのような他の入力デバイスとのユーザ対話を介して選択可能な)インタフェース制御を有するリモートコントロールまたは他の無線デバイスもしくは有線デバイスなどの、専用のハードウェア部分であってよい。また、気化器810は、ユーザに情報を提供するための1つ以上の出力部838の特徴またはデバイスを含むことができる。
【0068】
上記で定義されたような気化器システムの一部であるコンピューティングデバイスは、摂取量の制御(例えば、摂取量モニタリング、摂取量設定、摂取量制限、ユーザ追跡など)、セッショニングの制御(例えば、セッションのモニタリング、セッションの設定、セッションの制限、ユーザの追跡など)、ニコチン送達の制御(例えば、ニコチンと非ニコチン気化性材料との間の切り替え、ニコチン送達の量の調整など)、位置情報の取得(例えば、他のユーザの位置、小売業者/商業施設の位置、ベイピングの位置、気化器自体の相対的もしくは絶対的位置など)、気化器のパーソナライズ(例えば、気化器の命名、気化器のロック/パスワード保護、1つ以上のペアレンタルコントロールの調整、気化器とユーザグループの関連付け、気化器の製造業者または保証メンテナンス組織への登録など)、他のユーザとのソーシャルアクティビティ(例えば、ゲーム、ソーシャルメディア通信、1つ以上のグループとのインタラクションなど)への参加などの、1つ以上の機能のいずれかに使用することができる。用語「セッショニング」、「セッション」、「気化器セッション」、または「気化セッション」とは、概して、気化器の使用に供される期間を指すために使用される。当該期間には、時間期間、摂取回数、気化性材料の量などが含まれうる。
【0069】
コンピューティングデバイスがPTCR加熱要素の作動に関連する信号を提供する例では、または種々の制御もしくは他の機能の実現形態のための気化器とコンピューティングデバイスのカップリングの他の例では、コンピューティングデバイスは、ユーザインタフェースおよび基礎となるデータ処理を提供するための1つ以上のコンピュータ命令のセットを実行する。一例では、1つ以上のユーザインタフェース要素とのユーザ対話をコンピューティングデバイスによって検出することにより、コンピューティングデバイスは、気化器810に信号を送り、PTCR加熱要素828を作動させて、蒸気/エアロゾルの吸入可能摂取量を生成するための完全な動作温度とすることができる。気化器810の他の機能は、気化器と通信しているコンピューティングデバイス上のユーザインタフェースとユーザとの対話によって制御されてもよい。
【0070】
気化器のPTCR加熱要素の温度は、複数の要因に依存する可能性がある。当該要因として、電子気化器の他の部分への伝導性熱伝達および/または環境への伝導性熱伝達、ウィッキング要素および/または噴霧器全体からの気化性材料の気化による潜熱損失、ならびに気流(例えば、ユーザが電子気化器上で吸入するときにPTCR加熱要素または噴霧器全体を横切って移動する空気)に起因する対流熱損失が挙げられる。上述したように、PTCR加熱要素を確実に作動させるか、またはPTCR加熱要素を所望の温度に加熱するために、気化器は、本主題の幾つかの実現形態では、圧力センサからの信号を利用して、ユーザがいつ吸入しているかを判別することができる。任意の圧力センサは、気流経路内に配置することができ、かつ/またはデバイスに進入する空気の入口と生じる蒸気および/またはエアロゾルをユーザが吸入するための出口とを接続する気流経路に(例えば、通路または他の経路によって)接続することができる。その結果、圧力センサは、空気が気化器デバイスを通過して空気入口から空気出口へ向かうと同時に圧力変化を受ける。本主題の幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、ユーザのふかしに関連付けられて、例えば、ふかしの自動検出によって、例えば、圧力センサが気流経路内の圧力変化を検出することによって、作動されてもよい。
【0071】
典型的には、任意の圧力センサ(ならびに他の任意のセンサ832)は、任意のコントローラ824上に配置されるか、または任意のコントローラ824(例えば、プリント回路板アセンブリもしくは他のタイプの回路基板)に結合可能である(例えば、物理的接続もしくは無線接続を介して電気的もしくは電子的に接続可能である)。測定を正確に行い、気化器の耐久性を維持するために、任意の弾力性シール842を設けて気化器810の他の部分から気流経路を分離することが有益である。ガスケットであってよい任意のシール842は、気化器810の内部回路への任意の圧力センサの接続部が、気流経路に露出した任意の圧力センサの部分から分離されるように、任意の圧力センサを少なくとも部分的に取り囲んで構成することができる。カートリッジベースの気化器の一実施例では、任意のシールまたはガスケット842は、気化器本体850と気化器カートリッジ852との間の1つ以上の電気的接続部を分離することができる。気化器810における任意のガスケットまたはシール842のかかる構成は、蒸気相もしくは液相中の水、気化性材料のような他の流体などの環境要因との相互作用から生じる気化器構成要素への潜在的に破壊的な影響を緩和するのに役立ちうるものであり、かつ/または気化器810内の設計された気流経路からの空気の逸脱を減少させるのに役立ちうるものである。望ましくない空気、液体もしくは他の流体が気化器の回路を通過および/または接触することは、圧力測定値を変化させるような種々の望ましくない効果を引き起こす可能性があり、かつ/または気化器810の部分に水分、気化性材料などの望ましくない材料を蓄積させ、これにより圧力信号の不良、圧力センサもしくは他の構成要素の劣化、および/または気化器810の寿命の短縮がもたらされる可能性がある。また、任意のシールまたはガスケット842の漏れは、吸入することが好ましくない可能性のある材料を包含するかまたはこれによって構成されている気化器デバイス810の部分を通過した空気をユーザが吸入する結果をもたらしうる。
【0072】
近年人気を博している一般的なクラスの気化器として、任意のコントローラ824、電源822(例えば電池)、1つ以上の任意のセンサ832、充電コンタクト、任意のガスケットまたはシール842、および1つ以上の種々のアタッチメント構造を介して気化器本体850に結合される気化器カートリッジ852を受容するように構成されたカートリッジレセプタクル854を含む、気化器本体850が挙げられる。幾つかの実施例では、気化器カートリッジ852は、液体気化性材料を受容するための入口(図示せず)および気化性材料を放出するための出口(図示せず)を含むリザーバ856と、吸入可能摂取量の気化性材料をユーザに送達するためのマウスピース830とを含む。気化器カートリッジ852は、ウィッキング要素およびPTCR加熱要素828を有する噴霧器826を含むことができ、または代替的にウィッキング要素およびPTCR加熱要素828のうちの一方または両方を気化器本体850の一部とすることができる。噴霧器826の任意の部分(例えば、加熱要素828および/またはウィッキング要素)が気化器本体850の一部である実現形態では、気化器810は、気化器カートリッジ852内のリザーバ856から気化器本体850に含まれる噴霧器826の一部分に液体気化器材料を供給するように構成することができる。
【0073】
非液体気化性材料の加熱を介して非液体気化性材料の吸入可能摂取量を生成する気化器のためのカートリッジベースの構成もまた、本主題の範囲内である。例えば、気化器カートリッジは、1つ以上のPTCR加熱要素の部分と直接に接触するように処理されて形成された所定の質量の植物材料を含んでもよく、かかる気化器カートリッジは、気化器本体に機械的かつ電気的に結合されるように構成されてもよく、当該気化器本体は、プロセッサ、電源、および1つ以上のPTCR加熱要素を備えた回路を完成させるための対応するカートリッジコンタクトに接続するための電気コンタクトを含む。
【0074】
電源822が気化器本体850の一部であり、PTCR加熱要素828が気化器本体850に結合されるように構成された気化器カートリッジ852内に配設されている気化器において、気化器810は、任意のコントローラ824(例えば、プリント回路基板、マイクロコントローラなど)、電源822、およびPTCR加熱要素828を含む回路を完成させるための電気的接続特徴部(例えば、回路を完成させるための手段)を含んでもよい。これらの特徴部は、気化器カートリッジ852がカートリッジレセプタクル854に挿入されて結合されたときに、カートリッジコンタクト860およびレセプタクルコンタクト862が電気的接続を行うように、気化器カートリッジ852の底面上の少なくとも2つのコンタクト(本明細書ではカートリッジコンタクト860と称される)および気化器810のカートリッジレセプタクルのベースの近くに配設された少なくとも2つのコンタクト(本明細書ではレセプタクルコンタクト862と称される)を含んでもよい。これらの電気的接続によって完成された回路は、PTCR加熱要素828への電流の供給を可能にし、さらに、例えば、PTCR加熱要素828または気化器カートリッジ852の他の回路の1つ以上の電気的特性に基づいてカートリッジを識別するためなどの付加的な機能に使用されうる。
【0075】
本主題の幾つかの実施例では、少なくとも2つのカートリッジコンタクト860および少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862は、少なくとも2つの配向のいずれかで電気的に接続されるように構成することができる。言い換えれば、気化器810の動作に必要な1つ以上の回路は、(カートリッジを有する気化器カートリッジ852の端部が気化器本体850のカートリッジレセプタクル854に挿入される軸を中心とした)第1の回転配向でカートリッジレセプタクル854内に気化器カートリッジ852を挿入することによって完成させることができる。その結果、少なくとも2つのカートリッジコンタクト860の第1のカートリッジコンタクトが、少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862の第1のレセプタクルコンタクトに電気的に接続され、少なくとも2つのカートリッジコンタクト860の第2のカートリッジコンタクトが、少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862の第2のレセプタクルコンタクトに電気的に接続される。さらに、気化器の動作に必要な1つ以上の回路は、第2の回転配向でカートリッジレセプタクル854内に気化器カートリッジ852を挿入することによって完成させることができる。その結果、少なくとも2つのカートリッジコンタクト860の第1のカートリッジコンタクトが、少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862の第2のレセプタクルコンタクトに電気的に接続され、少なくとも2つのカートリッジコンタクト860の第2のカートリッジコンタクトが、少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862の第1のレセプタクルコンタクトに電気的に接続される。気化器カートリッジ852が気化器本体850のカートリッジレセプタクル854に可逆的に挿入可能であるというこの特徴については、さらに後述する。
【0076】
少なくとも2つのカートリッジコンタクト860および少なくとも2つのレセプタクルコンタクト862は、種々の形態をとりうる。例えば、コンタクトのうちの一方または両方のセットは、伝導性のピン、タブ、ポスト、ピンまたはポストのための受容穴、などを含んでもよい。幾つかのタイプのコンタクトは、気化器カートリッジ852上のコンタクトと気化器本体850との間でより良い物理的接触および電気的接触を引き起こすための、バネまたは他の付勢特徴部を含みうる。電気コンタクトは、任意に金メッキされていてよく、かつ/または他の材料を含んでもよい。
【0077】
図9は、PTCR加熱要素を利用して例示的な気化器デバイスを操作する例示的なプロセス900を示すプロセスフローチャートである。気化器は、PTCR加熱要素を利用しているため、固有の温度制御を行うことができ、フィードバック温度センサおよび電力デューティサイクルが不要となり、より均一な加熱を実現できる。
【0078】
910では、気化器(例えば、コントローラ)は、入力がユーザによって提供されたかどうかを判別することができる。吸入を感知する圧力センサなどを介して、押しボタンに対して入力を行うことができる。入力部には、電池とPTCRヒータとの間の回路を完成させる開放型押しボタンまたは他の手段が含まれうる。910で入力が提供されていない場合、プロセスは、入力が提供されるまで待機する。入力が提供されると、プロセスはステップ920に進む。
【0079】
920で、PTCR加熱要素を電源に接続する電気回路は、電流がPTCR加熱要素に流れる閉成状態となる。PTCR加熱要素は、電流が流れることで、温度が上昇する。PTCR加熱要素の温度が電気抵抗率遷移領域に達すると、PTCR加熱要素の抵抗率は、電流の流れが低減されて平衡状態に達するまで増大し、PTCR加熱要素は、気化器によるアクティブな制御なしで均一な温度を維持する(例えば、温度は、PTCR加熱要素の材料特性に基づいた値に維持される)。言い換えれば、気化器コントローラは、所望の温度を維持するために、電源の温度検知またはデューティサイクルを実行しなくてよい。したがって、PTCR加熱要素を使用することにより、所望の温度での加熱および自己調整が実現される。幾つかの実現形態では、押しボタンは、ヒステリシスを備えたスナップスルー式の閾値圧力弁または他の手段によってトリガされる機械的スイッチと置換することができる。
【0080】
930で、加熱により蒸気が生成される。固有の温度制御を備えたPTCR加熱要素を利用することにより、気化器流体(または他の材料)の過熱(例えば、燃焼)を回避でき、これにより、望ましくない、潜在的に危険な化学物質の副産物の形成を回避できる。
【0081】
図10A~
図10Fは、PTCR加熱要素50の別の実施例のモデル化された温度を示している。各図の左側に勾配温度スケールが示されており、赤色は約255℃の最も高温の温度を表し、約23℃の最も低温になるまでの可視光スペクトルの色(つまり、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色)が示されている。図示の各実施例では、非線形PTCR材料10は、約5mm×5mm×0.5mmの寸法のプレート形状を含む。導電層20は、約5mm×5mm×0.025mmの寸法の銀(Ag)で形成された。導電性リード30は、約12mm×2mm×0.2mmの寸法の銅(Cu)で形成された。プレート形状には、導電性リード30が取り付けられた導電層20を含む2つの平行な側面が含まれうる。導電性リード30は、接続部40を用いて、PTCR加熱要素50の各側の導電層20の中央に取り付けられている。幾つかの実現形態では、接続部40は、クランプ、クリップ、導電性ペースト、高温はんだ、鉛フリーはんだ、および/またはこれらの組み合わせである。
【0082】
図10Aは、PTCR加熱要素50に電流を印加して作動させてから1.0秒後の温度を示している。紫色の導電性リード30は、依然として約25℃である。PTCR材料10および導電層20の大部分は、温度が約120℃に上昇しており、中央の接続部40を含む領域は、それよりわずかに低温の約80℃の温度となっている。
【0083】
図10Bは、PTCR加熱要素50に電流を印加して作動させてから2.0秒後の温度を示している。青/緑色に着色された導電性リード30は、温度が上昇して約90℃になっている。PTCR材料10および導電層20の大部分は、温度が約210℃に上昇しており、中央の接続部40を含む領域は、それより低温の約160℃の温度となっている。
【0084】
図10Cは、PTCR加熱要素50に電流を印加して作動させてから3.0秒後の温度を示している。緑色に着色された導電性リード30は、温度が上昇して約140℃になっている。PTCR材料10および導電層20の大部分は、温度が約250℃に上昇しており、中央の接続部40を含む領域は、それより低温の約200℃の温度となっている。
【0085】
図10Dは、PTCR加熱要素50に電流を印加して作動させてから4.0秒後の温度を示している。緑色に着色された導電性リード30は、温度が上昇して約160℃になっている。PTCR材料10および導電層20の大部分は、約250℃までの温度のままであり、中央の接続部40を含む領域は、それより低温の約215℃の温度となっている。
【0086】
図10Eは、PTCRヒータ50に電流を印加して作動させてから5.0秒後の温度を示している。緑/黄色に着色された導電性リード30は、温度が上昇して約180℃になっている。PTCR材料10および導電層20の大部分は、約250℃までの温度のままであり、中央の接続部40を含む領域は、それより低温の約225℃の温度となっている。
【0087】
図10Fは、PTCR加熱要素50に電流を印加して作動させてから6.0秒後の温度を示している。黄色に着色された導電性リード30は、温度が上昇して約200℃になっている。PTCR材料10および導電層20の大部分は、約250℃までの温度のままであり、中央の接続部40を含む領域は、それよりごくわずかに低温の約235℃の温度となっている。
【0088】
図11Aは、例示的なPTCR加熱要素の時間の関数としてのモデル化された表面温度を示している。モデルでは、PTCRヒータの表面温度は、時間ゼロで25℃(つまり室温)から開始する。電流を印加した後、表面温度は約2秒間線形に上昇し、約225℃の温度になる。約2秒後、温度上昇の速度は、約250℃の定常状態の動作温度まで徐々に低下する。約250℃の定常状態は、作動後約3秒で実現される。当該モデルでは、非線形PTCR材料が非接触の自由対流状態にあると想定し、放出された放射線は遠方から測定した。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、240℃~280℃の動作温度まで加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、245℃~255℃の動作温度まで加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、約250℃の動作温度まで加熱される。
【0089】
図11Bは、例示的なPTCRヒータの時間の関数としてのモデル化および測定された最高表面温度を示している。赤外線カメラを使用して4回の測定を繰り返し、PTCRヒータの最高表面温度を時間の関数として測定し、最高表面温度のモデルに対してプロットした。当該モデルでは、非線形PTCR材料が非接触の自由対流状態にあると想定し、放出された放射線は遠方から測定した。いずれの場合も、PTCR加熱要素の最高表面温度は、時間ゼロで約25℃(すなわち室温)から開始する。電流を印加した後、最高表面温度は約2秒間線形に上昇し、約225℃の温度になる。約2秒後、温度上昇の速度は、約250℃の定常状態の動作温度まで徐々に低下する。約250℃の定常状態は、作動後約3秒で実現される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、240℃~280℃の動作温度に加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、245℃~255℃の動作温度に加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、約250℃の動作温度に加熱される。
【0090】
図11Cは、例示的なPTCR加熱要素について、時間の関数としてのモデル化および測定された平均表面温度を示している。赤外線カメラを使用して4回の測定を繰り返し、PTCR加熱要素の平均表面温度を時間の関数として測定し、平均表面温度のモデルに対してプロットした。当該モデルでは、非線形PTCR材料が非接触の自由対流状態にあると想定し、放出された放射線は遠方から測定した。いずれの場合も、PTCR加熱要素の平均表面温度は、時間ゼロで約25℃(つまり室温)から開始する。電流が印加された後、最高表面温度は約2秒間線形に上昇し、約225℃の温度となる。約2秒後、温度上昇の速度は、約250℃の定常状態の動作温度まで徐々に低下する。約250℃の定常状態は、作動後約3秒で実現される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、240℃~280℃の動作温度に加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、245℃~255℃の動作温度に加熱される。幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、約250℃の動作温度に加熱される。
【0091】
図12は、本主題の実現形態と一致する、例示的なヒータの時間の関数としての過渡電流応答を示している。グラフでは、電流はアンペア単位で測定され、ほぼ線形の速度で増大し、作動から約1.5秒後にピークドローに達する。その後、PTCRヒータが自動調整動作温度に達すると、抵抗が急速に増大して電流ドローが低下する。
【0092】
幾つかの変形例を上記にて詳細に説明したが、他の修正形態または付加的な形態も可能である。例えば、本主題は、加熱式タバコ(HNB)を可能にするPTCR加熱要素を備えた気化器が含まれうる。加熱式タバコ(HNB)には、香りを改善するために実際のタバコ製品が含まれる場合がある。幾つかの実現形態では、実際のタバコ製品は、固体または半固体である。
【0093】
幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、1~50のアスペクト比を含む。例えば、PTCR加熱要素には、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、または45~50のアスペクト比が含まれうる。他のアスペクト比も可能である。
【0094】
幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は組成物を含み、当該組成物は、混合金属酸化物;または2つ以上の混合金属酸化物の複合混合物;または1つ以上の混合金属酸化物と、1つ以上の元素金属、もしくは代替的に1つ以上の二元金属酸化物(MOx型相)、もしくは代替的に1つ以上の二元金属窒化物(MNx型相)、もしくは代替的に1つ以上の二元金属炭化物(MCx型相)、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ホウ化物(MBx型相)、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ケイ化物(MSix型相)との複合混合物;または2つ以上の二元金属酸化物の複合混合物;または2つ以上の二元金属酸化物と1つ以上の元素金属、もしくは代替的に1つ以上の二元金属窒化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属炭化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ホウ化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ケイ化物との複合混合物;または1つ以上の元素金属、もしくは代替的に1つ以上の二元金属酸化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属窒化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属炭化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ホウ化物、もしくは代替的に1つ以上の二元金属ケイ化物との架橋ポリマー複合材料、を含む。組成物は、ABO3型化合物であって、Aの元素は、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Pb、Biもしくはこれらの混合物であってよいが、これらに限定されず、Bの元素は、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Hf、Taもしくはこれらの混合物であってよいが、これらに限定されない、ABO3型化合物などの成分を含みうる。組成物は、例えば、とりわけ、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、アルミン酸ビスマス(BiAlO3)、ニオブ酸アルカリ(ANbO3、A=Li、Na、K、Rb)、タンタル酸アルカリ(ATaO3、A=Li、Na、K、Rb)、もしくはその固溶体、または主族アルカリジルコン酸塩(Bi0.5A0.5ZrO3、A=Li、Na、K)などの固溶体、または主族チタン酸塩-ジルコン酸塩(PbTi1-xZrxO3)、またはBa1-xRExTiO3(RE=La、Ce)などの希土類置換変異体の成分を含みうる。かかる成分は、その化学量論によって明示的に定義されることに限定されず、したがって、不定比材料または連晶材料でありうる。代替的もしくは付加的な成分には、例えば、アルカリ土類ニオブ酸塩(Sr1-xBaxNb2O6)、一般式[Bi2O2][An-1BnO3n+1]のオーリビリウス型相、Bi4Ti3O12、その置換相、固溶体相、不定比相、および連晶相が含まれうる。当該成分には、代替的または付加的に、特に、C、Al、Si、Ti、Fe、Zn、Ag、またはBiなどの元素金属、特に、MgO、Al2O3、SiO2、TiO2、Ti2O3、Cr2O3、MnO、FeO、CoO、NiO、CuO、ZnO、またはSnO2などの二元金属酸化物、特に、TiN、Mn3N2、Co2N、Ni3N、またはZn3N2などの二元金属窒化物、特に、TiCなどの二元金属炭化物、特に、ZrB2、NbB2などの二元金属ホウ化物、および特に、NbSi2、WSi2、MoSi2などの二元金属ケイ化物が含まれうる。成分には、代替的もしくは付加的に、特に、ポリエチレン、ポリアミド、カイナー(kynar)、ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの組み合わせなどのポリマーが含まれうる。
【0095】
幾つかの実現形態では、PTCR加熱要素は、電源に電気的に結合され、流体を加熱してエアロゾルを形成するように構成され、PTCR加熱要素は温度に基づいて変化する電気抵抗率を含み、電気抵抗率には、温度範囲にわたる電気抵抗率の増大を含む遷移領域が含まれる。幾つかの実現形態では、電気抵抗率遷移領域は150℃~350℃の第1の温度(例えばT1)で開始するか、電気抵抗率遷移領域は200℃~300℃の第1の温度で開始するか、電気抵抗率遷移領域は220℃~290℃の第1の温度で開始するか、または電気抵抗率遷移領域は240℃~280℃の第1の温度で開始する。幾つかの実現形態では、電気抵抗率遷移領域の温度範囲(例えばT1からT2)にわたる電気抵抗率の増大には、少なくとも10の増大係数が含まれる(例えば、T2での抵抗率はT1での抵抗率より少なくとも10倍大きい)。増大係数は、遷移領域の開始に関連する第1の温度(例えばT1)での電気抵抗率と遷移領域の終了に関連する第2の温度(例えばT2)での電気抵抗率との間の電気抵抗率の相対的変化を特徴付ける。他の係数も可能であり、例えば、係数は、少なくとも100、1000、またはそれ以上でありうる。
【0096】
幾つかの実現形態では、遷移領域の開始温度(例えばT1)と遷移領域の終了温度(例えばT2)との間の差は、500℃以下でありうる。他の温度範囲も可能であり、例えば、遷移領域の開始温度(例えばT1)と遷移領域の終了温度(例えばT2)との間の差は、200℃以下、100℃以下、50℃以下、またはそれ以下でありうる。
【0097】
幾つかの実現形態では、遷移領域より低い温度(例えば、T1未満)でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は、2Ωcm~2000Ωcmである。他の抵抗率も可能であり、例えば、遷移領域より低い温度(例えば、T1未満)でのPTCR加熱要素の電気抵抗率は、0.2Ωcm~20Ωcm、2.0Ωcm~20Ωcm、0.2Ωcm~2.0Ωcm、2Ωcm~200Ωcm、20Ωcm~200Ωcm、または2Ωcm~20Ωcmでありうる。
【0098】
本明細書に記載している主題は、多くの技術的利点を提供する。例えば、PTCR加熱要素において、温度センサもしくは電子回路もしくはマイクロプロセッサもしくは気化点でのPTCR加熱要素への電力を制御する手段を提供するアルゴリズムを必要とせずに、印加電圧の範囲にわたる気化点での、気化器の固有の温度制御が保証される。幾つかの実現形態では、温度制御回路がない場合に必要とされるか、または所望される可能性のあるヒューズ、センサ、またはその他の遮断機構などの付加的な構成要素がなくても、PTCR加熱要素の固有の温度制御により、気化性物質が存在しない条件下で熱暴走が発生しないことが保証される。
【0099】
用語
用語「気化器デバイス」は、自給式装置、2つ以上の分離可能な部品(例えば、電池および他のハードウェアを含む気化器本体、および気化性材料を含むカートリッジ)を含む装置などのいずれかを指す。本主題の実現形態と一致する気化器デバイスの例には、電子気化器、電子ニコチン送達システム(ENDS)などが含まれる。概して、かかる気化器デバイスは、気化性材料を(例えば、対流、伝導、放射、および/またはこれらの幾つかの組み合わせによって)加熱して材料の吸入可能摂取量を提供する、手持ち式のデバイスである。気化器デバイスで使用される気化性材料は、カートリッジ(例えば、リザーバまたは他の容器内に気化性材料を包含する気化器の一部)内に提供可能であり、これは、空のときに再充填可能であってもよいし、または同じもしくは異なるタイプの付加的な気化性材料を包含する新しいカートリッジを使用できるように使い捨てであってもよい。気化器デバイスは、カートリッジ使用気化器デバイス、カートリッジレス気化器デバイス、またはカートリッジの有無にかかわらず使用可能な多用途気化器デバイスでありうる。例えば、気化器デバイスは、気化性材料を加熱チャンバに直接に受容するように構成された加熱チャンバ(例えば、オーブンまたは材料がPTCR加熱要素によって加熱される他の領域)、および/または気化性材料を包含するためのリザーバなどを含みうる。幾つかの実現形態において、気化器デバイスは、液体気化性材料(例えば、有効成分および/または非有効成分が溶液中に懸濁もしくは保持されている担体溶液、または気化性材料自体の液体形態)、ペースト、ワックス、および/または固体気化性材料を用いて使用するように構成されてもよい。固体気化性材料は、気化性材料としての植物材料の一部を(例えば、材料がユーザによって吸入のために気化された後、植物材料の一部が廃棄物として残るように)放出する植物材料を含んでもよく、または任意に、固体材料の全てが最終的に吸入のために気化されうるような気化性材料自体の固体形態でありうる。液体気化性材料は、同様に、完全に気化させうるか、または吸入に適した材料の全てが気化された後に残る液体材料の一部を含みうる。本明細書で使用される「気化器システム」は、気化器デバイスなどの1つ以上の構成要素を含みうる。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「芯」または「ウィッキング要素」には、毛細管圧を介して流体運動を引き起こしうる任意の材料が含まれる。
【0101】
本明細書において、特徴または要素が他の特徴または要素「上にある」と称される場合、それは、他の特徴または要素上に直接に存在してもよく、または介在する特徴および/または要素が存在してもよい。対照的に、ある特徴または要素が他の特徴または要素の「上に直接に」あると称される場合、介在する特徴または要素は存在しない。また、特徴もしくは要素が別の特徴もしくは要素に「接続される」、「取り付けられる」、または「結合される」と言及される場合、他の特徴または要素に直接に接続、取り付け、または結合されていてもよく、または介在する特徴または要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、特徴もしくは要素が別の特徴もしくは要素に「直接に接続される」、「直接に取り付けられる」、または「直接に結合される」と称される場合、介在する特徴または要素は存在しない。
【0102】
一実施形態に関して説明または図示されていても、当該説明または図示されている特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。また、別の特徴に「隣接して」配設されている構造または特徴への参照は、隣接する特徴に重なるか、または下敷きになる部分を有することができることが当業者に理解されるであろう。
【0103】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態および実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図していない。例えば、本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別のことを示唆しない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0104】
上記の説明および特許請求の範囲では、「のうちの少なくとも1つの」または「のうちの1つ以上の」のような語句が要素または特徴の接続詞のリストに続いて生じる場合がある。用語「および/または」は、2つ以上の要素または特徴のリストでも生じうる。使用された文脈によって暗黙的または明示的に矛盾しない限り、かかる語句は、列挙された要素もしくは特徴のいずれかを個別に、または列挙された要素もしくは特徴のいずれかを、他の列挙された要素もしくは特徴のいずれかと組み合わせて意味することが意図されている。例えば、「AとBとのうちの少なくとも1つ」、「AとBとのうちの1つ以上」、「Aおよび/またはB」という表現は、それぞれ「Aのみ、Bのみ、またはAおよびBを一緒に」の意味を意図している。同様の解釈は、3つ以上の項目を含むリストについても意図されている。例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうちの1つ以上」、「A、B、および/またはC」という表現は、それぞれ、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、またはAおよびBおよびCを一緒に」の意味であることが意図されている。上記および特許請求の範囲の用語「に基づいて」の使用は、未列挙の特徴または要素も許容されるように、「少なくとも一部に基づいて」を意味することが意図されている。
【0105】
「前方」、「後方」、「下(under)」、「下方(below)」、「下方(lower)」、「上(over)」、「上方(upper)」などの空間的に相対的な用語は、図示されているように、説明を容易にすべく、1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明するために本明細書で使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に描写されている配向に加えて、使用中または操作中のデバイスの異なる配向を包含することが意図されていることが理解されるであろう。例えば、図中のデバイスが反転されている場合、他の要素または特徴の「下(under)」または「下部(beneath)」と記載された要素は、他の要素または特徴の「上(over)」へ配向されることになる。したがって、例示的な用語「下(under)」は、上への配向および下への配向の両方を包含することができる。デバイスは、他の配向(90度回転または他の配向)であってもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な語形は、これに応じて解釈される。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、特に断りのない限り、本明細書では説明の目的でのみ使用される。
【0106】
本明細書では、「第1の」および「第2の」という用語が、種々の特徴/要素(ステップを含む)を説明するために使用されうるが、文脈が別段のことを示さない限り、これらの特徴/要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素と別の特徴/要素とを区別するために使用される場合がある。したがって、本明細書で提供される教示から逸脱することなく、以下で説明される第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と称されることがあり、同様に、以下で説明される第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と称されることがある。
【0107】
実施例を含めた本明細書および特許請求の範囲において使用されるように、別に明示的に指定されない限り、全ての数字には、語が明示的に記載されていなくても、「約」または「ほぼ」という単語が前置されているかのように読み取ることができる。大きさおよび/または位置を記述する際に、「約」または「ほぼ」という語句は、記述された値および/または位置が、値および/または位置の合理的に予想される範囲内にあることを示すために使用されてもよい。例えば、数値は、記載値(または数値の範囲)の±0.1%、記載値(または数値の範囲)の±1%、記載値(または数値の範囲)の±2%、記載値(または数値の範囲)の±5%、記載値(または数値の範囲)の±10%などの値を有していてもよい。また、本明細書に記載されている数値は、文脈が別の意味を示さない限り、ちょうどその値またはほぼその値を含むものと理解されるべきである。例えば、「10」という値が開示されていれば、「約10」も開示されている。本明細書で列挙されている数値範囲は、そこに含まれる全てのサブ範囲を含むことを意図している。値が開示されている場合、「その値以下」、「その値以上」、および値の間の可能な範囲も開示されていることは、当業者に適切に理解されるように理解される。例えば、「X」という値が開示されていれば、「X以下」および「X以上」(例えば、Xは数値である)も開示されている。出願を通して、データは多くの様々なフォーマットで提供され、このデータは、終点、始点、およびデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表していることが理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示される場合、10と15との間が開示されるだけでなく、10超および10以上、15未満および15以下、ならびに10および15に等しいデータポイントが開示されていると見なされることが理解される。2つの特定の単位間の各単位の開示も理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13および14も開示されている。
【0108】
種々の例示的な実施形態を上記で説明したが、本明細書の教示から逸脱することなく、種々の実施形態に対して任意の複数の変更を行うことができる。例えば、記載された種々の方法ステップが実行される順序は、代替の実施形態ではしばしば変更することができ、他の代替の実施形態では、1つ以上の方法ステップを完全にスキップすることもできる。種々のデバイスおよびシステムの実施形態の任意の特徴が幾つかの実施形態に含まれ、他の実施形態には含まれなくていなくてもよい。したがって、前述の説明は、主に例示的な目的で提供されており、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0109】
本明細書に記載している主題の1つ以上の態様または特徴は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはこれらの組み合わせにおいて実現することができる。これらの種々の態様または特徴は、少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能および/または解釈可能な1つ以上のコンピュータプログラムへの実現形態を含むことができ、これらは特別または汎用であってよく、これらは、ストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、これらにデータおよび命令を送信するように結合されている。プログラム可能なシステムまたはコンピューティングシステムには、クライアントおよびサーバが含まれうる。クライアントおよびサーバは通常、互いにリモートであり、通常は通信ネットワークを介してインタラクションを有する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータで実行され、互いにクライアントとサーバの関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0110】
これらのコンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネント、またはコードとも称されうる。これらのコンピュータプログラムには、プログラム可能なプロセッサの機械命令が含まれていてよく、高レベルの手続き型言語、オブジェクト指向プログラミング言語、関数型プログラミング言語、論理プログラミング言語、および/またはアセンブリ/機械語で実装されうる。本明細書で使用される場合、用語「機械可読媒体」は、機械命令および/またはデータをプログラム可能なプロセッサに提供するために使用される、例えば磁気ディスク、光ディスク、メモリ、およびプログラム可能なロジックデバイス(PLD)などの任意のコンピュータプログラム製品、装置、および/またはデバイスを指し、これには、機械可読信号として機械命令を受信する機械可読媒体が含まれる。用語「機械可読信号」は、プログラム可能なプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するために使用される任意の信号を指す。機械可読媒体は、例えば、非一時的なソリッドステートメモリまたは磁気ハードドライブまたは任意の同等の記憶媒体のように、かかる機械命令を非一時的に記憶することができる。機械可読媒体は、代替的もしくは付加的に、例えば、1つ以上の物理プロセッサコアに関連付けられたプロセッサキャッシュまたは他のランダムアクセスメモリのように、一時的な方法でかかる機械命令を記憶することができる。
【0111】
本明細書に含まれる例および図は、限定ではなく例示として、主題が実施されうる特定の実施形態を示している。前述のように、他の実施形態を利用し、そこから導出することができ、その結果、構造的かつ論理的な置換および変更を、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。本発明の主題のかかる実施形態は、本明細書において、実質的に2つ以上の発明または発明概念が開示されている場合、本出願の範囲を、任意の単一の発明または発明概念に限定することを自発的に意図することなく、単に便宜上、「発明」という用語によって個別にまたは集合的に言及されうる。したがって、特定の実施形態を図示し本明細書に記載したが、同じ目的を達成するために計算された任意の構成を、示されている特定の実施形態に置換することができる。本開示は、種々の実施形態の任意かつ全ての適応例または変形例を網羅することを意図している。上記の実施形態、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、上記の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。本明細書および特許請求の範囲の用語「に基づいて」の使用は、未列挙の特徴または要素も許容されるように、「少なくとも一部に基づいて」を意味することが意図されている。
【0112】
本明細書に記載している主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、および/または物品に具体化することができる。前述の説明に記載されている実現形態は、本明細書に記載されている主題と一致する全ての実現形態を表すわけではない。そうではなく、これらは、説明された主題に関連する態様と一致する幾つかの例にすぎない。本明細書では幾つかの変形例を詳細に説明したが、他の修正形態または付加的な形態も可能である。特に、本明細書に記載されたものに加えて、さらなる特徴および/または変形形態が提供されうる。例えば、本明細書に記載している実現形態は、開示された特徴の種々の組み合わせおよび部分的な組み合わせ、および/または本明細書に開示された幾つかのさらなる特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせを対象としうる。さらに、添付の図に描写され、かつ/または本明細書に記載されている論理フローは、所望の結果を実現するために、必ずしも示されている特定の順序または連続した順序を必要とするわけではない。他の実現形態は、以下の特許請求の範囲内にありうる。