(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】イオン性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20240910BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240910BHJP
A61F 2/30 20060101ALI20240910BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240910BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20240910BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240910BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L101/14
C08L75/04
A61F2/30
A61L27/16
A61L27/26
A61L27/40
A61L27/50
(21)【出願番号】P 2021526208
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 US2019042193
(87)【国際公開番号】W WO2020018660
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521022886
【氏名又は名称】ハイヤレックス オーソペディクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クーティス,イラクリス
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】クーティス,ランプロス
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08F,C08J,
A61F,A61L,A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を形成する水膨潤性相互貫入高分子網目構造(IPN)又は半相互貫入高分子網目構造(半IPN)であり、
疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを含む第1の高分子網目構造及びIPN又は半IPN以内の厚さを有する、スルホン酸誘導体化
カルボン酸基を含む架橋イオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含み、ここでスルホン酸誘導体化
カルボン酸基が、架橋イオン性ポリマーの表面に存在し、架橋イオン性ポリマーの表面からバルク中に少なくとも400ミクロンの距離、最大架橋イオン性ポリマーの厚さまで延びており、(i)IPN又は半IPNはイオン性ポリマー内のスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、表面からの距離が増加するにつれて減少する、スルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度勾配を含み、(ii)IPN又は半IPNは15%~40%(w/w)の架橋イオン性ポリマーを含み、(iii)水にさらされると、IPN又は半IPNは水を吸収し、
潤滑性表面を有する水膨潤性IPN又は半IPNを形成する、水膨潤性相互貫入高分子網目構造(IPN)又は半相互貫入高分子網目構造(半IPN)。
【請求項2】
スルホン酸誘導体化
カルボン酸基がアミノスルホン酸誘導体化
カルボン酸基である、請求項1に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項3】
架橋イオン性ポリマーが測定可能な量の式(H
2N)
xR(SO
3H)
y(式中、Rは有機部分であり、xは正の整数であり、yは正の整数である)のアミノスルホン酸化合物又はその塩を含む、請求項2に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項4】
Rが炭化水素部分である、請求項3に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項5】
架橋イオン性ポリマーが測定可能な量の、タウリン及びタウリン誘導体から選択されるアミノスルホン酸化合物を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項6】
疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーがポリウレタンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水膨潤性IPN又は半IPNを含む、整形外科用インプラント。
【請求項8】
無菌パッケージ内に含まれる請求項7に記載の整形外科用インプラントを含む、パッケージングされた物品。
【請求項9】
整形外科用インプラントが体内の関節中の軟骨を修復又は置換するように構成される、請求項7
に記載の整形外科用インプラント又は
請求項8に記載のパッケージングされた物品。
【請求項10】
体内の関節が、膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、及び手首関節、又はそれらの一部分から選択される、請求項
9に記載の整形外科用インプラント又はパッケージングされた物品。
【請求項11】
前記炭化水素部分が、アルカン部分、アルケン部分、アルキン部分、芳香族部分、又はアルカン、アルケン、アルキン及び芳香族置換基のうちの2つ以上の組合せを有する炭化水素部分である、請求項4に記載の水膨潤性IPN又は半IPN。
【請求項12】
アミノスルホン酸がタウリン又はその誘導体である、請求項
11に記載の水膨潤性IPNまたは半IPN。
【請求項13】
24.6±0.5MPa~48.1±2.8MPaの引張弾性率を有する、請求項1に記載の水膨潤性IPNまたは半IPN。
【請求項14】
スルホン酸誘導体化
カルボン酸基の、誘導体化されていないカルボン酸基に対するモル比が、インプラントの2点間で少なくとも+/-50%変化する、請求項1に記載の水膨潤性IPNまたは半IPN。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年1月11日に出願された「Ionic Polymer Compositions」と題する米国出願第16/246,292号の部分継続出願であり、2018年7月17日に出願された「Ionic Polymer Compositions」と題する米国特許出願第62/699,497号の利益を主張するものである。各先願の開示の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、半及び全相互貫入高分子網目構造を含むイオン性ポリマー組成物、そのようなイオン性ポリマー組成物の製造方法、そのようなイオン性ポリマー組成物から製造される物品、並びにそのような物品の製造方法及びそのような物品のパッケージング法に関する。
【背景技術】
【0003】
全相互貫入高分子網目構造(IPN)及び半相互貫入高分子網目構造(「半IPN」)は様々な出発材料から作製され、様々な用途に使用されてきた。IPN及び半IPNは、それらの原料の各ポリマーの有利な性質を合わせることができる。
【0004】
生物医学的用途のためのIPN及び半IPNは、例えば、米国特許公開第2009/0008846号、米国特許公開第2013/0096691号、米国特許公開第2017/0107370号、米国特許公開第2012/0045651号、米国特許公開第2012/0209396号、米国特許公開第2017/0327624号、米国特許公開第2013/0131741号、及びWO2017/027590に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本願の目的のために、「カルボン酸基」はこの基の非イオン化(プロトン化)及びイオン化(カルボキシレート)形態の両方を指し得る。本願の目的のために、「スルホン酸基」はこの基の非イオン化(プロトン化)及びイオン化(スルホネート)形態の両方を指し得る。
【0006】
本願の目的のために、「相互貫入高分子網目構造」又は「IPN」は、分子レベルで少なくとも部分的に組み合わさっているが、互いに共有結合せず、化学結合が破壊されない限り分離され得ない2つ以上の高分子網目構造を含む材料である。「半相互貫入高分子網目構造」又は「半IPN」は、1つ以上の高分子網目構造及び1種以上の直鎖状又は分枝状ポリマーを含む材料であって、少なくとも1つの網目構造に少なくとも幾つかの直鎖状又は分枝状の巨大分子が分子レベルで貫通していることを特徴とする材料である。化学結合を破壊せずに構成成分の直鎖状又は分枝状ポリマーを構成成分の高分子網目構造から原則として分離できるため、半相互貫入高分子網目構造は相互貫入高分子網目構造と区別される;これらはポリマーブレンドである。
【0007】
「ポリマー」はホモポリマー(1種のモノマーに由来するポリマー)及びコポリマー(複数種のモノマーに由来するポリマー)を含めた巨大分子を含む物質である。「疎水性ポリマー」は以下の2つの特性:(1)少なくとも45°の表面水接触角、及び(2)ASTM試験規格D570に準拠して室温で24時間後の吸水率が2.5%以下を示すことのうちの少なくとも1つを有する、予め形成された高分子網目構造である。「親水性ポリマー」は表面水接触角が45°未満の高分子網目構造であり、ASTM試験規格D570に準拠して室温で24時間後の吸水率は2.5%超を示す。「イオン性ポリマー」は、イオン性モノマー(例えば、カルボキシレート基、スルホネート基又は両方を有するモノマー)、イオン化可能なモノマー(例えば、プロトン化カルボキシル基、プロトン化スルホネート基又は両方を有するモノマー)、又はイオン性モノマー及びイオン化可能なモノマーの両方で構成されるが、それらの性質及び位置に関係なく、典型的には少なくとも2重量%のイオン性又はイオン化可能なモノマー(又は両方)を含有する巨大分子で構成されるポリマーとして定義される。「熱硬化性ポリマー」は、熱可塑性ポリマーとは異なって、加熱した場合に溶解しないものである。熱硬化性ポリマーは、最初の作製時に所定の形状に「硬化」され、後に流動しない又は溶解しないが、逆に加熱すると分解し、高度に架橋されている及び/又は共有結合的に架橋されていることが多い。「熱可塑性ポリマー」は、熱硬化性ポリマーと異なって、加熱した場合に溶解する又は流動するものである。熱可塑性ポリマーは通常、共有結合的に架橋されていない。「相分離」は単相系から多相系への変換、特にブロックコポリマーの2つの不混和性ブロックの2相への分離(わずかな混合が生じる小さな相間がある可能性がある)として定義される。
【0008】
ある特定の態様において、本開示はカルボン酸基及びスルホン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーに関する。これらのある特定の態様において、本開示は非誘導体化基及びスルホン酸誘導体化基の組合せを含むイオン性ポリマーに関する。
【0009】
ある特定の態様において、本開示は、非誘導体化カルボン酸基及び、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基を含むスルホン酸誘導体化基の組合せを含むイオン性ポリマーに関する。
【0010】
ある特定の態様において、スルホン酸誘導体化基は、イオン性ポリマーの表面でのみ存在する。ある特定の態様において、スルホン酸誘導体化基はイオン性ポリマーの表面からイオン性ポリマーのバルク中まで、少なくとも10ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも100ミクロン、少なくとも250ミクロン、少なくとも500ミクロン、少なくとも1000ミクロン、少なくとも2500ミクロン、又は少なくとも5000ミクロン、少なくとも10000ミクロン以上の距離、延びていてもよく、例えば、0ミクロンから10ミクロン、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、250ミクロン、500ミクロン、1000ミクロン、2500ミクロン、5000ミクロン、10000ミクロン以上までの範囲の距離、イオン性ポリマーのバルク中まで延びていてもよい。
【0011】
ある特定の態様において、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は全ての厚さのイオン性ポリマーはスルホン酸誘導体化基を有する。
【0012】
ある特定の態様において、スルホン酸誘導体化基はイオン性ポリマーの表面からイオン性ポリマーのバルク中へ延伸し、少なくとも250ミクロン、少なくとも500ミクロン、少なくとも1000ミクロン、少なくとも2500ミクロン、少なくとも5000ミクロン、若しくは少なくとも10000ミクロン又はそれ以上の表面からの距離まで検出可能な量で存在し、例えば、250ミクロンから500ミクロン、1000ミクロン、2500ミクロン、5000ミクロン、10000ミクロン以上までの範囲の表面からの距離、検出可能な量で存在する。
【0013】
これらのある特定の態様において、イオン性ポリマー中のスルホン酸誘導体化基の濃度は、表面から少なくとも100ミクロン、少なくとも250ミクロン、少なくとも500ミクロン、少なくとも1000ミクロン、少なくとも2500ミクロン、少なくとも5000ミクロン、少なくとも10000ミクロン又はそれ以上の距離まで表面のスルホン酸誘導体化基の濃度の50%以上に低下する。
【0014】
ある特定の態様において、100ミクロンの深さにおけるイオン性ポリマー中のスルホン酸誘導体化基の濃度は、スルホン酸誘導体化基の表面濃度の0%から5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%、100%までの範囲であってもよい。
【0015】
ある特定の態様において、上記の全てのイオン性ポリマーを含めた本明細書に記載のイオン性ポリマーは約2mmから3mm、4mm、5mm、7.5mm、10mm以上までの範囲の厚さを有し得る。
【0016】
ある特定の態様において、本開示は、上記の全てのイオン性ポリマーを含めた本明細書に記載のイオン性ポリマーを含む相互貫入高分子網目構造及び半相互貫入高分子網目構造に関する。そのような相互貫入高分子網目構造及び半相互貫入高分子網目構造は、例えば、約2mmから3mm、4mm、5mm、7.5mm、10mm以上までの範囲の厚さを有し得る。
【0017】
ある特定の態様において、本開示は、本明細書に記載のイオン性ポリマー並びに本明細書に記載のイオン性ポリマーを含む相互貫入高分子網目構造及び半相互貫入高分子網目構造を形成する方法に関する。
【0018】
特定の態様において、本開示は、本明細書に記載のイオン性ポリマーから並びに本明細書に記載のイオン性ポリマーを含む相互貫入高分子網目構造及び半相互貫入高分子網目構造から形成される整形外科用インプラントを含むインプラントに関する。
【0019】
ある特定の態様において、本開示は、本明細書に記載のイオン性ポリマーから並びに本明細書に記載のイオン性ポリマーを含む相互貫入高分子網目構造及び半相互貫入高分子網目構造から形成される整形外科用インプラントを含むインプラントを含有するパッケージングされた製品に関する。
【0020】
様々な実施形態において、インプラントを、水及び1種以上の二価金属カチオンを含む二価カチオン含有溶液に少なくとも部分的に浸漬させる。二価カチオン含有溶液は、例えば、滑液又は血清又は脳脊髄液等の体液中に存在する生理的レベルのイオンを含有する疑似体液であってもよい。ある特定の実施形態において、二価カチオン含有溶液は0.1~5mMの総二価金属カチオンを含み得る。溶液中の総二価カチオンの濃度は、溶液中の全ての二価カチオンの合わせた濃度である(例えば、1リットルの溶液が0.5ミルモルのカルシウムカチオン及び0.5ミリモルのマグネシウムカチオンを含有し、他の二価カチオンを含まない場合、その溶液は1.0mMの総二価カチオンを含有する)。ある特定の実施形態において、二価カチオン含有溶液はカルシウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの組合せを含み得る。例えば、二価カチオン含有溶液は0.5~5.0mMのカルシウムイオン、典型的には0.5~2.0mMのカルシウムイオン、より典型的には0.8~1.6mMのカルシウムイオン、一部の実施形態では、いくつかある可能性の中で特に1.1~1.3mMのカルシウムイオンを含み得、且つ/又は二価カチオン含有溶液は0.2~1.5mMのマグネシウムイオン、典型的には0.3~1.0mMのマグネシウムイオン、一部の実施形態では、いくつかある可能性の中で特に0.5~0.7mMのマグネシウムイオンを含み得る。ある特定の実施形態において、二価カチオン含有溶液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はナトリウムイオン及びカリウムイオンの組合せから選択される一価金属イオンを更に含んでもよく、その場合、二価カチオン含有溶液は、いくつかある可能性の中で特に0~300mMの総一価金属カチオンを含有し得る。様々な実施形態において、イオン性ポリマーは、本明細書中の他の箇所に記載されるカルボン酸基、スルホン酸基、又はカルボン酸基及びスルホン酸基の組合せを含む。
【0021】
様々な実施形態において、インプラントは、第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及び本明細書中の他の箇所に記載のイオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入高分子網目構造又は半相互貫入高分子網目構造を含む。
【0022】
様々な実施形態において、インプラントは、股関節のインプラント、膝のインプラント、肩のインプラント、手のインプラント、足指のインプラント、又は本明細書中の他の箇所に記載されるように軟骨を置き換えたい体内のいずれかの部位から選択してもよい。一部の実施形態において、インプラントは、例えば膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、又は手首関節、及びそれらの任意の部位等の体内の関節中の軟骨の修復又は置換に適合される。
【0023】
ある特定の態様において、本開示は、二価の条件下で寸法及び機械的特性を維持する、整形外科用インプラント、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるものを含むインプラントに関する。
【0024】
ある特定の態様において、本開示は、生体、特に哺乳動物、より具体的にはヒトの滑液等の生体中に存在する二価イオン濃度の生理的範囲にわたって含水率(すなわち、±5wt%、好ましくは±2wt%、より好ましくは±1wt%の範囲)を維持する、整形外科用インプラント、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるものを含むインプラントに関する。
【0025】
ある特定の態様において、本開示は、総二価カチオン濃度の変化1mM当たりの絶対重量変化%が10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、又は更には1%未満であることを実証する(理想的には測定可能な重量変化がないことを実証する)、例えば、1.4mM(0.96mMのCa2+、0.48mMのMg2+)の低い生理的二価カチオンレベルから2.2mMの高い生理的二価カチオンレベル(1.44mMのCa2+、0.72mMのMg2+)までの範囲の総二価カチオン濃度を含めた、約0.1mMから約5mMの範囲の総二価カチオン濃度についてのそのような特性を実証する、整形外科用インプラント、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるものを含むインプラントに関する。
【0026】
ある特定の態様において、本開示は、約1.4mM(0.96mMのCa2+、0.48mMのMg2+)から約2.2mM(1.44mMのCa2+、0.72mMのMg2+)の生理的総二価カチオン濃度の範囲を含めた約0.1mM~約5mMの範囲の総二価カチオン濃度にわたって0.1未満、好ましくは0.075未満、より好ましくは0.05未満の摩擦係数を維持する、整形外科用インプラント、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるものを含むインプラントに関する。
【0027】
本開示は、一般的に市販されている疎水性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマー、例えばポリウレタン又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を変性して新規の特性、例えば向上した強度、潤滑性、導電率及び耐摩耗性を有する新規の材料を生成する方法を含む。様々な疎水性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを以下に記載する。本開示はまた、IPN及び半IPN組成物並びにそのような組成物から製造される物品及びそのような物品を使用する方法も含む。本開示のIPN及び半IPN組成物は、以下の特徴:高い引張強度及び圧縮強度、低い摩擦係数、高い含水率及び膨潤性、高い透過性、生体適合性、並びに生物学的安定性のうちの1つ以上を達成し得る。
【0028】
本開示の用途としては、親水性の潤滑性物品及びコーティング剤を作製して、2つの軸受表面間の静止及び動的摩擦係数を減少させ、船舶、他の船若しくは水上の物体、又は導管中のバイオフィルムの形成及び/又はバーナクル(barnacle)の形成を低減させることが挙げられる。更に、本開示の用途としては、電流の伝導又はイオンの透過を要する電気化学用途、例えばプロトン交換膜、燃料電池、濾過デバイス、及びイオン交換膜が挙げられる。加えて、本開示は、用途、例えばエンジン、ピストン、又は他の機械若しくは機械部品の軸受部品及び可動部品を製造する方法として使用することができる。本開示はまた、軟骨置換、整形外科関節置換及び関節面再建(resurfacing)デバイス又はそれらの構成要素、椎間板、ステント、血管又は導尿カテーテル、コンドーム、心臓弁、移植血管、並びに身体の他の領域、例えば皮膚、脳、脊椎、胃腸系、喉頭、及び概して軟組織中の短期及び長期インプラントの両方を含めた、多数の生物医学的用途において使用することもできる。加えて、本開示は、様々な手術道具及び器具の構成要素として使用することができる。様々な用途において、治療剤がポリマーマトリクスから放出される薬物送達ビヒクルを含めた局所的薬物送達のために薬物を本開示の材料に組み込むことができる。
【0029】
前述したように、ある特定の態様では、本開示は、非誘導体化カルボン酸基及び、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基を含むスルホン酸誘導体化基の組合せを含むイオン性ポリマー並びにそれを形成する方法に関する。
【0030】
スルホン酸官能基を、既に形成した、カルボン酸基を含む前駆体ポリマーを含む固体物品(すなわち、多孔及び無孔物品を含めた固体状態の物品)に組み込んでもよい。一部の実施形態において、スルホン酸官能基を、既に形成した、カルボン酸基を含むIPN又は半IPN(グラジエントIPN又は半IPNを含む)に組み込んでもよい。一般原則は、IPN中のポリ(カルボン酸)、例えば、ポリ(アクリル酸)又はポリ(メタクリル酸)上に存在するカルボン酸基を、幾つかの可能性の中でも特にスルホン酸含有官能基と置き換えることである。一部の実施形態において、(a)カルボン酸基を含む前駆体ポリマーを含む固体物品を、(b)スルホン酸含有化合物と(例えば、固体物品のカルボン酸基をアミノスルホン酸化合物と反応させて、前駆体ポリマーのカルボン酸基とアミノスルホン酸化合物のアミン基との間にアミド結合を形成させることによって)反応させることを含む方法を提供する。
【0031】
ある特定の実施形態において、参照により本明細書に援用されるUS2013/0138210に記載の、カルボン酸基(例えば、カルボキシレートイオン性基)を含有する親水性-疎水性IPNを、アミン含有スルホン酸(すなわち、アミノスルホン酸)を使用してアミド化することによってスルホン化することができる。アミド(ペプチド)結合が、IPNのカルボキシレートとスルホン酸中のアミンとの間に形成される。
【0032】
一部の実施形態において、アミノスルホン酸化合物は、式(H2N)xR(SO3H)y(式中、Rは有機部分であり、xは正の整数であり、yは正の整数である)の化合物又はその塩である。ある特定の実施形態において、xは1~10、典型的には1~5の範囲であってもよく(すなわち、xは1、2、3、4又は5であってもよい)、yは1~10、典型的には1~5の範囲であってもよい(すなわち、yは1、2、3、4又は5であってもよい)。一部の実施形態において、式(H2N)xR(SO3H)yの化合物は、IPN中での分子の拡散を可能にする流体力学半径を有する。Rは、例えば、直鎖状、分枝状若しくは環状炭化水素部分、又は2つ以上の直鎖状、分枝状及び環状炭化水素置換基の組合せを有する炭化水素部分を含む、炭化水素部分であってもよい。炭化水素部分は、例えば、C1~C12炭化水素又はポリマー部分(ヘテロ原子を含有するポリマー/オリゴマーを含む)であってもよい。ある特定の実施形態において、炭化水素部分は、アルカン部分、アルケン部分、アルキン部分、芳香族部分、又は2つ以上のアルカン、アルケン、アルキン又は芳香族置換基の組合せを有する炭化水素部分から選択してよい。ある特定の実施形態において、アミノスルホン酸は1-置換、2-置換、1,1-二置換、2,2-二置換、及び1,2-二置換タウリン、例えば、1-炭化水素置換、2-炭化水素置換、1,1-炭化水素-二置換、2,2-炭化水素-二置換、及び1,2-炭化水素-二置換タウリンを含めた、タウリン、
【0033】
【化1】
及びタウリン誘導体から選択してもよく、置換炭化水素は、例えば、上記の炭化水素部分から選択してもよい。他の実施形態において、アミノスルホン酸化合物は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はアクリルアミドエタンスルホン酸の形成をもたらすものである。
【0034】
様々な実施形態において、方法は、カルボン酸基を有する前駆体ポリマーを含む固体物品をスルホン酸含有化合物と接触させて、スルホン酸含有化合物(例えば、アミノスルホン酸化合物)が固体物品中に拡散されるようにすることを含む。
【0035】
様々な実施形態において、方法は、カルボン酸基を有する前駆体ポリマーを含む固体物品をカップリング試薬と接触させて、カップリング試薬が固体物品中に拡散されるようにすることによって、固体物品中の反応性基(例えば、カルボン酸基)を活性化させること、及びスルホン酸含有化合物との反応を促進させる(例えば、固体物品中の前駆体ポリマーのカルボン酸基とアミノスルホン酸のアミン基との間のアミド結合の形成を促進させることによって)ことを更に含む。これらの実施形態において、スルホン酸含有化合物が固体物品中に拡散される前にカップリング試薬が固体物品中に拡散され得る、スルホン酸含有化合物が固体物品中に拡散された後にカップリング試薬が固体物品中に拡散され得る、又はカップリング試薬及びスルホン酸含有化合物は同時に固体物品中に拡散され得る。カップリング試薬の例としては、トリアジン系カップリング試薬、並びにカルボジイミド、ホスホニウム及びアミニウム塩、有機リン試薬、並びにフルオロホルムアミジニウムカップリング試薬が挙げられる。特定の実施形態において、カップリング試薬は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1,3-ビス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)カルボジイミド(BDDC)、及び1-シクロヘキシル-3-[2-モルホリノエチル]カルボジイミドから選択されるカルボジイミドカップリング試薬であってもよい。特定の実施形態において、カップリング試薬は、2,4-ジクロロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン(DCMT)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、N-メチルモルホリン(NMM)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)を有するその誘導体を含む、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの誘導体から選択されるトリアジン系カップリング剤であってもよい。以下により詳細に考察するように、出願人は、トリアジン系カップリング試薬を含む好適なカップリング剤を好適な条件下で用いることによって、スルホン酸誘導体化基が、カルボン酸基を有する前駆体ポリマーを含む固体物品中に数ミクロンから数百ミクロンの範囲の深さで又は材料の全深さにわたって組み込まれ得ることを発見した。様々な実施形態において、スルホン酸誘導体化基が延びている深さは、スルホン酸含有化合物との反応を繰り返すことによって増加し得る。
【0036】
カルボン酸基を有する前駆体ポリマーは、例えば、ホモポリマー又はコポリマー(例えば、交互コポリマー、ランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマー等)であってもよい。カルボン酸基を有する前駆体ポリマーは、例えば、特にアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、リノレン酸、マレイン酸、及びフマル酸から選択される1つ以上のモノマーを含むポリマーから選択してもよい。
【0037】
様々な実施形態において、固体物品は、第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及びカルボン酸基を有する前駆体ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入高分子網目構造又は半相互貫入高分子網目構造を含んでもよい。第1のポリマーは、例えば、疎水性ポリマーであってもよい。第1のポリマーは、例えば、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであってもよい。本明細書に記載する様々な実施形態において、第1のポリマーは、疎水性の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであってもよい。ある特定の有利な実施形態において、第1のポリマーは、疎水性の熱可塑性ポリウレタン、例えば特に疎水性熱可塑性ポリエーテルウレタンであってもよい。
【0038】
一部の実施形態において、本開示は、(a)第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及び(b)スルホン酸誘導体化基を含む架橋イオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含むIPN又は半IPN(本明細書では便宜上、「混合アニオンIPN又は半IPN」とも称する)に関する。例えば、第1のポリマーは、本明細書中の他の箇所に記載の第1のポリマーを含んでもよく、イオン性ポリマーは、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含んでもよい。別の例としては、第1のポリマーは、本明細書中の他の箇所に記載の第1のポリマーを含んでもよく、イオン性ポリマーは、非誘導体化カルボン酸基、スルホン酸誘導体化カルボン酸基、及び非荷電基の組合せを含んでもよい。別の例としては、第1のポリマーは、本明細書中の他の箇所に記載の第1のポリマーを含んでもよく、イオン性ポリマーは、スルホン酸誘導体化カルボン酸基、任意選択の非電荷基、及び僅かな又は存在しない非誘導体化カルボン酸基(例えば、全ての又は本質的に全ての非誘導体化カルボン酸基が変換されることに起因する)の組合せを含んでもよい。
【0039】
一部の実施形態において、第1のポリマーは、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーであり、混合アニオンIPN又は半IPNは、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーより低い摩擦係数を示す。一部の実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPNは、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーより水膨潤性であり、クリープに対してより高い耐性を示し、且つ/又はより高い伝導率及び透過率を示す。組成物の一部の実施形態はまた、酸化防止剤も含む。
【0040】
一部の実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPNは、カルボン酸基含有モノマーを含むモノマーを第1のポリマー(例えば、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマー)中に拡散させること、及びモノマーを重合させてカルボン酸基を含む前駆体ポリマーを形成さすることによって形成される。後続して、スルホン酸含有化合物をIPN又は半IPN中に拡散させ、本明細書中の他の箇所に記載されるように前駆体ポリマー中のカルボン酸基の一部を誘導体化することによって、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーを生成する。スルホン酸含有化合物は、例えば、上記の式(H2N)xR(SO3H)yのアミノスルホン酸であってもよい。
【0041】
特定の実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPNは、15~40% w/wの間、更により特定すると25~30の間のイオン性ポリマーを含んでいてもよい。
【0042】
特定の実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPN中の非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の総量(本明細書では「合計量」と称する)の10~40モル%の間、更により特定すると21~31モル%の間はスルホン酸誘導体化カルボン酸基であり、合計量の90~60モル%の間、更により特定すると79~69モル%の間は非誘導体化カルボン酸基である。
【0043】
一部の実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPNは水も含む。ある特定の場合、水は、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成し得る。電解質は水に溶解し得る。
【0044】
様々な実施形態において、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、イオン性ポリマー(すなわち、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むポリマー)と物理的に絡まり得る又は化学的に架橋し得る。
【0045】
一部の実施形態において、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、規則及び不規則領域を有し、イオン性ポリマーは不規則領域内に配置され得る。
【0046】
様々な実施形態において、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリウレタン(ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、及びシリコーンポリカーボネートウレタンを含む)からなる群から選択してもよい。
【0047】
様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基を含む前駆体ポリマー並びに非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、リノレン酸、マレイン酸、及びフマル酸から選択される1種以上のモノマーから形成され得る。
【0048】
様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基(例えば、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基)の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、非誘導体化カルボン酸基の濃度及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が実質的に一定である物品を提供する。
【0049】
様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、非誘導体化カルボン酸基の濃度及び/又はスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が物品全体にわたって比較的一定である物品を提供する。例えば、(a)非誘導体化カルボン酸基の濃度が、物品全体にわたって最大で+/-10%、最大+/-5%、最大+/-2%、最大+/-1%、若しくはそれ以下で変動する物品を提供してもよく、かつ/又は(b)スルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、物品全体にわたって最大+/-10%、最大+/-5%、最大+/-2%、最大+/-1%、若しくはそれ以下で変動する物品を提供してもよい。
【0050】
様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、非誘導体化カルボン酸基の濃度及び/又はスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が物品中で実質的に変動する物品を提供する。例えば、(a)物品中の非誘導体化カルボン酸基の濃度が、物品中の2点(すなわち、2つの位置)間(例えば、物品の一面と物品の反対面との間、物品の外側と物品の内側との間等)で、少なくとも+/-10%、少なくとも+/-25%、少なくとも+/-50%、少なくとも+/-100%、少なくとも+/-250%、少なくとも+/-500%、少なくとも+/-1000%若しくはそれ以上で変動し、且つ/又は(b)物品中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、物品中の2点間(例えば、物品の一面と物品の反対面との間、物品の外側と物品の内側との間等)で、少なくとも+/-10%、少なくとも+/-25%、少なくとも+/-50%、少なくとも+/-100%、少なくとも+/-250%、少なくとも+/-500%、少なくとも+/-1000%若しくはそれ以上で変動する物品が提供され得る。
【0051】
様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、非誘導体化カルボン酸基の濃度における勾配及び/又はスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度における勾配が存在する物品を提供する。これらの一部の実施形態において、勾配によって階段関数の形の近似が求められ得る。例えば、(a)物品の少なくとも1つの外面からの距離が増加すると共に非誘導体化カルボン酸基の濃度が減少する(例えば、物品の少なくとも1つの外面から物品中の内部点(すなわち、内部の位置)(本明細書において物品のバルク中の点とも称する)まで、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%から最大100%減少する)物品を提供し得る、(b)物品の少なくとも1つの外面からの距離が増加すると共に非誘導体化カルボン酸基の濃度が増加する(例えば、物品の少なくとも1つの外面から物品中の内部点まで、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%又はそれ以上増加する)物品を提供し得る、(c)物品の少なくとも1つの外面からの距離が増加すると共にイオン性ポリマー中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が減少する(例えば、物品の少なくとも1つの外面から物品中の内部点まで、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%から最大100%減少する)物品を提供し得る、又は(d)物品の少なくとも1つの外面からの距離が増加すると共にイオン性ポリマー中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が増加する(例えば、物品の少なくとも1つの外面から物品中の内部点まで、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%又はそれ以上増加する)物品を提供し得る。
【0052】
物品中の様々な点におけるスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比の絶対値は、ばらつきが大きい。物品中の任意点におけるスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比は、100000:1以上(100%の非誘導体化カルボン酸基がスルホン酸誘導体化カルボン酸基に変換した場合の無限の数を含む)から1:100以下の範囲であってもよい。例えば、物品中の任意点におけるスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比は、100000:1~50000:1~25000:1~10000:1~5000:1~2500:1~1000:1~500:1~250:1~100:1~50:1~25:1~10:1~5:1~2.5:1~1:1~1:2.5~1:5~1:10~1:25~1:50~1:100の範囲(すなわち、前述した任意の2つの比の間の範囲)であってもよい。
【0053】
非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、スルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が物品全体にわたって比較的一定である、又はスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が物品中で実質的に変動する物品を提供し得る。
【0054】
非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、物品中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が物品中で比較的一定である物品を提供する実施形態において、モル比は、物品全体にわたって、例えば、最大+/-10%、最大+/-5%、最大+/-2%、最大+/-1%又はそれ以下で変動し得る。
【0055】
非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品であって、スルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が物品中で実質的に変動する物品を提供する実施形態において、物品中の2点間で(例えば、物品の一面と物品の反対側の面との間、物品の外側と物品の内側との間等)、少なくとも+/-10%、少なくとも+/-25%、少なくとも+/-50%、少なくとも+/-100%、少なくとも+/-250%、少なくとも+/-500%、少なくとも+/-1000%、又はそれ以上のスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比における変動があり得る。一部の実施形態において、物品中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比に勾配があり得る。例えば、スルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比は、物品の一面と物品の反対面との間で増加し得る、又は物品の外面と物品の内面との間で増加し得る。別の例としては、スルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比は、物品の一面と物品の反対面との間で減少し得る、又は物品の外面と物品の内面との間で減少し得る。
【0056】
これに関して、上記の通り、カップリング試薬を物品中に拡散させること、及びスルホン酸含有化合物を物品中に拡散させることによってイオン性ポリマーが非誘導体化カルボン酸基を含む前駆体ポリマーを含む物品から形成され得、ここで、スルホン酸含有化合物が物品中に拡散される前、拡散された後、又は拡散されると同時に、カップリング試薬が固体物品中に拡散され得る。その結果、得られた物品中の非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度勾配は、独立して調節され得、そのため、互いに異なるのが一般的である。例えば、様々な実施形態において、非誘導体化カルボン酸基に対してスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度のモル比は、物品の外面から物品の内面までの距離が増加すると共に減少し得る。
【0057】
物品中のスルホン酸誘導体化カルボン酸基及び/又は非誘導体化カルボン酸基における濃度勾配は、例えば、物品中に剛性及び/又は水和勾配をもたらし得る。
【0058】
一部の実施形態は、第1の疎水性熱硬化性若しくは熱可塑性ポリマーから分離された層に配置され得る又は第1の疎水性熱硬化性若しくは熱可塑性ポリマー全体にわたって拡散し得る第2の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを含む。
【0059】
一部の実施形態において、コーティングとしての製造プロセス中に、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーから形成される物品の一面上に別の材料の層が堆積される。この材料は、例えば、グラジエントイオン性ポリマーを含有する物品の非水和面に加えてよい。材料は結合剤又は結合剤の一種であってもよく、イオン性ポリマーから形成される物品の表面、例えば、グラジエントイオン性ポリマーを含有する物品の非水和面に物理的、化学的、又は物理化学的に接着される。この材料コーティングをこの表面に配置することによって、後に塗布する結合剤の強度を高めることができる。一部の実施形態において、コーティング材料及び結合剤が組成的に同一である又は類似しているため、この強度が強化される。他の実施形態において、コーティングは、物品の表面にあるものと同じ材料である。一部の実施形態において、コーティングは、物品の表面にあるものと少なくとも部分的に異なる材料である。コーティングは、ポリマー、コポリマー、又はポリマーブレンドであってもよく、一実施形態では、ポリメチルメタクリレート及びウレタンジメタクリレートのコポリマーである。コーティングは、インプラントの製造プロセス中に塗布される薄膜であってもよく、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、蒸着法、溶液キャスト法、塗装法、及びリソグラフィー法を含むが、これらに限定されない様々な手段によって塗布され得る。他の実施形態において、有機溶媒を塗布することによって及び/又は機械的手段(例えば、研磨、サンドブラスティング、リソグラフィー、及び/又は積層形成形を含むが、これらに限定されない)によって物品の片側の面を粗面化する。一部の実施形態において、粗面化した表面にコーティングを塗布する。他の実施形態において、粗面化した表面は、一切の追加のコーティングなしで存在する。
【0060】
本開示の別の態様は、以下の工程:1種以上のカルボン酸基含有モノマーを含む液体(例えば、純粋モノマー(複数可)又は溶液中のモノマー(複数可)で構成される)を固体形態の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーと接触させて置く工程、1種以上のカルボン酸基含有モノマーを熱硬化性又は熱可塑性ポリマー中に拡散させる工程、及び1種以上のカルボン酸基含有モノマーを重合して、熱硬化性又は熱可塑性ポリマー中にカルボン酸基を含むイオン性ポリマーを形成することによって、カルボン酸基を有する前駆体IPN又は半IPNを形成する工程を含む、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーから水膨潤性IPN又は半IPNの製造方法を提供する。
【0061】
続いて、1種以上のアミノスルホン酸化合物を含む液体を、カルボン酸基を有する前駆体IPN又は半IPNと接触させて、1種以上のアミノスルホン酸化合物が前駆体IPN又は半IPNのカルボン酸基と反応してアミド結合を形成するような条件下で1種以上のアミノスルホン酸化合物を前駆体IPN又は半IPN中に拡散させ、非誘導体化カルボン酸基及びアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基を含有する混合アニオンIPN又は半IPNを生成する。例えば、上記の式(H2N)xR(SO3H)yの化合物であるアミノスルホン酸は、前駆体IPN又は半IPN中のカルボン酸基-COOHと反応して-CONH(H2N)x-1R(SO3H)y基を形成し得る。様々な実施形態において、1種以上のアミノスルホン酸化合物を含有する液体と接触する前に、それと同時に、又はその後に、カップリング試薬を含む液体を前駆体IPN又は半IPNと接触させ、従ってカップリング試薬がカルボン酸基と反応し、それによって1種以上のアミノスルホン酸化合物とのアミド結合を形成するためのカルボン酸基が活性化される。
【0062】
一部の実施形態は、混合アニオンIPN又は半IPNを水で膨潤して、例えば、組成物の第1の部分から組成物の第2の部分への水和勾配を形成する工程を含む。方法は、混合アニオンIPN又は半IPNを電解質溶液で膨潤する工程も含み得る。
【0063】
一部の実施形態において、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは、特にポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、アクリロニトリルブタジエンスチレン及びポリメチルメタクリレート、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、並びにシリコーンポリカーボネートウレタンから選択される。熱硬化性又は熱可塑性ポリマー中のカルボン酸基を含むイオン性ポリマーを形成するために使用するカルボン酸基含有モノマー溶液は、カルボン酸基を含むモノマーの中でも特に、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、クロトン酸モノマー、リノレン酸モノマー、マレイン酸モノマー、及びフマル酸モノマーから選択してもよい。
【0064】
一部の実施形態は、前駆体IPN若しくは半IPN又は混合アニオンIPN若しくは半IPNを加熱することによって、前駆体IPN若しくは半IPN又は混合アニオンIPN若しくは半IPNを第1の形状から第2の形状へ変化させる工程を含む。
【0065】
本開示の更に別の態様は、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマー並びに非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーを含む水膨潤性混合アニオンIPN又は半IPNを含む医療用インプラント(例えば、整形外科用インプラント等)を提供し、このインプラントは骨表面に適合するように成形された骨接触面を有する。一部の実施形態は、インプラントの内部領域内に配置された流体カプセルも含む。一部の実施形態は、骨内に挿入されるように適合された挿入部、並びに関節隙に配置されるように適合された関節界面部分、例えば混合アニオンIPN若しくは半IPNと係合し骨を該混合アニオンIPN若しくは半IPNに結合させるように適合された骨ねじ、縫合、若しくはステープル、並びに/又は骨接触面から延びており骨に挿入されるように適合されたステムを有する。医療用インプラントはまた、別のデバイスの軸受要素、例えば金属製プロテーゼを取り入れることもある。
【0066】
医療用インプラントは、医療用インプラントを、骨、例えば骨接触面上に形成される骨内部成長面に取り付けるように適合された結合剤も含み得る。一部の実施形態において、非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーは、インプラントの第1の部分からインプラントの第2の部分への濃度勾配を形成する。一部の実施形態は、第1の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーに隣接する第2の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマー、少なくとも第1の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーと相互貫入する非誘導体化カルボン酸基及びスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むイオン性ポリマーを有する。
【0067】
一部の実施形態において、本明細書に記載のイオン性ポリマーから形成されるインプラント(本明細書に記載の水膨潤性混合アニオンIPN又は半IPNを含有するインプラントを含む)は、天然の軟骨の剛性及び潤滑性の特性を模倣する特性を有し得る。一部の実施形態において、本明細書に記載のイオン性ポリマーから形成されるインプラント(本明細書に記載の水膨潤性混合アニオンIPN又は半IPNを含有するインプラントを含む)は、関節中に軟骨を置き換えるように適合及び構成され得る。例えば、インプラントは、キャップ、カップ、プラグ、キノコ、シリンダー、ステム、及びパッチからなる群から選択される形状を有し得る。インプラントは、体内の関節、例えば膝関節(膝の内側区画関節、膝蓋大腿関節、及び全膝関節を含む)、膝半月板、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節(関節唇を含む)、手関節(中手関節、手指関節、母指関節、及び母指基部関節を含む)、関節窩、股関節(寛骨臼関節を含む)、椎間板、脊椎関節(椎間関節を含む)、関節唇、関節半月、足関節(中足関節及び足指関節を含む)、顎関節(側頭下顎関節を含む)、又は手首関節並びにそれらの任意の部分の中の軟骨の修復又は置換に適合し得る。
【0068】
一部の実施形態において、本明細書に記載のインプラントは、関節中のインプラントの配置中に一時的に変形するように構成された少なくとも一部のインプラントを有し得る。
【0069】
本開示の更に別の態様は、整形外科関節の修復方法であって、天然の軟骨を、本開示による水膨潤性混合アニオンIPN又は半IPNと置き換える工程(混合アニオンIPN又は半IPNを、関節を画定する骨表面に係合させることを含む)を含む、方法を提供する。この方法は、混合アニオンIPN又は半IPNを骨表面に結合、縫合、ステープリング、及び/又はネジ止めする工程も含み得る。方法は、別のデバイスの軸受要素、例えば金属製プロテーゼとして材料を取り入れる工程も含み得る。方法はまた、ステム部分を骨表面に挿入する工程も含み得る。整形外科関節は、関節唇を含む肩関節、寛骨臼関節を含む股関節、手首関節、手指関節、中手関節を含む手関節、母指関節、母指基部関節、足首関節、肘関節、中足関節及び足指関節を含む足関節、側頭下顎関節を含む顎関節、膝の内側区画関節、膝蓋大腿関節、全膝関節、大腿関節、寛骨臼関節、肘、椎間板、及び椎間関節を含む脊椎関節からなる群から選択してもよい。
【0070】
本開示の更に別の態様は、本開示による水膨潤性混合アニオンIPN又は半IPNを含む海洋船体コーティングであって、海洋船体に付着するように適合された船体接触面を有するコーティングを提供する。コーティングは、紫外線保護剤及び/又は酸化防止剤も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本開示の一態様によるIPN又は半IPNを形成する方法の概略図である。左から右に向かって:本開示のこの態様における熱可塑性材料は、ポリウレタン及びポリ(アクリル酸)の半IPNに変換されるポリウレタンである。次いでカルボン酸部分はスルホン酸部分へ誘導体化される。
【
図2】本開示の一態様によるスルホン化のプロセスの概略図である。塩基条件において、半IPNのポリ(アクリル酸)をタウリン及び(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)と反応させて、ポリ(アクリル酸)及びタウリンのポリ(スルホン酸)誘導体を誘導する。
【
図3A-3F】全二価イオン濃度の関数としてのPAA/PEUパーセンテージ:(
図3A)17.6% PAA/PEU、(
図3B)22.2% PAA/PEU、(
図3C)25.5% PAA/PEU、(
図3D)27.6% PAA/PEU、(
図3E)40.7% PAA/PEU、(
図3F)40.7% PAA/PEUを有する非スルホン化グラジエントPEU-PAA試験物品の範囲にわたるスルホン化(
図3A~E)及び非スルホン化(
図3F)グラジエントポリ(エーテルウレタン)-ポリ(アクリル酸)(PEU-PAA)試験物品の二価パーセント重量損失を例示したグラフである。異なるPAA/PEUパーセンテージ量で製造された全ての試験物品について、線を近似して1ミルモルの全二価イオン濃度当たりのパーセント重量損失を導き出し、傾きは各グラフの上に示す。エラーバーは標準誤差を表し、各点でn=5である。NS:p<0.1。
【
図4】本開示によるスルホン化グラジエントPEU-PAAの深さ(mm)の関数としてのラマン顕微鏡スペクトルの正規化スルホネートピーク強度のグラフである。上図:スルホン化グラジエントPEU-PAA材料の深さ(2mm)を通したポリウレタンの呼吸モード(1640cm
-1)の1つに対する-SO
3の呼吸モード(1045cm
-1)の比の強度マップを表す。下図:材料の深さの関数としての、厚さ200μmにわたるポリウレタンの呼吸モード(1640cm
-1)の1つに対する-SO
3の呼吸モード(1045cm
-1)の比の累積分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示は、一般に市販されている疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを改変して、それに品質、例えば潤滑性、透過性、導電性、及び耐摩耗性を与える方法を含む。そのような疎水性ポリマーは通常、水を吸収せず、一般的にその機械的強度、不透過性及び絶縁能力に有用である。本開示の方法によって改変可能な疎水性ポリマーの例示的な一欄には、以下が含まれる:アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、セルロイド、酢酸セルロース、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、Kydex、商標のアクリル/PVCアロイ、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM又はアセタール)、ポリアクリレート(アクリル)、ポリアクリロニトリル(PAN又はアクリロニトリル)、ポリアミド(PA又はナイロン)、ポリアミド-イミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトンPAEK又はケトン)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、塩素化ポリエチレン(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、スペクトラロン、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリウレタン(PU)を参照。本明細書に記載していくように、ハードセグメント、ソフトセグメント、及び鎖延長剤組成物を変更して、多種多様なポリウレタンを使用することができる。
【0073】
本開示の一態様は、一部の改変可能な熱硬化性又は熱可塑性疎水性ポリマーの特徴:ポリマー中の規則領域及び不規則(非晶質)領域の存在を活用する。例えば、ハードセグメントの第1の領域及びソフトセグメントの第2の領域を含み、2つの領域が、モノマーの相互貫入に対して異なる溶解度を示す一部の疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマー、例えばポリウレタンを相分離する。ポリウレタン中、ハードセグメントは主に規則領域内に配置され、ソフトセグメントは主に不規則(非晶質)領域内に配置される。(出発ポリマーは、当然ながら本開示の範囲から逸脱することなく、3つ以上の領域を含んでいてもよい。)この相分離したポリマーの2つの領域間の特性の違いは、本開示の方法が、材料全体を通して又は材料の一部のみを通して延びていることができる(例えば、特定の領域内の又はグラジエントの)ポリマーに新しい特性を付与できるようにする。例えば、非潤滑性ポリマーを潤滑性にすることができ、別法では非導電性ポリマーを導電性にすることができ、別法では非透過性ポリマーを透過性にすることができる。その上、プロセスを繰り返し実行して複数の新しい特性を出発ポリマーに導入することもできる。
【0074】
一部の実施形態において、ポリマー中の相分離は、例えば溶媒及び/又はモノマーによるポリマー中の1つ以上の分離された相の膨潤に差を与え、これを利用して新しい特性が付与される。本開示によれば、例えば、1種以上のカルボン酸基含有モノマーを添加及び重合した後、1種以上のスルホン酸含有化合物と反応させることによって他の非潤滑性材料に潤滑性を導入することができる。一実施形態において、高い機械的強度及び潤滑性の表面を有するポリマー材料を、他の非潤滑性疎水性ポリマーから製造することができる。他の疎水性材料を多相材料(固相及び液(水)相の両方の相を有する材料)に変換することによって、本開示は、医療、商業、及び工業用途に使用する潤滑性の高い強度を持つ材料に対する当該技術分野における要望に対処する。
【0075】
一部の実施形態において、ハードセグメント及びソフトセグメントの網目構造を含有する熱可塑性ポリウレタン系ポリマーは、開始剤及び架橋剤と共に、モノマー及び任意選択の溶媒で膨潤し得、従ってハードセグメント材料に影響をほとんど与えずにソフトセグメントを膨潤する。この膨潤プロセスは、ポリマーの溶解ではなく、むしろ、ハードセグメントが物理的な架橋として作用して材料をまとめて保持し、同時にソフトセグメントはモノマー及び任意選択の溶媒に吸収される。モノマーの重合及び架橋の後並びにスルホン酸含有化合物との反応の後、第1の網目構造の存在下で第2の網目構造が形成され、第2のポリマー(すなわち、重合化及びスルホン化モノマー)が主に、第1のポリマーの軟質の非晶質領域内に封鎖されるIPN又は半IPNが作製される。ある程度の分子内転移及び更なる相分離にもかかわらず、ハードセグメントは大部分が規則的且つ結晶質のままであり、材料に構造及び強度をもたらす。
【0076】
このIPNによってもたらされる新しい特性は、導入した重合したモノマーの特性及び結果的に導入されるスルホン酸含有化合物によって決まる。そのような新しい特性の例としては、潤滑性、導電性、硬度、吸収性、透過性、光反応性及び熱反応性が挙げられる。緩衝水溶液中での任意選択による膨潤の後、混合アニオンIPN又は半IPNの第2の網目構造はイオン化され、混合アニオンIPN又は半IPNは水膨潤され、潤滑性である。そのため、親水性(すなわち、吸水性)を他の疎水性材料に導入することができる。疎水性ポリマー材料、例えばポリウレタン又はABSは種々の混合アニオンポリマー(非誘導体化カルボン酸基及びアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の組合せを含むポリマー)に浸透することができ、水を吸収する。
【0077】
吸収性に加えて、様々な透過性レベル(水、イオン、及び/又は溶質の移動)を他の非透過性材料に導入することができる。例えば、疎水性ポリマー材料、例えばポリウレタン又はABSは混合アニオンポリマーに浸透することができ、従って上記のように水を吸収する。この材料全体の水和が、溶質及びイオンの移動を可能にする。溶質及びイオンの移動並びに水への透過性は、混合アニオンIPN又は半IPNの水和相の相連続性によって可能になる。これは、薬物送達、分離法、プロトン交換膜、及び触媒過程を含めた様々な用途において有用であり得る。透過性は、材料上又は材料を通して流動する液体としての溶質を捕捉、ろ過、又はキレートするために利用することもできる。更に、この透過性のために、本開示の材料は、持続又は繰り返し荷重の後に流体を再吸収するその能力によって、その構成要素の疎水性ポリマーに比べてクリープ及び疲労への耐性を増加させることができる。
【0078】
また、いずれの領域にもいくつもの材料、例えば酸化防止剤、イオン、イオノマー、造影剤、粒子、金属、顔料、染料、生体分子、ポリマー、タンパク質及び/又は治療剤をドープすることができる。これらの材料のいずれも物理的に又は化学的に取り入れることができる(例えば、共有結合してIPN又は半IPNの1つ以上の構成要素にするか、又はそうでなければIPN若しくは半IPNの1つ以上の構成要素として含まれる)。
【0079】
例えばアクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミド、アリルエーテル、又はビニル官能基を熱硬化性又は熱可塑性ポリマーの片方の末端又は両方の末端に組み入れ、次いで開始剤の存在下でUV又は温度によって硬化する場合、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを、更にカルボン酸基含有ポリマーと架橋又は共重合させることができる。例として、溶媒(例えばジメチルアセトアミド)の存在下で硬化し、次いで溶媒を蒸発させることによって、ポリウレタンジメタクリレート又はポリウレタンビスアクリルアミドを第1の網目構造中に使用することができる。IPNに化学的な架橋(物理的な架橋だけではなく)を加えることによって、連続動的荷重によって生じるクリープ又は疲労に対する機械的安定性レベルを増加する。
【0080】
加えて、熱可塑性ポリマーがポリウレタンである場合、多腕(多官能性)ポリオール又はイソシアネートを使用してポリウレタン中に架橋を作製することができる。この場合、(半相互貫入高分子網目構造ではなく)全相互貫入高分子網目構造が作製される。結果は、ポリウレタンの高い強度及び靭性並びにイオン性ポリマーの潤滑性表面及び多相バルク挙動を有する複合材料である。或いは、これらに限定されないがガンマ線又は電子線照射を含む他の架橋法を使用することができる。これらの特徴は、軸受用途、例えば人工関節面に有用であるか、又は身体の他の領域内、例えば血管系又は皮膚におけるより生体適合性、抗血栓性の長期インプラントとして有用である。水によって膨潤されると、身体の標的領域への局所的送達のための溶質、例えば治療剤又は薬物の吸収も可能になる。
【0081】
本開示の別の実施形態において、疎水性熱硬化性又は熱可塑性ポリマーをカルボン酸基含有ポリマーに結合させることができる。例えば、ポリウレタンをビニル末端基を介して結合させることができる。重合する末端基とモノマーとの間の反応性比に応じて、異なる鎖配置が生成され得る。例としては、モノマーのそれ自体との反応性が末端基とモノマーとの反応性より大きく上回る場合、鎖に追加される前にカルボン酸基含有ポリマーがほぼ完全に形成される。一方、モノマー及び末端基の反応性が同様である場合、ランダムグラフト型共重合が生じる。モノマー及び末端基は、例えば、The Polymer Handbookに発表された相対反応性比の表を使用することによって、それらの反応性比に基づいて選択することができる。これらの結果はハイブリッドコポリマー/相互貫入高分子網目構造になる。
【0082】
いくつものエチレン性不飽和モノマー又はマクロモノマー(すなわち、反応性二重結合/ビニル基を有する)又はそれらの組合せを単独で又は種々の溶媒と組合せて使用することができ、そのようなモノマーの少なくとも一部がカルボン酸官能基を含有する限り、ポリマー1つ以上の相に選択的に導入することができる。他のモノマーとしては、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
一実施形態において、予め形成した熱可塑性ポリマーを、架橋剤(例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート又はN,N'-メチレンビスアクリルアミド)及び光開始剤(例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)と共に、アクリル酸(又はアクリル酸(1%~100%)溶液若しくは他のビニルモノマー溶液)中に浸漬させてもよい。アクリル酸溶液は、水、塩緩衝剤、又は有機溶媒、例えばジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、若しくはテトラヒドロフランを基剤とすることができる。ポリマーは、モノマーによって膨潤され得る(例えば、ポリマー中のソフトセグメントの溶媒和に起因して)。膨潤ポリマー中のモノマー含有率は、わずか約1%から最大約90%の範囲であり得る。
【0084】
本開示の様々な態様は、アクリル酸を例示的なモノマーとして使用して本明細書中で例示されているが、様々なカルボン酸基含有モノマー、例えば、特に以下:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、リノレン酸、マレイン酸、及びフマル酸のうちの1つ以上も企図されることを理解すべきであることに留意されたい。同様に、本開示の様々な態様が、ポリ(アクリル酸)を例示的なポリマーとして使用して本明細書中で一般的に例示されているが、様々なカルボン酸基含有モノマーのポリマー、例えば、特に以下:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、リノレン酸、マレイン酸、及びフマル酸のうちの1つ以上も適用可能であり得ることを理解すべきであることに留意されたい。
【0085】
次いで、モノマーが膨潤されたポリマーを取り出し、ガラス、石英、又は透明ポリマー製の型に入れ、次いで紫外線(又は高温)に曝露してモノマーの重合及び架橋を開始させてよい。或いは、型を使用する代わりに、空気若しくは不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)に完全に若しくは部分的に曝露しながら、或いは別の液体、例えば油(例えば、パラフィン、鉱油、又はシリコーン油)の存在下で、モノマーが膨潤されたポリマーを重合してもよい。使用する開始剤に応じて、紫外線、IR、若しくは可視光、化学物質、電荷、又は高温への曝露が、疎水性ポリマー中のカルボン酸基含有モノマーの重合及び架橋をもたらす。例として、モノマー(例えば、アクリル酸)を重合して、予め形成しておいた熱可塑性疎水性マトリクス中のカルボン酸基を含むイオン性ポリマーを形成し、相互貫入高分子網目構造(「IPN」)が形成される。溶媒は、加熱及び対流によって又は溶媒抽出法によって抽出することができる。溶媒抽出法は、異なる溶媒(例えば水)を使用したポリマーからの溶媒の抽出を要し、一方で、加熱又は対流は溶媒の蒸発に頼る。
【0086】
次いで4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドを触媒として使用したカルボン酸基とアミノスルホン酸化合物、例えばタウリンのアミド化反応を通してIPNのスルホン化を実施してもよい。
【0087】
中性pHの水溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(又は他の食塩水、例えば本明細書中の他で記載する二価カチオン溶液)中での混合アニオンIPN又は半IPNの膨潤は、カルボン酸基及びスルホン酸基のイオン化並びに水及び塩による更なる膨潤をもたらす。得られた膨潤混合アニオンIPN又は半IPNは、親水性荷電ポリマーから与えられた潤滑性表面並びに熱可塑性ポリマーから与えられた高い靭性及び機械的強度を有する。ポリウレタン系混合アニオンIPN又は半IPNの場合、混合アニオンIPN又は半IPNは、ポリウレタン中の結晶質ハードセグメントが第1の網目構造中で物理的な架橋として作用し、一方で化学的な架橋が第2の網目構造中に存在する構造を有する。
【0088】
合成の後に、ガンマ線又は電子線照射を用いて材料を架橋することもできる、一例では、ポリウレタン/ポリアクリル酸を合成し、次いで、例えば5、10、15、20、又は25kGyの線量のガンマ線によって架橋することができる。この場合、ポリアクリル酸の重合は架橋剤の不在下で行われることが考えられ、ポリマーブレンド(物理的なIPN)の形成後に材料がガンマ線に曝露されることが考えられる。当該技術分野では、ガンマ線照射を使用したポリ(アクリル酸)ヒドロゲルの架橋が、ポリマーの架橋に対して線量依存性を示すことが公知である。ポリウレタンの場合、ポリウレタンポリマーは、市販の材料、市販の材料を改変したもの、又は新しい材料であってもよい。
【0089】
ポリウレタンポリマーを作製するために、いくつもの化学物質及び化学量論を使用することができる。ハードセグメントでは、使用するイソシアネートは、1,5ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3-ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p-シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6トリレンジイソシアネート若しくは2,4トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート、又はメチレンビス(p-フェニルイソシアネート)である。ソフトセグメントでは、使用する化学物質としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド(PBO)、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンアジペート、ポリイソブチレン、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、ポリ(1,6ヘキシル1,2-エチルカーボネート)が挙げられる。イソシアネートと反応する末端基を使用する場合、ソフトセグメント中にいくつものテレケリックポリマーを使用してもよい。例としては、ヒドロキシル又はアミン末端基を有するポリ(ビニルピロリドン)、ジメチルアクリルアミド、カルボキシレート若しくはスルホン化ポリマー、テレケリック炭化水素鎖(ヒドロキシル及び/又はアミン末端基を有する)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、又はこれらを互いと組み合わせたもの、若しくはこれらと上記の他のソフトセグメント(例えば、PDMS)と組み合わせたものを使用することができる。
【0090】
鎖延長剤としては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコール、及びヘキサンジオールが挙げられる。他の互換性のある鎖延長剤は単独又は組み合わせて使用することができる。一部の又は全ての鎖延長剤の代わりに、イソシアネート反応性末端基(例えば、ヒドロキシル又はアミン)及びビニルベースの官能基(例えば、ビニル、メタクリレート、アクリレート、アリルエーテル、又はアクリルアミド)を含有する架橋鎖延長剤を使用してもよい。例としては、1,4-ジヒドロキシブテン及びグリセロールメタクリレートが挙げられる。或いは、架橋は、イソシアネートと反応するための3つ以上のヒドロキシル基を含有するポリオール、例えばグリセロールを使用して達成することができる。
【0091】
一部の実施形態において、第2の網目構造中の少なくとも1%のモノマーはカルボン酸基を含む。そのような一実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルを、アクリル酸モノマー水溶液から形成される第2の高分子網目構造として使用する。他のカルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、メタクリル酸が挙げられる。これらの他のモノマーは、水若しくは有機溶媒のいずれかの中で1%~99%の範囲であってもよいか、又は純粋な(100%)形態であってもよい。第2の網目構造を形成するために使用されるモノマーの一実施形態は、以下の特徴:(1)ポリウレタンを溶解せずに膨潤できる、(2)重合可能である、及び(3)カルボン酸基を含有することによって説明することができる。
【0092】
他の実施形態は、非イオン性であってもよい追加のコモノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はそれらの誘導体を使用する。
【0093】
上記のいずれかの第1の網目構造の存在下で第2の網目構造を架橋するために、いずれのタイプの共溶性の架橋剤、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、トリエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレート若しくはポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、誘導体、又はそれらの組合せ等を使用してもよい。前駆体溶液/材料への溶解度に応じて、いくつもの光開始剤を使用することもできる。これらには、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン及び2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノンが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、他の開始剤、例えば過酸化ベンゾイル、2-オキソグルタル酸、アゾビスイソブチロニトリル、又は過硫酸カリウム(又は過硫酸ナトリウム)を使用することができる。例としては、温度開始重合には過酸化ベンゾイルが有用であるが、一方で、ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル及び過硫酸ナトリウムが有用である。
【0094】
別の実施形態において、ポリマーを単相(又は多相)ポリマーに混合(又は可溶化)しないと考えられるモノマーを送達するビヒクルとして溶媒を使用することができる。溶媒は、特定の品質並びにポリマー及びモノマーの相に基づいて注意深く選択しなければならない。例としては、酢酸は膨潤可能であるが、多くのポリウレタンを溶解しない。従って、酢酸は、ポリウレタンに入らないと考えられる他のモノマー、例えばアクリルアミド溶液をポリウレタン全体の内部に運ぶために使用することができる。これは、アクリルアミドをポリウレタンの単相内で選択的に重合させる。次いで酢酸を洗い落として1つ以上の新しい特性を有するポリウレタンを残留させることができる。使用できる他の溶媒としては、これらに限定されないが、メタノール、プロパノール、ブタノール(又は任意のアルキルアルコール)、アセトン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はこれらの組合せが挙げられる。ポリマーの相における溶解度を考慮して、膨潤度が変動する溶媒を選択してもよい。溶媒及び膨潤される材料の構成成分の溶解度は、ポリマーのテキストブック、例えばThe Polymer Handbookから得ることができるか、又は実験的に測定することができる。
【0095】
カルボン酸基含有モノマー、あらゆる任意選択のコモノマー及び任意の架橋剤の重合後、次に得られた組成物を1種以上のスルホン酸含有化合物と反応させて一部のカルボン酸基含有モノマーをスルホン化し、第2の網目構造を完了させる。ある特定の実施形態において、カルボン酸基を有する前駆体IPN又は半IPNのスルホン化を、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドを触媒として使用したタウリンとのアミド化反応を通して達成する。混合アニオンIPN又は半IPNを作製するための化学反応プロセスを
図1に示す。カルボン酸基をスルホネート基に変換するために使用されるスルホン化化学を
図2に示す。当然ながら、プロセスはPAAに限定されず、カルボン酸基を含有する全てのポリマーにも実質的に適用可能である。
【0096】
本開示の用途の中には、船舶、他の船若しくは水上の物体、又は導管中のバイオフィルムの形成及び/又はバーナクルの形成を低減させるための親水性潤滑性サイジング又はコーティングの作製がある。加えて、本開示は、軸受部品及び可動部品の用途のための、例えばエンジン、ピストン、又は他の機械若しくは機械部品を製造する方法として使用することができる。また、本開示を、人工関節系又は身体の他の領域内の長期インプラント、例えば、血管系若しくは尿路系にはステント及びカテーテル、又は皮膚のインプラント、パッチ、若しくは包帯中に使用することもできる。
【0097】
本開示は、均一な出発高分子材料中に組成勾配を作り出すために使用することができる。材料中、厚さ方向に沿って、混合アニオンIPN又は半IPNが形成された片面から濃度が低減していきながら反対面(例えば、実質的に出発高分子材料のみ)へ延びて勾配を形成することができる。混合アニオンIPN又は半IPN濃度勾配は、材料中で放射状であってもよく、外面で混合アニオンIPN又は半IPNの濃度が最も高く、中央又はコアで混合アニオンIPN又は半IPNの濃度が最も低い。本開示による熱可塑性グラジエント混合アニオンIPN又は半IPNの一製造方法において、熱可塑性材料の片面で光開始剤及び架橋剤と共にモノマー溶液が吸収され、次いでモノマーが熱可塑性材料中で重合及び架橋(例えば、紫外線により)されてグラジエント混合アニオンIPN又は半IPNが形成される。一実施形態において、グラジエント疎水性ポリマー中で作製された混合アニオンIPN又は半IPNは、カルボン酸含有モノマー中で膨潤されるが、これは片面のみにあり又は膨潤時間が限定された場合、疎水性ポリマー全体を通るモノマーの拡散は不完全になる。これは、整形外科関節置換用材料の骨軟骨移植片の作製において特に有用である。例えば、軟骨置換材料の場合、材料の片面は滑らかで水膨潤性であるが、他面は固体(純粋な熱可塑性物質)のままである。或いは、カルボン酸含有モノマーの疎水性ポリマー中への拡散が、モノマーがバルク中に浸透するタイミングによって正確に制御される場合、混合アニオンIPN又は半IPNの外面及び疎水性ポリマーのみの「コア」を有するバルク材を作製することができる。この構成から得られる膨潤差は、残りの応力(膨潤された側面上の圧縮性、膨潤されていない側面上の張力)をもたらし得、これは材料の機械的挙動及び疲労挙動の強化を助け得る。厚さ勾配を有する材料の場合、疎水性ポリマーのみの材料のベースを、デバイスを解剖領域又は対象に固定、接着、又は縫合するために使用することができる。このベースは、小さな領域に限定することができ、又は大きくてもよく(例えば、スカート)、単一構成要素又は複合構成要素(例えば、ストラップ)として外側に広がることができる。プロセス中に又は膨潤後に熱可塑性物質中で生じた内部応力は、温度によって誘発されたアニーリングによって低減され得る。例えば、60~120℃の温度を様々な時間(30分から数時間)使用してポリマーをアニールしてもよく、オーブン中で高温面、照射、又はヒートガンによって熱を加えることができる。熱可塑性物質は、例えば、ガンマ線又は電子線照射を用いて後に架橋することができる。
【0098】
本開示の混合アニオンIPN及び半IPNから作製された物品は、積層構造で形成されることもある。一実施形態において、混合アニオンIPN又は半IPN構造は、親水性ポリマー、例えばスルホン化ポリ(アクリル酸)(sPAA)で構成され、これは第1の熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルウレタンを相互貫入し、第2の熱可塑性ポリマー、例えばポリカーボネートウレタンの上部に形成される。第1及び第2の熱可塑性ポリマーは、それら自体、種々の硬度及び特性を有する多層で構成され得る。加えて、多くの3つ以上の熱可塑性層を使用することができ、1種以上の熱可塑性ポリマーが架橋され得る。最終的に、非熱可塑性成分をこの構造体に取り入れることができる。
【0099】
熱を使用して、グラジエント混合アニオンIPN又は半IPNの疎水性ポリマー側のポリマー(例えば、ポリウレタン中のハードセグメント)の物理的な架橋を再アニールすることができ、結果として、曲げ(例えば、型又は鋳型上で)及び冷却の後に異なる所望の湾曲(グラジエント混合アニオンIPN又は半IPNの疎水性ポリマー側の凸凹両方の湾曲を含む)が得られる。当然ながら、所望に応じて他の形状も形成され得る。疎水性ポリマーとしての熱可塑性ポリマーの使用は、例えば射出成形、反応性射出成形、圧縮成形、又は浸漬注型によるデバイスの所望の形状への成形を促進する。次いで成形したデバイスに後続の網目構造浸透工程及び重合工程にかけて、新しい混合アニオンIPN又は半IPN材料を生成することができる。
【0100】
本開示による混合アニオンIPN及び半IPN物品の成形は、その場で、例えばヒトの体内で、例えば熱可塑性混合アニオンIPN又は半IPNを加熱して大腿骨頭の湾曲部に巻き付けることを可能にするか、又は寛骨臼の湾曲部に適合させることを可能にすることによって実施され得る。
【0101】
本開示に従って作製された成形又は非成形混合アニオンIPN及び半IPN物品は、他の表面に取り付けることもある。例えば、結合剤、例えば溶媒、セメント、又はにかわを使用して熱可塑性グラジエント混合アニオンIPN又は半IPN物品を接合界面の表面に取り付けることができる。溶媒の追加は、例えば、材料を局所的に溶解させ、表面に接触して溶媒が乾燥した後、熱可塑性ポリマーが表面に接着する。この手法を用いてグラジエント混合アニオンIPN又は半IPNを関節中の骨表面に接着させることができる。結合剤は、ある種の実施形態において、使い捨てシリンジ中で殺菌され得る。
【0102】
特定の実施形態において、結合剤は、ウレタンジメタクリレート及びメチルメタクリレート(MMA)を含んでもよい。結合剤は、光開始剤を用いて照射、例えば可視光、赤外光、又は紫外光を使用して硬化してもよく、熱開始剤、化学開始剤若しくは触媒、及び/又はレドックス活性化開始系、例えばカンファーキノン及びN,N-ジメチル-p-トルイジンを含むものを使用して硬化してもよい。光開始系及び光によらない開始系(例えば熱、化学物質、及び/又はレドックス系)の組合せを使用することもある。促進剤も使用され得る。ウレタンジメタクリレートは、例えば、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びポリブチレンオキシド(PBO)、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンアジペート、ポリイソブチレン、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、並びにポリ(1,6ヘキシル1,2-エチルカーボネート)から選択されるソフトセグメントを含んでもよい。ウレタンジメタクリレートは、例えば、1,5ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3-ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p-シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、2,6トリレンジイソシアネート若しくは2,4トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート、又はメチレンビス(p-フェニルイソシアネート)から形成されるハードセグメントを含んでもよい。ウレタンジメタクリレート成分は、例えば、約70~90重量%の結合剤を含んでもよい。
【0103】
一般的に、一実施形態において、本開示の混合アニオンIPN又は半IPNを含む物品及び結合剤(例えば、溶媒、セメント、又はにかわ等)を含む接着キットを含むシステムを提供する。
【0104】
一般的に、一実施形態において、本開示による混合アニオンIPN又は半IPNを含む物品を含む、パッケージングされた物品を提供する。一部の実施形態において、1種以上の二価金属カチオンを含む二価カチオン含有溶液が無菌パッケージ内に含まれる。
【0105】
この実施形態及び他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。接着キットは、ウレタンジメタクリレートオリゴマー及びメチルメタクリレートモノマーのうちの少なくとも1つを含む第1の混合物、光開始剤及び熱開始剤のうちの少なくとも1つ、並びに阻害剤を含む第1のリザーバーと、ウレタンジメタクリレートモノマー及びメチルメタクリレートモノマーのうちの少なくとも1つを含む第2の混合物並びに促進剤を含む第2のリザーバーと、使用説明書とを含むことができ、第1のリザーバー及び第2のリザーバーのうちの少なくとも1つはウレタンジメタクリレートモノマーを含むことができ、第1のリザーバー及び第2のリザーバーのうちの少なくとも1つはメチルメタクリレートモノマーを含むことができる。
【0106】
第1のリザーバー及び第2のリザーバーは両方とも、ウレタンジメタクリレートモノマー及びメチルメタクリレートモノマーを含むことができる。第2のリザーバーは阻害剤を更に含むことができる。システムはポリ(メチルメタクリレート)を更に含むことができる。システムは、ポリ(メチルメタクリレート)粉末を含む第3のリザーバーを更に含むことができる。第1の混合物、第2の混合物及びポリ(メチルメタクリレート)は成分重量を規定することができ、ポリ(メチルメタクリレート)粉末の重量は、成分重量の約1%~約70%を占め得る。システムはポリスチレンを更に含むことができる。システムは光開始剤及び熱開始剤を更に含むことができる。第1のリザーバーはシリンジ中の第1の室を含むことができ、第2のリザーバーはシリンジ中の第2の室を含むことができ、シリンジは、第1の混合物を第2の混合物と合わせて接着性混合物を作製するように構成され得る。システムは、接着性混合物を分配するように構成されたシリンジに接続されたノズルを更に含むことができる。第1のリザーバー及び第2のリザーバーはそれぞれ、約0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のウレタンジメタクリレートオリゴマー及び/又は0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のメチルメタクリレートを含むことができる。第1のリザーバー及び/又は第2のリザーバーはそれぞれ、約0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のメチルメタクリレートを含むことができる。少なくとも1種の開始剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のカンファーキノンを含めた光開始剤を含むことができる。少なくとも1種の開始剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)の過酸化ベンゾイルを含めた熱開始剤含むことができる。促進剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のN,N-ジメチル-p-トルイジンを含むことができる。阻害剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のヒドロキノンを含むことができる。システムは、感染症を防止するように構成された添加剤を更に含むことができる。システムは抗生物質を更に含むことができる。システムは放射線不透過物質を更に含むことができる。第1の混合物は約1Pa.s~5000Pa.sの間の粘度を規定することができる。
【0107】
一実施形態において、接着キットは、約0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のウレタンジメタクリレートオリゴマー及び/又は0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のメチルメタクリレート、約0%(w/w)~約100%(w/w)、典型的には約1%(w/w)~約99%(w/w)のメチルメタクリレート、典型的には約0%(w/w)~約5%(w/w)、例えば約1%(w/w)~約5%(w/w)の量の任意選択の開始剤(例えば、光開始剤及び熱開始剤のうちの少なくとも1つを含むことができる)、並びに典型的には約0%(w/w)~約5%(w/w)、例えば約1%(w/w)~約5%(w/w)の量の任意選択の促進剤を含有する単一のリザーバーで構成され得る。単一リザーバーは、シリンジ中に室を含むことができる。システムは、硬化性接着剤を分配するように構成されたシリンジに接続されたノズルを更に含むことができる。開始剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のカンファーキノンを含めた光開始剤を含むことができる。促進剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のN,N-ジメチル-p-トルイジンを含むことができる。阻害剤は、0%(w/w)~約5%(w/w)の間、典型的には約1%(w/w)~約5%(w/w)のヒドロキノンを含むことができる。システムは、感染症を防止するように構成された添加剤を更に含むことができる。システムは抗生物質を更に含むことができる。システムは放射線不透過物質を更に含むことができる。第1の混合物は約1Pa.s~5000Pa.sの間の粘度を規定することができる。
【0108】
例えば本開示の方法によって形成された本開示の混合アニオンIPN及び半IPN組成物は、様々な状況で使用し得る。特定の使用の1つは、骨軟骨移植片における人工軟骨としての使用である。本開示は、天然の軟骨の分子構造、更には弾性率、破壊強度、及び潤滑性表面を模倣する相互貫入高分子網目構造に基づく骨予備型(bone-sparing)関節形成デバイスを提供する。天然軟骨のこれらの構造及び機能面のうちの少なくとも一部をエミュレートして、本開示の混合アニオン半IPN及びアニオンIPNは新規の骨予備型「生体模倣関節面再建」関節置換術の基礎を形成する。軟骨のみを置換するように設計された、そのようなデバイスは、滑らかな関節面及び骨集積可能な(osteointegrable)骨界面を特徴とする可撓性埋め込み型デバイス一式として組み立てられる。
【0109】
原則として、デバイスは体内の全ての関節面のために作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆うデバイスは、類似の骨の調製及びポリマーサイジングプロセスを必要とする。股関節の大腿骨頭を覆うデバイスでは、キャップ形状のデバイスが大腿骨頭の輪郭にぴったりフィットする。寛骨臼をライニングするデバイスでは、半球型カップ状デバイスが縁の上に広がり、ソケットに位置するようにスナップ止めすることができ、大腿骨頭とのあわせ面が得られる。このやり方で、患者の股関節を両方とも修復することができ、キャップオンキャップ接合が作製される。しかしながら、片側のみが損傷した場合、片側のみがキャップされ得、軟骨上にキャップが取り付けられた接合が作製される。加えて、本開示の材料を使用して別の関節置換又は関節面再建デバイス(典型的には金属からなる)の接合面をキャッピング又はライニングして、代替の軸受表面として作用することができる。
【0110】
本開示を使用して肩関節(また、球関節)のためのキャップ形状のデバイスを作製するために、股関節のものと同様のプロセスを用いる。例えば、関節窩の内面をライニングするために浅いカップを作製することができる。更に、手、指、肘、足首、足、及び椎間面の他の関節用のデバイスも、この「キャッピング」の概念を用いて作製することができる。大腿遠位における一実施形態において、大腿遠位デバイスボリュームは、前及び後十字靱帯を温存しながら骨の輪郭をたどる。
【0111】
本開示の混合アニオンIPN及び半IPNは、下記のように軟骨が損傷した身体の関節中で軟骨置換プラグとして使用され得る。
【0112】
例えば本開示の方法に従って作製された本開示の混合アニオンIPN及び半IPNは、完全又は部分合成骨軟骨移植片として使用され得る。骨軟骨移植片は、滑らかな軟骨様合成軸受層からなり、これは多孔質骨又は合成多孔質骨様構造体に固定され得る。軸受層は2つの領域:潤滑性表面層及び剛性骨固着層を有する。一実施形態において、軸受層の上部の滑らかな領域は、2種のポリマーで構成される相互貫入高分子網目構造からなる。第1のポリマーは、高い機械的強度を有する疎水性熱可塑性ポリマーであってもよく、これらに限定されないが、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、及びシリコーンポリカーボネートウレタン、又はこれらの尿素結合が組み込まれた材料、又はこれらの尿素結合が組み込まれた材料(例えば、ポリウレタン尿素)が挙げられる。第2のポリマーは、カルボン酸基含有モノマーに由来する親水性ポリマーであってもよく、これらに限定されないが、アクリル酸が挙げられ、これは後続してスルホン化プロセスを経る、ここでカルボン酸基含有モノマーをスルホン酸含有化合物と反応させる。軸受層の下部の領域(骨固着層)は、剛性の再吸収不可能な熱可塑性ポリマーであってもよく、これは超音波溶接振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、加熱、RFエネルギー及び電気エネルギーによって流動させることができる。骨固着層を使用して軸受層を骨又は骨様多孔質構造体に固定させる。多孔質な骨が使用される場合、それはヒト又は動物の海綿骨であってもよい。合成骨様材料が使用される場合、それは多孔質リン酸カルシウム(及び/又は限定されないが、多孔質炭酸リン灰石、ベータ-リン酸三カルシウム、若しくはヒドロキシアパタイトを含めた他の材料)、又は上記のような多孔質の再吸収可能な又は再吸収不可能な熱可塑性ポリマー(限定されないが、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、PLA、PLLA、PLAGA、及び/又はPEEKを含む)からなってもよい。軸受層は、圧力の印加に、骨固着材料を溶解させ、骨又は骨様構造体の孔又は空隙中に流すエネルギーを組み合わせて、エネルギー源が取り除かれて材料が再度固化した後、多孔質の骨又は骨様構造体に固定される。エネルギー源は、これらに限定されないが、振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、加熱、RFエネルギー、及び電気エネルギーを挙げることができる。
【0113】
様々な実施形態において、本開示の組成物を使用して哺乳動物(動物又はヒト)の体内の損傷した関節を部分的又は完全に再建するためのデバイスを形成することができる。これらのデバイスは、多くの手段、例えば圧入、ねじ留め(再吸収可能又は再吸収不可能な金属又はプラスチック)、縫合(再吸収可能又は再吸収不可能)、にかわ、接着剤、光硬化性接着剤(例えば、ポリウレタン又は樹脂系)、又は結合剤(例えば、ポリメチルメタクリレート若しくはリン酸カルシウム、又は歯科用セメント)によって骨に固定させることができる。
【0114】
本開示の混合アニオンIPN又は半IPNから形成される骨軟骨移植インプラントを使用して関節、例えば股又は肩関節中の軟骨を置換又は補強することができる。インプラントは上腕骨又は大腿骨の頭部から滑り落ちることがある。一部の実施形態では、インプラントは靭帯又は他の解剖構造を収容するための開口部を含んでもよい。
【0115】
インプラント及び他の物品は、本開示による様々な複雑形状で作製され得る。例えば、骨軟骨移植片は、単一で使用してもよく、又は膝関節中の軟骨を置換又は補強するために必要な任意の組合せで使用してもよい本開示の混合アニオンIPN又は半IPNから形成され得る。例えば、骨軟骨移植片は、大腿顆(又は1つの顆のみ)を係合するように適合され得、脛骨プラトーの片側又は両側に係合するように適合され得、膝蓋骨を係合して、膝蓋大腿溝を係合するように適合された骨軟骨移植片と関節結合を成すように適合され得、且つ/又は外側及び内側半月を係合するように適合され得る。
【0116】
骨軟骨移植片は、他の関節(例えば、手指、手、足首、肘、足又は脊椎)においても使用され得る。関節唇プロテーゼは、肩又は股の関節唇の置換又は再建において使用する本開示の混合アニオンIPN又は半IPNから形成され得る。本開示の混合アニオンIPN又は半IPNは、滑液包骨軟骨移植片、関節唇骨軟骨移植片、関節窩骨軟骨移植片及び上腕頭骨軟骨移植片として使用され得る。一部の実施形態において、本開示の混合アニオンIPN又は半IPNは、椎間面を表面再建するプロテーゼとして使用され得る。
【0117】
本開示の混合アニオンIPN及び半IPNの組成物は、関節面の部分的再建のための人工軟骨プラグとして形成され得る。例えば、人工軟骨プラグは、本開示のグラジエント混合アニオンIPN組成物から形成され得る。プラグは、物品の熱可塑性ポリマー側に形成されるステム部分を有し得、骨の孔又は開口部に挿入されるように適合され得る。プラグの頭部は、上記のような潤滑性混合アニオンIPN又は半IPNになるように形成される。ステムを押して骨の孔又は開口部に嵌め、潤滑性の混合アニオンIPN表面を曝露させたままにして人工軟骨として機能させることができる。
【0118】
本開示の混合アニオンIPN又は半IPNから形成される人工軟骨プラグには、プラグを骨に固定するためのねじを形成するらせん状の突起部を有するステムが設けられている。
【0119】
本開示の組成物の実施形態を使用して二面式潤滑性インプラントを作製することができる。インプラントは、椎間板を置換するようにサイズ指定及び構成され得る。インプラントは、上側及び下側に潤滑性混合アニオンIPN又は半IPN表面(例えば、上記のように形成された)を有し得る。楔状断面を有する膝スペーサーが形成され得る。ディスクプロテーゼと同様、スペーサーも、上側及び下側に潤滑性混合アニオンIPN又は半IPN表面を有する。
【0120】
上記の組成物、物品及び方法に対する他の変形体及び修正を以下に記載する。
【0121】
疎水性ポリマーは、市販のものでも特注のものでもよく、多くの方法(例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、反応射出成形(RIM)又は溶媒キャスト法)によって作製することができる。第1のポリマーは架橋されていなくても、様々な手段で架橋されていてもよい。いずれのポリマーも、例えばガンマ線又は電子線照射によって架橋され得る。
【0122】
いくつものエチレン性不飽和モノマー又はマクロモノマー(例えば、反応性二重結合を含む)又はそれらの組合せを、カルボン酸基含有モノマーが含まれる限り、第2の又は後続の網目構造の基礎として使用することができる。これらは、限定されないが、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アリルエーテル、又はアクリルアミド基を含有するものが挙げられる。いくつものペンダント状官能基が、これらのエチレン性不飽和基(限定されないが、カルボン酸、エステル、アルコール、エーテル、フェノール、芳香族基、又は炭素鎖を含む)と共役することができる。
【0123】
疎水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマー、例えば以下:ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン尿素、シリコーンポリエーテルウレタン、又はシリコーンポリカーボネートウレタンであってもよい。他のハードセグメント、ソフトセグメント、及び鎖延長剤を有する他のポリウレタンも可能である。
【0124】
他のポリマーを疎水性ポリマー、例えばシリコーン(ポリジメチルシロキサン)又はポリエチレンのホモポリマー又はコポリマーとして使用することができる。
【0125】
ポリウレタン系ポリマーを疎水性ポリマーとして使用する場合、ポリウレタン系ポリマーの物理及び化学架橋の程度は、物理架橋のみ(熱可塑性)から大規模な化学架橋まで変動し得る。化学架橋の場合、架橋性ポリウレタンは単独で使用してもよく、又は熱可塑性(非架橋)ポリウレタンとの混合物として使用してもよい。
【0126】
重合の条件(すなわち、雰囲気酸素、紫外線照度、紫外線波長、曝露時間、温度)及びスルホン化の条件は変動し得る。
【0127】
組成勾配の配向及び勾配度は、様々な手段、例えばモノマー及び/又はアミノスルホン酸化合物中の浸漬時間及び/又は方法、並びに外部静水陽圧又は陰圧の印加によって変動し得る。
【0128】
疎水性ポリマーは、様々な技法、例えば発泡又は塩浸出によって多孔質にすることができる。モノマー(AA等)を有する多孔質ポリマー(PU等)を膨潤させ、後続してAAの重合及びアミノスルホン酸との反応を行った後、多孔質混合アニオンIPNが形成される。
【0129】
追加の熱可塑性層を、表面に対して新規の熱可塑性ポリマーを硬化又は乾燥することによって、材料のIPN側又は熱可塑性ポリマー側のみのいずれかに追加することができる。層は全て同じ材料であっても、異なる材料(例えば、ABS+ポリウレタン、ポリエーテルウレタン+ポリカーボネートウレタン等)であってもよい。
【0130】
ポリウレタン、第2の網目構造、又は両方の合成中に、いくつかの異なる溶媒(限定されないが、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、水、ジクロロメタン、プロパノール、メタノール、又はこれらの組合せを含む)を使用してもよい。
【0131】
アミノスルホン酸化合物とカルボン酸基含有ポリマーの反応を促進するために、いく種ものカップリング試薬を用いてもよく、トリアジン系カップリング試薬、カルボジイミド、ホスホニウム及びアミニウム塩並びにフルオロホルムアミジニウムカップリング試薬が挙げられる。特定の実施形態において、カップリング試薬は4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)であってもよい。
【0132】
PAA系IPNを含むカルボン酸基を有する前駆体ポリマーを含む固体物品の誘導体化(すなわち、スルホン化)の程度及び深さは、反応速度論による反応物質の拡散速度とカップリング試薬及び中間体エステルの加水分解速度のバランスによって決まる。水溶液中でカルボン酸を活性化及び誘導体化するために広範に使用されてきた1つのクラスのカップリング試薬はカルボジイミドである。様々な実施形態において、アミノスルホン酸化合物、例えばタウリンを先ずPAA系IPN中に拡散させ、その後でN-置換カルボジイミドが添加される。N-置換カルボジイミドはカルボン酸と反応して、高反応性のo-アシルイソ尿素中間体を形成し、これはpH依存性であり、生理的pH近くで数秒内に加水分解する傾向がある(Hoare, DG. and Koshland, DEJ. (1967)「A method for the quantitative modification and estimation of carboxylic acid groups in proteins」、Journal of Biological Chemistry, 242(10)、 2447-2453ページ)。加水分解後、中間体エステルはカルボン酸及び不活性N-アシル尿素に変換して戻る。この中間体加水分解は、実質的に、IPN全体の中を拡散する前にカップリング試薬を消費し、アミノスルホン酸化合物の第1級アミンと反応する。pHを低くすることで中間体エステルの加水分解を低減することができるが、未反応カップリング試薬の加水分解は酸性条件下で加速する(Gilles, M. A., Hudson , A. Q. and Borders, C. L. (1990)「Stability of water-soluble carbodiimides in aqueous solution」、Analytical Biochemistry. Academic Press、184(2)、 244-248ページ)。その上、酸性条件下で、IPNがその含水量を損失しその透過性が減少すると共に、カップリング試薬の拡散率は低下する。これにより、カップリング試薬がIPNの表面上で消費されて、バルク反応が更に阻害される。まとめると、水溶液中で不安定な分子又は生理的pHで加水分解しやすい中間体エステルを形成する分子は、PAA系IPN全体を効果的に誘導体化することはできず、改変はIPNの表面に局所化されたままである。
【0133】
生理的条件におけるIPNの様々な特性(滑らかな特性を含む)は、材料のバルク誘導体化によって決まる。本発明者らは、ある深さを超えるIPN改変は、a)カップリング試薬が水溶性であり、水性条件下で安定な場合、b)中間体エステルが生理的pHで安定である場合、及びc)反応物質の拡散速度が、中間体エステルが加水分解に至る前に反応を生じさせるために十分である場合のみに達成できることを発見した。トリアジン系カップリング試薬、例えばCDMT又はDMTMMは水性条件下で安定性であり、マクロシュガー、例えばヒアルロナンを誘導体化するために使用されてきた(D'este M, Eglin D, Alini M、(2014)、「A systematic analysis of DMTMM vs EDC/NHS for ligation of amines to Hyaluronan in water」、Carbohydrate Polymers、108巻239-246ページ)。全ての反応物質が溶液中にあるDMTMMとの反応は、カルボジイミドより高い変換率を有し得る。この実施形態では、トリアジン系化合物とIPNの二次網目構造のカルボン酸基との間に形成される中間体エステルが加水分解する前に反応物質の効率的な拡散を可能にするように反応条件を調節することができる。反応が拡散及びエステル加水分解によって律速されるため、pHを変えることによって、反応時間を変えることによって、カップリング試薬を添加することによって、又は前述のいずれか2つ又は3つ全ての組合せによって反応の深さを制御することができる。pHはIPNの透過性及び中間体エステルの反応性/加水分解速度の制御を可能にする。反応時間は、反応物質が材料全体の中で拡散し反応するために要する時間の量の制御を可能にする。カップリング試薬の添加の制御は、カップリング試薬を反応全体の速度と同じ速度で添加し、試薬の拡散及び反応をヒドロゲル膨潤と一緒に組み合わせることを可能にする。これらのパラメーターを調整することによって、数ミクロンから数百ミクロンの範囲の深さの又は材料の全深さにわたるIPNの誘導体化を達成し得る。
【0134】
いく種もの開始剤、例えば光開始剤(例えば、フェノン含有化合物)、熱開始剤、又は化学開始剤を使用することができる。熱開始剤の例としては、これらに限定されないが、アゾ化合物、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウム)、これらの誘導体又は組合せが挙げられる。
【0135】
架橋同一性及び密度のバリエーション(例えば、モノマーに対して0.0001モル%~25モル%の架橋剤)、開始剤の濃度(例えば、モノマーに対して0.0001モル%~0モル%)、前駆体ポリマーの分子量、ポリマーの相対重量パーセント、光波長(紫外線から可視光の範囲)、光強度(0.01mW/cm2~5 W/cm2)、温度、pH及び膨潤液体のイオン強度、及び水和レベル。
【0136】
第2の網目構造材料は、架橋剤なしで合成することができる。
【0137】
これらの材料の含水率は2%~99%の間の範囲であってもよい。
【0138】
混合アニオンIPNの異なる成分をカルボン酸基含有モノマーと組み合わせて取り入れることができる(例えば、ビニルアルコール、エチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジメタクリルアミド、及びこれらの組合せ若しくは誘導体)。カルボン酸基含有モノマーが含まれ、第1のポリマーに入る(膨潤する)ことが可能な限り、任意のモノマー又はモノマーの組合せを好適な溶媒と共に使用することができる。
【0139】
混合アニオンIPNは、ある種の添加剤、例えば酸化防止剤(例えば、ビタミンC、ビタミンE、又はSantowhite粉末)及び/又は抗菌剤(例えば、抗生物質)と共にそのバルク又は表面に化学的に又は物理的に取り入れられ得る。これらは、例えば、酸化防止剤と任意のビニル基含有モノマー(例えば、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、又はアリルエーテル)とのエステル化によって材料に化学的に結合させることができる。
【0140】
2つ超(例えば、3つ以上)の網目構造も形成することができ、それぞれ、架橋されるか、又は架橋されないかのいずれかである。
【0141】
その他の改変は、当業者に明らかなものであろう。
【0142】
本開示の更なる態様を以下の段落に示す。
【0143】
態様1 非誘導体化カルボン酸基及びアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基を含むイオン性ポリマーを含むインプラント。
【0144】
態様2 非誘導体化カルボン酸基が以下:イオン性ポリマー中の非誘導体化アクリル酸モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化メタクリル酸モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化クロトン酸モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化リノレン酸モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化マレイン酸モノマー、及びイオン性ポリマー中の非誘導体化フマル酸モノマーのうちの1つ以上に相当し、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基が以下:イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化アクリル酸モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化メタクリル酸モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化クロトン酸モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化リノレン酸モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化マレイン酸モノマー、及びイオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化フマル酸モノマーのうちの1つ以上に相当する、態様1のインプラント。
【0145】
態様3 インプラントが測定可能な量の式(H2N)xR(SO3H)y(式中、Rは有機部分であり、xは正の整数であり、yは正の整数である)のアミノスルホン酸化合物又はその塩を含む、態様1又は2のインプラント。
【0146】
態様4 Rが炭化水素部分である、態様3のインプラント。
【0147】
態様5 炭化水素部分が、アルカン部分、アルケン部分、アルキン部分、芳香族部分、又はアルカン、アルケン、アルキン及び芳香族置換基のうちの2つ以上の組合せを有する炭化水素部分である、態様4のインプラント。
【0148】
態様6 炭化水素部分がC1~C12炭化水素部分である、態様4又は5のインプラント。
【0149】
態様7 インプラントが測定可能な量の、タウリン及びタウリン誘導体から選択されるアミノスルホン酸化合物を含む、態様1又は2のインプラント。
【0150】
態様8 非誘導体化カルボン酸基の濃度及びアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度がインプラント全体にわたって実質的に一定である、態様1から7のいずれかのインプラント。
【0151】
態様9 非誘導体化カルボン酸基の濃度及び/又はアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラント中の2点間で少なくとも+/-10%変動する、態様1から7のいずれかのインプラント。
【0152】
態様10 インプラントが非誘導体化カルボン酸基の濃度勾配及び/又はアミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度勾配を含む、態様1から7のいずれかのインプラント。
【0153】
態様11 非誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って減少する、態様10のインプラント。
【0154】
態様12 非誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って増加する、態様10のインプラント。
【0155】
態様13 アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って減少する、態様10から12のいずれかのインプラント。
【0156】
態様14 アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って増加する、態様10から12のいずれかのインプラント。
【0157】
態様15 インプラント中、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が、2点間で少なくとも+/-10%変動する、態様1から14のいずれかのインプラント。
【0158】
態様16 インプラント中、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って減少する、態様1から14のいずれかのインプラント。
【0159】
態様17 インプラント中、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が、インプラントの少なくとも1つの外面からの距離が増加するに従って増加する、態様1から14のいずれかのインプラント。
【0160】
態様18 アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が、インプラントの少なくとも1つの表面とインプラントの反対側の表面との間で変動する、態様1から14のいずれかのインプラント。
【0161】
態様19 インプラントが第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及びイオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造を含む、態様1から18のいずれかのインプラント。
【0162】
態様20 第1のポリマーが疎水性ポリマーである、態様19のインプラント。
【0163】
態様21 第1のポリマーが熱可塑性ポリマーである、態様19又は20のインプラント。
【0164】
態様22 第1のポリマーがポリウレタンである、態様19から21のいずれかのインプラント。
【0165】
態様23 ポリウレタンがポリエーテルウレタンである、態様22のインプラント。
【0166】
態様24 インプラントが体内の関節中の軟骨を修復又は置換するように構成される、態様1から23のいずれかのインプラント。
【0167】
態様25 体内の関節が、膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、及び手首関節(それらの一部分を含む)から選択される、態様24のインプラント。
【0168】
態様26 非誘導体化カルボン酸基を含む前駆体ポリマーを含む固体物品をアミノスルホン酸化合物と反応させ、それによって前駆体ポリマーのカルボン酸基とアミノスルホン酸化合物のアミン基との間にアミド結合を形成させる工程を含む方法。
【0169】
態様27 アミノスルホン酸化合物が、式(H2N)xR(SO3H)yの化合物又はその塩であり、Rが有機部分であり、xが正の整数であり、yが正の整数である、態様26の方法。
【0170】
態様28 Rが炭化水素部分である、態様26の方法。
【0171】
態様29 炭化水素部分が、アルカン部分、アルケン部分、アルキン部分及び芳香族部分、又はアルカン、アルケン、アルキン若しくは芳香族置換基のうちの2つ以上の組合せを含む炭化水素部分である、態様28の方法。
【0172】
態様30 炭化水素部分がC1~C12炭化水素部分である、態様28又は29の方法。
【0173】
態様31 アミノスルホン酸がタウリン及びタウリン誘導体から選択される、態様26の方法。
【0174】
態様32 固体物品をアミノスルホン酸化合物と接触させ、それによってアミノスルホン酸化合物を固体物品中に拡散させる工程を含む、態様26から31のいずれかの方法。
【0175】
態様33 固体物品をカップリング試薬と接触させ、それによってカップリング試薬を固体物品中に拡散させる工程を更に含む、態様32の方法。
【0176】
態様34 スルホン酸化合物を固体物品中に拡散させる前にカップリング試薬を固体物品中に拡散させる、スルホン酸化合物を固体物品中に拡散させた後にカップリング試薬を固体物品中に拡散させる、又はカップリング試薬及びスルホン酸化合物を同時に固体物品中に拡散させる、態様33の方法。
【0177】
態様35 カップリング試薬が、トリアジン系カップリング試薬、カルボジイミドカップリング試薬、ホスホニウム塩カップリング試薬、アミニウム塩カップリング試薬、及びフルオロホルムアミジニウムカップリング試薬から選択される、態様33又は34の方法。
【0178】
態様36 カップリング試薬が、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)である、態様33又は34の方法。
【0179】
態様37 前駆体ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、リノレン酸、マレイン酸、及びフマル酸から選択される1種以上のモノマーを含むポリマーから選択される、態様26から36のいずれかの方法。
【0180】
態様38 固体物品が、第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及び前駆体ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造を含む、態様26から37のいずれかの方法。
【0181】
態様39 第1のポリマーが疎水性ポリマーである、態様38の方法。
【0182】
態様40 第1のポリマーが熱可塑性ポリマーである、態様38又は39の方法。
【0183】
態様41 第1のポリマーがポリウレタンである、態様38から40のいずれかの方法。
【0184】
態様42 ポリウレタンがポリエーテルウレタンである、態様41の方法。
【0185】
態様43 インプラントが体内の関節中の軟骨を修復又は置換するように構成される、態様26から42のいずれかの方法。
【0186】
態様44 体内の関節が、膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、及び手首関節(それらの一部分を含む)から選択される、態様43の方法。
【0187】
態様45 イオン性ポリマー及び1種以上の二価金属カチオンを含む二価カチオン含有溶液を含むインプラントであって、二価カチオン含有溶液中に少なくとも部分的に浸漬されるインプラント。
【0188】
態様46 インプラント及び二価カチオン含有溶液が無菌パッケージ内に含まれる、態様45のインプラント。
【0189】
態様47 二価カチオン含有溶液が、滑液中に存在する生理的レベルのイオンを含有する疑似体液である、態様44から46のいずれかのインプラント。
【0190】
態様48 二価カチオン含有溶液が、0.1~5mMの総二価金属カチオンを含む、態様44から47のいずれかのインプラント。
【0191】
態様49 二価カチオン含有溶液が、カルシウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの組合せを含む、態様44から48のいずれかのインプラント。
【0192】
態様50 二価カチオン含有溶液がカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含む、態様44から48のいずれかのインプラント。
【0193】
態様51 二価カチオン含有溶液が0.5~2.0mMのカルシウムイオンを含む、態様50のインプラント。
【0194】
態様52 二価カチオン含有溶液が0.2~1.5mMのマグネシウムイオンを含む、態様50又は51のインプラント。
【0195】
態様53 二価カチオン含有溶液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はナトリウムイオン及びカリウムイオンの組合せから選択される一価金属イオンを更に含む、態様44から52のいずれかのインプラント。
【0196】
態様54 二価カチオン含有溶液が0~300mMの総一価金属カチオンを含有する、態様53のインプラント。
【0197】
態様55 イオン性ポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸基、又はカルボン酸基及びスルホン酸基の組合せを含む、態様44から54のいずれかのインプラント。
【0198】
態様56 イオン性ポリマーがカルボン酸基及びスルホン酸基を含む、態様44から54のいずれかのインプラント。
【0199】
態様57 インプラントが第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及びイオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造を含む、態様44から56のいずれかのインプラント。
【0200】
態様58 第1のポリマーが疎水性ポリマーである、態様57のインプラント。
【0201】
態様59 第1のポリマーが熱可塑性ポリマーである、態様57又は58のインプラント。
【0202】
態様60 第1のポリマーがポリウレタンである、態様57から59のいずれかのインプラント。
【0203】
態様61 ポリウレタンがポリエーテルウレタンである、態様60のインプラント。
【0204】
態様62 インプラントが体内の関節中の軟骨を修復又は置換するために選択される、態様44から61のいずれかのインプラント。
【0205】
態様63 関節が、膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、及び手首関節(それらの一部分を含む)から選択される、態様62のインプラント。
【0206】
[実施例]
[実施例1]
以下の説明は、第1の網目構造としてのポリエーテルウレタン及び第2の高分子網目構造としてのポリアクリル酸を有する相互貫入イオン性ポリマー組成物の第1の例示的な実施形態を指す。IPNは2つの工程で順次合成する。ポリエーテルウレタンから作製された試験物品を、5000ppmのN,N'-メチレンビス(アクリルアミド)及び1000ppmの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを補充したアクリル酸70%(w/w%)の水溶液中に含侵させる。膨潤した物品を紫外線照射(40mW/cm
2)下で13分間重合し、次いで一定のpH=7.4で中和する。IPNの最終組成は、それぞれ37/19/45(wt%)のPEU、PAA及びH
2Oを含有していた。試験物品をタウリン(アミノエタンスルホン酸)溶液(320mM)中で1日インキュベートし、その後、等モル量のDMTMM((4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル-モルホリニウムクロリド))を添加する。試験物品を静置して48時間反応させ、これを多量の水で4日間洗浄する。このプロセスを
図2に概略的に例示する。合成後、化学組成を元素分析によってアセスメントする(表1)。PAAのスルホン化の収率は50%であった。その上、
図4に示すように、アミド化反応の浸透は、試験物品の厚さ全体(すなわち、2mm厚の試料)の半ば(50%)又は1000ミクロンに達した。言い換えると、両側が試薬の拡散に関与する場合、変換は100%に達し、PAA-PEU網目構造の厚さにわたって材料が官能化される。対照的に、同一の反応条件下及び反応物質の比でカルボジイミド、例えばEDCを使用した場合、PAA-PEU網目構造の貫入及び官能化は、厚さ2mmの試料で、20%又は深さ400ミクロンを超えなかった。EDCとトリアジンカップリング試薬との間のカップリング効率の違いも、水性条件におけるヒアルロナンマクロポリマーの官能化で先に報告した(D'este M, Eglin D, Alini M、 (2014)、「A systematic analysis of DMTMM vs EDC/NHS for ligation of amines to Hyaluronan in water」、Carbohyrate Polymers、108巻、239-246ページ)。
【0207】
以下の説明は、第1の網目構造としてのポリエーテルウレタン及び第2の高分子網目構造としてのポリアクリル酸を有する相互貫入イオン性ポリマー組成物の第2の例示的な実施形態を指す。IPNは2つの工程で順次合成する。ポリエーテルウレタンから作製された試験物品を、5000ppmのN,N'-メチレンビス(アクリルアミド)及び1000ppmの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを補充したアクリル酸60%(w/w%)の水溶液中に含侵させる。膨潤した物品を紫外線照射(40mW/cm2)下で13分間重合し、次いで一定のpH=7.4で中和する。IPNの最終組成は、それぞれ48/17/35(wt%)のPEU、PAA及びH2Oを含有していた。試験物品をタウリン溶液(320mM)中で1日インキュベートし、その後、等モル量のDMTMMを添加する。試験物品を静置して48時間反応させ、これを多量の水で4日間洗浄する。合成後、化学組成を元素分析によってアセスメントする(表1)。PAAのスルホン化の収率は29%であった。
【0208】
以下の説明は、第1の網目構造としてのポリエーテルウレタン及び第2の高分子網目構造としてのポリアクリル酸を有する相互貫入イオン性ポリマー組成物の第3の例示的な実施形態を指す。IPNは2つの工程で順次合成する。ポリエーテルウレタンから作製された試験物品を、2000ppmのN,N'-メチレンビス(アクリルアミド)及び2000ppmの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンを補充したアクリル酸50%(w/w%)の水溶液中に含侵させる。膨潤した物品を紫外線照射(40mW/cm2)下で13分間重合し、次いで一定のpH=7.4で中和する。IPNの最終組成は、それぞれ57/16/26(wt%)のPEU、PAA及びH2Oを含有していた。試験物品をタウリン溶液(320mM)中で1日インキュベートし、その後、等モル量のDMTMMを添加する。試験物品を静置して48時間反応させ、これを多量の水で4日間洗浄する。合成後、化学組成を元素分析によってアセスメントする(表1)。PAAのスルホン化の収率は26%であった。
【0209】
【0210】
[実施例2]
PAA/PEU(w/w%)含有率が17.6%~29.9%の範囲のグラジエントPEU-PAA配合物を、実施例1に記載のラインに沿った以下の手順によって合成した。AA浸漬溶液とPAA/PEU(w/w%)との間には線形相関があり、初期浸漬溶液に基づく最終PAA/PEUパーセンテージの決定を可能にする。結果を表2に示す。
【0211】
【0212】
次いで、グラジエントPEU-PAA配合物を、実施例1のラインに沿った手順に従ってスルホン化した。スルホン化パーセントは、硫黄含有率及びスルホン化変換率を計算するための元素分析に沿って増加する乾燥及び湿重量によって特徴付けられた。データを表3にまとめる。硫黄含有率は0.5~2%の範囲であり、スルホン化変換率は9%~31%であった。
【0213】
【0214】
スルホン化グラジエントPEU-PAA材料は、PAA/PEU w/w%の増加に伴い、スルホン化後のより高い重量増加率の傾向を示し、PAA含有率が増加すると、PAAのカルボキシル基がより多くタウリンと反応してスルホネート基を導入することが示唆された。スルホン化グラジエントPEU-PAAの重量増加率(湿重量及び乾燥重量の両方)は、PAA/PEU含有率の関数として線形であることが判明した。乾燥重量増加率は、スルホン化反応によってタウリン分子がPAA骨格に加わった結果であると考えられ、一方、湿重量増加率は、スルホン化グラジエントPEU-PAAの含水率を保つ能力に起因すると考えられる。
【0215】
元素分析を実施して、スルホン化試験物品から炭素、窒素、水素、及び硫黄の含有率を求めた。このデータを使用してカルボキシル基からスルホネート基への変換率を算出した。表3を見て分かるように、硫黄含有率/スルホン化変換率は、PAA/PEUパーセンテージの増加に伴って増加した。これは、単位重量当たりのカルボキシル基の数が増加すると、より多くのタウリンが結合し得ることを示す。
【0216】
スルホン化グラジエントPEU-PAA試験物品の最後の合成工程は、ガンマ線照射に先立って、疑似体液(SBF、1.2mMのCa2+、0.6mMのMg2+、154mMのNaCl)中での平衡化を要した。SBF平衡化後の全ての合成された材料の最終組成を算出し、表4に列挙した(グレーでハイライトした)。
【0217】
【0218】
PAA含有率の範囲にわたるスルホン化グラジエントPEU-PAA試験物品の引張、圧縮、引裂き特性を評価した。データを表5から表7にまとめる。共通変数を用いてグラジエントPEU-PAA配合物と非スルホン化グラジエントPEU-PAA配合物との間の材料特性を直接比較することを可能にするために、以下の理由でPAA/PEUパーセンテージを独立変数として使用する。(a)それらのPAA/PEU(w/w%)に関係なく、全ての合成された材料に同じスルホン化条件を用いた、(b)スルホン化は、PAA/PEU(w/w%)のレベルによって間接的に制御した(表3参照)、(c)同じ初期条件で合成した材料は、スルホン化プロセス又は硫黄含有率に関係なく、統計的に類似の機械的特性を有していた。
【0219】
全ての配合物の引張特性を表5及び表5.1に列挙する。極限引張強度(UTS)は、PAA/PEU w/w%の増加と共に減少することが判明した。これは、PAA/PEU w/w%の関数としての含水率の増加に起因し(表3)、より脆弱な材料がもたらされる。
【0220】
【0221】
【0222】
同様の傾向が、評価した全ての他の引張特性で観察された。具体的には、破損する前の材料の最大伸長を捉える極限真歪は、PAA/PEU w/w%に応じて低減し、最低PAA/PEU w/w%(17.6%)の配合物での223.8±52.3%から最高(40.7%)の配合物での95.2±12.8%の範囲であった表5.1)。非スルホン化グラジエントPEU-PAAの極限真歪は181.0±32.7%であり、これは同じPAA/PEU w/w%を有するスルホン化された対応物(95.2±12.8%)よりほぼ2倍高い。これは、非スルホン化グラジエントPEU-PAA(36.7%-表3参照)より多くの水を有する(41.4%-表3参照)40.7%のPAA/PEU w/w%のスルホン化グラジエントPEU-PAA配合物に起因する。その上、材料及び試験物品の欠陥によって影響を受ける張力下での材料破壊の偶然性に起因する極限真歪の大きな変動が観察された。
【0223】
線形弾性領域中の応力と歪みの間の関係を規定する引張弾性率(ヤング率)は、PAA/PEU w/w%の増加に応じて指数関数的に減少した。(最高)PAA/PEU w/w%が40.7の配合物の引張係数(32.5±0.8MPa)は、30%のPAA/PEU w/w%を有する先の配合物(48.4±2.8MPa)から有意に減少し(p<0.01)、この閾値を超えると、引張係数は急速に低下することが示唆される。その上、極限引張強度及び引張歪みに見られる傾向と同様、非スルホン化グラジエントPEU-PAAの引張弾性率は、同じPAA/PEU w/w%を有するスルホン化グラジエントPEU-PAAより高かった(46.4±2.3)。
【0224】
UTSと同様、弾性域を超えて応力を受けて塑性変形に達した材料の挙動を説明する上で有用な30%の歪みでの接線引張弾性率(表5.1参照)は、PAA/PEU w/w%の増加に伴って減少した。最低PAA/PEU w/w%(17.6%)を有する試験物品の接線引張弾性率は37.1±2.2MPaであり、最高PAA/PEU w/w%(40.7%)の配合物で24.6±0.5MPaに低減した。対照的に、非スルホン化グラジエントPEU-PAAの接線引張弾性率は29.0±0.35MPaであり、材料が塑性的に変形すると、同じPAA/PEU w/w%を有するスルホン化及び非スルホン化配合物は両方とも同様の変形率を有することを示す。
【0225】
全ての引張特性をまとめると、非スルホン化グラジエントPEU-PAAと同様の引張特性を得るためには、非スルホン化グラジエントPEU-PAAと比較して低レベルのPAAをスルホン化グラジエントPEU-PAAに使用することができる。
【0226】
全配合物の圧縮特性を(表6)及び(表6.1)に列挙する。全ての配合物の極限圧縮強度は、所望の予備規格25.4MPaを上回っていた。全てのスルホン化グラジエントPEU-PAA試料は、高い歪み(60%超の圧縮真歪)でも圧縮下で破壊しなかった。材料が圧縮下で破壊されないため、極限圧縮強度及び極限圧縮歪みに具体的な傾向は成立しなかった。
【0227】
【0228】
【0229】
非スルホン化グラジエントPEU-PAAの圧縮強度は332.8±16.7MPaであり、全てのスルホン化グラジエントPEU-PAA配合物より高かった。材料が圧縮下で破壊しなかったため、圧縮強度の直接的な比較は不可能であり、従って材料を動的圧縮下で再評価した。
【0230】
線形弾性域中の圧縮下での固体材料の剛性を測定する圧縮弾性率(圧縮のヤング率)は、引張弾性率と同様に、PAA/PEU w/w%の増加に応じて指数関数的な減少を示した。圧縮弾性率は、最低PAA/PEU w/w%(17.6)を有する配合物の111.1±11.5MPaから最大PAA/PEU w/w%(40.7)を有する配合物の50.4±10.6MPaへ徐々に減少した。これらの値は、ヒト関節軟骨の8.1~15.3MPaと同じ桁であり(Parsons, J. R. (1998)、「Cartilage」、Handbook of Biomaterial Propertiesにおいて。Boston、MA: Springer US、40-47ページ。doi: 10.1007/978-1-4615-5801-9_4)、スルホン化配合物が同等の生理的剛性を有することを示す。
【0231】
接線引張弾性率と同様に、接線圧縮弾性率は、弾性域を超える材料の挙動及び材料が塑性変形を経る率を実証する。接線圧縮弾性率は、最低PAA/PEU w/w%(17.6%)を有する試験物品で177.8±8.7MPaであり、最高PAA/PEU w/w%(40.7%)を有する配合物では145.7±19.5MPaに低減した。非スルホン化グラジエントPEU-PAAの接線圧縮弾性率は155.9±4.3であり、より低いPAA/PEU w/w%又はより高いPEU含有率を有するスルホン化材料に対応する。
【0232】
引裂き強度は、引張及び圧縮特性と同様の傾向に従い、PAA/PEU w/w%の増加に応じて低減した(表7)。合成されたスルホン化グラジエントPEU-PAAの範囲で得られた引裂き強度の値は、それぞれ28.8±2.2N/mm~70±3.8N/mmの範囲であった。非スルホン化グラジエントPEU-PAAの引裂き強度は57.7±2.5N/mmであり、より低いPAA/PEU w/w%又はより高いPEU含有率を有するスルホン化材料と同様である。
【0233】
【0234】
合成の一部として、パッケージング及びガンマ線照射の前に、非スルホン化グラジエントPEU-PAAを含む全ての配合物をSBF中で平衡化した。摩擦係数(COF)の値を表8に列挙する。全てのスルホン化グラジエントPEU-PAAが、非スルホン化グラジエントPEU-PAAと比べて有意に低い(p<0.01)PAA/PEU含有率及び硫黄含有率にかかわらず、同様の摩擦値(0.034±0.007)を実証することが観察された。
【0235】
材料の厚さ全体にわたるスルホン化分布の初期アセスメントは、スルホン化がバルクより軸受面でより多く、
図4(48.1wt%のPEU、14.4wt%のPAA、37.4wt%の水を有するスルホン化グラジエントPEU-PAA配合物)を見て分かるように深さが深くなるにつれて徐々に低減することを実証した。スルホン化の程度は、ラマン分光法を使用して1640cm
-1のカルボニルピークに対して1045cm
-1のスルホネートピークの正規化強度を測定することによって決定する。
【0236】
スルホン化反応条件は全スルホン化材料で同じであったため、全てのスルホン化グラジエントPEU-PAA配合物は、それらのPAA/PEUパーセンテージに関係なく、軸受表面上に最高濃度のスルホネート部分を有することが推測される。対照的に、SBF中で平衡化された非スルホン化グラジエントPEU-PAAは、0.1超の摩擦係数を示した。これは、スルホン化プロセスが、低い摩擦係数を有する潤滑性の材料にすることを示唆する。
【0237】
【0238】
同様のPAA/PEU w/w%(22.9%)及び硫黄含有率(1.05%)を有するスルホン化グラジエントPEU-PAA群についての摩擦係数もアセスメントした。この配合物の摩擦係数は0.042±0.001(n=3)であった。
【0239】
そこで、17.6%~40.7%のPAA/PEUパーセントの範囲及び9~31%のスルホン化変換率が機械的性質及び摩擦特性に与える効果をアセスメントした。配合物を非スルホン化グラジエントPEU-PAA配合物(40.7%のPAA/PEU及びスルホン化なし)と比較し、スルホン化が特性に与える効果を評価した。全IPNは、現在の予備規格を満たすか又はそれを超える機械的特性を有していた。より低いPAA/PEU w/w%を有する配合物は、より高いPAA/PEU w/w%を有する配合物より剛性であり、この効果はスルホン化後の含水率の増加に起因する。
【0240】
全スルホン化配合物は、非スルホン化グラジエントPEU-PAA(0.1)と比べてSBF中の摩擦係数(COF)が低く(<0.045)、表面の潤滑性が、試験した9~31%の範囲にわたる%スルホン化と関係ないことを示す。全てのスルホン化配合物は類似のCOF値を示し、試験範囲にわたる%スルホン化又はPAA含有率がSBFの存在下で高度に潤滑性の表面を作製するのに十分であったことを示唆する。
【0241】
実施例3のスルホン化配合物の、生理的条件下で二価イオンの効果に耐性を持つ能力を更に試験するために、全二価イオン濃度の広範な生理的範囲にわたる水分損失を定量化する試験を開発した。この試験は、Ising, H., Bertschat, F.、 Gunther, T., Jeremias、E., Jeremias, A.及びIsing, H. (1995)「Measurement of Free Magnesium in Blood, Serum and Plasma with an Ion-Sensitive Electrode」、Clinical Chemistry and Laboratory Medicine、33(6)、 365-372及びFijorek, K.、Puskulluoglu, M.、 Tomaszewska, D.、 Tomaszewski, R.、 Glinka, A.及び Polak, S. (2014)、「Serum potassium, sodium and calcium levels in healthy individuals - literature review and data analysis」、Folia Medica Cracoviensia54(1)、53-70で報告されており、二価イオンの1mM当たりの水分損失のパーセンテージを監視することによって低い及び高い生理的範囲内の材料の感受性を決定するために使用される。SBF中で平衡化した(1.8mMの全二価イオンカチオン)スルホン化グラジエントPEU-PAA及び非スルホン化グラジエントPEU-PAA試験物品を、全二価イオンの1.4mM(低い生理的範囲)から2.2mM(高い生理的範囲)の範囲の緩衝液に入れ、平衡状態に達した後で、それらの水分損失を測定した。各濃度に対して線をフィッティングさせ、各線の傾きを算出した(表9)。代表的な一連の試験配合物の二価イオン感受性(適合線の傾き)が表される(
図3A~3E)。感受性は、PAA/PEU w/w%が17.6%の配合物の-1.32%/mM(全二価カチオンの1ミリモル当たりの%水分損失)からPAA/PEU w/w%が40.7%の配合物の-1.86%/mMまでの範囲であった。
【0242】
【0243】
合成軟骨インプラントの所望の一特性は、生理的条件で含水率を維持する材料の能力である。リン酸緩衝食塩水中にパッケージングされたデバイスは、人体に移植されると、滑液の二価イオンを豊富に含む環境(約1.2mMのCa+2、0.6mMのMg+2)に晒される。PAAのようなポリマー弱酸のナトリウム塩はCa+2及びMg+2に対して高選択性を有することが知られており、最終的にナトリウムイオンの移動につながる(Dorfner, K. (1991)「Ion exchangers」、Berlin、New York: DE GRUYTER. doi: 10.1515/9783110862430)。Ca+2及びMg+2の一分子が2つのカルボキシレート基に結合できるため、PAA鎖はイオン相互作用を通して架橋され得る。これはPAA網目構造の収縮につながり、従ってin vivoでの水分損失につながる。
【0244】
本実施例では、SBFに晒された全てのスルホン化グラジエントPEU-PAA配合物が、平衡化の後、非スルホン化グラジエントPEU-PAAより少ない水分損失を示した。その上、水分損失は、非スルホン化グラジエントPEU-PAAと同等の機械的特性を有するPAA/PEUパーセンテージの範囲内で更に最小化された。特に、PAA/PEU w/w%が25.5~30%の範囲内である及び/又はスルホン化レベルが21~31%のスルホン化配合物は、非スルホン化グラジエントPEU-PAA(13.8±1.0)より少ない水分損失(6.5±0.6~9.2±0.5%)を示し、試験した生理的イオン変動の範囲にわたる重量損失に測定可能な変化はなかった。
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
スルホン酸誘導体化基を含む架橋イオン性ポリマーを含む整形外科用インプラントであって、スルホン酸誘導体化基が前記インプラントの表面に存在し、表面からインプラントのバルク中へ少なくとも500ミクロンの距離、延びている、整形外科用インプラント。
[実施形態2]
スルホン酸誘導体化基がアミノスルホン酸誘導体化基である、実施形態1に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態3]
インプラントが測定可能な量の式(H
2
N)
x
R(SO
3
H)
y
(式中、Rは有機部分であり、xは正の整数であり、yは正の整数である)のアミノスルホン酸化合物又はその塩を含む、実施形態2に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態4]
Rが炭化水素部分である、実施形態3に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態5]
炭化水素部分が、アルカン部分、アルケン部分、アルキン部分、芳香族部分、又はアルカン、アルケン、アルキン及び芳香族置換基のうちの2つ以上の組合せを有する炭化水素部分である、実施形態4に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態6]
炭化水素部分がC
1
~C
12
炭化水素部分である、実施形態4に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態7]
インプラントが測定可能な量の、タウリン及びタウリン誘導体から選択されるアミノスルホン酸化合物を含む、実施形態2に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態8]
スルホン酸誘導体化基がスルホン酸誘導体化カルボン酸基である、実施形態1から7に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態9]
架橋イオン性ポリマーが非誘導体化カルボン酸基を更に含む、実施形態8に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態10]
非誘導体化カルボン酸基が以下:イオン性ポリマー中の非誘導体化アクリル酸重合モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化メタクリル酸重合モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化クロトン酸重合モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化リノレン酸重合モノマー、イオン性ポリマー中の非誘導体化マレイン酸重合モノマー、及びイオン性ポリマー中の非誘導体化フマル酸重合モノマーのうちの1つ以上に相当し、アミノスルホン酸誘導体化カルボン酸基が、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化アクリル酸重合モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化メタクリル酸重合モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化クロトン酸重合モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化リノレン酸重合モノマー、イオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化マレイン酸重合モノマー、及びイオン性ポリマー中のアミノスルホン酸誘導体化フマル酸重合モノマーのうちの1つ以上に相当する、実施形態9に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態11]
インプラントがスルホン酸誘導体化基の濃度勾配を含む、実施形態1から10に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態12]
スルホン酸誘導体化基が、少なくとも1mmの距離、インプラントのバルク中に延びている、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態13]
スルホン酸誘導体化基が、インプラントの厚さの20%超にわたって存在する、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態14]
スルホン酸誘導体化基が、インプラントの厚さの50%超にわたって存在する、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態15]
スルホン酸誘導体化基が、インプラントの厚さの75%超にわたって存在する、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態16]
スルホン酸誘導体化基が、インプラントの厚さの100%にわたって存在する、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態17]
スルホン酸誘導体化基の濃度が、インプラントの表面上の点からインプラントのバルク中の少なくとも1点で少なくとも10%減少する、実施形態1から11に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態18]
スルホン酸誘導体化基の濃度が、インプラント中の任意の2点間で+/-10%超変動しない、実施形態1から10に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態19]
スルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度及び非誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラント中の任意の2点間で+/-10%超変動しない、実施形態9又は10に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態20]
インプラントがスルホン酸誘導体化カルボン酸基の濃度勾配及び前記非誘導体化カルボン酸基の濃度勾配を含む、実施形態9又は10に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態21]
スルホン酸誘導化カルボン酸基の濃度が、インプラントの表面上の点からインプラントのバルク中の少なくとも1点で少なくとも10%減少し、非誘導体化カルボン酸基の濃度が、インプラントの表面上の点からインプラントのバルク中の少なくとも1点で少なくとも10%増加する、実施形態9、10及び20に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態22]
スルホン酸誘導体化カルボン酸基対非誘導体化カルボン酸基のモル比が、インプラントの表面上の点からインプラントのバルク中の少なくとも1点で少なくとも10%減少する、実施形態9、10及び20に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態23]
インプラントが第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及びイオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造を含む、実施形態1から22に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態24]
第1のポリマーが疎水性ポリマーである、実施形態23に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態25]
第1のポリマーが熱可塑性ポリマーである、実施形態23又は24に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態26]
第1のポリマーがポリウレタンである、実施形態23から25に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態27]
第1及び第2の表面を有し、第1の表面が、第1のポリマーに相当する組成物を有し、スルホン酸誘導体化基の濃度が、第2の表面で最大になり、インプラントのバルク中でゼロ又は実質的にゼロの濃度まで減少する、実施形態23から26に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態28]
整形外科用インプラントが総二価カチオン濃度の変化1mM当たり10%未満の重量変化を有する、実施形態1から27に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態29]
整形外科用インプラントが約0.1mMから約5mMの総二価カチオン濃度範囲にわたって、総二価カチオン濃度の変化1mM当たり10%未満の重量変化を有する、実施形態1から27に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態30]
整形外科用インプラントが約1.4mMから約2.2mMの生理的な総二価カチオン濃度範囲にわたって、総二価カチオン濃度の変化1mM当たり10%未満の重量変化を有する、実施形態1から27のいずれかに記載の整形外科用インプラント。
[実施形態31]
整形外科用インプラントが約0.1mMから約5mMの総二価カチオン濃度範囲にわたって0.1未満の摩擦係数を維持する、実施形態1から30に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態32]
整形外科用インプラントが約1.4mMから約2.2mMの生理的な総二価カチオン濃度範囲にわたって0.1未満の摩擦係数を維持する、実施形態1から30に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態33]
インプラントが体内の関節中の軟骨を修復又は置換するように構成される、実施形態1から32に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態34]
体内の関節が、膝関節、顆、膝蓋骨、脛骨プラトー、足首関節、肘関節、肩関節、手指関節、母指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間関節、関節唇、関節半月、中手関節、中足関節、足指関節、顎関節、及び手首関節(それらの一部分を含む)から選択される、実施形態33に記載の整形外科用インプラント。
[実施形態35]
無菌パッケージ内に含まれる実施形態1から34に記載の整形外科用インプラントを含む、パッケージングされた物品。
[実施形態36]
無菌パッケージ内に含まれる実施形態1から35に記載の整形外科用インプラント及び1種以上の二価金属カチオンを含む二価カチオン含有溶液を含む、パッケージングされた物品。
[実施形態37]
第1のポリマーを含む第1の高分子網目構造及びスルホン酸誘導体化基を含む架橋イオン性ポリマーを含む第2の高分子網目構造を含む相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造であって、スルホン酸誘導体化基が、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造の表面に存在し、少なくとも500ミクロンの距離、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造中に延びている、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態38]
スルホン酸誘導体化基がアミノスルホン酸誘導体化基である、実施形態37に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態39]
スルホン酸誘導体化基がスルホン酸誘導体化カルボキシル基である、実施形態37に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態40]
架橋イオン性ポリマーが、非誘導体化カルボン酸基を更に含む、実施形態37から39に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態41]
第1のポリマーが疎水性ポリマーである、実施形態37から40に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態42]
第1のポリマーが熱可塑性ポリマーである、実施形態37から41に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態43]
第1のポリマーがポリウレタンである、実施形態37から42に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態44]
ポリウレタンがポリエーテルウレタンである、実施形態43に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態45]
第1及び第2の表面を有し、第1の表面が、第1のポリマーに相当する組成物を有し、スルホン酸誘導体化基の濃度が、第2の表面で最大になり、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造のバルク中でゼロ又は実質的にゼロの濃度まで減少する、実施形態37から44に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態46]
疎水性ポリマーがポリウレタンであり、少なくとも一部の非誘導体化カルボン酸基が、イオン性ポリマー中の非誘導体化アクリル酸重合モノマーに相当する、実施形態41に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態47]
スルホン酸誘導体化基が、少なくとも1mmの距離、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造のバルク中に延びている、実施形態37から46に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態48]
スルホン酸誘導体化基が、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造の厚さの20%超にわたって存在する、実施形態37から46に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態49]
スルホン酸誘導体化基が、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造の厚さの50%超にわたって存在する、実施形態37から46に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態50]
スルホン酸誘導体化基が、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造の厚さの75%超にわたって存在する、実施形態37から46に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。
[実施形態51]
スルホン酸誘導体化基が、相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造の厚さの100%にわたって存在する、実施形態37から46に記載の相互貫入又は半相互貫入高分子網目構造。