(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回路装置、およびフィルタ回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20240910BHJP
H03H 7/09 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H03H7/09 Z
(21)【出願番号】P 2021563795
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041687
(87)【国際公開番号】W WO2021117393
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-02-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019225302
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 淳
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】千葉 輝久
【審判官】上田 翔太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135602(JP,A)
【文献】特開2008-167157(JP,A)
【文献】国際公開第2009/011400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H1/00-3/00
H03H5/00-7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成される基板と、
前記基板に実装するコイル部品と、を備え、
前記コイル部品は、
各コイル面が積層方向に対向するように積層体内に設けられた第1コイルおよび第2コイルを含み、各コイル面が前記基板の表面と平行となるように実装され、
前記積層体の側面は、対向する第1の側面および第2の側面と、対向する第3の側面および第4の側面とを有し、
前記第1コイルおよび前記第2コイルのうち少なくとも一方のコイルパターンの一部に沿って前記第1の側面に設けられた入力端子と、
前記コイルパターンの別の一部に沿って前記第2の側面に設けられた出力端子とをさらに含み、
前記配線パターンは、
前記入力端子に直接接続され、前記
コイル部品の前記第1の側面に沿って設けられ
る第1の電極部と、
前記出力端子に直接接続され、前記
コイル部品の前記第2の側面に沿って設けられ
る第2の電極部と、
前記第1の側面の中心から前記第1の側面に沿って第1距離ずらした位置
において前記第1の電極部と電気的に接続される第1の配線部と、
前記第2の側面の中心から前記第2の側面に沿って第2距離ずらした位置
において前記第2の電極部と電気的に接続される第2の配線部と、を含み、
前記第1距離および前記第2距離のうち、少なくとも一方は距離ゼロ以外である、回路装置。
【請求項2】
前記第1距離と前記第2距離とは、同じ距離である、請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記第1の配線部と前記第2の配線部とは、前記積層体の側面に沿ってずらす方向が同じである、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記第1の配線部と前記第2の配線部とは、前記積層体の側面に沿ってずらす方向が異なる、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項5】
前記第1の配線部は、
前記第3の側面および前記第4の側面と平行になる前記第1の電極部
の辺で、前記第1の電極部と電気的に接続される、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項6】
前記第2の配線部は、
前記第3の側面および前記第4の側面と平行になる前記第2の電極部
の辺で、前記第2の電極部と電気的に接続される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項7】
前記コイル部品の前記第1の側面および前記第2の側面は、前記コイル部品の長手方向と平行な面である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項8】
前記コイル部品は、前記第1コイルと前記第2コイルとが磁気結合するトランスコイルである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項9】
前記コイル部品は、前記第1コイルおよび前記第2コイルを構成する導体が、前記第1の側面および前記第2の側面のそれぞれに沿う部分を有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の回路装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の前記回路装置と、
前記コイル部品の前記第1コイルと前記第2コイルとの間の電極に接続するコンデンサと、を備える、フィルタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路装置、およびフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、フィルタ回路を用いたノイズ対策がよく行われる。ノイズ対策に用いるフィルタ回路には、例えばEMI(Electro-Magnetic Interference)除去フィルタなどがあり、導体を流れる電流のうち必要な成分を通して不要な成分を除去する。また、フィルタ回路は、キャパシタンス素子であるコンデンサを用いるため、当該コンデンサの寄生インダクタンスである等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)によりノイズ抑制効果が低下することが知られている。
【0003】
コンデンサの等価直列インダクタンスESLを、二つのコイルを磁気結合することで生じる負のインダクタンスで打ち消し、フィルタ回路のノイズ抑制効果を広帯域化する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンデンサの等価直列インダクタンスESLを打ち消すためには、二つのコイルの相互インダクタンスMを調整する必要がある。特許文献1に係るLCフィルタでは、磁性体中に二つのコイルを設けているので大きな相互インダクタンスMを得ることができるが、打ち消したい等価直列インダクタンスESLに合わせた相互インダクタンスMに調整するには、二つのコイルの磁気結合などを変更する必要があり調整が困難であった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、二つのコイルの相互インダクタンスを調整することが可能な回路装置、およびフィルタ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る回路装置は、配線パターンが形成される基板と、基板に実装するコイル部品と、を備え、コイル部品は、各コイル面が積層方向に対向するように積層体内に設けられた第1コイルおよび第2コイルを含み、各コイル面が前記基板の表面と平行となるように実装され、積層体の側面は、対向する第1の側面および第2の側面と、対向する第3の側面および第4の側面とを有し、第1コイルおよび第2コイルのうち少なくとも一方のコイルパターンの一部に沿って第1の側面に設けられた入力端子と、コイルパターンの別の一部に沿って第2の側面に設けられた出力端子とをさらに含み、配線パターンは、入力端子に直接接続され、コイル部品の第1の側面に沿って設けられる第1の電極部と、出力端子に直接接続され、コイル部品の第2の側面に沿って設けられる第2の電極部と、第1の側面の中心から第1の側面に沿って第1距離ずらした位置において第1の電極部と電気的に接続される第1の配線部と、第2の側面の中心から第2の側面に沿って第2距離ずらした位置において前記第2の電極部と電気的に接続される第2の配線部と、を含み、前記第1距離および前記第2距離のうち、少なくとも一方は距離ゼロ以外である。
【0008】
本開示の別の一形態に係る回路装置は、配線パターンが形成される基板と、基板に実装するコイル部品と、を備え、コイル部品は、各コイル面が積層方向に対向するように積層体内に設けられた第1コイルおよび第2コイルを含み、各コイル面が基板の表面と平行となるように実装され、配線パターンは、コイル部品の入力端子に接続され、入力端子を形成した積層体の第1の側面に沿って設けられる第1の電極部と、コイル部品の出力端子に接続され、第1の側面と対向する積層体の第2の側面に沿って設けられる第2の電極部と、第1の電極部と電気的に接続されていない第1の配線部と、第2の電極部と電気的に接続されていない第2の配線部と、を含み、第1の電極部は、第1の側面の中心から第1の側面に沿って第1方向に第1距離ずらした位置に第1A接続部と、第1の側面の中心から第1の側面に沿って第1方向に対して逆の第2方向に第1距離ずらした位置に第1B接続部と、を有し、第2の電極部は、第2の側面の中心から第2の側面に沿って前記第1方向に第2距離ずらした位置に第2A接続部と、第2の側面の中心から第2の側面に沿って第2方向に第2距離ずらした位置に第2B接続部と、を有し、第1の配線部は、第1A接続部と対向する位置まで延伸させた第1A端部と、第1B接続部と対向する位置まで延伸させた第1B端部と、を有し、第2の配線部は、第2A接続部と対向する位置まで延伸させた第2A端部と、第2B接続部と対向する位置まで延伸させた第2B端部と、を有し、第1A接続部と第1A端部との間、または第1B接続部と第1B端部との間を電気的に接続する第1接続素子と、第2A接続部と第2A端部との間、または第2B接続部と第2B端部との間を電気的に接続する第2接続素子と、を備える。
【0009】
本開示の一形態に係るフィルタ回路は、上記の回路装置と、コイル部品の第1コイルと第2コイルとの間の電極に接続するコンデンサと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一形態によれば、配線パターンにより積層体の側面に沿って電流を流すことで、コイル部品の相互インダクタンスを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態1に係る回路装置の平面図である。
【
図2】本実施の形態1に係るコイル部品の斜視図である。
【
図3】本実施の形態1に係る回路装置の相互インダクタンスと配線部のズレ量との関係を説明するグラフである。
【
図4】本実施の形態1に係る回路装置の別のパターンの平面図である。
【
図5】本実施の形態1に係る回路装置のさらに別のパターンの平面図である。
【
図6】本実施の形態1に係るコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
【
図7】本実施の形態2に係る回路装置の平面図である。
【
図8】本実施の形態2に係る回路装置の別のパターンの平面図である。
【
図9】本実施の形態3に係る回路装置の平面図である。
【
図10】本実施の形態3に係る回路装置の別のパターンの平面図である。
【
図11】本実施の形態3に係る回路装置
の比較例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態に係る回路装置、およびフィルタ回路について説明する。
<実施の形態1>
まず、本実施の形態1に係る回路装置10Aについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態1に係る回路装置10Aの平面図である。回路装置10Aは、基板2の表面にコイル部品1を実装する。基板2の表面には、コイル部品1を表面実装するためのランド電極60,70,80,81が形成されている。ランド電極60は、コイル部品1から電流を出力する出力端子である電極4aと接続され、ランド電極70は、コイル部品1に電流を入力する入力端子である電極4bと接続される。なお、コイル部品1に流す電流の向きは、変更することは可能で電極4aを入力端子として電流を入力し、電極4bを出力端子として電流を出力してもよい。
【0013】
ランド電極80は、コイル部品1の電極4cと接続され、ランド電極81は、コイル部品1の電極4dと接続される。電極4cは、後述するようにコイル部品1に含まれるコイルL1とコイルL2との間の電極で、コイルL1およびコイルL2に接続される。一方、電極4dは、コイルL1およびコイルL2に接続されていない。
【0014】
ランド電極60は、
図1に示すように配線61が接続されている。配線61は、コイル部品1の側面(電極4aを形成する第1の側面)の中心からマイナス方向にズレ量X(第1距離)ずらした位置でランド電極60と接続する。なお、
図1に示す一点鎖線がコイル部品1の側面および配線の中心を表し、図中下側をマイナス(負)方向、図中上側をプラス(正)方向とする。
【0015】
ランド電極70は、
図1に示すように配線71が接続されている。配線71は、コイル部品1の側面(電極4bを形成する第2の側面)の中心からマイナス方向にズレ量Y(第2距離)ずらした位置でランド電極70と接続される。なお、回路装置10Aでは、ズレ量X(第1距離)とズレ量Y(第2距離)とが同じ値であり、ズレ量X(第1距離)のみで配線61および配線71のずれを表現してもよい。
【0016】
基板2は、複数の絶縁層が積層されて形成され、例えば低温同時焼成セラミックス、ガラスエポキシ樹脂等で形成される。基板2の表面に形成される各ランド電極60,70,80,81、配線61,71は、配線パターンとして形成され、それぞれCuやAg、Al等の電極として一般的に採用される金属で形成される。
【0017】
コイル部品1は、トランスコイルであり、各コイル面が積層方向に対向するように積層体内に設けられたコイルL1(第1コイル)およびコイルL2(第2コイル)を含み、各コイル面が基板2の表面と平行となるように実装される。コイル部品1の構成を、図を用いて説明する。
図2は、本実施の形態1に係るコイル部品の斜視図である。ここで、
図2では、コイル部品1の短辺方向をX方向、長辺方向をY方向、高さ方向をZ方向とする。また、基板の積層方向はZ方向で、矢印の向きが上層方向を示す。
【0018】
コイル部品1は、
図2に示すようにコイルの配線を形成した基板(セラミックグリーンシート)が複数枚積層されたセラミック層の積層体3(セラミック素体)で構成されている。積層体3は、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ側面とを有する。積層体3の主面に対して平行に、複数の第1配線パターン10と、複数の第3配線パターン30と、複数の第2配線パターン20とが下から順に積み重ねられ、コイルL1およびコイルL2を形成する。
【0019】
積層体3の側面は、長辺側の第1の側面(電極4a(第1電極)を形成した側面)および第2の側面(電極4b(第2電極)を形成した側面)と、短辺側の第3の側面(電極4c(第3電極)を形成した側面)および第4の側面(電極4dを形成した側面)とを有する。
【0020】
コイル部品1は、コイルL1,L2を構成する複数の第1配線パターン10、複数の第2配線パターン20および複数の第3配線パターン30が積層体3の内部に配置されている。複数の第3配線パターン30は、一部がコイルL1を構成し、残りがコイルL2を構成する。つまり、複数の第3配線パターン30は、コイルL1,L2を構成する共通部分である。複数の第3配線パターン30のように、コイルL1,L2の共通部分を持つことで、コイルL1とコイルL2との磁気結合の変動を低減することができる。コイルL1,L2のコイル形状は、電極4cに対しほぼ線対称の形状である。
【0021】
下層に積層されている複数の第1配線パターン10のうち、最下層の第1配線パターン10の端部11が電極4aと電気的に接続される。複数の第1配線パターン10の間は、図示していないビア導体(第1ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、第1ビア導体は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第1配線パターン10のうち、少なくとも1つの第1配線パターンが電極4aと電気的に接続すればよい。
【0022】
中層に積層されている複数の第3配線パターン30のうち、最下層の第3配線パターン30の端部31が電極4cと電気的に接続される。複数の第3配線パターン30の間は、図示していないビア導体(第7ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、第7ビア導体は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第3配線パターン30のうち、少なくとも1つの第3配線パターンが電極4cと電気的に接続すればよい。
【0023】
中層に積層されている第3配線パターン30は、図示していないビア導体(第2ビア導体),(第3ビア導体)を介して下層の第1配線パターン10と電気的に接続されている。第2ビア導体を設ける第1配線パターン10と、第3ビア導体を設ける第1配線パターン10とは、積層体3の異なる側面側にある。具体的に、第2ビア導体を設ける第1配線パターン10は、
図2に示すように長辺側の第1の側面側になり、第3ビア導体を設ける第1配線パターン10の短辺側の第4の側面側と異なる。
【0024】
上層に積層されている複数の第2配線パターン20のうち、最下層の第2配線パターン20の端部21が電極4bと電気的に接続される。複数の第2配線パターン20の間は、ビア導体54(第4ビア導体)を介して電気的に接続されている。なお、ビア導体54は、1つのビア導体で形成しても、複数のビア導体で形成してもよい。複数の第2配線パターン20のうち、少なくとも1つの第2配線パターンが電極4bと電気的に接続すればよい。
【0025】
上層に積層されている第2配線パターン20は、ビア導体55,56を介して中層の第3配線パターン30と電気的に接続されている。なお、ビア導体55,56は、それぞれ1つのビア導体で形成しても、それぞれ複数のビア導体で形成してもよい。ビア導体55,56は、複数の第2配線パターン20、および複数の第3配線パターン30のそれぞれと電気的に接続されている。また、ビア導体55(第5ビア導体)を設ける第2配線パターン20と、ビア導体56(第6ビア導体)を設ける第2配線パターン20とは、積層体3の異なる側面側にある。具体的に、ビア導体55を設ける第2配線パターン20は、
図2に示すように長辺側の第2の側面側になり、ビア導体56を設ける第2配線パターン20の短辺側の第4の側面側と異なる。
【0026】
コイル部品1は、
図2に示すような構成を採用することでコイルL1とコイルL2との相互インダクタンスMが一定の値として決まる。しかし、コイル部品1を変更することなくコイルL1とコイルL2との相互インダクタンスMを調整することが求められる場合がある。そこで、本実施の形態1では、コイル部品1を実装する基板2に形成した配線パターンにより、コイル部品1の相互インダクタンスMを調整する。
【0027】
図1に戻って、配線61をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にズレ量Xずらしてランド電極60と接続することで、ランド電極60に流れる電流は、
図1の実線の矢印で示すように配線61に向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図1の破線の矢印で示すようにランド電極60に流れる電流に対して略逆に流れる。そのため、ランド電極60に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を弱めることになる。
【0028】
また、配線71をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にズレ量Y(=ズレ量X)ずらしてランド電極70と接続することで、ランド電極70に流れる電流は、
図1の実線の矢印で示すように配線71
から遠ざかる方向にコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図1の破線の矢印で示すようにランド電極70に流れる電流に対して略逆に流れる。そのため、ランド電極70に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を弱めることになる。
【0029】
そのため、コイル部品1のコイルL1およびコイルL2に生じる磁界は、ランド電極60およびランド電極70に流れる電流により弱められるので、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスMを小さくすることができる。つまり、ランド電極60およびランド電極70に接続する配線61および配線71のコイル部品1の側面の中心からのズレ量を変更することで、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスMを調整することができる。
【0030】
図3は、本実施の形態1に係る回路装置の相互インダクタンスと配線部のズレ量との関係を説明するグラフである。
図3に示すグラフは、横軸をズレ量X(mm)とし、縦軸をコイルL1とコイルL2との相互インダクタンスM(nH)とする。また、
図3に示すグラフでは、配線61のズレ量Xと配線71のズレ量Yとが同じ回路装置について説明する。
図3に示す点Aが、回路装置10Aにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMである。ズレ量Xが0(ゼロ)の場合の回路装置におけるコイル部品1の相互インダクタンスMは、点Oに示されている。点Aに示すように、ズレ量Xを-0.9mmにすることで、相互インダクタンスMを点Oに対して約0.06nH(約2%)小さくすることができる。
【0031】
図4は、本実施の形態1に係る回路装置の別のパターンの平面図である。
図4(a)は、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60に接続し、配線71をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極70に接続した回路装置10Bを示す。
図4(b)は、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60に接続し、配線71をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にずらしてランド電極70に接続した回路装置10Cを示す。
図4に示す回路装置のうち、
図1に示す回路装置と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。また、
図4に示す配線61,71のズレ量X,Y、ずれの方向は、
図1に示す配線61,71のズレ量X,Y、ずれの方向と同じように規定される。
【0032】
図4(a)に示す回路装置10Bでは、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60と接続することで、ランド電極60に流れる電流は、実線の矢印で示すように配線61に向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図4(a)の破線の矢印で示すようにランド電極60に流れる電流に対して略平行に流れる。そのため、ランド電極60に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0033】
また、配線71をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極70と接続することで、ランド電極70に流れる電流は、
図4(a)の実線の矢印で示すように配線71
から遠ざかる方向にコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図4(a)の破線の矢印で示すようにランド電極70に流れる電流に対して略平行に流れる。そのため、ランド電極70に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0034】
図3に示す点Bは、回路装置10Bにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMである。点Bに示すように、ズレ量Xを+0.9mmにすることで、相互インダクタンスMを点Oに対して約0.06nH(約2%)大きくすることができる。
【0035】
図4(b)に示す回路装置10Cでは、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60と接続することで、ランド電極60に流れる電流は、実線の矢印で示すように配線61に向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図4(b)の破線の矢印で示すようにランド電極60に流れる電流に対して略平行に流れる。そのため、ランド電極60に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0036】
一方、配線71をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にずらしてランド電極70と接続することで、ランド電極70に流れる電流は、
図4(b)の実線の矢印で示すように配線71
から遠ざかる方向にコイル部品1の側面を沿うように流れる。コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図4(b)の破線の矢印で示すようにランド電極70に流れる電流に対して略逆に流れる。そのため、ランド電極70に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を弱めることになる。
【0037】
図3に示す点Cは、回路装置10Cにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMである。点Cに示すように、配線61のズレ量Xを+0.9mmに、配線71のズレ量Xを-0.9mmにすること(
図3のグラフでは配線61のズレ量Xのみで点Cをプロットする)で、相互インダクタンスMを点Oとほぼ同じなる。つまり、回路装置10Cは、ランド電極60側で磁界を強め、ランド電極70側で磁界を弱めることで、全体としてズレ量Xが0(ゼロ)の回路装置と等価な相互インダクタンスMとなる。
【0038】
回路装置では、配線61のズレ量Xと配線71のズレ量Yとが同じ値である必要はなく、異なる値でもよい。例えば、配線61がズレ量X(第1距離)=-0.9mmで、配線71のズレ量Y(第2距離)=+0.5mmでもよい。
図5は、本実施の形態1に係る回路装置のさらに別のパターンの平面図である。
図5(a)は、配線61をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にずらしてランド電極60に接続し、配線71をコイル部品1の側面の中心でランド電極70に接続した回路装置10Dを示す。
図5(b)は、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60に接続し、配線71をコイル部品1の側面の中心でランド電極70に接続した回路装置10Eを示す。
図5に示す回路装置のうち、
図1に示す回路装置と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。また、
図5に示す配線61,71のズレ量X,Y、ずれの方向は、
図1に示す配線61,71のズレ量X,Y、ずれの方向と同じように規定される。
【0039】
図5(a)に示す回路装置10Dでは、配線61をコイル部品1の側面の中心からマイナス方向にずらしてランド電極60と接続することで、ランド電極60に流れる電流は、実線の矢印で示すように配線61に向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図5(a)の破線の矢印で示すようにランド電極60に流れる電流に対して略逆に流れる。そのため、ランド電極60に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を弱めることになる。
【0040】
また、配線71をコイル部品1の側面の中心でランド電極70と接続することで、ランド電極70に流れる電流は、
図5(a)の実線の矢印で示すようにコイル部品1の側面に対して略垂直に流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図5(a)の破線の矢印で示すようにランド電極70に流れる電流に対して略垂直に流れる。そのため、ランド電極70に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界に影響を与えない。そのため、回路装置10Dにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMは、回路装置10Aにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMよりは大きく、ズレ量Xが0(ゼロ)の回路装置におけるコイル部品1の相互インダクタンスMよりは小さい。
【0041】
図5(b)に示す回路装置10Eでは、配線61をコイル部品1の側面の中心からプラス方向にずらしてランド電極60と接続することで、ランド電極60に流れる電流は、実線の矢印で示すように配線61に向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図5(b)の破線の矢印で示すようにランド電極60に流れる電流に対して略平行に流れる。そのため、ランド電極60に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0042】
一方、配線71をコイル部品1の側面の中心でランド電極70と接続することで、ランド電極70に流れる電流は、
図5(b)の実線の矢印で示すようにコイル部品1の側面に対して略垂直に流れる。コイル部品1に流れる電流(例えば、第2配線パターン20を流れる電流)は、
図5(b)の破線の矢印で示すようにランド電極70に流れる電流に対して略垂直に流れる。そのため、ランド電極70に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界に影響を与えない。そのため、回路装置10Eにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMは、回路装置10Bにおけるコイル部品1の相互インダクタンスMよりは小さく、ズレ量Xが0(ゼロ)の回路装置におけるコイル部品1の相互インダクタンスMよりは大きい。
【0043】
上記で説明した回路装置10A~回路装置10Eでは、基板2にコイル部品1を実装する構成であったが、ランド電極80にコンデンサC1を実装してフィルタ回路を構成してもよい。
図6は、本実施の形態1に係るコイル部品を含むフィルタ回路の回路図である。
【0044】
フィルタ回路100は、例えば、EMI除去フィルタであり、3次のT型LCフィルタ回路である。このフィルタ回路100に回路装置10A~回路装置10Eが用いられている。なお、以下の実施の形態1では、フィルタ回路100の構成として3次のT型LCフィルタ回路を用いて説明するが、5次のT型LCフィルタ回路や、より高次のT型LCフィルタ回路に対しても同様の構成の多層基板を適用することができる。まず、フィルタ回路100は、
図6示すように、コンデンサC1、電極4a,4b,4c、コイルL1(第1コイル)、およびコイルL2(第2コイル)を備えている。
【0045】
コンデンサC1は、
図6に示すように一方の端部を電極4cに接続し、他方の端部をGND配線に接続する。なお、コンデンサC1は、BaTiO3(チタン酸バリウム)を主成分とした積層セラミックコンデンサだけでなく、他の材料を主成分とした積層セラミックコンデンサでも、積層セラミックコンデンサでない、例えばアルミ電解コンデンサなどの他の種類のコンデンサでもよい。コンデンサC1は、寄生インダクタンス(等価直列インダクタンス(ESL))としてインダクタL3を有しており、インダクタL3がキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価である。なお、コンデンサC1は、さらに寄生抵抗(等価直列抵抗(ESR))がインダクタL3およびキャパシタC1aに直列に接続された回路構成と等価であるとしてもよい。
【0046】
電極4cには、コンデンサC1の他にコイルL1およびコイルL2が接続されている。コイルL1とコイルL2とは磁気結合しており、負のインダクタンス成分(相互インダクタンスM)を生じている。この負のインダクタンス成分を用いて、コンデンサC1の寄生インダクタンス(インダクタL3)を打ち消すことができ、コンデンサC1のインダクタンス成分を見かけ上小さくすることができる。コンデンサC1、コイルL1およびコイルL2で構成されるフィルタ回路100は、コイルL1とコイルL2との相互インダクタンスMによる負のインダクタンス成分で、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態1に係る回路装置10Aは、配線パターンが形成される基板2と、基板2に実装するコイル部品1と、を備えている。コイル部品1は、各コイル面が積層方向に対向するように積層体内に設けられたコイルL1(第1コイル)およびコイルL2(第2コイル)を含み、各コイル面が基板2の表面と平行となるように実装される。配線パターンは、コイル部品1の電極4b(入力端子)に接続され、電極4bを形成した積層体3の第2の側面に沿って設けられるランド電極70(第2の電極部)と、コイル部品1の電極4a(出力端子)に接続され、第2の側面と対向する積層体3の第1の側面に沿って設けられるランド電極60(第1の電極部)と、を含む。また、配線パターンは、第1の側面の中心から第1の側面に沿ってズレ量X(第1距離)ずらした位置にランド電極60と電気的に接続される配線61(第1の配線部)と、第2の側面の中心から第2の側面に沿ってズレ量Y(第2距離)ずらした位置にランド電極70と電気的に接続される配線71(第2の配線部)と、を含む。
【0048】
これにより、本実施の形態1に係る回路装置10Aは、ランド電極60と配線61、ランド電極70と配線71により積層体3の側面に沿って電流を流すことができるので、コイル部品1を流れる電流により生じる磁界を、ランド電極60,70を流れる電流により生じる磁界で弱めるまたは強めることができ、コイル部品1の相互インダクタンスMを調整することができる。
【0049】
ズレ量Xとズレ量Yとは、回路装置10A~10Cのように同じ距離であってもよい。配線61と配線71とは、積層体3の側面に沿ってずらす方向が回路装置10A,10Bのように同じであってもよい。配線61と配線71とは、積層体3の側面に沿ってずらす方向が回路装置10Cのように異なってもよい。ズレ量Xまたはズレ量Yは、回路装置10D,10Eのように距離ゼロを含んでもよい。
【0050】
コイル部品1の第1の側面および第2の側面は、コイル部品1の長手方向と平行な面であることが好ましい。コイル部品1の第1の側面および第2の側面をコイル部品1の長手方向と平行な面とすることで、ランド電極60,70をコイル部品1の長手方向に沿って設けることができる。ランド電極60,70をコイル部品1の長手方向に沿って設けることで、ランド電極60,70をコイル部品1の短手方向に沿って設ける場合に比べて、コイル部品1に流れる電流に対して影響を与えることができるランド電極60,70の電流路を長くできる。
【0051】
コイル部品1は、コイルL1とコイルL2とが磁気結合するトランスコイルであることが好ましい。コイル部品1は、コイルL1およびコイルL2を構成する第1配線パターン10~第3配線パターン30(導体)が、第1の側面および第2の側面のそれぞれに沿う部分を有することが好ましい。
【0052】
フィルタ回路100は、回路装置10A~10Eと、コイル部品1のコイルL1とコイルL2との間の電極4cに接続するコンデンサC1と、を備える。これにより、フィルタ回路100は、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0053】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る回路装置10Aでは、ランド電極60,70に対して配線61,71をズレ量X(第1距離)だけずらした位置にあらかじめ形成してある。本実施の形態2に係る回路装置では、部品の実装時、ランド電極に対する配線の接続する位置を変更できる構成である。
図7は、本実施の形態2に係る回路装置の平面図である。
図7に示す回路装置のうち、
図1に示す回路装置10Aと同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を繰り返さない。なお、
図7に示す一点鎖線がコイル部品1の側面および配線の中心を表し、図中下側をマイナス(負)方向、図中上側をプラス(正)方向とする。
【0054】
図7(a)に示す回路装置15Aは、基板2の表面にコイル部品1を実装する。基板2の表面には、コイル部品1を表面実装するためのランド電極62,72,80,81が形成されている。ランド電極62は、コイル部品1から電流を出力する出力端子である電極4aと接続され、ランド電極72は、コイル部品1に電流を入力する入力端子である電極4bと接続される。なお、コイル部品1に流す電流の向きは、変更することは可能で電極4aを入力端子として電流を入力し、電極4bを出力端子として電流を出力してもよい。
【0055】
ランド電極62は、コイル部品1の側面(電極4aを形成する第1の側面)の中心からプラス方向にズレ量X(第1距離)ずらした位置に接続部62a(第1A接続部)と、マイナス方向にズレ量Xずらした位置に接続部62b(第1B接続部)とを設けてある。配線63は、接続部62aと対向する位置まで延伸させた端部63a(第1A端部)と、接続部62bと対向する位置まで延伸させた端部63b(第1B端部)とを設けてある。そのため、部品の実装時、接続部62aと端部63aとを接続素子90(例えば、0オームチップなど)で接続するのか、接続部62bと端部63bとを接続素子90で接続するのかを選択することができる。
【0056】
ランド電極72は、コイル部品1の側面の中心からプラス方向にズレ量Y(第2距離)ずらした位置に接続部72a(第2A接続部)と、マイナス方向にズレ量Yずらした位置に接続部72b(第2B接続部)とを設けてある。配線73は、接続部72aと対向する位置まで延伸させた端部73a(第2A端部)と、接続部72bと対向する位置まで延伸させた端部73b(第2B端部)とを設けてある。そのため、部品の実装時、接続部72aと端部73aとを接続素子91(例えば、0オームチップなど)で接続するのか、接続部72bと端部73bとを接続素子91で接続するのかを選択することができる。
【0057】
図7(a)に示す回路装置15Aでは、接続素子90で接続部62bと端部63bとを接続し、接続素子91で接続部72aと端部73aとを接続する。そのため、回路装置15Aでは、コイル部品1の側面の中心からマイナス方向にズレ量Xずれた位置で配線63とランド電極62とが接続することになり、ランド電極62に流れる電流は、
図7(a)の実線の矢印で示すように接続部62bに向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流は、
図7(a)の破線の矢印で示すようにランド電極62に流れる電流に対して略逆に流れる。ランド電極62に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を弱めることになる。
【0058】
また、回路装置15Aでは、コイル部品1の側面の中心からプラス方向にズレ量Yずれた位置で配線73とランド電極72とが接続することになり、ランド電極72に流れる電流は、
図7(a)の実線の矢印で示すように接続部72bに向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流は、
図7(a)の破線の矢印で示すようにランド電極72に流れる電流に対して略平行に流れる。ランド電極72に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0059】
図7(b)に示す回路装置15Bでは、接続素子90で接続部62aと端部63aとを接続し、接続素子91で接続部72aと端部73aとを接続する。そのため、回路装置15Bでは、コイル部品1の側面の中心からプラス方向にズレ量Xずれた位置で配線63とランド電極62とが接続することになり、ランド電極62に流れる電流は、
図7(b)の実線の矢印で示すように接続部62aに向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流は、
図7(b)の破線の矢印で示すようにランド電極62に流れる電流に対して略平行に流れる。ランド電極62に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0060】
また、回路装置15Bでは、コイル部品1の側面の中心からプラス方向にズレ量Yずれた位置で配線73とランド電極72とが接続することになり、ランド電極72に流れる電流は、
図7(b)の実線の矢印で示すように接続部
72bに向かってコイル部品1の側面を沿うように流れる。一方、コイル部品1に流れる電流は、
図7(b)の破線の矢印で示すようにランド電極72に流れる電流に対して略平行に流れる。ランド電極72に流れる電流により生じる磁界で、コイル部品1に流れる電流により生じる磁界を強めることになる。
【0061】
回路装置では、接続部62a,62bのズレ量Xと接続部72a,72bのズレ量Yとが同じ値である必要はなく、異なる値でもよい。また、接続部62aのズレ量と接続部62bのズレ量とが同じ値である必要はなく、異なる値でもよい。さらに、接続部72aのズレ量と接続部72bのズレ量とが同じ値である必要はなく、異なる値でもよい。
図8は、本実施の形態2に係る回路装置のさらに別のパターンの平面図である。
図8に示す回路装置15C,15Dは、ランド電極62に接続部62a,62bを設けて配線63と接続し、配線71をコイル部品1の側面の中心でランド電極70に接続する。
【0062】
図8(a)に示す回路装置15Cでは、接続素子90で接続部62bと端部63bとを接続する。
図8(b)に示す回路装置15Dでは、接続素子90で接続部62aと端部63aとを接続する。
【0063】
以上のように、本実施の形態2に係る回路装置15A,15Bは、ランド電極62(第1の電極部)が、第1の側面の中心から第1の側面に沿ってプラス方向(第1方向)にズレ量X(第1距離)ずらした位置に接続部62a(第1A接続部)と、第1の側面の中心から第1の側面に沿ってマイナス方向(第2方向)にズレ量Xずらした位置に接続部62b(第1B接続部)と、を有する。ランド電極72(第2の電極部)は、第2の側面の中心から第2の側面に沿ってプラス方向にズレ量Y(第2距離)ずらした位置に接続部72a(第2A接続部)と、第2の側面の中心から第2の側面に沿ってマイナス方向にズレ量Yずらした位置に接続部72b(第2B接続部)と、を有する。配線63(第1の配線部)は、接続部62aと対向する位置まで延伸させた端部63a(第1A端部)と、接続部62bと対向する位置まで延伸させた端部63b(第1B端部)と、を有する。配線73(第2の配線部)は、接続部72aと対向する位置まで延伸させた端部73a(第2A端部)と、接続部72bと対向する位置まで延伸させた端部73b(第2B端部)と、を有する。回路装置15A,15Bは、接続部62aと端部63aとの間、または接続部62bと端部63bとの間を電気的に接続する接続素子90(第1接続素子)と、接続部72aと端部73aとの間、または接続部72bと端部73bとの間を電気的に接続する接続素子91(第2接続素子)と、を備える。
【0064】
これにより、本実施の形態2に係る回路装置15A,15Bは、ランド電極62と配線63、ランド電極72と配線73により積層体3の側面に沿って電流を流すことができるので、コイル部品1を流れる電流により生じる磁界を、ランド電極62,72を流れる電流により生じる磁界で弱めるまたは強めることができ、コイル部品1の相互インダクタンスMを調整することができる。
【0065】
フィルタ回路は、回路装置15A~15Dと、コイル部品1のコイルL1とコイルL2との間の電極4cに接続するコンデンサC1と、を備える。これにより、フィルタ回路は、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0066】
<実施の形態3>
実施の形態2では、部品の実装時、接続部62aと端部63aとの間、または接続部62bと端部63bとの間を接続素子90で電気的に接続したり、接続部72aと端部73aとの間、または接続部72bと端部73bとの間を接続素子91で電気的に接続したりすることができる構成を説明した。本実施の形態3では、部品の実装時、コイル部品1の有無を選択することが可能な回路装置の構成について説明する。
【0067】
図9は、本実施の形態3に係る回路装置の平面図である。
図9(a)は、コイル部品1を実装する回路装置18Aの平面図で、
図9(b)は、コイル部品1を実装しない回路装置18Bの平面図である。回路装置18Aおよび回路装置18Bは、コイル部品1、コンデンサC1,C2などを実装するランド電極や配線の配線パターンが共通に基板2の表面に形成されている。
【0068】
具体的に、配線パターンには、
図9(a)に示すように、コイル部品1の入出力端子に接続するための配線65,75、コイル部品1とコンデンサC1とを接続するランド電極85、コンデンサC1とコンデンサC2とを接続する配線86、コンデンサC2と接続するランド電極87が含まれている。
【0069】
回路装置18Aでは、
図9(a)に示すように、配線65,75、およびランド電極85と接続する位置にコイル部品1を実装する。回路装置18Aでは、コイル部品1を実装するので、ランド電極85と配線86と接続する位置にコンデンサC1を実装する。
【0070】
一方、回路装置18Bでは、コイル部品1を実装しないので、
図9(b)に示すように、配線65と配線75とを接続するため接続素子300(例えば、0オームチップなど)を実装する。回路装置18Bでは、コイル部品1を実装しないので、ランド電極85と配線86と接続する位置にコンデンサC1を実装せずに、配線75と配線86との間にコンデンサC1を実装する。
【0071】
図9(a)および
図9(b)から分かるように、回路装置18A,18Bは、コイル部品1の実装の有無で、コンデンサC1を設ける位置を変更できるようにランド電極85、配線86などを設け、コンデンサC2の実装する位置を変更しない。
【0072】
図10は、本実施の形態3に係る回路装置の別のパターンの平面図である。
図10(a)は、コイル部品1を実装する回路装置18Cの平面図で、
図10(b)は、コイル部品1を実装しない回路装置18Dの平面図である。回路装置18Cおよび回路装置18Dは、コイル部品1、コンデンサC1,C2などを実装するランド電極や配線の配線パターンが共通に基板2の表面に形成されている。
【0073】
回路装置18Cおよび回路装置18Dの配線パターンは、回路装置18Aおよび回路装置18Bの配線パターンと比較して配線86aの形状が異なる。回路装置18Aおよび回路装置18Bの場合、配線86は、コイル部品1を実装しないときにコンデンサC1とコンデンサC2とが直線上に実装できるような形状である。一方、回路装置18Cおよび回路装置18Dの場合、配線86aは、コイル部品1を実装するときにコンデンサC1とコンデンサC2とが直線上に実装できるような形状である。なお、
図10(b)に示す回路装置18Dでは、コイル部品1を実装しない場合に、配線86aの部分に余分なインダクタンス成分が生じることになり、高周波特性が悪くなる。しかし、
図9(a)に示す回路装置18Aでは、配線86の部分に余分なインダクタンス成分が生じてもコイル部品1を実装するので、当該インダクタンス成分をキャンセルすることができる。
【0074】
図11は、本実施の形態3に係る回路装置
の比較例の平面図である。
図11(a)は、コイル部品1を実装する回路装置18Eの平面図で、
図11(b)は、コイル部品1を実装しない回路装置18Fの平面図である。回路装置18Eおよび回路装置18Fは、コイル部品1、コンデンサC1,C2などを実装するランド電極や配線の配線パターンが共通に基板2の表面に形成されている。
【0075】
具体的に、配線パターンには、
図11(a)に示すように、コイル部品1の入出力端子に接続するための配線65,75、コイル部品1とコンデンサC1とを接続するランド電極85、コンデンサC1とコンデンサC2とを接続する配線86b、コンデンサC2と接続するランド電極87bが含まれている。
【0076】
さらに、配線パターンには、
図11(b)に示すように、コイル部品1を実装しない場合にコンデンサC1とコンデンサC2とを接続する配線86c、コンデンサC2と接続するランド電極87cが含まれている。
【0077】
図9および
図10で示した回路装置18A~18Dは、
図11に示す回路装置18E,18Fに比べて、コイル部品1の実装の有無で、コンデンサC2を設ける位置を変更しないように配線パターンが形成してあり、基板2に対する部品の実装面積を減らすことができる。
図9および
図10で示した回路装置18A~18Dでは、コンデンサC1を実装する位置のみを変更することができる配線パターンを基板2の表面に形成するだけでよい。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 コイル部品、4a,4b,4c,4d 電極、10,20,30 配線パターン、10A~10E,15A~15D,18A~18F 回路装置、11,21,31,63a,63b,73a,73b 端部、54,55,56 ビア導体、60,62,70,72,80,81,85,87,87b,87c ランド電極、61,63,65,71,73,75,86,86a,86b,86c 配線、62a,62b,72a,72b 接続部、90,91,300 接続素子、100 フィルタ回路、C1,C2 コンデンサ。