(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】冶金施設における耐火物構成要素の状態を追跡し評価するシステム
(51)【国際特許分類】
B22D 46/00 20060101AFI20240910BHJP
B22D 41/24 20060101ALI20240910BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20240910BHJP
B22D 11/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D41/24
B22D11/10 340D
B22D11/14
(21)【出願番号】P 2021575466
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020065829
(87)【国際公開番号】W WO2020254134
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500180226
【氏名又は名称】ベスビウス グループ,ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アルヌルフ
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ファビア
(72)【発明者】
【氏名】ドニ ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】エリク マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン メンネリヒ
(72)【発明者】
【氏名】コランタン ピカール
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-528070(JP,A)
【文献】特開2005-095974(JP,A)
【文献】特開2008-221271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0251712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 46/00
B22D 41/24
B22D 11/10
B22D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれが、
スライドゲート弁プレートのような取り外し可能な耐火物構成要素(1p
)を具備する
、複数の識別可能な
取鍋のような冶金容器と;
b)それぞれが、耐火物構成要素識別データを含む機械読み取り可能な識別タグ(1t)を具備する、複数の交換用耐火物構成要素(1r)と;
c)読み取りゾーン(21)を有し、前記読み取りゾーン(21)に配置された交換用耐火物構成要素(1d)の機械読み取り可能な識別タグ(1t)を読み取る、
RFID作業台のような読み取りステーション(2
)と;
d)前記冶金容器(1)のいずれかに結合された耐火物構成要素の状態を評価する耐火物状態ツール(3)であって、前記耐火物状態ツールが、取鍋などの冶金容器(1)のスライドゲート弁(1v)に結合されたスライドゲート弁プレート(1u、1L、1m)の状態データを測定するプレート状態ツール(3)であり、前記スライドゲート弁(1v)が、前記スライドゲート弁(1v)の外壁から突出するコレクタノズル(1n)を具備し、前記スライドゲート弁(1v)が、少なくとも2つのスライドゲート弁プレートを互いに摺動させることによって、開放構成と閉鎖構成との間で切り替えることができ、前記スライドゲート弁(1v)が開放構成にある場合に前記コレクタノズル(1n)が前記冶金容器(1)の鋳造流路と流体連通しており、前記プレート状態ツール(3)が:
i. 前記コレクタノズル(2n)を少なくとも部分的に閉塞する閉塞器(9)を具備する本体(44)と;
ii. 前記閉塞器(9)を通じて前記コレクタノズル(1n)内にガスを目標圧力で注入する圧力調整器(6)を具備するガス注入装置と;
iii. 前記ガス注入装置によって注入される前記ガスの流れを測定するガス流量測定装置(7)と;
iv. 前記ガス流量測定装置(7)に通信可能に接続される、そして前記スライドゲート弁プレート(1u、1L、1m)の相対位置に関する入力データを受信するように構成されるコントローラ(8)と、を具備する、耐火物状態ツール(3)と;
e) 少なくとも1つの電子プロセッサを具備し、前記読み取りステーション(2)および前記耐火物状態ツール(3)に接続可能な監視ユニット(4)であって:
i. 前記冶金容器(1)の1つに結合された少なくとも1つの耐火物構成要素(1p)の状態データを前記耐火物状態ツール(3)から受信するように;
ii. 前記冶金容器(1)の識別データを受信するように;
iii. 前記状態データを前記冶金容器(1)の識別データと関連付けて、耐火物状態データベースに保存するように;
iv. 前記状態データに基づいて、前記耐火物構成要素(1p)を交換しなければならないかどうか(GO OR NO GO)を決定するように、
構成され、前記耐火物構成要素(1p)を交換しなければならない場合(NO GO)には:
a. 前記読み取りステーション(2)から受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素(1p)から交換される前記交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを確認するように;
b. 前記耐火物状態データベースにおいて、前記耐火物構成要素識別データを前記冶金容器(1)の前記識別データと関連付けるように、構成される監視ユニット(4)と、
を具備する、冶金施設における交換可能な耐火物構成要素の状態を追跡し評価するシステム。
【請求項2】
前記監視ユニット(4)が、ヒューマン・マシン・インタフェース(human-machine interface)、すなわちHMI(41)を具備し、前記HMI(41)が、前記耐火物構成要素(1p)を交換しなければならないかどうかを人間の操作者(11)に通知するように構成される、請求項1に記載の冶金施設における交換可能な耐火物構成要素の状態を追跡し評価するシステム。
【請求項3】
耐火物構成要素(1p)を交換しなければならない場合には、前記読み取りステーション(2)によって受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素(1p)から交換される前記交換用耐火物構成要素の前記識別データに対応していることを、人間の操作者(11)が認めるよう要求するように前記HMIが構成される、請求項2に記載の冶金施設における交換可能な耐火物構成要素の状態を追跡し評価するシステム。
【請求項4】
各冶金容器(1)が、機械読み取り可能なタグを具備しており、前記監視ユニット(4)が、前記監視ユニット(4)の検出ゾーン(42)に前記冶金容器(1)がある場合に前記機械読み取り可能なタグを読み取るように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
各冶金容器(1)が、機械読み取り可能なタグを具備しており、前記監視ユニット(4)が、前記監視ユニット(4)の検出ゾーン(42)に前記冶金容器(1)がある場合に前記機械読み取り可能なタグを読み取るように構成され、
i. 前記読み取りステーション(2)の前記読み取りゾーン(21)に配置された前記交換用耐火物構成要素(1d)の耐火物構成要素識別データを、前記監視ユニット(4)の前記検出ゾーン(42)に位置する前記冶金容器(1)の前記識別データと、前記耐火物状態データベースにおいてデフォルトで関連付けるように、前記監視ユニット(4)が構成され;
ii. 前記人間の操作者が前記デフォルトでの関連付けを修正できるようにして、前記HMI(41)が構成される、請求項
2または3に記載のシステム。
【請求項6】
前記監視ユニット(4)が、以下の操作:前記交換用耐火物構成要素(1r)を操作すること、交換用耐火物構成要素(1r)を前記読み取りステーション(2)の前記読み取りゾーン(21)に配置すること、消耗した耐火物構成要素(1p)を前記冶金容器(1)から取り出すこと、交換用耐火物構成要素(1r)を前記冶金容器(1)に結合すること、および前記耐火物状態ツール(3)を前記冶金容器(1)に結合および結合解除すること、のうち1つまたは複数を実行するように構成されるロボットシステム(5)を操作する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記読み取りステーション(2)がRFID作業台であり、交換用耐火物構成要素(1r)がRFIDタグを具備する、請求項1から6のいずれかに一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記冶金容器(1)の前記識別データが、前記
冶金容器の外壁に配置された2Dバーコード上に含まれており、前記監視ユニット(4)が、そのような2Dバーコードを読み取るように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記監視ユニット(4)が、耐火物製造データを前記耐火物
構成要素識別データと関連付けて前記耐火物状態データベースに保存するように構成されており、前記耐火物製造データが、以下のデータ:
a)耐火物材料;
b)
各製造工程での温度、圧力、持続時間のような耐火物製造工程パラメー
タ;
c)耐火物製造日、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記監視ユニット(4)が、前記冶金容器(1)の前記識別データと関連付けられた金属製造データを、前記耐火物状態データベースに保存するように構成されており、前記金属製造データが、以下のデータ:
a)前記冶金容器(1)において鋳造される金属の種類;
b)前記冶金容器(1)において使用される異なる耐火物の種類;
c)前記冶金容器(1)のダウンタイムの頻度および/または持続時間;
d)金属製造工程の最終製造物の特徴;
e)鋳造時間;
f)鋳造温度;
g)熱化学;
h)新しい耐火物構成要素の設置日/時;
i)同一耐火物構成要素を用いた鋳造の回数、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
計算ユニットを具備する、請求項
9に記載のシステムであって、
前記監視ユニット(4)が、前記冶金容器(1)の前記識別データと関連付けられた金属製造データを、前記耐火物状態データベースに保存するように構成されており、前記金属製造データが、以下のデータ:
a)前記冶金容器(1)において鋳造される金属の種類;
b)前記冶金容器(1)において使用される異なる耐火物の種類;
c)前記冶金容器(1)のダウンタイムの頻度および/または持続時間;
d)金属製造工程の最終製造物の特徴;
e)鋳造時間;
f)鋳造温度;
g)熱化学;
h)新しい耐火物構成要素の設置日/時;
i)同一耐火物構成要素を用いた鋳造の回数、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記計算ユニットが、前
記状態データ用の機械学習予測モデルを訓練するように構成され、
i. 前記耐火物状態データベースのデータに基づいて、複数の訓練インスタンスを生成して、各訓練インスタンスに:
・前記耐火物製造データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、および/または前記金属製造データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて入力された訓練インスタンスと;
・前
記状態データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて出力された訓練インスタンスと、が含まれるように;
ii. 前記訓練インスタンスに基づいて前記機械学習予測モデルを訓練するように、前記計算ユニットが構成されるシステム。
【請求項12】
前記コントローラ(8)は、前記目標圧力に到達するのに必要なガス流量(GF)と、時間変数の関数としての前記スライドゲート弁プレート(1u、1L、1m)の前記相対位置(RP)とを、前記コントローラ(8)のメモリに保存するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記関数の微分を計算することによって第1の指標を取り出し、前記関数の積分を計算することによって第2の指標を取り出すようにして前記ガス流量(GF)関数を処理するように、前記コントローラ(8)が構成される、請求
項12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記監視ユニット(4)の少なくとも1つのプロセッサによって実装される方法であって:
i. 識別可能な冶金容器(1)に結合された耐火物構成要素(1p)の状態データを前記耐火物状態ツール(3)から受信するステップと;
ii. 前記冶金容器(1)の識別データを受信するステップと;
iii. 前記状態データを前記冶金容器(1)の識別データと関連付けて、耐火物状態データベースに保存するステップと;
iv. 前記状態データに基づいて、前記耐火物構成要素(1p)を交換しなければならないかどうか(GO OR NO GO)を決定するステップと、を含み、前記耐火物構成要素(1p)を交換しなければならない場合(NO GO)には、前記監視ユニット(4)を:
a. 読み取りステーション(2)から受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素(1p)から交換される前記交換用耐火物構成要素の前記識別データに対応することを確認するステップと;
b. 前記耐火物状態データベースにおいて、前記耐火物構成要素識別データを前記冶金容器(1)の前記識別データと関連付けるステップと、
を実現するように構成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金容器、例えば取鍋を具備する冶金施設において、交換可能な耐火物構成要素、例えばスライドゲート弁プレートの状態を追跡し評価するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冶金施設では、多数の耐火物構成要素が過酷な条件のもとで操作され、経時的に摩耗するので、頻繁に交換しなければならない。頻繁に交換されることになるこのような耐火物構成要素の例が、スライドゲート弁プレートである。
【0003】
スライドゲート弁は、当技術分野で公知である。スライドゲート弁は、上流の冶金容器から下流の容器に注がれる溶湯の流れを制御するのに使用されている。例えば、炉から取鍋へ、取鍋からタンディシュへ、あるいはタンディッシュからインゴット用のモールドへ、などである。例えば、米国特許第A-0311902号、または同第A-0506328号には、鋳造取鍋の最下部に配置されたスライドゲート弁が開示されており、この場合には、貫通孔を備えた一対の耐火物スライドゲート弁プレートの一方を、他方に対して摺動させるようになっている。注湯口が正しく合っているか、部分的に重なり合っている場合、溶湯はスライドゲート弁を通って流れることができ(「鋳造流路」が開いており)、注湯口が重なり合っていない場合、溶湯流は完全に停止する(「鋳造流路」が閉じている)。注湯口が部分的に重なっていると、溶湯流を絞って調節することができる。スライドゲート弁はここ数十年で大きく進化したが、原理は同一のままであり、1枚のプレートがもう1枚のプレートに対して摺動し、2枚のプレートの貫通孔間の重なりのレベルを制御している。
【0004】
日本国特許第JP2008221271号には、冶金容器内のスライドゲート弁プレートの摩耗状態を評価する装置が開示されている。そうした装置によれば、スライドゲート弁プレートの過度の摩耗の兆候をチェックすることが可能であり、その結果、スライドゲート弁プレートを交換することによってスライドゲート弁を改修する必要があるかどうかに関して、操作者が指標を得られる。しかし、この先行技術から得られる装置では、冶金容器内にスライドゲート弁プレートがいったん配置されると、それを追跡することはできない。そうしたスライドゲート弁プレートは、識別番号の付いたタグを有することができるが、そうしたタグは、溶湯が冶金容器内に注がれるとすぐに破壊されるか、読み取り困難になる。先行技術から得られるこの装置によれば、一組のスライドゲート弁プレートを交換しなければならないかどうかに関して決められた時間どおりの決定を下すことが結果的に可能になるが、すべてのスライドゲート弁プレートの摩耗履歴データを収集して保存すること、そして、そのような履歴データを、例えば、典型的にはロット番号または摺動弁プレートの識別番号と関連付けられた、スライドゲート弁プレートの製造上の特徴に関連付けることはできない。耐火物構成要素の製造工程が使用時の特性に与える影響についての理解を深めるために、耐火物構成要素の状態履歴データを、その製造上の特徴と、金属鋳造工程における耐火物構成要素の使用に関連する金属製造パラメータとに関連付けることができるシステムを有することが望ましいと考えられる。
【0005】
国際公開第WO2005/007325号には、例えばスライドゲート弁の溶湯口の理論的な絞り率と実際の絞り率を比較することによって、スライドゲート弁の耐火物プレートを再利用できるか廃棄すべきかを客観的に判断する異なる方法が、開示されている。しかし、記載の方法は、実装が困難であり、その理由は、スライドゲート弁の溶湯口の実際の絞り率を推定するために、スライドゲート弁を通過する溶湯の瞬間流量など、金属鋳造中のいくつかのパラメータを測定する必要があるからである。また、これらの方法では、物理法則から溶湯の理論的な瞬間流量を計算する必要があり、したがって、冶金容器、スライドゲート弁、および溶湯の間の機械的相互作用の正確な物理モデルが必要である。したがって、この先行技術文献に記載の方法は同時に、実装が困難であって精度も限られており、それは、金属鋳造時の物理的測定の不完全さと、スライドゲート弁を通る理論的な溶湯流量を計算するのに使用されるモデルの近似が原因である。さらに、異なる組のプレートの状態データを収集すること、そして前記状態データを計算機メモリに保存することを自動化する方法またはシステムが開示されていない。
【0006】
国際公開第WO2010/057656号には、システムまたは冶金システムの構成成分に関する特定のデータを能動的に追跡する監視システムおよび方法が開示されている。この方法は、冶金施設の個々の構成成分またはシステムに固定されたRFIDタグを使用しており、したがって、溶湯による熱的、機械的、化学的ストレスにさらされるスライドゲート弁プレートなどの耐火物構成要素には適用できない。スライドゲート弁プレート上に置かれたRFIDタグは、実際には金属鋳造作業に耐えられず、したがって、使用中のスライドゲート弁プレートを追跡するのに操作することはできない。さらに、この文献には、スライドゲート弁プレートなどの耐火物構成要素の状態を実際に評価するシステムまたは方法が開示されていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、冶金施設における交換可能な耐火物構成要素の状態を追跡し評価して、金属鋳造工程における耐火物構成要素の使用に関連する、前記耐火物構成要素の製造上の特徴および金属製造パラメータの両方に関連付けられた耐火物構成要素の摩耗履歴データについての知見が得られるようにするシステムを提供することである。
【0008】
本発明は、添付の独立請求項において定められる。好ましい実施形態は、従属請求項で定められる。具体的には、本発明は:
a)それぞれが、取り外し可能な耐火物構成要素、例えばスライドゲート弁プレートを具備する、複数の識別可能な冶金容器、例えば取鍋と;
b)それぞれが、耐火物構成要素識別データを含む機械読み取り可能な識別タグを具備する、複数の交換用耐火物構成要素と;
c)読み取りゾーンを有し、読み取りゾーンに配置された交換用耐火物構成要素の機械読み取り可能な識別タグを読み取る、読み取りステーション、例えばRFID作業台と;
d)前記冶金容器のいずれかに結合された耐火物構成要素の状態を評価する耐火物状態ツールと;
e)読み取りステーションおよび耐火物状態ツールに接続可能な監視ユニットであって;
i. 前記冶金容器のいずれかに結合された少なくとも1つの耐火物構成要素の状態データを前記耐火物状態ツールから受信するように;
ii. 前記冶金容器の識別データを受信するように;
iii. 前記状態データを前記冶金容器の識別データと関連付けて、耐火物状態データベースに保存するように;
iv. 前記状態データに基づいて、耐火物構成要素を交換しなければならないかどうか(GO OR NO GO)を決定するように、
構成され、耐火物構成要素を交換しなければならない場合(NO GO)には:
a. 読み取りステーションから受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素から交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを確認するように;
b. 耐火物状態データベースにおいて、前記耐火物構成要素識別データを前記冶金容器(1)の識別データと関連付けるように、構成される、監視ユニットと、
を具備する、冶金施設における交換可能な耐火物構成要素の状態を追跡し評価するシステムに関する。
【0009】
有利な実施形態では、監視ユニットは、ヒューマン・マシン・インタフェース(human-machine interface)すなわちHMIを含み、前記HMIは、耐火物構成要素を交換しなければならないかどうかを人間の操作者に通知するように構成される。
【0010】
有利な実施形態では、耐火物構成要素を交換しなければならない場合には、読み取りステーションによって受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素から交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを人間の操作者が認めるよう要求するように、HMIが構成される。
【0011】
有利な実施形態では、各冶金容器は、機械読み取り可能なタグを具備しており、監視ユニットは、監視ユニットの検出ゾーンに冶金容器がある場合に、そうした機械読み取り可能なタグを読み取るように構成される。
【0012】
有利な実施形態では、
i. 読み取りステーションの読み取りゾーンに位置する交換用耐火物構成要素の耐火物構成要素識別データを、監視ユニットの検出ゾーンに位置する冶金容器の識別データと、耐火物状態データベースにおいてデフォルトで関連付けるように、監視ユニットが構成され;
ii. 人間の操作者がデフォルトでの関連付けを修正できるようにして、HMIが構成される。
【0013】
有利な実施形態では、監視ユニットは、以下の操作:交換用耐火物構成要素を操作すること、読み取りステーションの読み取りゾーンに交換用耐火物構成要素を配置すること、消耗した耐火物構成要素を冶金容器から除去すること、冶金容器に交換用耐火物構成要素を結合すること、冶金容器に耐火物状態ツールを結合および結合解除すること、のうちの1つまたは複数を実行するように構成されるロボットシステムを操作する。
【0014】
有利な実施形態では、読み取りステーションは、RFID作業台であり、交換用耐火物構成要素は、RFIDタグを具備する。
【0015】
有利な実施形態では、冶金容器の識別データは、冶金容器の外壁に配置された2Dバーコード上に含まれており、前記監視ユニットは、そのような2Dバーコードを読み取るように構成される。
【0016】
有利な実施形態では、監視ユニットは、前記耐火物構成要素識別データと関連付けられた耐火物製造データを前記耐火物状態データベースに保存するように構成され、前記耐火物製造データは、以下のデータ:
・耐火物材料;
・耐火物製造工程パラメータ、例えば様々な製造ステップの温度、圧力、持続時間;
・耐火物製造日、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
有利な実施形態では、監視ユニットは、前記冶金容器の識別データと関連付けられた金属工程データを、前記耐火物状態データベースに保存するように構成されており、前記金属製造データは、以下のデータ:
・前記冶金容器において鋳造される金属の種類および金属グレード;
・冶金容器において使用される異なる耐火物の種類;
・冶金容器のダウンタイムの頻度および/または持続時間;
・金属製造工程の最終製造物の特徴;
・鋳造時間;
・鋳造温度;
・熱化学;
・新しい耐火物構成要素の設置日/時;
・同一耐火物構成要素を用いた鋳造の回数、
のうち少なくとも1つを含む。
【0018】
有利な実施形態では、本発明によるシステムは、計算ユニットを具備しており、前記計算ユニットは、状態データ用の機械学習予測モデルの係数を計算するように構成され、
i. 前記耐火物状態データベースのデータに基づいて複数の訓練インスタンスを生成して、各訓練インスタンスに:
1. 耐火物製造データから抽出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、および/または、金属製造データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて入力された訓練インスタンスと;
2. 状態データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて出力された訓練インスタンスと、が含まれるように;
ii. 訓練インスタンスに基づいて機械学習予測モデルを訓練するように、
前記計算ユニットが構成される。
【0019】
有利な実施形態では、耐火物状態ツールは、取鍋などの冶金容器のスライドゲート弁に結合されたスライドゲート弁プレートの状態データを測定するプレート状態ツールであり、前記スライドゲート弁が、前記スライドゲート弁の外壁から突出したコレクタノズルを具備し、前記スライドゲート弁は、少なくとも2つのスライドゲート弁プレートを互いに摺動させることにより、開放構成と閉鎖構成とを切り替えることができ、前記コレクタノズルは、前記スライドゲート弁が開放構成にある場合に、前記冶金容器の鋳造流路と流体連通しており、前記プレート状態ツールは:
・コレクタノズルを少なくとも部分的に閉塞する閉塞器を具備する本体と;
・目標圧力で閉塞器を通じてコレクタノズルにガスを注入する圧力調整器を具備するガス注入装置と;
・ガス注入装置によって注入されたガスの流れを測定するガス流量測定装置と;
・ガス流量測定装置に通信可能に接続されてスライドゲート弁プレートの相対位置に関する入力データを受信するように構成されるコントローラと、
を具備する。
【0020】
有利な実施形態では、コントローラは、目標圧力に到達するのに必要なガス流量(GF)と、時間変数の関数としてのスライドゲート弁プレートの相対位置(RP)とを、前記コントローラのメモリに保存するように構成される。
【0021】
有利な実施形態では、コントローラは、前記関数の微分を計算することによって第1の指標を取り出し、前記関数の積分を計算することによって第2の指標を取り出すようにしてガス流量(GF)関数を処理するように、構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のこれらおよびさらなる態様は、例として、かつ添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1a】
図1a)および1b)は、本発明によるシステムの第1および第2の実施形態をそれぞれ示す。
【
図1b】
図1a)および1b)は、本発明によるシステムの第1および第2の実施形態をそれぞれ示す。
【
図2a】
図2a)および
図2b)は、
図1a)および
図1b)の実施形態における監視ユニットと他の構成成分との間の相互作用を表す。
【
図2b】
図2a)および
図2b)は、
図1a)および
図1b)の実施形態における監視ユニットと他の構成成分との間の相互作用を表す。
【
図3】
図3は、監視ユニットによって耐火物状態データベースがどのように更新できるかの例を示す。
【
図4a】
図4は、冶金容器の(a)2プレート式および(b)3プレート式のスライドゲート弁を示す。
【
図4b】
図4は、冶金容器の(a)2プレート式および(b)3プレート式のスライドゲート弁を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるシステムで使用するプレート状態ツールの一例の主要構成成分を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明によるシステムのプレート状態ツールを結合させたスライドゲート弁を具備する取鍋の最下部の透視図を示す。
【
図7a】
図7は、本発明によるシステムのプレート状態ツールによって監視されるパラメータのグラフを示す。
【
図7b】
図7は、本発明によるシステムのプレート状態ツールによって監視されるパラメータのグラフを示す。 なお、これらの図は縮尺を合わせて描かれてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1(a)は、本発明によるシステムの第1の実施形態を表している。取鍋1は、作業場に横倒しにして横たわっており、この作業場で取鍋が、摩耗した構成要素に関して、そして改修に関して、チェックされる。
【0024】
本発明の1つの本質的な特徴によれば、取鍋1は、冶金容器の集合体に属していて各冶金物が識別可能であり、このことは、この集合体のすべての冶金容器が他の容器から区別できることを意味する。
図1(a)に例示される実施形態では、取鍋1には、例えば人間の操作者11によって識別できるように、一意的な識別番号N°###がその外壁に付いている。あるいは、冶金物には、RFIDタグや、バーコード、例えばQRコードを付けることもできる。
【0025】
本発明の別の本質的な特徴によれば、取鍋1は、取り外し可能な耐火物構成要素、例えばスライドゲート弁プレート1pを具備する。スライドゲート弁プレート1pは、それらが操作される際の機械的および熱的な制約に起因して、短い時間間隔で交換する必要がある。それゆえ、スライドゲート弁プレート1pは、可逆的な機械的結合により、取鍋1のスライドゲート弁に有利に搭載される。スライドゲート弁プレート1pは例えば、スライドゲート弁の揺動体の中にクランプすることができて、人間またはロボットの操作者が随時交換できるようになっている。また、スライドゲートの他の耐火物構成要素、例えばコレクタノズルまたは内部ノズルも、必要な時に交換することができる。
【0026】
図1(a)では、人間の操作者11が、積み重ねられた交換用耐火物構成要素1rのとなりに立っている。各交換用耐火物構成要素1rには、機械読み取り可能なタグ(図示せず)、例えばRFIDタグまたはバーコードが付いている。人間の操作者11は、読み取りステーション2と対話し、この読み取りステーション2は、その読み取りゾーン21に配置された交換用耐火物構成要素1dの機械読み取り可能な識別タグを読み取るように構成される。また、本発明によるシステムは、冶金容器1の耐火物構成要素、例えばスライドゲート弁プレート1pの状態を評価する耐火物状態ツール3を具備する。耐火物状態ツール3は有利には、物理的パラメータを測定するように構成されており、これらのパラメータは、そこから耐火物構成要素1pの摩耗状態を推測することができるものである。具体的には、耐火物状態ツール3は、交換しなければならない程度にまで過度の摩耗状態に耐火物構成要素がなるのが何時なのかを検出することができなければならない。日本国特許第JP2008221271号には、例えば、冶金容器のスライドゲート弁プレートの摩耗状態を評価するそうした耐火物状態ツール3が開示されている。耐火物状態ツールのさらなる例を、本文献でさらに提示する。
【0027】
本発明の別の本質的な特徴によれば、システムは、監視ユニット4を具備する。監視ユニット4は、読み取りステーション2と、耐火物状態ツール3とに接続可能である。監視ユニット4は、冶金容器1に結合された少なくとも1つの耐火物構成要素の状態データを耐火物状態ツール3から受信するように構成される。受信の後、状態データは、冶金容器1の識別データと関連付けられて耐火物状態データベースに監視ユニット4によって保存される。また、監視ユニット4は、前記状態データに基づいて、耐火物構成要素1pを交換しなければならないかどうかを確定し、適宜、GOまたはNO GOの決定を出すように構成される。監視ユニット4は、少なくとも1つのプロセッサと、好ましくはメモリとを具備する。そうしたプロセッサは、本発明によるシステムの他の構成成分、例えば読み取りステーション2および耐火物状態ツール3と間近に接して、冶金施設の作業場に位置させることができる。次いで耐火物状態ツール3は有利には、
図1a)に表されるとおりの有線接続を用いて、または
図1b)に表されるとおりの無線接続(アンテナ「c」)を用いて、監視ユニット4に通信可能に接続される。
【0028】
あるいは、監視ユニット4は、遠隔に位置させることができ、TCP/IPなどの通信プロトコルのおかげで、計算機ネットワークを通じて本発明によるシステムの他の構成成分と、有線接続または無線接続により通信することができる。また、この監視ユニットは、複数のプロセッサを具備することができ、これらのプロセッサの少なくとも一部は、システムの他の構成成分、例えば読み取りステーション2または耐火物状態ツール3に組み込まれる。耐火物状態データベースは、監視ユニット4のメモリに保存することができる。あるいは、耐火物状態データベースは、リモートサーバ上で提供される、そして様々な冶金施設から状態データを収集する、中央データベースとすることができる。
【0029】
図1(a)の実施形態では、耐火物状態ツール3および交換用耐火物構成要素1rは、人間の操作者11によって操作される。この実施形態では、人間の操作者11は、読み取りステーション2の読み取りゾーン21に交換用耐火物構成要素1rを配置する役割を負う。冶金容器1から消耗した耐火物構成要素1pを取り出すことと、監視ユニット4からの「中止」の決定の場合に冶金容器1に交換用耐火物構成要素を結合することも、人間の操作者11によって手作業で実行される。したがってこの実施形態では、監視ユニット4は有利には、本発明によるシステムと人間の操作者11との間の対話を管理するヒューマン・マシン・インタフェース41(HMI)を具備する。そして、HMI41は有利には、耐火物構成要素1pを交換しなければならないかどうかを、例えばメッセージを画面上に表示することによって、人間の操作者11に通知するように構成される。HMI41は有利には、
図1a)に表されるとおり、有線接続で監視ユニット4と通信可能に接続される。あるいは、HMI41は、監視ユニット4と無線接続することができる。さらに別の実施形態では、HMI41は、それらが少なくとも1つの共通の電子プロセッサを共有するようにして、監視ユニット4に一体化することができる。
【0030】
上で説明したとおり、冶金容器1の識別データは、金属鋳造施設における他の冶金容器からそうした冶金容器1を区別することを可能にする、冶金容器1に関連するデータである。
図1a)に表されるとおり、それらは、冶金容器1の外壁上の一意的な識別番号N°###に対応させることができる。この実施形態では、HMI41は、操作者11から、現在作業場にある冶金容器1の識別番号N°###を受信するように構成することができる。あるいは、冶金容器1には、
図1b)に示されるとおり、機械読み取り可能なタグ、例えばRFIDタグを付けることができる(アンテナ「a」)。この実施形態では、監視ユニット4は、冶金容器1が監視ユニット4の検出ゾーン42に位置する場合、その識別データを得るために冶金容器1のRFIDタグを読み取るように構成される。本文をとおして、一意的な識別番号または機械読み取り可能なタグは、冶金容器1からの取り外し可能な部分、例えばスライドゲート弁1v上に位置することができることに留意することが重要であるが、ただしその条件は、そうした取り外し可能な部分が、冶金容器1上で、耐火物構成要素1pの寿命よりも少なくとも一桁大きい寿命を有していることである。そして、そうした取り外し可能な部分の識別番号は、本発明によるシステムを実装する場合に冶金容器識別データとみなすことができる。
【0031】
監視ユニット4が、耐火物構成要素1pを交換しなければならないことを確定させた場合、換言すれば、「中止」の決定を出した場合には、監視ユニット4は次いで、読み取りステーション2から受信された耐火物構成要素識別データが、少なくとも1つの耐火物構成要素1pから交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを確認することになる。そして、監視ユニット4は、耐火物状態データベースにおいて、そのような耐火物構成要素識別データを冶金容器1の識別データと関連付けるように構成される。
【0032】
本発明はまた:
i. 識別可能な冶金容器1に結合された耐火物構成要素1pの状態データを耐火物状態ツール3から受信するステップと;
ii. 冶金容器1の識別データを受信するステップと;
iii. 前記状態データを前記冶金容器1の識別データと関連付けて、耐火物状態データベースに保存するステップと;
iv. 前記状態データに基づいて、耐火物構成要素1pを交換しなければならないかどうか(GO OR NO GO)を決定するステップと、を含む、監視ユニット4の少なくとも1つのプロセッサによって実装される方法であって、耐火物構成要素1pを交換しなければならない場合(「中止」)には、監視ユニット4を:
a. 読み取りステーション2から受信された耐火物構成要素識別データが、前記少なくとも1つの耐火物構成要素1pに対して交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを確認するステップと;
b. 耐火物状態データベースにおいて、前記耐火物構成要素識別データを前記冶金容器1の識別データと関連付けるステップと、を実現するように構成する、方法に関する。
【0033】
上述の方法は有利には、複数の識別可能な冶金容器1に対して実行され、規則的な時間ステップで繰り返される。
【0034】
人間の操作者が、交換用耐火物構成要素1rを操作して様々な冶金容器に結合させる役割を負っている場合には、読み取りステーション2から受信された耐火物構成要素識別データが、耐火物構成要素1pから交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応することを確認するには、人間の操作者11からの入力が要求されることになる。
【0035】
HMI41は有利には、耐火物構成要素1pを交換しなければならない場合に、読み取りステーション2から受信された耐火物構成要素識別データが、消耗した耐火物構成要素1pから交換される交換用耐火物構成要素の識別データに対応していることを、人間の操作者11が認めるよう要求するように構成される。一実施形態では、HMI41は、要求を出すように構成することができ、その要求は、耐火物構成要素1pを交換しなければならない場合に、人間の操作者11が、消耗した耐火物構成要素1pの代わりに自分が冶金容器1に結合しようとしている耐火物構成要素に、読み取りステーション2の読み取りゾーン21に現在配置されている交換用耐火物構成要素1dが対応していることを認めるようにさせるものである。人間の操作者11には例えば、キーボード上のボタンを押すように要求して、読み取りゾーン21内の交換用耐火物構成要素1dから読み取りステーション2によってちょうど受信された耐火物構成要素識別データが、人間の操作者によって冶金容器1に結合されることになる耐火物構成要素の識別データに対応することを確認させることができる。
【0036】
別の実施形態では、冶金容器がRFIDタグを有し、監視ユニット4がそのようなRFIDタグから冶金容器識別データを取り出すように構成される場合には、監視ユニット4は、読み取りステーション2の読み取りゾーン21に配置された交換用耐火物構成要素1dの耐火物構成要素識別データを、監視ユニット4のRFID検出ゾーン42に位置する冶金容器1の識別データと、耐火物状態データベースにおいてデフォルトで関連付けるように構成することができる。この構成では、人間の操作者11は、冶金容器1に対して監視ユニット4から「中止」の決定が出された後にのみ、交換用耐火物構成要素1dを配置するように訓練されることになる。この実施形態では、読み取りステーション2の読み取りゾーン21に交換用耐火物構成要素1dを配置することは実際、耐火物構成要素1dが冶金容器1の耐火物構成要素1pから交換されているところであることを操作者によって確認されたものと、監視ユニット4にみなされる。しかしながら、HMI41は有利には、人間の操作者11がデフォルトでの関連付けを修正できるようにして構成される。これにより、現在作業場にある冶金容器1に対して監視ユニット4が最終的に「決行」の決定を出す一方で、人間の操作者11が交換用耐火物1dを読み取りゾーン21に不注意に配置した場合には、デフォルトでの関連付けを修正することができる。
【0037】
図1b)は、自動化された構成で動作するようにシステムが構成される、本発明の一実施形態を示しており、その動作は、人間の介入が制限されている場合、または人間の操作者11がいない場合であってもなされる。この場合、監視ユニット4は、ロボットシステム5を操作することができる。そうしたロボットシステム5は有利には、
図1a)の実施形態において操作者11が管理しなければならない操作のうちの1つまたは複数を実行するように構成されており、これらの操作には:交換用耐火物構成要素1rを操作すること、交換用耐火物構成要素1rを読み取りステーション2の読み取りゾーン21に配置すること、消耗した耐火物構成要素1pを冶金容器1から除去すること、交換用耐火物構成要素1rを冶金容器1に結合すること、耐火物状態ツール3を冶金容器1に結合および結合解除することが含まれる。
【0038】
図2a)および2b)に、監視ユニット4と
図1a)および1b)の実施形態における他の構成成分との間の相互作用をまとめる。これらの図では、「RC Db」は「耐火物状態データベース」を意味する。
図1b)および2b)に例示されるとおり、本発明によるシステムの全自動化された構成の場合には、異なる冶金容器は有利には、機械読み取り可能なタグ(アンテナ「a」)が付いており、冶金容器1が静的な検出ゾーン42である場合に、機械読み取り可能なタグに含まれる冶金容器1の識別データを監視ユニット4によって読み取ることができるようにしてある。あるいは、ロボットシステム5に一体化された適切な読み取りシステム、例えばマシン・ビジョン・システムまたはRFID読み取りステーションによって、冶金容器1の機械読み取り可能なタグを読み取るように、ロボットシステム5を構成することができる。
【0039】
図3は、識別データがL1234である取鍋について、耐火物状態データベースを監視ユニット4がどのように更新することができるかの例示を示す。耐火物状態ツール3による異なる瞬間の連続した耐火物状態試験RCT1~9は
、状態データを生成し、監視ユニット4から「決行」または「中止」のいずれかの決定を下す。初期状態では、識別データR111を有する耐火物構成要素が取鍋L1234に結合されている。表示のとおり、2つの第1の耐火物状態試験RCT1、RCT2は、耐火物構成要素R111が過度の摩耗の兆候を示さないことを反映しているので、「決行」の決定となる。一方、第3の耐火物試験RCT3は、「中止」の決定となる。この「中止」の決定は、耐火物構成要素R111を交換して、読み取りステーション2から監視ユニット4によってその識別情報を取得された交換用耐火物構成要素R344にするきっかけとなる。そして、監視ユニット4は、耐火物状態試験RCT7まで、その後の耐火物状態試験RCT4~7をこの新しい耐火物構成要素R344に関連付け、試験RCT7では、「中止」の決定が出されるので耐火物構成要素R344を交換しなければならないことが確定する。同じ更新処理を、監視ユニット4により、冶金施設の異なる冶金容器1に対して適用することができる。また、耐火物状態データベースは、本発明によるシステムをそれぞれ具備する様々な冶金施設か
ら状態データを収集することができる。
【0040】
少なくとも1つの監視ユニット4によって更新される耐火物状態データベースは結果的に、1つまたは複数の冶金施設で使用中の耐火物構成要素を追跡すること、そしてそれらのすべてを、連続する時間ステップで測定されたそれらの状態データに結び付けることを可能にする。本発明によるシステムでは、耐火物構成要素に付けられた識別タグにアクセスできなくとも、またはいったんそれらのタグが冶金容器内で操作されてそれらが破壊されていても、そうした貴重なデータベースを構築することができる。
【0041】
この耐火物状態データベースは、冶金施設内の様々な耐火物構成要素を個別に追跡することを可能にし、例えば、金属鋳造施設のサプライチェーン管理アプリケーションに一体化することができるが、このデータベースは、冶金施設内の耐火物構成要素1p、1rの挙動の計算モデルを生成するのにも使用することができる。この目的のために、耐火物製造データ、例えば耐火物材料またはいくつかの耐火物製造工程パラメータ、例えば様々な耐火物製造ステップの温度、圧力、および持続時間を、有利には監視ユニット4によって、対応する耐火物構成要素の識別データと関連付けて、耐火物状態データベースに保存することができる。そのような耐火物製造データは、例えば、耐火物構成要素に関連付けられた耐火物構成要素識別データ、ならびに/または、バッチ番号および/もしくは製造時間のおかげで、耐火物製造データベースから取り出すことができる。
【0042】
金属製造データもまた、有利には監視ユニット4によって、耐火物状態データベースに保存することができる。そのような金属製造データは、対応する冶金容器1の識別データと関連付けることができ、有利には、以下のデータ:冶金容器1において鋳造される金属の種類、冶金容器1において使用される異なる耐火物の種類、冶金容器のダウンタイムの頻度および/または持続時間、金属製造工程の最終製造物の特徴、のうちの少なくとも1つを含む。監視されることになる耐火物構成要素1pがスライドゲート弁プレートである場合、金属製造データは有利には、摩耗状態にあるプレートの使用時間も含む。この目的には、スライドゲート弁プレートの全閉の時間および全開の時間は、全鋳造時間から推測することができるが、これは、これら2つの位置ではプレートがほとんどまたは全く摩耗しないからである。あるいは、冶金容器1のスライドゲート弁プレートによってなされる相対移動の回数に関連するデータも、対応する冶金容器1の識別データと関連付けて保存することができる。
【0043】
有利な実施形態では、本発明によるシステムは、状態データ用の機械学習予測モデル、例えば(ディープ)ニューラルネットワークモデルまたは確率的グラフィカルモデルを訓練するように構成される計算ユニットを具備し、前記計算ユニットは、
i. 前記耐火物状態データベースのデータに基づいて、複数の訓練インスタンスを生成し:
・前記耐火物製造データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて、および/または前記金属製造データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて入力された訓練インスタンスと;
・状態データから取り出された少なくとも1つのパラメータに基づいて出力された訓練インスタンスと、を各訓練インスタンスが具備するように;
ii. 訓練インスタンスに基づいて機械学習予測モデルを訓練するように、構成される。
【0044】
既に上で説明したとおり、耐火物構成要素1r、1pは、スライドゲート弁プレートとすることができる。そのようなスライドゲート弁プレート1r、1pは、冶金容器のスライドゲート弁1vにおける本質的な部分である。スライドゲート弁は、2プレート式または3プレート式のスライドゲート弁とすることができる。
図4a)に例示のとおり、2プレート式のスライドゲート弁は、最上部スライドゲート弁プレート1uと最下部スライドゲート弁プレート1Lとを具備し、
図2(b)に例示のとおり、3プレート式のスライドゲートは、最上部および最下部スライドゲート弁プレート1u、1Lに挟まれた中間部スライドゲート弁プレート1mをさらに具備する。
【0045】
スライドゲート弁プレートは、摺動面1sを具備し、この面は、スライドゲート弁プレートの厚さによって第2の面1dから分離されており、周縁部によって互いに接合されている。また、スライドゲート弁プレートは、摺動面に垂直に延びる貫通孔1bを具備する。中間部スライドゲート弁プレート1mの第2の面1dも摺動面である。最上部、最下部、および随意に中間部スライドゲート弁プレートはそれぞれ、対応する最上部、最下部、および随意に中間部プレート支持フレーム11t、11L、11mの受け揺動体1cに結合され、1つのプレートの少なくとも1つの摺動面1sは、第2のプレートの摺動面1sと摺動接触している。
【0046】
最上部プレート支持フレーム11uは、冶金容器に対して固定されており、最上部スライドゲート弁プレート1uは概して、冶金容器の内部ノズルに結合されている。2プレート式スライドゲート弁では(
図4(a)参照)、最下部プレート支持フレーム11Lは、空気圧式または液圧式のピストン17によって並進駆動可能な可動往復台であり、最下部スライドゲート弁プレートの摺動面が最上部スライドゲート弁プレートの摺動面に対して接触して相対的に摺動するようにしてある。3プレート式スライドゲート弁では、最下部プレート支持フレーム11Lは、最上部プレート支持フレームおよび冶金容器に対して固定されている。中間部プレート支持フレーム11mは、中間部スライドゲート弁プレートの2つの摺動面を、最上部スライドゲート弁プレートおよび最下部スライドゲート弁プレートの摺動面に対してそれぞれ摺動させるのに適した可動往復台である。当技術分野で周知のとおり、最上部スライドゲート弁プレートの、そして随意に3プレート式スライドゲート弁における最下部スライドゲート弁プレートの摺動面に対する、スライドゲート弁プレートの摺動面の摺動並進により、2つ(または3つ)のプレートの貫通孔2bの間の重なりのレベルを制御することが可能になる。
【0047】
上で説明したとおり、スライドゲート弁プレートは、それらが操作される機械的および熱的な制約に起因して、短い時間間隔で交換する必要がある。具体的には、摺動面1sが浸食される可能性、および/または数回の鋳造作業の後に貫通孔1bが拡大する可能性ある。スライドゲート弁プレートを交換する必要があるかどうかを決定するには、その摩耗状態を事前に評価する必要がある。本発明では、耐火物状態ツール3は、プレート状態ツールとすることができ、このプレート状態ツールは、プレート状態試験を実施することによって、プレートが冶金容器1のスライドゲート弁にまだ結合されている間にスライドゲート弁プレートの摩耗状態を評価するものである。
【0048】
図5に例示されるとおり、本発明によるプレート状態ツール3は、冶金容器1内のスライドゲート弁1vのコレクタノズル1nを少なくとも部分的に閉塞する閉塞器9を具備する本体44を有する。閉塞器9の機能は、コレクタノズル1nから流出しようとするガスの変位に対する、不正確には「背圧」と呼ばれることもある抵抗に対抗することである。閉塞器9は、アクチュエータによってコレクタノズル1nに押圧される封止材を保持する封止材ホルダを具備することができる。別の実施形態では、閉塞器は、コレクタノズル1nのねじ部にねじ止めされたキャップを具備することができる。さらに別の実施形態では、閉塞器は、例えばセメントによってコレクタノズル1nに化学的に封止されたキャップを具備することができる。好ましい実施形態では、閉塞器は、コレクタノズル1nを完璧に気密に閉鎖するように構成される。しかし、完璧な気密閉鎖は、本発明によるプレート状態ツールを用いたプレート状態試験の実施に本質的ではない。プレート状態ツール3は実際、例えば、閉塞器9によって気密に封止されなくなった損傷したコレクタノズル1nとともに使用することさえできる。
【0049】
本発明の1つの本質的な特徴は、閉塞器9を通じてコレクタノズル1nにガスを目標圧力で注入する圧力調整器6を具備するガス注入装置である。圧力調整器は、入力圧力でガスを受け取って、そうした入力圧力を、所望の値である目標圧力にまで、その出力のところで下げるように構成される制御弁である。本発明では、圧力調整器6は例えば、高圧空気供給装置から6バールの圧力の圧縮空気を受け取り、その入力と出力の間でガス流量を調整して、1.5バールの目標圧力をその出力で維持するように構成される、電子式比例圧力調整器とすることができる。ガス注入装置は有利には、供給ダクトによって閉塞器9の貫通孔にガスを注入するように構成される。
【0050】
本発明の別の本質的な特徴は、ガス注入装置によってコレクタノズル1n内に噴射されたガス流量を測定するように構成されるガス流量測定装置7、すなわち流量計7の存在である。
図5に例示されるとおり、そのようなガス流量測定装置7は有利には、圧力調整器6と閉塞器9との間に挟装されており、圧力調整器6の出力から来るガスが、コレクタノズル1nに入る前にガス流量測定装置7を通って流れるようにしてある。
【0051】
本発明の第3の本質的な特徴は、ガス流量測定装置7に通信可能に接続される、そしてスライドゲート弁プレートの相対位置に関連する入力データを受信するように構成される、コントローラ8である。そうしたコントローラは有利には、電子式コントローラ、例えばPLCであり、連続する時間ステップにおける(i)ガス流量の、そして(ii)スライドゲート弁プレートの相対位置の値を、前記コントローラのメモリに保存するように構成される。有利な実施形態では、コントローラ8は、圧力調整器6に通信可能に接続される。そして、コントローラ8は、圧力調整器6によって調整された圧力と、流量計7によって測定されたガス流量と、スライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対位置とを監視する中央ユニットである。有利な実施形態では、コントローラ8は、空気圧式または液圧式のピストン17を作動させることによって、スライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対的な摺動運動を制御するようにさらに構成される。この構成では、コントローラ8は、完全なプレート状態試験を実施するのに必要なスライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対的な摺動運動を自ら開始することができるようになる。有利な実施形態では、コントローラ8は、スライドゲート弁1vが、閉鎖構成から開放構成に移動している間にプレート状態試験を実施するように構成される。
【0052】
コントローラ8は、ガス流量測定データおよびスライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対位置データを処理することによって、スライドゲート弁プレート1u、1L、1mの摩耗状態に関連する指標を評価することができるようになる。スライドゲート弁プレートの相対的な変位の間に流量計7によって測定されるガス流量は実際、スライドゲート弁1vを通って流れるガスの量と強く相関している。上ですでに説明したように、スライドゲート弁プレートが完璧な状態(摩耗なし)では、摺動弁プレート1u、1L、1mの貫通孔1bの間に少なくとも部分的な重なりがある場合にのみ、スライドゲート弁を通じて流体が流れることができる。完璧な状態のスライドゲート弁プレートの貫通孔1bは、既知の直径を有しているので、ガス流量のプロファイルは、スライドゲート弁プレートの既知の相対位置で鋭い変化のある形状を有している。ガス流量のそうした鋭い変化は実際、貫通孔1bが開始する位置や停止する位置で観察され、これは、スライドゲート弁1vが最初、閉じたゲート構成であったか(鋭い増加)、または開いたゲート構成であったか(鋭い減少)による。
【0053】
ガス流量のそのような鋭い変化が、
図7a)に示されており、この図は、スライドゲート弁プレートの相対位置RPが、閉じたゲート構成から開放構成に変更された場合の、時間変数に対するガス流量のグラフGFを示す。最初のピークS1は、コレクタノズル1n内の圧力を上昇させるのに必要なガス流量に対応する。ガス流量の鋭い増加S2は、貫通孔2bが重なり始めるところのスライドゲート弁1vの相対位置に対応する。グラフNPは、圧力調整器6によって監視されるガス圧力を示しており、この圧力は、最初のガス流量ピークS1の後に、目標値である1.5バールに達する。
【0054】
図7b)は、
図7a)と同一のグラフを示しているが、今度は、摩耗したプレートについてのものである。摩耗したプレートは、浸食された摺動面1sおよび/または拡大された貫通孔1bを特徴とする。浸食された表面1sの場合、ガス流量の鋭い増加S2に先だって、貫通孔1bが重なり始める前に流体連通する場合に発生する漏れを反映した穏やかな増加M1がある。また、摩耗したプレートが、拡大した貫通孔1bを有する場合には、鋭い増加S2が左にシフトするのが観察される可能性もある。プレート状態ツール3はそのコントローラ8とともに、GFグラフのこのような変移の検出と定量化を可能にすることになる。
【0055】
一実施形態では、コントローラ8は、ガス流量のグラフGFの下の面積、換言すると、時間変数に対するガス流量の積分を計算することによって、摺動面1sの腐食に起因する漏れを定量化するように構成することができる。腐食に起因する漏れに関連する意味のある物理的指標を生成するために、そうした積分は有利には、試験中に移動するスライドゲート弁プレートの摺動速度を用いて、大局的に捉えられる、例えば正規化される。一方、プレートの貫通孔1bの拡大は、鋭い増加S2のシフトを評価することによって定量化することができる。一実施形態では、鋭い増加S2の位置は、ガス流量のグラフGFの微分を計算し、この微分の極大値を探すことによって、見つけることができる。そして、グラフRPを用いることによって、スライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対位置を、この鋭い増加S2に関連付けることができる。
【0056】
スライドゲート弁プレート1u、1L、1mの相対位置のグラフRPを生成し、上記の物理的指標を取り出すためには、コントローラ8は、前記相対位置に関連する電子信号を受信しなければならない。一実施形態では、そうした電子信号は、移動するスライドゲート弁プレート1L、1mの変位を測定するように構成される距離計によって提供することができる。あるいは、そうした電子信号は、スライドゲート弁11の可動往復台11L、11mを作動させる空気圧式または液圧式のピストン17の制御システムから直接得ることができる。しかしながらこの実装は、移動するスライドゲート弁プレート1L、1mの位置を制御システムが十分な精度で決定できる場合にのみ、有利である。