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特許7553492電子錠、電子錠システム及び音波発信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】電子錠、電子錠システム及び音波発信方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20240910BHJP
   G07C 9/28 20200101ALI20240910BHJP
   G07C 9/29 20200101ALI20240910BHJP
【FI】
E05B49/00 K
E05B49/00 N
G07C9/28
G07C9/29
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022000722
(22)【出願日】2022-01-05
(65)【公開番号】P2023100207
(43)【公開日】2023-07-18
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518135412
【氏名又は名称】株式会社リクルート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 健翁
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120016(JP,A)
【文献】特開2018-148276(JP,A)
【文献】特開2019-35258(JP,A)
【文献】特開2008-228184(JP,A)
【文献】特開2010-50940(JP,A)
【文献】特開2008-163713(JP,A)
【文献】特開2019-176210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
G07C 1/00-15/00
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定する設定部と、
操作命令を受信した場合に、前記設定部により設定された周波数及び音圧に対応する音波を発信する音波発信部と、
を備え、
前記設定部は、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値よりも所定数大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線により特定される周波数及び音圧を、前記外部に発信する音波の周波数及び音圧として設定する、
電子錠。
【請求項2】
前記設定部により設定される前記外部に発信する音波の周波数及び音圧は、前記音波発信部により音波が発信されているときに、電子錠と同一の空間において電子錠から所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が前記基準上限値以上となる周波数及び音圧であり、かつ、前記電子錠と同一の空間の外側の空間において電子錠から前記所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が前記基準上限値未満となる周波数及び音圧である、
請求項1記載の電子錠。
【請求項3】
前記所定距離は、電子錠を遠隔操作可能な範囲内であり、かつ、前記電子錠と同一の空間において前記音波発信部により発信される音波の音圧を測定可能な範囲内である、
請求項2記載の電子錠。
【請求項4】
前記所定数大きな音圧は、前記基準上限値の環境騒音が発生しているときでも、前記外部に発信する音波を認識することができる音圧である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子錠。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子錠と、端末装置と、を備える電子錠システムであって、
前記端末装置が、
ユーザの操作指示に従って前記操作命令を送信する送信部と、
前記操作命令に対応して前記電子錠から発信される音波を受信する受信部と、
受信された音波の音圧を測定する測定部と、
測定された音圧が前記基準上限値以上である場合に、前記電子錠と同一の空間に存在すると判定する一方、測定された音圧が前記基準上限値未満である場合に、前記電子錠と異なる空間に存在すると判定する判定部と、
を備える、
電子錠システム。
【請求項6】
電子錠により実行される方法であって、
外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定するステップと、
操作命令を受信した場合に、前記設定された周波数及び音圧に対応する音波を発信するステップと、
を含み、
前記設定するステップは、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値よりも所定数大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線により特定される周波数及び音圧を、前記外部に発信する音波の周波数及び音圧として設定する、
音波発信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子錠、電子錠システム及び音波発信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、公共エリアからセキュリティエリアへの入室を規制する入退室管理システムが開示されている。このシステムでは、扉の公共エリア側に設置された認証装置が、扉の前で立ち止まった利用者の携帯端末に対し、利用者の認証を開始するための判定音を出力する。判定音を集音した携帯端末は、判定音の音圧レベルが閾値以上である場合に、認証要求信号を認証装置に送信し、認証装置で正当な利用者であることが認証されると、扉の電子錠が開錠され、入室が許可される。このシステムでは、判定音が扉を通過すると音圧レベルが低くなることを利用し、セキュリティエリアに既に入室している利用者の携帯端末から認証要求信号が送信されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-120017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の入退室管理システムは、特定の周波数を用いた合成音を判定音として出力している。しかしながら、公共エリアには様々なレベルの騒音が存在するため、騒音の影響を受けて判定音を判別できなくなるおそれがある。そのような事態を防ぐために、判定音の音圧を調整する必要があるが、騒音の大きさは場所ごとに異なるため、調整作業には労力を要する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、音圧を設定する際の労力を軽減することができる電子錠、電子錠システム及び音波発信方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である電子錠は、外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定する設定部と、操作命令を受信した場合に、前記設定部により設定された周波数及び音圧に対応する音波を発信する音波発信部と、を備え、前記設定部は、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値よりも所定数大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線により特定される周波数及び音圧を、前記外部に発信する音波の周波数及び音圧として設定する。
【0007】
上記設定部により設定される前記外部に発信する音波の周波数及び音圧は、前記音波発信部により音波が発信されているときに、電子錠と同一の空間において電子錠から所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が前記基準上限値以上となる周波数及び音圧であり、かつ、前記電子錠と同一の空間の外側の空間において電子錠から前記所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が前記基準上限値未満となる周波数及び音圧であってもよい。
【0008】
上記所定距離は、電子錠を遠隔操作可能な範囲内であり、かつ、前記電子錠と同一の空間において前記音波発信部により発信される音波の音圧を測定可能な範囲内であってもよい。
【0009】
上記所定数大きな音圧は、前記基準上限値の環境騒音が発生しているときでも、前記外部に発信する音波を認識することができる音圧であってもよい。
【0010】
本発明の他の態様である電子錠システムは、上記の電子錠と、端末装置と、を備える電子錠システムであって、前記端末装置が、ユーザの操作指示に従って前記操作命令を送信する送信部と、前記操作命令に対応して前記電子錠から発信される音波を受信する受信部と、受信された音波の音圧を測定する測定部と、測定された音圧が前記基準上限値以上である場合に、前記電子錠と同一の空間に存在すると判定する一方、測定された音圧が前記基準上限値未満である場合に、前記電子錠と異なる空間に存在すると判定する判定部と、を備える。
【0011】
本発明の他の態様である音波発信方法は、電子錠により実行される方法であって、外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定するステップと、操作命令を受信した場合に、前記設定された周波数及び音圧に対応する音波を発信するステップと、を含み、前記設定するステップは、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値よりも所定数大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線により特定される周波数及び音圧を、前記外部に発信する音波の周波数及び音圧として設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、音圧を設定する際の労力を軽減することができる電子錠、電子錠システム及び音波発信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る電子錠システムの構成を例示する模式図である。
図2図1に示す電子錠の構成を例示するブロック図である。
図3】等ラウドネス曲線を示す図である。
図4】環境省が定める騒音に係る環境基準を示す図である。
図5図1に示す端末装置の構成を例示するブロック図である。
図6】実施形態に係る電子錠の動作を例示するフローチャートである。
図7】実施形態に係る電子錠システムの動作を例示するシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0015】
図1は、実施形態に係る電子錠システムの一例を示す模式図である。同図に示すように、電子錠システム1は、例えば、ドア5の内側に取り付けられた電子錠2と、ユーザが操作する端末装置3a、3bとを備える。端末装置3a、3bは、屋外から電子錠2を操作することができるとともに、屋内から電子錠2を操作することもできる。以下において、端末装置3a、3bを特に区別して記載する必要がない場合には、端末装置3と称する。
【0016】
電子錠2及び端末装置3は、相互に無線通信することができる。端末装置3は、電子錠2を操作するためのアプリケーションがインストールされている。電子錠2は、端末装置3から送信される操作命令に従って施錠又は解錠する。
【0017】
図2に示すように、電子錠2は、例えば、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、出力部24と、錠前機構25とを備える。
【0018】
制御部21は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部22に記憶されているプログラム221を実行することにより、電子錠2の各種機能を実現する。
【0019】
記憶部22は、例えば半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。記憶部22には、例えば、電子錠2の各種機能を実現するためのプログラム221や、そのプログラム221で使われる各種のデータ等が格納される。各種のデータには、例えば、音波設定情報222が含まれる。音波設定情報222には、例えば、外部に発信する音波の周波数と外部に発信する音波の音圧とが含まれる。
【0020】
通信部23は、ネットワークに接続し、ネットワーク上の他の端末と通信するためのインタフェースである。通信は無線通信の他、有線通信に対応してもよい。
【0021】
出力部24は、例えば、スピーカやディスプレイであり、音波を出力することや、メッセージを音声出力又は表示する。
【0022】
錠前機構25は、錠前により構成され、制御部21からの指示に従って施錠又は解錠を行う機構である。
【0023】
なお、本実施形態では、電子錠2が錠前機構25を備える場合について説明するが、錠前機構25を備えずに、ドアに内蔵されている錠前の部分に後付けする電子錠にも本発明を適用することができる。この場合の電子錠は、錠前機構25の替りに、錠前を作動させるサムターンのつまみ部を回転させる機構を備えることとすればよい。
【0024】
電子錠2の各種機能には、例えば、設定部211及び音波発信部212が含まれる。各機能について以下に説明する。
【0025】
設定部211は、外部に発信する音波の周波数及び音圧を音波設定情報222に設定する。設定部211は、周波数及び音圧を設定する際に、等ラウドネス曲線により特定される周波数及び音圧を探索して設定する。等ラウドネス曲線は、等しい音の大きさであると感じる周波数と音圧とのマップを等高線として結んだものである。
【0026】
図3に、等ラウドネス曲線を示す。グラフの横軸が周波数[Hz]を示し、縦軸が音圧[dB]を示す。グラフに表される各等高線が、それぞれ等しい音の大きさ[phone]を結ぶ線として表されている。グラフに表される等高線は一例である。等高線は、1000[Hz]の時の音圧[dB]を基準にし、その基準となる音圧[dB]と同じ値の音の大きさ[phone]で聴こえる音圧を、周波数を変えながら結ぶことで表すことができる。
【0027】
例えば、1000[Hz]で20[dB]の音波を発した時に聴こえる音の大きさが20[phone]となり、20[phone]の等高線は、周波数を1000[Hz]以外に変更したときに20[phone]の大きさで聴こえる音圧[dB]を結んだ線となる。
【0028】
設定部211は、外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定する際に、等ラウドネス曲線の等高線のうちどの等高線を用いるのかを決定する。その際、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値を用い、その基準上限値よりも所定数大きな音圧(音の大きさ)に対応する等高線を選択することが好ましい。
【0029】
地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値は、例えば、環境省が定める「騒音に係る環境基準」により設定することができる。図4に、環境省が定める「騒音に係る環境基準」を示す。例えば、AA地域では、昼間の騒音に係る基準値が50デジベル以下となるため、AA地域における昼間の騒音の基準上限値を50デジベルと設定する。同様に、A及びB地域では、昼間の騒音に係る基準値が55デジベル以下となるため、A及びB地域における昼間の騒音の基準上限値を55デジベルと設定する。
【0030】
基準上限値よりも大きくする所定数として、例えば5デジベルを設定することができる。この所定数は、基準上限値の騒音が発生しているときでも、外部に発信する音波を認識できることを基準にして設定することが好ましい。
【0031】
具体的に、所定数が5デジベルであり、かつ、基準上限値が50デジベルであるAA地域の昼間に対応する周波数及び音圧を設定する場合に、設定部211は、55デジベルに対応する等高線を選択する。同様に、基準上限値が55デジベルであるA及びB地域の昼間に対応する周波数及び音圧を設定する場合に、設定部211は、60デジベルに対応する等高線を選択する。
【0032】
例示的に、A及びB地域の昼間に対応する周波数及び音圧を設定する場合に、設定部211は、図3に示す等高線のうち、60[phone]の等高線を用いて周波数及び音圧を設定する。
【0033】
設定部211は、60[phone]の等高線上に位置する周波数及び音圧を順次走査し、以下の(1)及び(2)の判定基準を両方とも満たす周波数及び音圧を探索する。周波数及び音圧を探索する際に、探索する周波数の範囲を、例えば15[Hz]から20[kHz]のように、範囲を絞ることとしてもよい。探索する周波数の範囲を、実用的な範囲に絞ることで探索する手間を削減することができる。
【0034】
(1)屋内側の判定基準:音波発信部212により音波が発信されているときに、電子錠2と同一の空間(屋内)において、電子錠2から所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が環境騒音の基準上限値以上となる周波数。所定距離として、例えば50[cm]を設定することができる。この所定距離は、電子錠2を遠隔操作できる範囲内、かつ、電子錠2と同一の空間において音波発信部212により発信される音波の音圧を測定できる範囲内に設定することが好ましい。
【0035】
(2)屋外側の判定基準:電子錠2と同一の空間の外側の空間(屋外)において、電子錠2から所定距離だけ離れた場所で測定される音圧が環境騒音の基準上限値未満となる周波数。所定距離は、上記(1)の所定距離と同じである。
【0036】
ここで、音はドア等を通過すると音圧レベルが低くなる特性があるため、電子錠2から同じ距離だけ離れた場所であってもドアの外側で測定される音圧はドアの内側で測定される音圧より小さくなる。
【0037】
設定部211は、上記(1)及び(2)の判定基準を両方とも満たす周波数が存在する場合に、その周波数及び音圧を、設定対象の周波数として選定し、音波設定情報222に設定する。
【0038】
設定部211は、上記(1)及び(2)の判定基準を両方とも満たす周波数が複数存在する場合には、それら複数の周波数において屋内で最も大きな音圧が測定された周波数を、設定対象の周波数として選定し、音波設定情報222に設定することが好ましい。これにより、屋内で測定される音圧をできる限り大きな音圧に設定することが可能となる。
【0039】
設定部211は、上記(1)及び(2)の判定基準を両方とも満たす周波数が存在しない場合には、探索エラーである旨を出力させることが好ましい。出力の態様として、例えば、探索エラーである旨のメッセージを他の端末に送信してもよいし、表示させてもよいし、音声で出力してもよい。
【0040】
図2に示す音波発信部212は、端末装置3から操作命令を受信した場合に、設定部211により設定された周波数及び音圧に対応する音波を発信させる。
【0041】
図1に示す端末装置3は、ユーザの操作指示に従って電子錠2に対する操作命令を送信する。操作命令には、例えば、電子錠2を施錠するための施錠命令や、電子錠2を解錠するための解錠命令が含まれる。端末装置3は、電子錠2を操作するための専用の端末であってもよいし、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、ノートPC等の無線通信可能な端末であってもよい。
【0042】
図5に示すように、端末装置3は、例えば、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、操作部34とを備える。
【0043】
制御部31は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部32に記憶されているプログラム321を実行することにより、端末装置3の各種機能を実現する。
【0044】
記憶部32は、例えば半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。記憶部32には、例えば、端末装置3の各種機能を実現するためのプログラム321や、そのプログラム321で使われる各種のデータ等が格納される。プログラム321には、例えば、電子錠2を操作するためのアプリケーションプログラムが含まれる。各種のデータには、例えば、音圧の基準上限値322が含まれる。音圧の基準上限値322は、上述した地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値であり、電子錠2が設置される地域に対応する騒音に係る基準値に基づいて設定される。
【0045】
通信部33は、ネットワークに接続し、ネットワーク上の他の端末と通信するためのインタフェースである。通信は無線通信の他、有線通信に対応してもよい。
【0046】
操作部34は、ユーザによる操作指示を受け付けるインタフェースであり、例えば、タッチパネルや操作キーである。
【0047】
端末装置3の各種機能には、例えば、送信部311、受信部312、測定部313及び判定部314が含まれる。各機能について以下に説明する。
【0048】
送信部311は、ユーザの操作指示に従って操作命令を送信する。操作命令は、電子錠2を操作するための命令であり、例えば施錠命令や解錠命令が含まれる。受信部312は、送信部311により送信された操作命令に対応して電子錠2から発信される音波を受信する。
【0049】
測定部313は、受信部312により受信される音波の音圧を測定する。判定部314は、測定部313により測定された音圧が基準上限値以上である場合に、電子錠2と同一の空間に存在すると判定する一方、測定された音圧が基準上限値未満である場合に、電子錠2と異なる空間に存在すると判定する。
【0050】
これにより、端末装置3を操作するユーザが、電子錠2と同一の空間に存在するのかどうかを判定することが可能となる。
【0051】
ここで、電子錠2と同一の空間とは、図1に例示するように、電子錠2を取り付けたドア5及び壁により形成される空間のうち、電子錠2側の空間である。他方、電子錠2と異なる空間とは、図1に例示するように、電子錠2を取り付けたドア5及び壁により形成される空間のうち、電子錠2が取り付けられていない側の空間である。
【0052】
なお、図1では、電子錠2と同一の空間として屋内を例示し、電子錠2と異なる空間として屋外を例示しているが、これに限定されない。例えば、室内と通路(例えば廊下)のように、双方の空間が同一の建物内に存在する空間であってもよい。
【0053】
次に、図面を参照して、実施形態に係る電子錠システム1の動作の一例について説明する。まず、図6を参照して、電子錠2が外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定する際の動作例について説明する。この動作では、図1に例示するように、電子錠2がドア5の内側となる屋内側に設置され、ドア5の外側が屋外となる場合について説明する。
【0054】
最初に、電子錠2の設定部211は、設定する周波数及び音圧を探索する際に用いる等ラウドネス曲線の等高線を決定する(ステップS101)。
【0055】
続いて、電子錠2の設定部211は、上記ステップS101で決定された等高線を用い、屋内と屋外の両方で判定基準を満たす周波数及び音圧を探索する(ステップS102)。
【0056】
続いて、電子錠2の設定部211は、屋内と屋外の両方で判定基準を満たす周波数及び音圧が複数組存在するか否かを判定する(ステップS103)。この判定がNOである場合(ステップS103;NO)に、電子錠2の設定部211は、判定基準を満たす周波数及び音圧を設定対象として選定し(ステップS104)、後述するステップS106に処理を移行する。
【0057】
なお、判定基準を満たす周波数及び音圧が存在しない場合には、探索エラーである旨を出力して本動作を終了することが好ましい。
【0058】
上記ステップS103で判定基準を満たす周波数及び音圧が複数組存在すると判定された場合(ステップS103;YES)に、電子錠2の設定部211は、それら複数の周波数において屋内で最も大きな音圧が測定された周波数及び音圧を、設定対象として選定する(ステップS105)。
【0059】
続いて、電子錠2の設定部211は、設定対象として選定された周波数及び音圧を用い、外部に発信する音波の周波数及び音圧を音波設定情報222に設定する(ステップS106)。そして、本動作を終了する。
【0060】
次に、図7を参照し、端末装置3が電子錠2と同一の空間に存在するかどうかを判定する際の動作例について説明する。
【0061】
最初に、端末装置3が、電子錠2に対する操作をユーザから受け付ける(ステップS201)と、端末装置3の送信部311は、操作命令を送信する(ステップS202)。
【0062】
続いて、電子錠2が、上記ステップS202で送信された操作命令を受信すると、電子錠2の音波発信部212は、音波設定情報222に設定されている周波数及び音圧に対応する音波を発信する(ステップS203)。
【0063】
続いて、端末装置3の測定部313は、受信部312により受信される音波の音圧を測定する(ステップS204)。
【0064】
続いて、端末装置3の判定部314は、上記ステップS204で測定された音圧が基準上限値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。この判定がYESである場合(ステップS205;YES)に、判定部314は、電子錠2と同一の空間に存在すると判定する(ステップS206)。そして、本動作を終了する。
【0065】
上記ステップS205で音圧が基準上限値以上ではないと判定された場合(ステップS205;NO)に、判定部314は、電子錠2と異なる空間に存在すると判定する(ステップS207)。そして、本動作を終了する。
【0066】
上述したように、実施形態に係る電子錠システム1によれば、電子錠2が、地域ごとに定められる環境騒音の基準上限値よりも所定数大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線により特定される周波数及び音圧を、外部に発信する音波の周波数及び音圧として設定することができ、操作命令を端末装置3から受信したときに、その設定した周波数及び音圧に対応する音波を発信することができる。
【0067】
したがって、電子錠2は、環境騒音の基準上限値よりも大きな音圧に対応する等ラウドネス曲線の等高線を用い、その等高線上にある周波数及び音圧を、外部に発信する音波の周波数及び音圧に設定し、その音波を発信することが可能となる。
【0068】
それゆえ、実施形態に係る電子錠2を含む電子錠システム1によれば、音圧を設定する際の労力を軽減することが可能となる。
【0069】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理(ステップ)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、又は並列に実行することができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、音波設定情報222として設定する音波の周波数及び音圧が一組である場合について説明したが、二組以上設定してもよい。例えば、昼間の時間帯と夜間の時間帯とでそれぞれ外部に発信する音波の周波数及び音圧を設定し、操作命令を受信したときの時刻に対応する周波数及び音圧による音波を電子錠2から発信することとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…電子錠システム、2…電子錠、3a、3b…端末装置、5…ドア、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、24…出力部、25…錠前機構、31…制御部、32…記憶部、33…通信部、34…操作部、211…設定部、212…音波発信部、221…プログラム、222…音波設定情報、311…送信部、312…受信部、313…測定部、314…判定部、321…プログラム、322…基準上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7