(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】眼科用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/737 20060101AFI20240910BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240910BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240910BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240910BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K31/737
A61K9/08
A61K31/704
A61K47/08
A61K47/18
A61K47/44
A61P27/02
A61P27/14
(21)【出願番号】P 2022045007
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2017154479の分割
【原出願日】2017-08-09
【審査請求日】2022-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016156439
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 敬太
(72)【発明者】
【氏名】林 紗衣子
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】池上 京子
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-249076(JP,A)
【文献】特開2014-166977(JP,A)
【文献】特開2005-298364(JP,A)
【文献】特開2014-166976(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190483(WO,A1)
【文献】特開2006-249076(JP,A)
【文献】特開2003-55221(JP,A)
【文献】特開2003-128583(JP,A)
【文献】特開2005-336153(JP,A)
【文献】特開2006-131627(JP,A)
【文献】特開2006-151968(JP,A)
【文献】特開2006-151969(JP,A)
【文献】特開2008-24700(JP,A)
【文献】特開2009-46480(JP,A)
【文献】特開2011-111425(JP,A)
【文献】特開2011-111441(JP,A)
【文献】特開2011-116689(JP,A)
【文献】特開2016-175887(JP,A)
【文献】特開2014-108960(JP,A)
【文献】第十八改正日本薬局方,p.1618-1619,2021年6月7日[検索日:2024年04月16日検索],[online],<URL :https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788361.pdf>
【文献】成形加工,第15巻,第10号,2003,p.679-682
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリチルリチン酸
及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びにコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を総量で0.35w/v%~2w/v%;(B)第4級アンモニウム化合物、第4級アンモニウム化合物の塩、ビグアニド化合物、及びビグアニド化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン系防腐剤、及び(C)0.0001w/v%~0.1w/v%のユーカリ油又はシネオールとして0.0 007~0.07w/v%に相当するユーカリ油、を含有し、pHが、6~8であり、浸透圧比が0.7~2であるマルチドーズ型眼科用製剤(但し、
(1)(A)ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンともいう)、アズレンスルホン酸(水溶性アズレン、グアイアズレンスルホン 酸、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸ともいう)、ジメチ ルエチルアズレン(カマズレン、1,4-ジメチル-7-エチルアズレンともいう)、1 ,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸(カマズレンスルホン酸ともいう )、又はこれらの薬理学的又は生理学的に許容できる塩、(B)ベルベリン又はその塩、 オウバク、あるいはオウレン、(C)ポリビニルピロリドンおよび/またはコンドロイチ ン類を含有することを特徴とする水性液剤、
(2)(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5~25μLであることを特徴とする点眼剤、
(3)波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤、
(4)(A)デキストラン、(B)メントール、及び(C)界面活性剤を含有する眼科用組成物、及び(5)(A)ベルベリン及び/又はその塩、(B)アルギン酸及び/又はその塩、(C)クロルフェニラミン、テトラヒドロゾリン、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物を除く)。
【請求項2】
前記(B)成分の総含有量が、0.000001w/v%~0.1w/v%である、請求項1に記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
【請求項3】
前記(A)成分の総含有量を1質量部とした場合の(B)成分の総含有量の質量部が、0.000005~1である、請求項1又は2に記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
【請求項4】
前記(A)成分の総含有量を1質量部とした場合の(C)成分の総含有量の質量部が、0.0005~1である、請求項1~3のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
【請求項5】
眼科用製剤が点眼剤である、請求項1~4のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
【請求項6】
(A)グリチルリチン酸
及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びにコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を総量で0.35w/v%~2w/v%、(B)第4級アンモニウム化合物、第4級アンモニウム化合物の塩、ビグアニド化合物、及びビグアニド化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン系防腐剤を含有し、pHが6~8であり、浸透圧比が0.7~2である組成物の為の保存剤であって、ユーカリ油を含有する
、マルチドーズ型眼科用製剤の為の保存剤(但し、
(1)(A)ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンともいう)、アズレンスルホン酸(水溶性アズレン、グアイアズレンスルホン酸、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸ともいう)、ジメチルエチルアズレン(カマズレン、1,4-ジメチル-7-エチルアズレンともいう)、1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸(カマズレンスルホン酸ともいう)、又はこれらの薬理学的又は生理学的に許容できる塩、(B)ベルベリン又はその塩、オウバク、あるいはオウレン、(C)ポリビニルピロリドンおよび/またはコンドロイチ ン類を含有することを特徴とする水性液剤、
(2)(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5~25μLであることを特徴とする点眼剤、
(3)波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤、
(4)(A)デキストラン、(B)メントール、及び(C)界面活性剤を含有する眼科用組成物、及び(5)(A)ベルベリン及び/又はその塩、(B)アルギン酸及び/又はその塩、(C)クロルフェニラミン、テトラヒドロゾリン、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物に使用する場合を除く)。
【請求項7】
(A)グリチルリチン酸
及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びにコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を総量で0.35w/v%~2w/v%、(B)第4級アンモニウム化合物、第4級アンモニウム化合物の塩、ビグアニド化合物、及びビグアニド化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン系防腐剤を含有し、pHが6~8であり、浸透圧比が0.7~2である組成物に、0.0001w/v%~0.1w/v%のユーカリ油又はシネオールとして0.0007~0.07w/v%に相当するユーカリ油を共存させることによる、組成物の保存効力増強方法(但し、
(1)(A)ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレンともいう)、アズレンスルホン酸(水溶性アズレン、グアイアズレンスルホン酸、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸ともいう)、ジメチルエチルアズレン(カマズレン、1,4-ジメチル-7-エチルアズレンともいう)、1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸(カマズレンスルホン酸ともいう)、又はこれらの薬理学的又は生理学的に許容できる塩、(B)ベルベリン又はその塩、オウバク、あるいはオウレン、(C)ポリビニルピロリドンおよび/またはコンドロイチ ン類を含有することを特徴とする水性液剤、
(2)(A)増粘剤、並びに、(B)テルペノイド化合物、イミダゾリン系血管収縮剤、ネオスチグミン、及び該ネオスチグミンの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤であって、1滴あたりの滴下量が5~25μLであることを特徴とする点眼剤、
(3)波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤、
(4)(A)デキストラン、(B)メントール、及び(C)界面活性剤を含有する眼科用組成物、及び(5)(A)ベルベリン及び/又はその塩、(B)アルギン酸及び/又はその塩、(C)クロルフェニラミン、テトラヒドロゾリン、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物に使用する場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用製剤に関する。より詳細には、マルチドーズ型眼科用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼剤などの眼科用製剤は、通常、ユニットドーズ型容器又はマルチドーズ型容器に収納して使用される。マルチドーズ型眼科用製剤は、開封後一定期間にわたり何度も使用することが前提とされているが、一旦開封した眼科用製剤は、使用時に雑菌を含んだ空気混入の懸念がある。また、使用時に接触した眼組織や皮膚から微生物汚染が引き起こされる可能性もある。
【0003】
このため、マルチドーズ型眼科用製剤においては、その腐敗を防止して保存効力を確保することが必須であり、4級アンモニウム塩をはじめとする防腐剤が配合され、製品の安定性を保持している(特許文献1)。
【0004】
一方で、これまで、眼科用製剤中に配合する成分による他成分への影響については十分検討されている現状ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、安定性に優れた眼科用製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、眼科用製剤の成分が保存効力へ与える影響について検証し、保存効力向上を図ることが重要との着眼点にたつものである。本発明者らは、カチオン系防腐剤と酸性糖類とが含まれる組成物は、保存性に劣るという新たな課題を見出し、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ユーカリ油を配合することによって、高い保存効力を保つことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる眼科用製剤を提供する。
項1.
(A)酸性糖類、
(B)カチオン系防腐剤、及び
(C)ユーカリ油を含有する、マルチドーズ型眼科用製剤。
項2.
pHが、6~8である、項1に記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項3.
上記(A)成分が、グリチルリチン酸、コンドロイチン硫酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項4.
上記(A)成分の総含有量が、0.01~1w/v%である、項1~3のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項5.
上記(B)成分が、第4級アンモニウム化合物、第4級アンモニウム化合物の塩、ビグアニド化合物、及びビグアニド化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項6.
上記(C)成分の含有量が、0.001~0.1w/v%である、項1~5のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項7.
上記(C)成分の含有量が、シネオールとして、0.0007~0.07w/v%である、項1~6のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
項8.
眼科用製剤が点眼剤である、請求項1~8のいずれか1項記載のマルチドーズ型眼科用製剤。
【0009】
さらに本発明は、以下に示す保存剤に関する。
項9.
酸性糖類及びカチオン系防腐剤が共存する組成物の為の保存剤であって、ユーカリ油を含有する保存剤。
【0010】
さらに本発明は、以下に示す組成物の保存効力増強方法に関する。
項10.
酸性糖類及びカチオン系防腐剤を含有する組成物に、ユーカリ油を共存させることによる、組成物の保存効力増強方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、保存安定性に優れた眼科用製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一態様の眼科用製剤、及び比較例の眼科用製剤の保存試験の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
【0014】
本発明の眼科用製剤は、(A)酸性糖類、(B)カチオン系防腐剤、及び(C)ユーカリ油を含有する、マルチドーズ型眼科用製剤である。
【0015】
本明細書の眼科用製剤は、水を眼科用製剤全体の1w/v%以上、好ましくは、5w/v%以上、より好ましくは、20w/v%以上、さらに好ましくは、50w/v%以上、さらに好ましくは70w/v%%以上、特に好ましくは、90w/v%以上、最も好ましくは95w/v%以上含む。本発明の眼科用製剤に含有される水は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0016】
[(A)酸性糖類]
本発明に用いられる酸性糖類としては、糖骨格、及び、カルボキシル基又はスルホ基などの酸性基を構造のいずれかに有する化合物であれば特に限定はされない。このような酸性糖類としては、グリチルリチン酸の他、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、グリコサミノグリカン等のムコ多糖、又はこれらの塩を使用することができるが、限定はされない。例えば、分子量600以上、好ましくは700以上、更に好ましくは800以上の酸性を示す糖骨格を有するいずれの化合物を使用することもできる。
【0017】
ここで、塩とは、薬学上許容される塩である。限定はされないが、例えば、有機塩基との塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ピリジン塩などの第3級アミンとの塩、アルギニンなどの塩基性アンモニウム塩など)、無機塩基との塩(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩など)などが挙げられる。好ましい塩は、無機塩基との塩であり、更に好ましい塩は、アルカリ金属塩であり、特に好ましい塩は、ナトリウム塩、カリウム塩である。具体的には、グリチルリチン酸二カリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明において、酸性糖類は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明において、特には、グリチルリチン酸二カリウム、又はムコ多糖が好ましく、グリチルリチン酸二カリウム又はコンドロイチン硫酸ナトリウムがより好ましく用いられる。特に好ましい態様では、グリチルリチン酸二カリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの両方を用いる。
【0019】
本明細書において、(A)成分の酸性糖類は、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0020】
本発明の眼科用製剤において、眼科用製剤の全量に対する(A)成分の総含有量は、他の成分とのバランスによって適宜設定される。眼科用製剤の全量に対して、(A)成分の総含有量は、好ましくは、0.001w/v%以上であり、より好ましくは、0.005w/v%以上、さらに好ましくは、0.01w/v%以上、更により好ましくは0.05w/v%以上、特に好ましくは0.1w/v%以上、より特に好ましくは0.25w/v%以上、更により特に好ましくは、0.5w/v%以上、最も好ましくは、0.7w/v%以上である。眼科用製剤が点眼剤である場合には、好ましくは、0.01w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、更に好ましくは0.1w/v%以上、更により好ましくは0.25w/v%以上、特に好ましくは、0.5w/v%以上、最も好ましくは、0.7w/v%以上である。眼科用製剤が洗眼剤である場合には、好ましくは、0.001w/v%以上、より好ましくは0.005w/v%以上、更に好ましくは0.01w/v%以上、更により好ましくは0.05w/v%以上である。眼科用製剤の全量に対して、(A)成分の総含有量は、好ましくは、5w/v%以下であり、より好ましくは、2w/v%以下、より好ましくは、1w/v%以下である。眼科用製剤が点眼剤である場合は、好ましくは5w/v%以下であり、より好ましくは、2w/v%以下、より好ましくは、1w/v%以下である。眼科用製剤が洗眼剤である場合は、0.5w/v%以下であり、より好ましくは、0.2w/v%以下、より好ましくは、0.1w/v%以下である。眼科用製剤の全量に対して、(A)成分の総含有量は、好ましくは、0.001w/v%~5w/v%、より好ましくは、0.005w/v%~2w/v%、さらに好ましくは、0.01w/v%~1w/v%、さらにより好ましくは、0.1w/v%~1w/v%である。
【0021】
[(B)カチオン系防腐剤]
本発明に用いられるカチオン系防腐剤としては、限定はされないが、第4級アンモニウム化合物及びその塩、並びにビグアニド化合物及びその塩が含まれる。このようなカチオン系防腐剤は、限定はされないが、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェン等の第4級アンモニウム化合物又はその塩、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサニド、アレキシジン等のビグアニド化合物又はその塩が例示される。好ましくは、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサニドであり、更に好ましくは、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジンであり、更により好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
【0022】
本発明において、カチオン系防腐剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
本明細書において、(B)成分は、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0024】
本発明の眼科用製剤において、眼科用製剤の全量に対する(B)成分の総含有量は、他の成分とのバランスによって適宜設定される。眼科用製剤の全量に対して、(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.000001w/v%以上であり、より好ましくは、0.000005w/v%以上、さらに好ましくは、0.00001w/v%以上、である。(B)成分が、塩化ベンザルコニウムである場合は、(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.0001w/v%以上であり、より好ましくは0.001w/v%以上であり、さらに好ましくは、0.005w/v%以上、さらにより好ましくは、0.01w/v%以上であり、(B)成分が、クロルヘキシジン及び/又はその塩である場合は、(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.0001w/v%以上であり、より好ましくは、0.001w/v%以上、さらに好ましくは、0.002w/v%以上であり、さらにより好ましくは、0.005w/v%以上であり、(B)成分がポリヘキサニド及びその塩である場合には、(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.000001w/v%以上であり、より好ましくは、0.000005w/v%以上、さらに好ましくは、0.00001w/v%以上であり、さらにより好ましくは、0.00005w/v%以上である。眼科用製剤の全量に対して、(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.1 w/v%以下であり、より好ましくは、0.05w/v%以下、より好ましくは、0.02w/v%以下、さらに好ましくは、0.015w/v%以下である。(B)成分が、塩化ベンザルコニウムである場合は、好ましくは0.1w/v%以下であり、より好ましくは、0.05w/v%以下、より好ましくは、0.02w/v%以下、更により好ましくは、0.015w/v%以下であり、(B)成分が、クロルヘキシジン及び/又はその塩である場合は、好ましくは0.3w/v%以下であり、より好ましくは、0.1w/v%以下、更により好ましくは、0.05w/v%以下、特に好ましくは0.01w/v%以下、特により好ましくは0.005w/v%以下であり、(B)成分がポリヘキサニド及びその塩である場合には、好ましくは0.001w/v%以下であり、より好ましくは、0.0005w/v%以下、更により好ましくは、0.0001w/v%以下である。眼科用製剤の全量に対して、
(B)成分の総含有量は、好ましくは、0.000001w/v%~0.1w/v%、より好ましくは、0.000005w/v%~0.05w/v%、さらに好ましくは、0.00001w/v%~0.02w/v%、最も好ましくは、0.00005w/v%~0.015w/v%である。
【0025】
本発明の眼科用製剤において、(A)成分に対する(B)成分の配合量の比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.000005~1重量部が好ましく、0.000025~0.5重量部がより好ましく、0.00005~0.15重量部がよりさらに好ましい。
【0026】
[(C)ユーカリ油]
本発明に用いられるユーカリ油としては、限定はされないが、医薬品又は医薬部外品として通常用いられるユーカリ油が使用できる。ここで、特には、第十六改正日本薬局方に収載のユーカリ油を使用することができる。ここで、第十六改正日本薬局方収載のユーカリ油は、ユーカリノキEucalyptus globulus Labillardiere又はその類縁植物の葉を水蒸気蒸留して得た精油であり、シネオールを70.0%以上含有する。
【0027】
本発明の眼科用製剤において、眼科用製剤の全量に対する(C)成分の総含有量は、他の成分とのバランスによって適宜設定される。眼科用製剤の全量に対して、(C)成分の総含有量は、好ましくは、0.0001w/v%以上であり、より好ましくは、0.0005w/v%以上、さらに好ましくは、0.001w/v%以上、更により好ましくは、0.002w/v%以上、特に好ましくは、0.003w/v%以上、より特に好ましくは、0.004w/v%以上、最も好ましくは、0.005w/v%以上である。眼科用製剤の全量に対して、(C)成分の総含有量は、好ましくは、0.1w/v%以下であり、より好ましくは、0.05w/v%以下、より好ましくは、0.01w/v%以下である。眼科用製剤の全量に対して、(C)成分の総含有量は、好ましくは、0.0001w/v%~0.1w/v%、より好ましくは、0.001w/v%~0.1w/v%、さらにより好ましくは、0.002w/v%~0.05w/v%、最も好ましくは、0.005w/v%~0.01w/v%である。
【0028】
ユーカリ油の存在は、シネオール量に換算することもできる。
本発明の眼科用製剤の全量に対して、シネオールとしての含有量は、好ましくは、0.00007w/v%以上であり、より好ましくは、0.00035w/v%以上、さらに好ましくは、0.0007w/v%以上、更により好ましくは、0.0014w/v%以上、特に好ましくは、0.0021w/v%以上、より特に好ましくは、0.0028w/v%以上、最も好ましくは、0.0035w/v%以上である。眼科用製剤の全量に対して、シネオールの含有量は、好ましくは、0.07w/v%以下であり、より好ましくは、0.035w/v%以下、より好ましくは、0.007w/v%以下である。眼科用製剤の全量に対して、(C)成分の総含有量は、シネオールとして、好ましくは、0.00007w/v%~0.07w/v%、より好ましくは、0.0007w/v%~0.07w/v%、さらにより好ましくは、0.0014w/v%~0.035w/v%、最も好ましくは、0.0035w/v%~0.007w/v%である。
【0029】
本発明の眼科用製剤において、(A)成分に対する(C)成分の配合量の比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、(C)成分の総含有量が0.0005~1重量部が好ましく、0.001~0.5重量部がより好ましく、0.005~0.1重量部がよりさらに好ましい。
シネオールについては、(A)成分の総含有量1重量部に対して、シネオールが0.00035~0.7重量部が好ましく、0.0007~0.35重量部がより好ましく、0.0035~0.07重量部がよりさらに好ましい。
【0030】
本発明の眼科用製剤では、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分が共存していることによって、製造直後にも、長期間に亘って保存した場合であっても、良好な保存状態が保持される。ここで、良好な保存状態とは、限定はされないが、例えば、製造直後に抗菌活性を有しており、一定期間の保存後においても、その抗菌活性が一定程度保持されることをいう。このような抗菌活性は、例えば、大腸菌に対する抗菌力を指標とすることができる。具体的には、例えば日本薬局方(第十六改正)に定める保存効力試験法に準じて、眼科用製剤の防腐性(保存効力)を評価することができる。このような方法によって、14日後に接種菌数の0.1%以下となり、その後28日後まで増殖しない程度の保持があることを目安にすることができる。(A)成分と(B)成分の共存により、(B)成分を含有する眼科用製剤の保存効力が減少する傾向にあることが本発明者らによって見出されたが、ここに、(C)成分を共存させることで、保存効力が改善することがわかった。
【0031】
[抗アレルギー剤]
本発明の眼科用製剤は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他に、さらに、抗アレルギー剤を含有していてもよい。本発明の眼科用製剤に配合できる抗アレルギー剤は、限定はされないが、例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸レボカバスチン、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム、ペミロラスト、塩酸オロパタジン等が挙げられる。
【0032】
本発明において、抗アレルギー剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。限定はされないが、特には、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、アシタザノラスト、ペミロラストカリウム、塩酸オロパタジン、及びフマル酸ケトチフェンからなる群より選択される少なくとも1種の抗アレルギー剤が好ましく、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウムがより好ましく、クロモグリク酸ナトリウムが特に好ましい。
【0033】
本明細書において、抗アレルギー剤は、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0034】
本発明の眼科用製剤において、眼科用製剤の全量に対する抗アレルギー剤の総含有量は、他の成分とのバランスによって適宜設定される。眼科用製剤の全量に対して、抗アレルギー剤の総含有量は、好ましくは、0.001w/v%以上であり、より好ましくは、0.01w/v%以上、さらに好ましくは、0.1w/v%以上である。眼科用製剤の全量に対して、抗アレルギー剤の総含有量は、好ましくは、5w/v%以下であり、より好ましくは、2w/v%以下、より好ましくは、1w/v%以下である。眼科用製剤の全量に対して、抗アレルギー剤の総含有量は、好ましくは、0.001w/v%~5w/v%、より好ましくは、0.01w/v%~2w/v%、さらに好ましくは、0.1w/v%~1w/v%である。
【0035】
本発明の眼科用製剤において、(A)成分に対する抗アレルギー剤の配合量の比率は、
(A)成分の総含有量1重量部に対して、抗アレルギー剤の総含有量が0.005~100重量部が好ましく、0.05~50重量部がより好ましく、0.1~10重量部がよりさらに好ましい。
【0036】
抗アレルギー剤を加えても、本発明の眼科用製剤は、保存効力の低下は少なく、保存効力が維持又は改善される。
【0037】
[その他の成分]
本発明の眼科用製剤では、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他に、更に緩衝剤を含有してもよい。本発明の眼科用製剤に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されず、有機系緩衝剤又は無機系緩衝剤のいずれも使用することができる。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、が好ましい。
【0038】
ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、緩衝剤としては、各塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)が例示できる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の眼科用製剤に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合割合については、他の成分とのバランスによって適宜設定される。眼科用製剤の全量に対して、緩衝剤の総含有量は、限定はされないが、例えば、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは、0.05w/v%以上、さらに好ましくは0.1w/v%以上であり、好ましくは、10w/v%以下、より好ましくは5w/v%以下、さらに好ましくは3w/v%以下である。
【0040】
本発明の眼科用製剤において、(A)成分に対する緩衝剤の配合量の比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、緩衝剤の総含有量が0.01~100重量部が好ましく、0.05~10重量部がより好ましく、0.05~5重量部がよりさらに好ましく、0.1~2重量部が特に好ましい。
【0041】
本発明の眼科用製剤は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他に、界面活性剤を含有してもよい。本発明の眼科用製剤に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、又は陰イオン界面活性剤のいずれであってもよい。
【0042】
本発明の眼科用製剤に配合可能な非イオン界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)グリコール(例えば、ポロクサマー407 、ポロクサマー235 、ポロクサマー188、POP(200)POE(70)グリコールなどのポロクサマー類) ;ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) 、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) 、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマシ油10 、POE硬化ヒマシ油20 、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60 、POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35などのPOEヒマシ油類;POE(9) ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4) セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類;ステアリン酸ポリオキシル40などのモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0043】
両性界面活性剤としては、アルキルジアミノエチルグリシン等のグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型、イミダゾリン型等の界面活性剤が例示される。
【0044】
陰イオン界面活性剤としては、POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のPOEアルキルエーテルリン酸及びその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-ココイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシルタウリン塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POE(3) ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等が例示される。
【0045】
本発明の眼科用製剤において、これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
これらの界面活性剤の中でも、非イオン界面活性剤が好適である。非イオン界面活性剤の好適な例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポロクサマー類、及びモノステアリン酸ポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤であり、さらに好ましくは、ポロクサマー407、ポロクサマー188、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40であり、特に好ましくは、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。
【0047】
本発明の眼科用製剤に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の配合割合については、界面活性剤の種類、他の成分の種類や量、眼科用製剤の用途等に応じて適宜設定できる。界面活性剤の配合割合の一例として、眼科用製剤総量に対して、界面活性剤総量が、好ましくは0.001w/v%以上、より好ましくは0.005w/v%以上、さらに好ましくは、0.01w/v%以上であり、好ましくは、5w/v%以下、より好ましくは3w/v%以下、さらに好ましくは1w/v%以下である。
【0048】
本発明の眼科用製剤において、(A)成分に対する界面活性剤の配合量の比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、界面活性剤の総含有量が0.001~100重量部が好ましく、0.005~50重量部がより好ましく、0.01~10重量部がよりさらに好ましく、0.05~1重量部が特に好ましい。
【0049】
本発明の眼科用製剤のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例としては、pHが4.0~9.5、好ましくは5.0~9.0、より好ましくは、6.0~8.5、更に好ましくは6.0~8.0、特に好ましくは6.5~8.0、更に特に好ましくは6.5~7.5となる範囲が挙げられる。本発明においては、特に中性の領域であっても、保存効力が維持される点で、有用性が高い。
【0050】
本発明の眼科用製剤は、更に必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤型等により異なるが、通常0.5~5.0、より好ましくは0.6~3.0、更に好ましくは0.7~2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従って測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0051】
本発明の眼科用製剤の粘度は、生理学的又は薬学的に許容される範囲内であれば、配合成分の種類及び含有量、該眼科用製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34‘×R24)で測定した20℃における粘度が0.01~10000mPa・sとすることが好ましく、0.05~8000mPa・sとすることがより好ましく、0.5~1000mPa・sとすることがさらに好ましく、1~500mPa・sとすることが更により好ましく、1~100mPa・sとすることが特に好ましく、1~15mPa・sとすることが最も好ましい。
【0052】
本発明の眼科用製剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。このような薬理活性成分や生理活性成分としては、例えば、 一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、次のような成分が挙げられる。
【0053】
充血除去剤:塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン等。
抗ヒスタミン剤:塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等。
ビタミン類:フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等。
消炎剤:イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、アズレンスルホン酸ナトリウム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、等。
収斂剤:亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。その他:スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム、メチル硫酸ネオスチグミン等。
【0054】
さらに、本発明の眼科用製剤においては、担体、増粘剤、一般的な糖アルコール類や糖類、一般的な等張化剤、pH調整剤、安定化剤、キレート剤、油類などの添加剤を選択し、少なくとも1種を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
【0055】
担体:水、含水エタノール等の水性担体。
増粘剤:ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどの、ビニル系増粘剤、ジェランガム、アルギン酸等。
糖アルコール類:キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
糖類:ブドウ糖など。
等張化剤:亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等。
pH調節剤:塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、等。
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン等。
キレート剤:アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、等。
油類:ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
【0056】
本発明の眼科用製剤には、セルロース系増粘剤を含有させることも可能である。ここで、セルロース系増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース及びその塩、カルボキシエチルセルロース及びその塩等のセルロース系高分子化合物が例示される。一方、本発明の眼科用製剤の一態様として、セルロース系増粘剤の含有量が0.2w/v%以下の眼科用製剤とすることもできる。あるいは、さらに別の態様では、セルロース系増粘剤を含まない眼科用製剤とすることもできる。セルロース系増粘剤の含有量が低い場合あるいは、セルロース系増粘剤を含まない場合には、本発明の効果を顕著に奏することができ、好ましい。
【0057】
本発明の眼科用製剤には、カチオン系防腐剤以外の防腐剤をさらに含有させることも可能である。ここで、カチオン系防腐剤以外の防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化亜鉛、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール等が例示される。一方、本発明の眼科用製剤の一態様として、このようなカチオン系防腐剤以外の防腐剤の含有量が0.004w/v%以下の眼科用製剤とすることもできる。あるいは、別の態様では、塩化亜鉛又はソルビン酸カリウムの含有量が0.0009w/v%以下の眼科用製剤とすることができる。さらに別の態様では、塩化亜鉛又はソルビン酸カリウムを含まない眼科用製剤とすることもできる。このような眼科用製剤は、特に目への負荷が少なく、好ましい。
【0058】
本発明の眼科用製剤には、テルペノイドを含有させることも好ましい。テルペノイドとは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有し、清涼化剤として汎用されている公知の化合物である。テルペノイドは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。テルペノイドとして、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロール、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。テルペノイドの含有量は、通常、0.0001~0.1w/v%とすることが可能である。一方、本発明の眼科用製剤の一態様として、メントールの含有量が0.004w/v%以下の眼科用製剤とすることもできる。あるいは、さらに別の態様では、メントールを含まない眼科用製剤とすることもできる。特有の刺激を回避する場合、特にメントールを含まない製剤が好ましい。
【0059】
本明細書において、(A)成分以外の成分における、「生理学的又は薬学的に許容される塩」とは、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩基等との塩が例示され、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、又はジエタノールアミン、エチレンジアミン等との塩が挙げられる。これらの塩は、たとえば、その物質に存在する硫酸基やカルボキシル基を公知の方法により塩に変換することで得られる。さらには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩などが挙げられる。また、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩なども挙げられる。
【0060】
本発明でいう「生理学的又は薬学的に許容される塩」には、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。
【0061】
本発明の眼科用製剤は、所望量の上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、並びに必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。本発明の眼科用製剤は、好ましくは液剤である。本発明の眼科用製剤は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用できる。
【0062】
本発明でいう眼科用製剤には、例えば、点眼剤(コンタクトレンズ装用中にも使用することができる点眼剤を含む)、又は人工涙液(コンタクトレンズ装用中にも使用することができる人工涙液を含む) 、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]が含まれる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0063】
上記眼科用製剤用途の中でも、マルチドーズ型眼科用製剤は、他の用途に比べて、眼科用製剤内容物としての組成物の保存効力の有無や変化が非常に大きな問題となりかねない。マルチドーズ型眼科用製剤は、使用に際し、頻回の蓋の開け閉めがあり、特に保存効力の維持が望まれる。すなわち、好ましくは、少なくとも使用の最初には無菌製剤であり、より好ましくは、使用しても無菌製剤あるいはそれに近い状態を保つことが望まれる。
【0064】
本発明は、特にマルチドーズ型眼科用製剤に適した製剤的に非常に安定な眼科用製剤とすることができる。
本実施形態に係る眼科用製剤は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)又は、洗眼剤(洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)であることが好ましい。本実施形態に係る眼科用製剤が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~2滴、1日4回点眼して用いる方法、1回1~2滴、2~3滴、又は1~3滴、1日5~6回点眼して用いる方法を例示できる。
【0065】
本発明の眼科用製剤は、特にアレルギー疾患の治療又は予防効果を有する抗アレルギー用眼科用製剤として用いられることが好ましい。さらには、本発明の眼科用製剤は、花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる、目の充血、目のかゆみ、目のかすみ、なみだ目、異物感などのアレルギー症状の緩和に効果を奏する。
【0066】
[製造方法]
本発明の眼科用製剤の製造方法は特には限定されない。例えばユーカリ油を先に非イオン界面活性剤等と予備攪拌した後に、他の成分や精製水を混合することが出来る。
【0067】
[ユーカリ油含有保存剤]
本発明はまた、酸性糖類及びカチオン系防腐剤が共存する組成物の為の保存剤であって、ユーカリ油を含有する保存剤に関する。この時の酸性糖類、カチオン系防腐剤の種類、濃度、及びユーカリ油の濃度、さらには、それぞれの成分比は、マルチドーズ眼科用製剤で述べたものと同じである。
【0068】
[保存効力増強方法]
本発明はまた、酸性糖類及びカチオン系防腐剤を含有する組成物に、ユーカリ油を共存させることによる、組成物の保存効力増強方法に関する。この時の酸性糖類、カチオン系防腐剤の種類、濃度、及びユーカリ油の濃度、さらには、それぞれの成分比は、マルチドーズ眼科用製剤で述べたものと同じである。
【0069】
本発明の眼科用製剤は、任意の容器に収容して提供される。本発明の眼科用製剤を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、また樹脂製であってもよい。本発明の眼科用製剤を収容する容器は、さらに、樹脂をガラス繊維などの補強剤を含んで強化した樹脂容器であってもよい。
【0070】
具体的には、本発明の眼科用製剤は、容器の少なくとも一部が、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレンナフタレート(PEN)製、ポリプロピレン(PP)製、ポリアリレート(PAR)製、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製、ポリカーボネート(PC)製、ポリエチレン(PE)製からなる群から選択されるいずれかの容器に収容される。好ましくは、PET製、PEN製、PP製、PAR製、PBT製、PC製、PE製であり、さらに好ましくはPET製、PBT製、PP製、PE製、さらにより好ましくは、PET、PP、PE製であり、特に好ましくはPET、PP製であり、最も好ましくは、本発明の効果を顕著に奏する観点でPET製である。すなわち、PET製の容器を用いることは、ユーカリ油の容器への吸着抑制、ひいては本発明の効果を奏する観点からも特に好ましい。
【0071】
本明細書において、容器とは、眼科用製剤を直接収容する容器(一次容器)を意味する。また、容器は、容器本体部に蓋部や抽出口部が付随されていることもある。上記の材質は、主として容器本体部の材質を意味する。
【0072】
本実施形態に係る眼科用製剤を収容する容器が樹脂製である場合、容器は単一の樹脂のみから成形されていてもよく、また、複数の合成樹脂を組み合わせて成形されていてもよい。
【0073】
本実施形態に係る眼科用製剤を収容する容器が合成樹脂製容器の場合、容器の構成材質全体の重量に対する、PET、PEN、PP、PAR、PBT、PC及びPEの合計重量は特に限定されない。好ましくは容器の構成材質全体の重量に対し、PET、PEN、PP、PAR、PBT、PC及びPEが含有されていればよく、中でも好ましくは、合計重量10w/v%以上であり、より好ましくは30w/v%以上であり、さらに好ましくは50w/v%以上であり、さらにより好ましくは65w/v%以上であり、特に好ましくは80w/v以上%である。
【0074】
本発明の眼科用製剤を収容する容器は、マルチドーズ型眼科用製剤の通常の容器であれば特に限定はない。本発明の眼科用製剤を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0075】
本発明において、容器の形状、内部に収容できる容量は特に限定はされない。本発明の容器は、内容量を好ましくは1mL以上100mL以下、より好ましくは2mL以上50mL以下、さらに好ましくは5mL以上20mL以下とすることができる容器であり得る。本発明のマルチドーズ型眼科用製剤において、容器内の液量が、1mL以上100mL以下であることが好ましく、2mL以上50mL以下であることがさらに好ましく、5mL以上20mL以下であることが最も好ましい。
【0076】
これらの容量は、本発明の保存効果を発揮し、それを必要とするという意味において、最も適切な容量である。
【実施例】
【0077】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、表における各成分量の単位は、w/v%である。
【0078】
試験例1:調製直後の保存効力試験
表1に示す組成の眼科用製剤を常法に従って調製した。この組成物を、0.2μmメンブランフィルターでろ過した後、滅菌済の点眼瓶に充填し、各点眼剤とした(参考試験例1、比較例1、2、実施例1)。なお、使用した原薬は第十六改正日本薬局方適合品、又は、日本薬局方外医薬品規格適合品を用いた。ここで、ユーカリ油は、第十六改正日本薬局方適合品である。調製直後、日本薬局方(第十六改正)に定める保存効力試験法に準じて、点眼剤の防腐性(保存効力)を評価した。
【0079】
具体的には、Escherichia coli(ATCC8739株)を、ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地の表面に接種して、33℃で24時間培養を行った。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌生理食塩水に浮遊させて、約1×107CFU/mLの生菌を含む細菌浮遊液を調製した。この細菌浮遊液を、表1に示す各点眼剤に約1×105CFU/mLとなるように添加した後に、25℃で7日間静置した。その後、メンブランフィルター法に準じて菌を回収し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地の表面上で、33℃で2日間静置した後に調製した試料1mL当たりの生菌数を測定し、その値を基に、Log reductionを算出した。
【0080】
試験例2:60℃保存品の保存効力試験
下記表1に記載の処方に従い、眼科用製剤を調製し、0.2μmメンブランフィルターでろ過した後、滅菌済のプラスチック点眼容器(容器本体:PET、ノズル:PE、容量13mL)に充填した各眼科用製剤(参考試験例1、比較例1、2、実施例1)を、60℃の恒温器にて3週間保存した。その後、日本薬局方(第十六改正)に定める保存効力試験法に準じて、上記試験例1.調製直後の保存効力試験と同様の手順に従い、保存効力を評価した。
【0081】
試験例1及び2の評価結果を表1及び
図1に示す。ここで、生菌数が減少する、すなわち、Log reductionが大きいほど保存効力が高いことが表わされている。
【0082】
これらの結果から、(b)塩化ベンザルコニウムを含有する眼科用製剤の保存効力が、
(a)グリチルリチン酸二カリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムを配合すると低下する傾向にあるが、(c)ユーカリ油をさらに配合することによって、高い保存効力が得られることがわかる。また、この傾向は、60℃3週間保存後の眼科用製剤でより顕著に確認された。
【0083】
【0084】
ここで、濃塩化ベンザルコニウム液50は、第十六改正日本薬局方適合品であり、参考比較例、比較例、実施例中において、製剤中で、0.01~0.011w/v%濃度範囲である。
【0085】
試験例3:調製直後の保存効力試験
表2に示す組成の眼科用製剤(点眼剤)を常法に従って調製した。
ユーカリ油は、シネオール含量が、79.8%ものを用いた。
試験例1と同様の手順で試料1mL当たりの生菌数を測定し、Log reductionを算出した。その後、算出した各製剤のLog reductionより、下記の式を用いて、実施例2の比較例3に対する保存効力の向上率を算出した。
【0086】
(式1)
比較例3に対する保存効力の向上率(%)={(実施例2のLog reduction-比較例3のLog reduction)/ 比較例3のLog reduction}×100
【0087】
試験例3の評価結果を表2に示す。
これらの結果から、(b)塩化ベンザルコニウムの代わりに、グルコン酸クロルヘキシジンを含有する眼科用製剤の保存効力においても、試験例1と同様に(a)グリチルリチン酸二カリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムを配合すると低下する傾向にあったが、
(c)ユーカリ油をさらに配合することによって、高い保存効力が得られることがわかる。
【0088】
【0089】
[製剤例]
下記表3および表4に記載の処方で、点眼剤(製剤例1~16)が調製され、以下に記載のマルチドーズ型容器に収容される。
尚、下記表3および表4における各成分量の単位は、w/v%である。
【0090】
尚、製剤例1~16が収容される容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であり、ポリエチレン(PE)製のノズルを装着されている。
【0091】
同様にして、製剤例1~16とそれぞれ全く同じ組成の製剤を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器に収容し、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製のノズルを装着した(製剤例1´~16´)。
【0092】
【0093】