(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】分析装置用の洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/722 20060101AFI20240910BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240910BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20240910BHJP
G01N 35/02 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C11D1/722
C11D1/72
C11D3/43
G01N35/02 E
(21)【出願番号】P 2022113643
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021120159
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直也
(72)【発明者】
【氏名】根布谷 理
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-292387(JP,A)
【文献】特開2011-007524(JP,A)
【文献】特開2002-323504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物であって、
洗浄剤組成物はノニオン界面活性剤(A)とアルカリ剤(B)とを含み、
ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比[(B)の重量/(A)の重量]が
0.5~7であり、
ノニオン界面活性剤(A)が下記一般式(1)で表される化合物であり、
前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるRの1分子あたりの平均炭素数nが14以上24以下であり、
前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるxの1分子あたりの数平均は4~19である洗浄剤組成物。
R-O-[AO]
X-EO-H (1)
[式(1)中、Rは、炭素数が10以上24以下のアルキル基であり、EOはエチレンオキシ基、AOはプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基であり、xは4~19の数であり、複数のAOは
エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる。]
【請求項2】
前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるRの1分子あたりの平均炭素数nが14~18である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)における1分子あたりのプロピレンオキシ基の平均付加モル数が2以上である、請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、キレート剤(C)を含み、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するキレート剤(C)の重量比[(C)の重量/(A)の重量)が0.2~5である請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、ヒドロキシル基を1つ以上有し炭素数が1~3の溶剤(D)を含み、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対する前記溶剤(D)の重量比[(D)の重量/(A)の重量]が0.1~10である請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の生体試料中の成分の分析は、自動分析装置により行われることがある。このような自動分析装置を用いた分析は、生体試料を入れた反応容器に、分析内容に応じた反応液を入れて行われ、分析後の反応容器は、通常、洗浄して再使用される。
このような自動分析装置の反応容器を洗浄する洗浄剤としては、例えば特許文献1に記載の洗浄剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、非イオン界面活性剤としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、曇点調整用の有機溶媒とを含有するアルカリ性溶液からなるアルカリ性洗剤が提案されている。また、当該文献には、アルキレンとしてエチレンおよびポリプロピレンを含むこと、アルキルエーテルとしてラウリルエーテルを含むことが好ましい旨、記載されている。
【0005】
しかしながら従来の洗浄剤は、洗浄性が不十分であり、分析と洗浄を繰り返した後の反応容器に汚れが蓄積し、反応容器の交換頻度が高いという問題がある。また、洗浄後の反応容器は、次の分析に用いるため、洗浄剤には起泡性が低いことも求められている。
本発明は、従来の洗浄剤よりも洗浄性が高く起泡性が低い、生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物であって、洗浄剤組成物はノニオン界面活性剤(A)とアルカリ剤(B)とを含み、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比[(B)の重量/(A)の重量]が0.1~10であり、ノニオン界面活性剤(A)が下記一般式(1)で表される化合物であり、前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるRの1分子あたりの平均炭素数nが14以上24以下であり、前記洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるxの1分子あたりの数平均は4~19である洗浄剤組成物である。
R-O-[AO]X-EO-H (1)
[式(1)中、Rは、炭素数が10以上24以下のアルキル基であり、EOはエチレンオキシ基、AOはプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基であり、xは4~19の数であり、複数のAOは同一であっても相違していてもよい。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の分析装置用の洗浄剤組成物は、従来の洗浄剤よりも洗浄性が高く、起泡性が低いという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の洗浄剤組成物は、生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物である。
本発明の洗浄剤組成物は、ノニオン界面活性剤(A)とアルカリ剤(B)とを含み、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比[(B)の重量/(A)の重量]が0.1~10でありノニオン界面活性剤(A)が一般式(1)で表される化合物である。以下において、「一般式(1)で表される化合物」を、「式(1)の化合物」と呼ぶことがある。
【0009】
洗浄剤組成物に含まれるノニオン界面活性剤(A)[(A)成分ともいう]について説明する。洗浄剤組成物は、ノニオン界面活性剤(A)を一種含んでいてもよいし二種以上含んでいてもよい。
ノニオン界面活性剤(A)は下記式(1)の化合物である。
R-O-[AO]X-EO-H (1)
[式(1)中、Rは、炭素数が10以上24以下のアルキル基であり、EOはエチレンオキシ基、AOはプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基であり、xは4~19の数であり、複数のAOは同一であっても相違していてもよい。]
【0010】
一般式(1)中のRは、炭素数が10以上24以下のアルキル基である。
炭素数が10以上24以下のアルキル基は、直鎖のアルキル基であってもよいし分岐を有するアルキル基であってもよい。炭素数が10以上24以下のアルキル基としては、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基及びテトラコシル基等の直鎖アルキル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、2-エチルドデシル基、2-エチルトリデシル基、2-メチルテトラデシル基、イソヘキサデシル基、2-オクチルノニル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-エチルペンタデシル基、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル基、イソオクタデシル基、1-ヘキシルトリデシル基、2-エチルヘプタデシル基、イソイコシル基、1-オクチルペンタデシル基、2-デシルテトラデシル基及び2-テトラデシルオクタデシル基等の分岐を有するアルキル基等が挙げられる。Rは炭素数に分布のあるアルキル基(例えば炭素数14~15等)であってもよい。
【0011】
本発明において、洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるRの1分子あたりの平均炭素数nが14以上24以下である。前記炭素数nが14以上24以下であることにより、洗浄剤組成物の洗浄性を従来のものよりも優れたものとしかつ、起泡性を低くすることができる。
前記平均炭素数nが14未満のアルキル基であると、起泡性が高くなることや洗浄力が低下することがある。また一般式(1)におけるRが1分子あたりの炭素数nが24超のアルキル基であると、起泡性が高くなることや洗浄力が低下することがある。
洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるRの1分子あたりの平均炭素数nは好ましくは14~18であり、より好ましくは14~17である。
【0012】
(A)成分がRの炭素数がNの化合物のみからなる場合、全ての(A)成分におけるRの1分子あたりの平均炭素数はNであり、当該Nが14以上24以下であればよい。
(A)成分がRの炭素数が相違する2種以上の化合物からなる場合、例えばRの炭素数NAの化合物とRの炭素数NBの化合物との組み合わせ[比率は1:1(モル比)]である場合、全ての(A)成分におけるRの1分子あたりの平均炭素数[(NA+NB)/2]が14以上24以下であり、NA及びNBが10~24であればよい。例えば、NA及びNBがそれぞれ14~24[全ての(A)成分におけるRの1分子あたりの平均炭素数は14~24]であってもよいし、NAが12でNBが16[全ての(A)成分におけるRの1分子あたりの平均炭素数は14]であってもよい。
【0013】
ノニオン界面活性剤(A)におけるR(アルキル基)の1分子あたりの平均炭素数は、ノニオン界面活性剤(A)または(A)成分の原料となる1価のアルコール(後述する)について1H-NMRを測定することにより、算出可能である。具体的には、下記の測定条件及び解析方法により求めることができる。
<サンプル調製方法>
NMRチューブに測定対象物を150mg測り取り、重水素化溶媒(例えば重クロロホルム)を0.45ml加えて溶解させ、以下の測定条件で測定を行う。
<1H-NMR測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
<解析方法>
以下、重水素化溶媒に重クロロホルムを使用した時に観測されるおおよその化学シフトを記す。化学シフト3.5ppm付近のメチレン基のプロトンのピーク強度Sdを2とした時の、化学シフト0.9ppm付近のメチル基のプロトンのピーク強度Sa、化学シフト1.3ppm付近のメチレン基のプロトンのピーク強度Sb、化学シフト1.6ppm付近のメチレン基のプロトンのピーク強度Scを用いて、下記数式に当てはめることにより、式(1)中、Rの平均炭素数nを算出することができる。
n=Sa/3+(Sb+Sc+Sd)/2
【0014】
一般式(1)中のEOはエチレンオキシ基である。一般式(1)中のAOはプロピレンオキシ基またはエチレンオキシ基である。一般式(1)中の、xはAOの付加モル数を示し、4~19の数である。複数のAOは同一であっても相違していてもよい。プロピレンオキシ基は、直鎖であっても分岐を有していてもよい。
【0015】
本発明においては、洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)におけるxの1分子あたりの数平均は4~19である。また、ノニオン界面活性剤(A)は一般式(1)で表されるように、末端のHにEOが結合した構造(-CH2CH2O-H)を有する(要件Xとする)。当該要件Xを満たすことにより、洗浄剤組成物の洗浄力を従来のものよりも優れたものとしかつ、起泡性を低くすることができる。要件Xの一部または全部を満たさない場合、起泡性が高くなることや洗浄力が低下することがある。
【0016】
x個のAOは、x個のエチレンオキシ基からなる(複数のAOがすべてEOである)態様であってもよいし、x個のプロピレンオキシ基からなる(複数のAOがすべてPOである)態様であってもよいし、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる(複数のAOがEOとPOからなる)態様であってもよい。
x個のAOがエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる態様の場合、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基の結合順序は任意である。x個のAOがエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる場合、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基はランダムに結合した態様であってもよいし、2個以上のエチレンオキシ基が結合してなるEOブロックと、2個以上のプロピレンオキシ基が結合してなるPOブロックを含む態様などであってもよい。本発明においては、x個のAOが、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる態様が好ましく、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基がランダムに結合した態様がより好ましい。x個のAOのうち2個以上のAOがプロピレンオキシ基であることが特に好ましい。
【0017】
洗浄剤組成物に含まれる(A)成分が一種である場合、当該(A)成分の有するxが4~19であればよい。洗浄剤組成物に含まれる(A)成分が二種以上である場合、すべての(A)成分が有するxの1分子あたりの数平均が4~19であればよい。本発明においては、洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤(A)における1分子あたりのプロピレンオキシ基の平均付加モル数が2以上であることが好ましい。
【0018】
(A)成分が二種以上の場合の、(A)成分における1分子あたりのxの数平均及びプロピレンオキシ基の平均付加モル数の算出方法について説明する。例えば、(A)成分が、式(1)中のxが12で、プロピレンオキシ基の数が4個である化合物(A1)と、式(1)中のxが3でプロピレンオキシ基の数が0個である化合物(A2)との組み合わせ[比率は、1:1(モル比)]である場合、全ての(A)成分中のxの数平均は7.5、プロピレンオキシ基の平均付加モル数は2となる。
【0019】
一般式(1)で表される「末端のHにEOが結合した構造」を有する化合物は、例えば1H-NMR分析を行うことにより分析可能である。具体的には、1H-NMR分析により末端の1級水酸基由来の信号が検出されれば、分析対象に末端のHにEOが結合した構造の化合物が含まれうる。1H-NMR分析により洗浄剤組成物中の全てのノニオン界面活性剤における、末端の水酸基が1級水酸基である化合物のモル数の割合の算出も可能である。ここで、末端の水酸基が1級水酸基である化合物のモル数の割合は、以下の方法で算出することができる。
【0020】
<試料調製法>
測定試料約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶媒を加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し、分析用試料とする。上記重水素化溶媒としては、例えば、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド及び重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させることのできる溶媒を適宜選択する。
<NMR測定>
通常の条件(例えば特開2019-157105号公報の実施例に記載の条件)で1H-NMR測定を行う。
<末端1級水酸基率の計算方法>
上に述べた前処理の方法により、化合物が有する末端の水酸基は、添加した無水トリフルオロ酢酸と反応してトリフルオロ酢酸エステルとなる。その結果、1級水酸基が結合したメチレン基由来の信号は4.3ppm付近に観測され、2級水酸基が結合したメチン基由来の信号は5.2ppm付近に観測される(重水素化クロロホルムを溶媒として使用)。末端の水酸基が1級水酸基である化合物のモル数の割合は、次の計算式により算出する。
末端の水酸基が1級水酸基である化合物のモル数の割合(モル%)=
[a/(a+2b)]×100
但し、式中、aは4.3ppm付近の1級水酸基の結合したメチレン基由来の信号の積分値、bは5.2ppm付近の2級水酸基の結合したメチン基由来の信号の積分値である。
【0021】
本発明において、末端の水酸基が1級水酸基である化合物のモル数の割合は、洗浄性の観点から、洗浄剤組成物が含有する全てのノニオン界面活性剤[(A)成分および(A)成分以外のノニオン界面活性剤]のモル数に基づき、好ましくは67~100モル%である。
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分以外のノニオン界面活性剤として、一般式(1)で表される化合物以外のノニオン界面活性剤[例えば、一般式(1)の末端の水素にプロピレンオキシ基が結合した構造の化合物(具体的には脂肪族アルコールのプロピレンオキサイド付加物等)]を含んでいてもよい。
【0022】
ノニオン界面活性剤(A)は、炭素数が10~24のアルキル基を有する1価のアルコールにエチレンオキサイド及び必要に応じプロピレンオキサイドを付加させることにより得ることができる。プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを併用する場合、最後にエチレンオキサイドを付加させることによりノニオン界面活性剤(A)が得られる。
炭素数が10~24のアルキル基を有する1価のアルコールとしては、上記Rの説明で例示したアルキル基を有する1価のアルコールがあげられる。
具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イコシルアルコール及びテトラコシルアルコール等の直鎖のアルキルを有するアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、2-エチルドデシルアルコール、2-エチルトリデシルアルコール、2-メチルテトラデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、2-オクチルノニルアルコール、2-ヘキシルウンデシルアルコール、2-エチルペンタデシルアルコール、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、1-ヘキシルトリデシルアルコール、2-エチルヘプタデシルアルコール、イソイコシルアルコール、1-オクチルペンタデシルアルコール、2-デシルテトラデシルアルコール及び2-テトラデシルオクタデシルアルコール等の分岐アルキル基を有するアルコール等が挙げられる。ノニオン界面活性剤(A)の製造に用いるアルコールとしては市販品を用いてもよい。市販品としては、NEODOL45[Shell Chemicals(株)製]などがあげられる。NEODOL45は炭素数が14~15のアルキルアルコールを含む。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物はアルカリ剤(B)を含む。以下において「アルカリ剤(B)」を「(B)成分」ともいう。アルカリ剤(B)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらのうち水酸化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ剤(B)は濃度を調整することにより、pHを調整することができる。pHは本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象の性質に応じて適宜設定することができる。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物中において、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比[(B)の重量/(A)の重量]は0.1~10である。ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比が0.1~10であることにより、洗浄剤組成物の洗浄性を従来のものよりも優れたものとしかつ、起泡性を低くすることができる。ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比が0.1未満であると気泡性が高くなることがあり、当該重量の比が10を超えると、洗浄力が低下することがある。
ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するアルカリ剤(B)の重量の比は、好ましくは0.1~7、より好ましくは0.5~5である。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物は、更にキレート剤(C)を含んでいてもよい。キレート剤(C)を含むことにより、起泡性をより低くすることができる。以下において「キレート剤(C)」を「(C)成分」ともいう。
キレート剤(C)は、金属を錯体化する作用を有する化合物を指す。使用できるキレート剤としては、特に限定されないが、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸)、EDDS(エチレンジアミンコハク酸)、TTHA(トリエチレンテトラアミン六酢酸)、HEDP(ヒドロキシエタンホスホン酸)、NTMP(ニトリロトリスメチレンホスホン酸)及びPBTC(ホスホノブタントリカルボン酸)等が挙げられる。
(C)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
洗浄剤組成物がキレート剤(C)を含む場合、洗浄力と低起泡性の観点から、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対するキレート剤(C)の重量比[(C)の重量/(A)の重量)が0.2~5であることが好ましく、0.5~3であることがより好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は、さらにヒドロキシル基を1つ以上有し炭素数が1~3の溶剤(D)を含んでいてもよい。洗浄剤組成物がヒドロキシル基を1つ以上有し炭素数が1~3の溶剤(D)を含むことにより、起泡性をより低くすることができ、かつ曇点の低下を抑制し、洗浄対象(分析装置)の曇りを抑制することができる。以下において「ヒドロキシル基を1つ以上有し炭素数が1~3の溶剤(D)」を「(D)成分」ともいう。
【0028】
(D)成分としては、炭素数が1~3のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノールなど)並びに炭素数が1~3のジオール(エチレングリコール及びプロピレングリコール)等があげられる。これらのうち、エタノールが好ましい。
【0029】
洗浄剤組成物が(D)成分を含む場合、ノニオン界面活性剤(A)の重量に対する(D)成分の重量比[(D)の重量/(A)の重量]が0.1~10であることが好ましく、0.5~8であることがより好ましい。
【0030】
洗浄剤組成物は(D)成分以外の他の溶剤(E)を含んでいてもよい。他の溶剤(E)としては水等があげられる。洗浄剤組成物が他の溶剤(E)を含む場合、その含有量は、洗浄剤組成物の重量に基づき70~90重量%であることが好ましく、75~88重量%であることがより好ましい。
【0031】
洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分、および必要に応じ添加される成分[(C)成分、(D)成分および(E)成分]以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、腐食防止剤、酵素などがあげられる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、従来の洗浄剤よりも洗浄性が高く、起泡性が低いので、生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物として有用である。本発明の洗浄剤組成物を適用できる分析装置としては、血液や尿等の生体試料中の成分を自動で分析する自動分析装置などが挙げられる。本発明の洗浄剤組成物は、例えば自動分析装置が備える生体試料を入れる反応容器の洗浄などに用いられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[製造例1:化合物(A-1)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、NEODOL45[Shell Chemicals(株)製]221重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.15重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド88重量部(2モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。次いでプロピレンオキシド116重量部(2モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。次いでエチレンオキシド重量308部(7モル部)を4時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.15重量部で中和し、化合物(A-1)を得た。化合物(A-1)は、一般式(1)中のRがアルキル基(炭素数が14)、-[AO]X-EO-が、2個のエチレンオキシ基からなるブロック、2個のプロピレンオキシ基からなるブロック、及び7個のエチレンオキシ基からなるブロックがこの順に結合した化合物(x=10)と、Rがアルキル基(炭素数が15)、-[AO]X-EO-が、2個のエチレンオキシ基からなるブロック、2個のプロピレンオキシ基からなるブロック、及び7個のエチレンオキシ基からなるブロックがこの順に結合した化合物(x=10)との混合物である。
【0035】
[製造例2:化合物(A-2)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ミリスチルアルコール214重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.17部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド220重量部(5モル部)とプロピレンオキシド174重量部(3モル部)の混合物を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。次いでエチレンオキシド220重量部(5モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.17重量部で中和し、化合物(A-2)を得た。
化合物(A-2)は、一般式(1)中のRがテトラデシル基、-[AO]X-EO-が、5個のエチレンオキシ基と、3個のプロピレンオキシ基とがランダムに結合してなるものに、さらに5個のエチレンオキシ基からなるブロックが結合した化合物(x=12)である。
【0036】
[製造例3:化合物(A-3)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ステアリルアルコール270重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.15重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド484重量部(11モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.15部で中和し、化合物(A-3)を得た。
化合物(A-3)は、一般式(1)中のRがオクタデシル基、-[AO]X-EO-が、11個のエチレンオキシ基からなる化合物(x=10)である。
【0037】
[製造例4:化合物(A-4)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、イソデカノール158重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.10重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド308重量部(7モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.10部で中和し、化合物(A-4)を得た。
化合物(A-4)は、一般式(1)中のRがイソデシル基、-[AO]X-EO-が、7個のエチレンオキシ基からなる化合物(x=6)である。
【0038】
[製造例5:化合物(A-5)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ラウリルアルコール186重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.17重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド220重量部(5モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。次いでプロピレンオキシド重量84部(1.5モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。さらにエチレンオキシド352重量部(8モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.17重量部で中和し、化合物(A-5)を得た。
化合物(A-5)は、一般式(1)中のRがドデシル基、-[AO]X-EO-が、5個のエチレンオキシ基からなるブロックと、1個のプロピレンオキシ基または2個のプロピレンオキシ基からなるブロックとが結合してなるものに、さらに8個のエチレンオキシ基からなるブロックが結合した化合物(x=13.5)である。
【0039】
[比較製造例1:化合物(A’-1)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に、セリルアルコール382重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.24部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド793重量部(18モル部)を6時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.24部で中和し、比較の化合物(A’-1)を得た。化合物(A’-1)は、一般式(1)中のRがヘキサコシル基(炭素数26)-[AO]X-EO-が、18個のエチレンオキシ基である化合物(x=17)である。
【0040】
[比較製造例2:化合物(A’-2)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、イソデカノール158重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.10重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でプロピレンオキシド290重量部(5モル部)を5時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.10部で中和し、化合物(A’-2)を得た。
化合物(A’-2)は、下記一般式(2)においてR1がイソデシル基の化合物である。
R1-O-(PO)5-H (2)
【0041】
[比較製造例3:化合物(A’-3)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、イソデカノール158重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.06重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド132重量部(3モル部)を3時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.06部で中和し、化合物(A’-3)を得た。
化合物(A’-3)は、一般式(1)中のRがイソデシル基、-[AO]X-EO-が、3個のエチレンオキシ基である化合物(x=2)である。
【0042】
[比較製造例4:化合物(A’-4)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた2Lオートクレーブ中に、イソデカノール158重量部(1モル部)及び水酸化カリウム0.20重量部を加え撹拌を開始し窒素封入し130℃に昇温した後、圧力-0.1MPaGで1時間脱水した。次いで160℃に昇温し、圧力0.3MPaG以下でエチレンオキシド925重量部(21モル部)を12時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後60℃に冷却し、酢酸0.20部で中和し、化合物(A’-4)を得た。
化合物(A’-4)は、一般式(1)中のRがイソデシル基、-[AO]X-EO-が、21個のエチレンオキシ基である化合物(x=20)である。
【0043】
表1に示す比率で化合物(A-1)~(A-5)及び(A’-1)~(A’-4)から選ばれる化合物を配合し、2種以上の化合物を配合したものについては10分間混合することで界面活性剤成分(X-1)~(X-4)、(X’-1)~(X’-6)を調製した。表1に記載の比率はモル比を示す。
【0044】
【0045】
[実施例1~14および比較例1~8の洗浄剤組成物の製造]
表2に示す組成で各成分を配合し、10分間混合することで実施例1~14および比較例1~8の洗浄剤組成物を得た。表2における各成分の数値はそれぞれ重量部を示す。実施例1~14の洗浄剤組成物を洗浄剤1~14とし、比較例1~8の洗浄剤組成物を比較洗浄剤1~8とし洗浄性および、起泡性試験に供した。
【0046】
【0047】
<洗浄試験>
実施例1~14および比較例1~8の洗浄剤組成物について以下の方法で洗浄試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
洗浄試験にはマイクロプレート(96ウェルプレート、Sタイプ、住友ベークライト株式会社製)を用いた。
【0048】
(1)血液の前処理
ヘパリン処理ヒツジ全血(コージンバイオ株式会社製)とノルディアN HbA1C用HbA1C前処理液(積水メディカル株式会社製)を質量比で2:3の比率で混合し、前処理試料を得た。
(2)マイクロプレートを用いた洗浄試験
マイクロプレートのウェル(穴)に、前処理試料を300μL注入し、30分保持後、排液した。その後、時間を置かずに、表3に記載の洗浄液を400μL注入し、5分保持後、排液した。その後、時間を置かずに、イオン交換水を用いたすすぎ(イオン交換水を400μl注入し、5分保持後、排液)を2回繰り返した。すすぎ後、すぐに、ドデシル硫酸ナトリウム1重量%水溶液を300μL注入し、5分保持後のウェル中の液を、残存タンパク質抽出液とした。
(3)BCA法による洗浄性評価
次いで、残存タンパク質抽出液中のタンパク質濃度を、TaKaRa BCA Protein Assay Kit(タカラバイオ株式会社製)を用いたBCA法により定量した。具体的には以下の通りである。
(3-1)BSA標準溶液の調製
BSA Standard Solution(2mg/ml)を100μL取り、900μLのイオン交換水を加えてよく混合し、0.2μg/mLのBSA標準溶液を作製した。次に1.5mLのマイクロチューブに、表5に示す配合割合で配合し、BSA標準溶液の希釈液1~7を作製した。
(3-2)BSA標準溶液の測定
(3-1)で作製したBSA標準溶液の希釈液1~7に直接500μLのWorking Solutionを加え、直ちに混合した。次に60℃で60分間反応させ、その後室温に戻した。分光光度計(UV-1800、島津製作所製)を用いて、1mlのキュベットを使用し562nmの吸光度を測定した。ゼロ点校正は水を用いた。次に各濃度の希釈液1~6の吸光度からBlank値(希釈液7の吸光度)を差し引いた値を用いて標準曲線を作成した。
(3-3)サンプル吸光度の測定
1.5mlのマイクロチューブにサンプルを各500μL分注し、更に500μLのWorking Solutionを加え、直ちに混合した。次に60℃で60分間反応させ、その後室温に戻した。前述の分光光度計を用いて、1mLのキュベットを使用し562nmの吸光度を測定した。ゼロ点校正は水を用いた。次に吸光度からBlank値(希釈液7の吸光度)を差し引いた値を用いて、BSA標準溶液の標準曲線からサンプル中のタンパク質濃度を求めた。
残存タンパク質抽出液中のタンパク質濃度が低いということは、血液およびタンパク質に対する洗浄性に優れることを示す。タンパク質濃度は0.5μg/mL以下が好ましい。
【0049】
<起泡性試験>
表3および4に記載の各洗浄液20mLを100mL共栓メスシリンダーに入れ、温度25℃の条件で1秒間に3回振とうするペースで30秒間振とうさせ、振とう直後の泡高さを測定した。泡高さは小さいほうが、起泡性は低い。泡高さは48mL以下が好ましい。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性が高く、起泡性が低いので、生体試料中の成分を分析する分析装置用の洗浄剤組成物として有用である。