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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】二輪車における傾斜検出
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240910BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240910BHJP
   B60W 30/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/02
B60W30/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022143540
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2016235087の分割
【原出願日】2016-12-02
(65)【公開番号】P2022171774
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】10 2015 224 171.8
(32)【優先日】2015-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ レーナー
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/070865(WO,A1)
【文献】特開2012-224316(JP,A)
【文献】特開2009-231938(JP,A)
【文献】特開2010-257414(JP,A)
【文献】特開2015-014948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B62D 6/00 - 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも周囲センサシステムのデータに依存して、少なくとも1つの先行及び/又は対向する二輪車(201,401,501)識別する、当該周囲センサシステムを備えた車両の動作方法であって、
前記二輪車(201,401,501)の傾斜角(303)を少なくとも前記周囲センサシステムのデータに依存して求め、
求められた前記傾斜角(303)に基づいて前記二輪車(201,401,501)の動き推移を予測し、
予測された前記動き推移に基づいて、前記車両を動作させる、動作方法において、
前記予測された動き推移を求めるために、走行路分岐を特定し、
特定された少なくとも1つの走行路分岐において、前記二輪車(201,401,501)の方向転換先となる走行路を、前記傾斜角(303)に基づいて予測する、
ことを特徴とする動作方法。
【請求項2】
二輪車(201,401,501)を識別するために、カメラとして構成された前記周囲センサシステムを用いて記録された画像列に基づいてオプティカルフローを求める、
請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
前記傾斜角(303)を求める際に、前記車両の自己運動を考慮する、
請求項1又は2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記周囲センサシステムによって検出された、前記二輪車(201,401,501)の少なくとも2つの参照点(403,404)に基づいて、前記傾斜角(303)を求める、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項5】
前記周囲センサシステムはカメラとして構成されており、
前記傾斜角(303)を求めるため、前記カメラを用いて記録されたデジタル画像の特定の画素を前記二輪車(201,401,501)に分類する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項6】
前記画像の少なくとも2つのラインにおいて、前記二輪車(201,401,501)に分類される画素の中間カラム値(204)を求め、
前記中間カラム値(204)に基づいて前記傾斜角(303)を求める、
請求項5に記載の動作方法。
【請求項7】
前記動き推移を予測するために、前記二輪車(201,401,501)の速度を求め、
特に、
前記周囲センサシステムのデータを用いて、及び/又は、
前記傾斜角(303)と、読み込まれた地図情報とに基づいて、
前記速度を求める、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項8】
前記予測された動き推移は、前記求められた傾斜角(303)と求められた前記速度とに基づいて予測される走行軌道を含む、
請求項に記載の動作方法。
【請求項9】
前記車両の動作は、警報装置の作動、及び/又は、当該車両の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータの作動であり、
前記二輪車(201,401,501)の前記予測された動き推移に基づき、前記車両が走行している車線503に当該二輪車(201,401,501)が向かっているか否かを特定する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項10】
周囲センサシステムを備えた車両を動作させるための装置であって、
前記装置は、少なくとも1つの先行及び/又は対向する二輪車(201,401,501)を識別し、当該二輪車(201,401,501)の動き推移を予測するように構成されており、
前記動き推移を予測するために、前記周囲センサシステムのデータに依存して前記二輪車(201,401,501)の傾斜角(303)が検出され、
前記車両の動作は、請求項1乃至いずれか一項に記載の動作方法を使用して予測された動き推移に基づいて行われる、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の動作方法のすべてのステップを実施するために構成されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、他車の走行軌道を予測するための運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102004021590号明細書(DE102004021590A1)には、センサを用いて走行中の二輪車の傾斜角を検出するための装置及び方法が記載されており、この装置及び方法では、二輪車の縦軸方向における加速度を垂直加速度センサによって測定する。測定されたこの加速度と重力加速度との比を用いて、傾斜角が求められる。二輪車の傾斜角に依存して、レベリングのためのプロセスが作動又は非作動化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102004021590号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本発明では、周囲センサシステムを備えた車両の動作方法を開示する。本方法では、少なくとも1つの先行及び/又は対向二輪車を、少なくとも周囲センサシステムのデータに依存して識別する。さらに、二輪車の傾斜角を少なくとも周囲センサシステムのデータに依存して求め、求められたこの傾斜角に基づいて二輪車の動き推移を予測する。車両の動作は、この予測された動き推移に基づいて行われる。
【0005】
本発明の方法が奏する利点は、識別された二輪車の動き推移を予測することができ、これにより走行状況のより良好な分析が可能になることである。たとえば、自動運転のための市街地における交差点等の複雑なシナリオにおける状況分析を改善することができる。
【0006】
二輪車を識別するとき、その都度、運転者も一緒に検出することができる。二輪車のみを特定するか、又は、二輪車と運転者とを共に検出するかは、使用事例と使用されるセンサシステムとに応じて変更することができる。
【0007】
「二輪車」とは、たとえば自転車、スクータ、モペッド、モファ又は自動二輪車等の2つの車輪を備えた全ての車両を意味し得る。「周囲センサシステム」としては、慣用されている全てのセンサ及び検出手段を使用することができ、その中には、カメラ、ステレオビデオカメラ、超音波センサ、レーダセンサ、ライダ及びレーザが含まれる。
【0008】
本方法の他の一実施形態では、二輪車を識別するために、カメラとして構成された周囲センサシステムを用いて記録された画像列に基づいてオプティカルフローを求める。
【0009】
求められたオプティカルフローは有利には、対象物をセグメント化し、これにより、画像領域における対象物クラスのピンポイントの探索を可能にするために使用することができる。オプティカルフローを用いることにより、色、テクスチャ、及び対象物への点の分類に従って、セグメント化を最適化することができる。典型的な対象物クラスは、歩行者、乗用自動車、貨物自動車、自転車運転者、自動二輪車運転者、ベビーカー、道路標識、道路、及び、交通において現れる他の物、道路利用者、建物、インフラストラクチャ要素、工事現場又は景観特徴である。
【0010】
本方法の有利な一実施形態では、傾斜角を求める際に車両の自己運動を考慮する。
【0011】
かかる実施形態は、自己運動を考慮することにより傾斜角をより正確に求めることができるという利点を奏する。自己運動はたとえば、ロール角を表す測定データを介して、たとえばカメラデータ、加速度センサデータ及び/又は回転速度センサデータ等を介して得ることができる。さらに、車両の自己運動と、映像内の道路の光学的特徴とに基づいて車道路面を特定することもできる。この車道路面も、有利には、カメラを用いて記録された画像内における対象物のセグメント化の改善に使用することができる。
【0012】
本方法の他の一実施形態では、周囲センサシステムによって検出された、二輪車の少なくとも2つの参照点に基づいて、傾斜角を求める。
【0013】
かかる実施形態により、傾斜角を迅速かつ簡単に求めることができるという利点が奏される。二輪車の少なくとも2つの参照点、たとえば、タイヤが車道に接触する接地点とヘッドランプ又はテールランプに基づいて、二輪車の傾斜直線を求めることができ、これにより二輪車の傾斜角を求めることができる。参照点としては、他の任意の点を使用することも可能であり、たとえばタイヤ、フェンダ、サスペンション、フットレスト、ハンドル、ナンバープレート、運転者の位置、サドルバッグ、タンク、及び、解析対象の二輪車の他の典型的な特徴を使用することができる。これらの参照点はたとえば、公知の画像処理手法を用いて求めることができる。これと共に、二輪車に乗っている運転者の姿勢も解析して、これを動き推移の特定の際に考慮することもできる。
【0014】
本方法の他の一実施形態では、周囲センサシステムはカメラを含む。かかる実施形態では、傾斜角を求めるために、カメラを用いて記録されたデジタル画像の特定の画素を二輪車に分類する。
【0015】
上述の実施形態の利点は、カメラデータを用いて、二輪車を周囲から分離する対象物認識が行われることであり、記録されたカメラ画像内では、個々の領域が二輪車に分類される。このことにより、二輪車の位置のより詳細な解析が可能となり、ないしは傾斜角を求めることができる。
【0016】
本方法の他の一実施形態では、画像の少なくとも2つのラインにおいて、二輪車に分類される画素の中間カラム値がそれぞれ求められる。次に、この中間カラム値に基づいて二輪車の傾斜角が求められる。
【0017】
本方法のかかる実施形態により奏される利点は、画像のラインごとの読み出しにより、傾斜角を非常に迅速に求めることができることである。全てのラインを読み出す必要はない。というのも、中間カラム値に基づいて二輪車の傾斜直線ないしは傾斜角を求めるためには、2つの特定の中間カラム値で既に十分だからである。求められるカラム値の数は任意に選択することができ、ないしは、記録された画像に合わせて適応調整することもできる。
【0018】
本方法の特に有利な実施形態では、予測動き推移を求めるために走行路分岐を求める。少なくとも1つの求められた走行路分岐において、二輪車の傾斜角に基づき、二輪車の方向転換先である走行路が予測される。
【0019】
本方法のかかる実施形態により奏される利点は、走行路分岐が求められ又は既知である場合、二輪車の傾斜角のみに基づいて、二輪車及び/又は二輪車の運転者がどの走行路に向かって方向転換するかを予測できることである。ここで「走行路分岐」とは、車両及び/又は運転者が複数の走行路に進入できる全ての道路形状及び/又は現在走行中の走行路から出られる全ての道路形状をいう。走行路分岐には特に、想定し得る全ての交差点状況、ロータリー、道路の出口及び入口、駐車場及び/又は停車地帯及び/又は停車路肩の進入口、並びに、森林道及び/又は野道への分岐が含まれる。二輪車が方向転換操縦を行い得る状況も、同様に考慮することができる。
【0020】
走行路分岐はたとえば、周囲センサシステムを用いて検出することができ、及び/又は、地図素材に基づいて特定することができる。この地図素材はたとえば、デジタル地図の形態であるか、又は、車両によって受け取ることができるものである。
【0021】
本方法の他の一実施形態では、動き推移を予測するために二輪車の速度を求める。これは、特に周囲センサシステムのデータを用いて、これと共に又はこれに代えて、傾斜角と読み込まれた地図情報とに基づいて求められる。
【0022】
本方法の上述の実施形態により奏される利点は、傾斜角の他にさらに二輪車の速度が分かることである。このことにより、二輪車の動き推移をより正確に予測することができる。
【0023】
地図情報が存在し、この地図情報から走行路の曲率が導き出される場合、傾斜角に基づいて二輪車の速度を推定することができる。このことにより、速度を直接測定できるセンサシステム、又は、複数の測定サイクルを介しての速度の導出が不要となる。このことは場合によっては、低コストのセンサシステムを用いて衝突回避支援システムを実現できるようにするために重要な前提条件となる。
【0024】
本発明の他の一実施形態では、予測される動き推移は、求められた傾斜角と求められた速度とに基づいて予測される走行軌道を含む。
【0025】
本方法の上述の実施形態により奏される利点は、二輪車の傾斜角と速度とを用いることにより二輪車の走行軌道の非常に正確な予測が可能になることである。この軌道を用いることにより、複数の異なる時点における二輪車の位置を予測することができる。この情報は、交通状況を分析するため、及び、危険の場合には措置をとるために使用することができ、これにより利点が奏される。
【0026】
本方法の有利な一実施形態では、車両の動作は、警報装置の作動及び/又は車両の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータの作動を予定する。かかる実施形態では、二輪車の予測された動き推移に基づき、車両が通行している車線に二輪車が向かっているか否かを特定する。
【0027】
本方法のかかる実施形態により奏される利点は、現在の走行状況に基づいて、危険な状況になっている場合には警報装置を使用して、運転者及び/又は他車及び/又は他の運転者及び/又は道路利用者に対して警報信号を生成できることである。さらに、車両の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータの作動を行うことも可能である。たとえば、車両が通行している車線に二輪車が向かっていて、衝突のおそれがあると判断される場合には、本方法を使用することにより、衝突を回避するため、及び/又は可能性のある損害を軽減するため、緊急制動及び/又は待避運転及び/又は走行推進力への他の介入を行うことができる。車両が通行している車線は、たとえば周囲センサシステム及び/又は地図情報を使用して特定することができる。交通状況をより正確に分析して、実際に衝突のおそれがあるか否かを判断するため、車両の軌道を求めることもできる。これが求められた場合には、二輪車の予測された動き推移、及び、場合によっては二輪車の走行軌道と合わせて調整することができる。
【0028】
本願ではさらに、周囲センサシステムを備えた車両を動作させるための装置についても特許を請求している。当該装置は、少なくとも1つの先行及び/又は対向二輪車を識別し、二輪車の動き推移を予測するように構成されている。動き推移を予測するためには、周囲センサシステムのデータに依存して二輪車の傾斜角を検出する。車両の動作は、特許請求の範囲に記載されている方法を使用して予測された動き推移に基づいて行われる。
【0029】
本願ではさらに、特許請求の範囲に属する方法の全てのステップを実施するために構成されたコンピュータプログラムについても、特許を請求している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】方法の概略的な流れ図である。
図2】カーブ位置にある対向自動二輪車を示す図である。
図3】自動二輪車に及ぼされる力の影響を示す概略図である。
図4】傾斜角測定の一態様を示す図である。
図5】カーブにある自動二輪車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例
以下の実施例では、車両に周囲センサシステム、特にカメラと、当該車両の動作を行うための装置とが備えつけられている。この装置は、二輪車を識別し、二輪車の傾斜角を求め、傾斜角に基づいて二輪車の動き推移を予測するように構成されている。装置は、予測された動き推移に基づいて車両を動作させることができる。動き推移を予測するためには、装置上においてコンピュータプログラムを用いて、図1において概略的な流れが示されている方法を実施する。本方法は、ステップ101で開始する。
【0032】
ステップ102においてまず、カメラを用いて記録された映像と、公知の分類手法(たとえばニューラルネットワーク、決定木、ビオラ・ジョーンズ法)とを使用して、先行又は対向二輪車201,401,501を識別する。車両の自己運動と、映像内の道路208の光学的特徴とに基づいて車道路面402を推定することができる。こうするためにはたとえば、車道路面に相当する画像領域をテクスチャに基づいて抽出するセグメント化手法を使用することができる。これに代えて、画像列から算出されたフローベクトルと、ベース面の期待される動きの場合のフローベクトルとを比較することもでき、このベース面は、車両の自己運動が既知である場合にカメラの視野から求めることができる。車両に対して相対移動するベース面とフローベクトルが近似的に一致する画像領域は、ベース面ないしは車道路面に分類することができる。
【0033】
画像列に基づいて求められるオプティカルフローは、対象物をセグメント化し、ひいては画像領域における対象物クラスのピンポイント探索を行うために、重要な役割を果たし得る。画像内において識別された対象物については、対応する画像領域207,407が特定され、方形(区切りボックス)206,406として示される。本実施例では自動二輪車201,401が識別され、これに区切りボックス206,406が適切に付される。次に、この画像領域207,407内において、対象物に分類される(すなわち「背景」に分類されない)全ての画素が特定される。こうするためには、たとえば閾値法又はフェルツェンスツヴァルプ・フッテンロッハー・アルゴリズム(Felzenszwalb-Huttenlocher-Algorithmus)等のセグメント化のための公知の画像処理法を用いることができる。後者の手法は、画像を対象物においてセグメント化するエッジ指向の手法である。このアルゴリズムは、まず最初に、画像の各2つの隣接する画素間にエッジを置く。このエッジは、それぞれ隣接する画素のたとえば輝度差及び色の差等の特徴に応じて重み付けされる。次に、各個々の画素から画像セグメントが形成され、この画像セグメントは、1セグメントにおけるエッジ重み付けの差が可能な限り小さく抑えられるように、かつ、隣接するセグメント間のエッジ重み付けの差が可能な限り大きくなるようにマージされる。
【0034】
次にステップ103において、二輪車201,401の傾斜角303を求める。こうするためには、対象物に分類される全ての画素202の水平方向位置の中央値を求めることにより、画像領域207,407の各画像ライン203について一種の「中心点」ないしは中間カラム値204が求められる。最後に補償計算によって、中間カラム値204を通る直線205,405を近似的に求めることができる。反復的なRANSAC法により、場合によってはアウトライヤをフィルタリング除去し、直線205,405をさらに良好に特定することができる。水平線に対する直線205,405の傾斜は、自動二輪車201,401の傾斜を表し、これにより自動二輪車201,401の傾斜角303を求めることができる。
【0035】
傾斜角303を求めるための上述の方法は、全ての画像ライン203(破線及び実線203)に適用されることを要しない。区切りボックス206,406の垂直方向の寸法にわたって分布している少なくとも2つの画像ライン203を考察し、これらの画像ライン203の中で、二輪車に分類される画素(実線202)と、これらの画素202(実線203)の中間カラム値204とを求めれば十分である。これにより、用法がほぼ同一である場合には、計算量が格段に削減する。
【0036】
画素に代えて、周囲についての3次元情報がたとえば3次元点群の形態で得られる場合、たとえば、レーザスキャナ又はステレオカメラによって生成できるような周囲の3次元情報等が得られる場合、他の対象物との距離と、特定しやすいベース面/車道平面208からの隆起とによって、対象物のセグメント化をさらに高信頼性に実施することができる。傾斜直線205,405は、上述の「中間点」を用いる手法と同様に求めることができる。
【0037】
これに代えて、ステップ103において、周囲センサシステムにより検出された、二輪車201,401の少なくとも2つの参照点403,404に基づいて、傾斜角303を求めることもでき、この実施例では図4に示されているように、参照点として接地点403及びヘッドランプ404を選択している。関連する画像区画207,407の下部分において、車道との二輪車の接触点である接地点403を探索する。二輪車201,401の距離が(たとえばレーダ又はステレオカメラを用いて測定することにより)既知であり、かつ車道402が既知であるないしは推定されている場合、接地点403が存在する水平方向画像領域を特定することができる。
【0038】
次に、公知の画像処理手法(たとえばBLOB検出)により、画像における二輪車201,401のヘッドランプ404及び/又はテールランプの位置を求める。その際には画像内において、画素が類似する、すなわち画素の色又は/及び輝度値が類似する、区切られかつ連結している領域を特定する。自動二輪車の場合、日中であってもランプ404のスイッチオンが義務づけられているので、これにより画像中における識別が簡単になる。このようにして、接地点403及びランプ位置404により、傾斜直線205,405ひいては傾斜角303を近似的に求めることができる。
【0039】
ステップ104において、傾斜角303に基づき、二輪車201,401,501の動き推移を予測する。二輪車201,401,501が向かう車道208,502,503を予測するためには、必ずしも二輪車201,401,501の速度が必要というわけではない。二輪車201,401,501が有意に傾斜している場合、すなわち傾斜角303が相当大きい場合には、このことから、二輪車201,401,501が、湾曲した走行路(曲率|κ|>0)上にて(|v|>0の絶対値の速度で)移動中であること、及び、この曲率κの向きがどの方向であるかを推定することができる。
【0040】
二輪車がたとえば曲がるか否か、すなわちどの走行路に向かって方向転換するかを判定するためには、多くの使用事例において、上記情報だけで既に十分である。かかるターン分類によって既に、交通状況の解釈が可能となる。地図から得られる走行路分岐ないしは走行路推移についての情報と、二輪車201,401,501が道路208及び/又は自転車路を通行しているとの仮定とを組み合わせることにより、二輪車201,401,501の動き推移の良好な予測が可能となる。
【0041】
走行路分岐はたとえば、周囲センサシステムを用いて検出することができ、及び/又は、地図素材に基づいて特定することができる。この地図素材はたとえば、デジタル地図の形態であるか、又は車両によって受け取ることができるものである。
【0042】
方向転換先となる走行路を予測するため、特定の閾値を規定することができ、これは、当該閾値に達すると特定の走行路を予測する、というものである。かかる閾値は、固定的に設定することができ、及び/又は、現在の道路推移と識別された走行路分岐とに応じて適応調整することができる。たとえば、二輪車201,401,501が現在通行中である道路と脇道が交差する角度に応じて、当該脇道の通行を予測する基準となる、傾斜角303の閾値を変化させることができる。
【0043】
走行状況の中には、傾斜角303と二輪車201,401,501の位置とにのみ基づいて既に、二輪車501がさらに進んだときに車線502,503を変えて対向交通の車線503に来るか否かを導出できる走行状況も幾つか存在する(図5参照)。
【0044】
二輪車201,401,501の動き推移をより正確に予測するため、オプションのステップ103aにおいて二輪車201,401,501の速度を求めることができる。
【0045】
この速度はたとえば、周囲センサシステムに包含されるレーダセンサを用いてドップラー周波数を解析することにより直接測定することができ、及び/又は、対象物距離(車両から二輪車201,401,501までの距離)の複数回の測定を介して間接的に求めることができる(時間的トラッキング)。この複数回の測定は、たとえばカメラ及び/又はステレオビデオカメラを用いて行うことができ、このカメラ及び/又はステレオビデオカメラも、周囲センサシステムに包含されることができる。正確さを向上させるためには、さらに車両の自己運動を考慮することもできる。この自己運動はたとえば、走行距離測定又は慣性航法を介して求めることができる。慣性航法の場合、慣性航法システムからのデータを使用することができる。ここで「慣性航法システム」とは、加速度センサ及びジャイロスタビライザ及び/又は回転速度センサを用いる3次元測定システムをいう。また、ロール角を表す情報ひいてはセンサシステムのロール運動を補償するように考慮することもできる。
【0046】
上述の態様に代えて、又はこれと共に、読み込まれた地図情報を使用して二輪車201,401,501の速度を求めることもできる。この地図情報は特に、二輪車201,401,501が通行する区間についての情報を含むことができ、たとえば、二輪車201,401,501が通るカーブの推移、及び/又は、交差点における交通状況、右左折の可否、信号、優先通行規則等についての情報を含むことができる。さらに、地図の地図情報が、道路推移の曲率κを当該地図情報に基づいて求めることができるほど十分な精度である場合には、以下の数式
tan α=F/F=κν/g
を用いて、二輪車201,401,501の速度を求める及び/又は推定することができる。上記式は、二輪車201,401,501が安定的にカーブ走行する場合に近似的に成立する。αは傾斜角であり、F304は遠心力であり、F305は重力であり、gは重力加速度であり、vは速度である。これらの力はそれぞれ、運転者302が存在する場合には運転者302も含めて、二輪車201,401,501の重心301に作用する(図3参照)。1つの単画像と、既知の道路曲率κとにのみ基づいて、二輪車201,401,501の速度を求めることができる。このことは、低コストのセンサシステムを用いて衝突回避支援システムを実現できるようにするため、及び、たとえば被害軽減ブレーキアシスト等の支援システムに係る迅速かつ早期の判断を可能とするために重要な前提条件である。
【0047】
二輪車201,401,501の傾斜角303及び速度の双方が既知である場合には、これらの値から二輪車201,401,501の走行軌道を求めることができる。この走行軌道により、二輪車201,401,501の将来の動き推移をさらに正確に判断することができる。
【0048】
ステップ105において、二輪車201,401,501の予測された動き推移に基づき、車両を動作させる。
【0049】
たとえば、予測された動き推移から、二輪車501が車両の車線上を走行することとなり、衝突のおそれがあると推定できる場合には、車両の運転者及び/又は他の道路使用者に対して警報信号を送信することができる。これに代えて、又はこれと共に、車両の走行推進力に介入するアクチュエータを作動させることもできる。たとえば、制動操作及び/又は待避操縦を自動的に行うことができる。よって、かかる機能は、高度に自動化された又は全自動の車両においても使用することができる。
【0050】
事故のおそれがあるか否かは、たとえば、二輪車201,401,501の求められた走行軌道の曲率と、たとえばカメラデータを用いて求められた、走行路推移の曲率、又はナビゲーション地図の形態の走行路推移の曲率とを比較することにより、予測することができる。
【0051】
本方法は、ステップ106において終了する。
図1
図2
図3
図4
図5