(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】シールド電線の端末処理のための芯線位置検出装置、及び、シールド電線の端末処理方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20240910BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2022195798
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】間渕 実良
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198711(WO,A1)
【文献】特開2018-088352(JP,A)
【文献】特開2016-197962(JP,A)
【文献】特開2007-132812(JP,A)
【文献】特開2021-015700(JP,A)
【文献】特開2001-357960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂のシースで被覆されたシールド材の内側に、複数本の芯線が撚られた状態で内装されたシールド電線の端末処理の際の、前記シールド材の内側の複数の芯線の電線断面内での相互位置関係を検出する芯線位置検出装置であって、
前記シールド電線の先端部の端面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像した前記端面の画像から該端面の位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を割り出す手段と、
前記端面の位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置と、予め仕様により定められている前記シールド電線の複数の芯線の撚り合わせデータとから、前記端面から基端側に所定長だけ離れた所定位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を算出する手段と、
を備える、
芯線位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の芯線位置検出装置により、前記所定位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を算出する算出工程と、
前記算出工程により得られた前記所定位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置が、予め定めた基準角度位置となるように前記シールド電線をその軸線周りに回転させる回転工程と、
前記回転工程で回転させた前記シールド電線を前記基準角度位置に保持した状態で、前記所定位置から先端側の前記シースを剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、
前記剥ぎ取り工程のシースの剥ぎ取りにより露出したシールド材の長さが所定長となるようにトリミング加工し、トリミング加工後のシールド材を、残されたシースの端縁の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分を、残されたシースの端部外周に被せる折り返し工程と、
前記折り返し工程での前記シールド材のトリミング加工および折り返しにより露出した前記複数の芯線の撚りを解いて、前記基準角度位置上において直線状に伸長させる伸長工程と、
前記伸長工程で前記基準角度位置上において直線状に伸長させた複数の芯線の先端の絶縁被覆を除去して、露出した芯線導体にそれぞれインナー端子を固定する固定工程と、
前記シースの端部に被さるように折り返した前記シールド材の折り返し部にアウター端子のシールド材加締片を加締め固定する加締め工程と、
を備える、
シールド電線の端末処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の芯線位置検出装置により、前記所定位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を算出する算出工程と、
前記算出工程により得られた前記所定位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置が、予め定めた基準角度位置となるように前記シールド電線をその軸線周りに回転させる回転工程と、
前記回転工程で回転させた前記シールド電線を前記基準角度位置に保持した状態で、前記所定位置より、前記シールド材の外周に嵌めるスリーブの軸線方向の長さ分だけ基端側に設定した基端側所定位置から先端側の前記シースを剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、
前記剥ぎ取り工程のシースの剥ぎ取りにより露出したシールド材の外周に該露出したシールド材の基端側に位置させて前記スリーブを嵌めて固定するスリーブ固定工程と、
前記シースの剥ぎ取りにより露出したシールド材の長さが所定長となるようにトリミング加工し、トリミング加工後のシールド材を前記スリーブの端部の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分を、前記スリーブの外周に被せる折り返し工程と、
前記折り返し工程での前記シールド材のトリミング加工および折り返しにより露出した前記複数の芯線の撚りを解いて、前記基準角度位置上において直線状に伸長させる伸長工程と、
前記伸長工程で前記基準角度位置上において直線状に伸長させた複数の芯線の先端の絶縁被覆を除去して、露出した芯線導体にそれぞれインナー端子を固定する固定工程と、
前記スリーブに被さるように折り返した前記シールド材の折り返し部にアウター端子のシールド材加締片を加締め固定する加締め工程と、
を備える、
シールド電線の端末処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の端末処理の際に複数本の芯線の相互位置関係を検出する芯線位置検出装置、及び、その装置を用いて実行するシールド電線の端末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種あるシールド電線の種類の中に、高速通信用のシールド電線として、絶縁樹脂のシースで被覆されたシールド材(主に編組)の内側に、複数本(例えば2本)の芯線(信号線)が、螺旋状に撚られた状態で内装されたものがある。
【0003】
この種のシールド電線では、2本の芯線が撚られた状態で内装されているので、電線の長さ方向の位置によって、電線断面内における2本の芯線の並ぶ位置(例えば、水平線を基準にした並び角度)が異なる。同じ並び位置になるのは、2本の芯線の撚り合わせのピッチごとであり、この撚り合わせの条件は、電線の種類ごとに予め仕様で定められている。
【0004】
シールド電線の接続にはシールドコネクタが用いられており、この種のシールド電線の端末に装着されるシールドコネクタの一例として、
図3に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このシールドコネクタ200は、樹脂製のアウターハウジング201と、その内部に挿入される金属製のアウター端子(シールドシェル)202と、アウター端子202の筒状のハウジング収容部202aの内部に配置される樹脂製のインナーハウジング203と、インナーハウジング203の端子収容孔203aに装着される金属製のインナー端子(内部端子)205と、を有している。なお、インナーハウジング203とインナー端子205との間に、必要に応じてインピーダンス調整部材204が配置されることもある。
【0006】
このシールドコネクタ200をシールド電線10に取り付けるための端末処理は、例えば、次のように行っている。ここで、シールド電線10は、最外周の樹脂製のシース11の内側に編組(シールド材)12を配置し、編組12の内側に2本の芯線15、15を撚り合わせて配置したものである。なお、芯線15、15と編組12との間にシールド箔(アルミや銅の箔)を配置したものもある。
【0007】
端末処理の際には、まず、シールド電線10の端末のシース11を所定長さだけ剥ぎ取る。そして、シールド電線10の端末のシース11の剥ぎ取りにより、2本の芯線15を包囲する編組12を露出させる。次に、編組12の基端部外周に金属製筒状のスリーブ13を嵌め込んで加締め固定する。
図3中の(a)の状態である。
【0008】
次に、編組12の端末部を寸法カット(トリミング加工)し、スリーブ13の端縁で編組12を電線の基端側に折り返して、編組12の折り返し部12aを、スリーブ13の外周に重なるように被せる。
図3中の(b)の状態である。
【0009】
このように編組12をトリミング加工して折り返すことで、2本の芯線15、15が露出する。ここで、芯線15、15の外周を覆うようにシールド箔が配置されている場合には、編組12の折り返し部12aの端部でシールド箔を切り取ることで、2本の芯線15、15を露出させる。
【0010】
この段階では、芯線15、15に撚りが残っているので、少なくとも端末部分の撚りを解いて2本の芯線15、15を直線状に伸長させてから、芯線15、15の先端部の絶縁被覆15b、15bを剥がし、芯線導体15a、15aを露出させて、芯線導体15a、15aにそれぞれインナー端子20、20を加締め接続する。
【0011】
その後、インナー端子20、20をインナーハウジング203の端子収容孔203a、203aに収容し、インナーハウジング203をアウター端子202の筒状のハウジング収容部202aに収容する。そして、アウター端子202の編組加締片202bを、編組12の折り返し部12aとスリーブ13とに加締め圧着すると共に、アウター端子202のシース加締片203cをシース11に加締め固定する。これによりインナーモジュール200Aが完成し、このインナーモジュール200Aをアウターハウジング201に挿入することで、シールド電線10の端末に対するシールドコネクタ200の装着が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このような構成の高速通信用のシールドコネクタ200では、外部から芯線15、15へのノイズの影響を可能な限り排除したいという要求がある。そのためには、編組(シールド材)12から露出した部分の2本の芯線15、15の長さを厳密に管理する必要がある。
【0014】
図4および
図5は、編組(シールド材)12と2本の芯線15、15とインナー端子20の関係の概略を示している。
図4は、編組12の端部12eの位置A(図中△で示す位置)での2本の芯線15、15の配置とインナー端子20への接続部の位置での2本の芯線15、15の配置が、電線周方向に異なっている(ズレている)場合を示しており、上側の図は側面視図、下側の図は上面視図を示している。また、
図5は、編組12の端部12eの位置A(図中△で示す位置)での2本の芯線15、15の配置とインナー端子20への接続部の位置での2本の芯線15、15の配置が、電線周方向に一致している場合(芯線15、15の配置が揃っている場合)を示しており、上側の図は側面視図、下側の図は上面視図を示している。
【0015】
図4および
図5に示すように、編組12の端部12eからインナー端子20までの距離Lは一定に定められており、この間の芯線15、15の実長(電線長)を最短に管理することが、伝送性能向上のために重要である。そのため、露出した芯線15、15を極力直線状に伸長させて電線長を最短化することが望ましい。
【0016】
ところが、
図4に示すように、撚りを解いて直線状に伸長させた2本の芯線15、15の配置が、編組12の端部12eの位置とインナー端子20への接続部の位置とで異なってしまう場合がある。その場合は、芯線15の撚りの解きが不完全であり、それだけ直線状でなくなるぶん、露出した芯線15に余長が生じることになる。
【0017】
また、アウター端子202の編組加締片202bを編組12に加締めた時に、2本の芯線15、15に加締めによる外力Nが及ぶことで、2本の芯線15、15の並び位置に変動が生じて、そのために2本の芯線15、15に長さ方向のズレが発生することがある。2本の芯線15、15に余長や長さ方向のズレが発生すると、それだけ伝送性能が低下するおそれがある。
【0018】
したがって、
図5に示すように、撚りを解いて直線状に伸長させた2本の芯線15、15の配置が、編組12の端部12eの位置とインナー端子20への接続部の位置とで一致しているようにする(捩れのない状態にする)ことが望まれる。
【0019】
しかし実際には、上述のように、端末処理の工程の進め方によって、シース11や編組(シールド材)12で隠れた状態のときの内側の芯線15、15の配置を外部から知ることができないために、編組(シールド材)12から露出した芯線15、15の配置を、両端(編組12の端部12eの位置とインナー端子20への接続部の位置)で揃えることができないことがあった。
【0020】
以上の問題は、
図3に示すようにスリーブ13を用いる場合に限らず、スリーブ13を用いず、シース11の端部に編組12の折り返し部12aを直接被せて、その部分にアウター端子202の編組加締片202bを加締める場合にも共通して生じることであった。
【0021】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド材から露出した芯線の配置を基端と先端で揃えることができ、端末処理部の伝送特性の向上に貢献することのできる、シールド電線の端末処理のための芯線位置検出装置、及び、その芯線位置検出装置を用いたシールド電線の端末処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した目的を達成するために、本発明に係る芯線位置検出装置は、下記を特徴としている。
【0023】
絶縁樹脂のシースで被覆されたシールド材の内側に、複数本の芯線が撚られた状態で内装されたシールド電線の端末処理の際の、前記シールド材の内側の複数の芯線の電線断面内での相互位置関係を検出する芯線位置検出装置であって、
前記シールド電線の先端部の端面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像した前記端面の画像から該端面の位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を割り出す手段と、
前記端面の位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置と、予め仕様により定められている前記シールド電線の複数の芯線の撚り合わせデータとから、前記端面から基端側に所定長だけ離れた位置における電線断面内での前記複数の芯線の配置を算出する手段と、
を備える、
芯線位置検出装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シースやシールド材で隠れた状態のときにも、シールド材の内側の芯線の配置を予測的に検出することができる。そのため、シールド材を除去して芯線を直線状に伸長させる前の段階で、シールド材から露出する芯線の配置を基端と先端で揃えることができる。そのため、インナー端子やアウター端子を取り付けた後でのシールド材から露出した芯線の直線性と寸法精度の向上を図ることができ、その結果として、端末処理部の伝送特性の向上に貢献することができる。
【0025】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態の芯線位置検出装置を用いた端末処理方法の工程説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態の芯線位置検出装置を用いた端末処理方法の工程説明図である。
【
図3】
図3は、従来のシールドコネクタを示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、編組(シールド材)と2本の芯線とインナー端子の関係の概略を示し、編組から露出する2本の芯線の配置が基端と先端とで異なっている場合を示す図で、上側の図は側面視図、下側の図は上面視図である。
【
図5】
図5は、編組(シールド材)と2本の芯線とインナー端子の関係の概略を示し、編組から露出する2本の芯線の配置が基端と先端とで揃っている場合を示す図で、上側の図は側面視図、下側の図は上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態の芯線位置検出装置を用いた端末処理方法の工程説明図である。
【0029】
図1に示すように、ここで使用するシールド電線10は、最外周の樹脂製のシース11の内側に編組(シールド材)12を配置し、編組12の内側に2本の芯線15、15を螺旋状に撚り合わせて配置したものである。なお、必要に応じて、芯線15、15と編組12との間にはシールド箔(アルミや銅の箔)が配置されている。
【0030】
第1実施形態の端末処理方法は、編組12を押さえるための筒状のスリーブ13(
図2参照)を用いない場合の例である。
【0031】
ここで使用する芯線位置検出装置は、絶縁樹脂のシース11で被覆された編組(シールド材12)の内側に、2本の芯線15、15が、螺旋状に撚られた状態で内装されたシールド電線10の端末処理の際の、シース11およびシールド材12の内側に隠れる2本の芯線15、15の電線断面内での相互位置関係を検出する芯線位置検出装置である。
【0032】
その構成として芯線位置検出装置は、
図1(a)に示すように、シールド電線10の先端部の端面を撮像するカメラ(撮像手段)100と、カメラ100の撮像した端面の画像から端面の位置における電線断面A2内での2本の芯線15、15の配置(相互位置関係)を割り出す手段と、端面の位置における電線断面A2内での2本の芯線15、15の配置と、予め仕様により定められているシールド電線10の2本の芯線15、15の撚り合わせデータとから、端面A2から基端側に所定長だけ離れた位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出する手段と、を備えている。なお、端面の位置における電線断面A2内での2本の芯線15、15の配置を割り出す手段と、位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出する手段は、特に図示しないが、例えばコンピュータ等により構成されている。
【0033】
第1実施形態の端末処理方法では、まず、(a)に示すように、芯線位置検出装置により、位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出する。この場合の位置Aとは、図中「△」のマークでその位置を示すが、(c)~(f)にて示すように、折り返した編組12の端部の位置である。つまり、編組12の端部から露出する芯線15、15の基端の位置に相当する。
【0034】
位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出したら、次に(b)に示すように、シールド電線10の位置Aを加工基準位置に移動(矢印X1の動作)すると共に、位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置が、予め定めた基準角度位置となるようにシールド電線10をその軸線周りに回転させる(矢印X2の動作)。ここでは、水平方向に2本の芯線15、15が並ぶ位置(シールド電線10の回転方向の角度位置)を基準角度位置としている。このようにシールド電線10を回転させることにより、シールド電線10の端面の位置における電線断面A2内での2本の芯線15、15の配置は、撚りがあるぶん基準角度位置(水平方向に並ぶ位置)から外れることになる。
【0035】
次に(c)に示すように、回転させたシールド電線10を基準角度位置に保持した状態で、位置Aから先端側のシース11を剥ぎ取る(矢印X3の動作)。このシース11の剥ぎ取りにより、内部の編組12が露出する。このときは、編組12の内側に2本の芯線15、15が隠れている。次にシース11の剥ぎ取りにより露出した編組の長さが所定長となるようにトリミング加工する。例えば、(c)に想像線で示すように所定長さにカットする。そして、トリミング加工後の編組12を、残されたシース11の端縁の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分12aを、残されたシース11の端部外周に被せる。この段階で、撚りが与えられた2本の芯線15、15が露出する。
【0036】
次に(d)に示すように、編組12のトリミング加工および折り返しにより露出した2本の芯線15、15の撚りを解いて、2本の芯線15、15を、基準角度位置上において直線状に伸長させる。このように撚りを解いた際に、2本の芯線15、15の配置は、編組12から露出している基端から先端まで揃うことになる。それは、予め撚り合わせのデータに基づいて位置Aの電線断面A1内での芯線15、15の配置を検出し、位置Aでの芯線15、15の配置が基準角度位置となるように、(b)の工程段階で回転調整してあるからである。
【0037】
続いて(e)、(g)に示すように、基準角度位置上において直線状に伸長させた2本の芯線15、15の先端の絶縁被覆15b、15bを除去して、露出した芯線導体15a、15aにそれぞれインナー端子20を固定する。即ち、インナー端子20の接触導通部20aから後方に延びる導体加締片20bを芯線導体15aに加締め、インナー端子20の導体加締片20bより後方にある被覆加締片20cを芯線15の絶縁被覆15bに加締める。
【0038】
インナー端子20の固定が済んだら、(f)にて示すシース11の端部に被さるように折り返した編組12の折り返し部12aに、アウター端子202(
図3参照)の編組加締片(シールド材加締片)202bを加締め固定する。以降は、
図3を用いた前述の説明の順番で組み立て工程を完了することにより、シールドコネクタの固定されたシールド電線10の端末を得ることができる。
【0039】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、シース11や編組(シールド材)12を処理する前にシース11や編組12の内側に隠れていて外部から視認できない2本の芯線15、15の配置を予測して検出することができる。そのため、編組12の処理後に編組12から露出する2本の芯線15、15の配置を、露出部分の基端から先端まで揃えることができて、露出部分の芯線15、15を基端から先端まで直線状に伸長させることができる。その結果、露出部分の芯線15、15の余長を削減できると共に、露出している2本の芯線15、15の長さを揃えた状態で芯線先端の加工を行うことができ、シールドコネクタの伝送特性の向上が図れる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態の端末処理方法を説明する。
図2は、第2実施形態の端末処理方法の工程説明図である。
使用するシールド電線10は第1実施形態と同じである。また、使用する芯線位置検出装置も第1実施形態と同じである。
この第2実施形態の端末処理方法は、編組12を押さえるための筒状のスリーブ13を用いる合の例である。
【0041】
第2実施形態の端末処理方法では、まず、(a)に示すように、芯線位置検出装置により、位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出する。この場合の位置Aとは、図中「△」のマークでその位置を示すが、(d)~(h)にて示すように、折り返した編組12の端部の位置である。この例では、スリーブ13を用いるので、後述するようにそのスリーブ13の電線先端側の端縁の位置である。つまり、編組12の端部から露出する芯線15、15の基端の位置に相当する。
【0042】
位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置を算出したら、次に(b)に示すように、シールド電線10の位置Aを加工基準位置に移動(矢印X1の動作)すると共に、位置Aにおける電線断面A1内での2本の芯線15、15の配置が、予め定めた基準角度位置となるようにシールド電線10をその軸線周りに回転させる(矢印X2の動作)。ここでは、水平方向に2本の芯線15、15が並ぶ位置(シールド電線10の回転方向の角度位置)を基準角度位置としている。このようにシールド電線10を回転させることにより、シールド電線10の端面の位置における電線断面A2内での2本の芯線15、15の配置は、撚りがあるぶん基準角度位置(水平方向に並ぶ位置)から外れることになる。
【0043】
次に(c)に示すように、回転させたシールド電線10を基準角度位置に保持した状態で、位置Aより、編組12の外周に嵌めるスリーブ13の軸線方向の長さ分だけ基端側に設定した位置Bから先端側のシース11を剥ぎ取る(矢印X3の動作)。このシース11の剥ぎ取りにより、内部の編組12が露出する。このときは、編組12の内側に2本の芯線15、15が隠れている。
【0044】
次に(d)に示すように、シース11の剥ぎ取りにより露出した編組12の外周に該露出した編組12の基端側に位置させて円筒状のスリーブ13を嵌めて固定する。
【0045】
次に(e)に示すように、シース11の剥ぎ取りにより露出した編組12の長さが所定長となるようにトリミング加工し、トリミング加工後の編組12をスリーブ13の電線先端側の端部の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分12aを、スリーブ13の外周に被せる。この段階で、撚りが与えられた2本の芯線15、15が露出する。
【0046】
次に(f)に示すように、編組12のトリミング加工および折り返しにより露出した2本の芯線15、15の撚りを解いて、2本の芯線15、15を、基準角度位置上において直線状に伸長させる。このように撚りを解いた際に、2本の芯線15、15の配置は、編組12から露出している基端から先端まで揃うことになる。それは、予め撚り合わせのデータに基づいて位置Aの電線断面A1内での芯線15、15の配置を検出し、位置Aでの芯線15、15の配置が基準角度位置となるように、(b)の工程段階で回転調整してあるからである。
【0047】
続いて(g)、(h)に示すように、基準角度位置上において直線状に伸長させた2本の芯線15、15の先端の絶縁被覆15b、15bを除去して、露出した芯線導体15a、15aにそれぞれインナー端子20を固定する。即ち、インナー端子20の接触導通部20aから後方に延びる導体加締片20bを芯線導体15aに加締め、インナー端子20の導体加締片20bより後方にある被覆加締片20cを芯線15の絶縁被覆15bに加締める。
【0048】
インナー端子20の固定が済んだら、(g)にて示すスリーブ13に被さるように折り返した編組12の折り返し部12aに、アウター端子202(
図3参照)の編組加締片(シールド材加締片)202bを加締め固定する。以降は、
図3を用いた前述の説明の順番で組み立て工程を完了することにより、シールドコネクタの固定されたシールド電線10の端末を得ることができる。
【0049】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、シース11や編組(シールド材)12を処理する前にシース11や編組12の内側に隠れていて外部から視認できない2本の芯線15、15の配置を予測して検出することができる。そのため、編組12の処理後に編組12から露出する2本の芯線15、15の配置を、露出部分の基端から先端まで揃えることができて、露出部分の芯線15、15を基端から先端まで直線状に伸長させることができる。その結果、露出部分の芯線15、15の余長を削減できると共に、露出している2本の芯線15、15の長さを揃えた状態で芯線先端の加工を行うことができ、シールドコネクタの伝送特性の向上が図れる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
例えば、芯線15の本数は2本に限られるものではない。
【0052】
また、上記実施形態では、シールド材として編組を例示したが、編組以外のシールド材(例えば、シールド箔)を使用したシールド電線にも本発明は適用することができる。
【0053】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る芯線位置検出装置および端末処理方法をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 絶縁樹脂のシース(11)で被覆されたシールド材(12)の内側に、複数本の芯線(15)が撚られた状態で内装されたシールド電線(10)の端末処理の際の、前記シールド材(12)の内側の複数の芯線(15)の電線断面(A1)内での相互位置関係を検出する芯線位置検出装置であって、
前記シールド電線(10)の先端部の端面を撮像する撮像手段(100)と、
前記撮像手段(100)の撮像した前記端面の画像から該端面の位置における電線断面(A2)内での前記複数の芯線(15)の配置を割り出す手段と、
前記端面の位置における電線断面(A1)内での前記複数の芯線(15)の配置と、予め仕様により定められている前記シールド電線(10)の複数の芯線の撚り合わせデータとから、前記端面から基端側に所定長だけ離れた所定位置(A)における電線断面(A1)内での前記複数の芯線(15)の配置を算出する手段と、
を備える、
芯線位置検出装置。
【0054】
上記[1]の構成の芯線位置検出装置によれば、シールド材を処理する前にシールド材の内側に隠れていて外部から視認できない芯線の配置を予測して検出することができる。そのため、シールド材の処理後にシールド材から露出する芯線の配置を、露出部分の基端から先端まで揃えることができて、露出部分の芯線を基端から先端まで直線状に伸長させることができる。その結果、露出部分の芯線の余長を削減できると共に、露出している芯線の長さを揃えた状態で芯線先端の加工を行うことができ、シールドコネクタの伝送特性の向上が図れる。
【0055】
[2] 上記[1]に記載の芯線位置検出装置により、前記所定位置(A)における電線断面(A1)内での前記複数の芯線(15)の配置を算出する算出工程と、
前記算出工程により得られた前記所定位置(A)における電線断面(A1)内での前記複数の芯線(15)の配置が、予め定めた基準角度位置となるように前記シールド電線(10)をその軸線周りに回転させる回転工程と、
前記回転工程で回転させた前記シールド電線(10)を前記基準角度位置に保持した状態で、前記所定位置(A)から先端側の前記シース(11)を剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、
前記剥ぎ取り工程のシース(11)の剥ぎ取りにより露出したシールド材(12)の長さが所定長となるようにトリミング加工し、トリミング加工後のシールド材(12)を、残されたシース(11)の端縁の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分(12a)を、残されたシース(11)の端部外周に被せる折り返し工程と、
前記折り返し工程での前記シールド材(12)のトリミング加工および折り返しにより露出した前記複数の芯線(15)の撚りを解いて、前記基準角度位置上において直線状に伸長させる伸長工程と、
前記伸長工程で前記基準角度位置上において直線状に伸長させた複数の芯線(15)の先端の絶縁被覆(15b)を除去して、露出した芯線導体(15a)にそれぞれインナー端子(20)を固定する固定工程と、
前記シース(11)の端部に被さるように折り返した前記シールド材(12)の折り返し部(12a)にアウター端子(202)のシールド材加締片(202b)を加締め固定する加締め工程と、
を備える、
シールド電線の端末処理方法。
【0056】
上記[2]の構成の端末処理方法によれば、シールド材(12)から露出する芯線(15)の配置を、露出部分の基端から先端まで揃えることができる。そのため、露出部分の芯線(15)を基端から先端まで直線状に伸長させることができ、その結果として、露出部分の芯線(15)の余長を削減できると共に、露出している芯線(15)の長さを揃えた状態で芯線先端の加工を行うことができ、シールドコネクタの伝送特性の向上が図れる。
【0057】
[3] 上記[1]に記載の芯線位置検出装置により、前記所定位置(A)における電線断面(A1)内での前記複数の芯線の配置を算出する算出工程と、
前記算出工程により得られた前記所定位置(A)における電線断面(A1)内での前記複数の芯線(15)の配置が、予め定めた基準角度位置となるように前記シールド電線(10)をその軸線周りに回転させる回転工程と、
前記回転工程で回転させた前記シールド電線(10)を前記基準角度位置に保持した状態で、前記所定位置(A)より、前記シールド材(12)の外周に嵌めるスリーブ(13)の軸線方向の長さ分だけ基端側に設定した基端側所定位置(B)から先端側の前記シース(11)を剥ぎ取る剥ぎ取り工程と、
前記剥ぎ取り工程のシース(11)の剥ぎ取りにより露出したシールド材(12)の外周に該露出したシールド材(12)の基端側に位置させて前記スリーブ(13)を嵌めて固定するスリーブ固定工程と、
前記シース(11)の剥ぎ取りにより露出したシールド材(12)の長さが所定長となるようにトリミング加工し、トリミング加工後のシールド材(12)を前記スリーブ(13)の端部の位置で電線の基端側に折り返して、その折り返し部分(12a)を、前記スリーブ(13)の外周に被せる折り返し工程と、
前記折り返し工程での前記シールド材(12)のトリミング加工および折り返しにより露出した前記複数の芯線(15)の撚りを解いて、前記基準角度位置上において直線状に伸長させる伸長工程と、
前記伸長工程で前記基準角度位置上において直線状に伸長させた複数の芯線(15)の先端の絶縁被覆(15b)を除去して、露出した芯線導体(15a)にそれぞれインナー端子(20)を固定する固定工程と、
前記スリーブ(13)に被さるように折り返した前記シールド材(12)の折り返し部(12a)にアウター端子(202)のシールド材加締片(202b)を加締め固定する加締め工程と、
を備える、
シールド電線の端末処理方法。
【0058】
上記[3]の構成の端末処理方法によれば、シールド材(12)から露出する芯線(15)の配置を、露出部分の基端から先端まで揃えることができる。そのため、露出部分の芯線(15)を基端から先端まで直線状に伸長させることができ、その結果として、露出部分の芯線(15)の余長を削減できると共に、露出している芯線(15)の長さを揃えた状態で芯線先端の加工を行うことができ、シールドコネクタの伝送特性の向上が図れる。
【符号の説明】
【0059】
10 シールド電線
11 シース
12 編組(シールド材)
12a 編組の折り返し部
13 スリーブ
15 芯線
15a 芯線導体
15b 絶縁被覆
20 インナー端子
100 カメラ(撮像手段)
202 アウター端子
202b 編組加締片(シールド材加締片)