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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】騒音監視装置、騒音監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240910BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
H04M9/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022513817
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020016031
(87)【国際公開番号】W WO2021205621
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 啓
(72)【発明者】
【氏名】上垣 映理子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 洋
(72)【発明者】
【氏名】堀 聡美
(72)【発明者】
【氏名】山口 忠博
(72)【発明者】
【氏名】永岡 江太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】飯村 知倫
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】腰塚 久洋
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237856(JP,A)
【文献】特開2020-003237(JP,A)
【文献】特開2014-092924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の各住戸に設置されたセンサから騒音に関するセンサ情報を収集するセンサ情報収集部と、
前記センサ情報収集部により収集された前記センサ情報に基づいて前記騒音を検知し、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視する騒音監視部と、
前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者から、前記騒音に対する許容度を取得し、取得した前記許容度に基づいて前記閾値を調整する閾値調整部と、
前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信する通知制御部と、を備え、
前記閾値調整部は、前記通知メッセージに対する前記入居者の応答に基づいて、前記許容度を取得する騒音監視装置。
【請求項2】
集合住宅の各住戸に設置されたセンサから騒音に関するセンサ情報を収集するセンサ情報収集部と、
前記センサ情報収集部により収集された前記センサ情報に基づいて前記騒音を検知し、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視する騒音監視部と、
前記騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信するとともに、前記通知メッセージを受信した前記スマートフォンにおいて前記騒音検知住戸の入居者が前記通知メッセージへの返信コメントを入力すると、当該返信コメントを前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに送信する通知制御部と、を備える騒音監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の騒音監視装置において、
前記通知制御部は、前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに前記通知メッセージを送信するとともに、前記通知メッセージを受信した前記スマートフォンにおいて前記騒音検知住戸以外の住戸の入居者が前記通知メッセージへの返信コメントを入力すると、当該返信コメントを前記騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォンに送信する騒音監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の騒音監視装置において、
前記センサは、前記集合住宅の各住戸において共通の位置に設置されている騒音監視装置。
【請求項5】
請求項に記載の騒音監視装置において、
前記センサは、前記集合住宅の各住戸の天井に設置されている騒音監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の騒音監視装置において、
前記通知制御部は、前記騒音のレベルが前記閾値よりも低い所定の基準値以上のときに前記通知メッセージを送信する騒音監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の騒音監視装置において、
前記騒音監視部は、前記騒音検知住戸から前記騒音の発生源を特定する騒音監視装置。
【請求項8】
請求項に記載の騒音監視装置において、
前記騒音監視部は、前記騒音検知住戸に設置された前記センサにより検知された前記騒音のレベルおよび種類の少なくとも一方に基づいて、前記騒音の発生源を特定する騒音監視装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の騒音監視装置において、
前記騒音監視部は、前記騒音の種類を識別し、識別した前記騒音の種類に応じて前記閾値を設定する騒音監視装置。
【請求項10】
請求項に記載の騒音監視装置において、
前記通知制御部は、前記騒音の種類に応じて通知内容を変化させる騒音監視装置。
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の騒音監視装置において、
前記センサは、前記住戸内の音と前記住戸の構造物の振動とを検出する音振センサであり、
前記センサ情報収集部は、前記音振センサから出力される検出信号を前記センサ情報として収集する騒音監視装置。
【請求項12】
集合住宅の各住戸において発生する騒音を、コンピュータを用いて監視する方法であって、
前記集合住宅の各住戸に設置されたセンサから収集したセンサ情報に基づいて、前記騒音を検知し、
前記コンピュータにより、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視し、
前記コンピュータから前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに対して、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信し、
前記コンピュータにより、前記通知メッセージに対する前記入居者の応答に基づいて、前記入居者から前記騒音に対する許容度を取得し、
前記コンピュータにより、取得した前記許容度に基づいて前記閾値を調整する騒音監視方法。
【請求項13】
集合住宅の各住戸において発生する騒音を、コンピュータを用いて監視する方法であって、
前記集合住宅の各住戸に設置されたセンサから収集したセンサ情報に基づいて、前記騒音を検知し、
前記コンピュータにより、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視し、
前記コンピュータにより、前記騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信するとともに、前記通知メッセージを受信した前記スマートフォンにおいて前記騒音検知住戸の入居者が前記通知メッセージへの返信コメントを入力すると、当該返信コメントを前記スマートフォンから受信し、
前記コンピュータから前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに対して、受信した前記返信コメントを送信する騒音監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の各住戸において発生する騒音を監視する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同じ建物内に複数の住戸が壁や床、天井を介して互いに隣接しており、生活習慣の異なる様々な入居者が各住戸において生活する集合住宅では、その構造上、各入居者は他の入居者からの騒音を受けやすい。また、騒音に対する許容度は入居者ごとに異なるため、発生源の入居者には気にならない程度の騒音であっても、他の入居者にとっては苦痛に感じることがある。このような集合住宅における騒音問題は、入居者間のトラブルにつながるおそれがあるとともに、住環境の悪化による資産価値の低下を招くおそれもある。従来の集合住宅では、これらの問題を避けるため、集合住宅の管理を担う管理者は、騒音を発することが多い入居者に対して個別に注意したり、入居者からの苦情への対応を行ったりする必要がある。こうした騒音問題に関する管理業務は、管理者にとって業務効率の低下や高コスト化の原因となっている。
【0003】
本発明に関連する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1には、集合住宅の各住戸に設けられた人感センサと音量センサの検知結果から、各住戸における人の存否および騒音レベルを把握し、これらに基づいて各住戸の基準騒音を算出して、基準騒音以上の騒音レベルの住戸に対して警告を発する騒音警告システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2014-92924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、各住戸における人の存否や、各住戸の相対的な位置関係に基づいて、各住戸の基準騒音を算出しており、各入居者の騒音に対する許容度が考慮されていない。したがって、集合住宅の入居者全体にとって適切な住環境を維持することができず、集合住宅の騒音問題を十分には解消できないため、管理者の管理業務を改善するものではない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、集合住宅の騒音問題に関する管理業務の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による騒音監視装置は、集合住宅の各住戸に設置されたセンサから騒音に関するセンサ情報を収集するセンサ情報収集部と、前記センサ情報収集部により収集された前記センサ情報に基づいて前記騒音を検知し、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視する騒音監視部と、前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者から、前記騒音に対する許容度を取得し、取得した前記許容度に基づいて前記閾値を調整する閾値調整部と、前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信する通知制御部と、を備え、前記閾値調整部は、前記通知メッセージに対する前記入居者の応答に基づいて、前記許容度を取得する。
本発明の第2の態様による騒音監視装置は、集合住宅の各住戸に設置されたセンサから騒音に関するセンサ情報を収集するセンサ情報収集部と、前記センサ情報収集部により収集された前記センサ情報に基づいて前記騒音を検知し、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視する騒音監視部と、前記騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信するとともに、前記通知メッセージを受信した前記スマートフォンにおいて前記騒音検知住戸の入居者が前記通知メッセージへの返信コメントを入力すると、当該返信コメントを前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに送信する通知制御部と、を備える。
本発明の第3の態様による騒音監視方法は、集合住宅の各住戸において発生する騒音を、コンピュータを用いて監視する方法であって、前記集合住宅の各住戸に設置されたセンサから収集したセンサ情報に基づいて、前記騒音を検知し、前記コンピュータにより、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視し、前記コンピュータから前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに対して、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信し、前記コンピュータにより、前記通知メッセージに対する前記入居者の応答に基づいて、前記入居者から前記騒音に対する許容度を取得し、前記コンピュータにより、取得した前記許容度に基づいて前記閾値を調整する。
本発明の第4の態様による騒音監視方法は、集合住宅の各住戸において発生する騒音を、コンピュータを用いて監視する方法であって、前記集合住宅の各住戸に設置されたセンサから収集したセンサ情報に基づいて、前記騒音を検知し、前記コンピュータにより、前記騒音のレベルが所定の閾値以上である前記集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、前記騒音を監視し、前記コンピュータにより、前記騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォンに、前記騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信するとともに、前記通知メッセージを受信した前記スマートフォンにおいて前記騒音検知住戸の入居者が前記通知メッセージへの返信コメントを入力すると、当該返信コメントを前記スマートフォンから受信し、前記コンピュータから前記騒音検知住戸に隣接する各住戸の入居者が所持するスマートフォンに対して、受信した前記返信コメントを送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集合住宅の騒音問題に関する管理業務の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る騒音監視装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る騒音監視装置の処理を示すフローチャートである。
図3】騒音警告処理を示すフローチャートである。
図4】閾値調整処理を示すフローチャートである。
図5】昼間に行われる騒音警告通知の一例を示す図である。
図6】夜間に行われる騒音警告通知の一例を示す図である。
図7】騒音種類に応じた騒音警告通知の一例を示す図である。
図8】騒音状況に関するアンケート通知の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る騒音監視装置の構成を示す図である。図1に示す騒音監視装置1は、集合住宅の各住戸100において発生する騒音を監視するためのものであり、各住戸100に設置された音振センサ2と接続されている。また、無線LANや携帯電話回線、インターネット等により構成されるネットワークNを介して、スマートフォン4および遠隔監視端末5と接続されている。
【0011】
音振センサ2は、集合住宅の各住戸100内の所定位置、例えば天井、壁、床下等に設置される。音振センサ2は、各住戸100内の音を検出するとともに、各住戸100の構造物の振動、例えば天井、壁、床等の振動を検出する。そして、これらの検出結果に応じた検出信号を、各住戸100において発生する騒音に関するセンサ情報として、騒音監視装置1に送信する。なお、各住戸100の騒音検出条件を揃えるため、音振センサ2は、各住戸100において共通の位置に設置されることが好ましい。例えば、各住戸100の天井や床下の所定位置に音振センサ2を設置することで、各住戸100における音振センサ2の設置位置を共通化することができる。また、一般的に規格化された集合住宅では、各住戸100の構造がほぼ同一であるため、各住戸100内で音振センサ2が設置される場所を予め定めておくことで、音振センサ2の設置位置を共通化することも可能である。例えば、各住戸100の天井において所定の場所に設置される火災報知器や、各住戸100の壁において所定の場所に設置されるインターホンの親機(受話器)等に音振センサ2を組み込むことで、各住戸100における音振センサ2の設置位置を容易に共通化することができる。
【0012】
スマートフォン4は、各住戸100の入居者によって所持されており、騒音監視装置1の制御に応じて各住戸100の騒音監視結果に関する情報を表示することで、各住戸100の入居者に対する騒音通知を行う。例えば、各住戸100において音振センサ2が検知した騒音のレベルや種類、騒音発生源の入居者に対する他の入居者からのコメントなどを示す情報が、スマートフォン4において表示される。各住戸100の入居者は、騒音監視装置1に対して予め自身のスマートフォンを登録しておくことで、騒音監視装置1から情報提供を受けるためのスマートフォン4として利用することができる。なお、図1では集合住宅の右下に位置する一つの住戸100についてのみ、当該住戸100の入居者がスマートフォン4を所持している様子を示しており、他の住戸100については、入居者およびスマートフォン4の図示を省略している。スマートフォン4を用いた騒音通知の詳細については後述する。
【0013】
遠隔監視端末5は、騒音監視装置1とは異なる場所に設置された情報端末であり、騒音監視装置1による騒音監視が行われる集合住宅の管理者によって運用される。騒音監視装置1は、遠隔監視端末5からの要求に応じて、各音振センサ2から収集した各住戸100のセンサ情報や、センサ情報に基づいて騒音監視装置1が行った騒音監視の結果を、遠隔監視端末5に送信する。集合住宅の管理者は、騒音監視装置1から送信されるこれらの情報を遠隔監視端末5において確認することで、遠隔地からでも各住戸100の騒音に関する管理業務を行うことができる。なお、集合住宅の管理には、例えば、集合住宅の所有者自身が管理者となって管理業務を担う形態や、集合住宅の所有者から委託された管理会社に所属する管理者が管理業務を担う形態など、様々な管理形態が考えられる。いずれの管理形態であっても、騒音監視装置1と遠隔監視端末5を用いた遠隔地からの管理業務を適用可能である。
【0014】
騒音監視装置1は、制御部10、記録部20および通信制御部30を備える。
【0015】
制御部10は、例えばCPU、RAM、ROM等を用いて構成されたコンピュータにより実現され、その機能として、センサ情報収集部11、騒音監視部12、閾値調整部13、通知制御部14および遠隔監視制御部15の各機能ブロックを備える。制御部10は、例えば所定のプログラムをCPUにおいて実行することにより、これらの機能ブロックを実現することができる。
【0016】
センサ情報収集部11は、各音振センサ2から出力される検出信号を、各住戸100の騒音に関するセンサ情報として収集する。
【0017】
騒音監視部12は、センサ情報収集部11により収集されたセンサ情報に基づいて、各住戸100において発生した騒音を検知する。そして、検知した騒音のレベルを所定の閾値と比較することで、各住戸100における騒音の発生状況を監視する。なお、騒音監視部12による騒音監視方法の詳細については後述する。
【0018】
閾値調整部13は、各住戸100の入居者の騒音に対する許容度を取得し、取得した許容度に基づいて、騒音監視部12が行う騒音監視において騒音レベルの比較に用いられる閾値を調整する。なお、閾値調整部13による閾値調整方法の詳細については後述する。
【0019】
通知制御部14は、騒音監視部12による騒音監視結果に基づいて、各住戸100の入居者への通知を行う。例えば、いずれかの住戸100に設置された音振センサ2において所定の閾値以上の騒音レベルが検知された場合は、当該住戸100や当該住戸100に隣接する住戸100を騒音検知住戸として、騒音検知住戸やその周辺の各住戸100の入居者に対して騒音に対する警告を通知する。なお、通知制御部14から入居者への通知内容は、通信制御部30によって騒音監視装置1からスマートフォン4に送信され、スマートフォン4において画面表示されることにより、入居者へと通知される。あるいは、各住戸100内に設置された不図示の無線LANルータを用いて、騒音監視装置1から各入居者のスマートフォン4への通知を送信してもよい。
【0020】
遠隔監視制御部15は、遠隔監視端末5からの要求を受け付け、騒音監視装置1から遠隔監視端末5への応答内容を制御する。例えば、記録部20に記録された監視ログ23を読み出して遠隔監視端末5へ送信する。これにより、管理者が各住戸100の騒音問題に関する管理を遠隔で実施できるようにして、管理者が行う管理業務を支援し、業務効率の向上や低コスト化を図るようにしている。
【0021】
記録部20は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)など、適宜な不揮発性記憶素子を用いて構成される。記録部20には、各住戸100の入居者に関する登録情報21と、閾値設定情報22と、監視ログ23とが記録されている。登録情報21は、各入居者が予め登録した情報であり、各入居者への通知先として登録済みのスマートフォン4に関する情報などを含む。閾値設定情報22は、閾値調整部13による閾値の調整状態に関する情報である。監視ログ23は、騒音監視装置1による各住戸100の騒音監視結果に関するログを記録した情報であり、各住戸100を発生源とする騒音のレベルおよび発生日時や、各住戸100が他の住戸100から受けた騒音のレベルおよび発生日時などを含む。
【0022】
通信制御部30は、騒音監視装置1と、騒音監視装置1に接続された音振センサ2、スマートフォン4および遠隔監視端末5との間での通信に必要な通信制御を行う。この通信制御部30が行う通信制御により、センサ情報収集部11によるセンサ情報の収集、通知制御部14によるスマートフォン4を介した各入居者への通知、遠隔監視制御部15による騒音監視装置1から遠隔監視端末5への監視ログ23の送信などを行うことができる。
【0023】
次に、騒音監視装置1が行う処理の詳細について、図2を参照して以下に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る騒音監視装置1の処理を示すフローチャートである。図2のフローチャートに示す処理は、騒音監視装置1の制御部10において所定の処理周期ごとに実行される。なお、以下では制御部10が有する前述の各機能ブロックを各ステップの実行主体として、図2のフローチャートを説明する。
【0024】
ステップS10において、センサ情報収集部11は、各住戸100に設置されている音振センサ2から出力される各住戸100の音や振動の検出信号を、各住戸100の騒音に関するセンサ情報として収集する。
【0025】
ステップS20において、騒音監視部12は、ステップS10で収集したセンサ情報に基づいて、各住戸100における騒音レベルを検知する。例えば、センサ情報が表す音量や振動の大きさを音振センサ2ごとに取得することで、各住戸100の騒音レベルを検知することができる。
【0026】
ステップS30において、騒音監視部12は、ステップS10で収集したセンサ情報に基づいて、各住戸100における騒音の種類を識別する。ここでは、センサ情報が表す音や振動の周波数分布、時系列変化の様子等に基づいて、例えば足音、人の声、赤ちゃんの泣き声、物を叩く音など、各住戸100において発生する可能性がある様々な騒音種類の中から、センサ情報で収集された騒音の種類を識別することができる。
【0027】
ステップS40において、騒音監視部12は、記録部20に記録されている閾値設定情報22を読み出し、これに基づいて、ステップS20で検知した騒音レベルに対する閾値を設定する。なお、閾値調整部13は、後述する閾値調整処理を実施することで、各住戸100の入居者の騒音に対する許容度に応じた閾値の調整を行い、その調整結果を閾値設定情報22として記録部20に記録する。ステップS40では、この閾値設定情報22に基づいて閾値の設定を行うことにより、閾値調整部13による最新の調整結果を反映した閾値を、センサ情報が表す騒音レベルに対して設定することができる。
【0028】
なお、ステップS40で閾値を設定する際には、ステップS30で識別した騒音の種類に応じて、閾値設定情報22が表す閾値を変化させてもよい。例えば、各入居者が気を付けることで容易に抑制可能な騒音の場合には、閾値を低く設定することで警告が行われやすいようにする。反対に、例えば赤ちゃんの泣き声などのように、生活上やむを得ず発生して抑制が困難な騒音の場合には、閾値を高く設定することで不要な警告が行われるのを抑止する。あるいは、騒音を検知した時刻に応じて閾値を変化させてもよい。例えば、夜中の時間帯では日中の時間帯よりも閾値を低く設定することで、騒音レベルが低くても警告が行われるようにする。これ以外にも、騒音の種類や時間に応じて様々な閾値を設定することができる。
【0029】
ステップS50において、騒音監視部12は、ステップS20で検知した各住戸100の騒音レベルと、ステップS40で設定した閾値とを比較し、騒音レベルが閾値以上である住戸100が存在するか否かを判定する。その結果、騒音レベルが閾値以上の住戸100が一つでも存在する場合は、当該住戸100を騒音検知住戸としてステップS60に進み、一つも存在しない場合はステップS90に進む。
【0030】
ステップS60において、騒音監視部12は、騒音発生源を特定する。ここでは、ステップS20で検知した各住戸100の騒音レベル同士を比較することで、騒音発生源を特定する。その際、各住戸100における音振センサ2の設置位置や、ステップS30で識別した騒音種類を考慮して、騒音発生源を特定することが好ましい。例えば、音振センサ2が各住戸の天井に設置されており、識別した騒音の種類が足音である場合は、騒音検知住戸の上に位置する住戸100を、騒音発生源として特定することができる。これ以外にも、音振センサ2の設置位置や騒音種類に応じた任意の方法で、騒音検知住戸から騒音発生源を特定することができる。
【0031】
なお、ステップS60において騒音発生源を特定できない場合や、騒音発生源を一つの住戸100に絞り込めない場合がある。また、各住戸100の入居者の自主性やプライバシーを考慮し、あえて騒音発生源を特定せずに騒音監視を行うことで、騒音監視装置1の利用に対する入居者の心理的負荷を軽減して需要性を高めることも考えられる。このような場合には、ステップS50で判定した騒音検知住戸を対象に、ステップS70以降の処理を実施することも可能である。なお、騒音検知住戸が複数存在する場合は、そのうち騒音レベルが最も高い住戸100を処理対象としてもよいし、該当する全ての住戸100を処理対象としてもよい。
【0032】
ステップS70において、通知制御部14は、騒音に対する警告を行うための騒音警告処理を実施する。この騒音警告処理では、騒音発生源および騒音発生源に隣接する各住戸100の入居者、または、騒音検知住戸および騒音検知住戸に隣接する各住戸100の入居者に対して、騒音への警告を通知する。これにより、騒音発生源の入居者に騒音の抑制を促すとともに、他の入居者には、騒音発生源の入居者に対して警告済みであることを通知する。なお、ステップS70で行われる騒音警告処理の詳細については、後で図3のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
ステップS80において、通知制御部14は、騒音監視部12により実施されたステップS20~S60の各処理の結果や、ステップS70で実施した騒音警告処理の結果に基づいて、監視ログ23を記録部20に記録する。これにより、騒音レベルが閾値以上の騒音が検知されて騒音警告処理が行われる度に、その騒音監視結果に基づいて監視ログ23の内容が更新される。
【0034】
ステップS90において、閾値調整部13は、閾値調整を実施するか否かを判定する。ここでは、所定の実施条件を用いた判定を行う。例えば、ステップS50で騒音レベルが閾値以上である住戸100が騒音検知住戸と判定され、ステップS70において騒音警告処理が行われた場合は、ステップS90において閾値調整の実施条件を満たしたと判定する。あるいは、ステップS50の判定に用いた閾値よりも低い所定の基準値を設定し、ステップS20で検知した騒音レベルが基準値以上のときに、ステップS90において閾値調整の実施条件を満たしたと判定してもよい。これ以外にも、例えば所定時間ごとに閾値調整を実施する場合は、前回の閾値調整から所定時間が経過する度に実施条件を満たしたと判定するなど、任意の実施条件を用いてステップS90の判定を行うことができる。ステップS90の結果、閾値調整を実施すると判定した場合はステップS100に進み、実施しないと判定した場合は図2のフローチャートに示す処理を終了する。
【0035】
ステップS100において、閾値調整部13は、ステップS50の判定において騒音レベルとの比較に用いられる閾値を調整するための閾値調整処理を実施する。この閾値調整処理では、ステップS50で騒音検知住戸と判定された住戸100や、ステップS60で特定された騒音発生源の住戸100に隣接する各住戸100の入居者から、当該騒音に対する許容度を取得し、取得した許容度に基づいて閾値を調整する。これにより、入居者ごとの騒音に対する許容度を反映して、今後の警告対象とする騒音レベルを調整する。なお、ステップS100で行われる閾値調整処理の詳細については、後で図4のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
ステップS100の処理を実施したら、制御部10は図2のフローチャートに示す処理を終了する。
【0037】
続いて、図2のステップS70で行われる騒音警告処理の詳細について説明する。図3は、騒音警告処理を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS71において、通知制御部14は、騒音警告の通知先を特定する。ここでは、図2のステップS60で特定した騒音発生源またはステップS50で判定された騒音検知住戸に基づいて、騒音警告の通知対象とする住戸100の範囲を選択する。例えば、騒音発生源および騒音発生源に隣接する各住戸100、または、騒音検知住戸および騒音検知住戸に隣接する各住戸100の入居者を、騒音警告の通知対象として選択する。このとき、騒音発生源や騒音検知住戸の周囲に存在する各住戸100で検知された騒音のレベルを考慮して、選択する住戸100の範囲を変化させてもよい。そして、選択した各住戸100の入居者について、記録部20に記憶されている登録情報21を参照し、通知先として登録されているスマートフォン4を特定する。これにより、警告通知先の各スマートフォン4を特定することができる。
【0039】
ステップS72において、通知制御部14は、図2のステップS20で検知した各住戸100の騒音レベルと、ステップS30で識別した騒音の種類とに基づいて、各入居者への通知内容を設定する。ここでは、例えば各入居者のスマートフォン4に表示するための騒音警告の通知画面として、各住戸100の騒音レベルを示す情報と、騒音の種類を示す情報とを含む通知画面を設定する。
【0040】
ステップS73において、通知制御部14は、騒音警告を通知する。ここでは、例えばステップS72で設定した通知画面を、ステップS71で特定した警告通知先の各スマートフォン4へ送信して表示させる。これにより、騒音発生源の入居者に対しては、他の入居者が不快に感じる可能性がある騒音の発生行為を気付かせて、騒音の抑制を促す。また、騒音発生源以外の各入居者には、騒音が発生したことを通知するとともに、騒音発生源の入居者に対して警告済みであることを通知する。
【0041】
ステップS74において、通知制御部14は、ステップS73で行った騒音警告の通知に対して各入居者からの返信コメントを受信したか否かを判定する。ステップS73でスマートフォン4に通知画面が表示されることで騒音監視装置1から騒音警告の通知を受けた各入居者は、その通知画面において所定の操作を行うことにより、スマートフォン4から騒音監視装置1へ返信コメントを送信することができる。このようにして各入居者のスマートフォン4から送信された返信コメントが、騒音監視装置1において通信制御部30により受信された場合は、ステップS75に進む。一方、ステップS73で騒音警告の通知を行ったいずれの入居者からも返信コメントを受信していない場合は、ステップS77に進む。
【0042】
ステップS75において、通知制御部14は、ステップS74で受信した返信コメントの送信先を選択する。ここでは、受信した返信コメントが騒音発生源や騒音検知住戸からのものであるか否かに応じて、送信先を切り替える。例えば、騒音発生源の住戸100または騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォン4から返信コメントを受信した場合、その返信コメントの送信先として、騒音発生源または騒音検知住戸に隣接する各住戸100の入居者が所持するスマートフォン4を選択する。一方、騒音発生源や騒音検知住戸以外の住戸100の入居者が所持するスマートフォン4から返信コメントを受信した場合、その返信コメントの送信先として、騒音発生源の住戸100または騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォン4を選択する。
【0043】
ステップS76において、通知制御部14は、ステップS74で受信した返信コメントを、ステップS75で選択した送信先に送信する。これにより、騒音警告に対する各入居者からの返信コメントを正しい相手先に伝えることができる。なお、集合住宅の管理者が騒音監視装置1を直接操作するか、または遠隔監視端末5を介して、返信コメントの送信を行うか否かを判断し、その判断結果に応じて、通知制御部14がステップS76で返信コメントの送信を行うか否かを決定してもよい。このようにすれば、いずれかの入居者が不適切な返信コメントを入力した場合に、その返信コメントが他の入居者へ送信されてしまうのを回避できる。
【0044】
ステップS77において、騒音監視部12は、ステップS73で行った騒音警告の通知に応じて騒音が低減したか否かを判定する。ここでは、例えば図2のステップS60と同様の判定方法により、騒音が低減したか否かを判定することができる。すなわち、騒音警告の通知後に、通知が行われた各住戸100の騒音レベルを取得し、ステップS50で設定した閾値と比較する。その結果、各住戸100の騒音レベルが閾値未満であれば、騒音が低減したと判定してステップS78に進み、閾値以上であれば騒音が低減していないと判定して、図3のフローチャートに示す騒音警告処理を終了する。
【0045】
ステップS78において、通知制御部14は、騒音を低減したことへの感謝メッセージを通知する。ここでは、例えばステップS71で騒音警告の通知先として特定した各入居者のスマートフォン4のうち、騒音発生源の入居者が所持するスマートフォン4を用いて、感謝メッセージを通知する。これにより、今後も騒音発生への注意を続けるように促す。なお、このとき所定の特典、例えば各入居者の共用設備の利用状況に応じて蓄積されるマナーポイントを付与することで、騒音低減に対するインセンティブを入居者に提供し、集合住宅全体での住環境の向上を図るようにしてもよい。
【0046】
ステップS78の処理を実施したら、図3のフローチャートに示す騒音警告処理を終了する。
【0047】
続いて、図2のステップS100で行われる閾値調整処理の詳細について説明する。図4は、閾値調整処理を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS101において、通知制御部14は、騒音状況に関するアンケートの送信先を特定する。ここでは、例えば図2のステップS60で特定した騒音発生源に隣接する各住戸100や、ステップS50で判定された騒音検知住戸に隣接する各住戸100を、アンケートの送信対象として選択する。そして、選択した各住戸100の入居者について、記録部20に記憶されている登録情報21を参照し、通知先として登録されているスマートフォン4を特定する。これにより、アンケート送信先の各スマートフォン4を特定することができる。
【0049】
ステップS102において、通知制御部14は、騒音状況に関するアンケートを送信する。ここでは、例えば図2のステップS20で検知した各住戸100の騒音レベルを示すとともに、各入居者の騒音に対する許容度(各入居者が騒音に対してどの程度気に障ったか)の回答欄が付されたアンケート画面を、ステップS101で特定したアンケート送信先の各スマートフォン4に送信して表示させる。
【0050】
なお、ステップS102で送信するアンケート画面と、図3のステップS73で送信する通知画面とを兼用してもよい。すなわち、ステップS73で警告通知先の各スマートフォン4に送信する通知画面において、上記アンケート画面と同様の内容を含めることにより、通知画面とアンケート画面を兼用し、ステップS73とステップS102の処理を同時に行うことができる。このようにすれば、処理の効率化を図るとともに、各入居者のアンケートへの注目度を増加させて回答率を向上することができる。
【0051】
ステップS103において、通知制御部14は、ステップS102で送信したアンケートに対する各入居者からの回答を受信したか否かを判定する。ステップS102でスマートフォン4にアンケート画面が表示された各入居者は、そのアンケート画面において所定の操作を行うことにより、スマートフォン4から騒音監視装置1に対して、そのときの騒音に対する自身の許容度を回答することができる。このようにして各入居者のスマートフォン4から送信されたアンケートの回答が、騒音監視装置1において通信制御部30により受信された場合は、ステップS104に進む。一方、ステップS102で送信したアンケートに対していずれの入居者からも回答を受信していない場合は、図4のフローチャートに示す閾値調整処理を終了する。
【0052】
ステップS104において、閾値調整部13は、ステップS103で受信したアンケート回答に基づいて、騒音レベルの閾値に対する調整値を設定する。ここでは、アンケート回答における許容度が高いほど、すなわち各入居者から騒音が気にならない旨のアンケート回答を多く受信した場合ほど、騒音レベルの閾値を上昇させるように、調整値を設定する。反対に、アンケート回答における許容度が低いほど、すなわち各入居者から騒音が気に障る旨のアンケート回答を多く受信した場合ほど、騒音レベルの閾値を低下させるように、調整値を設定する。
【0053】
ステップS105において、閾値調整部13は、ステップS104で設定した調整値に基づいて、記録部20に記録されている閾値設定情報22を更新する。
【0054】
ステップS105の処理を実施したら、図4のフローチャートに示す閾値調整処理を終了する。
【0055】
閾値調整部13は、以上説明した閾値調整処理を行うことにより、ステップS103で各入居者から受信したアンケート回答に基づいて、各入居者の騒音に対する許容度を取得し、取得した許容度に基づいて、今後の騒音レベルの判定で用いられる閾値を調整することができる。
【0056】
次に、図5図8を参照して、本実施形態の騒音監視装置1から各入居者への通知内容の具体例を以下に説明する。
【0057】
図5は、昼間に行われる騒音警告通知の一例を示す図である。図5の例では、住戸100aの入居者が発生した騒音や振動が、住戸100bの天井に設置された音振センサ2により検出される。この音振センサ2からのセンサ情報に基づき、図2のステップS50において騒音レベルが閾値以上であると判定されると、住戸100a,100bそれぞれの入居者が所持するスマートフォン4a,4bに対して、図3のステップS73で騒音警告の通知が行われる。
【0058】
図5の通知画面40a,40bは、上記の状況においてステップS73の騒音警告通知によりスマートフォン4a,4bにそれぞれ表示される画面の例を示している。通知画面40a,40bには、住戸100a,100bにおいて検知された騒音のレベルと種類がそれぞれ示されている。また、警告通知時の騒音状況に関するアンケートとして、各入居者の騒音に対する許容度の回答欄が示されるとともに、返信コメント欄が示されている。なお、通知画面40a,40bにおける許容度の回答欄は、図4のステップS102で送信されるアンケート画面に相当するものである。
【0059】
住戸100aの入居者が発生した騒音に対して、住戸100aの直下に位置する住戸100bの入居者が不快に感じた場合、当該入居者は通知画面40bの回答欄を用いて、騒音が許容限度を超えるレベルである旨を回答する。この回答は騒音監視装置1により受信され、図4のステップS104で行われる調整値の設定において利用される。
【0060】
一方、住戸100aの入居者は、通知画面40aの返信コメント欄を用いて、住戸100bの入居者に対して騒音発生への謝罪の気持ちを表すために、「ごめんなさい」という返信コメントを設定する。この返信コメントは騒音監視装置1により受信され、図3のステップS76において、住戸100bの入居者が所持しているスマートフォン4bに送信される。これにより、住戸100bの入居者は、住戸100aの入居者から騒音発生に対する謝罪を受けることができる。したがって、入居者間の騒音トラブルを未然に防止することができる。
【0061】
図6は、夜間に行われる騒音警告通知の一例を示す図である。図6の例でも図5と同様に、住戸100aの入居者が発生した騒音や振動が、住戸100bの天井に設置された音振センサ2により検出される。この音振センサ2からのセンサ情報に基づき、図2のステップS50において騒音レベルが閾値以上であると判定されると、住戸100a,100bそれぞれの入居者が所持するスマートフォン4a,4bに対して、図3のステップS73で騒音警告の通知が行われる。
【0062】
図6の通知画面41a,41bは、上記の状況においてステップS73の騒音警告通知によりスマートフォン4a,4bにそれぞれ表示される画面の例を示している。通知画面41a,41bには、図5の通知画面40a,40bと同様の内容が示されており、騒音レベルは通知画面40a,40bよりも低い。これは、図2のステップS40で設定される騒音レベルの閾値が、夜間のために図5の場合よりも低いことに起因している。
【0063】
住戸100aの入居者が発生した騒音に対して、住戸100aの直下に位置する住戸100bの入居者が不快に感じた場合、当該入居者は図5と同様に、通知画面41bの回答欄を用いて、騒音が許容限度を超えるレベルである旨を回答する。この回答は前述のように騒音監視装置1により受信され、図4のステップS104で行われる調整値の設定において利用される。
【0064】
一方、住戸100aの入居者は、図5で説明したように、通知画面41aの返信コメント欄を用いて、住戸100bの入居者に対して騒音発生への謝罪の気持ちを表すために、「ごめんなさい」という返信コメントを設定する。この返信コメントは騒音監視装置1により受信され、図3のステップS76において、住戸100bの入居者が所持しているスマートフォン4bに送信される。これにより図5の場合と同様に、住戸100bの入居者は、住戸100aの入居者から騒音発生に対する謝罪を受けることができる。したがって、入居者間の騒音トラブルを未然に防止することができる。
【0065】
図7は、騒音種類に応じた騒音警告通知の一例を示す図である。図7の例では、住戸100a内にいる赤ちゃんの泣き声による騒音や振動が、隣の住戸100cにおいて音振センサ2により検出される。この音振センサ2からのセンサ情報に基づき、図2のステップS50において騒音レベルが閾値以上であると判定されると、住戸100a,100cそれぞれの入居者が所持するスマートフォン4a,4cに対して、図3のステップS73で騒音警告の通知が行われる。
【0066】
図7の通知画面42a,42cは、上記の状況においてステップS73の騒音警告通知によりスマートフォン4a,4cにそれぞれ表示される画面の例を示している。図7の通知画面42cには、図5と同様の内容が示されており、騒音の種類が赤ちゃんの泣き声であることが分かる。
【0067】
住戸100aにおいて発生した騒音に対して、住戸100aの隣に位置する住戸100cの入居者は、騒音の原因が赤ちゃんの泣き声であることを考慮し、通知画面42cの返信コメント欄を用いて、住戸100aの入居者に対して「気にしないで」という返信コメントを設定する。この返信コメントは騒音監視装置1により受信され、図3のステップS76において、住戸100aの入居者が所持しているスマートフォン4aに送信される。これにより、住戸100aの入居者は、住戸100cの入居者が赤ちゃんの泣き声に対する理解を示していることを知ることができる。したがって、入居者間のトラブルを未然に防止することができる。
【0068】
図8は、騒音状況に関するアンケート通知の一例を示す図である。図8の例では、住戸100aの入居者が発生した騒音に関して、住戸100aの周囲に位置する各住戸100b~100fの入居者を対象に、騒音状況に関するアンケートの通知が行われる。このアンケートの通知は、住戸100b~100fの入居者がそれぞれ所持するスマートフォン4に対して、図4のステップS102で送信される。
【0069】
図8のアンケート画面43は、上記の状況においてステップS102のアンケート送信により各入居者のスマートフォン4にそれぞれ表示される画面の例を示している。アンケート画面43には、各住戸における騒音レベルと、各入居者の騒音に対する許容度の回答欄とがそれぞれ示されている。
【0070】
住戸100aの入居者が発生した騒音に対して、住戸100b,100cの各入居者が不快に感じた場合、これらの入居者はアンケート画面43の回答欄を用いて、騒音が許容限度を超えるレベルである旨を回答する。一方、他の住戸100d,100e,100fの各入居者は、アンケート画面43の回答欄を用いて、騒音が許容範囲内である旨を回答する。これらの回答は騒音監視装置1により受信され、図4のステップS104で行われる調整値の設定において利用される。
【0071】
本実施形態の騒音監視装置1では、以上説明したような通知が各入居者に向けて行われることにより、各入居者の騒音に対する許容度を考慮して、騒音発生に対する警告を行うことができる。
【0072】
次に、本実施形態の騒音監視装置1を用いた騒音監視の具体例について以下に説明する。以下の例では、騒音を発生する入居者として、住戸100aに同居している住民A1,A2を想定する。住民A2は住民A1の子供であり、例えば小学生である。また、騒音の被害を受ける入居者として、住戸100aの下に位置する住戸100bに住んでいる住民Bを想定する。住民Bは例えば高齢者である。
【0073】
住民A2は、自宅である住戸100a内で友達と遊んでおり、その際に床を踏み鳴らしていたとする。この場合、騒音監視装置1は、住戸100a、100bにそれぞれ設置されている音振センサ2が検出した音や振動に基づいて、図2のステップS20で騒音レベルを検知する。この騒音レベルが、ステップS50の判定で用いられる閾値以上である場合、騒音監視装置1は、ステップS70の騒音警告処理を実施する。この騒音警告処理において、騒音監視装置1は、図3のステップS73で騒音警告の通知を行う。これにより、住民A1が所持するスマートフォン4aと、住民Bが所持するスマートフォン4bに、図5の通知画面40a,40bのような通知画面がそれぞれ表示される。
【0074】
住民A1は、通知画面を確認することで騒音レベルが閾値以上であることを認識し、床の踏み鳴らしをやめるように住民A2に注意する。住民A1からの注意を受けた住民A2は、床の踏み鳴らしをやめて騒音の発生を抑える。すると騒音監視装置1は、ステップS77において騒音が低減したと判定し、ステップS78において感謝メッセージの通知を行う。その結果、住民A1,A2は今後騒音マナーに気を付けて生活するようになる。
【0075】
一方、住民Bは、通知画面の表示後に騒音が収まったことを確認する。これにより、騒音マナーが守られたことを確認できる。
【0076】
上記のような騒音監視が行われることにより、管理者が介在しなくても入居者間の騒音トラブルを未然に防ぐことができるため、騒音問題に関する管理業務の改善を図ることができる。
【0077】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0078】
(1)騒音監視装置1は、集合住宅の各住戸100に設置された音振センサ2から騒音に関するセンサ情報を収集するセンサ情報収集部11と、センサ情報収集部11により収集されたセンサ情報に基づいて騒音を検知し、騒音のレベルが所定の閾値以上である集合住宅の住戸を騒音検知住戸として、騒音を監視する騒音監視部12と、を備え、騒音監視部12による騒音の監視結果を、騒音検知住戸および騒音検知住戸の周辺の住戸の少なくとも一方に向けて出力する。このようにしたので、集合住宅の騒音問題に関する管理業務の改善を図ることができる。
【0079】
(2)音振センサ2は、集合住宅の各住戸100において共通の位置、例えば各住戸の天井に設置されている。このようにしたので、各住戸100に対する騒音レベルの閾値を統一することができるため、各住戸100における騒音を適切に検知することができる。
【0080】
(3)騒音監視装置1は、集合住宅の入居者の騒音に対する許容度を取得し、取得した許容度に基づいて閾値を調整する閾値調整部13を備える。このようにしたので、各入居者の騒音に対する許容度を考慮して、騒音監視に用いられる閾値を適切に調整することができる。例えば、騒音監視装置1において50dBを閾値に設定し、これ以上の音を騒音として検知するように当初設定した場合に、入居者の騒音への許容度に応じて閾値を適切に変化させることができる。
【0081】
(4)閾値調整部13は、騒音検知住戸に隣接する各住戸100の入居者から取得した許容度に基づいて閾値を調整する(ステップS104,S105)。このようにしたので、各入居者の騒音に対する許容度を考慮して、騒音監視に用いられる閾値を調整することができる。
【0082】
(5)騒音監視装置1において、通知制御部14は、騒音検知住戸に隣接する各住戸100の入居者が所持するスマートフォン4に、騒音が発生したことを通知するための所定の通知メッセージを送信する(ステップS102)。閾値調整部13は、この通知メッセージに対する入居者の応答に基づいて、許容度を取得する(ステップS103)。このようにしたので、各入居者の騒音に対する許容度を容易かつ確実に取得することができる。
【0083】
(6)通知制御部14は、騒音のレベルが閾値よりも低い所定の基準値以上のときに(ステップS90:Yes)、ステップS102の処理を実施して通知メッセージを送信するようにしてもよい。このようにすれば、警告通知の対象とはならない騒音レベルであっても各入居者の騒音に対する許容度を取得し、これに基づいて閾値の調整を行うことができるため、きめ細かな閾値調整を実現できる。
【0084】
(7)騒音監視部12は、騒音検知住戸から騒音の発生源を特定する(ステップS60)。例えば、騒音検知住戸に設置された音振センサ2により検知された騒音のレベルおよび種類の少なくとも一方に基づいて、騒音の発生源を特定することができる。このようにしたので、騒音の発生源を確実に特定することができる。
【0085】
(8)騒音監視装置1において、通知制御部14は、騒音検知住戸の入居者がスマートフォン4に入力した警告メッセージへの返信コメントを、騒音検知住戸の入居者が所持するスマートフォン4に送信する(ステップS75,S76)。このようにしたので、入居者間の騒音トラブルを未然に防止することができる。
【0086】
(9)騒音監視部12は、騒音の種類を識別し(ステップS30)、識別した騒音の種類に応じて閾値を設定することができる(ステップS40)。このようにすれば、騒音の種類に応じた適切な騒音レベルで、各入居者に対する騒音警告の通知を行うことができる。
【0087】
(10)騒音監視装置1は、騒音の監視結果を騒音検知住戸および騒音検知住戸の周辺の住戸の少なくとも一方に通知する通知制御部14を備える。通知制御部14は、騒音の種類に応じて通知内容を変化させる(ステップS72)。このようにしたので、騒音の種類に応じた適切な警告通知を行うことができる。
【0088】
(11)音振センサ2は、住戸100内の音と住戸100の構造物の振動とを検出するものである。センサ情報収集部11は、音振センサ2から出力される検出信号をセンサ情報として収集する(ステップS10)。このようにしたので、集合住宅の住戸内で発生する様々な騒音に関するセンサ情報を確実に収集することができる。
【0089】
なお、上記の実施形態において、閾値調整部13は、各住戸100に対する騒音レベルの閾値を個別に調整してもよい。この場合、記録部20において、住戸100ごとに閾値設定情報22を記録するようにする。図2のステップS40では、ステップS20で検知した各住戸100の騒音レベルに対して、住戸100ごとに記録された閾値設定情報22に基づき、各住戸100について個別の閾値を設定する。また、図4のステップS104,S105では、各住戸100について個別の調整値を設定し、これに基づいて各住戸100の閾値設定情報22を更新する。このようにすれば、各入居者の騒音に対する許容度をさらにきめ細かく反映して、騒音監視に用いられる閾値を調整することができる。
【0090】
上記の実施形態では、各住戸100の入居者が予め登録したスマートフォン4を用いて、各住戸100の入居者に対する通知を行う例を説明したが、例えば各住戸100に設置されたインターホンなど、スマートフォン以外のものを用いて通知を行ってもよい。すなわち、図3のステップS73、S76、S78の各処理における騒音警告の通知画面や各種メッセージの送信先、および、図4のステップS102におけるアンケート画面の送信先は、通知対象の入居者が所持するスマートフォン4に限定されず、任意のデバイスとすることが可能である。
【0091】
以上説明した実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態や各種変形例は、単独で採用してもよいし、任意に組み合わせてもよい。さらに、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1:騒音監視装置、2:音振センサ、4:スマートフォン、5:遠隔監視端末、10:制御部、11:センサ情報収集部、12:騒音監視部、13:閾値調整部、14:通知制御部、15:遠隔監視制御部、20:記録部、21:登録情報、22:閾値設定情報、23:監視ログ、30:通信制御部、100:住戸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8