(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】モバイル電子装置と結合された血糖計のためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01N27/416 338
(21)【出願番号】P 2022522798
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 US2020056007
(87)【国際公開番号】W WO2021076904
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-10-11
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター、スコット イー
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-109847(JP,A)
【文献】特開2014-180565(JP,A)
【文献】特表2018-504660(JP,A)
【文献】特表2019-509865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド分析物試験計であって、
ファームウェア命令を記憶するように構成されたメモリと、
電気化学試験ストリップを受容するように構成されたポートと、
前記ポートに電気的に接続された測定信号発生器と、
前記ポートに電気的に接続された測定信号受信器と、
短距離無線送受信機と、
前記メモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、および前記短距離無線送受信機に動作可能に接続されたプロセッサであって、
前記プロセッサは、前記メモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記ポートを介して前記電気化学試験ストリップ上に堆積された試料に所定の一連の電気信号を印加するように前記測定信号発生器を動作させることと、
前記測定信号受信器から複数の信号測定値を受信することであって、前記測定信号受信器が、前記所定の一連の電気信号に応答して、前記ポート内の前記電気化学試験ストリップから受信した複数の電気信号に基づいて前記複数の
信号測定値を生成する、複数の信号測定値を受信することと、
前記短距離無線送受信機を使用して前記複数の信号測定値に対応するデータを外部コンピューティング装置に送信することであって、前記複数の信号測定値に対応する前記データが、前記外部コンピューティング装置内の別のプロセッサが前記試料中の分析物の測定値を識別することを可能にする、前記複数の信号測定値に対応するデータを外部コンピューティング装置に送信するこ
と
を行うように構成される、プロセッサと、
を備える、ハイブリッド分析物試験計。
【請求項2】
前記短距離無線送受信機が、近距離無線通信(NFC)送受信機をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項3】
前記メモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記短距離無線送受信機、および前記プロセッサに電力を供給するように構成されたコンデンサと、
前記短距離無線送受信機および前記コンデンサに電気的に接続されたコイルアンテナであって、前記コイルアンテナが、前記外部コンピューティング装置内の別のコイルアンテナと誘導結合して、前記外部コンピューティング装置から受け取った電気エネルギーによって前記コンデンサを充電するように構成される、コイルアンテナと、
をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項4】
前記メモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、および前記プロセッサが、前記コンデンサが所定の充電レベルに到達することに応答して起動される、請求項3に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項5】
前記メモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記短距離無線送受信機、および前記プロセッサに電力を供給するように構成されたバッテリをさらに備え、前記メモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記短距離無線送受信機、および前記プロセッサが、前記ポートへの前記電気化学試験ストリップの挿入に応答して、前記バッテリから受け取った電気エネルギーを使用して起動される、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項6】
前記メモリが、
認証鍵を記憶するようにさらに構成され、
前記プロセッサが、前記メモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記短距離無線送受信機を使用して、前記外部コンピューティング装置から更新されたファームウェアデータおよび前記更新されたファームウェアデータに対応する暗号化署名を受信し、
前記更新されたファームウェアデータおよび前記暗号化署名を前記メモリに記憶し、
暗号学的に安全なハッシュ関数を使用して前記更新されたファームウェアデータのハッシュ値を生成し、
前記ハッシュ値が前記認証鍵を使用した前記暗号化署名の復号の出力と一致するという検証のみに応答して、前記更新されたファームウェアデータ内の記憶された命令を実行するようにさらに構成される、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記メモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記ハッシュ値が前記認証鍵を使用した前記暗号化署名の復号の出力と一致しないという検証に応答して、前記更新されたファームウェアデータを前記メモリから削除するようにさらに構成される、請求項6に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記メモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記測定信号発生器を動作させて、複数の交流(AC)信号と、それに続く複数の直流(DC)信号とを含む前記所定の一連の電気信号を、前記ポートを介して前記電気化学試験ストリップ上に堆積された前記試料に印加するようにさらに構成される、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項9】
複数の前記電気化学試験ストリップを収容するように構成された容器をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド分析物試験計。
【請求項10】
分析物試験計であって、
ハイブリッド分析物試験計およびモバイル電子装置を備え、前記ハイブリッド分析物試験計が、
ファームウェア命令を記憶するように構成された第1のメモリと、
電気化学試験ストリップを受容するように構成されたポートと、
前記ポートに電気的に接続された測定信号発生器と、
前記ポートに電気的に接続された測定信号受信器と、
第1の短距離無線送受信機と、
前記第1のメモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、および前記第1の短距離無線送受信機に動作可能に接続された第1のプロセッサであって、前記第1のプロセッサが、前記第1のメモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記ポートを介して前記電気化学試験ストリップ上に堆積された試料に所定の一連の電気信号を印加するように前記測定信号発生器を動作させることと、
前記測定信号受信器から複数の信号測定値を受信することであって、前記測定信号受信器が、前記所定の一連の電気信号に応答して、前記ポート内の前記電気化学試験ストリップから受信した複数の電気信号に基づいて前記複数の信号測定値を生成する、複数の信号測定値を受信することと、
前記第1の短距離無線送受信機を使用して、前記複数の信号測定値に対応するデータを前記モバイル電子装置に送信することと
を行うように構成された第1のプロセッサと、を備え、
前記モバイル電子装置が、
ソフトウェア命令を記憶するように構成された第2のメモリと、
第2の短距離無線送受信機と、
出力装置と、
前記第2のメモリ、前記第2の短距離無線送受信機、および前記出力装置に動作可能に接続された第2のプロセッサであって、前記第2のメモリ内の前記ソフトウェア命令を実行して、
前記第2の短距離無線送受信機を使用して前記ハイブリッド分析物試験計から前記複数の信号測定値を受信し、
前記複数の信号測定値に基づいて前記試料中の前記分析物のレベルを識別するために分析物検出アルゴリズムを実行し、
前記出力装置を用いて出力を生成して、前記試料中の前記分析物の前記レベルをユーザに提示する
ように構成された第2のプロセッサと、
を備える、分析物試験計。
【請求項11】
前記第1の短距離無線送受信機が、第1の近距離無線通信(NFC)送受信機であり、前記第2の短距離無線送受信機が、第2のNFC送受信機である、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項12】
前記ハイブリッド分析物試験計が、
前記第1のメモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記第1の短距離無線送受信機、および前記第1のプロセッサに電力を供給するように構成されたコンデンサと、
前記第1の短距離無線送受信機および前記コンデンサに電気的に接続された第1のコイルアンテナと、をさらに備え、
前記モバイル電子装置が、
バッテリと、
前記第2の短距離無線送受信機および前記バッテリに電気的に接続された第2のコイルアンテナであって、前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のコイルアンテナが、前記モバイル電子装置の前記第2のコイルアンテナと誘導結合して、前記モバイル電子装置の前記バッテリから受け取った電気エネルギーによって前記コンデンサを充電するように構成される、第2のコイルアンテナと、
をさらに備える、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項13】
前記モバイル電子装置が、
入力装置と、
前記入力装置に動作可能に接続された第2のプロセッサであって、前記第2のメモリ内の前記ソフトウェア命令を実行して、
前記入力装置を使用して前記ハイブリッド分析物試験計を起動するための入力要求を受信し、
前記ハイブリッド分析物試験計の起動のために前記コンデンサを所定のレベルまで充電するために、前記ハイブリッド分析物試験計において前記バッテリから前記コンデンサに電気エネルギーを伝送するように前記第2の短距離無線送受信機を起動させる
ように構成された第2のプロセッサと、
をさらに備える、請求項12に記載の分析物試験計。
【請求項14】
前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のメモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、および前記第1のプロセッサが、前記コンデンサが所定の充電レベルに到達するのに応答して起動される、請求項12に記載の分析物試験計。
【請求項15】
前記第2のプロセッサが、前記複数の信号測定値に基づいて血液試料中のグルコースのレベルを識別するために前記分析物検出アルゴリズムを実行するように構成される、請求項12に記載の分析物試験計。
【請求項16】
前記ハイブリッド分析物試験計が、前記第1のメモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記第1の短距離無線送受信機、および前記第1のプロセッサに電力を供給するように構成されたバッテリをさらに備え、前記第1のメモリ、前記測定信号発生器、前記測定信号受信器、前記第1の短距離無線送受信機、および前記第1のプロセッサが、前記ポートへの前記電気化学試験ストリップの挿入に応答して、前記バッテリから受け取った電気エネルギーを使用して起動される、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項17】
前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のメモリが、
認証鍵を記憶するようにさらに構成され、
前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のプロセッサが、前記第1のメモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記第1の短距離無線送受信機を使用して、前記モバイル電子装置から更新されたファームウェアデータおよび前記更新されたファームウェアデータに対応する暗号化署名を受信し、
前記更新されたファームウェアデータおよび前記暗号化署名を前記第1のメモリに記憶し、
暗号学的に安全なハッシュ関数を使用して前記更新されたファームウェアデータのハッシュ値を生成し、
前記ハッシュ値が前記認証鍵を使用した前記暗号化署名の復号の出力と一致するという検証にのみ応答して、前記更新されたファームウェアデータ内の記憶された命令を実行するようにさらに構成される、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項18】
前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のプロセッサが、前記第1のメモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記ハッシュ値が前記認証鍵を使用した前記暗号化署名の復号の出力と一致しないという検証に応答して、前記更新されたファームウェアデータを前記第1のメモリから削除するようにさらに構成される、請求項17に記載の分析物試験計。
【請求項19】
前記ハイブリッド分析物試験計の前記第1のプロセッサが、前記第1のメモリ内の前記ファームウェア命令を実行して、
前記測定信号発生器を動作させて、複数の交流(AC)信号と、それに続く複数の直流(DC)信号とを含む前記所定の一連の電気信号を、前記ポートを介して前記電気化学試験ストリップ上に堆積された前記試料に印加するようにさらに構成される、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項20】
前記ハイブリッド分析物試験計が、
複数の前記電気化学試験ストリップを収容するように構成された容器をさらに備える、請求項10に記載の分析物試験計。
【請求項21】
前記ハイブリッド分析物試験計を収容する第1のキャビティと、前記モバイル電子装置を収容する第2のキャビティとを備えるケースであって、前記ハイブリッド分析物試験計を前記モバイル電子装置の背面に近接して定位置に保持するケースをさらに備える、請求項10に記載の分析物試験計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2019年10月18日に出願された「SYSTEM FOR BLOOD GLUCOSE METER COUPLED WITH MOBILE ELECTRONIC DEVICE」と題する米国仮出願第62/916,817号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、一般に、流体試料中の分析物検出の分野に関し、より具体的には、血糖計を含む流体試料中の分析物を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野で知られている分析物試験計は、ユーザによって提供された体液試料の分析が、電子装置および1つ以上の電気化学反応を使用してユーザの体内の1つ以上の分析物のレベルを識別することを可能にする。これらの分析物計は、個々のユーザの流体試料(すなわち、生物学的または環境的)中の分析物の正確な測定に大きな利点を提供する。分析物計は、試薬と流体試料との組み合わせに電気信号を印加し、印加された電気信号に対する応答を記録し、分析物試験計内の電子ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせは、電気信号に対する記録された応答に基づいてユーザの体内の分析物のレベルを検出する検出エンジンを実装する。例えば、糖尿病の人は、血液または別の体液の流体試料を、血糖計(BGM)に電気的に接続された電気化学検査ストリップ上に形成された試薬に提供することによって、グルコースを測定することから利益を得ることができる。BGMは、ユーザの血糖値の測定を提供し、多くのBGM装置は、各血糖測定後に廃棄される使い捨て電気化学検査ストリップを使用する。分析物試験計はまた、他の分析物の中でも、コレステロールおよびトリグリセリドの測定値を提供することによって、心疾患のリスクがあるユーザに利益を提供することができる。しかしながら、これらは、生物学的試料中の分析物を測定する利点のほんの数例である。医療科学の進歩は、流体試料中で電気化学的に分析されることができる分析物の数の増加を特定している。
【0004】
当該技術分野で知られている分析物試験計は、広範囲の分析物の測定値を提供することができるが、既存の分析物装置は、分析物装置の寿命の間、一般的に数年であることが多いソフトウェアおよびファームウェアの更新を受信することができないことが多い。分析物試験計は、更新されなくても機能的なままであるが、分析物試験計を更新することができないことは、非効率的な動作をもたらす可能性がある。例えば、上述したように、分析物試験計は、典型的には単回使用後に使い捨てである試験ストリップを使用する。計器の寿命にわたって、試験ストリップの構造および化学的性質は、いかなるそのような変化も、既存の分析物試験計の精度を低下させる可能性があるため、認識可能な方法で変化することはできない。試験ストリップの異なるバッチ間で起こり得る比較的小さな製造ばらつきでさえも、試験ストリップ自体に欠陥がなくても、異なる試験ストリップから正確な測定値を提供するために動的に更新されることができない既存の分析物試験計の精度に悪影響を及ぼす可能性がある。多くの分析物試験計は、更新を受信することができない自己完結型装置として動作し、特に低コストの分析物試験計は、ファームウェア更新を受信することができないことが多い。ネットワーク接続性を組み込んだ一部の分析物試験計は、オンライン更新サービスから更新されたファームウェアデータを受信する技術的能力を有するが、これらの計器は、正規のファームウェア更新を可能にする同じ能力がまた、FDAまたは他の健康規制当局によって認可されていない方法で計器を動作させる不正なファームウェア更新を可能にするため、実際的な問題として更新を受信しないことが多い。
【0005】
既存の分析物試験計が直面する別の課題は、これらの試験計が、一般に、統合されたマイクロプロセッサ、入力装置、および出力装置、場合によってはネットワーク装置を有するスタンドアロン装置として動作し、分析物試験計の複雑さ、価格、および電力消費を増加させるということである。例えばブルートゥースまたは他の無線データリンクを介して外部コンピューティング装置に結果を送信するように構成された分析物試験計さえも、通常動作中にスタンドアロン装置として機能するように依然として構成されている。いくつかの取り外し可能な分析物試験計は、ユニバーサルシリアルバス(USB)または同様の接続を介してパーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、または他のデジタル装置などの別のホスト装置に接続する従属装置として機能するように構成されているが、これらの取り外し可能な分析物試験計は、分析物測定プロセスを実装するための完全なハードウェア要件を依然として実装しており、現場で更新を受信することができない。さらにまた、これらの取り外し可能な分析物試験計は、一般に、それらが装置に差し込まれたままである場合、デジタル装置の通常の動作を妨害し、したがって、ユーザは、各使用の前にホスト装置に取り外し可能な分析物試験計を接続および切断しなければならない。したがって、上述した課題に対処する分析物試験計の改善は有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、ハイブリッド分析物試験計が開発されている。ハイブリッド分析物試験計は、ファームウェア命令を記憶するように構成されたメモリと、電気化学試験ストリップを受容するように構成されたポートと、ポートに電気的に接続された測定信号発生器と、ポートに電気的に接続された測定信号受信器と、短距離無線送受信機と、メモリ、測定信号発生器、測定信号受信器、および短距離無線送受信機に動作可能に接続されたプロセッサとを含む。プロセッサは、メモリ内のファームウェア命令を実行して、ポートを介して電気化学試験ストリップ上に堆積された試料に所定の一連の電気信号を印加し、測定信号受信器から複数の信号測定値を受信するように測定信号発生器を動作させるように構成され、測定信号受信器は、所定の一連の電気信号に応答して、ポート内の電気化学試験ストリップから受信した複数の電気信号に基づいて複数の測定信号を生成し、短距離無線送受信機を使用して複数の信号測定値に対応するデータを外部コンピューティング装置に送信し、複数の信号測定値に対応するデータは、外部コンピューティング装置内の別のプロセッサが試料中の分析物の測定値を識別することを可能にする。
【0007】
別の実施形態では、分析物試験計が開発されている。分析物試験計は、ハイブリッド分析物試験計およびモバイル電子装置を含む。ハイブリッド分析物試験計は、ファームウェア命令を記憶するように構成された第1のメモリと、電気化学試験ストリップを受容するように構成されたポートと、ポートに電気的に接続された測定信号発生器と、ポートに電気的に接続された測定信号受信器と、第1の短距離無線送受信機と、第1のメモリ、測定信号発生器、測定信号受信器、および第1の短距離無線送受信機に動作可能に接続された第1のプロセッサとを含む。第1のプロセッサは、第1のメモリ内のファームウェア命令を実行して、ポートを介して電気化学試験ストリップ上に堆積された試料に所定の一連の電気信号を印加し、測定信号受信器から複数の信号測定値を受信するように測定信号発生器を動作させるように構成され、測定信号受信器は、所定の一連の電気信号に応答して、ポート内の電気化学試験ストリップから受信した複数の電気信号に基づいて複数の信号測定値を生成し、第1の短距離無線送受信機を使用して複数の信号測定値に対応するデータをモバイル電子装置に送信する。モバイル電子装置は、ソフトウェア命令を記憶するように構成された第2のメモリと、第2の短距離無線送受信機と、出力装置と、第2のメモリ、第2の短距離無線送受信機、および出力装置に動作可能に接続された第2のプロセッサとを含む。第2のプロセッサは、第2のメモリ内のソフトウェア命令を実行して、第2の短距離無線送受信機を使用してハイブリッド分析物試験計から複数の信号測定値を受信し、分析物検出アルゴリズムを実行して、複数の信号測定値に基づいて試料中の分析物のレベルを識別し、出力装置で出力を生成して試料中の分析物のレベルをユーザに提示するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
上記以外の利点、効果、特徴および目的は、以下の詳細な説明を考慮すると、より容易に明らかになるであろう。そのような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【0009】
【
図1】ハイブリッド分析物試験計と、モバイル電子装置として具現化される外部コンピューティング装置とを含む分析物試験計の一組の図である。
【
図2】ネットワーク化された通信サービスを分析物試験計に提供するシステムにおける
図1の分析物試験計の概略図である。
【
図3】
図1の分析物試験計および
図2のシステムの動作のためのプロセスのブロック図である。
【
図4】
図1の分析物試験計および
図2のシステムにおけるソフトウェアおよびファームウェアを更新するためのプロセスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これらおよび他の利点、効果、特徴および目的は、以下の説明からよりよく理解される。説明では、本明細書の一部を形成し、限定ではなく例示として本発明の概念の実施形態が示されている添付の図面を参照する。対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0011】
本発明の概念は、様々な変更および代替形態の影響を受けやすいが、その例示的な実施形態は、図面に例として示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、以下の例示的な実施形態の説明は、本発明の概念を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、それどころか、その意図は、本明細書に記載された実施形態および以下の特許請求の範囲によって定義されるその趣旨および範囲内に含まれる全ての利点、効果、および特徴を網羅することであることを理解されたい。したがって、本発明の概念の範囲を解釈するために、本明細書に記載の実施形態および以下の特許請求の範囲が参照されるべきである。したがって、本明細書に記載の実施形態は、他の課題を解決するのに有用な利点、効果、および特徴を有することができることに留意されたい。
【0012】
ここで、本発明の概念の全てではないが一部の実施形態が示されている添付の図面を参照して、装置、システム、および方法が以下により完全に説明される。実際に、装置、システム、および方法は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。
【0013】
同様に、本明細書に記載の装置、システム、および方法の多くの変更および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する本開示が関係する当業者に思い浮かぶであろう。したがって、装置、システム、および方法は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更および他の実施形態が特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0014】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示に関する当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと同様または等価な任意の方法および材料が、本方法の実施または試験に使用されることができるが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。
【0015】
さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、文脈上、1つおよび1つのみの要素しか存在しないことを明確に要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。同様に、「有する(have)」、「備える(comprise)」、または「含む(include)」という用語、あるいはその任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例えば、表現「AはBを有する(A has B)」、「AはBを備える(A comprises B)」、および「AはBを含む(A includes B)」は、ともに、B以外に、他の要素がA内に存在しない状況(すなわち、Aが、唯一且つ排他的にBからなる状況)、または、B以外に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの1つ以上のさらなる要素がA内に存在する状況を指すことができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「モバイル電子装置」という用語は、モバイル電子装置内の1つ以上のプロセッサによって制御される出力装置、入力装置、メモリ、および無線通信装置の各構成要素のうちの1つ以上をユーザに提供するポータブルコンピューティング装置を指す。出力装置の例は、液晶ディスプレイ(LCD)ディスプレイ、有機または無機発光ダイオード(LED)ディスプレイ、ならびに他の形態のグラフィカルディスプレイ装置、オーディオスピーカ、および触覚フィードバック装置を含むが、これらに限定されない。入力装置の例は、ボタン、キーボード、タッチスクリーン、およびオーディオマイクを含むが、これらに限定されない。メモリの例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性データ記憶装置と、磁気ディスク、光ディスク、およびEEPROM、NANDフラッシュ、または他の形態のソリッドステートデータ記憶装置を含むソリッドステート記憶装置などの不揮発性データ記憶装置の双方を含むが、これらに限定されない。無線通信装置の例は、近距離無線通信(NFC)プロトコル、ブルートゥース低エネルギー(BLE)を含むブルトゥースプロトコルファミリ、IEEE 802.11プロトコルファミリ(「Wi-Fi」)、およびセルラデータ伝送規格(「4G」、「5G」など)で動作する無線送受信機を含むが、これらに限定されない。プロセッサの例は、1つ以上の中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)を実装するデジタル論理装置、および集積装置内の、またはプロセッサを実装するために一緒に動作する装置の組み合わせとしての任意の他の適切なデジタル論理装置を含む。モバイル電子装置の一般的な例は、スマートフォン、スマートウォッチ、およびタブレットコンピューティング装置を含むが、これらに限定されない。
【0017】
図1は、分析物試験計100の背面
図102A、プロファイル
図102B、および正面
図102Cを示している。分析物試験計100は、ハイブリッド分析物試験計104と、分析物試験計100の機能を提供するために本明細書に記載のように相互作用するモバイル電子装置140とから形成される。本明細書で使用される場合、「ハイブリッド分析物試験計」および「ハイブリッド計」という用語は、互換的に使用され、特定のハードウェアおよびソフトウェア要素を実装して、分析物を含む試料に電気信号を生成および印加し、アンペロメトリック試験プロセスで電気信号に対する電気的応答を記録する分析物試験装置を指す。しかしながら、従来の分析物試験計とは異なり、ハイブリッド分析物試験計は、完全な分析物測定プロセスを実行し、分析物測定の出力を提供するハードウェアおよびソフトウェア構成要素を実装しない。代わりに、ハイブリッド計は、電気化学試験シーケンスに対する記録された電気的応答に対応するデジタルデータを、
図1のモバイル電子装置140として具現化される外部コンピューティング装置に送信する。モバイル電子装置140は、ハイブリッド計から受信したデジタルデータを処理して試料中の分析物レベルの測定値を生成し、測定された分析物レベルの出力をユーザに提供し、モバイル電子装置140、および任意に1つ以上のデータネットワークを介してモバイル電子装置140と通信する他のコンピューティング装置を介して追加のサービスをユーザに提供するハードウェアおよびソフトウェア構成要素によって構成される。後述するように、分析物測定装置100を形成するためのハイブリッド計器104とモバイル電子装置140または別の外部コンピューティング装置との組み合わせは、分析物測定装置100を形成するハードウェアおよびソフトウェア要素の効率および機能性を改善する。
【0018】
ビュー102Aに示すように、ハイブリッド分析物試験計104は、
図1のスマートフォンとして具現化されるモバイル電子装置140の背面に取り付けられる。ケース126は、ハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140の双方を囲み、ハイブリッド計器104をモバイル電子装置140に対して固定位置に保持する。ハイブリッド計器104は、取り外し可能な電気化学試験ストリップ105を受容するポート108を含む。電気化学試験ストリップ105は、ハイブリッド計器104との電気的接続を形成する電気接点106を含む。電気接点106は、電極と接触している化学試薬を支持する試料領域107内の電極に電気的に接続されている。当該技術分野で一般に知られているように、試薬は、試薬に適用される流体試料中の分析物との還元酸化(酸化還元)反応を支持する酵素およびメディエータを含み、ハイブリッド計器104は、試験ストリップに電位を印加して、これらの酸化還元反応によって影響を受ける電流レベルを有する電流を検出する。ポート108は、電気コネクタ106を含む電気化学試験ストリップ105の一部を受容するために、ハイブリッド計器104のハウジング内に物理的開口を含む。動作中、電気化学試験ストリップ105の電気接点106は、ポート108に挿入され、試料領域107は、ハイブリッド計器104の外側に留まり、ユーザが試料領域107内の試薬に血液などの流体試料をある用量で供給することを可能にするためにモバイル電子装置140のハウジングを越えて延在している。ハイブリッド計器104は、電気信号の試験シーケンスを電気接点106に印加し、電気信号応答を測定し、ハイブリッド計器104は、これをデジタルデータに変換し、モバイル電子装置140に送信する。電気化学試験ストリップ105は、他の様態において当該技術分野で知られている電気化学試験ストリップを表しており、試験計100は、電気化学試験ストリップの変更を必要とせずに当該技術分野で知られている様々な形態の電気化学試験ストリップを使用して動作可能である。
【0019】
ハイブリッド計器104は、例えば、電気化学試験ストリップのうちの1つ以上の供給を含む試験計100とともに使用される消耗品を貯蔵する任意の貯蔵区画110を含む。他の消耗品は、例えば、ユーザが試験ストリップを投与するために血液試料を生成することを可能にする穿刺針を含む。いくつかの実施形態では、貯蔵区画110は、耐湿ドアを有し、電気化学試験ストリップの使用前に貯蔵された試験ストリップの水による汚染を防止する乾燥剤を貯蔵する。
【0020】
図1のビュー102Bは、計器100のハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140の側面図を示している。側面
図102Bに示すように、ハイブリッド計器104は、モバイル電子装置140の背面から延在している。ハイブリッド計器104は、ユーザがモバイル電子装置140とハイブリッド計器104との組み合わせを便利な方法で保持および持ち運びすることができるように、10mm以下の厚さ、一実施形態では約5mmの厚さで形成される。さらに、ハイブリッド計器104は、モバイル電子装置140に近接する下部ベースと、ケース126と係合する上部ベースとを有する直角プリズムの一般的な形状で形成される。ケース126は、ハイブリッド計器104を保護するために、ハイブリッド計器104を囲む丸い角を有する傾斜縁部を提供する。しかしながら、当業者は、ハイブリッド分析物試験計104の代替構成が、異なる種類のモバイル電子装置との係合を可能にする異なる厚さまたは形状を有してもよいことを認識するであろう。
【0021】
図1のビュー102Cは、計器100のモバイル電子装置140の正面図を示している。ケース126は、モバイル電子装置140のハウジングを囲み、ディスプレイ158および機械的インターフェースボタン159への完全なアクセスを可能にする。ディスプレイ158は、モバイル電子装置140によって実装される標準的な機能に加えて、ユーザが計器100を操作するためのインターフェースを提供するソフトウェアアプリケーションを含むグラフィカルユーザインターフェースをモバイル電子装置140の機能に提供する。上述したように、ケース126およびハイブリッド計器104は、ディスプレイ158への、またはモバイル電子装置140内のUSB接続もしくは他の有線接続などの有線ケーブル接続へのユーザアクセスを妨げない。より一般的には、ハイブリッド計器104は、ユーザのために分析物測定動作を実行すること以外の使用のためにモバイル電子装置140の動作への干渉を最小限に抑える一方で、計器装置100全体もハイブリッド計器104を統合し、その結果、ハイブリッド計器104は、通常の使用中にモバイル電子装置140に取り付けられたままであり、ユーザがモバイル電子装置140にアクセスするときはいつでも使用することができる。
【0022】
図1に示すように、ケース126は、ハイブリッド分析物試験計104をモバイル電子装置140に固定する。ケース126は、ハイブリッド計器104の少なくとも一部およびモバイル電子装置140の少なくとも一部を囲む。
図1の実施形態では、ケース126は、ハイブリッド分析物試験計104を収容する第1のキャビティと、モバイル電子装置140を収容する第2のキャビティとを含む。この実施形態では、ケース126は、ディスプレイ158およびインターフェースボタン159のための開口を提供しながら、モバイル電子装置140の背面に近接してハイブリッド計器104を定位置に保持し、モバイル電子装置140の縁部の周りに巻き付くゴム、プラスチック、または別の可撓性材料から形成される。より詳細には示されていないが、ケース126は、カメラレンズ、USBポートなどの有線接続用のレセプタクル、またはモバイル電子装置140内の他の構成要素のための追加の開口を提供することができる。ケース126はまた、ハイブリッド計器104における電気化学試験ストリップポート108のための開口、および必要に応じて、貯蔵区画110へのアクセスを提供するための開口を提供する。ケース126は、ハイブリッド計器104をモバイル電子装置140との固定位置に保持し、ユーザが両機器を1つのユニットとして保持して操作することを可能にする。もちろん、異なるモバイル電子装置は、様々な形状およびサイズを有するため、ハイブリッド計器104を変更することなく、様々なケース設計が使用されて、広範囲のモバイル電子装置とともにハイブリッド計器104を保持することができる。ハイブリッド計器104は、例えば、ユーザがハイブリッド計器104とともに使用するための別のスマートフォンまたは他のモバイル電子装置を入手した場合に、別のケースに移すことができる。ケース126はまた、落下に対する何らかの損傷保護を提供するなど、ハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140の双方にある程度の損傷保護を提供する。他の実施形態では、ハイブリッド計器104は、接着結合、磁気結合、または機械的接続を使用してモバイル電子装置の外部に取り付けられる。
【0023】
図2は、データネットワーク280を利用して、ソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284およびヘルスケアサービス288を提供するネットワーク化されたサーバと通信する分析物試験計100を含むシステム200の概略図である。上述したように、分析物試験計100は、ハイブリッド計器104とモバイル電子装置140とを組み合わせたものである。システム200において、ソフトウェアおよびファームウェア更新サービスは、いわゆる「アプリストア」またはモバイル電子装置140内のソフトウェア、および
図2の特定の構成では、モバイル電子装置140を介してハイブリッド計器104のファームウェアを更新するための機構を提供する他のオンラインサービスなどの市販のサービスである。ヘルスケアサービス288は、分析物試験計100から分析物測定値および他のユーザデータを受信するオンラインシステムを表す。ヘルスケアサービス288は、任意に、分析物試験計100のユーザに健康情報および処置アドバイスを提供し、いくつかの実施形態では、ヘルスケアサービス288はまた、ヘルスケア提供者(HCP)が、ヘルスケアサービスをユーザに提供することの一部として、ユーザの分析物レベルの履歴にアクセスすることを可能にする。
図2は、分析物試験計100の内部構成要素および構成をさらに詳細に示している。
【0024】
図2に示すように、ハイブリッド計器104は、第1のメモリ116、第1の短距離無線送受信機128、および測定信号発生器120を介してポート108に動作可能に接続される第1のプロセッサ112と、測定信号受信器124とを含む。バッテリまたはコンデンサ132は、ハイブリッド計器104内のこれらの構成要素を動作させるための電力を供給する。モバイル電子装置140は、第2のメモリ148に動作可能に接続された第2のプロセッサ144と、第2の短距離無線送受信機152と、入力/出力(I/O)装置156と、無線ネットワーク送受信機160とを含む。動作中、モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、アプリケーションソフトウェア168を実行して、分析物試験計100のユーザにインターフェースを提供し、ハイブリッド計器104を制御し、ハイブリッド計器104から受信した測定データを分析して、ハイブリッド計器104に提供される電気化学試験ストリップ上の試料中の1つ以上の分析物のレベルを識別する。バッテリ164は、モバイル電子装置140内のこれらの構成要素を動作させるための電力を供給する。
【0025】
ハイブリッド分析物試験計104をより詳細に参照すると、メモリ116は、EEPROM、NAND、またはファームウェアデータ118およびファームウェア認証鍵119を長期記憶部に保持する他の適切なデータ記憶装置などの不揮発性メモリ装置を含む。メモリ116は、記録された信号測定データおよびハイブリッド計器104の動作中にメモリ116に生成および記憶される任意の他のデータなどのデータを記憶する揮発性RAMをさらに含む。ファームウェア118は、プロセッサ112の動作を制御するための動作命令と、プロセッサ112が測定信号発生器120および測定信号受信器124の動作を制御するために使用するパラメータデータとの双方を含むバイナリデータとして具現化される。例えば、プロセッサ112は、測定信号発生器120を動作させるためにファームウェア118内の命令を実行し、プロセッサ112は、測定信号発生器120がポート108を介して試験ストリップの電極に印加するACおよびDC信号の動作電圧レベルおよび持続時間を指定するファームウェア118内のパラメータを使用する。同様に、プロセッサ112は、測定信号受信器124がポート108内の試験ストリップから受信するアナログまたはデジタル信号測定データを処理および記録するためにファームウェア118内の命令を実行する。プロセッサ112はまた、短距離無線送受信機128を使用してモバイル電子装置140と通信を行うためにファームウェア命令を実行する。以下にさらに詳細に説明するように、ハイブリッド計器104は、モバイル電子装置140がソフトウェア更新の一部として受信する更新されたファームウェアを受信する。プロセッサ112は、一実施形態では信頼できる発行者の暗号化公開鍵である認証鍵119を使用して、更新されたファームウェアを使用する前に更新されたファームウェアイメージの信頼性を検証する。
【0026】
測定信号発生器120は、変調器、増幅器、平滑化フィルタ、ならびに電圧、電力、および周波数に対して所定の動作範囲内で直流(DC)信号および交流(AC)信号の双方を発生するように構成可能な波形発生器を実装するための他の回路を含む。例えば、一構成では、測定信号発生器120は、正弦波および三角形のAC波形ならびに正方形または台形のパルスDC波形を含む様々な波形で、0Hz(DC)から100kHzまでのACの周波数で試験ストリップ内の対電極と基準電極との間に最大1.0V(例えば+0.5Vから-0.5V)の相対電位差を有するAC電圧およびDC電圧を生成することができる。プロセッサ112または測定信号発生器に統合されたデジタル-アナログ変換器(DAC)は、プロセッサ112が測定信号発生器120から様々なアナログ電圧測定信号を生成するデジタルデータ出力を生成することを可能にする。測定信号受信器124は、測定信号発生器120からの測定信号に応答して試験ストリップ105内の対電極と基準電極との間に生成される電流信号の検出を可能にする、1つ以上の信号増幅器およびフィルタを含む。プロセッサ112または測定信号発生器120に統合されたアナログ-デジタル信号変換器は、ハイブリッド分析物試験計104が、ハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140内のデジタル論理装置によるさらなる処理のために測定電流の離散デジタルサンプリング値を生成することを可能にする。いくつかの実施形態では、測定信号発生器120および測定信号受信器124のいずれかまたは双方は、プロセッサ112と全体的または部分的に統合される。例えば、プロセッサ112は、DACおよびADC、変調器、増幅器、およびフィルタ回路などの構成要素を任意に統合する。他の実施形態では、測定信号発生器120および測定信号受信器124は、プロセッサ112が信号発生器120を動作させるための制御信号を生成し、プロセッサ112が測定信号受信器124から信号測定データを受信する外部構成要素を使用して実装される。
【0027】
図2の実施形態では、短距離無線送受信機128は、少なくとも1つのアンテナと、モバイル電子装置140との短距離無線通信を提供する少なくとも1つの装置とを含む。いくつかの実施形態では、短距離無線送受信機128は、モバイル電子装置140が、2つの装置間の有線電気接続を必要とせずに、誘導結合を介してハイブリッド計器104に電力を供給することを可能にする回路をさらに含む。一実施形態では、短距離無線送受信機128は、ハイブリッド分析物試験計104に形成されたコイルアンテナに接続され、モバイル電子装置140への送信のためにプロセッサ112からデジタルデータを受信し、モバイル電子装置140からの送信を受信および復号して、受信信号のデジタルデータ表現をプロセッサ112に提供するように構成された近距離無線通信(NFC)無線送受信機を含む。ハイブリッド計器104は、プリント回路基板に形成された導電性トレースとしてコイルアンテナを組み込むか、またはハイブリッド分析物試験計104内の他の導電性コイルを使用する。アンテナは、モバイル電子装置140内の対応する短距離無線送受信機152が発する電磁信号に符号化されたデータをモバイル電子装置140から受信し、短距離無線送受信機128内の受信機は、プロセッサ112による使用のためにデータを復号する。
【0028】
図2の実施形態では、短距離無線送受信機128は、モバイル電子装置140の短距離無線送受信機152内の対応するNFC送受信機とのエネルギー効率の良い無線通信チャネルを提供するNFC送受信機を組み込む。NFC送受信機は、短距離(典型的には5cm以下程度)にわたって動作し、ハイブリッド分析物試験計104をモバイル電子装置140に近接して配置する分析物試験計100の物理的構成は、NFC送受信機を効果的に使用して通信を提供することを可能にする。さらに、多くのモバイル電子装置はまた、IEEE 802.11「Wi-Fi」、ブルートゥース、およびセルラデータ(例えば、4G、5Gなど)などの他の無線送受信機を含み、これらは、NFC送受信機などの短距離無線送受信機の使用によって実質的に影響を受けず、モバイル電子装置140がハイブリッド計器104からの干渉なしにハイブリッド計との通信の外部での一般的な使用のために動作することを可能にする。短距離無線送受信機128および152は、典型的には、ブルートゥースまたはIEEE 802.11(「Wi-Fi」)などの他の無線ネットワーク規格よりも低い電力レベルで動作する。さらに、ケース126は、双方の装置のコイルアンテナ間の誘導結合を可能にするためにモバイル電子通信装置140に近接してハイブリッド分析物試験計104を保持するため、短距離無線送受信機128および152は、外部無線送信機からの干渉を最小限に抑えて互いに通信することができ、これにより、多数の送信装置を有する環境における長距離無線送信プロトコルに影響を及ぼすことが知られている接続性の問題を回避する。短距離無線送受信機の他の実施形態は、モバイル電子装置140内の追加の無線ネットワーク送受信機の動作に干渉しない無線周波数識別(RFID)送受信機または同様の短距離無線技術を使用する。
【0029】
上述したように、短距離無線送受信機128および152は、ハイブリッド計器104とモバイル電子装置140との間の無線データ通信を提供する。さらに、ハイブリッド計器104のいくつかの実施形態は、短距離無線送受信機128を使用して、ハイブリッド計器104内の構成要素に電力を供給するためにコンデンサ132を充電するかまたはバッテリ132を再充電するモバイル電子装置140から電力を受信する。NFC送受信機を組み込んだ一実施形態では、モバイル電子装置140は、短距離無線送受信機128内のNFC送受信機に電力を供給する電力信号を送信し、次いで、短距離無線送受信機は、コンデンサ132を充電するため、またはバッテリ132を再充電するために電力を供給する。当該技術分野で知られているように、NFC電力信号は、所定の周波数(例えば13.56MHz)で交流(AC)信号として送信され、ハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140の双方のコイルアンテナは、ハイブリッド計器104において電力を生成するために誘導結合を可能にする。ハイブリッド計器104は、AC電力信号を直流(DC)充電電流に変換してコンデンサまたは充電式バッテリ132に電力を供給する整流器を含む。いくつかのNFC送受信機構成は、上述した電力伝送動作を実施することができるが、他の実施形態は、異なるAC電力信号周波数(例えば、50Hzまたは60Hz)を使用することができるハイブリッド計器104のコイルアンテナとモバイル電子装置140との間の誘導結合を提供する異なる充電回路を使用する。上述したように、モバイル電子装置140からハイブリッド計器104への無線電力伝送を提供する実施形態は任意であり、ハイブリッド計器104の他の実施形態は、コインセルまたは他の適切なバッテリなどの市販の非充電式バッテリを使用して電力を供給する。
【0030】
バッテリまたはコンデンサ132は、より具体的には、プロセッサ112、メモリ116、測定信号発生器120、測定信号受信器124、および短距離無線送受信機128を含むハイブリッド分析物試験計104を動作させるための電力を供給する電気エネルギーを貯蔵する。バッテリ132を使用する実施形態では、ハイブリッド分析物試験計104は、いつでも起動されることができる。例えば、ハイブリッド分析物試験計104は、ポート108が試験ストリップを受容したときに閉じられるスイッチなどの電気スイッチを介して、またはモバイル電子装置140から受信される無線起動信号を介して起動されることができる。コンデンサ132を使用する実施形態では、コンデンサ132は、比較的短い時間(例えば数分程度)だけ電荷を保持し、ハイブリッド分析物試験計104は、短距離無線送受信機を介した誘導結合を介してコンデンサ132を充電するためにモバイル電子装置140が生成する外部充電信号に応答して起動される。コンデンサ132が所定の充電レベルに到達すると、コンデンサ132は、ハイブリッド分析物試験計の構成要素を作動させるのに必要な電力を供給する。この実施形態では、ユーザは、モバイル電子装置140がアプリケーションソフトウェア168内のユーザインターフェース172の一部としてユーザに提示するグラフィカルアイコンまたは他の入力などのユーザインターフェースを介してハイブリッド分析物試験計104を作動させる。一構成では、モバイル電子装置140は、ハイブリッド計器104の動作中に電力をハイブリッド計器104に伝送し続けるが、別の実施形態では、コンデンサ132は、試験ストリップに印加される単一の流体試料を分析するためにハイブリッド計器104の動作前に十分な電荷を受け取る。充電プロセスは、典型的には、ハイブリッド計器104が単一の流体試料の信号測定データを生成することを可能にし、モバイル電子装置140は、各試験動作のために追加の電気エネルギーを供給する。
【0031】
モバイル電子装置140をより詳細に参照すると、
図2は、第2のメモリ148、短距離無線送受信機152、入力および出力装置156、ならびに無線ネットワーク送受信機160に動作可能に接続された第2のプロセッサ144を示している。リチウムイオンバッテリまたは他の適切なバッテリなどのバッテリ164は、プロセッサ144、メモリ148、第2の短距離無線送受信機152、入力および出力装置156、無線ネットワーク送受信機160を動作させるための電力を供給し、上述したように、いくつかの実施形態では、バッテリ164は、第2の短距離無線送受信機152を介してハイブリッド計器104に電力を供給する。モバイル電子装置140は、典型的には、スマートフォン、タブレット、またはウェアラブル装置などの汎用デジタル電子装置であるため、モバイル電子装置140は、市販のハードウェア構成要素を含み、モバイル電子装置140の正確な構成は、製造に基づいて変化する。一般に、プロセッサ144は、1つ以上のコアを有するCPUと、
図1のディスプレイ装置158または他のグラフィカルディスプレイ装置を介してグラフィカル出力を提供するGPUとを含むシステムオンチップ(SoC)である。プロセッサ144は、任意に、オーディオ入出力用のデジタル信号プロセッサと、例えば画像プロセッサおよびニューラルネットワークアクセラレータを含む他の専用計算ユニットとを含む。加速度計、ジャイロスコープ、温度センサ、湿度センサなどのセンサを含むモバイル電子装置140内の他の構成要素は、プロセッサ144と統合されるか、またはプロセッサ144に動作可能に接続され、本明細書ではプロセッサ144の一部として説明される。
【0032】
モバイル電子装置140では、メモリ148は、1つ以上の不揮発性および揮発性データ記憶装置を含む。
図2の構成では、メモリ148は、双方ともモバイル電子装置プロセッサ144による実行のための命令を含むアプリケーションソフトウェア168およびオペレーティングシステムソフトウェア188を記憶する。
【0033】
アプリケーションソフトウェア168は、実行可能プログラムコード、構成データ、ユーザ選好の記憶された記録およびユーザデータのログ、ならびにユーザインターフェース172、分析物検出アルゴリズム176、通信スタック180、記憶されたユーザデータ184、および測定信号データ186のためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)要素などの他のデジタルリソースをさらに含む。
図1では、モバイル電子装置140が、以下にさらに詳細に説明するソフトウェア更新プロセスの一部としてファームウェア118を受信するため、アプリケーションソフトウェア168は、ハイブリッド分析物試験計104によって使用されるファームウェア118のコピーを含むものとしても示されている。ユーザインターフェース172は、アプリケーションソフトウェア168がユーザからの入力を受信して分析物試験計100を制御し、分析物試験の結果をユーザの他の健康関連情報とともに表示することを可能にするソフトウェア命令および他のグラフィカルアセットを含む。分析物検出アルゴリズム176は、プロセッサ144がハイブリッド計器104から受信した測定信号データ186を処理して流体試料中の分析物レベルの測定値を生成することを可能にするソフトウェア命令ならびにプロファイルおよびパラメータデータを含む。いくつかの実施形態では、分析物検出アルゴリズム176はまた、プロセッサ144が、流体試料の汚染または試験ストリップの故障を検出するフェイルセーフプロトコルを実行することを可能にする。通信ソフトウェア180は、ハイブリッド計器104に通信を提供する短距離無線送受信機152と、モバイル電子装置140が追加の分析のために分析物レベルの測定値をヘルスケアサービス288に送信することを可能にする無線ネットワーク送受信機160との双方を使用してデータを送受信するために、オペレーティングシステムソフトウェア188によって提供されるサービスとインターフェース接続する。記憶されたユーザデータ184は、ユーザ固有の選好および構成データ、ならびに1つ以上の分析物測定値の履歴を含み、任意に、ユーザの活動に関する他の情報は、食事時間および活動データを含む。
【0034】
オペレーティングシステム(OS)ソフトウェア188は、ソフトウェアカーネル、ドライバ、ライブラリ、および標準的な市販のオペレーティングシステムに関連する他のシステムソフトウェアを含む。OSソフトウェア188は、ネットワークおよびグラフィックスタック、データの記憶および管理のためのファイルシステム、I/O装置156へのソフトウェアアクセスなどの標準化されたサービスを提供する。説明のために、本明細書では、OSソフトウェア188は、アプリケーションソフトウェア168以外の他のソフトウェアアプリケーション、特に、モバイル電子装置140がハイブリッド計器104用のソフトウェア168およびファームウェア118に対する更新をソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284から受信することを可能にするソフトウェア更新サービスを含むものとしても説明されており、これらのソフトウェアプログラムは、学術的な意味で厳密に「オペレーティングシステム」の一部であるとはみなされない。
【0035】
上述したように、ハイブリッド分析物試験計104内のプロセッサ112は、ファームウェア118内の記憶されたプログラム命令を実行し、モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、オペレーティングシステムソフトウェア188およびアプリケーションソフトウェア168を実装する記憶されたソフトウェア命令を実行する。当然ながら、当業者は、「ファームウェア」および「ソフトウェア」という用語が、双方とも、記憶されたプログラム命令、および非一時的メモリに保持され、記憶された命令を実行するプロセッサの動作を制御するパラメータデータなどの他のデータを指すことを認識する。ファームウェアおよびソフトウェアの双方が、本明細書に記載の機能を実装してもよく、ファームウェアおよびソフトウェアの双方が、ハイブリッド分析物試験計104およびモバイル電子装置140の動作中に更新されてもよい。本開示の文脈において、「ファームウェア」および「ソフトウェア」という用語は、ハイブリッド分析物試験計104とモバイル電子装置140との動作を明確に区別するために使用され、これらの用語は、本開示の範囲を限定するものではない。
【0036】
モバイル電子装置140では、I/O装置156は、例えば、表示画面158内のタッチセンサ式入力などの入力装置、機械的ボタン159または他の機械的制御装置、音声入力、触覚入力などを含む。出力装置は、例えば、表示画面158などのグラフィカル出力、表示灯、スピーカまたはヘッドフォン出力を介したオーディオ出力などを含む。
【0037】
モバイル電子装置140において、短距離無線送受信機152は、モバイル電子装置140とハイブリッド計器104との間の誘導結合を介して無線データ通信および任意に電力伝送を可能にする第2のコイルアンテナなどの、上述したNFC送受信機または他の短距離無線送受信機およびアンテナなどの、ハイブリッド計器104内の短距離無線送受信機128との通信に適合する構成要素を含む。無線ネットワーク送受信機160は、ネットワーク280を介してソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284、ヘルスケアサービス288、または他の外部コンピューティングシステムと通信するために、ブルートゥースまたはIEEE 802.11の「Wi-Fi」接続の場合は数メートル程度、セルラデータ送受信機の場合は最大数キロメートルなど、より長い範囲で通信する別個の無線装置である。さらに、無線ネットワーク送受信機160は、一般に、
図2のネットワーク280などの中間データネットワークを使用するリモートコンピューティングシステムを含む複数の装置と通信することができ、
図2の短距離無線送受信機128および152は、一般に、ハイブリッド分析物計104およびモバイル電子装置140などの2つの装置間の直接ポイントツーポイント通信用に構成される。
【0038】
図3は、ハイブリッド分析物試験計およびモバイル電子装置を含む分析物試験計を使用して、試験試料中の分析物を測定するためのプロセス300を示している。以下の説明では、機能または動作を実行するプロセス300への言及は、記憶されたプログラム命令を実行して、分析物試験計の他の構成要素とともに機能または動作を実行するためのハイブリッド分析物試験計またはモバイル電子装置の少なくとも一方における1つ以上のプロセッサの動作を指す。プロセス300は、例示目的のために糖尿病患者であるユーザの血液試料中のグルコース分析物のレベルを測定するためのアンペロメトリックプロセスを実装する
図1および
図2の分析物試験計100およびシステム200と併せて説明される。
【0039】
プロセス300は、ハイブリッド計器104の起動から始まる(ブロック304)。一構成では、ユーザは、タッチスクリーン、音声入力、またはモバイル電子装置140内の他の適切な入力装置156を使用することによってアプリケーションソフトウェア168を実行する。モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、短距離無線送受信機152を起動して、起動または「ウェイクアップ」信号をハイブリッド計器104内の対応する短距離無線送受信機128に送信する。ハイブリッド計器104内のプロセッサ112は、起動信号に応答して、非起動または低電力待機動作モードから起動する。ハイブリッド計器104がバッテリを使用せずにコンデンサ132に電気エネルギーを蓄積する実施形態では、モバイル電子装置140からの起動信号は、コンデンサ132を充電して、ハイブリッド分析物試験計104を起動するのに十分な電力を供給する。さらに、ユーザがポート108に試験ストリップを挿入していない場合、モバイル電子装置140は、起動プロセスの一部として試験ストリップを挿入するようにユーザに指示するためのグラフィカルまたは聴覚的出力を生成する。別の構成では、ハイブリッド分析物試験計104は、試験ストリップがポート108に挿入されると起動する。試験ストリップ内の電極は、電気回路を閉じて、バッテリ132または予め充電されたコンデンサ132から電力を受信する計器プロセッサ112の起動を可能にする。この構成では、計器プロセッサ112は、任意に、短距離無線送受信機128を使用して起動信号をモバイル電子装置140に送信する。モバイル電子装置プロセッサ144は、試験ストリップの挿入を超えるユーザからの追加の入力を必要とせずに、起動信号の受信に応答してアプリケーションソフトウェア168を実行する。あるいは、ユーザは、手動でモバイル電子装置140を操作してアプリケーションソフトウェア168を実行する。
【0040】
プロセス300は、ハイブリッド計器104が、流体試料が供給された試験ストリップに電気信号試験シーケンスを適用するときに継続する(ブロック308)。
図3の例示的な実施形態では、電気信号試験シーケンスは、試験ストリップに適用される血液試料中のグルコースレベルの検出を可能にする。一実施形態では、試験シーケンスは、測定信号発生器120がポート108を介して電気化学試験ストリップ上に堆積された試料に印加する複数の交流(AC)信号と、それに続く複数の直流(DC)信号とを含む所定の一連の電気信号である。血液試料中の血糖を検出するために、測定信号発生器120は、AC波形を生成し、続いて、ある供給量の流体試料を受け取った化学試薬を介して対電極に接続された作用電極から形成された少なくとも1つの回路に印加される一連のパルスDC信号を生成する。本明細書ではさらに詳細に説明しないが、ハイブリッド計器104は、任意に、電気試験信号シーケンスを試験ストリップに適用する前に試験ストリップが流体試料を受け取ったことを確実にするために、電極の1つ以上の対の間の電気インピーダンスのレベルを測定することによって、血液試料などの流体試料の試験ストリップへの供給を検出する用量充足プロセスを実行する。
【0041】
所定の一連のACおよびDC電気信号の一構成では、測定信号発生器120は、約1kHzから100kHzの範囲内の単一の周波数、または測定信号発生器120が10kHz[第1のセグメント内]、20kHz、10kHz[第2のセグメント内]、2kHz、および1kHzの周波数を有するAC信号を生成する一連の時間セグメントなど、様々な時間セグメント内の周波数の範囲のいずれかを有する約1.5秒の期間にわたって正弦波形を有するAC信号を生成するが、他の周波数推移も同様に使用されることができる。測定信号発生器120は、約±0.05V(0.1Vピークツーピーク振幅)の電圧振幅を有するAC信号を生成し、この電圧レベルおよびこの例における他の電圧レベルは、この試験ストリップが別個の基準電極を含まないため、試験ストリップ105などの試験ストリップにおける作用電極と対電極との間の電位の相対差を指す。続いて、測定信号発生器120は、約1.5秒の期間にわたって正方形または台形波形を有する一連のパルスDC信号を生成する。一構成では、各DCパルスは、次のパルスを開始する前に200ミリ秒の期間にわたって50%のデューティサイクルに対応するパルス間の対応する100ミリ秒の緩和期間を有する約100ミリ秒の持続時間を有するが、各パルスの持続時間は、例えば50ミリ秒から500ミリ秒の間で変化してもよく、デューティサイクルは50%よりも大きくても小さくてもよい。測定信号発生器120は、AC信号の0.1Vのピークツーピーク振幅よりも大きい約0.45Vの電圧を有する各DCパルスを生成する。この試験シーケンスでは、ACおよびDC信号を含む所定の一連の電気信号は、約3秒の持続時間を有し、より一般的には、試験シーケンスは、典型的には1から10秒の範囲の持続時間を有する。測定信号発生器120は、各緩和期間中に試験ストリップ内の電極間に短絡(0V電位)を生成するようにスイッチを動作させ、各DCパルス中にスイッチを開いて、DCパルスが流体試料を含む試薬を含む回路経路に印加されるのを確実にする。
【0042】
上記の例は、血糖値の測定に有効な所定の一連の電気信号の非限定的な例であり、信号の周波数、振幅、持続時間、および生成順序は、代替構成で調整されてもよい。さらに、代替構成は、異なる一連のACおよびDC信号を使用するか、またはACまたはDC信号のみを使用して血糖または他の分析物を測定することができる。例えば、1つの代替実施形態は、所定の一連の電気信号の開始時にDCプレコンディショニング信号を使用し、その後に上述したシーケンスが続くか、またはパルスDC電気信号シーケンスのみが続く。別の代替構成は、一連のパルスDC信号の後に三角形波形およびより高い電圧振幅(例えば0.45V)を有する一連のAC信号を生成し、これらのAC信号に対する応答は、血糖の正確な測定を妨げる可能性がある試験ストリップの潜在的な障害または流体試料の汚染を検出する1つ以上のフェイルセーフアルゴリズムに入力データを提供する。
【0043】
プロセス300の間、ハイブリッド計器300は、電気試験シーケンスにおいて複数の信号に応答して試験ストリップから受信される複数の信号測定値を記録し(ブロック312)、1つ以上のデジタル論理装置を使用してさらなる処理のために記録された信号測定値に対応するデジタルデータを生成する(ブロック316)。本明細書に記載の実施形態では、分析物試験計100は、アンペロメトリック分析物検出プロセスを実行して、血液試料中のグルコース分析物を検出する。測定信号受信器124は、上述したブロック308の処理中に測定信号発生器120が生成する所定の一連の電気信号に応答して試験ストリップに生成される電流の信号測定値を記録する。信号発生器120は、一般に、試験シーケンスにおいて所定の一連の電気信号を生成するために所定の電圧プロファイルで動作するが、測定信号受信器124は、一般に、試験ストリップ内の電極および投与された試薬によって形成された回路を通って流れる電流のレベルを記録する。これらの電流レベルは、分析物を含む流体試料中の化学物質と試験ストリップ上に形成された試薬との間の酸化還元反応によって影響を受ける。さらに、電流は、試験シーケンスの電気信号の変化および流体試料と試薬との間の化学反応の経時的な進行に基づいて経時的に変化する。当業者は、測定信号受信器124が、測定信号発生器120による信号の生成中および生成後の双方において、所定の一連の電気信号に応答して信号測定値を記録することを認識するであろう。例えば、測定信号受信器124は、AC信号の印加中、パルスDC信号の印加中、および電流が減衰する各DCパルス後の緩和期間中に、AC信号に応答して電流測定値を記録し、いくつかの実施形態では、各緩和期間の少なくとも一部について試験ストリップ内の回路を通る小さな負の電流測定値を生成するために方向を一時的に反転させる。
【0044】
プロセス300の間、測定信号受信器124は、上述した例では少なくとも40kHzである、試験シーケンスにおける信号の最高周波数成分の2倍以上のナイキスト速度で経時的に電流をサンプリングすることによって信号測定値を生成するが、サンプリング速度は、試験信号の最大周波数成分の少なくとも2倍のサンプリング速度を維持するために、より高くてもより低くてもよい。各信号測定値は、所定の測定範囲(例えば、一実施形態では±50μAの範囲)における電流のアナログ測定値を提供し、測定信号受信器124またはハイブリッド計器プロセッサ112内のアナログデジタル変換器は、各アナログ信号測定値を、モバイル電子装置140におけるさらなる処理のためにデジタルデータ表現に変換する。ハイブリッド計器プロセッサ112は、以下にさらに詳細に説明するように、モバイル電子装置140への送信の前に、複数の信号測定値に対応するデジタルデータを計器メモリ116に任意にバッファリングする。
【0045】
各信号測定のデジタル値に加えて、ハイブリッド計器プロセッサ112は、任意に、一連のタイムスタンプ値を生成し、測定された電流応答に対応する測定信号データおよび測定信号発生器120によって生成された電圧に対応する電圧レベル値の双方をタイムスタンプ値に関連付ける。タイムスタンプならびに関連する信号測定値および電圧値データは、モバイル電子装置140内のプロセッサ144が、各信号測定値と、信号測定発生器124がプロセス300中に試験ストリップに印加する対応する電圧信号との間の時間的関係を識別することを可能にする。例えば、これらのデータは、試験シーケンスにおける電気信号と、少なくとも上述したAC信号生成シーケンス中に生じる電流値の結果として生じる測定信号との間の位相差の検出を可能にする。別の構成では、ハイブリッド計器104は、測定信号に対応するデータのみをモバイル電子装置140に送信する。この構成では、モバイル電子装置140は、分析物検出アルゴリズムデータ176の一部として、試験シーケンスにおける所定の一連の電気信号の時間および電圧プロファイルを記憶する。モバイル電子装置内のプロセッサ144は、ハイブリッド計器104が試験シーケンス中に信号測定試料に対応するデータを生成する順序に基づいて、プロファイルデータを対応する信号測定値に関連付ける。
【0046】
プロセス300は、ハイブリッド計器104が、複数の信号測定値に対応するデジタルデータと、任意に、試験シーケンスにおける電気信号のタイムスタンプおよび電圧値とをモバイル電子装置140に送信することによって継続する(ブロック320)。分析物試験計100では、ハイブリッド計器プロセッサ112は、短距離無線送受信機128を動作させて、モバイル電子装置内の対応する短距離無線送受信機152にデータを送信する。一構成では、ハイブリッド分析物試験計104は、信号測定値に対応するデジタルデータを計器メモリ116に一時的に記憶し、プロセス300の間に全ての信号測定値データのデジタル表現の記録が完了すると、記憶されたデジタルデータを送信する。別の構成では、ハイブリッド分析物試験計104は、少なくとも1つのデジタルデータが生成された後であるが、試験シーケンス全体のデジタルデータの記録が完了する前に、全ての信号測定データのデジタル表現の送信を開始する。モバイル電子装置140のプロセッサ144は、流体試料中の分析物のレベルを検出するための追加の処理のために、デジタル測定信号データ186をメモリ168に一時的に記憶する。モバイル電子装置140はまた、ハイブリッド計器104がモバイル電子装置140にこれらのデータを送信する実施形態において、デジタル測定信号データ186とともにタイムスタンプおよび信号電圧データを記憶する。
【0047】
プロセス300は、モバイル電子装置140内のプロセッサ144がアプリケーションソフトウェア168内の分析物検出アルゴリズム176の記憶されたプログラム命令を実行して、モバイル電子装置140がハイブリッド計器104から受信したデジタル測定信号データに基づいて分析物レベルの測定値を生成するのにともない継続する(ブロック324)。分析物レベルの測定は、DCパルスのうちの1つ以上の間に測定された電流に基づく一般的な測定、分析物測定の精度を改善するように補正された血液試料中の温度およびヘマトクリット値などの交絡因子の識別および補正、ならびにプロセッサ144が流体試料の汚染または試験ストリップの故障を検出した場合のフェイルセーフの潜在的なトリガを含む。分析物測定プロセスを実行するアルゴリズムは、当該技術分野で知られており、これらのアルゴリズムは、本明細書では完全に詳細に説明されていないが、一般に、パルスDC信号に応答した信号測定データの測定された電流レベルは、試料中のグルコースレベルと正の相関があり、これにより、分析物検出アルゴリズムが、信号測定値の1つ以上のデジタル値をグルコースレベルにマッピングする所定のプロファイルを使用してグルコースレベルの測定値を生成することを可能にする。血液試料中のグルコースのレベルは、信号測定における電流レベルに影響を及ぼすが、血液試料中の温度およびヘマトクリットのレベルを含む他の要因も信号測定における電流レベルに影響を及ぼし、これらの変数は、「交絡因子」と呼ばれる。計器プロセッサ144は、所定の信号シーケンスにおけるAC電圧信号の生成と対応する電流応答との間の位相差などの信号測定データの特性を識別し、温度およびヘマトクリット変数の偽の影響を低減または排除し、最終的な血糖測定の精度を高める分析物検出アルゴリズム176における補正関数への入力として機能する。
【0048】
プロセス300の間、モバイル電子装置プロセッサ144はまた、分析物検出アルゴリズム176の一部としてフェイルセーフ検出を実行する。分析物検出アルゴリズム176は、グルコースレベル測定の精度を改善するために交絡因子を補正するが、分析物検出アルゴリズム176のフェイルセーフ機能は、グルコースレベルの正確な検出を妨げる特定の外的要因を検出する。フェイルセーフの一例は、血液試料中の上昇した抗酸化レベルの存在の検出であり、アスコルビン酸(ビタミンC)は、血液試料を汚染する可能性がある抗酸化剤の一例であり、不正確なグルコース測定結果をもたらす。別のフェイルセーフは、試験ストリップ内の1つ以上の電極が損傷している場合に発生し、損傷した電極が断続的な電気的導通のみを有する状況では、電流が検出されないか、または電流の流れが遮断される可能性がある。フェイルセーフのトリガの場合(ブロック328)、計器プロセッサ144は、最終グルコース測定値を生成しない。代わりに、計器プロセッサ144は、アプリケーションソフトウェア168内のユーザインターフェース172を動作させて、出力装置156を使用して視覚的または聴覚的出力を生成し、失敗した試験をユーザに警告し、新たな測定を要求する(ブロック332)。一実施形態では、出力は、プロセス300を繰り返す前に、汚染の可能性を低減するために手を洗浄し、試験ストリップを新たな試験ストリップと交換するようにユーザに指示する。
【0049】
分析物測定プロセスがフェイルセーフを引き起こすことなく完了した場合(ブロック328)、プロセス300は、モバイル装置140内のプロセッサ144が出力装置を用いて出力を生成して試料中の分析物のレベルをユーザに提示し、場合により長期分析のために記憶されたユーザデータ184を用いて測定の記録を記憶するのにともない継続する(ブロック336)。一実施形態では、計器プロセッサ144は、アプリケーションソフトウェア168内のユーザインターフェース172を動作させて、ディスプレイ装置158を介して測定されたグルコースレベル(例えば、100mg/dLなどの血液1デシリットル当たりのグルコースのミリグラム単位で)の数値測定値の視覚的または聴覚的出力を生成する。数値出力に加えて、モバイル電子装置140は、任意に、血糖測定値の履歴を有する追加の出力、または測定された血糖値が提案された範囲を上回るもしくは下回る場合に血糖値を管理するためのアドバイスを生成する。
【0050】
システム200では、分析物試験計100は、ユーザについて測定された血糖値を、記憶されたユーザデータ184と関連付けてモバイル電子装置メモリ148に記憶する。メモリ148は、血糖測定値を、測定値が生成された日時と関連付けて記憶する。メモリ148への記憶に加えて、モバイル電子装置140は、任意に、通信ソフトウェア180を実行して、長期記憶および追加分析のために無線ネットワーク送受信機160を使用して、グルコース測定値および関連するユーザデータをヘルスケアサービスシステム288に送信する。関連するユーザデータは、ユーザが血糖測定前に食品を摂取した最新の時間を示す手動入力などのユーザからの他の情報、および血糖測定時のモバイル電子装置140の位置などの自動化されたデータ、および血糖測定を行う前のユーザの活動レベルを示すことができる加速度計データを含むことができる。上述したように、ヘルスケアサービスシステム288は、ユーザの血糖値および他の健康パラメータの長期的傾向の追加の分析を実行し、各血糖測定値は、ヘルスケアサービス288に追加の入力データを提供する。血糖値のヘルスケアサービス288への送信は、ユーザの側での手動入力を必要とせずに行われ、これにより、ユーザおよび認可されたヘルスケア提供者の双方による検討のために、ユーザの血糖値の経時的な効率的な自動追跡を可能にする。プロセス300が完了すると、ユーザは、試験ストリップ105を取り外して処分し、ハイブリッド分析物試験計104は、任意に、試験ストリップ105の取り外しを容易にするための機械的排出機構を含む。ユーザがプロセス300を再び開始するまで、ハイブリッド分析物試験計104は停止し、モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、ハイブリッド分析物試験計104の切断を必要とせずにオペレーティングシステムソフトウェア188内の他のソフトウェアアプリケーションを実行することができる。ハイブリッド分析物試験計104は、ケース126内のモバイル電子装置140に固定されたままであり、ハイブリッド分析物試験計104が停止されているときに汎用用途のモバイル電子装置140の動作を妨げない。
【0051】
上述したように、分析物試験計100は、ハイブリッド計器104と、血液試料中のグルコースの測定など、流体試料中の分析物の測定を可能にするように特別に再構成されたモバイル電子装置140とを組み込んでいる。上述した従来技術の分析物測定装置を超える利点に加えて、分析物試験計100は、ハイブリッド計器104またはモバイル電子装置140の交換を必要とせずに、分析物試験計100の動作に対する動的な変更および改善を可能にする動的なソフトウェアおよびファームウェアの更新をさらに可能にする。
【0052】
図4は、分析物計100の動作が、モバイル電子装置140内のアプリケーションソフトウェア168およびハイブリッド計器104内のファームウェア118の一方または双方を更新するためのプロセス400を示している。以下の説明では、機能または動作を実行するプロセス400への言及は、記憶されたプログラム命令を実行して、分析物試験計の他の構成要素とともに機能または動作を実行するためのハイブリッド分析物試験計またはモバイル電子装置の少なくとも一方における1つ以上のプロセッサの動作を指す。プロセス400は、例示を目的として、
図1および
図2の分析物試験計100およびシステム200と併せて説明される。
【0053】
プロセス400は、モバイル電子装置140がオンラインソフトウェアおよび更新サービス284から更新されたソフトウェアパッケージを受信すると開始する(ブロック404)。システム200では、モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、無線ネットワーク送受信機160を使用してオンラインソフトウェアからソフトウェアパッケージを取得し、ネットワーク280を介してサービス284を更新する、オペレーティングシステムソフトウェア188内のソフトウェア更新プログラムを実行する。モバイル電子装置140は、任意に、モバイル電子装置用のソフトウェア更新を提供する「アプリストア」とも呼ばれるソフトウェア更新サービスを使用する。一構成では、ソフトウェアパッケージは、分析ソフトウェア168の実行可能ソフトウェア命令コードの更新された置き換え、分析物検出プロセス中にアプリケーションソフトウェアが使用するパラメータデータを含む構成ファイルデータ、ユーザインターフェースを生成するために使用される様々なグラフィカルアセット、およびハイブリッド計器104へのその後の転送のためにモバイル電子装置140が受信する追加のファームウェアコードを含む。モバイル電子装置140内のプロセッサ144は、ソフトウェアパッケージからファイルおよび他のデータ構造を抽出し、プロセス400の一部としてそれらをメモリ148に記憶するが、以下により詳細に説明するファームウェア更新動作中に更新プロセスが失敗した場合には、アプリケーションソフトウェア168の以前にインストールされたバージョンのコピーがメモリに残る。
【0054】
モバイル電子装置140およびハイブリッド計器104がアプリケーションソフトウェア168およびファームウェア118の以前のバージョンで既に構成されている別の構成では、ソフトウェアパッケージは、既存のソフトウェア168およびファームウェア118に対する変更を含むファイルのセットのみを含み、ソフトウェアの他の部分は変更されないままである。例えば、あるタイプの更新は、グルコース検出アルゴリズムまたはフェイルセーフ検出プロセスで使用されるパラメータの変更を含むが、アプリケーションソフトウェア168またはファームウェア118のいずれかの実行可能命令には影響せず、ソフトウェアパッケージは、ソフトウェアおよびファームウェア全体の完全な置換を必要とせずに、パラメータデータに対する関連する変更のみを含む。
【0055】
プロセス400は、モバイル電子装置140が更新されたファームウェアデータをハイブリッド分析物試験計104に送信することで継続する(ブロック408)。ソフトウェアパッケージは、ファームウェア118のコピーを含み、プロセッサ144は、短距離無線送受信機152を動作させて、ファームウェア118をハイブリッド計器104に送信し、ハイブリッド計器104内のプロセッサ112は、計器メモリ116にファームウェアデータを記憶する。計器メモリ116は、ファームウェアデータ118の少なくとも2つのコピーを記憶するのに十分な容量を含み、これにより、ハイブリッド計器104は、更新されたファームウェアを使用する前に、更新されたファームウェアが完全に検証されるまで、既存のファームウェア118の使用を保持することを可能にする。上述したように、いくつかの構成では、ソフトウェア更新は、ハイブリッド分析物試験計104のファームウェアへの更新を含まない場合があるため、ファームウェア更新プロセスは、全てのソフトウェア更新中に行われるわけではないが、分析物試験計100は、ソフトウェア更新の一部として更新が含まれるときにファームウェア更新を実行するように構成される。
【0056】
プロセス400は、ハイブリッド計器104がモバイル電子装置140から受信されたファームウェアデータを認証するのにともない継続する(ブロック412)。認証プロセスにおいて、計器プロセッサ112は、製造時に計器メモリ116に記憶され、ファームウェアデータ118とは別個の認証鍵119を使用して、モバイル電子装置140がソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284から更新されたファームウェアデータの一部として、または更新されたファームウェアデータと併せて受信する暗号化署名に基づいて、モバイル電子装置140から受信されたファームウェアデータの信頼性を検証し、ハイブリッド分析物試験計104はまた、暗号化署名を計器メモリ116に記憶する。
【0057】
一実施形態では、認証鍵119は、ファームウェアのバージョンを配布するための規制上の承認を受けたハイブリッド分析物試験計104の装置製造業者などの、認可された当事者のみに知られている秘密鍵に関連付けられた公開鍵である。認証されたコンピューティングシステムは、例えばSHA-3または他の適切な暗号学的に安全なハッシュアルゴリズムを使用して更新されたファームウェアデータの暗号ハッシュ値を生成する署名動作を実行し、次いで秘密鍵を使用して暗号化署名を生成し、公開認証鍵119を使用した後の復号のために非対称暗号アルゴリズムを使用してハッシュ値を暗号化する。秘密鍵は、分析物試験装置100またはシステム200内の他のコンピューティングシステムには開示されないが、ハイブリッド計器104のメモリ116内の認証鍵119は、秘密である必要はなく、公知にすることができる。当業者であれば、当然のことながら、暗号化署名および認証プロセスの文脈で説明された暗号化は、公開されている認証鍵119がこの値を解読することができるため、署名内のSHA-3値を秘密にしないことを認識するであろう。代わりに、計器プロセッサ112は、認証鍵119を使用して、対応する秘密署名鍵を使用してのみ生成されることができ、実際的な方法で偽造することができない暗号ハッシュ値を復号する。計器プロセッサ112はまた、復号された暗号ハッシュ値(例えば、SHA-3)を生成するために使用されたのと同じ暗号的に安全なハッシュアルゴリズムを使用して、更新されたファームウェアデータの別の暗号ハッシュ値を生成する。計器プロセッサ112は、算出された更新後のファームウェアデータの暗号ハッシュ値と、署名から復号された暗号ハッシュ値とを比較する。プロセッサ112が、これらの2つの値が一致することを確認した場合、計器プロセッサ112は、秘密鍵を有する当事者のみが、ファームウェアデータの暗号ハッシュ値と一致する署名を実際に生成することができるため、デジタル署名およびファームウェアデータの認証に成功する。しかしながら、プロセッサ112が、暗号ハッシュ値が、暗号化署名から復号された暗号ハッシュ値と一致しないことを検証した場合、ハイブリッド計器104が、受信されたファームウェアデータおよび暗号化署名の一方または双方が真正ではないことを確認したため、認証プロセスは失敗する。
【0058】
プロセス400の間、ソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284が装置製造業者の直接制御下になく、これがシステム200の最も実用的な実施形態に当てはまると予想される場合であっても、ソフトウェアおよびファームウェア更新サービス284のオペレータまたは悪意のある第三者は、ハイブリッド分析物試験計104による検出を回避するようにファームウェア118を効果的に変更することができず、これにより、不正な者が未承認のファームウェアをハイブリッド計器104にロードすることを防止する。いくつかの実施形態では、各ファームウェアイメージは、署名されたファームウェアデータの一部であり、検出せずに変更されることができないバージョン番号を含み、計器プロセッサ112はまた、更新されたファームウェアのバージョンが現在インストールされているファームウェアよりも新しい(例えば、より大きいバージョン番号)ことを確認する。これは、不正な第三者が、古くなったファームウェアが有効な署名を有していても、そうでなければ有効であるが古くなったファームウェアを正常にロードすることを防止する。さらにまた、認証プロセスはまた、モバイル電子装置140から受信したファームウェアがデータ送信または他のハードウェアエラーのために破損していないことを保証する。
【0059】
再び
図4を参照すると、ファームウェアの認証が成功した場合(ブロック416)、ハイブリッド計器104およびモバイル電子装置140は、ソフトウェア更新プロセスを完了する(ブロック420)。一実施形態では、計器プロセッサ112は、プロセス300の間に将来の起動を待つためにハイブリッド計器104を非起動にするか、または直ちに再起動し、ハイブリッド計器メモリ116に記憶されている新たに更新されたファームウェアデータを新たな計器ファームウェア118として使用する。計器プロセッサ112は、必要に応じて、更新が成功した後に古いファームウェアデータをメモリ116から削除する。計器プロセッサ112はまた、短距離無線送受信機を使用して、ファームウェア更新プロセスの完了前または完了後に認証が成功したことを示すメッセージをモバイル電子装置140に送信する。モバイル電子装置140において、プロセッサ144は、ファームウェアが正常に更新されたことを示すメッセージをハイブリッド計器104から受信したことに応答して、アプリケーションソフトウェアデータの新たなバージョンへの更新を完了する。モバイル電子装置プロセッサ144は、通常、更新されたバージョンを使用するためにアプリケーションソフトウェアプログラム168を再起動し、任意に、モバイル電子装置メモリ148から古いバージョンのアプリケーションデータ168を削除する。本明細書ではさらに詳細に説明しないが、モバイル電子装置140は、任意に、上述したファームウェア認証と同様の方法で追加の暗号化署名を使用してアプリケーションソフトウェア168内のコンポーネントの有効性を認証するが、モバイル電子装置140は、任意に、トランザクション層セキュリティ(TLS)プロトコルなどのシステムにおいて当該技術分野で知られている方法で、認証局からの信頼された公開鍵に基づいて認証されるチェーン証明書を含むより複雑なプロセスを使用する。アプリケーションソフトウェア168およびファームウェア118への更新が完了すると、分析物試験計100は、新たに更新されたソフトウェアを使用してプロセス300および他の機能を実行することができる。
【0060】
再び
図4を参照すると、プロセス400の間、ファームウェアの認証が成功しなかった場合(ブロック416)、ソフトウェアおよびファームウェア更新プロセスはキャンセルされる(ブロック424)。ハイブリッド計器104において、計器プロセッサ112は、短距離無線送受信機128を使用して、認証プロセスの失敗を示すメッセージをモバイル電子装置140に送信する。計器プロセッサ112は、ファームウェア118の以前のバージョンを使用し続け、任意に、認証プロセスに失敗したファームウェアデータおよび暗号化署名を計器メモリ116から削除する。モバイル電子装置プロセッサ144はまた、アプリケーションソフトウェア168の以前のバージョンを使用し続け、アプリケーションソフトウェアデータの更新されたバージョンを実行しない。モバイル電子装置プロセッサ144は、任意に、認証プロセスの失敗に応答して、更新されたアプリケーションソフトウェアデータをメモリ148から削除する。モバイル電子装置プロセッサ144は、任意に、ユーザインターフェース172およびI/O装置156を介して、認証失敗によるソフトウェア更新の失敗の理由をユーザに知らせるためにエラー出力メッセージを生成する(ブロック428)。
【0061】
上述したように、プロセス400は、モバイル電子装置140内のアプリケーションソフトウェア168およびハイブリッド分析物試験計104内のファームウェア118の双方に対する動的更新を可能にする。本明細書に記載の実施形態によって提供される従来技術を超えて提供される技術的利点の非限定的なリストは、分析物検出およびフェイルセーフ状態の検出に使用されるパラメータを変更する機能と、試験シーケンス中にハイブリッド計器104が試験ストリップに印加する所定の一連の電気信号を変更する機能と、分析物レベルを検出し、必要に応じてフェイルセーフをトリガするためにモバイル電子装置140が使用する分析物検出およびフェイルセーフアルゴリズムを変更する機能とを含む。
【0062】
本開示は、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関連して説明される。しかしながら、これらの実施形態は、例示として提示されており、開示された実施形態に限定されることを意図していない。したがって、当業者は、本開示が、本開示の精神および範囲内で、且つ以下の特許請求の範囲に記載される全ての変更および代替構成を包含することを理解するであろう。