(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】プラズマ耐性酸化イットリウムアルミニウム体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/505 20060101AFI20240910BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C04B35/505
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2022527659
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 US2020060918
(87)【国際公開番号】W WO2021141676
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーク ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】サウラフ ビスタ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジョセフ ドネロン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ロジャー ケネディー
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-126430(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187287(WO,A1)
【文献】特開平08-298099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/505
C04B 35/44
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XRD及び画像処理法を使用して測定して90~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、
ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度と
を含む焼結セラミック体であり、
SEM及び画像処理法を使用して測定した
最大径が0.1~5umである細孔を含
み、
前記焼結セラミック体の最大寸法が、350~622mmであることを特徴とする焼結セラミック体。
【請求項2】
前記体積多孔度が0.1~3%である、請求項1に記載の焼結セラミック体。
【請求項3】
前記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが90~99.8体積%の量で存在する、請求項1または2に記載の焼結セラミック体。
【請求項4】
本明細書に開示のICPMS法を使用して測定して、前記焼結セラミック体の総質量に対して約14ppmの量のシリカを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の焼結セラミック体。
【請求項5】
0.1~2体積%の量で存在する、酸化イットリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の焼結セラミック体。
【請求項6】
0.1~1体積%の量で存在する、酸化イットリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の焼結セラミック体。
【請求項7】
XRD及び画像処理法を使用して測定して90~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、
ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度と
を含む焼結セラミック体であり、
SEM及び画像処理法を使用して測定した最大径が0.1~5umである細孔を含み、
0.1~1体積%の量で存在する、YAP及びYAM、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相をさらに含む
、焼結セラミック体。
【請求項8】
ASTM Cl161-13に準拠して測定し、20点の測定値から算出される平均4点曲げ強さが387MPaである、請求項1~7のいずれか1項に記載の焼結セラミック体。
【請求項9】
XRD及び画像処理法を使用して測定して90~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度と、を含む焼結セラミック体であり、SEM及び画像処理法を使用して測定した最大径が0.1~5umである細孔を含む焼結セラミック体の製造方法であって、
a.酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む粉末を混合して粉末混合物を作製するステップと、
b.焼成温度に到達するように熱を印加し、且つ前記焼成温度を維持することによって前記粉末混合物を焼成して焼成を行い、焼成粉末混合物を形成するステップと、
c.前記焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画成される容積内に配置し、且つ前記容積内に真空条件をつくり出すステップと、
d.焼結温度に加熱しながら、前記焼成粉末混合物に圧力を印加し、且つ焼結を行って前記焼結セラミック体を形成するステップと、
e.前記焼結セラミック体の温度を下げるステップと
を含
み、
前記圧力が10~60MPaである、前記方法。
【請求項10】
f.任意選択で、前記焼結セラミック体の温度を上昇させて焼鈍温度に到達するように熱を印加することによって前記焼結セラミック体を焼鈍して、焼鈍焼結セラミック体を形成するステップと、
g.前記焼鈍焼結セラミック体の温度を下げるステップと、
h.前記焼結セラミック体を機械加工して、エッチングチャンバー内の、誘電体窓またはRFウィンドウ、フォーカスリング、ノズルまたはガスインジェクター、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナー、プラズマ源アダプター、ガスインレットアダプター、ディフューザー、静電ウェハチャック、チャック、パック、ミキシングマニフォールド、イオンサプレッサーエレメント、フェイスプレート、アイソレーター、スペーサー、保護リング、及びデポジションリン
グを作製するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力が
軸方向に印加される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力が15~20MPaである、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
BET表面積分析法を使用して測定した前記焼成粉末混合物の比表面積が2~10m
2/gである、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の方法によって製造された焼結セラミック体。
【請求項15】
最大寸法が
400~
622mmである、請求項14に記載の焼結セラミック体。
【請求項16】
最大寸法が450~622mmである、請求項14に記載の焼結セラミック体。
【請求項17】
最大寸法が550~622mmである、請求項14に記載の焼結セラミック体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶相純度が高い(>98体積%)の多結晶YAG(Y3Al5O12、ガーネット相)を含む、高純度、高密度であり、且つ体積多孔度が低い焼結セラミック体に関する。
【0002】
本開示はまた、Y3Al5O12(YAG、ガーネット相)、YAlO3(YAP、ペロブスカイト相)、及びY4Al2O9(YAM、単結晶相)を含む1種以上の形態のイットリウムアルミニウム酸化物、ならびに、任意選択で2体積%以下の量の酸化アルミニウム(Al2O3)及び/または酸化イットリウム(Y2O3)からなる、高純度、高密度であり、且つ体積多孔度が低い焼結セラミック体にも関する。
【0003】
本開示はまた、相純度が高い(>98体積%)のY3Al5O12(YAG、ガーネット相)を含み、2体積%以下の量の酸化アルミニウム(Al2O3)相及び/または酸化イットリウム(Y2O3)相をさらに含む、高純度、高密度であり、且つ体積多孔度が低い焼結セラミック体にも関する。
【0004】
高密度、低体積多孔度、及び高純度の上記特性は、プラズマエッチングチャンバーの部品として使用される場合、並外れた耐エッチング性につながる。さらに、本開示は、焼結セラミック体の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
半導体の加工は、プラズマエッチング環境を創り出すために、ハロゲン系ガスならびに酸素及び他のガスを高電界及び磁場と組み合わせて使用することを必要とする。このプラズマエッチング環境は、半導体基板上の材料をエッチングするための真空チャンバー内に生じさせる。過酷なプラズマエッチング環境では、チャンバーの部品に耐食性の高い材料を使用する必要がある。これらのチャンバーは、加工中のウェハ上にプラズマを閉じ込めるディスクまたはウィンドウ、ライナー、ガスインジェクター、リング、及びシリンダーなどの構成部品を備える。これらの部品は、プラズマ環境における腐食及び侵食に対する耐性を付与する材料から形成されており、例えば、US5,798,016、US5,911,852、US6,123,791、及びUS6,352,611に記載される。しかしながら、プラズマ加工チャンバーに使用されるこれらの部品はプラズマによって継続的に攻撃され、その結果、プラズマに曝露されるチャンバー部品の表面上で腐食、侵食、及び粗面化が生じる。この腐食及び侵食は、上記部品の表面からチャンバー中への粒子の放出を通じてウェハレベルの汚染の一因となり、その結果、半導体デバイスの歩留まりが低下する。
【0006】
希土類酸化物、それらの中でも特にYAG(Y3Al5O12、ガーネット相)ならびにYAG、YAP、及びYAMなどのイットリウムアルミニウム酸化物のファミリーには、広範囲の技術的及び工業的用途があることが知られている。立方晶のガーネット結晶相を有するYAGは、固体レーザーのホスト材料、透明装甲、防弾窓材料などの用途、ならびその優れた機械的、熱的、及び光学的特徴によって大きな注目を集めている。特にレーザー用途に関し、単結晶YAGが必要とされるため、単結晶YAGの製造に多大な労力が費やされてきた。YAGは、非常に化学的に不活性であり、ハロゲン系のプラズマによる腐食及び浸食に対する高い耐性を示すことも知られている。
【0007】
しかしながら、希土類酸化物の使用、特に立方晶ガーネット(YAG)結晶構造を有する酸化イットリウムアルミニウムの使用にはいくつかの欠点がある。
【0008】
酸化イットリウムアルミニウムは、従来の方法で必要とされる高密度に焼結することが困難であり、その結果、最終的な部品にかなりの体積多孔性が残ることが知られている。残留多孔性、延いては密度の低下により、プラズマエッチングプロセス中に腐食が加速し、部品のエッチング性能が低下すると同時に、機械的強度も低下する。酸化イットリウムアルミニウムのファミリーを焼結するには、通常、例えば8時間以上といった長時間、約1600℃以上の高温にすることが必要である。高温及び長い焼結時間は過大な結晶粒の成長につながり、固体酸化イットリウムアルミニウム体の機械的強度に悪影響を及ぼす。酸化イットリウムアルミニウム化合物、特にエッチングチャンバーの部品として使用する焼結体を形成するためのYAG組成物の化合物の緻密化を促進するために、焼結温度を下げるための焼結助剤が頻繁に使用される。しかしながら、焼結助剤を添加すると、酸化イットリウムアルミニウム材料の耐腐食性及び耐侵食性が実質的に低下し、且つチャンバー中での使用中に半導体デバイスレベルでの不純物汚染の可能性が高まる。したがって、酸化イットリウムアルミニウムの高純度高密度体、特に立方晶ガーネット結晶相(YAG、Y3Al5O12)を有する高純度高密度体が望ましい。
【0009】
酸化イットリウムアルミニウムのフィルムまたはコーティングを、酸化イットリウムアルミニウムよりも価格が低く、且つ強度が高い異なる材料で形成された基部または基材の上に蒸着することが知られている。かかる酸化イットリウムアルミニウムフィルムはいくつかの方法によって製造されている。しかしながら、これらの方法は、製造することができるフィルムの厚さに制限があり、フィルムと基材との間の接着が不十分であり、且つ体積多孔度が高いレベルであり、その結果、加工チャンバー中への脱粒が起こる。
【0010】
半導体デバイスのジオメトリーがナノメートルスケールに縮小するにつれて、プロセスの歩留まりの低下を最小限に抑えるために温度制御がますます重要になる。この加工チャンバー内の温度の変動は、ナノメートルスケールの形体の重要な寸法の制御に影響を与え、デバイスの歩留まりに悪影響を及ぼす。チャンバーの部品向けに、例えば1×10-4未満といった誘電損失が低い材料を選択することが、熱が発生し、その結果チャンバー内の温度が不均一になること防止するために望ましい場合がある。誘電損失は、とりわけ、当該材料における結晶粒径、純度、ならびにドーパント及び/または焼結助剤の使用による影響を受ける可能性がある。焼結助剤を使用すること及び焼結条件を拡大することによって、結晶粒径がより大きくなり、材料の純度がより低くなる場合があり、これらによって、業界で一般的な高周波チャンバープロセスへの適用に必要な低損失正接、大きな部品サイズの製造に必要な粒子発生の最小化及び高い機械的強度が得られない可能性がある。
【0011】
特に、酸化イットリウムアルミニウムオキシド相のファミリーのYAG相の形成が、YAG相の立方晶結晶構造及び、その結果としての等方性材料特性に起因して好ましい。そのため、その材料特性は結晶面または結晶方向に基づいて変化することがなく、したがって、立方晶のガーネット形態のYAGは、その材料特性が一貫していること、及びその結果として、多くの用途、特に半導体加工チャンバー中の耐食性部品としての使用に適用される用途における性能が予測可能であるために、好ましい。但し、相純度が非常に高い(>90体積%)多結晶YAG酸化イットリウムアルミニウムセラミック体の製造は困難であり、多くの場合に他の結晶相が存在する可能性がある。
【0012】
確立されたイットリア/アルミナの状態図に従うYAGは、化学量論的組成と一致した線化合物(line compound)として存在することができ、したがって、YAGは、非常に狭い組成範囲で相純度が高い焼結体で形成される。化学量論的YAGを形成するために必要な組成からの粉末バッチング(batching)及び加工中に組成が変化することによって、焼結体中に他の結晶相が存在するようになり、これによって相純度が非常に高いYAGの形成が困難になる場合がある。
【0013】
フィルムまたはコーティングまたは焼結体として形成されたYAGは、低密度及び多くの場合に混合相組成であることに起因して、硬度値が低い場合がある。これらの低い硬度値は、半導体の加工中にプロセスガスとして使用されるアルゴンなどの不活性プラズマガスの使用に由来する、部品表面のイオン衝撃による侵食またはスポーリングを起こしやすい材料につながる。
【0014】
YAGなどの希土類酸化物から作製された、大寸法の耐食性部品向けのモノリシックな相純度が高いセラミック体を製造する試みは、限定的にしか成功してこなかった。破損または亀裂なしにチャンバーの部品として取扱い、且つ使用することができる、直径が約100mm以上の、固体の、相純度が高く化学的純度が高い部品は、実験室規模を超えて製造することは困難である。これは、より大寸法のYAG体は通常低密度(例えば、YAGの理論密度の95%以下)であることに起因する。YAGを含む、大きな、相純度が高い酸化イットリウムアルミニウム部品を調製するこれまでの試みは、高多孔度及びそれに対応する低密度、混合結晶相、破損、及び耐食性用途にそれらを使用するには低い品質という結果に終わっていた。現在、半導体のエッチング及び蒸着用途に使用するための、直径が約100mm~622mm以上の、高純度の、結晶相純度が高いYAG焼結体または部品を製造する、経済的に実現可能な方法はない。
【0015】
結果として、相純度が高いYAGを含み、均一且つ高い密度、低多孔度、及び高純度を有し、プラズマエッチング及び蒸着条件下での腐食及び侵食に対するプラズマ耐性が向上した焼結セラミック体、ならびに工業的に好適な、特に大寸法の部品の製造に適した製造方法に対するニーズがある。
【0016】
発明の概要
本明細書に開示されるさまざまな実施形態、態様、及び構成が、これらのニーズ及びその他のニーズに対処する。
【0017】
実施形態1. XRD及び画像処理法を使用して測定して90~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、
ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度と
を含む焼結セラミック体。
【0018】
実施形態2. 上記体積多孔度が0.1~3%である、実施形態1に記載の焼結セラミック体。
【0019】
実施形態3. 上記体積多孔度が0.1~2%である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0020】
実施形態4. 上記体積多孔度が0.1~1%である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0021】
実施形態5. 上記体積多孔度が0.1~0.75%である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0022】
実施形態6. 上記体積多孔度が0.1~0.5%である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0023】
実施形態7. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~5umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0024】
実施形態8. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~4umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0025】
実施形態9. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~3umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0026】
実施形態10. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~2umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0027】
実施形態11. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~1umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0028】
実施形態12. SEM及び画像処理法を使用して測定したサイズが0.1~0.7umである細孔を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0029】
実施形態13. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが90~99.8体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0030】
実施形態14. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが90~99.6体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0031】
実施形態15. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが90~99.4体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0032】
実施形態16. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが93~99.9体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0033】
実施形態17. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが93~99.8体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0034】
実施形態18. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが93~99.6体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0035】
実施形態19. 上記多結晶イットリウムアルミニウムガーネットが93~99.4体積%の量で存在する、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0036】
実施形態20. ICPMS法を使用して測定した純度が99.995%以上である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0037】
実施形態21. 純度が99.999%以上である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0038】
実施形態22. ICPMS法を使用して測定した不純物含有量が、全焼結体の質量に対して50ppm以下である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0039】
実施形態23. ICPMS法を使用して測定した総不純物含有量が、全焼結体の質量に対して25ppm以下である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0040】
実施形態24. ICPMS法を使用して測定した総不純物含有量が、全焼結体の質量に対して10ppm以下である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0041】
実施形態25. ICPMS法を使用して測定した総不純物含有量が、全焼結体の質量に対して5ppm以下である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0042】
実施形態26. 焼結助剤を含まない、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0043】
実施形態27. ドーパントを含まない、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0044】
実施形態28. 本明細書に開示のICPMS法を使用して測定して、上記焼結セラミック体の総質量に対して約14ppmの量のシリカを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0045】
実施形態29. 0.1~2体積%の量で存在する、酸化イットリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0046】
実施形態30. 0.1~1体積%の量で存在する、酸化イットリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0047】
実施形態31. 0.1~2体積%の量で存在する、YAP及びYAM、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0048】
実施形態32. 0.1~1体積%の量で存在する、YAP及びYAM、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0049】
実施形態33. ASTM規格C1327に準拠し、0.2kgfの印加荷重を使用して測定し、8点の測定値から算出される平均硬度が13.0~15.0GPaである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0050】
実施形態34. ASTM規格C1327に準拠し、0.2kgfの印加荷重を使用して測定し、8点の測定値から算出される平均硬度が13.5~14.5GPaである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0051】
実施形態35. ASTM El12-2010に準拠して測定した結晶粒径が0.4~8μmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0052】
実施形態36. ASTM El12-2010に準拠して測定したd90結晶粒径が1.5~3.5μmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0053】
実施形態37. ASTM El12-2010に準拠して測定した平均結晶粒径が1~3μmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0054】
実施形態38. ASTM El12-2010に準拠して測定した平均結晶粒径が1~2.5μmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0055】
実施形態39. ASTM C1161-13に準拠して測定した4点曲げ強さが335~440MPaである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0056】
実施形態40. ASTM Cl161-13に準拠して測定し、20点の測定値から算出される平均4点曲げ強さが387MPaである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0057】
実施形態41. ASTM D150に準拠して測定した、1MHzの周波数、周囲温度における誘電損失が1×10-4未満である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0058】
実施形態42. ASTM D150に準拠して測定した、1GHzの周波数、周囲温度における誘電損失が1×10-4未満である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0059】
実施形態43. ASTM D257に準拠して測定した、周囲温度における体積抵抗率が4E+12~10E+13オーム・cmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0060】
実施形態44. ASTM D257に準拠して測定した、300℃における体積抵抗率が6E+11~10E+12オーム・cmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0061】
実施形態45. ASTM D257に準拠して測定した、500℃における体積抵抗率が約8E+09オーム・cmである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0062】
実施形態46. ASTM D149-09に準拠して測定した、周囲温度における絶縁耐力が11~14.5MV/mである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0063】
実施形態47. ASTM D149-09に準拠して測定した、周囲温度における絶縁耐力が11.5~14.2MV/mである、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0064】
実施形態48. ISO規格25178-2-2012、4.3.2節に準拠して測定した表面の算術平均高さ(Sa)が約12nm以下である、先行実施形態のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0065】
実施形態49. 10ミリトールの圧力、600ボルトのバイアス、2000ワットのICP電力を有するエッチング方法であって、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF4流速、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流速、20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流速を有する第1のエッチングステップ、ならびに100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流速及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流速を有する第2のエッチングステップをさらに含み、ステップ1及び2がそれぞれ300秒間実施され、且つステップ1及び2が6時間の通算の期間繰り返される上記エッチング方法に曝露された場合に、表面の算術平均高さ(Sa)が約20nm以下である、実施形態48に記載の焼結セラミック体。
【0066】
実施形態50. 焼結セラミック体の製造方法であって、
a.酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む粉末を混合して粉末混合物を作製するステップと、
b.焼成温度に到達するように熱を印加し、且つ上記焼成温度を維持することによって上記粉末混合物を焼成して焼成を行い、焼成粉末混合物を形成するステップと、
c.上記焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画成される容積内に配置し、且つ上記容積内に真空条件をつくり出すステップと、
d.焼結温度に加熱しながら、上記焼成粉末混合物に圧力を印加し、且つ焼結を行って上記焼結セラミック体を形成するステップと、
e.上記焼結セラミック体の温度を下げるステップと
を含む、上記方法。
【0067】
実施形態51. f.任意選択で、上記焼結セラミック体の温度を上昇させて焼鈍温度に到達するように熱を印加することによって上記焼結セラミック体を焼鈍して、焼鈍焼結セラミック体を形成するステップと、
g.上記焼鈍焼結セラミック体の温度を下げるステップと
をさらに含む、実施形態50に記載の方法。
【0068】
実施形態52. h.上記焼結セラミック体を機械加工して、エッチングチャンバー内の、誘電体窓またはRFウィンドウ、フォーカスリング、ノズルまたはガスインジェクター、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナー、プラズマ源アダプター、ガスインレットアダプター、ディフューザー、静電ウェハチャック、チャック、パック、ミキシングマニフォールド、イオンサプレッサーエレメント、フェイスプレート、アイソレーター、スペーサー、保護リング、及びデポジションリングなどの焼結セラミック部品を作製するステップをさらに含む、実施形態50または51に記載の方法。
【0069】
実施形態53. 上記圧力が10~60MPaである、実施形態50~52のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態54. 上記圧力が10~40MPaである、実施形態50~53のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態55. 上記圧力が10~20MPaである、実施形態50~54のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態56. 上記圧力が15~20MPaである、実施形態50~55のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態57. 上記焼結温度が1400~1650℃である、実施形態50~56のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態58. 上記焼成粉末混合物が、X線回折を使用して測定して、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む、実施形態50~57のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態59. 上記焼成粉末混合物が、X線回折を使用して測定して、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、単斜晶系イットリウムアルミニウム(YAM)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含む、実施形態50~58のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態60. 上記焼成粉末混合物のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相の含有量が、X線回折を使用して測定して、約10%以下である、実施形態50~59のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態61. 上記粉末混合物が結晶性である、実施形態50~60のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態62. 上記焼成粉末混合物のICPMS法を使用して測定した純度が99.995~99.9999%である、実施形態50~61のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態63. 上記焼成粉末混合物のICPMS法を使用して測定した純度が99.999~99.9999%である、実施形態50~62のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態64. 上記焼成粉末混合物の不純物含有量が、ICPMS法を使用して測定したすべての構成成分の含有量から算出した酸化物の総質量に対して2~100ppmである、実施形態50~63のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態65. 上記焼成粉末混合物の不純物含有量が、ICPMS法を使用して測定したすべての構成成分の含有量から算出した酸化物の総質量に対して2~75ppmである、実施形態50~64のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態66. 上記焼成粉末混合物の不純物含有量が、ICPMS法を使用して測定したすべての構成成分の含有量から算出した酸化物の総質量に対して2~50ppmである、実施形態50~65のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態67. BET表面積分析法を使用して測定した上記焼成粉末混合物の比表面積が2~12m2/gである、実施形態50~66のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態68. BET表面積分析法を使用して測定した上記焼成粉末混合物の比表面積が2~10m2/gである、実施形態50~67のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態69. 実施形態50~68のいずれか1つに記載の方法によって製造された焼結セラミック体。
【0086】
実施形態70. 最大寸法が100mm~622mmである、実施形態69に記載の焼結セラミック体。
【0087】
実施形態71. 最大寸法が200~622mmである、実施形態70に記載の焼結セラミック体。
【0088】
実施形態72. 最大寸法が400~622mmである、実施形態71に記載の焼結セラミック体。
【0089】
実施形態73. 最大寸法が100~575mmである、実施形態72に記載の焼結セラミック体。
【0090】
実施形態74. 最大寸法が200~575mmである、実施形態73に記載の焼結セラミック体。
【0091】
実施形態75. 最大寸法にわたって測定した密度の変動が0.2%~5%未満である、実施形態69~74のいずれか1つに記載の焼結セラミック体。
【0092】
実施形態76. 最大寸法にわたって測定した密度の変動が0.2~3%である、実施形態75に記載の焼結セラミック体。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】セラミック材料を焼結するために使用される、真空チャンバー(図示せず)内に位置する、簡単な配置のツールセットを有するSPS焼結装置の断面図である。
【
図2A】1つの箔層を示す、
図1の1つの実施形態を示す図である。
【
図3】A及びBは、
図1のSPS焼結装置の平面図である。
【
図4】グラファイト材料A及びBの、1200℃における平均熱膨張係数(CTE)の半径方向の変動を示すグラフである。
【
図5】それぞれ200~1400℃の運転温度にわたって測定した、a)ppmで表したグラファイト材料A及びBの熱膨張係数の標準偏差、及びb)グラファイト材料A及びBの熱膨張係数の変動を示す図である。
【
図6】400~1400℃における、グラファイト材料A及びBの熱膨張係数を示すグラフである。
【
図7】2成分酸化イットリウム/酸化アルミニウムの状態図であり、YAG(Y
3Al
5O
12)、YAP(YAlO
3)、及びYAM(Y
4Al
2O
9)の酸化イトリウムアルミニウム相、ならびにそれらを形成するために必要なモル比及び温度を示している。
【
図8】第1の比較材料の1000倍でのSEM微細構造の画像である。
【
図9】
図2の第1の比較材料を形成するために使用したYAG粉末のX線回折結果を示す図である。
【
図10】第2の比較材料の1000倍でのSEM微細構造の画像である。
【
図11】YAG、YAP、及びアルミナを含む焼結セラミック体の1000倍の顕微鏡写真である。
【
図12】
図5の焼結セラミック体のX線回折結果を示す図である。
【
図13】酸化イットリウムと酸化アルミニウムの粉末混合物の焼結前のX線回折結果(粉砕した状態のXRDパターン)、及び上記粉末混合物から、無加圧焼結法を使用し、1400℃及び1600℃で8時間焼結して調製した焼結試料のX線回折結果を示す図である。
【
図14】本明細書に開示の実施形態に係る、焼結前の調製した状態のイットリア/アルミナ結晶性粉末混合物、ならびに圧力及び通電支援焼結を使用した、少なくとも95%のYAGの単結晶相を含む対応する焼結セラミック体のX線回折結果を示す図である。
【
図15】本明細書に開示の代表的な出発結晶性粉末のa)イットリア及びb)アルミナの、例示的なX線回折パターンを示す図である。
【
図16】本明細書に開示の例示的なイットリア/アルミナ粉末混合物のSEM画像である。
【
図17】本明細書に開示の焼成粉末混合物のX線回折結果を示す図である。
【
図18】本明細書に開示の、さまざまな条件下で焼成した粉末混合物のX線回折結果を示す図である。
【
図19】実施例2、3、及び4に係る、YAP及び/またはYAMと共にYAG相を有する3種のセラミック焼結体の1000倍の顕微鏡写真である。
【
図20】実施例1、2、3、及び4に係る、少なくとも1種の酸化イットリウムアルミニウムを含む、本明細書に開示の例示的な焼結セラミック体の5000倍の顕微鏡写真である。
【
図21】本明細書に開示の、
図14の焼結セラミック体実施例1~4の、X線回折を使用した相の特定を示す図である。
【
図22】a)試料153の、過剰なアルミナを有する、相純度が非常に高いYAGを含む例示的な焼結セラミック体を1000倍で示す画像であり、b)ImageJソフトウェアを使用したa)のSEM画像の閾値化の結果であり、本明細書に開示の実施形態に係る、約0.4%の酸化アルミニウム相及び多孔性を伴う99.6体積%の量のYAGを示す。
【
図23】
図16の焼結セラミック体の、対応するX線回折結果を示す図である。
【
図24】a)及びb)は、本明細書に開示の実施形態に係る、YAGを含む高密度焼結セラミック体試料258のそれぞれ1000倍及び5000倍での例示的なSEM顕微鏡写真を示す。
【
図25】本明細書に開示の実施例506に係る焼結セラミック体の、a)5000倍でのSEM顕微鏡写真、ならびにb)最大寸法にわたるYAGの密度の理論密度に対する割合(%)及び密度の変動を示す図である。
【
図26】本明細書に開示の実施例12に対応する、a)後方散乱検出法を使用した試料領域のSEM顕微鏡写真、ならびにb)多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値化後の同一領域のSEM画像である。
【
図27】本明細書に開示の実施例12に対応する、a)トポグラフィー画像化方法を使用した、
図20の試料領域のSEM顕微鏡写真、ならびにb)多孔性及びアルミナ相を明らかにするための閾値化後の、同一領域のトポグラフィーSEM画像である。
【
図28】a)及びb)は、本明細書に開示の実施形態に係る、YAGを含む焼結セラミック体の7つの画像の表面にわたって実施した多孔度測定を示す図である。
【
図29】a)は、細孔を示す、YAGを含む焼結セラミック体の表面のSEM顕微鏡写真を示し、b)は、
図28の7つの画像内の、多孔性を含む表面積の合計の割合(%)を示す図である。
【
図30】半導体エッチングプロセス用に構成することができる例示的なプラズマ加工チャンバーの例を示す図である。
【
図31】半導体蒸着プロセス用に構成することができる例示的なプラズマ加工チャンバーの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
これ以降、特定の実施形態を詳細に参照する。特定の実施形態の例は添付の図面に示されている。本開示は、これらの特定の実施に関連して説明が行われることになるが、本開示をかかる特定の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解されよう。むしろ、添付の特許請求の範囲によって規定される趣旨及び範囲内に含まれ得る代替物、改変、及び等価物をカバーすることが意図される。以下の説明においては、開示される実施形態が完全に理解されるように、多くの特定の詳細が記載されている。本開示は、これらの特定の詳細の一部またはすべてを用いることなく実施することもできる。
【0095】
定義
本出願において、用語「酸化イットリウムアルミニウム」とは、Y3Al5O12(YAG;イットリウムアルミニウムガーネット/立方晶相)、YAlO3(YAP;イットリウムアルミニウムペロブスカイト相)、及びY4Al2O9(YAM;イットリウムアルミニウム単斜晶相)、ならびにこれらの組み合わせを含む、酸化イットリウムアルミニウムの結晶相の形態の少なくとも1種を意味すると理解される。本明細書では、用語YAGとYAG相とは同義で使用される。
【0096】
本明細書では、用語「アルミナ」とは、Al2O3を含む酸化アルミニウムであると理解され、用語「イットリア」とは、Y2O3を含む酸化イットリウムであると理解される。
【0097】
本明細書では、用語「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、及び「ウェハ基板」は同義で使用される。半導体デバイス業界で使用されるウェハまたは基板の直径は、通常200mm、または300mm、または450mmである。
【0098】
本明細書では、用語「焼結セラミック体」は、「焼結する」、「体」、または「焼結体」と同義であり、焼成粉末混合物が、該混合物からモノリシック体を創り出す圧力及び熱処理プロセスに供された際に、上記焼成粉末混合物から形成される固体セラミック物品をいう。
【0099】
本明細書では、用語「ナノ粉末」とは、比表面積が20m2/g以上である粉末を包含することを意図する。
【0100】
本明細書では、用語「周囲温度」とは、22℃~25℃の温度範囲をいう。
【0101】
本明細書では、用語「純度」とは、a)粉末混合物を形成することができる出発物質、b)処理及び焼成後の粉末混合物、及びc)本明細書に開示の焼結セラミック体中に、様々な汚染物質及び/または不純物が存在しないことをいう。100%に近いより高い純度とは、Y、Al、及びO、ならびに任意選択でドーパント及び/または焼結助剤のみからなる、意図する材料組成のみから構成される、本質的に汚染物質または不純物を有していない材料を表す。
【0102】
本明細書では、用語「不純物」とは、Y、Al、及びO、ならびに任意選択でドーパント及び/または焼結助剤からなる出発物質それ自体以外の不純物を含む、a)粉末混合物を形成することができる出発物質、b)処理後の粉末混合物及び/または焼成粉末混合物、ならびにc)焼結セラミック体中に存在する化合物/汚染物質をいう。不純物は、出発粉末物質、処理/混合後の粉末混合物及び/もしくは焼成粉末混合物中に、または焼結中に存在する可能性があり、ppmとして報告され、より低いppmレベルがより低い不純物含有量に対応する。本明細書で報告される不純物及び/または全不純物はSiO2の形態でのSiを含まない。純度から不純物への換算は、当業者であれば既知であるが、1重量%が10,000ppmに等しいことを用いて行うことができる。
【0103】
本明細書で使用される用語「ドーパント」には、出発物質の酸化イットリウム及び酸化アルミニウムは、それらが焼結セラミック体中に残留する可能性がある程度の場合は含まれない。本明細書で定義されるドーパントが、例えば焼結セラミック体において、特定の電気的特性、機械的特性、光学的特性、または結晶粒径の変更などの他の特性を得るために、出発粉末または粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、不純物はドーパントとは異なる。
【0104】
本明細書で使用される用語「焼結助剤」とは、ジルコニア、カルシア、シリカ、またはマグネシアなどの添加剤をいい、上記添加剤は、焼結プロセス中に、緻密化を向上させ、延いては多孔度を低下させる。
【0105】
本明細書において、ppmで報告される場合のすべての値は、本明細書に開示の粉末、及び/または本焼結セラミック体の実施形態などの、測定対象の材料の総質量を基準とする。
【0106】
本明細書では、用語「焼結セラミック部品」とは、本明細書に開示の半導体加工チャンバー中で使用するための特定の部品の形状を形成するための機械加工ステップ後の焼結セラミック体をいう。
【0107】
本明細書では、用語「粉末混合物」とは、焼結ステップの後に、該焼結ステップによって「焼結セラミック体」に形成される、互いに混合された2種以上の出発粉末を意味する。上記「粉末混合物」に対して焼成を実施して、本明細書に開示の「焼成粉末混合物」を形成してもよい。
【0108】
本明細書では、用語「ツールセット(tool set)」とは、少なくともダイ及び少なくとも2つのパンチ、ならびに任意選択で追加のスペーサーを含んでいてもよいツールセットである。完全に組み立てられると、上記ツールセットは、開示される粉末混合物または焼成粉末混合物を配置するための容積を画成する。
【0109】
本明細書で使用される用語「相」は、特定の結晶構造を有する焼結セラミック体の結晶領域を意味すると理解される。
【0110】
熱処理プロセスに関して使用される場合の用語「焼成」は、本明細書では、例えば、水分及び/もしくは表面不純物を除去するために、結晶化度を高めるために、ならびに/またはいくつかの実施形態において、粉末表面積を低減するために、空気中の粉末あるいは粉末混合物に対して実施されてもよい熱処理ステップを意味すると理解される。
【0111】
セラミックの熱処理に適用される場合の用語「焼鈍」とは、本明細書では、応力を緩和し、及び/または化学量論を正常化するために、開示されるセラミック焼結体に対して空気中で実施される熱処理を意味すると理解される。
【0112】
本明細書では、数値に関連して使用される用語「約」は、プラスまたはマイナス10%の変動を許容する。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書では、任意の定量的比較、値、測定値、または他の表現に起因する場合がある固有の不確実性の程度を表すために利用することができる。これらの用語は、対象となる主題の基本的な機能を変化させることなく、定量的表現が記載された基準から変化することができる幅の程度を表すためにも、本明細書において使用される。
【0113】
装置/スパークプラズマ焼結ツール
本明細書では、内壁及び外壁を備える側壁を備えるダイであって、上記内壁の直径が、少なくとも1種のセラミック粉末を受け入れることができる内容積を画成する上記ダイと、
作動可能に上記ダイに結合した上部パンチ及び下部パンチであって、該上部パンチ及び下部パンチのそれぞれがダイの内壁の直径よりも小さい直径を画成する外壁を有し、それによって、上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方がダイの内容積内で移動する際に、上部パンチ及び下部パンチのそれぞれとダイの内壁との間に間隙を生み出す上記上部パンチ及び下部パンチと
を備え、但し、上記間隙の幅が10μm~100μmであり、上記少なくとも1種のセラミック粉末のASTM C1274に準拠して測定した比表面積(SSA)が1~18m/gである、スパークプラズマ焼結(SPS)ツールが開示される。
【0114】
図1は、本明細書に開示の、セラミック粉末を焼結して大きな焼結セラミック体を製造するために使用される、簡略化されたダイ/パンチ装置を備えるSPSツール1を示す。通常、上記ダイ/パンチ装置は、当業者であれば認識しようが、真空チャンバー(図示せず)内に存在する。
図1を参照すると、スパークプラズマ焼結ツール1は、少なくとも1種のセラミック粉末5を受け入れることができる内容積を画成する直径を有する内壁8を備える側壁を備えるダイシステム2を備える。
【0115】
引き続き
図1を参照すると、スパークプラズマ焼結ツール1は、作動可能にダイシステム2に結合した上部パンチ4及び下部パンチ4’であって、該上部パンチ4及び下部パンチ4’のそれぞれが、ダイシステム2の内壁8の直径よりも小さい直径を画成する外壁11を有し、それによって、上部パンチ4及び下部パンチ4’のそれぞれの少なくとも一方がダイシステム2の内容積内で移動する際に、上部パンチ4及び下部パンチ4’のそれぞれとダイシステム2の内壁8との間に間隙3を生み出す上記上部パンチ4及び下部パンチ4’を備える。
【0116】
上記ダイシステム2ならびに上部パンチ4及び下部パンチ4’は、少なくとも1種のグラファイト材料を含んでいてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示のグラファイト材料(複数可)は、少なくとも1種の等方性グラファイト材料を含んでいてもよい。他の実施形態において、本明細書に開示のグラファイト材料(複数可)は、例えば炭素-炭素複合材料、及び等方性グラファイト材料のマトリクス中に、炭素などの他の導電性材料の繊維、粒子、またはシートもしくはメッシュもしくはラミネートを含むグラファイト材料などの、少なくとも1種の強化グラファイト材料を含んでいてもよい。他の実施形態において、上記ダイならびに上部及び下部パンチは、これらの等方性グラファイト材料及び強化グラファイト材料の組み合わせを含んでいてもよい。
【0117】
例えば、ダイ6及びパンチ4及び4’などの、上記ツールの一部またはすべての部品に使用されるグラファイト材料は、約5%~約20%、約5%~約17%、約5%~約13%、約5%~約10%、5%~約8%、約8%~約20%、約12%~20%、約15%~約20%、約11%~約20%、約5%~15%、6%~約13%、好ましくは約7%~約12%の多孔度を示す多孔性グラファイト材料を含んでいてもよい。
【0118】
上記グラファイト材料の平均細孔径(pore size)(細孔径(pore diameter))は、0.4~5.0μm、好ましくは1.0~4.0μmであることが好ましく、上記グラファイト材料は、表面細孔径が最大で30μm、好ましくは最大で20μm、好ましくは最大で10μmの細孔を含むことが好ましい。表面細孔径が10~30μmの細孔が存在できることがより好ましい。
【0119】
本明細書に開示のツールに使用されるグラファイト材料の平均結晶粒径は、0.05mm未満、好ましくは0.04mm未満、好ましくは0.03mm未満、好ましくは0.028mm未満、好ましくは0.025mm未満、好ましくは0.02mm未満、好ましくは0.018mm未満、好ましくは0.015mm未満、好ましくは0.010mm未満であってよい。
【0120】
本明細書に開示のツールに使用されるグラファイト材料の平均結晶粒径は、0.001mm超、好ましくは0.003mm超、好ましくは0.006mm超、好ましくは0.008mm超、好ましくは0.010mm超、好ましくは0.012mm超、好ましくは0.014mm超、好ましくは0.020mm超、好ましくは0.025mm超、好ましくは0.030mm超であってよい。
【0121】
本明細書に開示のツールに使用されるグラファイト材料の密度は、1.45g/cm3以上、好ましくは1.50g/cm3以上、好ましくは1.55g/cm3以上、好ましくは1.60g/cm3以上、好ましくは1.65g/cm3以上、好ましくは1.70g/g/cm3以上、好ましくは1.75g/cm3以上であってよい。
【0122】
本明細書に開示のツールに使用されるグラファイト材料の密度は、1.90g/cm3以下、好ましくは1.85g/cm3以下、好ましくは1.80/cm3以下であってよい。
【0123】
実施形態において、上記グラファイト材料の約400~約1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)は、3.3×10-6/℃以上、3.5×10-6/℃以上、3.7×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以上、4.2×10-6/℃以上、4.4×10-6/℃以上、4.6×10-6/℃以上、4.8×10-6/℃以上である。
【0124】
実施形態において、上記グラファイト材料の約400~約1400℃の温度範囲にわたる熱膨張係数(CTE)は、7.0×10-6/℃以下、好ましくは6.0×10-6/℃以下、好ましくは5.0×10-6/℃以下、好ましくは4.8×10-6/℃以下、好ましくは4.6×10-6/℃以下であってよい。
【0125】
表1に本明細書に開示の例示的なグラファイト材料の特性を掲載する。
【表1】
【0126】
上記ダイシステム2は、ダイ6と、任意選択で但し好ましくは、
図2A~2Cの実施形態に示すダイの内壁上に配置された少なくとも1つの導電性箔7を備える。上記ダイの内壁上の導電性箔の数は限定されず、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の導電性箔が、ダイ6と上部パンチ4及び下部パンチ4’のそれぞれとの間に円周方向のライナーとして設置され、それによって、ダイシステム2の内壁8(存在する場合、少なくとも1つの導電性箔を備える)と、上記上部パンチ及び下部パンチのそれぞれの外壁11が間隙3を画成する。上記少なくとも1つの導電性箔7は、本明細書に開示の方法に係る温度範囲内で安定である、グラファイト、ニオブ、ニッケル、モリブデン、白金、及び他の延性のある導電性材料、ならびにそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0127】
特定の実施形態において、上記導電性箔は、以下の特徴の1つ以上を有する、本明細書に開示の可撓性且つ圧縮性のグラファイト箔を含んでいてもよい。
・99重量%を超える、好ましくは99.2重量%を超える、より好ましくは99.4重量%を超える、より好ましくは99.6重量%を超える、より好ましくは99.8重量%を超える、より好ましくは99.9重量%を超える、より好ましくは99.99重量%を超える、より好ましくは99.999重量%を超える炭素含有量;
・500ppm未満、好ましくは400ppm未満、より好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満である不純物;
・4.0~6.0MPa、好ましくは4.2~5.8MPa、より好ましくは4.4~5.6MPaの範囲の引張強さ;及び
・好ましくは、1.0~1.2g/cc、好ましくは1.02~1.18g/cc、より好ましくは1.04~1.16g/cc、より好ましくは1.06~1.16g/ccの範囲の嵩密度。
【0128】
実施形態において、上記少なくとも1つの箔は、通常グラファイトを含む。特定の実施形態において、上記ダイシステムの一部としての上記少なくとも1つの箔は、ダイの表面と上部パンチ及び下部パンチのそれぞれとの間の円周方向のライナーを構成する。
【0129】
上記グラファイト箔は、焼結中の粉末全体にわたる温度分布を改善することができる。表2に、Neograf Grafoil(登録商標)、Sigraflex(登録商標)グラファイト箔、及びToyo Tanso Perma-Foil(登録商標)などの、本明細書に開示の実施形態に係る例示的なグラファイト箔の特性を掲載する。
【表2】
【0130】
ここで
図2A、2B、及び2Cを参照すると、グラファイト箔の配置の実施形態を伴うSPSツールセットが示される。セラミック粉末5は、上部パンチ4及び下部パンチ4’の少なくとも一方の間に配置され、間隙3は、上部パンチ及び下部パンチのそれぞれの外壁11とダイシステム2の内壁8との間に示されている。
図2A、2B、及び2Cは、それぞれ1~3層の導電性箔7及びダイシステム2の一部としてのダイ6を示す。したがって、上記間隙は、ダイシステム2の内壁8から上部パンチ及び下部パンチのそれぞれの外壁11にわたっている。間隙距離は、加熱及び焼結の前ならびに/または加熱及び焼結中に上記粉末を脱気することができ、同時にパンチとダイの間のオーミック接触を維持して、加熱及び焼結中のセラミック粉末全体にわたる温度分布を改善することができるように整えられる。
【0131】
上記グラファイト箔の厚さは、例えば、0.025~0.260mm、好ましくは0.025~0.200mm、好ましくは0.025~0.175mm、好ましくは0.025~0.150mm、好ましくは0.025~0.125mm、好ましくは0.035~0.200mm、好ましくは0.045~0.200mm、好ましくは0.055~0.200mmであってよい。
【0132】
間隙3の距離は、上部パンチ4及び下部パンチ4’に最も近接した箔7の内側に面した表面から、上部及び下部パンチのそれぞれの外壁11までで測定される。間隙3の距離の好ましい範囲は、10~100μm、10~80μm、10~70μm、10~60μm、好ましくは10~50μm、30~70μm、20~60μm、30~60μmである。
【0133】
さらに、ダイシステム2の内壁8と、上部パンチ4及び下部パンチ4’のそれぞれの外壁11との間での間隙3の幅は、一方では、予熱プロセス、加熱プロセス、及び焼結プロセス中の粉末の脱気が十分に促進され、他方では、ジュール加熱または抵抗加熱のための十分な電気的接触、延いては焼結が達成されるように、当業者が決定することができる。間隙3の距離が10μm未満の場合、上記ダイシステムの内部容積内で上部パンチ及び下部パンチの少なくとも一方を移動させ、それによりツールセットを組み立てるのに必要な力により、ツールセットに損傷が生じる場合がある。さらに、間隙3が10um未満の場合、セラミック粉末5内の吸着ガス、有機物、湿気等の排出ができなくなる可能性があり、そのことにより製造中の処理時間が長くなり、焼結セラミック体中に多孔性が残留し、延いては焼結セラミック体の密度が低下する可能性がある。間隙3の幅が70μmを超えると、本明細書に開示の、高抵抗率(例えば、室温において約1×10+10オーム・cm以上)を有する、酸化物及び/または窒化物セラミックを含む酸化物セラミック、ならびに非導電性混合金属酸化物などの絶縁材料を焼結する場合、局所的な過熱が発生し、焼結中にツールセット内に温度勾配が生じる可能性がある。結果として、高い抵抗率(したがって低い導電率)を有する非導電性セラミック粉末から大寸法の焼結セラミック体を形成するためには、10~70umの間隙が好ましい。したがって、いくつかの実施形態において、酸化物または窒化物セラミックを含むセラミック粉末を焼結する場合の、ダイシステム2の内壁8と上部パンチ及び下部パンチのそれぞれの外壁11との間の間隙3の距離は、好ましくは10~70μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは20~70μm、好ましくは30~70μm、好ましくは40~70μm、好ましくは50~70um、できれば30~60μmである。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、焼結中のダイシステム2の内壁8と上部パンチ及び下部パンチのそれぞれの外壁11との間の間隙の距離によって、予備焼結プロセス及び焼結プロセス中の有機物、水分、吸着分子などの粉末からの脱気が促進されると考えられる。これによって、高密度且つ低体積多孔度であり、密度の変動が小さく、機械的特性が改善された大型の焼結セラミック体が得られ、その結果、この焼結セラミック体は、破損することなく容易に取り扱うことができる。本明細書に開示されるようにして製造されたYAGを含む焼結セラミック体の寸法は、該焼結セラミック体の最大寸法について言えば、100mm~610mmまたはそれ以上とすることができる。
【0134】
実際には、上部パンチ4及び下部パンチ4’は、必ずしも中心軸の周りに完璧に整列しているとは限らない。
図3A及び
図3Bはツールセット1の平面図であり、上部パンチ4及び下部パンチ4’、間隙3、任意の数の導電性箔7、及びダイシステム2の、中心軸9の周りの配置を示している。
図3Aに示す実施形態において、上記間隙は中心軸9に関して軸対称であってもよい。
図3Bに示す他の実施形態において、上記間隙は中心軸9に関して非対称であってもよい。本明細書に開示の酸化物及び/または窒化物セラミックを焼結する場合は、間隙3は10um~70umの距離にわたっていてもよく、本明細書に開示の非酸化物セラミックを焼結する場合は、図に示す軸対称及び非対称の実施形態の両方において、10um~100umの距離にわたっていてもよい。
【0135】
間隙の非対称性性能は、ある範囲の温度にわたって絶対的な半径方向のCTE偏差の分析を行うことによって測定することができる。例えば、
図4は、本明細書に開示の装置のパンチ及びダイとして使用される2種の等方性グラファイト材料(A及びB)の、1200℃における平均CTEからの半径方向の偏差を示す。
図4は、広い温度範囲にわたって所望の間隙を維持することが可能な材料であるためには、例えば室温~2000℃で、x-y面における半径方向の偏差が、最大で0.3×10
-6を超える幅で変化してはならないことを示している。材料Bはx-y面において許容できないCTEの拡大を示す一方、材料Aは温度範囲全体を通じて許容できるCTEの拡大を示した。
図5は、当該温度範囲にわたる、
図4の両方の材料のx-y面にわたる、a)グラファイト材料のCTEのppmで表した標準偏差、及びb)CTEの絶対値での変動(デルタ)(最低値から最高値まで)を示す。
図6は、400~1400℃におけるグラファイト材料A及びBの熱膨張係数の変動を示している。
【0136】
一実施形態に従って使用される特定のツールセットの設計の利点は、純度が非常に高く、密度が高く且つ均一であり、体積多孔度が低く、それらによって、本開示に係る焼結プロセス、特にSPSプロセスにおける破損の傾向が低下した、大型のセラミック体を提供するための全体的な技術的効果につながる可能性がある。したがって、ツールセットに関して開示されるすべての特徴は、100mmを超える寸法の焼結セラミック体の製品にも適用される。
【0137】
本明細書に開示のツールセットを使用することにより、焼結する粉末の温度分布をより均一にすること、及び密度が非常に高く(所与の材料の理論密度の98%を超える)且つ均一であり(最大寸法にわたって変動が4%未満)、それによって破損の傾向が低下した焼結セラミック体、特に、最大寸法が例えば100mm及び/または200mmを超える大寸法の焼結セラミック体を製造することが可能になる。
【0138】
本開示のツールセットは、スペーサーエレメント、シム、ライナー、及び他のツールセット部品をさらに含んでいてもよい。一般的には、かかる部品は、本明細書に開示の特性を有する少なくとも1種のグラファイト材料から製造される。
【0139】
組成
以下の詳細な説明は、本開示が、半導体ウェハ基板の製造の一部として必要なエッチングチャンバーまたは蒸着チャンバーなどの装置内で実施されることを前提としている。但し、本発明はそのように限定はされない。加工物は、さまざまな形状、サイズ、及び材料のものであってよい。半導体ウェハの加工に加えて、本発明を利用することができる他の加工物としては、微細な形体サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサー、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなどのさまざまな物品が挙げられる。
【0140】
半導体デバイスの加工中、耐食性部品またはチャンバー部品はエッチングチャンバー及び/または蒸着チャンバー内で使用され、過酷な環境に曝露され、その環境によってエッチングチャンバー及び/または蒸着チャンバー中への粒子の放出が起こり、その結果ウェハレベルの汚染に起因して歩留まりが低下する。本焼結セラミック体及び該セラミック体から製造された部品は、以下に説明する特定の材料特性及び特徴によって、プラズマエッチング耐性が向上し、且つ半導体加工チャンバー内で清浄化される能力が高められる。
【0141】
一実施形態において、本明細書では、90体積%~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度とを含む焼結セラミック体が開示される。実施形態において、本焼結セラミック体は、本明細書に開示の材料及び方法を使用することにより、90~99.8体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは90~99.4体積%、好ましくは93~99.9体積%、好ましくは93~99.8体積%、好ましくは93~99.6体積%、好ましくは93~99.4体積%の量の、立方晶構造のYAGを含んでいてもよい。本焼結セラミック体は、0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%、好ましくは0.1~0.75%、好ましくは0.1~0.5%の量の体積多孔度を含んでいてもよい。
【0142】
別の実施形態において、本明細書では、90~99.9体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度とを含み、0.1~2体積%、好ましくは0.1~1.5体積%、好ましくは0.1~1体積%、好ましくは0.1~0.8体積%、好ましくは0.1~0.6体積%、好ましくは0.1~0.4体積%の量で存在する、酸化イットリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物をさらに含む焼結セラミック体が開示される。
【0143】
さらなる実施形態において、本明細書では、90~99.8体積%の量の、少なくとも1種の形態の多結晶酸化イットリウムアルミニウム、ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~5%未満の体積多孔度、ICPMS法によって測定した99.99%を超える純度、及びASTM規格C1327に準拠して測定した少なくとも1200HVの硬度を含む焼結セラミック体が開示される。本焼結セラミック体は、少なくとも1種の多結晶酸化イットリウムアルミニウム相または、特定の実施形態において、イットリウムアルミニウムガーネット Y3Al5O12(YAG)相、イットリウムアルミニウムペロブスカイト YAlO3(YAP)、及び単斜晶系イットリウムアルミニウム Y4Al2O9(YAM)、ならびにそれらの組み合わせを含む酸化イットリウムアルミニウムの組み合わせを含む。
【0144】
エッチングまたは蒸着プロセスに関連する半導体加工反応器は、半導体加工に必要な反応性プラズマによる化学的腐食に対して高い耐性を有する材料から製造されたチャンバー部品を要する。これらのプラズマまたはプロセスガスは、O2、F、Cl2、HBr、BCl3、CCl4、N2、NF3、NO、N2O、C2H4、CF4、SF6、C4F8、CHF3、CH2F2などのさまざまなハロゲン、酸素、及び窒素系の化学物質で構成される。本明細書に開示の耐食性材料を使用することにより、使用中の化学的腐食及び劣化を低減される。さらに、非常に高純度の焼結セラミック体などのチャンバー構成材料を提供することによって、腐食または侵食の開始部位と作用する可能性がある不純物の少ない、均一に耐食性のある焼結セラミック体が提供される。チャンバー部品として使用するための材料には、侵食または剥離に対する高い耐性も求められる。侵食または剥離は、Arなどの不活性プラズマガスを使用することによるコンポーネント部品表面のイオン衝撃に由来する場合がある。硬度の値が高いこれらの材料は、該材料の硬度値が向上することによってイオン衝撃に対する耐性、延いては侵食に対する耐性がより大きくなることに起因して、部品としての使用に好ましい可能性がある。さらに、微細なスケールで分布した多孔度が最小の高密度材料から製造される部品では、エッチング及び蒸着プロセス中の腐食ならびに侵食に対する耐性がより大きくなる可能性がある。結果として、好ましいチャンバー部品は、プラズマエッチング、蒸着、及びチャンバー洗浄プロセス中の高い耐侵食性及び耐食性を有する材料から製造されたものであってよい。この腐食及び侵食に対する耐性によって、半導体加工中に部品表面からエッチングチャンバーまたは蒸着チャンバー中に粒子が放出されることが防止される。かかる粒子の加工チャンバー中への放出または脱粒は、ウェハ汚染、半導体プロセスのふらつき(drift)、及び半導体デバイスレベルの歩留まり低下の一因となる。
【0145】
さらに、チャンバー部品は、部品の設置、取り外し、洗浄に、及び加工チャンバー内での使用中に必要とされる取扱い性のために、十分な曲げ強さ及び剛性を有している必要がある。高い機械的強度により、破損、亀裂、欠け落ちを生じることなく、本焼結セラミック体に微細なジオメトリーの複雑な形体を機械加工することが可能になる。曲げ強さまたは剛性は、最先端のプロセスツールにおいて使用される大きな部品サイズで特に重要になる。直径約200~622mm以上のチャンバーウィンドウなどの一部の部品用途においては、真空条件下での使用中に当該ウィンドウに大きな応力がかかり、高強度且つ高剛性の耐食性材料を選択する必要がある。
【0146】
プラズマプロセスの一部としてイオン衝撃が発生する半導体加工チャンバー用途で使用する場合、使用中の侵食に耐えるために、セラミック焼結体から形成されたチャンバー部品の高度が高いことが好ましい。高い硬度値によって、特定の部品の形態に機械加工する際に、焼結体の表面で欠け落ち、剥離、または損傷を生じることなく、焼結セラミック体に微細な形体を創出する能力が可能になる。
【0147】
半導体チャンバー部品には、プラズマ生成効率を向上させるために、特にプラズマ加工チャンバーで使用される1MHz~20GHzの高周波で、誘電損失が可能な限り低い材料が好ましい。誘電損失がより高いこれらの部品の材料におけるマイクロ波のエネルギーの吸収により発生する熱によって、部品上に不均一な加熱及び大きな熱ストレスが生じ、使用中の熱ストレスと機械的ストレスの組み合わせによって、製品設計及び製品の複雑さが制限される場合がある。
【0148】
上述の要件を満たすために、本明細書に開示の焼結セラミック体は、酸化イットリウムアルミニウムの形態の1種または複数種の組み合わせを含む焼結セラミック体から製造することができる。上記酸化イットリウムアルミニウムの形態としては、組成Y3Al5O12(YAG)の立方晶ガーネット相、組成YAlO3(YAP)のペロブスカイト相、及び組成Y4Al2O9(YAM)を有する単斜晶相が挙げられる。
【0149】
本明細書に開示の、高い化学的耐食性及び耐侵食性を必要とする半導体エッチング及び蒸着用途で使用するために、実施形態において、本焼結セラミック体は、好ましくは本明細書に開示のX線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡画像化技法、及び画像処理ソフトウェアの組み合わせを使用して測定して、90体積%~99.9体積%、好ましくは90体積%~99.8体積%、好ましくは90体積%~99.6体積%、好ましくは90体積%~99.4体積%、好ましくは93~99.9体積%、好ましくは93~99.8体積%、93~99.6体積%、好ましくは93~99.4体積%の量のYAG結晶相を含むことが好ましい。本明細書に開示の焼結セラミック体は、好ましくは多結晶性であり、したがって、本焼結セラミック体は複数の結晶を含んでいてもよい。但し、これに限定はされない。
【0150】
本明細書に開示の、高い化学的耐食性及び耐侵食性を必要とする半導体エッチング及び蒸着用途で使用するための他の実施形態において、本焼結セラミック体は、90体積%~99.8体積%、好ましくは90~99.6体積%、好ましくは90~99.4体積%の量のYAG相、ならびに、本明細書に開示のX線回折、走査型電子顕微鏡画像解析技術、及び画像処理ソフトウェアの組み合わせを使用して測定して0.1~2体積%の量で存在する、酸化イトリウム及び酸化アルミニウム、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物を含むことが好ましい。本明細書に開示のYAG及び酸化アルミニウムを含む焼結セラミック体は好ましくは多結晶性であり、したがって、該焼結セラミック体は2種以上の結晶を含んでいてもよい。但し、これに限定はされない。
【0151】
一実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体は、約99.8体積%の、YAG、YAP、またはYAMの酸化イットリウムアルミニウムのいずれか1種の単結晶相を含んでいてもよい。他の実施形態において、本焼結セラミック体は、本明細書に開示の酸化イットリウムアルミニウムの2種以上の離散相もしくは連続相のマトリクスまたは複合体構造を含んでいてもよい。さらなる実施形態において、本焼結セラミック体は、酸化イットリウムアルミニウムYAG、YAP、及びYAMのいずれか1種または組み合わせ、好ましくはYAG結晶相の主相と共に、酸化アルミニウム及び/または酸化イットリウムの少量成分相を含んでいてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体は、90~99.6体積%の立方晶相、YAGを含んでいてもよい。特定の実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体は、99~99.8体積%のYAGの立方晶相と、0.2~1%の酸化アルミニウム相を含んでいてもよい。本明細書に開示の焼結セラミック体のすべての実施形態は、好ましくは多結晶であり、したがって、本焼結セラミック体は2種以上の結晶を含んでいてもよい。但し、これに限定はされない。
【0153】
目安として、
図7は酸化イットリウム/酸化アルミニウムの2成分状態図を示す。横軸はイットリアとアルミナのモルパーセントでの混合比に対応し、縦軸は摂氏で表した温度である。横軸の左側は100%のアルミナに相当し、右側は100%のイットリアに相当する。
図7の状態図は、YAG、YAP、及びYAMの酸化イットリウムアルミニウム相が形成される領域、ならびにそれらの形態が生成するために必要なモル組成及び温度の条件を示している。YAGを形成するには、化学量論を維持し、且つそのようにして、37.5モル%の酸化イットリウム及び62.5モル%の酸化アルミニウムの、相純度が高いYAGを含む焼結セラミック体を形成するための慎重な組成制御を必要とする場合がある。
【0154】
本明細書に開示の方法に従って製造された焼結セラミック体、及び該焼結体から作製された焼結セラミック部品は、好ましくは高密度を有する。密度測定は、ASTM B962-17に準拠したアルキメデス浮力法を使用して実施した。上記密度測定は、水などの既知の密度の液体を補助として使用し、且つ空気中でも試料を秤量し、以下の式:
【数1】
に従って実施した。
【0155】
式中、A=空気中での試料の重量、B=液体中での試料の重量、Da=空気の密度(0.0012g/cc)、及びDl=液体の密度である。この計算を使用して、密度を本明細書に開示されるように高精度で測定することができる。
【0156】
報告された密度値及び標準偏差は、5点の測定値にわたる平均値である。市販のYAGの単結晶試料の密度を、本明細書に開示の方法を使用して測定した。5点の測定値にわたる4.556g/ccのアルキメデス密度が得られ、この値を本明細書で使用するYAGの理論密度と見なす。本明細書の実施形態に開示される、相純度が高いYAGを、該YAGの相の最大で99.8体積%の量で含むセラミック焼結体、及び最大で1体積%の過剰なアルミナを含むYAGを含むセラミック焼結体の密度は、例えば、4.374~4.556g/cc、4.419~4.556g/cc、4.465~4.556g/cc、4.510~4.556g/cc、4.533~4.556g/ccであるか、またはYAGの理論密度に対する割合で、96~99.999%、97~99.999%、98~99.999%、99~99.999%、99.5~99.999%であってよい。相当する体積多孔度(Vp)は、本明細書に開示の規格に準拠して実施した密度測定から算出して、0.010~5%未満、0.010~4%、0.010~3%、0.010~3%、0.010~2%、0.010~1%、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であってよい。所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示すように、同一材料について報告された理論密度に対する当該試料の実測密度の比率として定義される。体積多孔度(Vp)は、密度の測定値から以下、すなわち、
【数2】
(式中、ρ試料はASTM B962-17に準拠して測定した(アルキメデス)密度であり、ρ理論は本明細書に開示の測定した理論密度であり、RDは相対的比率での密度である)のように算出される。この計算を使用して、本明細書に開示のセラミック焼結体の測定した密度値から、0.1~5%以下の割合で示した多孔度レベルが算出された。したがって、実施形態において、本明細書に開示の酸化イットリウムアルミニウムYAG相を含む焼結セラミック体は、表3に掲載される焼結セラミック体中に、0.1~5%、好ましくは0.1~4%、好ましくは0.1~3%、好ましくは0.1~2%、好ましくは0.1~1%の量の体積多孔度を含む。
【0157】
本明細書に開示のセラミック焼結体の結晶相及び画像に基づく多孔度の測定は、XRD、SEM画像化、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して実施した。XRDは、約±5体積%の範囲の結晶相の同定が可能なPANanlytical Aeris XRD型を使用して実施した。したがって、本明細書に開示のセラミック焼結体のXRDは、最大で約95体積%の相純度を測定することができる。より高い精度、例えば、最大で約99.8体積%の相純度を測定するために、SEM画像を、当業者に公知の後方散乱検出(BSD)法を使用して撮影した。BSDを使用すると、YAG相は灰色に見え、結晶粒の配向に応じて多少変化し、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性(存在する場合)も黒色に見える。試料512について、BSD法を使用して5000倍で画像を撮影し、
図26のa)に示す、YAG相、アルミナ相、及びイットリア相、ならびに存在する任意の多孔性を同定した。
【0158】
アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、ImageJ処理ソフトウェアを使用して上記BSD画像を白黒閾値処理し、
図26のb)に同一の領域として示されている、多孔性またはアルミナのいずれかを含む可能性のある上記BSD画像中の黒色領域を強調した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)において開発され、科学的な多次元画像の画像処理のためのJavaベースのパブリックドメイン画像処理及び画像解析プログラムである。本明細書に開示の測定に使用されるBSD検出器は、トポグラフィーの形体を測定するさらなる能力を有し、それにより、表面多孔性などの表面トポグラフィーにおける任意の偏差を強調する。BSD検出器のトポグラフィーモードを使用して、トポグラフィー画像を、セラミック焼結体の
図26のa)に示すものと同一の領域の表面にわたって、5000倍で撮影し、そのトポグラフィー画像を27a)に示す。ImageJでトポグラフィー画像を閾値処理した後には、表面多孔性を含む領域が
図27のb)に示すように強調された。その後、
図27のb)のトポグラフィー画像内の表面多孔性を含む領域を、
図26のb)のBSD画像におけるアルミナ及び/または多孔性を含む領域から差し引いて、試料512に対応する焼結セラミック体中のアルミナ相を含む面積の割合、延いては体積の割合を得た。複数のSEM画像化モードのこれらの解析ツールとImageJ解析の併用により、約±0.1体積%の信頼性での相純度の測定を行うことができる。開示される方法を使用して、試料512が、約0.1~約0.2体積%のアルミナ相、約0.1~約0.2体積%の多孔度、及び約99.6~約99.8体積%のYAG相を含むことが測定された。上記イットリア相は、本明細書に開示の相の測定方法を使用すると、0.01%以下の面積に基づく量で存在し、これは信頼限界を下回っており、したがって酸化イットリウム相は相対的な相の量に含めなかった。表3に、本明細書に開示の焼結セラミック体の結晶相純度及び体積多孔度を掲載する。したがって、それぞれ体積%で、90~99.9%、好ましくは90~99.8%、好ましくは90~99.7%、好ましくは90~99.6%、好ましくは93~99.8体積%、好ましくは93~99.7%、好ましくは93~99.6%の量のYAG相を含む焼成セラミック体を、本明細書に開示の材料及び方法を使用して形成することができる。ImageJ解析法を、焼結セラミック体中の細孔径と細孔面積の相対量を評価するためにも使用した。
図28のa)及びb)は、YAGを含む焼結セラミック体の表面の面積に基づく細孔/多孔度の測定値を示す。
図28のa)は、縦軸に7つのSEM画像のそれぞれの細孔または多孔度(細孔面積)を含む表面積の割合を示し、横軸は、ミクロンで表した所与の細孔面積の割合に対応する細孔径を表す。本明細書に開示のImageJソフトウェア法を使用し、7つのSEM画像にわたって細孔径及び総細孔面積を測定した。画像を5000倍で撮影し、それぞれの総面積は約53.7um×53.7umで、これは約2885um
2の単一画像の測定面積に相当していた。上記総細孔面積を上記単一画像の測定面積と共に使用して、細孔面積の割合を得た。7つの画像のいずれか1つの内の領域は、総表面積に対する割合で、約0.0005~約0.012%、好ましくは約0.0005~約0.011%、好ましくは約0.0005~約0.0105%の多孔性を含んでいた。
【0159】
図28のb)は、mm
2で表した
図28のa)の7つの画像の総面積のそれぞれにわたって正規化し、割合で表した、um
2で表した多孔性を含む面積の累積値(累積細孔面積)を、横軸上のそれぞれの孔径に対して対数目盛で示している。YAGを含む本焼結セラミック体は、約2~約800um
2/mm
2、好ましくは約2~約600um
2/mm
2、好ましくは約2~約400um
2/mm
2、好ましくは約2~約300um
2/mm
2の累積細孔面積率を含んでいてもよい。
図28b)は、それぞれの細孔径に対する、割合で表した多孔性を含む面積の合計を示す。本YAG焼結セラミック体内の解析した7つの画像を通じて、0.6umを超える細孔径の細孔は測定されなかった。したがって、本明細書に開示の焼結セラミック体では、それぞれの面積が約54um×54umの7つの画像にわたって、1um未満の細孔径に相当する多孔性を含む表面の割合は非常に低く(0.1面積%未満)、そのため、プラズマ加工チャンバー中で使用するための焼結セラミック体の耐食性且つ耐侵食性の表面、延いては耐食性且つ耐侵食性の塊が提供される。
【0160】
図29のa)は、熱エッチングプロセス後のYAGを含む焼結セラミック体のSEM顕微鏡写真を示し、小さな寸法の少数の細孔を示している。本明細書に開示のYAG焼結セラミック体は、径が5um以下であり、サブミクロンスケールまで低下した、0.1um~5umまでも小さてよい細孔を含んでいてもよい。本明細書に開示の実施形態によれば、YAGを含む焼結セラミック体は、最大径が0.1~5um、好ましくは0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1um、好ましくは0.1~0.6umであってもよい細孔を含んでいてもよい。
【0161】
図29のb)は、
図28の7つのSEM顕微鏡写真のそれぞれについて、割合で表した、全画像領域にわたる多孔性を含む面積の合計を示す。すべての画像にわたって、割合で表した多孔度は、0.001~0.03%、好ましくは0.001~0.025%、好ましくは0.001~0.02%、好ましくは0.001~0.015%、好ましくは0.001~0.010%であった。したがって、本明細書に開示の焼結セラミック体の多孔性を含む表面の割合は、約54um×54umの面積の画像にわたって非常に低く(面積で1%未満)、したがって、プラズマ加工チャンバー中で使用するための焼結セラミック体の耐食性且つ耐侵食性の表面、延いては耐食性且つ耐侵食性の塊が提供される。
【0162】
これらの密度、相純度、及び多孔度レベルによって、プラズマエッチング及び蒸着加工から生じる侵食ならびに腐食の影響に対する耐性の向上の相乗効果を得ることができる。開示される方法及び材料は、例えば、200~622mmの最大寸法からの大寸法のセラミック焼結体の製造において特に有用である。本焼結セラミック体の上記の高密度、延いては高い機械的強度により、特に大寸法における取扱い性が向上する。焼結酸化イットリウムアルミニウム体、特に、最長(約200~622mm)の寸法にわたって本明細書に開示の範囲で相純度が高いYAGから形成される焼結酸化イットリウムアルミニウム体は、少なくとも1つの最長の寸法にわたる密度の変動を制御することによって、うまく製造することが可能になる場合がある。最大寸法にわたって密度の変動が5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下で、平均密度が96%以上であることが望ましく、それにより、上記最大寸法は、例えば、約622mm以下、好ましくは575mm以下、好ましくは525mm以下、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~622mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmとすることができる。YAGの理論密度の95%未満の低密度の場合、強度が低く、延いては多孔度が5%を超えてより高くなる場合があり、その結果、破損及び取扱い性の低下が生じる。表3に、本明細書に開示のセラミック焼結体の実施形態の密度、理論密度に対する割合、結晶相、割合で表した体積多孔度を掲載する。表3に係る結晶相は、XRD、SEM画像化、及びImageJ処理ソフトウェア、ならびに本明細書に開示の方法を使用するそれらの組み合わせによって測定した。本明細書に開示のセラミック焼結体の密度は、4.378g/cc~4.550g/ccの範囲である。試料は、93体積%~99.8体積%の量で存在するYAG相を含んでいた。
【表3-1】
【表3-2】
【0163】
高密度であることに加えて、開示される焼結セラミック体の最大寸法にわたる密度の変動は、特に大(100mmを超える)寸法における取扱い性、機械加工性、及び焼結セラミック部品としての使用に強い影響を及ぼす場合がある。本明細書に開示のセラミック焼結体のいくつかの例の最大寸法にわたって、密度を測定した。表3に測定した密度及び密度の変動、ならびに体積多孔度の結果を掲載する。
【0164】
高密度に加えて、高い硬度値により、プラズマチャンバ部品としての使用中の侵食に対する耐性がさらに向上する可能性がある。そのため、ASTM規格C1327「Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics」に準拠してビッカース硬度の測定を行った。すべての硬度測定に使用した試験装置はWilson Micro Hardness Tester Model VH1202であった。本明細書に開示の焼結セラミック体については、少なくとも1200HV、好ましくは少なくとも1400HV、好ましくは少なくとも1800HV、好ましくは少なくとも2000HV、1300~1600HV、1300~1500HV、1300~1450HV、1300~1400HV、1400~1600HV、1450及び1600HVから、1450及び1550HVからの硬度値を得ることができる。当技術分野で公知のビッカース硬度法を使用して実施した測定をGPaのSI単位に変換した。本明細書に開示の焼結セラミック体に関し、12.75~15.69GPa、12.75~14.71GPa、12.75~14.22GPa、12.75~13.73GPa、13.73及び15.69GPaから、14.22及び15.69GPaから、好ましくは14.22及び15.20GPaからの硬度値を得ることができる。これらの高い硬度値は、半導体エッチングプロセス中のイオン衝撃に対する耐性の向上及び使用中の侵食の低減に寄与することができ、本焼結セラミック体が微細なスケールの形体を有する焼結セラミック部品へと機械加工される場合に、寿命が延長される。表4に、本明細書に開示のセラミック焼結体の硬度値を掲載する。試料514、519、及び531については2kgfのロードセル/印加荷重を、試料506については0.025kgfの荷重を使用し、8回の試験の繰り返しの平均値を報告する。
【表4】
【0165】
一実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体の平均硬度は、ASTM規格C1327に準拠して測定し、0.2kgfの印加荷重を使用し、8回の試験の繰り返しから算出して、13.0~15.0GPaである。別の実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体の平均硬度は、ASTM規格C1327に準拠して測定し、0.2kgfの印加荷重を使用し、8回の試験の繰り返しから算出して、約13.5~14.5GPaである。他の実施形態において、本焼結セラミック体の平均硬度は、0.025kgfの印加荷重を使用し、8回の試験の繰り返しから算出して、約14.8GPaであってもよい。
【0166】
機械的強度特性は結晶粒径の低下と共に向上することが知られている。結晶粒径を評価するために、線形切片結晶粒径測定を、ASTM規格El12-2010、「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載のHeyn線形切片手順に準拠して実施した。結晶粒径は、
図20の実施例1に示すようにSEMによっても測定することができ、
図20は結晶粒径が約8um以下であることを示している。200~622mmの大きな部品として反応器チャンバー中で使用するための高曲げ強さ且つ高剛性の要件を満たすためには、本焼結セラミック体の結晶粒径は、例えば、最大結晶粒径で約8um以下、好ましくは最大結晶粒径で6um以下、好ましくは0.4~8um、好ましくは0.4~6um、好ましくは0.4~3um、好ましくは0.8~8um、好ましくは1~8um、好ましくは3~8um、好ましくは5~8um、好ましくは0.8~3um、好ましくは1~2.5umであってよい。表5に、本明細書の実施形態に開示の焼結セラミック体に対する結晶粒径測定の結果を掲載する。
【表5】
【0167】
これらの結晶粒径によって、ASTM C1161-18に準拠して測定した4点曲げ強さが、300MPA以下、好ましくは350MPA以下、好ましくは400MPA以下、好ましくは300~450MPa、好ましくは300~400MPa、好ましくは350~450MPa、好ましくは375~425MPaの焼結セラミック体を得ることができる。表6に、開示される試料006の焼結セラミック体の、機械加工したB型試験棒を使用した4点曲げ強さの測定値を掲載する。径が約20um以上の過大な結晶粒になると、曲げ強さの値が低い(例えば200MPa未満などの)セラミック焼結体が得られる可能性があり、上記の低強度により、上記セラミック焼結体はエッチングチャンバー部品及び蒸着チャンバー部品、特に大寸法の上記部品としての使用に不適となる場合がある。そのため、セラミック焼結体の平均結晶粒径が約10um未満であることが望ましい。
【表6】
【0168】
周波数が高くなると、誘電損失の低い材料を提供することも重要になる。本明細書に開示のセラミック焼結体は、1MHz~1GHzの周波数範囲にわたって、約5×10
-3~1×10
-4以下の特定の用途特異的な範囲内で調整することができる。出発粉末の純度などの材料特性、及び例えば、本焼結セラミック体中のシリカ含有量は誘電損失に影響を与える場合がある。実施形態において、シリカ含有量を低下させることによって、記載した耐食性及び誘電損失の要件を満たす焼結セラミック体が得られる場合がある。本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態は、本明細書に開示のICPMS法を使用して検出されるシリカの形態でのSiが少ない。表7に掲載される焼結セラミック体が含むシリカの量は、本明細書に開示のICPMS法を使用したSiの検出限界の14ppm、及び恐らくそれを下回る量である。表7の焼結セラミック体中にはICPMSを使用してシリカは検出されておらず、したがって、該焼結セラミック体は、すべての構成成分の含有量から計算される焼結体の総質量を基準として、約14ppmの検出限界以上の量のシリカを含む可能性がある。さらに、誘電損失は結晶粒径及び結晶粒径分布の影響を受ける可能性がある。結晶粒径が微細になることで誘電損失が低下し、延いては、より高い周波数での使用時の加熱が低減される可能性がある。これらの材料特性は、半導体加工チャンバー内の特定のコンポーネントの用途に応じて特定の損の失値を満たすように、材料合成を通じて調整することができる。表7は、本明細書に開示の焼結セラミック体の、ASTM D150Mに準拠して測定した、1MHz及び1GHzにおける誘電特性の誘電率及び誘電損失、ならびにASTM D149-09に準拠して測定した絶縁耐力を開示する。
【表7】
【0169】
一実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体の、ASTM D150に準拠して測定した、周囲温度、1MHzの周波数における誘電損失は、5.5×10-3、好ましくは1×10-4未満である。別の実施形態において、本明細書に開示の焼結セラミック体の、ASTM D150に準拠して測定した、周囲温度、1GHzの周波数における誘電損失は、1×10-4未満である。
【0170】
表7に掲載される絶縁耐力は、本焼結セラミック体の全体または該焼結セラミック体の少なくとも一部に高電圧が印加される可能性がある用途にとって重要になる。例えば、製造中に半導体基板の正確な位置を維持するために非常に高い電圧が必要とされる静電チャック用途における焼結セラミック体としての使用では、本焼結セラミック体を通じた絶縁破壊及び関連する導電を防止するために、該焼結セラミック体が高い絶縁耐力を有することが求められる。実施形態において、本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体の絶縁耐力は、11MV/mを超えてもよく、12MV/mを超えてもよく、12.5MV/mを超えてもよい。別の実施形態において、本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体の絶縁耐力は、15MV/m未満であってもよく、14.5MV/m未満であってもよく、14MV/m未満であってもよい。さらなる実施形態において、本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体の絶縁耐力は、10~15MV/mであってもよく、11~15MV/mであってもよく、12~15MV/mであってもよく、11~14.5MV/mであってもよい。
【0171】
ASTM D257に準拠して測定した体積抵抗率を表8に掲載する。周囲温度における約1×10
+12~約10×10
+13の高体積抵抗率を有するそれらのセラミック焼結体は、該セラミック焼結体を使用して、それらから、ウェハチャック、RFウィンドウまたは誘電体窓、シャワーヘッド、及び高い体積抵抗率が求められるその他の部品として有用な焼結セラミック部品を形成すると好ましい場合がある。本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体300℃における体積抵抗率は、1×10
+11~5×10
+12であってよく、500℃における体積抵抗率は、1×10
+9~5×10
+9であってよい。
【表8】
【0172】
酸化イットリウムアルミニウムのファミリーなどの希土類酸化物耐食性材料は、公知のエアロゾルまたはプラズマスプレー技法によりフィルムまたはコーティングとして塗布される場合、通常、高い(概略5%~50%の)レベルの多孔度、延いては低密度を示す。さらに、これらのフィルムまたはスプレーコーティングは、基板材料と該希土類酸化物コーティングとの間の界面接着が不十分である場合がある。上記酸化イットリウムアルミニウムファミリーの少なくとも1種を含み、好ましくは、多孔度のレベルが低い、99体積%以上の立方晶YAG相を含む単斜晶系焼結セラミック体は、プラズマエッチング及び蒸着用途において性能が改善され、半導体加工システムに求められるレベルの広範な清浄化を促進する。これにより、部品の寿命が延長され、プロセスの安定性がより大きくなり、洗浄及び維持管理のためのチャンバーの運転停止期間が短縮される可能性がある。本明細書では、多孔度が最小限であるほぼ高密度または完全に高密度の固体焼結セラミック体が開示される。この多孔度が最小限であることにより、エッチングプロセス及び蒸着プロセス中に本焼結セラミック体の表面に汚染物質が捕捉されることが防止されることによって、粒子の発生を低減することが可能になる場合がある。それに対応して、多孔性を含む表面の面積の割合が小さいことが、小さな径の多孔性及び制御された細孔径分布と相まって、本焼結セラミック体にとって有利である場合がある。本明細書に開示の耐食性焼結セラミック体の密度は非常に高くてもよく、例えば、97%を超え、98%を超え、好ましくは99%を超え、好ましくは99.5%を超えていてもよく、それに対応して、上記焼結セラミック体における体積多孔度は低くてもよく、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であってもよく、これらにより、
図28のa)及びb)、ならびに
図29のa)及びb)に示すように、表面の多孔性の領域の制御、細孔の頻度、及び微細な寸法/小径の多孔性によって耐エッチング性が向上する。
図28のa)及びb)はそれぞれ、本明細書に開示の焼結セラミック体の、割合で表した多孔度及び割合で表した多孔性の面積の累積値を示す。すべての画像を通じて、1umを超える細孔は測定されなかった。
図29のa)は、小さい(約1um以下)寸法の非常に少数の細孔を含むYAG焼結セラミック体の表面を示す。54um×54umの表面積にわたって約22個の細孔が計測された。
【0173】
酸化イットリウムアルミニウムのファミリーの結晶相は、公知の最も耐エッチング性の高い材料の1つである場合があり、出発物質として高純度の出発物質を使用し、非常に高純度、低体積多孔度、及び高密度の焼結セラミック体を製造することにより、焼結セラミック部品に耐エッチング性が付与される。但し、高純度の酸化イットリウムアルミニウムには、半導体エッチングチャンバーに使用するために必要とされる高密度に焼結するという課題がある。高い(98%、99%、または99.5%を超える)密度を達成するためには、多くの場合焼結助剤が必要となることから、焼結温度が高い上記形態の酸化イットリウムアルミニウムの材料特性とプラズマエッチング耐性には、必要な高い純度を維持しながら、高密度/低多孔度に焼結するという課題が生じる。この高純度であることが、純度の低い粉末から製造された部品を他の形態で化学的に攻撃し、表面を粗面化し、且つエッチングする可能性のあるハロゲン系ガス状種によって、焼結セラミック体の表面が粗面化されることを防止する可能性がある。
【0174】
耐食性及び耐侵食性ならびに化学的な不活性を改善するために、出発酸化物粉末の純度は非常に高くてもよく、この高い純度は、本明細書に開示の方法によって維持することができ、それによって焼結酸化イットリウムアルミニウム体及びそれらから形成される関連する部品の純度を高くすることができる。
【0175】
酸化イットリウム出発粉末の総純度は、100%の酸化イットリウムを含む粉末を基準として、99.99%を超え、好ましくは99.999%を超え、好ましくは99.9995%を超え、好ましくは99.9999%を超えていてもよい。
【0176】
酸化アルミニウム出発粉末の総純度は、100%の酸化アルミニウムを含む粉末を基準として、99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは99.999%より高く、好ましくは99.9995%より高くてもよい。
【0177】
本明細書に開示の粉末混合物及び/または焼成粉末混合物の総純度は、それぞれ100%純度のイットリアとアルミナとを含む粉末混合物を基準として、99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは99.999%より高く、好ましくは99.9995%より高く、好ましくは約99.9999%より高くてもよい。
【0178】
本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体の総純度は、本明細書に開示の粉末混合物から形成されたものとして、99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは99.9995%より高くてもよい。混合にジルコニア媒体が使用される実施形態においては、ジルコニアが焼結セラミック体中に存在していてもよく、該焼結体中に存在するジルコニアは、焼結助剤としての使用に由来するものであってもよい。
【0179】
焼結酸化イットリウムアルミニウム体、特にYAG結晶相を含む焼結酸化イットリウムアルミニウム体及びそれらから製造された部品は、出発物質の特性、粉末処理、ならびに以下に開示する製造方法の複合効果から生じる可能性がある、好ましい材料特性の組み合わせを示す場合がある。
【0180】
製造方法
本焼結セラミック体の製造は、直流焼結及び関連する技法と組み合わせた加圧支援焼結を使用することによって実現することができ、上記方法は、直流を使用して導電性ダイ構成またはツールセットを加熱し、それにより材料を焼結させる。この加熱方法が、非常に高い加熱速度及び冷却速度の適用を可能にし、結晶粒成長を促進する拡散機構よりも緻密化機構を増進させ、これが、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の製造を容易にすることができ、元の粉末の固有の特性を、それらの粉末の略または完全に緻密化された生成物に移転させる。本明細書で使用される直流焼結技法は、粉末の固結及び緻密化を容易にするための非パルス化直流電流を含んでいた。
【0181】
焼結セラミック体は、焼結セラミック体の製造方法であって、a)酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む粉末を混合して粉末混合物を作製するステップと、b)焼成温度まで熱を印加し、且つ上記焼成温度を維持することによって上記粉末混合物を焼成して焼成を行い、焼成粉末混合物を形成するステップと、c)上記焼成粉末混合物を、焼結装置のツールセットによって画成される容積内に配置し、且つ上記容積内に真空条件をつくり出すステップと、d)焼結温度に加熱しながら、上記焼成粉末混合物に圧力を印加し、且つ焼結を行って上記焼結セラミック体を形成するステップと、e)上記焼結セラミック体の温度を下げるステップとを含む、上記方法によって製造することができる。以下のさらなるステップ、すなわち、f)上記焼結セラミック体の温度を上昇させて焼鈍温度に到達するように熱を印加することによって上記焼結セラミック体を焼鈍して、焼鈍焼結セラミック体を形成するステップ、g)上記焼鈍焼結セラミック体の温度を下げるステップ、及びh)上記焼結セラミック体または上記焼鈍焼結セラミック体を機械加工して、エッチングチャンバー内の、誘電体窓またはRFウィンドウ、フォーカスリング、ノズルまたはガスインジェクター、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナー、プラズマ源アダプター、ガスインレットアダプター、ディフューザー、静電ウェハチャック、チャック、パック、ミキシングマニフォールド、イオンサプレッサーエレメント、フェイスプレート、アイソレーター、スペーサー、及び/または保護リングなどの焼結セラミック部品を作製するステップは任意選択である。
【0182】
上記焼結セラミック体から形成される耐食性焼結部品の上述の特性は、酸化イトリウム及び酸化アルミニウムの粉末の純度、上記粉末の混合、上記粉末の焼成、圧力を適応させることによって達成される。上記酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの粉末に印加される圧力、上記酸化イトリウム及び酸化アルミニウムの粉末の温度、上記粉末の焼結の継続時間、任意選択の焼鈍ステップ中の上記焼結セラミック体/焼結セラミック部品の温度、ならびに上記任意選択の焼鈍ステップの継続時間を適合させることによって実現される。本明細書に開示の方法は、規模拡大可能な製造プロセスを使用した、セラミック焼結体、特に大寸法のセラミック焼結体の製造に好適である。
【0183】
本明細書に開示の方法は、好ましくは、90~99.9体積%の、組成Y3Al5O12のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を含み、これに代わる実施形態において、90~99.8体積%のYAGと、約0.2~3体積%の量のイットリア及びアルミナの少なくとも1種の結晶相とを含む焼結セラミック体ならびに焼結部品の製造を提供し、いくつかの実施形態において、上記セラミック焼結体及び焼結部品は、組成YAlO3のイットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)及び/または組成Y4Al2O9の単斜晶系イットリウムアルミニウム(YAM)をさらに含んでいてもよい。
【0184】
実施形態において、上述のセラミック焼結体は、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.0001%以上、好ましくは0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上、好ましくは0.0025%以上の量の、任意選択の、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu、ならびにそれらの酸化物及び組み合わせからなる群より選択される希土類酸化物のドーパントを含んで製造されてもよく、上記任意選択のドーパントは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。さらなる実施形態において、上述のセラミック焼結体は、出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.0001%以上、好ましくは0.0005%以上、好ましくは0.0010重量%以上、好ましくは0.0025%以上の量の、任意選択の、LiFの形態のLiのドーパントを含んで製造されてもよく、上記LiFの形態のLiは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。
【0185】
実施形態において、上述のセラミック焼結体は、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.05%以下、好ましくは0.03%以下、好ましくは0.01%以下、好ましくは0.0075%以下、好ましくは0.0050%以下、好ましくは0.0025%以下の量の、任意選択の、Sc、La、Er、Ce、Cr、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、及びLu、ならびにそれらの酸化物及び組み合わせからなる群より選択される希土類酸化物のドーパントを含んで製造されてもよく、上記任意選択のドーパントは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。さらなる実施形態において、上述のセラミック焼結体は、出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.05%以下、好ましくは0.03%以下、好ましくは0.01重量%以下、好ましくは0.0075%、好ましくは0.0050%以下、好ましくは0.0025%以下の量の、任意選択の、LiFのドーパントを含んで製造されてもよく、上記LiFの形態のLiは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。
【0186】
いくつかの実施形態において、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を含む出発粉末を、開示した範囲の任意選択のドーパント及び/または焼結助剤と組み合わせてステップaで使用してもよい。
【0187】
本明細書に開示の代替の実施形態において、上述のセラミック焼結体は、上述のドーパントの少なくとも1種またはすべてを用いずに製造してもよい。特に、化学的不活性ならびに腐食及び侵食に対する耐性を要する半導体チャンバー用途については、本焼結セラミック体はドーパントを含まないことが好ましい場合がある。したがって、特定の実施形態において、本焼結セラミック体は、上述のドーパントの少なくとも1種もしくはすべてを実質的に含まないか、または含まない。
【0188】
本明細書に開示の多結晶焼結セラミック体の製造においては、必要に応じて焼結助剤を使用してもよいが、それらは必須ではなく任意選択である。特定の実施形態において、上述のYAG焼結セラミック体は、ジルコニア、カルシア、マグネシア、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される焼結助剤を含んでいてもよい。これらの焼結助剤は、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.0002%以上、好ましくは0.0005%以上、好ましくは0.0010重量%以上、好ましくは0.0025%以上の量で添加されてもよい。特定の実施形態において、シリカの形態のSiも、任意選択で焼結助剤として使用されてもよく、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)の形態で添加されてもよい。本明細書に開示されるICPMS法を使用して、SiO2の形態のSiが、約14ppm以上のレベルで検出されてもよく、したがって、焼結助剤としてのシリカは、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準として、0.0014%以上、好ましくは0.0025%以上、好ましくは0.0050重量%以上、好ましくは0.0075%以上の量で存在してもよい。
【0189】
特定の実施形態において、上述のYAG焼結セラミック体は、ジルコニア、カルシア、マグネシア、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される任意選択の焼結助剤を含んでいてもよい。上記任意選択の焼結助剤は、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.05%以下、好ましくは0.03%以下、好ましくは0.01%以下、好ましくは0.0075%以下、好ましくは0.0050%以下、好ましくは0.0025%以下の量で存在してもよく、上記任意選択のドーパントは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。
【0190】
シリカの場合、シリカは任意選択で、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)の形態で添加してもよい。上記シリカは、それぞれが出発酸化物粉末の総質量を基準とした重量で表して、0.05%未満、好ましくは0.03%未満、好ましくは0.02%未満、好ましくは<0.01%未満、好ましくは0.050%未満、好ましくは0.025%未満の量で添加されてもよく、シリカは、上記出発粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物中に添加することができる。
【0191】
本明細書に開示の材料及び方法を使用して、高密度、例えば、相純度が高いYAGの理論密度の96%以上を、焼結助剤を使用することなく開示される焼結セラミック体に対して達成することができる。化学的不活性ならびに腐食及び侵食に対する耐性を要する特定の用途については、本焼結セラミック体に、焼結助剤の少なくとも1種、またはすべてが含まれていないことが好ましい場合がある。したがって、実施形態において、本焼結セラミック体は、上述の焼結助剤の少なくとも1種、もしくはすべてを実質的に含まないか、または含まない。さらなる実施形態において、本焼結セラミック体は、ICPMS法を使用して測定された、焼結セラミック体の総質量に対して約14ppmの量のSiO2の形態のSiを含んでいてもよい。
【0192】
実施形態において、90体積%~99.8体積%の多結晶YAGを含む焼結セラミック体は、化学量論的YAGのイットリア及び/またはアルミナを超える過剰なイットリア及び/またはアルミナを含んでいてもよく、上記過剰なイットリア及び/またはアルミナは、プロセスに由来するものであってもよく、または粉末バッチング及び製造中に意図的に添加されてもよい。したがって、上記過剰なイットリア及び/またはアルミナは、それらが本焼結セラミック体中に残留する可能性のある程度では、ドーパントまたは焼結助剤とは見なされない。
【0193】
一実施形態に係る焼結セラミック体及び焼結セラミック部品の特性は、特に、ステップa)粉末の混合、及びb)焼結前の上記粉末混合物の焼成、ステップa)で使用される出発粉末の酸化イットリウム、酸化アルミニウム、及び該当する場合はイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末の純度、粒径及び表面積、ステップa)で使用される出発物質の表面積及び均一性、ステップd)における粉末混合物に対する圧力、ステップd)における粉末混合物の焼結温度、ステップd)の粉末混合物の焼結時間、ステップf)における任意選択の焼鈍ステップ中の焼結セラミック体または部品の温度、ならびにステップf)における任意選択の焼鈍ステップの継続時間を適合化することによって実現される。実施形態において、開示されるプロセスは、密度が高い(98%を超える)、純度が高い、且つ多孔度が低い、立方晶構造の相純度が非常に高い(99体積%を超える)YAGの製造を提供する。これに代わる実施形態において、開示されるプロセスは、立方晶構造の相純度が非常に高く(95体積%以上)、アルミナの第2の結晶相が5体積%以下であるYAGの製造を提供し、上記焼結体も密度が高く、純度が高く、且つ多孔度が低い。さらなる実施形態において、上記開示されるプロセスは、好ましくは、純度が高く、密度が高く、且つ多孔度が低い、イットリウムアルミニウムガーネット、Y3Al5O12(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイトYAlO3(YAP)、及び/または単斜晶系イットリウムアルミニウムY4Al2O9(YAM)、ならびにそれらの組み合わせの混合相ならびに/あるいは相純度が高いセラミック焼結体の製造を提供する。開示される焼結セラミック体は、半導体製造装置などのプラズマ加工装置での使用に特に好適である。かかる部品または部材としては、とりわけ、窓、ノズル、ガスインジェクター、シャワーヘッド、(エッチング)チャンバーライナー、ミキシングマニフォールド、ウェハサポート、ならびにフォーカスリング及び保護リングなどの種々のリングを挙げることができる。
【0194】
本明細書に開示の方法のステップa)は、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む粉末を混合して粉末混合物を作製することを含む。耐食性焼結セラミック体及びそれに続いて部品を形成するための酸化アルミニウム及び酸化イットリウム(または、特定の実施形態において、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末)の出発粉末物質は、好ましくは高純度の市販の粉末である。但し、他の酸化物粉末、例えば、化学合成プロセス及び関連する方法から製造された酸化物粉末を使用することもできる。出発粉末の、比表面積(SSA)及び粒径などの粉末の特徴を測定した。以下に開示するように、d50は中央値として定義され、当該集団の半数がこの点よりも上に存在し、半数がこの点の下に存在する値を表す。同様に、d90よりも下に当該の分布の90パーセントが位置し、当該集団の10パーセントがd10よりも下に位置する。
【0195】
本発明の一実施形態に係る出発物質として使用される酸化イットリウム粉末のd10粒径は、好ましくは1~7μm、好ましくは1~6μm、好ましくは1~5μm、好ましくは2~7μm、好ましくは3~7μm、好ましくは4~7μm、好ましくは5~7μmである。
【0196】
本発明の一実施形態に係る出発物質として使用される酸化イットリウム粉末のd50粒径は、好ましくは3~11μm、好ましくは3~9.5μm、好ましくは3~8.5μm、好ましくは3~7.5μm、好ましくは4~11μm、好ましくは5~11μm、好ましくは6~11μm、好ましくは7~11μmである。
【0197】
本発明の一実施形態に係る出発物質として使用される酸化イットリウム粉末のd90粒径は、好ましくは6~20μm、好ましくは6~18μm、好ましくは6~16μm、好ましくは8~20μm、好ましくは10~20μm、好ましくは15~20μm、好ましくは8~18μm、好ましくは10~18μmである。
【0198】
上記酸化イットリウム粉末の比表面積(SSA)は、通常0.75~12m2/g、好ましくは0.75~10m2/g、好ましくは0.75~8m2/g、好ましくは0.75~6m2/g、好ましくは0.75~4m2/g、好ましくは0.75~2m2/g、好ましくは1~6m2/g、好ましくは1~4m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは6~10m2/g、好ましくは1~4m2/gである。
【0199】
上記酸化イットリウム出発物質の純度は、それぞれ酸化イットリウム出発物質の総質量を基準として、好ましくは99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは99.999%より高く、より好ましくは99.9995%より高く、より好ましくは99.9999%より高い。これは、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは約1ppm、好ましくは1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは1~25ppm、好ましくは1~10ppm、好ましくは1~5ppmの不純物レベルに相当する。
【0200】
本発明の一実施形態に係る出発物質として使用される酸化アルミニウム粉末のd10粒径は、好ましくは0.05~4μm、好ましくは0.05~3μm、好ましくは0.05~2μm、好ましくは0.05~1μm、好ましくは0.05~0.75μm、好ましくは0.05~0.5μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.2~3μm、好ましくは0.2~2μm、好ましくは0.2~1μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.4~3μm、好ましくは0.4~2μm、好ましくは0.4~1μm、好ましくは0.75~2μm、好ましくは0.75~3μm、好ましくは1~3μm、好ましくは2~3μmである。
【0201】
一実施形態に係る出発物質として使用される酸化アルミニウム粉末のd50粒径は、通常、0.15~8μm、好ましくは0.15~5μm、好ましくは0.15~3μm、好ましくは0.15~1μm、好ましくは0.15~0.5μm、好ましくは1~8μm、好ましくは1~6μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~8μm、好ましくは4~8μm、好ましくは5~8μm、好ましくは3.5~6.5μmである。
【0202】
本発明の一実施形態に係る出発物質として使用される酸化アルミニウム粉末のd90粒径は、0.35~60um、好ましくは0.35~10um、好ましくは0.35~5μm、好ましくは0.35~3μm、好ましくは0.35~1μm、好ましくは0.35~0.75μm、好ましくは3~80um、好ましくは3~60μm、好ましくは3~40μm、好ましくは3~20μm、好ましくは10~60μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~30μm、好ましくは10~20μm、好ましくは30~60μm、好ましくは15~60μm、好ましくは40~60μm、好ましくは6~15μmである。
【0203】
上記酸化アルミニウム粉末の比表面積は、通常3~18m2/g、好ましくは3~16m2/g、好ましくは3~14m2/g、好ましくは3~12m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは3~6m2/g、好ましくは6~18m2/g、好ましくは6~14m2/g、好ましくは8~18m2/g、好ましくは10~18m2/g、好ましくは8~10m2/g、好ましくは4~9m2/g、好ましくは5~10m2/g、好ましくは6~8m2/gである。
【0204】
上記酸化アルミニウム出発物質のICPMS法を使用して測定した純度は、通常99.99%より高く、好ましくは99.995%より高く、好ましくは99.999%より高く、好ましくは99.9995%より高い。それに対応して、上記アルミナ粉末の不純物含有量は、それぞれ酸化アルミニウム出発物質の総質量を基準として、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であってよい。
【0205】
本明細書に開示のイットリア及びアルミナの出発粉末は好ましくは結晶性であり、それにより、長距離にわたる結晶学的秩序を有する。本明細書に開示の例示的な結晶性酸化イットリウム及び酸化アルミニウム出発粉末のX線回折パターンを、それぞれ
図15のa)及びb)に示す。実施形態において、
図15のb)に示す酸化アルミニウム粉末は、好ましくは80~少なくとも95体積%のアルファアルミナ結晶相、好ましくは90~少なくとも95体積%のアルファアルミナ結晶相、好ましくは約95体積%のアルファアルミナ結晶相を含んでいてもよい。
【0206】
イットリア及びアルミナの出発粉末のいずれかまたは両方に、当業者に公知の方法に従って、ふるい分け、転倒混合、配合、粉砕などを行ってもよい。いくつかの実施形態において、上記イットリア及び/またはアルミナの出発粉末を、任意選択で、本明細書に開示の粉末特性を得るために、当業者に公知の方法に従って焼成してもよい。
【0207】
ナノ粉末などの比表面積(SSA)が大きい出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物、例えばSSAが20m2/gを超えるナノ粉末では、ツールセットに粉末を充填する際の取扱い性、粉末の混合(combination)/混合(mixing)中の均一な粒子の分散及び混合の達成、ならびに本明細書に開示されるインシチュでの反応性焼結法に際してのYAG相の形成に問題が生じる。本明細書に開示の方法に係る出発粉末はイットリア及びアルミナを含み、好ましくは、その比表面積は本明細書において規定されるナノ粉末の比表面積よりも小さい。当業者に公知の体積混合律及び本明細書に開示されるイットリア及びアルミナ出発粉末の範囲を使用して、上記粉末混合物(焼成前)のSSAは、好ましくは約1m2/g~約13m2/g、好ましくは約2m2/g~約10m2/g、好ましくは約3m2/g~約8m2/gである。イットリア及びアルミナの出発粉末の表面積が本明細書に開示される範囲内であることによって、その後に、焼結中のインシチュでの反応を十分に駆動して、YAG相を優先的に形成することができる範囲内の比表面積を有する焼成粉末混合物が容易に形成される。上記イットリア及びアルミナの出発粉末のSSAは、好ましくは0.75~18m2/gである。実施形態において、本明細書に開示の方法に係る出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の比表面積(SSA)は、本明細書で定義されるナノ粉末のSSAよりも小さく、したがって、上記出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物は、本明細書で定義されるナノ粉末を実質的に含まないか、または含まない。
【0208】
比表面積が約0.5m2/g未満である出発粉末では、凝集の問題が生じ、混合して本明細書に開示の粉末混合物を形成するために、より高いエネルギー及びより長い混合時間を要する場合がある。上記酸化イットリウム及び酸化アルミニウムの出発粉末の粒径分布及び比表面積が本明細書に開示されるものであることにより、本明細書に開示の方法のステップa)粉末の混合中の取扱い性は十分となり、且つ混合も完全になる。
【0209】
実施形態において、出発物質/粉末として使用される上記イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末のd50粒径は、通常3~10μm、好ましくは4~9μm、より好ましくは5~8μmである。上記イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末の比表面積は、通常3~10m2/g、好ましくは3~8m2/g、より好ましくは4~6m2/gである。上記イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末の出発物質の純度は、通常99.99%より高く、好ましくは99.999%より高い。
【0210】
特定の実施形態において、99体積%を超える相純度のYAG焼結体の形成は、出発粉末のイットリア及びアルミナ粒子の径の分布、純度、表面積、混合ステップ及び焼成ステップによって影響を受ける可能性がある。
【0211】
表9に、開示された、YAGを含む焼結体を形成するための出発粉末の特性を掲載する。上記出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の粒径は、10nm~5mmの粒径を測定することができるHoriba LA-960型レーザー散乱粒径分布アナライザーを使用して測定した。上記出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の比表面積は、ほとんどの試料について、0.01~2000m
2/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoriba BET表面積アナライザーSA-9601型を使用して測定した。
【表9】
【0212】
実施形態において、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)ガーネット立方晶相(Y3Al5O12)を含む本焼結セラミック体は、37.5モル%の酸化イットリウムと62.5モル%の酸化アルミニウムとの化学量論的粉末混合物から形成することができる。“Mechanisms of nonstoichiometry in Y3Al5O12” Patel et al, 2008, Appl. Phys. Lett. 93, 191902 (2008)で報告された研究は、YAG相を形成するための相ドメインの幅の変動が0.1モル%以下である可能性があることを示している。したがって、化学量論的YAG(37.5%のアルミナ/62.5%のイットリア)の相ドメインの幅からのずれが0.1モル%以下の場合は、相純度が高い酸化イットリウムアルミニウムガーネットが形成している可能性がある。したがって、実施形態において、99体積%を超える量のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)ガーネット立方晶相(Y3Al5O12)を含む焼結セラミック体は、37.4~37.6モル%の酸化イットリウムと62.6~62.4モル%の酸化アルミニウムの比率の粉末混合物へと配合された出発粉末から形成することができる。粉末混合物を、約42.9~43.4重量%のアルミナと57.1~56.6重量%のイットリアから形成して、最大で99.9体積%のYAGを形成することができる。実施形態において、イットリア及び/またはアルミナの過剰な出発物質を、所望の通りに粉末混合物に含めてもよい。任意選択で、ドーパント及び/または焼結助剤を上記粉末混合物に添加してもよい。
【0213】
上述の酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む出発粉末を混合して粉末混合物を作製することは、湿式または乾式のボール(軸回転)ミリング、湿式または乾式の転倒(前方への転倒、すなわち垂直)混合、ジェットミリング、及びこれらの組み合わせの粉末製造技法を使用して実施することができる。
【0214】
乾式条件を使用し、好ましい実施形態において、YAG相を形成するための相対量で秤量してもよい出発粉末を、混合中に上記出発粉末の純度を維持するために高純度(99.9%を超える)アルミナ媒体を使用して、ボールミル粉砕するかまたは転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合してもよい。他の実施形態において、硬い凝集物を解砕するためにジルコニア媒体を使用してもよい。上記高純度アルミナ媒体を、本明細書に開示のICPMS法を使用して試験し、純度が99.9~約99.99%であることが判明した。ジルコニア媒体を使用すると、焼結セラミック体中に微量の、例えば100ppm未満のジルコニアが混入する場合がある。したがって、特定の実施形態において、本明細書では、すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは10~100ppm、好ましくは10~50ppm、より好ましくは20~40ppmの量のジルコニアを有する、相純度が高いYAGを含む焼結セラミック体が開示される。乾式ボールミル粉砕を実施するために使用される媒体の寸法の範囲は、例えば直径5~15mmであってよく、該媒体は粉末の重量の約50~約100%の充填量で加えられる。乾式転倒混合を実施するために使用される媒体は、大きな寸法(直径約20~40mm)の少なくとも1種の媒体エレメントを備えていてもよい。乾式ボールミル粉砕及び/または乾式転倒混合は、12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは16~24時間、好ましくは18~22時間の期間実施してもよい。乾式ボールミル粉砕または転倒粉砕プロセスは、それぞれ直径約200mmの容器の場合に、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPMを使用してもよい。RPMは、使用目的に対して選択された容器の寸法に応じて変化する場合があり、したがって、直径が200mmを超える容器は、当業者に公知の通り、それに対応してより低いRPMとしてもよい。乾式転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合は、10~30rpm、好ましくは約20RPMのRPMで実施してもよい。乾式ボールミル粉砕及び/または転倒(end-over-end)/転倒(tumble)粉砕/混合の後に、上記粉末混合物を、任意選択で、繰り返しまたは順序に関して制限を受けることなく、例えば45~400umの開口部を有していてもよい任意の数のメッシュを使用してふるい分けし、配合してもよい。
【0215】
湿式ボールミル粉砕または湿式転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合は、好ましい実施形態において、YAG相を形成する相対量で秤量してもよい出発粉末を、エタノール、メタノール、及び他のアルコールなどの種々の溶媒中に懸濁させ、スラリーを形成することによって実施することができる。いずれのプロセスにおける上記スラリーも、粉砕または混合中に、25~75重量%、好ましくは40~75重量%、好ましくは50~75重量%の粉末充填量で形成することができる。湿式ボールミル粉砕または転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合は、移動度の上昇により粉末の分散を改善し、熱処理または焼成前の微細なスケールで均一に混合を行うことができる。実施形態において、任意選択で、分散剤を、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)及びポリビニルピロリドン(PVP)、ならびに当業者に公知の他の分散剤などの任意の数の市販の分散剤を使用して、上記スラリーに添加してもよい。上記分散剤は、任意選択で、粉末重量に対して0.05~0.2%、好ましくは粉末重量に対して0.05~0.1%の量で添加することができる。湿式ボール混合または湿式転倒(tumble)/転倒(end-over-end)混合のいずれかの場合の媒体充填量は、粉末重量に対して30~100%、好ましくは粉末重量に対して30~75%、好ましくは粉末重量に対して30~60%の充填量で変化させてもよい。湿式ボールミル粉砕または転倒混合は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは16~24時間、好ましくは12~24時間の期間実施してもよい。ボールミル粉砕は、それぞれ直径約200mmの容器の場合に、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPMを使用してもよい。RPMは、使用目的に対して選択された容器の寸法に応じて変化する場合があり、直径が200mmを超える容器は、当業者に公知の通り、それに対応してより低いRPMとしてもよい。湿式転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合は、10~30rpm、好ましくは約20RPMのRPMで実施してもよい。湿式ボールミル粉砕及び/または湿式転倒(end-over-end)/転倒(tumble)混合の後に、上記粉末混合物を、任意選択で、繰り返しまたは順序に関して制限を受けることなく、例えば45~400umの開口部を有していてもよい任意の数のメッシュを使用してふるい分けし、配合してもよい。
【0216】
当業者に公知のジェットミリングプロセスを使用して、上記粉末を完全に混合して、粒径分布の狭い粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物を形成することもできる。ジェットミリングは、不活性ガスまたは空気のいずれかの高速ジェットを使用して、粉砕媒体または混合媒体を使用せずに、出発粉末及び/または粉末混合物及び/または焼成粉末混合物の粒子を衝突させ、したがって、粉砕される粉末の初期純度を維持する。チャンバーは、より大きな粒子の径を優先的に小さくすることができるように設計されていてもよく、これにより、最終的な粉末、粉末混合物、または焼成粉末混合物の粒径分布を狭くすることができる。粉末は、処理前の機械の設定で決定された所望の粒径に達したところでジェットミリングチャンバーを出る。本明細書に開示の出発粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物は、独立にであるか、または本明細書に開示の粉末粉砕/混合プロセスのいずれかもしくはすべてとの組み合わせであるかを問わず、約100psiの圧力においてジェットミリングに供されてもよい。ジェットミリング後に、上記粉末または粉末混合物を、任意選択で、繰り返しまたは順序に関して制限を受けることなく、例えば45~400umの開口部を有していてもよい任意の数のメッシュを使用してふるい分けし、配合してもよい。
【0217】
湿式もしくは乾式ボールミル粉砕、湿式もしくは乾式転倒(tumble)/転倒(end-over-end)混合、及び/またはジェットミリングの使用は、粒子及び凝集物を解砕し、粒子の移動度の上昇により分散を改善し、微細なスケールで混合を行う高エネルギープロセスであり、該プロセスによって、焼成前及び後に均一な粉末混合物を提供することができる。上述の粉末製造方法は、独立にまたは互いに組み合わせて使用することができる。摩擦粉砕、高剪断混合、遊星粉砕、及び当業者に公知の他の手順のさらなる粉末製造手順も、独立にであるか、または本明細書に開示の上記粉末混合/粉砕方法との組み合わせであるかを問わず、用いることができる。
【0218】
湿式の混合または粉砕プロセスが使用される場合、当該スラリーは、当業者に公知の、乾燥するスラリーの容積に応じて1~4時間の期間の、例えば、約40℃~90℃の温度での回転蒸発法によって乾燥してもよい。他の実施形態において、上記スラリーは、当業者に公知の噴霧乾燥技法を使用して乾燥してもよい。乾燥後に、上記粉末混合物を、任意選択で、繰り返しまたは順序に関して制限を受けることなく、例えば45~400umの開口部を有するメッシュを使用してふるい分けしてもよい。上述の粉末製造技法は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。
【0219】
乾燥後に、ステップaの粉末混合物の表面積は、2~17m2/g、2~14m2/g、2~12m2/g、2~10m2/g、4~17m2/g、6~17m2/g、8~17m2/g、10~17m2/g、4~12m2/g、4~10m2/g、5~8m2/gであってもよい。
【0220】
上記粉末混合物の純度は、高純度の粉砕媒体、例えば純度99.99%以上の酸化アルミニウム媒体を使用することにより、出発物質の純度から、混合/粉砕した後でも維持することができる。実施形態において、酸化ジルコニウム粉砕媒体を使用することが好ましい場合があり、それにより酸化ジルコニウムが、15~100ppm、15~75ppm、好ましくは15~60ppm、好ましくは20~30ppmの量で焼結セラミック体中に残留する程度まで導入される場合がある。
【0221】
本明細書に開示の方法のステップb)は、上記粉末混合物を焼成温度に加熱し、且つ上記焼成温度をある期間維持して焼成粉末混合物を形成することを含む。本明細書に開示される焼成は、酸素を含有する環境中、周囲圧力下で実施してもよい。但し、他の圧力及び焼成環境を使用してもよい。
【0222】
水分を除去し、焼結前に上記粉末混合物の表面状態が均一であることを確保するために焼成を実施してもよい。特定の実施形態において、表面積を低減するために焼成を実施してもよい。他の実施形態において、焼成によって出発粉末の表面積は低下しない。
【0223】
熱処理ステップによる粉末混合物の焼成は、600℃~1100℃、好ましくは600~1050℃、好ましくは600~1000℃、好ましくは700~1100℃、好ましくは800~1100℃、好ましくは800~1050℃、好ましくは900~1100℃、好ましくは1000~1100℃の温度で実施してもよい。焼成は、酸素を含有する環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは4~6時間実施してもよい。上記粉末混合物及び/または焼成粉末混合物を、任意選択で、例えば45~400umの開口部を有するメッシュを使用してふるい分けしてもよく、公知の方法によって実施して、繰り返しまたは順序に関して制限を受けることなく、転倒混合し且つ/または混合し且つ/または配合しても、それらの組み合わせを行ってもよい。転倒混合及び/または配合及び/または混合は、本明細書に開示の高純度(99.9%を超える)アルミナ媒体、ジルコニア媒体を使用して、または公知の方法に従って媒体を使用せずに、上記粉末混合物及び/または焼成粉末混合物に対して実施してもよい。
【0224】
焼結時に優先的にYAG相を形成する比率で配合した焼成粉末混合物のd10粒径は、好ましくは0.06~4μm、好ましくは0.08~4μm、好ましくは0.1~4μm、好ましくは0.2~4μm、好ましくは0.3~4μm、好ましくは0.4~4μm、好ましくは0.08~3μm、好ましくは0.08~2μm、好ましくは0.08~1μm、好ましくは0.5~3μm、好ましくは1~2μm、好ましくは1~3μmであってよい。
【0225】
上記焼成粉末混合物のd50粒径は、0.7~50μm、好ましくは1~40μm、好ましくは1~30μm、好ましくは1~20μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μm、好ましくは5~50μm、好ましくは10~50μm、好ましくは20~50μm、好ましくは30~50μm、好ましくは3~8μm、好ましくは5~10μm、好ましくは6~15μmで変化してもよい。
【0226】
上記焼成粉末混合物のd90粒径は、好ましくは10~350μm、好ましくは10~300μm、好ましくは10~250μm、好ましくは10~200μm、好ましくは10~175μm、好ましくは10~150μm、好ましくは10~100μm、好ましくは10~75μm、好ましくは10~50μm、好ましくは10~40μm、好ましくは10~30μm、好ましくは15~45μm、好ましくは20~40μm、好ましくは20~350μm、好ましくは40~350μm、好ましくは60~350μm、好ましくは100~350μm、好ましくは150~350μm、好ましくは200~350μm、好ましくは12~330um、好ましくは100~330μm、好ましくは100~250μmであってよい。
【0227】
特定の実施形態において、本明細書に開示の焼成条件により、YAP、YAM、及びYAG、ならびにそれらの組み合わせの1種以上の結晶相が形成され、且つ/または上記粉末混合物が凝集し、したがって粒径または凝集体の径が広範囲になる場合がある。したがって、実施形態において、本明細書で言及する粒径は単一の粒子を含んでいてもよく、他の実施形態において、本明細書で言及する粒径は複数の粒子を含む凝集体、または本明細書に開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定される場合がある多数の粒子の凝集を含んでいてもよい。単一の粒子または多数の粒子の凝集体のいずれかまたは両方を含む粒子は、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、単斜晶系イットリウムアルミニウム(YAM)、YAG(ガーネット)相、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含んでいてもよい。他の実施形態において、本明細書に開示の低温焼成条件は、出発物質と比較して粒径分布に影響を及ぼさない場合があり、粒径分布は出発粉末物質と同一範囲内であるかまたは出発粉末物質に類似する。ロット間の変動及び焼成中の伝熱の管理も粒径分布の拡大の一因となる場合がある。本明細書に開示の出発粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、本明細書に開示の混合/粉砕プロセスのいずれか1つまたは組み合わせに供してもよい。したがって、広範囲の粒径分布は、本明細書に開示の焼成条件及び焼成プロセスに由来する場合がある。
【0228】
上記出発粉末の比表面積(SSA)は、当業者に公知のBET法を使用して測定することができる。上記焼成粉末混合物の比表面積は、2~12m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは4~12m2/g、好ましくは6~12m2/g、好ましくは8~12m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは6~10m2/g、好ましくは8~10m2/g、好ましくは3~9m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは4~8m2/g、好ましくは4~6m2/gであってよい。
【0229】
表10は、本明細書に開示され、YAGを含む焼結セラミック体を形成するために使用される軸混合法または転倒(tumble)/転倒(end over end)混合法のいずれかを使用し、湿式ボールミル粉砕プロセスによって作製された焼成粉末混合物に関する、本明細書に開示のレーザー粒径法及びBET法ならびに装置によって測定した粒径及び比表面積(SSA)特性の範囲を掲載する。
【表10】
【0230】
粉末286中のジルコニアは、塩化ジルコニルの添加によって得られ、ジルコニア粉末615は、実施例15に記載のジルコニア媒体を使用する混合プロセスの結果であった。
【0231】
本明細書に開示の焼成粉末混合物及びセラミック焼結体の相の同定は、約±5%の範囲の結晶相の同定が可能なPANanlytical Aeris型XRDを使用して実施した。実施形態において、焼成条件の温度及び継続時間に応じて、焼成により、出発粉末から存在する酸化イットリウム及び酸化アルミニウムを含む焼成粉末混合物を得ることができる。他の実施形態において、より高温の焼成条件により、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、及びYAM(単斜晶系)相からなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含む焼成粉末混合物を得ることができる。他の実施形態において、より高温の焼成条件により、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、YAM(単斜晶系)相、及びYAP相からなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含む焼成粉末混合物を得ることができる。これに代わる実施形態において、より高温の焼成条件により、YAM(単斜晶系)相及びYAP(ペロブスカイト)相からなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含む焼成粉末混合物を得ることができ、さらなる実施形態において、より高温の焼成条件により、YAP(ペロブスカイト)相及び/またはYAG(ガーネット)相を含む焼成粉末混合物を得ることができ、ここで、上記YAG相は、10体積%未満、好ましくは8体積%未満、好ましくは5体積%未満の量で存在していてもよい。酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、単斜晶系イットリウムアルミニウム(YAM)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つ種の結晶相を含んでいてもよい。他の実施形態において、上記焼成粉末混合物は、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、単斜晶系イットリウムアルミニウム(YAM)、及びYAG(ガーネット)相からなる群より選択される少なくとも1種の結晶相を含んでいてもよく、ここで、上記YAG相は、10体積%未満、好ましくは8体積%未満、好ましくは5体積%未満の量で存在していてもよい。上記粉末混合物の焼成により、好ましくは結晶性であり、本明細書に開示の1種以上の結晶相を含む焼成粉末混合物が生成することとなる。
【0232】
表11に、本明細書に開示の好ましい実施形態に係る焼成条件、X線回折(XRD)によって測定した結晶相、及び焼成粉末混合物の純度を掲載する。本明細書に開示するすべての純度測定値は、特定の元素の報告限界を超える値で測定されたものであり、Agilent 7900 ICP-MS G8403型のICP-MSを使用して実施した。本明細書に開示のICPMSを使用した、原子量がSc以下の元素などのより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、より重い元素の報告限界(約0.14ppm以下である場合が多い)よりも一般に高く、約1.4ppm以下である。特に、Siを検出するために本明細書に開示のICPMS法を使用する場合は、約14ppm以上の信頼範囲内で同法を実施することができる。したがって、上記出発粉末、粉末混合物、焼成粉末混合物、及び焼結セラミック体は、約14ppmの量のシリカを含んでいてよい。シリカの形態のSiは、本明細書に開示の出発粉末、焼成粉末混合物、及び焼結セラミック体の純度または不純物含有量には含めず、Siが検出されない場合であっても、上記Siは約14ppm以上であると見なすことができる。
【表11】
【0233】
本明細書の開示によれば、90体積%を超える量のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体は、開示される焼成粉末混合物の粒径分布、純度、及び/または表面積の特性の組み合わせを目的として、焼結ステップ中のインシチュでの反応性焼結によって形成させてもよい。特定の実施形態において、上記焼成粉末混合物は、10体積%未満のYAG、好ましくは8体積%未満のYAG、好ましくは5体積%未満のYAGを含むことが好ましい場合があり、他の実施形態において、本明細書では、YAG相を含まないか、または実質的に含まない焼成粉末混合物が開示される。他の実施形態において、上記焼成粉末混合物の比表面積は2m
2/gを超えることが好ましい場合がある。他の実施形態において、本明細書に開示されるインシチュでの反応性相焼結プロセスによって、YAGを含む焼結セラミック体を形成するためには、上記焼成粉末混合物が、比表面積が2m
2/g以上であるYAG相を含まないことが好ましい。表12に、本開示によれば好ましくない焼成粉末混合物の特性を掲載する。
【表12】
【0234】
本明細書に開示の方法を使用して、焼成粉末混合物127を1500℃及び30MPaの圧力で30分間焼結して、150mmの最大寸法のYAG焼結セラミック体を形成した。ASTM B962-17に準拠したアルキメデス法を使用して、5回の繰り返しにわたり平均密度が3.895g/ccと測定され、これはYAGの理論密度の85.5%に相当していた。
【0235】
焼成粉末混合物092-1を1550℃及び30MPaの圧力で30分間焼結して、150mmの最大寸法のYAG焼結セラミック体を形成した。ASTM B962-17に準拠したアルキメデス法を使用して、5回の繰り返しにわたり平均密度が4.094g/ccと測定され、これはYAGの理論密度の89.9%に相当していた。
【0236】
焼成粉末混合物125-1を1500℃及び30MPaの圧力で30分間焼結して、150mmの最大寸法のYAG焼結セラミック体を形成した。ASTM B962-17に準拠したアルキメデス法を使用して、5回の繰り返しにわたり平均密度が4.400g/ccと測定され、これはYAGの理論密度の96.5%に相当していた。したがって、表12の焼成粉末混合物の特性、特にSSAの減少、及びそれによる焼結の駆動力の低下によって、本明細書に開示の、プラズマ加工チャンバー中の耐食性焼結セラミック部品として使用するための要件を満たすには許容されない可能性がある低密度の焼結セラミック体が生成した。
【0237】
したがって、本明細書に開示の焼成粉末混合物は、2~12m2/g、好ましくは2~10m2/gの比表面積を有し、且つ、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、YAP、YAM及び、YAGであって、該YAG相がXRDによって測定して約10体積%未満の量で存在する上記YAG、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の結晶相をさらに含んでいてもよい。
【0238】
本明細書に開示の方法のステップc)は、焼結装置のツールセットによって画成される容積内に上記焼成粉末混合物を配置し、上記容積内に真空条件をつくり出すことを含む。一実施形態に係るプロセスで使用される焼結装置は、通常、容積と第1及び第2の開口部とを有し、第1及び第2のパンチをさらに備える円筒形のグラファイトダイであるグラファイトダイを少なくとも備えるツールセットを備える。上記第1のパンチを上記ダイの第1の開口部内に移動させ、上記焼成粉末混合物を上記ダイの第2の開口部内に配置し、第2のパンチをダイの第2の開口部内に移動させ、それにより焼成粉末混合物を焼結装置の上記ツールセットによって画成される容積内に配置する。少なくとも1種の焼成粉末混合物を焼結装置のダイ中に充填してもよい。当業者に公知の真空条件が、ツールセットによって画成された容積内に確立される。通常の真空条件としては、10-2~10-3トールの圧力が挙げられる。上記真空は、主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護し、空気の大部分を粉末から除去するために印加される。本明細書に開示の方法は、拡張可能であり、且つ工業的製造方法に適合するセラミック焼結体及び/または焼結セラミック部品の製造方法を提供する。この方法は、焼結助剤、焼結前の未処理体の冷圧、成形、または機械加工を必要とせずに、市販の粉末であり且つ/または化学合成技法から製造された、平均粒径分布がミクロンサイズである粉末を利用する。
【0239】
開示される方法のステップd)は、焼結温度に加熱しながら上記焼成粉末混合物に圧力を印加し、焼結を実施して焼結セラミック体を形成することを含み、ステップe)は、焼結装置への熱源を除去し、上記焼結セラミック体を冷却することによって、上記焼結セラミック体の温度を下げることを含む。圧力が、5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~40MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは5MPa~15MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、好ましくは10MPa~30MPa、好ましくは10MPa~20MPa、好ましくは13MPa~18MPa、好ましくは15MPa~60MPa、好ましくは15MPa~40MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは20~40MPaの範囲にわたって、ツールセットによって画成された容積内に配置された焼成粉末混合物に対して印加される。上記圧力はダイ中の粉末混合物に対して軸方向に印加される。
【0240】
好ましい実施形態において、上記粉末混合物は、焼結装置のパンチ及びダイによって直接加熱される。上記ダイは、抵抗加熱/ジュール加熱を促進する、グラファイトなどの導電性材料から構成されてもよい。焼結装置及び手順はUS2010/0156008A1に開示され、上記特許文献は本明細書に援用される。
【0241】
本開示にかかる焼結装置の温度は、通常、該装置のグラファイトダイ内で測定される。それにより、上記温度は、処理される焼成粉末混合物に可能な限り近接したところで測定し、その結果、示された温度が、焼結される焼成粉末混合物内で実際に実現されることが好ましい。
【0242】
ダイ中に供給される粉末混合物に対する上記熱の印加により、1000~1700℃、好ましくは1200~1700℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1500~1700℃、より好ましくは1600~1700℃、好ましくは1400~1650℃、好ましくは1500~1650℃、好ましくは1400~1600℃、好ましくは1500~1600℃の焼結温度に容易に達する。焼結は、通常、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは80~100分、好ましくは850~95分、好ましくは15~45分の等温時間で実現することができる。特定の実施形態において、焼結は、等温時間ゼロで実現することができ、焼結温度に達すると、本明細書に開示される冷却速度が開始される。プロセスステップe)において、上記焼結セラミック体は、熱源の除去によって受動的に冷却される。焼結セラミック体を容易に取り扱える温度に到達するまで、及び任意選択の焼鈍プロセスの開始まで、自然対流が起こる。
【0243】
焼結中には通常体積減少が起こり、その結果、焼結セラミック体は、焼結装置のツールセット中に配置されたときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を含む場合がある。
【0244】
一実施形態における圧力及び温度の印加の順序は本開示に従って変化してもよく、このことは、最初に開示される範囲内の圧力を印加し、その後に所望の温度を実現するための熱を印加することが可能であることを意味する。さらに、他の実施形態において、最初に示された熱を印加して所望の温度を実現し、その後に示された圧力を印加することも可能である。本開示に係る第3の実施形態において、温度及び圧力は、焼結される焼成粉末混合物に同時に印加され、温度及び圧力の示された値に達するまで上昇させる。いくつかの実施形態において、上記印加される圧力は、本明細書に開示の焼結温度までの少なくとも1つの温度まで上記焼成粉末混合物を加熱しながら、変化させてもよい。
【0245】
誘導加熱法または放射加熱法を使用して焼結装置を加熱し、且つツールセット中の上記焼成粉末混合物を間接的に加熱することもできる。
【0246】
他の焼結技法とは対照的に、焼結前の試料の調製、すなわち、焼結前の未処理体の冷圧または成形による必要はなく、焼成粉末混合物は、焼結装置のツールセットによって画成される容積中に直接配置される。この粉末混合物の取扱い工程数が少なくなることにより、最終的な焼結セラミック体の純度をより高くすることができる。
【0247】
他の焼結技術とはさらに対照的に、焼結助剤は不要である(但し、必要な場合には焼結助剤を使用することもできる)。さらに、最適なエッチング性能を得るには、高純度の出発粉末が望ましい。焼結助剤を使用しないこと、及び本明細書に開示される99.99%~約99.9999%の純度の高純度出発物質を使用することによって、高純度、高密度/低多孔度の焼結セラミック体の製造が可能になり、これにより半導体エッチングチャンバー中の焼結セラミック部品として使用するためのエッチング耐性が改善される。
【0248】
本発明の一実施形態において、プロセスステップd)は、0.1℃/分~100℃/分、0.1℃/分~50℃/分、0.1℃/分~25℃/分、好ましくは0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5~25℃/分、好ましくは0.5~10℃/分、好ましくは0.5℃/分~5℃/分、好ましくは1~10℃/分、好ましくは1~5℃/分、好ましくは2~5℃/分の少なくとも1つの昇温勾配での、特定の予備焼結時間に達するまでの予備焼結ステップをさらに含んでいてもよい。
【0249】
本発明のさらなる実施形態において、プロセスステップdは、0.15~30MPa/分、0.15~20MPa/分、0.15~10MPa/分、0.15~5MPa/分、0.25~20MPa/分、0.35MPa/分~20MPa/分、0.5MPa/分~20MPa/分、0.75MPa/分~20MPa/分、1MPa/分~20MPa/分、5MPa/分~20MPa/分、好ましくは0.15~5MPa/分、好ましくは0.15~1MPa/分、好ましくは0.15~0.5MPa/分の少なくとも1つの昇圧勾配での、特定の予備焼結時間に達するまでの予備焼結ステップをさらに含んでいてもよい。
【0250】
別の実施形態において、プロセスステップd)は、上述の少なくとも1つの昇温勾配及び上述の少なくとも1つの昇圧勾配での予備焼結ステップをさらに含んでいてもよい。
【0251】
本方法は、一実施形態において、プロセスステップd)の終了時に、当業者に公知の真空条件下での加工チャンバーの自然冷却(非強制冷却)による焼結セラミック体の冷却であるステップe)をさらに含んでいてもよい。プロセスステップe)に係るさらなる実施形態において、上記焼結セラミック体を、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン、窒素、もしくはヘリウム、または任意の不活性ガスを用い、強制対流下で冷却してもよい。1バールを超えるまたは下回る他のガス圧も使用することができる。さらなる実施形態において、上記焼結セラミック体は、アルゴン、窒素、またはヘリウムのいずれか1種から選択されるガスを使用し、静的条件下で冷却される。上記冷却ステップを開始するために、焼結ステップd)の終了時に、焼結装置に、延いては焼結セラミック体に供給されていた電力及び圧力が取り除かれ、その後ステップe)に従って冷却が行われる。本明細書に開示の焼結セラミック体の冷却速度は、0.5~20℃/分、1~10℃/分、好ましくは1~8℃/分、好ましくは1~5℃/分、好ましくは2~10℃/分で、好ましくは2~8℃/分、好ましくは2~5℃/分であってよい。
【0252】
本明細書に開示の方法のステップf)は、任意選択で、熱を印加して焼結セラミック体の温度を上昇させ、焼鈍温度に到達させることによって焼結セラミック体を焼鈍する(または、実施形態において、任意選択で焼結セラミック部品を焼鈍する)ことを含み、ステップg)は、焼鈍焼結セラミック体(または焼鈍焼結セラミック部品)の温度を下げることを含む。ステップf)は任意選択であり、焼結セラミック体、または本明細書に開示の機械加工プロセス後の、焼結セラミック体から形成された焼結セラミック部品に対して実施することができる。実施形態において、焼鈍は、焼結装置に対して外部の炉中で、または焼結装置自体の中で、該装置から取り出すことなく実施してもよい。
【0253】
本明細書に開示の実施形態に係る焼鈍の目的のために、上記焼結セラミック体を、プロセスステップe)に従って冷却した後に焼結装置から取り出してもよく、且つ、焼鈍のプロセスステップを炉などの別個の装置中で実施してもよい。
【0254】
この焼鈍により焼結体の化学的及び物理的特性が改善される。上記焼鈍のステップは、ガラス、セラミック、及び金属の焼鈍に使用される従来の方法によって実施することができ、焼鈍温度と焼鈍継続させる期間の選択によって、改善の程度を選択することができる。
【0255】
実施形態において、焼結セラミック体を焼鈍する上記任意選択のステップf)は、0.5℃/分~20℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の加熱速度で実施される。
【0256】
実施形態において、焼結セラミック体を焼鈍する上記任意選択のステップf)は、約900~約1600℃、好ましくは約1100~約1600℃、好ましくは約1300~約1600℃、好ましくは約900~約1500℃、好ましくは約900~約1400℃、好ましくは約1400~約1600℃の温度で実施される。
【0257】
実施形態において、焼結セラミック体を焼鈍する上記任意選択のステップf)は、0.5℃/分~20℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の冷却速度で実施される。
【0258】
焼結セラミック体の焼鈍を実施する上記任意選択のステップf)は、結晶構造中の酸素空孔を化学量論比に戻るように修復することを意図する。上記任意選択の焼鈍は、上記焼鈍温度で、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間実施してもよい。
【0259】
焼結セラミック体を焼鈍する上記任意選択のステップf)は、酸化性雰囲気中で実施してもよく、この酸化性雰囲気により、上記焼鈍プロセスは、反射率(albedo)を増加させ、応力を低減し、機械的取扱い性を改善し且つ多孔度を低下させることができる。上記任意選択の焼鈍ステップは空気中で実施してもよい。
【0260】
上記の一実施形態に係る加圧及び通電支援プロセスは、大型焼結YAG体の製造に使用するのに好適である。開示されるプロセスは、粉末を迅速に圧密化且つ緻密化し、焼結セラミック体において約10um未満の最大結晶粒径を保持し、且つ理論値の96%を超える高く均一な密度及び4%未満の体積多孔度を、最大寸法にわたる最小限(5%未満)の密度の変動と共に達成する。密度の変動を低減することにより、取扱い性が向上し、且つ焼結セラミック体の全体的な応力を低下させることができる。この微細な結晶粒径、均一且つ高い密度の組み合わせにより、半導体加工チャンバー中の部品としての機械加工、取扱い、及び使用に好適な、大寸法の高強度焼結YAG体が提供される。
【0261】
焼結セラミック体を焼鈍する上記任意選択のプロセスステップf)が実施された後に、焼結セラミック体、及び場合により、焼鈍焼結セラミック体の温度がプロセスステップg)に従って周囲温度に下げられ、上記焼結且つ任意選択で焼鈍セラミック体は、焼鈍ステップが焼結装置に対して外部で行われた場合は炉から取り出されるか、または焼鈍ステップf)が焼結装置中で行われた場合は該焼結装置から取り出されるかのいずれかである。表13に、本明細書に開示の例示的なセラミック焼結体の一連のプロセス条件及び試料サイズを掲載する。
【表13-1】
【表13-2】
【0262】
本明細書に開示の材料及び方法に従って製造されたセラミック焼結体の純度は非常に高い。本焼結セラミック体の純度は上記焼成粉末混合物の純度とほぼ同一とすることができる。表14に、ICPMS法によって測定した、本明細書に開示の焼成粉末混合物及びそれから形成された対応するセラミック焼結体のppmで表した不純物及びパーセントで表した純度を掲載する。
【表14】
【0263】
本明細書に開示の粉末、粉末混合物、及び焼結セラミック体の不純物含有量/純度を測定するために使用されるICPMS法は、原子番号に基づく異なる報告限界で、重量に基づき個々の元素を測定する。一般に、本明細書に開示のICPMSを使用してより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、より重い元素の報告限界よりも高い。換言すると、Sc以上の元素などのより重い元素は、特により低濃度で、より軽い元素よりも高い精度で検出される。Sc~Uの元素については、報告限界は0.0007ppm未満~0.204ppm未満で変化する。Li~Caなどのより軽い元素(但しSiを除く)については、報告限界は0.0007ppm未満~1.4ppmで変化する。上記粉末、粉末混合物、及び焼結セラミック体中に存在する可能性のあるSiO2の形態のSiは、本明細書に開示されるICPMS法を使用して、14ppm以上の量で正確に報告することができる。但し、本明細書に開示の出発粉末、焼成粉末混合物、及び/またはセラミック焼結体中にSiは検出されなかった。それぞれの元素の報告限界を超える量で検出されたこれらの元素は、ppmで表される総不純物含有量及び関連する純度(%)として報告される。SiO2の形態のSiは、報告限界が高いため、総不純物含有量には含めておらず、したがって、本明細書では別個に報告する。実施形態において、本明細書に開示の出発粉末、焼成粉末混合物、及び/またはセラミック焼結体のシリカ含有量は、全ての構成成分の含有量から計算される上記出発粉末、焼成粉末混合物、及び/またはセラミック焼結体の総質量を基準として、例えば約14ppm以上と低い場合がある。したがって、特定の実施形態において、上記出発粉末、焼成粉末混合物、及び/またはセラミック焼結体は約14ppmの量のシリカを含む。
【0264】
いくつかのプロセスパラメータを、灰色、白、赤、及びそれらの組み合わせであってよい、目視で容易に分る色を有する焼結セラミック体を形成するように調整してもよい。実施形態において、開示される焼鈍プロセスの前または後の焼結セラミック体は、表面上及び全体的に色が均一であってよく、上述の色のうちの1色を含んでいてもよい。他の実施形態において、上記焼結セラミック体は表面上及び全体にわたって色が変化してもよく、上述の色のうちの2色以上を含んでいてもよい。任意選択の焼鈍ステップの前の焼結したままの状態の焼結体は、外観全体が灰色であってよい表面及びバルク/内部を有していてもよく、密度がYAGの理論密度の99%を超えていてもよい。例えば、本明細書に開示の焼結セラミック体試料322は、目視検査においてバルク内及び試料の表面上で灰色を示す。白色の焼結セラミック体を製造するためには、加熱速度、焼鈍温度及び時間の焼鈍条件を変化させて、表面上及び全体にわたって目視で白色に見える焼結セラミック体を形成してもよい。例えば、白色の焼結セラミック体を形成する特定の実施形態において、約1500℃の温度で8~24時間の継続時間での焼鈍が必要とされる場合があり、その結果、YAGの理論密度の97~99%の密度が得られる。表13に示す、1550℃で8時間アニールした焼結セラミック体試料272-5は、バルク内及び試料の表面上で白色を示し、密度は4.433g/cc、すなわちYAGの理論密度の約97.3%である。これに代わる実施形態において、焼結セラミック体中に過剰なアルミナ(約0.3~1体積%の量で)が存在することによって、白色の焼結セラミック体を生成することができ、これは、1100~1400℃の温度で6~10時間の期間焼鈍した後に、本明細書に開示される焼結セラミック体試料322-1に係る、密度が4.531g/cc、すなわちYAGの理論密度の99.451%である、白色焼結体を生成することができる。他の実施形態において、上記出発粉末に添加された、及び/またはジルコニア粉砕媒体を使用することに由来する、20~100ppmの量のジルコニアが存在するによって、焼結したままの状態で赤みがかった色の、密度が理論密度の98~99.5%の焼結セラミック体を生成することができる。例えば、焼結セラミック体試料298は、約50ppmのジルコニアを含んで製造され、表面上及びバルク内で赤色を示し、密度が4.540g/cc、すなわちYAGの理論密度の99.649%であった。焼結セラミック体中に存在することができる程度の過剰なアルミナ(約0.1~3体積%、好ましくは0.1~1体積%の量で)によって、本明細書に開示の焼結を行ったままの状態であるか焼鈍プロセスの後であるかを問わず、該セラミック体の表面上及びバルク内が均一な色であり、密度がYAGの理論密度の98.5~99.5%である、焼結セラミック体を提供することができる。これらの及び類似の実施形態の密度及び試料調製を、それぞれ表11及び13に掲載する。
【0265】
本明細書に開示の方法のステップh)は、上記焼結セラミック体を機械加工し、またはいくつかの実施形態において、任意選択の焼鈍プロセスの後に上記焼結セラミック体を機械加工して、エッチングチャンバー内の、誘電体窓またはRFウィンドウ、フォーカスリング、ノズルまたはガスインジェクター、シャワーヘッド、ガス分配プレート、エッチングチャンバーライナー、プラズマ源アダプター、ガスインレットアダプター、ディフューザー、静電ウェハチャック、チャック、パック、ミキシングマニフォールド、イオンサプレッサーエレメント、フェイスプレート、アイソレーター、スペーサー、保護リング、及びデポジションリングなどの焼結セラミック部品を形成することを含み、本明細書に開示の焼結セラミック体から耐食性部品を機械加工するための公知の方法に従って実施することができる。実施形態において、本焼結セラミック体から形成される本焼結セラミック部品は、好ましくは、組成Y3Al5O12(YAG)のイットリウムアルミニウムガーネットを含んでいてもよく、さらなる実施形態において、本焼結セラミック体は、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、組成YAlO3(YAP)のイットリウムアルミニウムペロブスカイト、組成Y4Al2O9(YAM)の単斜晶系イットリウムアルミニウム、及びそれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。
【0266】
特定の実施形態において、上記焼結セラミック体から形成される焼結セラミック部品の相純度は最大で99.9体積%であり、化学的純度99.99%を超えることができる。これに代わる実施形態において、上記焼結セラミック部品は、相純度が97~99.8体積%であるYAGを含んでいてもよく、0.2~3体積%の酸化アルミニウム相をさらに含んでいてもよい。本耐食性焼結セラミック部品は、本明細書に開示のセラミック焼結体の上述の実施形態のいずれかから形成することができる。
【0267】
半導体エッチングチャンバーに必要とされる耐食性の焼結セラミック部品は、本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から作製することができ、該部品としては、他の形状もある中で、RFウィンドウまたは誘電体窓、ノズルまたはインジェクター、シャワーヘッド、(エッチング)チャンバーライナー、ミキシングマニフォールド、ウェハサポート、静電ウェハチャック、ならびにフォーカスリング及び保護リングなどの種々のリングを挙げることができる。したがって、密度、体積多孔度、硬度、純度、結晶粒径、強度などの特性は、焼結セラミック体から、該焼結セラミック体から形成される焼結セラミック部品に移転される。
【0268】
本焼結セラミック体/部品は、プラズマエッチングチャンバー中で使用するための大きなセラミック体サイズの製造が可能になるのに十分な機械的特性を有することができる。本明細書に開示の部品のサイズは、それぞれ焼結体の最大寸法に関して、200mm~622mm、好ましくは300~622mm、好ましくは350~622mm、好ましくは400~622mm、より好ましくは450~622mm、より好ましくは500mm~622mm、好ましくは100~605mm、好ましくは200~605mm、好ましくは550~622mmであってもよい。機械的強度を評価するために、試料006を公知の技法に従って研磨し、4点強さ試験用のB型試験棒を調製した。1500℃の温度、30MPaの圧力、30分間の期間の焼結、続いて空気中、1400℃、8時間の期間の焼鈍を使用して試料6を調製した。本明細書に開示の方法を使用した密度が、4.545すなわち理論密度の99.77%(0.23%の多孔度に相当)と測定された。表6に高い強度値が報告されており、これらは、本明細書に開示のセラミック焼結体が、本明細書に開示のチャンバー部品を製造するのに十分な機械的強度を有することになることを示している。
【0269】
本明細書に開示の方法は、結晶相純度、化学的純度、密度及び密度の変動、機械的強度、延いては耐食性焼結セラミック部品、特に、例えば最大の形体のサイズにわたる、200mmを超える寸法のセラミック体用の上記部品の取扱い性に対する制御を改善し、且つ上記耐食性焼結セラミック部品の格子中の酸素空孔を低減する。表15に、本明細書に開示の例示的なYAGセラミック焼結体の、最大寸法/サイズ、5回の測定にわたる平均密度、YAGの理論密度に対する割合、割合で表した密度の変動、及び体積多孔度を掲載する。
【表15】
【0270】
性能
エッチングを、以下に記載されるように、本明細書に開示の方法に従って調製したYAGを含む耐食性焼結セラミック体上で実施した。
【0271】
エッチング手順:
エッチング性能を評価するために、6mm×6mm×2mmの寸法の実施例1の試料519の焼結セラミック体からなる試料を、ヒートシンクコンパウンドを使用してc面サファイアウェハ上に取り付けた。表面品質は、エッチングプロセスの前後にSa、Sz、及びSdrを測定することによって評価した。
【0272】
業界の標準装置であるPlasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etchを使用してドライエッチングプロセスを実施した。エッチングは、合計の期間が6時間の2ステッププロセスを使用して完了した。エッチング方法は、10ミリトールの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP電力で実施した。エッチング法は、CF4流速が90標準立方センチメートル/分(sccm)、酸素流速が30標準立方センチメートル/分(sccm)、アルゴン流速が20標準立方センチメートル/分(sccm)の第1のエッチングステップと、酸素流速が100標準立方センチメートル/分(sccm)及びアルゴン流速が20標準立方センチメートル/分(sccm)の第2のエッチングステップで実施し、第1及び第2のステップをそれぞれ300秒間実施し、合計6時間の期間繰り返す。
【0273】
試料の性能を評価するために上記試験で使用したエッチング条件は、性能を識別するために、開示された材料を極端なエッチング条件に供するように選択した。エッチングプロセスの前と後の両方における本明細書に開示の焼結セラミック体の表面は、加工チャンバー中での粒子生成と相関する可能性がある。したがって、概括的には表面粗さを低減することが有益である。上記焼結セラミック体に対して、Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)、及びSdr(界面の展開面積比)のパラメータを測定した。耐食性材料によって表面粗さが小さくなることで、チャンバー中への汚染粒子の放出が低減され、同様に、エッチング後に表面粗さがより大きいことが、粒子生成及びウェハ上への放出の一因となる可能性があるという点において、一般に、プラズマエッチングプロセス後の表面粗さは、チャンバーでの粒子生成に影響を与える可能性がある。さらに、Sa、Sz、及びSdrの表面粗さの値がより低いことで示される表面のより高い平滑性によって、本明細書に開示のチャンバー部品をより容易に半導体グレードレベルまでクリーン化することが可能になる。
【0274】
表面粗さの測定
表面粗さ測定は、クラス1のクリーンルーム中で、周囲条件下、Keyence 3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡VK-X250X型を使用して実施した。上記顕微鏡は、2.8Hzの固有振動数のTMC TableTop CSPパッシブ卓上型除振台上に設置されている。この非接触システムは、レーザー光線及び光学センサーを使用して、反射光の強度によって表面を分析する。この顕微鏡は、x方向に1,024データポイント、y方向に786データポイント、計786,432データポイントを取得する。所定の走査が完了したところで、対物レンズがz方向に設定されたピッチで移動し、走査間で強度を比較して焦点を決定する。ISO 25178 Surface Texture (Areal Roughness Measurement)は、この顕微鏡が準拠する表面粗さの分析に関係する国際的規格を収集したものである。
【0275】
試料の詳細な画像を捕捉するために、上記共焦点顕微鏡を使用し、50倍の倍率で試料の表面をレーザー走査した。粗さは、7つに分割されたブロックのプロファイルで得られた。ラムダ カイ(λ)は測定サンプリング長を表すが、これをISO規格4288:Geometrical Product Specifications (GPS) -- Surface texture: Profile method -- Rules and procedures for the assessment of surface textureに準拠して、ライン読み取り(line reading)が7つの中央ブロックの5つの測定点に制限されるように調整した。
【0276】
当業者に公知のRaは、ISO 4287:1997 Geometrical Product Specifications (GPS) -- Surface texture: Profile methodに準拠した2Dプロファイルの算術平均粗さを表す。これは表面と接触する機械式スタイラスに基づいて線形プロファイルを作成する。
【0277】
Saはレーザー法を使用した3D測定表面にわたる高さの差を表す一方、Raは2D線形プロファイル走査にわたる高さの差を表す。
【0278】
Raはスタイラス先端の形状によって制限を受け、そのため、微細な形体の細部が損なわれる、山及び谷が歪む可能性がある。これは、微細なサブミクロンの形体を測定する際に問題になり、Ra値をSa値と比較して使用する場合の制限である。
【0279】
測定する焼結セラミック体のエッチングされた領域及びエッチングされていない領域内の範囲を選択した。領域は、典型的な試料表面を最も代表するように選択され、これらを使用してSa、Sz、及びSdrを算出した。
【0280】
Saは、焼結セラミック体の表面のユーザーが規定した範囲にわたって計算した平均粗さ値を表す。Szは、焼結セラミック体の表面のユーザーが規定した領域にわたる、山から谷までの最大の距離を表す。Sdrは、「界面の展開面積比」として定義される計算される数値であり、完全に平坦な表面の表面積を超える実際の表面積の増加の比例式である。平坦な表面にはSdr=0が割り当てられ、この値は表面の傾斜と共に増加する。数値が大きいほど表面積の増加が大きいことに対応する。これにより、試料の表面積の増加の程度を数値で比較することができる。これは、平坦な範囲と比較して、テクスチャまたは表面形体に起因して増加する表面積を表す。
【0281】
表面粗さの特徴であるSa、Sz、及びSdrは、基礎となる技術分野において周知のパラメータであり、例えば、ISO規格25178-2-2012、4.3.2節に記載される。
【0282】
本開示は、エッチングされていない範囲に、15nm未満、より好ましくは13nm未満、より好ましくは10nm未満、より好ましくは8nm未満、好ましくは2~15nm、好ましくは2~10nm、好ましくは2~8nm、好ましくは2~5nmの算術平均高さSa、好ましくは、ISO規格25178-2-2012、4.1.7.節、算術平均高さ、Saに準拠した3nmの平均Saを与える、エッチングまたは蒸着プロセスの前に耐食性の研磨された表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0283】
本開示は、5.0μm未満、好ましくは4.0μm未満、好ましくは3.5μm未満、好ましくは2.5μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは0.3~5um、好ましくは0.3~4um、好ましくは0.3~3um、好ましくは0.3~2um、好ましくは0.3~1um、好ましくは0.3~0.5umの最大高さSz、好ましくは、ISO規格25178-2-2012、4.1.6.節、最大高さ、Szに準拠した0.4umの平均Szを与える、エッチングまたは蒸着プロセスの前に耐食性表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0284】
本開示は、1500×10-5未満、より好ましくは1200×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満、より好ましくは600×10-5未満、より好ましくは400×10-5未満、好ましくは15~400×10-5、好ましくは15~200×10-5、好ましくは15~100×10-5、好ましくは25~200×10-5、好ましくは25~100×10-5、好ましくは25~50×10-5の、ISO規格25178-2-2012、4.3.2.節、界面の展開面積比、Sdrに準拠した界面の展開面積比、Sdrを与える、エッチングまたは蒸着プロセスの前に耐食性表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0285】
本開示は、25nm未満、20nm未満、より好ましくは18nm未満、より好ましくは16nm未満、より好ましくは14nm未満、より好ましくは12nm未満の、ISO規格25178-2-2012、4.1.7.節、算術平均高さ、Saに準拠した算術平均高さ、Saを与える、本明細書に開示のエッチングプロセスの後に耐食性の研磨された表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0286】
本開示は、4.8μm未満、より好ましくは、3.8μm、最も好ましくは3.2μm未満、より好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1.5μm未満の、ISO規格25178-2-2012、4.1.6.節、最大高さ、Szに準拠した最大高さ、Szを与える、本明細書に開示のエッチングまたは蒸着プロセスの後に耐食性表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0287】
本開示は、3000×10-5未満、好ましくは2500×10-5未満、より好ましくは2000×10-5未満、より好ましくは1500×10-5未満、より好ましくは1000×10-5未満、より好ましくは800×10-5未満の、ISO規格25178-2-2012、4.3.2.節、界面の展開面積比、Sdrに準拠した界面の展開面積比、Sdrを与える、を与える、本明細書に開示のエッチングまたは蒸着プロセスの後に耐食性表面を有する、特定の焼結セラミック体及び/またはそれから作製された部品に関する。
【0288】
表16には、本明細書に開示の実施例14の試料432に対応する焼結セラミック体の表面粗さ測定値を掲載する。
【表16】
【0289】
一実施形態において、90体積%~99.8体積%の多結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)と、ASTM B962-17に準拠して実施した密度測定から算出して0.1~4%の体積多孔度とを含む上記本焼結セラミック体は、10ミリトールの圧力、600ボルトのバイアス、2000ワットのICP電力を有するエッチング方法であって、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF4流速、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流速、20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流速を有する第1のエッチングステップ、ならびに100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流速及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流速を有する第2のエッチングステップをさらに含み、ステップ1及び2がそれぞれ300秒間実施され、且つステップ1及び2が6時間の通算の期間繰り返される上記エッチング方法に曝露された場合にエッチングされていない範囲における算術平均高さ(Sa)が15nm以下であり、エッチングされた領域における算術平均高さ(Sa)が約20nm以下である。一実施形態において、上記焼結セラミック体のエッチングされていない範囲における算術平均高さ(Sa)は12nm以下であり、エッチングされた範囲における算術平均高さ(Sa)は16nm以下である。別の実施形態において、上記焼結セラミック体のエッチングされていない範囲における算術平均高さ(Sa)は10nm以下であり、エッチングされた範囲における算術平均高さ(Sa)は12nm以下である。
【0290】
本明細書に開示の実施形態は、
図30及び31に示す例示的なプラズマ加工チャンバー中での使用に適合した多結晶焼結セラミック体及びそれから製造された部品を含む。
【0291】
本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態を、任意且つ特定の焼結セラミック体に組み合わせてもよい。したがって、本明細書に開示の2つ以上の特性を組み合わせて、例えば実施形態に概説するように、本焼結セラミック体をより詳細に説明することができる。
【0292】
本明細書に開示の焼結セラミック体及び関連する耐食性焼結部品においては、エッチングプロセス及び蒸着プロセスにおける挙動が改善され且つ取扱い性が改善され、半導体エッチングチャンバー及び蒸着チャンバー用の部品を製造するための材料として使用することができる。
【0293】
本酸化イットリウムアルミニウム材料、特にYAG相を含み、実施形態によっては酸化アルミニウム相をさらに含む、今日までにエッチングチャンバー/蒸着チャンバー部品としての使用が提案されている上記材料には、すでに上述したように、過酷な腐食性且つ侵食性の条件下で粒子が生成し、これが加工する製品を汚染するという問題をかかえている。さらに、酸化イットリウムアルミニウムを含み、高純度で且つ100mm~622mmの大寸法の、固体で相純度が高い部品、特に相純度が高い(約99%以上)イットリウムアルミニウムガーネット立方晶相(YAG)を含む実施形態を製造することは困難であることが知られている。上記YAG相だけでなく、他の相も存在する場合がよくあり、上記他の相により、該相が存在する体積含有量の程度に応じて、焼成セラミック体の腐食及び浸食に対する耐性が低下する可能性がある。
【0294】
これとは対照的に、本開示は、相純度、密度及び密度の変動、多孔度、化学的純度、強度、硬度、表面状態、及び取扱い性に焦点を合わせた耐食性焼結体、ならびに、それから形成される、プラズマエッチングチャンバー及び/または蒸着チャンバー中で使用するための部品の製造方法を提供する。本開示によれば、酸化イットリウムアルミニウム材料、特にYAG相から形成される焼結セラミック体の焼結体純度、硬度、及び機械的強度に加えて、上記密度及び結晶相の特性が、エッチング安定性に対して重要な影響を及ぼす可能性があることが判定された。高い相純度(99体積%を超える)のYAG、高純度、低多孔度、及び高密度の特性の組み合わせによって、本明細書に開示のプラズマ加工チャンバー中の部品として使用された場合に、本焼結セラミック体において、腐食及び侵食に対する耐性の向上の相乗効果が得られる。
【0295】
図30に示すように、本明細書に開示の技術の実施形態は、「加工システム」とも呼ばれる半導体エッチングプロセスで使用するように構成することができる、プラズマ加工システム9500で使用するための部品として有用であることができる。加工システム9500は、実施形態において、遠隔プラズマ領域を備えていてもよい。この遠隔プラズマ領域は、遠隔プラズマ源(「RPS」)とも呼ばれる遠隔RF源/マッチングネットワーク9502を備えていてもよい。
【0296】
加工システム9500は、耐食性チャンバーライナー(図示せず)、真空源、及びその上に基板とも呼ばれるウェハ50が支持されるチャックまたは静電チャック(「ESC」)9509を有する真空チャンバー9550を備えていてもよい。カバーリングまたは電極カバー9514、上部シールドリング9512、及びシールドリング9513がウェハ50及びパック9509を取り囲む。上部プレート/窓/蓋9507が真空チャンバー9550の上面壁を形成する。シャワーヘッド9517は上面壁を形成するか、または真空チャンバー9650の上面壁の下に設置される。上板/窓/蓋9507、ガス分配システム9506、シャワーヘッド9517、カバーリングまたは電極カバー9514、トップシールドリング9512、シールドリング9513、チャンバーライナー(図示せず)、ならびにチャックまたはESC9508及びパック9509の全体または一部を、本明細書に開示される焼結セラミック体の実施形態から作製することができる。
【0297】
シャワーヘッド9517の表面の一部がシールドリング9712で覆われていてもよい。シャワーヘッド9517の表面の一部、特にシャワーヘッド9517の表面の半径方向の側面が、上部シールドリング9710で覆われていてもよい。シールドリング9712、シャワーヘッド9517、及びトップシールドリング9710の全体または一部が、本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から作製されたものであってもよい。
【0298】
遠隔プラズマ源9502は、処理するウェハ50を収容するチャンバー9550の窓9570の外側に備えられる。遠隔プラズマ領域は、ガス供給システム9506を介して真空チャンバー9550と流体連通していてもよい。チャンバー9550中では、処理ガスをチャンバー9550に供給し、高周波電力をプラズマ源に供給することによって反応性プラズマを発生させることができる。このようにして発生させた反応性プラズマを使用することにより、ウェハ50上に所定のプラズマ加工が行われる。加工システム9500の高周波アンテナには、所定のパターンを有する平面アンテナが広く使用されている。
【0299】
図31に示すように、本明細書に開示の技術の実施形態は、「加工システム」とも呼ばれる半導体蒸着プロセスにおける使用向けに構成されていてもよい、プラズマ加工システム9600で使用するための部品として有用であることができる。加工システム9600は、真空チャンバー9650、真空源、及び、その上に半導体基板とも呼ばれるウェハ50が支持されるパック9609を備える。上記加工システムは、真空チャンバー9650の内部にプロセスガスを供給するためのガス供給システム9616と流体連通するノズルまたはインジェクター9614をさらに備えていてもよい。チャンバー9650の上面壁9700は、中央ガスインジェクター(ノズルとも呼ばれる)9614を受けるように構成された中央開口部を備えていてもよい。特定の実施形態において、チャンバーの上面壁9700は、インジェクター9614を収容する中央開口部で構成されるRFウィンドウまたは誘電体窓を備えていてもよい。RFエネルギー源は上記プロセスガスをプラズマ状態へと活性化して、基板50を加工する。RFウィンドウまたは誘電体窓9700、ガス供給システム9616、及び中央ガスインジェクター9614を備える上面壁の実施形態は、全体または一部が本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から作製されたものであってよい。
【0300】
システム9600は、ウェハ50を保持するように設計された静電チャック9608をさらに備えていてもよい。上記チャック9608は、ウェハ50を支持するためのパック9609を備えていてもよい。パック9609の支持面の一部がデポジションリング9615で覆われていてもよい。デポジションシールドまたはデポジションリングアセンブリなどのデポジションリング9615の他の名称は同意語と解釈され、本明細書では同義で使用することができる。デポジションリング9615は、全体または一部が、本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から作製されたものであってよい。
【0301】
上記パック9609は、全体がまたは一部が本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から形成されたものであってよく、パック9609の支持面に近接したパック内に配置されたチャック電極を有していてもよく、パック9609上に配置された場合にウェハ50を静電的に保持する。チャック9608は、パック9609を支持するためのリング様の広がりを有する基部9611と、上記基部とパックの間に、パック9609と基部9611との間に間隙が形成されるように、基部とパックとの間に配置され、基部の上方にパックを支持するシャフト9610であって、パック9609の周縁部に近接するパックを支持する上記シャフト9610とを備えていてもよい。チャック9608、パック9609、及びデポジションリング9615は、全体がまたは一部が、本明細書に開示の焼結セラミック体の実施形態から作製されたものであってよい。
【0302】
特定の実施形態において、相純度が高いYAGから構成される、ならびにそれに代わる実施形態において、YAG、YAP、YAM、及びそれらの組み合わせの少なくとも1種の相から構成される上述の焼結セラミック体は、焼結体の最大寸法に関して、100mm~622mmの寸法の大きな耐食性部品の製造に適したものであることができる。本明細書に記載の大きな部品の寸法は、チャンバー部品を製造することができる焼結セラミック体の密度、密度の均一性、及び硬度の増加させることによって可能にすることができる。
【0303】
本明細書では、実施形態において、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む、他の実施形態においては、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相及び酸化アルミニウムを含む、他の実施形態においては、YAG、YAP、及びYAMを含む酸化イットリウムアルミニウムの少なくとも1種の形態、及び任意選択で酸化イットリウム及び/または酸化アルミニウムの少量の相、ならびにそれらの組み合わせを含む、ハロゲン系プラズマエッチング条件に供された際にならびに蒸着条件下で、他の材料に対して向上したプラズマ腐食及び侵食に対する耐性を示す焼結セラミック体を提供する、焼結セラミック体の半導体加工チャンバーにおける使用が開示される。
【0304】
本明細書に開示の焼結セラミック体は、表面上及び焼結セラミック体全体の両方に酸化アルミニウム相を有していてもよい。したがって、実施形態において、上記焼結セラミック体は、焼結セラミック体全体に分布する酸化アルミニウム相をさらに含む、本明細書に開示のプロセスに従って製造されたYAGを含む一体型焼結セラミック体を含んでいてもよい。換言すれば、表面上で測定された構造は、YAGを含み、実施形態において酸化アルミニウムをさらに含む、バルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表する。したがって、本明細書では、
図22のa)及びb)に示す、約99.6体積%の量のガーネット結晶構造(YAG)及び約0.4体積%の量の酸化アルミニウム相を有する酸化イットリウムアルミニウムを含む焼結セラミック体が開示される。
【実施例】
【0305】
すべての例の測定は明細書に記載のように実施した。表13及び15は、例示的な焼結セラミック体の例のプロセス条件及び特性を開示する。表14は、焼結セラミック体の例に関してICPMS法を使用して測定した純度を開示する。
【0306】
比較例1(562):
比表面積が4.3m
2/g、d10粒径が2.4μm、d50粒径が9μm、及びd90粒径が50μmの市販のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)粉末(Shin-Etsu ロットRYAG-OCX-102)を、1450℃、30MPaの圧力、真空下で30分間焼結して、焼結体を形成した。
図8は、上記焼結体におけるSEMの結果であり、イットリア(白色領域)、YAP及び/またはYAM(それぞれが画像の淡灰色の領域によって示される)、及びアルミナ(黒色領域)の相を示す。YAGはSEM画像の暗灰色の領域によって表される。粉末組成の制御が不十分であり、且つ粉末処理中に出発粉末の混合が不十分であると、焼結時にこの例で明らかな結晶混合相が発生することとなろう。粉末のバッチング及び混合の条件は不明であった。少なくとも1000倍の倍率のSEMによる微細構造の分析から、組成の不均一性と混合相領域の存在が明らかである。上記焼結セラミック体の純度は99.99~99.995%であり、鉄のレベルは11~18ppmであり、チタン汚染も見られた。これらの不均一な微細構造及び汚染元素、ならびにそれらのそれぞれの量により、半導体のエッチング及び蒸着用途での使用中の性能が許容できないものとなる可能性がある。
【0307】
図9は、
図8の比較材料を形成するために使用した市販の出発粉末のX線回折の結果であり、100%のYAG相を示している。
【0308】
比較例2(592):
比表面積が7.3m
2/g、d10粒径が0.15μm、d50粒径が3.5μm、及びd90粒径が64μmの、市販のイットリアとアルミナの粉末混合物を、1450℃、30MPaの圧力、真空下で30分間焼結して、直径100mmの焼結体を形成した。上記粉末には、7ppmの鉄汚染物を含む48ppmの総不純物が含まれていた。
図10はSEMの結果であり、粉末組成の不均一性及び/または不十分な混合に起因する、イットリア、YAP及び/またはYAM(それぞれが画像の明るい領域によって示されている)、ならびにアルミナ(黒色領域)の多数の相を示している。YAGは、このSEM画像において主として灰色の領域で表される一方、イットリア領域は白色で表示され、酸化アルミニウム領域は黒色で表示される。粉末処理中の不十分な組成制御により、焼結時に混合結晶相が生成することとなる。粉末のバッチング及び混合の条件は不明であった。1000倍以上の倍率のSEMによる微細構造の分析から、組成の不均一性と混合相領域の存在が示されている。これらの不均一な微細構造及び汚染元素、ならびにそれらのそれぞれの量により、半導体のエッチング及び蒸着用途での使用中の性能が許容できないものとなる可能性がある。
【0309】
図11は、EDSによって確認した、約78%のYAG(暗灰色領域)、約13%のYAPまたはYAM(淡灰色領域)、イットリアを含む可能性のある白色領域、及び約10%のアルミナ(黒色領域)を含む焼結セラミック体の1000倍及び5000倍でのSEM顕微鏡写真を示す。混合は、粉末重量で約5%の充填率の3N純度(99.9%)のアルミナ媒体を使用して、約4時間の期間行った。出発物質由来のアルミナが不均一に分布して存在することにより、ガーネット構造を有する相純度の高い酸化イットリウムアルミニウムを形成するためには、混合プロセスの改善が必要である場合があることが示されている可能性がある。
【0310】
図12は、
図11の焼結セラミック体のX線回折の結果を示しており、約78%のYAG(灰色領域)、約13%のYAP(淡灰色領域)、及び約10%のアルミナ(黒色領域)の複数の相を含む焼結体であることが確認される。
【0311】
比較例3(試料094/粉末092-2):
比表面積が6~8m
2/g、d10平均粒径が2~4μm、d50平均粒径が4.5μm~6.5μmであり、及びd90平均粒径が7~9μmのイットリアの粉末と、比表面積が22~24m
2/g、d10粒径が0.08~0.15μm、d50粒径が0.65~1.0μm、及びd90粒径が2.5~5μmのアルミナの粉末を、約50重量%の高純度アルミナ媒体(99.9%以上)及びエタノールと共に混合して、粉末重量で約40体積%のスラリーを形成した。ボールミル粉砕を約120RPMで12時間の期間実施し、その後、当業者に公知の方法を使用して粉末を乾燥した。空気中、1200℃で8時間焼成したところで、
図18のパターンe)に係るX線回折が、この焼成粉末混合物がYAGを含むことを示し、この粉末混合物の比表面積は0.25m
2/gであると測定された。この焼成粉末混合物を、真空下、30MPaの圧力、1500℃で30分間焼結し、その後空気中、1400℃で8時間焼鈍して、直径150mmの焼結体を形成した。本明細書に開示の密度測定を実施し、平均密度が4.245g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の93.2%に相当し、体積多孔度は6.8%であった。粉末特性及び焼結に対する駆動力の低下に起因するこの密度及び多孔度により、半導体加工用途における使用中の、取扱い上の問題及び許容できない性能が生じる可能性がある。
【0312】
図18は、c)1000℃/8時間(粉末092-3)、d)1100℃/8時間(粉末092-1)、e)1200℃/8時間(粉末092-2)f)1100℃/8時間(粉末125-1)、及びg)1100℃/8時間(粉末127-1)の一連の焼成粉末混合物の焼成条件全体にわたるX線回折の結果を示す。図示する粉末c)に関して、イットリア及びアルミナの出発粉末由来の結晶相が焼成後に存在し、粉末の比表面積は7~8m
2/gである。粉末d)は主としてYAP結晶相を含み、このYAG結晶相が存在する量は、
図18のd)中の矢印によって示されるXRDによって測定して、10体積%未満、好ましくは5体積%未満である。粉末d)について、比表面積は2.5~3.5m
2/gと測定された。粉末e)は、比表面積が約0.25m
2/gであるYAG相を含む。粉末f)は、比表面積が約1m
2/gであるYAP相とYAG相の混合物を含む。粉末g)は、比表面積が約0.01m
2/gであるYAG相を含む。上記比表面積ならびにc)及びd)のX線回折パターンを有する焼成粉末混合物が好ましい。
【0313】
相純度の高いYAGを含む焼結セラミック体は、本明細書に開示の焼成粉末混合物を使用したインシチュでの反応性焼結プロセスによって形成することができる。このインシチュ/反応相焼結の駆動力は、本明細書に開示のいくつかの結晶相の存在、特に焼成粉末混合物中のYAG相の量、及び/または焼成粉末混合物の比表面積によって影響を受ける可能性がある。したがって、特定の実施形態において、上記焼成粉末混合物は、イットリウムアルミニウムガーネット相(YAG)を実質的に含まないか、または含まない。他の実施形態において、上記焼成粉末混合物のYAG相の含有量は、XRDを使用して測定して10体積%未満、好ましくは5体積%未満である。特定の実施形態において、上記焼成粉末混合物の比表面積は、2m2/gを超え、好ましくは4m2/gを超え、好ましくは2~12m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~6m2/gであってよい。他の実施形態において、上記焼成粉末のイットリウムアルミニウムガーネット相(YAG)の含有量は、10体積%未満、好ましくは5体積%未満であり、比表面積は2~約10m2/gである。
【0314】
実施例1(試料519):乾式混合
表面積が6~8m
2/gのイットリアの粉末及び表面積が16~18m
2/gのアルミナの粉末を秤量及び配合して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比の粉末混合物を作製した。次いで、この粉末混合物を垂直転倒(tumble)(転倒(end over end))混合機に移した。単一の直径30mmのジルコニア媒体を使用し、約20RPMで乾式混合プロセスを実施した。12時間の乾式混合後に、粉末を混合機から取り出した。その後、1000℃で8時間焼成を行った。BET比表面積は4.5~5.5g/ccと測定された。焼成粉末混合物の純度は99.9996%であり、不純物は約4ppmであった。この粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。次に、上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の方法に従って、真空下、1450℃の温度、30MPaの圧力で30分間の期間焼結した。
図21のXRDは、実施例1に係る焼結セラミック体では99%以上のYAG相が形成されていることを示す。この焼結セラミック体を当技術分野で公知の方法に従って研磨し、本明細書に開示の方法及び装置を使用して表面粗さの測定を実施した。それぞれ約0.010μm及び約3.40μmのSa及びSzの値が測定された。約498×10
-5のSdr値も測定された。ドライエッチング試験をPlasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etchを使用して実施した。エッチング方法は、10ミリトールの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP電力で実施した。エッチング法は、CF
4流速が90標準立方センチメートル/分(sccm)、酸素流速が30標準立方センチメートル/分(sccm)、アルゴン流速が20標準立方センチメートル/分(sccm)の第1のエッチングステップと、酸素流速が100標準立方センチメートル/分(sccm)及びアルゴン流速が20標準立方センチメートル/分(sccm)の第2のエッチングステップで実施し、第1及び第2のステップをそれぞれ300秒間実施し、合計6時間の期間繰り返す。エッチング後に、約0.016μmのSa値及び約3.2μmのSz値が測定され、かいじされるエッチングプロセス後に、約681×10
-5のSdr値が測定された。表3、4、5、13、14、及び15に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例1の多結晶セラミック焼結体の結果を要約する。
【0315】
実施例2(試料529):湿式混合
表面積が6~8m
2/gのイットリアの粉末及び表面積が6~8m
2/gのアルミナの粉末を秤量及び配合して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比の粉末混合物を作製した。次いで、この粉末混合物を垂直(転倒(end over end))混合機に移した。上記転倒混合機中の粉末混合物にエタノールを添加し、粉末重量で50%のスラリーを形成した。単一の直径30mmの媒体を使用し、約20RPMで湿式混合プロセスを実施した。12時間の湿式混合後に、上記粉末混合物を含むスラリーを混合機から取り出し、回転蒸発器を使用してエタノールを抜き出した。その後、1000℃で8時間焼成を行った。この粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物の純度は99.9956%であり、不純物は約44ppmであった。次に、上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の方法に従って、真空下、1450℃の温度、30MPaの圧力で30分間の期間焼結した。
図21の上記焼結セラミック体のXRDは、93%のYAG相及び7%のYAPを示す。YAP相の理論密度は5.35g/ccであると報告されており、したがって混合相試料の全体の密度は、理論密度が4.556g/ccである純粋なYAGの密度よりも高くなる可能性がある。この焼結セラミック体を当技術分野で公知の方法に従って研磨し、本明細書に開示の方法及び装置を使用して表面粗さの測定を実施した。それぞれ約0.010μm及び約3.75μmのSa及びSzの値が測定された。約720×10
-5のSdr値も測定された。表3及び13に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例2のセラミック焼結体の結果を要約する。
【0316】
実施例3(試料531):湿式ボールミル粉砕
表面積が6~8m
2/gのイットリアの粉末及び表面積が6~8m
2/gのアルミナの粉末を秤量及び配合して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比の粉末混合物を作製した。次いで、この粉末混合物をボールミル粉砕用の容器に移した。約50重量%充填のアルミナ媒体及び約50重量%のエタノールを上記容器に加え、スラリーを形成し、混合を促進した。水平軸周りの転がり動作を用いたボールミル粉砕を12時間の期間行い、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。上記粉末混合物を1000℃で8時間焼成した。この粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物の純度は99.9968%であり、不純物は約33ppmであった。次に、上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の方法に従って、真空下、1450℃の温度、30MPaの圧力で30分間の期間焼結した。
図21の上記焼結セラミック体のXRDは、95%のYAG相及び5%のYAPを示す。YAP相の理論密度は5.35g/ccであると報告されており、したがって混合相試料の全体の密度は、理論密度が4.556g/ccである純粋なYAGの密度よりも高くなる可能性がある。上記多結晶焼結セラミック体を当技術分野で公知の方法に従って研磨し、本明細書に開示の方法及び装置を使用して表面粗さの測定を実施した。それぞれ約0.010μm及び約3.9μmのSa及びSzの値が測定された。約885×10
-5のSdr値も測定された。表3、4、5、13、及び15に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例3のセラミック焼結体の結果を要約する。
【0317】
実施例4(試料514):湿式ボールミル粉砕
表面積が6~8m
2/gのイットリアの粉末及び表面積が16~18m
2/gのアルミナの粉末を秤量及び配合して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比の粉末混合物を作製した。次いで、この粉末混合物をボールミル粉砕用の容器に移した。約50重量%充填のアルミナ媒体及び約50重量%のエタノールを上記容器に加え、スラリーを形成し、混合を促進した。他の例において、ボールミル粉砕を、イットリア媒体またはジルコニウム媒体のみ使用し、水を用いてまたは乾式条件下で実施してもよい。水平軸周りの転がり動作を用いたボールミル粉砕を12時間の期間行い、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。上記粉末混合物を1000℃で4時間焼成した。この粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。次に、上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の方法に従って、真空下、1450℃の温度、30MPaの圧力で30分間の期間焼結した。
図21に示すように、X線回折を使用して、上記焼結セラミック体中に少なくとも99%のYAG相が見出された。上記多結晶焼結セラミック体を当技術分野で公知の方法に従って研磨し、本明細書に開示の方法及び装置を使用して表面粗さの測定を実施した。それぞれ約0.012μm及び約3.63μmのSa及びSzの値が測定された。約1138×10
-5のSdr値も測定された。表3、4、13、14、及び15に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例4のセラミック焼結体の結果を要約する。
【0318】
図19は、実施例2、3、及び4に係る、本明細書に開示の少なくとも1種の酸化イットリウムアルミニウムを含む焼結セラミック体の1000倍のSEM顕微鏡写真を示す。上記YAG相は暗灰色に見え、YAPまたはYAMの相は淡灰色に見え、酸化アルミニウム及び多孔性は黒色に見える。図に示すように、実施例2は、約93%のYAG相(暗灰色領域)及び約7%のYAP相(淡灰色領域)、XRD検出限界未満のレベルの酸化アルミニウム(黒色領域)、ならびに密度測定値から計算して約1%の体積多孔度(黒色領域)を示す一方、実施例3は、約95%のYAG相、約5%のYAP相、XRD検出限界未満のレベルの酸化アルミニウム(黒色領域)、及び密度測定値から計算して約0.95%の体積多孔度(黒色領域)を示す。実施例4では、99%以上のYAG相の形成が確認され、体積多孔度は約0.15体積%である。
【0319】
図20は、実施例1、2、3、及び4に係る、本明細書に開示の少なくとも1種の酸化アルミニウムイットリウムを含む焼結セラミック体の5000倍の顕微鏡写真を示す。図に示すように、実施例1は、99%の、結晶粒径が約8um以下のYAGの形成を示し、実施例2は、約93%のYAG相と約7%のYAP相(淡色領域)を示す一方、実施例3は、約95%のYAG相と約5%のYAP相(淡色領域)を示し、実施例4では、約99%のYAG相の形成が確認される。実施例1を示す
図20は、最大結晶粒径が約8μm以下の微細構造をさらに示す。
【0320】
図21は、本明細書に開示の
図20の実施例1~4のセラミック焼結体のX線回折結果を示す。実施例1及び4は、約99%のYAG相を含む焼結セラミック体の形成を示す。実施例2及び3は、YAGならびにそれぞれ7%及び5%のYAP相を含む。
【0321】
実施例5:(試料399、粉末359-09)YAG多結晶焼結セラミック体、低温焼成
比表面積が2~3m2/g、d10粒径が3~4μm、d50粒径が6.5~7.5μm、及びd90粒径が11.5~13μmのイットリアの粉末と、比表面積が5.75~6.75m2/g、d10粒径が0.10~0.2μm、d50粒径が2~3.5μm、及びd90粒径が15~30μmのアルミナの粉末を、焼成粉末混合物を形成して、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末の重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり作用を使用するボールミル粉砕を16時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、850℃で6時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は4~5m2/g、d10粒径は0.15~0.25μm、d50粒径は5~7μm、及びd90粒径は18~22μmであることが測定された。表11によれば、X線回折により、上記焼成粉末混合物中にはイットリア相及びアルミナ相のみが存在することが確認された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、真空下、1600℃、20MPaの圧力で120分間焼結し、その後、空気中、1400℃で8時間焼鈍して、最大寸法572mmの多結晶焼結セラミック体を形成した。密度測定はASTM B962-17に準拠して実施し、5回の測定にわたり平均密度が4.458g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の97.859%及び密度測定値から算出した2.141%の体積多孔度に相当する。表3及び13に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例5の焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0322】
実施例6:(試料195、粉末194-2)YAG多結晶焼結セラミック体、高温焼成
比表面積が4.5~6m2/g、d10粒径が2~3μm、d50粒径が4~7μm、及びd90粒径が7~8μmのイットリウムの粉末と、比表面積が5.5~6.5m2/g、d10粒径が0.10~0.2μm、d50粒径が2~3.5μm、及びd90粒径が15~30μmのアルミナの粉末を、焼成粉末混合物を形成し、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり動作を使用するボールミル粉砕を12時間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1000℃で10時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は4~5m2/g、d10粒径は0.75~2μm、d50粒径は26~32μm、及びd90粒径は220~240μmであることが測定された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。表11によれば、X線回折により、上記焼成粉末混合物中にはイットリア相、アルミナ相、及びYAM(単斜晶系イットリウムアルミニウムモノクリニック)相が存在することが確認された。上記焼成粉末混合物を、真空下、1500℃、20MPaの圧力で30分間焼結し、その後、空気中、1500℃で8時間焼鈍して、150mmの寸法の焼結セラミック体を形成した。密度測定はASTM B962-17に準拠して実施し、5回の測定にわたり平均密度が4.492g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の98.604%及び密度測定値から算出した1.396%の体積多孔度に相当する。SEMの結果は、上記多結晶焼結セラミック体中にYAG相のみが存在することを示す均一な微細構造を示した。表3、10、11、13、及び14に、本明細書に開示の実施形態に係る実施例6の焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0323】
実施例7:(試料93/粉末092-1)YAG多結晶焼結セラミック体、高温焼成
比表面積が6~8m
2/g、d10平均粒径が1.5~3.5μm、d50平均粒径が4.5μm~6.5μm、d90平均粒径が6.5~8.5μmのイットリアの粉末と、比表面積が5~7m
2/g、d10粒径が0.10~0.5μm、d50粒径が2~6μm、及びd90粒径が15~40μmのアルミナ粉末を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり動作を使用するボールミル粉砕を12時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1100℃で8時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は2.5~3.5m
2/g、d10粒径は1.5~3.5μmの、d50粒径は10~13μm、及びd90粒径は180~220μmであることが測定された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。表11に掲載され、
図18のパターンd)に係るX線回折により、上記焼成粉末混合物中にYAP相と、約10体積%以下のYAG(矢印の表示で示すイットリウムアルミニウムガーネット相)が存在することが確認された。上記焼成粉末混合物を、真空下、1500℃、30MPaの圧力で30分間焼結して、150mmの寸法の焼結セラミック体を形成した。密度測定はASTM B962-17に準拠して実施し、5回の測定にわたり平均密度が4.544g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の99.730%及び密度測定値から算出した0.270%の体積多孔度に相当する。SEMの結果は、上記多結晶焼結セラミック体中にYAG相のみが存在することを示す均一な微細構造を示した。表3、10、11、13、及び14に、本明細書に開示の実施形態に係る焼結セラミック体及び焼成粉末混合物の結果を要約する。
【0324】
実施例8:(試料258)YAG多結晶焼結セラミック体
比表面積が4.5~6m
2/gのイットリアの粉末と、比表面積が3.5~5m
2/gのアルミナの粉末を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり動作を使用するボールミル粉砕を12時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1000℃で10時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は7~8m
2/g、d10粒径は0.75~1.75μm、d50粒径は90~110μm、及びd90粒径は240~280μmであることが測定された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、真空下、1550℃、20MPaの圧力で60分間焼結して、最大寸法406mmの円盤状の焼結セラミック体を形成した。密度測定を、ASTM B962-17に準拠して、焼結体の最大寸法に沿って採取した9つの試料について実施し、135回の測定にわたり平均密度が4.542g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の99.70%及び密度測定値から算出した0.3%の平均体積多孔度に相当する。密度は4.526~4.553g/cc(またはYAGの理論値の99.335~99.936%)の多結晶焼結セラミック体の最大寸法によって異なることが分かり、密度変動は約0.601%であると決定された。多結晶焼結セラミック体は、31mmの厚さを有し、厚さにわたる密度変動は、最大寸法に沿って採取した9つの試料のそれぞれの上部、中央部及び下部の密度を測定することによって決定され、厚さにわたる密度は、0.3%以下変化するように測定された。本明細書に開示の方法を使用して、密度測定値の精度は、本明細書に開示の方法を使用して、約0.1%とすることができ、したがって、焼結セラミック体の厚さにわたる密度の変動は、約0.1~0.3%であってよい。SEMの結果は、上記多結晶焼結セラミック体中にYAG相のみが存在することを示す均一な微細構造を示した。
図24のa)の1000倍及びb)の5000倍のSEM画像により、上記焼結セラミック体の約99体積%以上の量のYAG相(暗灰色)が存在することを示す、高密度で均一な微細構造が明らかになっている。表3、10、11、13、及び14に、本明細書に開示の実施形態に係る焼結セラミック体及び焼成粉末混合物の結果を要約する。さらなる試料を、この実施例に従って焼結し、空気中、1200℃で8時間焼鈍したところ、本明細書に開示の方法を使用した平均密度がYAGの理論値の99.73%であった。さらなる試料を、この実施例に従って焼結し、空気中、1100℃で8時間焼鈍したところ、本明細書に開示の方法を使用した平均密度がYAGの理論値の99.75%であった。
【0325】
実施例9:(試料408/粉末359-06)低圧で形成されたYAG多結晶焼結セラミック体
比表面積が2~3m2/g、d10粒径が3~4μm、d50粒径が6.5~7.5μm、及びd90粒径が11.5~13μmのイットリアの粉末と、比表面積が5.75~6.75m2/g、d10粒径が0.10~0.2μm、d50粒径が2~3.5μm、及びd90粒径が15~30μmのアルミナの粉末を、焼結時に0.5体積%の過剰な酸化アルミニウムを含むイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成する粉末混合物を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり動作を使用するボールミル粉砕を12時間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、850℃で6時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は3.5~4.5m2/g、d10粒径は0.3~0.6μm、d50粒径は8~11μm、及びd90粒径は20~24μmであることが測定された。表11によれば、X線回折により、上記焼成粉末混合物中にはイットリア相及びアルミナ相のみが存在することが確認された。上記焼成粉末混合物のICPMSにより、約17ppmの不純物が測定された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、真空下、1600℃、15MPaの圧力で90分間焼結し、その後空気中、1400℃で8時間焼鈍して、多結晶焼結セラミック体中に残留程度の過剰なアルミナを含むYAGを含む、最大寸法572mmの多結晶焼結セラミック体を形成した。密度測定はASTM B962-17に準拠して実施し、5回の測定にわたり平均密度が4.378g/ccと測定され、これは、YAGの理論密度の96.088%及び密度測定値から算出した3.912%の体積多孔度に相当する。表3、10、11、13、及び14に、本明細書に開示の実施形態に係る焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0326】
実施例10:(試料395、359-11)YAG多結晶焼結セラミック体
比表面積が2~3m2/g、d10粒径が3~4μm、d50粒径が6.5~7.5μm、及びd90粒径が11.5~13μmのイットリアの粉末と、比表面積が5.75~6.75m2/g、d10粒径が0.10~0.3μm、d50粒径が2.5~5μm、及びd90粒径が15~30μmのアルミナの粉末を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.99%を超える)を粉末重量に対して50%の充填量で添加し、エタノールを添加して約40体積%のスラリーを形成した。水平軸周りの転がり作用を使用するボールミル粉砕を16時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、850℃で6時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は4~5m2/g、d10粒径は0.15~0.25μm、d50粒径は5~7μm、及びd90粒径は18~24μmであることが測定された。表11によれば、X線回折により、上記焼成粉末混合物中にはイットリア相及びアルミナ相のみが存在することが確認された。上記粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、真空下、1600℃、20MPaの圧力で90分間焼結し、その後1400℃で8時間焼鈍して、最大寸法572mmの多結晶焼結セラミック体を形成した。密度測定はASTM B962-17に準拠して実施し、5回の測定にわたり平均密度が4.389g/ccと測定され、これはYAGの理論密度の96.334%及び密度測定値から算出した3.656%の体積多孔度に相当する。密度変動が最大寸法にわたって測定され、1.712%であることが分かった。表3、10、11、13、及び14に、本明細書に開示の実施形態に係る焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0327】
実施例11:(試料506、粉末20261);最大寸法622mmの多結晶YAG焼結セラミック体
比表面積が2~3m
2/g、d10粒径が2.5~4.5μm、d50粒径が6~8μm、及びd90粒径が11~13μmのイットリアの粉末(平均純度99.9980%、平均不純物約21ppm)と、比表面積が6.5~8.5m
2/g、d10粒径が0.75~1.5μm、d50粒径が2~5μm、及びd90粒径が18~24μmのアルミナ粉末(純度99.9994%、不純物約6ppm)を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約35%の量で添加して、スラリーを形成した。当業者に公知のボールミル粉砕を約20時間の期間実施し、その後公知の方法に従って、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを、60~75℃の温度で約3時間抜き出した。空気中、1050℃で6時間焼成したところで、表10に掲載されるように、焼成粉末混合物の比表面積は3.5~5.5m
2/g、d10粒径は1~3.5μm、d50粒径は5~8μm、及びd90粒径/凝集体径は130~160μmであることが測定された。特定の実施形態において、本明細書に開示の焼成条件により、上記粉末混合物が凝集する可能性があり、したがって、粒径分布がより大きく変動する可能性がある。したがって、実施形態において、本明細書で言及する粒径は単一の粒子を含んでいてもよく、他の実施形態において、本明細書で言及する粒径は複数の粒子を含む凝集体、または本明細書に開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定される場合がある多数の粒子の凝集を含んでいてもよい。X線回折により、焼成粉末混合物に存在するイットリア、アルミナ、及びYAM相が確認された。上記焼成粉末混合物の純度は、本明細書に開示のICPMS法を使用して測定した出発粉末の純度とほぼ同一であり、したがって、高純度(99.999%以上)の焼結セラミック体を上記焼成粉末混合物から形成することができる。SiO
2の形態のSiに関する、本明細書に開示のICPMS法を使用する場合の検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルのシリカの形態のSiを含む可能性がある。但し、出発粉末及び焼成粉末混合物中に、ICPMSを使用してシリカは検出されなかった。表11に、焼成条件、焼成粉末の相、及び粉末の純度を掲載する。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、転倒混合、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10
-2~10
-3トールの真空条件をつくり出した。上記容積内の焼成粉末混合物を5℃/分で800℃に加熱し、その温度で5MPaの圧力を印加し、次いで、約2~約3℃/分の加熱速度で熱を印加すると同時に、約0.2~約0.25MPa/分の速度で圧力を印加し、1650℃及び15MPaの焼結条件に到達させ、これを60分間維持して、最大寸法622mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。粉砕プロセス中に高純度のアルミナ媒体を使用することにより、焼結セラミック体に残留する程度までの、約0.1体積%以下の量の過剰なアルミナが温存在する場合がある。密度測定は、試料の半径を横切って切断した試料について、ASTM B962-17に準拠して実施し、密度の結果を
図25のbに示す。半径に沿った6ヶ所でそれぞれ5回の測定を行い、平均密度が4.546g/ccと測定され、これはYAGの理論値の99.783%、且つ0.217%の体積多孔度に相当する。半径全体にわたる密度はYAGの理論値の99.7~99.9%であった。
図25のb)に示す密度の変動は、半径に沿った最高密度の測定値と比較して測定し、密度の最大の変動は0.208%と測定された。上記焼成粉末混合物の焼結中に、圧力及び温度を半径方向に対称な構成で印加する。したがって、高密度(YAGの理論値の99%以上)及び最小の密度の変動(0.21%以下)などの特性は、上記焼結セラミック体の半径全体にわたって、且つそれに対応して、直径または最大寸法全体にわたっても維持される。したがって、本明細書では、焼結セラミック体であって、該焼結セラミック体の直径全体にわたって、平均密度が4.546g/cc、密度の範囲がYAGの理論密度の99.7~99.9%、平均体積多孔度が0.217%、最大の密度変動が0.208%以下である、上記焼結セラミック体が開示される。
【0328】
当業者に公知のヘイン直線切断法を使用して5000倍のSEM画像を結晶粒径に関して解析し、25回の繰り返し測定にわたる平均結晶粒径は6.2μm、標準偏差は0.71μmと測定された。表3に掲載するように、最大結晶粒径及び最小結晶粒径もそれぞれ7.7um及び5.0umと測定された。硬度測定は、ASTM規格C1327に準拠し、0.025kgfのロードセルを使用して実施し、平均硬度は約14.8GPaと測定され、この平均値は8回の測定から算出され、最大及び最小硬度値はそれぞれ16GPa及び12.7GPaであった。
【0329】
試料506の結晶相純度の測定は、実施例11に開示の方法に従って、XRD、SEM画像化、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して実施した。XRDによって、試料506が少なくとも95体積%の量のYAGを含むことが確認された。XRD、SEM、及び画像処理ソフトウェアの組み合わせにより、約±0.1体積%の範囲の相純度で測定することができる。アルキメデス密度の測定、XRD、SEM画像化、及び画像解析ソフトウェアの開示する方法を使用して、試料506には、約0.3体積%のアルミナ相、約0.2%の体積多孔度、及び約99.5体積%のYAG相が含まれていた。SEM及びImageJ処理を使用して、0.1umの最小細孔径を測定することができる。本明細書に開示の焼結セラミック体について、SEM画像化及び開示する画像処理方法を使用して、最大細孔径は1.7umと測定された。したがって、本明細書に開示の実施形態によれば、YAGを含む上記焼結セラミック体は、最大径が0.1~5um、好ましくは0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1.7umであってよい細孔を含んでいてもよい。
【0330】
試料506に係る焼結セラミック体は、本明細書に開示のプロセスに従って製造された一体型焼結セラミック体を含んでいてもよく、したがって、表面上及び結セラミック体全体に分布したYAG相、酸化アルミニウム相、及び体積多孔度を含んでいてもよい。換言すれば、表面上で測定された構造は、YAGを含み、実施形態において酸化アルミニウムをさらに含むバルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表する。したがって、それぞれ体積で表して、90~99.7%、好ましくは90~99.5%、好ましくは90~99.3%、好ましくは95~99.7%、好ましくは95~99.5%、好ましくは95~99.3の量のYAG相を含む焼結セラミック体は、本明細書に開示の材料及び方法を使用して形成することができる。さらなる実施形態において、指定される量のYAG相を含む焼結セラミック体は、0.1~0.3体積%の量の多孔度、及び0.2~0.4体積%の量の酸化アルミニウムをさらに含んでいてもよい。
【0331】
表3、4、5、13、及び15に、本明細書に開示の実施形態にかかる焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0332】
実施例12:(試料512、512-1、粉末505-1);多結晶YAG焼結セラミック体
比表面積が0.75~2m
2/g、d10粒径が3.5~6.5μm、d50粒径が7.5~10.5μm、及びd90粒径が15~20μmのイットリアの粉末(100%純粋なイットリアに対して純度約99.9992%)と、比表面積が5~7m
2/g、d10粒径が1~3μm、d50粒径が3.5~6.5μm、及びd90粒径が50~70μmのアルミナの粉末(100%純粋なアルミナに対して純度約99.9998%)を、焼結時に立方晶系イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を含むセラミック焼結体を形成する粉末混合物を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMS法で測定して99.9%以上)を粉末重量に対して約100%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約40%の量で添加してスラリーを形成した。1リットルの容器中で、水平軸周りの150rpmでの軸転がり作用を使用するボールミル粉砕を20時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1050℃で6時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は2~3m
2/g、d10粒径は1~4μm、d50粒径は3.5~6.5μm、及びd90粒径は75~95μmであることが測定された。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、当業者に公知の方法に従って種々のプロセスステップで、45~400umの開口径を使用したふるい分け、焼成、配合、及び/または粉砕を行ってもよい。本明細書に開示のICPMS法を使用して純度を測定し、すべての構成成分から計算した酸化物の総質量を基準として、上記焼成粉末混合物の総不純物含有量が約5ppmと測定され、これは99.9995%の純度に相当した。本明細書に開示のイットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量はSiを含んでいない。本明細書に開示の、Siに関する純度を測定するためのICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末ならびに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルでシリカの形態のSiを含む可能性がある。上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10
-2~10
-3トールの真空条件をつくり出した。5MPaの圧力を印加し、上記容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から800℃まで10℃/分で加熱し、その後約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度の上昇は先程開示したものを継続し、1500℃及び20MPaの焼結条件に到達させ、これを30分間維持して、最大寸法150mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。試料512-1は同一の条件に従って焼結し、その後炉内で、空気中、1400℃で8時間焼鈍した。密度測定は、焼結したままの試料及び焼鈍した試料に対して、ASTM B962-17に準拠して実施した。焼結したままの試料(512)及び焼鈍した試料(512-1)のそれぞれについて、5回の測定にわたって平均化を行い、4.547g/cc及び4.542g/ccの密度が得られた。これは、本明細書に開示の密度測定値から算出して、YAGの理論密度のそれぞれ99.81%及び99.70%に相当し、それぞれ0.19%及び0.30%の体積多孔度に相当する。表1、8、9、及び11に、本明細書に開示の実施形態に係る、焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。試料512の結晶相純度の測定は、本明細書に開示のXRD、SEM画像化、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して実施した。XRDは、約±5%の範囲の結晶相の同定が可能なPANanlytical Aeris型XRDを使用して実施し、したがって試料512は、XRDを使用して約95体積%の上限までYAGを含むと測定された。より高い精度、例えば、最大で約99.8体積%の相純度を測定するために、SEM画像を、当業者に公知の後方散乱検出(BSD)法を使用して撮影した。BSDを使用すると、YAG相は灰色に見え、結晶粒の配向に応じて多少変化し、酸化アルミニウム相は黒色に見え、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性(存在する場合)も黒色に見える。試料512について、当業者に公知のBSD法を使用して5000倍で画像を撮影し、
図20のa)に示す、YAG相、アルミナ相、及びイットリア相、ならびに存在する任意の多孔性を同定した。アルミナを含む黒色領域と多孔性を含む黒色領域とを区別するために、ImageJ処理ソフトウェアを使用して上記BSD画像を白黒閾値処理し、
図20のb)に同一の領域として示されている、多孔性またはアルミナのいずれかを含む可能性のある領域を強調した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)において開発され、科学的な多次元画像の画像処理のためのJavaベースのパブリックドメイン画像処理及び画像解析プログラムである。本明細書に開示の測定に使用されるBSD検出器は、トポグラフィーの形体を測定するさらなる能力を有し、それにより、多孔性などの表面トポグラフィーにおける任意の偏差を強調する。BSD検出器のトポグラフィーモードを使用して、画像を、
図20のa)の試料512のセラミック焼結体の同一の領域の表面全体にわたって5000倍で撮影し、そのトポグラフィー画像を
図21のa)に示す。ImageJで閾値処理した後には、多孔性を含む領域が
図21のb)に示すように強調された。その後、
図21のb)のトポグラフィー画像内の多孔性を含む領域を、
図20のb)のBSD画像におけるアルミナ及び/または多孔性を含む領域から差し引いて、試料512に対応する焼結セラミック体中のアルミナ相を含む面積の割合、延いては体積の割合を得た。これらの解析ツールと方法の併用により、約±0.1体積%の範囲で相純度の測定を行うことができる。開示されるアルキメデス密度測定方法、XRD、SEM画像化、及び画像解析ソフトウェアを使用して、試料512が、約0.2体積%のアルミナ相、約0.19%の体積多孔度、及び約99.6体積%のYAG相を含む可能性がある。表1に、本明細書に開示の焼結セラミック体の結晶相純度及び体積多孔度を掲載する。試料512に係る焼結セラミック体は、本明細書に開示のプロセスに従って製造された一体型焼結セラミック体を含んでいてもよく、したがって、上記焼結セラミック体の表面上及び焼結セラミック体全体にわたって分布した、YAG相、酸化アルミニウム相、及び体積多孔度を含んでいてもよい。換言すると、表面上で測定される構造は、バルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表している。したがって、それぞれ体積で表して、90~99.8%、好ましくは90~99.6%、好ましくは90~99.4%、好ましくは95~99.8体積%、好ましくは95~99.6%、好ましくは95~99.4%の量のYAG相を含む焼結セラミック体は、本明細書に開示の材料及び方法を使用して形成することができる。測定の変動を考慮すると、本明細書で指定される量のYAG相を含む焼結セラミック体は、0.1~0.3体積%の量の多孔度、及び0.1~0.3体積%の量の酸化アルミニウムをさらに含んでいてもよい。
図26、27、ならびに表3、10、11、及び13は、上記焼成粉末混合物及び焼結セラミック体の特性を開示する。
【0333】
実施例13:(試料272、272-5、粉末20099);多結晶YAG焼結セラミック体
比表面積が4.5~6m2/g、d10粒径が2.0~3.5μm、d50粒径が4.0~6.5μm、及びd90粒径が6.5~10μmのイットリアの粉末(全酸化物を基準として、純度約99.9984%、不純物約16ppm)と、比表面積が6~8m2/g、d10粒径が0.075~0.2μm、d50粒径が2.5~5.5μm、及びd90粒径15~22μmのアルミナの粉末(全酸化物を基準として、純度約99.9995%、不純物約5ppm)を、焼結時に立方晶系イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含むセラミック焼結体を形成する粉末混合物を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を、粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約35%の量で添加してスラリーを形成した。ポリビニルピロリドン(PVP)の分散剤を、スラリーの総重量を基準として約0.07重量%で添加した。当業者に公知の転倒(tunble)または転倒(end-over-end)混合を12時間の期間実施し、その後回転蒸発器を使用し、公知方法に従って粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1000℃で10時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積を測定し、4~5m2/gとなった。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、当業者に公知の方法に従って種々のプロセスステップで、45~400umの開口径を使用したふるい分け、焼成、配合、及び/または粉砕を行ってもよい。本明細書に開示のICPMS法を使用して純度を測定し、すべての構成成分から計算した酸化物の総質量を基準として、上記焼成粉末混合物の総不純物含有量が約5ppmと測定され、これは約99.9995%の純度に相当した。本明細書に開示のイットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量はSiを含んでいない。本明細書に開示の、Siに関する純度を測定するためのICPMS法を使用する検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末ならびに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルでシリカの形態のSiを含む可能性がある。上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10-2~10-3トールの真空条件をつくり出した。5MPaの圧力を印加し、上記容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から800℃まで10℃/分で加熱し、その後約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度の上昇は上記のものを継続し、1450℃及び20MPaの焼結条件に到達させ、これを45分間維持して、最大寸法150mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。試料272-5は同一の条件下で焼結し、その後炉内で、空気中、1550℃で8時間焼鈍した。密度測定は、焼結したままの試料及び焼鈍した試料に対して、ASTM B962-17に準拠して実施した。焼結したままの試料(272)及び焼鈍した試料(272-5)のそれぞれについて、5回の測定にわたって平均化を行い、4.549g/cc及び4.433g/ccの密度が得られた。これらは、YAGの理論密度(本明細書で4.556g/ccと報告)のそれぞれ99.854%及び97.300%に相当し、それぞれ0.146%及び2.70%の体積多孔度に相当する。この実施例に係る焼結セラミック体の目視による見掛けの色は、焼鈍の違いに起因する可能性のある体積多孔度及び細孔径分布によって影響を受けている可能性がある。多孔性が存在することは、当業者に公知のミー散乱理論に従って光散乱の一因となる。高密度、未焼鈍の試料272は、体積多孔度レベルがより低く、それによって光の散乱がより小さいことに起因する可能性がある灰色に見える。これと比較して、体積多孔度レベルがより高い焼鈍した試料272-5の入射光の散乱はより大きく、目視での検査時に白色に見える。
【0334】
試料272及び272-5に係る焼結セラミック体は、本明細書に開示のプロセスに従って製造された一体型焼結セラミック体を含んでいてもよく、したがって、YAG相、酸化アルミニウム相、ならびに表面上及び焼結セラミック体全体に分布した体積多孔性を含んでいてもよい。換言すれば、表面上で測定される構造は、YAGを含み、実施形態において酸化アルミニウムをさらに含むバルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表する。本実施例に従って形成した試料272は、約0.3体積%の量の酸化アルミニウム、約0.15体積%の量の体積多孔度、及び約99.55体積%の量のYAG相を含んでいてもよい。本実施例に従って形成した試料272-5は、約0.3体積%の量の酸化アルミニウム、約2.75体積%の量の体積多孔度、及び約97.00体積%の量のYAG相を含んでいてもよい。
【0335】
表3、10、11、及び13に、上記焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0336】
実施例14:(試料432、粉末398-2)多結晶YAG焼結セラミック体
比表面積が2~3m2/g、d10粒径が2.5~4.5μm、d50粒径が6~8μm、及びd90粒径が11~13μmのイットリアの粉末(平均純度99.9880%、平均不純物約21ppm)と、比表面積が6.5~8.5m2/g、d10粒径が0.1~0.2μm、d50粒径が1~3μm、及びd90粒径が13~20μmのアルミナ粉末(純度99.9994%、不純物約6ppm)を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を、粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約35%の量で添加してスラリーを形成した。当業者に公知の軸方向に回転するボールミル粉砕を約20時間の期間実施し、その後公知の方法に従って、回転蒸発器を使用して粉末混合物からエタノールを、60~75℃の温度で約3時間抜き出した。空気中、950℃で4時間焼成したところで、焼成粉末混合物をふるい分けし、比表面積が5~7m2/gであることが測定された。X線回折により、焼成粉末混合物中にイットリア相及びアルミナ相が存在することが確認された。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、焼成、転倒混合、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10-2~10-3トールの真空条件をつくり出した。上記容積内の焼成粉末混合物を3℃/分で800℃に加熱し、その温度で5MPaの圧力を印加し、次いで、約1~約3℃/分の加熱速度で熱を印加すると同時に、約0.2~約0.3MPa/分の速度で圧力を印加し、1500℃及び20MPaの焼結条件に到達させ、これを30分間維持して、最大寸法150mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。
【0337】
面積に基づく多孔度及び細孔径の測定を、画像処理のためのImageJソフトウェアと組み合わせたSEM画像化を使用して、試料432に対して実施した。SEM画像を、当業者に公知の後方散乱検出(BSD)法を使用して撮影した。BSDを使用すると、YAG相は灰色に見え、結晶粒の配向に応じて多少変化し、酸化イットリウム相は白色に見え、多孔性(存在する場合)は黒色に見える。試料432にかかる本明細書に開示の焼結セラミック体は、YAG結晶相を含み、表面上及び全体の両方に多孔性及び/または細孔をさらに含む一体型焼結セラミック体であってよい。したがって、結晶相、細孔径及び頻度、ならびに表面上で測定された多孔度/細孔面積などの特徴は、バルクの焼結セラミック体内の特徴を代表する。ImageJ処理ソフトウェアを使用して上記BSD画像を白黒閾値処理し、多孔性を含む可能性のあるBSD画像中の黒色領域を強調した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)において開発され、科学的な多次元画像の画像処理のためのJavaベースのパブリックドメイン画像処理及び画像解析プログラムである。ImageJソフトウェアを使用して、多孔性を含む表面積を計算した。
図22のa)及びb)は、試料432の焼結セラミック体の表面の面積に基づく細孔/多孔度測定を示す。
図22のa)は、垂直軸と水平軸上の試料表面から撮影し、所与の細孔面積の割合に寄与する、ミクロンで表した対応する細孔径を表す、7つのSEM画像のそれぞれについての細孔または多孔度(細孔面積)を含む表面積の割合を示す。細孔径及び総細孔面積を、本明細書に開示のImageJソフトウェア法を使用して、7つのSEM画像にわたって測定した。画像を5000倍で撮影し、それぞれの総面積は約53.7um×53.7umであり、単一の画像の測定面積は約2885um
2に相当していた。総細孔面積を単一の画像の測定面積と共に使用して、細孔面積の割合に到達した。7つの画像のいずれか1つ内の面積は、約0.0005~約0.012%、好ましくは約0.0005~約0.011%、好ましくは約0.0005~約0.0105%の総表面積に対する多孔度の割合を含んでいた。
【0338】
図22のb)は、
図22のa)の7つの画像の総面積のそれぞれにわたって正規化し、割合で表し単位がum
2/mm
2の、多孔性を含む面積の累積値(累積細孔面積)を、横軸上のそれぞれの孔径に対して対数目盛で示している。YAGを含む試料432は、約2~約800um
2/mm
2、好ましくは約2~約600um
2/mm
2、好ましくは約2~約400um
2/mm
2、好ましくは約2~約300um
2/mm
2の累積細孔面積率を含んでいてもよい。本YAG焼結セラミック体内の解析した7つの画像を通じて、約0.6umを超える細孔径の細孔は測定されなかった。したがって、本明細書に開示のYAG焼結セラミック体は、表面にわたって及び全体を通じて、細孔径が1um以下であってもよい細孔を含んでいてもよい。
【0339】
図23のa)は、当技術分野で公知のとおりに実施される熱エッチングプロセス後のYAGを含む焼結セラミック体のSEM顕微鏡写真を示し、小さな寸法の少数の細孔を表面上に、且つそれにより該焼結体内に示す。本明細書に開示のYAG焼結セラミック体は、径が、5um以下であり、サブミクロンスケールまで低下した、約0.1umまでも小さてよい細孔を含んでいてもよい。
図23のa)に示す焼結セラミック体の表面は、約2884um
2の表面積全体にわたって約20個の細孔を含む。本明細書に開示の実施形態によれば、YAGを含む焼結セラミック体は、最大径が0.1~5um、好ましくは0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1um、好ましくは0.1~0.6umであってもよい細孔を含んでいてもよい。本明細書に開示のさらなる実施形態によれば、YAGを含む上記焼結セラミック体は、約2885um
2の表面にわたって、約20個の細孔、好ましくは3~25個の細孔、好ましくは3~20個の細孔、好ましくは3~15個の細孔、好ましくは5~25個の細孔、好ましくは5~20の細孔、好ましくは5~15個の細孔、好ましくは5~10個の細孔の頻度を有していてもよい細孔を含んでいてもよい。
【0340】
図23のb)は、
図22の試料432に関する7つのSEM顕微鏡写真のそれぞれについて、多孔性を含む総面積の割合の合計を示す。すべての画像にわたり、総多孔度の割合は0.001~0.03%、好ましくは0.001~0.025%、好ましくは0.001~0.02%、好ましくは0.001~0.015%、好ましくは0.001~0.010%であった。したがって、約54um×54umの表面積にわたって、本明細書に開示の焼結セラミック体は、非常に低い(面積で1%未満)割合で多孔性を含む表面を有することができ、したがって、プラズマ加工チャンバー中で使用するための焼結セラミック体の耐食性及び耐侵食性の表面、延いては塊提供する。
【0341】
試料432に対して、Sa、Sz、及びSdrの表面粗さ測定を、ISO規格25178-2-2012の4.1.7.節、算術平均高さSa、4.1.6.節、最大高さSz、及び4.3.2.節、界面の展開面積比Sdrに準拠して実施した。表面粗さ測定は、クラス1のクリーンルーム中で、周囲条件下、Keyence 3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡VK-X250X型を使用して実施した。上記顕微鏡は、2.8Hzの固有振動数のTMC TableTop CSPパッシブ卓上型除振台上に設置されている。この非接触システムは、レーザー光線及び光学センサーを使用して、反射光の強度によって表面を分析する。この顕微鏡は、x方向に1,024データポイント、y方向に786データポイント、計786,432データポイントを取得する。所定の走査が完了したところで、対物レンズがz方向に設定されたピッチで移動し、走査間で強度を比較して焦点を決定する。
【0342】
本明細書に開示の方法に従い、研磨した表面全体にわたって、2~15nm、好ましくは2~10nm、好ましくは2~8nm、好ましくは2~5nmのSa、好ましくは3nmの平均Saが測定された。
【0343】
本明細書に開示の方法に従い、研磨した表面全体にわたって、0.3~5um、好ましくは0.3~4um、好ましくは0.3~3um、好ましくは0.3~2um、好ましくは0.3~1um、好ましくは0.3~0.5umのSz、好ましくは0.4umの平均のSzが測定された。
【0344】
本明細書に開示の方法に従い、研磨した表面全体にわたって、好ましくは15~400×10-5、好ましくは15~200×10-5、好ましくは15~100×10-5、好ましくは25~200×10-5、好ましくは25~100×10-5、好ましくは25~50×10-5のSdrが測定された。表10、11、13、及び16に、試料432に係る製造方法及び特性を掲載する。
【0345】
実施例15:(試料298、617、粉末286、615);ジルコニアを含む多結晶YAG焼結セラミック体
実施形態において、本焼結セラミック体が約20~100ppmの量のジルコニアを含むことが好ましい場合がある。ジルコニアが存在することによって、そこから形成される焼結セラミック体において、結晶粒径が小さくなり、且つ微細構造が均一になる能性がある。ジルコニアは、粉末バッチング中に意図的に添加してもよく、または粉末の混合中にジルコニア媒体を使用することに由来してもよい。
【0346】
ジルコニアは、粉末バッチングプロセスの一部として含有させる場合、例えば、酸化物、塩化物、硝酸塩、または炭酸塩の粉末形態として添加されてもよく、その場合、これらの化合物は、スラリー形成中に解離する場合があり、そのことにより、焼成粉末混合物及びそれから形成される焼結セラミック体中にジルコニアが均一に分散することができる。
【0347】
第1の実施形態において、ジルコニアを、粉末286を形成するためのすべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として約50ppmの量の塩化ジルコニルの形態で添加した。比表面積が2.0~3.0m2/g、d10粒径が2.5~4.5μm、d50粒径が6.0~9.0μm、及びd90粒径が10.5~18μmのイットリアの粉末(すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、純度約99.9983%、不純物約17ppm)と、比表面積が6~8m2/g、d10粒径が0.075~0.3μm、d50粒径が2.5~5.5μm、及びd90粒径が35~42μmのアルミナの粉末(すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、純度約99.9994%、不純物約6ppm)を、焼結時に立方晶系イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含み、ジルコニアをさらに含むセラミック焼結体を形成する粉末混合物286を形成するモル比で配合した。高純度アルミナ媒体(ICPMSによって測定して99.9%以上)を、粉末重量に対して約60%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約35%の量で添加して、スラリーを形成した。当業者に公知の転倒(tumble)または転倒(end-over-end)混合を20時間の期間実施し、その後、回転蒸発器を使用し、公知の方法に従ってエタノールを粉末混合物から抜き出した。空気中、850℃で12時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は2.5~4.5m2/g、d10粒径は0.5~0.45μm、d50粒径は、4.5~7.0μm、及びd90粒径は17~24μmであることが測定された。上記焼成粉末混合物はイットリ相及びアルミナ相を含んでいた。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、当業者に公知の方法に従って種々のプロセスステップで、45~400umの開口径を使用したふるい分け、焼成、配合、及び/または粉砕を行ってもよい。酸化ジルコニウムは無機焼結助剤であり、したがって出発粉末に添加した状態と同様のレベルで焼成粉末混合物及び焼結セラミック体中に残留することとなる。粉末286は、それ自体、約50ppmの量の焼結助剤としてのジルコニアに加えて、すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、約3ppmの不純物を含んでいた。上記焼成粉末混合物286を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10-2~10-3トールの真空条件をつくり出した。5MPaの圧力を印加し、上記容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から800℃まで10℃/分で加熱し、その後約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度の上昇は上記のものを継続し、1450℃及び20MPaの焼結条件に到達させ、これを30分間維持して、最大寸法100mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体である試料298を形成した。試料298-1及び298-2を同一の条件下で焼結し、その後炉内でそれぞれ、空気中、それぞれ1400℃及び1550℃で8時間焼鈍した。
【0348】
密度測定は、焼結したままの試料及び焼鈍した試料に対して、ASTM B962-17に準拠して実施した。焼結したままの試料(298)、298-1及び298-2の焼鈍した試料について5回の測定にわたって平均化を行い、それぞれ4.540g/cc、4.525及び4.379g/ccの密度が得られた。これらは、YAGの理論密度(本明細書で4.556g/ccと報告)のそれぞれ99.65%、99.33%及び96.15%に相当し、密度測定値から算出して、それぞれ0.35%、0.67%及び3.85%の体積多孔度に相当する。この実施例に係る試料298の焼結セラミック体の目視による見掛けの赤みがかった灰色は、焼鈍の違いに起因する可能性のある体積多孔度、ジルコニアの存在、及び細孔径分布によって影響を受けている可能性がある。多孔性が存在することは、当業者に公知のミー散乱理論に従って光散乱の一因となる。試料298-1の色も、表面上及び全体で共に赤みがかった灰色に見え、これは、体積多孔度のレベルがより低く、それにより光の散乱がより小さいことに起因する可能性がある。これと比較して、体積多孔度レベルがより高い焼鈍した試料298-2の入射光の散乱はより大きくなり、目視での検査時に、表面上及び全体で共に白色に見える。X線回折により、すべての試料で約99体積%の量のYAG相が存在することが明らかになった。
【0349】
使用するジルコニア媒体が混合中に摩耗(wear)及び摩滅(abrasion)することによっても、媒体の充填量、媒体の種類、及び混合の期間の混合/粉砕パラメータに応じて、さまざまな量で焼結セラミック体中にジルコニアが存在することになる場合がある。
【0350】
比表面積が6.5~8.0m2/g、d10粒径が1.5~3.5μm、d50粒径が3.5~5.5μm、及びd90粒径が6.5~8.5μmのイットリアの粉末(すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、平均純度約99.9988%、平均不純物約12ppm)と、比表面積が17~18m2/g、d10粒径が0.08~0.3μm、d50粒径が1.0~3.0μm、及びd90粒径が4.5~7μmのアルミナの粉末(すべての構成成分の含有量から計算した酸化物の総質量を基準として、純度約99.9985%、不純物約15ppm)を、焼結時に立方晶系イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含み、ジルコニアを焼結体中に残留する程度でさらに含むセラミック焼結体である試料617を形成する、粉末混合物615を形成するモル比で配合した。
【0351】
ジルコニア媒体を、粉末の総質量を基準として100質量%の充填量で添加し、エタノールを、エタノールと粉末の合計重量に対して約40重量%の量で添加してスラリーを形成した。当業者に公知の軸方向に回転する湿式ボールミル粉砕を、約150RPMで12時間の期間実施し、その後、公知の方法に従って回転蒸発器を使用して、粉末混合物からエタノールを抜き出した。空気中、1100℃で8時間焼成したところで、焼成粉末混合物の比表面積は3.5~5.0m2/g、d10粒径は0.5~0.85μmの、d50粒径は35~45μm、及びd90粒径は約270~290μmであることが測定された。ICPMSを使用して粉末の不純物を測定し、約54ppmのジルコニアを含む約73ppmであることが測定された。特定の実施形態において、本明細書に開示の焼成条件では粉末混合物が凝集する可能性があり、したがって、粒径分布がより大きく変動する可能性がある。したがって、実施形態において、本明細書で言及する粒径は単一の粒子を含んでいてもよく、他の実施形態において、本明細書で言及する粒径は複数の粒子を含む凝集体、または本明細書に開示されるレーザー粒径検出方法を使用して、単一の大きな粒子として測定される場合がある多数の粒子の凝集を含んでいてもよい。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、当業者に公知の方法に従って種々のプロセスステップで、45~400umの開口径を使用したふるい分け、焼成、配合、及び/または粉砕を行ってもよい。
【0352】
焼成粉末混合物615を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成される容積内に配置し、上記容積内に10-2~10-3トールの真空条件をつくり出した。5MPaの圧力を印加し、上記容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から800℃まで10℃/分で加熱し、その後約0.4~約0.6MPa/分の速度で圧力を上昇させ、温度の上昇は上記のものを継続し、1450℃及び30MPaの焼結条件に到達させ、これを30分間維持して、最大寸法100mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体である試料617を形成した。
【0353】
酸化ジルコニウムは無機酸化物であり、したがって、焼成粉末混合物中及び焼結セラミック体内に同一レベルで残留することとなる。粉末615は、ICPMS法を使用して測定して、約54ppmのジルコニアを含む、合計約73ppmの不純物を含み、したがって、焼結セラミック体617は、上記粉末のジルコニアレベルと略同一のジルコニアレベルを含む。上記焼結セラミック体は、YAGの理論密度の約99%であり、99体積%を超えるYAG相を含むことが測定された。
【0354】
本明細書に開示のイットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物の純度限界及び不純物含有量はSiを含まない。本明細書に開示の純度測定のためのICPMS法を使用したSiの検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末ならびに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルでシリカの形態のSiを含む可能性がある。
【0355】
この実施例に係る焼結セラミック体は、本明細書に開示のプロセスに従って製造された一体型焼結セラミック体を含んでいてもよく、したがって、表面上及び焼結セラミック体全体に分布したYAG、酸化ジルコニウム、及び体積多孔性を含んでいてもよい。換言すれば、表面上で測定された構造は、YAGを含み、実施形態において酸化ジルコニウム及び体積多孔性をさらに含むバルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表する。
【0356】
表3、10、11、及び13に、上記焼結セラミック体及び焼成粉末の結果を要約する。
【0357】
実施例16:(試料151及び151-1、粉末145);YAGを含む多結晶焼結セラミック体
比表面積が4~6m2/g、d10粒径が1.5~3.5μm、d50粒径が3.5~5.5μm、及びd90粒径が6.5~8.5μmのイットリウムの粉末(平均純度99.9985%、平均不純物約15ppm)と、比表面積6.5~8.5m2/g、d10粒径が0.05~0.15μm、d50粒径が0.15~0.35μm、及びd90粒径が0.35~1μmのアルミナ粉末(平均純度99.9989%、平均不純物約12ppm)を、焼結時にイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体を形成する粉末混合物を形成するモル比で配合した。上記アルミナ粉末のd10粒径とd90粒径の差は約0.2um以上且つ約0.95um以下であることが測定された。上記粉末混合物を、媒体を使用せずにローラー混合により約8時間乾式混合した。その後、焼成を空気中、800℃で4時間実施し、当業者に公知のジェットミリングを100psiの圧力で実施した。焼成し且つ粉砕した粉末混合物の比表面積は6.2~8.2m2/g、d10粒径は0.07~0.3μm、d50粒径は0.7~1.5μm、及びd90粒径は18~32μmであることが測定された。上記焼成粉末混合物のd10粒径とd90粒径の差は約1um以上且つ約35um以下であることが測定された。上記焼成粉末混合物の純度を、本明細書に開示のICPMS法を使用して分析し、該純度は、出発粉末について開示した純度と略同一であることが測定された。SiO2の形態のSiに関する、本明細書に開示のICPMS法を使用する場合の検出限界は約14ppmであり、したがって、イットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物は、約14ppmの検出レベルのシリカの形態のSiを含む可能性がある。但し、出発粉末及び焼成粉末混合物中に、ICPMSを使用してシリカは検出されなかった。表11に、焼成条件、焼成粉末の相、及び粉末の純度を掲載する。上記粉末、粉末混合物、及び/または焼成粉末混合物を、公知の方法に従い、種々のプロセスステップでふるい分け、転倒混合、配合、及び/または粉砕してもよい。上記焼成粉末混合物を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10-2~10-3トールの真空条件をつくり出した。5MPaの圧力を印加し、上記容積内の焼成粉末混合物を周囲温度から800℃まで10℃/分で加熱し、その後0.5MPa/分の速度で圧力を上昇させて、1550℃及び20MPaの焼結条件に到達させ、これを30分間維持して、最大寸法150mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。試料151-1を同一の条件で焼結し、その後空気中、1400℃で8時間焼鈍した。SEMを使用した微細構造の観測により、約5体積%と見積もられる量の、イットリアに富む、より高密度のYAPの相が存在し、したがって全体的な密度の結果が増加したことが明らかになった。アルキメデス密度測定を、ASTM B962-17に準拠し、当業者に公知のとおりに5回の繰り返しにわたって実施した。試料151及び151-1の密度は4.579g/cc及び4.565g/ccであり、理論値の約99.64%及び99.33%に相当し、これらのことは、約5体積%の高密度YAP相が存在することの説明になる。体積多孔度は、当業者に公知の方法に従ってアルキメデス密度測定値から計算することができ、試料151及び151-1の体積多孔度は、それぞれ約0.36%及び約0.67%と算出された。したがって、本明細書では、YAGを基準とする理論密度及び5体積%の約99.3~99.6%のYAPを有する焼結セラミック体が開示される。表3、10、11、及び13に、上記焼結セラミック体及び焼成粉末の結果をまとめる。
【0358】
その他の実施例
図13は、出発イットリア/アルミナ粉末混合物及び無加圧焼結法を使用して形成したセラミック焼結体のX線回折結果を示し、本明細書に開示の無加圧焼結法と加圧及び通電支援SPS焼結法との違いを比較して示す。「粉砕したままの」X線回折パターンは、イットリア及びアルミナを含む出発粉末混合物に対応する。図に示すように、YAP及びYAGを含む混合相焼結体は、1400℃で8時間の無加圧焼結から生じる。相純度の高いイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を得るためには、1600℃以上の無加圧焼結温度と8時間以上の焼結時間との組み合わせが必要である。この試料の幾何学的密度を測定し、本明細書に開示のYAGの理論密度の約55%であることが明らかになった。当技術分野で公知の、高温で長時間(8時間以上)の無加圧焼結法を使用すると、当該焼結体の強度や硬度などの機械的特性が、該焼結体が半導体のエッチングチャンバー及び蒸着チャンバー中の部品として有用であることが可能になるのに十分とはならない可能性のある密度が生じる。したがって、YAGを含む、相純度が高く、密度が高い(97%を超える)/体積多孔度が低い(3%未満)セラミック焼結体を形成するためには、
図14に示す及び本明細書に開示する方法などの加圧及び通電支援焼結法が必要となる。
【0359】
図14は、本明細書に開示の方法に従い、真空下、30MPa、1450℃で30分間の加圧及び通電支援焼結条件を使用して、イットリア及びアルミナ粉末から、少なくとも95体積%のイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)相を含む焼結セラミック体が形成されたことを示すX線回折結果を示す。本明細書に開示の焼結方法は、従来の焼結方法と比較してより低い温度及びより短い期間で、XRDによって確認される、少なくとも95体積%のYAGを含む焼結セラミック体を提供する。
【0360】
図16は、本開示の実施形態に係る、焼成前の、a)湿式混合法及びb)乾式混合法を使用した粉末混合物を示す。両方の粉末混合物において、本明細書に開示の混合条件によって、イットリア(白色粒子)粉末とアルミナ(灰色/黒色粒子)粉末の微細に混合された、均一な混合物が提供される。
【0361】
図17は、a)950℃で8時間(粉末008)及びb)空気中、1000℃で10時間(粉末194-2)焼成した焼成粉末混合物のX線回折結果を示す。
図17のa)に示す焼成粉末混合物008に関しては、イットリア及びアルミナの出発粉末由来の結晶相が焼成後に存在し、この粉末の比表面積は2.5~3.5m
2/gである。
図17のb)に示す焼成粉末混合物194-2に関しては、イットリア及びアルミナの出発粉末由来の結晶相が存在し、且つYAMの結晶相がさらに検出された。この粉末の比表面積は4~5m
2/gであった。
【0362】
図22のa)は、過剰なアルミナを有するように調製した、YAGを含む、直径150mmの試料153の1000倍でのSEMの結果を示し、この試料のアルキメデス密度は4.541g/cc、すなわちYAGの理論密度の99.674%であり、体積多孔度は0.33%である。本明細書に開示のすべてのSEM画像は、エネルギー分散型分光法(EDS)、及びトポグラフィーモードも有する後方散乱電子(BSD)検出器を備えたNano Science Instrumentsの走査型電子顕微鏡(SEM) Phenom XL型から得た。本明細書に開示のSEM画像とImageJ画像処理との組み合わせによって、本明細書に開示の焼結セラミック体の相の同定が、最大約±0.1面積%で可能になる場合がある。本明細書に開示のプロセスに従って製造されたYAGを含む焼結セラミック体は一体型焼結セラミック体である。したがって、表面上で測定された相純度及び他の特徴は、本焼結セラミック体のバルク、すなわち塊内の相純度及び他の特徴を代表することができる。これに代わる実施形態において、本明細書に開示のYAGを含む焼結セラミック体は、3体積%以下の過剰な酸化アルミニウム相を有していてもよく、したがって、表面上で測定された酸化アルミニウム相は、YAG及び過剰なアルミナを含むバルクの焼結セラミック体内に存在する酸化アルミニウム相を代表することができる。換言すれば、表面上で測定された多孔度、結晶粒径、結晶相の量などの特徴は、バルクの酸化イットリウムアルミニウム体内のこれらの特徴を約±0.1体積%以内で代表することができる。
【0363】
試料153の走査型電子顕微鏡(SEM)画像をImageJソフトウェアにインポートし、
図22のb)に示す白黒閾値化技法を使用した相解析を行った。SEM画像とImageJ処理ソフトウェアの組み合わせを使用して、試料153のSEM画像、過剰な酸化アルミニウムを有するイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)を含む焼結セラミック体の相純度を解析した。
図22のb)は、ImageJによる解析後の、
図22のa)と同一の焼結セラミック体内の領域を示しており、それにより、酸化アルミニウム相及び存在するいずれかの多孔性の領域を、EDS/EDX分析から黒色で表示することができる。
図22のb)に示すように、酸化アルミニウム及び/または多孔性を表す、黒色で示された領域の面積は、画像面積の約0.40%を構成し、上記領域の直径は、
図22のb)の基準尺と比較して、約1~10um、好ましくは約1~5um、より好ましくは約1~3umであってよい。イットリア及びアルミナの出発粉末、ならびに焼成粉末混合物を、焼結前に混合/配合/ふるい分けを行ってもよく、したがって、本明細書に開示の焼結セラミック体は全体にわたって均一であることができ、それにより、当該焼結体のバルクすなわち塊を示す、表面上で測定される特徴を有する場合がある。
図22のb)の画像解析の結果により、上記焼結セラミック体が約99.6体積%のYAG相、アルキメデス法から計算して約0.3%の体積多孔度、及び約0.1体積%の過剰なアルミナ相(黒色領域)を含むことが確認される。
【0364】
図23は、
図22のa)及びb)の焼結セラミック体のX線回折結果を示しており、これにより、XRDとSEM/ImageJ処理の組み合わせを使用して、最大で99.6%の量のYAG相を有する焼結セラミック体が形成されたことが確認される。
図16に記載される5000倍のSEM及び画像解析によって酸化アルミニウム相が確認された。表13に、試料153を形成するための処理条件を示す。
【0365】
図24のa)及びb)は、表13及び15に掲載される、実施例8にも係る試料258に対応する、それぞれ1000倍及び5000倍のSEM顕微鏡写真を示す。最小の体積多孔度を有し、且つ99体積%以上のYAG相を含む、非常に緻密な微細構造が示される。
【0366】
図25のa)は、製造方法を詳述する実施例11に係る試料506の非常に緻密な微細構造の5000倍のSEM顕微鏡写真を示す。この試料中には約0.3体積%のアルミナが存在することが判明し、したがって、この画像の左半分に示す黒色領域は酸化アルミニウムを含む。当業者に公知のヘイン直線切断法を使用して、
図25のa)の5000倍のSEM画像を結晶粒径測定に関して解析し、25回の繰り返し測定にわたる平均結晶粒径は6.2um、標準偏差は0.71umと測定された。表3に掲載するように、最大結晶粒径及び最小結晶粒径もそれぞれ7.7um及び5.0umと測定された。硬度測定は、ASTM規格C1327に準拠して実施し、平均硬度は約14.8GPaと測定され、この平均値は、0.025kgfの印加荷重を使用して、試料表面全体にわたる8回の測定、すなわち繰り返しから算出され、最大及び最小硬度値はそれぞれ16GPa及び12.7GPaであった。
【0367】
試料506の結晶相純度の測定を、実施例11に開示の方法に従って、XRD、SEM画像化、及び画像処理ソフトウェアの使用の組み合わせを使用して実施した。XRDによって、試料506は、少なくとも95体積%の量のYAGを含むことが確認された。上記XRD、SEM、及び画像処理ソフトウェアの組み合わせにより、約±0.1体積%の範囲で相純度を測定することができる。アルキメデス密度測定、XRD、SEM画像化、及び画像解析ソフトウェアの開示する方法を使用したところ、試料506は、約0.3体積%のアルミナ相、約0.2%の体積多孔度、及び約99.5体積%のYAG相を含んでいた。SEM及びImageJ処理を使用して、0.1umの最小細孔径を測定することができる。本明細書に開示の焼結セラミック体について、開示するSEM画像化及びImageJ処理の方法を使用して、最大細孔径は1.7umと測定された。したがって、本明細書に開示の実施形態によれば、上記YAGを含む焼結セラミック体は、細孔を含んでいてもよく、上記細孔の最大径は、0.1~5um、好ましくは0.1~4um、好ましくは0.1~3um、好ましくは0.1~2um、好ましくは0.1~1.7umであってよい。
【0368】
試料506に係る焼結セラミック体は、本明細書に開示のプロセスに従って製造された一体型焼結セラミック体を含んでいてもよく、したがって、該焼結セラミック体の表面上及び全体に分布したYAG相、酸化アルミニウム相、及び体積多孔性を含んでいてもよい。換すれば、表面上で測定された構造は、YAGを含み、実施形態において酸化アルミニウムをさらに含むバルクの焼結セラミック体の塊内の構造を代表する。したがって、それぞれ体積で、90~99.7%、好ましくは90~99.5%、好ましくは90~99.3%、好ましくは95~99.7%、好ましくは95~99.5%、好ましくは95~99.3の量のYAG相を含む焼結セラミック体は、本明細書に開示の材料及び方法を使用して形成することができる。さらなる実施形態において、特定した量のYAG相を含む焼結セラミック体は、0.1~0.3体積%の量の多孔性、及び0.2~0.4体積%の酸化アルミニウムをさらに含んでいてもよい。
【0369】
図25のb)は、本明細書に開示の実施例11の試料506に係る焼結セラミック体の、YAGの理論密度に対する割合及び最大寸法にわたる密度の変動を示す。焼成粉末混合物20261を、本明細書に開示の焼結装置のツールセットによって画成された容積内に配置し、上記容積内に10
-2~10
-3トールの真空条件をつくり出した。上記容積内の焼成粉末混合物を5℃/分で800℃まで加熱し、その温度で5MPaの圧力を印加し、次いで、約2~約3℃/分の加熱速度で熱を印加するのと同時に、圧力を約0.2~約0.25MPa/分の速度で印加して、1650℃及び15MPaの焼結条件に到達させ、これを60分間維持して、最大寸法、すなわち直径が622mmの円盤形状の多結晶YAG焼結セラミック体を形成した。密度測定は、試料の半径を横切って切断した試料について、ASTM B962-17に準拠して実施し、密度の結果を
図25のbに示す。半径に沿った6ヶ所でそれぞれ5回の測定を行い、平均密度が4.546g/ccと測定され、これはYAGの理論値の99.783%、且つ0.217%の体積多孔度に相当する。半径全体にわたる密度はYAGの理論値の99.7~99.9%であった。
図25のb)に示す密度の変動は、半径に沿った最高密度の測定値と比較して測定し、密度の最大の変動は0.208%と測定された。上記焼成粉末混合物の焼結中に、圧力及び温度を半径方向に対称な構成で印加する。したがって、高密度(YAGの理論値の99%以上)及び最小の密度の変動(0.21%以下)などの特性は、上記焼結セラミック体の半径全体にわたって、且つそれに対応して、直径または最大寸法全体にわたっても維持される。したがって、本明細書では、焼結セラミック体であって、該焼結セラミック体の直径全体にわたって、平均密度が4.546g/cc、密度の範囲がYAGの理論密度の99.7~99.9%、平均体積多孔度が0.217%、最大の密度変動が0.208%以下である、上記焼結セラミック体が開示される。
【0370】
本明細書に開示の多くの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本明細書に開示の実施形態の首位及び範囲から逸脱することなく、さまざまな改変を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。