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特許7553569レーザブレイジングシステム及びロボット制御装置
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  • 特許-レーザブレイジングシステム及びロボット制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】レーザブレイジングシステム及びロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/00 20060101AFI20240910BHJP
   B23K 1/005 20060101ALI20240910BHJP
   B25J 13/06 20060101ALI20240910BHJP
   B23K 31/02 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
B23K3/00 310D
B23K1/005 A
B23K1/005 C
B25J13/06
B23K31/02 310B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022539495
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027742
(87)【国際公開番号】W WO2022025058
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020131003
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】畑田 将伸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広光
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆博
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-001521(JP,A)
【文献】特開2011-152582(JP,A)
【文献】特開2005-211915(JP,A)
【文献】特開2011-045898(JP,A)
【文献】特開平09-308960(JP,A)
【文献】特開2018-140408(JP,A)
【文献】特開2013-128939(JP,A)
【文献】特開2003-205382(JP,A)
【文献】特開平04-228283(JP,A)
【文献】特開2000-344420(JP,A)
【文献】特開2014-198373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/00
B23K 1/005
B25J 13/06
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給するガス供給装置と、
ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、
レーザを発振するレーザ発振器と、
ワイヤ送給ノズル及びレーザ加工ヘッドをアームの先端で支持するロボットと、
前記ガス供給装置、前記ワイヤ送給装置、前記レーザ発振器、及び前記ロボットを一括制御するロボット制御装置と、を備えるレーザブレイジングシステムであって、
前記ロボット制御装置は、
前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器の各状態と前記ロボットの状態とを一括して表示可能な表示部を有し、
前記ロボット制御装置は、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令のうち少なくとも一つを作業者の操作により設定可能な入力部を含む操作盤を有し、
前記表示部は、前記操作盤に設けられ、
前記ロボット制御装置は、前記ガス流量指令、前記ガス流量指令タイミング、前記ワイヤ送給指令、前記ワイヤ送給指令タイミング、前記レーザ予熱指令、前記レーザ予熱指令タイミング、前記レーザパワー指令、前記レーザパワー指令タイミング及び前記レーザパワー増減指令が1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器を制御する、レーザブレイジングシステム。
【請求項2】
前記ロボット制御装置は、前記ガス流量指令、前記ガス流量指令タイミング、前記ワイヤ送給指令、前記ワイヤ送給指令タイミング、前記レーザ予熱指令、前記レーザ予熱指令タイミング、前記レーザパワー指令、前記レーザパワー指令タイミング及び前記レーザパワー増減指令がそれぞれ異なる条件で規定された複数のテーブルを呼び出し可能な1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器を制御する、請求項に記載のレーザブレイジングシステム。
【請求項3】
前記ロボット制御装置は、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器を制御することにより、前記ガス流量指令タイミング、前記ワイヤ送給指令タイミング、前記レーザ予熱指令タイミング及び前記レーザパワー指令タイミングをそれぞれ独立したタイミングで実行可能である、請求項1又は2に記載のレーザブレイジングシステム。
【請求項4】
前記ロボット制御装置は、前記ガス流量指令、前記ガス流量指令タイミング、前記ワイヤ送給指令、前記ワイヤ送給指令タイミング、前記レーザ予熱指令、前記レーザ予熱指令タイミング、前記レーザパワー指令、前記レーザパワー指令タイミング及び前記レーザパワー増減指令のうち少なくとも一つを、外部装置からネットワークを介して受信可能な受信部を有する、請求項からいずれかに記載のレーザブレイジングシステム。
【請求項5】
前記操作盤は、前記ワイヤの正転指令及び前記ワイヤの逆転指令を作業者の操作により設定可能である、請求項からいずれかに記載のレーザブレイジングシステム。
【請求項6】
前記操作盤は、前記レーザ発振器のガイド光の点灯指令及び前記ガイド光の消灯指令を作業者の操作により設定可能である、請求項からいずれかに記載のレーザブレイジングシステム。
【請求項7】
ガスを供給するガス供給装置と、ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、レーザを発振するレーザ発振器と、ロボットと、を接続可能なロボット制御装置であって、
前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器の各状態と前記ロボットの状態とを一括して表示部に表示させ、前記ガス供給装置、前記ワイヤ送給装置、前記レーザ発振器、及び前記ロボットを一括制御し、
ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令が1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器を制御する、ロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザブレイジングシステム及びロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザを熱源とし、ろう付け用の溶融材であるワイヤを用いてろう付けを行うレーザブレイジングシステムが知られている。特に近年では、ロボットによるレーザブレイジングシステムが自動車製造業等で多く用いられるようになってきている。
【0003】
ロボットによるレーザブレイジングシステムは、通常、レーザ発振器を有するレーザ加工ヘッドと、ワイヤを送給するワイヤ送給ノズルを有するワイヤ送給装置と、これらレーザ加工ヘッド及びワイヤ送給ノズルを支持するアームを有するロボットと、を備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-205382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のロボットによるレーザブレイジングシステムでは、レーザ発振器やワイヤ送給装置等のロボット以外の各装置の制御は、ロボットを制御するロボット制御装置とは別のPLC等の外部装置により制御される。そのため、通信遅れ等に起因して、ワイヤの送給やレーザの照射等とロボットの駆動とを正確に同期させて制御することが困難であった。
【0006】
また、レーザ発振器やワイヤ送給装置等の各装置を制御するPLC等の外部装置と、ロボット制御装置とがそれぞれ設けられているため、レーザ発振器やワイヤ送給装置等の各状態とロボットの状態を一括して表示することができず、作業者が各装置の状態及びロボットの状態を瞬時に把握することが困難であった。
【0007】
従って、レーザ発振器やワイヤ送給装置等の各装置とロボットを一括して制御可能であるとともに、各装置の状態とロボットの状態を一括して表示可能なレーザブレイジングシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、ガスを供給するガス供給装置と、ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、レーザを発振するレーザ発振器と、ワイヤ送給ノズル及びレーザ加工ヘッドをアームの先端で支持するロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を備える、レーザブレイジングシステムであって、前記ロボット制御装置は、前記ロボットに加えて、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器を制御するとともに、前記ワイヤ送給装置、前記ガス供給装置及び前記レーザ発振器のうち少なくとも一つの状態を表示可能な表示部を有する、レーザブレイジングシステムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、レーザ発振器やワイヤ送給装置等の各装置とロボットを一括して制御可能であるとともに、各装置の状態とロボットの状態を一括して表示可能なレーザブレイジングシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るレーザブレイジングシステムの構成を示す図である。
図2】一般的なレーザブレイジングシステムの開始シーケンスを示す図である。
図3図2に示す開始シーケンスを従来一般的な記述方法で記述したロボットプログラムの一例を示す図である。
図4図2に示す開始シーケンスを1行の命令で記述した本開示の一実施形態に係るロボットプログラムの一例を示す図である。
図5図2に示す開始シーケンスが規定された複数のテーブルを呼び出し可能な1行の命令で記述した本開示の一実施形態に係るロボットプログラムの一例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係るレーザブレイジングシステムの開始シーケンスを示すタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係るレーザブレイジングシステム1の構成を示す図である。ここで、ブレイジング(ろう付け)とは、金属を接合する方法の一種である。接合する母材と母材の間に母材の融点よりも低い合金(ろう付け用の溶融材、ろう材)を溶融させて拡散させ、これが冷却、凝固することによって母材同士が接合される。即ち、ろう材を一種の接着剤として用いることにより、母材自体を溶融させずに接合できるものである。ろう材としては、青銅、りん銅等を用いることができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るレーザブレイジングシステム1は、ロボット12と、レーザ加工ヘッド13と、ワイヤ送給ノズル14と、レーザ発振器15と、ガス供給装置16と、ワイヤ送給装置17と、ロボット制御装置10と、を備える。本実施形態に係るレーザブレイジングシステム1は、ロボット制御装置10により、ロボット12の制御に加えて、レーザ発振器15、ガス供給装置16及びワイヤ送給装置17を一括に制御する点に特徴を有する。
【0014】
ロボット12は、アーム121を有する。アーム121の先端には、レーザ加工ヘッド13及びワイヤ送給ノズル14支持される。ロボット12は、後述するロボット制御装置10によりアーム121の各関節軸に設けられたサーボモータが制御されることで、レーザ加工ヘッド13及びワイヤ送給ノズル14をワークの加工部位に移動させる。
【0015】
レーザ加工ヘッド13は、レーザ発振器15と光ファイバ151により接続され、光ファイバ151を介してレーザ光Lがレーザ加工ヘッド13に導入される。レーザ加工ヘッド13内には、コリメーションレンズや集光レンズが設けられる。後述するロボット制御装置10により制御されてレーザ発振器15から発振されたレーザ光Lは、レーザ加工ヘッド13内に導入された後、上述の各レンズを通過して加工点に向かって照射される。レーザとしては、ファイバレーザ、半導体レーザ等を用いることができる。
【0016】
また、レーザ加工ヘッド13は、ガス供給装置16とガス供給管161により接続され、ガス供給管161を介してガスGがレーザ加工ヘッド13に導入される。後述するロボット制御装置10により制御されてガス供給装置16から供給されたガスGは、レーザ加工ヘッド13内に導入された後、アシストガスとして加工部位に向けて噴射される。ガスとしては、アルゴン等を用いることができる。
【0017】
レーザ加工ヘッド13には、ろう付け用の溶融材であるワイヤWを加工部位に送給するワイヤ送給ノズル14が取り付けられる。ワイヤ送給ノズル14は、ワイヤ送給装置17とワイヤ送給管171により接続され、ワイヤ送給管171を介してワイヤWがワイヤ送給ノズル14に導入される。後述するロボット制御装置10により制御されてワイヤ送給装置17から送給されたワイヤWは、ワイヤ送給ノズル14から加工部位に向かって送給される。
【0018】
ロボット制御装置10は、ロボット12を制御するとともに、レーザ発振器15、ガス供給装置16及びワイヤ送給装置17を一括に制御する。これは、レーザ発振器やワイヤ送給装置等の各装置を制御するPLC等の外部装置と、ロボット制御装置とがそれぞれ設けられていた従来のレーザブレイジングシステムと比べて特徴的な構成である。これにより、通信遅れを回避でき、レーザ光Lの照射、ガスGの供給及びワイヤWの送給と、ロボット12の駆動とを正確に同期制御可能となっている。このロボット制御装置10は、例えば、CPU、メモリ等を有するコンピュータにより構成される。
【0019】
具体的に、ロボット制御装置10は、ロボット12のアーム121の各関節軸に設けられたサーボモータを制御することで、アーム121の先端に支持されたレーザ加工ヘッド13及びワイヤ送給ノズル14を加工部位に移動させる。ロボット制御装置10は、レーザ発振器15を制御することで、レーザの予熱条件、予熱の開始/終了のタイミング、レーザパワーの条件、レーザパワーの増減及びそのタイミング等を制御する。ロボット制御装置10は、ガス供給装置16を制御することで、ガスの流量、ガスの流量変更のタイミング等を制御する。ロボット制御装置10は、ワイヤ送給装置17を制御することで、ワイヤWの送給速度、送給タイミング等を制御する。
【0020】
また、本実施形態に係るロボット制御装置10は、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15のうち少なくとも一つの状態を表示可能な表示部112を含む操作盤11を有する。表示部112は液晶画面を有し、この表示部112により、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15の各状態とロボット12の状態とを一括して表示することができる。これにより、作業者は、各装置の状態及びロボット12の状態を一括して瞬時に把握することが可能となっている。
【0021】
また、操作盤11は、作業者が操作して各設定値を入力可能な入力部111を有する。入力部111はキーボード又は上記表示部112と一体のタッチパネル等で構成される。作業者は、この入力部111を操作することにより、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令のうち少なくとも一つを設定可能となっている。
【0022】
また操作盤11は、作業者の操作により、ワイヤWの正転指令及びワイヤWの逆転指令を設定可能となっている。これにより、例えばワイヤWがワーク等に溶着した場合等において、作業者が操作盤11を操作してワイヤWを正転、逆転させることで、溶着トラブルを迅速に回避でき、加工不良等を抑制可能である。
【0023】
また操作盤11は、作業者の操作により、レーザ発振器15のガイド光(不図示)の点灯指令及び消灯指令を設定可能となっている。これにより、例えばティーチングのときに作業者が操作盤11を操作してレーザ発振器15のガイド光の点灯/消灯させることで、より正確なティーチングが可能となる。
【0024】
ここで、図2は、一般的なレーザブレイジングの開始シーケンスを示す図である。図2に示すように、先ず、ロボット12を制御してアーム121の先端に支持されたレーザ加工ヘッド13及びワイヤ送給ノズル14を加工部位近傍に移動させた後、ガス供給装置16を制御してガスGの供給を開始する。次いで、レーザ発振器15を制御してレーザ光Lの予熱を開始した後、ワイヤ送給装置17を制御してワイヤWを加工点に送給する。その後、レーザ発振器15を制御してレーザ光Lの出力を開始し、さらにレーザ光Lをランプアップして出力を高めていくことにより、ワイヤWが溶融し、ガスGの噴射下でろう付け加工が確実に実行される。
【0025】
図3は、図2に示す開始シーケンスを従来一般的な記述方法で記述したロボットプログラムの一例を示す図である。図3に示すように、従来一般的な記述方法でロボットプログラムを記述すると、複数行に亘った複雑なプログラミングが必要となる。具体的に、ガス安定時間、予熱時間、ワイヤ到達時間、ランプアップ条件等の複数の命令を複数行に亘ってプログラミングする必要があり、ロボットプログラムに精通した熟練者でなければ容易にプログラミングできないという課題がある。また、複雑なプログラミングとなるため、視認性が悪いうえ、教示のし忘れや実行順序の誤りが発生し易いという課題がある。
【0026】
そこで本実施形態では、1行の命令からなるロボットプログラムでレーザブレイジングのシーケンスを設定、実行可能に構成されていることが好ましい。図4は、図2に示す開始シーケンスを1行の命令で記述した本実施形態に係るロボットプログラムの一例を示す図である。この場合、ロボット制御装置10は、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令(ランプアップ)が1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15を制御可能に構成される。これにより、上述の各課題が解決される。
【0027】
あるいは本実施形態では、設定テーブルを準備し、設定テーブルの番号を指定するのみとした1行の命令からなるロボットプログラムでレーザブレイジングのシーケンスを設定、実行可能に構成されていることが好ましい。図5は、図2に示す開始シーケンスが規定された複数のテーブルを呼び出し可能な1行の命令で記述した本実施形態に係るロボットプログラムの一例を示す図である。図5に示す例では、3つの異なる条件で予め規定されて記憶されたレーザブレイジングの設定テーブルのうち、3番の設定テーブルが呼び出されて実行される。
【0028】
この場合、ロボット制御装置10は、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令がそれぞれ異なる条件で規定された複数のテーブルを呼び出し可能な1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15を制御可能に構成される。これにより、上述の各課題が解決される。
【0029】
図6は、本実施形態に係るレーザブレイジングシステムの開始シーケンスを示すタイミングチャートの一例である。上述したように、一般的なレーザブレイジングの開始シーケンスでは、レーザブレイジング開始指令が出力されると、ガス流量指令、レーザ予熱指令、ワイヤ送給速度指令、レーザパワー指令の順に各指令が出力される。ここで、本実施形態に係るロボット制御装置10では、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15を制御することにより、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令タイミング及びレーザパワー指令タイミングをそれぞれ独立したタイミングで実行可能に構成されている。そのため、例えば図6に示すように、ワイヤ送給指令を任意のタイミングに変更、調節することが可能である。
【0030】
なお、上述の説明では、レーザブレイジングの開始シーケンスを例に挙げて説明したが、開始シーケンスに限定されない。本実施形態は、レーザブレイジングの終了シーケンスにおいても同様に適用可能である。
【0031】
本実施形態に係るレーザブレイジングシステム1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、ロボット制御装置10により、ロボット12の制御に加えて、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15を制御するとともに、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15のうち少なくとも一つの状態を表示可能な表示部112を設けた。
【0032】
これにより、例えばPLC等の外部装置を介することなく、ロボット制御装置10と、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15とが直接接続されるため、ロボット制御装置10により、各装置を直接制御でき、PLC等の外部装置を介した従来のシステムと比べて通信遅れを低減できる。即ち、ロボット制御装置10により、ロボット12に加えて各装置を一括して制御できるため、レーザ光Lの照射、ガスGの供給及びワイヤWの送給と、ロボット12の駆動とを正確に同期制御できる。
【0033】
また、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15のうち少なくとも一つの状態を表示可能な表示部112を有するため、ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15の各状態とロボット12の状態とを一括して表示することができる。ひいては、作業者が各装置の状態及びロボット12の状態を一括して瞬時に把握することができる。
【0034】
また本実施形態では、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令(ランプアップ)が1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、各装置(ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15)を制御可能に構成した。
【0035】
あるいは、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令がそれぞれ異なる条件で規定された複数のテーブルを呼び出し可能な1行の命令で記述されたロボットプログラムにより、各装置(ワイヤ送給装置17、ガス供給装置16及びレーザ発振器15)を制御可能に構成した。
【0036】
これにより、ロボットプログラムに精通した熟練者でなくても容易にプログラミングできる。また、簡単なプログラミングとなるため、視認性が向上するとともに、教示のし忘れや実行順序の誤りが発生することも回避できる。
【0037】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良は本開示に含まれる。
【0038】
例えば上記実施形態では、表示部112を操作盤11に設けたが、これに限定されない。例えば、表示部112をロボット制御装置10自体に設けてもよい。
【0039】
また上記実施形態では、操作盤11から各指令の設定が可能な構成としたが、これに加えて、あるいはこれに替えて、ガス流量指令、ガス流量指令タイミング、ワイヤ送給指令、ワイヤ送給指令タイミング、レーザ予熱指令、レーザ予熱指令タイミング、レーザパワー指令、レーザパワー指令タイミング及びレーザパワー増減指令のうち少なくとも一つを、外部装置からネットワークを介してロボット制御装置10が受信する受信部を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザブレイジングシステム
10 ロボット制御装置
11 操作盤
111 入力部
112 表示部
12 ロボット
121 アーム
13 レーザ加工ヘッド
14 ワイヤ送給ノズル
15 レーザ発振器
16 ガス供給装置
17 ワイヤ送給装置
G ガス
L レーザ光
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6