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特許7553572マグネット要素の接着のない、破裂防止スリーブを含む回転子を有する電気モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】マグネット要素の接着のない、破裂防止スリーブを含む回転子を有する電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240910BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K21/14 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022542229
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 DE2020100906
(87)【国際公開番号】W WO2021139848
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】102020100306.4
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ボショヴ
(72)【発明者】
【氏名】マークス ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ブルナー
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0207672(US,A1)
【文献】特開2012-016236(JP,A)
【文献】特開2009-171736(JP,A)
【文献】特開2018-074654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
21/00-21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子(2)と、回転軸(3)の周りを、前記固定子(2)に対して回転可能に装着された回転子(4)とを備え、前記回転子(4)は、主要部(5)と、周方向に沿って配分され、かつ前記主要部(5)の径方向面(6)上に互いに離隔した様態で受容される複数のマグネット要素(7)と、前記主要部(5)および前記マグネット要素(7)を覆う破裂防止スリーブ(8)とを追加的に有し、かつ前記破裂防止スリーブ(8)は、その各々がマグネット要素(7)と直接接触する複数のカバーセグメント(9)と、2つの隣接するカバーセグメント(9)どうしを一つに接続する複数の架橋領域(10)とを有する、電気モータ(1)であって、前記破裂防止スリーブ(8)は、前記マグネット要素(7)を、前記主要部(5)に対して、前記主要部(5)と前記マグネット要素(7)間の磁気回路の強磁性リターン間に接着用の隙間を設けることなく直接支持するために用いられ、前記複数の架橋領域(10)は、径方向内向きに窪む溝形状を有し隣接する前記マグネット要素(7)の間にそれぞれ配置され、前記周方向に、前記カバーセグメント(9)よりも小さい曲げ強度を有し、
各架橋領域(10)が、一方の軸方向端部(12b)にむかって径方向外向きに傾斜する側面(14)を備え、前記破裂防止スリーブ(8)が、前記一方の軸方向端部(12b)において、各カバーセグメント(9)から、軸方向で前記側面の端部よりも外側におよび径方向外向きに斜めに突き出している延長部(13)を有し、前記延長部(13)と前記側面(14)とが合わさって、円錐状に末広がり状の環状リム(15)を形成することを特徴とする電気モータ(1)。
【請求項2】
前記破裂防止スリーブ(8)が、締り嵌め(16)によって前記主要部(5)に取り付けられた前記マグネット要素(7)上に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気モータ(1)。
【請求項3】
前記それぞれの架橋領域(10)が、前記破裂防止スリーブ(8)の一方の軸方向端部(12a)または両方の軸方向端部(12a、12b)に向かって開かれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気モータ(1)。
【請求項4】
前記延長部(13)が、前記カバーセグメント(9)に軸方向に隣接して配置されるように、前記回転子(4)が前記固定子(2)に対して配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気モータ(1)。
【請求項5】
前記電気モータ(1)が、直流ブラシレスモータとして構成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の電気モータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、自動車の作動装置のアクチュエータにおいて用いられる電気モータであって、固定子と、回転軸の周りを固定子に対して回転可能に装着された回転子とを有し、回転子は、主要部と、周方向に沿って配分され、かつ主要部の径方向面上に互いに離隔した様態で受容される複数のマグネット要素と、主要部およびマグネット要素を覆う破裂防止スリーブとを追加的に有し、かつ破裂防止スリーブは、その各々がマグネット要素と直接接触する複数のカバーセグメントと、2つの隣接するカバーセグメントどうしを一つに接続する複数の架橋領域と、を有する電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気モータは、先行技術においてすでに十分に知られている。例えば、特許文献1は、強弱の異なる磁気セクションを含む破裂防止スリーブを備えるモータを開示している。このように、電気モータの回転子に、破裂防止スリーブを装備して、電気モータの動作中に緩んでしまう構成部品が、電気モータの他の構成部品に即座に損傷を与えることがないようにすることは既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2018 108 595 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術から既知のこれらの構成の持つデメリットの1つは、その製造に係る労力が比較的大きくなるということである。この原因は、マグネット要素を回転子の主要部にしっかりと固定するために、通常、接着剤による接続方法が用いられるためである。しかしこれらの接着された回転子の製造コストは比較的高いものとなる。また、接着剤による接続部を設けることに起因し、固定子と回転子との間の、磁気回路における磁気抵抗に関して、結果として生じる不利益が比較的大きくなる。
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、先行技術から既知のデメリットを解消すること、特に、より少ない労力で製造および組み立て可能な電気モータであって、可能な限り高い効率性を提供する電気モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、このことは、破裂防止スリーブを使用して、マグネット要素を、主要部に対して直接支持することによって達成され、ここで、架橋領域は、周方向に、カバーセグメントよりも小さい曲げ強度を有する。
【0007】
架橋領域を介して、カバーセグメントと比較して剛性の低い領域が、意図的に、破裂防止スリーブ内に導入され、その結果として、破裂防止スリーブは、その全体で、ある程度広がることが可能となる。これにより、破裂防止スリーブの組み立てが、はるかに容易になり、締り嵌めにおいてロータマグネットへの重なりが大きい場合にも、組み立てそのものが可能になる。先行技術による構成と比較すると、従来使用されてきた接着剤による接着が不要となることにより、組み立てのための労力が顕著に減少する。
【0008】
本発明による更なる実施形態は、従属請求項によって特許請求されるが、それらは以下により詳細に説明される。
【0009】
したがって、破裂防止スリーブが、締り嵌めによって、主要部に取り付けられたマグネット要素上、または主要部とマグネット要素とにより形成されるプリアセンブリ上に固定されるならば、更に有利である。このことは、破裂防止スリーブが可能な限り堅固に締結されることを保証するものである。
【0010】
それぞれの架橋領域が、溝形状の窪みを有している場合には、架橋領域は、可能な限り製造が容易な形状を有しているということになる。溝形状の窪みは、好ましくは、曲げ加工または深絞り加工によって形成される。
【0011】
それぞれの架橋領域が、破裂防止スリーブの一方の軸方向端部に向かって、または両方の軸方向端部に向かって開かれている場合には、架橋領域は、その長さに沿って、可能な限り一定の曲げ強度を示し、そのことによって、組み立てのための労力が更に削減される。
【0012】
破裂防止スリーブが、一方の軸方向端部において、直径変化好ましくは直径の増加を有する場合、破裂防止スリーブ用の組み立て補助が、簡単な様態で提供される。これは、そのような直径変化は、組み立てプロセスの初期段階で、破裂防止スリーブが、主要部とマグネット要素とからなるプリアセンブリ上またはその中にスライドされ、誘導されることを可能とするためである。
【0013】
これに関連して、破裂防止スリーブの軸方向端部において、各々のカバーセグメントが、軸方向に対して斜めに突き出している延長部を有することにより、直径変化が形成されている場合には、それもまた有益である。
【0014】
この点について、各架橋領域が、破裂防止スリーブの軸方向端部に向かう上り側面を備えることにより、直径変化が形成されていることも、また有益である。
【0015】
換言すれば、それゆえ直径変化は、好ましくは、円錐状に末広がりの環状リムまたは先細り状環状リムによって形成される。この結果として、主要部とマグネット要素とからなるアセンブリを破裂防止スリーブ内に挿入するために、可能な限り製造が容易な挿入補助が提供される。この環状リムは、好ましくは、破裂防止スリーブの、好ましくは打抜き加工または深絞り加工による形成の、まさにその最中に形成される。
【0016】
回転子は、延長部が、マグネット要素に軸方向に隣接して配置されるように、固定子に対して更に配置される。その結果、環状リムを設けたことが、電気モータの性能に悪影響を及ぼすことがない。
【0017】
更に、電気モータが、直流ブラシレスモータとして構成されるならば、有利であるということが判明している。
【0018】
換言すれば、本発明は、表面マグネット(マグネット要素)と破裂防止スリーブとを備えるBLDC回転子の、マグネットの接着剤による接着を全く必要としない、製造性および装着性について改良されたバージョンを提供する。
【0019】
以下において、本発明は、図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい例示的一実施形態による、電気モータの長手方向断面図であって、電気モータの全体構造を明確に見ることができる図を示す。
図2】回転子の破裂防止スリーブの軸方向端部における、図1中に「II」という印がつけられている領域の詳細図を示す。
図3図1による電気モータの斜視図を示す。
図4図1図3において用いられている破裂防止スリーブを前側から見た斜視図を示す。
図5図4中に「V」という印がつけられている領域の詳細図であって、破裂防止スリーブの広がった環状リムを図示するための図を示す。
図6】破裂防止スリーブを後側から見た斜視図を示す。
図7】破裂防止スリーブの2つの側面図を示し、左側の部分図は、破裂防止スリーブ全体を示し、右側の部分図は、環状リムの、斜めに突き出している延長部を示す。
図8】破裂防止スリーブを装着した回転子の断面図である。
図9図8中に「IX」という印がつけられている領域の詳細図を示す。
図10図9に示した詳細エリアの斜視図を示す。
図11】回転子を長手方向の断面で示した斜視図を示す。
図12】部分的に分解された電気モータの斜視図であって、回転子と固定子とを、互いに分離した状態で示す図である。
図13】回転子の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これらの図は本質的に単なる概略図であり、本発明を理解するためにのみ役立つ。同じ要素には同じ参照記号が付与されている。
【0022】
図1図3、および図12を用いると、本発明による電気モータ1の基本的構造を、容易に認識することが可能である。電気モータ1は、全体として環状の構成を有する、固定子2を装備している。本実施形態では、固定子2は、軸方向に、すなわち電気モータ1の回転子4の回転軸3に沿って、スタック状に配置された複数のステータラミネーション17を有する。ステータラミネーション17は、固定子ハウジング/ステータキャリア18上に受容される。典型的には、巻線19が更に提供されるが、巻線19は、図1の断面図においては、ステータラミネーション17のスタック20の軸方向端部面に向かっているのを見ることができる。
【0023】
更に、回転可能に装着された回転子4が、固定子2の(回転軸3について)径方向内部に配置される。本実施形態では、回転子4は、このように、内側回転子として実装されている。しかし更なる実施形態では、回転子4は、原理上、外側回転子として実装されることも可能である。
【0024】
本実施形態では、回転子4は、一つのピースからなる主要部5を有する。この主要部5はまた、ロータキャリアとも呼ばれるものである。主要部5は、好ましくは、焼結部品として実現される。本発明による更なる実施形態では、主要部5は、代替的に、数枚のロータラミネーションを有する複数の部品で提供され、その数枚のロータラミネーション(各々が好ましくは、電気鉄板(electrical sheet)から作られる)は、スタック状に配置されてラミネーションスタックを形成する。
【0025】
数個のマグネット要素7(ここでは永久磁石の形態のものである)が、主要部5上に、周方向に均一に配分されて配置されている。上記の周方向とは、回転軸3に対して同軸に走る架空の円周線に沿った方向として理解されるものである。マグネット要素7は、径方向側部6上、この場合には主要部5の径方向外側部上に、位置している。これに関しては、回転子4の構造をより詳細に示す図8図13も参照されたい。マグネット要素7は、その断面を見ると、円弧状のセグメントとして形成されているが、そのようなマグネット要素7は、主要部5の径方向外面21(外側シェル表面)上に直接支持される。
【0026】
本発明によれば、破裂防止スリーブ8が、主要部5とマグネット要素7とからなるプリアセンブリ上に、押し込まれ/締り嵌め16を介して固定される。マグネット要素7を主要部5上に支持しながら、破裂防止スリーブ8が、径方向でマグネット要素7上に外側から押し込まれる。
【0027】
破裂防止スリーブ8は、周方向には連続的であるように構成されている、すなわち、完全に環状であるように構成されている。図4図7によれば、破裂防止スリーブ8には、それぞれ剛性の異なる数個の領域が設けられている。この目的のため、破裂防止スリーブ8は、複数の、プレート形状のカバーセグメント9を有し、カバーセグメント9は、周方向に配分される様態で配置され、かつ(マグネット要素7の外面に沿って)円弧セグメント形状に延びている。各カバーセグメント9は、このように、径方向外側部から、マグネット要素7上にぴったりと平らに付着している。周方向にそれぞれ隣り合う2つのカバーセグメント9は、架橋領域10によって接続されている。架橋領域10は、カバーセグメント9と比較して、その幾何学形状の構成により、周方向に意図的に曲げ強度を減少/低減されている。
【0028】
詳しく見ると、各架橋領域10は、溝形状の窪み11を示す。窪み11は、破裂防止スリーブ8の軸方向に延びている。図示されている例示的実施形態では、窪み11は、破裂防止スリーブ8の(軸方向の)全長に沿って連続的に延びている。例えば、図6に明確に見られるように、窪み11は、破裂防止スリーブ8の第1の軸方向端部12aに向かって完全に開かれており、窪み11はまた、第1の軸方向端部12aとは逆側の第2の軸方向端部12bに向かっても開かれている。しかしながら、第1の端部12aと比較すると、窪み11は、後で詳しく説明する直径変化のため、部分的にしか開かれていない。この結果、破裂防止スリーブ8の幾何学的形状は、広がるか、または縮むことが可能なものとなる。
【0029】
各架橋領域10は、主要部5の径方向隆起部23に対して、径方向隙間/距離22を形成する(図9)。主要部5の隆起部23は、マグネット要素7を予め位置決めするために役立つ。このように窪み11は、2つの互いに隣り合うマグネット要素7どうしの間にある、周方向中間スペース内に、径方向に突き出している。
【0030】
更に、破裂防止スリーブ8は、ある種の挿入補助/組み立て補助を装備している。この目的のため、破裂防止スリーブ8は、直径変化を有して実現され、この場合には、(内)径が、第2の軸方向端部12bに向かって大きくなっている。図7に見ることができるように、各カバーセグメント9には、カバーセグメント9に対して軸方向斜めに延出する延長部13が隣接している。同時に、窪み11は、第2の端部12bに向かってその深さが浅くなっている。その結果、各窪み11/架橋領域10は、第2の端部12bに向かって円錐状に上る側面14を有している(図7)。延長部13と側面14とが合わさって、破裂防止スリーブ8の第2の軸方向端部12bに、円錐状に広がった環状リム15を形成しており、これが直径変化を実現している。これにより、破裂防止スリーブ8が、主要部5とマグネット要素7とからなるプリアセンブリ上に、軸方向に押し込まれるのが、更に容易になる。
【0031】
固定子2に対する回転子4の位置決めについていえば、図2では、環状リム15が、マグネット要素7から、かつステータラミネーション17から軸方向にオフセットされて配置されているのを見ることができるが、この配置は、電気モータ1の動作中の渦電流損失を、できる限り最小化するものである。この結果、ステータラミネーション17と破裂防止スリーブ8の周方向外側側面との間の径方向領域に、一定の厚さの空隙24が生じる。
【0032】
好ましくは、破裂防止スリーブ8は、ステンレス鋼で形成される。
【0033】
このように、好ましくは直流ブラシレスモータとして実現される電気モータ1は、好ましくは全く接着をすることなく、すなわち、特にマグネット要素7の接着をすることなく実現される回転子4を装備している。
【0034】
換言すれば、本発明によれば、マグネット7どうしの間の破裂防止スリーブ8の特殊な幾何学形状のレリーフが、この破裂防止スリーブ8のマグネット7の外周における剛性を、局所的に(接線方向に)減少させるのに用いられる。このようにして、より小さい力が、スリーブ8の組み立てのために用いられるが、締り嵌め16を介して、ロータキャリア5/ロータラミネーションスタック上のロータマグネット7にかかる圧入力が、比較的大きくなる。
【0035】
図11図13は、表面のマグネット7と破裂防止スリーブ8とを備えたBLDC回転子4の、マグネット7とBLDC固定子2とが接着されていないものの等角図および断面図である。回転子4のアセンブリは、ロータキャリア5、ロータマグネット7、および破裂防止スリーブ8によって構成される。ロータキャリア5は、典型的には、数枚の電気鉄板を有する打抜きスタック(punch stack)として、構成される。代替的には、ロータキャリア5は、渦電流損失の小さい粉末コア材料から作られる焼結部品として構成される。渦電流損失が、BLDCモータ1の構成にとって特に重要というわけではないという場合には、ロータキャリア5は、一般に、強磁性材料(例えば、鋼)から作られてよい。ロータマグネット7は、典型的には、焼結NdFeB(希土類材料)磁石として構成される。代替的には、マグネット7は、ハードフェライトから作られる焼結部品として構成される。破裂防止スリーブ8は、好ましくは、ステンレス鋼から、深絞り部品として作られる。
【0036】
BLDC回転子4の好ましい組み立てシーケンスは、以下のようなものである。1)打抜きスタックを形成して(打抜き加工およびスタッキングを行って)ロータキャリア5を形成する、2)打抜きスタック5にロータマグネット7を取り付けるが、その際、マグネット7を何らかのデバイスで保持するか、マグネット7が引き付けられるように、打抜きスタック5にわずかに磁気を帯びさせておく、3)破裂防止スリーブ8を、ロータキャリア5(打抜きスタック)とマグネット7とから構成されるサブアセンブリに取り付けるが、これについては、スリーブ8が押し込まれ、ロータマグネット7が、組み立てデバイス内に軸方向に支持される。
【0037】
図8図10は、説明されたBLDC回転子4の、等角図および断面図である。本発明によれば、溝10、11/局所的レリーフが、破裂防止スリーブ8の外周上、スリーブ8に沿って、軸方向に、ロータマグネット7間に配置されている。このような幾何形状によって、スリーブ8の剛性が局所的に減少し、それに対応して、組み立ての際の力が減少する。それゆえ、破裂防止スリーブは、ロータキャリア5(ラミネーションスタック)とマグネット7によって構成されるサブアセンブリ上に、締り嵌め16として、比較的小さな力であってもかつ/またはサブアセンブリの公差(tolerance)をより大きくしても装着され得る。連続生産においては、すべての公差を維持しながら、少なくとも0.2mm~0.3mm以上の許容量(allowance)を伴う締り嵌めを有することが普通である。そのような場合には、鋼製の円筒形スリーブで、これを実現する可能性は事実上ないであろう(組み立て力があまりに大きく、機械的負荷により、スリーブ8/マグネット7には超臨界的応力がかかるため)。スリーブの幾何形状における、ロータマグネット7間のレリーフ10は、スリーブ8の外周において、接線方向の剛性を局所的に減少させることを可能にする。その結果、組み立て力は比較的小さく、しかも組み立て後にスリーブ8内およびマグネット7内の機械的応力が許容可能なレベルになる。
【0038】
破裂防止スリーブ8は、締り嵌め16として押し込まれるが、その破裂防止スリーブ8は、ロータマグネット7を、ロータキャリア5上に押し付ける。この場合、マグネット7を接着する必要がないため、ロータキャリア5とロータマグネット7間の磁気回路の強磁性リターン(ferromagnetic return)間に接着用の隙間を設ける必要がない。これにより、磁気抵抗という点で以下のようなメリットが生じる。ロータキャリア5の領域で磁界が閉じるため、効率性が高まる。レリーフ10の幾何形状、スリーブの厚さ、および締り嵌め16の許容量により、回転子4のあらゆる重要な、熱機械的、動的負荷、および振動負荷に打ち勝って、摩擦接続(径方向内向きのスリーブ圧力)によって、スリーブ8が、ロータマグネット7を固定し、しっかりと保持するような寸法を、スリーブ8が有するようにできる。
【0039】
図4図7は、破裂防止スリーブ8の等角図および断面図を示す。破裂防止スリーブ8を、ロータキャリア5(ロータラミネーションスタック)とマグネット7とのサブアセンブリに装着するのを容易にするため、挿入用エリア(環状リム15)が設けられ、締り嵌め16が確立される際には、マグネット7が、スリーブ8の中に挿入されるか、またはスリーブ8が、マグネット7上に押し込まれる。スリーブ8のこの組み立て補助用幾何形状のメリットは、スリーブ8の2つの端部の一方12bにおいて、シート状の金属片の平らなエリアに向かう、軸方向の湾曲部を有する円錐状の移行部が、深絞り工程で作り出されることである。この移行部は通常、打抜きおよび深絞りツール内で、シート状の金属片から、平らなエリアに更に向かって横方向に切り落とされる。この移行部は、円筒形の深絞り部品の場合には、通常、切り落とされる必要があるが、上記の場合には、組み立てのための挿入エリアとして利用される。
【0040】
図1図3は、固定子2と回転子4とから構成されるアセンブリの更なる等角図および断面図を示す。固定子2は通常、ステータラミネーションスタック20と、ポールシュー絶縁部品(pole shoe isolation part)と、回路機構および接触インターフェイスを含む巻線19と、固定子2のオーバーモールディング26(例えば、BLDC-Eモータ1のポンプ用途における、媒体が充満したスペース内に配置されるため、巻線19および電気接点部を保護するためにしばしば存在する)と、から構成される。
【0041】
破裂防止スリーブ8を装着するための挿入エリア15(図1図3)は軸方向には、BLDCモータ1の回転子4と固定子2との間のスペースに配置され、そこにおいては、その幾何形状は、固定子2と回転子4との間の機械的空隙24に、何らの不利な影響も及ぼすことはない。電気モータ1の効率性を高めるには、モータ1の固定子2と回転子4との間の機械的空隙24は、できるだけ小さく維持される必要がある。
【符号の説明】
【0042】
1 電気モータ
2 固定子
3 回転軸
4 回転子
5 主要部
6 側部
7 マグネット要素
8 破裂防止スリーブ
9 カバーセグメント
10 架橋領域
11 窪み
12a 第1の端部
12b 第2の端部
13 延長部
14 側面
15 環状リム
16 締り嵌め
17 ステータラミネーション
18 ステータキャリア
19 巻線
20 スタック
21 外面
22 距離
23 隆起部
24 空隙
25 ポールシュー絶縁部品
26 オーバーモールディング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13