(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】レーザ加工システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20240910BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240910BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240910BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/08 H
B23K26/082
(21)【出願番号】P 2022557429
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038028
(87)【国際公開番号】W WO2022080446
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020174435
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森 敦
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-146773(JP,A)
【文献】特開2002-292483(JP,A)
【文献】特開2020-032423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/04
B23K 26/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、
前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、
を備え、
前記スキャナ制御装置は、前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する軌跡制御部を有し、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有し、
前記ワークに照射される前記制御点修正用軌跡は、前記スキャナを制御するスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡と同一の長さ及び形状を有し、かつ前記ワーク上に配置可能な修正用パターンと比較可能である
、レーザ加工システム。
【請求項2】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、
前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、
を備え、
前記スキャナ制御装置は、前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する軌跡制御部を有し、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有し、
前記スキャナ制御装置は、
前記制御点修正用軌跡に基づいて前記制御点を移動する制御点移動部と、
移動された前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を記憶する制御点記憶部と、を更に備え、
前記軌跡制御部は、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、前記制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する
、レーザ加工システム。
【請求項3】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、
前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、
を備え、
前記スキャナ制御装置は、前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する軌跡制御部を有し、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有し、
前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための前記所定の長さは、前記制御点修正用軌跡の長さの変化を視認できる距離、前記レーザ光の光軸方向のずれ量、及び前記スキャナと前記レーザ光のレーザ照射点との距離から算出される
、レーザ加工システム。
【請求項4】
前記軌跡制御部は、前記制御点修正用軌跡を所定の周期で反復走査するように前記スキャナを制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を停止させるステップと、
前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように、前記スキャナを制御するステップと、
を備え、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有
し、
前記ワークに照射される前記制御点修正用軌跡は、前記スキャナを制御するスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡と同一の長さ及び形状を有し、かつ前記ワーク上に配置可能な修正用パターンと比較可能である、
レーザ加工システムの制御方法。
【請求項6】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を停止させるステップと、
前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように、前記スキャナを制御するステップと、
前記制御点修正用軌跡に基づいて前記制御点を移動するステップと、
移動された前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を記憶するステップと、
を備え、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有し、
前記スキャナを制御するステップは、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、前記制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御するステップを含む、
レーザ加工システムの制御方法。
【請求項7】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を停止させるステップと、
前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように、前記スキャナを制御するステップと、
を備え、
前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有し、
前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための前記所定の長さは、前記制御点修正用軌跡の長さの変化を視認できる距離、前記レーザ光の光軸方向のずれ量、及び前記スキャナと前記レーザ光のレーザ照射点との距離から算出される、
レーザ加工システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークにレーザ光を離れた位置から照射して、溶接を行うレーザ加工システムが提案されている。レーザ加工システムは、ロボットのアーム先端にレーザ光を照射するスキャナを有する。レーザ加工システムのロボット各軸は、他の産業用ロボットと同様、予め制御装置に記憶されたプログラムに従って駆動される。このため、作業現場では、実機とワークを使ってプログラムを作成する教示作業が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザ加工システムを用いてレーザ加工を行う場合、プログラムにおけるレーザ照射点の経路と実際のレーザ照射点の経路とのずれが問題となる。
【0005】
レーザ照射点の経路は、作業空間内のロボットの基部を基準とした座標系の点の列によって表現されると考えることができるため、これを制御点と呼ぶ。制御点は、レーザ照射点の経路上の点であってもよく、又は円弧の中心のように、レーザ照射点の経路上でなくても、レーザ照射点の経路を定義するために必要となる点であってもよい。
【0006】
ロボットプログラム及びスキャナプログラムは、レーザ加工システムのプログラム生成装置において設定された各制御点の位置及び方向(制御点の座標系)の各点に応じて、生成される。しかし、CADデータと実際のワークとは一致せず、ロボットの動作経路や治具等にも位置の誤差が存在する。そのため、このようなずれや誤差を教示修正する作業が必要となる。
【0007】
また、レーザ加工システムにおいてロボットとスキャナを組み合わせるときに、工具中心点(TCP)も修正を要することがある。TCPは、ロボット先端点からスキャナ基準点への位置ベクトルで表される。TCPを正しく設定することによって、ロボットの姿勢によらず、プログラム上のレーザ照射位置と実際のレーザ照射位置とが一致する。
【0008】
従来、制御点の修正及びTCPの設定は、スキャナ直下の特定の点を指し示す教示用治具を用いて行っていた。通常、特定の点は、スキャナの作業空間の原点であり、レーザが集光する点に設定される。
【0009】
特定の点を指し示すために、金属や樹脂等で製造された教示用治具を用いたり、複数の付加的なガイドレーザを交差させ、その交点を視認したりすることが行われている。いずれの方法も、スキャナの直下の一点の座標を取得するため、実際のワーク上の所望の位置と特定の点とを一致させるためには、ロボットを操作する必要があり、効率が良くなかった。
【0010】
また、従来の手法では、ロボットに教示用治具を取り付けたり、スキャナに付加的なガイドレーザを装備したりする必要があった。そのため、教示用治具や付加的なガイドレーザ等を必要とせず、制御点の修正を簡易に行うことができるレーザ加工システムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係るレーザ加工システムは、ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、を備え、前記スキャナ制御装置は、前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する軌跡制御部を有し、前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有する。
【0012】
本開示に係るレーザ加工システムの制御方法は、ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を停止させるステップと、前記移動装置を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡を前記ワークに照射するように、前記スキャナを制御するステップと、を備え、前記制御点修正用軌跡は、前記レーザ光の光軸方向を特定するための所定の長さと、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向のずれを特定するための所定の形状と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御点の修正を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るレーザ加工システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るレーザ加工システムにおけるスキャナの光学系を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係るレーザ加工システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4A】制御点を修正する前のロボットの経路を示す。
【
図4B】制御点を修正した後のロボットの経路を示す。
【
図5】本実施形態に係るスキャナ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6B】
図6Aに示す制御点修正用軌跡を用いて制御点を修正する動作を示す図である。
【
図6C】レーザ光の光軸方向のずれについて説明するための図である。
【
図6D】制御点修正用軌跡の別の例を示す図である。
【
図6E】制御点修正用軌跡を修正するための修正用パターンの例を示す図である。
【
図6F】制御点修正用軌跡を用いて制御点を修正する動作を示す図である。
【
図7A】レーザ加工システムによって溶接される部材を示す図である。
【
図7B】レーザ加工システムによって溶接される溶接部分及び制御点修正用軌跡を示す図である。
【
図8A】レーザ加工システムによって溶接される部材の平面図を示す。
【
図8B】レーザ加工システムによって溶接される部材の斜視図を示す。
【
図8D】異なる位置からそれぞれ照射されるレーザ光Lを示す図である。
【
図9】本実施形態に係るレーザ加工システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の全体構成を示す図である。
図1に示すレーザ加工システム1は、リモートレーザ溶接ロボットシステムの一例を示す。
【0016】
レーザ加工システム1は、ロボット2と、レーザ発振器3と、スキャナ4と、ロボット制御装置5と、スキャナ制御装置6と、レーザ制御装置7と、ロボット教示操作盤8と、プログラム生成装置9と、を備える。
【0017】
ロボット2は、例えば、複数の関節を有する多関節ロボットである。ロボット2は、基部21と、アーム22と、複数のY方向に延びる回転軸を有する関節軸23a~23dを備える。
【0018】
また、ロボット2は、Z方向を回転軸としてアーム22を回転移動させるロボット用サーボモータ、各関節軸23a~23dを回転させてアーム22をX方向に移動させるロボット用サーボモータ等の複数のロボット用サーボモータを有する。各ロボット用サーボモータは、後述するロボット制御装置5からの駆動データに基づいてそれぞれ回転駆動する。
【0019】
ロボット2のアーム22の先端部22aには、スキャナ4が固定されている。したがって、ロボット2は、各ロボット用サーボモータの回転駆動によって、スキャナ4を所定のロボット速度で、作業空間上の任意の位置に任意の向きになるよう移動させることができる。すなわち、ロボット2は、スキャナ4をワーク10に対して移動させる移動装置である。なお、本実施形態では、レーザ加工システム1は、移動装置としてロボット2を用いているが、これに限定されず、例えば、移動装置として三次元加工機を用いてもよい。
【0020】
レーザ発振器3は、レーザ媒質、光共振器及び励起源等から構成される。レーザ発振器3は、後述するレーザ制御装置7からのレーザ出力指令に基づくレーザ出力のレーザ光を生成し、スキャナ4に対して、生成したレーザ光を供給する。発振されるレーザの種類として、ファーバーレーザ、CO2レーザ、YAGレーザ等があるが、本実施形態においては、レーザの種類について特に問わない。
【0021】
レーザ発振器3は、ワーク10を加工するための加工用レーザと、加工用レーザを調整するためのガイドレーザとを出力可能である。ガイドレーザは、加工用レーザと同一の軸上に調整された可視光レーザである。
【0022】
スキャナ4は、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを受けて、ワーク10に対してレーザ光Lを走査可能な装置である。
【0023】
図2は、本実施形態に係るレーザ加工システム1におけるスキャナ4の光学系を説明する図である。
図2に示すように、スキャナ4は、例えば、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを反射させる2つのガルバノミラー41、42と、ガルバノミラー41、42をそれぞれ回転駆動するガルバノモータ41a、42aと、カバーガラス43を備える。
【0024】
ガルバノミラー41、42は、互いに直交する2つの回転軸J1、J2回りにそれぞれ回転可能に構成される。ガルバノモータ41a、42aは、レーザ制御装置7からの駆動データに基づいて回転駆動し、ガルバノミラー41、42を回転軸J1、J2回りに独立して回転させる。
【0025】
レーザ発振器3から出射されたレーザ光Lは、2つのガルバノミラー41、42で順次反射された後にスキャナ4から出射され、ワーク10の加工点(溶接点)に到達する。このとき、ガルバノモータ41a、42aにより2つのガルバノミラー41、42がそれぞれ回転すると、これらガルバノミラー41、42に入射するレーザ光Lの入射角が連続的に変化する。その結果、スキャナ4からワーク10に対して所定の経路でレーザ光Lが走査され、そのレーザ光Lの走査経路に沿ってワーク10上に溶接軌跡を形成する。
【0026】
スキャナ4からワーク10上に出射されるレーザ光Lの走査経路は、ガルバノモータ41a、42aの回転駆動を適宜制御してガルバノミラー41、42のそれぞれの回転角度を変化させることにより、X、Y方向に任意に変化させることができる。
【0027】
スキャナ4は、Z軸モータによって位置関係を変更自在としたズーミング光学系(図示せず)も備えている。スキャナ4は、Z軸モータの駆動制御により、レーザを集光する点を光軸方向に移動させることで、レーザ照射点をZ方向にも任意に変化させることができる。
【0028】
カバーガラス43は、円盤状であり、ガルバノミラー41、42によって順次反射されてワーク10に向かうレーザ光Lを透過すると共に、スキャナ4の内部を保護する機能を有する。
【0029】
また、スキャナ4は、トレパニングヘッドであってもよい。この場合、スキャナ4は、例えば、一方の面が傾斜した形式のレンズをモータで回転させることで、入射したレーザを屈折させて、任意の位置に照射する構成を有することが可能である。
【0030】
ロボット制御装置5は、所定のロボットプログラムに応じて、ロボット2の各ロボット用サーボモータに駆動制御データを出力し、ロボット2の動作を制御する。
【0031】
スキャナ制御装置6は、スキャナ4の機構内のレンズ、ミラーの位置調整を行う制御装置である。なお、スキャナ制御装置6は、ロボット制御装置5に組み込まれてもよい。
【0032】
レーザ制御装置7は、レーザ発振器3を制御する制御装置であり、スキャナ制御装置6からの指令に応じて、レーザ光を出力するように制御を行う。レーザ制御装置7は、スキャナ制御装置6と接続されるだけでなく、ロボット制御装置5と直接接続されてもよい。また、レーザ制御装置7は、スキャナ制御装置6と一体化されていてもよい。
【0033】
ロボット教示操作盤8は、ロボット制御装置5に接続され、ロボット2の操作を行うために操作者によって使用される。例えば、操作者は、レーザ加工を行うための加工情報を、ロボット教示操作盤8上のユーザインターフェースを通して入力する。
【0034】
プログラム生成装置9は、ロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6に接続され、ロボット2及びスキャナ4のためのプログラムを生成する。なお、プログラム生成装置9については、
図3を参照しながら詳述する。本実施形態において、少なくともスキャナ4は、好ましくはロボット2も、プログラムの指令に対して正確に駆動するように調整されているとする。
【0035】
図3は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の機能構成を示すブロック図である。
前述したように、レーザ加工システム1は、ロボット2と、レーザ発振器3と、スキャナ4と、ロボット制御装置5と、スキャナ制御装置6と、レーザ制御装置7と、ロボット教示操作盤8と、プログラム生成装置9と、を備える。
以下、
図3を参照しながら、ロボット制御装置、スキャナ制御装置6、レーザ制御装置7及びプログラム生成装置9の動作について詳述する。
【0036】
プログラム生成装置9は、CAD/CAMデータから仮想作業空間内におけるロボット2のためのロボットプログラムP1及びスキャナ4のためのスキャナプログラムP2を生成する。更に、プログラム生成装置9は、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムを生成する。
【0037】
生成されたロボットプログラムP1及びスキャナプログラムP2は、それぞれ、ロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6に転送される。ロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット制御装置5内に格納されたロボットプログラムP1が起動されると、ロボット制御装置5からスキャナ制御装置6に指令が送られ、スキャナプログラムP2も起動される。
【0038】
ロボット制御装置5は、ロボット2がスキャナ4を所定の位置まで搬送したときに信号を出力する。ロボット制御装置5から出力された信号に応じて、スキャナ制御装置6は、スキャナ4内の光学系を駆動する。
【0039】
また、スキャナ制御装置6は、レーザ制御装置7にレーザ出力を指令する。ロボット制御装置5、スキャナ制御装置6及びレーザ制御装置7は、適切なタイミングで信号をやりとりすることによって、ロボット2の動き、レーザ光軸の走査及びレーザビームの出力を同期する。
【0040】
ロボット2及びスキャナ4は、位置情報及び時刻情報を共有し、作業空間内の所望の位置にレーザ照射点を制御する。また、ロボット2及びスキャナ4は、適切なタイミングでレーザ照射を開始及び終了させる。これにより、レーザ加工システム1は、溶接等のレーザ加工を行うことができる。
【0041】
また、プログラム生成装置9は、3Dモデリングソフトウェアを内蔵している。操作者は、ロボット2及びスキャナ4のモデルをコンピュータ上で操作し、レーザ照射点や座標値等を確認することができる。
【0042】
更に、プログラム生成装置9は、ワーク10のCADデータを用いて、ワーク10の3Dモデリングを生成し、当該3Dモデリングのワーク10上に1以上の制御点を設定する。そして、プログラム生成装置9は、設定された各制御点に対して溶接形状を定義する。
【0043】
上述したように、レーザ照射点の経路は、作業空間内のロボットの基部を基準とした座標系の点の列によって表現されると考えることができるため、これを制御点と呼ぶ。制御点は、レーザ照射点の経路上の点であってもよく、又は円弧の中心のように、レーザ照射点の経路上でなくても、レーザ照射点の経路を定義するために必要となる点であってもよい。
【0044】
制御点及び溶接形状の定義を終えると、プログラム生成装置9は、ロボット2が移動するロボット経路、及びスキャナ4によるレーザ照射点の走査経路を計算する。
【0045】
3次元空間内のレーザ照射点に対して、ロボット2の姿勢及びスキャナ4によるレーザ照射点のガルバノモータ41a、42aの回転角度は、一意に決定されない。そのため、プログラム生成装置9は、条件を満たす最適解を探索するアルゴリズムを備える。ロボットプログラムP1及びスキャナプログラムP2のプログラム生成における条件とは、加工時間の最短化、ワーク10に対するレーザ照射角の制限、ロボット2の姿勢範囲の制限等である。
【0046】
そして、制御点が修正されると、スキャナ制御装置6は、修正後の制御点の位置情報及び座標系の方向情報をプログラム生成装置9へ送信する。
【0047】
プログラム生成装置9は、上述した最適解を探索するアルゴリズムを用いて、修正後の制御点の位置情報及び座標系の方向情報に基づいて、ロボットプログラムP1及びスキャナプログラムP2を再度生成する。生成されたロボットプログラムP1及びスキャナプログラムP2は、再びスキャナ制御装置6へ送信される。
【0048】
このようにプログラム生成装置9は、修正された制御点を反映したロボットプログラムP1及びスキャナプログラムP2を生成することによって、ロボットプログラムP1におけるロボット経路、及びスキャナプログラムP2におけるスキャナ4によるレーザ光の照射経路を修正することができる。
【0049】
図4A及び
図4Bは、ロボットプログラムP1におけるロボット2の経路の修正の一例を示す図である。
図4Aは、制御点を修正する前のロボット2の経路を示し、
図4Bは、制御点を修正した後のロボット2の経路を示す。
【0050】
図4Aに示すワーク18の溶接点20付近を拡大すると、スキャナ4から照射されるレーザによる溶接点20は、ロボットプログラムP1におけるロボット経路19A及びスキャナプログラムP2におけるスキャナ4によるレーザ光の照射経路に従って決定される。
【0051】
したがって、
図4Bに示すように、溶接点20の位置の変更及び制御点の増減等が発生すると、プログラム生成装置9は、溶接点20の位置の変更及び制御点の増減に基づいて、ロボットプログラム及びスキャナプログラムを再度生成し、最適なロボット経路19B及びレーザ照射経路を再生成することができる。
【0052】
図5は、本実施形態に係るスキャナ制御装置6の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、スキャナ制御装置6は、軌跡制御部61と、制御点移動部62と、制御点記憶部63と、を備える。
【0053】
軌跡制御部61は、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムに基づいて、ロボット2を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
制御点移動部62は、制御点修正用軌跡に基づいて、ロボット教示操作盤8の操作に従って制御点を移動する。
【0054】
制御点記憶部63は、制御点移動部62によって移動された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を記憶する。また、軌跡制御部61は、制御点記憶部63に記憶された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0055】
図6Aは、制御点修正用軌跡の一例を示す図である。
図6Aに示すように、制御点修正用軌跡11Aは、レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さM1と、制御点C1の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状S1と、を有する。ここで、所定の長さM1は、例えば、100mm程度であることが好ましい。また、所定の形状S1は、正方向と逆方向とが判別可能な形状であることが好ましい。
【0056】
また、軌跡制御部61は、加工用レーザではなく、ガイドレーザによって制御点修正用軌跡11Aを照射するようにスキャナ4を制御する。これにより、レーザ加工システム1は、ワーク10を加工せずに、制御点修正用軌跡11Aを照射することができる。
【0057】
図6Bは、
図6Aに示す制御点修正用軌跡11Aを用いて制御点を修正する動作を示す図である。なお、
図6Bは、説明の便宜上、ワーク10を側面から視た図を示す。ここで、L1A及びL2Aは、
図6Aにおける制御点修正用軌跡11Aの両端を示しており、ガイドレーザは、L1AとL2Aの間を行き来する。
図6Bでは、スキャナ制御装置6は、スキャナプログラムにおける仮想的なワーク10Aに対する制御点C1を、実際のワーク10上に修正する。よって、ガイドレーザL1A及びL2Aは、ガイドレーザL1及びL2に修正されることになる。
【0058】
図6Bにおいて、制御点C1が光軸方向にずれている場合、所定の長さM1が小さいと、制御点C1のずれの差異は小さく、操作者は目視で判断しにくくなる。また、所定の長さM1が大きいと、光軸方向にずれに対して比較的大きく変化するため、操作者は目視で判断しやすくなる。
【0059】
また、所定の長さM1が大きければ大きいほど判断しやすくなるが、所定の長さM1は、光軸方向のずれを修正するときに必要とされる精度や、スキャナ4とワーク10との距離、レーザ加工をする部分の大きさ等によって、好ましい大きさが異なる。例えば、ワーク10とスキャナ4の間の距離が500mmである場合、所定の長さM1は、100mm程度であることが好ましい。
【0060】
スキャナプログラムの仮想的なワーク10Aにおける制御点修正用軌跡11Aは、実際のワーク10上では位置がずれると共に、スキャナプログラムの指令よりも小さくなる。これは、制御点修正用軌跡11Aの光軸方向の位置及び光軸と垂直な方向の位置がずれていることを示す。
【0061】
そこで、スキャナ4から照射されるガイドレーザL1A及びL2Aを操作することによって、制御点修正用軌跡11Aの位置及び長さを、実際のワーク10上で合致させる。これにより、スキャナ制御装置6は、実際のワーク10上にガイドレーザL1とL2の間を適切に照射することができる。
【0062】
図6Bにおいて、ガイドレーザL1A,L2A及びL1,L2は、ガイドレーザ光が走査される範囲を示す。スキャナ制御装置6によって制御点C1の位置を変えると、反復走査する制御点修正用軌跡は、ワーク10の面上に形成される。そして、ガイドレーザ光の走査範囲は、ガイドレーザL1A,L2AからガイドレーザL1,L2に移行する。これにより、ワーク10の面上における制御点修正用軌跡11Aの所定の長さM1は、所望の大きさとなり、教示修正を完了する。
【0063】
ここで、上述したように、制御点修正用軌跡は、レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さを必要とする。
以下に説明するように、レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さは、制御点修正用軌跡の長さの変化を視認できる距離、特定すべきレーザ光の光軸方向のずれ量、及びスキャナ4とレーザ光のレーザ照射点との距離から算出される。
【0064】
図6Cは、レーザ光の光軸方向のずれについて説明するための図である。
図6Cに示すように、スキャナ4とワーク10とは、正対しており、ワーク10が位置A1にあるときと、位置B1にあるときとを比較するものとする。
【0065】
このとき、ワーク10の位置A1と位置B1との間のレーザ光の光軸方向のずれは、ΔDとなる。また、
図6Cに示すように、位置A1における制御点修正用軌跡の長さは、Lであり、位置B1における制御点修正用軌跡の長さは、L+ΔLである。
スキャナ4内のガルバノミラー41、42からの距離は、ワーク10の位置A1及び位置B1それぞれにおいて、D及びD+ΔDである。そして、長さL及びL+ΔL並びに距離D及びD+ΔDの関係は、以下のようになる。
L=(ΔL/ΔD)×D
【0066】
実際には、ガルバノミラー41、42は、X及びY軸の2つの軸を有し、ワーク10及びスキャナ4は、必ずしも正対するとは限らない。また、スキャナ4の走査範囲の中心と周辺部とにおける光軸方向の距離の差異も影響を与える。これらを考慮しても、長さL及びL+ΔL並びに距離D及びD+ΔDの関係は、上記の式によって近似することができる。
【0067】
操作者が制御点修正用軌跡を視認するとき、例えば、長さΔLは、差異を判断可能な最小の長さと考えることができる。このとき、距離ΔDを、レーザ加工で許容されるレーザ光の光軸方向のずれ、すなわち、焦点距離の許容範囲とすれば、スキャナ4とワーク10との距離Dから、長さL(すなわち、上述した所定の長さ)を導くことができる。
【0068】
例えば、ΔL=1mm、つまり、1mmの差異を視認できるとした場合、ΔD=5mm、つまり、焦点距離の許容範囲を5mmとし、D=500mm、つまり、スキャナ4内のガルバノミラー41、42とレーザ照射点との距離を500mmとすると、制御点修正用軌跡の長さL(所定の長さ)は、100mmとなる。
【0069】
更に、後述するような修正用パターンを用いる場合、視認できる長さの差異ΔLは、より小さくなる。また、0.1mmの長さの差異を見分けることができるであれば、制御点修正用軌跡の長さLは、10mmでよいということになる。また、制御点修正用軌跡の長さLを100mmのままとすれば、ΔD=0.5mm、すなわち、0.5mmの精度で光軸方向の位置を調整することができる。
【0070】
次に、操作者による制御点を修正する動作について説明する。
本実施形態における制御点の修正では、操作者は、手動操作又は半自動操作によってロボット2を制御点の近傍に搬送し、ロボット2を停止する。そして、スキャナ4によってガイドレーザが照射されると、操作者は、ワーク10上に照射された制御点修正用軌跡の形状を視認しながら、スキャナ4を移動させる。これにより、操作者は、制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を修正することができる。
【0071】
ここで、手動操作とは、操作者がロボット教示操作盤8を操作して、ロボット2の姿勢を変え、スキャナ4を所望の位置に搬送することをいう。また、半自動操作とは、3Dモデリング内の所望の制御点に対して、プログラム生成装置9によって生成された、スキャナ4を制御点の近傍に搬送するロボットプログラム、及びガイドレーザを照射するスキャナプログラムを用いてロボット2の姿勢を変えることでスキャナ4を所望の位置に搬送することをいう。
【0072】
手動操作の具体的な操作は、以下に示すような手順となる。
(1)ロボット2を駆動し、ロボット2のアーム22の先端部22aに固定されたスキャナ4を修正する制御点近傍に移動する。
【0073】
(2)ロボット2を静止した状態で、ガイドレーザをワーク10に照射する。このとき、スキャナ制御装置6は、ガルバノミラー41、42によって、ガイドレーザを用いて制御点修正用軌跡を高速で反復走査する。
【0074】
(3)操作者は、ロボット教示操作盤8によって、ガイドレーザのX、Y及びZ軸並びに各軸周り回転を指示することができる。操作者の指示は、ロボット制御装置5からスキャナ制御装置6に伝えられ、これにより、高速で反復走査されている制御点修正用軌跡は、空間内を移動及び回転することができる。
【0075】
(4)操作者は、ワーク10上に投影された制御点修正用軌跡を視認しつつ、所望の位置及び所望の大きさとなるように、ロボット教示操作盤8によって制御点修正用軌跡を操作する。
【0076】
(5)制御点修正用軌跡の制御点の位置及び座標系の方向が決定されると、操作者は、当該制御点修正用軌跡に関するデータをレーザ加工システム1の記憶装置(図示せず)に保存し、教示修正を完了する。なお、操作者がロボット教示操作盤8によって制御点修正用軌跡を操作するとき、ロボット2は、静止した状態であり、スキャナ4の位置及び座標系の方向は、変化しない。
【0077】
スキャナ4を修正する制御点の近傍に停止した後、操作者は、ロボット教示操作盤8を操作して、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムを起動する。
手動操作の場合、初めから修正しようとしている制御点近傍にガイドレーザを照射することは難しいため、スキャナ4は、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムを起動した直後、スキャナ4の直下にガイドレーザを照射する。
【0078】
手動操作に対し、半自動操作の場合は、プログラム生成装置9によって生成されたロボットプログラム及びスキャナプログラムを用いる。操作者は、ロボットプログラムを起動し、スキャナ4が当初から修正しようとしている制御点近傍に達したときに、ロボット2を止めて静止させる。その後の操作は、手動操作の(2)から(5)までと同様である。半自動操作では、操作者は、この後、静止した場所から、さらに、ロボット2をロボットプログラムに従って動作させ、次の修正すべき制御点近傍まで移動して、修正作業を継続する。
【0079】
また、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムは、数種類用意しておき、目的に応じて使い分けてもよい。例えば、ワーク10の面積が狭い部分には、小さな制御点修正用軌跡を用い、ワーク10の面積が広い部分には大きな制御点修正用軌跡を用いてもよい。また、突合せ部分の直線に沿った部分には、長い制御点修正用軌跡を用い、円筒の蓋のような部分には、中心点が制御点であれば、当該制御点に対応する制御点修正用軌跡を用いてもよい。更に、円筒面には、立体的な制御点修正用軌跡を用いることができる。
【0080】
図6Dは、制御点修正用軌跡の別の例を示す図である。
図6Dに示すように、制御点修正用軌跡11Bは、スキャナ制御装置6によって所定の周期で反復走査される。所定の周期は、例えば、50msec程度であることが好ましい。これにより、残像効果によって、操作者は、制御点修正用軌跡が継続して描画されるように知覚することができる。
【0081】
図6Eは、制御点修正用軌跡を修正するための修正用パターン12の例を示す図である。
図6Eに示すように、修正用パターン12は、制御点修正用軌跡と同一の長さ及び形状を有し、かつワーク10上に配置可能である。修正用パターン12は、例えば、ワーク10上に貼り付け可能なシール、ワーク10上に配置可能なカード状の物品、型紙、磁石等であってもよい。また、修正用パターン12は、ワーク10上に予め印刷されていてもよい。
【0082】
このような修正用パターン12を用いることによって、ワーク10に照射される制御点修正用軌跡は、スキャナ4を制御するスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡と同一の長さ及び形状を有する修正用パターン12と比較可能である。
【0083】
これにより、操作者は、ワーク10に照射される制御点修正用軌跡とスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡とを比較することによって、制御点修正用軌跡の位置、方向、大きさ及び歪みを確認及び修正することができる。
【0084】
図6Fは、制御点修正用軌跡11Bを用いて制御点C2を修正する動作を示す図である。
図6Fに示すように、制御点移動部62は、制御点C2を移動し、軌跡制御部61は、移動された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、制御点修正用軌跡11Bを移動させる。
【0085】
制御点移動部62は、X、Y及びZ軸のような直交座標系、並びにw、p及びr軸(ヨー、ピッチ及びロール)のような回転座標系において、制御点C2を移動することができる。すなわち、制御点移動部62は、6自由度で制御点C2を移動することができる。
【0086】
制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムは、照射開始点を起点としてガイドレーザを照射し、再び起点に戻り、これらの動作を高速反復するようにスキャナ4を制御する。起動時のレーザ照射点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向は、ロボット2の基軸を原点とする座標における位置及び方向のベクトルとして、ロボット制御装置5又はスキャナ制御装置6に記憶される。
【0087】
制御点修正用軌跡を移動するために、操作者がロボット教示操作盤8を操作すると、制御点修正用軌跡を照射するためのプログラムは、照射開始点に戻るたびに、例えばX軸の+方向に0.1mmずつ、照射点を変更する。同時に、スキャナ制御装置6は、照射開始点が変更されたことを、変更後の照射開始点の起点として記憶する。
【0088】
制御点修正用軌跡を所望に位置に移動した後、すなわち、制御点を所望の位置及び座標系の方向に移動した後、操作者は、ロボット教示操作盤8を用いて、制御点の移動が終了したことをスキャナ制御装置6に通知する。
【0089】
スキャナ制御装置6は、変更された制御点の情報をプログラム生成装置9に転送する。更に、プログラム生成装置9は、変更された制御点の情報をCADデータとしてCADシステム(図示せず)に転送してもよい。制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向は、ロボット2の基軸を原点とした座標系の値、修正した制御点の移動量等のように様々なデータ形式を取ることができる。また、手動操作において、スキャナ制御装置6は、任意の新しい位置及び座標系の方向を制御点として登録することもできる。
【0090】
図7A及び
図7Bは、制御点修正用軌跡の別の例を説明するための図である。
図7Aは、レーザ加工システム1によって溶接される部材13及び14を示す図である。
図7Aに示すように、部材14は、筒状の部材13上に搭載され、レーザ加工システム1は、部材13と部材14との接触部分の一部を溶接する。
【0091】
図7Bは、レーザ加工システム1によって溶接される溶接部分及び制御点修正用軌跡を示す図である。
図7Bは、部材13及び部材14を平面視した図である。
図7Bに示すように、レーザ加工システム1は、溶接部分15A~15Fにおいて部材13と部材14とを溶接する。
【0092】
特に、溶接部分15Eの付近を拡大すると、部材13及び部材14は、部材14の端部14A近傍において溶接部分15Eによって溶接される。そして、軌跡制御部61は、制御点修正用軌跡11Cを部材14の端部14Aに照射するようにスキャナ4を制御する。
【0093】
制御点修正用軌跡11Cは、端部14Aに沿う所定の長さと、制御点C4を基準点として対称な2つのL字形状と、を有する。なお、軌跡制御部61は、操作者が制御点C4を明確に視認できるように、ガイドレーザをオフし、制御点C4のみを照射していない。
【0094】
そして、操作者が制御点C4を修正する際には、制御点修正用軌跡11Cの制御点C4を含む直線部分を部材14の端部14A上に移動することによって、制御点C4は、部材14の端部14A上に正確に配置される。
【0095】
また、操作者は、制御点修正用軌跡11Cの両端の短い線分の位置を調整することによって、制御点C4の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を正確に調整することができる。また、操作者は、制御点修正用軌跡11Cの所定の長さによって、部材14の端部14Aとレーザ光の光軸方向とのずれを確認及び修正することができる。
【0096】
図8A~
図8Dは、制御点修正用軌跡の別の例を説明するための図である。
図8Aは、レーザ加工システム1によって溶接される部材16の平面図を示し、
図8Bは、レーザ加工システム1によって溶接される部材16の斜視図を示す。
図8Aに示すように、部材16は、レーザ加工システム1によって溶接部分17A~17Cにおいて溶接される。また、
図8Bに示すように、部材16は、フランジ部分16A及びパイプ部分16Bを有する。
【0097】
図8Cは、制御点修正用軌跡11Dを示す図である。
図8Cに示すように、制御点修正用軌跡11Dは、扇形形状を有し、制御点C5は、制御点修正用軌跡11D上の溶接部分17Aと重畳する部分に位置付けられる。なお、
図8Cは、溶接部分17Aを溶接する場合の制御点修正用軌跡11Dを示しているが、制御点修正用軌跡11Dは、溶接部分17B及び17Cを溶接する場合も同様に、それぞれ、溶接部分17B及び17Cに対応する位置に照射される。
【0098】
図8Dは、異なる位置A及び位置Bからそれぞれ照射されるレーザ光Lを示す図である。
図8Dに示すように、位置Aにおいて、スキャナ4は、フランジ部分16Aの内周側から、フランジ部分16Aとパイプ部分16Bとを溶接しており、位置Bにおいて、スキャナ4は、パイプ部分16Bの外周側からフランジ部分16Aの外周とパイプ部分16Bとを溶接している。
【0099】
この場合、制御点修正用軌跡11Dは、レーザ光Lの光軸方向にも移動することになる。また、操作者が制御点C5を修正する際には、制御点修正用軌跡11Dの制御点C5を含む扇形形状を溶接部分17A~17C上に移動することによって、制御点C5は、溶接部分17A~17C上に正確に配置される。
【0100】
図9は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、ロボット制御装置5は、ロボットプログラムに基づいて、ワーク10に対してレーザ光を走査可能なスキャナ4を、ワーク10に対して移動させるようにロボット2を制御する。
【0101】
ステップS2において、ロボット制御装置5は、ロボットプログラムに基づいて、ロボット2を停止させるように制御する。
ステップS3において、軌跡制御部61は、ロボット2を停止した状態で、制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0102】
ステップS4において、制御点移動部62は、制御点修正用軌跡に基づいて制御点を移動する。
ステップS5において、制御点記憶部63は、移動された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を記憶する。
【0103】
ステップS6において、軌跡制御部61は、移動された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工システム1は、ワーク10に対してレーザ光を走査可能なスキャナ4と、スキャナ4をワーク10に対して移動させるロボット2と、スキャナ4を制御するスキャナ制御装置6と、を備える。スキャナ制御装置6は、ロボット2を停止した状態で、予め設定された制御点を修正するための制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する軌跡制御部61を有する。制御点修正用軌跡は、レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さと、制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を特定するための所定の形状と、を有する。
【0105】
これにより、レーザ加工システム1は、制御点修正用軌跡を用いて制御点を修正することができる。そのため、レーザ加工システム1は、ロボット2を動かさず、スキャナ4の動作のみによって、制御点を簡易に修正することができる。
【0106】
また、レーザ加工システム1は、教示用治具、付加的な光源又は画像として解析するためのカメラ及び解析装置等を用いずに、制御点を修正することができる。また、レーザ加工システム1は、スキャナ4によってガイドレーザの光軸を偏向させるだけであるため、レーザ加工システム1の操作が簡便となる。また、レーザ加工システム1は、加工用レーザと同じ軸上のガイドレーザを用いるため、教示修正の結果が正確になる。
【0107】
また、レーザ加工システム1は、制御点修正用軌跡を用いることにより、レーザ光の光軸方向の位置、光軸と垂直な面の位置、制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向、ワーク10の傾き等を正確に調整することができる。特に、レーザ溶接では、突き合わせや稜線等のように線上の形状に沿ってレーザを照射する場合が多いため、本実施形態に係るレーザ加工システム1を用いることにより、レーザ光の方向及び位置を適切に調整することができる。
【0108】
また、軌跡制御部61は、制御点修正用軌跡を所定の周期で反復走査するようにスキャナ4を制御する。これにより、残像効果によって、操作者は、制御点修正用軌跡が継続して描画されるように知覚することができる。したがって、操作者は、制御点修正用軌跡を知覚することによって、制御点修正用軌跡の位置、方向、大きさ及び歪みを確認及び修正することができる。
【0109】
また、ワーク10に照射される制御点修正用軌跡は、スキャナ4を制御するスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡と同一の長さ及び形状を有し、かつワーク10上に配置可能な修正用パターン12と比較可能である。これにより、操作者は、ワーク10に照射される制御点修正用軌跡とスキャナプログラムにおける制御点修正用軌跡とを比較することによって、制御点修正用軌跡の位置、方向、大きさ及び歪みを確認及び修正することができる。
【0110】
また、スキャナ制御装置6は、制御点修正用軌跡に基づいて制御点を移動する制御点移動部62と、移動された制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を記憶する制御点記憶部63と、更に備える。軌跡制御部61は、制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、制御点修正用軌跡をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0111】
これにより、レーザ加工システム1は、ロボット2を動かさず、スキャナ4の走査範囲内の制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を修正することができる。したがって、レーザ加工システム1は、ロボット2の姿勢を変えずに、ガイドレーザの走査のみによって制御点を修正することができる。
【0112】
また、レーザ光の光軸方向のずれを特定するための所定の長さは、制御点修正用軌跡の長さの変化を視認できる距離、特定すべきレーザ光の光軸方向のずれ量、及びスキャナ4とレーザ光のレーザ照射点との距離から算出される。これにより、レーザ加工システム1は、レーザ光の光軸方向のずれを適切に特定することができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記のレーザ加工システム1は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記のレーザ加工システム1により行なわれる制御方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0114】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0115】
また、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記各実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 レーザ加工システム
2 ロボット
3 レーザ発振器
4 スキャナ4
5 ロボット制御装置
6 スキャナ制御装置
7 レーザ制御装置
8 ロボット教示操作盤
9 プログラム生成装置
10 ワーク
61 軌跡制御部
62 制御点移動部
63 制御点記憶部