(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】レーザ加工システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20240910BHJP
【FI】
B23K26/082
(21)【出願番号】P 2022557431
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038030
(87)【国際公開番号】W WO2022080448
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020174437
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森 敦
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/038860(WO,A1)
【文献】特開2014-054658(JP,A)
【文献】特開2016-150363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、
前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、
前記ワークを加工する加工用レーザに代えて、ガイドレーザを制御点に照射するように前記スキャナを制御する制御点修正用プログラムを生成するプログラム生成装置と、
を備え、
前記スキャナ制御装置は、前記移動装置により前記スキャナを複数の位置に停止した状態で、前記ワーク上の予め設定された同一の制御点に前記レーザ光を照射するように前記スキャナを制御する照射制御部を有
し、
前記複数の位置は、前記スキャナ及び前記移動装置を制御するプログラムにおけるレーザ照射開始時点及びレーザ照射終了時点に対応する前記スキャナのレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置を含み、
前記ガイドレーザは、前記レーザ照射開始位置及び前記レーザ照射終了位置において、前記ワーク上の前記同一の制御点に照射される、
レーザ加工システム。
【請求項2】
前記スキャナ制御装置は、
前記制御点を移動する制御点移動部と、
移動された前記制御点の位置、又は、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向を記憶する制御点記憶部と、を更に備え、
前記照射制御部は、前記制御点の位置、又は、前記制御点の位置及び前記制御点によって定義される座標系の方向に基づいて、前記レーザ光を前記ワークに照射するように前記スキャナを制御する、
請求項
1に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記スキャナ制御装置は、
前記制御点を移動する制御点移動部と、
移動された前記制御点の複数の位置、又は、前記制御点の複数の位置及び前記制御点によって定義される複数の座標系の方向を記憶する制御点記憶部と、
前記制御点の複数の位置、又は、前記制御点の複数の位置及び前記複数の座標系の方向に基づいて、最終的に修正された前記制御点である修正制御点を計算する修正制御点計算部と、
を更に備える、請求項
1に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、
前記ワークを加工する加工用レーザに代えて、ガイドレーザを制御点に照射するように前記スキャナを制御する制御点修正用プログラムを生成するステップと、
前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を複数の位置に停止させるステップと、
前記移動装置により前記スキャナを前記複数の位置に停止した状態で、前記ワーク上の予め設定された同一の制御点に前記レーザ光を照射するように前記スキャナを制御するステップと、
を備え
、
前記複数の位置は、前記スキャナ及び前記移動装置を制御するプログラムにおけるレーザ照射開始時点及びレーザ照射終了時点に対応する前記スキャナのレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置を含み、
前記ガイドレーザは、前記レーザ照射開始位置及び前記レーザ照射終了位置において、前記ワーク上の前記同一の制御点に照射される、
レーザ加工システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークにレーザ光を離れた位置から照射して、溶接を行うレーザ加工システムが提案されている。レーザ加工システムは、ロボットのアーム先端にレーザ光を照射するスキャナを有する。レーザ加工システムのロボット各軸は、他の産業用ロボットと同様、予め制御装置に記憶されたプログラムに従って駆動される。このため、作業現場では、実機とワークを使ってプログラムを作成する教示作業が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザ加工システムを用いてレーザ加工を行う場合、プログラムにおけるレーザ照射点の経路と実際のレーザ照射点の経路とのずれが問題となる。
【0005】
レーザ照射点の経路は、作業空間内のロボットの基部を基準とした座標系の点の列によって表現されると考えることができるため、これを制御点と呼ぶ。制御点は、レーザ照射点の経路上の点であってもよく、又は円弧の中心のように、レーザ照射点の経路上でなくても、レーザ照射点の経路を定義するために必要となる点であってもよい。制御点には、制御点を基準とした加工形状を定義する向き、すなわち座標系が必要となる。
【0006】
ロボットプログラム及びスキャナプログラムは、レーザ加工システムのプログラム生成装置において設定された各制御点の位置及び方向(制御点の座標系)の各点に応じて、生成される。しかし、CADデータと実際のワークとは一致せず、ロボットの動作経路や治具等にも位置の誤差が存在する。そのため、このようなずれや誤差を教示修正する作業が必要となる。
【0007】
また、レーザ加工システムにおいてロボットとスキャナを組み合わせるときに、工具中心点(TCP)も修正を要することがある。TCPは、ロボット先端点からスキャナ基準点への位置ベクトルで表される。TCPを正しく設定することによって、ロボットの姿勢によらず、プログラム上のレーザ照射位置と実際のレーザ照射位置とが一致する。
【0008】
従来、制御点の修正及びTCPの設定は、スキャナ直下の特定の点を指し示す教示用治具を用いて行っていた。通常、特定の点は、スキャナの作業空間の原点であり、レーザが集光する点に設定される。
【0009】
特定の点を指し示すために、金属や樹脂等で製造された教示用治具を用いたり、複数の付加的なガイド光を交差させ、その交点を視認したりすることが行われている。いずれの方法も、スキャナの直下の一点の座標を取得するため、実際のワーク上の所望の位置と特定の点とを一致させるためには、ロボットを操作する必要があり、効率が良くなかった。
【0010】
また、従来の手法では、ロボットに教示用治具を取り付けたり、スキャナに付加的なガイドレーザを装備したりする必要があった。そのため、教示用治具や付加的なガイドレーザ等を必要とせず、制御点の修正を簡易に行うことができるレーザ加工システムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係るレーザ加工システムは、ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナと、前記スキャナを前記ワークに対して移動させる移動装置と、前記スキャナを制御するスキャナ制御装置と、を備え、前記スキャナ制御装置は、前記移動装置により前記スキャナを複数の位置に停止した状態で、前記ワーク上の予め設定された同一の制御点に前記レーザ光を照射するように前記スキャナを制御する照射制御部を有する。
【0012】
本開示に係るレーザ加工システムの制御方法は、ワークに対してレーザ光を走査可能なスキャナを前記ワークに対して移動させるステップと、前記スキャナを前記ワークに対して移動させるための移動装置を複数の位置に停止させるステップと、前記移動装置により前記スキャナを前記複数の位置に停止した状態で、前記ワーク上の予め設定された同一の制御点に前記レーザ光を照射するように前記スキャナを制御するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御点の修正を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るレーザ加工システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るレーザ加工システムにおけるスキャナの光学系を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係るレーザ加工システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るスキャナ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6A】実際にレーザ加工を行う場合のスキャナの動作を示す図である。
【
図6B】制御点を修正する場合のスキャナの動作を示す図である。
【
図8A】修正制御点を計算するための動作を示す図である。
【
図8B】修正制御点を計算するための動作を示す図である。
【
図8C】修正制御点を計算するための動作を示す図である。
【
図8D】修正制御点を計算するための動作を示す図である。
【
図9】本実施形態に係るレーザ加工システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の全体構成を示す図である。
図1に示すレーザ加工システム1は、リモートレーザ溶接ロボットシステムの一例を示す。
【0016】
レーザ加工システム1は、ロボット2と、レーザ発振器3と、スキャナ4と、ロボット制御装置5と、スキャナ制御装置6と、レーザ制御装置7と、ロボット教示操作盤8と、プログラム生成装置9と、を備える。
【0017】
ロボット2は、例えば、複数の関節を有する多関節ロボットである。ロボット2は、基部21と、アーム22と、複数のY方向に延びる回転軸を有する関節軸23a~23dを備える。
【0018】
また、ロボット2は、Z方向を回転軸としてアーム22を回転移動させるロボット用サーボモータ、各関節軸23a~23dを回転させてアーム22をX方向に移動させるロボット用サーボモータ等の複数のロボット用サーボモータを有する。各ロボット用サーボモータは、後述するロボット制御装置5からの駆動データに基づいてそれぞれ回転駆動する。
【0019】
ロボット2のアーム22の先端部22aには、スキャナ4が固定されている。したがって、ロボット2は、各ロボット用サーボモータの回転駆動によって、スキャナ4を所定のロボット速度で、作業空間上の任意の位置と向きに移動させることができる。すなわち、ロボット2は、スキャナ4をワーク10に対して移動させる移動装置である。なお、本実施形態では、レーザ加工システム1は、移動装置としてロボット2を用いているが、これに限定されず、例えば、移動装置として三次元加工機を用いてもよい。
【0020】
レーザ発振器3は、レーザ媒質、光共振器及び励起源等から構成される。レーザ発振器3は、後述するレーザ制御装置7からのレーザ出力指令に基づくレーザ出力のレーザ光を生成し、スキャナ4に対して、生成したレーザ光を供給する。発振されるレーザの種類として、ファーバーレーザ、CO2レーザ、YAGレーザ等があるが、本実施形態においては、レーザの種類について特に問わない。
【0021】
レーザ発振器3は、ワーク10を加工するための加工用レーザと、加工用レーザを調整するためのガイドレーザとを出力可能である。ガイドレーザは、加工用レーザと同一の軸上に調整された可視光レーザである。
【0022】
スキャナ4は、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを受けて、ワーク10に対してレーザ光Lを走査可能な装置である。
【0023】
図2は、本実施形態に係るレーザ加工システム1におけるスキャナ4の光学系を説明する図である。
図2に示すように、スキャナ4は、例えば、レーザ発振器3から出射されるレーザ光Lを反射させる2つのガルバノミラー41、42と、ガルバノミラー41、42をそれぞれ回転駆動するガルバノモータ41a、42aと、カバーガラス43を備える。
【0024】
ガルバノミラー41、42は、互いに直交する2つの回転軸J1、J2回りにそれぞれ回転可能に構成される。ガルバノモータ41a、42aは、レーザ制御装置7からの駆動データに基づいて回転駆動し、ガルバノミラー41、42を回転軸J1、J2回りに独立して回転させる。
【0025】
レーザ発振器3から出射されたレーザ光Lは、2つのガルバノミラー41、42で順次反射された後にスキャナ4から出射され、ワーク10の加工点(溶接点)に到達する。このとき、ガルバノモータ41a、42aにより2つのガルバノミラー41、42がそれぞれ回転すると、これらガルバノミラー41、42に入射するレーザ光Lの入射角が連続的に変化する。その結果、スキャナ4からワーク10に対して所定の経路でレーザ光Lが走査され、そのレーザ光Lの走査経路に沿ってワーク10上に溶接軌跡を形成する。
【0026】
スキャナ4からワーク10上に出射されるレーザ光Lの走査経路は、ガルバノモータ41a、42aの回転駆動を適宜制御してガルバノミラー41、42のそれぞれの回転角度を変化させることにより、X、Y方向に任意に変化させることができる。
【0027】
スキャナ4は、Z軸モータによって位置関係を変更自在としたズーミング光学系(図示せず)も備えている。スキャナ4は、Z軸モータの駆動制御により、レーザを集光する点を光軸方向に移動させることで、レーザ照射点をZ方向にも任意に変化させることができる。
【0028】
カバーガラス43は、円盤状であり、ガルバノミラー41、42によって順次反射されてワーク10に向かうレーザ光Lを透過すると共に、スキャナ4の内部を保護する機能を有する。
【0029】
また、スキャナ4は、トレパニングヘッドであってもよい。この場合、スキャナ4は、例えば、一方の面が傾斜した形式のレンズをモータで回転させることで、入射したレーザを屈折させて、任意の位置に照射する構成を有することが可能である。
【0030】
ロボット制御装置5は、所定のロボットプログラムに応じて、ロボット2の各ロボット用サーボモータに駆動制御データを出力し、ロボット2の動作を制御する。
【0031】
スキャナ制御装置6は、スキャナ4の機構内のレンズ、ミラーの位置調整を行う制御装置である。なお、スキャナ制御装置6は、ロボット制御装置5に組み込まれてもよい。
【0032】
レーザ制御装置7は、レーザ発振器3を制御する制御装置であり、スキャナ制御装置6からの指令に応じて、レーザ光を出力するように制御を行う。レーザ制御装置7は、スキャナ制御装置6と接続されるだけでなく、ロボット制御装置5と直接接続されてもよい。また、レーザ制御装置7は、スキャナ制御装置6と一体化されていてもよい。
【0033】
ロボット教示操作盤8は、ロボット制御装置5に接続され、ロボット2の操作を行うために操作者によって使用される。例えば、操作者は、レーザ加工を行うための加工情報を、ロボット教示操作盤8上のユーザインターフェースを通して入力する。
【0034】
プログラム生成装置9は、ロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6に接続され、ロボット2及びスキャナ4のためのプログラムを生成する。なお、プログラム生成装置9については、
図3を参照しながら詳述する。本実施形態において、少なくともスキャナ4は、好ましくはロボット2も、プログラムの指令に対して正確に駆動するように調整されているとする。
【0035】
図3は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の機能構成を示すブロック図である。
前述したように、レーザ加工システム1は、ロボット2と、レーザ発振器3と、スキャナ4と、ロボット制御装置5と、スキャナ制御装置6と、レーザ制御装置7と、ロボット教示操作盤8と、プログラム生成装置9と、を備える。
以下、
図3を参照しながら、ロボット制御装置、スキャナ制御装置6、レーザ制御装置7及びプログラム生成装置9の動作について詳述する。
【0036】
プログラム生成装置9は、CAD/CAMデータから仮想作業空間内におけるロボット2のためのロボットプログラムPa及びスキャナ4のためのスキャナプログラムPbを生成する。更に、プログラム生成装置9は、制御点を修正するための制御点修正用プログラムを生成する。
【0037】
生成されたロボットプログラムPa及びスキャナプログラムPbは、それぞれ、ロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6に転送される。
ロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット制御装置5内に格納されたロボットプログラムPaが起動されると、ロボット制御装置5からスキャナ制御装置6に指令が送られ、スキャナプログラムPbも起動される。
【0038】
ロボット制御装置5は、ロボット2がスキャナ4を所定の位置まで搬送したときに信号を出力する。ロボット制御装置5から出力された信号に応じて、スキャナ制御装置6は、スキャナ4内の光学系を駆動する。
【0039】
また、スキャナ制御装置6は、レーザ制御装置7にレーザ出力を指令する。ロボット制御装置5、スキャナ制御装置6及びレーザ制御装置7は、適切なタイミングで信号をやりとりすることによって、ロボット2の動き、レーザ光軸の走査及びレーザビームの出力を同期する。
【0040】
ロボット2及びスキャナ4は、位置情報及び時刻情報を共有し、作業空間内の所望の位置にレーザ照射点を制御する。また、ロボット2及びスキャナ4は、適切なタイミングでレーザ照射を開始及び終了させる。これにより、レーザ加工システム1は、溶接等のレーザ加工を行うことができる。
【0041】
また、プログラム生成装置9は、3Dモデリングソフトウェアを内蔵している。操作者は、ロボット2及びスキャナ4のモデルをコンピュータ上で操作し、レーザ照射点や座標値等を確認することができる。
【0042】
更に、プログラム生成装置9は、ワーク10のCADデータを用いて、ワーク10の3Dモデリングを生成し、当該3Dモデリングのワーク10上に1以上の制御点を設定する。そして、プログラム生成装置9は、設定された各制御点に対して溶接形状を定義する。
【0043】
上述したように、レーザ照射点の経路は、作業空間内のロボットの基部を基準とした座標系の点の列によって表現されると考えることができるため、これを制御点と呼ぶ。制御点は、レーザ照射点の経路上の点であってもよく、又は円弧の中心のように、レーザ照射点の経路上でなくても、レーザ照射点の経路を定義するために必要となる点であってもよい。
【0044】
制御点及び溶接形状の定義を終えると、プログラム生成装置9は、ロボット2が移動するロボット経路、及びスキャナ4によるレーザ照射点の走査経路を計算する。
【0045】
3次元空間内のレーザ照射点に対して、ロボット2の姿勢及びスキャナ4によるレーザ照射点のガルバノモータ41a、42aの回転角度は、一意に決定されない。そのため、プログラム生成装置9は、条件を満たす最適解を探索するアルゴリズムを備える。ロボットプログラムPa及びスキャナプログラムPbのプログラム生成における条件とは、加工時間の最短化、ワーク10に対するレーザ照射角の制限、ロボット2の姿勢範囲の制限等である。
【0046】
そして、制御点修正用プログラムによって制御点が修正されると、スキャナ制御装置6は、修正後の制御点の位置情報及び方向情報をプログラム生成装置9へ送信する。
【0047】
プログラム生成装置9は、上述した最適解を探索するアルゴリズムを用いて、修正後の制御点の位置情報及び方向情報に基づいて、ロボットプログラムPa及びスキャナプログラムPbを再度生成する。生成されたロボットプログラムPa及びスキャナプログラムPbは、再びスキャナ制御装置6へ送信される。
【0048】
このようにプログラム生成装置9は、修正された制御点を反映したロボットプログラムPa及びスキャナプログラムPbを生成することによって、ロボットプログラムPaにおけるロボット経路、及びスキャナプログラムPbにおけるスキャナ4によるレーザ光の照射経路を修正することができる。
【0049】
図4は、本実施形態に係るスキャナ制御装置6の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、スキャナ制御装置6は、照射制御部61と、制御点移動部62と、制御点記憶部63と、修正制御点計算部64と、を備える。
【0050】
照射制御部61は、ロボット2によりスキャナ4を複数の位置に停止した状態で、ワーク10上の予め設定された同一の制御点にレーザ光を照射するようにスキャナ4を制御する。スキャナ4の位置が異なれば、スキャナ4によるレーザ光の出射方向が異なる。
また、照射制御部61は、制御点記憶部63に記憶された制御点の位置、又は、制御点の位置及び座標系の方向に基づいて、レーザ光をワークに照射するようにスキャナを制御する。
【0051】
制御点が複数の位置にある場合、照射制御部61は、制御点記憶部63に記憶された制御点の複数の位置、又は、制御点の複数の位置及び座標系の方向に基づいて、レーザ光をワークに照射するようにスキャナを制御する。
【0052】
また、複数の位置は、スキャナ4及びロボット2を制御するスキャナプログラム及びロボットプログラムにおけるレーザ照射開始時点及びレーザ照射終了時点に対応するスキャナ4のレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置を含む。
【0053】
制御点移動部62は、操作者によるロボット教示操作盤8の操作に応じて、制御点を移動する。
制御点記憶部63は、移動された制御点の複数の位置、又は、制御点の複数の位置及び制御点によって定義される複数の座標系の方向を記憶する。
【0054】
修正制御点計算部64は、制御点記憶部63に記憶された制御点の複数の位置、又は、制御点の複数の位置及び複数の座標系の方向に基づいて、最終的に修正された制御点である修正制御点を計算する。
【0055】
図5は、レーザ照射形状11Aの一例を示す図である。
図5に示すように、レーザ照射形状11Aは、Cの字形状を有し、制御点C1を基準として照射される。本実施形態において、レーザ加工システム1は、制御点C1を基準として、ロボット2の移動及びスキャナ4のレーザ光軸の走査の動作によって、レーザ照射形状11Aのレーザ加工を行う。
【0056】
具体的には、プログラム生成装置9は、前後の照射形状との位置関係から、適切なロボット2の経路及びスキャナ4の経路を計算し、計算したロボット2の経路及びスキャナ4の経路を適用したロボットプログラム及びスキャナプログラムを生成し、それぞれロボット制御装置5及びスキャナ制御装置6へ送信する。
【0057】
また、実際にレーザ加工を行う前に、制御点を修正するために、プログラム生成装置9は、制御点を修正するための制御点修正用プログラムを生成する。
制御点修正用プログラムは、加工用のロボットプログラム及びスキャナプログラムとは動作が異なる。制御点修正用プログラムは、例えば、以下のように動作する。
【0058】
制御点修正用プログラムは、加工用のロボットプログラム及びスキャナプログラムにおいて、Cの字形状を有する照射形状のレーザ加工を開始する位置でロボット2を一旦停止させる。そして、制御点修正用プログラムは、加工用レーザに代えて、ガイドレーザを制御点に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0059】
次に、操作者がロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット2のステップ送り(次のロボット2の姿勢まで動作して、一旦停止する)を行うと、制御点修正用プログラムは、Cの字形状を有する照射形状のレーザ加工を終了する位置までロボット2を移動して、ロボット2を一旦停止させる。制御点修正用プログラムは、この状態において、再びガイドレーザ光を制御点に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0060】
ここで、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置において、ガイド光レーザは、ワーク10上の同一の制御点に照射される。しかし、ロボット2の姿勢は変わっても、ロボット座標系における位置は同じであるため、ガイド光レーザは、ロボット2の姿勢によらず、同一の制御点に照射される。
【0061】
ロボット2の姿勢によって実際のワーク10上のレーザ照射点が移動する場合、制御点修正用プログラムにおける制御点の位置と実際のワーク10上の制御点の位置との間にずれが生じている。これにより、操作者は、ワーク10上の適切な位置に制御点を設定できていないことを確認することができる。
【0062】
更に、操作者がロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット2のステップ送りを行うと、制御点修正用プログラムは、次の照射形状のレーザ加工を開始する位置までロボット2を移動して、ロボット2を一旦停止させる。そして、上述の操作を繰り返し、制御点の設定の確認を継続する。
【0063】
図6A及び6Bは、上述した実際のレーザ加工及び制御点を修正する動作の一例を示す図であり、
図5に示すワーク10上のレーザ照射形状11Aを加工する際に、スキャナ4の動作を側方から視た図である。
図6Aは、実際にレーザ加工を行う場合のスキャナ4の動作を示す図である。
【0064】
図6Aに示すように、加工用のロボットプログラム及びスキャナプログラムは、ロボット2によってスキャナ4を連続送りし、ワーク10上の位置A及び位置Bにおいて加工用レーザによってレーザ照射形状11Aを照射するようにスキャナ4を制御する。これにより、スキャナ4は、位置A及び位置Bにおいてレーザ溶接を行うことができる。
【0065】
図6Bは、制御点を修正する場合のスキャナ4の動作を示す図である。
図6Bに示すように、照射制御部61によって制御される制御点修正用プログラムは、ロボット2によってスキャナ4を断続送りし、レーザ照射開始位置(始点)及びレーザ照射終了位置(終点)においてスキャナ4の移動を停止させる。
【0066】
そして、制御点修正用プログラムは、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置において、ガイドレーザ光によってレーザ照射形状11Aを照射するようにスキャナ4を制御する。
【0067】
ここで、制御点修正用プログラムにおける制御点の光軸方向の高さと実際のワーク10上の制御点の光軸方向の高さとが一致していれば、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置の両方において、レーザ照射形状11Aの軌跡は一致する。
【0068】
また、制御点修正用プログラムにおける制御点の光軸方向の高さと実際のワーク10上の制御点の光軸方向の高さとが一致していなければ、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置において、レーザ照射形状11Aの軌跡は一致しない。
【0069】
このような場合、操作者は、ロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット2を停止した状態で、スキャナ4の光軸方向を移動する指示をスキャナ制御装置6へ送信し、所望の位置に制御点を修正する。
【0070】
図7A~
図7Eは、制御点を修正する動作を示す図である。
図7Aに示すように、レーザ照射開始位置Y1及びレーザ照射終了位置Y2においてレーザ照射形状11Aの軌跡が一致しない場合、レーザ加工システム1は、制御点移動部62によって、レーザ照射開始位置Y1における制御点P1を、実際のワーク10上のあるべき位置に移動する。そして、スキャナ制御装置6は、移動された制御点の位置及び座標系の方向を制御点P0として制御点記憶部63に記憶する。
【0071】
次に、
図7Bに示すように、ロボット2をレーザ照射終了位置Y2に移動すると、制御点の光軸方向の位置は変わっていないため、制御点P2は、制御点P0と一致しない。
【0072】
次に、
図7Cに示すように、ロボット2をレーザ照射開始位置Y1に移動し、制御点移動部62によって、レーザ照射開始位置Y1における制御点の光軸方向の高さを変え、制御点P2を、実際のワーク10上のあるべき位置(制御点P0)に移動する。しかし、制御点の位置を移動しすぎると、
図7Cに示すように、制御点P3は、制御点P0と一致しない。
【0073】
同様に、
図7Dに示すように、ロボット2をレーザ照射終了位置Y2に移動し、制御点移動部62によって、レーザ照射終了位置Y2における制御点の光軸方向の高さを変え、制御点P4を、実際のワーク10上のあるべき位置(制御点P0)に移動する。しかし、制御点の位置を移動しすぎると、
図7Dに示すように、制御点P4は、制御点P0と一致しない。
【0074】
このように
図7A~
図7Dに示すような処理を繰り返すことによって、最終的には、
図7Eに示すように、制御点P5は、制御点P0と一致する。
【0075】
そして、正しい制御点の位置が決定されると、スキャナ制御装置6は、制御点記憶部63に記憶された制御点の位置及び座標系の方向をプログラム生成装置9に送信し、プログラム生成装置9は、ワーク10の3Dモデリングを修正する。これにより、プログラム生成装置9は、正しい制御点の位置を反映したロボットプログラム及びスキャナプログラムを生成することができる。
【0076】
ここで、レーザ加工を行うためのレーザ照射形状が小さい場合、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置におけるロボット2の姿勢(位置)の差異は小さい。このような場合、レーザ加工システム1は、レーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置におけるロボット2の姿勢を用いず、ロボット2を任意の姿勢に移動させてもよい。これにより、操作者は、適切に制御点を修正することができる。
【0077】
また、スキャナ制御装置6は、ガイドレーザ光によってレーザ照射形状を高速で反復走査するようにスキャナ4を制御してもよい。これにより、操作者は、残像効果によって、制御点を含むレーザ照射形状を視認することができる。よって、レーザ加工時と同様に、スキャナ4がレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置からガイドレーザ光を照射するため、操作者は、例えば、ガイドレーザ光と障害物との干渉も確認することができる。
【0078】
上述した実施形態では、プログラム生成装置9は、3Dモデリングに設定された制御点及び照射形状を基準としたスキャナプログラムを用いている。
一方、3Dモデリングに設定された制御点及び照射形状を用いずに、任意の点に照射点を移動し、当該照射点を記憶することによって、レーザ加工システム1は、手動操作において、新たな位置及び座標を制御点として登録することができる。
【0079】
例えば、操作者は、ロボット教示操作盤8の操作によって、スキャナ4を所望の位置に配置し、ロボット2の姿勢を維持したまま、スキャナ4により照射点をワーク10上の任意の位置に設定する。
【0080】
このとき、実際には、ガイドレーザ光上のどの位置が、正しい照射点であるかは分からない。そこで、一旦ワーク10上の任意の位置を記憶し、ロボット2の姿勢を変えた後、スキャナ4は、再び、同一の照射点に向けてガイドレーザ光を照射する。これらの二箇所の姿勢においてガイドレーザ光の位置がワーク10上において移動しなければ、レーザ照射点は、ワーク10上に位置している。そして、レーザ加工システム1は、当該レーザ照射点の位置及び座標を制御点として登録することができる。
【0081】
図8A~
図8Dは、修正制御点を計算するための動作を示す図である。
上述したように、修正制御点計算部64は、制御点記憶部63に記憶された制御点の複数の位置及び複数の座標系の方向に基づいて、最終的な修正制御点を計算する。
【0082】
具体的には、
図8Aに示すように、照射制御部61は、レーザ照射開始位置Y1における制御点P11にガイドレーザ光を照射すると、制御点P11は、実際のワーク10上のあるべき位置(最終的な修正制御点P10)からずれている。
【0083】
そのため、
図8Bに示すように、操作者は、ロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット2を停止した状態で、スキャナ4を光軸方向に移動する。
このとき、光軸方向の高さ(すなわち、スキャナ4とワーク10との距離)がわからないため、スキャナ制御装置6は、修正制御点として制御点P12の位置及び座標系の方向を制御点記憶部63に記憶する。
【0084】
次に、
図8Cに示すように、ロボット2をレーザ照射終了位置Y2に移動し、照射制御部61は、レーザ照射終了位置Y2における制御点P12にガイドレーザ光を照射する。
操作者は、ロボット教示操作盤8の操作によって、ロボット2を停止した状態で、スキャナ4を光軸方向に移動する。スキャナ制御装置6は、修正制御点として制御点P12の位置及び座標系の方向を制御点記憶部63に記憶する。
【0085】
そして、
図8Dに示すように、スキャナ制御装置6は、修正制御点として制御点P13の位置及び座標系の方向を制御点記憶部63に記憶する。
【0086】
このようにして得られた制御点P12、制御点P13、レーザ照射開始位置Y1及びレーザ照射終了位置Y2に基づいて、修正制御点計算部64は、最終的な修正制御点P10の高さ及び位置を計算することができる。
【0087】
例えば、制御点P12と制御点P13との距離、並びにレーザ照射開始位置Y1及びレーザ照射終了位置Y2におけるスキャナ4の照射角に基づいて、修正制御点計算部64は、最終的な修正制御点P10の高さ及び位置を計算することができる。これにより、レーザ加工システム1は、最終的な修正制御点P10の高さ及び位置を容易に求めることができる。
【0088】
図9は、本実施形態に係るレーザ加工システム1の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、ロボット制御装置5は、ロボットプログラムに基づいて、ワーク10に対してレーザ光を走査可能なスキャナ4を、ワーク10に対して移動させるようにロボット2を制御する。
【0089】
ステップS2において、ロボット制御装置5は、ロボットプログラムに基づいて、ロボット2によりスキャナ4を複数の位置に停止させるように制御する。
【0090】
ステップS3において、照射制御部61は、ロボット2によりスキャナ4を複数の位置に停止した状態で、ワーク10上の予め設定された同一の制御点にレーザ光を照射するようにスキャナ4を制御する。
【0091】
ステップS4において、制御点移動部62は、操作者によるロボット教示操作盤8の操作に応じて、制御点を移動する。
ステップS5において、制御点記憶部63は、移動された制御点の複数の位置、又は、制御点の複数の位置及び複数の座標系の方向を記憶する。
【0092】
ステップS6において、照射制御部61は、制御点の位置、又は、制御点の複数の位置及び座標系の方向に基づいて、レーザ光をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工システム1は、ワーク10に対してレーザ光を走査可能なスキャナ4と、スキャナ4をワーク10に対して移動させるロボット2と、スキャナ4を制御するスキャナ制御装置6と、を備え、スキャナ制御装置6は、ロボット2によりスキャナ4を複数の位置に停止した状態で、ワーク10上の予め設定された同一の制御点にレーザ光を照射するようにスキャナ4を制御する照射制御部61を有する。これにより、レーザ加工システム1は、制御点を簡易に修正することができる。
【0094】
また、複数の位置は、スキャナ4及びロボット2を制御するスキャナプログラム及びロボットプログラムにおけるレーザ照射開始時点及びレーザ照射終了時点に対応するスキャナ4のレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置を含む。これにより、レーザ加工システム1は、スキャナ4のレーザ照射開始位置及びレーザ照射終了位置を用いて、制御点を修正することができる。
【0095】
また、スキャナ制御装置6は、制御点を移動する制御点移動部62と、移動された制御点の位置、又は、制御点の位置及び制御点によって定義される座標系の方向を記憶する制御点記憶部63と、を更に備え、照射制御部61は、制御点の位置、又は、制御点の位置及び座標系の方向に基づいて、レーザ光をワーク10に照射するようにスキャナ4を制御する。これにより、レーザ加工システム1は、制御点を適切に修正することができる。
【0096】
また、スキャナ制御装置6は、制御点を移動する制御点移動部62と、移動された制御点の複数の位置、又は、複数の制御点の位置及び制御点によって定義される複数の座標系の方向を記憶する制御点記憶部63と、制御点の複数の位置、又は、制御点の複数の位置及び複数の座標系の方向に基づいて、最終的に修正された制御点である修正制御点を計算する修正制御点計算部64と、を更に備える。これにより、レーザ加工システム1は、最終的な修正制御点を計算によって求めることができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記のレーザ加工システム1は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記のレーザ加工システム1により行なわれる制御方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0098】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0099】
また、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記各実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 レーザ加工システム
2 ロボット
3 レーザ発振器
4 スキャナ4
5 ロボット制御装置
6 スキャナ制御装置
7 レーザ制御装置
8 ロボット教示操作盤
9 プログラム生成装置
10 ワーク
61 照射制御部
62 制御点移動部
63 制御点記憶部
64 修正制御点計算部