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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】造影剤誘発急性腎不全治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20240910BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P13/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022561455
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2021003536
(87)【国際公開番号】W WO2021206316
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0042899
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036838
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517423811
【氏名又は名称】アプタバイオ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APTABIO THERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】Tower-A0504,13,Heungdeok 1-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 16954,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ファン・ムン
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513219(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009436(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035848(US,A1)
【文献】Laboratory Investigation,2017年,Volume 97,p.419-431
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4439
A61P 13/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護用、または造影剤誘発急性腎不全予防用薬学的組成物であって、
【化1】
(前記化学式1において、Rは炭素数1ないし10の直鎖型または分岐型アルキル基である)
化学式1の化合物は、
3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;または、
3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;である、組成物
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩である、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記造影剤はイオン性単量体造影剤または非イオン性単量体造影剤から選択される、請求項1又は請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記イオン性単量体造影剤は、イオグリク酸(ioglycate)、イオダミド(iodamide)、アセトリゾ酸(acetrizoate)、ジアトリゾ酸(diatrizoate)、メトリゾ酸(metrizoate)から選択される、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記非イオン性単量体造影剤は、メトリザミド(metrizamide)、イオヘキソール(iohexol)、イオパミドール(iopamidol)、イオペントール(iopenthol)、イオプロミド(iopromide)、イオベルソール(ioversol)から選択される、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記非イオン性単量体造影剤はイオヘキソール(iohexol)である、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記薬学的組成物は薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含むものである、請求項1又は請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、ヨード含有造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護用、またはヨード含有造影剤誘発急性腎不全予防用薬学的組成物であって、
【化2】
(前記化学式1において、Rは炭素数1ないし10の直鎖型または分岐型アルキル基である)
化学式1の化合物は、
3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;または、
3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;である、組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年4月8日付韓国特許出願第10‐2020‐0042899号及び2021年3月22日付韓国特許出願第10‐2021‐0036838号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護用または造影剤誘発急性腎不全の予防及び治療に有用なピラゾール誘導体、その製造方法及びその薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
造影剤(Contrast media;CM)とは、胃、腸管、血管、脳脊髄康、関節腔などに投入して磁気共鳴画像(MRI)撮影やコンピューター断層(CT)撮影のような放射線検査の時に組職や血管が見やすいように各組職のX線吸収差を人為的に大きくすることで映像の対照度を大きくする薬品である。造影剤を使うことで生体構造や病変を周りとよく区別できるようにして診断的価値を向上させる。
【0004】
造影剤は一般的に陰性造影剤と陽性造影剤に分けられるが、陰性造影剤は周りの組職よりX線をもっと多く透過させて映像を見せる。陽性造影剤ではヨード含有造影剤、硫酸バリウムなどがあり、陰性造影剤では空気・ガス・炭酸ガスなどがある。
【0005】
人によっては造影剤に敏感でアレルギー性反応を起こし、発疹、かゆみ、発熱、吐き気、嘔吐、関節痛、出血性素因などを引き起こすことがある。
【0006】
造影剤の副作用としては、珍しくショックやアナフィラキシー反応などが起きることもあり、じんま疹、紅潮、発疹、かゆみなどの過敏反応が起きることもあるが、深刻には急性腎不全(acute kidney injury)が現われることがある。
【0007】
特に、造影剤で誘導された急性腎不全は、正確な機序が知られていないが、ヨード系列の造影剤投与後に発生し、病院内急性腎不全(hospital‐acquired acute kidney injury)の主要原因として知られている。
【0008】
造影剤誘発急性腎不全による急性腎不全は使用48時間以内に血中クレアチニン(creatinine)数値が既存数値に比べて25%以上あるいは0.5mg/dl以上増加すると定義されるが、この時、患者には腎不全を誘発する他の原因、すなわち血圧降下、他の腎毒性などがあってはならない。
【0009】
大概、造影剤投与後3‐5日目に血中クレアチニン数値が最高潮に到逹し、以後7‐10日内に以前数値に回復する経過を示す。造影剤誘発急性腎不全は院内発生急性腎不全の12%ぐらいの原因を占め、虚血性急性腎不全(42%)と尿路閉塞による急性腎不全(18%)とともに入院患者で発生する急性腎不全の3大主要原因として作用する。腎機能が正常な場合、造影剤誘発急性腎不全の発生頻度は0‐5%で低い方であるが、既存の腎機能が減少されている患者における発生頻度は12‐27%まで増加すると報告されている。特に、脱水、糖尿病性腎臓病症、腎臓損傷、体積枯渇または鬱血性心不全患者及び年寄り患者のような高危険患者で50%まで増加すると報告され、15%で透析が必要であると報告されたことがある。
【0010】
このような危険性にもかかわらず、特に主要疾患が同伴している高危険及び高齢患者で電算化断層撮映及び血管仲裁に対する放射線造影剤の使用が50代以上で20%以上へと急増している。したがって、造影剤を利用する検査を受ける対象患者の中で高齢患者群、及び糖尿、高血圧及び心不全のように造影剤腎損傷に弱い患者群が増加している状況で、造影剤誘発腎毒性を減少させるための予防及び治療法の開発が非常に切実な状況である。
【0011】
造影剤誘発腎臓疾患の病態生理はまだ明かされていないが、腎血流減少による虚血性損傷と造影剤の直接的な腎細尿管細胞損傷が主要機序と推定されている。
【0012】
虚血性損傷は造影剤投与後に腎血流量を調節するホルモン変化によって、血管収縮ホルモンであるアデノシン(adenosine)とエンドセリン(endothelin)が増加し、血管弛緩ホルモンであるNO(nitric oxide)とプロスタグランジン(prostaglandin)などが減少し、特に腎髓質部位の血流減少及び低酸素症による損傷が発生すると知られている。特徴的に虚血性損傷と腎細尿管細胞損傷は窮極的に腎組織で硝子酸素基(free radical)の合成を増加させ、広範囲の酸化ストレスを引き起こすようになって、これによるサイトカイン増加による炎症とアポトーシス(apoptosis)の増加などによる腎細胞損傷が誘発されると知られている。
【0013】
造影剤誘発腎臓疾患の場合、他の急性腎不全の場合と同様、既に発生した腎損傷の進行を遮断できる方法が明らかでなく、誘発時点が明確であるため、積極的な予防を通じてその発生を遮断しようとする努力が主に行われていて、造影剤による腎損傷を減少させるために多くの研究が行われている。
【0014】
造影剤腎毒性を防ぐための一般的な治療法は、十分な輸液を供給しながら電解質の不均衡を防ぐために努力するものとして知られているが、腎不全症の進行を防ぐ確かな治療法や予防法が明かでないため、場合によっては透析が必要な場合もあるので、初期に発生を防ぐための予防法の開発により多くの研究が必要である。
【0015】
最近、実験室の水準では、エンドペプチダーゼ(endopeptidase)阻害剤または一部芳香性‐陽イオン性ペプチド(aromatic‐cationic peptide)が造影剤による急性腎損傷を防ぐことができるという報告がある。
【0016】
しかし、大概の研究が実験室または小規模の患者を対象とした観察研究であり、現在まではこのような薬剤使用を通じて造影剤誘発腎不全を効果的に予防できるか否かに対する結論は不明確な状態で造影剤誘発急性腎損傷に対する具体的な治療法はない実情である。
【0017】
したがって、多様な研究にもかかわらず相変らず造影剤による急性腎不全の予防及び治療剤の開発が必要であると判断され、本発明を完成した。
【0018】
一方、いかなる先行文献でも本発明のピラゾール系化合物が造影剤誘発急性腎不全の予防及び治療効果があると開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】韓国登録特許10‐1280160号
【文献】韓国登録特許10‐1886894号
【文献】米国公開特許US2019‐0388492号
【非特許文献】
【0020】
【文献】Persson PB、Hansell P、Liss P。Pathophysiology of contrast medium-induced nephropathy。Kidney Int 2005;68:14‐22。
【文献】Heyman SN、Reichman J、Brezis M。Pathophysiology of radiocontrast nephropathy:a role for medullary hypoxia。Invest Radiol 1999;34:685‐691。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0022】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0023】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む造影剤誘発急性腎不全治療及び予防のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0024】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を利用した造影剤誘発腎損傷減少効果、血中クレアチニン改善効果、細尿管損傷改善効果を提供することを目的とする。
【0025】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を個体に投与して造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護方法または造影剤誘発急性腎不全の予防または治療する方法を提供することを目的とする。
【0026】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の造影剤誘発急性腎不全予防または治療用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記目的を達成するために、本発明では下記化学式1で表されるピラゾール系化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護用組成物または造影剤によって誘発される急性腎不全の予防及び改善または治療用薬学組成物を提供する。
【化1】
【発明の効果】
【0028】
本発明によるピラゾール系化合物、その薬学的に許容可能な塩は、造影剤投与によって誘発された急性腎不全の病症を効果的に緩和させることができるので、造影剤誘発腎毒性を低減する腎臓保護または造影剤誘発急性腎不全症の予防または治療に有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の効果を分析した結果である。
図2】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物による血中BUN(blood urea nitrogen)改善効果を分析した結果である。
図3】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物による血中クレアチニン改善効果を分析した結果である。
図4】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物による腎損傷マーカーであるのNGAL、KIM‐1及び微小蛋白尿(albumin)減少効果を分析した結果である。
図5】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の細尿管損傷改善効果を分析した結果である。
図6】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の腎臓組職炎症改善効果を分析した結果である。
図7】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の腎臓組職内の炎症細胞の浸潤減少効果を分析した結果である。
図8】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の腎臓組職内の酸化性ストレス指標である活性化酸素減少効果を分析した結果である。
図9】造影剤誘発急性腎不全症動物モデルにおける本発明の化合物の腎臓組職内の酸化性ストレスマーカーであるニトロチロシン(nitrotyrosine)減少効果を分析した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について具現例を挙げて詳細に説明する。
ただし、これは例示として提示するものであって、これによって本発明が制限されることなく、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。また、本発明を実施するに必要な構成であっても通常の技術者が公知技術から容易に実施できる構成については具体的な説明を省略する。
【0031】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0032】
本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「持つ」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0033】
造影剤を利用した診断方法が増加することによって、造影剤の使用が増えるようになり、同時に造影剤によって発生する副作用も問題となっている。造影剤によるアレルギーなどの過敏反応だけでなく、深刻には急性腎不全が現われることがある。また、糖尿、高血圧など主な基礎疾患を持つ高齢患者群が増えていて、この人に対する放射線造影剤の使用が増加したことも病院内急性腎不全の主要原因の一つであると知られている。
【0034】
しかし、造影剤誘発急性腎不全の発生時、治療法は十分な輸液供給及び電解質の不均衡を防ぐための処置のみ報告されていて、具体的に造影剤誘発急性腎不全を予防できる方法または確立された治療法は報告されたことはない。
【0035】
ここで、本発明では化学式1で表されるピラゾール系化合物、またはその薬学的に許容可能な塩から選択された1種以上の化合物が造影剤によって誘発される急性腎不全を予防または治療できる薬学的組成物を提供する。
【0036】
本発明で使われるピラゾール系化合物は下記化学式1で表される。
【化2】
【0037】
本発明の薬学組成物に含有されるピラゾール系化合物の薬学的に許容可能な塩は親化合物(parent compounds)の生物学的有効性及び特性を保有し、1回用量(dosage)が投与される時、生物学的にまたは他の方向に有害でない塩を意味することができる。また、医薬業界で通常使われる塩を意味する。
【0038】
具体的には、薬学的に許容可能な塩基付加塩は無機及び有機塩基から製造されることができる。無機塩基から誘導された塩は、これに制限されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウム塩を含むことができる。有機塩基から誘導された塩は、これに制限されるものではないが、一次、二次及び三次アミン;天然的に発生する置換されたアミンを含む置換されたアミン;及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2‐ジメチルアミノエタノール、トロメタミン(tromethamine)、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン(procaine)、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン(choline)、ベタイン(betaine)、エチレンジアミン、グルコサミン、N‐アルキルグルカミン、テオブロミン(theobromine)、プリン、ピペラジン、ピペリジン、及び/またはN‐エチルピペリジンを含むサイクリックアミンの塩を含むことができる。
【0039】
他のカルボン酸誘導体、具体的には、カルボキサミド(carboxamides)、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどを含むカルボン酸アミドも本発明の実施において有用であることも理解しなければならない。
【0040】
さらに、薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機及び有機酸から製造されることができる。無機酸から誘導された塩は、塩酸、ブロム酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、ヨード酸、酒石酸などを含む。有機酸から誘導された塩は、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ハイドロヨウ素酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸(malic acid)、マロン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、けい皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及び/またはサリチル酸などを含むことができるが、これに制限されない。
【0041】
前記薬学的に許容可能な塩は塩酸塩であってもよい。
【0042】
本発明の薬学的組成物に含有される前記化学式1で表されるピラゾール系化合物またはその薬学的に許容可能な塩を具体的に例示すれば下記のとおりである。
3‐フェニル‐4‐メチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐イソプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐tert‐ブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルペンチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルヘキシル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩;
【0043】
具体的には、本発明の薬学組成物に含有されるピラゾール系化合物は3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはその塩酸塩であってもよい。
【0044】
本発明の化学式1の化合物は、腎臓組職内の活性酸素種の生成を抑制することができる。
【0045】
本発明で酸化ストレス(oxidative stress)は、生体分子、細胞、組職に対する活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)の生産と抗酸化防御機序の均衡が砕けることで活性酸素種の生産が相対的に過多になって誘発される組職損傷を指す。ここで「活性酸素種(reactive oxygen species)」は、活性化酸素、活性酸素、活性化酸素種と言及されることができ、同じ物質を意味する。
【0046】
本発明の「造影剤」は当業者に公知である。造影剤は身体特定部分を類似な密度の周辺部から区分できるようにする。好ましくは、本発明の文脈上、造影剤は不透明またはポジティブ(positive)造影剤、すなわち、周辺組職より大きい減衰密度を持って、x‐線の吸収を増大させる造影剤である。
【0047】
ポジティブ造影剤は当業界に広く公知であり、非‐ヨード基材造影剤、ヨード基材造影剤、すなわち、ヨードが添加された造影剤である。非‐ヨード基材及びヨード基材造影剤の例示は当業者に公知である。
【0048】
単量性造影剤は、イオン性、非イオン性に分けられるが、具体的なイオン性単量体造影剤は、イオグリク酸(ioglycate)(Rayvist)、イオダミド(iodamide)(Uromiro)、アセトリゾ酸(acetrizoate)(Diaginol、Urokon)、ジアトリゾ酸(diatrizoate)(Angiografin;Hypaque;Renografin;Urografin;Urovison)、メトリゾ酸(metrizoate)(Isopaque;Triosil)を含む。
【0049】
具体的な非イオン性単量体造影剤は、メトリザミド(metrizamide)(Amipaque)、イオヘキソール(iohexol)(Omnipaque)、イオパミドール(iopamidol)(Iopamiro)、イオペントール(iopenthol)(Imagopaque)、イオプロミド(iopromide)(Ultravist)、イオベルソール(ioversol)(Optiray)を含む。
【0050】
二量体ヨード基材造影剤は、好ましくは2個のトリ‐ヨード化ベンゼン環を含む。これらはイオン性静脈注入コレオグラフィ造影剤(ionic intravenous cholegraphic contrast media)、一酸イオン性造影剤及び非イオン性造影剤とグループ化することができる。二量体ヨード化造影剤は、好ましくはイオキサグル酸(ioxaglic acid)(Hexabrix)、イソビスト(iotrolan)(Isovist)、イオジキサノール(iodixanol)(Visipaque;Optiprep)である。
【0051】
非‐ヨード造影剤は主に不溶性バリウムスルフェート形態のバリウムをよく含む。これらは好ましくは胃腸管検査のために投与される。
【0052】
造影剤は適切なものとされる任意の方法で投与されることができる。当業者は投与のために選択される方法が、造影剤が投与される検査の目的及び/または造影剤に左右され得るという点を知っている。具体的には、バリウム基材の造影剤は嚥下によって、または灌腸剤の形態で投与される。ヨード基材の造影剤は、好ましくは静脈、脊椎管または動脈への注射によって投与される。ヨード基材造影剤の投与のためのカテーテルを使うことができる。
【0053】
ヨード基材造影剤の投与はコンピューター断層撮映、及び、最も好ましくは血管撮影のためのことである。本発明では超音波検査または磁気共鳴画像(MRI)に適する造影剤の投与もさらに考慮される。
【0054】
本発明の「急性腎不全」または「AKI(acute kidney injury)」、「ARF(acute renal failure)」は当業界に広く公知である。本発明で使われたように、前記用語は腎臓機能の急速な消失を指す。腎臓機能の急速な消失は腎臓(ら)に対する損傷によって引き起こされる。AKIの診断及び分類のための基準は血清クレアチニン及び尿排泄量の変化を根拠にする。前記用語は本願で参考文献として含まれる文献、KDIGOガイドライン(KDIGO、Kidney International Supplements(2012)2、69‐88)で定義されている。
【0055】
造影剤誘発急性腎不全は、低血圧、他の腎毒性薬剤の使用、尿路閉鎖及び塞栓症のような他の原因による腎臓機能減少ではなく、造影剤使用48時間以内に血中クレアチニン数値が既存数値に比べて25%以上、あるいは0.5mg/dl以上増加するものとして定義される。
【0056】
大概に、造影剤は、正常な腎機能を持つ者に投与する時も一部腎臓機能低下などの副作用が現われることがあるが、特に腎機能が低下された者に投与する時は腎臓機能の悪化がもっと表れやすく、低下された腎機能がさらに悪くなることがある。
【0057】
造影剤誘発急性腎不全の正確な機序は完全に明かされていないが、造影剤は滲透圧を増加させ、腎臓血流を減少させ、腎臓動脈収縮を誘発すると知られている。また、造影剤誘発急性腎不全の原因で細尿管怪死または腎臓灌流減少が知られている。このような状態で活性酸素種の生成が促進され、虚血性冠損傷をもたらして、直接管毒性(tubular toxicity)の原因になりえるということが知られている。また、炎症もその原因の一つとして知られている。
【0058】
したがって、造影剤誘発急性腎不全を予防または治療するために十分な輸液供給及び活性酸素種を減少させるために重炭酸塩(bicarbonate)またはN‐アセチルシステイン(N‐acetylcystein)、アスコルビン酸(ascorbic acid)のような抗酸化剤治療による腎保護効果が発表されたことがあるが、まだ定立された治療方法はなく、予防が唯一の治療方法である。
【0059】
本発明の薬学組成物は、特に、3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール、3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール、3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールは、いずれも活性酸素種生成抑制効果を示した。
【0060】
本発明の実施例において、動物実験で確認したように、造影剤誘発急性腎不全の指標である血中クレアチニン濃度を有意に減少させ、細尿管損傷の度合いも減少させた。また、腎損傷マーカーであるNGAL(neutrophil gelatinase‐associated lipocalin)、KIM‐1(kidney injury molecule‐1)及び微小蛋白尿を減少させ、腎臓組職内の炎症細胞の浸潤、酸化性ストレス指標である活性化酸素及びニトロチロシン(nitrotyrosine)を減少させた。
【0061】
したがって、造影剤誘発急性腎不全モデルで腎組織内の活性酸素発生を抑制して、炎症反応を抑制する急性腎不全を予防したり緩和する効果を確認した。
【0062】
本発明の薬学的組成物は、化学式1の化合物またはその塩の他、さらに活性酸素種を取り除くための重炭酸塩及び/または抗酸化剤をさらに含むことができる。
【0063】
本発明の薬学的組成物は本発明の効果を害しない範囲内で薬学的に許容可能な担体を含むことができる。
【0064】
前記「薬学的に許容される担体」は当業者に公知であるように、任意の、及び全ての種類の溶媒、分散媒質、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(抗バクテリア剤または航真菌剤)、等張化剤、希釈剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味剤、染料など、及びその組み合わせを含む。
【0065】
前記希釈剤は未結晶セルロース、ラクトースモノハイドレート、ラクトース無水物、乳糖、澱粉、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
崩壊剤は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカメロースナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、F‐melt、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニル酢酸、ポビドン、ポリビニルピロリドン、コポビドン、マクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム、硬質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはマグネシウムメタシリケートアルミネートのような珪酸塩誘導体、リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、アルファー化デンプン、アカシアガムのようなガム類、ゼラチン、エチルセルロースのようなセルロース誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、二酸化珪素、タルク、硬質無水ケイ酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0069】
pH調節剤は、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エーテル酸ナトリウム、りんご酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸(シトル酸)のような酸性化剤とアンモニア水、炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、三塩基カルシウムリン酸塩のような塩基性化剤などを使うことができる。
【0070】
酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどを使うことができる。
【0071】
他にも着色剤、香料の中から選択された多様な添加剤として薬学的に許容可能な添加剤を選択使用して本発明の製剤を製剤化することができる。
【0072】
本発明において、添加剤の範囲が前記添加剤を利用することに限定されるものではなく、前記添加剤を選択することで通常範囲の用量を含有して製剤化することができる。
【0073】
本発明による薬学的組成物は通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエアロゾルなどの経口形剤形、外用剤、座剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して利用されることができる。
【0074】
本発明の一側面において、前記有効成分は薬学組成物の総重量を基準にして0.00001ないし100重量%、0.0001ないし95重量%または0.001ないし90重量%の範囲で含有された造影剤誘発急性腎不全の予防、改善または治療用薬学組成物であってもよい。
【0075】
本発明による造影剤誘発急性腎不全の予防または治療剤において、前記化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬学的に許容される塩の投与量は、患者の年齢、体重、症状、投与経路などによって適切に変更することが可能である。
【0076】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬学的に許容される塩の投与量は、0.00001mg/kg/日~2000mg/kg/日、0.0001mg/kg/日ないし1000mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし800mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし500mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし100mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし80mg/kg/日または0.01mg/kg/日ないし70mg/kg/日である。
【0077】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬学的に許容される塩の含量は、単位剤形当たり0.00001ないし100重量%、0.0001ないし95重量%、0.0001ないし90重量%、0.001ないし70重量%、0.001ないし50重量%である。
【0078】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬学的に許容される塩の投与濃度は、0.0001ないし500μM、0.001ないし300μM、0.001ないし150μM、0.001ないし130μM、0.001ないし100μM、0.001ないし80μMまたは0.01ないし70μMである。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、造影物とともに、または別に一般的経路を通じて投与されることができるが、具体的には筋肉内、脊髓康内、消化器内、心血管内、腎臓内、または静脈内投与用で製剤化されることができる。製剤化方法は当業者に公知の通常的な方法を利用する。
【0080】
通常の筋肉内または脊髓康内投与用組成物は、例えば、活性成分とデキストロースまたは塩化ナトリウム、またはデキストロース及び塩化ナトリウムを含む滅菌された等張水溶液からなることができるが、これに制限されない。他の例は乳酸点滴注射液(lactated Ringer’s injection)、乳酸点滴+デキストロース注射液、ノルモゾル(Normosol‐M)及びデキストロース、イソレイトE(Isolyte E)、アシル化された点滴注射液などがあるが、これに制限されない。選択的に、ポリエチレングリコールのような共溶媒;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート化剤;ピロ亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)のような酸化防止剤を本製剤に含ませることができるが、これに制限されない。選択的に、溶液は冷凍乾燥されてもよく、その後、投与直前に適当な溶媒で再構成されることができるが、これに制限されない。
【0081】
本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記実施例は本発明をより容易に理解させるために提供されるものであって、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0082】
<合成例>
<合成例1>3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【化3】
【0083】
丸底フラスコに2‐エチル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(10.7g、49mmol)と2‐ヒドラジノピリジン(5.6g、51.4mmol)を溶媒なしに1日間窒素条件下で加熱還流させた。生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで精製した後、真空乾燥させて表題化合物を70%の収率で収得した。
【0084】
1H NMR(300MHz、DMSO‐d6)δ8.25‐8.24(1H、d)、8.00‐7.97(1H、d)、7.84‐7.82(1H、t)、7.73‐7.71(2H、m)、7.46‐7.37(3H、m)7.12‐7.11(1H、t)、2.62‐2.57(2H、m)、1.23‐1.17(3H、m);ESI(m/z)266.1[M+H]
【0085】
<合成例2>3‐フェニル‐4‐ブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【化4】
【0086】
丸底フラスコに2‐ブチル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(12.1g、49mmol)と2‐ヒドラジノピリジン(5.6g、51.4mmol)を溶媒なしに1日間窒素条件下で加熱還流させた。生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで精製した後、真空乾燥させて表題化合物を75%の収率で収得した。
【0087】
1H NMR(300MHz、DMSO‐d6)δ8.25‐8.24(1H、d)、8.03‐8.02(1H、d)、7.85‐7.83(1H、t)、7.70‐7.69(2H、m)、7.44‐7.35(3H、m)7.12‐7.11(1H、t)、2.56‐2.53(2H、t)、1.58‐1.52(2H、m)、1.38‐1.24(2H、m)、0.89‐0.86(3H、t);ESI(m/z)294.0[M+H]
【0088】
<合成例3>3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【化5】
【0089】
丸底フラスコに2‐プロピル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(2.52g、10.7mmol)とエタノール10mlを入れた後、2‐ヒドラジノピリジン(1.29g、1.18mmol)をエタノール3mlに希釈させた溶液を0℃でゆっくり滴加した。3日間100℃で加熱還流させた。減圧蒸溜して溶媒を取り除いた後、生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで洗浄した後、真空乾燥させて表題化合物を82%の収率で収得した。
【0090】
1H NMR(300MHz、CDCl)δ12.50(1H、s)、8.27‐8.25(1H、m)、8.01(1H、d、J=8.5Hz)、7.81(1H、m)、7.69(2H、m)、7.48‐7.34(3H、m)、7.12‐7.10(1H、m)、2.54(2H、d、J=7.5Hz)、1.64(2H、m)、0.93(3H、t、J=7.3 Hz);EIMS(70eV)m/z(rel intensity)279(M+、37)、250(100)
【0091】
<合成例4>3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール塩酸塩(化合物1)の合成
【化6】
【0092】
丸底フラスコに前記合成例3で製造した3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール(280mg、1.0mmol)をエチルエーテル4mlに溶解させた後、ここに2MのHClが溶解されたエチルエーテル0.55mlを0℃でゆっくり滴加した。前記反応溶液から生成された固体を減圧ろ過して溶媒を取り除いた後、ヘキサンとエチルアセテートで洗浄した後、真空乾燥して前記表題化合物(270mg、0.85mmol)を収得した。
【0093】
1H NMR(300MHz、CDCl)δ8.44(1H、d、J=4.2Hz)、8.0‐8.03(2H、m)、7.66‐7.64(2H、m)、7.48‐7.42(3H、m)、7.34‐7.30(1H、m)、2.49(2H、brs)、2.43(2H、t、J=7.5Hz)、1.48(2H、m)、0.48(3H、t、J=7.3 Hz)
【0094】
<実施例> 造影剤誘導急性腎不全マウス動物モデルの薬効評価
実験動物は6週齢のmale C57BL/6マウスをライオンバイオで購入した。マウスは皆標準条件で維持した。約2週間飼育し、8週齢になれば造影剤投入前に化合物1[3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール塩酸塩]を60mg/kg用量で毎日5日間経口投与した。
【0095】
急性腎不全誘発のために16時間禁水後、造影剤投与15分前に消炎痛み止めのインドメタシン(Indomethacin、10mg/kg)とNO遮断剤であるN‐nitro‐L‐arginine(L‐NAME、10mg/kg)を腹腔内投与し、15分後に造影剤(Iohexol、4000mg iodine/kg)を腹腔内に投与した。食べ物と水を供給して24時間後に動物試験物質はビヒクル投与群(Control)及び造影剤投与群(Iohexol)及び造影剤と化合物1の同時投与群(Iohexol+化合物1)などの3ヶ群に分類した。
【0096】
試験終了後、動物を痲酔して個体別に腎臓組職を摘出し、検査のための血液を取った。組職を10%中性緩衝ホルマリン溶液(10% buffered neutral formalin)に固定した。固定された組職を一定厚さで切り取った後、一般的組職処理過程を経てパラフィン包埋して4~5μmの組職切片を製作した後、一般的な染色方法であるHematoxylin & Eosin染色(H&E stain)を実施して腎皮質と腎髓質部位の腎損傷度合いを組職病理学的に観察し、F4/80染色、Tunel染色、DHE染色及びニトロチロシン(nitrotyrosine)染色を実施して腎損傷組職内の炎症及び酸化ストレス影響を観察した。
【0097】
血液を取って3000rpm、4℃で10分間遠心分離して上層の血清(Serum)を取って、自動血液生化学分析機器(AU480、Beckman Coulter、USA)を利用してBUN(blood urea nitrogen)とクレアチニンのlevelを測定し、腎損傷指標を確認した。組職学的腎損傷度合いの評価は、腎細尿管損傷がない場合0点、軽微な損傷がある場合1点、細尿管内液胞病変が25‐60%未満の場合2点、細尿管内液胞病変が60%以上の場合3点で計算して、顕微鏡視野下の細尿管損傷の平均値を数式化した。
【0098】
図1はマウスで誘導した造影剤誘導急性腎不全モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職での細尿管損傷減少効果を示す写真である。図1で示すように、腎臓組職を採取して腎皮質と腎髓質部位の腎損傷度合いを確認したところ、正常対照群に比べて造影剤処理群で細管細胞(tubule cell)の損傷による嚢胞変化(vacuolar change)及び刷子縁(brush border)が消失され、ひどい細尿管組職損傷があり、化合物1を処理した群から著しく腎髓質及び腎皮質の腎損傷が減少することを示す。
【0099】
図2及び3はマウスで誘導した造影剤誘導急性腎不全モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、血液検査での腎損傷減少効果を示すグラフである。図2及び3に示すように、正常対照群に比べて造影剤を処理した群で著しくBUN及びクレアチニン(Serum Cr)濃度が増加し、化合物1を処理した群でBUN及びクレアチニン濃度が減少するが、特にクレアチニン濃度が減少して腎損傷が減少することを示す。
【0100】
図4はマウスで誘導した造影剤誘導急性腎不全モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、小便内での腎損傷マーカーであるNGAL、KIM‐1及び微小蛋白尿(アルブミン)減少効果を示すグラフである。図4に示すように、正常対照群に比べて造影剤を処理した群で著しくNGAL、KIM‐1及び微小蛋白尿(アルブミン)濃度が増加し、化合物1を処理した群でNGAL、KIM‐1及び微小蛋白尿(アルブミン)濃度が減少して腎損傷が減少することを示す。
【0101】
図5はマウスで誘導した造影剤誘導急性腎不全モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職検査での腎臓の細尿管損傷減少効果を示すグラフである。図5は腎臓組職を採取して細尿管損傷減少度合いを比べた結果であって、正常対照群に比べて造影剤処理した群で著しく細尿管損傷点数が増加し、化合物1を処理した群で著しく細尿管損傷点数が減少することを示す。
【0102】
図6はマウスで誘導した造影剤急性腎損傷モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職内の炎症減少効果を示すグラフである。図6は腎組職内での炎症指標であるMCP‐1(monocyte chemoattractant protein‐1)遺伝子発現度合いを分析したもので、正常対照群に比べて造影剤を処理した群でMCP‐1の発現が増加したことに比べ、化合物1を処理した群で著しく炎症(MCP‐1)が減少することを示す。
【0103】
図7はマウスで誘導した造影剤急性腎損傷モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職内の炎症細胞(マクロファージ、F4/80陽性細胞)の浸潤度合いを分析したもので、正常対照群に比べて造影剤処理した群で著しく炎症細胞の浸潤が増加し、化合物1を処理した群で造影剤処理群に比べて炎症細胞の浸潤が著しく減少することを示す。
【0104】
図8はマウスで誘導した造影剤急性腎損傷モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職内の酸化性ストレス指標である活性酸素種度合いを分析したもので(DHE stainig)、正常対照群に比べて造影剤を処理した群で著しく活性化酸素が増加し、化合物1を処理した群で造影剤処理群に比べて活性化酸素が著しく減少することを示す。
【0105】
図9はマウスで誘導した造影剤急性腎損傷モデル動物を利用した評価で、1日1回60mg/kgで化合物1を5日間投与した群において、腎臓組職内の酸化性ストレスマーカーであるニトロチロシン(nitrotyrosine)の度合いを分析したもので、正常対照群に比べて造影剤を処理した群で著しくニトロチロシンが増加し、化合物1を処理した群で造影剤処理群に比べてニトロチロシンが著しく減少することを示す。
【0106】
したがって、本特許の化合物は造影剤による急性腎損傷モデルで著しい腎臓保護効果があることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9