(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】部品実装機およびクランプ制御方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H05K13/04 P
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2022569321
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046506
(87)【国際公開番号】W WO2022130444
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 繁人
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-311400(JP,A)
【文献】特開2008-311401(JP,A)
【文献】特開2004-087937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に実装する部品実装機であって、
前記基板を搬送する搬送装置と、
固定側クランプ部材と、可動側クランプ部材と、モータの駆動により前記可動側クランプ部材を上下に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置により前記可動側クランプ部材を移動させて、前記搬送装置により搬入された基板を前記固定側クランプ部材に突き当てることにより該基板を両側から挟んでクランプするクランプ装置と、
前記搬送装置により搬入された基板の厚みを測定するためのセンサと、
前記センサの検出値に基づいて前記基板の突き当て面を前記固定側クランプ部材の被突き当て面へ移動させるための前記可動側クランプ部材の目標位置を設定し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に一致するように位置制御により前記モータを駆動制御する制御装置と、
を備える部品実装機。
【請求項2】
請求項1記載の部品実装機であって、
前記部品を保持可能な保持部材を有する実装ヘッドを備え、
前記制御装置は、前記位置制御により、前記可動側クランプ部材の位置を前記目標位置と一致させた状態で、前記保持部材に保持された前記部品が前記基板に実装されるように前記実装ヘッドを制御する、
部品実装機。
【請求項3】
部品を基板に実装する部品実装機であって、
前記基板を搬送する搬送装置と、
固定側クランプ部材と、可動側クランプ部材と、モータの駆動により前記可動側クランプ部材を上下に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置により前記可動側クランプ部材を移動させて、前記搬送装置により搬入された基板を前記固定側クランプ部材に突き当てることにより該基板を両側から挟んでクランプするクランプ装置と、
前記搬送装置により搬入された基板の厚みを測定するためのセンサと、
前記センサの検出値に基づいて前記基板の突き当て面を前記固定側クランプ部材の被突き当て面よりも所定距離手前まで移動させるための前記可動側クランプ部材の目標位置を設定し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に一致するように位置制御により前記モータを駆動制御し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に達すると、前記位置制御に代えて一定のトルクにより前記基板が前記固定側クランプ部材に突き当たるようにトルク制御により前記モータを駆動制御する制御装置と、
を備える部品実装機。
【請求項4】
固定側クランプ部材と、可動側クランプ部材と、モータの駆動により前記可動側クランプ部材を上下に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置により前記可動側クランプ部材を移動させて
、搬送装置により搬入された基板を前記固定側クランプ部材に突き当てることにより該基板を両側から挟んでクランプするクランプ装置に用いられるクランプ制御方法であって、
前記基板の厚みを測定し、
測定した前記基板の厚みに基づいて、前記基板の突き当て面を前記固定側クランプ部材の被突き当て面へ移動させるための前記可動側クランプ部材の目標位置を設定し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に一致するように位置制御により前記モータを駆動制御する
クランプ制御方法。
【請求項5】
固定側クランプ部材と、可動側クランプ部材と、モータの駆動により前記可動側クランプ部材を上下に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置により前記可動側クランプ部材を移動させて
、搬送装置により搬入された基板を前記固定側クランプ部材に突き当てることにより該基板を両側から挟んでクランプするクランプ装置に用いられるクランプ制御方法であって、
前記基板の厚みを測定し、
測定した前記基板の厚みに基づいて、前記基板の突き当て面を前記固定側クランプ部材の被突き当て面よりも所定距離手前まで移動させるための前記可動側クランプ部材の目標位置を設定し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に一致するように位置制御により前記モータを駆動制御し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に達すると、前記位置制御に代えて一定のトルクにより前記基板が前記固定側クランプ部材に突き当たるようにトルク制御により前記モータを駆動制御する
クランプ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装機およびクランプ制御方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板押さえプレートと、クランパと、クランパを昇降させる昇降装置とを有し、クランパと基板押さえプレートとの間に基板を挟んで保持するクランプ装置を備え、クランプ装置にクランプされた基板に対して電子部品を実装する部品実装機が知られている。例えば、特許文献1には、ロットごとに計測された基板のサイズデータ(厚み)に基づいて定められた目標クランプ位置の所定距離手前までクランパを高速で上昇させ、目標クランプ位置の所定距離手前に達したならば高速から低速に切り替えてクランパを上昇させるクランプ装置を備えた部品実装機が開示されている。また、特許文献2には、クランプ装置にクランプされた基板の上下方向の位置を取得する基板面高さ取得部を備え、基板面高さ取得部により取得された基板面高さを、電子部品の実装に反映させる部品実装機が開示されている。更に、特許文献3には、一対の挟持片で挟持した基板の厚みを測定する基板搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-103334号公報
【文献】特開2003-289199号公報
【文献】特開2015-060988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板の個体差により実際の基板の厚みがサイズデータ(厚み)よりも大きい場合には、目標クランプ位置に到達する前、すなわちクランパが高速で上昇している途中に基板を基板押さえプレートに押しつけてしまい、モータに過大な負荷が生じたり、基板押さえプレートを変形させたりするおそれがある。最初からクランパを低速で上昇させればこうした問題は生じないが、クランプに長時間を要してしまう。
【0005】
本開示は、クランプに要する時間を短縮しつつ、適切な荷重で基板をクランプすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の部品実装機は、
部品を基板に実装する部品実装機であって、
前記基板を搬送する搬送装置と、
固定側クランプ部材と、可動側クランプ部材と、モータの駆動により前記可動側クランプ部材を上下に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置により前記可動側クランプ部材を移動させて、前記搬送装置により搬入された基板を前記固定側クランプ部材に突き当てることにより該基板を両側から挟んでクランプするクランプ装置と、
前記搬送装置により搬入された基板の厚みを測定するためのセンサと、
前記センサの検出値に基づいて前記基板の突き当て面を前記固定側クランプ部材の被突き当て面へ移動させるための前記可動側クランプ部材の目標位置を設定し、前記可動側クランプ部材の位置が前記目標位置に一致するように位置制御により前記モータを駆動制御する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の部品実装機では、基板の個体差に拘らず、基板の突当て面を固定側クランプ部材の被突き当て面に合わせることができるため、過大な荷重で基板が固定側クランプ部材に押しつけられ難くなる。そのため、固定側クランプ部材の変形を防止したり基板の反りや破損を回避したりすることができる。また、位置制御によりクランプするため、クランプに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の部品実装機10の概略構成図である。
【
図2】基板搬送装置20およびクランプ装置30の概略構成図である。
【
図3A】治具基板Jの基板高さH1を検出する様子を示す説明図である。
【
図3B】基板Sの基板高さHを検出する様子を示す説明図である。
【
図4】制御装置70の電気的な接続関係を示す説明図である。
【
図5】部品実装処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】クランプ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図7A】基板Sをクランプする様子の一例を示す説明図である。
【
図7B】基板Sをクランプする様子の一例を示す説明図である。
【
図8】クランプ制御ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【
図9A】基板Sをクランプする様子の一例を示す説明図である。
【
図9B】基板Sをクランプする様子の一例を示す説明図である。
【
図9C】基板Sをクランプする様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の部品実装機10の概略構成図である。
図2は、基板搬送装置20およびクランプ装置30の概略構成図である。
図3Aは、治具基板Jの基板高さH1を検出する様子を示す説明図である。
図3Bは、基板Sの基板高さHを検出する様子を示す説明図である。
図4は、制御装置70の電気的な接続関係を示す説明図である。なお、
図1および
図2の左右方向がX軸方向であり、前(手前)後(奥)方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0012】
部品実装機10は、
図1に示すように、部品Pを供給する部品供給装置16と、基板Sを搬送する基板搬送装置20と、基板Sをクランプするクランプ装置30と、部品Pを吸着ノズル51に吸着させて基板S上へ実装するヘッド50と、ヘッド50をXY方向へ移動させるXYロボット40と、実装機全体をコントロールする制御装置70(
図4参照)とを備える。部品供給装置16と基板搬送装置20とクランプ装置30は、筐体12の中段部に設けられた支持台14上に設置されている。また、部品実装機10は、これらの他に、基板Sに付された基準マークを撮像するためのマークカメラ56や、基板Sの高さを検出する基板高さセンサ57や、吸着ノズル51に吸着させた部品Pの吸着姿勢を撮像するためのパーツカメラ58なども備えている。マークカメラ56や基板高さセンサ57は、XYロボット40によりXY方向に移動可能となるように、ヘッド50や後述するXYロボット40のX軸スライダ42に設置されている。
【0013】
部品供給装置16は、例えば、部品が所定間隔で収容されたキャリアテープをリールから引き出して、部品供給位置まで送り出すことにより、部品を供給するテープフィーダである。
【0014】
基板搬送装置20は、
図2に示すように、コンベアベルト24により基板Sを搬送するベルトコンベア装置である。この基板搬送装置20は、Y軸方向に所定の間隔を隔てて配置された一対のサイドフレーム22と、一対のサイドフレーム22の各々に設けられたコンベアベルト24と、コンベアベルト24を周回駆動するベルト駆動装置26(
図4参照)とを備える。一対のサイドフレーム22は、各々、X軸方向に並ぶ2本の支持柱21により支持されている。なお、一対のサイドフレーム22のうち一方(図中右側のサイドフレーム22)を支持する2本の支持柱21の下端部は、各々支持台14にY軸方向に沿って設けられたガイドレール27上を移動可能なスライダ28が取り付けられている。基板搬送装置20は、2本の支持柱21を移動させて一対のサイドフレーム22の間隔を調整することにより、異なるサイズの基板Sを搬送できるようになっている。
【0015】
クランプ装置30は、
図2に示すように、基板Sの縁部を2つの部材(基板押さえプレート32,クランパ34)で挟んで保持する基板保持装置である。このクランプ装置30は、一対のサイドフレーム22の上端部に各々設けられた一対の基板押さえプレート32と、一対のクランパ34と、モータ38(
図4参照)の駆動により支持プレート35を介して一対のクランパ34を昇降させる昇降装置36とを備える。なお、支持プレート35には、基板Sがクランプされたときに、基板Sの裏面を支持するための複数の支持ピンが設けられる。
【0016】
クランパ34は、下端面に下方に突出する突出部34aが設けられており、昇降装置36によって支持プレート35が上昇すると、支持プレート35の上面が突出部34aに当接して、押し上げられるようになっている。
【0017】
基板Sは、コンベアベルト24に乗せられた状態で、コンベアベルト24を周回駆動することにより搬送される(
図2参照)。また、基板Sは、コンベアベルト24上に乗せられている状態で、クランパ34が上昇されると、クランパ34によって押し上げられて基板押さえプレート32に押し付けられる。これにより、基板Sは、クランパ34と基板押さえプレート32との間に挟まれて、クランプされることとなる。
【0018】
ヘッド50は、
図4に示すように、吸着ノズル51を上下(Z軸)方向に移動させるZ軸アクチュエータ52と、吸着ノズル51をZ軸周りに回転させるθ軸アクチュエータ54とを備える。吸着ノズル51の吸引口は、電磁弁60を介して真空ポンプ62およびエア配管64のいずれか一方に選択的に連通するようになっている。吸着ノズル51は、吸引口が真空ポンプ62に連通するよう電磁弁60を駆動することにより、吸引口に負圧を作用させて部品Pを吸着することができ、吸引口がエア配管64に連通するよう電磁弁60を駆動することにより、吸引口に正圧を作用させて部品Pの吸着を解除することができる。
【0019】
基板高さセンサ57は、基板Sの表面高さ(Z軸方向の位置)である基板高さHを検出する。基板高さセンサ57は、下方へ投光する図示しない投光部と反射光を受光する図示しない受光部とを有する反射型の距離センサ(例えばレーザセンサや光電センサ)である。基板高さセンサ57は、基板Sに部品Pを実装する際の部品Pの昇降位置の制御に用いられる。なお、基板高さは、基板高さセンサ57と基板Sの上面とのZ軸方向の距離としてもよい。
【0020】
また、基板高さセンサ57は、基板Sの厚みTを測定(演算)するのにも用いられる。基板高さセンサ57を用いた基板Sの厚みTの測定は、以下のように行われる。すなわち、まず、作業者は、厚みT1が既知の治具基板Jを準備し、部品実装機10の基板搬送装置10にセットしておく。部品実装機10の制御装置70(
図4参照)は、例えば、生産開始前に、
図3Aに示すように、治具基板Jの基板高さH1を基板高さセンサ57から取得する。そして、制御装置70は、取得した基板高さH1を、予め入力した治具基板Jの厚みT1と対応付けてHDD73に記憶する。そして、生産が開始された後に、制御装置70は、基板Sを基板搬送装置20により搬送し、
図3Bに示すように、基板高さセンサ57から基板Sの基板高さHを取得し、基板高さH,H1および厚みT1を利用して、基板Sの厚みTを算出する。具体的には、制御装置70は、基板高さHと基板高さH1との差ΔH(基板高さH1-基板高さH)を演算し、既知の厚みT1と差ΔHとの和により、基板Sの厚みT(厚みT1+差ΔH)を算出する。
【0021】
XYロボット40は、
図1に示すように、筐体12の上段部に前後(Y軸)方向に沿って設けられた一対のY軸ガイドレール43と、一対のY軸ガイドレール43に架け渡されたY軸スライダ44と、Y軸スライダ44の下面に左右(X軸)方向に沿って設けられたX軸ガイドレール41と、X軸ガイドレール41に沿って移動可能なX軸スライダ42とを備える。ヘッド50は、X軸スライダ42に取り付けられており、XYロボット40によって、XY平面上の任意の位置に移動できるようになっている。なお、X軸スライダ42は、X軸アクチュエータ46(
図4参照)によって駆動され、Y軸スライダ44は、Y軸アクチュエータ48(
図4参照)によって駆動される。
【0022】
制御装置70は、
図4に示すように、CPU71とROM72とHDD73とRAM74と入出力インタフェース75とを備える。これらは、バス76を介して電気的に接続されている。制御装置70には、クランパ34の昇降位置(クランパ位置)を検知する昇降位置センサ37や、X軸スライダ42の位置を検知するX軸位置センサ47、Y軸スライダ44の位置を検知するY軸位置センサ49、吸着ノズル51の昇降位置(吸着ノズル51に吸着された部品の昇降位置)を検知するZ軸位置センサ53、マークカメラ56、基板高さセンサ57、パーツカメラ58などからの各種信号が入出力インタフェース75を介して入力されている。一方、制御装置70からは、部品供給装置16や、ベルト駆動装置26、昇降装置36(モータ38を駆動する駆動回路)、X軸アクチュエータ46、Y軸アクチュエータ48、Z軸アクチュエータ52、θ軸アクチュエータ54、電磁弁60などへの各種制御信号が入出力インタフェース75を介して出力されている。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態の部品実装機10の動作について説明する。
図5は、制御装置70のCPU71により実行される部品実装処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、オペレータからの指示に基づいて実行される。
【0024】
部品実装処理ルーチンが実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、基板Sが機内に搬送されるようベルト駆動装置26を駆動制御する(S100)。そして、搬送された基板Sをクランプするクランプ制御を実行する(S110)。クランプ制御は、
図6に例示するクランプ制御ルーチンを実行することにより行われる。ここで、部品実装処理ルーチンの説明を中断し、クランプ制御ルーチンについて説明する。
【0025】
クランプ制御ルーチンでは、基板Sが搬送されてきたら基板高さセンサ57から基板Sまでの基板高さHを取得し、CPU71は、基板高さセンサ57から取得した基板高さHに基づいて基板Sの厚みTを測定する(S200)。なお、基板Sの厚みTの測定方法については、既に説明した通りである。
【0026】
続いて、CPU71は、クランパ34の目標位置E1を設定する(S210)。ここで、目標位置E1は、基板Sの突き当て面C1を基板押さえプレート32の被突き当て面C2まで移動させるためのクランパ34の位置であり、基板Sの厚みTに基づいて設定される。具体的には、目標位置E1は、
図7Aに示すように、基準面B(コンベアベルト24の上面)から被突き当て面C2までの距離Lから基板Sの厚みTを引いた距離を距離D1(距離L-厚みT)としたときに、基準面Bから距離D1だけ上方に離れた位置に設定される。このようにするのは、同じ基板Sでも、基板Sごとに厚みTの個体差があるためである。
【0027】
続いて、CPU71は、クランパ34が高速で上昇するよう昇降装置36のモータ38を位置制御にて駆動制御する(S220)。位置制御は、昇降位置センサ37により検出されるクランパ34の位置が目標位置E1に一致するように、両者の偏差に基づいてフィードバック制御(PI制御等)によりモータ38を駆動制御することにより行う。続いて、CPU71は、クランパ位置が目標位置E1と一致するまで待つ(S230)。クランパ34の位置が、
図7Bに示すように、目標位置E1と一致したならば、CPU71は、クランパ34が保持されるようにモータ38を制御して(S240)、クランプ制御ルーチンを終了する。
【0028】
図5の部品実装処理ルーチンに戻って、こうしてクランプ制御を実行すると、CPU71は、部品供給装置16から供給された部品Pを吸着ノズル51に吸着させる吸着制御を行う(S120)。ここで、吸着制御は、具体的には、部品供給位置の上方にヘッド50に装着された吸着ノズル51が移動するようXYロボット40(X軸アクチュエータ46およびY軸アクチュエータ48)を駆動制御した後、吸引口が部品Pに当接するまで吸着ノズル51が下降するようZ軸アクチュエータ52を駆動制御し、吸着ノズル51の吸引口に負圧が作用するよう電磁弁60を駆動制御することにより行う。
【0029】
次に、CPU71は、吸着ノズル51に吸着させた部品Pがパーツカメラ58の上方へ移動するようXYロボット40を駆動制御して、部品Pをパーツカメラ58で撮像する(S130)。そして、CPU71は、撮像された画像(撮像画像)に基づいて吸着ノズル51に対する部品Pの吸着ズレを判定し、吸着ズレを解消する方向に部品Pの目標実装位置を補正する(S140)Z軸方向の目標実装位置は、基板高さセンサ57により検出される基板高さHに基づいて設定される。そして、目標実装位置に部品Pが実装されるように、X軸アクチュエータ46、Y軸アクチュエータ48、Z軸アクチュエータ52および電磁弁60を駆動制御した後(S150)、部品実装処理ルーチンを終了する。具体的には、CPU71は、目標実装位置の上方にヘッド50に装着された吸着ノズル51が移動するようXYロボット40(X軸アクチュエータ46およびY軸アクチュエータ48)を駆動制御した後、部品Pが基板S当接するまで吸着ノズル51が下降するようZ軸アクチュエータ52を駆動制御し、吸着ノズル51の吸引口に正圧が作用するよう電磁弁60を駆動制御する。
【0030】
ここで、本実施形態の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の基板搬送装置20(ベルトコンベア装置)が本開示の搬送装置に相当し、基板押さえプレート32が固定側クランプ部材に相当し、クランパ34が可動側クランプ部材に相当し、モータ38がモータに相当し、クランプ装置30がクランプ装置に相当し、基板高さセンサ57がセンサに相当し、制御装置70が制御装置に相当する。また、ヘッド50が実装ヘッドに相当する。
【0031】
以上説明した本実施形態の部品実装機10は、基板Sの個体差に拘らず、基板Sの突き当て面C1を基板押さえプレート32の被突き当て面C2に合わせることができるため、過大な荷重で基板が基板押さえプレート32に押しつけられ難くなる。そのため、基板押さえプレート32の変形を防止したり基板Sの反りや破損を回避したりすることができる。また、位置制御によりクランプするため、クランプに要する時間を短縮することができる。
【0032】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
部品実装機10で実行されるクランプ処理ルーチンの変形例について説明する。
図8は、変形例のクランプ処理を示すフローチャートである。
図9A,9B,9Cは、基板Sをクランプする様子を示した説明図である。なお、
図8のクランプ処理ルーチンの各処理のうち
図6のクランプ処理ルーチンと同じ処理については同じステップ番号を付し、
図9A,9B,9Cのうち
図7A,7Bと同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明は重複するから省略する。S210の後、CPU71は、目標位置E11を設定する(S320)。目標位置E11は、基板Sの突き当て面C1を基板押さえプレート32の被突き当て面C2の距離Mだけ手前の位置まで移動させるためのクランパ34の位置であり、基板Sの厚みTに基づいて設定される。具体的には、目標位置E11は、
図9Aに示すように、距離D1より距離Mだけ短い距離を距離D11(距離D1-距離M)としたときに、基準面Bから距離D11だけ上方に離れた位置に設定される。CPU71は、上述した位置制御により、
図9Bに示すように、クランパ位置を目標位置E11と一致させた後(S230)、
図9Cに示すように、基板Sが一定のトルクで基板が被突き当て面C2に突き当たるように昇降装置36のモータ38をトルク制御にて駆動制御する(S340)。トルク制御は、モータ38に予め定められた目標電流が印加されるように、駆動回路に設けられた図示しない電流センサからの電流に基づいて、フィードバック制御することにより行う。続いて、CPU71は、昇降位置センサ37で検出したクランパ34のクランプ位置の検出値が一定時間変化していないか否かを判定する(S350)。クランプ位置の検出値が一定時間変化していないならば、クランプが完了したとして、CPU71はS240に進む。一方、クランプ位置の検出位置が変化しているならば、CPU71は、再びS340に戻る。また、この場合、距離Mは、0としてもよく、位置制御にてモータ38を駆動制御して基板Sの突き当て面C1を基板押さえプレート32の被突き当て面C2まで移動させた後、トルク制御にてモータ38を駆動制御してもよい。
【0034】
変形例のクランプ処理ルーチンを実行する部品実装機10では、基板Sの突き当て面C1が基板押さえプレート32の被突き当て面C2に到達する際には、モータ38はトルク制御により駆動制御されており、モータ38を位置制御により駆動制御している途中に、基板が基板押さえプレート32に押しつけらないようにすることが可能である。そのため、位置制御により基板に予期しない過大な荷重がかかるのを回避し、基板押さえプレート32の変形等をより確実に防止することができる。また、クランパ34のクランプ位置を目標位置E11と一致させるまでは、モータ38を位置制御にて駆動制御する。これにより、目標位置E11を突き当て位置に近接させることができるため、クランプに要する時間を短縮することができる。
【0035】
また、上述した実施形態では、部品実装機10として説明したが、例えば、クランプ装置30のクランプ制御方法としてもよい。なお、この点は、変形例においても同様である。
【0036】
また、上述した実施形態では、サイドフレーム22と基板押さえプレート32とを別体に形成したが、両者を一体に形成するものとしてもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、基板高さセンサ57を用いて、基板Sの厚みを測定した。しかし、カメラを用いて、基板Sの厚みを測定するものとしてもよい。例えば、CPU71は、マークカメラ56(カメラ)により、基板Sに付されたマークを撮像し、撮像画像に写ったマークを認識することにより、当該マークの大きさ等により基板Sの厚みを測定してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、基板Sの下方に設けられたクランパ34を昇降装置36で上方に移動させることで基板Sを押し上げて、基板Sの上方に設けられた基板押さえプレート32に基板Sを突き当ててクランプするものとした。しかし、基板Sの上方にクランパ34を配置すると共に、基板Sの下方に基板押さえプレート32を配置し、クランパ34を昇降装置36で下方に移動させることで基板Sを押し下げて、基板押さえプレート32に基板Sを突き当ててクランプするものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示は、部品実装機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 部品実装機、12 筐体、14 支持台、16 部品供給装置、20 基板搬送装置、21 支持柱、22 サイドフレーム、24 コンベアベルト、26 ベルト駆動装置、27 ガイドレール、28 スライダ、30 クランプ装置、32 基板押さえプレート、34 クランパ、34a 突出部、35 支持プレート、36 昇降装置、37 昇降位置センサ、38 モータ、40 XYロボット、41 X軸ガイドレール、42 X軸スライダ、43 Y軸ガイドレール、44 Y軸スライダ、46 X軸アクチュエータ、47 X軸位置センサ、48 Y軸アクチュエータ、49 Y軸位置センサ、50 ヘッド、51 吸着ノズル、52 Z軸アクチュエータ、53 Z軸位置センサ、54 θ軸アクチュエータ、56 マークカメラ、57 基板高さセンサ、58 パーツカメラ、60 電磁弁、62 真空ポンプ、64 エア配管、70 制御装置、71 CPU、72 ROM、73 HDD、74 RAM、75 入出力インタフェース、76 バス、B 基準面、C1 突当て面、C2 被突き当て面、D,D1,D11,L,M 距離、H,H1 基板高さ、ΔH 差、E1,E11 目標位置、J 治具基板、T,T1 厚み、P 部品、S 基板。