(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】断熱ブロックを保持するためのアンカー装置
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20240910BHJP
B65D 90/06 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C3/04 D
F17C3/04 E
B65D90/06 A
(21)【出願番号】P 2022572479
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2021063860
(87)【国際公開番号】W WO2021239712
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】サッシ モハメド
(72)【発明者】
【氏名】アリー ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】コロー セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サルトル ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ブーゴール ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】デラノー セバスティアン
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110894(WO,A1)
【文献】特開2004-338709(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0046295(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第19534465(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
B65D 90/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱ブロックを支持壁に保持するためのアンカー装置(20)であって、
下部プレート(31)と、当該下部プレートに対して平行な上部プレート(32)と、前記下部プレートを前記上部プレートに接続する接続部材(34)と、前記下部プレートと前記上部プレートとの間に配置されたスペーシング部材と、を備えた挟持アセンブリ(30)であって、前記スペーシング部材は当接部を備えており、前記当接部は、前記下部プレート及び前記上部プレートが当該当接部に当接する当接位置において当該下部プレートと当該上部プレートとの間の最小離間スペースを画定し、前記当接部は剛性部(33)を有する挟持アセンブリ(30)と、
前記挟持アセンブリから前記下部プレート(31)に対して垂直に突出するアンカーロッド(22)であって、支持壁(2)に取り付けられる下端部と、当該下端部とは反対側の上端部とを有し、前記下端部の方向に牽引力を前記下部プレートに及ぼすことができるように前記下部プレート(31)に結合されているアンカーロッド(22)と、
を備えており、
前記スペーシング部材はさらに、前記下部プレートと前記上部プレート(32)とを離間位置に維持する傾向のある弾性圧縮可能部材(39,69)を備えており、
前記接続部材は前記離間位置において、前記最小離間スペースより大きい前記下部プレートと前記上部プレートとの間の最大離間スペースを画定し、
前記弾性圧縮可能部材(39,69)は、前記上部プレートを前記下部プレートに動かす傾向のある力が加わったときに、前記下部プレート(31)及び前記上部プレート(32)が前記当接位置で前記当接部に当接するまで弾性圧縮するように構成されている
ことを特徴とするアンカー装置(20)。
【請求項2】
前記接続部材は、前記下部プレートと前記上部プレートとに対して垂直な少なくとも1つの接続ロッド(34)を備えており、
前記接続ロッド(34)は前記当接部に形成された孔を貫通し、
前記下部プレート及び/又は前記上部プレートは、前記当接位置へスライド可能であるように前記接続ロッドに対して相対的にスライドするように取り付けられている、
請求項1記載のアンカー装置。
【請求項3】
前記接続部材は、前記離間位置において前記上部プレート(32)が長手方向において前記接続ロッドに対して相対移動不能となるようにするため前記接続ロッドの第1端に結合された第1の当接要素(36,37A,36B)をさらに備えている、
請求項2記載のアンカー装置。
【請求項4】
前記第1の当接要素はナット(36B)を備えており、
前記ナット(36B)は前記接続ロッド(34)の前記第1端に螺合して溶接されており、
前記接続ロッド(34)の第2端は前記下部プレート(31)にしっかり取り付けられている、
請求項3記載のアンカー装置。
【請求項5】
前記接続部材は、前記第1の当接要素(36)に結合された回転不能化要素(90,90C)をさらに備えており、
前記回転不能化要素(90,90C)の一部は、前記接続ロッド(34)を回転不能とするように前記上部プレート(32)のノッチ(91,91A,91B)に入れられている、
請求項3記載のアンカー装置。
【請求項6】
前記接続部材は、前記離間位置において前記下部プレート(31)が長手方向において前記接続ロッドに対して相対移動不能となるようにするため前記接続ロッドの第2端に結合された第2の当接要素(37,38,36A,38A,37B)をさらに備えている、
請求項2又は3記載のアンカー装置。
【請求項7】
前記第1の当接要素はナット(37A)を備えており、
前記ナット(37A)は前記接続ロッド(34)の前記第1端に螺合して溶接されており、
前記第2の当接要素(36A)は前記下部プレート(31)にしっかり取り付けられている、
請求項3を引用する請求項6記載のアンカー装置。
【請求項8】
前記第2の当接要素(37B)は前記下部プレート(31)の溝(92)に入れられており、
前記溝(92)は、前記接続ロッド(34)を回転不能とするように前記第2の当接要素(37B)の2つの異なる面と協働する2つの対向する面を有し、
前記第1の当接要素(36)は前記上部プレート(32)にしっかり取り付けられている、
請求項3を引用する請求項6記載のアンカー装置。
【請求項9】
前記下部プレートの下方に配置されたスペーシング部(650)をさらに備えており、
前記スペーシング部(650)は中央収容部(51)を備えており、当該中央収容部(51)には前記アンカーロッドが通され、
前記スペーシング部は、前記挟持アセンブリの前記下部プレートに当たるように構成された上面(56)と、断熱ブロックに支持される下面(57)とを有し、
前記第2の当接要素(37B)は前記スペーシング部(650)の溝(660)に入れられており、
前記溝は、前記接続ロッド(34)を回転不能とするように前記第2の当接要素(37B)の2つの互いに反対側の面と協働する2つの対向する面を有し、
前記第1の当接要素(36)は前記上部プレート(32)にしっかり取り付けられている、
請求項3を引用する請求項6記載のアンカー装置。
【請求項10】
前記弾性圧縮可能部材(39,69)は前記接続ロッド(34)に係合する、
請求項2から9までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項11】
前記弾性圧縮可能部材(39,69)は前記当接部に支持される、
請求項2から10までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項12】
前記当接部に形成された前記孔は、前記弾性圧縮可能部材(39,69)を配置する段部(19)を有する、
請求項11記載のアンカー装置。
【請求項13】
前記弾性圧縮可能部材(39)は、ばね座金のスタックを有する、
請求項1から12までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項14】
前記弾性圧縮可能部材(69)はコイルばねを有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項15】
前記離間位置と前記当接位置との間における前記上部プレート(32)及び下部プレート(31)の弾性運動は1~8mm、好適には4~7mmである、
請求項1から14までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項16】
前記下部プレート(31)は、前記アンカーロッド(22)の前記上端部が通される中央の孔(41)を有し、
前記アンカー装置は、前記アンカーロッドの前記上端部のねじ部と協働するナット(42)と、1つ又は複数のばね座金(43)と、を備えており、
前記ばね座金(43)は、前記下部プレートに弾性力を前記アンカーロッドの前記下端部の方向に加えることができるように前記ナットと前記下部プレートとの間において前記アンカーロッドの前記上端部に螺合されている、
請求項1から15までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項17】
前記挟持アセンブリ(30)は前記接続ロッド(34)を少なくとも2つ備えており、
前記接続ロッド(34)は前記中央の孔(41)を基準として対称的に配置されている、
請求項2を引用する請求項16記載のアンカー装置。
【請求項18】
前記下部プレートの下方に配置されたスペーシング部(50,150,250,350,650)をさらに備えており、
前記スペーシング部(650)は中央収容部(51)を備えており、当該中央収容部(51)には前記アンカーロッドが通され、
前記スペーシング部は、前記挟持アセンブリの前記下部プレートに当たるように構成された上面(56)と、断熱ブロックに支持される下面(57)とを有する、
請求項1から17までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項19】
前記アンカーロッドの前記下端部に係合されたブッシュ(23)をさらに備えており、
前記ブッシュ(23)は前記支持壁(2)に固定されるものであり、
前記ブッシュは、ボールソケットジョイント接続を形成するように前記アンカーロッド(22)の前記下端部を入れる収容部を有する、
請求項1から18までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項20】
前記当接部は前記下部プレート(31)又は前記上部プレート(32)に固定されている、
請求項1から19までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項21】
前記当接部は、前記下部プレート又は上部プレート(32)の他方に対向する前記剛性部(33)の表面に配置されたポリマー発泡体層(68)を有し、
前記ポリマー発泡体層(68)は、前記下部プレート(31)及び前記上部プレート(32)が前記当接部に当接する前記当接位置において圧縮する、
請求項1から20までのいずれか1項記載のアンカー装置。
【請求項22】
流体を貯蔵するための密閉断熱タンクであって、
支持壁と、前記支持壁(2)に固定されたアンカー装置(20)と、前記アンカー装置を用いて前記支持壁に固定されたタンク壁(1)と、を備えており、
前記タンク壁(1)は、前記密閉断熱タンクの外部から内部に向かって厚さ方向に順に、断熱バリア(3)と、前記断熱バリア(3)に設けられた密閉メンブレン(4)と、をさらに備えており、
前記断熱バリア(3)は、互いに隣り合って前記支持壁(2)に設けられた平行六面体形状の複数の断熱ブロック(7)を備えており、
前記断熱ブロックは、前記密閉メンブレン(4)の支持面を形成するカバープレートを備えており、
少なくとも1つの前記アンカー装置は請求項1から21のいずれか1項記載のアンカー装置であり、
前記アンカーロッド(22)の下端部は、複数の前記断熱ブロック(7)間において前記支持壁に固定されており、
前記アンカー装置の前記下部プレート(31)は、前記支持壁(2)の方向に前記複数の断熱ブロック(7,107)を挟持するように前記複数の断熱ブロック(7,107)と協働する
ことを特徴とする密閉断熱タンク。
【請求項23】
前記弾性圧縮可能部材(39,69)は、前記密閉断熱タンクが空の状態の際に前記下部プレート及び前記上部プレートを前記離間位置に保持するように構成されており、
前記離間位置において、前記アンカー装置の前記上部プレート(32)は前記密閉メンブレン(4)を支持するように前記複数の断熱ブロックの前記カバープレートと整列する、
請求項22記載の密閉断熱タンク。
【請求項24】
前記断熱ブロックは、前記カバープレート(15)に対して平行であると共に前記カバープレート(15)から離隔した底部プレート(14)と、前記カバープレートと底部プレートとの間に配置されている繊維強化された
ポリマー発泡体から成るポリマー発泡体ブロック(16)と、を備えており、
前記アンカー装置の前記下部プレートは、前記ポリマー発泡体ブロック(16)にいかなる挟持作用も及ぼさずに前記底部プレート(14)と直接的又は間接的に協働する、
請求項22又は23記載の密閉断熱タンク。
【請求項25】
前記断熱ブロック(107)は、底部プレート(114)と、連続的に中間プレート(10)とカバープレート(115)とを備えており、
前記中間プレート(10)及び前記カバープレート(115)の両方が前記底部プレートに対して平行であると共に、互いに離隔しており、
前記断熱ブロック(107)はさらに、繊維強化された
ポリマー発泡体から成る2つのポリマー発泡体ブロック(16a,16b)を有し、
前記ポリマー発泡体ブロック(16a,16b)はそれぞれ、前記カバープレートと前記中間プレートとの間と、前記中間プレートと前記底部プレートとの間とに配置されており、
前記アンカー装置の前記下部プレート(31)は、コーナゾーンの位置において前記中間プレート(10)と直接協働する、
請求項22又は23記載の密閉断熱タンク。
【請求項26】
前記弾性圧縮可能部材の硬さと、前記上部プレートの断面と等しい断面を有する繊維強化された前記ポリマー発泡体から成るばねと等価の前記タンク壁の厚さ方向の硬さとの比は、0.3~1である、
請求項
24又は
25記載の密閉断熱タンク。
【請求項27】
前記断熱バリアは二次断熱バリア(3)であり、前記断熱ブロックは二次断熱ブロック(7)であり、前記密閉メンブレンは二次密閉メンブレン(4)であり、
前記タンク壁は、前記二次密閉メンブレン(4)に設けられた一次断熱バリア(5)と、前記一次断熱バリア(5)に設けられ、前記密閉断熱タンクに入った流体と接触する一次密閉メンブレン(6)と、を備えており、
前記一次断熱バリア(5)は、前記各二次断熱ブロック(7)に重ねられた一次断熱ブロック(11)を有し、
前記挟持アセンブリ(30)は、前記二次断熱バリアと協働する二次挟持部材を構成し、
前記上部プレート(32)は中央の孔(47)を有し、当該中央の孔(47)には、前記挟持アセンブリにおける前記アンカーロッドとは反対側から突出するスタッド(27)が螺入し、
前記スタッド(27)には、前記一次断熱バリア(5)と協働する一次挟持部材(28)が設けられており、
前記スタッド(27)は前記二次密閉メンブレン(4)に密閉状態で通され、
前記一次挟持部材は、前記複数の二次断熱ブロックに重ねられた複数の一次断熱ブロック(11)を前記支持壁(2)に向かう方向に保持するように、前記支持壁(2)の方向に前記複数の一次断熱ブロックで支持される、
請求項22から26までのいずれか1項記載の密閉断熱タンク。
【請求項28】
二重船殻(72)と、当該二重船殻(72)内に配置された請求項22から27までのいずれか1項記載の密閉断熱タンク(71)と、備えた、流体を輸送するための船舶(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造に組み込まれ低温流体を収容するための密閉断熱タンクの分野に関し、特に液化ガスを収容するためのメンブレンタンク、特にかかるタンクで使用可能な機械的なアンカー装置に関する。
【0002】
密閉断熱タンクは、種々の産業において低温製品を貯蔵するために使用することができる。例えばエネルギー分野等では、液化天然ガス(LNG)はメタン含有量が高い液体であり、陸上貯蔵タンク又は浮体構造物に搭載されるタンクに大気圧かつ約-163℃で貯蔵可能なものである。液化石油ガス(LPG)は、-50℃~0℃の温度で貯蔵可能なものである。
【0003】
浮体構造物の場合、タンクは、当該浮体構造物の推進用燃料として用いられる液化ガスを入れるため又は液化ガスを輸送するためのものとすることができる。
【背景技術】
【0004】
例えば国際公開第2014/096600号及び同第2019/110894号から、支持構造に配置され液化天然ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクが公知であり、この密閉断熱タンクの壁は、当該タンクの外部から内部に向かう順に、支持構造に固定される二次断熱バリアと、二次断熱バリアによって支持される二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレンによって支持される一次断熱バリアと、一次断熱バリアによって支持される一次密閉メンブレンであってタンク内に貯蔵された液化天然ガスと接触する一次密閉メンブレンと、を備えた多層構造を有する。
【0005】
一次断熱バリア及び二次断熱バリアはそれぞれ、全体形状が平行六面体の一次断熱ブロックと二次断熱ブロックとをモジュール化したアセンブリを備えており、当該一次及び二次断熱ブロックは隣り合って各密閉メンブレンの支持構造を構成する。断熱ブロックはアンカー装置を用いて支持構造に固定され、アンカー装置は一次及び二次断熱ブロックのコーナの位置において支持構造に固定されて配置される。このようにして各アンカー装置は4つの隣の二次断熱ブロック及び4つの隣の一次断熱ブロックと協働して、これらの断熱ブロックを支持構造に固定する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一部の側面は、タンクに入った液体のスロッシング現象によりタンク壁に局所的な高い圧縮応力が生じることがあるとの観察に基づく。そこで、全体寸法を抑えつつ断熱バリアを確実に固定することができるようにするため、アンカー装置は一般に断熱ブロックより高い硬さの部品によって製造される。かかる硬さ差により、圧縮応力が生じた場合に断熱バリアに平坦性の不具合が生じるおそれがあり、これは特に、断熱バリアの大半がポリマー発泡体により作製されている場合に当てはまる。上述の平坦性の不具合によってアンカー装置に応力集中が生じ、これは、断熱バリアにより支持される密閉メンブレンの完全性を損なうおそれがある。
【0007】
本発明の基礎となる一思想は、圧縮応力に対する断熱バリアの応答を均一化するため、タンクの内部に由来する圧縮力の方向においてアンカー装置にフレキシビリティを持たせることである。本発明の基礎となる他の一思想は、密閉断熱メンブレンタンクを使用する際にアンカー装置の上面が断熱ブロックの上面の動きにほぼ追従できるようにすることである。
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、断熱ブロックを支持壁に保持するためのアンカー装置であって、
下部プレートと、当該下部プレートに対して平行な上部プレートと、前記下部プレートを前記上部プレートに接続する接続部材と、前記下部プレートと前記上部プレートとの間に配置されたスペーシング部材と、を備えた挟持アセンブリであって、前記スペーシング部材は当接部を備えており、前記当接部は、前記下部プレート及び前記上部プレートが当該当接部に当接する当接位置において当該下部プレートと当該上部プレートとの間の最小離間スペースを画定し、前記当接部は剛性部を有する挟持アセンブリと、
前記挟持アセンブリから前記下部プレートに対して垂直に突出するアンカーロッドであって、支持壁に取り付けられる下端部と、当該下端部とは反対側の上端部とを有し、前記下端部の方向に牽引力を前記下部プレートに及ぼすことができるように前記下部プレートに結合されているアンカーロッドと、
を備えており、
前記スペーシング部材はさらに、前記下部プレートと前記上部プレートとを離間位置に維持する傾向のある弾性圧縮可能部材を備えており、
前記接続部材は前記離間位置において、前記最小離間スペースより大きい前記下部プレートと前記上部プレートとの間の最大離間スペースを画定し、
前記弾性圧縮可能部材は、前記上部プレートを前記下部プレートに動かす傾向のある力が加わったときに、前記下部プレート及び前記上部プレートが前記当接位置で前記当接部に当接するまで弾性圧縮するように構成されている
ことを特徴とするアンカー装置を提供する。
【0009】
上記の構成によりアンカー装置は圧縮力を受けたときに上記の従来技術より低い硬さを有することができ、これにより、離間位置と当接位置との間で衝突することにより弾性変形を生じる能力を備えることができる。
【0010】
他の有利な実施形態では、上記のアンカー装置は以下の特徴のうち1つ又は複数を備えることができる。
【0011】
下部プレートと上部プレートとの間の最大離間スペースを画定するスペーシング部材を作製できる態様は種々存在する。
【0012】
一実施形態では、前記接続部材は、前記下部プレートと前記上部プレートとに対して垂直な少なくとも1つの接続ロッドを備えており、前記接続ロッド(34)は前記当接部に形成された孔を貫通し、前記下部プレート及び/又は前記上部プレートは、前記当接位置へスライド可能であるように前記接続ロッドに対して相対的にスライドするように取り付けられている。
【0013】
一実施形態では、前記接続部材は、前記離間位置において前記上部プレートが長手方向において前記接続ロッドに対して相対移動不能となるようにするため前記接続ロッドの第1端に結合された第1の当接要素をさらに備えている。
【0014】
一実施形態では、前記接続部材は、前記第1の当接要素に結合された回転不能化要素をさらに備えており、前記回転不能化要素の一部は、前記接続ロッドを回転不能とするように前記上部プレートのノッチに入れられている。
【0015】
一実施形態では、前記回転不能化要素は、前記第1の当接要素を受ける前記上部プレートの収容部に収容されており、前記ノッチは前記収容部内部に向かって開口している。
【0016】
一実施形態では、前記接続部材は、前記離間位置において前記下部プレートが長手方向において前記接続ロッドに対して相対移動不能となるようにするため前記接続ロッドの第2端に結合された第2の当接要素をさらに備えている。
【0017】
一実施形態では、前記第1の当接要素はナットを備えており、前記ナットは前記接続ロッドの前記第1端に螺合して溶接されており、前記第2の当接要素は前記下部プレートにしっかり取り付けられている。
【0018】
一実施形態では、前記第2の当接要素は前記下部プレートの溝に入れられており、前記溝は、前記接続ロッドを回転不能とするように前記第2の当接要素の2つの異なる面と協働する2つの対向する面を有し、前記第1の当接要素は前記上部プレートにしっかり取り付けられている。
【0019】
一実施形態では、前記アンカー装置は、前記下部プレートの下方に配置されたスペーシング部をさらに備えており、前記スペーシング部は中央収容部を備えており、当該中央収容部には前記アンカーロッドが通され、前記スペーシング部は、前記挟持アセンブリの前記下部プレートに当たるように構成された上面と、断熱ブロックに支持される下面とを有し、前記第2の当接要素は前記スペーシング部の溝に入れられており、前記溝は、前記接続ロッドを回転不能とするように前記第2の当接要素の2つの互いに反対側の面と協働する2つの対向する面を有し、前記第1の当接要素は前記上部プレートにしっかり取り付けられている。
【0020】
弾性圧縮可能部材は、種々の態様で下部プレートと上部プレートとの間に配置することができる。弾性圧縮可能部材は、最小離間スペースを画定する当接部と縦並び又は横並びに取り付けることができる。
【0021】
一実施形態では、前記弾性圧縮可能部材は前記接続ロッドに係合する。
【0022】
一実施形態では、前記弾性圧縮可能部材は前記当接部並びに/又は前記下部プレート及び/若しくは上部プレートに支持される。
【0023】
一実施形態では、前記当接部に形成された前記孔は、前記弾性圧縮可能部材を配置する段部を有する。この構成により、弾性圧縮可能部材の全体寸法を小さくすることができる。
【0024】
弾性圧縮可能部材を作製できる態様は種々存在し、特に1つ又は複数のばねの形態で作製することができる。一実施形態では、前記弾性圧縮可能部材は、ばね座金のスタックを有する。例えば2~10個のベルビルワッシャーを用いて1~8mmの弾性運動を生じさせることができる。一実施形態では、前記弾性圧縮可能部材はコイルばねを有する。
【0025】
好適には、離間位置と上部プレート及び下部プレートの当接位置との間の弾性運動は、タンクの空の状態及び大気温度に対応する静止状態とタンク動作状態に対応する稼働状態との間の断熱ブロックのカバープレートの運動に比較的正確に一致する。この運動は、断熱ブロックの熱収縮と、カーゴにより圧力荷重が加わったときの断熱ブロックの収縮と、により生じるものである。好適には、断熱ブロックの上面とアンカー装置の上面との間の運動差が、同一条件下におけるアンカー装置の他の部分の収縮より小さいことを検討すべきである。一実施形態では、前記弾性運動は1~8mm、好適には4~7mm、好適には5mm程度である。他の一実施形態では、前記弾性運動は1~6mm、好適には3mmである。
【0026】
一実施形態では、前記接続部材は前記離間位置において前記弾性圧縮可能部材に静止荷重をかけるように構成されている。タンクを建造する作業中(例えば密閉メンブレンの局所的な穿孔作業、又は建造中のタンク壁における作業員又は工具の移動等)には、タンク壁に局所的な圧力が生じるが、上記のような静止荷重(又は付勢)によって典型的には、タンクの建造作業の際に下方の密閉メンブレンを高信頼性で支持することができる。上記の静止荷重は、例えば1kNのオーダとすることができる。
【0027】
一実施形態では、前記下部プレートは、前記アンカーロッドの前記上端部が通される中央の孔を有し、前記アンカー装置は、前記アンカーロッドの前記上端部のねじ部と協働するナットと、1つ又は複数のばね座金と、を備えており、前記ばね座金は、前記下部プレートに弾性力を前記アンカーロッドの前記下端部の方向に加えることができるように前記ナットと前記下部プレートとの間において前記アンカーロッドの前記上端部に螺合されている。
【0028】
この場合、前記挟持アセンブリは好適には前記接続ロッドを少なくとも2つ備えており、前記接続ロッドは前記中央の孔を基準として対称的に配置されている。かかる構成により、挟持アセンブリに力をバランス良く分散させることができる。
【0029】
一実施形態では、各接続ロッドは、一方又は両方のプレートにスポット溶接を施すことにより、又はスプリット・ロックナットにより、回転不能とされる。スプリット・ロックナットは、例えば下部プレートの上方若しくは下方に配置され、又は部分的に下部プレートの内部に配置される。
【0030】
一実施形態では、前記当接部は前記下部プレート又は上部プレートの一方に固定され、例えば螺合及び/又はリベット留め及び/又は接着される。好適には、前記当接部は前記下部プレートに固定される。
【0031】
一実施形態では、前記当接部は剛性部から成る。
【0032】
一実施形態では、前記当接部は、前記下部プレート又は上部プレートの他方に対向する前記剛性部の表面に配置されたポリマー発泡体層をさらに有し、前記ポリマー発泡体層は、前記下部プレート及び前記上部プレートが前記当接部に当接する前記当接位置において圧縮する。前記ポリマー発泡体層は、前記剛性部に接着することができる。
【0033】
有利には、前記ポリマー発泡体層は前記当接位置において1~6mmの厚さを維持するため、2~8mmの厚さを有する。
【0034】
一実施形態では、前記下部プレート又は上部プレートの他方は、当該プレートにおける前記剛性部側の表面に配置されたポリマー発泡体層を有し、前記ポリマー発泡体層は、前記下部プレート及び前記上部プレートが前記当接部に当接する前記当接位置において圧縮する。前記ポリマー発泡体層は、前記プレートに接着することができる。
【0035】
一実施形態では、前記アンカー装置は、前記下部プレートの下方に配置されたスペーシング部をさらに備えており、前記スペーシング部は中央収容部を備えており、当該中央収容部には前記アンカーロッドが通され、前記スペーシング部は、前記挟持アセンブリの前記下部プレートに当たるように構成された上面と、断熱ブロックに支持される下面とを有する。前記スペーシング部は例えば、熱橋を抑えるために合板から作製される。前記スペーシング部は好適には前記下部プレートと同一の断面を有し、図示の実施形態では方形の断面を有する。前記スペーシング部は、簡単な形状を有する少数の長辺状の部分をしっかり組み立てたものにより構成することができ、当該長辺状の部分は例えば互いに積層、ねじ留め及び/又は接着される。好適には、中央収容部には断熱部がアンカーロッドの周囲に充填され、この断熱部は例えばガラスウール、詰め物、膨張ポリスチレン又はポリウレタン発泡体等である。
【0036】
一実施形態では、前記スペーシング部は4つの同一成形された長辺状の部分により構成され、その傾斜平面は中央収容部の各壁を形成する。
【0037】
一実施形態では、前記スペーシング部は2つの対向するプレートと、当該2つの対向するプレートの間に配された2つの留め具とを備えており、これら2つの各留め具及び2つの各プレートはそれぞれ中央収容部の各壁を形成する。
【0038】
一実施形態では、前記断熱部は前記アンカーロッドの周囲にガラスウールのブロックを有する。
【0039】
一実施形態では、前記ガラスウールのブロックはその厚さにおいて、前記アンカーロッドを受けるためのノッチを有する。
【0040】
一実施形態では、前記ガラスウールのブロックはガラスファイバマット、クラフトペーパー又はポリマーの少なくとも1枚のシートを有し、当該シートは前記ガラスウールのブロックと、これに対向する前記中央収容部の壁との間に配置される。
【0041】
一実施形態では、前記断熱部はポリマー発泡体のブロックを有し、当該ポリマー発泡体のブロックは、前記アンカーロッドを受けるためのスルーホールを有する。
【0042】
一実施形態では、前記スルーホールの断面は、前記アンカーロッドの上端部及び下端部のうち一方から当該上端部及び下端部のうち他方に向かって拡大する。特に、一実施形態では、前記スルーホールの断面は前記アンカーロッドの上端部から当該アンカーロッドの下端部に向かって拡大する。
【0043】
一実施形態では、前記スペーシング部は、前記接続ロッドに沿って延在するブラインドホールを有し、当該ブラインドホールは前記接続ロッドの一部を受けるように構成されている。
【0044】
一実施形態では、前記挟持アセンブリは、前記二次断熱バリアと協働する二次挟持部材を構成し、前記上部プレートは中央の孔を有し、当該中央の孔には、前記挟持アセンブリにおける前記アンカーロッドとは反対側から突出するスタッドが螺入し、前記スタッドには、前記一次断熱バリアと協働する一次挟持部材が設けられている。
【0045】
一実施形態では、前記アンカー装置は、前記アンカーロッドの前記下端部に係合されたブッシュをさらに備えており、前記ブッシュは前記支持壁に固定されるものであり、前記ブッシュは、ボールソケットジョイント接続を形成するように前記アンカーロッドの前記下端部を入れる収容部を有する。
【0046】
一実施形態では、前記挟持アセンブリの全体形状は平行六面体であり、前記下部プレート及び上部プレートは方形の輪郭を有する。
【0047】
一実施形態では、前記アンカーロッド、下部プレート及び上部プレートは金属から成り、前記当接部は、金属より良好な断熱性を提供する合板又は他の剛性材料から成り、これは例えば、密度が200kg/m3超のポリウレタン発泡体等である。
【0048】
一実施形態では、本発明は断熱ブロックを支持壁に保持するためのアンカー装置であって、
下部プレートと、当該下部プレートに対して平行な上部プレートと、前記下部プレートを前記上部プレートに接続する接続部材と、前記下部プレートと前記上部プレートとの間に配置されたスペーシング部材と、を備えた挟持アセンブリであって、前記スペーシング部材は剛性の当接部を備えており、前記当接部は、前記下部プレート及び前記上部プレートが当該当接部に当接する当接位置において当該下部プレートと当該上部プレートとの間の最小離間スペースを画定する挟持アセンブリと、
前記挟持アセンブリから前記下部プレートに対して垂直に突出するアンカーロッドであって、支持壁に取り付けられる下端部と、当該下端部とは反対側の上端部とを有し、前記下端部の方向に牽引力を前記下部プレートに及ぼすことができるように前記下部プレートに結合されているアンカーロッドと、
を備えており、
前記下部プレートの下方に配置されたスペーシング部をさらに備えており、前記スペーシング部は中央収容部を備えており、当該中央収容部には前記アンカーロッドが通され、前記スペーシング部は、前記挟持アセンブリの前記下部プレートに当たるように構成された上面と、断熱ブロックに支持される下面とを有する
アンカー装置を提供する。
【0049】
前記スペーシング部は、上記にて説明した構成のうち1つ又は複数を具備することができる。
【0050】
一実施形態では、本発明は流体を貯蔵するための密閉断熱タンクも提供し、当該密閉断熱タンクは支持壁と、前記支持壁に固定されたアンカー装置と、前記アンカー装置を用いて前記支持壁に固定されたタンク壁と、を備えており、前記タンク壁は、前記タンクの外部から内部に向かって厚さ方向に順に、断熱バリアと、前記断熱バリアに設けられた密閉メンブレンと、をさらに備えており、
前記断熱バリアは、互いに隣り合って前記支持壁に設けられた平行六面体形状の複数の断熱ブロックを備えており、前記断熱ブロックは、前記密閉メンブレンの支持面を形成するカバープレートを備えており、
少なくとも1つの前記アンカー装置は上記のいずれかのアンカー装置であり、前記アンカーロッドの下端部は、複数の前記断熱ブロック間において前記支持壁に固定されており、前記アンカー装置の前記下部プレートは、前記支持壁の方向に前記複数の断熱ブロックを挟持するように前記複数の断熱ブロックと協働する。
【0051】
他の有利な実施形態では、上記のタンクは以下の特徴のうち1つ又は複数を備えることができる。
【0052】
前記弾性圧縮可能部材は、前記タンクが空の状態の際に前記下部プレート及び前記上部プレートを前記離間位置に保持するように構成されており、前記離間位置において、前記アンカー装置の前記上部プレートは前記密閉メンブレンを支持するように前記複数の断熱ブロックの前記カバープレートと整列する。
【0053】
断熱ブロックは種々の構造を有することができる。一実施形態では、前記断熱ブロックは、前記カバープレートに対して平行であると共に前記カバープレートから離隔した底部プレートと、前記カバープレートと底部プレートとの間に配置されている繊維強化されたポリマー発泡体ブロックと、を備えており、前記アンカー装置の前記下部プレートは、前記ポリマー発泡体ブロックにいかなる挟持作用も及ぼさずに前記底部プレートと直接的又は間接的に協働する。例えば、アンカー装置の下部プレートは、合板等により作製された剛性部材、例えばスペーシング部、ピラー及び/又はクリート等を介して、底部プレートと協働することができる。
【0054】
一実施形態では、前記断熱ブロックは、底部プレートと、連続的に中間プレートとカバープレートとを備えており、前記中間プレート及び前記カバープレートの両方が前記底部プレートに対して平行であると共に、互いに離隔しており、前記断熱ブロックはさらに、繊維強化された2つのポリマー発泡体ブロックを有し、前記ポリマー発泡体ブロックはそれぞれ、前記カバープレートと前記中間プレートとの間と、前記中間プレートと前記底部プレートとの間とに配置されている。前記アンカー装置の前記下部プレートは、コーナゾーンの位置において前記中間プレートと直接協働する。
【0055】
前記弾性圧縮可能部材の硬さは好適には、前記アンカー装置の隣の断熱バリアの厚さ方向の硬さより低い。一実施形態では、前記弾性圧縮可能部材の硬さと、前記上部プレートの断面と等しい断面を有する繊維強化された前記ポリマー発泡体から成るばねと等価の前記タンク壁の厚さ方向の硬さとの比は、0.3~1である。
【0056】
一実施形態では、前記断熱バリアは二次断熱バリアであり、前記断熱ブロックは二次断熱ブロックであり、前記密閉メンブレンは二次密閉メンブレンであり、前記タンク壁は、前記二次密閉メンブレンに設けられた一次断熱バリアと、前記一次断熱バリアに設けられ、前記密閉断熱タンクに入った流体と接触する一次密閉メンブレンと、を備えており、前記一次断熱バリアは、前記各二次断熱ブロックに重ねられた一次断熱ブロックを有し、前記スタッドは前記二次密閉メンブレンに密閉状態で通され、前記一次挟持部材は、前記複数の二次断熱ブロックに重ねられた複数の一次断熱ブロックを前記支持壁に向かう方向に保持するように、前記支持壁の方向に前記複数の一次断熱ブロックで支持される。
【0057】
一実施形態では、前記流体は液化ガス、例えば液化天然ガス、液化石油ガス、液化エチレン等である。
【0058】
上記のタンクは、陸上貯蔵設備、海底に設置された例えばLNG貯蔵用の貯蔵設備、又は浮体構造物、沿岸若しくは深海に設置される貯蔵施設、特にメタンタンカー船、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体式生産貯蔵積出(FPSO)設備等、の一部を構成することができる。
【0059】
一実施形態では、流体を輸送するための船舶は、二重船殻と、当該二重船殻内に配置された上記のタンクと、備えている。一実施形態では、前記二重船殻は前記タンクの支持壁となる内部船殻を有する。
【0060】
一実施形態では、本発明は流体の移送システムも提供し、当該システムは上記の船舶と、当該船舶の船殻に配置されたタンクを浮体式又は陸上貯蔵設備に接続するように配置された断熱パイプと、前記断熱パイプを介して流体を浮体式若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶のタンクへ又は前記タンクから前記浮体式若しくは陸上貯蔵設備へ駆動するためのポンプと、を備える。
【0061】
一実施形態では、本発明は上記の船舶の積込み又は揚げ荷を行う方法も提供し、当該方法では、断熱パイプを介して流体を浮体式若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶の前記断熱密閉タンクへ又は前記断熱密閉タンクから浮体式若しくは陸上貯蔵設備へ搬送する。
【0062】
添付の図面を参照して、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図2】
図1中の矢印II の方向におけるタンク壁の側面図であり、左側に静止状態のアンカー装置を、右側に圧縮状態のアンカー装置を示す。
【
図3】
図2のタンク壁にて使用される静止状態のアンカー装置の側面図である。
【
図4】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図2と同様の半分図である。
【
図5A】さらに他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図5B】さらに他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図6A】他の一実施形態のアンカー装置を示す、上方から見た斜視図である。
【
図6B】
図6Aに示されているアンカー装置の断面斜視図である。
【
図7A】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図6Aと同様の上方から見た斜視図である。
【
図7B】
図7Aに示されている実施形態において使用可能な一変形形態の回転不能化要素を示す、上方から見た斜視図である。
【
図8】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図9】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図10A】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図11】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図12】
図11に示されているアンカー装置を下方から見た斜視図である。
【
図13】3つの実施形態におけるスペーシング部の斜視図である。
【
図14】他の一実施形態におけるスペーシング部の斜視図である。
【
図15】
図13及び
図14に示されているスペーシング部に通して中央収容部に受容することができる断熱ブロックの斜視図である。
【
図16】
図15に示されている断熱ブロックを上から見た図である。
【
図18】
図13及び
図14に示されているスペーシング部に通して中央収容部に受容することができる別の断熱部の斜視図である。
【
図19】他の一実施形態のアンカー装置を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図20】
図19に示されているアンカー装置のスペーシング部を上方から見た部分斜視図である。
【
図21】
図2のタンク壁を上から見た概略図であり、アンカー装置の位置を示す。
【
図22】
図1のタンク壁において使用可能な他の断熱ブロックの斜視図である。
【
図23】メタンタンカー船タンクと、当該タンクの荷役作業を行うためのターミナルと、を示す概略的な抜粋図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
慣例により、「下」及び「上」との用語は、
図1に示されている水平壁のようにタンクの外部に向かう方向又は内部に向かう方向における複数の要素の相互間の相対的位置を定義するものとするが、以下の説明は、重力場における壁の向き如何にかかわらず、いかなる壁にも当てはまる。
【0065】
図1に、例えば液化天然ガス(LNG)等の液化流体を貯蔵するための密閉断熱タンク壁1の多層構造を示す。タンク壁1は、厚さ方向においてタンクの外部から内部に向かって順に、支持壁2に固定される二次断熱バリア3と、二次断熱バリア3に設けられる二次密閉メンブレン4と、二次密閉メンブレン4に設けられる一次断熱バリア5と、タンクに入った液化天然ガスと接触する一次密閉メンブレン6と、を備えている。
【0066】
支持壁2は、特に、船舶の船殻又は二重船殻により構成することができる。支持壁2は典型的には、通常は多面体形状のタンクの全体形状を決定する複数の壁を備えた支持構造の一部を構成するものである。
【0067】
二次断熱バリア3は複数の二次断熱ブロック7を備えており、これらの二次断熱ブロック7は、下記にて詳述するアンカー装置20を用いて支持壁2に固定される。また、二次断熱ブロック7の全体形状は平行六面体であり、これらの二次断熱ブロック7は複数の平行な列に配列されている。
【0068】
二次密閉メンブレン4は複数の金属ストレーキ8の連続した層を有し、これらの金属ストレーキ8は隆起した縁部を有する。金属ストレーキ8はその隆起縁部で、二次断熱ブロック7のカバープレートに形成された溝9に固定される平行な溶接サポートに溶接されている。金属ストレーキ8は例えば、典型的には1.2×10-6~2×10-6K-1の膨張係数を有する鉄とニッケルの合金であるインバー(Invar、登録商標)製である。
【0069】
一次断熱バリア5は複数の一次断熱ブロック11を備えており、これらの一次断熱ブロック11の全体形状は平行六面体であると共に、その長さ寸法及び幅寸法は二次断熱ブロック7の長さ寸法及び幅寸法と等しい。各一次断熱ブロック11はそれぞれ1つの二次断熱ブロック7と並ぶように配置され、タンク壁1の厚さ方向において二次断熱ブロック7と整列する。
【0070】
一次密閉メンブレン6を作製できる手法は種々存在する。ここでは、一次密閉メンブレン6は、隆起した縁部を有する複数の金属ストレーキ8の連続した層を有する。二次密閉メンブレン4と同様、金属ストレーキ8はその隆起縁部で、一次断熱ブロック11のカバープレートに形成された溝に固定される平行な溶接サポートに溶接されている。
【0071】
図1では、支持壁2の平坦性欠陥を補償するための厚さシム12及びパテビード13が見えるようにするため、二次断熱ブロック7が省略されている。国際公開第2018069585号に記載されているように不図示の位置決めシムを設けることも可能である。
【0072】
アンカー装置20は好適には、二次断熱ブロック7及び一次断熱ブロック11の4つのコーナ部の箇所に配置される。二次断熱ブロック7及び一次断熱ブロック11を有する各積層体は、それぞれ4つのアンカー装置20によって支持壁2に固定される。さらに、各アンカー装置20はそれぞれ4つの隣接する二次断熱ブロック7のコーナ部及び4つの隣接する一次断熱ブロック11のコーナ部と協働する。
【0073】
図2を参照すると、一実施形態の二次断熱ブロック7の構造をより詳細に示している。同図では二次断熱ブロック7は、底部プレート14とカバープレート15との間に挟まれた断熱ポリマー発泡体層16を含む。底部プレート14及びカバープレート15は例えば合板から成る。断熱ポリマー発泡体層16は、底部プレート14及びカバープレート15に接着されている。断熱ポリマー発泡体は特にポリウレタン系の発泡体とすることができ、かかる発泡体はオプションとして繊維により強化される。
【0074】
図21は、一実施形態の4つの隣接する二次断熱ブロック7のコーナ部間におけるアンカー装置20の配置を上から見た様子をより詳細に示す。アンカー装置20は挟持アセンブリ30の輪郭によって示されている。各二次断熱ブロック7の底部プレート14はそれぞれ、そのコーナゾーンの箇所に切欠き部52を有し、これにより、アンカー装置20を受ける方形の煙突形状のクリアランス55が開けられているのが分かる。
【0075】
二次断熱ブロック7のカバープレート15及び断熱ポリマー発泡体層16は、底部プレート14のコーナ部分54を露出させる方形の煙突形状の凹部53を有している。コーナ部分54は、これに直接的又は間接的にアンカー装置20を支持するものであり、例えば、下記にて説明するスペーシング部50を介して、又は、底部プレート14にしっかり取り付けられるコーナピラー等の剛性の部材を介して、コーナ部分54にアンカー装置20を支持する。
【0076】
次に、
図2及び
図3を参照して一実施形態のアンカー装置20の構造について説明する。
【0077】
アンカー装置20は基本的に、挟持アセンブリ30及びアンカーロッド22を含む。アンカーロッド22の下端はブッシュ23に受容されており、ブッシュ23のベースは、4つの隣接する二次断熱ブロック7のコーナゾーン間のクリアランス55の中央部分において支持壁2に溶接されている。ブッシュ23は、アンカーロッド22に対するボールソケットジョイントを形成する。例えば、ブッシュ23はナット18を収容し、このナット18にアンカーロッド22の下端が螺入する。アンカーロッド22はタンク壁1の厚さ方向に延在し、隣り合う一次断熱ブロック11の間に通される。
【0078】
挟持アセンブリ30は厚さ方向に順に、下部プレート31と、スペーシングブロック33と、上部プレート32と、を備えている。下部プレート31及び上部プレート32の各全体形状は、支持壁2に対して平行である比較的大きい2つの対向する面を有する方形の平行六面体となっている。スペーシングブロック33の輪郭も方形であり、同じ寸法を有する。上記に代えて、挟持アセンブリ30の輪郭の形状を別のものとすることができ、例えば六角形又は円形等とすることができる。
【0079】
下部プレート31は、支持壁2の方向に、4つの隣接する各二次断熱ブロック7のコーナ部分54で支持されるように、アンカーロッド22によって固定される。図示の実施形態では、スペーサ部50は各二次断熱ブロック7のコーナ部分54と下部プレート31との間に配置され、これにより挟持力を底部プレート14に伝達する。
【0080】
アンカーロッド22の上端44は下部プレート31の中央孔41に通されて、スペーシングブロック33に形成された収容部45に係合する。アンカーロッド22の上端44の箇所に形成されたねじ部とナット42とが、下部プレート31を支持壁2の方向に固定するように協働する。
【0081】
図示の実施形態では、アンカー装置20はさらに、1つ又は複数のベルビル型ばね座金43を備えている。ばね座金43は、ナット42と下部プレート31との間においてアンカーロッド22に螺合され、これにより、二次断熱ブロック7を支持壁2に弾性的に固定することができる。さらに、ナット42が外れるのを防止するように、アンカーロッド22の上端に係止部材を局所的に溶接することも有利である。
【0082】
スペーシングブロック33は、タンク壁の厚さ方向に当該スペーシングブロック33を貫通する2つの孔をさらに有し、これらの孔には、スペーシングブロック33の両面に下部プレート31及び上部プレート32を接続する2つの固定ボルト34が係合する。より正確に言うと、各固定ボルト34の下端35にはねじ部が切られており、当該下端35は下部プレート31のねじ孔38に螺入する。また、固定ボルト34を下部プレート31に定位置に係止するため、スプリット・ロックナット37が下部プレート31の上面に当たるように下端35に螺合している。スプリット・ロックナット37は不図示の態様で、下部プレート31の下面に当たるように配置することもできる。
【0083】
各固定ボルトは他端に頭部36、例えば円錐状の頭部等を有し、この頭部36は上部プレート32の孔46にスライドにより収容される。
図2の左側と
図3とに示されている孔46の底部との頭部36の当接位置が、プレート32とプレート31との最大離間スペースの位置を決定する。この最大離間スペースの寸法は、下部プレート31と上部プレート32との間の固定ボルト34の有効長により決定される。この有効長は製造時に、ねじ孔38に螺入することにより係合する長さを調整することによって微調整することができる。
【0084】
スペーシングブロック33は下面及び上面48を有し、これらは両方とも、プレート32及び31に対して平行である。下面と上面48との間のスペーシングブロック33の厚さが、下部プレート31と上部プレート32との間の最小離間スペースを決定する。
図2の右側に、下部プレート31及び上部プレート32がスペーシングブロック33の下面及び上面48に当接する当接位置が示されており、この当接位置において上記の最小離間スペースに達する。
【0085】
矢印40は最小離間スペースと最大離間スペースとの間の寸法差を示しており、この寸法差は、孔46内への頭部36のスライドクリアランスに相当する。その寸法はタンク壁の構造とタンク動作条件とに依存して決定され、この決定は、タンクの使用時に上部プレート32が全体的に二次断熱ブロック7のカバープレート15の下降に追従できるように、特に熱収縮の作用と、動作中にタンク壁1に生じる静圧及び動圧とに起因するカバープレート15の下降に追従できるように行われる。上記の静圧及び動圧は特に、断熱ポリマー発泡体層16のクリープを引き起こし得る。その寸法は典型的には数ミリメートルである。
【0086】
2つの固定ボルト34には、例えばベルビルワッシャ又は他の任意の圧縮ばね等のばね要素39がスペーシングブロック33と上部プレート32との間に係合しており、静止状態では、プレート32及び31を
図3に示されている離間位置に保持する。より正確にいうと、ばね要素39は、スペーシングブロック33と上部プレート32との間の寸法差40に等しいクリアランスを形成する。上部プレート32に圧力がかかると、ばね要素39は圧縮され、上部分32の下面49がスペーシングブロック33の上面48に当接する位置まで上述のクリアランスを徐々に消していく。
【0087】
より正確にいうと、ここでは、ばね要素39は固定ボルト34を受ける孔の大径の段部19に収容され、段部19の底部の肩部に当接する。当接位置では、ばね要素39の全部が段部19の内部に収容される。
【0088】
一実施形態では、積層体の両端がベルビルワッシャの最大径から成るように、各固定ボルト34がそれぞれ、複数のベルビルワッシャを順次互いに逆の位置に配した積層体を支持し、これらのベルビルワッシャは好適には奇数、例えば5つである。
【0089】
好適には、上部プレート32に適度な荷重がかかったときに、上部プレート32が押し下げられることなくこれを受けることができるように、固定ボルト34が静止位置においてばね要素39に圧縮付勢を生じさせるように構成されている。例えば約1000Nの付勢が加えられ、これにより、タンク建造の際に成人男性がアンカー装置20に沿って歩いたときの体重を支えることができるようにする。
【0090】
ばね要素39の硬さは、タンク壁の構造とタンクの動作条件とに依存して決定され、この決定は、タンクの動作時に上部プレート32が全体的に二次断熱ブロック7のカバープレート15の下降に追従できるように、特に熱収縮の作用と、動作中にタンク壁に生じる静圧及び動圧とに起因するカバープレート15の下降に追従できるように行われる。上記の静圧及び動圧は特に、断熱ポリマー発泡体層16のクリープを引き起こし得る。
【0091】
なお、ばね要素39の配置は、同じ機能を果たす別の配置とすることができる。例えば、固定ボルト34を逆にしてボルト頭部36を下部プレート31と同じ側にすることができ、その際には、ばね要素39は下部プレート31とスペーシングブロック33との間に配置される。不図示の他の一変形形態では、スペーシングブロック33は厚さ方向において2つの部分に分割され、ばね要素39はこれら2つの部分の間に配置される。
【0092】
図4の半図で示す他の一変形形態では、ボルト頭部36は上部プレート32内に配置され、ばね要素39は下部プレート31とスペーシングブロック33との間に配置される。本事例では、上部プレート32とスペーシングブロック33とは共に、固定ボルト34に対して相対的にスライドする。さらに、不図示のスポット溶接又はロックナットによって、下部プレート31に対する固定ボルト34の相対回転不能化を達成することができる。
図4では、プレート32及び31が当接位置にあるのが示されている。
【0093】
図5Aの断面図に示されている他の一変形形態では、固定ボルト34が逆にされてボルト頭部36Aが下部プレート31と同じ側にされ、ばね要素39の方は、本変形形態でも上部プレート32とスペーシングブロック33との間に配置される。その際には、下部プレート31に対する固定ボルト34の相対回転不能化は、例えば溶接、特にスポット溶接等によってボルト頭部36Aを下部プレート31にしっかりと固定することにより達成される。固定ボルト34のねじ端部35は、上部プレート32の孔38A、当該孔にねじ部が切られている場合にはこのねじ孔に受容される。このねじ端部35には、好適にはスプリット型でないロックナット37Aが螺合する。ロックナット37Aはねじ端部35にさらに溶接され、特にスポット溶接されている。これにより、ロックナット37Aがねじ端部35から外れることが防止される。
【0094】
図5Bの断面図に示されている他の一変形形態では、ボルト頭部36に代えて、ナット36Bがねじ端部35Aに螺合している。つまり、固定ボルトに代えて、両端部35及び35Aにねじ部が切られている固定ロッド34が用いられる。ねじ端部35Aは上部プレート32のねじ孔38Aに螺入する。ねじ端部35の方は、下部プレート31の孔38、当該孔にねじ部が切られている場合にはこのねじ孔に螺入する。上部プレート32に対する固定ロッド34の相対回転不能化は、例えば溶接、特にスポット溶接等によってナット36Bを上部プレート32にしっかりと接続することによってさらに達成される。さらに、下部プレート31に対する固定ロッド34の相対回転不能化は、例えば溶接、特にスポット溶接等によってねじ端部35を下部プレート31にしっかりと接続することによってさらに達成される。
【0095】
図6Aは他の一変形形態を上から見た斜視図であり、当該変形形態は、
図6Bにおいて断面斜視図で示されている。本変形形態では、固定ボルト34の回転不能化は、ボルト頭部36に結合された長い棒部90によって達成される。棒部90は、孔46の内側に向かって開放している2つの相反対側のノッチ91A及び91Bに受けられる。棒部90とノッチ91A,91Bとの協働により、対応する固定ボルト34の上部プレート32に対する相対回転が不能になる。棒部90は、例えば金属製とすることができる。ボルト頭部36への棒部90の固定は、クリップ留め、スポット溶接、又は棒部90をボルト頭部36の収容部(不図示)内に押し込むことによって達成することができる。固定ボルト34の下部のねじ端部35は、ロックナットやスポット溶接無しで下部プレート31のねじ孔38に螺入するだけとすることができる。
【0096】
図7Aは、他の一変形形態を上から見た斜視図であり、本変形形態は、棒部90が、孔46の内側に向かって開放している1つのノッチ91のみと協働する点を除いて、
図6A及び
図6Bの実施形態と同様である。ノッチ91は、
図7Aに示されているように上部プレート32の側面に向かって開放することができるが、これに代えてノッチ91は側面に向かって開放しないことも可能である。
【0097】
図7Bには、棒部90に代えて使用可能な回転不能化要素90Cが示されている。この要素90Cは、中央座金90C2から舌片90C1を延在させたものを有するキー型である。舌片90C1はノッチ91に受けられ、これにより、対応する固定ボルト34の上部プレート32に対する相対回転を不能にする。中央座金90C2は孔46に収容される。中央座金90C2は、クリップ留め、スポット溶接、又は本変形形態でも回転不能化要素90Cをボルト頭部36の収容部(不図示)内に押し込むことによって、ボルト頭部36に固定することができる。不図示の一変形形態では、要素90Cは、ノッチ91A及び91Bにそれぞれ受容される2つの相反対側の舌片を有することができる。
【0098】
図7Cには、棒部90に代えて使用可能な他の回転不能化要素90Dが示されている。要素90Cと同様、要素90Dは、中央カップ90D2から舌片90D1を延在させたものを有するキー型である。舌片90D1はノッチ91に受けられ、これにより、対応する固定ボルト34の上部プレート32に対する相対回転を不能にする。中央カップ90D2は孔46に収容される。
図7Cに示されているように、中央カップ90D2の形状はフレア状であると共に、ボルト頭部36の形状に対して相補的な形状となっている。ボルト頭部36は中央カップ90D2内に収容され、中央カップ90D2は、ボルト頭部36と孔46の底部との間に配置される。中央カップ90D2は、クリップ留め、スポット溶接、又は本変形形態でもボルト頭部36を中央カップ90D2のフレア形状の中に押し込むことによって、ボルト頭部36に固定することができる。
【0099】
図7Cでは、中央カップ90D2にオプションとしてノッチ90D3を設けることができ、これにより中央カップ90D2の上から見た全体形状を「C」字状とすることができることが分かる。ノッチ90D3は例えば、中央カップ90D2の中心を基準として舌片90D1の対角線上反対側とすることができる。図面中示されていない態様で、中央座金90C2はノッチ90D3と同様のノッチを、例えば舌片90C1の対角線上反対側に有することも可能である。
【0100】
図8に他の一変形形態の断面を示す。本変形形態では、2つの固定ボルト34に例えばコイルばね等の圧縮ばね69がスペーシングブロック33と上部プレート32との間に係合しており、静止状態では、プレート32及び31を
図8に示されている離間位置に保持する。より正確にいうと、圧縮ばね69はばね要素として働き、スペーシングブロック33と上部プレート32との間の寸法差40に等しいクリアランスを形成する。上部プレート32に圧力がかかると、ばね69は圧縮され、上部プレート32の下面49がスペーシングブロック33の上面48に当接する位置まで上述のクリアランスを徐々に消していく。
【0101】
ここでは、圧縮ばね69は固定ボルト34を受ける孔の大径の段部19に収容され、段部19の底部の肩部に当接する。この肩部には、圧縮ばね69を支持するためのばね座69Aを設けることができる。当接位置では、圧縮ばね69の全部が段部19の内部に収容される。
【0102】
本変形形態でも、固定ボルト34の回転不能化は長い棒部90によって達成され、この棒部90は、
図8に示すように、孔46の内側に向かって開放すると共に上部プレート32の側面に向かって開放する1つのノッチ91と協働する。これに代えて、ノッチ91は側面に向かって開放することを要しない。
【0103】
本実施形態でも、固定ボルト34の下部のねじ端部35は、ロックナットやスポット溶接無しで下部プレート31のねじ孔38に螺入するだけとすることができる。
【0104】
上部プレート32に適度な荷重がかかったときに、上部プレート32が下降することなくこれを受けることができるように、固定ボルト34が静止位置において圧縮ばね69に圧縮付勢を生じさせるように構成されている。例えば約1000Nの付勢が加えられ、これにより、タンク建造の際に成人男性がアンカー装置20に沿って歩いたときの荷重を支えることができるようにする。
【0105】
圧縮ばね69の硬さは、タンク壁1の構造とタンクの動作条件とに依存して決定され、この決定は、タンクの動作時に上部プレート32が全体的に二次断熱ブロック7のカバープレート15の下降に追従できるように、特に熱収縮の作用と、動作中にタンク壁に生じる静圧及び動圧とに起因するカバープレート15の下降に追従できるように行われる。上記の静圧及び動圧は特に、断熱ポリマー発泡体層16のクリープを引き起こし得る。
【0106】
なお、圧縮ばね69の配置は、同じ機能を果たす別の配置とすることができる。例えば、固定ボルト34を逆にしてボルト頭部36を下部プレート31と同じ側にすることができ、その際には、圧縮ばね69は下部プレート31とスペーシングブロック33との間に配置される。不図示の他の一変形形態では、固定ボルト34を逆にした状態で、圧縮ばね69が上部プレート32とスペーシングブロック32との間に配置される。
【0107】
他の変形形態を
図9の断面図に示している。本変形形態が
図8の構成と相違する点は、スペーシングブロック33が上述の段部を有しないことであり、その結果、圧縮ばね69は下部プレート31に直接支持されることとなる。場合によっては、下部プレート31に、コイルばね69を支持するためのばね座(
図9には示されていない)を設けることができる。ここで、固定ボルト34及び圧縮ばね69を受ける孔の孔径はスペーシングブロック33の厚さ全体にわたって均一である。それ以外の点では、
図9の変形形態は
図8の構成と同一であり、これについての詳細な説明は再度行わない。
【0108】
図11に他の一変形形態が断面図で示されており、
図12は、当該変形形態を下から見た斜視図である。本変形形態では、固定ボルト34の下部のねじ端部35には、好適にはスプリット型でないロックナット37Bが螺合する。ねじ部が切られていることがある孔38は、下部プレート31の溝92に向かって開口しており、ロックナット37Bはこの溝92に受容される。溝92は、下部プレート31の下面に向かって開口する。溝92の2つの対向する面はそれぞれ、ロックナット37Bの2つの別々の面と協働する。この協働により、締結ボルト34は下部プレート31に対して相対回転不能となる。図面に示されている例では、ロックナット37Bは正方形のロックナットである。しかし、ロックナット37Bは、溝92の2つの対向する面と当該ロックナット37Bの2つの別々の面が協働可能であるという条件を満たせば、他の形状とすることもできる。特に、ロックナット37Bは六角形とすることができ、その際には六角形の2つの隣り合う面が溝92の2つの対向する面と協働する。上部プレート32に対する固定ボルト34の相対回転不能化は、例えば溶接、特にスポット溶接等によってボルト頭部36を上部プレート32にしっかりと接続することによってさらに達成される。溝92は、
図11及び
図12に示されるように、下部プレート31の側面上に開口することができるが、代替的に、溝92は、その側面上に開口する必要はない。
【0109】
また、
図11では、スペーシング部350がブラインドホール60を有することも見て取れ、このブラインドホール60は、後述するように各固定ボルト34に沿って延在する。
【0110】
なお、上記にて説明した全ての変形形態において、スペーシングブロック33と下部プレート31との間のいかなる相対運動も、特に固定ボルト34の延在方向における相対運動を阻止するため、スペーシングブロック33を下部プレート31に固定することができる点に留意すべきである。下部プレート31へのスペーシングブロック33のこの固定は、ねじ留め及び/又はリベット留め及び/又は接着によって行うことができる。代替的に、特にばね要素39又は69が下部プレート31とスペーシングブロック33との間に配置される場合、スペーシングブロック33を例えばボルト及び/又はリベット及び/又は接着等によって上部プレート32に固定することも可能である。
【0111】
さらに、上記にて説明した全ての変形形態において、スペーシングブロック33の上部プレート32側又は上部プレート32のスペーシングブロック33側にポリマー発泡体層を配置できることにも留意すべきである。
【0112】
あくまで例示として、
図10Aは、上述のポリマー発泡体層を備えた
図8の変形形態のアンカー装置を示す。この
図10Aでは、ポリマー発泡体層68は、アンカーロッド22の上端44の両側においてスペーシングブロック33の上面48に固定されている。
【0113】
非圧縮状態のポリマー発泡体層68の厚さは、必要な寸法差40に等しくされている。よって、ポリマー発泡体層68が圧縮されていないときは、ポリマー発泡体層68はスペーシングブロック33の面48とプレート32の下面49との間に延在し、これにより、プレート32及び31が最大離間スペース位置にあるときの両プレート32,31間の寸法差40を定める。従って、ポリマー発泡体層68は必要な寸法差40を実現し、これにより挟持アセンブリ30の組立てが容易になる。
【0114】
上部プレート32に圧力が加えられると、上記の当接位置に達するまで圧縮ばね69が圧縮されて寸法差40を徐々に消していくだけでなく、プレート32の下面49もポリマー発泡体層68を圧縮していく。
【0115】
好適には、非圧縮状態のポリマー発泡体層68の硬さは圧縮ばね69の硬さと比較して非常に低く、これにより、ポリマー発泡体層68の圧縮が圧縮ばね69の圧縮を有意に妨げることがない。
【0116】
例えば、非圧縮状態のポリマー発泡体層68の厚さは2~8mmであり、これにより、当接位置ではポリマー発泡体層68の厚さは1~6mmとなる。
【0117】
ポリマー発泡体層68は、ポリウレタン、ポリエチル若しくはポリプロピレン発泡体製又はメラミン発泡体製、特に、BASF SE社から商品名Basotect(登録商標)で販売されている発泡体シリーズのメラミン発泡体製とすることができる。例えば、ポリマー発泡体層68はスペーシングブロック33の上面48に接着することができ、又は接着テープを備えることができる。
【0118】
図10Aに示されているポリマー発泡体層68の幾何学的形態は、あくまで一例である。また、
図10Bに示されている他の一例では、圧縮ばね69の巻回部と接触するリスクを無くすため、ポリマー発泡体層68は、スペーシングブロック33の側縁部かつ圧縮ばね69を受ける当該スペーシングブロック33の孔の周囲にも延在する。ポリマー発泡体層68は、前記孔の周囲にのみ配置することも可能である。
【0119】
1つのメンブレンタンクを製造するため、タンク壁1を二次断熱バリア3及び二次密閉メンブレン4に限定することができる。一次断熱バリア5及び一次密閉メンブレン6が存在する場合、アンカー装置20は一次ステージも備える。こうするためには、上部プレート32の中心にねじ孔47が設けられ、このねじ孔47には、一次断熱ブロック11を固定するためのスタッド27のねじ付きベースが取り付けられている。スタッド27は、二次密閉メンブレン4の金属ストレーキ8を貫通して形成された孔に通される。スタッド27は、二次密閉メンブレン4の密閉性を提供するため、当該スタッド27の周囲において孔の周囲に溶接されたフランジを備えている。
【0120】
また、アンカー装置20の一次ステージは一次ベアリングプレート28も備えており、この一次ベアリングプレート28は、4つの隣り合う各一次断熱ブロック11を二次密閉メンブレン4に固定するように、支持壁2の方向に、これら各一次断熱ブロック11に形成されたベアリングゾーンで支持される。図示の実施形態では、各ベアリングゾーン29は、一次断熱ブロック11の底部プレートの突出部分によって形成されている。
【0121】
スタッド27の上端の箇所に形成されたねじ部とナット29とが、一次ベアリングプレート28をスタッド27に固定するように協働する。図示の実施形態では、アンカー装置20はさらに、ナット28と一次ベアリングプレート28との間においてスタッド27に螺合するベルビル型ばね座金を備えており、これにより、一次断熱ブロック11を二次密閉メンブレン4に弾性的に固定することができる。
【0122】
図13は、アンカー装置20のスペーシング部50,150又は250の複数の実施形態を示しており、これらの各スペーシング部50,150又は250は、アンカーロッド22を通すことができる中央貫通収容部51と、下部プレート31を受けて支持する上端面56と、二次断熱ブロックに支持される下端面57と、を有する。スペーシング部50,150又は250は例えば、熱橋を抑えるために合板から作製される。スペーシング部50,150又は250は好適には下部プレート3と同一の断面を有し、図示の実施形態では方形の断面を有する。スペーシング部50,150又は250は、簡単な形状を有する少数の長辺状の部分をしっかり組み立てたものにより構成することができ、当該長辺状の部分は例えば互いにステープル、ボルト及び/又は接着剤により組み付けられる。
【0123】
不図示の態様では、中央貫通収容部51には断熱部がアンカーロッド22の周囲に充填され、この断熱部は例えばガラスウール、詰め物、膨張ポリスチレン又はポリウレタン発泡体等である。
【0124】
スペーシング部50又は250は、当該スペーシング部の主面を形成する2つの平面方形プレート58と、2つの平面方形プレートの間に当該スペーシング部50又は250の縁部に沿って配置される2つのクリート59とから形成される。よって、これら4つの各部分が、正方形又は方形の断面を有する中央貫通収容部51の壁となる。
【0125】
スペーシング部150は、断面形状が直角の台形である同一成形された4つの長片部分から成り、これら各台形の一斜辺が、菱形の断面を有する中央貫通収容部51の各壁を形成する。熱架橋を抑えるため、中央貫通収容部51の両側に長手方向セルが形成され、ここに断熱材料も充填される。
【0126】
図14は、スペーシング部350の他の一実施形態を示す。このスペーシング部350は、各クリート59がそれぞれブラインドホール60を有し、各ブラインドホール60が固定ボルト34の一部を入れることができるように当該固定ボルト34とアライメントする点を除いて、スペーシング部250と同一である。不図示の他の一変形形態では、スペーシング部50がかかるブラインドホール60を有することが可能である。スペーシング部150では、中央貫通収容部51の両側に形成された長手方向セルに部分的にのみ断熱材料を充填し、断熱材料と長手方向セルとが合わさってブラインドホール60に類するブラインドホールを形成することができる。
【0127】
図15~17は共に、中央貫通収容部51に入れることができる断熱ブロック451の一実施形態を示す。この断熱ブロック451の外形は中央貫通収容部51の外形に対して相補的な形状であり、ここでは平行六面体である。同図では、断熱ブロック451は断熱性のポリマー発泡体製である。ポリマー発泡体は低密度とすることができ、具体的には、10kg/m
3~60kg/m
3、特に10kg/m
3~30kg/m
3の密度とすることができる。ポリマー発泡体は、ポリウレタン発泡体又はメラミン発泡体、特に、BASF SE社から商品名Basotect(登録商標)で販売されている発泡体シリーズのメラミン発泡体とすることができる。ポリマー発泡体はオプションとして、繊維、例えばガラス繊維等によって強化することができる。
【0128】
図15~17ではさらに、断熱ブロック451がスルーホール452を有することが分かる。このスルーホール452は、上述したようにスペーシング部を挟持アセンブリ30の下方に配置した場合にアンカーロッド22を受容するものである。
図14を見れば分かるように、スルーホール452の断面は、アンカーロッド22の上端から当該アンカーロッド22の下端に向かって拡幅していく。特に、かかる拡幅は、
図14に示されているようにスルーホール452を円錐台形の断面とすることにより達成することができる。アンカーロッド22の周囲にスペーシング部を設けることは、アンカーロッド22をブッシュ23及びナット18によって支持壁2に固定した後に行われることに鑑みると、上述のようにアンカーロッド22の下端に向かう方向に断面を拡幅することによって、アンカーロッド22の周囲にスペーシング部を設けることが容易になる。さらに、上記の拡幅によって幾らかのクリアランスを提供することもでき、ブッシュ23によりボールソケットジョイント接続が形成されているので、上記のクリアランスの中でアンカーロッド22が自在に運動することができる。不図示の一変形形態では、スルーホール452の断面はアンカーロッド22の下端から当該アンカーロッド22の上端に向かって拡幅することも可能である。特にこれは、スルーホールを円錐台形の断面とすることにより達成することができる。
【0129】
図18は、中央貫通収容部51に入れることができる断熱ブロック551の他の一実施形態を示す。この断熱ブロック551の外形は中央貫通収容部51の外形に対して相補的な形状であり、ここでは平行六面体である。断熱ブロック551は、ここではガラスウール製である。断熱ブロック551は、ガラスウールの2つの部分ブロック552を背中合わせに貼り合わせたものから成ることができる。断熱ブロック551は、上述のようにスペーシング部を挟持アセンブリ30の下方に配置したときにアンカーロッド22を囲むものである(
図15には示されていない)。こうするためには、断熱ブロック551はその厚さにおいて、アンカーロッド22に対して平行なノッチ554を有することができる。このノッチ554によって、断熱ブロック551にアンカーロッド22を通すことを可能にしつつ、アンカーロッド22が断熱ブロック551を貫通した後にガラスウールが弾性復帰してアンカーロッド22をグリップすることが可能になる。また、断熱ブロック551は、セルロース又はポリエステル詰め物により作製することもできる。
【0130】
図18からさらに分かるように、断熱ブロック551の両面にフィルム555を配置することもでき、これらのフィルム555は特に、断熱ブロック551の面のうち中央貫通収容部51の比較的大きな2面に対向する比較的大きな2面に配置される。フィルム555は、ガラス繊維マット、クラフト紙、又はPVC等のポリマーから作製することができる。このフィルム555によって、断熱ブロック551を中央貫通収容部51に挿入する際に、断熱ブロック551を中央貫通収容部51の面上で滑らせやすくすることができる。代替的に、上記フィルム555のうち1つのみを設けることも可能であり、及び/又は、断熱ブロック551の面のうち上記のフィルム555によって覆われない面に不図示の補足的なフィルムを追加することもできる。
【0131】
図19及び
図20にスペーシング部の他の一変形形態が挟持アセンブリ30と共に示されており、
図19は断面図であり、
図20はスペーシング部を上から見た部分斜視図である。本変形形態では、
図11及び
図12の変形形態と同様、固定ボルト34の下部のねじ端部35には、好適にはスプリット型でないロックナット37Bが螺合する。ロックナット37Bはスペーシング部650の溝660に受容されている。ここでスペーシング部650は、スペーシング部250と同様に、当該スペーシング部650の主面を形成する2つの平面方形プレート58と、2つの平面方形プレート58の間に当該スペーシング部650の縁部に沿って配置される2つのクリート59とから形成される。2つの各クリート59には、それぞれ溝660が形成されている。溝660の2つの対向する面はそれぞれ、ロックナット37Bの2つの別々の面と協働する。この協働により、固定ボルト34は下部プレート31に対して相対回転不能となる。図面に示されている例では、ロックナット37Bは正方形のナットである。しかし、ロックナット37Bは、溝660の2つの対向する面と当該ロックナット37Bの2つの別々の面が協働可能であるという条件を満たせば、他の形状とすることもできる。特に、ロックナット37Bは六角形とすることができ、その際には六角形の2つの対向する面が溝660の2つの対向する面と協働する。固定ボルト34は、ボルト頭部36を上部プレート32にしっかり接続することにより、例えば溶接、特にスポット溶接等することにより、上部プレート32に対して相対回転しないようにされる。
【0132】
寸法例
ばね要素39又は69の硬さにより、タンクが空で大気温度の場合、すなわち、タンクの建造当初の条件下において、挟持アセンブリ30は最大離間スペースに相当する離間位置にある。この状態のとき、上部プレート32の位置は、二次密閉メンブレン4に対して均一な支持面を提供するようにカバープレート15とアライメントするよう調整されている。
【0133】
タンクの動作の際には、タンクに液化ガスを充填すると、その後に二次断熱バリア3において熱収縮現象や流体静荷重による収縮及びクリープの現象が生じる。
【0134】
熱収縮は全ての材料において同じという訳ではなく、断熱ポリマー発泡体層16は、スペーシング部50及びスペーシングブロック33を構成する合板より大きく収縮する傾向がある。さらに、圧力荷重は、底部、天井又は側面のタンク壁の位置によって異なる。どの壁も、例えば2kPa又は5kPa(20mbar又は50mbar)等の蒸気相のサービス圧力を少なくとも受ける。
【0135】
ばね要素39又は69の硬さは、冷却後及び蒸気相のサービス圧力において、ばね要素39又は69の弾性圧縮により、アンカー装置20の熱収縮に対する二次断熱ブロック7の追加の相対的な収縮及びクリープ以上の上部プレート32の追加の下降を生じさせることができるように決定することができる。二次断熱ブロック7のこの追加の収縮及びクリープは、蒸気相のサービス圧力下で例えば約1mmである。このようにして、上部プレート32はカバープレート15の高さに追従し、二次密閉メンブレン6をせん断しやすい突出ゾーンを上部プレート32が生じさせるおそれが無くなる。
【0136】
ばね要素39又は69の硬さ及び寸法差40の寸法は、挟持アセンブリ30が以下の条件下で、最小離間スペースに相当する当接位置に達するように決定することも可能である:
-挟持アセンブリ30の下の一次断熱ブロックが最大貨物圧力を受けたときの流体静荷重下、
-又は、挟持アセンブリ30の下の一次断熱ブロックが、貨物のスロッシングに起因する予め決まった公称閾値を超える衝撃圧を受けたときの動荷重下。
【0137】
いかなる場合においても、ばね要素39又は69はアンカー装置20のフレキシビリティを上昇させ、これにより、二次密閉メンブレン6の経年劣化を加速させ得るハードスポットや突出ゾーンが局所的に形成されるおそれを抑えることができる。
【0138】
2つのプレート間に作用するばね部材の総硬さ、ここではばね要素39又は69の総硬さは、好適には、アンカー装置の直近におけるサービス温度での断熱バリアの等価硬さより低い。図示の実施形態において断熱バリアの硬さを制御するものは、断熱ポリマー発泡体層16である。一実施形態では、ばね要素39又は69の総硬さは約1880N/mmであると共に、上部プレートの断面と等しい断面を有する断熱ポリマー発泡体ブロック16から成るばねに等価のタンク壁の厚さ方向の硬さは約1920N/mmである。すなわち、厚さ比は0.98に等しい。この比は、より一般的には、0.3~1の中で選択することができる。
【0139】
上記では、二次断熱ブロック7の構造を例示して説明した。他の一実施形態では、二次断熱ブロック7は例えば国際公開第2012127141号に記載されている構造等の他の一般構造を有することもできる。その際には二次断熱ブロック7は、底部プレートと、カバープレートと、当該底部プレートとカバープレートとの間でタンク壁1の厚さ方向に延在する支持ウェブと、を有する複数の箱型セクションの形態で作製されたものであり、これらの箱型セクションは複数の区画に区切り、各区画にはパーライト、ガラスウール又はロックウール等の断熱ライニングが充填されている。
【0140】
図22に他の一実施形態の二次断熱ブロック107が示されている。
図22では、その前の図の要素と類似又は同一の要素には、同一の符号に100を足したものを付しており、かかる要素については再度説明しない。同図では、断熱ポリマー発泡体層は下層16b及び上層16aに分割されており、下層16bと上層16aとは、例えば合板等で作製された中間プレート10を両層16b,16aに貼り付けることにより分離されている。上層16aの長さは、下層16bの長さよりも短く、中間プレート10の長手方向の両端においてリム10aを露出させている。
【0141】
下層16bの四隅に形成された凹部には、剛性ピラー17が中間プレート10と底部プレート114との間において下層16bの厚さ方向に延在する。剛性ピラー17は、アンカー装置20の挟持力に耐えるために上下方向にリム10aと部分的にアライメントしており、ここで、アンカー装置20の下部プレート31はリム10aに直接設けることができる。二次断熱ブロック107のその他の詳細は、国際公開第2014096600号に記載されている。
【0142】
一次断熱ブロック11を作製できる手法は種々存在し、例えば、二次断熱ブロック7と同様に断熱ポリマー発泡体層を底部プレートとカバープレートとの間に挟んだ形態で作製することができる。
【0143】
その際には底部プレートは、二次密閉メンブレン4のストレーキ8の隆起縁部を入れる溝を有する。カバープレートもまた、溶接サポートを入れるための溝を有する。
【0144】
上記では、一次断熱パネル11の構造を例示して説明した。他の一実施形態では、一次断熱パネル22は例えば国際公開第2012127141号に記載されている構造等の他の一般構造を有することもできる。
【0145】
1つの密閉メンブレン又は2つの密閉メンブレンを備えたタンク壁を製造するための上記の技術は、種々の種類の貯蔵部でも使用することができ、例えば、陸上設備又はメタンタンカーその他船舶等の浮体構造物における液化天然ガス(LNG)用の二重メンブレンタンクを構成するために使用することができる。
【0146】
図23を参照すると、メタンタンカー船70の抜粋図が、当該メタンタンカー船の二重船殻72に搭載された全体形状が角柱状の密閉断熱タンク71を示している。タンク71の壁は、当該タンクに入ったLNGと接触する一次密閉バリアと、一次密閉バリアと船舶の二重船殻72との間に配置された二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアとの間及び二次密閉バリアと二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備えている。
【0147】
LNGの貨物をタンク71から移送し又はタンク71へ移送するため、適切なコネクタを用いて、船舶の上甲板に配置された荷役パイプ73を海上ターミナル又は港湾ターミナルに、自明の態様で接続することができる。
【0148】
図23は海上ターミナルの一例を示しており、この海上ターミナルは荷役ステーション75と水中パイプ76と陸上設備77とを備えている。荷役ステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備えた定置の沖合設備である。可動アーム74は、荷役パイプ73に接続可能な断熱性の可撓性パイプ束79を支持する。方向調整可能なこの可動アーム74は、メタンタンカーのあらゆる積載量に適合する。タワー78内部には、不図示の接続パイプが延設されている。荷役ステーション75は、メタンタンカー70から陸上設備77への揚げ荷及び陸上設備77からメタンタンカーへの積込みを行えるものである。陸上設備77は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプ76を介して荷役ステーション75に接続された接続パイプ81と、を備えている。水中パイプ76は、荷役ステーション75と陸上設備77との間で例えば5km等の長距離にわたり液化ガスを移送するためのものであり、これにより、荷役作業中にメタンタンカー船70を海岸から遠い距離に留めることができる。
【0149】
液化ガスを移送するために必要な圧力を発生するため、船舶70に搭載されたポンプ及び/又は陸上設備77に備え付けられたポンプ及び/又は荷役ステーション75に備え付けられたポンプが用いられる。
【0150】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に決して限定されず、本願明細書に記載されている手段の技術的均等態様及び組み合わせは、本発明の範囲に属するものであれば全て含まれることが明らかである。
【0151】
動詞「含む」又は「含む」及びその活用形を使用した場合、これは、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0152】
特許請求の範囲において、いかなる括弧書きの符号も、特許請求の範囲の限定と解すべきものではない。