(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/47 20060101AFI20240910BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B29C45/47
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2022578301
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001948
(87)【国際公開番号】W WO2022163488
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021013465
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】大澤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】関口 彰太朗
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055488(JP,A)
【文献】特開2018-044642(JP,A)
【文献】特開2002-258675(JP,A)
【文献】特開平02-145107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
F16D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出用樹脂を射出する前方向と前記前方向とは逆の後方向との前後方向に沿って配置されるスクリューと、前記スクリューとスプライン嵌合可能に形成されるブッシュとを有する射出装置であって、
前記スクリューは、前記スクリューの後端側の外周面に形成され、前記スクリューの周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の外周突起を有し、
複数の前記外周突起の各々には、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの周方向に沿った外周突起幅が小さくなるように傾斜する外周突起斜面と、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの外径が縮径するように傾斜する第2の外周突起斜面とが形成され、
前記ブッシュは、前記前後方向に延びる貫通孔と、前記貫通孔の内周面に形成され、前記貫通孔の周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の内周突起を有し、
複数の前記内周突起の各々には、前記内周突起の前端に向かうほど前記貫通孔の周方向に沿った内周突起幅が小さくなるように傾斜する内周突起斜面と、前記内周突起の前端に向かうほど前記ブッシュの内径が拡径するように傾斜する第2の内周突起斜面とが形成され、
複数の前記外周突起の各々の後端
には、前記外周突起によって形成される平面および辺がなく、複数の前記内周突起の各々の前端には
、前記内周突起によって形成される平面
および辺がな
く、
前記第2の外周突起斜面の後端は、前記外周突起斜面の後端の位置にまで達し、前記第2の内周突起斜面の前端は、前記内周突起斜面の前端の位置にまで達する、射出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出装置であって、
前記外周突起斜面は、複数の前記外周突起の各々の後端側における前記スクリューの周方向の両側面の一方に形成され、
前記内周突起斜面は、複数の前記内周突起の各々の前端側における前記貫通孔の周方向の両側面の一方に形成される、射出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の射出装置であって、
前記外周突起斜面は、複数の前記外周突起の各々の後端側における前記スクリューの周方向の両側面の各々に形成され、
前記内周突起斜面は、複数の前記内周突起の各々の前端側における前記貫通孔の周方向の両側面の各々に形成される、射出装置。
【請求項4】
射出用樹脂を射出する前方向と前記前方向とは逆の後方向との前後方向に沿って配置されるスクリューと、前記スクリューとスプライン嵌合可能に形成されるブッシュとを有する射出装置であって、
前記スクリューは、前記スクリューの後端側の外周面に形成され、前記スクリューの周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の外周突起を有し、
複数の前記外周突起の各々には、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの周方向に沿った外周突起幅が小さくなるように傾斜する外周突起斜面と、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの外径が縮径するように傾斜する第2の外周突起斜面とが形成され、
前記ブッシュは、前記前後方向に延びる貫通孔と、前記貫通孔の内周面に形成され、前記貫通孔の周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の内周突起を有し、
複数の前記内周突起の各々には、前記内周突起の前端に向かうほど前記貫通孔の周方向に沿った内周突起幅が小さくなるように傾斜する内周突起斜面と、前記内周突起の前端に向かうほど前記ブッシュの内径が拡径するように傾斜する第2の内周突起斜面とが形成され、
複数の前記外周突起の各々の後端および複数の前記内周突起の各々の前端には平面がなく、
前記ブッシュには、前記ブッシュの後端面から突出する凸部が設けられ、
前記凸部が収
容される凹部を有し、前記凹部に前記凸部が収容される前記ブッシュを固定するブッシュ締結部と、
前記スクリューが収容されるシリンダと、
を備え、
前記第2の外周突起斜面の高さをCs1とし、前記第2の内周突起斜面の高さをCb1とし、前記ブッシュに嵌合される前記スクリューが前記シリンダに収容されたときの前記外周突起と前記シリンダとの間の隙間をLs1とし、前記ブッシュ締結部に前記ブッシュが固定されたときの前記凸部の外周と前記凹部の内周との間の隙間をLb1とした場合に、
Cs1+Cb1>Ls1+Lb1の関係が成立する、射出装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の射出装置であって、
前記スクリューに対して、前記前後方向に前記ブッシュを進退させる直動モータと、
前記直動モータの直動トルクを検出する検出部と、
前記スクリューに対して離間する位置から前記ブッシュを前進させ、前記直動トルクが直動トルク閾値を超えた場合に前記ブッシュを停止させるように、前記直動モータを制御するモータ制御部と、
を備える、射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-055488号公報には、直動運動用モータと、回転運動用モータとを制御するモータ制御部が開示されている。直動運動用モータは、スクリューの軸方向にブッシュを移動させるモータである。回転運動用モータは、スクリューの軸回りにブッシュを回転させるモータである。
【0003】
モータ制御部は、直動運動用モータを制御して、スクリューと離間した状態からブッシュをスクリューに接近する方向に前進させる。ブッシュの前進中に、直動運動用モータのトルクが第1トルク以上となった場合、モータ制御部は、回転運動用モータを制御してブッシュを回転させる。
【発明の概要】
【0004】
ところで、スプライン嵌合の作業効率を高めるため、ブッシュを回転させずに、スクリューに対するブッシュの前進のみでスプライン嵌合する要請がある。
【0005】
そこで、本発明は、スプライン嵌合の作業効率を高め得る射出装置を提供する。
【0006】
本発明の態様は、
射出用樹脂を射出する前方向と前記前方向とは逆の後方向との前後方向に沿って配置されるスクリューと、前記スクリューとスプライン嵌合可能に形成されるブッシュとを有する射出装置であって、
前記スクリューは、前記スクリューの後端側の外周面に形成され、前記スクリューの周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の外周突起を有し、
複数の前記外周突起の各々には、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの周方向に沿った外周突起幅が小さくなるように傾斜する外周突起斜面と、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの外径が縮径するように傾斜する第2の外周突起斜面とが形成され、
前記ブッシュは、前記前後方向に延びる貫通孔と、前記貫通孔の内周面に形成され、前記貫通孔の周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の内周突起を有し、
複数の前記内周突起の各々には、前記内周突起の前端に向かうほど前記貫通孔の周方向に沿った内周突起幅が小さくなるように傾斜する内周突起斜面と、前記内周突起の前端に向かうほど前記ブッシュの内径が拡径するように傾斜する第2の内周突起斜面とが形成され、
複数の前記外周突起の各々の後端および複数の前記内周突起の各々の前端には平面がない。
【0007】
本発明の態様によれば、ブッシュを回転させることなく、スクリューに対するブッシュの前進動作でスプライン嵌合することができる。この結果、スプライン嵌合の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態による射出装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、スクリューおよびブッシュを示す図である。
【
図4】
図4は、スクリューとブッシュとをスプライン嵌合するためにモータ制御部が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例1のスクリューおよびブッシュを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0010】
[実施形態]
図1は、一実施形態による射出装置10を示す概略図である。射出装置10は、金型に対して成形用樹脂を射出する。本実施形態では、成形用樹脂を射出する射出方向は前方向とし、射出方向とは逆の方向は後方向とする。射出装置10には、スクリュー12と、ブッシュ14と、ブッシュ締結部16と、駆動機構18とが備えられる。
【0011】
スクリュー12は、シリンダ20の貫通孔20Hに収容される。スクリュー12は、回転することで、貫通孔20Hに投入される成形用樹脂を前方向に送る。シリンダ20の前端にはノズル22が設けられ、スクリュー12によって送られる成形用樹脂がノズル22から射出される。スクリュー12は、スクリュー部12Aとスプライン部12Bとを有する。
【0012】
スクリュー部12Aは、スクリュー12の前部である。スクリュー部12Aの外周面には、螺旋状の突起12Pが形成される。スプライン部12Bは、スクリュー12の後部であり、スクリュー部12Aの後端に連接する。スプライン部12Bの外周面には、ブッシュ14とスプライン嵌合可能な凹凸が形成される。
【0013】
ブッシュ14は、スクリュー12とスプライン嵌合される。ブッシュ14は、前後方向に貫通する貫通孔14Hを有する。貫通孔14Hの内周面には、スプライン部12Bとスプライン嵌合可能に凹凸が形成される。ブッシュ14には、ブッシュ14の後端面から後方に突出する環状の凸部14Aが設けられる。
【0014】
ブッシュ締結部16は、ブッシュ14の後方でブッシュ14を固定する。ブッシュ締結部16は、ブッシュ14の凸部14Aが収容される凹部16Aを有する。凹部16Aに凸部14Aが収容されるブッシュ14がボルトによってブッシュ締結部16に固定される。
【0015】
駆動機構18は、スクリュー12に対してブッシュ14を相対移動させるように、スクリュー12およびブッシュ14の少なくとも一方を駆動する機構である。本実施形態は、ブッシュ14を駆動する駆動機構18とする。駆動機構18には、直動モータ24と、回転モータ26と、モータ制御部28とが備えられる。
【0016】
直動モータ24は、前後方向にブッシュ14を進退させるモータである。直動モータ24のモータ軸には、モータ軸と一緒に回転するボールねじ30が連結される。ボールねじ30には、直動モータ24の回転に応じてボールねじ30を前後方向に進退するように摺動部32が取り付けられる。摺動部32には、直動用ギア34が回転可能に取り付けられる。直動用ギア34は、ブッシュ締結部16の後端に固定される。直動モータ24には、直動モータ24の回転角を検出するエンコーダ36と、直動モータ24の直動トルクを検出する検出部38とが設けられる。
【0017】
回転モータ26は、ブッシュ14を回転させるモータである。回転モータ26のモータ軸には、直動用ギア34と噛み合う回転用ギア40が連結される。回転モータ26には、回転モータ26の回転角を検出するエンコーダ42が設けられる。
【0018】
駆動機構18では、直動モータ24が回転した場合、直動モータ24の回転に応じて、ボールねじ30および摺動部32を介して前後方向に直動用ギア34が移動する。この場合、直動用ギア34と噛み合う回転用ギア40および回転モータ26が前後方向に移動するとともに、直動用ギア34が固定されるブッシュ締結部16を介して、ブッシュ14が前後方向に移動する。一方、回転モータ26が回転した場合、回転モータ26の回転に応じて回転用ギア40が回転する。この場合、回転用ギア40と噛み合う直動用ギア34が回転し、直動用ギア34が固定されるブッシュ締結部16を介して、ブッシュ14が回転する。
【0019】
モータ制御部28は、エンコーダ36で検出される回転角が目標値となるように直動モータ24を制御することで、ブッシュ14を進退させる。また、モータ制御部28は、エンコーダ42で検出される回転角が目標値となるように回転モータ26を制御することで、ブッシュ14を回転させる。
【0020】
また、モータ制御部28は、検出部38で検出される直動トルクを監視しながら直動モータ24のみを制御する制御処理を実行することで、スクリュー12とブッシュ14とをスプライン嵌合させる。
【0021】
図2は、スクリュー12およびブッシュ14を示す図であり、
図3Aは、
図2のスクリュー12の断面を示す図であり、
図3Bは、
図2のブッシュ14の断面を示す図である。
【0022】
スプライン部12Bの外周面には、スプライン部12Bの周方向に間隔をあけて前後方向に沿って延びる複数の外周突起50が形成される。複数の外周突起50の各々は、スプライン部12Bの周方向に沿って一周する嵌合溝52によって分断される。嵌合溝52には、環状のリテーナ46(
図1)が嵌合される。
【0023】
複数の外周突起50の各々の形状は同じである。以下、外周突起50の形状に関する説明は、複数の外周突起50の中の1つのみとする。外周突起50の後端は尖った形状または丸みを帯びた形状に形成される。すなわち、スクリュー12の外周突起50の後端には平面がない。付言すると、スクリュー12の最も後方に位置する最後端には、スクリュー12の回転中心線LN1(
図2)に直交する平面はない。外周突起50の後端部には、外周突起50の後端に向かって外周突起斜面50Sおよび第2の外周突起斜面50SSが形成される。
【0024】
外周突起斜面50Sは、スクリュー12の周方向における外周突起50の両側面50F1、50F2の一方に形成される。外周突起斜面50Sは、スクリュー12の周方向に沿った外周突起幅50Wが後端に向かうほど小さくなるように傾斜する。
【0025】
第2の外周突起斜面50SSは、外周突起50の後端に向かうほどスクリュー12の外径が縮径するように傾斜する。つまり、第2の外周突起斜面50SSは、外周突起50の後端に向かうほど、スクリュー12の回転中心線LN1からのスクリュー12の半径R1(
図3A)が小さくなるように、傾斜する。
【0026】
ブッシュ14の貫通孔14Hの内周面には、貫通孔14Hの周方向に間隔をあけて前後方向に沿って延びる複数の内周突起60が形成される。複数の内周突起60の各々の形状は同じである。以下、内周突起60の形状に関する説明は、複数の内周突起60の中の1つのみとする。内周突起60の前端は尖った形状または丸みを帯びた形状に形成される。すなわち、ブッシュ14の内周突起60の前端には平面がない。付言すると、ブッシュ14の最も前方に位置する最前端には、ブッシュ14の貫通孔14Hの中心線LN2(
図2)に直交する平面はない。内周突起60の前端部には、内周突起60の前端に向かって内周突起斜面60Sおよび第2の内周突起斜面60SSが形成される。
【0027】
内周突起斜面60Sは、貫通孔14Hの周方向における内周突起60の両側面60F1、60F2の一方に形成される。内周突起斜面60Sは、貫通孔14Hの周方向に沿った内周突起幅60Wが前端に向かうほど小さくなるように傾斜する。
【0028】
第2の内周突起斜面60SSは、内周突起60の前端に向かうほどブッシュ14の貫通孔14Hが拡径するように傾斜する。つまり、第2の内周突起斜面60SSは、内周突起60の前端に向かうほど、貫通孔14Hの中心線LN2からの貫通孔14Hの半径R2(
図3B)が大きくなるように、傾斜する。
【0029】
ところで、射出装置10では、下記の(1)式の関係が成立する。(1)式のCs1は、第2の外周突起斜面50SSの高さ50H(
図3A)である。(1)式のCb1は、第2の内周突起斜面60SSの高さ60H(
図3B)である。(1)式のLs1は、ブッシュ14に嵌合されるスクリュー12がシリンダ20に収容されたときの外周突起50とシリンダ20との間の隙間GP1(
図1)である。(1)式のLb1は、ブッシュ締結部16にブッシュ14が固定されたときのブッシュ14の凸部14Aの外周とブッシュ締結部16の凹部16Aの内周との間の隙間GP2(
図1)である。
【0030】
Cs1+Cb1>Ls1+Lb1・・・・・(1)
【0031】
なお、第2の外周突起斜面50SSの高さ50H(
図3A)は、外周突起斜面50Sで最も突出する位置と外周突起斜面50Sの後端との間における、スクリュー12の径方向の長さ(突出距離)である。また、第2の内周突起斜面60SSの高さ60H(
図3B)は、内周突起斜面60Sで最も突出する位置と内周突起斜面60Sの前端との間における、ブッシュ14の径方向の長さ(突出距離)である。
【0032】
図4は、スクリュー12とブッシュ14とをスプライン嵌合するためにモータ制御部28が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。本制御処理は、スクリュー12の後端面から後方向に離間する所定の嵌合開始位置にブッシュ14が移動された後に開始される。なお、嵌合開始位置では、スクリュー12の回転中心線LN1(
図2)と、ブッシュ14の貫通孔14Hの中心線LN2(
図2)とは、式(1)を満たせば、一致しなくてもよい。
【0033】
ステップS1において、モータ制御部28は、スクリュー12に向かってブッシュ14を前進させる。ブッシュ14の前進が開始されると、制御処理はステップS2に移行する。
【0034】
ステップS2において、モータ制御部28は、ブッシュ14の前進中に検出部38で検出される直動トルクを、直動トルク閾値と比較する。ここで、直動トルクが直動トルク閾値を超えない場合、制御処理はステップS2に留まる。一方、直動トルクが直動トルク閾値を超える場合、制御処理はステップS3に移行する。
【0035】
なお、直動トルクが直動トルク閾値を超える現象は、ブッシュ14とスプライン嵌合したスクリュー12の後端面が、ブッシュ締結部16の凹部16Aの底面と接触している状態で生じる。
【0036】
ステップS3において、モータ制御部28は、直動トルクが直動トルク閾値を超えたときを契機としてブッシュ14の前進を停止させる。ブッシュ14の前進が停止されると、制御処理は終了する。
【0037】
このように、スクリュー12の外周突起50には、外周突起斜面50Sおよび第2の外周突起斜面50SSが形成されており、外周突起50の後端には平面がない。一方、ブッシュ14の内周突起60には、内周突起斜面60Sおよび第2の内周突起斜面60SSが形成されており、内周突起60の前端には平面がない。これにより、ブッシュ14を回転させることなく、スクリュー12に対するブッシュ14の前進動作でスプライン嵌合することができ、この結果、スプライン嵌合の作業効率を高めることができる。
【0038】
また、射出装置10では、上記の(1)式の関係が成立する。これにより、スクリュー12が収容されるシリンダ20およびブッシュ14が固定されるブッシュ締結部16を考慮しながら、ブッシュ14を回転させることなく、スクリュー12に対するブッシュ14の前進動作でスプライン嵌合することができる。
【0039】
また、射出装置10は、直動モータ24を制御するモータ制御部28を備える。モータ制御部28は、スクリュー12に対して離間する位置からブッシュ14を前進させ、直動トルクが直動トルク閾値を超えた場合にブッシュ14を停止させる。これにより、スプライン嵌合を自動化することができ、この結果、作業者の熟練度による、スプライン嵌合に要する時間のバラツキを小さくすることができる。
【0040】
[変形例]
上記の実施形態は、以下のように変形してもよい。
【0041】
(変形例1)
図5は、変形例1のスクリュー12およびブッシュ14を示す図である。
図5では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は割愛する。
【0042】
本変形例では、外周突起50の外周突起斜面50Sが、スクリュー12の周方向の両側面50F1、50F2の各々に形成される。また、内周突起60の内周突起斜面60Sが、貫通孔14Hの周方向の両側面60F1、60F2の各々に形成される。このように形成しても、実施形態と同様に、ブッシュ14を回転させることなく、スクリュー12に対するブッシュ14の前進動作でスプライン嵌合することができる。
【0043】
(変形例2)
第2の外周突起斜面50SSは、変形例1のように、外周突起50に加えて、外周突起50と外周突起50との間に形成されてもよい。これにより、スクリュー12の回転中心線LN1に対して、ブッシュ14の貫通孔14Hの中心線LN2がスクリュー12の径方向にずれても、スクリュー12に向けてブッシュ14を前進させてスプライン嵌合することができる。
【0044】
(変形例3)
外周突起50の後端は、スクリュー12の後端面と同一面上に位置していてもよく、スクリュー12の後端面よりも前方に位置していてもよい。つまり、実施形態における外周突起50の後端が、スクリュー12の後端面よりも前方に位置していてもよい。また、変形例1における外周突起50の後端が、スクリュー12の後端面と同一面上に位置していてもよい。
【0045】
内周突起60の前端は、ブッシュ14の前端面と同一面上に位置していてもよく、ブッシュ14の前端面よりも後方に位置していてもよい。つまり、実施形態における内周突起60の前端が、ブッシュ14の前端面よりも後方に位置していてもよい。また、変形例1における内周突起60の前端が、ブッシュ14の前端面と同一面上に位置していてもよい。
【0046】
(変形例4)
上記の実施形態および変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0047】
以上をまとめると以下のようになる。
【0048】
本発明は、射出用樹脂を射出する前方向と前記前方向とは逆の後方向との前後方向に沿って配置されるスクリュー(12)と、前記スクリューとスプライン嵌合可能に形成されるブッシュ(14)とを有する射出装置(10)であって、前記スクリューは、前記スクリューの後端側の外周面に形成され、前記スクリューの周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の外周突起(50)を有し、複数の前記外周突起の各々には、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの周方向に沿った外周突起幅(50W)が小さくなるように傾斜する外周突起斜面(50S)と、前記外周突起の後端に向かうほど前記スクリューの外径が縮径するように傾斜する第2の外周突起斜面(50SS)とが形成され、前記ブッシュは、前記前後方向に延びる貫通孔(14H)と、前記貫通孔の内周面に形成され、前記貫通孔の周方向に間隔をあけて前記前後方向に沿って延びる複数の内周突起(60)を有し、複数の前記内周突起の各々には、前記内周突起の前端に向かうほど前記貫通孔の周方向に沿った内周突起幅(60W)が小さくなるように傾斜する内周突起斜面(60S)と、前記内周突起の前端に向かうほど前記ブッシュの内径が拡径するように傾斜する第2の内周突起斜面(60SS)とが形成され、複数の前記外周突起の各々の後端および複数の前記内周突起の各々の前端には平面がない。
これにより、ブッシュを回転させることなく、スクリューに対するブッシュの前進動作でスプライン嵌合することができる。この結果、スプライン嵌合の作業効率を高めることができる。
【0049】
前記外周突起斜面は、複数の前記外周突起の各々の後端側における前記スクリューの周方向の両側面(50F1、50F2)の一方に形成され、前記内周突起斜面は、複数の前記内周突起の各々の前端側における前記貫通孔の周方向の両側面(60F1、60F2)の一方に形成されてもよい。
これにより、ブッシュを回転させることなく、スクリューに対するブッシュの前進動作でスプライン嵌合することができる。
【0050】
前記外周突起斜面は、複数の前記外周突起の各々の後端側における前記スクリューの周方向の両側面の各々に形成され、前記内周突起斜面は、複数の前記内周突起の各々の前端側における前記貫通孔の周方向の両側面の各々に形成されてもよい。
これにより、ブッシュを回転させることなく、スクリューに対するブッシュの前進動作でスプライン嵌合することができる。
【0051】
前記ブッシュには、前記ブッシュの後端面から突出する凸部(14A)が設けられ、射出装置は、前記凸部が収納される凹部(16A)を有し、前記凹部に前記凸部が収容される前記ブッシュを固定するブッシュ締結部(16)と、前記スクリューが収容されるシリンダ(20)と、を備え、前記第2の外周突起斜面の高さ(50H)をCs1とし、前記第2の内周突起斜面の高さ(60H)をCb1とし、前記ブッシュに嵌合される前記スクリューが前記シリンダに収容されたときの前記外周突起と前記シリンダとの間の隙間(GP1)をLs1とし、前記ブッシュ締結部に前記ブッシュが固定されたときの前記凸部の外周と前記凹部の内周との間の隙間(GP2)をLb1とした場合に、Cs1+Cb1>Ls1+Lb1の関係が成立するようにしてもよい。
これにより、スクリューが収容されるシリンダおよびブッシュが固定されるブッシュ締結部を考慮しながら、ブッシュを回転させることなく、スクリューに対するブッシュの前進動作でスプライン嵌合することができる。
【0052】
射出装置は、前記スクリューに対して、前記前後方向に前記ブッシュを進退させる直動モータ(24)と、前記直動モータの直動トルクを検出する検出部(38)と、前記スクリューに対して離間する位置から前記ブッシュを前進させ、前記直動トルクが直動トルク閾値を超えた場合に前記ブッシュを停止させるように、前記直動モータを制御するモータ制御部(28)と、を備えてもよい。
これにより、スプライン嵌合を自動化することができる。この結果、作業者の熟練度による、スプライン嵌合に要する時間のバラツキを小さくすることができる。