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特許7553613位置判定装置、ハンドヘルド可能な材料検査器具、および位置判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】位置判定装置、ハンドヘルド可能な材料検査器具、および位置判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022578755
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2021066380
(87)【国際公開番号】W WO2022002609
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】102020208101.8
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】スガーツ,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ポールマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ユンベルト,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ロェーム,トビアス
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100956(JP,A)
【文献】実開平2-105114(JP,U)
【文献】特開2020-85802(JP,A)
【文献】特開昭59-602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動部材(16)の回転運動によって検査対象の表面を走行するハンドヘルド可能な材料検査器具が走行した距離を検出する位置判定装置であって、
信号発生器部材(20)および回転軸(24)を含む信号発生器ユニット(14)と、
前記信号発生器部材(20)と誘導結合し、該誘導結合による磁場に基づく測定信号を得るセンサユニット(18)と
前記測定信号に基づいて前記距離を計算する計算ユニット(30)と、
備え
前記転動部材(16)は、前記回転軸(24)に設けられ、前記回転軸(24)を中心に回転し、
前記信号発生器部材(20)は、前記回転軸(24)において前記センサユニット(18)に対向するよう配置され、前記転動部材(16)の回転によって、前記センサユニット(18)に対して相対的に回転し、前記測定信号を変化させることを特徴とする、位置判定装置。
【請求項2】
前記信号発生器部材(20)は、
前記センサユニット(18)と対向する、前記回転軸(24)の端面に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の位置判定装置。
【請求項3】
前記回転軸(24)の前記端面の周縁には、前記センサユニット(18)の配置位置に向かう方向に延びる壁が設けられ、
前記信号発生器部材(20)は、
前記壁に囲まれるように配置されていることを特徴とする、請求項に記載の位置判定装置。
【請求項4】
前記回転軸(24)はスタブ軸であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の位置判定装置。
【請求項5】
前記転動部材(16)は、前記回転軸(24)と一体的に構成され、
前記信号発生器部材(20)は、前記回転軸の2つの端部のうちの一方に配置され、
前記2つの端部のうちの一方は、他方よりも前記転動部材(16)から遠いことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の位置判定装置。
【請求項6】
前記材料検査器具の外殻を構成するハウジング(50)の一部であるフレーム、または、該ハウジング(50)に設けられているフレームに設けられ、前記回転軸(24)を受容するすべり軸受(32)を更に備えることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の位置判定装置。
【請求項7】
前記転動部材(16)と共に、前記検査対象の表面を走行するための別の1つ以上の転動部材(28)を備え、
前記信号発生器ユニット(14)は、前記信号発生器部材(20)とは別の1つ以上の信号発生器部材(26)を含むと共に、前記回転軸(24)以外の別の1つ以上の回転軸(24)を含み、
前記別の1つ以上の転動部材(28)は、前記別の1つ以上の回転軸(24)に設けられて、前記別の1つ以上の回転軸(24)を中心に回転し、
前記センサユニット(18)は、前記信号発生器部材(20)と誘導結合して、該誘導結合による磁場に基づく前記測定信号を得るセンサ部材を含み、且つ、前記別の1つ以上の信号発生器部材(26)と誘導結合して、該誘導結合による磁場に基づく別の1つ以上の測定信号を得る別の1つ以上のセンサ部材を含み、
前記信号発生器部材(20)は、前記回転軸(24)において前記センサ部材に対向するように設けられ、前記転動部材(16)の回転によって、前記センサ部材に対して相対的に回転して前記測定信号を変化させ、
前記別の1つ以上の信号発生器部材(26)は、前記別の1つ以上の回転軸(24)において前記別の1つ以上のセンサ部材に対向するように設けられ、前記別の1つ以上の転動部材(28)の回転によって、前記別の1つ以上のセンサ部材に対して相対的に回転して前記別の1つ以上の測定信号を変化させ、
前記計算ユニット(30)は、前記測定信号と、前記別の1つ以上の測定信号とのうちの少なくとも1つに基づいて、前記距離を計算することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の位置判定装置。
【請求項8】
前記計算ユニット(30)は、
記測定信号を記別1つ以上の測定信号と比較することを特徴とする、請求項に記載の位置判定装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の位置判定装置と、前記転動部材(16とを有する、ハンドヘルド可能な材料検査器具。
【請求項10】
求項1からのいずれか1項に記載の位置判定装置による位置判定方法であって、
前記測定信号に基づいて、前記転動部材の現在の回転位置を決定する回転判定ステップ(36)
前記回転判定ステップ(36)で得られた前記回転位置に基づいて前記距離を計算する位置判定ステップ(38)
を含むことを特徴とする位置判定方法。
【請求項11】
前記回転判定ステップ(36)で前記転動部材(16)回転量が予め定められた最小値以上である場合に、前記位置判定ステップ(38)が実行されることを特徴とする、請求項10に記載の位置判定方法。
【請求項12】
請求項7または8に記載の位置判定装置による位置判定方法であって、
前記測定信号に基づいて、前記転動部材(16)の現在の回転位置を決定し、且つ、前記別の1つ以上の測定信号に基づいて、前記別の1つ以上の転動部材(28)の現在の回転位置を決定する回転判定ステップ(36)と、
前記転動部材(16)前記回転位置に基づく回転量と、前記別の1つ以上の転動部材(28)の前記回転位置に基づく回転量とのうち、最小の値破棄する比較ステップ(40)と、
前記転動部材(16)の前記回転量と、前記別の1つ以上の転動部材(28)の前記回転量とのうち、破棄されなかった値に基づき前記距離を計算する、位置判定ステップ(38)と、
を含むことを特徴とする位置判定方法。
【請求項13】
前記材料検査器具は、前記転動部材(16)の回転位置を示す情報を記憶するための記憶ユニット(46)を有し、
位置判定方法は、
前記記憶ユニット(46)に記憶されている前記回転位置を示す情報を、前記回転判定ステップ(36)毎に新たに得られた、前記転動部材(16)の前記現在の回転位置を示す情報に更新する更新ステップ(42)を更に含み、
前記回転判定ステップ(36)において、該回転判定ステップ(36)で得られた前記転動部材(16)の前記現在の回転位置と、前記記憶ユニット(46)に記憶されている前記情報が示す回転位置と、に基づいて前記転動部材(16)の回転量を計算し、
前記位置判定ステップで、前記回転判定ステップで得られた前記回転量に基づき前記距離を計算することを特徴とする、請求項10から1のいずれか1項に記載の位置判定方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ハンドヘルド可能な材料検査器具のための位置判定装置がすでに提案されており、該位置判定装置は、材料検査器具が進んだ距離を検出するためにセットアップされ、材料検査器具の転動部材に配置するための少なくとも1つの信号発生器ユニットと、少なくとも1つのセンサユニットとを含み、信号発生器ユニットは、転動部材の回転位置に依存して測定信号を変化させるための少なくとも1つの信号発生器部材を含み、センサユニットは、材料検査器具の走行フレームに配置するために、および測定信号を検出するために意図される。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、ハンドヘルド可能な材料検査器具のための位置判定装置を前提としており、該位置判定装置は、材料検査器具が進んだ距離を検出するためにセットアップされ、材料検査器具の転動部材に配置するための少なくとも1つの信号発生器ユニットと、少なくとも1つのセンサユニットとを含み、信号発生器ユニットは、転動部材の回転位置に依存して測定信号を変化させるための少なくとも1つの信号発生器部材を含み、センサユニットは、材料検査器具の走行フレームに配置するために、および測定信号を検出するために意図される。
【0003】
信号発生器部材が誘導式の信号発生器部材として構成され、センサユニットは、相互の誘導結合のためにセットアップされた誘導式のセンサユニットとして構成されることが提案される。材料検査器具は、測定信号として電磁波を特にマイクロ波領域および/または電波領域で発信および受信するために意図される位置特定センサユニット、特にアンテナユニットを含むのが好ましい。特に位置特定センサユニットは、発信された測定信号の後方散乱された、特に反射された割合を受信するために意図される。材料検査器具は、特に、測定のために特に利用者によって検査対象の表面に配置されるために、および任意選択として、特に表面と材料検査器具との接触を維持しながら、表面に対して相対的に変位させるために意図される。材料検査器具は少なくとも1つの転動部材、特にホイール、ローラ、ボールなどを、表面への材料検査器具の配置のために、および/または表面に対して相対的な材料検査器具の運動のために、含むのが好ましい。材料検査器具は、少なくとも1つの別の転動部材を含むのが特別に好ましい。材料検査器具は複数の、特に3つよりも多い、転動部材を含むのが好ましい。特に転動部材は材料検査器具での測定中に、走行フレームから、特に位置特定センサユニットから、表面までの特に一定の最小間隔を規定するために意図される。材料検査器具は、位置特定センサユニットが内部または表面に配置されるハウジングを含むのが好ましい。走行フレームは、ハウジングの一部として構成されるのが好ましい。その代替として走行フレームがハウジングとは別個に構成され、走行フレームはハウジングの表面および/または内部に組み付けるために構成される。特に、転動部材は走行フレームで回転可能に支承される。位置判定装置は、転動部材と回転不能に転動部材に配置されるために意図される少なくとも1つの物理的な回転軸を含むのが好ましい。特にこの回転軸は、走行フレームに配置された状態のときに仮想的な回転中心軸を設定し、これを中心として転動部材が回転することができる。回転中心軸は、走行フレームに支承された状態にあるとき、ハウジングの長軸に対して少なくとも実質的に平行であるのが好ましい。その代替として回転中心軸は、走行フレームに支承された状態にあるとき、長軸に対して少なくとも実質的に垂直に配置され、もしくはそのようにアライメント可能である。回転軸は、特に力伝達および/またはトルク伝達のために意図されるのでないベアリング軸として構成されていてよく、および/またはシャフトとして構成されていてよい。
【0004】
「意図される」とは、特に、特別にセットアップされ、特別にプログラミングされ、特別に設計され、および/または特別に装備されることと理解されるものとする。ある物体が特定の機能のために意図されるとは、特に、その物体がその特定の機能を少なくとも1つの使用状態および/または動作状態のときに遂行および/または実行することと理解されるものとする。「実質的に平行に」とは、ここでは特に、特に1つの平面での、基準方向に対して相対的な方向の特にアライメントと理解されるものとし、基準方向に対する方向は、特に8°よりも小さい、好ましくは5°よりも小さい、特別に好ましくは2°よりも小さい誤差を有する。「実質的に垂直に」という表現は、ここでは特に基準方向に対して相対的な方向のアライメントを定義するものとし、この方向と基準方向とは、特に投影平面で見たときに90°の角度を形成し、この角度は、特に8°よりも小さい、好ましくは5°よりも小さい、特別に好ましくは2°よりも小さい最大の誤差を有する。
【0005】
信号発生器ユニットとセンサユニットは、特に、検査対象の表面上での転動部材のうちの少なくとも1つの、特別に好ましくは転動部材のうちの少なくとも2つの、転動の検出によって、材料検査器具の位置検出をするためのオドメーターを共同で構成する。信号発生器ユニットとセンサユニットは、特に間隔をおいて、特に互いに相対的に可動に、特に回転可能に、配置される。特に、信号発生器ユニットとセンサユニットは、共に、転動部材の回転位置に依存する測定信号を生成するために意図される。信号発生器ユニットは磁場を生成するために意図されるのが特別に好ましく、センサユニットは、この磁場を測定信号として検出するために意図される。その代替としてセンサユニットは、磁場を生成して、信号発生器ユニットによるこの磁場の磁場変化を、特に吸収を、測定信号として検出するために意図される。信号発生器部材は、特に測定信号を発信するために、永久磁石として構成されるのが好ましい。その代替として信号発生器部材は、特に測定信号を発信するために、信号発生器ユニットの電池、スーパーコンデンサなどによって作動する電磁石として構成される。その代替として信号発生器部材は、特に、特に共振振動回路を有するセンサユニットの特に交番磁界を共振吸収するためにセットアップされた導体ループとして構成される。
【0006】
信号発生器ユニットは、転動部材と回転不能に結合されるのが好ましい。特に、信号発生器部材は回転軸に配置される。信号発生器部材はダイポールマグネットまたはマルチポールマグネットとして構成されていてよい。特に、信号発生器部材は少なくとも1つの仮想的な磁軸を含み、その上に信号発生器部材の磁気的なN極と磁気的なS極が配置される。特に磁軸は、転動部材の回転中心軸に対して少なくとも実質的に垂直に配置される。センサユニットは、特に少なくとも1つの磁場計測器を含む。磁場計測器は、たとえば特に電流計測器および/または電圧計測器を有する、電磁コイル、ホールプローブ、磁気抵抗素子などとして構成される。
【0007】
本発明に基づく実施形態により、センサユニットと信号発生器ユニットを光学的視線の必要性なしに相互に配置することができるという利点がある。特に、位置判定装置が汚れおよび/または周囲の明るさに対して非感受性になるという利点がある。
【0008】
さらに、信号発生器ユニットは特にすでに挙げた転動部材の回転運動を設定する回転軸を含み、その中に信号発生器部材が回転軸の径方向に最大で実質的に同一平面上で組み込まれることが提案される。「回転軸の径方向に」とは、特に、回転中心軸に対して垂直の平面で回転中心軸から突き出す方向と理解されるものとする。信号発生器ユニットの信号発生器平面は回転中心軸に対して垂直であり、信号発生器部材と交差するのが好ましい。回転軸は、信号発生器部材を収容するための少なくとも1つの信号発生器収容部を含むのが好ましい。信号発生器収容部の壁部が、信号発生器平面で信号発生器部材を特に全面的に取り囲むのが好ましい。その代替として信号発生器部材は径方向で回転軸の外壁に収納され、および/または回転軸に被さる。「実質的に同一平面で」とは、特に、15%よりも低い、好ましくは5%よりも低い、特別に好ましくは1%よりも低い許容値まで同一平面であることと理解されるものとする。この許容値は、特に、信号発生器平面における回転軸または信号発生器部材の最大の延在に対して相対的な、回転軸を越えて径方向に突き出している信号発生器部材の部分の比率である。「最大で実質的に同一平面上で」とは、特に、信号発生器部材が回転軸の外壁と実質的に同一平面上に配置されるか、または、回転軸の外壁に対して相対的に回転中心軸の方向にオフセットされて配置され、特に回転軸の内部に配置されることと理解されるものとする。特に、信号発生器平面で回転軸と信号発生器部材を全面的に包囲する仮想的な最小円は、同一の平面で回転軸だけを全面的に包囲する仮想的な最小円より、多くとも許容値の分だけ大きい直径を有する。この実施形態により、信号発生器部材を保護しながら回転軸に配置することができるという利点がある。特に、回転軸を収容するための走行フレームの軸受収容部が小さくてすむという利点がある。特に信号発生器ユニットの組立のために、特にハウジングが閉じている場合であっても、回転軸を信号発生器部材とともに走行フレームの外から走行フレームの軸受収容部を通して挿通することができる。
【0009】
さらに、信号発生器ユニットは、特にすでに挙げた転動部材の回転運動を設定する回転軸を含み、該回転軸に信号発生器部材が配置され、該回転軸がスタブ軸として構成されることが提案される。特に、回転軸は回転中心軸に沿って、少なくとも転動部材を配置するための、および任意選択として複数の追加転動部材を配置するための、転動区域をたとえば二重ローラなどとして含む。特に、回転軸は回転中心軸に沿って、走行フレームで回転軸を支承するための軸受区域を有する。回転軸は回転中心軸に沿って、走行フレームの中に、特にハウジングの中に突入するために意図される、特に組立時にそこへ差し込まれるために意図される、端部区域を含むのが好ましい。センサユニットは、端部区域から間隔をおいて回転中心軸の上に配置されるのが好ましい。その代替として、センサユニットは信号発生器平面に配置され、任意選択として、回転軸を信号発生器平面で取り囲む。特に転動部材は、別の転動部材から独立した回転運動をするためにセットアップされる。特に、同一の回転軸と回転不能に結合されているすべての転動部材が同一の転動区域に、特に走行フレームの同一の側に、配置される。特に、各々の回転軸にちょうど1つの転動部材が配置される。特に、それぞれの回転軸は相互に間隔をおいて配置され、特に互いに結合されない。この実施形態により、回転軸の端部区域を信号発生器部材の配置のために利用できるという利点がある。特に、走行フレームへの回転軸と信号発生器部材の組付を簡易に行うことができるという利点がある。特に、走行フレームの第2の軸受収容部への回転軸の挿入を省略することができる。さらに、起伏のある土台の上でも材料検査器具を好ましく高い信頼度で稼動させることができるという利点がある。
【0010】
さらに、信号発生器ユニットは、転動部材と一体的に構成された、特にすでに挙げた転動部材の回転運動を設定する回転軸を含むことが提案され、信号発生器部材は、転動部材と反対を向くほうの回転軸の端部に配置される。「一体的に」とは、特に、たとえば溶接プロセスおよび/または接着プロセスなどによって物質接合式に結合されることと理解されるものとし、特別に好ましくは、鋳造で製作されることによって、および/または一成分射出成形法もしくは多成分射出成形法で製作されることによって、一体成形されることと理解されるものとする。特に転動部材は、回転軸と物質接合式に結合される少なくとも1つの支持部材を含む。支持部材は、転動部材の回転平面で円形の断面形状を有する。支持部材は熱硬化性プラスチックおよび/または熱可塑性プラスチックで製作されるのが好ましい。任意選択として転動部材は、転動部材の回転平面で支持部材を全面的に、特に環状に、取り囲む軟質成分を含む。特に、軟質成分はエラストマーで形成される。転動部材の最大の延在、特に外径に対する、転動部材の回転平面における支持部材の最大の延在、特に外径の比率は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、特別に好ましくは少なくとも75%である。特に転動部材は、回転軸の転動区域で回転軸と物質接合式に結合される。信号発生器部材は端部区域に配置されるのが好ましい。特に、端部区域は信号発生器収容部を有する。信号発生器収容部は、特に回転中心軸に対して少なくとも実質的に垂直に配置される回転軸の端面に配置され、特に収納されるのが好ましい。回転軸の端部区域と転動区域との間に、回転軸の軸受区域が配置されるのが好ましい。信号発生器部材は回転軸の端部区域とともに、特に、走行フレームおよび/またはハウジングの内部に配置されるために意図される。転動部材は回転軸の転動区域とともに、特に、走行フレームおよび/またはハウジングの外部に配置されるために意図される。この実施形態により、信号発生器ユニットと転動部材の組立と解体、特に交換を簡易に具体化できるという利点がある。
【0011】
さらに、信号発生器ユニットは、転動部材とは別個の、材料検査器具の別の転動部材に配置するために意図される、少なくとも1つの誘導式の別の信号発生器部材を含むことが提案される。別の信号発生器部材は、信号発生器部材に準じて構成されるのが好ましい。別の信号発生器部材は、信号発生器部材に準ずる、別の信号発生器部材の回転軸に準ずる、別の回転軸に配置されるのが好ましい。回転軸と別の回転軸は、特に、互いに相対的に可動なように走行フレームに支承され、特に、転動部材と別の転動部材にそれぞれ独立した回転運動をさせる能力がある。センサユニットは、信号発生器部材に付属する少なくとも1つのセンサ部材と、別の信号発生器部材に付属する別のセンサ部材とを有するのが好ましい。センサ部材は、特に、それぞれ次の信号発生器部材との誘導結合のためにそれぞれ配置される。任意選択としてセンサユニットは、別のセンサ部材と信号発生器部材との誘導結合を、ならびにセンサ部材と別の信号発生器部材との誘導結合を、減衰または回避するために意図される少なくとも1つの遮蔽部材を有する。その代替としてセンサユニットは、信号発生器部材および別の信号発生器部材に付属する1つのセンサ部材を有し、位置判定装置の計算ユニットは共通の測定信号を分析するために意図され、特に、共通の測定信号のそれぞれ1つの信号割合を転動部材と別の転動部材とに割り当てるために意図される。この実施形態により、材料検査器具の位置判定のために冗長的な測定信号を検出することができるという利点がある。特に、材料検査器具の位置の好ましく信頼度の高い、および/または好ましく正確な、判定を実現できる。
【0012】
これに加えて、位置判定装置は特にすでに挙げた少なくとも1つの計算ユニットを、信号発生器部材からの測定信号と別の信号発生器部材からの別の測定信号との比較のために含むことが提案される。「計算ユニット」とは、特に、情報入力部と、情報処理部と、情報出力部とを有するユニットと理解されるものとする。計算ユニットは、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ、入力手段と出力手段、その他の電気コンポーネント、動作プログラム、コントロールルーチン、制御ルーチン、および/または計算ルーチンを有するのが好ましい。計算ユニットの各コンポーネントは共通の配線板の上に配置されるのが好ましく、および/または共通のハウジングの中に配置されるのが好ましい。その代替または追加として計算ユニットは、測定信号の比較のためにアナログ式のコンパレータ回路を含む。たとえば測定信号の振幅は、信号発生器部材の回転位置に依存する。特に測定信号は、転動部材が均一に動いているときには正弦波形である。特に計算ユニットは、測定信号から回転位置を、特に直近の既知の回転位置に対する角度差を、判定するために意図される。特に計算ユニットは、直近の既知の回転位置に対してさらに大きい、またはさらに小さい、角度差を有している測定信号のそれを識別するために意図される。計算ユニットは、特に、転動部材により転動されたさらに大きい区間に相当する測定信号のそれを識別するために、および/または転動部材により転動されたさらに小さい区間に相当する測定信号のそれを識別するために、意図される。この実施形態により、転動部材のうちの1つの異なる挙動を好ましく検出できるという利点がある、たとえば、検査対象の表面上での転動部材の摺動を、および/または表面と転動部材のうちの1つとの接触喪失を、認識することができるという利点がある。
【0013】
さらに、位置判定装置は、走行フレームで信号発生器ユニットを可逆的に支承するための少なくとも1つのすべり軸受を含むことが提案される。特にすべり軸受は回転軸を、特に回転軸の軸受区域を、受容するために意図され、すべり軸受は、回転軸に配置された状態にあるとき、回転軸に対して相対的に回転可能である。すべり軸受は、特に、走行フレームへの回転不能な配置のために意図される。すべり軸受は、すべり軸受が走行フレームに組み付けられた状態にあるときにすべり軸受の回転軸受収容領域に突入する少なくとも1つのすべり部材を含む。特に、すべり部材は回転軸との直接的な接触のために意図される。すべり部材は、回転軸受収容領域を区切る、すべり軸受の壁部の一部として構成されるのが特別に好ましく、すべり部材は他の壁部に対して相対的に可動に、特に旋回可能に、構成される。すべり部材は、走行フレームの軸受収容部に対する締り嵌めを有するのが好ましく、それにより、すべり部材が走行フレームに配置されたときに回転軸受収容領域に押し込まれる。特にすべり部材は、回転軸の回転運動を摩擦によって緩衝するために意図され、特に、検査対象の表面と転動部材との接触喪失が生じたときの回転軸のオーバートラベルを摩擦によって制動するために意図される。「可逆的な支承」とは、特に、少なくとも実質的に損傷および/または可塑変形なく組付け可能であり、かつ少なくとも実質的に損傷および/または可塑変形なく取外し可能である支承と理解されるものとする。「実質的に損傷なく取外し可能に結合される」とは、ここでの関連においては特に、2つのコンポーネント間での摩耗を除いての、特に材料摩減を除いての、取外し可能な結合と理解されるものとする。特にすべり軸受は、特にその機能性を維持したうえで、かつ特にすべり軸受の材料破壊が生じる前に、少なくとも3回、好ましくは少なくとも10回、特別に好ましくは少なくとも50回、回転軸および/または走行フレームに組付け可能かつこれから取外し可能である。すべり軸受はハウジングの外面から、特にハウジングが閉じている場合にも、走行フレームに組付け可能かつこれから取外し可能であるのが好ましい。すべり軸受は、回転軸の先細部の中に係止するための少なくとも1つのアキシャル係止部材、特に係止舌部を含むのが好ましい。すべり軸受を係止するための先細部は、回転中心軸に対して垂直な平面で、軸受区域と信号発生器収容部との間に配置される。すべり軸受は回転式ロック、特にバヨネット式ロックを含むのが好ましく、これによって走行フレームの外面に固定可能である。すべり軸受は個別部品として構成されるのが特別に好ましい。すべり軸受は、単一のブランク、素材、および/または鋳造物から製作されるのが好ましく、特別に好ましくは射出成形法で、特に一成分射出成形法および/または多成分射出成形法で製作される。すべり軸受はプラスチックから、特に複合材料から、特別に好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとして、製作されるのが好ましい。この実施形態により、特にハウジングを開くことなく、信号発生器ユニットを走行フレームへ簡易に組み付け、これから取り外すことができるという利点がある。さらに、軸受ブッシュでの回転軸のすべり摩擦を調整することができるという利点がある。特に、回転軸と転動部材の回転運動の減衰を、好ましく狭い許容範囲内で実現することができる。特に、検査対象の表面と転動部材の接触が失われたときの回転軸と転動部材の自由回転を、迅速に終わらせることができるという利点がある。さらに、検査対象の表面上で転動部材が摺動するリスクを低く抑えることができるという利点がある。特に、それによって位置検出装置の誤差範囲を小さく抑えることができるという利点がある。
【0014】
さらに、少なくとも1つの走行フレームと、走行フレームに支承された少なくとも1つの転動部材とを有する、本発明による少なくとも1つの位置判定装置を有するハンドヘルド可能な材料検査器具が提案される。材料検査器具は、特にマイクロ波領域および/または電波領域の電磁波を発信するための少なくとも1つの送信部材と、特にマイクロ波領域および/または電波領域の電磁波を受信するための少なくとも1つの受信部材とを有する位置特定センサユニット、特にアンテナユニットを含むのが好ましい。任意選択として、送信部材と受信部材は同一のコンポーネントによって、特に同一のアンテナ部材によって、構成される。位置特性センサユニットは、たとえば信号発生器、増幅器、アナログ式および/またはデジタル式の信号フィルタなどを有する送受信エレクトロニクスを含むのが好ましい。材料検査器具は、位置特定センサユニットを収容する、および/または位置特定センサユニットが配置される、ハウジングを含むのが好ましい。「ハンドヘルド可能」とは、特に、保持装置および/または搬送装置を利用することなく手作業で保持可能および/または搬送可能であることと理解されるものとする。特に、材料検査器具は20kgよりも低い、好ましくは10kgよりも低い、特別に好ましくは5kgよりも低い質量を有する。任意選択として材料検査器具は、ハウジングから突き出すグリップ、ハウジングに収納されるグリップ窪み、および/またはハウジングに配置されるグリップ面を、利用者による材料検査器具の取り扱いのために有する。走行フレームは、ハウジングの一部として構成されるのが好ましい。材料検査器具は、走行フレームに支承される少なくとも1つの転動部材、好ましくは少なくとも2つの転動部材、特に4つの転動部材を含むのが好ましい。材料検査器具は、ハウジングに、特に転動部材と反対を向くほうのハウジングの側に配置される、特にその中に収納される、表示ユニット、特にディスプレイ、および/または少なくとも1つのコントロールランプを含むのが好ましい。特に表示ユニットは、位置特定センサユニットにより実行された測定の結果を出力するために意図される。材料検査器具は記憶ユニットを含むのが好ましい。記憶ユニットは、たとえばリードオンリーメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ(Flash-EEPROM)などの書き換え可能なメモリとして構成されるのが好ましい。その代替または追加として材料検査器具は、外部の器具との、特に位置特定センサユニットにより実行された測定の外部での評価および/または前処理のための、有線式の通信のためのインターフェース、たとえばUSB端子、Lightning端子、R-232端子、イーサネット端子、および/または無線式の、特に電波式の通信のためのインターフェース、たとえばWi-Fiモジュール、ブルートゥース(登 録商標)モジュール、ZigBeeモジュールなど含む。材料検査器具は、少なくとも1つの操作部材、特に複数の操作部材、たとえばボタン、スイッチ、スライドキー、回転つまみなどを利用者入力のために含む。その代替または追加として、表示ユニットのディスプレイがタッチスクリーンとして構成される。特に材料検査器具は、位置特定センサユニットおよび/または位置検出装置の測定を評価するための計算ユニットを含む。計算ユニット、記憶ユニット、インターフェース、センサユニット、および/または信号発生器部材はハウジングの内部に配置されるのが好ましい。本発明に基づく実施形態により、汚れおよび/または周囲の明るさに対して非感受的に位置を判定できるという利点がある材料検査器具を提供することができる。
【0015】
さらに本発明は、特に本発明によるハンドヘルド可能な材料検査器具のための、特に本発明による位置判定装置を作動させる方法を前提とし、少なくとも1つの方法ステップで、材料検査器具の信号発生器部材の測定信号が材料検査器具の転動部材の回転位置に依存して変化させられ、少なくとも1つの回転判定ステップで、材料検査器具のセンサユニットにより測定信号が検出され、少なくとも1つの位置判定ステップで、材料検査器具が進んだ距離が判定される。
【0016】
信号発生器部材とセンサユニットが少なくとも1つの方法ステップで誘導式に結合し、測定信号を生成することが提案される。特に、材料検査器具が動いたときに転動部材が検査器具の表面に沿って表面の上で転動し、回転中心軸を中心として回転軸を回転させる。回転軸を介して、信号発生器部材が転動部材の転動時に回転するのが好ましい。信号発生器部材が特に磁場を発信し、その方向は回転中心軸を中心とする信号発生器部材の現在の回転位置に依存する。センサユニットが特に信号発生器部材の磁場を検出し、信号発生器部材の回転位置に依存する測定信号を生成する。計算ユニットが、回転判定ステップで測定信号を参照して転動部材の現在の回転位置を決定する。計算ユニットが現在の回転位置および/または測定信号の現在の値をそのメモリに、および/または記憶ユニットに保存するのが好ましい。計算ユニットが現在の回転位置を直近に保存された転動部材の回転位置と比較して、直近の測定以後に転動部材が進んだ角度差を判定するのが好ましい。計算ユニットに転動部材の寸法が、特に半径、外径、および/または転動円周が、保存されるのが好ましい。計算ユニットが位置判定ステップで、転動部材の寸法および角度差に依存して、転動部材が転動した区間を、特に材料検査器具が進んだ区間として判定する。この実施形態により、材料検査器具のための好ましい高い信頼度の位置判定を実現できる。特に、位置判定装置が汚れおよび/または周囲の明るさに対して非感受性になるという利点がある。
【0017】
さらに、回転判定ステップで転動部材の最低回転運動が判定されたときに、位置判定ステップが惹起されることが提案される。特に位置判定ステップは、回転判定ステップで転動部材の最低回転運動が判定されたときにのみ惹起される。最低回転運動は、特に、現在の回転位置と直近に保存された回転位置との間の最小の角度差である。最低回転運動の値が計算ユニットに閾値として保存されるのが好ましい。最低回転運動の値は、特に工場側で、すべり部材の設計に依存して決定される。任意選択として、最低回転運動の値を利用者により、材料検査器具の操作部材のうちの1つを用いて調整可能である。最低回転運動の値は、すべり部材と回転軸との間の摩擦係数が低いほど高くなるのが好ましい。最低回転運動の値は、すべり部材と回転軸との間の摩擦係数が高いほど低くなるのが好ましい。この実施形態により、材料検査器具の位置の誤決定のリスクを低く抑えることができるという利点がある。特に、検査対象の表面との接触を転動部材が失った後に、特にすべり軸受によって制限される、転動部材のオーバートラベルに相当する角度差の割合を低く抑えることができるという利点がある。
【0018】
さらに本方法は、材料検査器具のそれぞれ異なる転動部材の判定された複数の回転運動のうちの最小の値が破棄される比較ステップを含むことが提案される。特に、最小の値を有する回転運動は最小の角度差を有する。特に計算ユニットは位置判定ステップで、転動部材のうちの1つの最大の角度差だけを、材料検査器具が進んだ区間の判定のために評価する。その代替として、特に少なくとも3つの別個の転動部材の測定信号が存在する場合、計算ユニットは任意選択として、最小の角度差よりも大きい複数の角度差を一緒に評価して、材料検査器具が進んだ区間を判定する。複数の角度差が一緒に評価される場合、計算ユニットは、一緒に評価されるべきそれぞれの角度差の平均値を判定し、平均値を評価して、材料検査器具が進んだ区間を判定するのが好ましい。この実施形態により、材料検査器具の位置の誤決定のリスクを低く抑えることができるという利点がある。特に、転動部材のうちの1つの摺動に基づく、および/または転動部材のうちの1つの表面から間隔をおいた配置に基づく、位置判定の誤差を小さく抑えることができるという利点がある。
【0019】
これに加えて本方法は、材料検査器具の転動部材の現在の回転位置が次回の回転判定ステップのために角度標準として保存される、回転判定ステップに後続する更新ステップを含むことが提案される。計算ユニットは、現在検出されている回転位置をそのメモリまたは記憶ユニットに保存するのが好ましい。計算ユニットは、現在の回転位置を転動部材の1回転ごとに何度も保存するのが好ましい。最低回転運動の値の超過が更新ステップを惹起するのが好ましい。その代替または追加として、計算ユニットのタイマーが更新ステップを規則的な間隔で惹起する。計算ユニットは、測定の開始時に、および/または転動部材の運動により惹起されて、現在の回転位置をゼロ標準として保存するのが好ましく、特に、後続する回転位置がゼロ標準に対して相対的に判定される。この実施形態により、転動部材が進んだ角度差を高い信頼度で検出できるという利点がある。特に、絶対的なアライメント標準との比較に基づく誤差を回避することができる。
【0020】
ハンドヘルド可能な材料検査器具のための本発明による位置判定装置、位置判定装置を作動させる本発明による方法、および位置判定装置を有する本発明による材料検査器具は、上に説明した用途や実施形態だけに限定されるものではない。特に、ハンドヘルド可能な材料検査器具のための本発明による位置判定装置、位置判定装置を作動させる本発明による方法、および位置判定装置を有する本発明による材料検査器具は、ここに記載されている機能形態を履行するために、ここに挙げている個数の個々の部材、コンポーネント、およびユニット、ならびに方法ステップとは異なる個数を有することができる。さらに、ここでの開示で記載されている値範囲では、挙げられている限度の内部にある値も開示されているものとみなされ、任意に適用可能であるとみなされるべきである。
【0021】
その他の利点は以下の図面説明から明らかとなる。図面には本発明の実施例が示されている。図面、発明の詳細な説明、および特許請求は、数多くの構成要件を組み合わせの形で含んでいる。当業者は、これらの構成要件を目的に即して単独でも着目し、有意義な別の組合せにまとめるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による材料検査器具を示す模式図である。
図2】本発明による位置判定装置を示す模式図である。
図3】本発明による材料検査器具の走行フレームと、すべり軸受と、転動部材とを含む模式的な分解図である。
図4】本発明による方法を示す模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、ハンドヘルド可能な材料検査器具12を示している。材料検査器具12は、特に検査対象の、特に壁、地面、天井などの、異質物体および/または包含物、特に水分の位置特定のために構成される。材料検査器具12は、たとえば位置特定器具および/または湿度計として構成されていてよい。材料検査器具12はハウジング50を含んでいる。材料検査器具12は、電磁波を、特にマイクロ波および/または電波を、発信および受信するための位置特定センサユニット44を含んでいる。位置特定センサユニット44は、ハウジング50の中および/またはハウジング50の載置面の表面に配置される。ハウジング50の載置面は、特に、材料検査器具12での測定時に検査対象の表面のほうに向けてアライメントするために意図される。材料検査器具12は、検査対象の表面に沿って材料検査器具12を手動で案内するために、特にハウジング50から突き出すグリップ58を含むのが好ましい。その代替として材料検査器具12は、ハウジング50に配置されるグリップ窪みまたはグリップ面を含む。材料検査器具12は、少なくとも1つの転動部材16を含んでいる。材料検査器具12は、転動部材16と別個に構成される、特に転動部材16から間隔をおいて走行フレーム22に支承される、少なくとも1つの別の転動部材28を含んでいる。材料検査器具12は複数の、特に3つまたは4つの、転動部材を含むのが好ましい。転動部材16は独立した、特に別の転動部材28に依存しない、回転運動をするために支承されるのが好ましい。転動部材16,28は、材料検査器具12の走行フレーム22(図2参照)に支承される。特に転動部材16,28は表面と直接的に接触するために意図され、および、ハウジング50の載置面を、特に位置特定センサユニット44を、検査対象の表面から離間して配置するために意図される。特に、走行フレーム22はハウジング50の載置面に配置される。走行フレーム22は、ハウジング50の一部として構成されるのが好ましい。その代替としてハウジング50が、たとえば骨組みまたは底面板として構成される走行フレーム22に取り付けられ、特に係止および/またはねじ止めされる。走行フレーム22は特にハウジング50に収納されていてよく、または、ハウジング50が走行フレーム22の上に装着されていてよい。材料検査器具12は長軸52を有するのが好ましい。特に、転動部材16,28のうちの少なくとも一方の回転平面が、長軸52に対して少なくとも実質的に垂直に延びる。その代替として、転動部材16,28のうちの少なくとも一方の回転平面は、長軸52に対して少なくとも実質的に平行に配置され、もしくは追加的にそのようにアライメント可能である。材料検査器具12は位置判定装置10を含んでいる。位置判定装置10は、材料検査器具12が進んだ距離を検出するためにセットアップされる。位置判定装置10は、材料検査器具12の転動部材16に配置するための少なくとも1つの信号発生器ユニット14を含む。位置判定装置10は、少なくとも1つのセンサユニット18を含む。信号発生器ユニット14は、少なくとも1つの信号発生器部材20を含む。信号発生器部材20は、転動部材16の回転位置に依存して測定信号を変化させるために構成される。センサユニット18は、材料検査器具12の走行フレーム22に配置されるために意図される。センサユニット18は、測定信号を検出するためにセットアップされる。信号発生器部材20は誘導式の信号発生器部材として、特に永久磁石として、構成される。センサユニット18は誘導式のセンサユニットとして、特に磁場計測器として、構成される。センサユニット18と信号発生器部材20は、相互の誘導結合のためにセットアップされる。信号発生器ユニット14は、転動部材16の仮想的な回転中心軸53を設定する、特に物理的な回転軸24を含む。信号発生器部材20は回転軸24に配置される。信号発生器部材20は回転軸24の径方向に、最大で実質的に同一平面上で回転軸24に組み込まれる。信号発生器ユニット14は、転動部材16とは別個の、材料検査器具12の別の転動部材28に配置されるために配置された、少なくとも1つの誘導式の別の信号発生器部材26を有している。
【0024】
位置判定装置10は計算ユニット30を含んでいる。計算ユニット30は、位置特定センサユニット44および/または位置判定装置10により判定された測定データを評価するためにセットアップされるのが好ましい。計算ユニット30は、信号発生器部材20の測定信号を、別の信号発生器部材26の別の測定信号と比較するためにセットアップされる。材料検査器具12は、任意選択として、位置特定センサユニット44および/または位置判定装置10により判定された測定データを保存するための記憶ユニット46を含む。材料検査器具12は、位置特定センサユニット44および/または位置判定装置10の測定データを表示するための表示ユニット54、特にディスプレイを含む。表示ユニット54は、載置面と反対を向くほうのハウジング50の側に配置されている。材料検査器具12は少なくとも1つの操作部材56を含む。任意選択として材料検査器具12は、特に位置特定センサユニット44および/または位置判定装置10により判定された測定データを伝送するために、外部器具との間で有線式、記憶媒体結合式、および/または無線式、特に電波結合式の通信をするためのインターフェース48を含む。
【0025】
図2および3は、走行フレーム22での転動部材16の支承部を示している。特に図2は、長軸52に対して平行な、かつ特に載置面に対して垂直な切断平面で、位置判定装置10が走行フレーム22に組み付けられた状態にあるときの支承部の模式的な断面図を示している。特に図3は、支承部の斜視分解図を示している。走行フレーム22はハウジング50の底面シェルとして構成されている。特にハウジング50は、特に走行フレーム22とは別様に構成される少なくとも1つのハウジング部材60を含んでいる。特にハウジング部材60は、走行フレーム22とともに内部空間を形成し、その中に位置判定装置10が少なくとも部分的に配置される。特にセンサユニット18と信号発生器部材20が内部空間に配置される。回転軸24はスタブ軸として構成されている。特に回転軸24は転動部材端部を有していて、これに転動部材16および任意選択として追加の転動部材が配置される。回転軸24は転動部材16と一体的に構成されている。転動部材16は、可塑性の材料からなる、特に熱硬化性プラスチックまたは熱可塑性プラスチックからなる、少なくとも1つの支持部材64を有している。任意選択として転動部材16は、弾性材料からなる、特にエラストマーからなる、軟質成分62を有する。特に軟質成分62は、支持部材64を転動部材16の回転平面で取り囲む。特に、回転軸24は支持部材64と一体的に構成される。特に回転軸24は、転動部材端部と反対を向くほうの回転軸24の端部を形成する端部区域を有する。特に端部区域には転動部材がない。端部区域は信号発生器収容部76を有するのが好ましく、その中に信号発生器部材20が配置される。信号発生器収容部76は、特に回転軸24の端面にある凹部として構成され、端面は回転中心軸53に対して少なくとも実質的に垂直に配置される。
【0026】
位置判定装置10は、走行フレーム22で信号発生器ユニット14を可逆的に支承するための少なくとも1つのすべり軸受32を含んでいる。すべり軸受32は、回転軸14に沿って、信号発生器収容部76と転動部材16との間に配置されている。すべり軸受32は、特に、バヨネット状の回転式ロック70を有している(図3参照)。回転式ロック70は、回転式ロック収容部80および走行フレーム22のストッパ部材68との形状接合により、走行フレーム22に、特に走行フレーム22の管状の構造部材66に、すべり軸受32を固定するために意図される。転動部材16は、回転式ロック70の操作のために外部のアウトプット装置を、特にスクリュードライバーを、通過させるためのアウトプット通過部82を含むのが好ましい。回転軸24は先細部74を有するのが好ましく、その中にすべり軸受32のアキシャル係止部材78が軸方向での形状接合のために係合する。回転軸24は、すべり軸受32とともに走行フレーム22に組付けられた状態にあるとき、すべり軸受32と走行フレーム22に対して相対的に回転可能である。特にすべり軸受32は、回転軸24を収容するための中央スリーブ69を含む。中央スリーブ69と回転式ロック70は同心的に配置されるのが好ましい。
【0027】
図4は、ハンドヘルド可能な材料検査器具12の位置判定装置10を作動させる方法34のフローチャートを示している。方法34は測定ステップ84を含む。方法34は回転判定ステップ36を含む。方法34は更新ステップ42を含む。方法34は比較ステップ40を含む。方法34は位置判定ステップ38を含む。
【0028】
測定ステップ84で、材料検査器具12が特に利用者によって、検査対象の表面に沿って稼動される。その代替として、材料検査器具12がモータによって自動的に動く。測定ステップ84で、転動部材16,28のうちの少なくとも1つが表面の上で転動する。測定ステップで、信号発生器部材20,26のうちの少なくとも1つとセンサユニット18とが誘導結合し、測定信号を生成する。測定ステップ84で、材料検査器具12の信号発生器部材20,26のうちの少なくとも1つの測定信号が、材料検査器具12の転動部材16,28のうちの1つの回転位置に依存して変化させられる。転動部材16,28を転動させることで、回転判定ステップ36が惹起される。回転判定ステップ36で、材料検査器具12のセンサユニット18により測定信号が検出される。特に、回転判定ステップ36の回転判定段階36’で、信号発生器部材20によって変化させられた測定信号が検出される。特に、回転判定ステップ36の回転判定段階36’で、転動部材16の現在の回転位置が計算ユニット30によって判定される。特に、回転判定ステップ36の別の回転判定段階36’’で、別の信号発生器部材26によって変化させられた測定信号が検出される。特に、回転判定ステップ36の別の回転判定段階36’’で、別の転動部材28の現在の回転位置が計算ユニット30によって判定される。回転判定ステップ36に後続する更新ステップ32で、材料検査器具12の転動部材16,28の現在の回転位置が、次回の回転判定ステップ36のために角度標準として保存される。特に回転判定ステップ36で、以前に検出された、および/または記憶ユニット46に保存されている、角度標準に対して相対的な回転位置が判定される。更新ステップ42の更新段階42’で、転動部材16の現在の回転位置が記憶ユニット46に保存される。更新ステップ42の別の更新段階42’で、転動部材16の現在の回転位置が記憶ユニット46に保存される。
【0029】
比較ステップ40で、材料検査器具12のそれぞれ異なる転動部材16,28の判定された複数の回転運動のうちの最小の値が破棄される。特に、回転運動の判定された最大の値が、位置判定ステップ38を実行するために計算ユニット30によって利用される。3つの別個の転動部材の少なくとも3つの回転運動が検出される場合、計算ユニット30は最小の値よりも大きい回転運動の複数の値の平均値を利用する。位置判定ステップ38は、回転判定ステップ36で転動部材16,28のうちの少なくとも1つの最低回転運動が判定された場合に惹起され、特に、その場合にのみ惹起される。位置判定ステップ38で、材料検査器具12が進んだ距離が判定される。特に計算ユニット30は、比較ステップ40で判定された、最小ではない、特に最大の、または平均の、回転運動に依存して、進んだ距離を判定する。
【符号の説明】
【0030】
14 信号発生器ユニット14
16 転動部材
18 センサユニット
20 信号発生器部材
22 走行フレーム
24 回転軸
26 別の信号発生器部材
28 別の転動部材
30 計算ユニット
32 すべり軸受
36 回転判定ステップ
38 位置判定ステップ
40 比較ステップ
42 更新ステップ
図1
図2
図3
図4