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特許7553616溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 79/00 20060101AFI20240910BHJP
   B65H 67/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B65H79/00
B65H67/08 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000935
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2023101467
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】10 2022 000 069.5
(32)【優先日】2022-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
(72)【発明者】
【氏名】ライナルト フォス
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198698(WO,A1)
【文献】特開2004-106972(JP,A)
【文献】特開平08-268646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0161550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 79/00
B65H 67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸された糸(102)を掛けるため、特に溶融紡糸された糸(102)をテークアップ巻取り装置(100)において掛けるための糸掛け装置(10)であって、
ガイドレール(12)と、
少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を吸引するために、前記ガイドレール(12)上で可動にガイドされている吸引ユニット(14)と、を有しており、
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって異なる機能位置に配置することができ、
前記ガイドレール(12)の延在部に沿った異なる機能位置に前記吸引ユニット(14)を配置するために、前記ガイドレール(12)は、少なくとも1つのコース変向部(16)を有している、
掛け装置(10)。
【請求項2】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって糸捕捉位置に配置することができ、該糸捕捉位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、糸インジェクタおよび/または紡糸ノズルにより受け取りかつ/または吸引することができる、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項3】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって糸切断位置に配置することができ、該糸切断位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、糸切断装置(112)により分断しかつ/または切断することができる、請求項1または2記載の糸掛け装置(10)。
【請求項4】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によってドラフトユニット糸掛け位置に配置することができ、該ドラフトユニット糸掛け位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、ドラフトユニット(114)において、特に複数のゴデット(116)を有するドラフトユニット(114)において糸掛けすることができる、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項5】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって糸分配位置に配置することができ、該糸分配位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、糸分配装置(118)により糸分配方向(120)に沿って位置決めすることができ、かつ/または糸分配方向(120)において位置決めするために、糸分配装置(118)に接触させることができる、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項6】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって長手方向整列位置に配置することができ、該長手方向整列位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、長手方向整列装置により、巻取りスピンドル(104)の長手方向に整列させることができ、かつ/または長手方向整列装置において糸掛けすることができ、かつ/または長手方向整列装置内に糸通しすることができる、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項7】
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって巻取りスピンドル位置に配置することができ、該巻取りスピンドル位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、巻取りスピンドル(104)、特に巻取りスピンドル(104)に配置された巻管(106)において糸掛けすることができ、かつ/または、スピンドルタレットに支持された巻取りスピンドル(104)および/またはスピンドルタレットにより動かされる巻取りスピンドル(104)に接触させかつ/または捕捉させることができる、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項8】
前記ガイドレール(12)に沿った前記機能位置のうちの少なくともいくつかは、鉛直方向に分散するように配置されており、かつ/または少なくとも2つの前記機能位置は、前記ガイドレール(12)に沿って水平方向において互いにオフセットされるように配置されており、特に、糸切断位置および/またはドラフトユニット糸掛け位置は、少なくとも1つの別の機能位置に対して、前記ガイドレール(12)に沿って水平方向において互いにオフセットされるように配置されている、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項9】
前記吸引ユニット(14)は、前記ガイドレール(12)に対する間隔を変化させるために、特に水平方向(34)にかつ/または前記ガイドレール(12)の長手方向延在部に対して所定の角度でかつ/または前記ガイドレール(12)のコースにより規定される平面に対して所定の角度で可動に配置されている、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項10】
前記吸引ユニット(14)は、前記ガイドレール(12)に沿って可動にガイドされるガイドスライド(28)に保持されており、かつ/または前記吸引ユニット(14)は、前記ガイドスライド(28)に対して可動に配置されており、かつ/または前記ガイドスライド(28)は、好適には前記ガイドレール(12)に沿って前記ガイドスライド(28)を移動させるための駆動ユニット(30)を有しており、かつ/または前記ガイドレール(12)は、前記ガイドスライド(28)の前記駆動ユニット(30)に係合するための歯列を有しており、かつ/または前記ガイドスライド(28)は、該ガイドスライド(28)に対して前記吸引ユニット(24)を移動させるための駆動ユニット(32)、特に空圧式の駆動装置を有している、請求項1記載の糸掛け装置(10)。
【請求項11】
溶融紡糸された糸(102)を巻き取るための、特に溶融紡糸された糸(102)を複数のフィラメントから巻き取るためのテークアップ巻取り装置(100)であって、
少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を巻き取って巻管においてパッケージを形成することができる巻取りスピンドル(104)と、
請求項1記載の糸掛け装置(10)と、を有しており、
前記糸掛け装置(10)の前記吸引ユニット(14)を、前記溶融紡糸された糸(102)を前記巻取りスピンドル(104)に配置された前記巻管(106)において糸掛けするために、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動により、複数の連続した機能位置に配置することができる、テークアップ巻取り装置。
【請求項12】
少なくとも1つの糸掛け補助装置(110)、特に、前記吸引ユニット(14)により吸引された溶融紡糸された糸(102)に、ガイドおよび/または位置決めのために接触することができる少なくとも1つの糸掛けローラが設けられており、前記糸掛け補助装置(110)は、好適には、装置フレームおよび/または装置ハウジングに可動に配置されている、請求項11記載のテークアップ巻取り装置(100)。
【請求項13】
溶融紡糸された糸(102)を掛ける方法、特に溶融紡糸された糸(102)をテークアップ巻取り装置(100)において掛ける方法であって、
溶融紡糸された糸(102)を吸引ユニット(14)により吸引し、
前記吸引ユニット(14)を吸引状態でガイドレール(12)に沿って可動にガイドし、このプロセス中に方向転換を少なくとも1回実施し、
前記吸引ユニット(14)を、前記ガイドレール(12)に沿ってガイドされる移動によって複数の連続した機能位置に配置し、
吸引された少なくとも1本の溶融紡糸された糸(102)を、前記吸引ユニット(14)の所定の機能位置で、巻取りスピンドル(104)に配置された巻管(106)において掛ける
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融紡糸された糸を掛けるための、特に溶融紡糸された糸をテークアップ巻取り装置において掛けるための糸掛け装置に関する。本発明は同様に、溶融紡糸された糸を巻き取るための、特に溶融紡糸された糸を複数のフィラメントから巻き取るためのテークアップ巻取り装置にも関する。本発明はさらに、溶融紡糸された糸を掛ける方法、特に溶融紡糸された糸をテークアップ巻取り装置において掛ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成糸の製造では、溶融ポリマーが紡糸ポンプによって高圧で紡糸ノズルに供給され、複数の細いフィラメントストランドで押し出される。押出しおよび冷却後に、フィラメントストランドは、1本の糸を形成するように寄せ集められる。このようにして製造された複数の糸は、いわゆる巻取り機において平行に巻き取られ、パッケージを形成する。
【0003】
テークアップ巻取り装置とも呼ばれるこの形式の巻取り機は、巻取り用に、チャックと、チャックの周面に配置された巻管を支持して取り付けるための緊締装置を有する緊締ジャケットとを備えた、いわゆる巻取りスピンドルを有している。巻取りスピンドルには、巻き取られる糸毎に1つの巻管を配置することができる。巻取りスピンドルは片側に取り付けられていてよく、スピンドル支持体上に突出するように配置することができ、これにより、巻取りスピンドルの周面に巻き取られたパッケージを、完成時に巻取りスピンドルの自由端部から取り外すことができるようになっている。パッケージの取外しは、ドッフィングとも呼ばれる。
【0004】
しかしながら、溶融紡糸された糸を巻き取るためには、溶融紡糸された糸を最初に、このようなテークアップ巻取り装置において適切に掛けねばならない。換言すると、溶融紡糸中に押し出されたフィラメントストランドは、寄せ集められて1本の糸を形成し、引き続くプロセス順序において、複数のこのような糸が、巻取り機に巻き取られるように掛けられる。このために、溶融紡糸された糸は、特にテークアップ巻取り装置の巻取りスピンドルに配置された巻管において掛けられる。
【0005】
巻取りスピンドルに配置された巻管における、溶融紡糸された糸のこのような糸掛けは、多くの経験および適性を有したそれぞれのオペレータを必要とする。特に、複数の溶融紡糸された糸を掛ける場合には、糸の望ましくない絡みまたは引裂きが生じることがある。この場合、それぞれの糸掛けプロセスを繰り返さなければならず、これは全体的に、時間およびオペレータの多大な労力を必要とする。さらに、多くの廃棄物が結果として生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の背景に鑑みて、本発明の目的は、糸掛けのための時間およびオペレータに関する労力を削減することができると同時に、生じる可能性のあるあらゆる廃棄物を削減することができる、溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置を規定することにある。目的はさらに、このような糸掛け装置を有する、紡糸された糸を巻き取るためのテークアップ巻取り装置を規定することにもある。最後に、本発明の目的は、時間およびオペレータに関する労力を削減すると同時に廃棄物を削減して実施することができる、溶融紡糸された糸を掛ける方法の規定に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
掛け装置に関して、この目的は請求項1記載の主題によって解決されている。テークアップ巻取り装置は請求項11に規定されており、溶融紡糸された糸を糸掛けする方法は請求項13に規定されている。有利な改良は、各従属請求項の主題であり、以下に説明する。
【0008】
溶融紡糸された糸を掛けるため、特に溶融紡糸された糸をテークアップ巻取り装置において掛けるための本発明による糸掛け装置は、ガイドレールと、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を吸引するために、ガイドレール上で可動にガイドされている吸引ユニットと、を備えている。本発明により、吸引ユニットを、ここではガイドレールに沿ってガイドされる移動によって、異なる機能位置に配置することができ、ガイドレールの延在部に沿った異なる機能位置に吸引ユニットを配置するために、ガイドレールは、少なくとも1つのコース変向部を有している。
【0009】
本発明によりもたらされるガイドレールのコース変向の結果として、吸引ユニットを、溶融紡糸された各糸をテークアップ巻取り装置において糸掛けするために必要とされる異なる機能位置に、オペレータのわずかな労力のみで配置することができる。特に、結果として、オペレータの手動の労力を大幅に削減できるか、または少量に削減できる。その結果、掛けるべき溶融紡糸された糸が絡まるかまたは裂断するリスクを低下させることができる。糸掛けの手順は、有利には、本発明による糸掛け装置により完全に自動化されてまたは少なくとも部分的に自動化されて実施することができる。このようにして、糸掛けプロセスの信頼性を高めることができる。
【0010】
掛け装置の有利な改良によれば、ガイドレールは、その延在部に沿って複数のコース変向部を有していてよい。例えば、ガイドレールは、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ以上のコース変向部を有していてよい。その結果、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって可能である適切な機能位置の数を、有利には増やすことができる。特に、複数のコース変向部の結果として、かつこれらのコース変向部に沿った吸引ユニットの移動の結果として、溶融紡糸された糸をテークアップ巻取り装置において糸掛けするためのオペレータの手動プロセスを、有利にはそれぞれ代替または再現または模倣することができる。このようにして、それぞれ必要とされる機能位置に配置するための、吸引ユニットの手動案内の必要性を完全に回避することができるか、または少なくともさらに減らすことができる。
【0011】
さらに好適には、少なくとも1つのコース変向部は、ガイドレールの湾曲および/または折曲げにより、かつ/または曲線コースにより、かつ/または屈曲コースにより形成することができる。このように形成されたコース変向部を有するガイドレールは、製造に関する小さな手間だけでもって提供できると同時に、各装置条件またはテークアップ巻取り装置の幾何学的条件を考慮した適切な設計を可能にする。このようなガイドレールに沿った吸引ユニットの移動は、小さな労力および装置に関する僅かなコストのみでもって、吸引ユニットを複数の異なる機能位置に配置することを可能にする。
【0012】
さらに好適には、ガイドレールの少なくとも2つの部分は、互いに整列するように配置することができ、かつ/またはガイドレールの少なくとも2つの部分は、互いに平行に延びるように配置することができる。追加的にまたは代替的に、ガイドレールの少なくとも2つの部分は、互いに平行な方向にオフセットされているように配置することができる。したがって、互いに整列するように、または互いに平行に延びるように、または互いに平行な方向にオフセットされているように配置されたガイドレールの各部分を、少なくとも1つの別の部分によって互いに接続することができ、または少なくとも1つの別の部分によって分割することができる。
【0013】
互いに整列するように、かつ/または互いに平行に、かつ/または互いに平行にオフセットされているように配置された部分を有するガイドレールの成形は、特に有利にガイドされた吸引ユニットの空間移動を可能にする。その結果、吸引ユニットを、特に各装置条件またはテークアップ巻取り装置の幾何学的条件をそれぞれ考慮して空間内に適切に分配された各機能位置に配置することができる。このようにして、ガイドレールの各コースが、特に有利には吸引ユニットの手動でのガイドを代替または模倣することができるようになっている。
【0014】
別の有利な改良によれば、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動により糸捕捉位置に配置することができ、糸捕捉位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、糸インジェクタおよび/または紡糸ノズルにより受け取りかつ/または吸引することができる。特に糸捕捉位置では、糸インジェクタおよび/または紡糸ノズルにより、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を最初に受け取りかつ/または吸引することができる。したがって、紡糸ノズルおよび/または糸インジェクタから出る溶融紡糸された糸は、吸引ユニットにより、糸捕捉位置にあるときに最初に吸引されひいては受け取られてよい。
【0015】
このような、溶融紡糸された糸が吸引ユニットにより吸引されて受け取られる、溶融紡糸された糸の状態において、吸引ユニットを、好適には少なくとも1つの別の機能位置に移動させることができ、その間、溶融紡糸された糸の、吸引されて受け取られた状態は維持されている。吸引ユニットを糸捕捉位置に配置することが可能であることの結果として、溶融紡糸された糸の糸掛けプロセスが、有利には、特にオペレータによる如何なる手動介入も無しに開始することができる。
【0016】
別の有利な改良によれば、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動により糸切断位置に配置することができ、糸切断位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、糸切断装置により分断しかつ/または切断することができる。糸切断装置は、有利にはテークアップ巻取り装置の糸切断装置および/またはいわゆるギャザリング/チョッピング装置であってよい。このようなギャザリング/チョッピング装置を使用して、溶融紡糸された糸をそれぞれ、高い信頼性および精度でもって、同時に構成に関する小さな労力でもって切断または分断することができる。したがって、糸切断位置は、少なくとも1本の溶融紡糸された糸をギャザリング/チョッピング装置により分断かつ/または切断することができるチョッパ糸掛け位置であってよい。
【0017】
溶融紡糸された糸の切断および/または分断は、例えば糸掛け中に、溶融紡糸された糸の望ましくない欠陥のある巻取りまたはもつれが生じた場合に、巻取り手順を完了させかつ/または中断するために必要とされ得る。糸掛けプロセスは、溶融紡糸された糸が切断または分断された後に再開することができる。吸引ユニットを糸切断位置に配置することが可能であることの結果として、溶融紡糸された糸の切断または分断を、小さな労力のみでもって、特にオペレータの如何なる手動介入も無しに実施することができる。
【0018】
別の好適な改良によれば、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によってドラフトユニット糸掛け位置に配置することができ、ドラフトユニット糸掛け位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、ドラフトユニットにおいて、特に複数のゴデットを有するドラフトユニットにおいて糸掛けすることができる。このようなドラフトユニットでは、溶融紡糸された糸を、例えばそれぞれ予備延伸または予備配向することができ、ひいてはその後に、予備延伸または予備配向された糸(POY)として巻き取ることができる。吸引ユニットをドラフトユニット糸掛け位置に配置することが可能であることの結果として、溶融紡糸された糸の予備延伸または予備配向を、特にオペレータの如何なる手動介入も無しに、小さな労力のみでもって巻取り前に実施することができる。
【0019】
さらに好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって糸分配位置に配置することができ、糸分配位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、糸分配装置によって糸分配方向に沿って位置決めすることができ、かつ/または糸分配方向において位置決めするために、糸分配装置に接触させることができる。糸分配位置は、特に有利にはギャザリングローラ糸掛け位置であってよく、ギャザリングローラ糸掛け位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、ギャザリングローラにおいて掛けることができかつ/または可動に配置されたギャザリングローラに接触させることができる。
【0020】
特に、ギャザリングローラ糸掛け位置では、溶融紡糸された複数の糸を、いずれの場合にも1つのギャザリングローラに掛けることができかつ/またはいずれの場合にも、可動に配置された1つのギャザリングローラに接触させることができる。したがって、糸分配装置、特に巻取り装置の糸分配装置は、有利には、複数のギャザリングローラを有するギャザリングローラ装置として構成することができる。1つのギャザリングローラは、いずれの場合にも、1本の溶融紡糸された糸に接触するように構成かつ/または配置することができる。
【0021】
換言すると、溶融紡糸された糸を、このようなギャザリングローラにおいて掛けることができるか、またはこのようなギャザリングローラに接触させることができ、次いで、各ギャザリングローラにより糸分配方向に位置決めすることができるか、または所望の各糸位置において巻取りスピンドルの長手方向に沿って予め整列させることができる。吸引ユニットを糸分配位置に配置することが可能であることの結果として、溶融紡糸された糸の糸分配方向における位置決めを巻取り前に、糸分配装置により小さな労力のみでもって、特にオペレータの如何なる手動介入も無しに、または少なくともオペレータの労力を軽減して実施することができる。
【0022】
さらに好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって長手方向整列位置に配置することができ、長手方向整列位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、特に長手方向整列装置により、巻取りスピンドルの長手方向に整列させることができ、かつ/または長手方向整列装置において糸掛けすることができ、かつ/または長手方向整列装置内に糸通しすることができる。長手方向整列装置は、好適にはいわゆる下部移行ユニットの形態で構成することができる。長手方向整列位置は、特にいわゆる下部移行ユニット糸掛け位置(LCU糸掛け位置)であってよい。
【0023】
テークアップ巻取り装置の長手方向整列装置または下部移行ユニットはそれぞれ、巻取り位置に配置された巻取りスピンドルの下方、またはほぼ、巻取り位置に配置された巻取りスピンドルの高さレベルに配置することができ、複数の溶融紡糸された糸を、巻取りスピンドルの長手方向に沿って互いに間隔をあけて規定された位置でガイドすることができるか、または溶融紡糸された糸を、互いに間隔をあけられた各位置に移動させることができる。
【0024】
長手方向整列装置または下部移行ユニットによりそれぞれ捕捉され、所定の位置に移動されかつ/またはガイドされた、溶融紡糸された糸は、いずれの場合にも、巻取りスピンドルに配置された巻管に供給することができ、このようにして、各巻取りスピンドルに巻き取られてよい。溶融紡糸された糸をガイドするかまたは移動させるために、これらは特に規定された受容部においてかつ/または係止フックにより、長手方向整列装置内または下部移行ユニット内へそれぞれ糸通しすることができる。溶融紡糸された糸を長手方向整列装置内または下部移行ユニット内に糸通しするために、長手方向整列装置または下部移行ユニットを、開放位置または糸通し位置および/またはギャザリング位置へ変位または移動させてよい。溶融紡糸された糸が糸通しまたは捕捉されると、長手方向整列装置または下部移行ユニットをそれぞれ、閉鎖位置またはガイド位置および/または分配位置へ変位または移動させてよい。
【0025】
吸引ユニットを長手方向整列位置に配置することが可能であることの結果として、溶融紡糸された糸の、巻取りスピンドルの長手方向における整列および/または長手方向整列装置または下部移行ユニットにおける糸掛けおよび/または糸通しを、それぞれ巻取り前に、小さな労力のみでもって、特にオペレータの如何なる手動介入も無しに、または少なくともオペレータの労力を軽減して実施することができる。
【0026】
さらに好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって巻取りスピンドル位置に配置することができ、巻取りスピンドル位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、巻取りスピンドル、特に巻取りスピンドルに配置された巻管において糸掛けすることができる。
【0027】
特に好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって巻取りスピンドル位置に配置することができ、巻取りスピンドル位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、スピンドルタレットに支持された巻取りスピンドルおよび/またはスピンドルタレットにより動かされる巻取りスピンドルに接触させることができかつ/または捕捉させることができる。特に、溶融紡糸された糸を、巻取りスピンドル位置において、スピンドルタレットに支持されかつ/またはスピンドルタレットにより動かされる巻取りスピンドルに配置された巻管に接触させかつ/または捕捉されてよい。
【0028】
したがって、巻取りスピンドル位置では、溶融紡糸された糸を、それぞれ巻管に接触させて掛けることができる、またはスピンドルタレットによって生じる、各巻取りスピンドルおよび各巻取りスピンドルに配置された巻管の動きにより捕捉することができ、実際の巻取り手順を開始することができる。
【0029】
吸引ユニットを巻取りスピンドル位置に配置することが可能であることの結果として、巻取りスピンドルまたは巻取りスピンドルに配置された巻管における溶融紡糸された糸の糸掛けを、それぞれ小さな労力のみでもって、特にオペレータの如何なる手動介入も無しに、または少なくともオペレータの労力を軽減して実施することができる。
【0030】
別の好適な改良によれば、吸引ユニットの巻取りスピンドル位置は、吸引ユニットの長手方向整列位置と同じであってよい。
【0031】
以下で使用する「鉛直方向」および「水平方向」という方向指示は、糸掛け装置の設置状態および/または動作状態、特にテークアップ巻取り装置における設置状態および/またはテークアップ巻取り装置における取付け状態、または糸掛け装置の動作状態にそれぞれ関する。特に、「鉛直方向」という方向指示はy方向に関し、「水平方向」という方向指示は、例えば以下でさらに詳細に説明するように、図示のx方向またはz方向に関する。
【0032】
さらに好適な実施形態によれば、機能位置のうちの少なくともいくつかを、ガイドレールに沿って鉛直方向に分散するように配置することができる。したがって、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動によって、鉛直方向に分散された各機能位置に順次配置することができる。鉛直方向に分散させることにより、吸引ユニットの手動での鉛直方向移動を、特に有利にそれぞれ代替または模倣することができる。さらに、鉛直方向の移動順序は、溶融紡糸された糸のガイド、紡糸ノズルまたは糸インジェクタそれぞれからその鉛直方向下側に配置された、巻取りプロセスを実施可能な巻取りスピンドルへの移行に適している。
【0033】
さらに好適には、ガイドレールにおける機能位置を、所定の順序で配置することができる。機能位置は、特に好適には、ガイドレールに沿って分散して、特に鉛直方向に分散して、糸捕捉位置、糸切断位置、ドラフトユニット糸掛け位置、糸分配位置、長手方向整列位置および巻取りスピンドル位置の所定の順序で配置することができる。
【0034】
この形式の、各機能位置の所定の順序および/または鉛直方向における分散により、吸引ユニットをガイドレールに沿って移動させ、所定のプロセス順序で糸掛けを実施することができる。したがって、個々の各ステップは、鉛直方向に連続する各機能位置の順に実施することができる。
【0035】
さらに好適な改良によれば、ガイドレールに沿った少なくとも2つの機能位置を、水平方向において互いにオフセットされるように配置することができる。特に、糸切断位置および/またはドラフトユニット糸掛け位置を、少なくとも別の機能位置に対して水平方向にオフセットされるように、ガイドレールに沿って配置することができる。別の機能位置に対して水平方向にオフセットされるように配置された機能位置に基づき、吸引ユニットひいては吸引された、溶融紡糸された各糸も、糸掛けプロセス中に部分的に水平方向に移動させることができる。このようにして、テークアップ巻取り装置の幾何学条件または各コンポーネントアセンブリを有利に考慮することができる。
【0036】
さらに好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに対する間隔を変化させるために可動に配置することができる。特に吸引ユニットを、ガイドレールに対して水平方向にかつ/またはガイドレールの長手方向延在部に対して所定の角度でかつ/またはガイドレールのコースおよび/またはガイドレールの少なくとも1つのコース変向部により規定される平面に対して所定の角度で可動に配置することができる。特に好適には、吸引ユニットを、ガイドレールの長手方向範延在部に対して横方向にかつ/またはガイドレールのコースにより規定された平面に対して横方向に可動に配置することができる。
【0037】
ガイドレールに対する吸引ユニットの可動性は、特に、ガイドレールに沿った吸引ユニットの移動方向に対して横方向に構成することができる。この場合、ガイドレールに対する吸引ユニットの可動性は、特に、テークアップ巻取り装置の巻取りスピンドルの長手方向に対して所定の角度でまたは横方向に構成されてもよい。吸引ユニットのこのような配置の結果として、別の空間次元での移動を実施することができ、これにより、溶融紡糸された糸を糸掛けプロセスにおいてガイドするための更なる自由度を保証することができる。
【0038】
吸引ユニットをガイドレールに対して可動に配置した結果、溶融紡糸された個々の糸の、糸分配装置の接触位置への割当てまたは供給を有利に実施することができる。例えば、このような糸分配装置は、複数のギャザリングローラにより形成することができ、吸引ユニットをガイドレールに対して可動に配置した結果、溶融紡糸された個々の糸の、個々のギャザリングローラへの割当てまたは供給を実施することができる。ギャザリングローラのうちの少なくともいくつかは、それら自体の移動方向に対して横方向に分散するように配置することができる。
【0039】
さらに好適な改良によれば、吸引ユニットは、吸引ガンとして構成することができる。追加的にまたは代替的に、吸引ユニットは、圧縮空気の供給および/または放出用の少なくとも1つのコネクタを有していてよく、かつ/または吸引ユニットは、溶融紡糸された糸を吸引するための少なくとも1つの吸引開口を有していてよい。吸引ユニットのこのような設計は、構成に関して小さな労力にしか結び付かず、同時に、溶融紡糸された糸を吸引するための高い機能信頼性を保証する。
【0040】
さらに好適には、吸引ユニットを、ガイドレールに沿って可動にガイドされるガイドスライドに保持することができる。ガイドスライドは、構成に関して小さな労力でもって提供することができ、ガイドレールに沿った確実で正確な移動を保証する。
【0041】
追加的にまたは代替的に、吸引ユニットを、ガイドスライドに対して可動に配置することができる。したがって、吸引ユニットをガイドスライドに対して可動に配置することにより、上述したように、ガイドレールに対する間隔を変化させるための吸引ユニットの可動性を保証することができる。
【0042】
ガイドスライドは、好適にはガイドレールに沿ってガイドスライドを移動させるための駆動ユニットを有していてよい。このような駆動ユニットは、特に電動モータとして構成できかつ/またはガイドスライドに固定または保持することができる。ガイドスライドを移動させるための駆動ユニットに係合するための歯列を有することが、ガイドレールにとってさらに有利であり得る。したがって、ガイドスライドを移動させるための駆動ユニットは、ガイドレールの歯列に係合することができる。駆動ユニットを作動させることにより、ガイドスライドを吸引ユニットと共にガイドレールに沿って移動させることができる。
【0043】
さらに好適な改良では、ガイドスライドは、ガイドスライドに対して吸引ユニットを移動させるための駆動ユニットを有していてよい。このような駆動ユニットは、特に空圧式の駆動装置として構成することができる。したがって、このような駆動ユニットは、ガイドスライドに対する、ひいてはガイドレールに対する吸引ユニットの移動を保証することができる。
【0044】
本発明の別の態様は、溶融紡糸された糸を巻き取るための、特に溶融紡糸された糸を複数のフィラメントから巻き取るためのテークアップ巻取り装置であって、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を巻き取って巻管においてパッケージを形成することができる巻取りスピンドルを有しており、かつ上記説明に基づく糸掛け装置を有しており、糸掛け装置の吸引ユニットを、巻取りスピンドルに配置された巻管において溶融紡糸された糸を糸掛けするために、ガイドレールに沿ってガイドされる移動により、複数の連続した機能位置に配置することができる、テークアップ巻取り装置に関する。
【0045】
好適な改良によれば、テークアップ巻取り装置は、少なくとも1つの糸掛け補助装置、特に、吸引ユニットにより吸引された溶融紡糸された糸に、ガイドおよび/または位置決めのために接触し得る少なくとも1つの糸掛けローラによって特徴付けられてよい。このような糸掛け補助装置は、好適には、装置フレームおよび/または装置ハウジングに可動に配置することができる。さらに好適には、テークアップ巻取り装置は、複数の糸掛け補助装置、特に複数の糸掛けローラ、特に好適には合計3つの糸掛け補助装置を備えていてよい。
【0046】
このような糸掛け補助装置の結果として、吸引ユニットにより吸引された溶融紡糸された糸に適切に接触することができ、溶融紡糸された糸が特に各装置構成要素に支持されるように、溶融紡糸された糸を、糸掛け補助装置の移動により所望の各位置に移動させることができる。
【0047】
好適な実施形態によれば、テークアップ巻取り装置は、少なくとも1つの巻取りスピンドルが配置または支持されたスピンドルタレットを備えていてよい。特に好適には、2つ以上の巻取りスピンドルがスピンドルタレットに配置されまたは支持されることができる。さらに好適には、巻取りスピンドルは、スピンドルタレットの動きにより、異なるスピンドル位置間で、特に、溶融紡糸された糸を巻き取るための巻取り位置と、巻き取られたパッケージを各巻取りスピンドルからドッフィングするかまたは取り外すためのドッフィング位置との間で移動可能である。巻取りスピンドルのドッフィング位置では、巻き取られた各パッケージが取り外されると、巻取りスピンドルに新たな巻管を取り付けることもできる。
【0048】
本発明の別の独立した態様は、溶融紡糸された糸を掛ける方法、特に溶融紡糸された糸をテークアップ巻取り装置において掛ける方法であって、溶融紡糸された糸を吸引ユニットにより吸引し、吸引ユニットを吸引状態でガイドレールに沿って可動にガイドし、このプロセス中に方向転換を少なくとも1回実施し、吸引ユニットを、ガイドレールに沿ってガイドされる移動により、複数の連続した機能位置に配置し、少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、巻取りスピンドルに配置された巻管において糸掛けする、方法に関する。
【0049】
特に好適には、吸引された少なくとも1本の溶融紡糸された糸を、吸引ユニットの所定の機能位置で、巻取りスピンドルに配置された巻管において掛けることができる。
【0050】
上述の溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置に関する好適な実施形態および利点は、同様に、上述の紡糸された糸を巻き取るためのテークアップ巻取り装置および紡糸された糸を巻き取るための上述の方法にも適用される。
【0051】
以下に、添付の図面を参照して本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の例示的な実施形態による糸掛け装置を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示した糸掛け装置の細部を概略的に示す斜視図である。
図3】第1の機能位置にある吸引ユニットを有する、本発明の例示的な実施形態による糸掛け装置を備えたテークアップ巻取り装置を概略的に示す部分図である。
図4】別の機能位置にある吸引ユニットを有する、図3に示したテークアップ巻取り装置を概略的に示す図である。
図5】さらに別の機能的位置にある吸引ユニットを有する、図3に示したテークアップ巻取り装置を概略的に示す図である。
図6】さらに別の機能位置にある吸引ユニットを有する、図3に示したテークアップ巻取り装置を概略的に示す図である。
図7】さらに別の機能的位置にある吸引ユニットを有する、図3に示したテークアップ巻取り装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1には、本発明の例示的な実施形態による、溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置10の斜視図が示されている。糸掛け装置10は、特に、溶融紡糸された糸を複数のフィラメントから掛けるように構成かつ/または規定することができる。図2には、図1に示した糸掛け装置10の細部の斜視図が示されている。
【0054】
以下で「鉛直方向」および「水平方向」という方向指示が使用される限り、これらは、糸掛け装置10の設置状態および/または動作状態、特に図3図7に示すようなテークアップ巻取り装置100に設置された状態に関する。
【0055】
図1および図2にプロットされた座標軸は、図3図7における座標軸と同一である。したがって、糸掛け装置10の設置状態および/または動作状態において、プロットされたy軸は、鉛直方向に延びている。糸掛け装置10の設置状態および/または動作状態において、プロットされたx軸およびプロットされたz軸は水平方向に延びており、または糸掛け装置10の設置状態および/または動作状態において、x軸およびz軸はそれぞれ水平面を規定している。
【0056】
溶融紡糸された糸を掛けるための糸掛け装置10は、ガイドレール12と吸引ユニット14とを有しており、吸引ユニット14は、少なくとも1本の溶融紡糸された糸(ここでより詳細には図示せず)を吸引するために、ガイドレール12上で可動にガイドされている。吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされる移動により、図3図7を参照して以下で詳細に説明するように、異なる機能位置に配置することができる。
【0057】
ガイドレール12の延在部に沿った異なる機能位置に吸引ユニット14を配置するために、ガイドレール12は、少なくとも1つのコース変向部16を有している。複数のコース変向部16が、特にガイドレール12の延在部に沿って設けられてよい。少なくとも1つのコース変向部16は、例えば湾曲および/または折曲げによって、かつ/または曲線コースによって形成することができる。
【0058】
ガイドレール12の2つの部分18および20は、互いに整列するように配置可能である。部分18および20は、鉛直方向に延びている。ガイドレール12の2つの部分22および24も同様に、互いに平行に延びるように配置可能である。部分22および24は、少なくとも部分的に水平方向に延びている。追加的にまたは代替的に、ガイドレール12の2つの部分20および26または18および26は、互いに平行な方向にオフセットされているように配置可能である。
【0059】
さらに、図1および図2から、吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿って可動にガイドされるガイドスライド28に保持できるということを導き出すことができる。ガイドスライド28はガイドレール12に沿って移動することにより、y方向およびz方向に移動することができる。ガイドスライド28は、キャリッジとして、例えば特に被駆動キャリッジとして構成することができる。このように、ガイドスライド28は、好適には、ガイドレール12に沿ってガイドスライド28を移動させるための駆動ユニット30を有していてよい。駆動ユニット30は、例えば電動モータであってよい。さらに、ガイドレール12は、駆動ユニット30に係合するための歯列(より詳細には図示せず)を有していてよい。駆動ユニット30を作動させることで、駆動ユニット30は、ガイドレール12の歯列に係合することにより、結果として、ガイドレール12に沿ったガイドスライド28の移動を生じさせることができる。このようにして、ガイドスライド28に保持された吸引ユニット14は、ガイドスライド28と共にガイドレール12に沿って移動可能である。
【0060】
さらに、図1および図2から、ガイドスライド28は、ガイドスライド28に対して吸引ユニット14を移動させるための駆動ユニット32を有していることを導き出すことができる。駆動ユニット32は、ガイドスライド28に保持または緊締されることができる。駆動ユニット32は、特に空圧式の駆動装置として構成することができる。このために、駆動ユニット32は、少なくとも1つの空圧式のシリンダおよび/またはリニアガイドを備えていてよい。
【0061】
吸引ユニット14を、駆動ユニット32により、ガイドスライド28に対して移動させてよい。したがって、ガイドスライド28に対する吸引ユニット14の可動性の結果として、吸引ユニット14は、ガイドレール12に対する間隔を変化させるように可動に配置されている。特に、吸引ユニット14を、ガイドレール12に対する間隔を変化させるために、ガイドレール12の長手方向延在部に対して水平方向にかつ/または所定の角度でかつ/またはガイドレール12のコースにより規定された平面に対して所定の角度で可動であるように配置することができる。ガイドスライド28に対するひいてはガイドレール12に対する吸引ユニット14の移動方向34は、図2に示されている。したがって、糸掛け装置10の設置状態および/または動作状態を参照すると、移動方向34は、プロットされた座標系に対応するx方向に延びている。
【0062】
吸引ユニット14はさらに、吸引ガンとして構成可能であると共に、圧縮空気を供給するためのコネクタ36と、圧縮空気を放出するためのコネクタ38とを有していてよい。吸引ユニットは、溶融紡糸された糸を吸引するための少なくとも1つの吸引開口40を有していてよい。
【0063】
溶融紡糸された糸の、糸掛け装置10による糸掛けは、図3図7を参照して以下で導き出されるように、特にテークアップ巻取り装置100において実施することができる。テークアップ巻取り装置100の部分図は、図3図7においていずれの場合にも正面側から図示されている。テークアップ巻取り装置100は糸掛け装置10を備えており、図3図7は、糸掛け装置10または吸引ユニット14のそれぞれ異なる機能位置を示している。
【0064】
テークアップ巻取り装置100は、紡績糸102(ここでは概略的に図示)を巻き取るように、特に、溶融紡糸された糸102を複数のフィラメントから巻き取るように構成されている。テークアップ巻取り装置100は、少なくとも1つの巻取りスピンドル104を備えており、巻取りスピンドル104により、少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を巻き取って、巻管106上にパッケージ108を形成することができる。
【0065】
図3図7に示す、巻管106、または巻管106上に配置されたパッケージ108をそれぞれ有する巻取りスピンドル104は、好適にはスピンドルタレット(ここでより詳細には図示せず)に配置または支持されている。
【0066】
2つ以上の巻取りスピンドル104が、特に好適には、このようなスピンドルタレットに配置または支持されることができ、図3図7には1つの巻取りスピンドル104のみが示されているまたは見えている。巻取りスピンドル104は、スピンドルタレットの移動により、異なるスピンドル位置の間で、特に、溶融紡糸された糸102を巻き取るための巻取り位置と、各巻取りスピンドル104から巻き取られたパッケージ108をドッフィングまたは取り外すためのドッフィング位置との間で移動可能である。
【0067】
図3図7に示すまたは見える巻取りスピンドル104は、巻取りパッケージ108を巻取りスピンドル104からドッフィングまたは取り外すためのドッフィング位置に配置されている。巻取り位置には別の巻取りスピンドル104(図示せず)を配置することができる。巻取り位置に配置された巻取りスピンドル104は、図3図7に示すドッフィング位置に配置された巻取りスピンドル104の上方に配置されている。
【0068】
さらに、テークアップ巻取り装置100は、図1および図2に示すように、上述した糸掛け装置10を有している。ガイドスライド28およびガイドスライド28に保持された吸引ユニット14は、図3図7に概略的に示されているに過ぎない。
【0069】
掛け装置10の吸引ユニット14は、巻取りスピンドル104に配置された巻管106上の溶融紡糸された糸102を糸掛けするために、ガイドレール12に沿って案内される移動により、複数の連続した機能位置に配置することができる。以下に、吸引ユニット14の個々の機能位置を、図3図7を参照してより詳細に説明する。
【0070】
テークアップ巻取り装置100はさらに、少なくとも1つの糸掛け補助装置110を有している。糸掛け補助装置110は、特に糸掛けローラとして構成することができる。糸掛け補助装置110は、吸引ユニット14により吸引された、溶融紡糸された糸102に、ガイドおよび/または位置決めのために接触することができる。
【0071】
吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされる移動によって図3に示す糸捕捉位置に配置することができ、糸捕捉位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を、糸インジェクタ(ここでより詳細には図示せず)により受け取りかつ/または吸引することができる。
【0072】
吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされる移動によって、さらに、図4に示す糸切断位置に配置することができ、糸切断位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を、糸切断装置112により分断しかつ/または切断することができる。糸切断装置112は、例えばいわゆるギャザリング/チョッピング装置として構成することができる。糸切断装置112は、テークアップ巻取り装置100に配置されているか、またはテークアップ巻取り装置100の構成部材として構成されている。
【0073】
吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされる移動によって、さらに、図5に示すドラフトユニット糸掛け位置に配置することができ、ドラフトユニット糸掛け位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を、ドラフトユニット114において糸掛けすることができる。ドラフトユニット114は、特に複数のゴデット116を有していてよい。糸掛け補助装置110も同様に、ドラフトユニット114の構成部材として構成することができる。図5に示すように、糸掛け補助装置110は、特に吸引ユニット14が鉛直方向またはy方向においてそれぞれ十分に低く位置決めされると直ちに、図4に示す位置から展開することができる。
【0074】
掛け補助装置110が、図5に示す展開位置に配置された結果として、溶融紡糸された糸102は、ドラフトユニット114のゴデット116の周面に接触して配置される。また、糸掛け補助装置110に加えてまたはこれに代えて、別のまたは引き続く糸掛け補助動作を実施するために構成されかつ/または配置されることができる別の糸掛け補助装置(ここでさらに詳しくは図示せず)が設けられてもよい。
【0075】
吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされた移動によって、さらに、図6に示す糸分配位置に配置することができ、糸分配位置では少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を、糸分配装置118により糸分配方向120に沿って位置決めすることができかつ/または糸分配方向120において位置決めするために、ねじ分配装置118に接触させることができる。糸分配装置118は、ギャザリングローラ装置として構成されていてよく、かつ/または複数のギャザリングローラ122を有していてよい。各ギャザリングローラ122は、溶融紡糸された糸102に接触するように可動に配置することができる。ギャザリングローラ122のうちの少なくともいくつかを、いずれの場合にも1本の溶融紡糸された糸102に個別に接触するかまたは1本の溶融紡糸された糸102を個別に捕捉するように、それぞれx方向に分配されるように配置することができる。
【0076】
図5には糸分配装置118の後退状態が示されており、図6には糸分配装置118の展開状態が示されている。図6に破線で示された糸部分102bは、糸分配装置118により接触されることができ、接触するギャザリングローラ122に応じて、同様に図6に示すように糸分配方向120にオフセットされた位置へ移動されてよい。糸分配方向120は、特にz方向に延びていてよい。
【0077】
吸引ユニット14を、ガイドレール12に沿ってガイドされる移動によって、さらに、図7に示す長手方向整列位置に配置することができ、長手方向整列位置では、少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を、特に長手方向整列装置124により、巻取りスピンドル104の長手方向に整列させることができる。少なくとも1本の溶融紡糸された糸102は、長手方向整列位置において、好適には下部移行ユニット124において糸掛けされることができ、かつ/または下部移行ユニット124内に糸通しされることができる。
【0078】
長手方向整列装置124は、例えば下部移行ユニット124の形態であってよい。溶融紡糸された糸102は、下部移行ユニット124内に糸掛けされかつ/または糸通しされることにより、巻取りスピンドル104の長手方向に整列することができる。この場合、巻取りスピンドル104の長手方向は、特に糸分配方向120および/またはz方向に相当する。
【0079】
このために、下部移行ユニット124は、複数の係止フック126を備えていてよく、これらの係止フック126は、いずれの場合にも1本の溶融紡糸された糸102を捕捉するように規定されることができ、捕捉状態において、溶融紡糸された各糸102の長手方向における整列を実施することができる。このために、係止フック126は、巻取りスピンドル104の長手方向に沿って、またはz方向に沿って、それぞれ可動に配置されており、図6には係止フック126の集合位置が示されており、図7には係止フック126の分散位置が示されている。
【0080】
したがって、下部移行ユニット124は、糸分配装置118に対応して、溶融紡糸された個々の糸102の長手方向における分配を、巻取りスピンドル104の長手方向に沿って、またはz方向に沿って、それぞれ実施することができる。
【0081】
換言すると、図7は、長手方向整列位置における吸引ユニット14を示しており、長手方向整列位置では、破線により示された、溶融紡糸された糸102の糸部分を、下部移行ユニット124により、または一般に長手方向整列装置により、それぞれ捕捉されて長手方向に分配することができる。長手方向に分配された、溶融紡糸された糸102の経路は、図7に実線で示されている。
【0082】
最後に、吸引ユニット14は、ガイドレールに沿ってガイドされる移動により、少なくとも1本の溶融紡糸された糸102を巻取りスピンドル104または巻取りスピンドル104に配置された巻管106においてそれぞれ掛けることができ、かつ/または、スピンドルタレットに支持された巻取りスピンドル104および/またはスピンドルタレットにより動かされる巻取りスピンドル104に接触させることができかつ/または捕捉させることができる巻取りスピンドル位置に配置することができる。
【0083】
上述した巻取りスピンドル位置は、図7に概略的に示した吸引ユニット14の位置および/またはy方向においてさらに下方に配置された位置に相当してよい。
【0084】
糸通しされかつ長手方向に分配された溶融紡糸された糸102が、それぞれ巻取りスピンドル104または巻取りスピンドル104に配置された巻管106において糸掛けされるようにするために、長手方向整列装置または下部移行ユニット124はそれぞれ、深さオフセット方向において深さオフセット動作を実施することができる。このような深さオフセット方向は、特に巻取りスピンドル104の長手方向に対して所定の角度に、特に巻取りスピンドル104の長手方向に対して横方向に、または鉛直方向に沿ってかつ/またはx方向に沿って、それぞれ延びていてよい。
【0085】
深さオフセット動作を実施するために、係止フック126は、係止フック126の各ガイドと共に深さオフセット方向に移動されてよく、糸通しされた、溶融紡糸された糸102を、それぞれ深さオフセット方向に連行する。
【0086】
深さオフセット動作が実施されると、-まだ巻き取っていない状態の-巻管106が配置された巻取りスピンドル104を、スピンドルタレット(ここではより詳細には図示せず)によりドッフィング位置から巻取り位置へ移動または旋回させてよい。ドッフィング位置から巻取り位置へのこの形式の移動または旋回移動の結果として、深さオフセット方向に移動した溶融紡糸された糸102が、巻取りスピンドル104または巻取りスピンドル104に配置された巻管106にそれぞれ接触し、巻管106において糸掛けされることができる。
【0087】
溶融紡糸された糸102が巻取りスピンドル104または巻取りスピンドル104に配置された巻管106においてそれぞれ糸掛けされた後は、巻取りスピンドル104の移動を巻取り位置まで継続することができる。巻取り位置では、各巻取りプロセスを実施して完了することができ、その後、巻取りスピンドル104は、図3図7に示すドッフィング位置に戻されてよい。
【0088】
巻取り位置では、巻取りスピンドル104は鉛直方向またはy方向において、ほぼ長手方向整列装置の高さレベルまたは下部移行ユニット124の高さレベルにそれぞれ配置される。図3図7の図平面に対して横方向またはx方向にそれぞれ見た場合、巻取りスピンドル104は、長手方向整列装置の後方または下部移行ユニット124の後方にそれぞれ配置されている。
【0089】
長手方向整列装置または下部移行ユニット124はそれぞれ、溶融紡糸された各糸102の切断または分断を可能にする切断装置を備えていてよい。このような切断装置は特に、溶融紡糸された各糸102が各巻取りスピンドル104に接触し、各巻取りスピンドル104において糸掛けされ、巻取りスピンドル104が巻取り位置に到達すると、または巻取りスピンドル104が巻取り位置に到達する前に直ちに、溶融紡糸された各糸102の切断または分断を実施するように構成かつ/または規定することができる。
【0090】
したがって、巻取りプロセスは、溶融紡糸された各糸102がそれぞれ切断または分断された後に、長手方向整列装置または下部移行ユニット124により開始することができ、溶融紡糸された糸102の、切断または分断された残りは吸引ユニット14により吸引することができ、これにより、切断または分断された残りによる、巻取りプロセスのあらゆる妨害を回避することができる。
【0091】
上述したように、図3図7にはいずれの場合にも巻き取られたパッケージ108が示されており、これらのパッケージ108は、溶融紡糸された糸102を、糸掛け後に巻管106に完全に巻き取ることによってのみ形成される。巻取りプロセスの完了時に、巻き取られたパッケージ108が、図3図7に示すドッフィング位置において巻取りスピンドル104から取り外され、巻取りスピンドル104には、まだ巻き取っていない新たな巻管106を取り付けることができる。その後、新たな巻取りプロセスを実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 糸掛け装置
12 ガイドレール
14 吸引ユニット
16 コース変向部
18~26 ガイドレールの部分
28 ガイドスライド
30 ガイドスライドを移動させるための駆動装置
32 吸引ユニットを移動させるための駆動装置
34 ガイドスライドに対する吸引ユニットの移動方向
36 圧縮空気供給用のコネクタ
38 圧縮空気放出用のコネクタ
40 吸引開口
100 テークアップ巻取り装置
102 溶融紡糸された糸
102b 糸部分
104 巻取りスピンドル
106 巻管
108 パッケージ
110 糸掛け補助装置
112 糸切断装置
114 ドラフトユニット
116 ゴデット
118 糸分配装置
120 糸分配方向
122 ギャザリングローラ
124 下部移行ユニット
126 係止フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7