IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特許7553622弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ
<>
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図1
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図2
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図3
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図4
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図5
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図6
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図7
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図8
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図9
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図10
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図11
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図12
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図13
  • 特許-弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023031099
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2019014859の分割
【原出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2023060058
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月舘 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良夫
(72)【発明者】
【氏名】先灘 薫
(72)【発明者】
【氏名】三浦 道雄
(72)【発明者】
【氏名】西澤 年雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二
(72)【発明者】
【氏名】柿田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-196896(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043427(WO,A1)
【文献】特開2005-065050(JP,A)
【文献】特開2001-185975(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043394(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶タンタル酸リチウム基板又は単結晶ニオブ酸リチウム基板である圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を備え、前記複数の電極指の平均ピッチは前記圧電基板の厚さの1/2以上である一対の櫛型電極と、
前記圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に接して設けられ、厚さが20nm以下であり、酸化アルミニウム層である第1層と、
前記第1層の前記圧電基板と反対の面に設けられ、酸化シリコンを主成分とする第2層と、
を備える弾性波共振器。
【請求項2】
前記第1層の厚さは2.5nm以上である請求項1に記載の弾性波共振器。
【請求項3】
前記第1層の厚さは10nm以下である請求項1に記載の弾性波共振器。
【請求項4】
前記第2層の前記第1層と反対の面に設けられ、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、シリコン基板または炭化シリコン基板である支持基板を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波共振器を含むフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば一対の櫛型電極を有する弾性波共振器、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波共振器として、弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器を形成する圧電基板を支持基板に張り付けることが知られている。圧電基板の厚さを弾性表面波の波長以下とすることが知られている(例えば特許文献1)。圧電基板と支持基板との間に圧電基板より音速の低い低音速膜を設けることが知られている(例えば特許文献2から4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-034363号公報
【文献】特開2015-115870号公報
【文献】米国特許第10020796号明細書
【文献】国際公開第2017/043427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電基板を支持基板に接合することにより、弾性表面波共振器の温度特性が向上する。さらに、圧電基板の厚さを弾性表面波の波長以下とすることにより、スプリアスおよび損失を抑制できる。しかしながら、温度特性の向上および損失の改善は十分ではない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、弾性波共振器の特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、単結晶タンタル酸リチウム基板又は単結晶ニオブ酸リチウム基板である圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、弾性波を励振する複数の電極指を備え、前記複数の電極指の平均ピッチは前記圧電基板の厚さの1/2以上である一対の櫛型電極と、前記圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に接して設けられ、厚さが20nm以下であり、酸化アルミニウム層である第1層と、前記第1層の前記圧電基板と反対の面に設けられ、酸化シリコンを主成分とする第2層と、を備える弾性波共振器である。
【0007】
上記構成において、前記第1層の厚さは2.5nm以上である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1層の厚さは10nm以下である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第2層の前記第1層と反対の面に設けられ、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、シリコン基板または炭化シリコン基板である支持基板を備える構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記弾性波共振器を含むフィルタである。
【0016】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性波共振器の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1に係る弾性波共振器の斜視図である。
図2図2(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図2(b)は、図2(a)のA-A断面図である。
図3図3(a)から図3(d)は、実施例1に係る弾性波共振器の製造方法を示す断面図である。
図4図4(a)から図4(d)は、実施例1における中間層と圧電基板との接合方法を示す模式図である。
図5図5(a)および図5(b)は、それぞれ比較例1および2に係る弾性波共振器の断面図である。
図6図6は、実施例1、比較例1および2における周波数に対するQ値を示す図である。
図7図7(a)および図7(b)は、シミュレーションAおよびBにおける弾性波共振器の断面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、シミュレーションAおよびBにおける位置Zに対する変位分布を示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、バルク波を説明する断面図である。
図10図10(a)および図10(b)は、実施例1において、中間層の厚さT1に対する最大のQ値を示す図である。
図11図11(a)は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器の断面図、図11(b)は、算術平均粗さRaに対する不要応答のピーク値を示す図である。
図12図12(a)から図12(d)は、実施例1およびその変形例2から4の中間層および温度補償層付近の断面図である。
図13図13(a)から図13(c)は、実施例1の変形例5から7の中間層および温度補償層付近の断面図、図13(d)は、接合層の断面図である。
図14図14(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図14(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係る弾性波共振器の斜視図、図2(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図2(b)は、図2(a)のA-A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、支持基板および圧電基板の積層方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板が回転YカットX伝搬基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
【0021】
図1図2(a)および図2(b)に示すように、圧電基板12の下面に中間層11が設けられている。中間層11の下に温度補償層13が設けられている。温度補償層13の下に支持基板10が設けられている。支持基板10、中間層11、圧電基板12および温度補償層13の厚さをそれぞれT0、T1、T2およびT3とする。
【0022】
圧電基板12上に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT22および反射器24を有する。反射器24はIDT22のX方向の両側に設けられている。IDT22および反射器24は、圧電基板12上の金属膜14により形成される。
【0023】
IDT22は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指15と、複数の電極指15が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18の電極指15が交差する領域が交差領域25である。交差領域25の長さが開口長である。一対の櫛型電極18は、交差領域25の少なくとも一部において電極指15がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域25において複数の電極指15が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極18のうち一方の櫛型電極18の電極指15のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。一方の櫛型電極18の電極指15のピッチは電極指15の2本分のピッチとなる。反射器24は、IDT22の電極指15が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交差領域25内に閉じ込められる。
【0024】
圧電基板12は、例えば単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO)基板または単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。圧電基板12は、単結晶水晶基板、単結晶ランガサイト(LaGaSiO14)基板でもよい。
【0025】
支持基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、シリコン基板、水晶基板、石英基板、アルミナ基板または炭化シリコン基板である。サファイア基板は単結晶Al基板であり、スピネル基板は多結晶または単結晶のMgAl基板であり、シリコン基板は単結晶Si基板であり、水晶基板は単結晶またはアモルファスSiO基板であり、石英基板は多結晶SiO基板であり、アルミナ基板はAlの焼結体(焼結セラミックス)基板であり、炭化シリコン基板は多結晶または単結晶のSiC基板である。支持基板10のX方向の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波共振器の周波数温度依存性を小さくできる。
【0026】
温度補償層13は、圧電基板12の弾性定数の温度係数の符号と反対の符号の弾性定数の温度係数を有する。例えば圧電基板12の弾性定数の温度係数は負であり、温度補償層13の弾性定数の温度係数は正である。温度補償層13は、例えば無添加または弗素等の添加元素を含む酸化シリコン(SiO)膜、酸化タンタル(Ta)膜、またはガラスであり、例えばアモルファス層である。
【0027】
中間層11の横波の音速は、圧電基板12の横波の音速より速い。表1に各材料のヤング率、ポアソン比、密度および横波の音速を示す。横波の音速Vは、ヤング率E、ポアソン比γおよび密度ρを用いV=√(E/(2ρ(1+γ)))により算出できる。
【表1】
【0028】
表1において、LT、Al、SiOおよびSAはそれぞれ単結晶タンタル酸リチウム、多結晶酸化アルミニウム、アモルファス酸化シリコンおよびサファイア(単結晶酸化アルミニウム)である。LN、Si、AlN、SiNおよびSiCは、それぞれ単結晶ニオブ酸リチウム、多結晶シリコン、多結晶窒化アルミニウム、多結晶窒化シリコンおよび多結晶炭化シリコンである。
【0029】
表1のように、タンタル酸リチウム基板およびニオブ酸リチウム基板を圧電基板12としたとき、温度補償層13として酸化シリコン膜を用いると、温度補償層13の横波の音速は圧電基板12の横波の音速より遅くなる。中間層11として酸化アルミニウム層、シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化シリコン層または炭化シリコン層を用いると、中間層11の横波の音速は圧電基板12の横波の音速より速くなる。
【0030】
金属膜14は、例えばAl(アルミニウム)またはCu(銅)を主成分とする膜であり、例えばAl膜またはCu膜である。電極指15と圧電基板12との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指15より薄い。電極指15を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜または温度補償層として機能する。
【0031】
厚さT0は例えば50μmから500μmである。厚さT1は、例えば2.5nmから15nmである。厚さT2は例えば0.1μmから5μmであり、例えば弾性波の波長λ以下である。厚さT3は例えば0.1μmから5μmであり、例えばλ以下である。弾性波の波長λは例えば1μmから6μmである。2本の電極指15を1対としたときの対数は例えば20対から300対である。IDT22のデュティ比は、電極指15の太さ/電極指15のピッチであり、例えば30%から70%である。IDT22の開口長は例えば10λから50λである。
【0032】
[実施例1の製造方法]
図3(a)から図3(d)は、実施例1に係る弾性波共振器の製造方法を示す断面図である。図3(a)に示すように、支持基板10上に温度補償層13を成膜する。温度補償層13上に中間層11を成膜する。温度補償層13および中間層11の成膜には、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。
【0033】
図3(b)に示すように、圧電基板12の下面にイオン54を照射する。これにより、圧電基板12の下面が活性化する。中間層11の上面にイオン54を照射する。これにより、中間層11の上面が活性化する。
【0034】
図3(c)に示すように、中間層11の上面と圧電基板12の下面とを常温にて接合する。これにより、中間層11と圧電基板12とが接合する。図3(d)に示すように、圧電基板12の上面を平坦化することにより、圧電基板12を所望の厚さとする。その後、金属膜14等を形成する。
【0035】
図3(b)から図3(d)の中間層11上面に圧電基板12の下面を貼り付ける方法について詳細に説明する。図4(a)から図4(d)は、実施例1における中間層と圧電基板との接合方法を示す模式図である。図4(a)に示すように、中間層11は、多結晶層であり、中間層11を構成する元素の原子50aが規則的に配列されている。中間層11の上面に自然酸化膜11cが形成されている。自然酸化膜11cは原子50aと酸素とから構成される。
【0036】
図4(b)に示すように、圧電基板12は、単結晶基板であり、圧電基板12を構成する元素の原子52aが規則的に配列されている。圧電基板12の下面に自然酸化膜12cが形成されている。自然酸化膜12cは原子52aと酸素とから構成される。
【0037】
図4(a)および図4(b)に示すように、真空中において、中間層11の上面および圧電基板12の下面にイオン54等を照射する。イオン54は例えばAr(アルゴン)イオン等の不活性元素(例えば希ガス元素)のイオンである。イオン54等をイオンビーム、中性化したビームまたはプラズマとして、照射する。これにより、中間層11の上面および圧電基板12の下面が活性化される。Arイオンを用いる場合、例えばArイオンの電流を25mAから200mAとし、Arイオンの照射時間を30秒から120秒程度とする。
【0038】
図4(c)に示すように、中間層11の上面にアモルファス層11bが形成される。アモルファス層11bは中間層11の構成元素の原子50aとイオン54とを含む。これにより、中間層11は多結晶層11aと多結晶層11a上のアモルファス層11bとを含む。圧電基板12の下面にアモルファス層12bが形成される。アモルファス層12bは圧電基板12の構成元素の原子52aとイオン54とを含む。これにより、圧電基板12は単結晶層12aと単結晶層12a下のアモルファス層12bとを含む。アモルファス層11bおよび12bの表面には未結合の結合手が形成される(すなわち活性化される)。
【0039】
図4(d)に示すように、真空を維持した状態で、アモルファス層11bと12bとを張り合わせると、未結合手同士が結合し、強固な結合となる。これにより、中間層11と圧電基板12が接合される。このような接合は常温(例えば100℃以下かつ-20℃以上、好ましくは80℃以下かつ0℃以上)で行われるため熱応力を抑制できる。常温で接合されたか否かは、残留応力の温度依存性により確かめることができる。すなわち、接合された温度において、残留応力が最も小さくなる。
【0040】
このように、中間層11と圧電基板12とを接合すると、中間層11が酸化アルミニウム膜のとき、アモルファス層11bは、Al(アルミニウム)およびO(酸素)を主成分とし、Arを含む。圧電基板12がタンタル酸リチウム基板のとき、アモルファス層12bは、Ta(タンタル)、Li(リチウム)および酸素を主成分とし、Arを含む。アモルファス層11bは、中間層11の構成元素のうち圧電基板12の構成元素以外の元素をほとんど含まない。例えばアモルファス層11bはTaおよびLiをほとんど含まない。アモルファス層12bは、圧電基板12の構成元素のうち中間層11の構成元素以外の元素をほとんど含まない。例えばアモルファス層12bはAlをほとんど含まない。
【0041】
アモルファス層11bおよび12bの厚さは、0nmより大きいことが好ましく、1nm以上がより好ましい。これにより、中間層11と圧電基板12との接合性を向上させることができる。アモルファス層11bおよび12bの厚さは、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。これにより、弾性波共振器の特性の劣化を抑制できる。多結晶層11a、アモルファス層11b、12bおよび単結晶層12aは、TEM(Transmission Electron Microscope)法を用い観察することができる。
【0042】
[温度補償層を設ける理由の説明]
以下、実施例1において周波数温度係数が0に近くなる理由について説明する。弾性波共振器20の周波数温度係数TCF(Temperature Coefficient of Frequency)は以下の式により表される。
TCF=TCV-CTE
TCV(Temperature Coefficient of Velocity)は、音速の温度係数である。CTE(Coefficient of Thermal Expansion)は線膨張係数である。圧電基板12として用いるX伝搬タンタル酸リチウム基板のX軸方向の線膨張係数は約16ppm/Kである。支持基板10として用いるサファイア基板のC軸(X軸に平行となる軸)の線膨張係数は約7.7ppm/Kである。よって、圧電基板12の厚さを小さくすると、弾性波共振器20としてのCTEは支持基板10のCTEに近づく。しかし、支持基板10のCTEより小さくはならない。
【0043】
一般的に線膨張係数は材料によらず正である。また、一般的な圧電基板12として用いられる材料ではTCVは負である。このため、TCFは負となってしまう。そこで、温度補償層13として正のTCVを有する材料を用いる。これにより、温度補償層13の正のTCVが圧電基板12の負のTCVおよび支持基板10のCTEを補償する。よって、TCFを0付近にすることができる。
【0044】
[中間層を設ける理由の説明]
[実験]
実施例1、比較例1および2の弾性波共振器を作成した。図5(a)および図5(b)は、それぞれ比較例1および2に係る弾性波共振器の断面図である。図5(a)に示すように、比較例1では、圧電基板12の下に温度補償層13が設けられ、温度補償層13の下に中間層11が設けられている。中間層11の下に支持基板10が設けられている。温度補償層13と中間層11との間で常温接合した。その他の構成は実施例1と同じである。
【0045】
図5(b)に示すように、比較例2では、圧電基板12の下に温度補償層13が設けられ、温度補償層13の下に支持基板10が設けられている。温度補償層13は温度補償層13aおよび13bを備え、温度補償層13aと13bとの間に中間層11が設けられている。温度補償層13aと中間層11との間で常温接合した。その他の構成は実施例1と同じである。
【0046】
弾性波共振器の作製条件は以下である。
弾性波の波長λ:5μm
IDT22の対数:100対
開口長:20λ
デュティ比:50%
弾性波の波長λはIDT22の電極指15の平均ピッチのほぼ2倍である。
【0047】
圧電基板12:厚さT2が2μm(0.4λ)の42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
中間層11:厚さT1が10nmの多結晶酸化アルミニウム層
温度補償層13:厚さT3が2μm(0.4λ)の酸化シリコン膜
支持基板10:厚さT0が500μmの単結晶サファイア基板
【0048】
図6は、実施例1、比較例1および2における周波数に対するQ値を示す図である。作製した弾性波共振器の共振周波数および反共振周波数は、それぞれ約760MHzおよび約790MHzである。図6に示すように、実施例1では、比較例1および2に比べQ値が高い。
【0049】
このように、温度補償層13と圧電基板12との間に中間層11を設けることでQ値が向上する理由は例えば以下のように考えられる。IDT22は圧電基板12に弾性表面波を励振する。例えば圧電基板12が40°~48°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板の場合、IDT22は主にSH(Shear Horizontal)波を励振する。SH波は圧電基板12の表面に平行でかつSH波の伝搬方向に直交方向に変位する波である。温度補償層13のTCVが圧電基板12の負のTCVおよび支持基板10の-CTEを補償するには、温度補償層13内に弾性表面波の変位が分布していることが求められる。
【0050】
そこで、基板内の共振周波数における変位分布をシミュレーションした。図7(a)および図7(b)は、シミュレーションAおよびBにおける弾性波共振器の断面図である。図7(a)に示すように、シミュレーションAでは、基板を圧電基板12である42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板のみとし、支持基板10および温度補償層13を設けていない。図7(b)に示すように、シミュレーションBでは、基板を支持基板10であるサファイア基板と圧電基板12である42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板とし、温度補償層13および中間層11を設けていない。圧電基板12の厚さT2は約0.7λとした。シミュレーションAおよびBとも電極指15が接する圧電基板12の表面を0とし、基板の深さ方向を位置Zとした。
【0051】
図8(a)および図8(b)は、シミュレーションAおよびBにおける位置Zに対する変位分布を示す図である。図8(a)および図8(b)の上に圧電基板12および支持基板10の範囲を示す両矢印を図示している。図8(a)に示すように、シミュレーションAでは、Z/λが2以下にほとんどの変位が収まる。特に、Z/λが1.5以下にほとんどの変位の分布が収まる。これは、弾性表面波は圧電基板12の表面から約2λ(特に1.5λ)までの範囲を伝搬することを示している。図8(b)に示すように、シミュレーションBでは、Z/λが1以下にほとんどの変位が収まる。特に支持基板10内にはほとんど変位が分布しない。これは、支持基板10の横波の音速が大きいためである。
【0052】
以上のシミュレーションのように、弾性表面波は、基板表面近くを伝搬する。よって、圧電基板12を薄くし、圧電基板12の下に温度補償層13を設けることで、温度補償層13内に弾性表面波の変位が分布し、TCFを0付近にすることができる。圧電基板12の厚さT2は、弾性波の波長λ以下が好ましく、0.9λ以下がより好ましく、0.8λ以下がさらに好ましい。弾性表面波を伝搬させるため、圧電基板12の厚さT2は、0.1λ以上が好ましく、0.2λ以上がより好ましい。
【0053】
次に、バルク波について説明する。図9(a)および図9(b)は、バルク波を説明する断面図である。図9(a)に示すように、圧電基板12と支持基板10との間に温度補償層13が設けられている。IDT22が圧電基板12の表面にSH波等の弾性表面波52を励振する。弾性表面波52の変位が存在する厚さT4は2λ程度である。IDT22が弾性表面波52を励振するとき、IDT22は圧電基板12内にバルク波58を放出する。バルク波58は主モードの弾性表面波52に比べて1/10の大きさである。バルク波58が存在する厚さは10λ程度である。圧電基板12の厚さT2は厚さT4より小さい。これにより、弾性表面波52の変位は圧電基板12と温度補償層13の両方に分布する。よって、TCFを抑制できる。しかし、弾性表面波52に加えバルク波58も温度補償層13内を伝搬する。これにより、弾性表面波52のエネルギーがバルク波58として失われる。よって、弾性波共振器の損失が大きくなる。
【0054】
図9(b)に示すように、実施例1では、圧電基板12と温度補償層13との間に横波の音速の速い中間層11を設ける。これにより、バルク波58は圧電基板12に閉じ込められやすくなり、温度補償層13を伝搬するバルク波58aのエネルギーが小さくなる。これにより、弾性波共振器のQ値が向上すると考えられる。
【0055】
図10(a)および図10(b)は、実施例1において、中間層の厚さT1に対する最大のQ値を示す図である。図10(a)は、図6と同じ条件で作製した共振周波数が約600MHzの弾性波共振器である。なお、図6とは同じ弾性波共振器ではないためQ値は図6と一致していない。図10(b)は、共振周波数が約2.5GHzの弾性波共振器である。厚さT2およびT3を0.4λとした。
【0056】
図10(a)および図10(b)に示すように、中間層11の厚さT1が10nm以下ではQ値はほとんど変わらないが、T1が厚くなるとQ値が低下する。T1は20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。これにより、Q値の低下を抑制できる。T1が薄すぎると中間層11のQ値の改善の効果が低下してしまう。よって、T1は2.5nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましい。
【0057】
図10(a)と図10(b)とを比べると、好ましい厚さT1は共振周波数(すなわち弾性波の波長)によらない。よって、弾性波共振器の共振周波数が1000MHzまたは800MHz以下の場合でも、中間層11の厚さは20nm以下でもよい。
【0058】
支持基板10の横波の音速を圧電基板12の横波の音速より速くする。これにより、バルク波58は圧電基板12および温度補償層13内に閉じ込められる。圧電基板12、中間層11および温度補償層13の合計の厚さT1+T2+T3が厚いと、バルク波58は温度補償層13を伝搬するため、損失が大きくなる。T1+T2+T3は温度補償層13に弾性表面波52が分布する範囲であればよい。よって、図9(a)および図9(b)の結果から、T1+T2+T3は2λ以下が好ましく、1.5λ以下がより好ましい。これにより、弾性波共振器の損失を抑制できる。
【0059】
[実施例1の変形例1]
図11(a)は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器の断面図である。図11(a)に示すように、支持基板10と温度補償層13との界面を粗面56としている。粗面56には複数の凸部および複数の凹部が設けられている。粗面56は、支持基板10の上面をグラインダで研削することにより形成した。粗面56は、原子またはイオンを支持基板10の上面に照射することにより形成してもよい。
【0060】
図11(b)は、算術平均粗さRaに対する不要応答のピーク値を示す図である。算術平均粗さRaは支持基板10と温度補償層13との界面の算術平均粗さ(中心線平均粗さ)である。不要応答のピーク値は、バルク波に起因する不要応答の大きさを示す。図11(b)に示すように、Raが大きくなると不要応答は小さくなる。これは、バルク波58の粗面における反射が抑制されるためである。Raは0.02λ以上が好ましく、0.04λ以上がより好ましい。
【0061】
[実施例1の変形例2-4]
図12(a)から図12(d)は、実施例1およびその変形例2から4の中間層および温度補償層付近の断面図である。図12(a)に示すように、実施例1では、中間層11と圧電基板12との間を常温接合している。このため、中間層11は多結晶層11aとアモルファス層11bを備え、圧電基板12は単結晶層12aとアモルファス層12bを備える。アモルファス層12bは圧電性が低いため、アモルファス層12bが厚いと、弾性波共振器の特性が劣化する。よって、アモルファス層12bはアモルファス層11bより薄いことが好ましい。
【0062】
アモルファス層11bの主成分は多結晶層11aの主な構成元素であり、アモルファス層12bの主成分は単結晶層12aの主な構成元素である。よって、アモルファス層11bは中間層11の一部であり、アモルファス層12bは圧電基板12の一部である。よって、図12(a)の場合、中間層11は圧電基板12に接して設けられている。
【0063】
図12(b)に示すように、実施例1の変形例2では、温度補償層13と中間層11との間を常温接合している。このため、中間層11は多結晶層11aとアモルファス層11bを備え、温度補償層13は、活性化のための元素(例えばAr)を含有しない温度補償層13aと活性化のための元素を含むアモルファス層13cを備える。温度補償層13aは多結晶層またはアモルファス層である。アモルファス層11bは、温度補償層13の構成元素のうち中間層11の構成元素以外の元素をほとんど含まない。例えば、中間層11が酸化アルミニウム層であり、温度補償層13が酸化シリコン膜とき、アモルファス層11bはSiをほとんど含まない。
【0064】
図12(c)に示すように、実施例1の変形例3では、温度補償層13aと13bとを常温接合している。このため、温度補償層13は、活性化のための元素(例えばAr)を含有しない温度補償層13aおよび13bと活性化のための元素を含むアモルファス層13cおよび13dを備える。アモルファス層13cと13dとが常温接合されている。温度補償層13aおよび13bは多結晶層またはアモルファス層である。
【0065】
図12(d)に示すように、実施例1の変形例4では、温度補償層13と支持基板10とを常温接合している。このため、温度補償層13は、活性化のための元素(例えばAr)を含有しない温度補償層13aと活性化のための元素を含むアモルファス層13cを備える。支持基板10は、活性化のための元素を含有しない支持基板10aと活性化のための元素を含むアモルファス層10bを備える。アモルファス層13cと10bとが常温接合されている。支持基板10aは単結晶基板、多結晶基板またはアモルファス基板である。
【0066】
圧電基板12にアモルファス層11bを形成しないため、実施例1の変形例2から4のように、中間層11の下面と温度補償層13の上面、温度補償層13aと13bとの界面、または温度補償層13の下面と支持基板10の上面とを常温接合することが好ましい。
【0067】
[実施例1の変形例5-7]
図13(a)から図13(c)は、実施例1の変形例5から7の中間層および温度補償層付近の断面図、図13(d)は、接合層の断面図である。図13(a)に示すように、実施例1の変形例5では、温度補償層13と中間層11との間に接合層28が設けられている。図13(b)に示すように、実施例1の変形例6では、温度補償層13aと13bとの間に接合層28が設けられている。図13(c)に示すように、実施例1の変形例7では、支持基板10と温度補償層13との間に接合層28が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0068】
図13(d)に示すように、接合層28は、接合層28aおよび28bとアモルファス層18cおよび18dを備えている。接合層28aおよび28bは活性化のための元素を含まず、アモルファス層18cおよび28dは活性化のための元素を含む。接合層28aおよび28bは例えばシリコン層である。酸化シリコン膜は表面活性化法では接合しにくい。このような場合、酸化シリコン膜の表面に接合層28aおよび28bを形成し、接合層28aと28bとを表面活性化法を用い接合してもよい。接合層28はシリコン層以外にチタン層またはニッケル層でもよい。接合層28は表面活性化法以外の方法を用い圧電基板12と支持基板10とを接合してもよい。
【0069】
圧電基板12から遠い箇所で接合するため、実施例1の変形例5から7のように、接合層28は、中間層11の下面と支持基板10の上面の間に設けることが好ましい。
【0070】
実施例1によれば、一対の櫛型電極18は、弾性波を励振する複数の電極指15を備え、複数の電極指15の平均ピッチ(すなわちλ/2)は圧電基板12の厚さT2の1/2以上である。中間層11(第1層)は、圧電基板12の櫛型電極18が設けられた面と反対の面に接して設けられ、圧電基板12の横波の音速より速い横波の音速を有する。温度補償層13(第2層)は、中間層11の圧電基板と反対の面に設けられ、温度補償層13の弾性定数の温度係数の符号が圧電基板12の弾性定数の温度係数の符号と反対であり、温度補償層13の横波の音速は圧電基板12の横波の音速より遅い。
【0071】
圧電基板12の厚さT2を複数の電極指15の平均ピッチの2倍以下(すなわち弾性波の波長λ以下)とすることで、温度補償層13内に弾性表面波52が分布する。これにより、図8(a)および図8(b)において説明したように、弾性波共振器20の温度特性を向上できる。しかし、温度補償層13の横波の音速が圧電基板12の横波の音速より遅いと、弾性波共振器20の損失が大きくなる。そこで、中間層11を設けることで、図9(a)および図9(b)において説明したように、弾性波共振器20の損失を抑制できる。電極指15の平均ピッチは、弾性波共振器20のX方向の長さを電極指15の本数で除することにより算出できる。
【0072】
中間層11の厚さは2.5nm以上であることが好ましい。これにより、弾性波共振器20の損失をより抑制できる。中間層11の厚さは20nm以下である。これにより、図10(a)および図10(b)のように、これにより、弾性波共振器20の損失をより抑制できる。中間層11は圧電性がない材料が好ましい。これにより、弾性波を圧電基板12により閉じ込めることができる。また、中間層11は導電性の低い材料が好ましい。これにより、弾性波を圧電基板12により閉じ込めることができる。
【0073】
支持基板10の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波共振器20の温度特性をより向上できる。支持基板10の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数の2/3以下が好ましく、1/2以下がより好ましい。バルク波58を圧電基板12、中間層11および温度補償層13に閉じ込めるため。支持基板10の横波の音速は、圧電基板12の横波の音速より速いことが好ましく、中間層11の横波の音速より速いことが好ましい。支持基板10の抗折強度は圧電基板12の抗折強度より大きいことが好ましい。これにより、耐衝撃性を向上できる。
【0074】
圧電基板12、中間層11および温度補償層13の合計の厚さT1+T2+T3は電極指15のピッチの4倍(2λ)以下である。これにより、バルク波58による弾性波共振器20の損失を抑制できる。
【0075】
支持基板10と温度補償層13との界面の算術平均粗さRaは、電極指15の平均ピッチの0.01倍(0.02λ)以上である。これにより、図11(b)のように、バルク波58に起因する不要応答を抑制できる。
【0076】
中間層11と温度補償層13とは接している。これにより、弾性波共振器20の温度特性をより向上できる。
【0077】
一対の櫛型電極18が主に励振する弾性波がSH波であるとき、バルク波58が励振しやすい。よって、中間層11を設けることが好ましい。
【0078】
特に、圧電基板12をタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板とし、中間層11を酸化アルミニウムを主成分とする層とし、温度補償層13を酸化シリコンを主成分とする層とする。これにより、弾性波共振器20としてのCTEを小さくすることができる。温度補償層13を設け、圧電基板12の厚さT2をλより小さくする。これにより、弾性表面波52が温度補償層13内に分布するため、TCFを0に近づけることができる。しかし、バルク波に起因した損失が大きくなる。そこで、厚さT1が2.5nm以上かつ20nm以下の中間層11を設ける。これにより、弾性波共振器20のQ値を向上できる。
【0079】
中間層11は酸化アルミニウムを主成分とするとは、中間層11は酸化アルミニウム以外に意図的にまたは意図せずに添加した不純物を含むことであり、例えば中間層11におけるアルミニウムと酸素の合計の原子濃度は50%以上であり、80%以上である。温度補償層13は酸化シリコンを主成分とするとは、温度補償層13は酸化シリコン以外に意図的にまたは意図せずに添加した不純物を含むことであり、例えば温度補償層13におけるシリコンと酸素の合計の原子濃度は50%以上であり、80%以上である。
【実施例2】
【0080】
図14(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。図14(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1の弾性波共振器を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタは、多重モード型フィルタでもよい。
【0081】
[実施例2の変形例1]
図14(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。図14(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0082】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0083】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 支持基板
11 中間層
12 圧電基板
13 温度補償層
15 電極指
18 櫛型電極
20 弾性波共振器
22 IDT
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14