IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ユピカ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】シートモールディングコンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C08J5/24 CER
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023128575
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2024-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森永 晶
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直久
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198641(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/080412(WO,A1)
【文献】特開昭50-014792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるシートモールディングコンパウンドであって、
前記熱硬化性樹脂が、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂を含有し、前記低収縮剤が、ポリスチレン/ポリ酢酸ビニルのブロック共重合体を含有し、
前記充填材がケイ素系充填材を含有し、
前記熱硬化性樹脂全量に対する、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂の含有量が、50~100質量%であり、
前記熱硬化性樹脂と前記重合性単量体の合計と、前記低収縮剤の質量比[熱硬化性樹脂と重合性単量体/低収縮剤]が60/40~90/10である、シートモールディングコンパウンド。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂と前記重合性単量体の合計と、前記低収縮剤の質量比[熱硬化性樹脂と重合性単量体/低収縮剤]が65/35~80/20である、請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項3】
前記ケイ素系充填材の含有量が、前記熱硬化性樹脂、前記重合性単量体及び前記低収縮剤の合計含有量を100質量部としたとき、5~50質量部である、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項4】
前記ケイ素系充填材の含有量が、前記熱硬化性樹脂、前記重合性単量体及び前記低収縮剤の合計含有量を100質量部としたとき、15~40質量部である、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項5】
前記ケイ素系充填材が、ガラス微小中空球フィラー、シリカ微小中空球フィラー、ケイ砂、珪藻土、結晶性シリカ、非晶質シリカ、雲母、及びガラス短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項6】
前記ハロゲン原子が、塩素又は臭素である、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項7】
前記強化繊維基材が、ガラス繊維からなる、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項8】
前記重合性単量体が、スチレン系単量体を含有する、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンドを成形して得られる電気部品用成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートモールディングコンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
シートモールディングコンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂と、希釈剤としてビニル系単量体を含むペースト状の組成物にガラス繊維や有機繊維などの繊維基材を含浸させたシート状の成形材料である。シートモールディングコンパウンドを加圧加熱成形することで成形品を得ることができる。シートモールディングコンパウンドは、主に浴槽、貯水槽、浄化槽等の成形材料として用いられているが、電気部品の材料として、電化製品のプラグや照明部材、ブレーカー基台などにも用いられている。
電気部品の材料には、火災に対する安全性の観点から、高い難燃性が必要とされる。そのため、難燃剤等を添加することによって、難燃性を有するシートモールディングコンパウンドを得る試みがなされている。
たとえば、特許文献1には、低収縮性と寸法安定性に加え、難燃性の向上を目的として、不飽和ポリエステル、重合性単量体、ポリ酢酸ビニルである低収縮化剤を含む樹脂成分と、水酸化アルミニウムと、難燃剤とを、それぞれ特定量含む、不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/080412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災が発生した際に、電気部品が炎に接触した場合、電気部品に用いられている樹脂材料の形状保持性が低下し、通電部が露出するおそれがあるという問題や、電気絶縁性が低下することで、感電が生じるおそれがあるという問題があった。電気部品に難燃剤を含む樹脂材料を使用することも、これらの問題に対する対策としては不十分であった。これは、難燃剤を含む樹脂材料であっても、可燃成分がガスとなり、成形品が脆くなり、形状保持性が低下するためと考えられる。また、炎に接触すると、表層部が炭化して、電気を容易に通すようになり、電気絶縁性が低下するためと考えられる。
そこで、本発明の課題は、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品を得ることができるシートモールディングコンパウンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、シートモールディングコンパウンドに、ハロゲン原子を有する特定の熱硬化性樹脂とケイ素系充填材を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるシートモールディングコンパウンドであって、前記熱硬化性樹脂が、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、前記充填材がケイ素系充填材を含有する、シートモールディングコンパウンド。
[2]前記熱硬化性樹脂全量に対する、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂の合計含有量が、50~100質量%であり、前記熱硬化性樹脂と前記重合性単量体の合計と、前記低収縮剤の質量比[熱硬化性樹脂と重合性単量体/低収縮剤]が60/40~90/10である、上記[1]に記載のシートモールディングコンパウンド。
[3]前記ケイ素系充填材の含有量が、前記熱硬化性樹脂、前記重合性単量体及び前記低収縮剤の合計含有量を100質量部としたとき、5~50質量部である、上記[1]又は[2]に記載のシートモールディングコンパウンド。
[4]前記ケイ素系充填材の含有量が、前記熱硬化性樹脂、前記重合性単量体及び前記低収縮剤の合計含有量を100質量部としたとき、15~40質量部である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンド。
[5]前記ケイ素系充填材が、ガラス微小中空球フィラー、シリカ微小中空球フィラー、ケイ砂、珪藻土、結晶性シリカ、非晶質シリカ、雲母、及びガラス短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンド。
[6]前記ハロゲン原子が、塩素又は臭素である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンド。
[7]前記強化繊維基材が、ガラス繊維からなる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンド。
[8]前記重合性単量体が、スチレン系単量体を含有する、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンド。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のシートモールディングコンパウンドを成形して得られる電気部品用成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品を得ることができるシートモールディングコンパウンドを提供することができる。そのため、前記シートモールディングコンパウンドは、電気部品に用いられる成形材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[シートモールディングコンパウンド]
本発明のシートモールディングコンパウンドは、熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるシートモールディングコンパウンドであって、前記熱硬化性樹脂が、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、前記充填材がケイ素系充填材を含有する、シートモールディングコンパウンドである。
本発明のシートモールディングコンパウンドは、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品を得ることができるため、電気部品に用いられる成形材料として有用である。
本発明のシートモールディングコンパウンドが、上記のような優れた効果を発揮することができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のシートモールディングコンパウンドに用いられるハロゲン原子を有する熱硬化性樹脂とケイ素系充填材は、難燃性を発揮するとともに、炎に接触した場合にも、特に成形品の表面における炭化層の形成を抑制し、表面形状を維持することができるため、得られる成形品は、形状保持性や電気特性が良好になるものと考えられる。
【0008】
<樹脂組成物>
本発明のシートモールディングコンパウンドを構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物であり、前記熱硬化性樹脂が、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、前記充填材がケイ素系充填材を含有する。
【0009】
(熱硬化性樹脂)
前記樹脂組成物に含有される熱硬化性樹脂は、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する。
熱硬化性樹脂としては、これらのなかでも、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0010】
熱硬化性樹脂は、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる1つ以上のみからなっていてもよいが、前記樹脂組成物に含有される熱硬化性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、ハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、好ましくはハロゲン原子を有さない熱硬化性樹脂であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有さない不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有さないビニルエステル樹脂、ハロゲン原子を有さないウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、更に好ましくは、ハロゲン原子を有さない不飽和ポリエステル樹脂である。
ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂の合計含有量は、熱硬化性樹脂全量に対して、成形品の難燃性の観点から、好ましくは40~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、更に好ましくは60~100質量%であり、より更に好ましくは70~100質量%であり、より更に好ましくは80~100質量%である。
前記ハロゲン原子は、好ましくは塩素又は臭素であり、より好ましくは臭素である、また、塩素と臭素の両方を含んでいてもよい。
【0011】
前記熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは7~40質量%であり、より好ましくは8~35質量%であり、更に好ましくは10~30質量%であり、より更に好ましくは15~25質量%である。
【0012】
〔ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂〕
ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂は、ハロゲン原子を有し、不飽和結合を有するポリエステルであれば、特に制限はないが、飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位、不飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位及びジオールを由来とする構成単位を含有することが好ましく、実質的に飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位、不飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位及びジオールを由来とする構成単位からなることがより好ましい。
なお、1つ以上の構成単位がハロゲン原子を含む。
【0013】
飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位を与える飽和ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、芳香族ジカルボン酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、原料の入手のし易さと得られる不飽和ポリエステルの性能とのバランスという観点から、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つである。前記芳香族ジカルボン酸は無水物を用いてもよい。前記芳香族ジカルボン酸を用いることにより機械的性能、耐水性、耐薬品性に優れる不飽和ポリエステル樹脂が得られる。
脂環式ジカルボン酸としては、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、炭素数16~18のアルキル基で置換されたコハク酸、ダイマー酸等が挙げられる。
飽和ジカルボン酸は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0014】
不飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位を与える不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくはマレイン酸、及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、更に好ましくは無水マレイン酸である。
不飽和ジカルボン酸は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0015】
ジオールを由来とする構成単位を与えるジオールとしては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、エーテル化ジフェノール、ポリアルキレングリコール等が挙げられ、好ましくは脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノエート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、好ましくは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール及び1,8-オクタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、更に好ましくはネオペンチルグリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも2つであり、より更に好ましくはネオペンチルグリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールである。
脂肪族ジオールは、単独で用いても、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用することが好ましい。
【0016】
脂環式ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。
エーテル化ジフェノールとしては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ジオールは、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0017】
前記不飽和ポリエステル樹脂には、上記に説明した構成単位以外の他の構成単位を含んでもよい。他の構成単位を与える成分としては、モノカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸、モノアルコール、3価以上の多価アルコール、及びヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
なお、前記カルボン酸成分(飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、モノカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸)として、その低級アルキルエステル及び無水物を用いてもよい。
【0018】
ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂はハロゲン原子を含むが、ハロゲン原子を有するジオールからなる成分及びハロゲン原子を有するジカルボン酸からなる成分からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、ハロゲン原子を有するジオールからなる成分を含むことがより好ましい。
ハロゲン原子を有するジオールとしては、臭素を含むジオールが好ましく、臭素化ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、臭素化ビスフェノールF及びそのアルキレンオキシド付加物、及び臭素化ビスフェノールS及びそのアルキレンオキシド付加物、並びに2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましく、テトラブロモビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、テトラブロモビスフェノールS及びそのアルキレンオキシド付加物、並びに2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが更に好ましく、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン及び2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより更に好ましい。
ハロゲン原子を有するジカルボン酸としては、臭素を含むジカルボン酸、及び塩素を含むジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、臭素を含むジカルボン酸がより好ましい。
臭素を含むジカルボン酸としては、ブロモマレイン酸及びブロモフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
塩素を含むジカルボン酸としては、クロロマレイン酸、ヘット酸及びヘット酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0019】
前記カルボン酸成分(飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、モノカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸)のカルボキシ基の合計と前記アルコール成分(2価アルコール、モノアルコール、3価以上の多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸)の水酸基の合計のモル比[カルボキシ基/水酸基]は、好ましくは0.9/1.1~1.1/0.9であり、より好ましくは0.95/1.05~1.05/0.95である。
前記カルボン酸成分(飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、モノカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸)を由来とする構成単位中の不飽和ジカルボン酸を由来とする構成単位の比率(モル)は、カルボキシ基数換算で、好ましくは70~99モル%であり、より好ましくは80~99モル%であり、更に好ましくは90~99モル%であり、より更に好ましくは90~98モル%である。
前記アルコール成分(ジオール、モノアルコール、3価以上の多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸)を由来とする構成単位中のジオールを由来とする構成単位の比率(モル)は、水酸基数換算で、好ましくは50~100モル%であり、より好ましくは60~100モル%であり、更に好ましくは80~100モル%であり、より更に好ましくは90~100モル%であり、前記アルコール成分を由来とする構成単位は、ジオールを由来とする構成単位のみからなっていてもよい。
【0020】
前記不飽和ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限はないが、前記で説明したカルボン酸成分とアルコール成分を反応させることによって得ることができる。
その際にはエステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウムおよびマンガンより選ばれる少なくとも一種の金属化合物が挙げられる。エステル化触媒の添加量は、飽和カルボン酸成分に対して、好ましくは0.01~1.5モル%である。
なお、不飽和結合の反応を抑制するために、必要に応じて、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルカテコール等の多価フェノール系重合禁止剤、パラベンゾキノン、トルキノン等のキノン系重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、カルボン酸成分とアルコール成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.002~1.0質量部であり、より好ましくは0.005~0.3質量部である。
反応温度は、好ましくは150~280℃であり、より好ましくは160~250℃である。
反応の終点は、反応混合物の酸価や縮合水(低級アルキルエステルを原料とする場合にはアルコール)の発生量、得られるポリエステルの粘度等で判断することができる。
【0021】
〔ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂〕
ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂は、特に制限はないが、エポキシ樹脂と不飽和塩基酸を付加反応させた重合体とすることができ、エポキシアクリレートとも呼ばれるものである。
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されず、エピ・ビス型グリシジルエーテル、ノボラック型グリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、その他グリシジルエーテル、含窒素型、グリシジルエステル、過酢酸酸化型、グリコール型グリシジルエーテル等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂はハロゲン原子を含むが、ハロゲン原子を有するエポキシ樹脂からなる成分を含むことが好ましい。
ハロゲン原子を有するエポキシ樹脂としては、臭素化ビスフェノール型エポキシ化合物が好ましく、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、及び臭素化ビスフェノールS型エポキシ化合物がからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましく、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物が更に好ましい。
前記不飽和塩基酸としては特に限定されず、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシメチルメタクリレート・マレート、ヒドロキシエチルアクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート、ジシクロペンタジエンアクリレート・マレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂の製造方法については特に限定されず、従来公知の方法によればよく、具体的には、「ビニルエステル樹脂」(ビニルエステル樹脂研究会編、化学工業日報社、1993年)に記載の方法等により、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂を製造することができる。
【0023】
〔ハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂〕
ハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂は、特に制限はないが、分子内にウレタン結合と(メタ)アクリレート基を有し、ハロゲン原子を有するラジカル重合性化合物であり、成形、硬化することで、成形品を構成するものである。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」からなる群より選ばれる少なくとも1つのことをいう。
【0024】
本発明に用いられるウレタンアクリレート樹脂には、特に制限はなく、ポリイソシアネートのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの付加物であればよい。
「ポリイソシアネートのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの付加物」とは、ポリイソシアネートのイソシアネート基と、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートのヒドロキシル基(水酸基)からウレタン結合を形成することで得られる、付加物のことである。
なお、本発明に用いられるウレタンアクリレート樹脂には、更にポリオール又はポリエステルポリオールからなる成分を含んでいてもよく、ハロゲン原子を有するポリオールからなる成分を含むことが好ましい。
以下にハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂の詳細を説明するが、以下のようなウレタンアクリレート樹脂を用いることで、得られる成形品が、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れるものとなる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられ、脂環式イソシアネート化合物及び脂肪族イソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、脂環式イソシアネート化合物及び脂肪族イソシアネート化合物の両方であることがより好ましい。また、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート(ヌレート型ポリイソシアネート)、ポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等も好適に用いられる。
【0026】
芳香族イソシアネート化合物としては、1,3-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式イソシアネート化合物としては、水添キシリレンジイソシアネート(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
ポリイソシアネートのうち、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート及びこれらのヌレート型ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのヌレート型ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イソホロンジイソシアネート及びこれらのヌレート型ポリイソシアネートが更に好ましい。
【0028】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0029】
ポリオール又はポリエステルポリオールからなる成分を含む場合、使用できるポリオールとしては、脂肪族ジオール、エーテル化ジフェノール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、不飽和酸及び飽和酸からなる群より選ばれる少なくとも1つと、脂肪族ジオール及びエーテル化ジフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1つを重縮合させたものが挙げられる。
ハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂はハロゲン原子を含むが、ハロゲン原子を有するポリオールからなる成分を含むことが好ましい。
ハロゲン原子を有するポリオールとしては、臭素を含むグリコールが好ましく、臭素化ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、臭素化ビスフェノールF及びそのアルキレンオキシド付加物、及び臭素化ビスフェノールS及びそのアルキレンオキシド付加物、並びに2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましく、テトラブロモビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、テトラブロモビスフェノールS及びそのアルキレンオキシド付加物、並びに2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが更に好ましく、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン及び2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより更に好ましい。
【0030】
(重合性単量体)
前記樹脂組成物は、重合性単量体を含有する。
重合性単量体は、硬化前は希釈剤として樹脂組成物に流動性を持たせ、樹脂の溶剤としても機能する。硬化後は架橋部分として、得られる成形品の強度や硬度を改善することができる。
重合性単量体は、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体及び酢酸ビニル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、スチレン系単量体が更に好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、ビニルトルエン及びα-メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、スチレンがより好ましい。
(メタ)アクリル酸系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合性単量体の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは6~25質量%であり、更に好ましくは7~20質量%であり、より更に好ましくは8~15質量%である。
【0031】
(低収縮剤)
前記樹脂組成物は、低収縮剤を含有する。
低収縮剤としては、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン/ポリ酢酸ビニルのブロック共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、飽和ポリエステルからなる少なくとも1つが好ましい。
【0032】
前記低収縮剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは6~13質量%であり、更に好ましくは6.5~11質量%であり、より更に好ましくは6.5~9質量%である。前記低収縮剤の含有量が前記範囲であることによって、シートモールディングコンパウンドの硬化時の収縮を効果的に抑制でき、更に成形品の形状保持性も良好にすることができる。
また、前記熱硬化性樹脂と前記重合性単量体の合計と、前記低収縮剤の質量比[熱硬化性樹脂と重合性単量体/低収縮剤]は、収縮を抑制する観点、及び成形品の形状保持性の観点から、好ましくは60/40~90/10であり、より好ましくは65/35~80/20である。
【0033】
(硬化剤)
前記樹脂組成物は、硬化剤を含有する。
硬化剤は、成形時に、均質な硬化物を速やかに得るために用いられる。これらの種類及び量は用途によって使い分ければよい。
硬化剤は、パーオキサイド類であることが好ましい。
パーオキサイド類は、ケトンパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系及びジアルキルパーオキサイド系からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、パーオキシエステル系がより好ましい。
硬化剤の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~4質量%であり、更に好ましくは0.2~2質量%であり、より更に好ましくは0.3~1質量%である。
【0034】
(重合禁止剤)
前記樹脂組成物は、重合禁止剤を含有する。
重合禁止剤は、製造時のゲル化防止、成形時の可使時間確保、貯蔵安定性の向上のために配合される。好適に使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルカテコール等の多価フェノール系重合禁止剤、パラベンゾキノン、トルキノン等のキノン系重合禁止剤が挙げられ、多価フェノール系重合禁止剤が好ましい。
重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.001~0.1質量%であり、より好ましくは0.005~0.05質量%である。
【0035】
(充填材)
前記樹脂組成物は、充填材を含有し、前記充填材はケイ素系充填材を含有する。
充填材としてケイ素系充填材を用いることで、炎に接触しても形状保持性の高い成形品が得られるシートモールディングコンパウンドを得ることができる。
【0036】
ケイ素系充填材は、好ましくは、ガラス微小中空球フィラー、シリカ微小中空球フィラー、ケイ砂、珪藻土、結晶性シリカ、非晶質シリカ、雲母、及びガラス短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、より好ましくは、ガラス微小中空球フィラー、シリカ微小中空球フィラー、結晶性シリカ、非晶質シリカ、雲母、及びガラス短繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、更に好ましくは、ガラス微小中空球フィラー、及びシリカ微小中空球フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する。
前記樹脂組成物に含有される充填材は、本発明の効果を損なわない範囲で、ケイ素系充填材以外の充填材を含有していてもよい。
【0037】
ケイ素系充填材以外の充填材としては、水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。
前記充填材として、水酸化アルミニウムを含むことで、難燃性をより高めることができる。
前記樹脂組成物が水酸化アルミニウムを含む場合、ケイ素系充填材と水酸化アルミニウムの質量比[ケイ素系充填材/水酸化アルミニウム]は、好ましくは2/98~30/70であり、より好ましくは3/97~30/70であり、更に好ましくは5/95~20/80である。
充填材の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは30~80質量%であり、より好ましくは40~70質量%であり、更に好ましくは45~65質量%であり、より更に好ましくは50~60質量%である。
前記ケイ素系充填材の含有量は、形状保持性を高める観点から、充填材全量に対して、好ましくは2~30質量部であり、より好ましくは3~25質量部であり、更に好ましくは5~20質量部であり、より更に好ましくは5~15質量部である。
前記ケイ素系充填材の含有量は、形状保持性を高める観点から、前記熱硬化性樹脂、前記重合性単量体及び前記低収縮剤の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、更に好ましくは15~40質量部であり、より更に好ましくは15~35質量部である。
【0038】
(その他の成分)
前記樹脂組成物は、その他の成分として、増粘剤、離型剤、湿潤分散剤等を含有していてもよい。これらは、用途に応じて、熱硬化性樹脂の合成中に添加してもよいし、樹脂組成物の各成分を配合する際に混合してもよいし、使用直前に混合してもよい。
【0039】
増粘剤は、樹脂組成物を高粘度にし、ゲル状にするために用いられる。これらの種類及び量は用途によって使い分ければよい。
増粘剤は、アルカリ土類金属の酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルカリ土類金属の酸化物がより好ましい。
アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化マグネシウムが好ましい。
アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好ましい。
増粘剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~4質量%であり、更に好ましくは0.3~2質量%であり、より更に好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0040】
離型剤は、成形品の離型性を向上させ、成形性をより高めるために配合される。離型剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、ポリオレフィンワックス、石油系ワックス及び動物・植物系ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、脂肪酸金属塩がより好ましい。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルチミン酸などが挙げられ、脂肪酸金属塩としてはステアリン酸の金属塩、パルチミン酸の金属塩が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスが挙げられる。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス等が挙げられる。
動物・植物系ワックスとしてはカルナバワックス、モンタンワックス等が挙げられる。離型剤は、単独で使用しても2種以上併用してもよい。離型剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~3質量%である。
【0041】
湿潤分散剤は、樹脂組成物の粘度を調整するために配合される。
湿潤分散剤としては、変性ポリウレタン、リン酸エステル、リン酸ポリエステルなどが挙げられる。湿潤分散剤は、単独で使用しても2種以上併用してもよい。湿潤分散剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.3~3.0質量%であり、より好ましくは0.5~2.5質量%である。
【0042】
<強化繊維基材>
本発明のシートモールディングコンパウンドに含まれる強化繊維基材は、ガラス繊維からなる基材が好ましい。
強化繊維基材の形態は、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられ、チョップドロービング及びチョップドストランドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。繊維基材は、単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
強化繊維基材の含有量は、シートモールディングコンパウンド中、好ましくは20~50質量%であり、より好ましくは20~45質量%であり、更に好ましくは20~40質量%であり、より更に好ましくは25~35質量%である。
【0043】
<シートモールディングコンパウンドの製造方法及び電気部品用成形品>
本発明のシートモールディングコンパウンドは、前記のとおり、熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるものであれば、その製造方法は特に制限はないが、以下に示す方法によって製造することが好ましい。
前記樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させて、シート状のコンパウンドを得て、両面をフィルムで覆うことで取り扱い性を良好にする。
具体的には、2枚のフィルムに樹脂組成物を塗布し、樹脂組成物上に強化繊維基材を散布し、2枚のフィルムの樹脂組成物側を貼り合わせ、積層したフィルムを両側から加圧することで樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させる。その後、熟成させ、半固形状のコンパウンドを中間基材とする積層したシート状物が得られる。
成形時には、上記シート状物を裁断して、金型にチャージして、加圧加熱し、硬化させて成形品を得る。
本発明のシートモールディングコンパウンドは、上記の構成を有することから、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品が得られる。
【0044】
本発明の電気部品用成形品は、前記シートモールディングコンパウンドを成形して得られる。
本発明の電気部品用成形品は、前記シートモールディングコンパウンドを裁断して、金型にチャージして、加圧加熱し、硬化させて得られる。
本発明の電気部品用成形品は、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる。
【実施例
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、本実施例における測定及び評価は以下の方法で行った。原料の種類、原料の量、測定の結果、及び評価の結果は表1に示す。なお、原料の量の数字は「質量部」である。表1は表1(1)と表(2)に分割して記載する。
【0046】
<成形品の製造>
実施例及び比較例で得られたシートモールディングコンパウンドを、次の条件で成形し、以下の評価に用いる成形品を得た。
シートモールディングコンパウンドを、300mm×300mmの平板金型を用いて、加熱圧縮成形した。成形条件は、金型温度を平板表面、裏面とも140℃とし、成形圧力を8MPa、金型内保持時間を300秒とした。その後、成形品を金型から脱型し、直ちに鉄板の間に挟んで冷却し、厚さ2mmの平板状の成形品を得た。
【0047】
<難燃性評価(UL94垂直燃焼試験)>
UL94垂直燃焼試験法に従って、難燃性の試験を行い、難燃性を評価した。試験片の厚さは2mmとした。結果を次の基準で評価した。UL94規格に適合するもののうち、V-0が最も優れ、次にV-1、V-2の順である。
(評価基準)
◎:V-0
○:V-1
△:V-2
×:UL94規格に不適合
【0048】
<電気特性の評価(耐トラッキング性試験)>
10cm四方に切削加工した前記成形品(平板)を2本のクランプで掴み、固定した。次に平板下方から500Wガスバーナーを当てて10分間加熱した。この時、ガスバーナー口から平板までの距離は90mmとした。10分後、ガスバーナーを消火し、平板を冷却した。
以上のように加熱処理した平板をJIS-C-2134に従って耐トラッキング性を評価した。トラッキング指数(TI)が大きいものほど電気絶縁性に優れ、電気特性が良好である。本実施例においては、トラッキング指数(TI)が400Vを超えるものが電気絶縁性に優れ、電気特性が良好である。
【0049】
<形状保持性の評価(硬度試験)>
10cm四方に切削加工した前記成形品(平板)を2本のクランプで掴み、固定した。次に平板下方から500Wガスバーナーを当てて10分間加熱した。この時、ガスバーナー口から平板までの距離は80mmとした。10分後、ガスバーナーを消火し、平板を冷却した。
以上のように加熱処理した平板の中心部にショアーA硬度計を押し当てて、加熱処理後の成形品の硬度を測定した。硬度の数値の大きいものが、形状保持性が良好である。
【0050】
製造例1(臭素原子を有する不飽和ポリエステル樹脂の製造)
2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン3145質量部、1,2-プロパンジオール703質量部、無水フタル酸42質量部、無水マレイン酸1366質量部を、撹拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら190℃で8時間重縮合反応させた。固形分酸価が35mgKOH/g(測定方法はJIS K 6901:2021。以下の製造例も同様。)に達したところで冷却して反応を終了し、臭素原子を有する不飽和ポリエステル樹脂(UP-1)を得た。
【0051】
製造例2(不飽和ポリエステル樹脂の製造)
ジプロピレングリコール713質量部、ネオペンチルグリコール1383質量部、イソフタル酸441質量部を、撹拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら210℃で重縮合反応させた。固形分酸価が10mgKOH/g以下となったところで150℃以下まで冷却した。次に1,2-プロパンジオール647質量部、無水マレイン酸2343質量部を更に加えて、窒素雰囲気下、撹拌しながら210℃で重縮合反応させた。固形分酸価が27mgKOH/g以下となったところで冷却して反応を終了し、不飽和ポリエステル樹脂(UP-2)を得た。
【0052】
製造例3(臭素原子を有するビニルエステル樹脂の製造)
テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂2961質量部、メタクリル酸657質量部、トリフェニルスチビン11質量部、トルハイドロキノン1質量部、2-メチルイミダゾール4質量部を、撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計、ガス導入管を備えたガラス製反応容器に仕込み、空気を吹き込みながら、撹拌しながら130℃で付加反応させた。固形分酸価が5.0mgKOH/gとなったところで冷却して反応終了とし、臭素原子を有するビニルエステル樹脂(VE-1)を得た。
【0053】
製造例4(臭素原子を有するウレタンアクリレート樹脂の製造)
撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計、ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、イソホロンジイソシアネート1152質量部とジブチル錫ジラウレート0.7質量部を仕込み、撹拌しながら、空気を吹き込みつつ85℃になるまで加熱した。別途、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン1696質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート650質量部及びジブチルヒドロキシトルエン1.4質量部の混合液を調製した。ガラス製反応容器内の温度を85~95℃に保持しつつ、前記混合液の3分の1の量を30分毎に添加し、合計90分間反応させた。その後温度を95~105℃に保持した。反応はIRにて追跡し、イソシアネート基の吸収(2250cm-1付近)が一定になったところで反応が終了したものと判断し、臭素原子を有するウレタンアクリレート樹脂(UA-1)を得た。
【0054】
製造例5(臭素原子を有するウレタンアクリレート樹脂の製造)
撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計、ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、イソホロンジイソシアネート1607質量部とジブチル錫ジラウレート0.7質量部を仕込み、撹拌しながら、空気を吹き込みつつ85℃になるまで加熱した。別途、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール1435質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート455質量部及びジブチルヒドロキシトルエン1.4質量部の混合液を調製した。ガラス製反応容器内の温度を85~95℃に保持しつつ、前記混合液の3分の1の量を30分毎に添加し、合計90分間反応させた。更に温度を85~95℃に保持した。反応はIRにて追跡し、イソシアネート基の吸収(2250cm-1付近)が一定になったところで反応が終了したものと判断し、臭素原子を有するウレタンアクリレート樹脂(UA-2)を得た。
【0055】
実施例1(シートモールディングコンパウンドの製造)
樹脂組成物を次のように製造した。
不飽和ポリエステル樹脂UP-1 47質量部、スチレン28質量部、ポリスチレン/ポリ酢酸ビニルのブロック共重合体の30%スチレン溶液(製品名:モディパーSV30B30、日油株式会社製)25質量部、ハイドロキノン(精工化学株式会社製)0.03質量部、過酢酸ヘキシル(製品名パーヘキシルA、日油株式会社製)1.0質量部、ステアリン酸亜鉛(製品名:ZNS-P、株式会社ADEKA製)5質量部、水酸化アルミニウム(製品名:B-333L、アルモリックス株式会社製)120質量部、ガラス微小中空球フィラー1(製品名:グラスバブルスK37、スリーエムジャパン株式会社製)20質量部、湿潤分散剤(製品名:BYK-W9010、ビックケミー社製)2.5質量部を混合し、撹拌して樹脂ペーストとした後、酸化マグネシウムペースト(製品名:マグミクロンMD-4AM-2、御国色素株式会社製)2.0質量部、グレー色顔料ペースト(東京インキ株式会社製)10質量部を添加・混合し、樹脂組成物を得た。
【0056】
次に、シートモールディングコンパウンドを製造した。
上記のようにして得られた樹脂組成物を、上下に配置されたポリプロピレン製延伸キャリアフィルムにドクターブレードを用いて約1mmの厚さとなるように塗布した。下に配置されたフィルムに塗布された樹脂組成物の上に、ガラス繊維チョップ(TEX4800番相当のガラスロービングを約2.5cmの長さにカットしたもの)を均一に散布した。ガラス繊維チョップの量は、シートモールディングコンパウンド全量に対して22質量%とした。上下の樹脂組成物でガラス繊維チョップを挟むように貼り合わせ、次いで全体に圧力を加えガラス繊維チョップに樹脂組成物を含浸させた後、35℃~45℃で24時間保管して、シートモールディングコンパウンドを得た。
【0057】
実施例2~17及び比較例1~5(シートモールディングコンパウンドの製造)
実施例1において、樹脂組成物の原料を表1に示す種類と量に変更した以外は、実施例1と同様にして、シートモールディングコンパウンドを得た。
なお、表1に示す原料は以下の通りである。
・ガラス微小中空球フィラー2 製品名:グラスバブルスS28HS、スリーエムジャパン株式会社
・シリカ微小中空球フィラー 製品名:マールライトBA-15、丸中白土株式会社製
・ガラス短繊維 製品名:ミルドファイバーMF06JB1-20、旭ファイバーグラス株式会社製
・シリカ球状微粒子 製品名:マイクロンS4070、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
・雲母粉 製品名:雲母粉A-21、ヤマグチマイカ株式会社製
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1より、実施例のシートモールディングコンパウンドを成形して得られた成形品は、燃焼試験においても燃えることなく、高い燃焼性を有していることがわかる。更に加熱処理後の耐トラッキング性試験においても、トラッキングが生じず、電気絶縁性に優れることがわかる。また、加熱処理後の硬度も高く、形状も保持されることがわかる。これらのことから、本発明のシートモールディングコンパウンドは、難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品を得ることができることがわかる。本発明のシートモールディングコンパウンドは、上記のような優れた性質を有することから、電気部品に用いられる成形材料として有用である。
【要約】
【課題】難燃性に優れ、炎に接触し高温になった後にも形状保持性や電気特性に優れる成形品を得ることができるシートモールディングコンパウンドを提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂、重合性単量体、低収縮剤、硬化剤、重合禁止剤及び充填材を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させてなるシートモールディングコンパウンドであって、前記熱硬化性樹脂が、ハロゲン原子を有する不飽和ポリエステル樹脂、ハロゲン原子を有するビニルエステル樹脂、及びハロゲン原子を有するウレタンアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、前記充填材がケイ素系充填材を含有する、シートモールディングコンパウンド。
【選択図】なし