(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】眼をイメージングするための装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240910BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2023183633
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2022178927の分割
【原出願日】2022-11-08
【審査請求日】2023-10-26
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】三野 聡大
(72)【発明者】
【氏名】ワング・ヤホイ
(72)【発明者】
【氏名】ワング・ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・キンプイ
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0109340(US,A1)
【文献】特開2018-068578(JP,A)
【文献】特表2013-518695(JP,A)
【文献】特表2017-522066(JP,A)
【文献】特開2016-093507(JP,A)
【文献】特開2011-133388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って走査スポットを移動して対象物の3次元情報を取得するように構成されたスキャナと、
前記走査スポットの前記移動パスを制御するコントローラとして構成された処理回路と、を含み、
前記処理回路は、更に、インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定するように構成されたアナライザとして構成され
、
前記アナライザは、更に、
複数のインタースキャン時間のそれぞれにおける光コヒーレンストモグラフィアンギオグラフィ(OCTA)信号値を算出し、前記算出されたOCTA信号値対インタースキャン時間の点をプロットし、前記点のプロットに一致する曲線の屈曲部の位置を前記飽和時間として決定する、走査装置。
【請求項2】
前記プロットされた点のすべてにおける前記算出されたOCTA信号値は、decorrelation、OMAG(optical microangiography)、スペックル分散、位相分散、SSADA(split-spectrum amplitude-decorrelation angiography)の1つと同じである、
請求項
1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記コントローラは、更に、前記B-スキャンパスのそれぞれの長さを変化させ、スポットサイズよりも小さいサンプリングステップを維持することによって、インタースキャン時間を制御するように構成される、
請求項1に記載の走査装置。
【請求項4】
前記C-スキャンパスは、らせん状であり、
前記B-スキャンパスは、円形のパスである、
請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項5】
C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットを移動し、
前記走査スポットの前記移動パスを制御し、
インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定
し、
前記飽和時間は、複数のインタースキャン時間のそれぞれにおける光コヒーレンストモグラフィアンギオグラフィ(OCTA)信号値を算出し、前記算出されたOCTA信号値対インタースキャン時間の点をプロットし、前記点のプロットに一致する曲線の屈曲部の位置として決定される、走査方法。
【請求項6】
前記B-スキャンパスのそれぞれの長さを変化させ、スポットサイズよりも小さいサンプリングステップを維持することによって、インタースキャン時間を制御する、
請求項
5に記載の走査方法。
【請求項7】
前記C-スキャンパスは、らせん状であり、
前記B-スキャンパスは、円形のパスである、
請求項
5又は請求項
6に記載の走査方法。
【請求項8】
コンピュータによって実行されたとき、以下を含むステップを実行する命令を格納した、コンピュータ読み取り可能な媒体であって、
C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットの移動を制御し、
インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定
し、
前記飽和時間は、複数のインタースキャン時間のそれぞれにおける光コヒーレンストモグラフィアンギオグラフィ(OCTA)信号値を算出し、前記算出されたOCTA信号値対インタースキャン時間の点をプロットし、前記点のプロットに一致する曲線の屈曲部の位置として決定される、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項9】
前記B-スキャンパスのそれぞれの長さを変化させ、スポットサイズよりも小さいサンプリングステップを維持することによって、インタースキャン時間を制御する、
請求項
8に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項10】
前記C-スキャンパスは、らせん状であり、
前記B-スキャンパスは、円形のパスである、
請求項
8又は請求項
9に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年11月12日に出願された米国仮出願第63/278,609号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、対象物に関する情報を得るための装置、及び方法に関し、特に、眼のデータ及び3次元画像を取得するための装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載されている「背景技術」の説明は、本開示の背景を大まかに提示することを目的としている。出願時に先行技術として認められない記載の態様と同様に、この背景技術セクションに記載されている範囲で、現在の発明者の研究は、本発明に対する先行技術として明示的にも暗黙的にも認められない。
【0004】
図10は、眼の画像を取得するための従来の装置の一例を示す。このような装置は、眼を照明し、眼の原画像データを取得するスキャナ1004を含む。スキャナ1004は、コントローラ1002によって制御される。アナライザ1006は、原画像に対して解析を行い、3次元画像などの結果1008を生成する。
【0005】
スキャナ1004は、通常、走査スポットを検査すべき第1の領域に移動させ、第1の領域を照明光で照明し、第1の領域に関するデータを取り込み、その後、走査スポットを検査すべき次の領域に移動させる。走査スポットの移動パスは、走査軌跡と呼ばれる。各走査スポット領域で撮像される対象物のエリアは、比較的小さい。眼科イメージングにおける典型的な画像スポットサイズは、~20μmである。照明されたスポットの位置は、少なくとも数mmの撮像対象長(エリア)をカバーする散乱光を測定することによって走査される。そこで、走査スポットを領域から領域へと移動させ、複数の領域のデータを合成することで、対象物の広いエリアにわたるデータを取得する。
【0006】
図11は、対象物の2次元領域に関するデータを取得するのに用いられる従来の走査軌跡を示す。本例によれば、走査スポットを左右方向に移動させることによって複数のB-スキャン1102を行い、走査スポットを最右方向に全B-スキャン長だけ移動させた後、走査スポットは、C-スキャン1104方向に下方に移動され、そこで、次のB-スキャン1102が行われる。
【0007】
しかしながら、対象物が生体の眼である場合、検査中に眼球運動や流体運動が起こるため、異なる走査スポットのデータを合成する際に誤差が生じやすい。
【発明の概要】
【0008】
この概要は、以下の「詳細な説明」に更に記載されている概念の一部を簡略化して紹介するものである。この概要は、請求項に記載された主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また請求項に記載された主題の範囲を限定することを意図したものではない。更に、請求される主題は、本開示のいずれかの部分で指摘された任意の又はすべての欠点を解決する限定事項に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、走査装置は、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って走査スポットを移動して対象物の3次元情報を取得するように構成されたスキャナと、前記走査スポットの前記移動パスを制御するコントローラとして構成された処理回路と、を含み、前記移動パスによってカバーされる前記対象物のエリア(面積)は、前記B-スキャンパスの長さと独立している。
【0010】
走査装置は、前記複数のB-スキャンパスのそれぞれが、同じ形状及び同じサイズとなるように構成されていてもよい。
【0011】
走査装置は、前記複数のB-スキャンパスのそれぞれが、始点に戻る閉ループとなるように構成されていてもよい。
【0012】
走査装置は、前記複数のB-スキャンパスのそれぞれが、円形のパスとなるように構成されていてもよい。
【0013】
走査装置は、前記C-スキャンパスが、らせん状となるように構成されていてもよい。
【0014】
走査装置は、前記移動パスによってカバーされる前記対象物のエリアが、前記C-スキャンパスの長さを長くすることによって、2次元のそれぞれにおいて増加するように構成されていてもよい。
【0015】
走査装置は、前記コントローラが、更に、前記B-スキャンパスのそれぞれの長さを変化させ、スポットサイズよりも小さいサンプリングステップを維持することによって、インタースキャン時間を制御するように構成されるように構成されていてもよい。
【0016】
走査装置は、前記コントローラが、更に、x方向及びy方向のそれぞれに連続的かつ一定の速度で移動するように前記B-スキャンパスを制御するように構成されるように構成されていてもよい。
【0017】
走査装置は、前記コントローラが、更に、前記走査経路を前記C-スキャンパスに沿って次の位置に移動する前に、同じ位置で複数のB-スキャンパスを実行するように前記スキャナを制御するように構成されるように構成されていてもよい。
【0018】
走査装置は、前記C-スキャンパスが、閉じた形状となるように構成されていてもよい。
【0019】
走査装置は、前記B-スキャンパス及びC-スキャンパスが、それぞれ2次元又は3次元で移動されるように構成されていてもよい。
【0020】
走査装置は、前のB-スキャンの開始が、前記前のB-スキャンの中心に対して第1の角度位置であり、次のB-スキャンの開始が、前記次のB-スキャンの中心に対して第2の角度位置であり、前記第1の角度位置が、前記第2の角度位置と異なるように構成されていてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態は、走査方法を含む。走査方法は、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットを移動することと、前記走査スポットの前記移動パスを制御することとを含み、前記移動パスによってカバーされる前記対象物のエリアが、前記B-スキャンパスの長さと独立である。
【0022】
本発明の一実施形態は、コンピュータによって実行されたとき、以下を含むステップを実行する命令を格納した、コンピュータ読み取り可能な媒体を含む。このステップは、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットの移動を制御することを含み、前記移動パスによってカバーされる前記対象物のエリアは、前記B-スキャンパスの長さと独立である。
【0023】
本発明の一実施形態は、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って走査スポットを移動して対象物の3次元情報を取得するように構成されたスキャナと、前記走査スポットの前記移動パスを制御するコントローラとして構成された処理回路と、を含み、前記処理回路は、更に、インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定するように構成されたアナライザとして構成される、走査装置を含む。
【0024】
走査装置は、前記アナライザは、更に、複数のインタースキャン時間のそれぞれにおける光コヒーレンストモグラフィアンギオグラフィ(OCTA)信号値を算出し、前記算出されたOCTA信号値対インタースキャン時間の点をプロットし、前記点のプロットに一致する曲線の屈曲部の位置を前記飽和時間として決定するように構成されていてもよい。
【0025】
走査装置は、前記プロットされた点のすべてにおける前記算出されたOCTA信号値が、decorrelation、OMAG(optical microangiography)、スペックル分散、位相分散、SSADA(split-spectrum amplitude-decorrelation angiography)の1つと同じであるように構成されていてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態は、走査方法を含む。走査方法は、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットを移動することと、前記走査スポットの前記移動パスを制御することと、インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定することとを含む。
【0027】
本発明の一実施形態は、コンピュータによって実行されたとき、以下を含むステップを実行する命令を格納した、コンピュータ読み取り可能な媒体を含む。このステップは、C-スキャンパスに沿って実行された複数のB-スキャンパスを含む移動パスに沿って対象物の3次元情報を取得するように走査スポットの移動を制御することと、インタースキャン時間に基づいて、前記対象物の一部内の各3次元位置の飽和時間を決定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の範囲は、添付の図面と共に読まれる場合、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から最もよく理解される。図面は、次の通りである。
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡を示す別の図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡を示す別の図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡を示す別の図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の一実施形態に係るアーチファクトを生じる可能性がある走査軌跡の一例である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の一実施形態に係るアーチファクトを低減する可能性がある走査軌跡の一例である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る別の走査軌跡の一例である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡の別の図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の一実施形態に係る走査軌跡を示す別の図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る方法のブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る方法を示すdecorrelation対インタースキャン時間のプロットである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るコンピュータ及びコンピュータ接続のブロック図である。
【
図10】
図10は、眼の画像を取得するための従来の装置の一例である。
【0030】
本開示の更なる適用分野は、以下に示す詳細な説明から明らかになるであろう。例示的な実施形態の詳細な説明は、説明を目的としたものであり、従って、本開示の範囲を必ずしも限定することを意図したものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図11Aの従来の走査軌跡に従って、スキャンにおける取得データのエリア(面積)、すなわちFOV(Field of View)が増加すると、各B-スキャン1102の長さが増加する。このように、従来の走査軌跡を用いると、各B-スキャン1102の長さは、所望のFOVに依存する。このような従来の走査軌跡は、各B-スキャン1102を複数回通過させて重複データを得るようにしてもよいし、後続のB-スキャン1102の走査スポットが前のB-スキャン1102に重なるようにC-スキャン1104の走査軌跡をゆっくり移動させるようにしてもよい。対象物上の重なり合うエリアを連続してスキャンする間に経過する時間をインタースキャン時間(スキャン間時間)という。
【0032】
更に後述するように、インタースキャン時間を制御することが有用である場合がある。しかしながら、
図11の従来の走査軌跡によれば、FOVが大きくなるとインタースキャン時間も長くなる。
【0033】
図1は、本発明に係る装置の一実施形態を示す。この装置は、コントローラ102、スキャナ104、及び、結果108を生成するアナライザ106を含む。コントローラ102は、スキャナ104を制御するように構成された1つ以上のコンピュータ、又は、プログラムされたプロセッサ、及び/又は、ハードウェア回路を含む。スキャナ104は、走査軌跡に沿って走査スポットの移動を制御し、それによって対象物の領域に関するデータを取得する光照射デバイス及び検出デバイスを含む。スキャナは、対象物に関する2次元又は3次元のデータを収集するために動作することができる。スキャナ104は、OCT(Optical Coherence Tomography)スキャナを含んでもよい。OCTシステムでは、通常、2軸のガルバノスキャナが用いられる。アナライザ106は、走査の結果(例えば、OCTスキャンデータ)を受け取り、走査結果に基づいて結果108を生成するように構成された1つ以上のコンピュータ、又はプログラムされたプロセッサ、及び/又は、ハードウェア回路を含んでもよい。結果108は、対象物の2次元又は3次元のグラフィカルな視覚化、及び/又は、対象物に関する定量的な情報(例えば、血流速度)を含んでもよい。
【0034】
図2Aは、本発明の一実施形態に係り、1つ以上の円形状のパスのB-スキャン204とらせん状のパスのC-スキャン202を含む走査軌跡を示す。この例では、B-スキャン204の円の中心が観察対象エリアの2次元の中心(x,y)付近にある第1の円形状のB-スキャン204が、Bd208の方向(すなわち、反時計回り)に実行される。第1の円形状のB-スキャン204が完了した後、らせん状のC-スキャン202のパスに沿って外側に(すなわち、Cd210の方向に沿って)配置された第2の位置を中心として第2の円形状のB-スキャン204が実行されてもよい。連続するB-スキャンの円中心の間の移動距離は、L
c/N
cで記述される。ここで、L
cはC-スキャン長、N
cはC-スキャンのサンプリング点である。らせんの隣接するアーム間の距離は,L
Δであり、これは冗長性に関連するものである。或いは、次の場所に移動する前に、同じ場所、又は、ほぼ同じ場所で2以上のB-スキャンを実行してもよい。
図2Bは、追加のB-スキャン204を説明するための走査軌跡の別の図を示す。
【0035】
図3Aは、
図2A及び
図2Bの走査軌跡の別の図であり、らせん状のパスのC-スキャン202に沿った複数のB-スキャン204を示し、典型的なx及びy軸の寸法を示している。この例における走査パターンの軌跡は、以下の式で記述される。
【0036】
【0037】
L
b及びL
cは、B-スキャン204の長さ及びC-スキャン202の長さを表し、N
b及びN
cは、B-スキャン204のサンプリング点及びC-スキャン202のサンプリング点である。i
b及びi
cは、i番目のB-スキャン204及びi番目のC-スキャン204を表す。L
Δは、隣接するらせん状の軌跡間のギャップを示し、冗長性に関係する。
図3Aは、L
b=4.5mm、L
c=72mm、L
Δ=0.4mm、N
b=51、N
c=410の場合の例示的な走査軌跡を示したものである。この図では、走査軌跡を見やすくするために、N
bとN
cを実際の場合よりも極端に小さい数(~1/10)に設定している。また、本発明は、データ取得の必要性に応じて、他の利用可能な変数の値も含む。B-スキャンとC-スキャンに沿ってサンプリング密度を同程度にすることが好ましい場合もあるため、L
b/N
b(B-スキャンのサンプリング密度)とL
c/N
c(C-スキャンのサンプリング密度)の比は、通常、3未満である。この例に示すように、最も外側のエリアとらせん状の軌跡の中心(すなわち、スキャンの開始点)では、冗長性が低くなる場合がある。
【0038】
本発明に関する走査軌跡は、従来の走査軌跡と比較していくつかの利点を提供することができる。
【0039】
第1に、従来の走査軌跡は、走査位置のラスター的な動きが含まれる場合がある。
図11Aは、従来の走査軌跡を理想化した図を示す。
図11Bは、従来の走査軌跡の問題点の1つを示す、より現実的な図を示す。
図11A及び
図11Bの例によれば、左から右方向へのB-スキャン204が完了するごとに、ほぼ逆の右から左方向に走査位置を移動させる必要がある。例えばガルボスキャナ技術を用いたスキャナ1004は、このような方向転換を直ちに行うことができない。そのため、方向転換にある程度の時間遅延が生じ、その結果、スキャンのデューティ比が低下する。
図11Bに示すように、従来のラスタースキャンは、スキャナが走査位置を次のB-スキャン1102の先頭に戻るように駆動する間にフライバック1106を有する。デューティ比は、点線に相当する時間を全スキャン時間で割ったものと定義される。
【0040】
第2に、従来の走査軌跡では、B-スキャン204は、左から右への単一の方向(すなわち、x方向)にだけ進行する。しかしながら、本発明に関する走査軌跡によれば、各円形状のB-スキャン204の間、走査位置は、x方向及びy方向の双方に途切れなく(連続的に)移動する。従って、スキャナは単純な正弦関数によって駆動されてもよく、スキャナの構成要素(すなわち、x方向スキャナ及びy方向スキャナ)は、有利には、一定の速度で同時に駆動されてもよい。等速運動により、本発明に関する走査軌跡は、サンプリング密度を容易に制御することができる。計算コストを削減することによって、等速運動は、計算コストが高いCAO(Computational Adaptive Optics)への適用も簡略化することができる。これは、他の走査軌跡、例えばリサージュ形状のスキャンパスと比較した場合の利点である。B-スキャン1102の有効エリアのスキャン速度は、従来のラスタースキャン軌跡では、通常、一定である。
【0041】
第3に、本発明に関する走査軌跡に係る各B-スキャン204は、次のB-スキャンの開始点の近くで完了するため、次のB-スキャン204の開始点への再ポジショニングに費やす時間が少なくなる。従って、本発明に係る一実施形態は、有利にデューティ比を高く保つこともできる。
【0042】
第4に、本発明に関する走査軌跡によれば、インタースキャン時間は、主として、B-スキャン長LbとB-スキャン速度の関数である。従来のラスタースキャン軌跡においてもインタースキャン時間はB-スキャン長の関数であるが、本発明に関する走査軌跡は、高いデューティ比(100%に近い)により、インタースキャン時間の短縮を実現することが可能である。また、本発明に関する走査軌跡によれば、FOVを制限することなく、インタースキャン時間を制御することができる(さらに後述する)。そのため、カバーエリアを変更することなく、インタースキャン時間を調整することができる。更に後述するように、本発明の別の実施形態によれば、VISTA(Variable Inter Scan Time Analysis)を実行し、インタースキャン時間を変化させることによって、本発明に関する走査軌跡によってより便利で再現性のあるものとすることができる。また、本発明に関する走査軌跡によれば、インタースキャン時間を長くすることができ、それにより、OCTA(Optical Coherence Tomography)の信号コントラストを向上させることができる。
【0043】
従来の走査軌跡を用いたインタースキャン時間を制御する別の方法として、サンプリング密度(すなわち、走査速度)を変化させる方法がある。しかしながら、インタースキャン時間が重要なパラメータとなるOCTAでは、血管の微細構造を可視化するために高いサンプリング密度(すなわち、スポットサイズの半分程度のサンプリングステップ)が必要となる。その結果、従来の走査軌跡では、実際には、サンプリング密度を調整する余地があまりない。そこで、本発明に関する走査軌跡は、従来の走査軌跡では不可能であった、FOVとスポットサイズより小さいサンプリングステップ(すなわち、高いサンプリング密度)を維持しながら、各B-スキャンの長さを変えることによりインタースキャン時間を制御することによって、より良い結果を得ることができる可能性がある。スポットサイズは、OCT用の照明光のサイズによって定義される。サンプリング密度は、単位長さ当たりにいくつのデータポイントが測定されるかを意味する。サンプリング密度をより高くすることは、単位長さ当たりにより多くのデータポイントが測定されることを意味する。サンプリングステップは、現在の測定位置からどれだけ長さを移動させて次のB-スキャン点の測定を行うかを示すものである。従って、サンプリング密度は、サンプリングステップの逆数となる。
【0044】
第5に、本発明に関する走査軌跡によれば、FOVは、B-スキャン長Lbと独立である(B-スキャン長Lbに依存しない)。従って、C-スキャン長を延長するだけで、FOVを大きくすることができる。つまり、らせん状のC-スキャンの長さ(継続時間)を長くするだけで、視野を広げることができる。このような増加はまた、有利には、インタースキャン時間の変化をもたらさない。
【0045】
第6に、スキャンの重なり(B-スキャンと隣接するB-スキャンの重なり、あるスパイラルアームのB-スキャンと連続または前のスパイラルアームのB-スキャンの重なりを含む)を動き検出(推定)と補正に利用することが可能である。例えば、重なり合ったエリアを用いてOCTデータ間の相関を算出する場合、本発明の一実施形態は、差分や眼球運動に起因した誤差を最小化する最適な変換(シフトや回転など)を求めることができる。
【0046】
上記の本発明に関する例では、円形状のB-スキャン204を示しているが、本発明は、長円形、楕円形、及び、レムニスケート(連珠形)のパスを含むがこれらに限定されない任意の閉じたB-スキャン形状(すなわち、各B-スキャンパスが同一又は略同一の開始点に戻る)を包含する。
【0047】
更に、上記の本発明に関する例では、各B-スキャン204がカバーされた領域にわたってシングルパスだけを含むものを示したが、本発明は、同じ位置、又は、わずかに調整された位置で、1パスより多く各B-スキャン204を繰り返すことも含む。
【0048】
また、上記の本発明に関する例では、B-スキャン204とC-スキャン202のそれぞれにおける移動が同じx、y平面である場合を例示したが、本発明は、B-スキャン204とC-スキャン202を異なる平面で移動させることも含む。更に、本発明は、B-スキャン204とC-スキャン202のそれぞれが独立して3次元的に移動することを含む。
【0049】
更に、本発明に関する実施形態では、中心領域から周辺領域へ移動するらせん状のC-スキャンのパスを有するものを示したが、周辺領域から中心領域へ移動するらせん状のC-スキャンのパスも本発明に含まれる。また、本発明は、例えば
図3Bに示すように、中心領域又は周辺領域の一方から、中心領域又は周辺領域の他方に移動する他のC-スキャンのパス(例えば、拡大又は縮小する矩形状のパス)を含む。本発明に関するC-スキャンのパスは、視野内の任意の連続するパスであってもよい。
【0050】
別の実施形態として、本発明は、離散的な複数のB-スキャンではなく、連続的な形状の1つのB-スキャンを含む。すなわち、
図3Aに示す複数のB-スキャン204は、代替的に、C-スキャン方向に沿って連続的に移動する途切れのないパス(uninterrupted path)として構成される。
【0051】
本発明に関するスキャンパターンは、OCTスキャン、OCTA、VISTAを含む様々なスキャン技術に適用することができる。OCTAを実行する場合、異なる時刻に実行されたOCTスキャン間の差分が、生体内の流体の流れの検出に用いられる。VISTAは、例えば、更に後述するように、流体の流れに関する付加情報を得るための手法である。
【0052】
OCTAに用いられる繰り返し走査に本発明に関する上記の走査軌跡を適用した場合、各B-スキャンの最初の部分にアーチファクトが発生することがある。例えば、
図4Aに示すように、理想化されたスキャナ機構では、C-スキャンのパス202に沿った各B-スキャン204は、B-スキャンのパス202の中心に対して同じ角度位置404で、移行時間なしに開始されるであろう。しかしながら、実用的なスキャナでは、あるB-スキャンのパス204から次のB-スキャンのパスへの走査位置の移動は、移行パス402を必要とする。移行402の間にデータを連続的に収集すると、移行パス402がB-スキャン204のパスと一致しないため、OCTAアーチファクトが発生する可能性が高くなる。
【0053】
アーチファクトの取り込みを低減するために、
図4Bに示す代替的な本発明に関する実施形態では、1つのB-スキャン204から次のB-スキャン204への移行402の間にデータ収集を無効にする。従って、後続のB-スキャンのパス204のデータ収集開始位置は位置406にシフトされ、後続のB-スキャンのパスのデータ収集開始は、前回のB-スキャンのパス204のデータ収集開始の角度位置404と異なり、後続のB-スキャンのパスの中心に対して角度位置406である。この代替的な実施形態は、アーチファクトを有利に除去しながら、デューティ比をわずかに減少させる副次的効果を有する。
【0054】
図5は、らせん状のC-スキャンのパス506のz軸方向(スキャナから対象物への方向に沿って、例えば、眼の入出力方向)を変化させることができるスキャンパスの代替的な実施形態の一例である。特に、対象物が湾曲した眼の網膜表面502である場合、C-スキャン位置は、スキャンパス506に沿った位置で離散的なインスタンス504でz方向に変更され、それによって、スキャンパターンが対象物の輪郭に追従できるようにしてもよい。従って、本発明に関する代替的な実施形態は、デフォーカスと制限されたOCTの画像化深さ範囲に起因する画像の反転(flipping)を回避することによって、広視野OCTを実現するのに役立つことができる。
【0055】
本発明に関する走査軌跡は、比較的短いインタースキャン時間を実現しつつ広いFOVを実現し、VISTAへの適用に有利である。例えば、直径約1.4mmに相当するB-スキャン長4.5mm(512ピクセル)、C-スキャン長25.3mm(1920ピクセル)、LΔ=0.88mmで4回繰り返して、VISTAを実行することができる。
【0056】
OCTAスキャンでは、制限されたFOVの中で高品質のデータ収集が必要となる場合がある。そのために、本発明に係る別の実施形態では、上述したらせん状のスキャンパスの代わりに、楕円形状のC-スキャンのパスを用いてもよい。
【0057】
図6A及び
図6Bは、B-スキャン602が円形であり、C-スキャン604が閉じた楕円形のパスである、本発明の別の「サイクルスキャン」の軌跡の実施形態の例を示す図である。
【0058】
この実施形態に係るサイクルスキャンの軌跡の軌跡は、以下の式で与えられる。
【0059】
【0060】
Lb及びNbは、B-スキャン602の長さ及びサンプリング点を表す。ib及びicは、i番目のB-スキャン602及びC-スキャン604を示す。ncは、C-スキャン604の1周期のサンプリング点数、Δは、楕円の長軸と短軸の長さの差である。
【0061】
C-スキャン604は、すべての位置で有効なデータの取得を保証するために、1サイクルより多く反復されてもよい。
【0062】
サイクルスキャン軌跡の実施形態に係る典型的なOCTAスキャンは、直径2.8mmに対応する9mm(1024ピクセル)のB-スキャン長、Δ=0.1mm、繰り返し回数=2、及び、1888ピクセルのC-スキャン長、サイクルサイズ384ピクセル(反復回数4.9回)を含むことができる。「繰り返し(Repetition)」は、上述したように、OCTA信号を得るために何回B-スキャンを繰り返すかを意味する。「反復(Iteration)」は、円形状のC-スキャンを何回繰り返すかである。「サイクルサイズ」は、1回の反復で(すなわち、1回の円形状のC-スキャンで)いくつのC-スキャン点を計測するかである。
【0063】
検査中、眼の随意眼球運動及び瞬きが起こることがある。各位置は十分に分散されたタイミングで測定されるため、再構成アルゴリズムは、有効なデータだけを用いて完了されたデータをうまく生成することができ、本実施形態によれば、カバーエリアの欠落はない。
【0064】
サイクル軌跡スキャンのサイクルサイズとスキャンエリアを小さくすることによって、随意眼球運動を補正しながら、OCT/OCTボリュームデータを短時間(すなわち、0.1msecよりも短い時間)で取得することが可能である。本実施形態に係るサイクル軌跡スキャンは、ダイナミックコントラスト技術を含むOCT/OCTAの時間的解析を実現することもできる。ダイナミックコントラストは、時間的変化に基づいてコントラストを決定し、コントラストが時間的変化を反映した画像を提供する技術である。時間的解析は、時間軸に沿ったデータの変化を解析する技術である。
【0065】
図6A及び
図6Bの例は楕円形状のC-スキャンのパスで示されているが、本発明は、円形、長円形、レムニスケート、四角形、閉じたポリゴンパス、又はそれらの任意のハイブリッド混合物を含むがこれらに限定されない、C-スキャン用の任意の閉じたパスを用いることを含む。
【0066】
サンプリング密度はOCTAに影響を与える可能性がある。例えば、C-スキャンに沿うサンプリング密度を13.2μm、19.6μm、26.4μmと変化させても、B-スキャンに沿うサンプリング密度が8.8μmであれば、C-スキャンのサンプリング密度よりもB-スキャンのサンプリング密度の方が、OCTA画質の決定に重要であることがわかる。従来のラスタースキャン軌跡と異なり、本発明に関する軌跡を用いてC-スキャンのサンプリング密度を下げると、ある方向の高い空間周波数の信号に影響を与えず、画質に明らかな影響を与えることなく、密のB-スキャンのサンプリングと疎のC-スキャンのサンプリングでスキャンを実行することができる。
【0067】
更に、本実施形態によれば、スキャン設計においてC-スキャンのサンプリング密度よりも冗長性(オーバーラップ)を優先させることにより、動き補正の安定化と各A-スキャンデータの重要度の低減に有効である。すなわち、あるA-スキャンデータによって提供される情報を、別のA-スキャンデータでカバーすることができる。Aスキャンデータは、対象物(眼)の軸方向(z軸方向)のプロファイルを測定したデータである。典型的なスキャン値は、以下のようなものを含んでもよい:
【0068】
【0069】
従来、VISTAは、流体の変位をグラフィカルに表現するために用いられる可視化技術である。VISTAは、流速によって時間的に変化するOCTA信号の特性を利用しており、複数回の繰り返しスキャンが必要である。OCTAのインタースキャン時間は、従来のOCTシステムよりも高速である必要がある。OCTAは、コントラスト強調などの目的で、連続的に取得されたOCT画像間の差分を示すだけでよいのに対して、VISTAは、流体の相対的な流速をグラフィカルに表現しようとする。
【0070】
従来のVISTA可視化手法によれば、血管眼構造の合成画像は、短いインタースキャン時間と長いインタースキャン時間で収集されたOCTA信号の比率を表す色相又は色で提示することができる。OCTA信号はインタースキャン時間が長いほど飽和し、OCTフレーム間の変位に伴って直線的に増加するという仮定のもとで、この比率は、飽和時間の逆数に相当する。従って、OCTA信号が短いインタースキャン時間ではまだ飽和せず、長いインタースキャン時間で飽和する仮定すれば(線形モデルの場合)、比率と飽和時間の逆数は同じものになるはずである。例えば、従来のVISTAアプローチは、連続したスキャンでインタースキャンの時間を徐々に長くし、異なる画像で撮影した流体位置の間の比率を求め、相対的な流速をグラフィカルに表現することができる。従来のVISTAによる可視化は、流体の流れを定性的に把握することはできるが、流量(flow rate)を定量的に評価することができない。
【0071】
本発明の別の実施形態に係る改良された定量的なVISTAの基本概念は、OCTA信号がOCTフレーム間の変位に伴って増加し、ある変位量で飽和することである。OCTA信号が飽和する時間(すなわち、Tsaturation)を求めることにより、本発明の改良された定量的なVISTAの実施形態は、単に定性的な視覚化を提供するだけではなく、流速を定量的に推定することができる。このような定量的な推定は、臨床上有用であると考えられる。
【0072】
図7は、定量的なVISTAを実行する、本発明の一実施形態によって用いられる処理のフロー図を示す。まず、ステップ702において、干渉データ(スペクトル領域)からOCTデータ(空間領域)を生成することを含むOCT(複素)が実行される。次に、ステップ704において、B-スキャンを繰り返して取得されたOCTデータ間のdecorrelation(非相関度)を計算することにより、OCTAデータが生成される。
【0073】
ステップ706は、異なるインタースキャン時間を有する各OCTキャプチャに対して実行される飽和時間解析を含む。まず、このステップは、次の式で示されるように、decorrelationが飽和するまでdecorrelationが線形的に増加することを仮定する。
【0074】
【0075】
最小二乗誤差δが最小になるように、飽和時間と飽和decorrelationが決定される。最小二乗誤差は、以下の式で算出される。
【0076】
【0077】
そして、δ(x,z)を最小化する場合、式の微分は次のようになる。
【0078】
【0079】
従って、Dsaturation、Tsaturationは、以下の式により、本実施形態に従って算出される。
【0080】
【0081】
図8に示すように、D
saturationは、データが飽和するdecorrelation値に相当し、T
saturationは、データが飽和するインタースキャン時間に相当する。
図8の例によって更に説明するように、T
saturationは、decorrelation対インタースキャン時間のプロットされた点にフィッティングされた曲線の屈曲部に相当する。曲線が屈曲するインタースキャン時間は、インタースキャン時間の増加に伴い、decorrelation値がもはや増加しなくなる(又は、低い割合で増加する)時間に相当する。
【0082】
decorrelationの代わりに、連続するOCTスキャン間の差分を表す任意のOCTA信号(例えば、OMAG(optical microangiography)、スペックル分散(speckle variance)、位相分散(phase variance)、及び/又は、SSADA(split-spectrum amplitude-decorrelation angiography))を用いてTsaturation及びDsaturationを求めるために上記のTsaturationの計算が等価的に実行されてもよい。
【0083】
各測定点間でdecorrelationが飽和するケース毎に上記のように行われる最小二乗誤差解析を行うと、最小二乗誤差が最小となる条件(すなわち、以下の式の微分が0になる条件)が得られる。そして、1/Tsaturationは、流速を定量的に示すパラメータとして算出される。decorrelationが小さすぎると解析がうまくいかないことがあるため、以下の制約も適用される。
【0084】
【0085】
このように、飽和時間Tsaturationは、OCTスキャンによって取得された3次元データセットの各点において求めることができ、VISTAのB-フレーム画像からボリュームVISTAデータを構築することができる。VISTAのB-フレーム画像は、飽和時間画像とOCTA画像とを用いて、以下に説明するプロトコルによって生成される。
【0086】
図8は、上記の計算と線形モデルを用いて、D
saturation<0.1であるデータポイントを除外しながら(すなわち、流れがないと仮定して)、T
saturationとD
saturationの定量値を求める一例を示す。
【0087】
すべてのデータポイントが飽和時間解析のための上記の解析に用いられるが、本発明に関する方法の代替的な実施形態は、decorrelationのSNRが低いため、一対のOCTデータによって生成されたdecorrelation信号の使用を回避する。例えば、本発明の一実施形態によれば、カーブフィッティングを行って飽和時間を求めるために、
図8の例のように4つのデータポイントを求める必要はない。2つの未知のパラメータ(すなわち、T
saturationとD
saturation)があるため、必要最小限のデータポイント数は2点のみである。しなしながら、すべてのデータポイントが同じように信頼できるのであれば、すべてのデータポイントを使用した方が良い結果が得られるはずです。データの信頼性がデータポイント間で異なる場合、各データポイントの相対的な信頼性を反映した重みを用いてフィッティングを行うことができる。最後のデータポイントが信頼できない極端なケースでは、代替的な実施形態は、信頼性の低い最後のデータポイントを破棄し、それなしでフィッティングを実行し、それにより、飽和時間のより信頼性の高い解析結果を提供することができる。
【0088】
ステップ708は、OCTA全体(total)の投影を行う。例えば、プロジェクション画像は、xy平面上の画像(例えば、上面からの画像)であって、z軸に沿ってデータを圧縮(例えば、平均化、又は、最大値抽出(take maximum)等)して算出されたものであってもよい。例えば、血管エリアのみの情報を抽出するために、OCTA値OCTA(x,z)の合計値に重み付けをしたデータV(x,z)のプロジェクション画像P(x)は、以下のように算出される。
【0089】
【0090】
OCTA(x,z)は、OCTA信号が飽和していると仮定した場合に流れる粒子の比率を表し、血管が存在する確率と考えることができる。
【0091】
ステップ710は、ステップ708のOCTA全体の投影とステップ706の飽和時間解析とに基づいて、合成VISTAプロジェクション画像を提供する。OCTAのプロジェクション画像は、VISTA合成画像の輝度を決定するのに用いられ、毛細血管が見えやすくなるように対数を取って構築される。OCTAは、decorrelationを算出することによって生成される。
【0092】
特に、VISTA合成画像は、OCTA画像と飽和時間の逆数とから生成され、VISTAの結果をより良く解釈することができる。
【0093】
VISTA合成画像の輝度は、OCTA強度に基づいて決定される。黒(0)と白(255)は、5%と95%の分位値のOCTAの画素強度として定義することができる。VISTA合成画像の輝度は、黒レベルと白レベルとの間で線形的にマッピングされてもよい。すなわち、下記の通りである。
【0094】
【0095】
VISTA合成画像の色相は、飽和時間の逆数に基づいて決定されてもよい。最小値と最大値をそれぞれvmin、vmaxと定義すると、色相は次のように決定される。
【0096】
【0097】
そして、RGBは次のように決定される。
【0098】
【0099】
従って、VISTA合成画像では、赤、緑、青のエリアが、速い流れ、中程度の流れ、遅い流れに対応する。
【0100】
本明細書では、単数形で記載され、「1つ」(「a」又は「an」)という単語で進められる要素又はステップは、そのような除外が明示的に記載されていない限り、複数の要素又はステップを除外しないと理解すべきである。更に、本発明の「一実施形態」への言及は、記載された特徴を組み込んだ追加の実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図したものではない。
【0101】
本明細書に記載の制御方法、処理方法、及び/又は、制御システム、処理システムは、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又は、それらの任意の組み合わせ若しくはサブセットを含むコンピュータプログラミング技術又はエンジニアリング技術を用いて実装することができる。その技術的効果は、本開示に係る3次元データと定量値の処理を少なくとも含むことができる。
【0102】
図9は、コントローラ102及びアナライザ104を含み、本明細書に記載される様々な実施形態を実施し得るコンピュータのブロック図を示す。本開示の制御態様及び処理態様は、システム、方法、及び/又は、コンピュータプログラム製品として具現化することができる。コンピュータプログラム製品は、1つ以上のプロセッサに実施形態の態様を実行させることができる、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令が記録されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含んでもよい。
【0103】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、命令実行装置(プロセッサ)によって使用するための命令を格納することができる有形、かつ、非一時的な装置であってよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えば、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁気記憶装置、半導体記憶装置、又は、これらの適切な組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体のより具体的な例の包括的ではないリストには、次の各々(及び、適切な組み合わせも含む)が含まれる:フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM、又は、フラッシュ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスク(CD、又は、CD-ROM)、デジタル汎用ディスク(DVD)、MO、及び、メモリカード又はスティック。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本開示で使用されるように、電波又は他の自由に伝播する電磁波、導波管又は他の伝送媒体(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)を伝播する電磁波、又は、ワイヤを通過する電気信号などの一時的な信号そのものであると見なされるべきものではない。
【0104】
本開示に記載される機能を実装するコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体から適切なコンピュータデバイス又は処理装置に、或いは、グローバルネットワーク(すなわち、インターネット)、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、及び/又は、無線ネットワークを通じて、外部コンピュータ又は外部記憶装置にダウンロードすることができる。ネットワークは、銅線伝送、光通信ファイバ、無線伝送、ルーター、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ、及び/又は、エッジサーバーを含んでもよい。各コンピュータデバイス又は各処理装置内のネットワークアダプタカード又はネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を受信し、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令をコンピュータデバイス又は処理装置内のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納するために転送することができる。
【0105】
本開示の動作を実行するためのコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、機械語命令、及び/又は、マイクロコードを含んでもよく、これは、アセンブリ言語、Basic、Fortran、Java、Python、R、C、C++、C#、又は、同様のプログラミング言語を含む1以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれたソースコードからコンパイル又は解釈(interpret)されてもよい。コンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、ユーザのパーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレット、又は、スマートフォン上で完全に実行されてもよく、リモートコンピュータ又はコンピュータサーバー上で完全に実行されてもよく、又は、これらのコンピュータデバイスの任意の組み合わせで実行されてもよい。リモートコンピュータ、又は、コンピュータサーバーは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、又は、グローバルネットワーク(すなわち、インターネット)を含むコンピュータネットワークを介して、ユーザのデバイス、又は、複数のデバイスに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は、プログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令からの情報を使用してコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を実行して、本開示の態様を実行するために、電子回路を構成、又は、カスタマイズしてもよい。
【0106】
本開示の態様は、本開示の実施形態に係る方法、装置(システム)、及び、コンピュータプログラム製品のフロー図、及び、ブロック図を参照して、本明細書で説明される。フロー図とブロック図の各ブロック、及び、フロー図及びブロック図中のブロック図の組み合わせは、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令によって実装できることは、当業者には理解されるであろう。
【0107】
本開示に記載のシステム、及び、方法を実装することができるコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ、又は、他のプログラマブル装置のプロセッサを介して実行される命令が、本開示のフロー図、及び、ブロック図において規定された機能を実装するためのシステムを作成するように、機械を生成するために汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は、他のプログラマブル装置の1以上のプロセッサ(及び/又は、プロセッサ内の1以上のコア)に提供されてもよい。これらのコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、命令を格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が本開示におけるフロー図、及び、ブロック図において規定される機能の態様を実装する命令を含む製品となるように、コンピュータ、プログラマブル装置、及び/又は、他のデバイスに特有の方法で機能するように指示することができるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。
【0108】
コンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上にロードされて、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行される命令が本開示におけるフロー図、及び、ブロック図において規定された機能を実装するように、コンピュータ実装プロセスを生成するために、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行される一連の動作ステップを実行させるようにしてもよい。
【0109】
図9は、1つ以上のネットワーク化されたコンピュータとサーバーのネットワーク化されたシステム900を示す機能ブロック図である。一実施形態において、
図9に示されたハードウェア環境、及び、ソフトウェア環境は、本開示に係るソフトウェア、及び/又は、方法を実装するための例示的なプラットフォームを提供することができる。
図9を参照すると、ネットワーク化されたシステム900は、コンピュータ905、ネットワーク910、リモートコンピュータ915、ウェブサーバー920、クラウドストレージサーバー925、及び、コンピュータサーバー930を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、
図9に示された1つ以上の機能ブロックの複数のインスタンスが採用されてもよい。
【0110】
コンピュータ905の追加的な詳細は、
図9にも示されている。コンピュータ905内に図示されている機能ブロックは、例示的な機能を確立するためにのみ提供されており、網羅的であることを意図していない。また、リモートコンピュータ915、ウェブサーバー920、クラウドストレージサーバー925、及び、コンピュータサーバー930については詳細が示されていないが、これらの他のコンピュータ、及び、デバイスは、コンピュータ905について示されたものと同様の機能を含んでいてもよい。コンピュータ905は、パーソナルコンピュータ(PC)、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ネットブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又は、ネットワーク910上の他のデバイスと通信可能な任意の他のプログラム可能な電子デバイスであってよい。
【0111】
コンピュータ905は、プロセッサ935、バス937、メモリ940、不揮発性ストレージ945、ネットワークインターフェース950、周辺機器インターフェース955、及び、ディスプレイインターフェース965を含んでもよい。これらの機能の各々は、いくつかの実施形態では、個々の電子サブシステム(集積回路チップ、又は、チップと関連するデバイスとの組み合わせ)として実装されてもよいし、他の実施形態では、機能のいくつかの組み合わせが単一のチップ(システムオンチップ、又は、SoCと呼ばれることがある)に実装されてもよい。
【0112】
プロセッサ935は、インテル・コーポレーション、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ社(AMD)、アーム・ホールディングス(Arm)、アップル・コンピュータ社などによって設計、及び/又は、製造されたものなど、1つ以上のシングルチップ、又は、マルチチップのマイクロプロセッサであってもよい。マイクロプロセッサの例として、インテル社のCeleron、Pentium、Core i3、Core i5、及び、Core i7、AMD社のOpteron、Phenom、Athlon、Turion、及び、Ryzen、Arm社のCortex-A、Cortex-R、及び、Cortex-Mなどがある。バス937は、ISA、PCI、PCI Express(PCI-e)、AGPなどの独自又は業界標準の高速パラレル、又は、シリアル周辺機器相互接続バスであってもよい。
【0113】
メモリ940、及び、不揮発性ストレージ945は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であってもよい。メモリ940は、ダイナミック・ランダムアクセス・メモリ(DRAM)、及び、スタティック・ランダムアクセス・メモリ(SRAM)などの任意の適切な揮発性ストレージデバイスを含んでもよい。不揮発性ストレージ945は、下記を1つ以上含んでもよい:フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM、又は、Flash)、コンパクトディスク(CD、又は、CD-ROM)、デジタル汎用ディスク(DVD)、及び、メモリカード又はスティック。
【0114】
プログラム948は、不揮発性ストレージ945に格納され、本開示の他の場所で詳細に説明され、図面に示されている特定のソフトウェア機能を作成、管理、及び、制御するために使用される、機械読み取り可能な命令、及び/又は、データの集合体であってもよい。いくつかの実施形態では、メモリ940は、不揮発性ストレージ945よりも大幅に高速であってもよい。そのような実施形態では、プログラム948は、プロセッサ935による実行の前に、不揮発性ストレージ945からメモリ940に転送されてもよい。
【0115】
コンピュータ905は、ネットワークインターフェース950を介して、ネットワーク910を経由して他のコンピュータと通信し、相互に作用することが可能であってもよい。ネットワーク910は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)、又は、これら2つの組み合わせであってもよく、有線、無線、又は光ファイバ接続を含んでいてもよい。一般的に、ネットワーク910は、2つ以上のコンピュータと関連するデバイスとの間の通信をサポートする接続、及び、プロトコルの任意の組み合わせとすることができる。
【0116】
周辺機器インターフェース955は、コンピュータ905とローカルに接続される他のデバイスとのデータの入出力を可能にするものであってよい。例えば、周辺機器インターフェース955は、外部デバイス960への接続を提供してもよい。外部デバイス960は、キーボード、マウス、キーパッド、タッチスクリーン、及び/又は、他の適切な入力デバイスのようなデバイスを含んでもよい。外部デバイス960は、例えば、サムドライブ、ポータブル光ディスク又は磁気ディスク、及び、メモリカードなどのポータブルのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も含んでもよい。本開示の実施形態を実践するために使用されるソフトウェア、及び、データ、例えば、プログラム948は、このようなポータブルのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。このような実施形態では、ソフトウェアは、不揮発性ストレージ945上にロードされてもよいし、代わりに、周辺機器インターフェース955を介してメモリ940に直接的にロードされてもよい。周辺機器インターフェース955は、外部デバイス960と接続するために、RS-232、又は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)などの業界標準の接続を用いてもよい。
【0117】
ディスプレイインターフェース965は、コンピュータ905をディスプレイ970に接続してもよい。ディスプレイ970は、いくつかの実施形態では、コンピュータ905のユーザにコマンドライン、又は、グラフィカルユーザインタフェースを提示するために用いられてもよい。ディスプレイインターフェース965は、VGA、DVI、DisplayPort、HDMI(登録商標)などの1つ以上の独自、又は、業界標準の接続を用いて、ディスプレイ970に接続してもよい。
【0118】
上記のように、ネットワークインターフェース950は、コンピュータ905の外部にある他のコンピューティングシステム、及び、ストレージシステム又はデバイスとの通信を提供する。本明細書で説明するソフトウェアプログラム、及び、データは、例えば、リモートコンピュータ915、ウェブサーバー920、クラウドストレージサーバー925、及び、コンピュータサーバー930から、ネットワークインターフェース950、及び、ネットワーク910を介して不揮発性ストレージ945にダウンロードされてもよい。更に、本開示で説明するシステム、及び、方法は、ネットワークインターフェース950、及び、ネットワーク910を介してコンピュータ905に接続された1つ以上のコンピュータによって実行されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本開示に記載されているシステム、及び、方法は、リモートコンピュータ915、コンピュータサーバー930、又は、ネットワーク910上の相互接続されたコンピュータの組み合わせによって実行されてもよい。
【0119】
本開示に記載されたシステム、及び、方法の実施形態で採用されるデータ、データセット、及び/又は、データベースは、保存され、及び/又は、リモートコンピュータ615、ウェブサーバー620、クラウドストレージサーバー625、及び、コンピュータサーバー630からダウンロードされてもよい。
【0120】
上記の教示に照らして、本発明の多数の修正、及び、変形が可能である。従って、添付の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施することができることを理解されたい。