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特許7553692マルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20240910BHJP
   C03B 37/027 20060101ALI20240910BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C03B37/012 A
C03B37/027 Z
G02B6/02 461
G02B6/02 466
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023500949
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006756
(87)【国際公開番号】W WO2022176990
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021026466
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「高度通信・放送研究開発委託研究/マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】福本 良平
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031427(JP,A)
【文献】特開2016-175779(JP,A)
【文献】特開2012-137615(JP,A)
【文献】特開2019-172480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の主内孔が形成されたロッド状の主クラッド体と、
前記主内孔に挿入された複数の主コアロッドと、
前記主クラッド体の一端に連設された先端連設部と、
を備え、
前記先端連設部は、1つのコアロッドを有するガラスロッドである、
マルチコア光ファイバ母材。
【請求項2】
前記複数の主コアロッドには、第1コアロッドと、前記主クラッド体の軸線方向の寸法よりも短い寸法を有する第2コアロッドとが含まれ、
前記第1コアロッドは、前記主クラッド体の中央に配置されている、請求項1に記載のマルチコア光ファイバ母材。
【請求項3】
前記先端連設部は、中実のガラスロッドである、請求項1または請求項2に記載のマルチコア光ファイバ母材。
【請求項4】
前記先端連設部は、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備え、
前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ以上である、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ母材。
【請求項5】
前記先端連設部は、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備え、
前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ未満である、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ母材。
【請求項6】
ロッド状の主クラッド体に形成された1または複数の主内孔に複数の主コアロッドが挿入されたガラス材ユニットを準備する準備工程と、
前記ガラス材ユニットの一端部に、1つのコアロッドを有するガラスロッドを突き合わせ接続するガラスロッド接続工程と、
前記ガラスロッドの一部を前記ガラス材ユニットに連設された先端連設部として残して、前記ガラスロッドの残りの部分を溶断により分離するガラスロッド切断工程と、
を有する、マルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項7】
前記複数の主コアロッドには、第1コアロッドと、前記主クラッド体の軸線方向の寸法よりも短い寸法を有する第2コアロッドとが含まれ、
前記準備工程において、
前記主内孔に、前記第1コアロッドが前記主クラッド体の中央に挿入されるとともに、前記主クラッド体の端面と前記第2コアロッドとの間に隙間を有するように、前記第1コアロッドの周囲に前記第2コアロッドが挿入された前記ガラス材ユニットを準備し、
前記準備工程後に、前記隙間を加熱し、前記主クラッド体を縮径させて前記隙間を塞ぐ、請求項6に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項8】
前記先端連設部は、中実のガラスロッドである、請求項6または請求項7に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項9】
前記先端連設部は、1つの先端内孔が形成されたロッド状の先端クラッド体と、前記先端内孔に挿入された1つの先端コアロッドとを備えるシングルコアユニットである、請求項6記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項10】
前記ガラスロッド切断工程において、前記先端連設部を、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備えるように形成し、
前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ以上である、請求項6から請求項9のうちいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項11】
前記ガラスロッド切断工程において、前記先端連設部を、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備えるように形成し、
前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ未満である、請求項6から請求項9のうちいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法。
【請求項12】
請求項6から請求項11のうちいずれか1項に記載のマルチコア光ファイバ母材の製造方法によって得られたマルチコア光ファイバ母材を線引きすることによってマルチコア光ファイバを製造する、マルチコア光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法に関する。
本願は、2021年2月22日に日本に出願された特願2021-026466号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの被覆の厚さは、光ファイバのマイクロベンド特性、温度特性などに影響する。そのため、光ファイバを製造する際には、被覆の厚さの偏り(以下、偏肉という)を確認することがある。被覆の偏肉(asymmetry in coating layers)は、光ファイバの側面にレーザ光を照射して得られた前方散乱光によって確認することができる(例えば、特許文献1を参照)。前方散乱光の明暗の位置は、被覆の厚さ分布に影響される。そのため、前方散乱光の明暗の位置に基づいて被覆の偏肉を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開平9-126946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、通信量の増大に伴い、伝送容量を大きくできる光ファイバとして、マルチコア光ファイバが注目されている。
しかしながら、マルチコア光ファイバは、精度よく被覆の偏肉を確認するのが難しい場合がある。
【0005】
本発明の態様は、精度よく被覆の偏肉を確認することができるマルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様のマルチコア光ファイバ母材は、1または複数の主内孔が形成されたロッド状の主クラッド体と、前記主内孔に挿入された複数の主コアロッドと、前記主クラッド体の一端に連設された先端連設部と、を備え、前記先端連設部は、コアロッドを有していない、あるいは、1つのコアロッドを有するガラスロッドである。
【0007】
前記マルチコア光ファイバ母材によれば、コアロッドを有していない、あるいは、1つのコアロッドを有する先端連設部を備える。先端連設部は、ガラス材ユニット(主クラッド体と主コアロッドとを備えたユニット)に比べてコア数が少ない。先端連設部は、コア数が1以下である被覆線を作製することができるため、光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。よって、被覆の偏肉の確認を精度よく行うことができる。
【0008】
前記複数の主コアロッドには、第1コアロッドと、前記主クラッド体の軸線方向の寸法よりも短い寸法を有する第2コアロッドとが含まれ、前記第1コアロッドは、前記主クラッド体の中央に配置されていてもよい。
【0009】
前記先端連設部は、中実のガラスロッドであってよい。
【0010】
前記先端連設部は、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備え、前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ以上であってもよい。
【0011】
前記先端連設部は、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備え、前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ未満であってもよい。
【0012】
本発明の第二の態様のマルチコア光ファイバ母材の製造方法は、ロッド状の主クラッド体に形成された1または複数の主内孔に複数の主コアロッドが挿入されたガラス材ユニットを準備する準備工程と、前記ガラス材ユニットの一端部に、コアロッドを有していない、あるいは、1つのコアロッドを有するガラスロッドを突き合わせ接続するガラスロッド接続工程と、前記ガラスロッドの一部を前記ガラス材ユニットに連設された先端連設部として残して、前記ガラスロッドの残りの部分を溶断により分離するガラスロッド切断工程と、を有する。
【0013】
前記製造方法によれば、コアロッドを有していない、あるいは、1つのコアロッドを有する先端連設部を形成するため、被覆線のコア数が少ないため、光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。よって、被覆の偏肉の確認を精度よく行うことができる。
【0014】
前記主コアロッドには、第1コアロッドと、前記主クラッド体の軸線方向の寸法よりも短い寸法を有する第2コアロッドとが含まれ、前記準備工程において、前記主内孔に、前記第1コアロッドが前記主クラッド体の中央に挿入されるとともに、前記主クラッド体の端面と前記第2コアロッドとの間に隙間を有するように、前記第1コアロッドの周囲に前記第2コアロッドが挿入された前記ガラス材ユニットを準備し、前記準備工程後に、前記隙間を加熱し、前記主クラッド体を縮径させて前記隙間を塞いでもよい。
【0015】
前記先端連設部は、中実のガラスロッドであってよい。
【0016】
前記先端連設部は、1つの先端内孔が形成されたロッド状の先端クラッド体と、前記先端内孔に挿入された1つの先端コアロッドとを備えるシングルコアユニットであってよい。
【0017】
前記ガラスロッド切断工程において、前記先端連設部を、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備えるように形成し、前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ以上であってもよい。
【0018】
前記ガラスロッド切断工程において、前記先端連設部を、外径が一定である定径部と、前記定径部の先端から縮径しつつ突出する縮径部と、を備えるように形成し、前記定径部の軸線方向の長さは、前記縮径部の軸線方向の長さ未満であってもよい。
【0019】
本発明の第三の態様のマルチコア光ファイバの製造方法は、前記マルチコア光ファイバ母材の製造方法によって得られたマルチコア光ファイバ母材を線引きすることによってマルチコア光ファイバを形成する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、精度よく被覆の偏肉を確認することができるマルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態のマルチコア光ファイバ母材の軸線方向に沿う断面図である。
図2】マルチコア光ファイバ母材の製造方法を説明する工程図である。
図3図2に続く工程図である。
図4図3に続く工程図である。
図5図4に続く工程図である。
図6図5に続く工程図である。
図7図6に続く工程図である。
図8図7に続く工程図である。
図9】マルチコア光ファイバ母材の軸線方向に直交する断面図である。
図10】マルチコア光ファイバの製造装置の一例を示す構成図である。
図11】第1偏肉検出部の構成を示す模式図である。
図12】第2実施形態のマルチコア光ファイバ母材の軸線方向に沿う断面図である。
図13】第3実施形態のマルチコア光ファイバ母材の軸線方向に沿う断面図である。
図14図13のマルチコア光ファイバ母材の製造方法を説明する工程図である。
図15図13のマルチコア光ファイバ母材の製造方法を説明する工程図である。
図16】シングルコアの被覆線にレーザ光を照射したときの前方散乱光の例を示す写真である。
図17】マルチコアの被覆線にレーザ光を照射したときの前方散乱光の例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係るマルチコア光ファイバ母材、マルチコア光ファイバ母材の製造方法およびマルチコア光ファイバの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
[マルチコア光ファイバ母材]
図1は、第1実施形態のマルチコア光ファイバ母材10(以下、単に光ファイバ母材10という)の軸線方向に沿う断面図である。
光ファイバ母材10は、主クラッド体1と、複数の主コアロッド2と、先端連設部3と、ダミー管13とを備える。
【0024】
主クラッド体1は、円柱状(ロッド状)に形成されている。主クラッド体1は、ガラスで構成される。主クラッド体1は、例えば、石英ガラス製の一体成形品である。主クラッド体1には、複数の主内孔4が形成されている。主内孔4は、主クラッド体1の軸線方向に沿って形成されている。第1端1aは、主クラッド体1の先端連設部3が設けられている側の一端である。第2端1bは、主クラッド体1の第1端1aとは反対側の端面である。ここで、第1端1a及び第2端1bの取り得る形状としては、例えば、端面状や非端面状が挙げられる。
【0025】
主コアロッド2は、円柱状(ロッド状)に形成されている。主コアロッド2は、主クラッド体1に比べて屈折率が高い領域を含む。主コアロッド2は、その一部に屈折率上昇ドーパント(ゲルマニウム、リン、アルミニウム、チタン等)が添加されたガラス(例えば、石英ガラス)や、屈折率減少ドーパント(ホウ素、フッ素等)が添加されたガラス(例えば、石英ガラス)で構成されていてもよい。主コアロッド2は、主内孔4に挿入されている。主クラッド体1と、複数の主コアロッド2とは「ガラス材ユニットU1」を構成する。
【0026】
先端連設部3は、ガラス(例えば、石英ガラス)で構成される。先端連設部3は、主クラッド体1の第1端1a(一端)に溶着により連設されている。先端連設部3は、主クラッド体1と同軸とされている。先端連設部3は、主クラッド体1のすべての主内孔4の開口を塞ぐ。先端連設部3の外径は、主クラッド体1の外径と同じであることが好ましい。
先端連設部3は、例えば、中実のガラスロッドである。先端連設部3は、中実であるため、コアロッドを備えていない(すなわち、コアロッドの保有数はゼロである)。先端連設部3の屈折率は、主クラッド体1の屈折率とほぼ同じであってよい。
なお、後述するように、先端連設部のコアロッドの保有数は1でもよい。すなわち、先端連設部のコアロッドの保有数は1つ、または、先端連設部はコアロッドを有していない。
【0027】
先端連設部3は、定径部5と、縮径部6とを備える。定径部5は、主クラッド体1の第1端1aに連設された端部を含む部分である。定径部5は、円柱状(ロッド状)に形成されている。定径部5の外径は一定である。縮径部6は、定径部5の先端5aから縮径しつつ突出する。縮径部6は、先細りのテーパ状(例えば、円錐形状)に形成されている。
【0028】
定径部5の軸線方向の長さをA1と定義する。縮径部6の軸線方向の長さをA2と定義する。定径部5の長さA1は、縮径部6の長さA2以上であってもよい。定径部5の長さA1は、縮径部6の長さA2未満であってもよい。
ダミー管13は、ガラス材ユニットU1の第2端1bに連設されている。なお、光ファイバ母材10は、ダミー管13がない構成としてもよい。
【0029】
[マルチコア光ファイバ母材の製造方法]
光ファイバ母材10を製造する方法を、図2図8を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、部材を認識可能な大きさとするため縮尺を変更している場合がある。
【0030】
ここに示す光ファイバ母材の製造方法は、(1)孔開工程、(2)洗浄工程、(3)準備工程、(4)ダミー管接続工程、(5)封止工程、(6)ガラスロッド接続工程、および(7)ガラスロッド切断工程を有する。以下、各工程について説明する。
【0031】
(1)孔開工程
図2に示すように、主クラッド体1に、ドリルツールなどを用いて複数の貫通孔14を形成する。貫通孔14は主クラッド体1に軸線方向に沿って形成される。貫通孔14の両端はそれぞれ、主クラッド体1の軸線方向の端面に開口される。貫通孔14は、例えば、主クラッド体1の中心軸を取り囲むように、軸周り方向に間隔をおいて複数箇所に形成される。
【0032】
(2)洗浄工程
貫通孔14内には、孔開時に用いた切削液、ドリルツール由来の金属粉などが残っている場合があるため、純水、アルコール(エタノール)、アルカリ液などの洗浄液を用いて、主クラッド体1の外面および貫通孔14の内面の洗浄を行う。
【0033】
洗浄工程では、貫通孔14の内面を、エッチングによって処理することもできる。エッチングによって、例えば、貫通孔14の内面のマイクロクラックに付着した異物(前記金属粉など)を除去することができる。エッチングは、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。ウェットエッチングでは、フッ酸を含むエッチング液、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムを混合したBHF(バッファードフッ酸)などを使用できる。ドライエッチングでは、エッチングガスとして、例えばSF6(六フッ化硫黄)ガス、C2F6(六フッ化エタン)ガスなどのフッ化ガスを使用できる。ドライエッチングでは、例えば、主クラッド体1を1200℃以上に加熱ししつつ、貫通孔14にエッチングガスを導入する。
【0034】
(3)準備工程
図3に示すように、ガラス材ユニットU1を準備する。主クラッド体1の複数の貫通孔14のそれぞれに、コアとなるガラスロッド2(以下、主コアロッドという)を挿入する。これによって、主クラッド体1の複数の貫通孔14のそれぞれに主コアロッド2が挿入された構成のガラス材ユニットU1が得られる。
【0035】
主コアロッド2は、水、アルコール、アルカリ液などの洗浄液を用いて予め洗浄しておくのが好ましい。主コアロッド2は、エッチングを行って表面の汚れを除去してもよい。
準備工程は、クリーン度の高い室内で行うことが好ましい。これにより、伝送損失の原因となる挨、汚れなどが主コアロッド2に付着するのを防ぐことができる。
【0036】
主クラッド体1の複数の貫通孔14のうち1つ以上の貫通孔14に、主コアロッド2に代えてコア識別マーカ用ガラスロッド(図示略)を挿入してもよい。コア識別マーカ用ガラスロッドは、例えば、主クラッド体1および主コアロッド2の両方に対して屈折率が異なるガラスロッド等である。
【0037】
主コアロッド2の外径は、例えば、貫通孔14の内径の80~99%である。光ファイバにおけるコア位置精度の安定確保の点で、主コアロッド2の外径は、貫通孔14の内径の90~99%であることがより好ましく、95~99%であることがさらに好ましい。
【0038】
(4)ダミー管接続工程
図4に示すように、ガラス材ユニットU1の両端に、それぞれダミー管12,13を溶着などにより接続する。ダミー管12,13は、例えば、石英ガラス製の円筒状の管体である。ダミー管12,13を主クラッド体1に溶着するには、ガラス材ユニットU1の端部を火炎16(例えば酸水素炎)等によって加熱する。
【0039】
第1ダミー管12は、軸線方向の端面をガラス材ユニットU1の軸線方向の一方の端面に突き合わせてガラス材ユニットU1に接続する。第2ダミー管13は、端面をガラス材ユニットU1の他方の端面に突き合わせてガラス材ユニットU1に接続する。ダミー管12,13は、チャック20により把持することができる。
なお、本実施形態では、準備工程の後に、ダミー管接続工程を行ったが、ダミー管接続工程は、準備工程の前に行ってもよい。
【0040】
(5)封止工程
図5に示すように、ガラス材ユニットU1の一方の端部(以下、第1端部という。図5において右の端部)を、火炎16(例えば酸水素炎)等を用いて加熱し、縮径させることによって、貫通孔14の開口を塞ぐ(すなわち、封止する)。これにより、ガラス材ユニットU1の第1端部側の第1ダミー管12は、溶断によりガラス材ユニットU1から分離される。ダミー管12を使用することによって、溶断を容易に行うことができる。
なお、ガラス材ユニットU1を加熱する手段は火炎16に限らず、電気炉などを用いてもよい。
【0041】
貫通孔14の開口を封止した状態のガラス材ユニットU1の第1端部を、第1端封止部17という。第1端封止部17は、主クラッド体1の第1端部が主コアロッド2の第1端部とともに縮径されて中実化されている。第1端封止部17は、例えば、先細りのテーパ状(例えば、円錐形状)に形成されている。
【0042】
ダミー管13に減圧ポンプを接続し、貫通孔14内を減圧してもよい。これによって、ガラス材ユニットU1における空隙(気泡)を小さくできる。
【0043】
(6)ガラスロッド接続工程
図6に示すように、ガラス材ユニットU1の第1端封止部17に、ガラスロッド15の端部を溶着、一体化する。ガラスロッド15は、例えば石英ガラス製である。ガラスロッド15は中実構造を有する。ガラスロッド15は、円柱状に形成されている。ガラスロッド15は、ガラスロッド15の外径は、主クラッド体1の外径と同じであることが好ましい。
【0044】
ガラスロッド15は、ガラス材ユニットU1の第1端部(一端部)の端面に突き合わせられ、ガラス材ユニットU1に同軸に位置合わせされて溶着、一体化する。ガラスロッド15は、ガラス材ユニットU1の第1端部に接続される。ガラスロッド15は、全ての貫通孔14の開口を塞ぐ。これにより、ガラスロッド15は、ガラス材ユニットU1の第1端部に連設される(図7参照)。貫通孔14は主内孔4となる(図7参照)。
【0045】
図7に示すように、必要に応じて、ガラスロッド15とガラス材ユニットU1との接続箇所の外周面にコテ18を当て、ガラスロッド15とガラス材ユニットU1との段差を小さくすることができる。これにより、線引きの際に光ファイバまたはガラス線の断線を起こりにくくすることができる。
【0046】
(7)ガラスロッド切断工程
図8に示すように、ガラスロッド15の長さ方向の中間位置を、火炎16(例えば酸水素炎)等を用いて加熱し、ガラスロッド15を溶断により切断する。
ガラスロッド15の長さ方向の一部は、ガラス材ユニットU1に連設された先端連設部3として残る。これによって、図1に示す光ファイバ母材10が得られる。ガラスロッド15の長さ方向の残りの部分は、先端連設部3から分離される。
【0047】
本工程では、ガラス材ユニットU1は、減圧ポンプによって内部を減圧した状態で第2端部(例えば、図8において光ファイバ母材10の左の端部)を封止してもよい。これにより、空隙(気泡)が少ない光ファイバを製造できる。なお、ガラス材ユニットU1の第2端部が封止されていない場合は、減圧ポンプでガラス材ユニットU1の内部を減圧した状態で、後述する偏肉確認工程および本製造工程において、加熱部101によって光ファイバ母材10を加熱して溶融紡糸してもよい。
【0048】
図9は、光ファイバ母材10の一例を示す断面図である。図9は、光ファイバ母材10の軸線方向に直交する断面を示す。この例の光ファイバ母材10の主内孔4の数は4つであり、4つの主内孔4は、主クラッド体1の中心軸の周りに等間隔に配列されている。
【0049】
[マルチコア光ファイバの製造方法]
光ファイバ母材10を用いたマルチコア光ファイバの製造方法を、図10を参照して説明する。
図10は、マルチコア光ファイバの製造装置100(以下、単に製造装置100という)を示す構成図である。図11は、第1偏肉検出部105の構成を示す模式図である。
【0050】
図10に示すように、製造装置100は、加熱部101と、冷却部102と、第1コーティング部103と、第1硬化部104と、第1偏肉検出部105と、第2コーティング部106と、第2硬化部107と、第2偏肉検出部108と、プーリー109と、引取り部110と、巻取り部111と、を備える。
第1硬化部104は、1つまたは複数のUVランプ104aを備える。第2硬化部107は、1つまたは複数のUVランプ107aを備える。
【0051】
実施形態に係るマルチコア光ファイバの製造方法は、(1)偏肉確認工程、および(2)本製造工程を有する。
【0052】
(1)偏肉確認工程
加熱部101によって光ファイバ母材10を加熱して溶融紡糸する。すなわち、光ファイバ母材10の先端部(先端連設部3の先端部)を加熱することによってガラス粘度を低下(軟化)させ、軟化したガラスを線引きする。先端連設部3は中実のガラスロッドであるため(図1参照)、線引きされたガラスは、コアをもたないガラス線21である。冷却部102によって、ガラス線21を冷却する。
【0053】
第1コーティング部103によって、ガラス線21の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して第1被覆を形成する。第1被覆が形成されたガラス線21を、中間体22(被覆線)という。
第1硬化部104のUVランプ104aによって中間体22にUVを照射し、第1被覆を硬化させる。
【0054】
図11に示すように、第1偏肉検出部105は、発光部112と、受光部113とを備える。発光部112は、レーザ光L1(試験光)を中間体22に照射する。受光部113は、前方散乱光L2を受光する。第1偏肉検出部105では、前方散乱光L2に基づいて第1被覆の厚さの偏り(偏肉)を確認できる。
【0055】
図10に示すように、中間体22はコアがないため、複数のコアを原因とするレーザ光の散乱は起こらない。そのため、前方散乱光の明暗の位置に基づいて第1被覆の偏肉を容易に確認することができる。第1被覆の偏肉が確認された場合には、第1コーティング部103におけるコーティングの条件を調整することによって、偏肉を抑制することができる。
【0056】
第2コーティング部106によって、中間体22の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して第2被覆を形成する。第2被覆が形成された中間体22を、被覆ガラス線23(被覆線)という。
第2硬化部107のUVランプ107aによって被覆ガラス線23にUVを照射し、第2被覆を硬化させる。
【0057】
第2偏肉検出部108は、発光部(図示略)と、受光部(図示略)とを備える。第2偏肉検出部108は、第1偏肉検出部105(図11参照)と同様の構成とすることができる。発光部は、レーザ光(試験光)を被覆ガラス線23に照射する。受光部は、前方散乱光を受光する。第2偏肉検出部108では、前方散乱光に基づいて第2被覆の偏肉を確認できる。
【0058】
被覆ガラス線23はコアがないため、複数のコアを原因とするレーザ光の散乱は起こらない。そのため、前方散乱光の明暗の位置に基づいて第2被覆の偏肉を容易に確認することができる。第2被覆の偏肉が確認された場合には、第2コーティング部106におけるコーティングの条件を調整することによって、偏肉を抑制することができる。
【0059】
プーリー109は、被覆ガラス線23の方向を変換する。引取り部110は、例えば、引取りキャプスタンであり、線引き速度を決定する。巻取り部111は、被覆ガラス線23を巻き取る。
【0060】
(2)本製造工程
線引きにより先端連設部3が消費されると、線引き端はガラス材ユニットU1に移行する(図1参照)。ガラス材ユニットU1から線引きされた光ファイバ裸線は、第1コーティング部103によって第1被覆が形成され、第1硬化部104によって第1被覆が硬化され、光ファイバ素線中間体となる。
【0061】
光ファイバ素線中間体は、第2コーティング部106によって第2被覆が形成され、第2硬化部107によって第2被覆が硬化され、光ファイバ素線となる。
図1に示すように、ガラス材ユニットU1の主クラッド体1は、光ファイバ素線のクラッドとなる。主コアロッド2は、光ファイバ素線のコアとなる。主コアロッド2は複数あるため、光ファイバ素線はマルチコア光ファイバである。
【0062】
[実施形態の光ファイバ母材およびマルチコア光ファイバの製造方法が奏する効果]
本実施形態の光ファイバ母材10には、コアロッドが設けられていない、あるいは、コアロッドが一つ設けられている先端連設部3を備える。先端連設部3は、ガラス材ユニットU1に比べてコア数が少ない。先端連設部3は、コア数が1以下である中間体22および被覆ガラス線23を作製することができる。そのため、偏肉検出部105,108において、光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。よって、被覆の偏肉の確認を精度よく行うことができる。
【0063】
光ファイバ母材10は、先端連設部3が中実のガラスロッドであるため、偏肉確認工程において、コアがない中間体22および被覆ガラス線23を作製することができる。そのため、偏肉検出部105,108において、より光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。
【0064】
前記製造方法によれば、先端連設部3を備える光ファイバ母材10を線引きするため、マルチコア光ファイバを作製する本製造工程に先だって、コア数が1以下である中間体22および被覆ガラス線23を作製することができる。そのため、偏肉検出部105,108において、光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。よって、被覆の偏肉の確認を精度よく行うことができる。
【0065】
前記製造方法では、先端連設部3が中実のガラスロッドであるため、偏肉確認工程において、コアがない中間体22および被覆ガラス線23を作製することができる。そのため、偏肉検出部105,108において、より光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。
【0066】
先端連設部3は、外径が一定である定径部5と、定径部5の先端5aから縮径しつつ突出する縮径部6とを備える。定径部5の長さA1が縮径部6の長さA2以上であると、中間体22および被覆ガラス線23に、偏肉確認のための十分な長さが与えられる。そのため、より精度の高い被覆の偏肉確認を行うことができる。
【0067】
定径部5の長さA1は、縮径部6の長さA2未満であってもよい。この場合、被覆線にレーザ光を照射して偏肉を確認する工程(偏肉確認工程)に要する時間を短くし、早期に本製造工程に移行できるため、マルチコア光ファイバの製造効率を高めることができる。
【0068】
(第2実施形態)
[マルチコア光ファイバ母材]
図12は、第2実施形態の光ファイバ母材210の軸線方向に沿う断面図である。第1実施形態の光ファイバ母材10(図1参照)との共通構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0069】
光ファイバ母材210は、主クラッド体1と、複数の主コアロッド2と、先端連設部203と、ダミー管13とを備える。光ファイバ母材210は、先端連設部3に代えて先端連設部203を用いる点で、図1に示す光ファイバ母材10と異なる。
【0070】
先端連設部203は、先端クラッド体204と、1つの先端コアロッド205と、を備えるシングルコアユニットである。
先端クラッド体204の外形は、図1に示す先端連設部3の外形と同様である。先端クラッド体204は、ガラス(例えば、石英ガラス)で構成される。先端クラッド体204には、1つの先端内孔206が形成されている。先端内孔206は、先端クラッド体204の中央部に、先端クラッド体204の軸線方向に沿って形成されている。
【0071】
先端コアロッド205は、円柱状(ロッド状)に形成されている。先端コアロッド205は、ガラス(例えば、石英ガラス)で構成される。先端コアロッド205は、先端クラッド体204に比べて屈折率が高い領域を含む。先端コアロッド205は、先端内孔206に挿入されている。
【0072】
先端連設部203は、主クラッド体1の第1端1a(一端)に溶着により連設されている。先端連設部203は、主クラッド体1と同軸とされている。先端連設部203は、主クラッド体1のすべての主内孔4を塞ぐ。先端連設部203の外径は、主クラッド体1の外径と同じであることが好ましい。先端連設部203は、1つのコアロッド(先端コアロッド205)を備えるため、コアロッドの保有数は1である。
【0073】
光ファイバ母材210を線引きすることによって、第1実施形態の光ファイバ母材10と同様にしてマルチコア光ファイバを製造することができる(図10参照)。
【0074】
光ファイバ母材210は、コアロッドの保有数が1つである先端連設部203を備えるため、偏肉確認工程において、コア数が1以下である中間体および被覆ガラス線を作製することができる。そのため、偏肉検出部において、光散乱が少ない条件で被覆の偏肉の確認を行うことができる。よって、被覆の偏肉の確認を精度よく行うことができる。
【0075】
(第3実施形態)
[マルチコア光ファイバ母材]
図13は、第3実施形態の光ファイバ母材310の軸線方向に沿う断面図である。第1実施形態の光ファイバ母材10(図1参照)との共通構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
光ファイバ母材310は、主クラッド体31と、複数の主コアロッド32と、先端連設部301と、ダミー管13とを備える。光ファイバ母材310は、ガラス材ユニットU2の構成及び先端連設部301が設けられている位置において、図1に示す光ファイバ母材10と異なる。
【0077】
複数の主コアロッド32には、第1コアロッド32aと、第2コアロッド32bとが含まれている。
第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1は、主クラッド体31の軸線方向の寸法MAと同じである。第2コアロッド32bの軸線方向の寸法M2は、主クラッド体31の軸線方向の寸法MAよりも短い。また、第2コアロッド32bの軸線方向の寸法M2は、第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1より短い。
第1コアロッド32aは、主クラッド体31の中央に配置されている。例えば、図9に示す主コアロッド2が本実施形態の第2コアロッド32bに相当し、第1コアロッド32aが、4つの第2コアロッド32bに囲まれて構成されている。
【0078】
先端連設部301は、定径部302と、縮径部303とを備える。定径部302と、縮径部303との長さ関係は第1実施形態と同様である。
先端連設部301は、コアロッドを有していない。
【0079】
先端連設部301は、主クラッド体31の第1端31a(端面)に溶着により連設されている。先端連設部301は、主クラッド体31と同軸とされている。先端連設部301は、第1コアロッド32aの主内孔4を塞ぐ。先端連設部301の外径は、第1コアロッド32aの外径よりやや大きい。
また、主クラッド体31の先端部は、第1端31aに向かって縮径するテーパ状である。
【0080】
なお、実施形態では、第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1は、主クラッド体31の軸線方向の寸法MAと同じとしたが、第1コアロッド32aの寸法M1は、主クラッド体31の寸法MAより短くてもよい。
【0081】
本実施形態に係るマルチコア光ファイバ母材310によれば、図1のマルチコア光ファイバ母材10、図12のマルチコア光ファイバ母材210に比べ、先端連設部301の外径が小さいため、先端連設部301の熱容量が小さくなる。その結果、先端連設部301が溶けやすくなる。このため、図13のマルチコア光ファイバ母材310を線引装置に設置して、先端連設部301を加熱した時に、マルチコア光ファイバ母材310の先端連設部301を落下させる工程(落とし工程)の時間を短縮することができる。したがって、特に第1コアロッド32aの長さが軸線方向に長い場合において、落とし工程から、マルチコア光ファイバ母材310から製品となるファイバを繰り出す本引き工程までの時間を短縮することができる。
【0082】
[マルチコア光ファイバ母材の製造方法]
光ファイバ母材310を製造する方法を、図14及び図15を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、部材を認識可能な大きさとするため縮尺を変更している場合がある。第1実施形態と同様の工程については、説明を省略する。
【0083】
孔開工程では、貫通孔14は、主クラッド体31の中央と、主クラッド体31の中央を取り囲むように軸周り方向に間隔を置いて複数箇所とに形成される。
洗浄工程は、第1実施形態と同様である。
【0084】
準備工程では、図14に示すように、ガラス材ユニットU2を準備する。主クラッド体31の複数の貫通孔14のそれぞれに、コアとなるガラスロッド32a(以下、第1コアロッドという)と、ガラスロッド32b(以下、第2コアロッドという)を挿入する。具体的には、主クラッド体31の中央に形成された貫通孔(主内孔)14に第1コアロッド32aが挿入され、主クラッド体31の中央を取り囲むように形成された貫通孔14に、第2コアロッド32bが挿入されている。
第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1aは、主クラッド体31の軸線方向の寸法MAと同じである。なお、本実施形態では、第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1aは、主クラッド体31の軸線方向の寸法MAと同じとしたが、第1コアロッド32aの寸法M1aは、主クラッド体31の寸法MAより短くてもよい。
第2コアロッド32bの軸線方向の寸法M2aは、主クラッド体31の軸線方向の(貫通孔14の寸法)寸法MAよりも短い。また、第2コアロッド32bの軸線方向の寸法M2aは、第1コアロッド32aの軸線方向の寸法M1aより短い。このため、主クラッド体31の端面と第2コアロッド32bとの間には隙間Sが形成されている。また、第2コアロッド32bが挿通されている貫通孔14の第2端31b側には、隙間が形成されていない。
このように、主クラッド体31の複数の貫通孔14のそれぞれに第1コアロッド32a、第2コアロッド32bが挿入された構成のガラス材ユニットU2が得られる。
【0085】
その後、第1実施形態と同様に、ダミー管接続工程を行う。
次に、真空状態のまま、封止工程において以下の処理が施される。
図15に示すように、先端連設部301は、主クラッド体31の外径よりも若干小さい外径を有する。この構成により、後述する封止工程において、隙間Sが潰れた際に主クラッド体31の外径と、先端連設部301の外径がほぼ同一とすることが可能となる。
また、図15の主クラッド体31の先端連設部301側の外径寸法MS3が、図13の主クラッド体31の先端連設部301側の外径寸法MS1と等しくてもよい。この場合、図14の状態で隙間Sを潰し、先端連設部301を設けている。
また、図14の主クラッド体31の外径寸法MS2が最も大きく、次に図15の主クラッド体31の外径寸法MS3が大きく、図13の主クラッド体31の外径寸法MS1が最も小さくてもよい(MS2>MS3>MS1)。この場合、図14に示すように、貫通孔14の隙間Sが設けられている状態で、ダミー管12を溶断する。このときに溶断した付近の隙間Sは若干潰れる。この後、封止工程、あるいはガラスダミー接続工程において、真空引きを行い、隙間Sを潰すことにより図13の光ファイバ母材310が形成される。
ただし、真空引きを行うタイミングを隙間Sが設けられている状態からダミー管12を溶断する際に途中に行うことで、図13に示すように、隙間が完全に潰れた構造にすることも可能である。
【0086】
例えば、主クラッド体31の外径が、φ80mmであり、貫通孔14の内径がφ20mmであり、4か所の隙間Sが潰れた場合、潰れた後の主クラッド体31の外径は、φ70(2×√((80/2)^2×π-4×(20/2)^2×π))mmとなる。すなわち、主クラッド体31の外径は、主クラッド体31の外径をφ1とし、貫通孔14の内径をφ2とすると、潰れた後の主クラッド体31の外径は2×√((φ1/2)^2-Σi(φ2/2)^2)(Σはi=1~N)で表すことが可能である。
すなわち、隙間Sが潰れた後の主クラッド体31の外径と一致するように、先端連設部301の外径を調整する。
なお、本実施形態では、主クラッド体31の先端に先端連設部301を溶着した。この他に、主クラッド体31の先端に細いロッド(先端連設部)を取り付けた後、ロッドの先端を溶断して先端連設部を形成してもよい。
【0087】
図15に示すように、封止工程において、隙間Sを真空にする。次いで、火炎16等によって主クラッド体31の隙間Sを含む領域を加熱し、主クラッド体31を縮径させて隙間Sを塞ぐ。これにより、隙間Sが潰れた際に主クラッド体31の外径と、先端連設部301の外径がほぼ同一となる。このようにして、図13に示す光ファイバ母材310が形成される。
【0088】
光ファイバ母材310を線引きすることによって、第1実施形態の光ファイバ母材10と同様にしてマルチコア光ファイバを製造することができる(図10参照)。
【0089】
本実施形態の光ファイバ母材310においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、仮に、図15に示す封止工程において、第1コアロッド32aを溶断してしまい、第2コアロッド32bより突出している第1コアロッド32aが先端連設部となった場合でも、ガラス材ユニットU2の先端部にはコアが一つしかない状態であるため、偏肉を確認しやすい。
また、ガラス材ユニットU2の先端部がシングルコアファイバと同じ構成になるため、この領域で偏肉の確認を容易に行うことが可能となる。また、第2コアロッド32bの寸法M2が貫通孔14の寸法MAよりも短いため、主クラッド体31の孔の内部を真空に引きながら溶断することで、隙間Sが容易に潰れる。すなわち、すべての貫通孔14にロッドが入っている領域に比べて、母材の外径が小さくなる。その結果、すべての貫通孔14にロッドが入っている領域に比べて溶断に掛かる時間が減り、溶断が容易となる。
【0090】
図16は、シングルコアの被覆線にレーザ光を照射したときの前方散乱光の例を示す写真である。図17は、マルチコアの被覆線にレーザ光を照射したときの前方散乱光の例を示す写真である。
図15に示す先端連設部203を線引きして得た中間体および被覆ガラス線は、シングルコアの被覆線である。そのため、図16に示すように、前方散乱光は明所および暗所がはっきりしたパターンを示す。そのため、被覆の偏肉の確認は容易となる。
これに対し、図17に示すように、被覆線がマルチコアである場合には、前方散乱光には、複数のコアを原因とする複数の明所があるため、被覆の偏肉の確認は容易でない。
【0091】
図15に示すように、先端連設部203は、先端クラッド体204と、1つの先端コアロッド205と、を備えるシングルコアユニットである。そのため、シングルコアの光ファイバ用の光ファイバ母材の廃材を利用して先端連設部203を作製することができる。
したがって、光ファイバ母材210の作製は容易となる。また、光ファイバ母材210を低コストで作製することができる。
【0092】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
実施形態の光ファイバ母材は、スタックアンドドロー法を適用してもよい。スタックアンドドロー法を適用する場合には、例えば、ガラス管(主クラッド体)の1つの貫通孔(主内孔)内に複数の主コアロッドおよび複数のスペーサロッドを挿入する。これによって、ガラス管と主コアロッドとスペーサロッドとを備えたガラス材ユニットを得る。光ファイバ母材は、このガラス材ユニットと先端連設部とによって構成される。
【0093】
実施形態の光ファイバ母材は、ロッドインチューブ法を適用してもよい。その場合、主クラッド体の貫通孔(主内孔)の数は複数が好ましいが、複数には限定されない。すなわち、ガラス材ユニットは、1つの貫通孔を有する主クラッド体と、貫通孔に挿通する複数の主コアロッドとによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…主クラッド体、2…主コアロッド、3,203…先端連設部、4…主内孔、10,210…マルチコア光ファイバ母材、22…中間体(被覆線)、23…被覆ガラス線(被覆線)、204…先端クラッド体、205…先端コアロッド、206…先端内孔、A1…定径部の長さ、A2…縮径部の長さ、L1…レーザ光(試験光)、L2…前方散乱光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17