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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】タイヤトレッドゴム組成物及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20240910BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240910BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L9/06
B60C1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023521101
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021053545
(87)【国際公開番号】W WO2022076391
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】63/087,648
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 欣
(72)【発明者】
【氏名】ハウマン、ケニー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ガリツィオ、ベンジャミン シー.
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030993(JP,A)
【文献】特開2007-326942(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099324(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/032053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドゴム組成物であって、
(a)100部のエラストマー構成成分であって、
i.51~75部の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、-50~-35℃のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムと、
ii.25~49部の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、-30~-15℃のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、を含む、エラストマー構成成分と、
(b)60~90phrの量の、少なくとも1つの補強シリカ充填剤であって、200~350m/gのBET表面積を有する、補強シリカ充填剤と、
(c)10phr以下のカーボンブラック充填剤と、
(d)2~14phrの、少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、40~60℃のTgを有する、炭化水素樹脂と、
(e)15~35phrの液体可塑剤と、
(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、
(e)の少なくとも一部が、ポリスチレン標準物に従って、-30~-10℃のTg及び200,000グラム/モル未満のMwを有する低分子量スチレン-ブタジエンゴムによって提供される、タイヤトレッドゴム組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(a)(i)が、300,000~500,000グラム/モルのMwを有し、前記少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(a)(ii)が、400,000~700,000グラム/モルのMwを有し、両方ともポリスチレン標準物に従い、前記スチレン-ブタジエンゴム(a)(i)の前記Mwが、前記スチレン-ブタジエンゴム(a)(ii)の前記Mwより低い、請求項1に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
【請求項3】
(a)(i)が、スチレン-ブタジエンゴム100部当たり30~40部の液体可塑剤で伸展された、油展スチレン-ブタジエンゴムを含み、(a)(ii)が、非官能化スチレン-ブタジエンゴム(iii)100部当たり30~40部の前記低分子量スチレンブタジエンゴムで伸展された、前記非官能化スチレン-ブタジエンゴム(iii)を含む、請求項1又は2に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、0.15~0.25の、60℃におけるtanδの値を有し、以下:
(a)前記60℃におけるtanδ値の少なくとも3.5倍の、0℃におけるtanδの値を有すること、
(b)前記60℃におけるtanδ値の少なくとも1.6倍の、30℃におけるtanδの値を有すること、又は
(c)前記60℃におけるtanδ値の少なくとも70倍の、30℃における動的貯蔵弾性率(E’の値を有すること、のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、以下:
(d)少なくとも400%の、23℃における破断時伸び(Ebを有すること、
(e)少なくとも275%の、100℃における破断時伸び(Ebを有すること、又は
(f)100℃における破断時引張(Tb)の値×100℃における破断時伸び(Ebの値、が少なくとも3100であること、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物を含む路面に接触するトレッドを含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、タイヤトレッドゴム組成物及び関連方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物を調製するために使用される特定の成分は、様々であり得る。タイヤトレッドゴム組成物の配合は、ある特性(例えば、湿潤性能)の改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥トラクション)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、タイヤトレッド用のゴム組成物及び関連方法が開示される。
【0004】
本明細書に開示される第1の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。第1の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物は、(a)100部のエラストマー構成成分であって、(i)51~75部の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、約-50~約-35℃、好ましくは約-50~約-40℃のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムと、(ii)25~49部の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、約-30~約-15℃、好ましくは約-25~約-15℃のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、を含む、エラストマー構成成分と、(b)60~90phrの量の、少なくとも1つの補強シリカ充填剤であって、好ましくは約200~約350m/gのBET表面積を有する、補強シリカ充填剤と、(c)10phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)2~14phrの、少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、約40~約60℃のTgを有する、炭化水素樹脂と、(e)15~35phrの液体可塑剤と、(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、(e)の少なくとも一部が、低分子量スチレン-ブタジエンゴムによって提供される。
【0005】
本明細書に開示される第2の実施形態によれば、路面に接触するトレッドを含むタイヤが開示される。第2の実施形態のタイヤの路面に接触するトレッドは、本明細書に開示される第1の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を含む。
【0006】
本明細書に開示される第3の実施形態によれば、路面に接触するトレッドを有するタイヤを提供するための方法が提供される。この実施形態によれば、タイヤは、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有し、方法は、第1の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を、路面に接触するトレッドにおいて利用することを含む。
本開示は、以下の実施形態を含む。
<1> タイヤトレッドゴム組成物であって、
a.100部のエラストマー構成成分であって、
i.51~75部の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、約-50~約-35℃、好ましくは約-50~約-40℃のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムと、
ii.25~49部の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、約-30~約-15℃、好ましくは約-25~約-15℃のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、を含む、エラストマー構成成分と、
b.60~90phrの量の、少なくとも1つの補強シリカ充填剤であって、好ましくは約200~約350m /gのBET表面積を有する、補強シリカ充填剤と、
c.10phr以下のカーボンブラック充填剤と、
d.2~14phrの、少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、約40~約60℃のTgを有する、炭化水素樹脂と、
e.15~35phrの液体可塑剤と、
f.硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、
(e)の少なくとも一部が、低分子量スチレン-ブタジエンゴムによって提供される、タイヤトレッドゴム組成物。
<2> 前記低分子量スチレン-ブタジエンゴムが、ポリスチレン標準物に従って、約-30~約-10℃のTg及び200,000グラム/モル未満のMwを有する、前記<1>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<3> (a)(i)及び(a)(ii)が、前記エラストマー構成成分の少なくとも90重量%、好ましくは前記エラストマー構成成分の100重量%の総量で存在する、前記<1>又は<2>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<4> 前記少なくとも1つの炭化水素樹脂が、脂肪族樹脂、好ましくはC5ホモポリマー又はコポリマー樹脂を含む、前記<1>~<3>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<5> 前記ゴム組成物が、約10~約-20℃、好ましくは約0~約-15℃の化合物Tgを有する、前記<1>~<4>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<6> 前記スチレン-ブタジエンゴム(a)(i)が、前記スチレン-ブタジエンゴム(a)(ii)より低いMwを有する、前記<1>~<5>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<7> 前記少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(a)(i)が、約300,000~約500,000グラム/モルのMwを有し、前記少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(a)(ii)が、約400,000~約700,000グラム/モルのMwを有し、両方ともポリスチレン標準物に従う、前記<6>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<8> (a)(i)が、スチレン-ブタジエンゴム100部当たり30~40部の液体可塑剤で伸展された、油展スチレン-ブタジエンゴムを含む、前記<1>~<7>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<9> 前記エラストマー構成成分が、約-50~約-20℃、好ましくは約-45~約-25℃の平均Tgを有する、前記<1>~<8>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<10> (d)及び(e)が、35phr以下の総量で存在する、前記<1>~<9>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<11> (a)(ii)が、非官能化スチレン-ブタジエンゴム(iii)100部当たり30~40部の前記低分子量スチレン-ブタジエンゴムで伸展された、前記非官能化スチレン-ブタジエンゴム(iii)を含む、前記<1>~<10>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<12> (a)(i)が、置換若しくは非置換アミノ基、アミド残基、イソシアネート基、イミダゾリル基、インドリル基、置換若しくは非置換イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、又はケチミン基、好ましくは無置換アミノ基、置換アミノ基、又は置換イミノ基、のうちの少なくとも1つで官能化されている、前記<1>~<11>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<13> 前記ゴム組成物が、0.15~0.25、好ましくは0.16~0.2の、60℃におけるtanδの値を有し、以下:
a.前記60℃におけるtanδの値の少なくとも3.5倍、好ましくは前記60℃におけるtanδの値の3.7倍~4.7倍の、0℃におけるtanδの値を有すること、
b.前記60℃におけるtanδの値の少なくとも1.6倍、好ましくは前記60℃におけるtanδの値の1.6倍~2倍の、30℃におけるtanδの値を有すること、又は
c.前記60℃におけるtanδの値の少なくとも70倍、好ましくは前記60℃におけるtanδの値の75倍~90倍の、30℃におけるE’の値を有すること、のうちの少なくとも1つを満たす、前記<1>~<12>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<14> (c)が満たされる、前記<13>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<15> (a)、(b)、及び(c)の各々が満たされる、前記<13>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<16> 前記ゴム組成物が、以下:
(d)少なくとも400%、より好ましくは少なくとも450%の、23℃におけるEbを有すること、
(e)少なくとも275%、好ましくは少なくとも300%、より好ましくは少なくとも325%の、100℃におけるEbを有すること、又は
(f)少なくとも3100、好ましくは少なくとも3500、より好ましくは少なくとも3700、若しくは更に少なくとも4000の、100℃におけるTb×100℃におけるEbの値を有すること、のうちの少なくとも1つを満たす、前記<1>~<15>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<17> (d)~(f)の各々が満たされる、前記<16>に記載のタイヤトレッドゴム組成物。
<18> 前記<1>~<17>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物を含む路面に接触するトレッドを含む、タイヤ。
<19> 路面に接触するトレッドを有するタイヤを提供するための方法であって、前記タイヤが、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有し、前記方法が、前記<1>~<17>のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物を、前記路面に接触するトレッドのために利用することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、タイヤトレッド用のゴム組成物及び関連方法が開示される。
【0008】
本明細書に開示される第1の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。第1の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物は、(a)100部のエラストマー構成成分であって、(i)51~75部の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、約-50~約-35℃、好ましくは約-50~約-40℃のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムと、(ii)25~49部の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、約-30~約-15℃、好ましくは約-25~約-15℃のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、を含む、エラストマー構成成分と、(b)60~90phrの量の、少なくとも1つの補強シリカ充填剤であって、好ましくは約200~約350m/gのBET表面積を有する、補強シリカ充填剤と、(c)10phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)2~14phrの、少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、約40~約60℃のTgを有する、炭化水素樹脂と、(e)15~35phrの液体可塑剤と、(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、(e)の少なくとも一部が、低分子量スチレン-ブタジエンゴムによって提供される。
【0009】
本明細書に開示される第2の実施形態によれば、路面に接触するトレッドを含むタイヤが開示される。第2の実施形態のタイヤの路面に接触するトレッドは、本明細書に開示される第1の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を含む。
【0010】
本明細書に開示される第3の実施形態によれば、路面に接触するトレッドを有するタイヤを提供するための方法が提供される。この実施形態によれば、タイヤは、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有し、方法は、第1の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を路面に接触するトレッドにおいて利用することを含む。
【0011】
定義
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0012】
本明細書で使用されるとき、用語「BR」又は「ポリブタジエン」は、1,3-ブタジエンのホモポリマーを指す。
【0013】
本明細書で使用されるとき、用語「過半数」は、50%を超える(例えば、少なくとも50.1%、少なくとも50.5%、少なくとも51%など)を指す。
【0014】
本明細書で使用されるとき、用語「少数」は、50%未満(例えば、49.5%以下、49%以下など)を指す。
【0015】
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
【0016】
本明細書で使用されるとき、略記Mpは、ピーク分子量に使用される。
【0017】
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
【0018】
本明細書で特に明記しない限り、用語「ムーニー粘度」は、ムーニー粘度、ML1+4を指す。ゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキゴムの木などの原料、及び非パラゴムノキ原料(例えば、グアユールゴムノキ及びTKSなどのタンポポ)から収穫することができるものなどの、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0020】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部当たりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書において100部のエラストマー構成成分とも称される。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「SBR」は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを意味する。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び負荷下で道路と接触するタイヤの部分、並びに任意のサブトレッドの両方を指す。
【0024】
タイヤトレッドゴム組成物
上記のように、本明細書に開示される第1の実施形態は、特定の成分から作製されるタイヤトレッドゴム組成物を対象とし、第2の実施形態は、第1の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物を含む路面に接触するトレッドを含むタイヤを対象とし、本明細書に開示される第3の実施形態は、路面に接触するトレッドを有するタイヤを提供する方法であって、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有し、方法が、第1の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物を、路面に接触するトレッドにおいて利用することを含む、方法を対象とする。対象ゴム組成物は、一般に、対象ゴム組成物のうちの1つを成形及び硬化することによるトレッドパターンの形成を含むプロセスによって、タイヤ用のトレッドを調製する際に使用される。したがって、タイヤトレッドは、タイヤトレッドゴム組成物のうちの1つの硬化形態を含む。タイヤトレッドゴム組成物は、形成されているがまだタイヤに組み込まれていないトレッドの形態で存在し得、及び/又はタイヤの一部を形成するトレッド内に存在し得る。
【0025】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、全ゴム組成物のTgは様々であり得る。ゴム組成物全体のTgは、化合物Tg又はゴム組成物Tgと称され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、10~-20℃(例えば、10、8、6、5、4、2、0、-2、-4、-5、-6、-8、-10、-12、-14、-15、-16、-18、又は-20℃)、好ましくは約0~約-15℃又は0~15℃(例えば、0、-2、-4、-5、-6、-8、-10、-12、-14、-15℃)の化合物Tgを有する。ゴム組成物の化合物Tgは、一般にASTM D5992-96(2011)のガイドラインに従って、動的機械熱分光計(以下に記載されるGabo測定器など、引張モードで動作する)を使用して、かつ、温度掃引(-70~65℃)を使用して、特定の試験条件下(即ち、周波数52Hz、6%の静的歪み、0.1%の動的歪み、幅4.75mm×長さ29mm×深さ2mmの試料形態)で測定され得、170℃で15分間硬化した後の試料で測定が行われ、結果の曲線から振動法を使用してTgを推定する。
【0026】
エラストマー構成成分
上で考察されたように、第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、100部のエラストマー構成成分であって、(i)51~75部の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、約-50~約-35℃のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムと、(ii)25~49部の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、約-30~約-15℃のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、を含む、エラストマー構成成分を含む(comprise)(含む(include)。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、エラストマー構成成分の少なくとも90重量%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)は、少なくとも1つのSBR(i)及び少なくともSBR(ii)からなり、エラストマー構成成分の残りの部分(例えば、10%、9%、8%など)は、以下で考察されるように、好ましくは共役ジエン含有ポリマーから選択される1つ以上の追加のゴムからなる。第1~第3の実施形態の特定のこのような実施形態では、エラストマー構成成分の100重量%は、少なくとも1つのSBR(i)及び少なくとも1つのSBR(ii)である。言い換えれば、このような実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)及び少なくとも1つのSBR(ii)は、エラストマー構成成分中に存在する唯一の種類のゴムである。
【0027】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、エラストマー構成成分のTgは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー構成成分は、約-50~約-20℃又は-50~-20℃(例えば、-50、-48、-46、-45、-44、-42、-40、-38、-36、-35、-34、-32、-30、-28、-26、-25、-24、-22、又は-20℃)、好ましくは約-45~約-25℃又は-45~-25℃(例えば、-45、-44、-42、-40、-38、-36、-35、-34、-32、-30、-28、-26、又は-25℃)の平均Tgを有する。エラストマー構成成分の平均Tgは、100部のエラストマー構成成分中に存在する各ゴムのTgを使用し、それらの相対重量パーセントを考慮して計算することができる。1種(以上)のゴムが油展される場合、ゴムの量のみ(即ち、任意の量の油は除外する)が、エラストマー構成成分の平均Tgを計算するのに利用される。1種(以上)のゴムが油展される場合、非油展ゴムのTgが、エラストマー構成成分の平均Tgを計算するのに利用される。
【0028】
官能化スチレン-ブタジエンゴム
上で考察されたように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物のエラストマー構成成分は、51~75重量部(例えば、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、又は75部)の、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムであって、シリカ反応性官能基と、約-50~約-35℃又は-50~-35℃(例えば、-50、-49、-48、-47、-46、-45、-44、-43、-42、-41、-40、-39、-38、-37、-36、又は-35℃)のTgと、を有する、スチレン-ブタジエンゴムを含む(含む)。少なくとも1つのSBR(i)が、少なくとも51phrの量で存在するので、それは、第1~第3の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物のエラストマー構成成分の(重量による)過半数であると見なされ得る。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのSBRのTgは、約-50~約-40℃又は-50~-40℃(例えば、-50、-49、-48、-47、-46、-45、-44、-43、-42、-41、-40℃)である。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカ反応性官能基及び約-50~約-35℃又は-50~-35℃のTgを有する唯一のSBRが、タイヤトレッドゴム組成物に使用され、特定のこのような実施形態では、他の官能化SBRは、タイヤトレッドゴム組成物中に存在しない(即ち、タイヤトレッドゴム組成物中の唯一の官能化SBRは、シリカ反応性官能基及び約-50~約-35℃又は-50~-35℃のTgを有するSBR(i)である。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の他の実施形態では、シリカ反応性官能基及び約-50~約-35℃又は-50~-35℃のTgを有する2つのSBRが、タイヤトレッドゴム組成物に使用される。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、シリカ反応性官能基及び約-50℃~約-35又は-50~-35℃のTgを有する少なくとも1つのSBRは、エラストマー構成成分100重量部に対して、55~70重量部(例えば、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、若しくは75重量部)又は55~65重量部(例えば、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、若しくは65重量部)の量で存在する。
【0029】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、ポリスチレン標準物に従って(かつGPCによって決定され得る)、約300,000~約550,000グラム/モル又は300,000~550,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、525,000、又は550,000グラム/モル)、好ましくは約300,000~約500,000又は300,000~500,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、又は500,000グラム/モル)、より好ましくは約350,000~約450,000又は350,000~450,000グラム/モル(例えば、350,000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)のMwを有する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、ポリスチレン標準物に従って(かつGPCによって決定され得る)、約250,000~約450,000グラム/モル又は250,000~450,000グラム/モル(例えば、250,000、275,000、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)、好ましくは約300,000~約400,000グラム/モル又は300,000~400,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、又は400,000グラム/モル)のMnを有する。少なくとも1つのSBR(i)は、官能化ポリマーであるので、前述のMw及びMn値は、ベースポリマー値ではなく結合Mw及び結合Mnを指すことを理解されたい。
【0030】
一般に、シリカ反応性官能基を有するスチレン-ブタジエンゴムは、官能化ポリマー又は官能化SBRであると見なされ得る。シリカ反応性官能基の非限定例として、は、以下でより詳細に記載するように、一般に、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、酸素又は硫黄含有官能基、及び金属含有官能基が挙げられる。
【0031】
シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムが調製される場合、官能化は、ポリマーの一方若しくは両方の末端に官能基を付加することによって、ポリの骨格に官能基を付加することによって(若しくは前述の組み合わせ)、又は2つ以上のポリマー鎖をカップリング剤に結合させることによって、又はこれらの組み合わせによって達成され得る。そのような効果は、他の鎖を結合及び/又は官能化するのに役立つカップリング剤、官能化剤、又はそれらの組み合わせでリビングポリマーを処理することによって達成することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムは、1つ以上の官能基を含有するが、結合していない(即ち、カップリング剤を含有しない)。一般に、カップリング剤及び/又は官能化剤は、様々なモル比で使用することができる。あるいは、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、官能化SBR(i)は、単にカップリング剤の使用の結果によるシリカ反応性であり得る。本明細書においてカップリング剤及び官能化基(及びそのために使用される化合物)の両方の使用が参照されるが、当業者は、特定の化合物が両方の機能を果たし得ることを理解する。つまり、特定の化合物は、ポリマー鎖を結合すること、及び官能基と共にポリマー鎖を提供することの両方ができる。当業者はまた、ポリマー鎖を結合する能力はポリマー鎖と反応したカップリング剤の量に依存し得ることを理解する。例えば、反応開始剤のリチウムの当量とカップリング剤の脱離基(例えば、ハロゲン原子)の当量との1対1の比でカップリング剤を添加する場合、有利な結合を達成することができる。カップリング剤の非限定例としては、金属ハライド、半金属ハライド、アルコキシシラン、アルコキシスタンナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
少なくとも1つのSBR(i)におけるシリカ反応性官能基として、第1~第3の実施形態の特定の実施形態において利用され得る窒素含有官能基の非限定例としては、置換又は非置換アミノ基、アミド残基、イソシアネート基、イミダゾリル基、インドリル基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、及びケチミンが挙げられるが、これらに限定されない。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、非置換アミノ基、置換アミノ基、又は置換イミノ基を含むシリカ反応性官能基を有する。上記置換又は非置換アミノ基は、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、又は環状アミン、及び、置換又は非置換イミン由来のアミノ基を含むと理解されたい。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー構成成分の少なくとも1つのSBR(i)は、窒素含有官能基の前述のリストから選択される1つのシリカ反応性官能基を含む。
【0033】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、イミノ基の形態で窒素を含む化合物からのシリカ反応性官能基を含む。このようなイミノ含有官能基は、ポリマー鎖の活性末端を、以下の式(I):
【化1】
[式中、R、R’、R’’及びR’’’は、それぞれ独立して、アルキル基、アリル基、及びアリール基からなる群から選択される1~18個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個の炭素原子)を有する基から選択され、m及びnは、それぞれ、1~20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)及び1~3(1、2、又は3)の整数である]を有する化合物と反応させることによって付加され得る。R、R’、R’’、及びR’’’の各々は、好ましくはヒドロカルビルであり、ヘテロ原子を含有しない。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、各R及びR’は、1~6個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子)、好ましくは1~3個の炭素原子(例えば、1、2、又は3個の炭素原子)を有するアルキル基から独立して選択される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、mは、2~6(例えば、2、3、4、5、又は6)、好ましくは2又は3の整数である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、R’’’は、1~6個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子)、好ましくは2~4個の炭素原子(例えば、2、3、又は4個の炭素原子)を有する基から選択される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、R’’は、1~6個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子)、好ましくは1~3個の炭素原子(例えば、1、2、又は3個の炭素原子)、最も好ましくは1個の炭素原子(例えば、メチル)を有するアルキル基から選択される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、nは3であり、トリアルコキシシラン部分などのトリヒドロカルボキシシラン部分を有する化合物をもたらす。SBRのためのシリカ反応性官能基を提供するのに好適な、イミノ基を有し、上記の式(I)を満たす化合物の非限定例としては、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリ1)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、及びN-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
少なくとも1つのSBR(i)におけるシリカ反応性官能基として、第1~第3の実施形態の特定の実施形態において利用され得るケイ素含有官能基の非限定例としては、有機シリル又はシロキシ基が挙げられるが、これらに限定されず、より正確には、このような官能基は、アルコキシシリル基、アルキルハロシリル基、シロキシ基、アルキルアミノシリル基、及びアルコキシハロシリル基から選択され得る。任意選択的に、有機シリル又はシロキシ基はまた、1つ以上の窒素を含有し得る。ジエン系エラストマーの官能化での使用に好適なケイ素含有官能基としてはまた、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,369,167号に開示されるものも挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、ケイ素含有官能基の前述のリストから選択される少なくとも1つのシリカ反応性官能基を含む。
【0035】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、シロキシ基を有するケイ素含有官能基(例えば、ヒドロカルビルオキシシラン含有化合物)を含むシリカ反応性官能基を含み、この化合物は、任意選択的に、少なくとも1つの官能基を有する一価の基を含む。このようなケイ素含有官能基は、ポリマー鎖の活性末端を、以下の式(II):
【化2】
[式中、Aは、エポキシ、イソシアネート、イミン、シアノ、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及び硫化物から選択された少なくとも1つの官能基を有する一価の基を表し、Rは、単結合、又は1~20個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子)を有する二価の炭化水素基を表し、Rは、1~20個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子)を有する一価脂肪族炭化水素基、6~18個の炭素原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個の炭素原子)を有する一価の芳香族炭化水素基又は反応性基を表し、Rは、1~20個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子)を有する一価脂肪族炭化水素基、又は6~18個の炭素原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個の炭素原子)を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、bは0~2の整数であり、2つ以上のR又はORが存在するとき、各R及び/又はORは、互いに同じであっても異なっていてもよく、並びに活性プロトンは、分子)及び/又はその部分縮合生成物内に含まれない]を有する化合物と反応させることによって付加され得る。本明細書で使用されるとき、部分縮合生成物は、ヒドロカルビルオキシシラン化合物中のSiOR基の一部(全てではない)が、縮合によってSiOSi結合になっている生成物を指す。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、以下:(a)Rが、1~12個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12個の炭素原子)、2~6個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、若しくは6個の炭素原子)、又は2~3個の炭素原子(例えば、2若しくは3個の炭素原子)を有する二価の炭化水素基を表すこと、(b)Rが、1~12個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12個の炭素原子)、2~6個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、若しくは6個の炭素原子)、又は1~2個の炭素原子を有する一価の脂肪族炭化水素基、又は6~8個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表すこと、(c)Rが、1~12個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12個の炭素原子)、2~6個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、若しくは6個の炭素原子)、又は1~2個の炭素原子を有する一価の脂肪族炭化水素基、又は6~8個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表すこと、のうちの少なくとも1つが満たされ、特定のそのような実施形態では、(a)、(b)及び(c)のそれぞれが満たされ、R、R及びRは、前述の基のうちの1つから選択される。
【0036】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのエポキシ基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)-メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが特に適している。
【0037】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのイソシアネート基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0038】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのイミン基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、及び上記のトリエトキシシリル化合物に各対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物などが挙げられる。これらの中でも、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に適している。また、イミン(アミジン)基含有化合物としては、好ましくは、1-[3-トリメトキシシリル]プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールなどが挙げられ、これらの中でも、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール及びN-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0039】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、SBRの官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0040】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのカルボン酸無水物基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられ、これらの中でも3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0041】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのシアノ基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、2-シアノエチルプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0042】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つの環状三級アミン基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリメトキシシラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチルトリメトキシシラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチルトリメトキシシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピルトリメトキシシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシエチルシラン、3-[10-(トリエトキシシリル)デシル]-4-オキサゾリンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン及び(1-ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシランを列挙することができる。
【0043】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つの非環状三級アミン基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-ジブチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン及び3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランが適している。
【0044】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのピリジン基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、2-トリメトキシシリルエチルピリジンなどが挙げられる。
【0045】
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基は、式(II)で表される化合物から生じ、式中、Aは、少なくとも1つのシラザン基を有する。このような化合物の非限定的な具体例としては、N,N-ビス(トリメチルシリル)-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、又は1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタンが特に好ましい。
【0046】
式(II)によるシリカ反応性官能基が使用され、式中、Aが、(上記に詳細に考察されるような)1つ以上の保護された窒素を含有する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、窒素は、保護された窒素を一級窒素に変換するために、加水分解又は他の手順によって脱保護又は脱ブロックされ得る。非限定例として、2つのトリメチルシリル基に結合した窒素は、脱保護され、一級アミン窒素に変換され得る(そのような窒素は、依然として式(II)の化合物の残部に結合されている)。したがって、少なくとも1つのSBR(i)のシリカ反応性官能基が、Aが1つ以上の保護された窒素を含有する式(II)による化合物の使用から生じる、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、官能化ポリマーは、化合物の脱保護(又は加水分解された)バージョンから生じる官能基を含有するものとして理解され得る。
【0047】
少なくとも1つのSBR(i)におけるシリカ反応性官能基として、第1~第3の実施形態の特定の実施形態において利用され得る酸素又は硫黄含有官能基の非限定例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシドキシ基、ジグリシジルアミノ基、環状ジチアン誘導官能基、エステル基、アルデヒド基、アルコキシ基、ケトン基、チオカルボキシル基、チオエポキシ基、チオグリシドキシ基、チオジグリシジルアミノ基、チオエステル基、チオアルデヒド基、チオアルコキシ基、及びチオケトン基が挙げられるが、これらに限定されない。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、前述のアルコキシ基は、ベンゾフェノン由来のアルコール由来アルコキシ基であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、前述の酸素含有官能基又は硫黄含有官能基のリストから選択される少なくとも1つのシリカ反応性官能基を含む。
【0048】
第1~第3の実施形態によれば、シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのSBR(i)は、溶液重合又は乳化重合のいずれかによって調製され得る。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、シリカ反応性官能基を有する唯一のSBRは、溶液重合によって調製される。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、唯一のSBRシリカ反応性官能基は、乳化重合によって調製される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカ反応性官能基を有する2つ以上のSBRが使用される場合、ゴムは、溶液重合SBRと乳化重合SBRとの組み合わせ(例えば、1つの溶液SBR及び1つの乳化SBR)である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのSBRを含む)エラストマー構成成分中に存在する唯一のSBRは、溶液SBRである(即ち、乳化SBRは存在しない)。
【0049】
非官能化スチレン-ブタジエンゴム
上で考察されたように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物のエラストマー構成成分は、25~49部(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49部)の、少なくとも1つの非官能化スチレン-ブタジエンゴムであって、約-30~約-15℃又は-30~-15℃(例えば、-30、-29、-28、-27、-26、-25、-24、-23、-22、-21、-20、-19、-18、-17、-16、又は-15℃)のTgを有する、非官能化スチレン-ブタジエンゴムを含む(含む)。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、非官能化SBR(ii)は、約-25~約-15℃又は-25~-15℃(例えば、-25、-24、-23、-22、-21、-20、-19、-18、-17、-16、又は-15℃)のTgを有する。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、上で考察されたようなTgを有する少なくとも1つのSBR(ii)は、35~45部(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45部)の量で存在する。
【0050】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー構成成分は、非官能化であり、上で考察されたようなTgを有する、(唯)1つのSBR(ii)を含む。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、エラストマー構成成分は、両方とも非官能化であり、独立して、上で考察されたようなTgを有する2つのSBR(ii)を含む。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、(以下に記載されるような)低分子量SBRで伸展されるSBRを含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、任意の種類の液体可塑剤(例えば、油)で伸展されないSBRを含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、低分子量SBRで伸展されるSBRと、任意の種類の液体可塑剤又は油で伸展されないSBRとの組み合わせを含む。
【0051】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、ポリスチレン標準物に従って(かつGPCによって決定され得る)、約400,000~約700,000グラム/モル又は400,000~700,000グラム/モル(例えば、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、525,000、550,000、575,000、600,000、625,000、650,000、675,000、又は700,000グラム/モル)、好ましくは約300,000~約500,000又は300,000~500,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、又は500,000グラム/モル)、より好ましくは約350,000~約450,000又は350,000~450,000グラム/モル(例えば、350,000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)のMwを有する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(i)は、ポリスチレン標準物に従って(かつGPCによって決定され得る)、約250,000~約450,000グラム/モル又は250,000~450,000グラム/モル(例えば、250,000、275,000、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)、好ましくは約300,000~約400,000グラム/モル又は300,000~400,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、又は400,000グラム/モル)のMnを有する。少なくとも1つのSBR(ii)が、以下に考察されるように、低分子量(SBR)で伸展されるSBRを含む場合、上記で開示された範囲の上部において、例えば、500,000~700,000グラム/モル、好ましくは550,000~700,000グラム/モル、又は600,000~700,000グラム/モルのMwを有する(ii)用のSBRを使用することが好ましい場合があり、低分子量SBRのための低Mw SBRの使用によって、SBR(ii)の伸展バージョンにおける平均Mw及び/又はMnが低下され得ることを理解する。
【0052】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、少なくとも1つのSBR(ii)のスチレン含有量は、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、30~50%(例えば、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、又は50%)、より好ましくは35~45%(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45%)のスチレン含有量を有する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、少なくとも1つのSBR(ii)のビニル結合含有量は、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、15~35%(例えば、15、16、18、20、22、24、25、26、28、30、32、34、又は35%)、より好ましくは20~30%(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30%)のビニル結合含有量を有する。本明細書で言及されるビニル結合含量は、SBRポリマー鎖のブタジエン部分におけるビニル結合含量ではなく、SBRポリマー鎖中の総ビニル結合含量についてであるものとして理解されるべきであり、H-NMR及びC13-NMRによって(例えば、300MHz Gemini 300NMR分光計システム(Varian)を使用して)測定することができる。本明細書に開示されるスチレン含有量は、同様の方法及び同じ測定器を使用して決定され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、少なくとも1つのSBR(ii)は、上で考察されたMw、Mn、及び/又はMw/Mn範囲のうちの1つ以上と任意選択的に組み合わせて、前述の範囲のうちの1つ内のビニル結合含有量及びスチレン含有量を有する。
【0053】
第1~第3の実施形態によれば、シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのSBR(i)は、溶液重合又は乳化重合のいずれかによって調製され得る。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、シリカ反応性官能基を有する唯一のSBRは、溶液重合によって調製される。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、唯一のSBRシリカ反応性官能基は、乳化重合によって調製される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカ反応性官能基を有する2つ以上のSBRが使用される場合、ゴムは、溶液重合SBRと乳化重合SBRとの組み合わせ(例えば、1つの溶液SBR及び1つの乳化SBR)である。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、(シリカ反応性官能基を有する少なくとも1つのSBR(i)及び少なくとも1つの非官能化SBR(ii)を含む)エラストマー構成成分中に存在する唯一のSBRは、溶液SBRである(即ち、乳化SBRは、存在しない)。
【0054】
低分子量スチレン-ブタジエンゴム
上で考察されたように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物のエラストマー構成成分は、低分子量スチレン-ブタジエンゴムを含む。このSBRが低分子量を有すると称することは、SBRが一般にSBR(i)及び(ii)よりも低い分子量(Mw)を有することを意味する。低分子量SBRは、一般に室温で液体であるため、先に考察された「エラストマー構成成分」に含まれるよりもむしろ液体可塑剤を構成すると見なされるべきである。第1~第3の実施形態によれば、低分子量SBRのTgは、様々であり得るが、特定の好ましい実施形態では、Tgは、約-30~約-10℃又は-30~-10℃(例えば、-30、-28、-26、-25、-24、-22、-20、-18、-16、-15、-14、-12、又は-10℃)、更により好ましくは約-20~約-10℃又は-20~-10℃(例えば、-20、-19、-18、-17、-16、-15、-14、-13、-12、-11、又は-10℃)である。第1~第3の実施形態によれば、低分子量SBRのMwは、様々であり得るが、特定の好ましい実施形態では、Mwは、200,000グラム/モル未満(例えば、200,000、190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000グラム/モル、若しくはそれ未満)、又は200,000~40,000グラム/モルである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、低分子量SBRのMwは、150,000~40,000グラム/モル(例えば、150,000、140,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、若しくは40,000グラム/モル)、又は120,000~50,000グラム/モル(例えば、120,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、若しくは50,000グラム/モル)である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、低分子量SBRのMw/Mnは、1.2未満(例えば、1.2、1.15、1.1、1.05、1.0、0.95、0.90、0.85、0.80など)、好ましくは1.1未満(例えば、1.1、1.05、1.0、0.95、0.90、0.85、0.80など)であり、特定のこのような実施形態では、Mw/Mnは、1.2未満~0.9(例えば、1.2、1.15、1.1、1.05、1.0、0.95、若しくは0.90)、又は1.1未満~0.9(例えば、1.1、1.05、1,0、0.95、若しくは0.90)であり得る。
【0055】
第1~第3の実施形態によれば、低分子量SBRは、遊離液体可塑剤として、SBR(i)若しくは(ii)のうちの1つ、若しくは別のゴムのための伸展可塑剤として、又は両方の組み合わせとして、タイヤトレッドゴム組成物に添加され得る。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、低分子量SBRは、SBR(i)又は(ii)のうちの1つ、より好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、低分子量SBRは、SBR(ii)の一部を伸展するために使用される。言い換えれば、このような実施形態では、SBR(ii)の一部は、低分子量SBRで伸展され、SBR(ii)の残りの部分は、いかなる低分子量SBRでも伸展されない。特定のこのような実施形態では、SBR(ii)の約40~約70重量%又は40~70重量%(例えば、40、45、50、55、60、65、又は70重量%)が、低分子量SBRで伸展され、好ましくはSBR(ii)の約50~約65重量%又は50~65重量%(例えば、50、52、54、55、56、58、60、62、64、又は65重量%)が、低分子量SBRで伸展される。
【0056】
第1~第3の実施形態によれば、SBR(i)及び/又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される低分子量SBRの量は、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、SBR(i)又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)中に存在する低分子量SBRの量は、ゴム100部当たり10~50部の低分子量SBR(例えば、ゴム100部当たり10、15、20、25、30、35、40、45、又は50部の低分子量SBR)、好ましくは10~40部の低分子量SBR(例えば、ゴム100部当たり、又は20~40部(例えば、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、又は40部)ゴム100部当たり低分子量SBRである。
【0057】
第1~第3の実施形態によれば、低分子量SBRは、溶液重合又は乳化重合のいずれかによって調製され得る。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、唯一の低分子量SBRは、溶液重合によって調製される。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、唯一の低分子量SBRは、乳化重合によって調製される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、唯一の低分子量SBRが使用され、他の実施形態では、2つ以上(例えば、2つ又は3つ)の低分子量SBRが使用される。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、唯一の低分子量SBRが使用される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、2つ以上の低分子量SBRが使用される場合、ゴムは、溶液重合SBRと乳化重合SBRとの組み合わせ(例えば、1つの溶液SBR及び1つの乳化SBR)である。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物中に存在する唯一の低分子量SBRは、溶液SBRである(即ち、乳化SBRが存在しない)。
【0058】
他の(追加の)ゴム
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物のエラストマー構成成分は、少なくとも1つの追加のゴムを含む。特定のこのような実施形態では、唯一の追加のゴムが存在し、他の実施形態では、2つ(以上)の追加のゴムが存在する。第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムが存在する場合、ゴムは、好ましくは、共役ジエンモノマー含有ポリマー及びコポリマーから選択される。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、SBR(i)及び(ii)は、エラストマー構成成分の少なくとも90重量%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)、好ましくはエラストマー構成成分の少なくとも95重量%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)、又はエラストマー構成成分の100重量%の総量で存在する。SBR(i)及び(ii)が前述の量のうちの1つ(例えば、少なくとも90重量%)で存在する場合、追加のゴムは、エラストマー構成成分全体の100部を構成するように対応する総量(例えば、90部のSBR(i)+(ii)、及び10部の追加のゴム)で存在することを理解されたい。少なくとも1つの追加のゴムが存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、少なくとも1つの追加のゴムは、追加のSBR(即ち、SBR(i)及びSBR(ii)並びに低分子量SBR以外)、天然ゴム、ポリイソプレン、又はポリブタジエン(好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%のシス結合含有量を有するポリブタジエン)、好ましくは天然ゴム、又は少なくとも90%(好ましくは少なくとも92%)のシス結合含有量を有するポリブタジエンのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、追加のゴムは、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレン-ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム(ハロゲン化及び非ハロゲン化の両方)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-ブチレンゴム(EBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
充填剤構成成分
上で考察されたように、第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、少なくとも1つの補強シリカ充填剤及び10phr以下のカーボンブラック充填剤を含む(含む)。集合的に、これらの充填剤は、タイヤトレッドゴム組成物の「充填剤構成成分」を構成すると見なされ得る。第1~第3の実施形態によれば、充填剤構成成分は、60~90phr(例えば、60、62、64、65、66、68、70、72、74、75、76、78、80、82、84、85、86、88、又は90phr)の量の少なくとも1つの補強シリカ充填剤、及び10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0phr)のカーボンブラックを含む。以下で更に考察されるように、少なくとも1つの補強シリカ充填剤は、好ましくは約200~約350m/gのBET表面積を有する。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、充填剤構成成分は、60~90phrの量の少なくとも1つの補強シリカ充填剤、及び10phr以下のカーボンブラック(のみ)からなる。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、充填剤構成成分は、上で考察されたように、60~90phrの量の少なくとも1つの補強シリカ充填剤、及び10phr以下の(好ましくは補強カーボンブラックである)カーボンブラックを含むが、他の追加の充填剤も含み得る。このような追加の充填剤は、200m/g未満のBET表面積を有するシリカ充填剤、360m/gを超えるBET表面積を有するシリカ充填剤、非補強カーボンブラック、又はタイヤトレッドゴム組成物における使用に好適な他の充填剤から選択され得る。1つ以上の追加の充填剤が充填剤構成成分中に存在する第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、このような充填剤の量は、好ましくは、充填剤構成成分全体の20重量%以下(例えば、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下)、より好ましくは充填剤構成成分全体の10重量%以下(例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下)、更により好ましくは充填剤構成成分全体の5重量%以下(例えば、5%、4%、3%、2%、1%以下)である。
【0060】
補強シリカ充填剤
上記のように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、少なくとも1つの補強シリカ充填剤を60~90phr(例えば、60、62、64、65、66、68、70、72、74、75、76、78、80、82、84、85、86、88、又は90phr)の量で含む(含む)。(b)に使用される少なくとも1つのシリカ充填剤は、好ましくは、約200~約350m/g、200~350m/g(例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、又は350m/g)、より好ましくは約250~約320m/g又は250~320m/g(例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、又は350m/g)のBET表面積を有する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物中に存在する唯一のシリカ充填剤は、前述の範囲のうちの1つ内のBET表面積を有する。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのシリカ充填剤(b)の量は、65~85phr(例えば、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、又は75phr)、好ましくは70~80phr(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、又は80phr)である。
【0061】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、1つ又は2つ以上の補強シリカ充填剤が(b)に使用され得る。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、好ましくは本明細書で考察されるようなBET表面積を有する1つのシリカ充填剤が(b)に使用される。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、好ましくは本明細書で考察されるようなBET表面積を有する2つ(以上)のシリカ充填剤が(b)に使用される。
【0062】
第1~第3の実施形態によれば、少なくとも1種の補強シリカ充填剤のための特定の種類のシリカは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な補強シリカ充填材の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な他の補強シリカ充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiOなど)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、ケイ酸カルシウム(CaSiOなど)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al.3SiO.5HOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al.CaOSiOなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから凝集体へと強力に結合し、順次、集塊物へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5.5~約8、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9、若しくは8)、約6~約8、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、若しくは8)、約6~約7.5、6~7.5、約6.5~約8、6.5~8、約6.5~約7.5、6.5~7.5、約5.5~約6.8、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、多くの有用な商用グレードの異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。
【0063】
シリカカップリング剤
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1種又は2種以上のシリカカップリング剤もまた、(任意選択的に)利用され得る。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、少なくとも1種のシリカカップリング剤が利用される。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填剤の凝集の防止又は低減に有用である。シリカ充填剤粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、したがって、この凝集を防止することにより、粘度が低下し、ゴム組成物の加工性及びブレンドが改善される。
【0064】
概して、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどの任意の従来のシリカカップリング剤の種類が使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーとの間の連結架橋として作用する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化物系アルコキシ含有、二硫化物系アルコキシ含有、四硫化物系アルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含有するものが挙げられる。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、メルカプト型のシリカカップリング剤、最も好ましくは唯一の種類のシリカカップリング剤として含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加され得る。前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前表面処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分中に2つの成分(即ち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、それによって一般にゴムの配合が容易になる傾向がある。
【0065】
アルキルアルコキシシランは、一般式R10 Si(OR114-pを有し、各R11は独立して一価の有機基であり、pは1~3の整数であるが、少なくとも1つのR10がアルキル基であることを条件とする。好ましくは、pは1である。一般に、各R10は、独立してC~C20の脂肪族、C~C20の環式脂肪族、又はC~C20の芳香族を含み、各R11は、独立してC~Cの脂肪族を含む。特定の例示的な実施形態では、各R10は、独立してC~C15の脂肪族を含み、更なる実施形態では、各R10は、独立してC~C14の脂肪族を含む。メルカプトシランは、一般式HS-R13-Si(R14)(R15を有し、R13は二価の有機基であり、R14はハロゲン原子又はアルコキシ基であり、各R15は、独立してハロゲン、アルコキシ基又は一価の有機基である。ハロゲンは塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素である。アルコキシ基は、好ましくは、1~3個の炭素原子を有する。ブロックされたメルカプトシランは、一般式B-S-R16-Si-Xを有し、シリル基がシリカ-シラン反応におけるシリカとの反応に利用可能であり、ブロック基Bがメルカプト水素原子を置換して硫黄原子とポリマーとの反応をブロックする。上述の一般式において、Bは、不飽和ヘテロ原子の形態であり得る、又は単結合を介して硫黄に直接結合される炭素であり得るブロック基である。R16は、C~Cの直鎖又は分岐鎖アルキリデンであり、各Xは、C~Cのアルキル又はC~Cのアルコキシからなる群から独立して選択される。
【0066】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なアルキルアルコキシシランの非限定例としては、以下に限定されないが、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシ-シラン、エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシル-トリブトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルオクチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシル-トリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの非限定例としては、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドが挙げられる。ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィドの具体的な非限定例としては、以下に限定されないが、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド、及びそれらの混合物が挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドシリカカップリング剤の非限定例としては、以下に限定されないが、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスフィド(tetrasufide)、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、及びそれらの混合物が挙げられる。ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドは、Evonik Degussa Corporation製のSi69(登録商標)として市販されている。
【0068】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なメルカプトシランの非限定例としては、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、18-メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシラン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書において開示されている第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適なブロックされたメルカプトシランの非限定例としては、米国特許第6,127,468号、同第6,204,339号、同第6,528,673号、同第6,635,700号、同第6,649,684号、及び同第6,683,135号(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。ブロックされたメルカプトシランの代表例としては、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、トリエトキシシリルメチル-チオアセテート、トリメトキシシリルメチルチオアセテート、トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン、2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン、2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシ-シリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン、1-(1-オキソ-2-チア-5-トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート、8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート、8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-1-プロピルチオパルミテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-トリアセトキシシリル-1-エチル-チオアセテート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルジチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)テトラチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルトリチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルトリチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルジチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルジチオホスフィネート、トリス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-メチルジチオホスホネート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-エチルジチオホスホネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメチルチオサルフェート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルエタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルベンゼンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルトルエンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルナフタレンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルキシレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルメチルチオサルフェート、トリエトキシシリルメチルメタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルエタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルベンゼンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルトルエンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルナフタレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルキシレンチオスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。様々なブロックされたメルカプトシランの混合物を使用することができる。特定の例示的実施形態での使用に好適なブロックされたメルカプトシランの更なる例は、Momentive Performance Materials Inc.(Albany,NY)から入手可能なNXT(商標)シラン(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)である。
【0070】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な前処理されたシリカ(即ち、シランで前表面処理されたシリカ)の非限定例としては、メルカプトシランで前処理されたCiptane(登録商標)255 LD及びCiptane(登録商標)LP(PPG Industries)シリカ、並びにオルガノシランビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(Si69)とUltrasil(登録商標)VN3シリカとの間の反応の生成物であるCoupsil(登録商標)8113(Degussa)が挙げられるが、これらに限定されない。Coupsil 6508、Agilon 400(商標)シリカ(PPG Industries製)、Agilon 454(登録商標)シリカ(PPG Industries製)、及び458(登録商標)シリカ(PPG Industries製)。シリカが前処理されたシリカを含む実施形態では、前処理されたシリカは、シリカ充填剤について既に開示される量で使用される(即ち、81~120phr又は約90~約120phrなど)。
【0071】
第1~第3の実施形態の実施形態においてシリカカップリング剤が利用される場合、使用される量は様々となり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、いかなるシリカカップリング剤も含有していない。第1~第3の実施形態の他の好ましい実施形態では、シリカカップリング剤は、約0.1:100~約1:5(即ち、シリカ100部当たり約0.1~約20重量部)、例えば、0.1:100~1:5、約1:100~約1:10、1:100~1:10、約1:100~約1:20、1:100~1:20、約1:100~約1:25、及び1:100~1:25、並びに約1:100~約0:100、及び1:100~0:100のシリカカップリング剤の総量とシリカ充填剤との比を提供するのに十分な量で存在する。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、シリカカップリング剤の総量とシリカ充填剤との比は、1:10~1:20の比(即ち、シリカ100部当たり10~5重量部)に収まる。第1~第3の実施形態による特定の実施形態では、ゴム組成物は、約0.1~約15phrのシリカカップリング剤、例えば、0.1~15phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15phr)、約0.1~約12phr、0.1~12phr、約0.1~約10phr、0.1~10phr、約0.1~約7phr、0.1~7phr、約0.1~約5phr、0.1~5phr、約0.1~約3phr、0.1~3phr、約1~約15phr、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15phr)、約1~約12phr、1~12phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12phr)、約1~約10phr、1~10phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、若しくは10phr)、約1~約7phr、1~7phr、約1~約5phr、1~5phr、約1~約3phr、1~3phr、約3~約15phr、3~15phr、約3~約12phr、3~12phr、約3~約10phr、3~10phr、約3~約7phr、3~7phr、約3~約5phr、3~5phr、約5~約15phr、5~15phr、約5~約12phr、5~12phr、約5~約10phr、5~10phr、約5~約7phr、又は5~7phrを含む。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、8~12phr、又はこの範囲に収まる前述の範囲のうちの1つの量のシリカカップリング剤を含む。
【0072】
カーボンブラック充填剤
上で考察されたように、第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、限定量のカーボンブラック充填剤、より具体的には10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0phr)のカーボンブラック充填剤を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、5phr以下(例えば、5、4、3、2、1、又は0phr)のカーボンブラック充填剤を含む。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、カーボンブラック充填剤は、1~10phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10phr)若しくは1~5phr(例えば、1、2、3、4、若しくは5phr)の量、又は前述の範囲のうちの1つ内の量で存在する。
【0073】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、前述の限定された量のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである(言い換えれば、10phr以下、5phr以下、又は1~10若しくは1~5phrの補強カーボンブラック充填剤が使用される)。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、前述の限定された量のカーボンブラック充填剤は、非補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである(言い換えれば、10phr以下、5phr以下、又は1~10若しくは1~5phrの非補強カーボンブラック充填剤)。第1~第3の実施形態の更に他の実施形態では、前述の限定された量のカーボンブラック充填剤は、全てのカーボンブラック充填剤の総量を指すと理解されるべきである(即ち、補強及び非補強カーボンブラック充填剤の両方)。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、利用される唯一のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤である。
【0074】
第1~第3、第2の実施形態によれば、利用されるカーボンブラックの特定の種類は、様々であり得る。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するための好適なカーボンブラックは、少なくとも約20m/g(少なくとも20m/gを含む)、及び、より好ましくは、少なくとも約35m/g~最大で約200m/g、又はそれより高い(35m/g~最大で200m/gを含む)の表面積を有するものを含む、一般に入手可能な商業的に生産されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(cetyltrimethyl-ammonium bromide、CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(super abrasion furnace、SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(fast extrusion furnace、FEF)ブラック、微細ファーネス(fine furnace、FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(intermediate super abrasion furnace、ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(semi-reinforcing furnace、SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、前述のブラックのうちの2つ以上の混合物を含む。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって表記されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
【0075】
他の補強充填剤
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、カーボンブラック又はシリカ以外の補強充填剤(即ち、追加の補強充填剤)を含む。1種以上の追加の補強充填剤が利用され得るが、それらの総量は、好ましくは、10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)、又は5phr以下(例えば、5、4、3、2、1,又は0phr)に制限される。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、追加の補強充填剤を含有せず(即ち、0phr)、言い換えれば、そのような実施形態では、シリカ及び任意選択的にカーボンブラック以外の補強充填剤は存在しない。
【0076】
追加の補強充填剤が利用される、第1~第3の実施形態の実施形態では、追加の補強充填剤は、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物における使用に好適な追加の補強充填材の非限定例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、粘土(補強等級)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
非補強充填剤
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッド用のタイヤトレッドゴム組成物は、非カーボンブラックの非補強充填剤である少なくとも1つの非補強充填剤を更に含む。第1~第3の実施形態の他の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、非カーボンブラックの非補強充填剤を含有しない(即ち、0phr)。第1~第3の実施形態の更に他の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、非補強充填剤を含有しない(このような実施形態では、充填剤構成成分のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤である)。少なくとも1つの非カーボンブラックの非補強充填剤が利用される、第1~第3の実施形態の実施形態では、少なくとも1つの非補強充填剤は、粘土(非補強等級)、グラファイト、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、デンプン、窒化ホウ素(非補強等級)、窒化ケイ素、窒化アルミニウム(非補強等級)、ケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、粉砕ゴム、及びこれらの組み合わせから選択され得る。用語「非補強充填剤」は、約20m/g未満(20m/g未満を含む)である、特定の実施形態では、約10m/g未満(10m/g未満を含む)である窒素吸着比表面積(NSA)を有する微粒子材料を意味するために使用される。微粒子材料のNSA表面積は、ASTM D6556を含む様々な標準的方法に従って決定され得る。ある特定の実施形態では、用語「非補強充填剤」は、代替として又は更に、約1000nmより大きな(1000nm超を含む)粒径を有する微粒子材料を指す。非カーボンブラックの非補強充填剤がタイヤトレッドゴム組成物に存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、非カーボンブラックの非補強充填剤の総量は、様々であり得るが、好ましくは20phr以下(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1phr)であり、特定の実施形態では、1~10phr、10phr以下、5phr以下(例えば、5、4、3、2、若しくは1phr)、1~5phr、又は1phr以下である。
【0078】
炭化水素樹脂
上記のように、第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、2~14phr(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14phr)の少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、約40~約60℃又は40~60℃(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、56、58、又は60℃)のTgを有する、炭化水素樹脂を含む(含む)。炭化水素樹脂のTgは、エラストマーのTg測定について上で考察された手順に従って、DSCによって測定することができる。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、2~10phr(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)の少なくとも1つの炭化水素樹脂であって、約40~約60℃、又は40~60℃(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、又は60℃)のTgを有する、炭化水素樹脂を含む。第1~第3の実施形態の好ましい特定の実施形態では、少なくとも1つの炭化水素樹脂(d)は、約45~約55℃、又は45~55℃(例えば、45、46、48、50、52、54、又は55℃)のTgを有する。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つの炭化水素樹脂(d)は、約40~約60℃、40~60℃、約45~約60℃、45~60℃、約45~約55℃、又は45~55℃のTgを有する脂肪族炭化水素樹脂を含む。タイヤトレッドゴム組成物に使用される炭化水素樹脂(c)の量を制御することに加えて、第1~第3実施形態によって以下で更に考察されるように、炭化水素樹脂(c)と油(d)との総量を、本明細書の他の箇所で考察される量内に制御することも好ましい。
【0079】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、任意追加的に、脂環式樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂から選択される1つ以上の追加の樹脂との組み合わせの脂肪族樹脂を含み、1種以上の追加の樹脂が存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、そのような追加の樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(d)の炭化水素樹脂の全体量の10重量%以下、好ましくは5重量%以下)である。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、脂肪族樹脂(のみ)からなる。脂肪族樹脂が使用される場合、1種又は2種以上の脂肪族樹脂が利用され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、いかなるテルペン樹脂も含まない(即ち、0phrのテルペン樹脂がタイヤトレッドゴム組成物中に存在する)。本明細書で使用されるとき、用語「脂肪族樹脂」は、脂肪族ホモポリマー樹脂及び脂肪族コポリマー樹脂の両方を含むと理解されるべきである。脂肪族コポリマー樹脂は、最大量の任意の種類のモノマーが脂肪族である、1種又は複数種の脂肪族モノマーと1種又は複数種の他(非脂肪族)のモノマーとの組み合わせを含む炭化水素樹脂を指す。脂肪族コポリマー樹脂は、25重量%の環式脂肪族モノマー及び30重量%の芳香族モノマーに加えて、45重量%の脂肪族モノマーを有する炭化水素樹脂、並びに、30重量%の環式脂肪族モノマー及び15重量%の芳香族モノマーに加えて、55重量%の脂肪族モノマーを有する炭化水素樹脂を含み得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、全モノマーの重量の過半数(例えば、51%、55%、60%、65%など)が脂肪族である、1つ以上の脂肪族コポリマー樹脂を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態において炭化水素樹脂として使用するのに好適な脂肪族樹脂の非限定例としては、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、C5留分/脂環式コポリマー樹脂、C5留分/C9留分/脂環式コポリマー樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族モノマーの非限定例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)及びジシクロペンタジエン(「DCPD」)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な脂肪族樹脂は、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、Polysat Inc.、Resinall Corp.、及びZeonを含む様々な企業から様々な商品名で市販されている。
【0080】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、C5留分ホモポリマー樹脂、C5留分コポリマー樹脂(例えば、C9留分、DCPD、CPD、及びこれらの組み合わせなどの上記のモノマーのうちの1つ以上との組み合わせのC5)、又はこれらの組み合わせを含む。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(c)の炭化水素樹脂は、C5留分ホモポリマー樹脂、C5留分コポリマー樹脂(例えば、C9留分、DCPD、CPD、及びこれらの組み合わせなどの上記のモノマーのうちの1つ以上との組み合わせのC5)、又はこれらの組み合わせ(のみ)からなる。
【0081】
液体可塑剤
上で考察されたように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、(e)として、15~35phr(例えば、15、16、18、19、20、22、24、25、26、28、30、32、34、又は35phr)の液体可塑剤を含み、液体可塑剤の少なくとも一部は、(上で考察されたような)低分子量スチレン-ブタジエンゴムによって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の量は、15~30phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30phr)又は15~25phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25phr)であり、液体可塑剤の少なくとも一部は、(上で考察されたような)低分子量SBRによって提供される。液体可塑剤という語句は、25℃で液体である可塑剤を指すと理解されるべきであり、そうした可塑剤としては、油及びエステル系可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の少なくとも一部は、SBR(i)及び/又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される油によって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の全量が、低分子量SBRと、SBR(i)及び/又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される油との組み合わせによって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)は、(上で考察されたような)低分子量SBR、SBR(i)及び/又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される油、並びに遊離液体可塑剤の組み合わせによって提供される。遊離液体可塑剤という語句は、エラストマー構成成分中で使用されるSBR又は他のポリマーのうちの1つの前混合又は伸展を介して添加されるのではなく、ゴム組成物の他の成分(例えば、SBR(i)及びSBR(ii)並びに充填剤成分)と共に、ゴム組成物を調製するために使用される混合装置に別々に添加される液体可塑剤を意味する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の約10重量%~約60重量%又は10重量%~60重量%(例えば、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%、22%、24%、25%、26%、28%、30%、32%、34%、35%、36%、38%、40%、42%、44%、45%、46%、48%、50%、52%、54%、55%、56%、58%、又は60%)、好ましくは約25重量%~約50重量%又は25重量%~50重量%(例えば、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%)は、(上で考察されたような)低分子量SBRによって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の約10重量%~約50重量%又は10重量%~50重量%(例えば、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%、22%、24%、25%、26%、28%、30%、32%、34%、35%、36%、38%、40%、42%、44%、45%、46%、48%、50%)、好ましくは約15重量%~約30重量%(例えば、15%、20%、25%、又は30%)は、SBR(i)及び/又はSBR(ii)、好ましくはSBR(ii)を伸展するために使用される油によって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤(e)の約10重量%~約50重量%又は10重量%~50重量%(例えば、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%、22%、24%、25%、26%、28%、30%、32%、34%、35%、36%、38%、40%、42%、44%、45%、46%、48%、50%)、好ましくは約15重量%~約30重量%(例えば、15%、20%、25%、又は30%)は、遊離液体可塑剤によって提供される。
【0082】
油展ゴム又はSBRが使用される、第1~第3の実施形態のこれら実施形態では、油展ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得、特定のこのような実施形態では、油展ゴム(ポリマー)中に存在する伸展油の量は、ゴム100部当たり10~50部の油(例えば、ゴム100部当たり10、15、20、25、30、35、40、45、又は50部の油)、好ましくはゴム100部当たり10~40部の油又はゴム100部当たり20~40部の油である。
【0083】
本明細書で使用されるとき、油は、石油系油(例えば、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油)、並びに植物油(野菜、木の実、及び種子から収穫され得るものなど)の両方を指す。植物油は一般にトリグリセリドを含み、この用語は、合成トリグリセリド、及び実際に植物から供給されたものを含むと理解されるべきである。
【0084】
第1~第3の実施形態によれば、1つ以上の油がゴム組成物中に液体可塑剤(e)の少なくとも一部として存在する場合、利用され得る様々な種類の加工油及び伸展油としては、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油(石油由来又は植物由来)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有量を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,第62版に見出すことができる。例示的な石油由来の低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvate、MES)、処理留出物芳香族抽出物(treated distillate aromatic extract、TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。例示的なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。例示的なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。例示的な重ナフテン系油は、SHELLFLEX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。例示的な低PCA油としてはまた、野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど、様々な植物由来の油も挙げられる。非限定例としては、ダイズ油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、大麻油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられるが、これらに限定されない。前述の加工油を、伸展油として、即ち、油展ポリマー又は共重合体の調製のために、あるいは加工油又は遊離油として使用することもできる。
【0085】
1つ以上の油がゴム組成物中に液体可塑剤(e)の少なくとも一部として存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、使用される油のTgは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、利用される任意の油は、約-40~約-100℃、-40~-100℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、-90、-95、若しくは-100℃)、約-40~約-90℃、-40~-90℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、若しくは-90℃)、約-45~約-85℃、-45~-85℃(例えば、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、若しくは-85℃)、約-50~約-80℃、又は-50~-80℃(例えば、-50、-55、-60、-65、-70、-75、若しくは-80℃)のTgを有する。
【0086】
好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、5phr未満(例えば、4.5、4、3、2、1、又は0phr)のMES又はTDAE油を含有し、好ましくはMES又はTDAE油を含有しない(即ち、0phr)。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、石油を含有せず(即ち、0phr)、代わりに、利用される任意の油は、植物油である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、遊離油及び/又は伸展油のいずれかとして、好ましくは遊離油として、上記の量のうちの1つで大豆油を含有し、特定のこのような実施形態では、含まれる唯一の油は、遊離油及び/又は伸展油のいずれかとしての、好ましくは遊離油としてのダイズ油である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、ヒマワリ油を含有しない(即ち、0phr)。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、含まれる唯一の油は、遊離油及び/又は伸展油のいずれかとしての、好ましくは遊離油としてのヒマワリ油である。
【0087】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、液体可塑剤(e)の少なくとも一部のために1つ以上のエステル可塑剤を含む。エステル可塑剤は、一般に室温で液体である。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、液体可塑剤(e)は、エステル可塑剤を含有しない(即ち、0phrのエステル可塑剤が存在する)。好適なエステル系可塑剤は、当業者に既知であり、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、及びオレイン酸エステル(即ち、オレイン酸から誘導された)が挙げられるが、これらに限定されない。エステルが、少なくとも1つの-OHが、-O-アルキル基で置換されている酸から誘導された化学的化合物であることを考慮に入れると、様々なアルキル基は、タイヤトレッドゴム組成物中で使用するのに好適なエステル可塑剤に使用され得、一般に、C~C20(例えば、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20)、又はC~C12の直鎖又は分岐鎖アルキルを含む。前述のエステルのうちの特定のものは、2つ以上の-OH基を有する酸に基づき、したがって、1つ又は2つ以上のO-アルキル基に適応し得る(例えば、リン酸トリアルキル、フタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル)。好適なエステル可塑剤の非限定例としては、リン酸トリオクチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、オレイン酸ノニル、オレイン酸オクチル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。前述のうちの1つ以上などのエステル可塑剤の使用は、エステル可塑剤の比較的低いTgに少なくとも部分的に起因して、このようなエステル可塑剤を含有するタイヤトレッドゴム組成物から作製されるタイヤの雪又は氷性能に有益であり得る。第1~第3の実施形態のうち特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、-40℃~-70℃(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、若しくは-70℃)、又は-50℃~-65℃(例えば、-50、-51、-52、-53、-54、-55、-56、-57、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、若しくは-65℃)のTgを有する1つ以上のエステル可塑剤を含む。1種以上のエステル可塑剤が利用される、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、利用される量は様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のエステル可塑剤は、1~25phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25phr)、1~20phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20phr)、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15phr)、1~10、phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10phr)、2~6phr(例えば、2、3、4、5、若しくは6phr)、又は2~5phr(例えば、2、3、4、若しくは5phr)の総量で利用される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のエステル可塑剤は、油が1~10phr未満、又は1~5phrの量で存在する、油との組み合わせにおいて(前述の量のうちの1つで)使用される。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、1つ以上のエステル系可塑剤は、タイヤトレッドゴム組成物中にいかなる油も存在することなく(即ち、0phrの油で)使用される。
【0088】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、20~49phr(例えば、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、又は49phr)の可塑剤の総量を含み、可塑剤は、全て上で考察されたように、炭化水素樹脂及び液体可塑剤の全てを含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、49phr以下(例えば、49、45、40、35、30、25、若しくは20phr)、20~40phr(例えば、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、若しくは40phr)、好ましくは35phr以下(例えば、35、34、32、30、28、26、25、24、22、若しくは20phr)、又は25~35phr(例えば、25、26、28、30、32、34、若しくは35phr)の総量の可塑剤を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑剤の総量は、液体可塑剤に対して2/1~1/5、好ましくは液体可塑剤に対して1/1以下、例えば1/1~1/4(例えば、1/1、1/1.5、1/2、1/2.5、1/3、1/3.5、又は1/4)の重量比で炭化水素樹脂を含む。非限定例として、炭化水素樹脂が8phrの量で使用され、液体可塑剤の総量が16phrである場合、炭化水素樹脂の液体可塑剤に対する重量比は1/2である。
【0089】
硬化パッケージ
上で考察されたように、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、タイヤトレッドゴム組成物は、硬化パッケージを含む(include)(含む(comprise))。硬化パッケージの含有成分は、第1~第3の実施形態によって様々であり得るが、一般に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。第1~第3の実施形態のうち特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤と、少なくとも1種の加硫促進剤と、少なくとも1種の加硫活性化剤と、任意選択的に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤とを含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として作用する。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当技術分野で既知であり、当業者は、所望の加硫特性に基づいて選択することができる。
【0090】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な加硫剤の種類の例としては、以下に限定されないが、硫黄、又は過酸化物をベースとする硬化性構成成分が挙げられる。したがって、特定のこのような実施形態では、硬化パッケージは、硫黄系硬化剤又は過酸化物系硬化剤を含む。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤であり、特定のそのような実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤(のみ)からなる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。硬化で用いられる好適な硬化剤及び他の構成成分(例えば、加硫阻害剤及びスコーチ防止剤)の一般的な開示として、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd ed.,Wiley Interscience,N.Y.1982,Vol.20,pp.365~468、特にVulcanization Agents and Auxiliary Materials,pp.390~402又はA.Y.CoranによるVulcanization(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Second Edition(1989 John Wiley & Sons,Inc.))を参照することができ、これらの両方ともが、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、加硫剤は、0.1~10phrの範囲(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、例えば1~7.5phr、例えば1~5phr、好ましくは、1~3.5phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5phr)の量で使用され得る。
【0091】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。本明細書において開示されている第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(diphenyl guanidine、DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバミン酸加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、使用される加硫促進剤の量は、0.1~10phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、好ましくは1~6phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)の範囲である。好ましくは、第1~第3の実施形態のゴム組成物中で使用される任意の加硫促進剤は、一硫化チウラム及び多硫化チウラムなどの任意のチウラム(その例としては、TMTM(テトラメチルチウラムモノスルフィド)、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、DPTT(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)、TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)、TiBTD(テトライソブチルチウラムジスルフィド)、及びTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)が挙げられる)を含まず、言い換えれば、第1~第3の実施形態のゴム組成物は、好ましくは、チウラム促進剤を含有しない(即ち、0phr)。
【0092】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機成分及び有機成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及び前述の各々の亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、又は4phr)の範囲である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、酸化亜鉛とステアリン酸との両方が加硫活性化剤として使用され、利用される総量は、前述の範囲のうちの1つに収まり、特定のそのような実施形態では、使用される唯一の加硫活性化剤は、酸化亜鉛及びステアリン酸である。
【0093】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、限定するものではないが、Santogard製のPVI(cyclohexylthiophthalmide、シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、加硫抑制剤の量は、0.01~1phr(例えば、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1phr)、好ましくは0.01~0.3phr(例えば、0.01、0.015、0.02、0.025、又は0.3phr)である。
【0094】
他の成分
本明細書に開示されるような第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物に任意選択的に添加され得る様々な他の成分としては、ワックス(いくつかの事例では、酸化防止剤である)、加工助剤、補強樹脂、ペプタイザー、及び酸化防止剤/劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤である成分は、N,N’二置換-p-フェニレンジアミン、例えば、N-1,3-ジメチルブチル-N’フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、及びN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(HPPD)から選択されたものなどのオゾン劣化防止剤又は酸化防止剤として分類され得る。劣化防止剤の他の例としては、アセトンジフェニルアミン縮合生成物、2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、オクチル化ジフェニルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、及び特定のワックスが挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の他の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、酸化防止剤又はオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤を含み得ないか、又は本質的に含み得ない。
【0095】
ゴム組成物の調製
本明細書に開示される第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の調製に関与する特定の工程は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ段階及び最終生産用混合段階において成分を混合することを含む、従来実施されている方法の工程である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、例えば、Banbury混合器又はミルドロールで、成分を一緒に混錬するなどによる当技術分野において既知の方法によって、(上記で開示されたような)ゴム組成物の成分を混合することによって調製される。このような方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。非生産用マスターバッチ段階という用語は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階(単複数の段階)であると理解されている。用語、最終生産用混合段階という用語も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、2回以上の非生産用マスターバッチ混合段階を含むプロセスによって調製される。
【0096】
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、マスターバッチ混合段階が、タンデム混合又は噛合混合のうちの少なくとも1つを含むプロセスによって調製される。タンデム混合は、2つの混合チャンバを有し、各チャンバが1組の混合用ローターを有する、ミキサーを使用することを含むものとして理解することができ、一般に、2つの混合チャンバは、一次ミキサーである上部ミキサーと一緒に積層され、下部ミキサーは、上部又は一次ミキサーからバッチを受け入れる。特定の実施形態では、一次ミキサーは噛み合うローターを利用し、他の実施形態では、一次ミキサーは接線方向のローターを利用する。好ましくは、下部ミキサーは、噛み合うローターを利用する。噛み合い混合は、噛み合うローターを有するミキサーの使用を含むものとして理解され得る。噛み合うローターとは、ローターが互いに噛み合うように、セット内の1つのローターの大径が、セット内の対向するローターの小径と相互作用するローターのセットを指す。噛み合うローターは、ローター間の相互作用により、均一の速度で駆動されなければならない。噛み合うローターとは対照的に、接線方向ローターとは、各ローターが、側面と称され得る空洞内で互いに独立して回転する、1組のローターを指す。一般に、接線方向のローターを有するミキサーは、ラムを含むのに対し、ラムは、噛み合うローターを有するミキサーでは必要ではない。
【0097】
一般に、ゴム(又はポリマー)及び少なくとも1つの補強充填剤(及び任意のシランカップリング剤、液体可塑剤、及び樹脂)を非生産用又はマスターバッチ混合段階(複数可)で添加する。一般に、硬化パッケージの少なくとも加硫剤成分及び加硫促進成分を最終又は生産用混合段階で添加する。
【0098】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、少なくとも1つの非生産用マスターバッチ混合段階が、約130℃~約200℃又は130~200℃(例えば、130、140、150、160、170、180、190、又は200℃)、好ましくは約130~約180℃又は130~180℃(130、140、150、160、170、又は180℃)の温度で実行されるプロセスを使用して調製される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、タイヤトレッドゴム組成物の望ましくない前硬化を回避するために加硫温度未満の温度で実行される最終生産用混合段階を使用して調製される。したがって、生産用又は最終混合段階の温度は、一般に約120℃を超えるべきではなく、典型的には約40℃~約120℃若しくは40~120℃(例えば、40、50、60、70、80、90、100、110、若しくは120℃)、又は約60℃~約110℃、特に約75℃~約100℃若しくは75~100℃(例えば、75、80、85、90、95、若しくは100℃)である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、少なくとも1回の非生産用混合段階及び少なくとも1回の生産用混合段階を含むプロセスに従って調製される。シリカ充填剤の使用は、任意選択的に、そのような充填剤の一部又は全部を別個に添加するための別個の再粉砕段階を必要とし得る。この段階は、多くの場合、マスターバッチ段階で採用される温度と同様であるが、往々にしてわずかに低い温度、即ち、約90℃~約150℃の落下温度までの温度で行われる。
【0099】
タイヤトレッド用のゴム組成物の特性
上記のように、本明細書に開示される第3の実施形態によれば、路面に接触するトレッドを有するタイヤを提供するための方法であって、タイヤが、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有し、方法が、第1の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を利用することを含む、方法が提供される。一般に、本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、(タイヤの路面に接触するトレッドとして使用される場合)タイヤトレッドゴム組成物は、バランスのとれた湿潤性能、ローリング抵抗、及びコーナリング性能を有するタイヤを生産するものとして理解され得る。追加の改善された又は望ましい特性には、破断時伸び(Eb)、破断時引張(Tb)、及びTb×Ebが挙げられる。
【0100】
異なる温度でのE’(動的貯蔵弾性率)の測定は、タイヤのトレッドとして使用される場合のゴム組成物の様々な特性の指標を提供できる(例えば、-20℃でのE’はスノートラクションと相関し、比較的低いE’はより良いスノートラクションを示し、30℃でのE’は剛性又はコーナリングと相関し、比較的高いE’は改善された剛性又はコーナリングを示す)。ゴム組成物がタイヤトレッドに組み込まれる場合、乾燥した路面でのコーナリングを含むステアリングの安定性は、一般に、高温(例えば、30℃)でのE’の影響を受け、より高い値が好ましく、スノートラクションは、低温(例えば、-20℃及び-40℃)でのE’の影響を受け、より低い値が好ましい。本明細書で言及される測定及び性能は、実験室で調製された硬化ゴム組成物(ゴム組成物は、第1~第3の実施形態について本明細書で考察されるとおりである)のスラブで測定され得るか、又はタイヤトレッドから切り取った試料(例えば、第1~第3の実施形態について本明細書で考察されるようなゴム組成物の硬化バージョンを含有するもの)で測定され得る。
【0101】
様々な温度におけるtanδの測定は、タイヤトレッドに組み込まれる場合のゴム組成物の予期される湿潤性能、乾燥性能、及びローリング抵抗を定量化するために使用され得る。tanδ値は、一般にASTM D5992-96 (2011)のガイドラインに従って、動的機械熱分光計(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH(Ahiden,Germany)のEplexor(登録商標)500N)を用いて以下の条件下で測定され得る:測定モード:引張試験モード、測定周波数:52Hz、温度掃引測定、-50~-5℃で0.2%の歪み及び-5~65℃で1%の歪み適用、開始温度は-50℃よりもいくらか低く、終了温度は-5℃よりもいくらか高く、-30℃、0℃、30℃、及び60℃の温度で測定を提供するために、約1℃ごとにデータを収集、試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm。測定は、硬化したゴムの試料(170℃で15分間硬化)に対して行われる。タイヤトレッド内に組み込まれる場合、0℃におけるゴム組成物のtanδは、その湿式トラクションを示し、タイヤトレッド内に組み込まれる場合、30℃におけるそのtanδは、その乾燥トラクションを示し、タイヤトレッド内に組み込まれる場合、60℃におけるそのtanδは、そのローリング抵抗を示す。
【0102】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.15~0.25(例えば、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25)、好ましくは0.16~0.2(例えば、0.16、0.17、0.18、0.19、又は0.2)の、60℃におけるtanδの値を有する。前述の範囲のうちの1つ内の60℃におけるtanδは、低い全体的なローリング抵抗を有するタイヤ(又はより具体的には、タイヤトレッド)を示すものとして理解され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60℃におけるtanδの値は、以下:(a)60℃におけるtanδ値の少なくとも3.5倍(例えば、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5以上)、好ましくは60℃におけるtanδ値の少なくとも3.7倍、若しくは3.7倍~4.7倍(例えば、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7)の、0℃におけるtanδの値、又は(b)60℃におけるtanδ値の少なくとも1.6倍(例えば、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1以上)、好ましくは60℃におけるtanδ値の1.6倍~2倍の、30℃におけるtanδの値、又は(c)60℃におけるtanδ値の少なくとも70倍(例えば、70、72、74、75、76、78、80、82、84、85、86、88、90倍以上)、好ましくは60℃におけるtanδ値の少なくとも75倍、若しくは75倍~90倍(例えば、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、若しくは90倍)の、30℃におけるE’値、のうちの少なくとも1つを組み合わされ、特定のそのような実施形態では、60℃におけるtanδの値は、(a)、(b)、及び(c)のそれぞれと組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.15~0.25又は0.16~0.2)は、(a)60℃におけるtanδ値の3.7~4.7倍の、0℃におけるδ値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.15~0.25又は0.16~0.2)は、(b)60℃におけるtanδ値の1.6~2倍の、30℃におけるtanδ値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.15~0.25又は0.16~0.2)は、(c)60℃値の75~90倍の、30℃におけるE’値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.15~0.25又は0.16~0.2)は、-30℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ、0℃におけるtanδの前述の値のうちの1つ、及び30℃におけるE’の前述の値のうちの1つと組み合わされる。
【0103】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも400%(例えば、400%、405%、410%、415%、420%、425%、430%、435%、440%、445%、450%、455%、460%、465%、470%、475%、480%、485%、490%、495%、500%以上)、又は400~550%若しくは400~500%の範囲内、好ましくは少なくとも450%、又は450~550%若しくは450~500%の範囲内、又は前述の範囲のうちの1つ内の部分範囲の室温Ebを有する。前述の室温Eb値は、以下に記載される手順に従って決定され得、23℃で行われる測定値を指す。
【0104】
第1~第3の実施形態のうち特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも275%(例えば、275%、280%、285%、290%、295%、300%、305%、310%、315%、320%、325%、330%、335%、340%、345%、350%、355%、360%、365%、370%、375%以上)、又は275~400%若しくは275~375%の範囲内、好ましくは少なくとも300%(例えば、300%、305%、310%、315%、320%、325%、330%、335%、340%、345%、350%、355%、360%、365%、370%、375%以上)、又は300~400%若しくは300~375%の範囲内、より好ましくは少なくとも325%(例えば、325%、330%、335%、340%、345%、350%、355%、360%、365%、370%、375%以上)又は325~400%若しくは325~375%、又は前述の範囲のうちの1つ内の部分範囲の高温Ebを有する。前述の高温Eb値は、以下に記載される手順に従って決定され得、100℃で行われる測定値を指す。
【0105】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも3100(例えば、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、3950、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300以上)、好ましくは少なくとも3500(例えば、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、3950、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300以上)、より好ましくは少なくとも3700、又は更には少なくとも4000の高温EbxTbを(100℃において測定されたEb及びTbの両方と共に)有する。特定のこのような実施形態では、高温Tb×Ebは、3100~4300、好ましくは3500~4300若しくは3700~4000、又は前述の範囲のうちの1つ内の部分範囲である。高温Tb×Ebは、高温Tbに高温Eb値を乗算することによって計算され、この値は、以下に記載される手順に従って決定され得、100℃で行われる測定値を指す。
【0106】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、以下の:(d)少なくとも400%、好ましくは少なくとも450%、より好ましくは少なくとも475%の、23℃におけるEb、(e)少なくとも275%、好ましくは少なくとも300%、より好ましくは少なくとも325%の、100℃におけるEb、又は(f)少なくとも3100、好ましくは少なくとも3500、より好ましくは少なくとも3700、又は更に少なくとも4000の、100℃におけるTb×100℃におけるEbの値のうちの少なくとも1つを満たす。前述の実施形態の特定のものでは、(d)~(f)の各々は、好ましくは「好ましくは」値の各々に従って各々に対して、より好ましくは「より好ましくは」値の各々に従って各々に対して満たされる。
【0107】
室温Ebは、破断時伸び測定値(伸び%に関して)を表し、ゴム組成物の引裂抵抗の指標を提供する。略語Tbは、破断時引張を指し、この測定値(MPa単位で作製)は、破断前に耐えることができる最大応力を測定することによってゴム組成物の強度の指標を提供する。Eb及びTbは、ASTM D-412に記載される標準的手順に従うが、これには限定されないガイドラインに従って、幅の断面寸法4mm、中心部厚さ1.9mmを有するダンベル型試料を用いて測定することができる。測定中、試験片を一定速度(毎秒20%)で歪ませ、結果として得られた力を伸展(歪み)の関数として記録することができる。室温測定は、23℃で取得された測定値を指し、熱間測定は、100℃で取得された測定値を指す。
【実施例
【0108】
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの具体的な実施例に対する多くの変更が可能である。表に規定されたものと比較して、異なる量を含む(エラストマー構成成分のための異なるゴム、異なる充填剤、異なる液体可塑剤、異なる樹脂、及び異なる硬化パッケージ成分を含む)異なる成分が、本開示によるゴム組成物において利用され得ることが具体的に理解されるべきである(即ち、前項に完全に開示されているように)。
【0109】
タイヤトレッドゴム組成物は、表1に規定される成分を使用して調製され得る。SBRについて列挙される量は、(ゴムを伸展するために使用される任意の液体可塑剤を除く)ゴムの量を表す。実施例1は、本開示によるタイヤトレッドゴム組成物であると見なされ得る一方で、実施例C1~C6は、比較のタイヤトレッドゴム組成物であると見なされ得る。ゴム組成物の各々は、(約130~約180℃の範囲の(最高)温度内で実行される)非生産用段階及び(約120℃を超えない(最高)温度範囲内で実行される)生産用混合段階を有する(一般に上記のような)タンデム型の混合手順を利用して混合され得る。
【表1】
【0110】
表2は、表1からのゴム組成物の各々について予測された特性を提供する。特に、tanδ値は、上記の項に記載されたGabo手順に従って測定され得、E’値は、上記の手順に従って測定され得る。室温Ebは、破断時伸び測定値(伸び%に関して)を表し、ゴム組成物の引裂抵抗の指標を提供する。略語Tbは、破断時引張を指し、この測定値(MPa単位で作製)は、破断前に耐えることができる最大応力を測定することによってゴム組成物の強度の指標を提供する。Eb及びTbは、ASTM D-412に記載される標準的手順に従うが、これには限定されないガイドラインに従って、幅の断面寸法4mm、中心部厚さ1.9mmを有するダンベル型試料を用いて測定することができる。測定中、試験片を一定速度(毎秒20%)で歪ませ、結果として得られた力を伸展(歪み)の関数として記録することができる。室温測定は、23℃で取得された測定値を指し、熱間測定は、100℃で取得された測定値を指す。結果は、比較例の値を指標化するために使用される本発明の実施例(即ち、実施例1)のデータと共に、以下の表2に報告される。非限定例として、60℃におけるtanδについての実施例1の値が0.18であり、60℃におけるtanδについての実施例C1の値が0.27であった場合、指数化された値は、それぞれ100及び150として報告され、150は、(0.27/0.18)*100から計算される。
【表2】
【0111】
表2に提供されたデータから分かるように、比較のゴム組成物中の成分を変化させることによって、本発明のゴム組成物の予測特性とは異なる予測特性が得られる。より具体的には、比較例C1のゴム組成物に関して、過半数未満の重量のSBR(i)(及び相応により多くのSBR(ii))を使用することによって、悪化したローリング抵抗、及び70未満の、30℃におけるE’/60℃におけるtanδの比を有するゴム組成物が得られる。比較例C2のゴム組成物に関して、250~320m/gの範囲のBET表面積を有するより少ない補強シリカ充填剤を使用することによって、70未満の、30℃におけるE’/60℃におけるtanδの比、300%未満の100℃におけるEb、及び3100未満のTb×Ebを有するゴム組成物が得られる。比較例C3のゴム組成物に関して、より多くの炭化水素樹脂(即ち、9phrではなく19phr)を使用することによって、75未満の、30℃におけるE’/60℃におけるtanδの比、1.6未満の、30℃におけるtanδ/60℃におけるtanδの比、悪化したローリング抵抗、及び3500未満のTb×Ebを有するゴム組成物が得られる。比較例C4のゴム組成物に関して、過半数未満の重量のSBR(i)を使用し、SBR2をSBR4(SBR4は、SBR2よりもいくらか高いTgを有する)で置換することによって、4.7を超える、0℃におけるtanδ/60℃におけるtanδの比、悪化した乾燥性能、及び3100未満のTb×Ebを有するゴム組成物が得られる。比較例C5のゴム組成物に関して、SBR(i)(即ち、SBR1)を除去し、それを非官能化SBR4で置換することによって、4.7を超える、0℃におけるtanδ/60℃におけるtanδの比、70未満の、30℃におけるE’/60℃におけるtanδの比、及び3100未満のTb×Ebを有するゴム組成物が得られる。比較例C6のゴム組成物に関して、より低いBET表面積を有するシリカ充填剤を使用することによって、4.7を超える、0℃におけるtanδ/60℃におけるtanδの比、75未満である、30℃におけるE’/60℃におけるtanδの比、わずか300%である100℃におけるEb、及び3100未満であるのTb*Ebを有するゴム組成物が得られる。
【0112】
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかし、そのような語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、そのような記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される数を意味するものと典型的には解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例表現を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。