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特許7553709分散アンテナ無線システム及び無線通信支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】分散アンテナ無線システム及び無線通信支援方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/024 20170101AFI20240910BHJP
【FI】
H04B7/024
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023523406
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2022020022
(87)【国際公開番号】W WO2022249891
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2021090135
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】本江 直樹
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143349(JP,A)
【文献】特開平10-233724(JP,A)
【文献】特開2012-217174(JP,A)
【文献】特開2017-135620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0140733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と端末局の間での無線通信を支援する分散アンテナ無線システムであって、
各々分散させて配置された複数の第1のアンテナと、
前記複数の第1のアンテナの各々から該アンテナで受信された無線通信の信号が入力され、そのうちの前記端末局から前記基地局への上りリンクの信号と判別される信号を合成する集約装置と、
前記集約装置により合成された信号を前記基地局に向けて送信する、前記第1のアンテナとは異なる第2のアンテナと、を備え
前記集約装置は、前記複数の第1のアンテナのうちの信号を受信したアンテナ数、及び、2つ以上のアンテナで信号を受信した場合のこれらアンテナで受信した信号の同一性に基づいて、前記第1のアンテナで受信された信号が上りリンクの信号か否かを判別することを特徴とする分散アンテナ無線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散アンテナ無線システムにおいて、
前記集約装置は、所定の閾値以上の信号強度を持つ信号を選択して合成することを特徴とする分散アンテナ無線システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分散アンテナ無線システムにおいて、
前記複数の第1のアンテナの各々は、建物の窓又はその近傍に設置され、
前記第2のアンテナは、前記建物の屋外に設置されたことを特徴とする分散アンテナ無線システム
【請求項4】
基地局と端末局の間での無線通信を支援する無線通信支援方法であって、
各々分散させて配置された複数の第1のアンテナの各々が、受信した無線通信の信号を集約装置へ出力し、
前記集約装置が、前記複数の第1のアンテナのうちの信号を受信したアンテナ数、及び、2つ以上のアンテナで信号を受信した場合のこれらアンテナで受信した信号の同一性に基づいて、前記第1のアンテナで受信された信号が前記端末局から前記基地局への上りリンクの信号か否かを判別し、前記複数の第1のアンテナの各々から入力された信号のうちの前記端末局から前記基地局への上りリンクの信号と判別される信号を合成し、
前記第1のアンテナとは異なる第2のアンテナが、前記集約装置により合成された信号を前記基地局に向けて送信することを特徴とする無線通信支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と端末局の間での無線通信を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線アクセスシステムが普及し、豊かな生活を送るためには無くてはならないものとなっている。携帯電話の第1世代から第4世代までを振り返ると、主に無線通信の高速化のための技術が進化してきた。第5世代では、高速化に加えて超低遅延及び多数同時接続性が要求される。これらの実現のためには広帯域化が有効であること、また、周波数の利用状況がひっ迫していることから、第5世代以降では、ミリ波帯をはじめとする高周波帯の利用が効果的である。例えば、第5世代ではミリ波帯に近い28MHz帯が使用される。周波数が高くなる(すなわち、波長が短くなる)と、例えば1つの平面アンテナの受信面積が小さくなるため、マイクロ波帯と比較して伝搬損失が大きくなるという課題がある。伝搬損失が大きくなると、無線機あたりのカバーエリアが小さくなるため、コストの増大を招いてしまう。
【0003】
この課題を解決するために、第5世代ではビームフォーミング技術(BF:Beam Forming)が採用される。BF技術は、複数のアンテナを配置(アレー)し、各アンテナ素子の送信信号の振幅と位相を制御することで鋭いアンテナ指向性を得ることができる。また、アンテナ利得によって電波伝搬損失を補償することができる。
【0004】
送信BFでは、複数のアンテナから放射する送信信号の位相を制御して空間合成することで、或る場所では各アンテナから放射された電波の位相が同相に近くなって電力を強め合い、また或る場所では各アンテナから放射された電波が電力を打ち消し合う。その結果、電力を強め合う場所では合成利得を得ることができるため、電波伝搬損失を補償し、長距離伝送が可能となる。あるいは、受信機での所望信号電力対雑音電力比が大きくなるため、直交振幅変調の多値数を大きくすることで高速伝送が可能となる。
【0005】
図1を参照して、BFによってアンテナビームを形成する場合の指向性について説明する。ここでは、アンテナとして、マイクロ波帯やミリ波帯において多く採用されている平面アンテナを用いる場合を例とした。図1(a)は1サブアレイ(または1素子)の場合の例であり、電波は平面アンテナの指向性を有する。図1(b)は4サブアレイの場合の例であり、1サブアレイと比較して電波の指向性は鋭くなり、正面方向の合成電力は大きくなる。図1(c)は16サブアレイの場合の例であり、電波の指向性は更に鋭くなり、正面方向の合成電力も更に大きくなる。図1(d)は16サブアレイであるが、図1(c)とは各アンテナ素子の送信信号の位相が異なる場合の例であり、正面よりも左側に電波の指向性が向くように制御されている。電波の指向性を鋭くすることによって、他の無線機に与える干渉を小さくすることができ、周波数の利用効率が良くなるという利点もある。BF技術の原理や指向性制御方法などは多くの文献で公知の技術となっているので、具体的な説明を省略する。
【0006】
受信BFは、各アンテナの受信信号を合成する際に、所望波の到来方向のゲインを最大化する方法や、干渉波の到来方向のゲインを最小化する方法などがある。また、複数のアンテナを備えて空間ダイバーシティを行うことで、受信性能が良くなることも知られている。また、伝搬環境の変化に応じて上記受信技術の中から最適な方法を自動的に選択して実行するアルゴリズムについても、種々の研究や実用化が行われている。
【0007】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、無線基地局装置により通信される信号を無線中継増幅装置(ブースタ)が中継するに際して増幅する無線中継増幅システムにおいて、無線基地局装置からブースタの利得を遠隔制御する発明が開示されている。また、特許文献2には、ビル内や地下鉄等においても精度の高い端末位置情報を取得することができる無線通信システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-303613号公報
【文献】特開2012-160936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
屋内での携帯電話の利用に関しては、マイクロ波帯を使用していた第4世代までは、ビルや家屋などの建物の内部まで電波が透過するため、携帯電話サービスを利用することができた。一方、周波数が高くなるほど電波が透過しにくくなる性質が知られており、ミリ波帯などの高い周波数を使用する第5世代では、建物によって電波の透過が阻害されてしまい、屋内での携帯電話サービスの利用が困難となる。このため、第5世代でも屋内で携帯電話サービスを利用できるように対策を講ずる必要がある。
【0010】
電波の届かない不感地帯に対して光ファイバを用いて無線設備を導入する方法は敷設コストが膨大となるため、他の方法による屋内の無線エリア化(以下「屋内エリア化」という)が求められている。図2には、従来例に係る屋内エリア化の概要を示してある。図2の建物100は、マンション、デパートなどであり、その壁が電波を透過しないもの、又は電波の減衰量が大きいものを対象としている。窓101は建物100に備えられており、一般的に壁と比較して電波を透過しやすい。窓101には、屋内に電波を到達させて屋内をエリア化するための屋内エリア化デバイス102が取り付けられている。屋内エリア化デバイス102としては、例えば、(1)無線リピータ、(2)ガラスに取り付けることのできる透明ガラスアンテナやフィルムアンテナ、(3)FSS(Frequency Selective Surface;周波数選択性表面)などを用いることができる。
【0011】
下りリンクでは、基地局103は、BF技術を用いて電波の指向性を制御することで、窓101の外側又は内側に設置された屋内エリア化デバイス102に向けて無線信号を送信する。屋内エリア化デバイス102は、基地局103からの電波を透過又は電力を増幅して屋内へ出力し、屋内の移動局に電波を到達させる。
【0012】
上りリンクでは、屋内の移動局は、窓101又は屋内エリア化デバイス102に向けて無線信号を送信する。屋内エリア化デバイス102は、屋外に向けて電波を送信するが、その電波の直進方向の指向性が基地局103の位置する方向とは限らない。また、電波の指向性を制御できるBF技術を屋内エリア化デバイス102に備えることは、デバイスが高価になって現実的でない。また、屋内エリア化デバイス102を用いない場合は、窓101を透過して直進する電波は、基地局103の位置する方向に送信されるとは限らず、その電力も弱い。
【0013】
上述した従来手法の問題について、より詳細に説明する。(1)無線リピータを使用する場合
屋内エリア化デバイス102として、無線リピータを使用する場合を考える。例えばホテルやマンションなどでは、隣接する部屋の壁も電波を減衰させるため、各部屋に無線リピータが必要となる。無線リピータは送信機と受信機を備えた無線機であり、導入コストが高くなるという問題がある。また、無線リピータは一般的に窓に設置されるため、室内から窓を通して屋外を見る際の視認性が問題となる場合がある。
【0014】
(2)透明ガラスアンテナやフィルムアンテナを使用する場合
屋内エリア化デバイス102として、透明ガラスアンテナやフィルムアンテナを使用する場合を考える。この場合、視認性は改善されるが、アンテナに接続する送信機と受信機が部屋毎に必要となり、導入コストが高くなるという問題が残る。
【0015】
(3)FSSを使用する場合
屋内エリア化デバイス102として、FSSを用いる場合を考える。FSSに関しては、所望する周波数(例えば、28GHz)の電波を透過させ、それ以外の電波を遮蔽・反射させる研究が活発に行われている。また、屋内への電波を強めるために、窓に用いられる「ガラス」の透過率を高める研究も行われている。この場合、視認性はやや問題があるものの、下りリンクについては比較的狭い屋内(部屋)をエリア化することができる。しかしながら、下りリンクに対して上りリンクの電力が小さく、上りリンクの電力が伝搬距離の制約となるため、送信機をFSS毎(すなわち、部屋毎)に設ける必要がある。
【0016】
28GHz帯の第5世代に共通の課題として、屋外・屋外を問わず、下りリンクと比較して上りリンクの性能改善が必要であることが、実験及びサービス運用の下で明らかにされてきた。下りリンク送信元の基地局はBF技術を用いた多素子アンテナを備えるのに対し、上りリンク送信元の移動局は送信電力が小さく、信号品質を改善するための信号処理などの機能の性能も低いためである。また、複数の移動局と通信する基地局は投資効果が高いのに対し、ユーザが利用する移動局は、小型、低コストであることが求められるためである。
【0017】
以上のように、屋内エリア化において、下りリンクでは、基地局103がBF技術を用いて屋内エリア化デバイス102に向けて指向性を制御することができる。これに対し、上りリンクでは、屋内エリア化デバイス102にBF技術などの指向性制御機能を設けると、多数の設置が必要な屋内エリア化デバイス102が高価になってしまう。一方、屋内エリア化デバイス102に指向性制御機能を設けなければ、基地局方向への電力が最大となる指向性方向の電波を送出することができず、上りリンクの伝搬距離が短くなるという問題がある。
【0018】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、無線エリアの拡大と上りリンクの高出力化を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような分散アンテナ無線システムを提供する。
すなわち、基地局と端末局の間での無線通信を支援する分散アンテナ無線システムであって、各々分散させて配置された複数の第1のアンテナと、複数の第1のアンテナの各々から該アンテナで受信された無線通信の信号が入力され、そのうちの端末局から基地局への上りリンクの信号と判別される信号を合成する集約装置と、集約装置により合成された信号を基地局に向けて送信する、第1のアンテナとは異なる第2のアンテナと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
ここで、集約装置は、所定の閾値以上の信号強度を持つ信号を選択して合成するようにしてもよい。
【0021】
また、集約装置は、第1のアンテナで受信された信号に含まれるリンク方向を示す情報に基づいて、第1のアンテナで受信された信号が上りリンクの信号か否かを判別するようにしてもよい。
【0022】
また、集約装置は、複数の第1のアンテナのうちの信号を受信したアンテナ数、及び、2つ以上のアンテナで信号を受信した場合のこれらアンテナで受信した信号の同一性に基づいて、第1のアンテナで受信された信号が上りリンクの信号か否かを判別するようにしてもよい。
【0023】
また、第2のアンテナが、基地局から前記端末局への下りリンクの信号を受信可能である場合に、集約装置は、第2のアンテナで受信された下りリンクの信号に含まれるリンク方向を示す情報に基づいて、第1のアンテナで受信された信号が上りリンクの信号か否かを判別するようにしてもよい。
【0024】
また、複数の第1のアンテナの各々は、建物の窓又はその近傍に設置され、第2のアンテナは、建物の屋外に設置されてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る分散アンテナ無線システムによれば、無線エリアの拡大と上りリンクの高出力化を低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】平面アンテナとビームフォーミングの指向性の例を示す図である。
図2】従来例に係る屋内無線エリア化の概要を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る分散アンテナ無線システムの概要を示す第1の図である。
図4】本発明の一実施形態に係る分散アンテナ無線システムの概要を示す第2の図である。
図5】第1構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図である。
図6】第2構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図である。
図7】第3構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図3図4には、本発明の一実施形態に係る分散アンテナ無線システムの概要を示してある。図3は、屋内エリア化を行う建物100を屋外から見た視点の図である。図4は、建物100の屋内から屋外を見た視点の図である。これらの図において、従来と同じ構成要素には、それと同じ符号を付してある。
【0028】
まず、屋外の基地局103から屋内の端末局104へと送信される下りリンク信号について説明する。基地局103が送信した下りリンク信号は、建物100の窓101を介して、又は窓101に設けられた屋内エリア化デバイス102を介して、建物100の屋内へと到達する。建物100の屋内の電波伝搬環境に応じて、屋内エリア化デバイス102を備えてもよく、屋内エリア化デバイス102を省略してもよく、その本質は下りリンク信号の電波が屋内に到達することである。屋内では、端末局104が下りリンク信号を受信する。端末局104としては、スマートフォンなどを含む移動局や、TVに取り付けられた無線端末などを含む固定局がある。
【0029】
次に、屋内の端末局104から屋外の基地局103へと送信される上りリンク信号について説明する。端末局104は、窓101に設けられたアンテナ201に向けて上りリンク信号を送信する。アンテナ201を窓101に設ける理由は、下りリンク信号の電波の受信方向と同じ方向に窓101があるので、端末局104の送信電波の指向性制御が最適に機能するためだが、これに限定するものではない。例えば、窓101の近傍にアンテナ201を設けても構わない。アンテナ201の好ましい例としては、視認性の良い透明ガラスアンテナやフィルムアンテナが挙げられる。
【0030】
アンテナ201は、基地局103に宛てた上りリンク信号を受信する。アンテナ201による受信信号(上りリンク信号)は、ケーブル202を通じて受信部203へ入力される。受信部203は、入力された受信信号を電気信号から光信号に変換し、光ファイバ(光ケーブル)204を通じて集約装置205へ伝送する。アンテナ201及び受信部203は、建物100の無線エリア化の対象となる部屋の窓101毎に設けられる。無線エリア化の対象となる部屋が複数ある場合には、図3に示すように、1つの建物100に対してアンテナ201及び受信部203のセットが複数設けられる。集約装置205には、各窓101のアンテナ201及び受信部203からの受信信号が集約される。集約装置205は、入力された受信信号を光信号から電気信号に変換し、高利得アンテナ206から基地局103へ向けて送信する。
【0031】
以下、上りリンク信号の送信動作について、第1構成例~第3構成例を用いて具体的に説明する。
<第1構成例>
図5には、第1構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図を示してある。受信部203は、好ましい態様として、LNA(Low Noise Amplifier)211と、E/O(Electric to Optic)変換部212を含む。LNA211は、アンテナ201の受信信号を増幅する。LNA211により増幅された受信信号は、E/O変換部212により電気信号から光信号に変換され、光ファイバ204を通じて集約装置205へ伝送される。受信部203は、当業者にとって常識的な手法として周波数フィルタなどを備えてもよいが、本例では省略してある。
【0032】
集約装置205は、好ましい態様として、信号選択合成部213と、O/E(Optic to Electric)変換部214を含む。受信部203から光ファイバ204を通じて伝送された受信信号は、信号選択合成部213に入力される。本例では複数の部屋を屋内エリア化するため、複数の受信部203からの受信信号が信号選択合成部213に入力される。信号選択合成部213は、入力された複数の受信信号の中から上りリンク信号と判別される信号を選択し、その合成信号をO/E変換部214へ出力する。O/E変換部214は、信号選択合成部213による合成信号を光信号から電気信号に変換して出力する。
【0033】
集約装置205から出力された合成信号は、必要に応じて電力増幅部215で送信電力が増幅され、高利得アンテナ206から基地局103に向けて送信される。電力増幅部215は、集約装置205に含まれる要素であってもよいし、高利得アンテナ206に含まれる要素であってもよい。高利得アンテナ206は、BF技術を用いて電波の指向性を制御することで、基地局103に向けて集約装置205による合成信号(上りリンク信号)を送信する。
【0034】
ここで、本例の信号選択合成部213では、各受信部203からの受信信号を、予め与えられた信号強度の閾値とそれぞれ比較し、閾値以上の信号強度を持つ受信信号を選択して合成する。これにより、閾値未満の信号強度を持つ信号を雑音と判断し、これを除外して受信信号の合成を行うことができるため、信号の品質の劣化を抑制する効果が得られる。なお、機器の簡易性を重視して信号選択機能を無くし、各受信部203からの受信信号を全て合成する手法を採用しても構わない。
【0035】
<第2構成例>
ここでは、上りリンクと下りリンクの制御について説明する。本例の分散アンテナ無線システムは、高利得アンテナ206から上りリンクのタイミングで信号を送信するが、下りリンクのタイミングでは信号を送信してはいけない。従って、上りリンクと下りリンクのタイミングを把握する必要がある。
【0036】
図6には、第2構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図を示してある。窓101又はその近傍に設けられたアンテナ201は、上りリンク信号だけでなく下りリンク信号も受信する。そこで、本例の集約装置205は、信号選択合成部213の構成要素の一つとして、上りリンクか下りリンクかを判別するための上り/下り判別部216を備える。集約装置205は、上り/下り判別部216によって上りリンクと判定された場合には、信号選択合成部213から合成信号を出力して高利得アンテナ206に供給する。一方、上り/下り判別部216によって下りリンクと判定された場合には、信号選択合成部213から合成信号を出力しない。
【0037】
上りリンクか下りリンクかを判別する方法の一例として、アンテナ201による受信信号を復調し、当該復調信号に含まれるリンク方向を示す情報に基づいて、当該受信信号が上りリンク信号か否かを判定する方法がある。
別の例として、IAB(Integrated Access and Backhaul)の装置として制御する方法がある。
【0038】
更に別の例として、下りリンクでは多数のアンテナ201が下りリンク信号を受信できるので、複数の受信部203から同じ受信信号が集約装置205に入力されるのに対し、上りリンクでは1つ又は少数の受信部203から受信信号が集約装置205に入力されることが多いという特徴に基づいて判別する方法がある。すなわち、複数のアンテナ201のうちの信号を受信したアンテナ数、及び、2つ以上のアンテナ201で信号を受信した場合のこれらアンテナ201で受信した信号の同一性に基づいて、受信信号が上りリンクの信号か否かを判定する。例えば、1つのアンテナ201のみで信号が受信された場合には、上りリンク信号と判定する。例えば、2つ以上のアンテナ201で信号が受信された場合には、これら受信信号が同一内容であれば下りリンク信号と判定し、そうでなければ上りリンク信号と判定する。
【0039】
<第3構成例>
図7には、第3構成例に係る分散アンテナ無線システムの機能ブロック図を示してある。第3構成例では、高利得アンテナ206として、上りリンク信号の送信だけでなく、下りリンク信号を受信することが可能なアンテナを用いる。また、集約装置205は、信号選択合成部213及びO/E変換部214に加えて電力増幅部215を内蔵すると共に、高利得アンテナ206の送信動作と受信動作を切り替えるTDDスイッチ217と、上りリンクと下りリンクのタイミングに応じてTDDスイッチ217を制御する上り/下り切替制御部218を備える。
【0040】
高利得アンテナ206により受信された下りリンク信号は、TDDスイッチ217を介して上り/下り切替制御部218に入力される。上り/下り切替制御部218は、この下りリンク信号に含まれるリンク方向を示す情報に基づいて、アンテナ201による受信信号が上りリンク信号か否かを判定する。上り/下り切替制御部218は、アンテナ201による受信信号が上りリンク信号と判定された場合に、アンテナ201による受信信号を合成して出力する指示を信号選択合成部213に送信する。
【0041】
また、上り/下り切替制御部218は、上りリンク信号及び下りリンク信号の各タイミングを特定し、TDDスイッチ217の切り替えを制御する。すなわち、下りリンク信号のタイミングでは、TDDスイッチ217を受信側に制御して、高利得アンテナ206による受信信号が上り/下り切替制御部218に供給されるようにする。一方、上り信号のタイミングでは、TDDスイッチ217を送信側に制御して、信号選択合成部213による合成信号がO/E変換部214及び電力増幅部215を通じて高利得アンテナ206に供給されるようにする。
【0042】
以上のように、本例の分散アンテナ無線システムは、基地局103と端末局104の間での無線通信(特に、上りリンク)を支援するために、各々分散させて配置された複数のアンテナ201と、複数のアンテナ201の各々から該アンテナで受信された無線通信の信号が受信部203を通じて入力され、そのうちの端末局104から基地局103への上りリンク信号と判別される信号を合成する集約装置205と、集約装置205により合成された信号を基地局103に向けて送信する、アンテナ201とは異なる高利得アンテナ206とを備える。
【0043】
このような構成によれば、屋内の端末局104から屋外の基地局103に対して送信された上りリンク信号が、その部屋の窓のアンテナ201で受信され、集約装置205に集約された後に高利得アンテナ206から基地局103に向けて送信される。これにより、屋内の端末局104から送信された上りリンク信号を、屋外の基地局103に効率よく伝送することが可能となる。
【0044】
したがって、基地局と屋内エリア化する建物との伝搬距離を拡大することができ、1つの基地局で多数の建物を屋内エリア化することが可能となる。特に、多数の屋内エリア化デバイスが必要となる建物の環境では、導入コストを抑えることができ、屋内エリア化が促進される。また、各窓のアンテナに接続するのは受信機だけでよく、送信機及び受信機を備えた機器(いわゆる無線機)は必要ではない。また、各部屋の窓のアンテナで受信された上りリンク信号を集約するため、電力増幅部や高利得アンテナを1つ備えるだけでよく、導入コスト及び消費電力を抑えることができる。このように、本例の分散アンテナ無線システムによれば、無線エリアの拡大と上りリンクの高出力化を低コストで実現することが可能となる。
【0045】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0046】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【0047】
この出願は、2021年5月28日に出願された日本出願特願2021-090135を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、基地局と端末局の間での無線通信を支援するシステムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
100:建物、 101:窓、 102:屋内エリア化デバイス、 103:基地局、 104:端末局、 201:アンテナ、 202:ケーブル、 203:受信部、 204:光ファイバ、 205:集約装置、 206:高利得アンテナ、 211:LNA、 212:E/O変換部、 213:信号選択合成部、 214:O/E変換部、 215:電力増幅部、 216:上り/下り判別部、 217:TDDスイッチ、 218:上り/下り切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7