(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】医療機器制御システム、制御装置、管理サーバおよび医療機器制御方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20240910BHJP
【FI】
G16H40/40
(21)【出願番号】P 2023528824
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022748
(87)【国際公開番号】W WO2022264290
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】只腰 春菜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健夫
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0029001(US,A1)
【文献】特開平08-035889(JP,A)
【文献】特開2018-063516(JP,A)
【文献】米国特許第10226163(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器を収容する収容容器と、
前記収容容器の運送時の環境情報を取得するセンサユニットと、
前記センサユニットが取得した前記環境情報を記録する記録部と、
前記医療機器に接続され、前記医療機器の機能を制御する制御装置と、
第1収容容器に設けられた前記センサユニットが取得した前記環境情報の値が所定の閾値を超えたときの運送経路を特定し、特定した運送経路と同じ運送経路で運送された第2収容容器を特定する運送経路管理部と、
前記第2収容容器に設けられた前記センサユニットが取得した前記環境情報の値が前記所定の閾値を超えていない場合であっても、前記第2収容容器に収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成する可否情報生成部と、を備え、
前記制御装置は、前記
可否情報にもとづいて、
前記第2収容容器に収容された前記医療機器の機能を制限する機能制限部を有する、
ことを特徴とする医療機器制御システム。
【請求項2】
前記収容容器の運送経路を管理するサーバをさらに備え、
前記運送経路管理部と前記可否情報生成部は、前記サーバに設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器制御システム。
【請求項3】
前記機能制限部は、前記医療機器の識別情報に紐付けられた前記環境情報
の値と、
前記所定の閾値との比較結果にもとづいて生成された
前記可否情報にもとづいて、前記医療機器の機能を制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器制御システム。
【請求項4】
前記所定の閾値は、運送時または保管時の前記医療機器の品質を保証するために設定された環境
情報の値である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の医療機器制御システム。
【請求項5】
前記所定の閾値は、前記医療機器の使用時に設定される環境
情報の閾値にもとづいて設定される値である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の医療機器制御システム。
【請求項6】
運送時の前記環境情報
の値が前記所定の閾値を超えている場合に、前記可否情報は、前記医療機器の使用を許可しないことを示し、
運送時の前記環境情報
の値が前記所定の閾値を超えていない場合に、前記可否情報は、前記医療機器の使用を許可することを示す、
ことを特徴とする請求項
3に記載の医療機器制御システム。
【請求項7】
前記記録部は、
前記サーバに設けられ、
前記サーバは、
前記センサユニットが取得した前記環境情報を受信する通信部と、
受信した前記環境情報を前記医療機器の識別情報に紐付けて前記記録部に記録する記録処理部と、を備え、
前記制御装置は、
医療業務に使用する予定の前記医療機器の識別情報を取得する取得部をさらに備え
る、
ことを特徴とする請求項
2に記載の医療機器制御システム。
【請求項8】
前記センサユニットが取得した前記環境情報を読み取る読取装置を更に備え、
前記読取装置は、読み取った前記環境情報を前記サーバに送信する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の医療機器制御システム。
【請求項9】
前記センサユニットは、取得した前記環境情報を前記サーバに送信する通信部を有する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の医療機器制御システム。
【請求項10】
前記センサユニットは前記収容容器に設けられ、前記収容容器に収容される前記医療機器の前記識別情報を保持し、
前記サーバにおける前記通信部は、前記センサユニットが取得した前記環境情報と、前記センサユニットが保持する前記医療機器の前記識別情報を受信する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の医療機器制御システム。
【請求項11】
前記収容容器は、複数の前記医療機器を収容し、
前記センサユニットは、前記収容容器に収容される複数の前記医療機器の前記識別情報を保持する、
ことを特徴とする請求項
10に記載の医療機器制御システム。
【請求項12】
前記センサユニットは、前記センサユニットの識別情報を保持し、
前記サーバにおける前記通信部は、前記センサユニットが取得した前記環境情報と、前記センサユニットが保持する前記センサユニットの前記識別情報を受信し、
前記サーバにおける前記記録部は、前記センサユニットの前記識別情報に紐付けて、前記医療機器の識別情報と、前記環境情報とを記録する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の医療機器制御システム。
【請求項13】
前記記録部は、前記医療機器に設けられ、前記医療機器の識別情報と、前記センサユニットから送信される前記環境情報とを記録し、
前記制御装置は、前記医療機器から、前記記録部に記録された前記医療機器の前記識別情報と前記環境情報を取得
する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器制御システム。
【請求項14】
前記センサユニットは、各医療機器に対して設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器制御システム。
【請求項15】
前記サーバは、前記医療機器の使用の禁止を決定すると、前記医療機器の代替品を手配する処理を実施する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の医療機器制御システム。
【請求項16】
前記医療機器は、単回使用内視鏡を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器制御システム。
【請求項17】
医療機器に接続され、前記医療機器の機能を制御する制御装置であって、
医療機器を収容する
第1収容容器の運送時の環境情報
の値が所定の閾値を超えた運送経路と同じ運送経路で運送された第2収容容器に収容された医療機器の
使用を不許可とする可否情報にもとづいて、前記第2収容容器に収容された前記医療機器の機能を制限する機能制限部を備える、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項18】
前記収容容器の運送経路を管理するサーバから、前記第2収容容器の運送時の環境情報の値が前記所定の閾値を超えていない場合であっても、前記第2収容容器に収容された前記医療機器の使用を不許可とする前記可否情報を受信する通信部をさらに備え、
前記機能制限部は、前記可否情報にもとづいて、
前記第2収容容器に収容された前記医療機器の機能を制限する、
ことを特徴とする請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
医療機器に接続される制御装置と通信可能
であり、前記医療機器を収容する収容容器の運送経路を管理する管理サーバであって、
前記収容容器の運送時の環境情報を受信する通信部と、
受信した前記環境情報を前記医療機器の識別情報に紐付けて記録する記録部と、
第1収容容器の運送時の前記環境情報の値が所定の閾値を超えたときの運送経路を特定し、特定した運送経路と同じ運送経路で運送された第2収容容器を特定する運送経路管理部と、
前記第2収容容器の運送時の前記環境情報の値が前記所定の閾値を超えていない場合であっても、前記第2収容容器に収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成する可否情報生成部と、
を備えることを特徴とする管理サーバ。
【請求項20】
前記通信部は、センサユニットが取得した前記環境情報を読み取った読取装置から、前記環境情報を受信する、
ことを特徴とする請求項
19に記載の管理サーバ。
【請求項21】
前記通信部は、前記環境情報を取得したセンサユニットから、前記環境情報を受信する、
ことを特徴とする請求項
19に記載の管理サーバ。
【請求項22】
医療機器制御システムにおいて医療機器の機能を制御する方法であって、
前記医療機器制御システムが、
前記医療機器を収容する収容容器の運送時の環境情報を取得し、
第1収容容器の運送時の前記環境情報の値が所定の閾値を超えたときの運送経路を特定し、特定した運送経路と同じ運送経路で運送された第2収容容器を特定し、
前記第2収容容器の運送時の前記環境情報の値が前記所定の閾値を超えていない場合であっても、前記第2収容容器に収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成し、
前記
可否情報にもとづいて、
前記第2収容容器に収容された前記医療機器の機能を制限する、
ことを特徴とする医療機器制御方法。
【請求項23】
前記医療機器制御システムが、
前記収容容器に設けられて前記環境情報を取得するセンサユニットから、前記収容容器に収容される前記医療機器の識別情報を取得し、
前記医療機器の識別情報に紐付けて前記環境情報を記録する、
ことを特徴とする請求項
22に記載の医療機器制御方法。
【請求項24】
前記医療機器制御システムが、
前記収容容器に設けられて前記環境情報を取得するセンサユニットから、前記センサユニットの識別情報を取得し、
前記センサユニットの識別情報に紐付けて、前記医療機器の識別情報と、前記環境情報とを記録する、
ことを特徴とする請求項
22に記載の医療機器制御方法。
【請求項25】
前記医療機器制御システムにおいて、
制御装置と通信可能なサーバが、センサユニットが取得した前記環境情報を受信し、
前記サーバが、
前記環境情報にもとづいて前記可否情報を生成し、
前記制御装置が、前記可否情報にもとづいて、前記第2収容容器に収容された前記医療機器の機能を制限する、
ことを特徴とする請求項
22に記載の医療機器制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器の使用を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器には、医療安全および感染防止を担保するために、一度しか使用してはならないと定められている製品が存在する。このような製品は単回使用(シングルユース)医療機器と呼ばれ、医療施設で一度使用されると、専門事業者により回収される。近年、資源の有効活用や医療廃棄物の削減等の観点から、使用済みの単回使用医療機器を、製造販売業者がその責任のもとで適切に分解、洗浄、部品交換、再組立て、滅菌等の処理を行い、再び使用できるようにする再製造が注目されている。
【0003】
特許文献1は、単回使用内視鏡が使用済みであるか否かを判断し、使用済みでない場合には当該内視鏡の起動を可能とし、一方、使用済みである場合には、当該内視鏡の使用が許可されていないことを示すメッセージをユーザに提示して、当該内視鏡を起動しないシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単回使用医療機器は、滅菌パックに包装された状態で医療施設に運送され、保管庫に保管される。医療従事者は、使用する直前に滅菌パックを開封して、滅菌パックから単回使用医療機器を取り出し、そのまま検査や手術等の医療業務に使用する。滅菌パックに包装されている医療機器は、使用時まで滅菌状態が維持されていることを前提としているため、滅菌パックの開封後に、消毒や洗浄等の処理は行われない。
【0006】
しかしながら運送時に、医療機器の滅菌状態を維持できなくなる事態が生じた場合、当該医療機器が使用されることは好ましくない。運送時に医療機器が破損等する事態が生じた場合も同様である。そのため医療施設において医療機器を使用する前に、当該医療機器の品質が担保されていることを確認するための仕組みを構築することが好ましい。本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療機器の使用を管理するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の医療機器制御システムは、医療機器を収容する収容容器と、収容容器の運送時の環境情報を取得するセンサユニットと、センサユニットが取得した環境情報を記録する記録部と、医療機器の機能を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、記録部に記録された環境情報にもとづいて、医療機器の機能を制限する機能制限部を有する。
【0008】
本開示の別の態様の制御装置は、医療機器の機能を制御する制御装置であって、医療機器を収容する収容容器の運送時の環境情報にもとづいて、医療機器の機能を制限する機能制限部を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様の管理サーバは、医療機器の制御装置と通信可能な管理サーバであって、医療機器を収容する収容容器の運送時の環境情報を受信する通信部と、受信した環境情報を医療機器の識別情報に紐付けて記録する記録部と、制御装置から、識別情報を有する医療機器についての問い合わせを受けた場合に、識別情報に紐付けられた環境情報、または環境情報と所定の閾値との比較結果にもとづいて生成された可否情報を提供する情報提供部と、を備える。
【0010】
本開示のさらに別の態様の医療機器制御方法は、医療機器を収容する収容容器の運送時の環境情報を取得し、医療機器の識別情報に紐付けられた環境情報にもとづいて、医療機器の機能を制限する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】医療機器を運送する様子を模式的に示す図である。
【
図3】センサユニットの機能ブロックを示す図である。
【
図4】医療機器制御システムの構成を示す図である。
【
図6】スコープIDと環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す図である。
【
図7】温度に関する設定環境条件の例を示す図である。
【
図8】可否情報生成部が生成した可否情報を示す図である。
【
図10】センサユニットIDと環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す図である。
【
図11】センサユニットIDと複数のスコープIDとを紐付けた記録内容の例を示す図である。
【
図12】製造施設から医療施設までの運送経路の例を示す。
【
図15】スコープIDと環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す図である。
【
図16】可否情報生成部が生成した可否情報を示す図である。
【
図17】医療機器制御システム100の構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、医療機器を運送する様子を模式的に示す。製造施設1で製造された医療機器は滅菌パックに個別包装されて、収容容器4に収容された後、移動体である運送手段3により医療施設2に運送される。1つの収容容器4には、複数の医療機器が詰められてよい。
図1に示す例で運送手段3はトラックであるが、電車、鉄道、飛行体、船などを含んでよく、収容容器4は複数種類の運送手段3によって、製造施設1から医療施設2に運送されてよい。なお収容容器4は、製造施設1から倉庫等の貯蔵施設を経由して、医療施設2に運び込まれてもよい。実施例で、運送対象となる医療機器は単回使用内視鏡であるが、内視鏡以外の単回使用医療機器であってもよい。
【0014】
医療機器には、品質を保証するために、運送に適した環境条件が設定されている。運送に適した環境条件は、環境要素の閾値により定められ、運送手段3が、閾値を超えない環境下で医療機器を運送することで、医療機器の品質が保証される。環境要素の閾値は、医療機器の運送に関して設定される値であり、運送に適した適正値であってよく、また当該適正値にマージンを加えた値であってもよい。たとえば運送に適した環境条件として、温度の下限値と上限値とが設定されている場合、運送手段3は、医療機器を収容している収容容器4内の温度を、下限値を超えない(下回らない)温度であって、且つ上限値を超えない(上回らない)温度に保つ必要がある。運送中、収容容器4内の温度が下限値と上限値で規定される適正範囲から外れた場合、たとえば滅菌パックのシールが劣化するような不具合が生じる可能性がある。
【0015】
また運送中、医療機器に衝撃力が加わると、医療機器は破損する可能性がある。そのため品質を保証するための環境条件として、医療機器にかかる加速度および/または減速度の限界値が設定されてよく、運送手段3は、医療機器にかかる加速度および/または減速度が限界値を超えないように、医療機器を運送する必要がある。なお運送時に、医療機器の品質に影響を与えうる環境要素は、医療機器周辺の温度や、医療機器にかかる加速度、減速度以外に、たとえば湿度、照度、気圧などを含む。
【0016】
図2は、実施例における収容容器4aの例を示す。運送用の収容容器4aには、医療機器を入れた個装箱5が1つ以上収容される。個装箱5内で、医療機器は滅菌パックに包装された状態にある。なお複数の個装箱5が内箱に収納されて、1つ以上の内箱が収容容器4aに収容されてもよい。
【0017】
センサユニット6は、収容容器4aに設けられて、収容容器4aの運送時の環境情報を取得する。センサユニット6が取得する環境情報は、運送に適した環境条件(以下、「設定環境条件」とも呼ぶ)に関連する環境要素の検出値であり、温度、加速度、減速度、湿度、照度、気圧の検出値を含んでよい。
【0018】
図3は、センサユニット6の機能ブロックを示す。センサユニット6は、センサユニット6の動作を管理する制御部10、環境情報を検出する1つ以上のセンサ12、保持部14、通信部16および電池18を有して構成される。電池18はセンサユニット6における各構成に電力を供給する。センサユニット6は、収容容器4が製造施設1から外に運び出され、医療施設2に到着するまでの間、環境情報を取得する。
【0019】
図3に示す構成はハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
各センサ12は、各環境要素の情報を検出し、たとえば温度、加速度、減速度、湿度、照度、気圧を検出する。制御部10は、センサ12で検出された環境情報を保持部14に記録する。制御部10は環境情報を、検出時刻とともに保持部14に記録してよい。なお出発地、到着地、経由地のそれぞれの標準時のうち少なくとも1つが選択されて、検出時刻が保持部14に記録されてよい。制御部10は、周期的に検出された環境情報を保持部14に記録してよいが、保持部14に記録するデータ量を削減することを目的として、環境情報の最低値および/または最高値を記録するようにしてもよい。たとえば温度に関して、最低温度が「15℃」、最高温度が「40℃」と保持部14に記録されているとき、センサ12が、15℃より低い温度を検出すると、制御部10は、最低温度を更新して保持部14に記録し、センサ12が40℃より高い温度を検出すると、制御部10は、最高温度を更新して保持部14に記録する。一方、センサ12が検出する温度が、保持部14に記録されている最低温度以上、最高温度以下であれば、制御部10は、検出された温度を記録せず、破棄してよい。このように保持部14に、環境情報の最低値および/または最高値のみを記録することで、使用する記録容量を大幅に削減できる。
【0021】
保持部14は、収容容器4aに収容される医療機器の識別情報を保持する。たとえば
図2に示す例では、収容容器4aに、医療機器を入れた個装箱5が12個収容されているため、保持部14には、12個の医療機器の識別情報が記録されている。以下、内視鏡である医療機器の識別情報を、「スコープID」と呼ぶ。
【0022】
図4は、実施例における医療機器制御システム100の構成を示す。医療機器制御システム100は医療施設2に設けられ、制御装置20、画像記録装置50、管理サーバ60およびアクセスポイント8を備える。制御装置20、画像記録装置50、管理サーバ60およびアクセスポイント8は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク7によって通信可能に接続される。
【0023】
制御装置20は検査室に設けられ、医療機器である内視鏡を接続部22に接続されて、内視鏡の機能を制御する。制御装置20は、内視鏡が撮影している患者体内の画像を表示装置24に表示し、医師は、表示される臓器の各部位を観察する。医師は病変を見つけると、内視鏡のレリーズスイッチを操作して、病変を含む画像を撮影する。制御装置20は、レリーズスイッチが操作されたタイミングで画像をキャプチャして、キャプチャした画像を画像記録装置50に送信する。なお制御装置20は、検査終了後に、キャプチャした複数の画像をまとめて画像記録装置50に送信してもよい。
【0024】
画像記録装置50は、内視鏡検査で撮影された画像を記録する画像サーバであり、制御装置20から送信される画像を検査オーダに紐付けて蓄積する。撮影画像にはメタデータとして、撮影日時、内視鏡の識別情報(スコープID)、検査オーダに関する情報等が付加されてよい。実施例の制御装置20は、接続部22に接続された内視鏡の機能を制御する。
【0025】
以下、収容容器4aに収容されている内視鏡を、保管庫に保管するときの処理について説明する。運送手段3により運送された収容容器4aが医療施設2に運び込まれると、施設内の作業者が、センサユニット6に記録された環境情報を、管理サーバ60に転送する。
図3に示すように、センサユニット6が通信部16を備えている場合、作業者はセンサユニット6を操作して、記録された環境情報を管理サーバ60に送信させる。具体的に作業者がセンサユニット6に環境情報の送信指示を入力すると、制御部10は、収容容器4aに収容されている複数の内視鏡のスコープIDと、運送時に取得した環境情報とを保持部14から読み出し、通信部16から管理サーバ60に送信する。複数のスコープIDおよび環境情報は、アクセスポイント8を経由して、管理サーバ60に送信されてよい。
【0026】
なお作業者は、読取装置9を用いて、センサユニット6から複数のスコープIDおよび環境情報を読み取らせてもよい。読取装置9は、センサユニット6から複数のスコープIDおよび環境情報を読み取ると、読み取った複数のスコープIDおよび環境情報を管理サーバ60に送信する。複数のスコープIDおよび環境情報は、アクセスポイント8を経由して、管理サーバ60に送信されてよい。なおセンサユニット6は、通信部16からインターネット経由で、記録した環境情報を管理サーバ60に送信する機能を有してもよい。この場合、センサユニット6は、運送中または医療施設2に到着した時に、記録した環境情報を管理サーバ60に送信してよい。
【0027】
図5は、管理サーバ60の機能ブロックを示す。管理サーバ60は、通信部62、記録処理部64、可否情報生成部66、情報提供部68、記録部70および運送経路管理部72を備える。
図5に示す構成はハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
通信部62は、センサユニット6から、複数のスコープIDおよび環境情報を受信する。上記したように、複数のスコープIDは、1つの収容容器4aに収容されていた複数の内視鏡の識別情報であり、環境情報は、当該収容容器4aの運送時にセンサユニット6が取得した環境情報である。記録処理部64は、センサユニット6が取得した環境情報を、記録部70に記録する。このとき記録処理部64は、環境情報を、医療機器の識別情報(つまり内視鏡のスコープID)に紐付けて記録部70に記録する。
【0029】
図6は、スコープIDと運送時の環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す。
図6に示す例では、運送時の環境情報として、センサ12が取得した最低温度と最高温度が記録部70に記録されているが、別の環境要素の情報、たとえば加速度、減速度、湿度、照度、気圧に関して検出された情報が記録部70に記録されてもよい。
【0030】
運送された収容容器4aには、3つのタイプの内視鏡が収容されている。この例で、スコープIDが“1001”、“1002”、“1003”、“1004”の内視鏡が「第1タイプの内視鏡」、スコープIDが“2001”、“2002”、“2003”、“2004”の内視鏡が「第2タイプの内視鏡」、スコープIDが“3001”、“3002”、“3003”、“3004”の内視鏡が「第3タイプの内視鏡」であるとする。
【0031】
上記したように、医療機器には、運送された医療機器の品質を保証することを目的として、運送時の環境要素に所定の閾値が設定されている。閾値は、医療機器の運送時に環境要素の値が当該閾値を超えると、医療機器に不具合が生じる可能性がある値に設定されている。そのため運送時に、環境要素の値が閾値を超えた医療機器については、医療施設2における使用が禁止される必要がある。
【0032】
運送時の環境要素の閾値(設定環境条件)は、医療機器の種類ごとに、製造業者により設定される。内視鏡に関して言えば、耳鼻咽喉用スコープ、気管支用スコープ、上部消化管汎用スコープ、十二指腸スコープ、大腸用スコープなど、様々な種類の内視鏡が存在するが、内視鏡の種類ごとに、運送時の環境要素の閾値が設定されてよい。また内視鏡の型番ごとに、運送時の環境要素の閾値(設定環境条件)が設定されてもよい。
【0033】
図7は、内視鏡のタイプごとに設定されている、温度に関する設定環境条件の例を示す。設定環境条件は、可否情報生成部66により管理される。第1タイプの内視鏡の下限温度が0℃、上限温度が50℃に設定されているが、この設定環境条件は、運送時の温度が0℃を下回るか、または50℃を上回ると、第1タイプの内視鏡の品質を保証できないことを意味する。設定環境条件の下限温度、上限温度は、それぞれ規定値として設定された温度であってよいが、規定値を所定値だけ変更した温度であってもよい。第2タイプの内視鏡の下限温度は0℃、上限温度は40℃に設定され、第3タイプの内視鏡の下限温度は-30℃、上限温度は50℃に設定されている。
【0034】
可否情報生成部66は、スコープIDに紐付けられた環境情報が記録部70に記録されると、当該環境情報と、設定環境条件とを比較して、比較結果にもとづいて、内視鏡の使用を許可するか、または内視鏡の使用を禁止するかを示す可否情報を生成する。
【0035】
図6に示す記録部70の記録内容を参照すると、“1001”、“1002”、“1003”、“1004”のスコープIDをもつ第1タイプの内視鏡は、最低温度が15℃、最高温度が42℃の環境下で運送されている。この最低温度(15℃)および最高温度(42℃)は、
図7に示す第1タイプの内視鏡の設定環境条件の適正範囲内であるため、可否情報生成部66は、“1001”、“1002”、“1003”、“1004”のスコープIDをもつ第1タイプの内視鏡が適切に運送されたことを判断し、したがって当該内視鏡の使用の許可を決定する。
【0036】
また“3001”、“3002”、“3003”、“3004”のスコープIDをもつ第3タイプの内視鏡の運送時の最低温度(15℃)および最高温度(42℃)も、
図7に示す第3タイプの内視鏡の設定環境条件の適正範囲内である。そこで可否情報生成部66は、“3001”、“3002”、“3003”、“3004”のスコープIDをもつ第3タイプの内視鏡が適切に運送されたことを判断し、したがって当該内視鏡の使用の許可を決定する。
【0037】
一方、“2001”、“2002”、“2003”、“2004”のスコープIDをもつ第2タイプの内視鏡の運送時の最低温度(15℃)は、
図7に示す第2タイプの内視鏡の設定環境条件の適正範囲内であるが、最高温度(42℃)は、設定環境条件の適正範囲外であり、上限温度(40℃)を超えている。そこで可否情報生成部66は、“2001”、“2002”、“2003”、“2004”のスコープIDをもつ第2タイプの内視鏡の運送が不適切であったことを判断し、したがって当該内視鏡の使用の禁止を決定する。
【0038】
図8は、可否情報生成部66が生成した可否情報を示す。可否情報生成部66は、運送時の環境情報が、設定環境条件で定められる所定の閾値を超えている場合に、内視鏡の使用を許可しないことを示す不許可情報を生成する。不許可情報は、使用禁止情報と呼んでもよい。一方、可否情報生成部66は、運送時の環境情報が、設定環境条件で定められる所定の閾値を超えていない場合に、内視鏡の使用を許可することを示す許可情報を生成する。記録処理部64は、可否情報生成部66が生成した可否情報を、スコープIDに紐付けて記録部70に記録する。
【0039】
医療施設2に運び込まれた収容容器4aは、センサユニット6からスコープIDおよび環境情報の読み出しが行われた後、開封されて、個装箱5を取り出される。作業者は、取り出した個装箱5を、保管庫に保管する。収容容器4aは製造施設1に返却されてよい。
【0040】
以下、個装箱5に包装された内視鏡を取り出して、内視鏡検査に使用するときの処理について説明する。
図9は、制御装置20の機能ブロックを示す。制御装置20は、通信部26、取得部28、機能制限部30および制御部32を備える。
図9に示す構成はハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0041】
内視鏡検査の開始前、看護師などの医療従事者は、保管庫から個装箱5を取り出し、検査室に運び込む。医療従事者は個装箱5を開いて、滅菌パックに包装された内視鏡を取り出し、さらに滅菌パックを開封して、滅菌パックから内視鏡を取り出す。
【0042】
医療従事者は、滅菌パックから取り出した内視鏡を、制御装置20の接続部22に接続する。この時点で、接続部22に接続された内視鏡は、内視鏡検査に使用する予定の内視鏡であり、使用できることは確定していない。接続部22に内視鏡が接続されると、取得部28は、内視鏡から、当該内視鏡の識別情報であるスコープIDを取得する。このとき機能制限部30は、管理サーバ60における記録部70に記録された環境情報にもとづいて、内視鏡の機能を制限する機能をもつ。具体的に機能制限部30は、スコープIDに紐付けられた環境情報と、所定の閾値との比較結果にもとづいて生成された可否情報にもとづいて、内視鏡の機能を制限する機能をもつ。
【0043】
図8を参照して、接続部22に接続された内視鏡のスコープIDが“2002”である場合、機能制限部30は、管理サーバ60に、スコープID“2002”の可否情報を問い合わせる。管理サーバ60において、情報提供部68は、問い合わせを受けると、記録部70を探索して、スコープID“2002”に紐付けられた可否情報を読み出し、通信部62から、内視鏡使用の不許可を示す可否情報(不許可情報)を制御装置20に提供する。制御装置20において通信部26は、内視鏡使用の不許可を示す可否情報を受信し、機能制限部30は、内視鏡の機能を制限する。
【0044】
機能制限部30は、医療従事者が当該内視鏡を実質的に使用できないように、内視鏡の機能を制限する。たとえば機能制限部30は、内視鏡への電力供給を停止して、患者体内の撮影をできないようにしてよい。また機能制限部30は、カメラによる撮影を制限せず、表示装置24への電力供給を停止して、撮影画像を表示できないようにしてもよい。なお機能制限部30は、表示装置24に表示する撮影画像をぼかしたり、または一部を非表示としたり、または撮影画像の上に、内視鏡が使用できないことを示すメッセージを表示したりすることで、医療従事者が当該内視鏡を実質的に使用できないようにしてもよい。このように機能制限部30が、内視鏡の機能を制限することで、不適切な環境下で運送された内視鏡の使用を実質的に禁止することが可能となる。
【0045】
一方、接続部22に接続された内視鏡のスコープIDが“1002”である場合、機能制限部30が、管理サーバ60に、スコープID“1002”の可否情報を問い合わせると、管理サーバ60における情報提供部68が、スコープID“1002”に紐付けられた可否情報を記録部70から読み出し、通信部62から、内視鏡使用の許可を示す可否情報(許可情報)を制御装置20に提供する。制御装置20において、通信部26が、管理サーバ60から許可情報を受信すると、機能制限部30は内視鏡の機能を制限せず、制御部32は、内視鏡で撮影された画像を表示装置24に表示して、医師は、表示装置24に表示された画像を観察する。
【0046】
なお実施例では、可否情報生成部66が、環境情報が記録部70に記録されたときに、可否情報を生成することを説明したが、制御装置20から可否情報の問い合わせを受けたタイミングで、可否情報を生成してもよい。また実施例では、機能制限部30が、記録部70に記録された可否情報にもとづいて内視鏡の機能制限を実施することを説明したが、情報提供部68が、記録部70に記録された環境情報を制御装置20に提供して、機能制限部30が、環境情報から内視鏡の使用の許可または不許可を判断して、内視鏡の機能制限を実施してもよい。
【0047】
<変形例1>
以上の実施例では、センサユニット6の保持部14に、収容容器4aに収容されている内視鏡のスコープIDが保持されていることを前提としたが、変形例1では、収容容器4aに収容されている内視鏡のスコープIDが、センサユニット6の識別情報に紐付けられて、管理サーバ60において管理される。
【0048】
変形例1では、センサユニット6の保持部に、スコープIDではなく、センサユニット6の識別情報(センサユニットID)が保持される。内視鏡を収容した収容容器4aが医療施設2に運び込まれると、施設内の作業者は、センサユニット6に環境情報の送信指示を入力し、制御部10は、センサユニットIDと、運送時に取得した環境情報とを保持部14から読み出して、通信部16から管理サーバ60に送信する。
【0049】
管理サーバ60において、通信部62は、センサユニットIDおよび環境情報を受信する。記録処理部64は、環境情報を、センサユニットIDに紐付けて記録部70に記録する。
【0050】
図10は、センサユニットIDと運送時の環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す。
図10に示す例では、運送時の環境情報として、センサ12が取得した最低温度と最高温度が記録部70に記録されているが、別の環境要素の情報、たとえば加速度、減速度、湿度、照度、気圧に関して検出された情報が記録部70に記録されてもよい。
【0051】
図11は、センサユニットIDと複数のスコープIDとを紐付けた記録内容の例を示す。管理サーバ60は、製造施設1から、収容容器4aに設けられたセンサユニット6のセンサユニットIDと、収容容器4aに収容された内視鏡のスコープIDの組み合わせを取得し、記録処理部64が、記録部70に記録する。このように変形例1では、記録部70が、センサユニットIDに紐付けて、スコープIDと、環境情報とを記録してよい。
【0052】
<変形例2>
変形例2では、収容容器4aの運送経路に注目して、医療機器の使用を禁止する処理を示す。
図12は、製造施設1から医療施設2までの運送経路の例を示す。収容容器4aは、様々な運送手段3によって、製造施設1から医療施設2まで運送される。
【0053】
運送経路管理部72は、運送される全ての収容容器4aの運送経路を管理する。ここで運送経路は、運送手段3またはコースの少なくとも一方により定義され、同一の運送経路とは、運送手段3またはコースの少なくとも一方が同一であることを意味する。運送経路管理部72は、全ての収容容器4aについて、運送に使用した運送手段3の識別情報と、運送手段3による運送時間(運送開始時刻、運送終了時刻)とを把握しておく。たとえば収容容器4aが複数の運送手段3によって運送されていれば、運送経路管理部72は、それぞれの運送手段3の識別情報と、運送時間とを記録する。変形例2のセンサユニット6において、制御部10は、環境要素の値が所定の閾値を超えた時刻を、その環境要素値とともに保持部14に記録する。
【0054】
たとえば同じ航空機で輸送された10個の収容容器4aのうち、9個の収容容器4aに設けられたセンサユニット6が取得した加速度値が、設定環境条件で定められた所定の閾値を超えており、1個の収容容器4aに設けられたセンサユニット6が取得した加速度値が、所定の閾値未満であった場合を想定する。航空輸送では、航空機が乱気流に巻き込まれると、センサユニット6が検出する加速度値は大きな値を示すため、検出された加速度値が設定環境条件を超えた要因が乱気流であれば、適正な加速度値を示したセンサユニット6が故障している可能性が高いと考えられる。
【0055】
そこで運送経路管理部72は、第1の収容容器4aに設けられたセンサユニット6が取得した環境要素の値が所定の閾値を超えたときの運送経路を特定し、特定した運送経路と同じ運送経路で運送された第2の収容容器4aを特定する。運送経路管理部72は、第1の収容容器4aに設けられたセンサユニット6に記録された時刻(環境要素の値が所定の閾値を超えた時刻)から、そのときの運送に使用されていた運送手段3を特定し、その時刻に同じ運送手段3で運送されていた第2の収容容器4aを特定する。可否情報生成部66は、第2の収容容器4aに設けられたセンサユニット6が取得した環境要素の値が所定の閾値を超えていない場合であっても、第2の収容容器4aに収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成する。なお可否情報生成部66は、同じ運送手段3で運送された複数の収容容器4aのうち、半数以上の収容容器4aのセンサユニット6が取得した環境要素の値が所定の閾値を超えたことを条件として、第2の収容容器4aに収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成してもよい。変形例2によれば、第2の収容容器4aのセンサユニット6が故障していた場合であっても、医療機器に不具合が生じている可能性があることを推定して、当該医療機器の使用を禁止することが可能となる。
【0056】
<変形例3>
変形例3では、センサユニット6が取得した環境情報を記録する記録部が、医療機器に設けられる。
図13は、収容容器4aに収容されて運送される内視鏡80の例を示す。内視鏡80には、センサユニット6が取得した環境情報を記録する記録部82が設けられる。なお記録部82には、内視鏡80の識別情報であるスコープIDが記録されている。記録部82は、RFタグであってよく、センサユニット6は、RFタグである記録部82に対してリーダ/ライタとして機能してよい。
【0057】
変形例3では、医療施設内の作業者が、収容容器4aから個装箱5を取り出す際に、個装箱5をセンサユニット6に近づけることで、センサユニット6に記録された環境情報を、記録部82に記録する。なお作業者が個装箱5をセンサユニット6に接近させなくても、収容容器4a内で、センサユニット6が取得した環境情報が記録部82に記録されるように、RFIDのリーダ/ライタが個装箱5に対して配置されていてもよい。作業者は、環境情報を記録部82に記録した個装箱5を、保管庫に保管する。
【0058】
以下、個装箱5に包装された内視鏡80を取り出して、内視鏡検査に使用するときの処理について説明する。
内視鏡検査の開始前、医療従事者は、保管庫から個装箱5を検査室に運び込む。医療従事者は個装箱5を開いて、内視鏡80を包装した滅菌パックを取り出し、さらに滅菌パックを開封して、滅菌パックから内視鏡80を取り出して、制御装置20の接続部22に接続する。取得部28は、内視鏡80から、当該内視鏡80の識別情報であるスコープIDと、運送時の環境情報を取得する。
【0059】
なお変形例3では、取得部28が、RFIDのリーダ/ライタ機能をさらに備えて、RFIDのリーダ機能により、少なくとも内視鏡80の記録部82に記録された環境情報を読み取ってもよい。
【0060】
機能制限部30は、スコープIDと、環境情報にもとづいて、内視鏡80の機能を制限するか否かを判断する。具体的に機能制限部30は、取得したスコープIDに設定されている設定環境条件を管理サーバ60に問い合わせ、設定環境条件を取得する。なお設定環境条件は内視鏡80の記録部82に記録されていてもよく、取得部28が、記録部82から取得してもよい。機能制限部30は、運送時の環境情報と設定環境条件とを比較して、運送時の環境情報が設定環境条件の所定の閾値を超えていなければ、内視鏡80の使用の許可を決定して、内視鏡80の機能を制限しない。一方、機能制限部30は、運送時の環境情報が設定環境条件の所定の閾値を超えていれば、内視鏡80の使用の禁止を決定して、内視鏡80の機能を制限する。
【0061】
<変形例4>
変形例4では、センサユニット6が、各医療機器に対して設けられる。
図14は、収容容器4bの例を示す。運送用の収容容器4bには、医療機器を入れた個装箱5が1以上収容される。個装箱5内で、医療機器は滅菌パックに包装された状態にある。なお複数の個装箱5が内箱に収納されて、1つ以上の内箱が収容容器4bに収容されてもよい。
【0062】
変形例4において、センサユニット6は、個装箱5に設けられる。つまり1つのセンサユニット6が、1つの医療機器に対して設けられ、個装箱5の運送時の環境情報を取得する。センサユニット6が取得する環境情報は、設定環境条件に関連する環境要素の検出値であり、温度、加速度、減速度、湿度、照度、気圧の検出値を含んでよい。個装箱5は医療機器を収容するため、個装箱5を「収容容器」と呼んでもよい。
【0063】
以下、収容容器4bに収容されている内視鏡を、保管庫に保管するときの処理について説明する。内視鏡を収容した収容容器4bが医療施設2に運び込まれると、施設内の作業者が、収容容器4bを開封して、収容された個装箱5を取り出す。作業者は、各個装箱5に取り付けられたセンサユニット6に記録された環境情報を、管理サーバ60に転送する。
図3に示すように、センサユニット6が通信部16を備えている場合、作業者はセンサユニット6を操作して、記録されたスコープIDおよび環境情報を管理サーバ60に送信させる。なお作業者は、読取装置9を用いて、センサユニット6からスコープIDおよび環境情報を読み取らせてもよい。読取装置9は、スコープIDおよび環境情報を読み取ると、読み取ったスコープIDおよび環境情報を管理サーバ60に送信する。作業者は、全てのセンサユニット6に記録されたスコープIDおよび環境情報を管理サーバ60に転送した後、個装箱5を保管庫に保管する。収容容器4aは製造施設1に返却されてよい。
【0064】
管理サーバ60において、通信部62は、センサユニット6または読取装置9から、スコープIDおよび環境情報の複数の組み合わせを受信する。記録処理部64は、センサユニット6が取得した環境情報を、医療機器の識別情報(つまり内視鏡のスコープID)に紐付けて記録部70に記録する。
【0065】
図15は、スコープIDと運送時の環境情報とを紐付けた記録内容の例を示す。
図15に示す例では、運送時の環境情報として、センサ12が取得した最低温度と最高温度が記録部70に記録されているが、別の環境要素の情報、たとえば加速度、減速度、湿度、照度、気圧に関して検出された情報が記録部70に記録されてもよい。
【0066】
図6に示した記録内容と比較すると、変形例4においては、記録部70に、各内視鏡に対して設けられたセンサユニット6が取得した最低温度と最高温度が記録されるため、内視鏡ごとに若干異なる値となっている。変形例4においても、可否情報生成部66は、各内視鏡についての環境情報と設定環境条件とを比較し、比較結果にもとづいて、内視鏡の使用を許可するか、または内視鏡の使用を禁止するかを示す可否情報を生成する。
【0067】
図16は、可否情報生成部66が生成した可否情報を示す。可否情報生成部66は、運送時の環境情報が、設定環境条件で定められる所定の閾値を超えている場合に、内視鏡の使用を許可しないことを示す不許可情報を生成する。一方、可否情報生成部66は、運送時の環境情報が、設定環境条件で定められる所定の閾値を超えていない場合に、内視鏡の使用を許可することを示す許可情報を生成する。記録処理部64は、可否情報生成部66が生成した可否情報を、スコープIDに紐付けて記録部70に記録する。
【0068】
<変形例5>
変形例5は、変形例4で説明したようにセンサユニット6が各医療機器に対して設けられることを前提として、個装箱5の運送経路に注目して、医療機器の使用を禁止する処理を示す。
運送経路管理部72が、運送される全ての個装箱5の運送経路を管理する。ここで運送経路は、運送手段3またはコースの少なくとも一方により定義され、同一の運送経路とは、運送手段3またはコースの少なくとも一方が同一であることを意味する。運送経路管理部72は、全ての個装箱5について、運送に使用した運送手段3の識別情報と、運送手段3による運送時間(運送開始時刻、運送終了時刻)とを把握しておく。たとえば個装箱5が複数の運送手段3によって運送されていれば、運送経路管理部72は、それぞれの運送手段3の識別情報と、運送時間とを記録する。変形例5のセンサユニット6において、制御部10は、環境要素の値が所定の閾値を超えた時刻を、その環境要素値とともに保持部14に記録する。
【0069】
運送経路管理部72は、第1の個装箱5に設けられたセンサユニット6が取得した環境要素の値が所定の閾値を超えたときの運送経路を特定し、特定した運送経路と同じ運送経路で運送された第2の個装箱5を特定する。運送経路管理部72は、第1の個装箱5に設けられたセンサユニット6に記録された時刻(環境要素の値が所定の閾値を超えた時刻)から、そのときに運送に使用されていた運送手段3を特定し、その時刻に同じ運送手段3で運送されていた第2の個装箱5を特定する。可否情報生成部66は、第2の個装箱5に設けられたセンサユニット6が取得した環境要素の値が所定の閾値を超えていない場合であっても、第2の個装箱5に収容された医療機器の使用を不許可とする可否情報を生成する。
【0070】
以上、本開示を実施例および変形例をもとに説明した。これらの実施例および変形例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、さらなる変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。実施例では、医療機器が単回使用医療機器であることを前提としているが、製造施設1から医療施設2に貸し出され、医療施設2で使用された後に製造施設1に返却される貸出用のリユース医療機器であってもよく、また単なるリユース医療機器であってもよい。
【0071】
実施例では、管理サーバ60が、医療施設2内に設けられて、制御装置20とネットワーク7で通信可能に接続されているが、たとえばクラウドサーバとして構成されてもよい。
図17は、医療機器制御システム100の構成の別の例を示す。この構成例では、医療機器制御システム100が、製造施設1が管理する製造施設システムと、医療施設2が管理する医療施設システムを備え、製造施設システムと医療施設システムは、インターネット40により通信可能に接続される。
【0072】
医療施設システムは医療施設2に設けられ、制御装置20、画像記録装置50およびアクセスポイント8を備える。制御装置20、画像記録装置50およびアクセスポイント8は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク7によって通信可能に接続される。ネットワーク7は、ルータ34経由で、インターネット40に接続する。
【0073】
制御装置20は検査室に設けられ、医療機器である内視鏡を接続部22に接続されて、内視鏡の機能を制御する。制御装置20は、レリーズスイッチが操作されたタイミングで画像をキャプチャして、キャプチャした画像を画像記録装置50に送信する。画像記録装置50は、内視鏡検査で撮影された画像を記録する画像サーバであり、制御装置20から送信される画像を検査オーダに紐付けて蓄積する。
【0074】
図17に示す構成例では、製造施設システムが、管理サーバ60aを備える。管理サーバ60aは、
図5に示した管理サーバ60の構成を備える。管理サーバ60aは、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク58に接続し、ルータ56経由でインターネット40に接続する。管理サーバ60aは、医療施設システム経由で、センサユニット6から、環境情報等を受信してよい。
【0075】
実施例では、可否情報生成部66が、運送時の環境情報と、運送に適した環境条件とを比較して、比較結果にもとづいて、内視鏡の使用を許可するか、または内視鏡の使用を禁止するかを示す可否情報を生成している。変形例では、可否情報生成部66が、運送時の環境情報と、医療機器の保管に適した環境条件とを比較して、可否情報を生成してよい。つまり変形例では、可否情報生成部66が、保管時の医療機器の品質を保証するために設定された環境要素の閾値と、運送時の環境情報とを比較して、可否情報を生成してよい。
【0076】
なお医療機器には、品質を保証するために、検査等の医療業務での使用に適した環境条件が設定されている。使用に適した環境条件は、環境要素の閾値により定められ、閾値を超えない環境下で医療機器が使用されることで、医療機器の品質が保証される。通常、使用に適した環境条件は、運送に適した環境条件に比べて厳しく設定されており、環境条件の適正範囲は狭い。変形例で可否情報生成部66は、運送時の環境情報と、使用時に設定される環境要素の閾値にもとづいて設定される値とを比較して、可否情報を生成してもよい。使用時に設定される環境要素の閾値にもとづいて設定される値は、使用時に設定される環境要素の閾値を超えた値、つまり使用に適した環境条件の適正範囲を超えた値に設定されてよい。
【0077】
実施例で可否情報生成部66は、運送時の環境情報が、設定環境条件で定められる所定の閾値を超えている場合に、内視鏡の使用を禁止することを示す不許可情報を生成する。可否情報生成部66が不許可情報を生成した場合、管理サーバ60は、当該内視鏡の代替品を手配する処理を実施してよい。具体的に管理サーバ60は、使用を禁止した内視鏡と同じまたは同様の種類の内視鏡を、製造施設1等に発注する処理を行ってよい。
【0078】
実施例では、運送時に、センサユニット6のセンサ12が、環境要素として温度、加速度、減速度、湿度、照度、気圧を検出してよいことを説明した。センサ12は、さらに、温度や湿度の変化量、実際に運送された経路(位置)、放射線量などを検出してもよい。またセンサユニット6は、収容容器4a内に含まれている個装箱5の個数を検出してもよい。さらに滅菌パック内の気体の種類や濃度を検出する気体センサの検出値を、制御部10が取得できてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、運送された医療機器の使用を管理する技術分野に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・製造施設、2・・・医療施設、3・・・運送手段、4,4a,4b・・・収容容器、5・・・個装箱、6・・・センサユニット、9・・・読取装置、10・・・制御部、12・・・センサ、14・・・保持部、16・・・通信部、18・・・電池、20・・・制御装置、22・・・接続部、24・・・表示装置、26・・・通信部、28・・・取得部、30・・・機能制限部、32・・・制御部、50・・・画像記録装置、60・・・管理サーバ、62・・・通信部、64・・・記録処理部、66・・・可否情報生成部、68・・・情報提供部、70・・・記録部、72・・・運送経路管理部、80・・・内視鏡、82・・・記録部、100・・・医療機器制御システム。