(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】安全弁およびタンク
(51)【国際特許分類】
F16K 17/14 20060101AFI20240910BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F16K17/14
F17C13/04 301D
(21)【出願番号】P 2023532117
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021079990
(87)【国際公開番号】W WO2022117267
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102020215381.7
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハマダ,ラエド
(72)【発明者】
【氏名】ミューレーダー,フリードリヒ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-119539(JP,A)
【文献】特表2005-526941(JP,A)
【文献】特開2000-283396(JP,A)
【文献】特開2007-255700(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第3008767(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/14
F17C 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸線(L1)を定義している案内孔(10)と、前記案内孔(10)の底部(11)に形成されている第1の開口部(13)と、前記縦軸線(L1)に沿って前記底部(11)から間隔をもって形成され、前記縦軸線(L1)に対し横方向に延びている半径方向(R1)に沿って延びている第2の開口部(15)とを備えた弁体(1)と、
前記弁体(1)の前記案内孔(10)内で軸線方向に変位可能に支持され、前記第1の開口部(13)の方に向けられた密封面(2a)を備えている弁ニードル(2)と、
予緊張距離(V)だけ圧縮され、これによって前記弁ニードル(2)を前記縦軸線(L1)に沿って密封位置へ予め緊張させているばね(30)を備え、前記密封位置で前記弁ニードル(2)の前記密封面(2a)が前記第1の開口部(13)を密封する圧縮ばね機構(3)と、
前記縦軸線(L1)に沿って前記予緊張距離(V)よりも大きな拡がり(I4)を有し、作動温度に達したときに崩壊するように形成されている熱で作動可能なトリガーユニット(4)と、
を備え、前記圧縮ばね機構(3)が前記トリガーユニット(4)に対し支持されてい
て、
加えて、
前記半径方向(R1)に延びている前記弁体(1)のロック用繰り抜き部(17)内で変位可能に支持されているロック体(50)と、前記ロック体(50)を前記半径方向(R1)において前記縦軸線(L1)のほうへ予め緊張させているばね(51)とを備えたロック機構(5)を有し、
前記弁体(1)の前記第2の開口部(15)が前記縦軸線(L1)に関して前記ロック用繰り抜き部(17)と前記底部(11)との間に配置され、
前記弁ニードル(2)がロック溝(25)を有し、前記ロック溝が、前記弁ニードル(2)の密封位置において前記ロック用繰り抜き部(17)と前記弁体(1)の前記底部(11)との間で前記ロック用繰り抜き部(17)に対し予め決定されている間隔で位置決めされており、前記弁ニードル(2)が前記第1の開口部(13)から前記予め決定されている間隔だけ引き戻されたときに、前記ロック体(50)が前記案内孔(10)内へ突出するロック位置で前記ロック溝(25)に係入する、安全弁(100)。
【請求項2】
前記ロック体(50)が球体である、請求項
1に記載の安全弁(100)。
【請求項3】
前記圧縮ばね機構(3)が、底部(31A)と、この底部とは逆の側にあるカラー(31B)とを備えたばねスリーブ(31)を有し、前記ばね(30)が渦巻きばね(30A)として形成され、この渦巻きばねが、前記ばねスリーブ(31)の前記カラー(31B)と、前記縦軸線(L1)に関して前記案内孔(10)の前記底部(11)とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されているストッパー(6)とで支持され、前記トリガーユニット(4)が、前記ばねスリーブ(31)の前記底部(31A)と、前記弁ニードル(2)の、前記密封面(2a)とは逆の側にある端部(22)とで支持されている、請求項1
または2に記載の安全弁(100)。
【請求項4】
縦軸線(L1)を定義している案内孔(10)と、前記案内孔(10)の底部(11)に形成されている第1の開口部(13)と、前記縦軸線(L1)に沿って前記底部(11)から間隔をもって形成され、前記縦軸線(L1)に対し横方向に延びている半径方向(R1)に沿って延びている第2の開口部(15)とを備えた弁体(1)と、
前記弁体(1)の前記案内孔(10)内で軸線方向に変位可能に支持され、前記第1の開口部(13)の方に向けられた密封面(2a)を備えている弁ニードル(2)と、
予緊張距離(V)だけ圧縮され、これによって前記弁ニードル(2)を前記縦軸線(L1)に沿って密封位置へ予め緊張させているばね(30)を備え、前記密封位置で前記弁ニードル(2)の前記密封面(2a)が前記第1の開口部(13)を密封する圧縮ばね機構(3)と、
前記縦軸線(L1)に沿って前記予緊張距離(V)よりも大きな拡がり(I4)を有し、作動温度に達したときに崩壊するように形成されている熱で作動可能なトリガーユニット(4)と、
を備え、前記圧縮ばね機構(3)が前記トリガーユニット(4)に対し支持されていて、
前記圧縮ばね機構(3)が、底部(31A)と、この底部とは逆の側にあるカラー(31B)とを備えたばねスリーブ(31)を有し、前記ばね(30)が渦巻きばね(30A)として形成され、この渦巻きばねが、前記ばねスリーブ(31)の前記カラー(31B)と、前記縦軸線(L1)に関して前記案内孔(10)の前記底部(11)とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されているストッパー(6)とで支持され、前記トリガーユニット(4)が、前記ばねスリーブ(31)の前記底部(31A)と、前記弁ニードル(2)の、前記密封面(2a)とは逆の側にある端部(22)とで支持されている、安全弁(100)。
【請求項5】
前記弁体(1)が肩面(18a)を有し、前記肩面が、前記案内孔(10)の前記底部(11)とは逆の側にある当該案内孔(10)の端部を前記半径方向(R1)に関し取り囲み、前記ばねスリーブ(31)の前記カラー(31B)が前記肩面(18a)の方に向けられ、且つ前記肩面(18a)から間隔をもって配置され、前記カラー(31B)は、前記トリガーユニット(4)が崩壊したときに、前記ばね(30)によって前記肩面(18a)へ当接している、請求項
3または4に記載の安全弁(100)。
【請求項6】
前記弁ニードル(2)の外径(d2)と前記ばねスリーブ(31)の内径(d31)とは、前記トリガーユニット(4)が崩壊したときに前記弁ニードル(2)が少なくとも部分的に前記ばねスリーブ(31)内へ挿入可能であるように、大きさを設定されている、請求項
3~5のいずれか一項に記載の安全弁(100)。
【請求項7】
前記圧縮ばね機構(3)がばね担持体(33)を有し、前記ばね(30)が皿ばね(30B)として形成され、前記皿ばねが、前記ばね担持体(33)と結合され、且つ前記密封面(2a)とは逆の側にある前記弁ニードル(2)の端部(22)で支持され、前記トリガーユニット(4)が、前記ばね担持体(33)と、前記縦軸線(L1)に関して前記案内孔(10)の前記底部(11)とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されているストッパー(6)とで支持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の安全弁(100)。
【請求項8】
前記弁体(1)が雄ねじ(19)を有し、前記雄ねじを用いて前記弁体(1)を容器(205)の開口部(210)内にねじ込み可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の安全弁(100)。
【請求項9】
前記トリガーユニット(4)が、液体で充填されるガラスアンプル(40)を有している、請求項1~8のいずれか一項に記載の安全弁(100)。
【請求項10】
ガスを受容するための容器(205)と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の安全弁(100)と、
を備えた、タンク(200)。
【請求項11】
前記ガスが水素を含む、請求10に記載のタンク(200)。
【請求項12】
前記タンク(200)が自動車用である、請求項10または11に記載のタンク(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁および特に自動車用のタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素はエネルギー担体として重要性を増してきている。水素または一般にガスは、通常は閉じた容器内に周囲圧よりも大きな圧力で蓄積されている。その際容器は、容器の内部の圧力が制限値を越えた場合に、または、これがたとえば火災時のように他の理由から必要な場合に、ガスをコントロールして放出するのを可能にするために、通常は安全弁を備えている。
【0003】
特許文献1では、過圧の場合にも、制限温度に達した場合にも作動する安全弁が例示的に説明される。この安全弁は孔を備えた弁体であって、孔の底部に第1の開口部が形成され、孔の側部周部に底部から間隔をもって第2の開口部が形成されている前記弁体と、孔内で案内されているピストンと、圧縮ばねと、ストッパー部材と、制限温度の際に溶融するプラグとを含んでいる。圧縮ばねは、ピストンとストッパー部材とで支持される。ストッパー部材はその側でプラグに当接しており、その結果ばねはピストンを第1の開口部へ押し付けて密封する。プラグが溶融すると、ばねによってストッパー部材を介して作用を及ぼす力と、ガスによってピストンに作用を及ぼす力とが、プラグの材料を押し離し、その結果ピストンはガスによって第1の開口部から持ち上げられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、請求項1の構成要件を備えた安全弁および請求項10の構成要件を備えたタンクが設けられている。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、特にガスタンク用の安全弁が設けられている。安全弁は、縦軸線を定義している案内孔と、前記案内孔の底部に形成されている第1の開口部と、前記縦軸線に沿って前記底部から間隔をもって形成され、前記縦軸線に対し横方向に延びている半径方向に沿って延びている第2の開口部とを備えた弁体と、前記弁体の前記案内孔内で軸線方向に変位可能に支持され、前記第1の開口部に向いた密封面を備えている弁ニードルと、特に無負荷状態に比べて、または、ばねがストッパーに当接している状態に比べて予緊張距離だけ圧縮され、これによって前記弁ニードルを前記縦軸線に沿って密封位置へ予め緊張させているばねを備え、前記密封位置で前記弁ニードルの前記密封面が前記第1の開口部を密封する圧縮ばね機構と、前記縦軸線に沿って前記予緊張距離よりも大きな拡がりまたは長さを有し、作動温度に達したときに崩壊するように形成されている熱で作動可能なトリガーユニットとを含み、この場合前記圧縮ばね機構は前記トリガーユニットに対し支持されている。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、特に自動車用のタンクが設けられている。タンクは、ガスを受容するための、特に水素を受容するための容器と、本発明の第1の観点による安全弁とを有している。
【0008】
本発明の基本的な思想は、制限圧力を越えたときも、制限温度を越えたときも作動する安全弁において、制限温度に達したときに崩壊するトリガーユニットのサイズ設定と、ばねの予緊張距離とを次のように互いに整合させることにあり、すなわちトリガーユニットが崩壊したときに、開口部を容器に対し密封する安全弁の弁ニードルが特にばね力による付勢を受けずに自在に軸線方向に移動可能であるように、互いに整合させることにある。本発明による安全弁においては、圧縮ばね機構のばねは特定の予緊張距離だけ圧縮されている。すなわちばねは、弛緩状態に比べて、または、ばねが軸線方向において互いに逆の側にある2つのストッパーで支持されている状態に比べて、特定の距離だけ圧縮されている。弁ニードルは、ばね力によって密封位置へ予め緊張せしめられる。この場合、トリガーユニットは弁ニードルと圧縮ばね機構とで支持され、圧縮ばね機構は弁体のストッパーで支持される。択一的に、圧縮ばね機構は直接、弁ニードルと、弁体のストッパーでその側に支持されるトリガーユニットとで支持される。両事例とも、トリガーユニットはばねの予緊張距離よりも長い。すなわちトリガーユニットは、それがたとえば破断したときに予緊張距離よりも長い距離を解放するように、構成されている。これによってばねと弁ニードルとは運動学的に切り離され、弁ニードルは軸線方向に解放される。
【0009】
この構成により、温度による作動の場合に、改善された確実性をもって弁ニードルの密封位置が解放される。特に、弁体の第1の開口部を通じて流れるガスを弁体に調達することで弁体を密封位置から離間させる力は、もはやばね力を克服する必要がないため、低減されるので有利である。したがって、弁の安全性がさらに改善される。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、安全弁は、半径方向に延びている弁体のロック用繰り抜き部内で変位可能に支持されているロック体と、ロック体を半径方向において縦軸線のほうへ予め緊張させているばねとを備えたロック機構を有してよく、弁体の第2の開口部は縦軸線に関してロック用繰り抜き部と前記底部との間に配置され、弁ニードルはロック溝を有し、ロック溝は、弁ニードルの密封位置においてロック用繰り抜き部と弁体の底部との間でロック用繰り抜き部に対し予め決定されている間隔で位置決めされており、弁ニードルが第1の開口部から予め決定されている間隔だけ引き戻されたときに、ロック体は案内孔内へ突出するロック位置でロック溝に係入する。したがって、弁体を解放位置において軸線方向に固定するロック機構が設けられており、この場合弁体の解放位置においては、密封面は案内孔の底部から間隔をもって配置され、且つロック溝は縦軸線に関してロック孔のレベルで配置されている。これにより、弁ニードルの密封位置でのロック孔とロック溝との間の間隔に相当する行程だけ弁ニードルが持ち上げられるときに、たとえばトリガーユニットが崩壊したときに、密封面が再び案内孔の底部に当接して第1の開口部を密封することが確実に阻止される。これによって、不可逆的な開弁過程または排出過程が確保され、よって弁の信頼性がさらに改善される。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、ロック体が球体であることが企図されていてよい。これは構造的に簡潔な解決手段を提供するので有利である。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、圧縮ばね機構が、底部と、この底部とは逆の側にあるカラーとを備えたばねスリーブを有し、ばねが渦巻きばねとして形成され、この渦巻きばねが、ばねスリーブのカラーと、縦軸線に関して案内孔の底部とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されているストッパーとで支持され、トリガーユニットが、ばねスリーブの底部と、弁ニードルの、密封面とは逆の側にある端部とで支持されていることが企図されていてよい。ばねスリーブは、たとえばスリーブ本体を有していてよく、この場合前記底部はスリーブ本体の第1の端部に配置され、半径方向においてスリーブ本体から外側へ突出しているカラーは、スリーブ本体の第2の端部に配置されている。ばねスリーブは、好ましくは、カラーが縦軸線に関して案内孔の底部の方に向けられているように弁体内に位置決めされている。ばねが支持されているストッパーは、たとえば、弁体と螺合されているねじ蓋によって形成されていてよい。渦巻きばねは、コスト上好ましく製造可能であり、同時にその予緊張力を非常に精密に調整できるという利点を提供する。トリガーユニットが弁ニードルとスリーブの底部とで支持されるように当該トリガーユニットを配置することにより、トリガーユニットはスリーブ本体内へ突出することになる。したがって、軸線方向にコンパクトな構成が得られる。同時に、ばねはばねスリーブによってトリガーユニットから空間的に切り離されており、その結果相互機能障害が防止される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、弁体が肩面を有し、肩面が、案内孔の底部とは逆の側にある当該案内孔の端部を半径方向に関し取り囲み、ばねスリーブのカラーが肩面の方に向けられ、且つ肩面から間隔をもって配置され、カラーは、トリガーユニットが崩壊したときに、ばねによって肩面へ当接していることが企図されていてよい。案内孔は、たとえば、ばねスリーブと渦巻きばねとが配置されている弁体のプレナム内または中空空間内に開口していてよい。弁体は肩面または止め面を有し、肩面または止め面はプレナムを縦軸線に関して画成し、肩面または止め面から案内孔が延びている。トリガーユニットが崩壊すると、ばねはばねスリーブを止め面または肩面に対し押圧する。したがって、弁体の方向でのばねスリーブの更なる運動は肩面によって止められ、これにより、トリガーユニットが崩壊したときに弁体が密封位置へ不意に押されるということがさらにより確実に阻止される。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、弁ニードルの外径とばねスリーブの内径とは、トリガーユニットが崩壊したときに弁ニードルが少なくとも部分的にばねスリーブ内へ挿入可能であるように、大きさを設定されていることが企図されていてよい。したがって、トリガーユニットの崩壊後、弁ニードルを少なくとも部分的にばねスリーブ内で受容することができる。これにより、一方ではコンパクトな構成が得られる。他方では、これによってトリガーユニット崩壊後の圧縮ばね機構と弁ニードルとの運動学的切り離しがさらに容易になる。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、圧縮ばね機構がばね担持体を有し、ばねが皿ばねとして形成され、皿ばねが、ばね担持体と結合され、且つ密封面とは逆の側にある弁ニードルの端部で支持され、トリガーユニットが、ばね担持体と、縦軸線に関して案内孔の底部とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されているストッパーとで支持されていることが企図されていてよい。ばね担持体は、たとえば実質的に板状に形成されていてよい。皿ばねは、軸線方向に関して非常にコンパクトであるという利点を提供する。たとえば、皿ばねは縦軸線に関して弛緩状態でトリガーユニットの長さの5%と20%との間の範囲内、特に7%と12%との間の範囲内にある延在を有していてよい。これにより、トリガーユニット崩壊後の圧縮ばね機構と弁ニードルとの運動学的切り離しが構造的に非常に簡単に保証される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、弁体が雄ねじを有し、この雄ねじを用いて弁体を容器の開口部内にねじ込み可能であることが企図されていてよい。これにより、容器への安全弁の確実な連結が容易になる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、トリガーユニットが、液体で充填されるガラスアンプルを有していることが企図されていてよい。ガラスアンプルは一般に縦長の、たとえば筒状の中空体であってよく、その中に液体が受容されている。ガラスアンプルは密閉されており、ガラスアンプルの壁厚は、温度の上昇のために液体が膨張してガラスアンプル内部の圧力が制限値を越えると崩壊または割れるような大きさに設定されている。この解決手段は、軸線方向に比較的大きく延在するトリガーユニットを実現可能であるという利点を提供する。それにもかかわらず、たとえばガラスアンプルの壁厚により、および/または、液体の特性および/または量により、トリガーユニットが崩壊する制限温度を非常に精確に調整することができる。更なる利点は、ガラスアンプルの崩壊後に液体が弁ニードルの機能または可動性に影響しないことにある。溶融材から成るプラグの場合には、溶融した材料が弁体内で再び凝固する危険があるが、このようなプラグとは異なり、材料または液体を弁体から運び出す処置をとる必要もない。これは弁体内部でのトリガーユニットの配置を容易にする。
【0018】
方向に関する記載および軸線に関して、特に物理学的構造物の延在態様に関わる方向に関する記載および軸線に関して、ここでは、1つの軸線、1つの方向または1つの構造物が他の軸線、他の方向または他の構造物に「沿って」延在しているということ、すなわちこれらが、特に構造物のそれぞれの位置で得られる接線が、それぞれ互いに45度よりも小さい角度で、有利には30度よりも小さい角度で、特に有利には平行に延びていることと理解される。
【0019】
方向に関する記載および軸線に関して、特に物理学的構造物の延在態様に関わる方向に関する記載および軸線に関して、ここでは、1つの軸線、1つの方向または1つの構造物が他の軸線、他の方向または他の構造物に対して「横方向に」延在しているということ、すなわちこれらが、特に構造物のそれぞれの位置で得られる接線が、それぞれ互いに45度よりも大きいかこれに等しい角度で、有利には60度よりも大きいかこれに等しい角度で、特に有利には垂直に延びていることと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、本発明を図面の図を参照して説明する。
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による安全弁の概略断面図であり、弁ニードルが密封位置に配置され、安全弁が容器の開口部内に固定されている前記概略断面図である。
【
図2】
図1の安全弁を示す図であり、トリガーユニットが崩壊して、弁ニードルが解放位置に配置されている図である。
【
図3】
図2に示した安全弁の、符号Zで表した領域の詳細図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による安全弁の概略断面図であり、弁ニードルが密封位置に配置され、安全弁が容器の開口部内に固定されている前記概略断面図である。
【
図5】
図4の安全弁を示す図であり、トリガーユニットが崩壊して、弁ニードルが解放位置に配置されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図では、反対事項がなにも記載されていない限りは、同一の参照符号は同じ構成要素または機能が同じ構成要素を表している。
【0023】
図1は、たとえば水素のようなガスを受容するための容器205と安全弁100とを備えたタンク200を例示している。タンク200は、例を挙げれば、自動車(図示せず)または他の車両、たとえば船または航空機に搭載することができる。
図1に例示したように、容器205は開口部210を有し、この開口部内に安全弁100が固定されている。たとえば、開口部210は雌ねじ211を備えていてよく、
図1に例示したようにこの雌ねじに安全弁100が当該弁100の弁体1の外周に設けられた雄ねじ19でもってねじ込まれている。
【0024】
図1に例示したように、安全弁100は弁体1と、弁ニードル2と、圧縮ばね機構3と、トリガーユニット4とを有している。オプションで、さらに、
図1に例示したようにロック機構5が設けられていてよい。同様にオプションで、密閉キャップ60が設けられていてよい。
【0025】
図1に概略を示したように、弁体1は、第1の端部1Aと第2の端部1Bとの間で延びている縦長体であってよい。
図1に示したように、弁体1は縦軸線L1を定義している案内孔10を有している。半径方向R1は縦軸線L1に対し垂直に延びている。弁体1は、たとえば縦軸線L1に沿って延びる中空空間を定義してよく、この中空空間は、縦軸線L1に対し横方向に延びる肩面18aによって片側を画成され、弁体1の第2の端部1Bに端部開口部12を有している。
図1に例示したように、案内孔10は袋穴として肩面18aから延びていてよい。したがって、案内孔10は弁体1の第1の端部1Aの領域にある底部11とその逆の側の穿孔開口部14との間に延びている。したがって、肩面18aまたは止め面は、案内孔10の、軸線方向R1に関し案内孔
10の底部11とは逆の側にある端部を取り囲んでいる。
【0026】
図1にさらに例示したように、弁体1は、案内孔10の底部11に形成されている第1の開口部13と、半径方向R1に沿って延び、縦軸線L1に沿って第1の開口部13に対し、または、案内孔10の底部11に対し間隔をもって配置されている第2の開口部15とを有している。
図1に示したように、第1の開口部13は、底部11と、第1の端部1Aまたは第1の端部1Aを形成している弁体1の端面との間に延びている。第2の開口部15は、案内孔10を定義している弁体1の内周面と、半径方向R1に関しこれとは逆の側にある外周面との間に延びている。
【0027】
図1にさらに例示したように、弁体1は、さらに、弁体1の内周面と外周面との間に延びているオプションのロック用繰り抜き部17を有していてよい。
図1に例示したように、ロック用繰り抜き部17は、弁体1の第2の開口部15が縦軸線L1に関しロック用繰り抜き部17と底部11との間に配置されているように位置決めされていてよい。
【0028】
すでに述べたように、弁体1はオプションでその外周面に形成される雄ねじ19を有していてよい。
図1に例示したように、雄ねじ19は第1の端部1Aと第2の端部1Bとの間にある中央領域内に形成されていてよい。
【0029】
図1に例示したように、たとえば弁体1の雄ねじ19が容器
205の開口部210の雌ねじ211と螺合していることによって、安全弁100が容器
205の開口部210内に固定されていれば、弁体1の第1の端部1Aは、よって弁体1の第1の開口部11は、
図1に示したように容器
205の内部空間201の方に向けられている。さらに、弁体1の第2の開口部15は、
図1に示したように容器
205の側部開口部215に対し一直線に並んで配置されていてよい。
【0030】
図1にさらに例示したように、弁体1は、第1の端部1Aの領域に、外周面に形成された周溝16を有していてよく、この周溝内にパッキンリング7が受容されている。
図1に例示したように、パッキンリング7は容器205の内面に、特に開口部210に当接していてよい。
【0031】
オプションの密閉キャップ60は、
図1に例示したように、たとえば雄ねじ61により、第2の端部1Bの領域において弁体1の開口部12に形成されている雌ねじ62にねじ込まれていてよい。
【0032】
弁ニードル2は、特に、
図1に例示したように第1の端部21と第2の端部22との間に延びているピストンとして形成されていてよい。弁ニードル2は、第1の端部21に密封面2aを有し、密封面は、たとえば弁ニードル2自体の端面によって形成されていてよく、或いは、
図1に例示したように端面2aと結合される密封被覆部23によって形成されていてよく、密封被覆部はたとえばエラストマー材から形成されていてよい。第2の端部22には、
図1に例示したように凹部24が形成されていてよい。択一的に、
図4に例示したように、第2の端部22を形成している端面は平坦であってもよい。
【0033】
弁ニードル2は、さらに、オプションでロック溝25を有していてよく、ロック溝は、
図1に例を図示したように、第1の端部21に対し間隔をもってピストンの外周面に形成されている。
【0034】
図1に例示したように、弁ニードル2は弁体1の案内孔10内で縦軸線L1に沿って変位可能に案内されている。弁ニードル2の密封面2aは、案内孔10の底部11の方へ向けて方向づけられている。
図1において弁ニードル2は密封位置で示されており、この密封位置では密封面2aは案内孔10の底部11に当接している。
図2に例示した解放位置では、密封面2aは案内孔10の底部11に対し間隔をもって配置されて第1の開口部13を解放しており、その結果ガスは第1の開口部13を通って案内孔10内へ、そしてこれから第2の開口部15を通って流出できる。
【0035】
圧縮ばね機構3はばね30を有し、
図1に例示したようにさらにばねスリーブ31を含んでいてよい。ばね30は、
図1に示したように、たとえば渦巻きばね30Aであってよい。
図1に例示したように、ばねスリーブ31はスリーブ本体31Cを有していてよく、この場合スリーブ本体の第1の端部には底部31Aが形成され、これとは逆の側にある第2の端部には、半径方向外側へスリーブ本体31Cから突出しているカラー31Bが形成されている。カラー31Bは肩面18aに向けられて位置づけられており、または、案内孔10の底部11に向けられて位置づけられている。
【0036】
図1に示したように、圧縮ばね機構3は弁体1の内部空間内またはプレナム内において肩面18aと端部開口部12との間に配置されていてよい。
図1に例を図示したように、スリーブ本体31Cは渦巻ばね30A内へ挿入されていてよく、この場合渦巻ばね30Aはカラー31Bに当接するとともに、密閉キャップ60に当接し、または、弁体1に関して、特に案内孔10の底部11に関して位置固定されている他のストッパー6に当接している。
【0037】
トリガーユニット4は熱で作動可能に形成され、その結果トリガーユニットは、制限温度に達した場合またはこれを越えた場合に崩壊する。たとえば、
図1に例を図示したように、トリガーユニット4は液体を充填させたガラスアンプル40を有していてよい。制限温度に達すると、または、これを越えると、アンプル40は、液体の熱膨張によって発生するその内部の過大な圧力のために割れる。
【0038】
図1に例示したように、ガラスアンプル40は、または、一般にトリガーユニット4は、第1の端部41と第2の端部42との間に延びている縦長の物体であってよい。トリガーユニットは、第1の端部41と第2の端部42との間に、予め決められた長さまたは縦方向拡がりを有している。
図1に示したように、トリガーユニット4は縦軸線L1に関しばねスリーブ31の底部31Aと弁ニードル2の第2の端部22との間に配置されていてよい。この場合、特に、トリガーユニット4はばねスリーブ31の底部31Aと弁ニードル2の第2の端部22とで支持されている。たとえば、トリガーユニット4の第2の端部42は弁ニードル2の第2の端部22に形成されている繰り抜き部または凹部24内で受容されていてよい。トリガーユニット4の第1の端部41は、ばねスリーブ31の底部31Aに当接していてよく、オプションで、
図1に例示したように同様に対応する凹部内に受容されていてよい。
【0039】
トリガーユニット4が崩壊せずに、機械的に無傷である
図1に例示した状態では、トリガーユニット4は圧縮ばね機構3を運動学的に弁ニードル2に連結する。特に、ばね30は予緊張距離Vだけ圧縮されており、これによって弁ニードル2は縦軸線L1に沿って密封位置へ予緊張せしめられている。その際、縦軸線L1に沿ったトリガーユニット4の拡がりまたは長さ14は、ばね30の予緊張距離Vよりも大きい。ばねスリーブ31の肩面18aの方へ向けられたカラー31Bは、
図1に示した状態で肩面18aに対し間隔をもって配置されている。
【0040】
容器205の内部201内の圧力がばね30の予緊張力を克服するために十分大きい特定の制限値を越えると、弁ニードル2は軸線方向に解放位置へ移動し、その結果ガスは第1の開口部11と第2の開口部15と場合によっては側部開口部215とを通って流出することができる。
【0041】
温度がトリガーユニット4の作動温度に達するか、これを越えると、トリガーユニット4は崩壊する。この状態は
図2に概略的に図示されている。トリガーユニット4の崩壊により、縦軸線L1に沿ったトリガーユニット4の拡がりまたは長さ14がばね30の予緊張距離Vよりも大きくなるので、弁ニードル2は運動学的に圧縮ばね機構3から切り離されて、自由に案内孔10内を軸線方向に変位することができる。
図2でさらに認められるように、トリガーユニット4が崩壊すると、カラー31Bをばね30によって肩面18aに押圧させることができる。したがって肩面18
aは、スリーブ31がさらに弁ニードル2の方向へ移動することを阻止する制止部を形成している。
図2でさらに認められるように、弁ニードル2の外径d2とばねスリーブ31またはスリーブ本体31Cの内径d31とは、トリガーユニット4が崩壊したときに弁ニードル2が少なくとも部分的にばねスリーブ31内へ挿入可能であるように、大きさを設定されていてよい。
【0042】
図2は、弁ニードル2が解放位置でオプションのロック機構5によってロックされていることを純粋に例として示している。これによって、弁ニードル2が密封位置へ戻りうることが阻止される。
【0043】
オプションのロック機構5は
図3に詳細に図示されている。
図3に例示したように、ロック機構5は、たとえば球体として形成されていてよいロック体50と、ばね51とを有している。ロック体50は、弁体1のロック用繰り抜き部17内で変位可能に支持されている。たとえば渦巻きばねとして実現されていてよいばね51は、同様にロック用繰り抜き部17内に受容されており、ロック体50を案内孔10の方向または縦軸線L1の方向に予緊張させている。たとえば、ばね51は、
図2に概略的に示したように、弁体1の外周に設けたロック用繰り抜き部17内へカバーしている密閉部材52で支持されている。
【0044】
図1で認められるように、弁ニードル2のロック溝25は、弁ニードル2の密封位置においてロック用繰り抜き部17と弁体1の底部11との間でロック用繰り抜き部17に対し予め決定されている間隔で位置決めされている。弁ニードル2が解放位置に引き戻され、その結果密封面2aが案内孔
10の底部11から予め決定されている間隔だけ位置決めされると、
図2および
図3に示したように、ロック溝25は縦軸線L1に関してロック用繰り抜き部17と同じレベルにある。その際、ばね51はロック体50をロック位置へ予め緊張させ、このロック位置でロック体は、
図2および
図3に示したように案内孔10内へ突出して、ロック溝25に係入する。
【0045】
図4には、容器200の開口部210内に固定されている他の安全弁100が例示されている。
図4に例示した安全弁100は、
図1ないし
図3に示した安全弁100と、圧縮ばね機構3の構成およびトリガーユニット4の配置の点でのみ異なっている。
【0046】
図4に例示したように、圧縮ばね機構3はばね担持体33を有していてよく、ばね30は皿ばね30Bとして形成されていてよい。ばね担持体33はたとえば板として実現されていてよく、この場合皿ばね30Bはばね担持体33の第1の表面33aに当接する。オプションで、ばね担持体33は、
図4に例示したように第1の表面33aとは逆の側にあるばね担持体33の第2の表面33bに形成されている繰り抜き部33Cを有していてよい。
【0047】
図4に例示したように、皿ばね30Bは弁ニードル2の第2の端部22で支持されている。たとえばばね担持体33の繰り抜き部33C内へ突出することができるトリガーユニット4は、ばね担持体33と、密閉キャップ60、または、縦軸線L1に関して案内孔10の底部11とは逆の側でこれに対し相対的に位置固定して配置されるもう1つのストッパー6とで支持されている。
【0048】
図4では、トリガーユニット4は機械的に無傷であり、弁ニードル2はその密封位置に配置されている。皿ばね30Bは肩面18aに対し間隔をもって配置されて、弁ニードル2を密封位置へ予め緊張させている。
図5に概略を図示したように、トリガーユニット4が作動温度を越えたために崩壊すると、圧縮ばね機構3は弁ニードルから運動学的に切り離される。この場合には、圧縮ばね機構3は、肩面18aと密閉キャップ60との間に延びている弁体1の中空空間内へ自由に退避することができる。したがって、弁ニードル2は、ばね30の予緊張力に抗して作動する必要なしに解放位置へ移動することができる。
【0049】
上述のように本発明を複数の実施形態を用いて例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多面的に変更可能である。特に、上述した複数の実施形態の組み合わせも考えられる。
【符号の説明】
【0050】
1 弁体
2 弁ニードル
2a 弁ニードルの密封面
3 圧縮ばね機構
4 トリガーユニット
5 ロック機構
6 ストッパー
10 案内孔
11 案内孔の底部
13 弁体の第1の開口部
14 トリガーユニットの長さまたは拡がり
15 弁体の第2の開口部
17 ロック用繰り抜き部
18a 弁体の肩面
19 弁体の雄ねじ
22 弁ニードルの端部
25 ロック溝
30 ばね
30A 渦巻きばね
30B 皿ばね
31 ばねスリーブ
31A ばねスリーブの底部
31B ばねスリーブのカラー
33 ばね担持体
40 トリガーユニットのガラスアンプル
50 ロック体
51 ばね
100 安全弁
200 タンク
205 容器
210 容器の開口部
d2 弁ニードルの外径
d31 ばねスリーブの内径
L1 縦軸線
R1 半径方向
V ばねの予緊張距離