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特許7553715液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のためのハイドロリックブロック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のためのハイドロリックブロック
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/36 20060101AFI20240910BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60T8/36
B60T13/138 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023532563
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021083077
(87)【国際公開番号】W WO2022122405
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】102020215519.4
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-535871(JP,A)
【文献】国際公開第2020/069872(WO,A1)
【文献】特表2019-503937(JP,A)
【文献】特表2014-525875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0163023(US,A1)
【文献】国際公開第2020/224846(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102020207358(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/36
B60T 13/138
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のための直方体のハイドロリックブロックであって、前記ハイドロリックブロック(1)は、非人力シリンダボア(3)の中でスライド可能な非人力ピストン()を回転しないように保つ、非人力ピストン(4)のための回り止め案内部(10)を有する非人力シリンダボア(3)を前記ハイドロリックブロック(1)のモータ面(6)に有する、ハイドロリックブロックにおいて、前記ハイドロリックブロック(1)は、前記回り止め案内部(10)を前記ハイドロリックブロック(1)の前記モータ面(6)を超えて延長する張出部(11)を前記非人力シリンダボア(3)の開口部に有することを特徴とする、ハイドロリックブロック。
【請求項2】
前記ハイドロリックブロック(1)は、前記非人力シリンダボア(3)が中に延びる張出部(19)を、前記モータ面(6)に向かい合う前記ハイドロリックブロック(1)の面(17)に有することを特徴とする、請求項1に記載のハイドロリックブロック。
【請求項3】
前記張出部(11,19)は前記ハイドロリックブロック(1)の一体的な構成要素であることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイドロリックブロック。
【請求項4】
前記張出部(11,19)は前記ハイドロリックブロック(1)に取り付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイドロリックブロック。
【請求項5】
前記非人力シリンダボア(3)は前記ハイドロリックブロック(1)の最小寸法の方向に延びることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロック。
【請求項6】
前記ハイドロリックブロック(1)はマスタブレーキシリンダボア(21)および/または電磁弁の収容部(18)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロック。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のハイドロリックブロックのためのブランクにおいて、前記ブランク(25)は、断面が一定の棒状の隆起部(26)を前記モータ面(6)に有する、または、前記モータ面(6)に対して垂直に見て互いに重なり合う、断面が一定の棒状の隆起部(26,27)を前記モータ面(6)および前記モータ面(6)に向かい合う前記ブランク(25)の面(17)に有する、直方体の形状を有することを特徴とする、ブランク。
【請求項8】
前記ブランク(25)は一定の断面を有する異形棒材をなすように成形によって製作されることを特徴とする、請求項7に記載のブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項の構成要件を有する、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのためのハイドロリックブロックに関する。このような種類のハイドロリックブロックは、非人力によるブレーキ圧生成のための、ならびにブレーキ圧および/またはスリップコントロールのコントロールまたは制御のための、液圧コンポーネントの機械的な取付と液圧的な配管のための役目を果たす。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、非人力による液圧式のブレーキ圧の生成のために非人力ピストンが軸方向へスライド可能に収容された非人力シリンダボアを有する直方体のハイドロリックブロックを有する、液圧式の非人力・車両ブレーキシステムのためのハイドロリックユニットを開示している。非人力シリンダボアの開口部で電気モータがハイドロリックブロックに取り付けられ、これによってピストンがねじ伝動装置を介して、ハイドロリックブロックの非人力シリンダボアの中でスライド可能である。非人力シリンダボアの中で非人力ピストンがスライドすることでブレーキ圧を生成することができ、および/またはブレーキ液を送出することができる。ハイドロリックブロックの表面ないし内部に配置される電磁弁によってブレーキ圧をコントロールすることができ、および/またはブレーキパイプを介してハイドロリックブロックに接続される液圧ホイールブレーキでのホイールブレーキ圧をスリップコントロールのためにコントロールすることができる。
【0003】
周知のハイドロリックユニットの非人力ピストンは、非人力シリンダボアの中に直接的に収容されるのではなく、一端が閉じたシリンダライナ状の摺動ブッシュがハイドロリックブロックの非人力シリンダボアに押し込まれ、その中に非人力ピストンが軸方向へスライド可能に収容される。摺動ブッシュは一方の側でハイドロリックブロックから突き出し、いわば張り出し、それにより非人力ピストンのストロークが延長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ドイツ特許出願公開第102017214593A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の構成要件を有する本発明のハイドロリックブロックは、特にスリップコントロールを有する液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のハイドロリックユニットのために意図される。スリップコントロールを有する液圧式の非人力・車両ブレーキ設備の中核となるのは、ブレーキパイプを介して車両ブレーキ設備の液圧ホイールブレーキが接続された、ないしは接続可能である、ハイドロリックブロックを有するハイドロリックユニットである。筋力操作のために、ハイドロリックブロックは同じくブレーキパイプを介してマスタブレーキシリンダに接続されていてよく、ないしは接続可能であってよく、または、ハイドロリックブロックはマスタブレーキシリンダボアを有する。
【0006】
スリップコントロールは、特にロック防止コントロール、トラクションコントロール、および/またはビークルダイナミックコントロールであり、これらについて略語ABS、ASR、および/またはFDRが慣用される。後者は日常語では「横滑りコントロール」とも呼ばれる。スリップコントロールは周知であり、ここでは詳しくは説明しない。ハイドロリックユニットは、非人力によるブレーキ圧生成のため、およびブレーキ圧コントロールのための役目を果たす。
【0007】
ハイドロリックブロックは、車両ブレーキ設備ないしスリップコントロールの液圧コンポーネントの機械的な取付け、および液圧的な配管の役目を果たす。このような液圧コンポーネントは、特に、電磁弁、逆止め弁、ハイドロリザーバ、ダンパチャンバ、圧力センサ、および非人力ブレーキ圧発生器である。
【0008】
非人力ブレーキ圧発生器は、非人力ピストンが中に配置された、ないしは配置可能である、ハイドロリックブロックの非人力シリンダボアを有する。非人力ピストンはしばしばプランジャピストンとも呼ばれ、非人力シリンダボアはプランジャ収容部、プランジャボア、プランジャシリンダなどとも呼ばれる。非人力による圧力生成のために、非人力・ブレーキ圧発生器の非人力ピストンが、ハイドロリックブロックの外側に取り付けられた電気モータによって電気機械式に、ねじ伝動装置またはその他の回転/並進・変換器を介して非人力シリンダボアの中でスライドし、電気モータとねじ伝動装置の間には機械式の減速ギヤ、特にプラネタリギヤが配置されていてよい。
【0009】
液圧コンポーネントは、多くの場合に円筒状の貫通孔または止まり穴であり部分的に直径段差を有する、ハイドロリックブロックの収容部に取り付けられる。「配管される」とは、収容部ないしその中に取り付けられた液圧コンポーネントがハイドロリックブロックにあるパイプを通して、車両ブレーキ設備ないしそのスリップコントロールの液圧配管図に即して接続されることを意味する。パイプは典型的にはハイドロリックブロックに穿設される。非人力シリンダボアおよび場合によりマスタブレーキシリンダボアも同じく穿孔されていてよく、または、穿孔によるものとは別の方式で製作されていてよい。
【0010】
ハイドロリックブロックは、車両ブレーキ設備ないしそのスリップコントロールの液圧コンポーネントが実装されてハイドロリックユニットを構成し、ここで「実装される」とは、液圧コンポーネントが、そのためにそれぞれ意図されるハイドロリックブロックの収容部に取り付けられることを意味する。
【0011】
請求項1の構成要件を有する本発明のハイドロリックブロックは直方体であり、好ましくはデカルト座標上で穿孔され、特に金属からなる。「デカルト座標上で穿孔される」とは、液圧コンポーネントのための収容部およびこれらを接続するパイプが相互に、かつハイドロリックブロックの面や辺に対して、平行かつ垂直にハイドロリックブロックに取り付けられることを意味する。いくつかの傾斜した収容部および/またはパイプも可能である。
【0012】
非人力シリンダボアは、モータ面と呼ぶハイドロリックブロックの面に取り付けられる。モータ面は、ないし非人力シリンダボアが開口する面は、直方体のハイドロリックブロックの幅広面であるのが好ましい。非人力シリンダボアは、非人力シリンダボアの中でスライド可能な非人力ピストンを回転しないように保つ、非人力ピストンのための回り止め案内部を有する。回り止め案内部は、たとえば軸平行に延びる1つまたは複数の回り止めリブまたは回り止め溝を有することができ、その表面または内部に非人力ピストンが回転しないように支持される。たとえば波形に延びる回り止めリブまたは回り止め溝も考えられる。
【0013】
非人力ピストンのストロークを延長するために、本発明によるハイドロリックブロックは、非人力シリンダボアの開口部に張出部を有し、回り止め案内部が非人力シリンダボアからその中へと続く。
【0014】
本発明によるハイドロリックブロックは、非人力シリンダボアの開口部に向かい合う面にも、非人力シリンダボアが中に延びる張出部を有するのが好ましく、それにより、これが非人力シリンダボアの方向でハイドロリックブロックの寸法よりも長くなる。
【0015】
「張出部」として理解されるのは、ここでは非人力シリンダボアの開口部を有する面および場合によりハイドロリックブロックの向かい合う面にある、隆起、突出部、突起などである。ハイドロリックブロックの基本形状は直方体であり、張出部がこの直方体から屹立する。
【0016】
本発明による1つまたは複数の張出部は、非人力シリンダボアの延長、および非人力ピストンのストロークの延長を可能にし、このことは、特に、非人力シリンダボアの開口部がハイドロリックブロックの2つの向かい合う幅広面のうちの一方にあり、非人力シリンダボアがハイドロリックブロックの短い寸法の方向に延びている場合に好ましく、あるいは必要でさえある。
【0017】
従属請求項は、独立請求項に記載されている発明の発展例と好ましい実施形態を対象としている。
【0018】
本明細書および図面に開示されている一切の構成要件は、それ自体として単独で、または基本的に任意の組合せとして、本発明の実施形態で具体化されていてよい。本発明の1つの請求項または1つの実施形態のすべての構成要件ではなく、1つまたは複数の構成要件だけを有している本発明の実施形態も、原則として可能である。
【0019】
次に、図面に示されている実施形態を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に基づくハイドロリックブロックをモータ面への視線で見た斜視図である。
図2図1のハイドロリックブロックを向かい合うバルブ面への視線で見た斜視図である。
図3図1および2のハイドロリックブロックのブランクを図1に対応する視点で見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面は、本発明の説明と理解のために簡略化した図である。
【0022】
図1および2に示す本発明のハイドロリックブロック1は、スリップコントロールを有する液圧式の図示しない非人力・車両ブレーキ設備の、同じく図示しないハイドロリックユニットのために意図される。スリップコントロールは、特にロック防止コントロール、トラクションコントロール、および/またはビークルダイナミックコントロールであり、これらについて略語ABS、ASR、および/またはFDRが慣用されている。液圧式の非人力・車両ブレーキ設備およびスリップコントロールは周知であり、ここでは詳しくは説明しない。
【0023】
本発明によるハイドロリックブロック1は幅狭の直方体の金属ブロックであり、互いに向かい合うその幅広面はほぼ正方形である。「幅狭の」とは、両方の幅広面の間隔が、幅広面の長さまたは幅の半分よりも大きくないことを意味する。本実施例では、両方の幅広面の相互間隔は、ハイドロリックブロック1の幅広面の長さまたは幅のほぼ4分の1から3分の1である。これ以外の面比率も可能である。
【0024】
ハイドロリックブロック1は、非人力によるブレーキ圧生成の、および非人力ブレーキング中および/またはスリップコントロール中におけるブレーキ圧コントロールの、液圧コンポーネントの機械的な取付と液圧的な配管のための役目を果たす。このような液圧コンポーネントは、特に、電磁弁、逆止め弁、ハイドロリザーバ、ハイドロポンプ、および非人力ブレーキ圧発生器2である。液圧コンポーネントはハイドロリックブロック1の収容部に取り付けられる。これらの収容部は円筒状の窪み、止まり穴、および/または貫通孔であり、直径段差を有することができ、これらの中に液圧コンポーネントが挿入されて、たとえば周回するかしめによって圧密に取り付けられており、ないしは取り付けられる。液圧コンポーネントは収容部に入り込んでいてよく、またはハイドロリックブロック1から突き出すことができる。ハイドロリックブロック1は、液圧コンポーネントが実装されて、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備の非人力ブレーキ圧生成とブレーキ圧コントロールのための図示しないハイドロリックユニットを構成する。
【0025】
液圧配管とは、液圧コンポーネントのための収容部がハイドロリックブロック1を通るパイプによって、非人力・車両ブレーキ設備ないしそのスリップコントロールの液圧配管図に即して互いに接続されることを意味する。収容部やパイプはハイドロリックブロック1のいわゆる「穿孔」を形成するが、原則として、収容部とパイプが穿孔によるものとは別様に製作されていてもよい。
【0026】
本発明によるハイドロリックブロック1は、ハイドロリックブロック1の両方の向かい合う幅広面に対して垂直にハイドロリックブロック1を貫いて延びる非人力シリンダボア3を有している。非人力シリンダボア3は穿孔されていてよく、または穿孔によるものとは別様に製作されていてよい。非人力シリンダボア3は、しばしばプランジャピストンとも呼ばれる、非人力・ブレーキ圧発生器2の非人力ピストン4をスライド可能に収容するための役目を果たす。
【0027】
駆動をするための、すなわち非人力シリンダボア3の中で非人力ピストン4をスライドさせるための、電気モータ5が、非人力シリンダボア3が開口する、ここではハイドロリックブロック1のモータ面6と呼ぶハイドロリックブロック1の幅広面の外側に、非人力シリンダボア3に対して同軸に取り付けられる。電気モータ5は、減速ギヤとねじ伝動装置とを介して、非人力ピストン4をスライドさせる。減速ギヤは本実施例では、電気モータ5および非人力シリンダボア3に対して同軸に電気モータ5のモータハウジングに格納された、したがって見えていないプラネタリギヤである。一般的には回転/並進・変換ギヤとして把握することもできるねじ伝動装置は、本実施例ではスクリューねじすなわちボールねじである。これは電気モータ5と非人力シリンダボア3に対して同軸に、部分的に電気モータ5のモータハウジングの中に、かつ部分的に非人力ピストン4の中に、配置される。
【0028】
非人力ピストン4は、本実施例では円筒状の中空ピストンであり、その閉じた端部が非人力シリンダボア3の底面のほうを向き、その開いた端部が電気モータ5のほうを向いている。
【0029】
非人力ピストン5の中で同軸に、非人力ピストン5のピストン底面と固定的に結合された、ボールねじのスピンドル7が配置されている。図面では見えていないプラネタリギヤを介して電気モータ5により回転駆動可能なボールねじのナットが同じく電気モータ5のモータハウジングの中にあるが、図面では見えていない。
【0030】
電気モータ5、見えていない減速ギヤ/プラネタリギヤ、スピンドル7だけが図面に見えているねじ伝動装置、非人力ピストン4、および非人力シリンダボア3が、非人力ブレーキングのための液圧ブレーキ圧を生成するための非人力・ブレーキ圧発生器2を形成する。
【0031】
非人力ピストン4は、電気モータ5のほうを向く開いた端部に、径方向外側に向かって屹立する2つのラグ8を互いに向かい合う円周個所に有している。ラグ8は、非人力シリンダボア3の向かい合う円周個所でハイドロリックブロック1に軸平行に設けられた回り止め溝9に係合する。外方に向かって屹立する非人力ピストン4のラグ8と、ハイドロリックブロック1の非人力シリンダボア3にある回り止め溝9とが回り止め案内部10を形成し、これが非人力ピストン4を回転不能に保ち、すなわち、減速ギヤを形成するプラネタリギヤおよびねじ伝動装置が回転駆動されたときに共に回転しないように保つ。2つのラグ8と2つの回り止め溝9という個数、および/またはこれらの向かい合う配置は、本発明にとって必須ではない。1つのラグ8と1つの回り止め溝9だけ、もしくは2つよりも多いラグと2つよりも多い回り止め溝9が存在していてもよく、および/またはラグ8と回り止め溝9が、非人力ピストン4と非人力シリンダボア3の円周にわたって互いに対向するのとは別様に配置されていてもよい(図示せず)。非人力ピストン4のための回り止め案内部10として、ラグ8および回り止め溝9とは異なる回り止め部材も考えられる(図示せず)。
【0032】
モータ面6における非人力シリンダボア3の開口部で、回り止め溝9は開いている。本発明によるハイドロリックブロック1は、非人力シリンダボア3の円周に張出部11を有していて、その中へと回り止め溝9が続いている。張出部11は、本実施例では、ほぼ平行四辺形の断面を有するそれぞれ2つのピンであり、その内面は円筒状で中空円形となっており、非人力シリンダボア3の円筒状の内側円周面を、オフセットや断絶またはその他の不規則性なしに同一の面で継続している。張出部11を形成するピンの互いに向き合う面は、回り止め溝9の溝壁を、同じくオフセットや断絶またはその他の不規則性なしに延長している。張出部11を形成するピンは、軸方向の案内部だけでなく非人力ピストン4の回り止め案内部10も、ハイドロリックブロック1のモータ面6を超えて延長する。本発明は、図示して説明している張出部11だけに限定されるものではなく、ハイドロリックブロック1のモータ面6を超えて回り止め案内部10を延長するためのこれ以外の張出部11も可能である(図示せず)。
【0033】
非人力シリンダボア3の開口部の周囲では、ねじ12によって電気モータ6を取り付けるためのねじ穴が、ハイドロリックブロック1のモータ面6に設けられている。
【0034】
さらにハイドロリックブロック1の上面13に接して、およびこれに隣接する幅狭面14に接して、全部で4つの止まり穴がブレーキパイプ接続部15としてハイドロリックブロック1のモータ面6に設けられている。ブレーキパイプ接続部15は、車両ブレーキ設備の液圧ホイールブレーキに通じる図示しないブレーキパイプを接続するための役目を果たす。ブレーキパイプの接続は、たとえばねじ付きニップルや押込みニップルを用いていわゆるセルフクリンチ技術で行うことができる(図示せず)。
【0035】
ハイドロリックブロック1は上面13に、図示しないブレーキ液貯蔵容器のための接続部16として、本実施例では3つの止まり穴を有しており、このブレーキ液貯蔵容器はハイドロリックブロック1の上面13に載置され、ハイドロリックブロック1の上面13にブレーキ液貯蔵容器が載置されたときに接続部16に達する、接続部16での封止のためにたとえばOリングを有する接続ニップルを底面に有している。
【0036】
本発明によるハイドロリックブロック1は、ここではバルブ面17と呼ぶ、モータ面6に向かい合う幅広面に、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のスリップコントロールの図示しない電磁弁のための収容部18として、止まり穴を有している。このような電磁弁は、たとえば取込弁、排出弁、分離弁、吸込弁である。図示しない電磁弁は、本来の弁を構成するその液圧部品が収容部18の中に入り、そこで圧密にかしめられるように、収容部18に挿入される。電磁弁の磁気アーマチュアが中にあるバルブドームが、ハイドロリックブロック1のバルブ面17から屹立する。その上に磁気コイルが装着される(図示せず)。
【0037】
ハイドロリックブロック1は張出部19をバルブ面17に有していて、その中に非人力シリンダボア3が延びており、それにより非人力シリンダボア3は、モータ面6とバルブ面17との間隔よりも長くなっている。一般的に表現すると、非人力シリンダボア3は張出部19によって、非人力シリンダボア3が開口するハイドロリックブロック1の面と、これに向かい合うハイドロリックブロック1の面との間隔よりも長くなる。張出部19は、ハイドロリックブロック1のバルブ面17にある隆起、突起などである。張出部19はたとえば円筒状や、本実施例のように正方形であってよく、またはその他の形状を有することができる。
【0038】
幅狭面14に向かい合い、モータ面6とバルブ面17と上面13とに隣接する、ハイドロリックブロック1の取付面20に、上面13と平行に延びてハイドロリックブロック1をほぼ完全に、または完全に貫通するマスタブレーキシリンダボア21が設けられている(図2)。マスタブレーキシリンダボア21は止まり穴として製作され、それによってハイドロリックブロック1の幅狭面14で閉じられるか、または、貫通孔として製作されて、ハイドロリックブロック1の幅狭面14でたとえば栓によって圧密に閉止される。
【0039】
マスタブレーキシリンダボア21は、2つのマスタブレーキシリンダピストン22,23および2つのピストンスプリング24を軸方向へスライド可能に収容するために意図されている。両方のマスタブレーキシリンダピストンのうちの一方22はいわゆる一次ピストンまたはロッドピストンであり、フットブレーキペダルまたは場合によりハンドブレーキレバーによって、一次ピストンまたはロッドピストン22をフットブレーキペダルまたはハンドブレーキレバーと枢着結合するピストンロッドを通じて、マスタブレーキシリンダボア21の中で筋力によりスライド可能である。他方のマスタブレーキシリンダピストン23はいわゆる二次ピストンまたは浮動ピストンであり、一次ピストンまたはロッドピストン22による液圧での圧力付勢によって、マスタブレーキシリンダボア21の中でスライドする。マスタブレーキシリンダボア21は、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備の筋力操作を可能にする。
【0040】
電磁弁と、ブレーキ圧コントロールおよびスリップコントロールのその他のコンポーネントと、非人力ブレーキ圧発生器2を装備するハイドロリックブロック1を、すなわちハイドロリックユニットを、取付面20をもって、自動車のスプラッシュボードでエンジンルームに取り付けることが意図される(図示せず)。
【0041】
図3はブランク25を示しており、これから本発明によるハイドロリックブロック1が、たとえばフライス加工および/または穿孔などの切削加工によって製作される。ブランク25は被削材であり、これから完成部品が、ここではハイドロリックブロック1が、加工ないし二次加工によって製作される。ブランク25は本実施例では成形によって、すなわち衝撃押出ないし押出成形によって金属から、本実施例ではアルミニウム合金から、異形棒材として製作され、これから鋸引きまたはその他の方式でブランク25が切断される。
【0042】
図3に見られるとおり、ハイドロリックブロック1のブランク25は、直方体の一方の幅広面にある、断面が直方形の棒状の隆起部26と、これと向かい合う直方体の幅広面にある、断面が長方形の同じく棒状の隆起部27とを有する直方体の形状を有している。両方の隆起部のうちの一方27は他方の隆起部26よりも幅が広くて高く、両方の隆起部26,27は、直方体の幅広面に対して垂直に見たときに互いに重なり合う。隆起部26,27に対して垂直のブランク25の断面は、隆起部26,27の長手方向へのブランク25の延在全体にわたって一定である。
【0043】
大きいほうの隆起部27から、非人力シリンダボア3を延長する張出部19がバルブ面17に製作され、小さいほうの隆起部26から、回り止め案内部10を延長する、ハイドロリックブロック1のモータ面6で張出部11を形成するピンが製作され、それは-本実施例では切削により-、張出部11,19を形成しないものすべてが隆起部26,27から除去されることによる。
【0044】
ブランク25の幅広面にある、断面が長方形の両方の棒状の隆起部26,27を有するブランク25からハイドロリックブロック1が製作されることで、張出部11,19はハイドロリックブロック1の一体的な構成要素となる。たとえば、一方または両方の張出部11,19を当初は別々の部品として接合することで、たとえば物質接合式にたとえば溶接することで、または成形することで、たとえばかしめることで、あるいはたとえばねじ止めすることで、ハイドロリックブロック1に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハイドロリックブロック
3 非人力シリンダボア
4 非人力ピストン
6 モータ面
10 回り止め案内部
11 張出部
17 バルブ面
18 電磁弁の収容部
19 張出部
21 マスタブレーキシリンダボア
25 ブランク
26 隆起部
27 隆起部
図1
図2
図3