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特許7553729横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法
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  • 特許-横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法 図1
  • 特許-横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/14 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B63B39/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024011656
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2023-0167981
(32)【優先日】2023-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513107735
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ オーシャン サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ、トゥク ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ペク、チョン ファ
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086482(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/172408(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113212681(CN,A)
【文献】特開2002-87379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 39/00 ― 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子傾斜計で表出される時間に応じた横揺れ角データをFFT(Fast Fourier Transform)分析して横揺れ周期データを算出するように構成された横揺れ周期算出部と、
前記横揺れ角データをFFT分析して平均横傾斜角データを算出するように構成された平均横傾斜角算出部と、
前記横揺れ角データをFFT分析して有意横揺れ角データを算出するように構成された有意横揺れ角算出部と、
算出された前記横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データの入力を受け、前記横揺れ周期データを最大固有横揺れ周期及び最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%と比較分析して横揺れ周期の正常、注意又は危険状態を決定し、前記平均横傾斜角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均横傾斜角の正常、注意又は危険状態を決定し、前記有意横揺れ角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均有意横揺れ角の正常、注意又は危険状態を決定し、決定された各状態に相応する表示制御信号を出力するように構成された制御部と、
前記制御部から表示制御信号の入力を受けて表示するように構成された表示部と、を含むことを特徴とする、横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム。
【請求項2】
前記等級基準は、船舶の限界傾斜角と10[deg]の中から小さい方が選択される、請求項1に記載の横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム。
【請求項3】
横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムを用いた船舶の安全状態モニタリング方法であって、
制御部が横揺れ周期算出部、平均横傾斜角算出部及び有意横揺れ角算出部から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信するステップと、
前記制御部が、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定するステップと、
前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期正常状態を表示するステップと、
前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きく最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を注意状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期注意状態を表示するステップと、
前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、前記制御部が横揺れ周期を危険状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期危険状態を表示するステップと、を含むことを特徴とする、船舶の安全状態モニタリング方法。
【請求項4】
前記受信ステップの後、
前記制御部が、前記平均横傾斜角データが等級基準の50%以下であるか否かを決定するステップと、
前記平均横傾斜角データが等級基準の50%以下である場合、前記制御部が平均横傾斜角を正常状態と決定し、表示部を介して横傾斜角正常状態を表示するステップと、
前記平均横傾斜角データが等級基準の50%より大きく等級基準以下である場合、前記制御部が平均横傾斜角を注意状態と決定し、前記表示部を介して平均横傾斜角注意状態を表示するステップと、
前記平均横傾斜角データが等級基準より大きい場合、前記制御部が平均横傾斜角を危険状態と決定し、前記表示部を介して平均横傾斜角危険状態を表示するステップと、をさらに含む、請求項3に記載の船舶の安全状態モニタリング方法。
【請求項5】
前記受信ステップの後、
前記制御部が、前記有意横揺れデータが等級基準の50%以下であるか否かを決定するステップと、
前記有意横揺れ角データが等級基準の50%以下である場合、前記制御部が有意横揺れ角を正常状態と決定し、表示部を介して有意横揺れ角正常状態を表示するステップと、
前記有意横揺れ角データが等級基準の50%より大きく等級基準以下である場合、前記制御部が有意横揺れ角を注意状態と決定し、前記表示部を介して有意横揺れ角注意状態を表示するステップと、
前記有意横揺れ角データが等級基準よりも大きい場合、前記制御部が有意横揺れ角を危険状態と決定し、前記表示部を介して有意横揺れ角危険状態を表示するステップと、をさらに含む、請求項3に記載の船舶の安全状態モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法に関し、特に、電子傾斜計によって得たデータをFFT(Fast Fourier Transform)分析して取得した横揺れ周期、平均横傾斜角及び有意横揺れ角に基づいて船舶の横揺れ周期、平均横傾斜角及び有意横揺れ角の各項目に対する正常、注意及び危険状態を決定して表示する、横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、船舶は、他の種類の移動手段と同様にスマート化が深く進んでいる実情である。特に船舶の生活は、他の運送機関に比べて人が勤務すべき時間が相対的に長く、また専門性がかなり要求される分野であるので、人手が相対的に少なく要求される自律運航船舶や無人船舶などのスマート船舶への変化がとても速く進んでいる実情である。
【0003】
韓国特許第10-1880815号公報(以下、「従来技術」という)には、船舶傾き検知センサー及び距離検知センサーを含む各種センサーを搭載し、センシング値に対する平均値を算出して装置の誤作動による警報の誤作動を防止し、航海者が対応できない緊急な状況で速やかな自動対処を可能とする、船舶安全航海モニタリング及び自動回避サービス提供システムが開示されている。
【0004】
しかし、従来技術は、傾き平均値に基づいて予め設定された基準値と比較して傾きの程度を分析し、比較分析された結果が所定の閾値を超える場合、船舶内に搭載された警報通知部で通知信号を発生する方式であるので、アラーム信号を発生するための具体的な基準とアラーム信号に対する詳細構成が提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許第10-1880815号公報(発明の名称:船舶安全航海モニタリング及び自動回避サービス提供システム)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的は、電子傾斜計から取得された船舶の横揺れ運動データに基づいて船舶の安全状態を表示するアラーム信号を発生するための基準及び構成を具体的に提示することができる、横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムは、電子傾斜計で表出される時間に応じた横揺れ角データをFFT(Fast Fourier Transform)分析して横揺れ周期データを算出するように構成された横揺れ周期算出部と、前記横揺れ角データをFFT分析して平均横傾斜角データを算出するように構成された平均横傾斜角算出部と、前記横揺れ角データをFFT分析して有意横揺れ角データを算出するように構成された有意横揺れ角算出部と、算出された前記横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データの入力を受け、前記横揺れ周期データを最大固有横揺れ周期及び最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%と比較分析して横揺れ周期の正常、注意又は危険状態を決定し、前記平均横傾斜角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均横傾斜角の正常、注意又は危険状態を決定し、前記有意横揺れ角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均有意横揺れ角の正常、注意又は危険状態を決定し、決定された各状態に相応する表示制御信号を出力するように構成された制御部と、前記制御部から表示制御信号の入力を受けて表示するように構成された表示部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムにおいて、前記等級基準は、船舶の限界傾斜角と10[deg]の中から小さい方が選択できる。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の他の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリング方法は、制御部が横揺れ周期算出部、平均横傾斜角算出部及び有意横揺れ角算出部から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信するステップと、前記制御部が、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定するステップと、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期正常状態を表示するステップと、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きく最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を注意状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期注意状態を表示するステップと、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、前記制御部が横揺れ周期を危険状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期危険状態を表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記他の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリング方法は、前記受信ステップの後、前記制御部が、前記平均横傾斜角データが等級基準の50%以下であるか否かを決定するステップと、前記平均横傾斜角データが等級基準の50%以下である場合、前記制御部が平均横傾斜角を正常状態と決定し、前記表示部を介して横傾斜角正常状態を表示するステップと、前記平均横傾斜角データが等級基準の50%より大きく等級基準以下である場合、前記制御部が平均横傾斜角を注意状態と決定し、前記表示部を介して平均横傾斜角注意状態を表示するステップと、前記平均横傾斜角データが等級基準より大きい場合、前記制御部が平均横傾斜角を危険状態と決定し、前記表示部を介して平均横傾斜角危険状態を表示するステップと、をさらに含むことができる。
【0011】
前記他の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリング方法は、前記受信ステップの後、前記制御部が、前記有意横揺れデータが等級基準の50%以下であるか否かを決定するステップと、前記有意横揺れ角データが等級基準の50%以下である場合、前記制御部が有意横揺れ角を正常状態と決定し、表示部を介して有意横揺れ角正常状態を表示するステップと、前記有意横揺れ角データが等級基準の50%より大きく等級基準以下である場合、前記制御部が有意横揺れ角を注意状態と決定し、前記表示部を介して有意横揺れ角注意状態を表示するステップと、前記有意横揺れ角データが等級基準より大きい場合、前記制御部が有意横揺れ角を危険状態と決定し、前記表示部を介して有意横揺れ角危険状態を表示するステップと、をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法によれば、横揺れ周期算出部、平均横傾斜角算出部及び有意横揺れ角算出部から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合、横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期正常状態を表示し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きく最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を注意状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期注意状態を表示し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、横揺れ周期を危険状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期危険状態を表示するように構成されることにより、電子傾斜計から取得された船舶の横揺れ運動データに基づいて船舶の安全状態を表示するアラーム信号を発生するための基準及び構成を具体的に提示することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムのブロック構成図である。
図2】本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリング方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を説明するにあたり、本発明による公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にするおそれのあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であり、これは、ユーザ、運用者の意図又は慣例などによって変わり得る。このため、その定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて下されるべきである。詳細な説明で使用される用語は、本発明の実施形態を記述するためのものに過ぎず、決して制限的に解釈されてはならない。特に明記しない限り、単数形の表現は複数形の意味を含む。本説明において、「含む」又は「具備」などの表現は、ある特性、数字、ステップ、動作、要素、これらの一部又は組み合わせを指すためのものであり、記述されたもの以外に1つ又はそれ以上の他の特性、数字、ステップ、動作、要素、これらの一部又は組み合わせの存在又は可能性を排除すると解釈されてはならない。
【0015】
図面に示されている各システムにおいて、いくつかの場合における要素は、それぞれ同じ参照番号又は異なる参照番号を有し、表現された要素が異なる又は類似する可能性があることを示唆することができる。しかし、要素は、異なる実現を有し、本明細書に示された或いは記述されたシステムのうちの幾つか又は全部と作動することができる。図面に示されている様々な要素は、同じでも異なってもよい。どれが第1の要素と呼ばれるか、及びどれが第2の要素と呼ばれるかは任意である。
【0016】
本明細書において、ある一つの構成要素が他の構成要素へデータ又は信号を「伝送」、「伝達」又は「提供」するというのは、ある一つの構成要素が他の構成要素へ直接データ又は信号を伝送するのはもとより、少なくとも一つの別の構成要素を介してデータ又は信号を他の構成要素へ伝送することを含む。
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムのブロック構成図である。
【0019】
本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムは、船舶に装着され、電子傾斜計100から計測されたデータの入力を受けて実行されるように構成され、横揺れ周期算出部200、平均横傾斜角算出部210、有意横揺れ角算出部220、制御部300及び表示部400がオンボードの形態になっている。
【0020】
横揺れ周期算出部200は、電子傾斜計100で表出される時間に応じた横揺れ角データをFFT(Fast Fourier Transform)分析して横揺れ周期データを算出する役割を果たす。横揺れ周期(Rolling Period)は、船舶が一方の舷に最大傾斜した状態から反対の舷に傾いてから元の位置に戻るまでにかかった時間をいう。すなわち、右舷横揺れ角から左舷横揺れ角を経て再び右舷横揺れ角に戻るまでの時間を意味し、単位は[sec]である。
【0021】
平均横傾斜角算出部210は、電子傾斜計100で表出される時間に応じた横揺れ角データをFFT分析して平均横傾斜角データを算出する役割を果たす。横傾斜角は、静水(Still Water)の中で船舶が横方向に傾いて平行状態に留まっている状態での角度をいう。船舶が損傷及び沈水した場合、一方の舷に傾く可能性があることが分かる指標である。小型漁船などが漁具を船舶に積載する過程で積載量が片寄る現象により、停泊あるいは運航中にも直立していないまま傾いた状態で停泊又は運航することを目撃することができるが、これは、横傾斜角が直立状態ではないことを示すものである。特に、平均横傾斜角(Average List Angle)は、海上で船舶の横傾斜角を直観的に算出することは容易ではないので、船舶の安全のために船舶の直立状態を定量的に観測するために電子傾斜計100を活用して左・右舷に対する横揺れ角の平均値から、船舶が直立状態であるか否かを確認することに使用可能な主要安全要素である。平均横傾斜角は、FFT分析ごとに左・右舷横揺れ角の平均値を算出し、全体回数(n)を平均してこれを表出したものである。
【0022】
有意横揺れ角算出部220は、電子傾斜計100で表出される時間に応じた横揺れ角データをFFT分析して有意横揺れ角データを算出する役割を果たす。横揺れ角(Rolling Angle)は、船舶の横揺れによって船舶が傾く最大角度をいうもので、横傾斜角が静的な角度を指すが、横揺れ角は、船舶の横揺れによる動的な角度であって、船舶の損傷及び沈水と関係なく、海上と運航状態に応じて独立して発生しうる要素である。電子傾斜計100における左舷の横揺れ角は負数(-)で表し、右舷の横揺れ角は正数(+)で表す。船舶の横揺れ角(左舷と右舷それぞれ)の上位3分の1の平均値を有意横揺れ角と定義する。これにより、横揺れによる傾斜角の有意値が分かる主要指標として使用可能である。有意横揺れ角を算出するために、固有の横揺れ周期を算出するときに算出されるように、FFT分析ごとに左・右舷それぞれの最大横揺れ角を導出し、有意値を算出するようにした。有意値なので、3分の1のデータの平均値を算出し、算出した有意横揺れ角を全回数(n)で平均した。
【0023】
制御部300は、全体構成要素を制御するマイクロコンピュータであって、横揺れ周期算出部200、平均横傾斜角算出部210及び有意横揺れ角算出部220で算出された横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データの入力を受けて比較分析することで横揺れ周期、平均横傾斜角及び有意横揺れ角の正常、注意又は危険状態を決定し、決定された各状態に相応する表示制御信号を表示部400に出力して表示(ディスプレイ)する役割を果たす。制御部300は、入力された横揺れ周期データを最大固有横揺れ周期及び最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%と比較分析して横揺れ周期の正常、注意又は危険状態を決定する。制御部300は、平均横傾斜角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均横傾斜角の正常、注意又は危険状態を決定する。制御部300は、有意横揺れ角データを等級基準の50%及び等級基準と比較分析して平均有意横揺れ角の正常、注意又は危険状態を決定する。等級基準は、船舶の限界傾斜角と10[deg]の中から小さい方が選択できる。
【0024】
平均横傾斜角と有意横揺れ角は、等級区分のために同一等級基準を適用している。一方、注意等級では、等級基準の50%を適用する他に、長年の経験による乗組員の経験値の入力を手動で受けて適用することもできる。
【0025】
次に、下記表1と表2に基づいて各要素別の特徴を調べる。
【0026】
横揺れ周期を考察すると、各船舶の固有横揺れ周期範囲の上端を基準としてその値の40%を基準に「注意」と「危険」を明確に区分していることが分かる。特に、H船舶とI船舶は、車渡船であって、船舶の表面が平らで実習船又は旅客船に比べて海上環境の変化に遥かに敏感でないことを勘案する場合、このような船舶の横揺れ周期が7秒を超えるというのは、海上環境が非常に安定的でないことを端的に表現していることが分かる。同じ観点から、平均横傾斜角と有意横揺れ角の場合にも、これらの車渡船が他の船舶に比べてその傾斜角の変化が少しだけ大きくても、これは船舶が非常に危険な状態であることが分かる。すなわち、G船舶の場合は5度程度の傾斜角が発生しても正常範囲に含まれるのに対し、I船舶の場合は5度の傾斜角が発生しても当該船舶が非常に危険な状況であることをよく表現していることを示すことが分かる。もちろん、実習船と旅客船はほとんど、限界傾斜角の範囲が10度を超えても安全性を確保しているので、10度の基準を適用してこのような危険性に普遍性を十分に確保することに問題がないことが分かる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表示部400は、制御部300から表示制御信号の入力を受けて船舶の横揺れ周期、平均横傾斜角及び有意横揺れ角に対する正常、注意又は危険状態を表示する役割を果たす。表示部400は、PDP、LCD、LED、OLEDなどの出力装置が使用できる。
【0030】
上述のように構成された本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステムを用いた船舶の安全状態モニタリング方法について説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリング方法を説明するためのフローチャートであって、ここで、Sはステップ(step)を意味する。
【0032】
まず、制御部300が横揺れ周期算出部200、平均横傾斜角算出部210及び有意横揺れ角算出部220から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信する(S100)。
【0033】
次に、制御部300は、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定する(S200)。
【0034】
前記ステップS200で横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合(Y)、制御部300が横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部400を介して横揺れ周期正常状態を表示する(S230)。
【0035】
前記ステップS200で横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きい場合(N)、制御部300は、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下であるか否かを決定する(S210)。
【0036】
前記ステップS210で横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合(Y)、制御部300が横揺れ周期を注意状態と決定し、表示部400を介して横揺れ周期注意状態を表示する(S240)。
【0037】
前記ステップS210で横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、制御部300が横揺れ周期を危険状態と決定し、表示部400を介して横揺れ周期危険状態を表示する(S220)。
【0038】
一方、前記ステップS100の後、制御部300は、平均横傾斜角データが等級基準の50%以下であるか否かを決定する(S300)。
【0039】
前記ステップS300で平均横傾斜角データが等級基準の50%以下である場合、制御部300が平均横傾斜角を正常状態と決定し、表示部400を介して横傾斜角正常状態を表示する(S330)。
【0040】
前記ステップS300で平均横傾斜角データが等級基準の50%より大きい場合(N)、制御部300は、平均横傾斜角データが等級基準以下であるか否かを決定する(S310)。
【0041】
前記ステップS310で平均横傾斜角データが等級基準以下である場合(Y)、制御部300が平均横傾斜角を注意状態と決定し、表示部400を介して平均横傾斜角注意状態を表示する(S340)。
【0042】
一方、ステップS310で平均横傾斜角データが等級基準より大きい場合(N)、制御部300が平均横傾斜角を危険状態と決定し、表示部400を介して平均横傾斜角危険状態を表示する(S320)。
【0043】
一方、前記ステップS100の後、制御部300は、有意横揺れ角データが等級基準の50%以下であるか否かを決定する(S400)。
【0044】
前記ステップS400で有意横揺れ角データが等級基準の50%以下である場合(Y)、制御部300が有意横揺れ角を正常状態と決定し、表示部400を介して有意横揺れ角正常状態を表示する(S430)。
【0045】
前記ステップS400で有意横揺れ角データが等級基準の50%より大きい場合(N)、制御部300は、有意横揺れ角データが等級基準以下であるか否かを決定する(S410)。
【0046】
前記ステップS410で有意横揺れ角データが等級基準以下であれば(Y)、制御部300が有意横揺れ角を注意状態と決定し、表示部400を介して有意横揺れ注意状態を表示する(S440)。
【0047】
前記ステップS410で有意横揺れ角データが等級基準より大きい場合(N)、制御部300が有意横揺れ角を危険状態と決定し、表示部400を介して有意横揺れ角危険状態を表示する(S420)。
【0048】
本発明の実施形態による横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法によれば、横揺れ周期算出部、平均横傾斜角算出部及び有意横揺れ角算出部から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合、横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期正常状態を表示し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きく最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合、前記制御部が横揺れ周期を注意状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期注意状態を表示し、前記横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、横揺れ周期を危険状態と決定し、前記表示部を介して横揺れ周期危険状態を表示するように構成されることにより、電子傾斜計から取得された船舶の横揺れ運動データに基づいて船舶の安全状態を表示するアラーム信号を発生するための基準及び構成を具体的に提示することができる。
【0049】
図面及び明細書には最適な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されたが、これは、本発明の実施形態を説明するための目的で使用されたものであり、意味を限定するか、或いは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使用されたものではない。したがって、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解することができるであろう。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0050】
100 電子傾斜計
200 横揺れ周期算出部
210 平均横傾斜角算出部
220 有意横揺れ角算出部
300 制御部
400 表示部
【要約】
【課題】横揺れ運動データを活用した船舶の安全状態モニタリングシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、横揺れ周期算出部、平均横傾斜角算出部及び有意横揺れ角算出部から横揺れ周期データ、平均横傾斜角データ及び有意横揺れ角データを受信し、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下であるか否かを決定し、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期以下である場合、横揺れ周期を正常状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期正常状態を表示し、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期より大きく最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%以下である場合、制御部が横揺れ周期を注意状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期注意状態を表示し、横揺れ周期データが最大固有横揺れ周期+最大固有横揺れ周期の40%より大きい場合、横揺れ周期を危険状態と決定し、表示部を介して横揺れ周期危険状態を表示するように構成される。
【選択図】図1
図1
図2