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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】靴ベラ
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/82 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A47G25/82
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024030293
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524078723
【氏名又は名称】古田 花織
(74)【代理人】
【識別番号】100180367
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 康典
(72)【発明者】
【氏名】古田 花織
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2586764(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3213651(JP,U)
【文献】特開2010-142486(JP,A)
【文献】実開昭54-98346(JP,U)
【文献】実公昭48-36038(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢不自由者が使用する靴ベラであって、
前方に靴をはめ込み把持する靴はめ込み部を有する前方土台部と、前記前方土台部の後方に延伸した後方土台とを有する土台下部と、前記土台下部の上方に設けたストッパ部と、前記ストッパ部の上部前面に位置する二関節取付部と、前記ストッパ部の前面に前記ストッパ部の頂部より低い位置に位置する前部ストッパ部と、を有する土台と、
第一アーム、第二アーム、第三アーム、第一関節、および第二関節を有する二関節と、
前記第一アームの上面に取り付けられ、裏面が前記ストッパ部の頂部に位置する頂部ストッパ部に接することにより後方に回転しないように制限される、伸長方向に直角方向の断面が略U字状のヘラと、
前記ストッパ部の側面に取り付けられ上方に伸長する取っ手棒と、を備え、
前記第一アームの一端には、前記第一関節を回転軸として前記第二アームの一端が回転可能に取り付けられ、前記第二アームの他端は、前記第二関節を回転軸として前記第三アームの一端に回転可能に取り付けられ、前記第一関節と前記第二関節は連動して前記ヘラを床面に対して水平から垂直に移動可能であることを特徴とする靴ベラ。
【請求項2】
前記ヘラの略中央より前方に位置するヘラ前方部は、前記ヘラ前方部の後方に延伸するヘラ後方部より幅が狭いことを特徴とする請求項1に記載の靴ベラ。
【請求項3】
前記ヘラ前方部の先端の部分には、前記ヘラの伸長面から裏面方向に傾斜した、踵入れ部を有することを特徴とする請求項2に記載の靴ベラ。
【請求項4】
前記取っ手棒の上部に位置するグリップと、前記グリップの下端部と上端部とのそれぞれに両端のそれぞれが取り付けた帯状の取っ手紐と、前記取っ手棒の上端部に取り付けた取っ手ループと、を有することを特徴とする請求項3に記載の靴ベラ。
【請求項5】
前記前方土台部の内側に弾性体を有することを特徴とする請求項4に記載の靴ベラ。
【請求項6】
前記ヘラが前記ストッパ部の背面に前記ヘラの裏面が接して直立することが可能なことを特徴とする請求項5に記載の靴ベラ。
【請求項7】
前記取っ手棒の上部に位置するグリップと、前記グリップの下端部と上端部とのそれぞれに両端のそれぞれが取り付けた帯状の取っ手紐と、前記取っ手棒の上端部に取り付けた取っ手ループと、を有することを特徴とする請求項1に記載の靴ベラ。
【請求項8】
前記前方土台部の内側に弾性体を有することを特徴とする請求項7に記載の靴ベラ。
【請求項9】
前記ヘラが前記ストッパ部の背面に前記ヘラの裏面が接して直立することが可能なことを特徴とする請求項8に記載の靴ベラ。
【請求項10】
前記前方土台部の内側に弾性体を有することを特徴とする請求項1に記載の靴ベラ。
【請求項11】
前記ヘラが前記ストッパ部の背面に前記ヘラの裏面が接して直立することが可能なことを特徴とする請求項10に記載の靴ベラ。
【請求項12】
前記ヘラが前記ストッパ部の背面に前記ヘラの裏面が接して直立することが可能なことを特徴とする請求項1に記載の靴ベラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つま先を自力で靴の履き口に入れることが困難な人でも、容易に靴を履くことができる靴ベラに関する。
【背景技術】
【0002】
靴を履く動作としては、先ず、つま先を靴の履き口に入れる必要がある。しかしながら、つま先を靴の履き口に入れたとしても、足の踵を靴の履き口に入れることは、必ずしも容易ではない。そのため、靴の履き口に足の踵を容易に入れるために靴ベラが利用されている。
【0003】
また、手足等身体的に不具合がある人でも簡単に靴が履くことができるよう、特許文献1には、玄関上がり框に一対の靴ベラ取り付けた靴ベラが開示されている。
【0004】
一方、立ったまま靴を履くときには、身体を支えるものがないため、ふらつくことがある。これに対し、例えば、特許文献2には、靴の踵と靴のベロを2つのヘラでガイドし履き口を広げる機能を有する靴ベラおよびこれを備えた杖が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3082924号公報
【文献】特開2019-115644号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】イスブ 2019年10月20日 「靴の履き方『頸髄損傷』」 https://www.youtube.com/watchi?v=3MGUX3ZUUtk
【文献】三井 和哉 2022年11月25日 「『靴を履く』手が不自由でも自力で靴を履く方法(脊髄損傷 事故)」 https://www.youtube.com/watchi?v=93DalYobXcc
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、下肢が不自由な人(以下、「下肢不自由者」とも言う。)、例えば、脊髄損傷者が車椅子に座っている状態で靴を履く様子が非特許文献1および非特許文献2に開示されている。次に、車いすに座った状態で脊髄損傷者が左足に靴を履く手順を図21~23に示す。
【0008】
脊髄損傷者が靴を履くには、先ず、履く靴を手が届く範囲に置く。次に、一方の足を手に引っ掛け股関節を外旋、屈曲、外転し、膝関節を屈曲させることで他方の膝の上に足を持ち上げる(図21)。そして、手に引っ掛けた靴の履き口に足のつま先を入れ、靴の底を手で押し、足の踵を靴の履き口に入れる(図22)。さらに、足の踵で押されて履き口に入り込んでしまった靴の踵を出すために、S字フックを靴の踵にあるループに引っ掛け、靴の踵を引き出す(図23)。
【0009】
このように、下肢が不自由な人が靴を履くことは、非常に煩雑な作業を必要とする。例えば、特許文献1に開示された靴ベラであっても、下肢が不自由な人にとっては、つま先を靴の履き口に差し入れることが難しい。また、特許文献2に開示された靴の踵と靴のベロを2つのヘラでガイドし履き口を広げる機能を有する靴ベラおよびこれを備えた杖であっても、踵を靴の中に入れることはできるものの、つま先を靴の中に入れることは自力で行う必要がある。
【0010】
したがって、下肢が不自由な人、例えば、脊髄損傷者には、先ず、つま先を靴の履き口に差し入れ、その後、踵を靴の中に入れることの動作を補助し、容易に靴を履くことができる靴ベラを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る靴ベラは、下肢不自由者が使用する靴ベラであって、
前方に靴をはめ込み把持する靴はめ込み部を有する前方土台部と前方土台部の後方に延伸した後方土台とを有する土台下部と、土台下部の上方に設けたストッパ部と、ストッパ部の上部前面に位置する二関節取付部と、ストッパ部の前面にストッパ部の頂部より低い位置に位置する前部ストッパ部と、を有する土台と、
第一アーム、第二アーム、第三アーム、第一関節、および第二関節を有する二関節と、
第一アームの上面に取り付けられ、裏面がストッパ部の頂部に位置する頂部ストッパ部に接することにより後方に回転しないように制限される、伸長方向に直角方向の断面が略U字状のヘラと、
ストッパ部の側面に取り付けられ上方に伸長する取っ手棒と、を備え、
第一アームの一端には、第一関節を回転軸として第二アームの一端が回転可能に取り付けられ、第二アームの他端は、第二関節を回転軸として第三アームの一端に回転可能に取り付けられ、第一関節と第二関節は連動してヘラを床面に対して水平から垂直に移動可能であることを特徴とする靴ベラである。
【0012】
本発明に係る靴ベラであれば、下肢が不自由な人、例えば、脊髄損傷者であっても、先ず、つま先を靴の履き口に差し入れ、その後、踵を靴の中に入れることの動作を補助し、容易に靴を履くことができる。
【0013】
本発明に係る靴ベラのヘラの略中央より前方に位置するヘラ前方部は、前部の後方に延伸するヘラ後方部より幅が狭いことを特徴とする靴ベラである。
【0014】
本発明に係る靴ベラであれば、ヘラを靴の履き口に容易に差し込むことができる。
【0015】
本発明に係る靴ベラのヘラ前方部の先端の部分は、ヘラの伸長面から裏面方向に傾斜した踵入れ部を有することを特徴とする靴ベラである。
【0016】
本発明に係る靴ベラであれば、踵を靴の中に入れた(靴が履けた)際に、ヘラの後部へラが脹脛に沿い、靴ベラが邪魔にならない。
【0017】
本発明に係る靴ベラは、取っ手棒の上部に位置するグリップと、前記グリップの下端部と上端部とのそれぞれに両端のそれぞれが取り付けた帯状の取っ手紐と、前記取っ手棒の上端部に取り付けた取っ手ループと、を有することを特徴とする靴ベラである。
【0018】
本発明に係る靴ベラであれば、取っ手紐を有すると、取っ手棒を把持して容易に靴ベラを前後左右に移動することができ、取っ手ループを有すると取っ手棒の上端を把持して容易に靴ベラを上下に移動することができる。
【0019】
本発明に係る靴ベラは、前方土台部の内側に弾性体を有することを特徴とする靴ベラである。
【0020】
本発明に係る靴ベラであれば、靴を確実に把持することができる。
【0021】
本発明に係る靴ベラは、ヘラがストッパ部背面にヘラの裏面が接して直立することが可能なことを特徴とする靴ベラである。
【0022】
本発明に係る靴ベラであれば、本発明に係る靴ベラを使用して、靴を脱ぐ際にも利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る靴ベラであれば、下肢が不自由な人、例えば、脊髄損傷者であっても、先ず、つま先を靴の履き口に差し入れ、その後、踵を靴の中に入れることの動作を補助し、容易に靴を履くことができる靴ベラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の、取っ手棒6が右側に配置された一例を示す模式斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態の係る靴ベラ1の、取っ手棒6が左側に配置された一例を示す模式斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の土台2を右上方から見た斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1を、土台2と、二関節5と、ヘラ4との関係を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の土台2の底面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の背面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4の平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4の右側面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の二関節5を平面状に伸長させた状態の背面図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の二関節5の右側面図である。
図11図11、は本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4を水平状態とした、取っ手棒6を省略した靴ベラ1の斜視図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4を前部ストッパに接するように傾けた、取っ手棒6を省略した靴ベラ1の斜視図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4を垂直になるように傾けた状態の取っ手棒6を省略した靴ベラ1の斜視図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4が、ストッパ部背面に直立した状態の靴ベラ1を示す斜視図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の取っ手棒6の上部の斜視図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の取っ手ループ64に内蔵されるループ状体64aの斜視図である。
図17図17は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1の使用状態の第1のステップを示す模式図である。
図18図18は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1の使用状態の第2のステップを示す模式図である。
図19図19は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1の使用状態の第3のステップを示す模式図である。
図20図20は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1の使用状態の第4のステップを示す模式図である。
図21図21は、車いすに座った状態の脊髄損傷者が靴を履く際に、足を他方の膝の上に持ち上げた状態を示す模式図である。
図22図22は、車いすに座った状態の脊髄損傷者が靴を履く際に、靴の底を手で押し、足の踵を靴に入れた状態を示す模式図である。
図23図23は、車いすに座った状態の脊髄損傷者が靴を履く際に、S字フックを用いて、靴の踵にあるループに引っ掛け、靴の踵を引き出している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0025】
先ず、本発明に係る靴ベラ1の実施形態について、図1および図2を用いて説明する。
【0026】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の模式斜視図であり、図1は、取っ手棒6が右側に配置された形態、図2は、取っ手棒6が左側に配置された形態、を示す斜視図である。
【0027】
本発明の実施形態に係る靴ベラ1は、下肢不自由な人(下肢不自由者)が使用する靴ベラ1であって、土台2と、靴7を履く際に足8を載せ、つま先を靴7の履き口に滑り込ませるヘラ4と、土台2にヘラ4を稼働可能に取り付ける二関節5と、および靴ベラ1を移動し所定の位置に配置するための取っ手棒6と、を備える。
【0028】
先ず、本発明に係る靴ベラ1の土台2について、説明する。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の土台2の右上方から見た斜視図であり、図4は、土台2と、二関節5と、ヘラ4との関係を示す斜視図である。また、図5は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の土台2の底面図である。
【0030】
本発明に係る靴ベラ1の土台2は、床面に接する土台下部21と、土台下部21の上方に配置されたストッパ部22と、を有する。土台2は、靴ベラ1を自立させるとともに、本発明に係る靴ベラ1を使用して靴7を履く際に、履く靴7を把持する。
【0031】
土台2は、靴ベラ1を自立させた際に、転倒しない程度の重量と広さを有する床に対して水平な底面を有すると好ましい。また、土台2は、例えば、金属、木材、樹脂等であればよい。
【0032】
土台下部21は、前方土台部211、後方土台部26、靴はめ込み部23、弾性体取付部24、底穴25、を有しており、ストッパ部22は、頂部ストッパ部221、前部ストッパ、二関節取付部223、取っ手棒取付部224、を有する(図3)。
【0033】
土台下部21は、土台下部21の前方に、本発明に係る靴ベラ1を用いて靴7を履く時に、靴ベラ1が前方に倒れないようにするための前方土台部211を有する。前方土台部211は、靴7を履く時に内側に靴7を挟み込み、所定の位置に靴7を配置するため、右前方土台部211aと左前方土台部211bとからなる靴はめ込み部23を有する。右前方土台部211aと左前方土台部211bとの接合部、靴はめ込み部23の最奥部は、V字状であると、靴を靴はめ込み部23にはめ込んだ際に、靴が確実に中心に位置するので好ましい。
【0034】
右前方土台部211aと左前方土台部211bとのそれぞれが前方方向に伸張する長さは、4~12cmである。靴7を確実に把持し、本発明に係る靴ベラ1を用いて靴7を移動する場合には、8~12cmの長さを有すると好ましい。一方、靴ベラ1を用いて靴7を移動する必要がないのであれば、右前方土台部211aと左前方土台部211bとのそれぞれが11の前方方向への伸張する長さは、短くても良く、例えば、4~8cmであっても良い(図4)。
【0035】
一方、右前方土台部211aと左前方土台部211bとが離間する幅は、8~12cmである。幅が8cm未満であると、靴7を収めることが困難となり、12cmを超えると、靴7を確実に把持することが難しくなり、好ましくない。
【0036】
土台下部21は、土台下部21の後方に、靴ベラ1を用いて靴7を履く時に、靴ベラ1が後方に倒れないようにするための後方土台部26を有する。なお、後方土台部26は、靴ベラ1が安定して自立すればよく、左右方向の中央部が欠け、土台下部21の底面が略H型を呈していても良い。
【0037】
なお、脊髄損傷者は、下肢が不自由であるだけでなく、手を握る力も十分ではないこともあるので、靴ベラ1の重量が重いと持ち上げる際に大きな筋力を必要とするため、好ましくない。靴ベラ1を安定して自立させることが可能であれば、例えば、土台下部21に開口した底穴25を有すると、靴ベラ1の重量を軽くすることができて好ましい(図5)。また、土台2が中空の構造として、重量を軽くしても良い。
【0038】
また、右前方土台部211aと左前方土台部211bとのそれぞれの内側の先端付近の弾性体取付部24に一対の弾性体3を有すると、容易に靴7を把持することができて好ましい。弾性体3は靴7の把持が容易にできればよく、例えば、天然ゴム、合成ゴム、スポンジ、ばね等であっても良い。
【0039】
ストッパ部22は、頂部に床面に対して略水平な平面を有する頂部ストッパ部221と、前方に前部ストッパ部222と、前部ストッパ部222と頂部ストッパ部221の間に、二関節5を取り付けるための二関節取付部223と、側面に取っ手棒取付部224と、を有する。
【0040】
頂部ストッパ部221は、靴7を履く際に、足8を床に対して水平にヘラ4に載せるために、ヘラ4と床とが略水平に維持できれば良く、平面に限られず曲面であっても良い。
【0041】
前部ストッパ部222は、足8のつま先を靴7の履き口の中に入れるためにヘラ4を前方に傾斜させた際に、ヘラ4を一定の位置で止めるために用いられる。前部ストッパ部222は、ヘラ4を一定の位置で止めることができればよく、前部ストッパ部222の外表面は、前部ストッパ部222の前後方向の断面が平面又は凸状の曲面を呈する。
【0042】
二関節取付部223は、前部ストッパ部222と頂部ストッパ部221の間のストッパ部22の上部前面に位置し、頂部ストッパ部221と前部ストッパ部222の間に設けられたスリット状の切込みである。
【0043】
二関節取付部223には、二関節5の第三アーム55がはめ込められ、ネジで固定されている(図5)。なお、二関節5が土台2に固定することができればよく、ネジに限られず、例えば接着剤を用いて固定しても良い。また、二関節5のストッパ部22への固定は、確実に二関節5がストッパ部22に取り付けられれば良く、スリット状の切込みである二関節取付部223に限られず、ストッパ部22の前面や頂部ストッパ部221に二関節5が固定されても良い。
【0044】
取っ手棒取付部224は、ストッパ部22の側面に設けられている。取っ手棒取付部224には、靴7を履く際に、靴ベラ1を所定の位置に配置し、靴ベラ1の位置を維持するための取っ手棒6が取り付けられる。取っ手棒取付部224は、使用者の利き手に合わせてストッパ部22の左右どちらにもうけられても良く、右利きの場合にはストッパ部22の右側(図1)に、左利きの場合にはストッパ部22の左側(図2)に、設けられれば良い。
【0045】
なお、取っ手棒取付部224は、図1ではストッパ部22の右側面に、図2ではストッパ部22の左側面に配置されているので、図示されていない。
【0046】
また、取っ手棒取付部224は、靴7を履く際に、靴ベラ1を所定の位置に配置し、靴ベラ1の位置を維持することができればよく、土台下部21に設けられても良い。
【0047】
次に、本発明に係る靴ベラ1のヘラ4について、図7および図8を用いて説明する。
【0048】
図7は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1のヘラ4の平面図、図8は、右側面図である。
【0049】
本発明に係るヘラ4は、ヘラ前方部41、ヘラ後方部42、踵入れ部43、二関節止め部45、を有する。
【0050】
ヘラ4は、上面が開口した伸長方向に直角方向(左右方向)の断面が略U字状を呈する、伸長(前後)方向の長さが23~30cmの板状体である。伸長方向の長さが23cm未満であると、足8を安定して置くことができない。一方、伸長方向の長さが30cmを超えると、靴ベラ1を用いて靴7を履き終わり、ヘラ4が直立状態になった際に、ヘラ4の後部が膝裏や太ももに当たり、好ましくない。
【0051】
ヘラ4の後部には、靴ベラ1を用いて靴7を履く際に、足8を置くためのヘラ後方部42を有する。ヘラ後方部42は、5~8cmの幅を有し、5cm未満であると、足8を載せることが難しく、好ましくない。一方、ヘラ後方部42の幅が、8cmを超えると、足8を載せた際に足8の位置を容易に定めることができなくなり、好ましくない。
【0052】
ヘラ4は、ヘラ4の前部に3~5cmの幅を有するヘラ前方部41を有する。ヘラ4は、ヘラ前方部41の先端の部分にヘラ4の伸長面から裏面方向に8~25度傾斜した、踵入れ部43を有する。ヘラ前方部41の幅が、3cm未満であると、足8を安定して載せることが難しくなり、一方、5cmを超えると、ヘラ前方部41を靴7の中に入れることが難しくなり、好ましくない。また、踵入れ部43が、ヘラ4の伸長面から下方向に8~25度傾斜していると、足8が靴7に収まった際に、踵~アキレス腱~脹脛にヘラ4が沿い、好ましい。
【0053】
ヘラ4は、ヘラ4の略中央部に二関節5を裏面に固定する二関節止め部45を有する。二関節5は、二関節止め部45に、ネジ止めされている。なお、二関節5は、二関節止め部45に固定されればよく、ネジ止めに限られず、例えば、接着剤で固定されても良い。
【0054】
ヘラ4は、足8を載せ、上から押さえられても変形しない強度を有すれば良く、例えば、樹脂、金属、又は木材であっても良い。また、ヘラ4の上面は、上面上を足8を滑らせて靴7の履き口に滑り込ませるので、円滑であると好ましい。例えば、ヘラ4の上面に塗料を塗布して、円滑にしても良い。
【0055】
次に、二関節5について、図9および図10を用いて説明する。
【0056】
図9は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の二関節5を平面状に伸長させた状態の背面図であり、図10は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の二関節5の右側面図である。
【0057】
二関節5は、第一アーム53と、第二アーム54と、第三アーム55と、第一関節51と、第二関節52と、および土台取付部56と、を有する。
【0058】
第一アーム53、第二アーム54、および第三アーム55のそれぞれは、板状体で、足8をヘラ4に載せ、靴7を履く際に、足8に押さえつけられても耐えられる強度の素材からなる。第一アーム53は、ヘラ4の二関節止め部45に固定されている。第一アーム53の一端には、第一関節51を回転軸として第二アーム54の一端が回転可能に取り付けられ、第二アーム54の他端は、第二関節52を回転軸として第三アーム55の一端に回転可能に取り付けられている。第三アーム55の裏面に位置する土台取付部56は、土台2の二関節取付部223に固定されている。
【0059】
第二関節52は、ヘラ4を水平にした際に、ヘラ4の自重でヘラ4が前方に傾くと、足8を載置することに支障が生じるので、ヘラ4の自重でヘラ4が前方に傾かないように、第二関節52が回転しない摩擦力を有する必要がある。一方、第一関節51は、第二関節52よりも少ない力で回転可能であると、踵を靴7の履き口に入れる際に小さな重力方向の力でヘラ4を傾けることができ、踵を履き口に入れることが容易となり、好ましい。
【0060】
次に、ヘラ4の動きについて、図11~14を用いて説明する。
【0061】
図11は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4が水平状態の、図12は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4を前部ストッパに接するように傾けた状態の、図13は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1のヘラ4を垂直になるように傾けた状態の、斜視図である。また、図14は、靴ベラ1のヘラ4が、ストッパ部背面に直立した状態を示す斜視図である。なお、図11図14のそれぞれの図では、ヘラ4の動きが容易に理解できるよう、取っ手棒6の図示を省略している。
【0062】
靴ベラ1のヘラ4が水平状態である場合には、第三アーム55と第二アーム54は略直角の位置にあり、第一アーム53は第二アーム54の上に折りたたまれた状態となる。また、ヘラ後方部42が頂部ストッパ部221に接し、ヘラ後方部42が下方に下がることを制限している(図11)。
【0063】
次に、ヘラ4のヘラ前方部41が下方に押し下げられると、第二アーム54が前部ストッパ部222に突き当たり、それ以上ヘラ4が下方に下がることを制限する(図12)。さらにヘラ前方部41を押し下げると、第二関節52が開き、ヘラ4が直立する(図13)。
【0064】
なお、ヘラ4が直立した際に、ヘラ4の先端から床面までの高さが2~4cm、より好ましくは2.5cm~3.5cm、の位置になるように、ヘラ4がストッパ部22に取り付けられていると、好ましい。ヘラ4の先端が床面から2cm未満であると、靴7のインナーソウル面に当たってしまい、好ましくない。一方、ヘラ4の先端が床面から4cmを超えると、ヘラ4の踵入れ部43が靴7の踵の中に十分に入らず、足8の踵を靴7の中に滑り込ませることが困難となり、好ましくない。
【0065】
また、ヘラ4の先端から床面までの高さを調整可能に、ヘラ4がストッパ部22に取り付けられると、靴7の踵の厚さに応じてヘラ4の先端から床面までの高さを調整することができ、より好ましい。
【0066】
一方、ヘラ4を水平にした際のヘラ4の床面からの高さは、10~15cmであると、好ましい。ヘラ4の床面からの高さは、ヘラ4を水平にして足8を置く際に、ヘラ4の位置が低い方が、足8を持ち上げる労力が少なくて好ましいが、10cm未満であると、靴7の踵より低くなってしまい、ヘラ4を靴7の履き口に入れることができない。また、ヘラ4の床面からの高さが15cm以上であると、足8を持ち上げるために多大な労力を要し、好ましくない。
【0067】
また、ヘラ4が、ストッパ部22の背面のストッパ部背面に沿って直立することが可能にストッパ部22に取り付けられていると、ヘラ4をストッパ部22の背面に沿って直立させ、靴7を脱ぐ際に靴ベラ1を用いて靴7を抑えて足8を引き抜くことも可能である(図14)。ヘラ4をストッパ部22の背面に沿って直立させるには、例えば、第二関節52をストッパ部22の前面の上端に配置すれば良い。
【0068】
次に、取っ手棒6について、図15および図16を用いて説明する。
【0069】
図15は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の取っ手棒6の上部の斜視図であり、図16は、本発明の実施形態に係る靴ベラ1の取っ手ループ64に内蔵されるループ状体64aの斜視図である。
【0070】
取っ手棒6は、取っ手棒本体61と、グリップ62と、取っ手紐63と、取っ手ループ64と、およびループ状体64aと、からなる。
【0071】
取っ手棒本体61は、約70~100cmの棒状体で、下端が土台2の取っ手棒取付部224に取り付けられている。取っ手棒本体61の下端部が、屈曲していると、取っ手棒本体61がヘラ4と干渉することを防げ、好ましい。また、取っ手棒6は、垂直方向に伸長しても良いが、0~10度前方に傾斜して伸長すると、靴ベラ1の使用者が容易に取っ手棒6を把持することができ、好ましい。
【0072】
取っ手棒6は、靴ベラ1の使用者が、取っ手棒6を把持して靴ベラ1を移動するため、軽量であると好ましい。一方、取っ手棒本体61は、取っ手棒6を把持して靴ベラ1を移動することに耐えられる強度を有している必要があり、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、木材、又は樹脂であっても良い。また、十分な強度が得られるのであれば、中空の筒状体であると、中実体よりも軽量となり、好ましい。
【0073】
取っ手棒本体61には、取っ手棒本体61の上端から約三分の一の位置まで、靴ベラ1の使用者が手で把持するグリップ62が設けられている。グリップ62は、使用者が把持した際に滑らない素材であると好ましく、例えば、ウレタン、樹脂、ゴム等であればよい。
【0074】
取っ手紐63は、天然又は合成の布地からなる帯状の紐である。取っ手紐63は、取っ手紐63の上端がグリップ62の上端部に、取っ手紐63の下端がグリップ62の略中央部より下の位置乃至下端に取り付けられている。取っ手紐63があると、靴ベラ1の使用者が手を取っ手紐63に引っ掛けるだけで、容易に靴ベラ1を前後左右に移動することが可能となる。また、取っ手紐63とグリップ62との間には、使用者がグリップ62を把持する際に、手を挿入しやすい程度のゆるみがあると、好ましい。
【0075】
取っ手棒6の上端には、帯状の紐からなるループ状の取っ手ループ64が取り付けられている。取っ手ループ64の中には、取っ手ループ64がループ状の形状を維持するためのループ状体64aが内蔵されている。ループ状体64aは、手を差し込み易くすることができるよう、取っ手ループ64がループ状を維持することができればよく、例えば、樹脂や金属の帯状体であれば良い。また、取っ手ループ64が、取っ手ループ64自体でループ状を維持することができるのであれば、ループ状体64aを内蔵していなくとも良い。
【0076】
次に、本発明の実施形態に係る靴ベラ1を用いて靴7を履く方法について、説明する。
【0077】
図17は、本発明に係る実施形態の靴ベラ1の使用状態の第1のステップを、図18は、第2のステップを、図19は、第3のステップを、図20は、第4のステップを、示す模式図である。なお、図17~20には、靴ベラ1を用いて右足に靴7を履く様子を例として図示している。
【0078】
本発明の実施形態に係る靴ベラ1を用いて靴7を履くには、先ず、ヘラ後方部42をストッパ部22の天面に接し、ヘラ4を床と水平になるようにする(図11)。次に、靴7の上方から靴はめ込み部23に靴7を押し込み、靴7を靴はめ込み部23にはめ込み、固定する。これらの事前準備を行って上で、足8をヘラ4の上に置く(図17)。そして、上肢で膝裏から前方方向に力を加え、前部ストッパ部222に第一関節51又は/および第二アーム54が当たるまで、第二関節52を下方に回転させる(図18)。そうすると、踵入れ部43の先端が靴7の履き口に挿入される。次に、膝上方を重力方向に向かって上肢で押し、足8がヘラ4の上面を滑りながらつま先を靴7の履き口に入れる(図19)。つま先を靴7の履き口に入れた上で、膝上方を重力方向に向かって上肢でさらに押す。そうすると、第一関節51が回転し、第一アーム53とヘラ4が第二アーム54から開き、ヘラ4が直立し、靴7の中に踵が押されて入る(図20)。
【0079】
その後、取っ手棒6のグリップ62を手で把持又は取っ手紐63若しくは取っ手ループ64に手を引っ掛け、靴ベラ1を上方に引き上げて、ヘラ4を靴7と足8の踵の隙間から抜く。そして、靴7を靴はめ込み部23から抜く。
【0080】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の靴ベラ1であれば、下肢が不自由な人、例えば、脊髄損傷者であっても、先ずつま先を靴7の履き口に差し入れ、その後、踵を靴7の中に入れることの動作を補助し、容易に靴7を履くことができる靴ベラ1を提供することができる。また、健常者にも、容易に靴7を履くことができる靴ベラ1としても利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1:靴ベラ
2:土台
21:土台下部
211:前方土台部
211a:右前方土台部
211b:左前方土台部
22:後方土台部
22a:右後方土台
22b:左後方土台
23:靴はめ込み部
24:弾性体取付部
241a:右弾性体取付部
241b:左弾性体取付部
25:底穴
22:ストッパ部
221:頂部ストッパ
222:前部ストッパ
223:二関節取付部
224:取っ手棒取付部
224a:右取っ手棒取付部
224b:左取っ手棒取付部
3:弾性体
4:ヘラ
41:ヘラ前方部
42:ヘラ後方部
43:踵入れ部
45:二関節止め部
5:二関節
51:第一関節
52:第二関節
53:第一アーム
54:第二アーム
55:第三アーム
56:土台取付部
6:取っ手棒
61:取っ手棒本体
62:グリップ
63:取っ手紐
63a:取り付け上部
63b:紐
63c:取り付け下部
64:取っ手ループ
64a:ループ状体
7:靴
8:足

【要約】      (修正有)
【課題】下肢が不自由な人に、容易に靴を履くことができる靴ベラを提供すること。
【解決手段】本発明に係る靴ベラは、前方に靴をはめ込み把持する靴はめ込み部を有する前方土台部と前方土台部の後方に延伸した後方土台とを有する土台下部と、土台下部の上方に設けたストッパ部とを有する土台と、第一アーム、第二アーム、第三アーム、第一関節、および第二関節を有する二関節と、伸長方向に直角方向の断面がU字状のヘラと、ストッパ部の側面に取り付けられ上方に伸長する取っ手棒と、を備え、第一アームの一端には、第一関節を回転軸として第二アームの一端が回転可能に取り付けられ、第二アームの他端は、第二関節を回転軸として第三アームの一端に回転可能に取り付けられ、第一関節と第二関節は連動してヘラを水平状態から垂直状態に移動可能であることを特徴とする靴ベラである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23