IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 仲野 陽富の特許一覧

特許7553746型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法
<>
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図1
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図2
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図3
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図4
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図5
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図6
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図7
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図8
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図9
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図10
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図11
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図12
  • 特許-型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
E01D21/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024092983
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524217861
【氏名又は名称】仲野 陽富
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】仲野 陽富
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105423(JP,A)
【文献】特開2007-255005(JP,A)
【文献】特開2005-155225(JP,A)
【文献】特開2009-174233(JP,A)
【文献】特開平07-091048(JP,A)
【文献】実開昭56-153548(JP,U)
【文献】特開平05-156605(JP,A)
【文献】特開昭54-108429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
節板の一方側の面に固定された面板を有する堰板を、隙間なく複数並設された堰板連結体と、
前記堰板連結体の他方側の面側に配置され、前記堰板連結体からの背圧を受ける複数のトラスビームとを備え、
前記各トラスビームは、複数の梁材が連結され、互いの連結箇所がピン接合されたトラス構造体を有し、
前記トラスビームは、前記トラス構造体の両端より突出する突出ロッド部を有し、前記突出ロッド部が前記堰板連結体の両端より突出していることを特徴とする型枠。
【請求項2】
前記堰板連結体と複数の前記トラスビームとの間には、複数の前記トラスビームに直交する方向に間隔を置いて配置された複数の端太材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の型枠。
【請求項3】
前記堰板は、鋼製であり、方形状の枠体部と、前記枠体部内に配置された補強リブ部を有する節板と、前記節板の一方側の面に固定された前記面板とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の型枠。
【請求項4】
前記トラスビームは、2つが1組となって複数の前記端太材の上面に間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項に記載の型枠。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された型枠を使用する型枠施工方法であって、
前記型枠をコンクリート打設領域の外位置に沿って配置する工程と、
互いに対向配置された前記トラスビームの上端部同士を連結する工程と、
前記各トラスビームの下端部をコンクリート設置側に支持する工程とを備えたことを特徴とする型枠施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠、型枠の作製方法、及び、型枠施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁型枠工事(ハイビア)、防潮堤工事等の大きな面積のコンクリート壁を構築する工事では、大型型枠工法での施工が現在では主流になりつつある。
【0003】
従来の大型型枠工法は、堰(セキ)板としてメタルフォーム、木製コントロールパネルを用い、ワイドパネルビーム、シャタリング等の支保端太(バタ)材を使用して施工している。しかし、ワイドパネルビーム、シャタリングを使用する施工では、材料の性能より高さに限界がある。具体的には、上下両端支持では、高さが3.6mが限界であり、これを超える高さがある場合には、中間高さ位置で、対向配置された堰板同士をセパレータで連結する必要があった。
【0004】
ところが、セパレータの設置は、近年の耐震構造の向上による過密な配筋設計によって、困難を伴い、場合によっては不可能なこともある。
【0005】
一方、特許文献1には、セパレータの設置が必要ない大型型枠装置が提案されている。この大型型枠装置60は、図13に示すように、互いに対向配置される一対の型枠61を有する。各型枠61は、堰板62と、堰板62のコンクリート打設面とは反対側に多数の桟木63を介してH鋼の背圧受け部材64とを備えている。各型枠61は、互いの下端部及び上端部を連結し、支持する下端支持部65及び上端支持部66で固定されている。
【0006】
この大型型枠装置60によれば、互いに対向配置される堰板62と堰板62の間にセパレータを取り付けなくても、コンクリート打設時のコンクリート圧を、剛性が高いH鋼の背圧受け部材64で受けるため、歪みや変形のないコンクリート壁を施工できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-273302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記した特許文献1に開示された大型型枠装置60では、H鋼の背圧受け部材64を用いるため、非常に重量が重く、取り扱い性が悪いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、大きな面積のコンクリート壁を構築するものにあって、セパレータを用いることなく、しかも、重量が軽い型枠、及び、型枠の作製方法、及び、型枠を用いた施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたもので、(1)節板の一方側の面に固定された面板を有する堰板を、隙間なく複数並設された堰板連結体と、前記堰板連結体の他方側の面側に間隔を置いて配置され、前記堰板連結体からの背圧を受ける複数のトラスビームとを備え、前記各トラスビームは、複数の梁材が連結され、互いの連結箇所がピン接合されたトラス構造体を有し、前記トラスビームは、前記トラス構造体の両端より突出する突出ロッド部を有し、前記突出ロッド部が前記堰板連結体の両端より突出していることを特徴とする。
【0011】
(2)上記(1)において、前記堰板連結体と複数の前記トラスビームとの間には、複数の前記トラスビームに直交する方向に間隔を置いて配置された複数の端太材が配置されていることを特徴とする。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)において、前記堰板は、鋼製であり、方形状の枠体部と、前記枠体部内に配置された補強リブ部を有する節板と、前記節板の一方側の面に固定された面板とを有することを特徴とする。
【0014】
)上記(2)において、前記トラスビームは、2つが1組となって複数の前記端太材の上面に間隔を置いて配置されていることを特徴とする。
【0016】
)上記(1)または(2)に記載された型枠を使用する型枠施工方法であって、前記型枠をコンクリート打設領域の外位置に沿って配置する工程と、互いに対向配置された前記トラスビームの上端部同士を連結する工程と、前記各トラスビームの下端部をコンクリート設置側に支持する工程とを備えたことを特徴とする型枠施工方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の堰板が隙間なく並設された堰板連結体が単一の堰板となっているため、大きな面積のコンクリート壁を構築可能である。トラスビームは、H鋼によって背面受け部材を形成した場合に比べてはるかに軽く形成される。そして、コンクリート打設時のコンクリート圧を、強度が非常に高いトラスビームで受けるため、堰板と堰板の間にセパレータを取り付けなくても、歪みや変形のないコンクリート壁を施工できる。以上より、大きな面積のコンクリート壁を構築するものにあって、セパレータを用いることなく、しかも、重量が軽い型枠、及び、型枠の作製方法、及び、型枠を用いた施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本実施形態を示し、型枠の正面図である。
図2】本実施形態を示し、型枠の平面図である。
図3】本実施形態を示し、型枠の分解斜視図である。
図4】本実施形態を示し、(a)は節板の平面図、(b)は節板の正面図、(c)は節板の側面図である。
図5】本実施形態を示し、堰板連結体の平面図である。
図6】本実施形態を示し、型枠設置工程を説明する平面図である。
図7】本実施形態を示し、タイロットの設置を説明する平面図である。
図8】本実施形態を示し、型枠寸法確保用鋼材の設置を説明する平面図である。
図9】本実施形態を示し、埋込アンカーの設置を説明する平面図である。
図10】本実施形態を示し、(a)は図9のX(a)-X(a)線の断面図、(b)は図10(a)のX(b)部の拡大図である。
図11】本実施形態を示し、(a)は図9のXI(a)-XI(a)線の断面図、(b)は図11(a)のXI(b)部の拡大図である。
図12】本実施形態を示し、(a)はストレートの埋込アンカーの取付けを説明する図、(b)は折曲した埋込アンカーの取付けを説明する図である。
図13】従来例の大型型枠装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。本実施形態では既に公知である技術は説明を省略する。また、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示したものであって、本発明の技術的思想は、下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、種々の変更を加えることができる。特に、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0020】
(型枠)
図1図4に示すように、型枠1は、堰(セキ)板4を複数連結した堰板連結体5と、複数の端太(バタ)材10と、複数のトラスビーム20とを備えている。
【0021】
堰板連結体5を構成する各堰板4は、節板2と面板3より構成されている。
【0022】
節板2は、図4に詳しく示すように、鋼等の剛性の高い材料で形成されている。節板2は、方形状の枠体部2aと、枠体部2a内で直交方向に配置された補強リブ部2bとから構成されている。枠体部2aの側面には、間隔を置いて複数のリブ孔2cが全周に亘って形成されている。補強リブ部2bが枠体部2a内を仕切ることによって、枠体部2a内には複数の方形空間が形成されている。この方形空間によって、節板2は軽量化が図られている。節板2の寸法は、例えば、幅(B)が600mm、長さ(L)が1800mm、厚み(t)が55mmである。
【0023】
面板3は、節板2の一方側の面に鉄鋼ビス(図示せず)、又は、コンクリート釘(図示せず)を打ち込んで固定されている。面板3は、化粧コンクリートパネルや透明アクリル板等より形成されている。面板3は、種々の状況を考慮して種類が選択される。面板3は、節板2と同じ幅と同じ長さ寸法であり、厚みが例えば12mmである。
【0024】
堰(セキ)板4の寸法は、例えば、幅(B)が600mm、長さ(L)が1800mm、厚み(t)が67mmである。従来のメタルフォームの厚みは例えば55mmであり、節板2の厚みがこれと同じ厚みに設定されている。下記する堰板連結体5の外径寸法以外の補助用堰板が必要な場合には、メタルフォームに化粧コンクリートパネルをコンクリート釘で打ち込んで設置する。つまり、この補助用堰板と堰板4の厚みが同じになるよう設計されている。
【0025】
複数の端太材10は、複数の堰板4が隙間なく並設されて構成された堰板連結体5の上に配置されている。複数の端太材10は、堰板連結体5の他方側の面に間隔を置いて配置され、各端太材10は、各堰板4に固定されている。
【0026】
複数のトラスビーム20は、端太材10に対して直交方向の向きで、複数の端太材10の上面に間隔を置いて配置されている。各トラスビーム20は、各端太材10や堰板4に固定されている。各トラスビーム20は、互いの梁材が連結され、互いの連結箇所がピン接合されたトラス構造体21を有する。
【0027】
トラス構造体21は、この実施形態では、ワーレントラスである。ワーレントラスを構成する梁材は、上弦材21aと下弦材21bとラチス材21cであり、上弦材21aと下弦材21bとの間にラチス材21cによって一列に並ぶ同形の三角形状が形成されている。
【0028】
トラスビーム20は、トラス構造体21の下弦材21bの両端より延設された突出ロッド部22,23を有する。この両端の突出ロッド部22,23は、堰板連結体5の両端より突出している。型枠1の設置状態で上部となる突出ロッド部22には、トラス連結部材であるL字アングル30が掛け渡されている。L字アングル30は、各トラスビーム20に固定されている。
【0029】
トラスビーム20は、2つが1組となって複数の端太材10の上面に間隔を置いて配置されている。全てのトラスビーム20のトラス構造体21には、上弦材21aと下弦材21bとラチス材21cとによって形成される三角空間を利用して振れ抑制部材である角鋼菅31が貫通されている。各角鋼菅31は、全てのトラスビーム20のトラス構造体21との間で締結バンド(図示せず)で締結されている。角鋼菅31は、各トラスビーム20が揺れ触れしないように止めている。
【0030】
このように構成された型枠1は、この実施形態では、1枚当たりの平米数が例えば5.4m×4.8m=26m以下での施工になる。
【0031】
(型枠の作製手順)
次に、型枠1の作製手順を説明する。先ず、各節板2の一方側の面に面板3をそれぞれ固定して所定数の堰板4を作製する(堰板作製工程)。
【0032】
次に、図4に示すように、予め決められた枚数の堰板4を、他方側の面を上面として、隙間なく直交方向の双方にそれぞれ並設する。この実施形態では、図5に示すように、長手方向及びその直交方向に共に3枚の堰板4を並設している。そして、隣り合う堰板4同士をUクリップ(図示せず)、ボルト及びナット(図示せず)で連結し、堰板連結体5を作製する(堰板連結体作製工程)。
【0033】
次に、堰板連結体5の上面(他方側の面)に複数の端太材10を間隔を置いて配置する。配置した各端太材10を各堰板4に固定する(端太材固定工程)。
【0034】
次に、端太材10に対して直交方向の向きで、複数の端太材の上面に間隔を置いて複数のトラスビーム20を配置する。配置した各トラスビーム20を端太材10や堰板4に固定し、複数のトラスビーム20を複数の端太材10を介して堰板連結体5に固定する(トラスビーム固定工程)。
【0035】
最後に、型枠1の設置状態で上部となる、全てのトラスビーム20の突出ロッド部22の上面に掛け渡すようにしてL字アングル30を配置する。このL字アングル30を各トラスビーム20の突出ロッド部22に固定する。又、全てのトラスビーム20のトラス構造体21の三角空間に角鋼菅31を貫通させ、角鋼菅31と全てのトラスビーム20のトラス構造体21とを締結バンド(図示せず)でそれぞれ締結すれば、完了する(補助材固定工程)。尚、角鋼管31は、下記する型枠設置工程の途中、若しくは、型枠設置工程の後で取り外す。
【0036】
(型枠施工作業(型枠建込作業))
橋梁のコンクリート柱を施工する場合について、コンクリート打設領域S(図6に示す)が基本形状が長方形で、且つ、各角部が面取りされた8角形状断面の場合を例として、型枠施工作業を説明する(図6参照)。
【0037】
型枠施工前の作業として、上記した型枠製作工程では、短辺用型枠1Aとして、2本を一組とするトラスビーム20を11本組付けたものを2組作製する。長辺用型枠1Bとして、2本を一組とするトラスビーム20を13本組付けたものを2組を製作する。そのほかにコーナー用型枠(上記した補助用型枠)1Cとして、2本を一組とするトラスビーム20を2本組付けたものを作製する。コーナー用型枠1Cは、節板2として三角形状の節板2A(図7に示す)を付加してコーナー部の面板3を取り付ける。
【0038】
次に、型枠施工作業(型枠建込方法)を説明する。先ず、鉄筋用ブラケットの足場撤去、型枠1A,1B,1Cの受け金物の設置、埋込アンカーに本体取付けを行う(施工準備工程)。
【0039】
次に、クレーン等を使用して、型枠1A,1B,1Cを所定の設置位置まで移動して吊り下げる(型枠吊り込み工程)。クレーンによる吊り下げは、専用の吊り金具(図示せず)を使用して行う。
【0040】
次に、図6に示すように、コンクリート打設領域Sの外周に各型枠1A,1B,1Cを配置し、コンクリート打設領域Sを隙間なく囲む(型枠設置工程)。尚、図6では、長辺用型枠1Bのみを設置した途中過程を示している。
【0041】
型枠設置の終了後、図7に示すように、各型枠1A,1B,1Cの互いに対向配置された各トラスビーム20の上部位置にトラス連結部材であるタイロット40をそれぞれ張設する(タイロット取付工程)。
【0042】
次に、図8に示すように、対向する長辺側のL字アングル30の間に間隔を置いて複数の幅止め材である型枠寸法確保用鋼材41を掛け渡し、掛け渡した各型枠寸法確保用鋼材41を各L字アングル30に固定する(鋼材取付工程)。
【0043】
次に、図9図11に示すように、型枠1A,1B,1Cの各トラスビーム20の下弦材21bの上部側と下部側にトラスバンド42などを利用して埋込アンカー43をそれぞれ固定する(埋込アンカー取付工程)。トラスビーム20の上部側は、トラス構造体21の下弦材21bの箇所を利用してトラスバンド42を取り付ける。トラスビーム20の下部側は、突出ロッド部23の箇所を利用してトラスバンド42を取り付ける。埋込アンカー43は、下記するように、傾斜しているものを使用する。
【0044】
図12は、埋込アンカー43の詳細な取付け状態が示されている。埋込アンカー43は、コンクリート打設領域Sに配置される多数の配力筋50、柱筋51に干渉しないように配置する。ここで、図12(a)に示すように、ストレートの埋込アンカー43Aは、配力筋50、柱筋51が密集配置された場合、例えば柱筋51との干渉を回避するために、所定の取付け位置より大きくシフトした取付け位置に変更する必要がある。そこで、埋込アンカー43Aは、図12(b)に示すように、斜め傾斜(例えば15度前後)している埋込アンカー43を使用し、所定の取付け位置より少しだけシフトした位置で取付けられる。
【0045】
詳細には、埋込アンカー43,43Aの取付け位置が柱筋51の中心に位置する場合には、図12(a)に示すように、ストレートの埋込アンカー43Aでは、大幅に取付け位置をシフトしなければ干渉を避けることができないが、図12(b)に示すように、折曲した埋込アンカー43を使用することにより、少しだけ取付け位置をシフトするだけで干渉を避けることができる。又、埋込アンカー43,43Aの取付け位置が柱筋51の中心近くに位置する場合も同様であり、ストレートの埋込アンカー43Aより折曲した埋込アンカー43の方が取付けシフト位置が小さくて済む。
【0046】
最後に、コンクリート足場を設置すれば完了する(足場設置工程)。
【0047】
コンクリート打設領域Sの高さが堰板連結体5の高さ(例えば5.4m)より高いコンクリート壁を構築する場合には、コンクリート打設工程を複数ロットに分けて行う。つまり、1ロット工程では、堰板連結体5の高さ(例えば5.4m)未満のコンクリート打設を行い、2ロット工程では、1ロット工程で設置した型枠1を取り外して、次の高さの位置に設置し直してコンクリート打設を行う。このような工程を所望のコンクリート打設領域Sの高さまで繰り返す。
【0048】
(生コンクリート打ち込み工程)
このように構成された型枠1は、コンクリート打ち込み工程において、生コンクリートがコンクリート打設領域Sに流し込まれると、生コンクリートが固化するまでの間、生コンクリートの圧力が堰板連結体5に作用し、このコンクリート圧を複数の端太材10を介して複数のトラスビーム20が受ける。各トラスビーム20は、トラス構造であり、強度が非常に高いため、全てのトラスビーム20によって、大きな面積のコンクリート壁を構築する際に作用する高いコンクリート圧を十分に受け止めることができる。
【0049】
(実施形態の効果)
以上説明したように、この実施形態の型枠1は、節板2の一方側の面に固定された面板3を有する堰板4を隙間なく複数並設されてなる堰板連結体5と、堰板連結体5の他方側の面側に間隔を置いて配置され、堰板連結体5からの背圧を受ける複数のトラスビーム20とを備え、各トラスビーム20は、複数の梁材21a,21b,21cが連結され、互いの連結箇所がピン接合されたトラス構造体21を有する。
【0050】
従って、複数の堰板4が隙間なく並設された堰板連結体5が単一の堰板を構成するため、大型の型枠1となり、大きな面積のコンクリート壁を構築可能である。トラスビーム20は、従来例のようにH鋼によって背圧受け部材64を形成した場合(図13参照)に比べて、はるかに軽く構成される。そして、コンクリート打設時のコンクリート圧を、強度が非常に高い複数のトラスビーム20で受けるため、互いに対向配置された堰板4と堰板4の間にセパレータを取り付けなくても、歪みや変形のないコンクリート壁を施工できる。以上より、大きな面積のコンクリート壁を構築するものにあって、セパレータを用いることなく、しかも、重量が軽い型枠1を提供できる。又、型枠1の重量が軽いため、型枠1の取扱い性が向上し、施工サイクルの短縮等が可能である。
【0051】
堰板連結体5は、複数の堰板4を連結したものであるため、コンクリート打設現場の近くで容易に組立作業や解体作業を行うことができる。
【0052】
堰板連結体5と複数のトラスビーム20との間には、複数のトラスビーム20に直交する方向に間隔を置いて配置された複数の端太材10が配置されている。 従って、コンクリート打設時のコンクリート圧を複数の端太材10を介して複数のトラスビーム20がほぼ均等に受けることになり、大きな面積のコンクリート壁を構築する際に作用する高いコンクリート圧に耐えることができる。又、互いに直交配置された複数の端太材10と複数のトラスビーム20で堰板連結体5からの面力を受けるので、堰板連結体5の面方向を二次元的に歪みや段差等のない面一にできるため、コンクリート壁面を面一のものにできる。
【0053】
堰板4は、鋼製であり、方形状の枠体部2aと、枠体部2a内に配置された補強リブ部2bを有する節板2と、節板2の一方側の面に固定された面板3とを有する。
【0054】
従って、節板2が鋼製であるため、コンクリート打設時のコンクリート圧によって変形しない。又、節板2は、補強リブ部2bによって補強されているため、補強リブ部2bを設けない場合に比べて剛性が高くなっており、コンクリート打設時のコンクリート圧による変形を確実に防止できる。
【0055】
トラスビーム20は、トラス構造体21の両端より突出する突出ロッド部22,23を有し、突出ロッド部22,23が堰板連結体5の両端より突出している。
【0056】
従って、突出ロッド部22,23を型枠1の設置場所での固定に利用できるため、型枠1の設置作業性が良く、施工サイクルの短縮等になる。
【0057】
トラスビーム20は、2つ併せが1組となって複数の端太材10の上面に間隔を置いて配置されている。
【0058】
従って、トラスビーム20が1つが1組を構成する場合に比べて、強度が高くなるため、コンクリート打設時のコンクリート圧を、堰板4の変形等の不具合を生じさせることなく確実に受けることができる。尚、トラスビーム20は、コンクリート壁を構築する際に作用するコンクリート圧の程度によっては、1つを1組としても良い。又、逆に、トラスビーム20は、3つ併せ以上を1組としても良い。
【0059】
トラスビーム20のトラス構造体21は、この実施形態では、ワーレントラス形である。コンクリート打設時のコンクリート圧は、トラス構造体21に分布荷重として作用し、分布荷重に対してはワーレントラスは、曲げモーメントが当然作用せず、各ラチス材21cに均等な軸力のみが作用するため、耐圧性が高い。但し、トラスビーム20のトラス構造体21は、ワーレントラス以外のトラス構造を採用しても良い。
【0060】
以上説明したように、この実施形態の型枠作製方法は、各節板2の一方側の面に面板3をそれぞれ固定して複数の堰板4を作製する工程と、複数の堰板4を隙間なくそれぞれ並設して堰板連結体5を作製する工程と、堰板連結体5の他方側の面に複数の端太材10を固定する工程と、端太材10に対して直交方向の向きで、複数の端太材10の上面に間隔を置いて複数のトラスビーム20を固定し、複数のトラスビーム20を複数の端太材10を介して堰板連結体5に固定する工程とを備えている。
【0061】
従って、熟練工しかできないような高度な作業工程や複雑な作業工程がないため、施工サイクルが短縮化できる。
【0062】
以上説明したように、この実施形態の型枠施工方法は、型枠1をコンクリート打設領域Sの外位置に沿って配置する工程と、互いに対向配置されたトラスビーム20の上端部同士を連結する工程と、各トラスビーム20の下端部をコンクリート設置側に支持する工程とを備えている。
【0063】
従って、熟練工しかできないような高度な作業工程や複雑な作業工程がないため、施工サイクルが短縮化できる。
【0064】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A~1C 型枠
2 節板
3 面板
4 堰板
5 堰板連結体
10 端太材
20 トラスビーム
21 トラス構造体
21a 上弦材(梁材)
21b 下弦材(梁材)
21c ラチス材(梁材)
22,23 突出ロッド部

【要約】
【課題】大きな面積のコンクリート壁を構築するものにあって、セパレータを用いることなく、しかも、重量が軽い型枠を提供できる。
【解決手段】型枠1は、節板2の一方側の面に固定された面板3を有する堰板4を、隙間なく複数並設された堰板連結体5と、堰板連結体5の他方側の面に端太材10を介して間隔を置いて固定された複数のトラスビーム20とを備え、トラスビーム20は、複数のトラス材が連結され、互いの連結箇所がピン接合されたトラス構造体21を有する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13