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特許7553748芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および光拡散性成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および光拡散性成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240910BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240910BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L71/00
C08K5/524
C08K5/13
C08L71/02
G02B5/02 B
G02B1/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024503793
(86)(22)【出願日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2023025622
(87)【国際公開番号】W WO2024014465
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022112757
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚史
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146693(WO,A1)
【文献】特開2006-045389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175786(WO,A1)
【文献】特開2008-189804(JP,A)
【文献】特開2020-045391(JP,A)
【文献】特開2009-221472(JP,A)
【文献】特開2007-063361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G02B 5/02
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置のバックライトモジュールに使用される光拡散性成形品用の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテル誘導体(B)、光拡散剤(C)、リン系酸化防止剤(D)及び下記式(1)で表される芳香族化合物(E)を含み、
該直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、ポリエーテル誘導体(B)を0.1~2.0重量部、光拡散剤(C)を0.1~6.0重量部、リン系酸化防止剤(D)を0.5重量部まで、芳香族化合物(E)を0.003重量部まで含有し、
前記光拡散剤(C)が、シリコーン系光拡散剤を含有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
式(1):
【化1】
【請求項2】
前記ポリエーテル誘導体(B)が、下記式(2)で表され、500~8000の重量平均分子量を有するポリエーテル誘導体を含む、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
式(2):
RO-(X-O)m(Y-O)n-R’
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2~4の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、Yは、炭素数2~5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、XとYは同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは6~120を示す。)
【請求項3】
前記光拡散剤(C)が、アクリル系光拡散剤または無機微粒子を更に含有する、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
熱安定剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤及び衝撃性改良剤を含む群から選択される少なくとも1種を更に含有する、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を含む、光拡散性成形品。
【請求項6】
前記光拡散性成形品が、画像表示装置用の光拡散板または光拡散フィルムである、請求項5に記載の光拡散性成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および光拡散性成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性及び透明性等に優れるので、従来、導光板、各種レンズ及び銘板等の成形品に利用されている。芳香族ポリカーボネート系樹脂に無機微粒子、高分子微粒子等の光拡散剤を配合した樹脂組成物からなる光拡散性成形品は、アクリル樹脂からなる光拡散性成形品に比べ、耐熱性および寸法安定性に優れることから、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置または画像表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置等のバックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクターテレビ等の投影型表示スクリーンに使用される光拡散板等)、光拡散フィルム(例えば、液晶表示装置の輝度向上等に利用される高透過光拡散フィルム等)等、幅広い分野で使用されている。
【0003】
近年の画像表示装置の大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等に伴って、光拡散性成形品、特に画像表示装置に用いられる光拡散板および光拡散フィルムにも、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等の要望が高まっており、成形加工時の流動性に優れた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物が求められている。
【0004】
特許文献1には、ペンタエリスリトール系エステル化合物を添加し、エステル交換により芳香族ポリカーボネート系樹脂を低分子量化することで流動性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/011977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のポリカーボネート樹脂組成物は、近年の材料に求められる要求、例えば、薄肉成形を行うため高温で成形加工した場合でも透明性・光透過率の低下が少ないこと、大型化が可能であること等を充分に満足し得るものではない。
【0007】
更に、近年、成形加工された0.3mm程度の薄型のサイズの車載用画像表示装置に用いられる光拡散性成形品(例えば、画像表示装置用の光拡散板)が、光照射等による高温条件下に極めて長期にわたり暴露された場合でも、透明性・光透過性の低下が少なく、すなわち、大型であっても光透過性を落とさずに、それでいて光源が透けて見えない光拡散性の高い材料が、求められつつある。
【0008】
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、熱安定性に優れ、透明性・光線透過率・光拡散性が高く、しかも成形加工された0.3mm程度の薄型の大型の成形品(例えば、画像表示装置用の光拡散板)が、光照射等による高温条件下に極めて長期にわたり暴露された場合でも、透明性・光透過性の低下を生じ難く(白濁及び着色を生じ難く)、すなわち、大型であっても光透過性を落とさずに、それでいて光源が透けて見えない光拡散性の高い、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル誘導体(B)及び光拡散剤(C)を、所定量含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性を損なうことなく、熱安定性に優れ、光線透過率が高く、しかも、成形加工された0.3mm程度の薄型の成形品(導光板)が光源照射等による高温条件下に長期に亘り暴露された場合でも、透明性・透過性の低下が少ない(白濁又は着色を生じ難い)ことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテル誘導体(B)、光拡散剤(C)、リン系酸化防止剤(D)及び下記式(1)で表される芳香族化合物(E)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対してポリエーテル誘導体(B)を0.1~2.0重量部、光拡散剤(C)を0.1~6.0重量部、リン系酸化防止剤(D)を0.5重量部まで、芳香族化合物(E)を0.003重量部まで含有する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれを成形してなる光拡散性成形品を提供する。
式(1):
【化1】
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、熱安定性に優れ、透明性・光線透過率・光拡散性が高く、しかも得られる成形品が、炎天下環境及び/又は光源照射等による高温条件下に長期に亘り暴露された場合でも、透明性・透過性が低下し難い(白濁又は着色を生じ難い)。よって、例えば厚さ0.3mm程度の薄型の成形品(拡散板)であっても、色相が変化して外観が低下(劣化)することを生じ難く、外部環境や光源に起因する高温条件下に長期間暴露された場合でも、透明性の低下を生じ難く(白濁又は着色を生じ難く)、すなわち、光透過性を落とさずに、それでいて光源が透けて見えない光拡散性の高いポリカーボネート樹脂組成物を提供でき、工業的利用価値が極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテル誘導体(B)および光拡散剤(C)と、必要に応じて、リン系酸化防止剤(D)及び/又は特定の芳香族化合物(E)を含む。実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更に必要に応じて、エポキシ化合物及び/又はその他の成分等を含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態において、「直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)」は、芳香族化合物に基づくポリカーボネート樹脂であって、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り特に制限されることはないが、分岐状芳香族ポリカーボネートは、透明性・光透過性を低下させるため本発明の範囲から極力除くものとする。直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂として、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体を例示できる。代表例は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂を含む。
【0016】
前記ジヒドロキシジアリール化合物として、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類を例示できる。これらは単独で又は組み合せて使用できる。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等を組み合わせて使用することができる。
【0017】
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000~100000であることが好ましく、12000~30000であることがより好ましい。なお、このような芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0018】
本発明の実施形態において、ポリエーテル誘導体(B)とは、ポリエーテル化合物の誘導体であって、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されるものではない。そのようなポリエーテル誘導体は、代表例として、下記式(2)で表されるポリエーテル誘導体を含む。
【0019】
式(2):
RO-(X-O)m(Y-O)n-R’
(式中、RおよびR’は、各々独立して水素原子又は炭素数1~30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2~4の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を、Yは、炭素数2~5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、XとYは同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは6~120を示す。)式(2)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、市販品を使用することができる。
【0020】
式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、下記式(2-1)で表される化合物であっても良い。
式(2-1):
RO-(X-O)m(Y-O)n-R’
(式中、RおよびR’は、各々独立して水素原子又は炭素数1~30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2~4の直鎖アルキレン基を、Yは、炭素数2~5の分岐アルキレン基を示し、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは8~90を示す。)
式(2-1)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。式(2-1)で表されるポリエーテル誘導体は、市販品を使用することができる。
【0021】
式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、下記式(2-2)で表される化合物であっても良い。
式(2-2):
RO-(X-O)m(Y-O)n-R’
(式中、RおよびR’は、各々独立して水素原子又は炭素数1~30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2~4の直鎖アルキレン基を、Yは、炭素数2~5の直鎖アルキレン基を示し、XとYは同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは6~100を示す。)
式(2-2)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。式(2-2)で表されるポリエーテル誘導体は、市販品を使用することができる。
【0022】
式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、下記式(2-3)で表される化合物であっても良い。
式(2-3):
RO-(X-O)m(Y-O)n-R’
(式中、RおよびR’は、各々独立して水素原子又は炭素数1~30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2~4の分岐アルキレン基を、Yは、炭素数2~5の分岐アルキレン基を示し、XとYは同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは6~120を示す。)
式(2-3)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。式(2-3)で表されるポリエーテル誘導体は、市販品を使用することができる。
【0023】
式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、下記式(3)で表されるポリエーテル誘導体、式(4)で表されるポリエーテル誘導体、式(5)で表されるポリエーテル誘導体、式(6)で表されるポリエーテル誘導体、式(7)で表されるポリエーテル誘導体、式(8)で表されるポリエーテル誘導体、式(9)で表されるポリエーテル誘導体、式(10)で表されるポリエーテル誘導体及び式(11)で表されるポリエーテル誘導体を含む群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
式(2-1)で表されるポリエーテル誘導体は、下記式(3)で表されるポリエーテル誘導体、式(4)で表されるポリエーテル誘導体、式(5)で表されるポリエーテル誘導体、式(6)で表されるポリエーテル誘導体及び式(7)で表されるポリエーテル誘導体を含む群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0025】
式(2-2)で表されるポリエーテル誘導体は、式(8)で表されるポリエーテル誘導体及び式(9)で表されるポリエーテル誘導体を含む群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
式(2-3)で表されるポリエーテル誘導体は、式(10)で表されるポリエーテル誘導体及び式(11)で表されるポリエーテル誘導体を含む群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
式(3):
HO-(CHCHCHCHO)m(CH(CH)CHO)n-H
(式中、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0028】
式(3)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンDCB-1000(重量平均分子量1000)、ポリセリンDCB-2000(重量平均分子量2000)、ポリセリンDCB-4000(重量平均分子量4000)等を利用できる。式(3)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0029】
式(4):
HO-(CHCHCHCHO)m(CHCHCH(CH)CHO)n-H
(式中、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0030】
式(4)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットと2-メチルテトラメチレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、保土谷化学工業(株)製のPTG-L1000(重量平均分子量1000)、PTG-L2000(重量平均分子量2000)、又はPTG-L3000(重量平均分子量3000)等を利用できる。式(4)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0031】
式(5):
HO-(CHCHO)m(CH(CH)CHO)n-H
(式中、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0032】
式(5)で表されるポリエーテル誘導体として、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニルーブ50DE-25(重量平均分子量1750)、ユニルーブ75DE-25(重量平均分子量1400)等を使用できる。式(5)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0033】
式(6):
RO-(CHCHCHCHO)m(CH(CH)CHO)n-H
(式中、Rは炭素数1~30のアルキル基を示し、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0034】
式(6)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む、片末端ブチル基又は片末端ステアリル基の変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンBC-1000(片末端ブチル基、重量平均分子量1000)、ポリセリンSC-1000(片末端ステアリル基、重量平均分子量1000)等を使用できる。式(6)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0035】
式(7):
RO-(CHCHO)m(CH(CH)CHO)n-H
(式中、Rは炭素数1~30のアルキル基を示し、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0036】
式(7)で表されるポリエーテル誘導体として、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む、片末端ブチル基又は片末端ステアリル基の変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニルーブ50MB-11(片末端ブチル基、重量平均分子量1000)、ユニルーブ50MB-26(片末端ブチル基、重量平均分子量2000)、ユニルーブ50MB-72(片末端ブチル基、重量平均分子量3000)、ユニルーブ10MS-250KB(片末端ステアリル基、重量平均分子量2000)等を利用できる。式(7)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0037】
式(8):
HO-(CHCHCHCHO)m(CHCHO)n-H
(式中、m及びnは、各々独立して、3~60を示し、m+nは、8~90を示す。)
【0038】
式(8)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとエチレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンDC3000E(重量平均分子量3000)、ポリセリンDC1800E(重量平均分子量1800)等を使用できる。式(8)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0039】
式(9):
HO-(CHCHCHCHO)p-H
(式中、pは、6~100を示す。)
【0040】
式(9)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、保土谷化学工業(株)製のPTG-650SN(重量平均分子量650)、PTG-850SN(重量平均分子量850)、PTG-1000SN(重量平均分子量1000)、PTG-1400SN(重量平均分子量1400)、PTG-2000SN(重量平均分子量2000)、又はPTG-2900(重量平均分子量2900)等を使用できる。式(9)で表されるポリエーテル誘導体(ポリテトラメチレングリコール)の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0041】
式(10):
式:HO-(CH(CH)CHO)q-H
(式中、qは、7~120を示す。)
【0042】
式(10)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリプロピレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、ダウケミカル製ポリグリコールP2000P(重量平均分子量2000)、日油(株)製、ユニオールD-1000(重量平均分子量1000)、ユニオールD-2000(重量平均分子量2000)、ユニオールD-4000(重量平均分子量4000)等を使用できる。式(10)で表されるポリエーテル誘導体(ポリプロピレングリコール)の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0043】
式(11):
HO-(CH(C)CHO)r-H
(式中、rは、6~100を示す。)
【0044】
式(11)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリブチレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニオールPB-500(重量平均分子量500)、ユニオールPB-1000(重量平均分子量1000)、ユニオールPB-2000(重量平均分子量2000)等を使用できる。式(11)で表されるポリエーテル誘導体(ポリブチレングリコール)の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0045】
前記一般式(2)で表されるポリエーテル誘導体は、概ね耐熱性が高く該ポリエーテル誘導体を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形した成形品は、輝度や光線透過率が高い。
【0046】
尚、前記式(2)~式(11)で表されるポリエーテル誘導体の各々は、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び光学用成形品を得られる限り、各式に記載の繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むことができる。そのような繰り返し単位として、例えば、ポリエーテル誘導体の出発原料中に含まれ得る不純物に基づく繰り返し単位、重合の際に使用される開始剤(重合開始剤)に基づく繰り返し単位等を例示することができる。
【0047】
ポリエーテル誘導体の合成時に重合開始剤が使用される場合には、重合開始剤として、例えば、下記の化合物を例示することができる。水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、イソソルバイド、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース等を例示することができる。
【0048】
このような重合開始剤に基づく繰り返し単位を含むポリエーテル誘導体として、例えば、下記式(3’)で表されるポリセリン60DB-2000H(日油(株)製)を使用することもできる(式3-2参照)。
式(3’):
【化2】
(式中、m1+m2が、式(3)のmに対応し、n1+n2が、式(3)のnに対応する。)
【0049】
式(3-2)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500~8000であることが好ましく、1000~4000であることがより好ましい。
【0050】
また、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)は、適度な親油性を有することから、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性にも優れるので、該ポリエーテル誘導体(B)を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の透明性を低下させることがなく透明性を維持できる。このようなポリエーテル誘導体(B)の重量平均分子量は、500~8000が好ましく1000~4000がより好ましい。
【0051】
更に、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)のCPR(単位:無次元)(Controlled Polymerization Rate:ポリエーテル誘導体中の塩基性物質の量を示す指標:JIS K1557-4に準拠して測定される)は、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。CPRが2.0以下である場合、ポリエーテル誘導体(B)は、ポリカーボネート樹脂との相溶性に優れるとともに、分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリンDCB-2000のCPRは、1.0未満であり、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB-2000H(日油(株)製)のCPRは1.0未満であり、上述の式(9)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するPTG-1000SN(保土谷化学工業(株)社製)のCPRは1.0未満である。
【0052】
更にまた、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)のpH(JIS K1557-5に準拠して測定される)は、5.0以上、7.5未満であることが好ましく、6.0以上、7.0未満であることがより好ましい。ポリエーテル誘導体(B)のpHが、5.0以上、7.5未満である場合、分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリンDCB-2000のpHは、6.7であり、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB-2000H(日油(株)製)のpHは6.8であり、上述の式(9)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するPTG-1000SN(保土谷化学工業(株)社製)のpHは6.7である。
【0053】
更に、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)の90%重量となる温度(又は重量減少率が10%となる温度)(JIS K7120に準拠する熱重量測定で測定される)は、300℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましい。ポリエーテル誘導体(B)の90%重量となる温度が、300℃以上である場合、分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリンDCB-2000の90%重量となる温度は、330℃であり、上述の式(3)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB-2000H(日油(株)製)の90%重量となる温度は400℃である。
【0054】
ポリエーテル誘導体の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.1~2.0重量部であり、0.3~1.8重量部が好ましい。ポリエーテル誘導体の量が0.1重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分であり得る。逆にポリエーテル誘導体の量が2.0重量部を超える場合は、曇化率が上昇して光線透過率が低下し得る。
【0055】
本発明の実施形態において、光拡散剤(C)は、ポリカーボネート樹脂組成物の内部で光を散乱させることができるものであれば特に限定されず、高分子系および無機系など化学組成上特に制限はない。ただし、直鎖状ポリカーボネート樹脂(A)に光拡散剤(C)を添加し、押出機による溶融混合など公知の方法にて分散させた際にマトリックス相と相溶しないか、又は相溶しにくく粒子として存在することが必要である。
【0056】
光拡散剤(C)としては、光拡散能を有する微粒子が好ましい。このような微粒子としては、無機微粒子および高分子微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、ガラス充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト、酸化チタン等が挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウムが好ましい。無機微粒子の形状は、繊維状よりは粒状(不定形を含む)または板状が好ましい。例えば、ガラス充填材の場合、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、極薄ガラスフレーク(ゾル-ゲル法により製造される)、不定形ガラス等が挙げられる。他の無機微粒子においても同様に、様々な形状のものを採用できる。
【0057】
高分子微粒子としては、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。シリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤、シリコーンゴム状弾性体、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ナイロン系、スチレン-(メタ)アクリレート系、フッ素系、ノルボルネン系、シリコーン系などの有機系拡散剤など等が挙げられるが、特に有機微粒子であるシリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤が好ましい。光拡散剤としては市販品を用いることができ、例えば、シリコーン系光拡散剤としてはモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「トスパール(登録商標)120S」が、また、アクリル系光拡散剤としてはアイカ工業社製「ガンツパール(登録商標)GM-0449S」、「ガンツパールGM-0205S」、綜研化学社製「ケミスノー(登録商標)KMR-3TA」などを用いることができる。
【0058】
光拡散剤(C)として、スチレンモノマーとメチルメタクリレートモノマーと架橋剤とを共重合して得られる微粒子(スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子)も好適に用いられ得る。一般的な乳化重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、塊状重合法、ソープフリー重合法、シード重合法等を用いて得ることができる。これらの重合方法の中で、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法が好ましく、光拡散板の物性の点から、乳化重合法、分散重合法が特に好ましい。
【0059】
スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子に使用される架橋剤としては、ビニル基または(メタ)アクリロイル基を2つ以上含有するラジカル重合可能なモノマーであればよい。そのような具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラメタアクリレートが挙げられる。そして、これらの架橋剤は、1種であっても2種以上を併用してもかまわない。
【0060】
スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子の平均粒子径は、5~30μmである。より好ましい平均粒子径は、8~20μmの範囲である。平均粒子径が5μm未満では得られる光拡散板の表面状態が平滑性を維持することから光の散乱が充分には得られず光拡散性に劣り、また30μmを超えると得られる光拡散板の表面状態が平滑に近づくため光が直進し透過してしまうことから光の散乱が低下して光拡散性、光源透過防止性に劣るので好ましくない。微粒子の平均粒子径を測定する一般的な方法としては、コールター法、動的光散乱法、遠心沈降法等が挙げられる。
【0061】
スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子の屈折率は、1.54~1.57の範囲である。より好ましい範囲は、1.55~1.57の範囲である。屈折率が1.54未満では、ヘーズが発生して光透過性が低下する場合がある。また、1.57を超えると、光拡散性が低下する場合がある。屈折率は、微粒子を共重合する際のスチレンとメチルメタクリレートのそれぞれのモノマーの重合比率を調整することにより変化させることができる。
【0062】
スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子としては、例えば、積水化成品工業社製SMX-12R(平均粒径12.3μm、屈折率1.56)、またはGuide Win Special Chemicals社製GMS-6121(平均粒径11.3μm、屈折率1.56)等が商業的に入手可能である。
【0063】
スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子の屈折率を測定する一般的な方法としては、ベッケ法が挙げられる。スライドガラス上に樹脂粒子を載せ、屈折液(CARGILLE社製:カーギル標準屈折液)を滴下する。樹脂粒子と屈折液をよく混ぜ、下からナトリウムランプを照射し上部から粒子の輪郭を観察して、輪郭が見えない場合、屈折液と樹脂粒子の屈折率が等しいとする。光拡散剤の屈折率と、芳香族ポリカーボネート樹脂の屈折率との差の絶対値は、0.02~0.2であることが好ましい。屈折率の差がこの範囲にあることにより、光拡散性と全光線透過率とを高いレベルで両立させることが可能となる。光拡散剤の屈折率は、芳香族ポリカーボネート樹脂の屈折率よりも低いことがより好ましい。
【0064】
拡散剤の好ましい平均粒径は0.1~50μmであり、より好ましくは0.5~10μmであり、特に好ましくは1~5μmである。光拡散剤の平均粒径が小さ過ぎると、十分な光分散効果が得られず、大き過ぎると成形体表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりする。ここで、光拡散剤の平均粒径とは、コールターカウンター法にて測定した体積平均粒子径を採用する。コールカウンター法は、サンプル粒子を懸濁させた電解質を細孔(アパチャ-)に通過させ、そのときに粒子の体積に比例して発生する電圧パルスの変化を読み取って粒子径を定量するもので、また電圧パルス高を1個ずつ計測処理して、サンプル粒子の体積分布ヒストグラムを得ることができる。このようなコールカウンター法による粒径又は粒径分布測定は、粒度分布測定装置として最も多用されているものである。
【0065】
また、光拡散剤(C)としては、光拡散性の点から、ポリカーボネート樹脂(A)との屈折率差(Δn)が0.01以上のものが好ましい。また、光拡散性を十分に発揮させて、例えば成形体(光拡散板等)の後ろの光源が透けて見える等の不具合を抑制し、更には、十分な輝度を発揮させるため、光拡散剤は、ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が、0.05以上がより好ましく、0.07以上が特に好ましい。
【0066】
また、光拡散剤(C)の質量平均粒径は、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。質量平均粒径が小さ過ぎると、得られるポリカーボネート樹脂組成物の光拡散性が劣り、拡散板等として使用した場合に光源が透けて見えたり、視認性に劣ったりする傾向があり、逆に大き過ぎると含有量に対する拡散効果が低くなる可能性がある。
【0067】
なお、光拡散剤(C)は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。シリコーン系光拡散剤と他の光拡散剤を併用するのが好ましい。
【0068】
シリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤及びスチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子のいずれかと、無機系光拡散剤(無機微粒子)とを併用しても良い。シリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤及びスチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子のいずれかと無機系光拡散剤とを併用した場合、シリコーン系または有機系拡散剤の配合量を削減しつつ、削減前と同様の光拡散性を得ることができる。併用する無機系光拡散剤としては、酸化チタン(白色顔料)が好ましい。酸化チタンとしては、石原産業(株)製TIPAQUE(登録商標) PC-3、レジノカラー工業(株)製CP-K、Kronos社製KRONOS(登録商標)2233等を使用することができる。
【0069】
光拡散剤(C)の配合量は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.1~6.0重量部が好ましく、1.0~5.0重量部がさらに好ましい。0.1重量部未満では光が充分に散乱せず光源の視認性防止の効果に劣り、また6.0重量部を超えると透過率が著しく低下するおそれがある。
【0070】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、リン系酸化防止剤(D)を含んでもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリエーテル誘導体(B)と拡散剤(C)とリン系酸化防止剤(D)とを同時に含む場合、光拡散性成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、特に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性を劣化させず、加えて使用状況に起因する劣化を防止することが出来る。
【0071】
リン系酸化防止剤(D)は、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り特に制限されることはないが、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
【化3】
【0072】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、前記リン系酸化防止剤(D)が、下記式(12)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(13)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(14)で表される亜リン酸エステル化合物及び下記式(15)で表される亜リン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0073】
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(12)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0074】
式(12):
【化4】
(式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、0~3の整数を示す)
【0075】
前記式(12)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0076】
式(12)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0077】
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(13)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0078】
式(13):
【化5】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-(ここで、Rは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【0079】
式(13)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0080】
ここで、炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0081】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-オクチル基等のt-アルキル基、シクロヘキシル基又は1-メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t-ブチル基又はt-ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0082】
前記Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0083】
式(13)において、Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0084】
式(13)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-で表される基を示す。ここで、式:-CHR-中のRは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基及び炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0085】
式(13)において、Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-で表される基を示す。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*-COR-におけるRは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*-COR-における*は、酸素原紙側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0086】
式(13)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0087】
式(13)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0088】
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(14)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0089】
式(14):
【化6】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0090】
式(14)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-24G」として商業的に入手可能である。(株)ADEKA製のアデカスタブPEP-36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0091】
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(15)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0092】
式(15):
【化7】
【0093】
(式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X~Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X~Xが単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(15)から除外される。)
【0094】
式(15)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S-9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-45」(ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
【0095】
下記のことから選択される少なくとも1を満たす、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が好ましい:
前記式(12)で表される亜リン酸エステル化合物が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトを含むこと;
前記式(13)で表される亜リン酸エステル化合物が、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンを含むこと;
前記式(14)で表される亜リン酸エステル化合物が、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンを含むこと;及び
前記式(15)で表される亜リン酸エステル化合物が、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトを含むこと。
【0096】
リン系酸化防止剤(D)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部以下であることが好ましく、0.02~0.2重量部がより好ましい。
【0097】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリエーテル誘導体(B)と共に、光拡散剤(C)、リン系酸化防止剤(D)、以下の式(1)で表される芳香族化合物(E)を含むことがより好ましい。このように、ポリエーテル誘導体(B)、光拡散剤(C)、リン系酸化防止剤(D)、該芳香族化合物(E)を使用することにより、光拡散性成形品に求められる優れた光学特性を維持しつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の使用状況に起因する劣化に加え、エージング劣化などの劣化を防止することが出来る。
【0098】
例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形される光学用成形品が光源(LED光源等)によって長期間光照射されることによる熱劣化(白濁又は着色)が効果的に防止される。光拡散成形品は、炎天下等過酷な条件下で及び/又は光照射を長時間受け続けると、当該成形品表面の温度が上昇することがあり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の熱劣化が少しずつ進行し得る。更に、樹脂組成物中のポリエーテル誘導体(B)が変性し得、通常の光拡散成形品に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に期待される透明性(輝度又は光透過性)を損ない、成形品表面に白濁又は着色(淡~濃着色)現象が生じ得る。
【0099】
本願発明者らは、この課題に鑑み、鋭意検討した結果、ポリエーテル誘導体(B)の変性等の劣化を抑止する化合物として、次式(1)の特定芳香族化合物(E)が特に効果的であり、特定芳香族化合物(E)をポリエーテル誘導体(B)に予め添加するか、あるいは芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得るための溶融混練前に添加することにより、成形品中でのポリエーテル誘導体(B)の劣化を抑止して白濁又は着色(淡~濃着色)現象を低減又は緩和できることを見出した。
式(1):
【化8】
【0100】
本発明の実施形態で使用される芳香族化合物(E)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.003重量部以下であることが好ましい。芳香族化合物(E)によるポリエーテル誘導体(B)の変性抑制の効果を得るためには、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、芳香族化合物(E)の量が0.0001重量部以上とする。芳香族化合物(E)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.0005重量部以上0.003重量部以下がより好ましい。芳香族化合物(C)の量が0.0001重量部未満の場合は、白濁又は着色の抑止効果が不充分である。逆に芳香族化合物(C)の量が0.003重量部を超える場合、光学成形体に要求される高水準の光線透過率及び色相を達成できない場合があるため望ましくない。
【0101】
以上の成分に加えて、実施の形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分である紫外線吸収剤を、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。
【0102】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-butyl-2-hydroxy-5-methylphenyl)-5-chloro-2H-benzotriazole、2-(3,5-di-tert-pentyl-2-hydroxyphenyl)-2H-benzotriazole、2-(2H-benzotriazole-2-yl)-4-methyl-6-(3,4,5,6-tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2-(2-hydroxy-4-octyloxyphenyl)-2H-benzotriazole、2-(2-hydroxy-5-tert-octylphenyl)-2H-benzotriazole、2-[2’-hydroxy-3,5-di(1,1-dimethylbenzyl)phenyl]-2H-benzotriazole、2,2’-Methylenbis[6-(2H-benzotriazol-2-yl)4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol]などが挙げられる。なかでも、特に、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好適であり、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
【0104】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシフェニル-4-ヘキシルオキシフェニル)1,3,5-トリアジン、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
【0105】
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU等が商業的に入手可能である。
【0106】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2、4-dihydroxybenzophenone、2-hydroxy-4-n-octoxybenzophenoneなどが挙げられる。
【0107】
紫外線吸収剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0~1.0重量部であり、0~0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤の量が1.0重量部を超える場合は、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。また、紫外線吸収剤の量が0.1重量部以上の場合は、特に、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
【0108】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、エポキシ化合物(F)を含むことができる。このように、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリエーテル誘導体(B)と芳香族化合物(E)とエポキシ化合物(F)とを同時に含む場合、光拡散性成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性を劣化させず、使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化を防止することが出来る。
【0109】
エポキシ化合物(F)は、少なくとも1つのエポキシ基を分子内に有し、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り、特に制限されることはない。エポキシ化合物(F)は、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ化大豆油、ε-カプロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマー、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン-ジグリシジルエーテル等を含むことができる。エポキシ化合物(F)は、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含むことが好ましい。
【0110】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、エポキシ化合物(F)を、0.001~0.2重量部含むことが好ましく、0.002~0.1重量部含むことがより好ましく、0.005~0.05重量部含むことが特に好ましい。本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、エポキシ化合物(E)を、0.001~0.2重量部含む場合、光拡散性成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性(積算透過率および黄色度)を向上させ、使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化を防止することが出来る。
【0111】
さらに、実施の形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0112】
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル誘導体(B)及び光拡散剤(C)を混合し、必要に応じて、リン系酸化防止剤(D)、芳香族化合物(E)、エポキシ化合物(F)、前記各種添加剤、及び直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリマー等を混合する製造方法を例示することができる。本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。芳香族化合物(E)は、溶融混練前に混合してもよいし、予めポリエーテル誘導体(B)に添加又は混合してもよい。
【0113】
前記のごとく得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2~8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2~8mm程度、短径が1~4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1~6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
【0114】
本発明の実施形態の光拡散性成形品は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。大型かつ薄肉の光拡散板(特に画像表示装置用光拡散板)としては、表面積が500~50000cmである光拡散板が得られる。光拡散板の表面積は1000~25000cmが好ましく、厚さは0.3~3mmが好ましい。このように、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物によれば、大型であり、寸法安定性が高く、かつ薄肉(軽量)である光拡散板を製造できる。
【0115】
本発明が目的とする光拡散性成形品を得ることができる限り、光拡散性成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等により芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0116】
本発明に係る光拡散性成形品は、例えば、光拡散板、光拡散フィルム、電子・電気機器、OA機器の部品、車両部品、機械部品、農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、雑貨等が挙げられる。具体的には、画像表示装置用光拡散板(液晶表示装置等のバックライトモジュールに用いられる光拡散板、プロジェクターテレビ等の投影型表示装置のスクリーンに用いられる光拡散板等)等として好適である。液晶表示装置等のバックライトモジュールとしては、各種の光源(冷陰極管、LED等)を用いることができる。
【0117】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例
【0118】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0119】
原料として以下のものを使用した。
1.直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂:
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量:15000、住化ポリカーボネート(株)製のSDポリカ 200-80(商品名)、「SDポリカ」は住化ポリカーボネート(株)の登録商標、以下(A1)ともいう。
【0120】
2.ポリエーテル誘導体(B):
2-1.テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットからなる変性グリコール(ランダム共重合)
重量平均分子量:2000、pH:6.7(JIS K1557-5)、日油(株)製のポリセリンDCB-2000(商品名)、以下(B1)ともいう。
【0121】
2-2.エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットからなる変性グリコール(ランダム共重合)
重量平均分子量:1750、日油(株)製のユニルーブ50DE-25(商品名)、以下(B2)ともいう。
【0122】
2-3.ポリテトラメチレングリコール
重量平均分子量:1000、保土谷化学工業(株)製のPTG-1000SN(商品名)、以下(B3)ともいう
【0123】
3.光拡散剤(C):
3-1.ポリメチルシルセスキオキサン系拡散剤
サムソン社製のSL-200M(商品名)、以下(C1)ともいう。
3-2.アクリル系拡散剤
アイカ工業(株)製のGM-0449S(商品名)、以下(C2)ともいう。
3-3.スチレン-メチルメタクリレート共重合架橋微粒子
積水化成品工業社製のSMX-12R(商品名)、以下(C3)ともいう。
3-4.無機系拡散剤(酸化チタン)
石原産業(株)製のTIPAQUE(登録商標)PC-3(商品名)、以下(C4)ともいう)
【0124】
4.リン系酸化防止剤(D):
4-1.以下の式で表される、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
【化9】
BASF社製のイルガフォス168(商品名)、以下(D1)ともいう。
【0125】
4-2.以下の式で表される、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
【化10】
住友化学(株)製のスミライザーGP(商品名)、以下(D2)ともいう。
【0126】
4-3.以下の式で表される、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9-ビス[2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)
【化11】
Dover Chemical社製のDoverphos S-9228(商品名)、以下(D3)ともいう。
【0127】
4-4.以下の式で表される、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
【化12】
ADEKA製のアデカスタブPEP-36(商品名)、以下(D4)ともいう。
5.芳香族化合物(E):
3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
和光純薬工業(株)製、以下(E1)ともいう。
【0128】
6.エポキシ化合物(F)
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート
(株)ダイセル化学工業製のセロキサイド2021P(商品名)、以下(F1)ともいう。
【0129】
(実施例1~14及び比較例1及び2)
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度230℃にて溶融混練し、実施例1~11、並びに、比較例1及び2の各々の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例及び比較例で得られたペレットはいずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体は、各々長さの平均値が約5.1mm~約5.4mm、断面楕円の長径の平均値が約4.1mm~約4.3mm、短径の平均値が約2.2mm~約2.3mmであった。
【0130】
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1に示す。
【0131】
(試験片の作製方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度290℃、金型温度80℃にて、幅50mm×長さ90mmの3段プレート状試験片(厚み3mm部分:長さ35mm/厚み2mm部分:長さ30mm/厚み1mm部分:長さ25mm)を作成した
【0132】
(試験片の評価方法)
1.全光線透過率(%):
得られた3段プレート状試験片の1mm部分を用い、JIS K7361に準拠して全光線透過率を測定した。数値が大きいほど、成形品の光透過性が良好であることを示す。厚み1mmの成形品で全光線透過率の値が40%以上を良好○、それ以外を×とした。
【0133】
2.光拡散度(度):
上記1で用いた3段プレート状試験片の1mm部分を用い、自動変角光度計(村上色彩技術研究所製ゴニオフォトメーターGP-1R)により光拡散性(D50)を求めた。詳細な測定法は以下のとおりである。この数値が大きいほど成形品の光拡散性が良好であることを示す。自動変角光度計の光源からの直進光線を試験片の法線方向から当て、可動式受光器にて透過光の強度を測定し、法線方向からの角度に対して透過率をプロットし、直進光透過率の50%の透過率になるところの角度(D50)を求めた。単位は「度」であり、光拡散性(D50)が30度以上を良好とした。
【0134】
3.光源透視防止性(目視判定):
フィリップス製20W形直管形LEDランプの中央部に3cm×5cmの長方形状の穴を開け、その部分に3cm×5cm×1mmの射出成形板をLED光源から約1.5cmの高さに設置した。光源透視防止性は、LEDランプに設置した射出成形板上約20cmの高さから目視判定した。十分な光拡散性を備え、LED光源の輪郭が消失している場合は、極めて良好◎と判定した。LED光源の輪郭がやや分かる場合を良好○、光拡散性が乏しくLED光源の輪郭がはっきり分かる場合を不良×と判定した。
【0135】
4.黄色度:
得られた3段プレート状試験片の1mm部分を用い、分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)にて、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の試験片の加熱試験前後の黄色度(以下、YI)を求めた。加熱試験は、上記試験片をエスペック社製イナートオーブンIPHH-201Mの中に設置し、90℃で500時間保持することによって行った。なお、YIが4.0以下を良好◎、4.0を超え、5.0以下を使用可○、5.0を超えると不良×とした。
【0136】
表1~3に、各実施例及び比較例の原料及び配合割合、評価結果を併せて示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0137】
実施例1~14の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル誘導体(B)及び光拡散剤(C)を含み、必要に応じて、リン系酸化防止剤(D)、芳香族化合物(E)及びエポキシ化合物(F)等を、各々特定の割合で含む。したがって、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、必要とされる全光線透過率、光拡散性、光源透視防止性が高く、黄色度が小さく、かつ加熱試験後の劣化も殆ど無い。
【0138】
そして、このような芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、黄色度が小さく色相に優れ、しかも加熱試験後の劣化も殆ど無い。
【0139】
これに対して、比較例1の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、光拡散剤の配合量が少ないので、光拡散度が低く、光源透視防止性が悪かった。また、比較例2の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、光拡散剤の配合量が多いため、全光線透過率が低くなった。
【0140】
以上のように本発明における技術の例示として実施の形態を説明した。そのために詳細な説明を提供した。
【0141】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0142】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、熱安定性及び耐候性に優れ、しかも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品を加熱した場合でも外観及び光学特性に優れたものである。よって、例えば厚さ0.3mm程度の薄型の拡散光源の拡散板表面への長期照射により加熱状態が継続されるような用途に用いた場合でも、得られる拡散板の色相が変化して外観や光学特性が低下することもなく、工業的利用価値が極めて高い。