(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】連結器具及び薬剤調製用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61J1/20 316C
(21)【出願番号】P 2021040741
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】久保 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】岩原 和宏
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079331(JP,A)
【文献】特開2019-042587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックカラーを備えたノズル部を有するシリンジが離脱可能に装着されるシリンジ装着部と、
バイアルが装着されるバイアル装着部と、
前記シリンジと前記バイアルとを連通させる両頭針と
を、含む連結器具であって、
前記シリンジの前記ノズル部を覆蓋するキャップが、前記ロックカラーへの係合部を有するキャップホルダに組み付けられていると共に、
該係合部を該ロックカラーへの係合状態に保持する保持機構が設けられており、
前記シリンジと前記バイアルとが相対的に接近移動されて前記両頭針によって連通状態とされるのに伴って、該保持機構における該係合部と該ロックカラーとの係合状態の保持を解除
して、回転を要しない引き抜きによって該シリンジを離脱可能とする解除機構が設けられている連結器具。
【請求項2】
前記シリンジ装着部において前記シリンジの前記ノズル部に装着された前記キャップを保持せしめて、該シリンジ装着部からの該シリンジの離脱に際して該ノズル部から分離された該キャップを留置させるキャップ留置機構が設けられている請求項1に記載の連結器具。
【請求項3】
前記キャップホルダの前記係合部が、前記ロックカラーの外周面に対して凹凸係合されるようになっており、
前記保持機構が、該係合部の外周側に配されて該係合部の外周側への変形を制限することにより該係合部を該ロックカラーの該外周面への係合状態に保持する変形制限部を含んで構成されている
請求項1又は2に記載の連結器具。
【請求項4】
前記変形制限部が、前記両頭針と一体的に設けられており、
該両頭針が前記シリンジに対して相対的に接近方向に移動されて前記キャップに穿刺されるのに伴って、該シリンジに装着された前記キャップホルダの前記係合部を外れた位置へ該変形制限部が移動して、該係合部の外周側への変形による前記ロックカラーからの離脱が許容されることによって、前記解除機構が構成されている
請求項3に記載の連結器具。
【請求項5】
前記両頭針に対して前記バイアルの挿入による押込力が及ぼされるようになっており、かかる押込力によって該両頭針が前記シリンジに対して接近方向に移動して前記キャップに穿刺されるようになっている
請求項4に記載の連結器具。
【請求項6】
軸方向各一方の開口側から前記シリンジと前記バイアルが装着可能とされた筒状のハウジング部材を備えており、
該ハウジング部材には前記両頭針が軸方向で移動可能に組み付けられており、
該ハウジング部材において前記シリンジが装着可能とされた開口側には、前記キャップ及び前記キャップホルダの挿入を許容し且つ離脱を阻止する第1の係止機構が設けられており、
該ハウジング部材において前記バイアルが装着可能とされた開口側には、該バイアルの挿入を許容し且つ離脱を阻止する第2の係止機構が設けられている
請求項1~5の何れか1項に記載の連結器具。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の連結器具に対して、前記シリンジ装着部に着脱可能な前記シリンジが組み合わされた薬剤調製用デバイスであって、
該シリンジは、シリンジ本体と、該シリンジ本体とは別部品とされて該シリンジ本体の前記ノズル部に固定的に装着された前記ロックカラーとを、有している薬剤調製用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルとシリンジとを連結する連結器具、及びかかる連結器具を用いた薬剤調製用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バイアル内の粉末製剤等とシリンジ内の溶解液等を混合して調製するためにバイアルとシリンジとを連結する連結器具が知られている。例えば、本出願人は、特許第5333850号公報(特許文献1)において、注射器とバイアルを連結する連結器具を開示した。かかる連結器具によれば、注射器の内部空間とバイアルの内部空間とを連通させてバイアル内の粉末製剤等を注射器内の溶解液等に溶解した後、当該連結器具から取り外した注射器により、液状の薬剤として患者に投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示した連結器具では、注射器の口部の外周面に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を備えた注射器保持部材が採用されており、これらの雄ねじ部と雌ねじ部を互いに係合/解除することで、注射器を連結器具に対して連結させたり離脱させることができるようになっている。
【0005】
ところが、かかる特許文献1に実施例として記載の連結器具では、注射器の連結器具からの不用意な離脱を阻止するために、雌雄ねじ部に対して軸方向に延びる溝を設けると共に、かかる溝に入り込んで雌雄ねじ部の相対回転を阻止/許容する離脱防止手段を、当該雄ねじ部に螺合可能な部分ねじ構造をもって両頭針と一体的に形成する必要がある。そのために、注射器や連結器具(注射器保持部材)などの形状が比較的複雑となってしまい、注射器や連結器具などの各部材の形状や材質が制限されるために、製造が難しくなるおそれがあり、また、注射器の離脱に際して回転を伴う特定操作が必要になって迅速な作業への対応が難しくなるなどのおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、特許文献1に記載の連結器具について実用性を向上し得る少なくとも1つの改善が施された、新規な連結器具及び薬剤調製用デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、ロックカラーを備えたノズル部を有するシリンジが離脱可能に装着されるシリンジ装着部と、バイアルが装着されるバイアル装着部と、前記シリンジと前記バイアルとを連通させる両頭針とを、含む連結器具であって、前記シリンジの前記ノズル部を覆蓋するキャップが、前記ロックカラーへの係合部を有するキャップホルダに組み付けられていると共に、該係合部を該ロックカラーへの係合状態に保持する保持機構が設けられており、前記シリンジと前記バイアルとが相対的に接近移動されて前記両頭針によって連通状態とされるのに伴って、該保持機構における該係合部と該ロックカラーとの係合状態の保持を解除して、回転を要しない引き抜きによって該シリンジを離脱可能とする解除機構が設けられているものである。
【0009】
本態様の連結器具では、保持機構によりキャップホルダにおける係合部がロックカラーに係合した状態で保持される。これにより、ロックカラーを備えたシリンジが連結器具に連結された状態で保持されて、シリンジが連結器具から意図せず脱落することが防止される。また、シリンジとバイアルが連通状態とされることに伴って、解除機構によりキャップホルダにおける係合部とロックカラーとの係合状態の保持が解除されることから、バイアルの接続前にシリンジが連結器具から離脱することが防止される。
【0010】
このように、本態様の連結器具では、キャップに組み付けられてロックカラーに係合するキャップホルダを新たに採用し、当該キャップホルダのロックカラーへの係合/離脱を両頭針による連通操作と対応して実現する保持機構/解除機構を設けたことにより、連結器具に対するシリンジの連結及び離脱が、前記特許文献1の実施例に記載のような溝付きねじや部分ねじなどの特別なねじ構造を用いることなく実現することが可能になる。それ故、特許文献1の実施例に記載の連結器具に比して、例えば連結器具の構造を簡単にして製造を容易にしたり、また、シリンジのロックカラーを含む各部材の設計自由度や材質の選択自由度などを向上させることも可能になる。
【0011】
第2の態様は、前記第1の態様に係る連結器具において、前記シリンジ装着部において前記シリンジの前記ノズル部に装着された前記キャップを保持せしめて、該シリンジ装着部からの該シリンジの離脱に際して該ノズル部から分離された該キャップを留置させるキャップ留置機構が設けられているものである。
【0012】
本態様の連結器具では、シリンジの離脱時にキャップが連結器具の内部に留まることから、離脱後にシリンジからキャップを外す手間をなくすことができる。また、使用者が、シリンジの離脱後にキャップに触れることがないことから、シリンジに収容されていた薬剤等に誤って接触することも回避される。なお、キャップは、連結器具におけるシリンジ装着部においてキャップ留置機構により直接的に保持されてもよいし、キャップに組み付けられるキャップホルダがキャップ留置機構により保持されることでシリンジ装着部に保持されるようになっていてもよい。
【0013】
第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る連結器具において、前記キャップホルダの前記係合部が、前記ロックカラーの外周面に対して凹凸係合されるようになっており、前記保持機構が、該係合部の外周側に配されて該係合部の外周側への変形を制限することにより該係合部を該ロックカラーの該外周面への係合状態に保持する変形制限部を含んで構成されているものである。
【0014】
本態様の連結器具では、キャップホルダの係合部とロックカラーとの係合が凹凸係合により実現されており、保持機構における変形制限部により当該凹凸係合が保持される。これにより、比較的簡単な構造の保持機構が実現されて、形状や材質の自由度をより確実に向上させることができる。
【0015】
第4の態様は、前記第3の態様に係る連結器具において、前記変形制限部が、前記両頭針と一体的に設けられており、該両頭針が前記シリンジに対して相対的に接近方向に移動されて前記キャップに穿刺されるのに伴って、該シリンジに装着された前記キャップホルダの前記係合部を外れた位置へ該変形制限部が移動して、該係合部の外周側への変形による前記ロックカラーからの離脱が許容されることによって、前記解除機構が構成されているものである。
【0016】
本態様の連結器具では、変形制限部がキャップホルダの係合部とロックカラーとの係合位置から外れることで凹凸係合が解除可能であることから、解除機構が比較的簡単な構造をもって実現され得る。また、変形制限部が両頭針と一体的に設けられていることから、部品点数の増加を抑えることもできて、連結器具をより簡単な構造をもって製造することができる。
【0017】
第5の態様は、前記第4の態様に係る連結器具において、前記両頭針に対して前記バイアルの挿入による押込力が及ぼされるようになっており、かかる押込力によって該両頭針が前記シリンジに対して接近方向に移動して前記キャップに穿刺されるようになっているものである。
【0018】
本態様の連結器具では、バイアルが挿入されることで両頭針及び変形制限部がシリンジ側に移動し、キャップホルダの係合部とロックカラーとの凹凸係合が解除されて、連結器具からシリンジが離脱可能とされる。即ち、バイアルの挿入に伴って解除機構によりキャップホルダの係合部とロックカラーとの凹凸係合が解除されることから、凹凸係合の解除に際して複雑な操作を行う必要がなく、解除機構による解除作動を容易に行うことができる。
【0019】
第6の態様は、前記第1~第5の何れかの態様に係る連結器具において、軸方向各一方の開口側から前記シリンジと前記バイアルが装着可能とされた筒状のハウジング部材を備えており、該ハウジング部材には前記両頭針が軸方向で移動可能に組み付けられており、該ハウジング部材において前記シリンジが装着可能とされた開口側には、前記キャップ及び前記キャップホルダの挿入を許容し且つ離脱を阻止する第1の係止機構が設けられており、該ハウジング部材において前記バイアルが装着可能とされた開口側には、該バイアルの挿入を許容し且つ離脱を阻止する第2の係止機構が設けられているものである。
【0020】
本態様の連結器具では、ハウジング部材において第1の係止機構及び第2の係止機構が設けられていることから、かかるハウジング部材により、キャップ及びキャップホルダが装着されたシリンジ、バイアルを組付状態に保持することが可能になる。
【0021】
第7の態様は、前記第1~第6の何れかの態様に記載の連結器具に対して、前記シリンジ装着部に着脱可能な前記シリンジが組み合わされた薬剤調製用デバイスであって、該シリンジは、シリンジ本体と、該シリンジ本体とは別部品とされて該シリンジ本体の前記ノズル部に固定的に装着された前記ロックカラーとを、有しているものである。
【0022】
本態様の薬剤調製用デバイスでは、シリンジ本体とロックカラーとが別部品とされていることから、例えばシリンジ本体やロックカラーの設計自由度の向上等が図られ得る。それ故、例えばシリンジ本体の材質としてガラスを採用すると共に、合成樹脂製のロックカラーを採用することもできて、従来から市販されている比較的単純な形状のガラス製のシリンジを適用することも可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特許文献1に記載の連結器具に比して、例えば構造の簡略化など、実用性を向上し得る少なくとも1つの改善が施された、連結器具及び薬剤調製用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の1実施形態としての薬剤調製用デバイスを示す斜視図
【
図5】
図1に示された薬剤調製用デバイスを構成する移注針ユニットの縦断面斜視図
【
図7】
図5に示された移注針ユニットにおける別の方向からの分解斜視図
【
図8】
図1に示された薬剤調製用デバイスを構成するキャップユニットの分解斜視図
【
図9】
図1に示された薬剤調製用デバイスを構成するネストシリンジを示す斜視図
【
図10】
図8に示されたキャップユニットを構成するキャップホルダを拡大して示す縦断面図
【
図11】
図1に示された薬剤調製用デバイスにバイアルを装着した状態を示す縦断面図であって、
図3に対応する図
【
図13】
図11に示された薬剤調製用デバイスにおいてシリンジとバイアルとが連通した状態を示す縦断面図であって、
図3に対応する図
【
図15】
図13に示された薬剤調製用デバイスからロックカラーを備えたシリンジを離脱させた状態を示す縦断面図であって、
図3に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1~4には、本発明の1実施形態としての連結器具10が示されている。この連結器具10は、溶解液等が収容されたシリンジ12と、粉末製剤等が収容されたバイアル14とを連結するものである。
図1~4には、連結器具10にシリンジ12が装着された薬剤調製用デバイス16が、バイアル14の装着前の初期状態で示されている。なお、以下の説明において、軸方向とは、連結器具10に設けられた後述する移注針22の針軸方向、及び移注針22を収容する略筒状の後述するハウジング部材24の中心軸方向をいい、
図2中の上下方向である。また、上下方向とは
図2中の上下方向をいうが、連結器具10の実際の使用時の方向が鉛直方向などに限定されるものではない。
【0027】
より詳細には、連結器具10は、シリンジ12が離脱可能に装着されるシリンジ装着部18と、バイアル14が装着されるバイアル装着部20と、シリンジ12とバイアル14を連通させる両頭針である移注針22とを備えている。連結器具10は、内部に移注針22を収容する略筒状のハウジング部材24を備えている。そして、ハウジング部材24の軸方向一方の開口側(上方開口部25a側)がシリンジ装着部18とされてシリンジ12が装着可能であると共に、ハウジング部材24の軸方向他方の開口側(下方開口部25b側)がバイアル装着部20とされてバイアル14が装着可能である。
【0028】
ハウジング部材24は、
図5~7にも示されるように、合成樹脂によって一体成形された略段付きの筒形状とされており、下側が上側よりも大径の大径筒部26であると共に、上側が大径筒部26よりも小径の小径筒部28である。本実施形態では、大径筒部26が略円筒形状とされている一方、小径筒部28が、円筒状の周壁において径方向両側(
図3中の左右方向両側)が、外方に膨らんだ形状とされている。即ち、小径筒部28は、径方向一方向で対向する両側において、外方に膨出する膨出部30,30を備えており、小径筒部28は、膨出部30,30の形成部位において部分的に内外径寸法が大きくされている。そして、これら大径筒部26と小径筒部28とが、環状壁部32により連結されている。本実施形態では、環状壁部32が、外周側になるにつれて下方となるように僅かに傾斜している。なお、ハウジング部材24は、装着されるバイアル14に応じてサイズや形状が適宜に変更され得る。
【0029】
環状壁部32の内周部分には、それぞれ下方に突出して径方向で対向する一対の第1弾性片34,34と、一対の第2弾性片36,36とが設けられている。第1弾性片34,34の対向方向と第2弾性片36,36の対向方向は相互に異ならされており、本実施形態では、第1弾性片34,34の対向方向と第2弾性片36,36の対向方向が、相互に直交している。即ち、本実施形態では、第1弾性片34,34が
図3中の左右方向で対向していると共に、第2弾性片36,36が
図4中の左右方向で対向している。なお、第1弾性片や第2弾性片はそれぞれ3つ以上設けられてもよく、例えば周方向で相互に離隔して略等間隔に設けられてもよい。
【0030】
第1弾性片34,34の突出先端部分(下端部分)には、内周側に突出する係止爪38,38が設けられている。また、
図4にも示されるように、薬剤調製用デバイス16においてバイアル14が装着される前の初期状態では、第2弾性片36,36が、下方になるにつれて内周側に傾斜している。これら第1弾性片34,34及び第2弾性片36,36は、ある程度の周方向寸法及び上下方向寸法を有しており、本実施形態では、大径筒部26の上下方向中央部分のあたりまで延び出している。また、第1弾性片34,34及び第2弾性片36,36は比較的薄肉であり、それぞれ径方向(
図3中の左右方向及び
図4中の左右方向)で弾性変形可能である。
【0031】
さらに、
図7にも示されるように、大径筒部26の内周面には、周方向に延びる周方向リブ40が設けられている。本実施形態では、2つの周方向リブ40,40が、相互に軸方向で離隔して設けられており、1つの周方向リブ40が、大径筒部26の下端(下方開口部25b)に設けられていると共に、もう1つの周方向リブ40が、大径筒部26の下端から上方に離隔した位置に設けられている。これらの周方向リブ40,40は、大径筒部26の内周面において、それぞれ周方向の略全周に亘って設けられているが、周方向で部分的であってもよい。
【0032】
更にまた、大径筒部26の内周面には、軸方向(上下方向)に延びる軸方向リブ42が複数本設けられており、本実施形態では、大径筒部26の上下方向略全長に亘って設けられている。また、本実施形態では、軸方向リブ42が第1弾性片34と第2弾性片36の周方向間に設けられており、大径筒部26において4つの軸方向リブ42が設けられている。軸方向リブ42の本数は4本に限定されるものではないが、複数本設けられることが好ましい。なお、周方向リブ40や軸方向リブ42の断面形状は限定されるものではないが、本実施形態では、内周側に向かって狭幅となる略山形の断面形状とされている。
【0033】
また、
図5にも示されるように、小径筒部28の内周側には、内側壁部43が設けられている。かかる内側壁部43は、膨出部30,30以外の周壁部分では小径筒部28の内周面から突出して周方向に延びる凸状部として形成されている一方、膨出部30,30の周壁部分では、小径筒部28の内周面から径方向内方に離隔して周方向に延びる内周壁状部として形成されている。
【0034】
そして、内側壁部43において、膨出部30,30の各内周側に位置する内周壁状部は、下方に延び出す弾性係止片44,44とされている。これら弾性係止片44,44の突出基端部分(内側壁部43の上側部分)45a,45aは略平板形状とされており、上下方向に広がっていると共に、弾性係止片44,44の突出先端部分(内側壁部43の下側部分)45b,45bは、それぞれ対向方向内方に傾斜している。そして、かかる弾性係止片44,44の突出先端部分45b,45bが、対向方向(
図3中の左右方向)で弾性変形可能とされている。
【0035】
ハウジング部材24に収容される移注針22は、ハウジング部材24に対して軸方向で移動可能に組み付けられる針保持部材46に保持されており、本実施形態では、これら移注針22及び針保持部材46が、合成樹脂により一体的に形成されている。
【0036】
両頭針である移注針22は、上下方向にストレートに延びており、シリンジ12側に突出する上方突出部48とバイアル14側に突出する下方突出部50とを備えている。これら上方突出部48と下方突出部50の端部は、それぞれ先鋭形状とされている。
図3~7にも示されているように、移注針22は中空であり、本実施形態では、シリンジ12側の開口部が上方突出部48の上端部分においてテーパ状刃面のように形成されている一方、バイアル14側の開口部が下方突出部50の下端部分の円錐状外周面に開口形成されているが、具体的形状は限定されない。特に、本実施形態では、上方突出部48が、下方部分において、下方に向かって外径寸法が次第に大きくなるテーパ部51を有している。そして、後述するように、移注針22における上方突出部48をキャップ102の閉塞部116に穿刺した際に、テーパ部51がキャップ102における下端部の内周面に当接することで、移注針22とキャップ102との気密性が確保されるようになっている。
【0037】
また、針保持部材46は、移注針22の上下方向中央部分において、外周側に突出する円環状の底壁部52を備えていると共に、当該底壁部52の外周縁部からは、略筒状の周壁部54が下方に向かって突出している。換言すれば、底壁部52の中央部分から、上下方向両側に移注針22の上方突出部48と下方突出部50が突出している。
【0038】
底壁部52の径方向中間部分には、径方向(
図3中の左右方向)で対向する一対の腕部56,56が上方に突出して設けられていると共に、両腕部56,56の突出先端部(上端部)には、対向方向内方に突出して、後述するキャップホルダ104の弾性係合部126,126の外周側への変形を制限する変形制限部58,58が設けられている。なお、腕部56,56は、それぞれ底壁部52の周方向に沿って湾曲して設けられていると共に、変形制限部58,58における対向方向内面は、湾曲しておらず略平面とされている。
【0039】
また、底壁部52において腕部56,56の外周側には、底壁部52を上下方向で貫通する挿通孔60,60が形成されている。これら挿通孔60,60は、それぞれある程度の幅方向寸法(底壁部52の径方向寸法)と長さ寸法(底壁部52の周方向寸法)を有している。さらに、底壁部52の上面において、移注針22と腕部56との径方向間には、環状の嵌合突部62が設けられている。
【0040】
更にまた、周壁部54及び底壁部52において両腕部56,56の対向方向と直交する方向の両側(
図4中の左右方向両側)には、所定の周方向領域に亘って外周側及び上方に開口する収容領域64,64が形成されている。これら収容領域64,64の底壁66,66は、周壁部54よりも内周側に位置していると共に、底壁66,66の上側部分及び底壁部52は、厚さ方向で貫通している。これにより、収容領域64,64は、上方に開放されている。そして、底壁66の上端部分における周方向両側は、バイアル14が装着される前の初期状態において、ハウジング部材24の第2弾性片36と当接する当接部68,68とされている。
【0041】
また、当接部68,68の周方向間には、当接部68,68とは周方向で隙間を隔てて上方に突出する弾性接触片70が設けられている。この弾性接触片70は、底壁66の上端の当接部68,68よりも上方まで突出しており、厚さ方向(底壁部52の径方向)で弾性変形可能である。そして、弾性接触片70の突出基端部分(下方部分)は上方になるにつれて内周側に傾斜していると共に、突出先端部分(上方部分)は真っ直ぐ上方に突出している。これにより、
図4にも示されるように、バイアル14が装着される前の初期状態において、ハウジング部材24の第2弾性片36が、底壁66における当接部68,68と略上下方向で突き当たって当接していると共に、当接部68,68の周方向間に位置する弾性接触片70の突出先端部分が、ハウジング部材24の第2弾性片36に対して内周側から当接するか、内周側に僅かに離隔して位置している。
【0042】
さらに、周壁部54の外周面における下端には、外周側に突出して周方向に延びる外周突部72が設けられている。この外周突部72は、周方向の略全周に亘って設けられており、後述するハウジング部材24と針保持部材46との組付時に、ハウジング部材24の大径筒部26における周方向リブ40と係合することが可能であると共に、周壁部54において外周突部72より上方の部分の外周面は大径筒部26の内周面と略接触しないようになっている。また、外周突部72の上下方向寸法は十分に小さくされており、外周突部72と大径筒部26の内周面とが当接している状態でも、相互の当接に伴う摩擦が十分に小さくされて針保持部材46がハウジング部材24に対して移動可能とされている。
【0043】
更にまた、周壁部54の外周面において、ハウジング部材24における軸方向リブ42と周方向で対応する位置には、軸方向溝74が設けられている。それ故、本実施形態では、周壁部54の外周面において、4つの軸方向溝74が設けられている。これら軸方向溝74の溝断面形状は、ハウジング部材24の大径筒部26における軸方向リブ42と略等しくされていると共に、軸方向溝74が、周壁部54の上下方向略全長に亘って形成されている。これにより、後述するハウジング部材24と針保持部材46との組付時には、軸方向リブ42が軸方向溝74に入り込むことができて、針保持部材46が軸方向リブ42に沿って軸方向で移動可能であると共に、ハウジング部材24に対する針保持部材46の回転が防止されている。
【0044】
また、周壁部54の内周面において、外周面の軸方向溝74と周方向で対応する位置には、軸方向リブ76が設けられている。即ち、本実施形態では、周壁部54の内周面において、4つの軸方向リブ76が設けられている。これらの軸方向リブ76は、周壁部54における軸方向の略全長に亘って設けられている。軸方向リブ76は、周壁部54の内周面から内周側に突出しており、軸方向リブ76の内周面が、底壁部52の径方向において、底壁66の内周面と略等しい位置にある。これにより、後述するように周壁部54(針保持部材46)の下方開口部78からバイアル14を挿入する際に、バイアル14において外周側に位置する後述するリング状部材148が、底壁66及び軸方向リブ76の内周面に当接して、バイアル14が針保持部材46(薬剤調製用デバイス16)に対して下方から傾くことなく挿入されるようになっている。
【0045】
さらに、周壁部54の内周面における下端において、周方向で隣り合う軸方向リブ76,76の間には、内周側に突出する内周突部80が設けられている。内周突部80は、針保持部材46における腕部56,56の対向方向両側(
図3中の左右方向両側)及び弾性接触片70,70の対向方向両側(
図4中の左右方向両側)において、合計で4つ設けられている。特に、
図4の左右方向両側に設けられている内周突部80,80は、収容領域64,64の底壁66,66に対して連続して形成されている。そして、周方向で略等間隔に離隔する軸方向リブ76及び内周突部80の下面は、それぞれ内周側になるにつれて上方に傾斜しており、後述するようにバイアル14が針保持部材46(薬剤調製用デバイス16)に対して下方から挿入される際に、バイアル14を後述する移注針ユニット82の中央に案内して、バイアル14の中心軸と移注針22の針軸とが相互に位置合わせされるようになっている。
【0046】
本実施形態では、ハウジング部材24と針保持部材46とが相互に組み付けられることで、移注針ユニット82が構成されている。即ち、ハウジング部材24の下方開口部25bから針保持部材46が挿入されて、ハウジング部材24の小径筒部28における膨出部30,30と弾性係止片44,44との隙間を通じて、膨出部30,30に針保持部材46の腕部56,56が差し入れられている。バイアル14の装着前の初期状態では、腕部56,56に設けられた変形制限部58,58が、ハウジング部材24の弾性係止片44,44よりも上方に位置している。また、ハウジング部材24の第1弾性片34,34が、針保持部材46の挿通孔60,60に上方から差し入れられており、係止爪38,38が底壁部52よりも下方に位置している。また、ハウジング部材24の軸方向リブ42が、針保持部材46の軸方向溝74に差し入れられている。
【0047】
さらに、ハウジング部材24の第2弾性片36,36が、針保持部材46の収容領域64,64に上方から差し入れられており、当接部68,68の上端面が第2弾性片36の突出先端と略上下方向で突き当たっていると共に、弾性接触片70の突出先端部分が第2弾性片36の内周面に当接しているか、僅かに離隔している。これにより、針保持部材46がハウジング部材24に対して上方に移動することが防止される。更にまた、針保持部材46の外周突部72が、ハウジング部材24の下方開口部25bにおける周方向リブ40を乗り越えて、周方向リブ40に対して上方から係合している。これにより、針保持部材46がハウジング部材24に対して下方に移動することが防止される。この結果、バイアル14が装着される前の初期状態において、針保持部材46がハウジング部材24に対して上下方向で位置決めされた状態で組み付けられている。
【0048】
本実施形態の薬剤調製用デバイス16では、移注針ユニット82の上方開口部25aからシリンジ12が組み付けられている。本実施形態のシリンジ12は、先端(下端)にノズル部86を有するシリンジ本体88と、ノズル部86に設けられる合成樹脂製のロックカラー94とを含んで構成されている。シリンジ本体88の材質は限定されるものではないが、本実施形態ではガラスにより形成されている。そして、シリンジ本体88に対して、
図8等に示されるキャップユニット96が組み付けられることで、
図9に示されるネストシリンジ97が構成される。
【0049】
シリンジ本体88は、バレル部98を備えており、バレル部98の先端(下端)にバレル部98よりも外径及び内径寸法が小さくされたノズル部86が設けられている。そして、
図4にも示されるように、ノズル部86の基端部分(上端部分)に、外周側に開口する環状凹部100が形成されている。これにより、環状凹部100の形成位置におけるノズル部86の外径寸法が、環状凹部100に上下方向で隣接する部分の外径寸法に比べて、小さくされている。なお、ノズル部86は、基端から先端に向かって次第に外径寸法が小さくされている。
【0050】
キャップユニット96は、
図8に示されるように、ロックカラー94と、シリンジ12のノズル部86を覆蓋するキャップ102と、キャップ102を保持する合成樹脂製のキャップホルダ104とが組み付けられることで構成されている。
【0051】
ロックカラー94は、全体として略円筒状であり、周壁106を備えていると共に、周壁106における軸方向一方の開口部(上方開口部)には、内周側に突出する係止部108が設けられている。本実施形態では、周上で6つの係止部108が、周方向で相互に離隔して略等間隔に設けられている。また、周壁106の外周面における軸方向中間部分には、外周側に開口して周方向に延びる凹溝110が形成されている。本実施形態では、凹溝110が周方向の略全周に亘って形成されており、略環状の凹溝110とされている。特に、本実施形態では、環状の凹溝110が、周壁106における軸方向他方の側(下方側)に設けられている。また、周壁106の内周面には、雌ねじ112が形成されている。
【0052】
キャップ102は、全体として略円筒状であり、ゴム等の弾性体により形成されている。キャップ102は、周壁114を備えており、周壁114の内径寸法が、軸方向一方(上方)から軸方向他方(下方)に向かって次第に小さくされている。なお、周壁114における最大内径寸法(上端部の内径寸法)は、ノズル部86の先端部分の外径寸法より小さくされている。また、周壁114における軸方向他方側の開口部は、周壁114と一体的に形成されて軸直角方向に広がる閉塞部116によって閉塞されている。閉塞部116における厚さ寸法(上下方向寸法)は、比較的小さく設定されている。なお、周壁114における軸方向他方の側には、外径寸法が大きくされると共に軸方向一方の側に比べて厚肉とされた厚肉部117が設けられている。
【0053】
キャップホルダ104は、
図10にも示されるように、略段付きの筒形状であり、軸方向一方の側が大径部118とされていると共に、軸方向他方の側が小径部120とされている。即ち、キャップホルダ104における軸方向中間部分には軸直角方向に広がる環状の段差部122が形成されており、大径部118と小径部120とが段差部122により連結されている。大径部118及び小径部120は、相互に略同様の外形状を有しており、円筒の径方向一方向の両側(
図3中の左右方向両側)が部分的に切り落とされたような形状とされている。これにより、大径部118及び小径部120において、
図3中の左右方向両側は上下方向に広がる平坦面であると共に、
図4中の左右方向両側は湾曲面である。
【0054】
そして、大径部118において平坦面と湾曲面との境界部分には、下端から軸方向である程度の長さをもって延びると共に、大径部118の厚さ方向で貫通するスリット124が形成されており、大径部118の周壁における平坦面が形成された部分において両スリット124,124の周方向間が、大径部118の周壁の厚さ方向(
図3中の左右方向)で弾性変形可能な係合部としての弾性係合部126とされている。弾性係合部126は、ある程度の長さ寸法(上下方向寸法)及び幅寸法(両スリット124,124間の周方向寸法)を有している。この弾性係合部126の内面における長さ方向中間部分には、内周側に突出する係合凸部128が設けられていると共に、弾性係合部126の下端には、下方になるにつれて対向方向(
図3中の左右方向)の内方に傾斜して突出する係合爪部130が形成されている。
【0055】
なお、本実施形態では、係合凸部128が、大径部118の周壁における湾曲面が形成された部分(
図4中の左右方向両側)の内面にも形成されているが、大径部118の周壁内面に形成された係合凸部128は、弾性係合部126の内面に形成された係合凸部128に比して大きさや形状が異なっている。即ち、弾性係合部126の内面に形成された係合凸部128は比較的に大きな突出高さをもって、且つ弾性係合部126の円弧状に湾曲した内周面に沿って周方向で略一定の断面形状(突出高さ)で形成されているが、それに比して、大径部118の周壁内面に形成された係合凸部128は、最大の突出高さも僅かに小さくされており、且つ凸部頂点が周壁内周面に沿わないで周壁の接線方向に直線的に延びていることで、突出するボリュームが小さく抑えられている。
【0056】
また、小径部120の周壁において、径方向両側(
図3中の左右方向両側)の平坦面が形成された部分には、下方部分において小径部120を厚さ方向で貫通する略矩形の貫通窓132が形成されている。この小径部120の内径寸法は、キャップ102の厚肉部117における外径寸法より僅かに小さくされており、キャップ102とキャップホルダ104とが組み付けられる際に、厚肉部117が内周側に圧縮された状態で圧入されるようになっている。また、貫通窓132の上下方向寸法は、厚肉部117の上下方向寸法と略等しいか僅かに大きくされており、
図3に示されるように、キャップ102とキャップホルダ104とが組み付けられた際に、厚肉部117が部分的に復元変形して、貫通窓132内に入り込むようになっている。なお、例えば貫通窓132の上下方向寸法を厚肉部117の上下方向寸法よりも僅かに小さくして、貫通窓132内に入り込んだ厚肉部117が、貫通窓132の内面により上下方向でも圧縮されるようになっていてもよい。
【0057】
さらに、小径部120の下端部には、軸直角方向に広がる底板部134が設けられており、底板部134の中央には、上下方向で貫通する貫通孔が形成されている。かかる貫通孔により、キャップホルダ104の下方開口部136が構成されている。
【0058】
これらロックカラー94とキャップ102とキャップホルダ104とを組み付ける順番は限定されるものではないが、例えばキャップホルダ104の上方開口部(大径部118の上方開口部)138からキャップ102を挿入する。前述のように、キャップ102の厚肉部117はキャップホルダ104の小径部120に対して圧入状態で挿入されて、厚肉部117が貫通窓132に部分的に入り込むことにより、キャップホルダ104に対してキャップ102が上下方向で位置決めされる。
【0059】
その後、キャップホルダ104の上方開口部138からロックカラー94を挿入する。その際、ロックカラー94の下端により弾性係合部126,126における係合凸部128,128が外周側へと押し広げられると共に、ロックカラー94の下端が係合凸部128,128を乗り越えることで弾性係合部126,126が復元変形して、ロックカラー94の凹溝110とキャップホルダ104の係合凸部128,128とが凹凸係合するようになっている。これにより、キャップホルダ104に対するロックカラー94の挿入が制限される。また、
図3に示されるように、ロックカラー94の周壁106の下端部が、弾性係合部126,126の係合爪部130,130と上下方向で当接している。そして、ロックカラー94の下端部が弾性係合部126,126の係合爪部130,130や段差部122と当接することによっても、キャップホルダ104に対するロックカラー94の更なる挿入を制限することができる。
【0060】
なお、キャップ102とキャップホルダ104との上下方向での位置決めは、例えばキャップホルダ104に対してロックカラー94が組み付けられることでなされるようになっていてもよく、即ちキャップ102の周壁114が、ロックカラー94における係止部108とキャップホルダ104の底板部134との上下方向間で挟持されるようになっていてもよい。また、ロックカラー94の周壁106に対してキャップ102の周壁114の上端部を差し入れるようにしてロックカラー94とキャップ102とを組み付けてもよく、例えばキャップ102の周壁114の上端部は、ロックカラー94の周壁106の内周面に設けられた雌ねじ112の山部によって支持されるようになっていてもよい。そして、かかるロックカラー94とキャップ102との組付体をキャップホルダ104の上方開口部138から挿入して、ロックカラー94とキャップ102とキャップホルダ104とを組み付けてもよい。
【0061】
以上のようにして組み付けられたキャップユニット96に対して上方からシリンジ12のノズル部86が差し入れられて、ノズル部86に設けられた環状凹部100にロックカラー94の係止部108が係止されることで、シリンジ本体88にキャップユニット96が組み付けられてネストシリンジ97が構成されている。これにより、シリンジ本体88とは別部品とされたロックカラー94が、シリンジ本体88のノズル部86に固定的に装着されている。また、シリンジ本体88のノズル部86における外径寸法は、キャップユニット96のキャップ102における内径寸法より大きくされていることから、ノズル部86がキャップ102に対して圧入状態で挿入されて、シリンジ本体88における先端側(ノズル部86側)の開口部は、キャップ102により液密的に封止される。
【0062】
そして、移注針ユニット82の上方開口部25aからネストシリンジ97におけるキャップユニット96が挿入されて組み付けられる。なお、移注針ユニット82へのキャップユニット96の挿入に先立って、シリンジ本体88に薬剤調製用の溶解液等が収容されて、ガスケット140によりシリンジ本体88における基端側の開口部が液密的に封止される。かかる移注針ユニット82とネストシリンジ97との組付体において、ガスケット140に対してプランジャ141をねじ込む等して取り付けることで、本実施形態の薬剤調製用デバイス16が構成される。
【0063】
移注針ユニット82へのキャップユニット96の挿入に際しては、ハウジング部材24の小径筒部28において膨出部30が設けられておらず円弧状に湾曲する部分と、キャップホルダ104の大径部118における湾曲面とが径方向の外内で重ね合わされた状態で挿入される。これにより、移注針ユニット82とキャップユニット96との周方向の向きを把握しつつ挿入操作を行うことができる。
【0064】
ここで、ハウジング部材24の弾性係止片44,44における突出先端部分45b,45bの対向距離(
図3中の左右方向寸法)は、キャップホルダ104の底板部134における幅寸法(
図3中の左右方向寸法)よりも小さくされており、移注針ユニット82へキャップユニット96が挿入されることに伴って、弾性係止片44,44における突出先端部分45b,45bが外周側(
図3中の左右方向外方)へ弾性変形させられる。
【0065】
そして、突出先端部分45b,45bが底板部134を乗り越えることで弾性的に復元変形して、弾性係止片44,44の突出先端部分45b,45bが、キャップホルダ104の貫通窓132,132内に差し入れられるようになっている。これにより、弾性係止片44,44の突出先端部分45b,45bの下方に底板部134が位置することとなり、突出先端部分45b,45bと底板部134とが相互に当接することで、移注針ユニット82に対するキャップユニット96(シリンジ12)の上方への移動が防止されている。なお、かかる突出先端部分45b,45bの貫通窓132,132への差入状態では、弾性係合部126の外周面と弾性係止片44の外周面とが略等しい径方向位置にあり、上下方向で略連続するようになっている。
【0066】
すなわち、本実施形態のハウジング部材24においてシリンジ12が装着可能とされた開口側(上方開口部25a側)には、キャップ102及びキャップホルダ104の挿入を許容し且つ離脱を阻止する第1の係止機構142が設けられている。要するに、
図3に示されるように、ハウジング部材24における弾性係止片44,44の突出先端部分45b,45bが、外周側へ弾性変形することでキャップ102及びキャップホルダ104の挿入が許容されると共に、キャップホルダ104の底板部134と当接することで離脱が阻止されることから、第1の係止機構142が、弾性係止片44,44の突出先端部分45b,45bを含んで構成されている。換言すれば、本実施形態では、ハウジング部材24のシリンジ装着部18において、キャップ102が、キャップホルダ104を介して、第1の係止機構142(突出先端部分45b,45b)により、シリンジ12のノズル部86に装着された状態で保持されている。
【0067】
また、弾性係止片44の対向方向と直交する方向(
図4中の左右方向)では、ハウジング部材24における内側壁部43とキャップホルダ104における段差部122とが上下方向で重ね合わされて相互に当接している。これにより、移注針ユニット82へのキャップユニット96(シリンジ12)の更なる挿入が制限されており、即ち移注針ユニット82に対するキャップユニット96の下方への移動が防止されている。この結果、移注針ユニット82とキャップユニット96(シリンジ12)とが上下方向で相互に位置決めされている。
【0068】
かかる移注針ユニット82とキャップユニット96との組付状態において、キャップホルダ104とロックカラー94との係合部分、即ち係合凸部128と凹溝110との係合部分の外周側には、針保持部材46の腕部56,56に設けられた変形制限部58,58が位置している。腕部56,56の外周側にはハウジング部材24における小径筒部28の膨出部30,30を構成する壁部が位置していることから、腕部56,56の外周側への変形が防止されており、ひいてはキャップホルダ104における弾性係合部126,126の外周側への変形も防止されている。この結果、係合凸部128と凹溝110との凹凸係合が保持されており、移注針ユニット82からのキャップユニット96(シリンジ12)の脱離が防止されている。即ち、本実施形態の連結器具10(薬剤調製用デバイス16)には、係合部としての弾性係合部126,126(係合凸部128,128)をロックカラー94の凹溝110への係合状態に保持する保持機構143(
図3参照)が設けられている。特に、本実施形態では、保持機構143が、弾性係合部126,126の外周側に配されて弾性係合部126,126の外周側への変形を制限することにより弾性係合部126,126をロックカラー94の外周面(凹溝110)への係合状態に保持する変形制限部58,58を含んで構成されている。
【0069】
以上の如き薬剤調製用デバイス16の下方開口部25bにおけるバイアル装着部20には、バイアル14が装着される。本実施形態では、バイアル14が、瓶状のバイアル本体144と、バイアル本体144の開口部を封止すると共にゴム等の弾性体からなる蓋部材146と、バイアル本体144と蓋部材146とを外周側からカシメ固定するリング状部材148とを備えている。バイアル本体144には、上端部から下方に離隔する位置に外径寸法が小さくされた括れ部149が設けられており、リング状部材148の下端部が、括れ部149に重ね合わされることでバイアル本体144に対して蓋部材146が液密的に取り付けられている。また、蓋部材146の中央には、他の部分よりも薄肉とされた薄肉部150が設けられている。かかるバイアル14には、開口部が蓋部材146に封止される前に、薬剤調製用の粉末製剤が収容される。
【0070】
薬剤調製用デバイス16にバイアル14を装着するには、先ず、薬剤調製用デバイス16の下方開口部25bからバイアル14を接近させる。薬剤調製用デバイス16の下方開口部25bでは、針保持部材46の軸方向リブ76及び内周突部80の下面が、それぞれ内周側になるにつれて上方に傾斜していることから、バイアル14が、これら軸方向リブ76及び内周突部80により針保持部材46の中央に案内されて、移注針22における下方突出部50とバイアル14の蓋部材146における薄肉部150とが上下方向で位置合わせされる。そして、更にバイアル14を薬剤調製用デバイス16に押し込んで挿入することで、
図11,12に示されるように、移注針22の下方突出部50が薄肉部150に穿刺されて、薄肉部150を貫通する。
【0071】
このような薬剤調製用デバイス16へのバイアル14の挿入、及び移注針22の下方突出部50における薄肉部150への穿刺に際して、ハウジング部材24における第2弾性片36と針保持部材46における底壁66の当接部68,68とが略上下方向で突き合わされていることから、ハウジング部材24に対して針保持部材46が上方へ移動することが防止されており、蓋部材146の薄肉部150に対して移注針22の下方突出部50を安定して穿刺することができる。
【0072】
そして、バイアル14を薬剤調製用デバイス16(連結器具10)に対して奥まで挿入する、即ちバイアル14の上端であるリング状部材148又は蓋部材146が針保持部材46における底壁部52に当接するまで挿入することで、
図12に示されるように、バイアル14において外周側に位置するリング状部材148が、針保持部材46における弾性接触片70の突出先端部分及びハウジング部材24の第2弾性片36を外周側(
図12中の左右方向両側)へ押し込んで、これにより、第2弾性片36と当接部68,68との当接が解除される。この結果、針保持部材46が、ハウジング部材24に対して上方に移動可能となる。
【0073】
針保持部材46がハウジング部材24に対して上方に移動可能とされた状態において、薬剤調製用デバイス16(連結器具10)にバイアル14を更に押し込んで挿入することで、移注針22を有する針保持部材46に対してバイアル14の挿入による押込力が及ぼされるようになっており、
図13,14に示されるように、ハウジング部材24に対してバイアル14及び針保持部材46が上方へ移動させられる。この結果、移注針22がシリンジ12に対して接近方向に移動して、移注針22の上方突出部48が、シリンジ12のノズル部86を覆蓋するキャップ102の閉塞部116に穿刺されて、閉塞部116を貫通する。これにより、シリンジ12の内部空間とバイアル14の内部空間が、移注針22により連通する。即ち、本実施形態では、ロックカラー94を固定的に備えるシリンジ12とバイアル14とを連結する連結器具10が、移注針ユニット82(ハウジング部材24及び針保持部材46)と、キャップユニット96におけるキャップ102とキャップホルダ104とを含んで構成されている。なお、上方突出部48が閉塞部116に穿刺された際には、上方突出部48の下部に設けられたテーパ部51がキャップ102の下端部の内周面に当接することで、移注針22とキャップ102との間が気密的にシールされるようになっている。
【0074】
そして、シリンジ12とバイアル14との連通状態でプランジャ141を先端側(下側)に押し込むことで、シリンジ12内の溶解液等がバイアル14内に注入される。これにより、バイアル14内の粉末製剤等が溶解液等と混合して溶解されて、薬剤が調製される。薬剤の調製後、薬剤調製用デバイス16を上下反転してプランジャ141を使用者の手元側(下方)に引っ張ることで、バイアル14内の薬剤がシリンジ12内に収容される。
【0075】
ここにおいて、
図13に示されるように移注針ユニット82に対してバイアル14を挿入してシリンジ12とバイアル14とを連通させた状態では、針保持部材46における変形制限部58が、キャップホルダ104とロックカラー94との係合部分、即ち係合凸部128,128と凹溝110との係合部分の外周側から上方に外れて位置している。これにより、弾性係合部126,126の外周側への弾性変形が許容されており、弾性係合部126,126の外周側への弾性変形に伴って、係合凸部128,128と凹溝110との係合が解除されるようになっている。
【0076】
そして、シリンジ本体88に対してロックカラー94が固定的に装着されていることから、移注針ユニット82からシリンジ本体88を引き抜くことで、弾性係合部126,126が外周側に弾性変形して係合凸部128,128と凹溝110との係合が解除され、
図15,16に示されるように、移注針ユニット82からシリンジ本体88と共にロックカラー94が引き抜かれる。特に、凹溝110における下方の内面と係合凸部128,128の下面が何れも下方になるにつれて外周側に傾斜していることから、弾性係合部126,126がこれらの傾斜に沿って外周側に変形し易くなっている。
【0077】
すなわち、本実施形態の連結器具10(薬剤調製用デバイス16)には、シリンジ12とバイアル14とが相対的に接近移動されて移注針22によって連通状態とされるのに伴って、前述の保持機構143における弾性係合部126,126(係合凸部128,128)とロックカラー94の凹溝110との係合状態の保持を解除する解除機構152(
図13参照)が設けられている。特に、本実施形態では、移注針22(針保持部材46)がシリンジ12に対して接近方向に移動されてキャップ102に穿刺されるのに伴って、シリンジ12に装着されたキャップホルダ104の弾性係合部126,126を外れた位置へ変形制限部58,58が移動して、弾性係合部126,126の外周側への変形によるロックカラー94の凹溝110からの離脱が許容されることによって、解除機構152が構成されている。
【0078】
なお、
図14中の左右方向においても係合凸部128,128と凹溝110とが係合しているが、前述のように、かかる係合凸部128,128は、弾性係合部126,126の内周面に形成された係合凸部128,128に比して突出ボリュームが小さく、凹溝110への係合力が小さいことから、移注針ユニット82からのシリンジ本体88の引き抜き操作によって、凹溝110への係合は強制的に解除可能とされている。尤も、
図14中の左右方向両側(大径部118の周壁内面)に形成された係合凸部128は、ロックカラー94の凹溝110との係合力等を調節するために必要に応じて設けられるものであって、必ずしも設ける必要はない。
【0079】
また、
図13に示されるように、移注針ユニット82に対してバイアル14を挿入してシリンジ12とバイアル14とを連通させた状態では、ハウジング部材24の第1弾性片34の係止爪38がバイアル本体144の括れ部149に入り込んで係止していると共に、第1弾性片34に対しては、針保持部材46における内周突部80が外周側から当接している。これにより、バイアル14に抜け方向(下方)の外力が及ぼされた場合にも、第1弾性片34の外周側への変形が阻止されて、第1弾性片34(係止爪38)のバイアル本体144への係止が維持される。
【0080】
特に、針保持部材46におけるハウジング部材24の上方への移動に伴って、針保持部材46の外周突部72が、ハウジング部材24の下端(下方開口部25b)よりも上方に位置する周方向リブ40を乗り越えて係止されるようになっている。これにより、針保持部材46の下方への移動(ハウジング部材24から離隔する方向への移動)が阻止されて、第1弾性片34に対する内周突部80の外周側からの当接状態が安定して維持される。これらの結果、薬剤調製用デバイス16(移注針ユニット82)からのバイアル14の抜けが防止される。
【0081】
すなわち、本実施形態のハウジング部材24において、バイアル14が装着可能とされた開口側(下方開口部25b側)には、バイアル14の挿入を許容し且つ離脱を阻止する第2の係止機構154が設けられている。要するに、
図12にも示されるように、ハウジング部材24の第2弾性片36が外周側へ弾性変形することでバイアル14の挿入が許容される。また、
図13に示されるように、第1弾性片34がバイアル14の括れ部149に係止されることでバイアル14の離脱が阻止される。これにより、第2の係止機構154が、第1弾性片34及び第2弾性片36を含んで構成されている。
【0082】
そして、
図15,16に示されるように移注針ユニット82から取り外されたシリンジ12は、内周側に雌ねじ112を有するロックカラー94を備えていることから、雌ねじ112と螺合する雄ねじを備える図示しないルアーロックコネクタ等と接続可能であり、当該ルアーロックコネクタ等を通じて、シリンジ12内に収容された薬剤が患者の体内に投与され得る。
【0083】
以上の如き本実施形態の連結器具10によれば、キャップホルダ104における係合部(弾性係合部126,126)をロックカラー94への係合状態に保持する保持機構143が設けられている。この保持機構143は、変形制限部58,58を含んで構成されており、変形制限部58,58により弾性係合部126,126の外周側への弾性変形を制限することで、弾性係合部126,126(係合凸部128,128)とロックカラー94の凹溝110との凹凸係合が保持されるようになっている。
【0084】
また、連結器具10には、保持機構143による弾性係合部126,126とロックカラー94の凹溝110との凹凸係合の保持を解除する解除機構152が設けられている。この解除機構152では、連結器具10にバイアル14が挿入されることに伴って変形制限部58,58が弾性係合部126,126を外れた位置に移動して、弾性係合部126,126の外周側への弾性変形が許容されることで、弾性係合部126,126(係合凸部128,128)とロックカラー94の凹溝110との凹凸係合が解除可能となっている。
【0085】
要するに、これらの保持機構143及び解除機構152によってシリンジ12と連結器具10との連結及び離脱が達成されることから、例えば前記特許文献1のような特別なねじ構造を設けることがなく、連結器具10やシリンジ12の構造を簡単なものとすることができる。この結果、連結器具10やシリンジ12の形状の設計自由度を向上させたり、材質の選択自由度を向上させたりすることができる。
【0086】
また、ハウジング部材24には、キャップ102及びキャップホルダ104の挿入を許容し且つ離脱を阻止する第1の係止機構142が設けられていると共に、バイアル14の挿入を許容し且つ離脱を阻止する第2の係止機構154が設けられている。これにより、連結器具10(ハウジング部材24)から、キャップ102及びキャップホルダ104やバイアル14が意図せず脱落することが防止され得る。また、連結器具10に対してネストシリンジ97を組み付けて薬剤調製用デバイス16を構成した際に、ハウジング部材24に対してキャップ102及びキャップホルダ104が固定されて離脱が阻止されることから、シリンジ本体88を引き抜くことで、シリンジ12がロックカラー94を備えた状態で取り外され得る。換言すれば、連結器具10からシリンジ12を引き抜くことで、第1の係止機構142により離脱が阻止されたキャップ102及びキャップホルダ104がハウジング部材24内に留まるようになっている。
【0087】
すなわち、本実施形態では、シリンジ装着部18からのシリンジ12の離脱に際して、シリンジ12のノズル部86から分離されたキャップ102が、キャップホルダ104を介して、第1の係止機構142によりシリンジ装着部18に留置されるようになっている。従って、本実施形態では、シリンジ装着部18へのシリンジ12の装着時において、キャップ102をノズル部86への装着状態に保持すると共に、シリンジ装着部18からのシリンジ12の離脱時において、ノズル部86から分離されたキャップ102をシリンジ装着部18に保持するキャップ留置機構が、第1の係止機構142により構成されており、上記キャップ102の保持及び留置が、キャップホルダ104を介して、キャップ留置機構(第1の係止機構142)により実現されるようになっている。これにより、引き抜いた後のシリンジ12をルアーロックコネクタ等に接続する際にシリンジ12からキャップ102を外す手間をなくすことができる。また、シリンジ12を引き抜いた後に、使用者が、薬剤等が付着したキャップ102に誤って接触することが防止され得る。
【0088】
かかる連結器具10に対してシリンジ12が組み合わされて構成される薬剤調製用デバイス16も上記の効果を発揮し得る。特に、本実施形態の薬剤調製用デバイス16では、シリンジ本体88とロックカラー94とが別部品とされていることから、シリンジ本体88の形状をより容易にすることができて、例えばシリンジ本体88をガラスで形成することも可能である。或いは、薬剤調製用デバイス16に採用されるシリンジ本体88として、市販のガラス製のシリンジ本体を採用することも可能となる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。
【0090】
前記実施形態では、保持機構143が、係合部(弾性係合部126,126)の外周側への弾性変形を制限する変形制限部58,58を含んで構成されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、ロックカラーの外周面に、下方に開口して軸方向に延びる軸方向溝と、当該軸方向溝の上端から周方向に延びる周方向溝とを設けて、キャップホルダに設けた係合部を軸方向溝の下方開口部から差し入れると共に、係合部が軸方向溝の上端部に位置した状態においてキャップホルダに対してロックカラーを回転させて係合部を周方向溝に差し入れることで、キャップホルダの係合部とロックカラーとが相互に係合するようになっていてもよい。そして、例えば初期状態では針保持部材の腕部に設けられた移動制限部により溝内での係合部の周方向移動や軸方向移動が制限されて係合状態が保持されるようになっており、バイアルの挿入に伴う針保持部材の移動により、溝内における係合部の移動の制限が解除されて、キャップホルダの係合部とロックカラーとの係合が解除されるようになっていてもよい。即ち、キャップホルダの係合部とロックカラーとの係合の解除は、係合部が外周側へ弾性変形することでなされる態様に限定されるものではなく、係合部が上下方向や周方向へ移動することで達成されるようになっていてもよい。上記のような場合においても、例えば針保持部材の腕部の突出先端に設けられた移動制限部を含んで係合状態を保持する保持機構が構成されると共に、移動制限部の移動に伴って保持機構による係合状態の保持を解除する解除機構が構成される。また、キャップホルダとロックカラーとを相対回転させる場合には、ロックカラーをシリンジに対して固定した状態でシリンジとキャップホルダとを相対回転させることが好適であり、この場合には、ロックカラーがシリンジ本体に対して回転不能に固定されることが好ましい。
【0091】
さらに、ロックカラー94の凹部(凹溝110)と弾性係合部126に設けられる凸部(係合凸部128)とは反対に設けられてもよく、ロックカラーに凸部を設けると共に、弾性係合片に凹部を設けてもよい。これら凹部及び/又は凸部は周方向の全周に亘って設けられる必要はなく、少なくとも周方向で相互に対応する位置に凹部及び凸部が設けられればよい。
【0092】
更にまた、前記実施形態では、シリンジ本体88がガラス製とされていたが、シリンジ本体は合成樹脂製であってもよい。また、前記実施形態では、シリンジ本体88とロックカラー94とが別部品とされていたが、例えばシリンジ本体とロックカラーは合成樹脂による一体成形品として形成されてもよい。
【0093】
さらに、前記実施形態では、針保持部材46と両頭針(移注針22)とが合成樹脂による一体成形品として形成されていたが、別体で形成されて後固着されたり、インサート成形や多色成形などで形成されてもよい。その場合、両頭針は、例えば金属により形成されてもよい。
【0094】
なお、前記実施形態では、弾性係合部126における係合凸部128がロックカラー94の外周面(凹溝110)に対して凹凸係合して、当該凹凸係合部分の外周側から変形制限部58が当接することでキャップホルダ104からのロックカラー94の抜けが防止されていたが、例えば変形制限部により係合部の外周側への変形が制限されて係合が解除されなければ、係合部分の位置はロックカラーの外周面に限定されず、例えばロックカラーの周壁の上端部であってもよく、その場合、係合部は、ロックカラーの周壁の上端部に係合する爪状や鉤状であってもよい。
【0095】
また、本発明に係る薬剤調製用デバイスは、連結器具に対して、ロックカラーを備えたシリンジ本体が組み合わされた構成とされていればよく、例えば前述の
図9に示された態様をもって本発明に係る薬剤調製用デバイスとすることもできる。かかる態様の薬剤調製用デバイスでは、任意の液体をシリンジ本体に注入してから、別途に準備したガスケット又はプランジャ付きガスケットを装着して使用したり、提供することなども可能である。また、提供に際しては、連結器具とロックカラーを備えたシリンジ本体とを、分離状態で提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 連結器具
12 シリンジ
14 バイアル
16 薬剤調製用デバイス
18 シリンジ装着部
20 バイアル装着部
22 移注針(両頭針)
24 ハウジング部材
25a 上方開口部
25b 下方開口部
26 大径筒部
28 小径筒部
30 膨出部
32 環状壁部
34 第1弾性片
36 第2弾性片
38 係止爪
40 周方向リブ
42 軸方向リブ
43 内側壁部
44 弾性係止片
45a 突出基端部分
45b 突出先端部分
46 針保持部材
48 上方突出部
50 下方突出部
51 テーパ部
52 底壁部
54 周壁部
56 腕部
58 変形制限部
60 挿通孔
62 嵌合突部
64 収容領域
66 底壁
68 当接部
70 弾性接触片
72 外周突部
74 軸方向溝
76 軸方向リブ
78 下方開口部
80 内周突部
82 移注針ユニット
86 ノズル部
88 シリンジ本体
94 ロックカラー
96 キャップユニット
97 ネストシリンジ
98 バレル部
100 環状凹部
102 キャップ
104 キャップホルダ
106 周壁
108 係止部
110 凹溝
112 雌ねじ
114 周壁
116 閉塞部
117 厚肉部
118 大径部
120 小径部
122 段差部
124 スリット
126 弾性係合部(係合部)
128 係合凸部
130 係合爪部
132 貫通窓
134 底板部
136 下方開口部
138 上方開口部
140 ガスケット
141 プランジャ
142 第1の係止機構(キャップ留置機構)
143 保持機構
144 バイアル本体
146 蓋部材
148 リング状部材
149 括れ部
150 薄肉部
152 解除機構
154 第2の係止機構